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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151075
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】切断機構及び縫製装置
(51)【国際特許分類】
   D05B 65/02 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
D05B65/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060496
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100143960
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 早百合
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕之
(72)【発明者】
【氏名】桝谷 隆志
(72)【発明者】
【氏名】原田 幸一
(72)【発明者】
【氏名】岳 斉也
【テーマコード(参考)】
3B150
【Fターム(参考)】
3B150AA02
3B150CB03
3B150CB27
3B150CD10
3B150CE23
3B150FH03
3B150FH06
3B150FH09
3B150JA07
3B150QA06
3B150QA07
(57)【要約】
【課題】下糸端部が縫目に巻き込まれる可能性を従来よりも低減した切断機構及び縫製装置を提供すること。
【解決手段】切断機構60は、固定刃61、付勢部材、可動刃62、及び刃移動部を備える。固定刃61は、針板11の下側に固定される。付勢部材は、針板11の下側に固定される。可動刃62は、固定刃61に対して水平に回動可能に設けられる。可動刃62は、糸挟持部66及び糸解放部68を備える。糸挟持部66は、可動刃62により切断後の下糸の下糸端部を付勢部材との間で挟持可能である。可動刃62は、下糸端部を付勢部材との間で挟持不能な糸解放部68とを有する。刃移動部は、モータを有し、モータの動力で可動刃62を水平方向に回動する。刃移動部は、刃待機位置P1、解放位置P2、切断位置P3、可動端位置P4の間を可動刃62を移動する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縫製装置の縫針を挿通する針穴が形成された針板の下側に固定される固定刃と、
前記針板の下側に固定される付勢部材と、
前記固定刃に対して水平方向に回動可能に設けた可動刃であって、前記可動刃により切断後の下糸の下糸端部を前記付勢部材との間で挟持可能である糸挟持部と、前記下糸端部を前記付勢部材との間で挟持不能な糸解放部とを有する前記可動刃と、
モータを有し、前記モータの動力で前記可動刃を前記水平方向に回動する刃移動部であって、
前記可動刃が前記固定刃から前記水平方向で離れた位置にあり、且つ、前記可動刃の前記糸挟持部が前記針板と前記付勢部材との間で、前記付勢部材に対向して配置され、前記糸挟持部が前記下糸端部を前記付勢部材と共に挟持可能な刃待機位置と、
前記可動刃の前記糸解放部が前記針板と前記付勢部材との間で、前記付勢部材に対向して配置された解放位置と、
前記可動刃が前記固定刃と交差して上糸と前記下糸を切断する切断位置と、
前記切断位置に対して前記刃待機位置とは反対側の可動端位置と
の間で前記可動刃を移動する前記刃移動部と
を備えることを特徴とする切断機構。
【請求項2】
前記可動刃の回動中心は、前記針板と平行な面の前記モータから前記針穴へと向かう方向において、前記針穴に対し、前記モータ側とは反対側に設けられることを特徴とする請求項1に記載の切断機構。
【請求項3】
前記付勢部材は板バネであることを特徴とする請求項1又は2に記載の切断機構。
【請求項4】
前記糸解放部は、前記可動刃の下面の内、前記糸挟持部に隣接して設けられた上方に向かって凹んだ凹部であることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の切断機構。
【請求項5】
縫針を挿通する針穴が形成された針板と、
請求項1から4の何れかの切断機構と
を備えることを特徴とする縫製装置。
【請求項6】
前記モータの動力で駆動し、前記針板の下側で前記縫針に通された前記上糸の上糸端部を解除可能に保持する上糸保持機構を更に備えることを特徴とする請求項5に記載の縫製装置。
【請求項7】
前記上糸保持機構は、
前記針板の下面に設けられた第一保持部材と、
前記針板に支持部により回動可能に支持され、前記第一保持部材と協働して前記上糸端部を保持する第二保持部材と、
前記モータの動力で前記第二保持部材を前記水平方向に移動する保持移動部であって、
前記水平方向において、前記第一保持部材と前記第二保持部材との間に、前記針穴が配置された待機位置と、
前記水平方向において前記第二保持部材が前記針穴から離隔し、且つ、前記第二保持部材が前記第一保持部材と上下方向に重なる保持位置と
に前記第二保持部材を移動する前記保持移動部と
を有することを特徴とする請求項6に記載の縫製装置。
【請求項8】
前記支持部は、前記針板と平行な面の前記モータから前記針穴へと向かう方向において、前記針穴に対し、前記モータ側に設けられることを特徴とする請求項7に記載の縫製装置。
【請求項9】
前記第二保持部材が前記待機位置に在る時、前記可動刃は前記刃待機位置に在り、
前記第二保持部材が前記保持位置に在る時、前記可動刃と前記付勢部材は前記下糸端部を挟持することを特徴とする請求項7に記載の縫製装置。
【請求項10】
前記針板の下側に固定される固定メスを更に備え、
前記保持移動部は、前記待機位置と、前記保持位置とに加え、前記第一保持部材と前記第二保持部材とで保持する前記上糸端部を前記固定メスで切断する上糸切断位置に前記第二保持部材を移動可能であり、
前記第二保持部材が前記上糸切断位置に在る時、前記可動刃は前記解放位置にあることを特徴とする請求項7又は9に記載の縫製装置。
【請求項11】
前記モータを制御して、
前記可動刃を前記刃待機位置から前記可動端位置に移動後、前記切断位置に移動して前記上糸と前記下糸とを切断する糸切断処理と、
前記可動刃を前記切断位置から前記刃待機位置に移動させて、前記糸切断処理で切断した前記下糸端部を前記付勢部材と前記糸挟持部とで挟持する挟持処理と、
前記可動刃を前記刃待機位置から前記解放位置に移動させて、前記挟持処理で挟持した前記下糸端部を解放する解放処理と
を実行させる制御装置を更に備えることを特徴とする請求項7~10の何れかに記載の縫製装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は縫製装置の切断機構及び縫製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の縫製装置は、針板と回転釜との間に、糸切機構及び上糸挟持機構を備える。糸切機構は、可動刃と固定刃とを有する。糸切機構は、縫製終了時に可動刃を水平方向に往復回動させ、縫針の目孔から加工布を通過して延びる上糸と、回転釜から延びる下糸とを切断する。上糸挟持機構は、第一糸挟持部材及び第二糸挟持部材を備える。上糸挟持機構は、縫製開始後の一針目の縫針が針板の上側に移動した時、第二糸挟持部材を挟持位置に回動して、第一糸挟持部材と協働して糸端部を挟持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-278928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の縫製装置では、可動刃が切断した下糸の下糸端部が、新たに形成する縫目に巻き込まれることがある。
【0005】
本発明の目的は、下糸端部が縫目に巻き込まれる可能性を従来よりも低減した切断機構及び縫製装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1の切断機構は、縫製装置の縫針を挿通する針穴が形成された針板の下側に固定される固定刃と、前記針板の下側に固定される付勢部材と、前記固定刃に対して水平方向に回動可能に設けた可動刃であって、前記可動刃により切断後の下糸の下糸端部を前記付勢部材との間で挟持可能である糸挟持部と、前記下糸端部を前記付勢部材との間で挟持不能な糸解放部とを有する前記可動刃と、モータを有し、前記モータの動力で前記可動刃を前記水平方向に回動する刃移動部であって、前記可動刃が前記固定刃から前記水平方向で離れた位置にあり、且つ、前記可動刃の前記糸挟持部が前記針板と前記付勢部材との間で、前記付勢部材に対向して配置され、前記糸挟持部が前記下糸端部を前記付勢部材と共に挟持可能な刃待機位置と、前記可動刃の前記糸解放部が前記針板と前記付勢部材との間で、前記付勢部材に対向して配置された解放位置と、前記可動刃が前記固定刃と交差して上糸と前記下糸を切断する切断位置と、前記切断位置に対して前記刃待機位置とは反対側の可動端位置との間で前記可動刃を移動する前記刃移動部とを備える。請求項1の切断機構は、可動刃が刃待機位置に在る時に、下糸端部を付勢部材と糸挟持部とで挟持できる。切断機構は、可動刃が解放位置に在る時に、下糸端部を付勢部材と糸挟持部とで挟持したのを解放できる。切断機構は、上糸及び下糸を切断するモータの動力を利用して、下糸端部の挟持と解放とを行うことができる。
【0007】
本発明の請求項2の切断機構の前記可動刃の回動中心は、前記針板と平行な面の前記モータから前記針穴へと向かう方向において、前記針穴に対し、前記モータ側とは反対側に設けられる。請求項2の切断機構は、可動刃の回動中心が、針板と平行な面のモータから針穴へと向かう方向において、針穴に対し、モータ側にある場合に比べ、針穴に対し、モータ側の設計の自由度を高めることができる。
【0008】
本発明の請求項3の切断機構の前記付勢部材は板バネである。請求項3の切断機構は、付勢部材の構成を比較的簡単にできる。
【0009】
本発明の請求項4の切断機構の前記糸解放部は、前記可動刃の下面の内、前記糸挟持部に隣接して設けられた上方に向かって凹んだ凹部である。請求項4の切断機構は、糸解放部の構成を比較的簡単にできる。切断機構は、下糸端部の挟持を解放する位置を糸解放部の延設範囲を調整することで簡単に調整できる。
【0010】
本発明の請求項5の縫製装置は、縫針を挿通する針穴が形成された針板と、請求項1~4の何れかの切断機構とを備える。請求項5の縫製装置は、切断機構の可動刃が刃待機位置に在る時に、下糸端部を付勢部材と糸挟持部とで挟持できる。請求項5の縫製装置は、可動刃が解放位置に在る時に、下糸端部を付勢部材と糸挟持部とで挟持したのを解放できる。縫製装置は、上糸及び下糸を切断するモータの動力を利用して、下糸端部の挟持と解放とを行うことができる。
【0011】
本発明の請求項6の縫製装置は、前記モータの動力で駆動し、前記針板の下側で前記縫針に通された前記上糸の上糸端部を解除可能に保持する上糸保持機構を更に備える。請求項6の縫製装置は、一つのモータで、切断機構と、上糸保持機構とを行うことができる。縫製装置は切断機構で、下糸端部を保持し、上糸保持機構で上糸端部を保持することで、縫目に上糸端部又は下糸端部が巻き込まれることに起因する不具合が生じることを抑制できる。
【0012】
本発明の請求項7の縫製装置の前記上糸保持機構は、前記針板の下面に設けられた第一保持部材と、前記針板に支持部により回動可能に支持され、前記第一保持部材と協働して前記上糸端部を保持する第二保持部材と、前記モータの動力で前記第二保持部材を前記水平方向に移動する保持移動部であって、前記水平方向において、前記第二保持部材が前記針穴及び前記第一保持部材と離隔し、且つ、前記第一保持部材と前記第二保持部材との間に、前記針穴が配置された待機位置と、前記水平方向において前記第二保持部材が前記針穴から離隔し、且つ、前記第二保持部材が前記第一保持部材と上下方向に重なる保持位置とに前記第二保持部材を移動する前記保持移動部とを有する。請求項7の縫製装置は、上糸保持機構の動力を切断機構と共通化しているので、上糸保持機構の動力と、切断機構の動力とが別に設けられる縫製装置に比べ、構成を簡単にできる。
【0013】
本発明の請求項8の縫製装置の前記支持部は、前記針板と平行な面の前記モータから前記針穴へと向かう方向において、前記針穴に対し、前記モータ側に設けられる。請求項8の縫製装置は、切断機構の可動刃の回動中心が、針板と平行な面のモータから針穴へと向かう方向において、針穴に対し、モータ側とは反対側にある場合には、上糸保持機構が、切断機構と干渉する可能性を低減し、針穴に対し、モータ側とは反対側の設計の自由度を高めることができる。
【0014】
本発明の請求項9の縫製装置の前記第二保持部材が前記待機位置に在る時、前記可動刃は前記刃待機位置に在り、前記第二保持部材が前記保持位置に在る時、前記可動刃と前記付勢部材は前記下糸端部を挟持する。請求項9の縫製装置は、上糸保持機構と、切断機構との動作を同期できる。縫製装置は、上糸保持機構が待機位置に在る時と、保持位置に在る時との各々で、切断機構により下糸端部を挟持できる。
【0015】
本発明の請求項10の縫製装置は、前記針板の下側に固定される固定メスを更に備え、前記保持移動部は、前記待機位置と、前記保持位置とに加え、前記第一保持部材と前記第二保持部材とで保持する前記上糸端部を前記固定メスで切断する上糸切断位置に前記第二保持部材を移動可能であり、前記第二保持部材が前記上糸切断位置に在る時、前記可動刃は前記解放位置にある。請求項10の縫製装置は、上糸保持機構と、切断機構との動作を同期できる。縫製装置は、上糸保持機構が上糸切断位置に在る時に、切断機構により下糸端部の挟持を解放できる。
【0016】
本発明の請求項11の縫製装置は、前記モータを制御して、前記可動刃を前記刃待機位置から前記可動端位置に移動後、前記切断位置に移動して前記上糸と前記下糸とを切断する糸切断処理と、前記可動刃を前記切断位置から前記刃待機位置に移動させて、前記糸切断処理で切断した前記下糸端部を前記付勢部材と前記糸挟持部とで挟持する挟持処理と、前記可動刃を前記刃待機位置から前記解放位置に移動させて、前記挟持処理で挟持した前記下糸端部を解放する解放処理とを実行させる制御装置を更に備える。請求項11の縫製装置は、糸切断処理と、挟持処理と、解放処理とを自動で実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】縫製装置1の全体斜視図である。
図2】切断機構60及び上糸保持機構80の斜視図である。
図3】切断機構60の一部及び上糸保持機構80の一部の分解斜視図である。
図4】切断機構60の一部及び上糸保持機構80の一部の底面図である。
図5】切断機構60の一部の底面図である。
図6】モータ59、カム板70、及びリンク機構72の一部であるリンク73、74の底面図である。
図7】上糸保持機構80の一部の底面図である。
図8】縫製装置1の電気的構成を示すブロック図。
図9】縫製装置1の主処理の流れ図である。
図10】(A)は第二保持部材82が待機位置Q1にある時の、モータ59、カム板70、及びリンク機構72の一部の底面図であり、(B)は第二保持部材82が保持位置Q2にある時の、モータ59、カム板70、及びリンク機構72の一部の底面図であり、(C)は第二保持部材82が上糸切断位置Q3にある時の、モータ59、カム板70、及びリンク機構72の一部の底面図である。
図11】(A)は第二保持部材82が待機位置Q1にある時の、切断機構60の一部及び上糸保持機構80の一部の底面図であり、(B)は第二保持部材82が保持位置Q2にある時の、切断機構60の一部及び上糸保持機構80の一部の底面図であり、(C)は第二保持部材82が上糸切断位置Q3にある時の、切断機構60の一部及び上糸保持機構80の一部の底面図である。
図12】(A)は図11(A)のG1-G1線における矢視方向断面図であり、(B)は図11(B)のG2-G2線における矢視方向断面図であり、(C)図11(C)のG3-G3線における矢視方向断面図である。
図13】(A)は図11(A)のF1-F1線における矢視方向断面図であり、(B)は図11(B)のF2-F2線における矢視方向断面図であり、(C)図11(C)のF3-F3線における矢視方向断面図である。
図14】(A)は可動刃62が可動端位置P4にある時の、モータ59、カム板70、及びリンク機構72の一部の底面図であり、(B)は可動刃62が切断位置P3にある時の、モータ59、カム板70、及びリンク機構72の一部の底面図である。
図15】(A)は可動刃62が可動端位置P4にある時の、切断機構60の一部及び上糸保持機構80の一部の底面図であり、(B)は可動刃62が可動端位置P4にある時の、切断機構60の一部及び上糸保持機構80の一部の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を説明する。以下説明は、図中に矢印で示す左右、前後、及び上下を使用する。縫製装置1の左右方向、前後方向、及び上下方向は夫々、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向である。
【0019】
図1を参照し、縫製装置1の構造を説明する。縫製装置1は縫針15に対し、X軸方向とY軸方向に被縫製物19を送ることで360度方向に縫製できる。被縫製物19は、例えば布、革等である。縫製装置1は、ベッド部2、脚柱部3、腕部4、布送り装置5、制御部10(図8参照)、及び操作面板18を備える。ベッド部2は、ミシン机6上に設置する。ベッド部2は上面前側に作業台7を備える。作業台7は略中央に針板11を備える。針板11の略中央には、針穴12が形成される。縫製装置1は、ベッド部2の内部に図示しない下軸と揺動垂直釜を備える。揺動垂直釜は針板11下方に配置し、下軸は前後方向に延びる。下軸前端部は揺動垂直釜と連結する。揺動垂直釜は下糸を巻いたボビンを収容し下軸を中心に往復揺動する。
【0020】
脚柱部3はベッド部2後方部から上方に延びる。腕部4は脚柱部3上部から前方に延び、主軸を内部で回転可能に支持する。主軸は前後方向に延び、腕部4内部後側に設けた主モータ17(図8参照)と連結する。連桿は脚柱部3内部で上下方向に延びる。主軸は連桿を介して下軸に連結する。故に主モータ17が駆動すると主軸が回転し、主軸の回転に伴い揺動垂直釜が駆動する。ミシン机6は上面右側に操作面板18を設ける。操作面板18は例えばタッチパネルであり、表示部13と入力部16を備える。表示部13は各種情報を表示し、入力部16は縫製開始の指示等の各種情報の入力を受付ける。
【0021】
腕部4は前端部に先端部8を備える。先端部8の下端部は針板11上面と対向する。先端部8は針棒14及び押え棒20を上下動可能に支持する。針棒14は上下方向に延び、先端部8から下方に突出する。針棒14は下端に縫針15を装着する。縫針15は目孔を有し、目孔に上糸を通すことで上糸を保持する。針棒14は主軸と連結する。針棒14が主軸の回転で上下動すると、縫針15は上下動して針穴12を通過する。上下動する縫針15は揺動垂直釜と協働して被縫製物19に縫目を形成する。押え棒20は針棒14の左方で上下方向に延び、先端部8から下方に突出する。押え棒20は下端に押え足9を装着する。押え足9は、間欠的に被縫製物19を下方に押さえる。
【0022】
布送り装置5はXモータ21(図8参照)、布保持体22、支持部23、軸部24、Yモータ25(図8参照)等を備える。布送り装置5は、非図示のXレール、X移動板、Yレール、及びY移動板を備える。Xモータ21はベッド部2内部後側に設ける。Xレールはベッド部2内部且つXモータ21前方でX軸方向に延びる。X移動板はXレールに左右動可能に連結し且つXモータ21と連結する。X移動板はXモータ21の駆動力でXレールに沿って左右動する。YレールはX移動板上面に固定し、Y軸方向に延びる。YレールはX移動板と一体的に左右動する。Y移動板はYレールに対して前後動可能に連結する。布保持体22はY移動板上面に固定する。布保持体22はX移動板とY移動板と一体的に左右動し、Y移動板と一体的に前後方向に移動する。故に布保持体22は水平方向に移動できる。支持部23は布保持体22の押え腕32後部に連結する。支持部23は布保持体22と共に左右動できる。軸部24は支持部23から脚柱部3内部迄後方に延び、且つ前後動できる。軸部24前端部はスライダを介して支持部23に接続する。Yモータ25は脚柱部3内部に設け、軸部24に連結する。軸部24がYモータ25の駆動力で前後動すると、支持部23、布保持体22、Y移動板は一体的に前後動する。
【0023】
布保持体22は送り板31、押え腕32、一対の連結部33、押え枠34、及び一対のエアシリンダ35(図1では一方のみを図示)等を備える。送り板31はY移動板上面から前方に延び、前端部に挟み枠36を備える。挟み枠36は平面視矩形枠状であり、被縫製物19を支持できる。押え腕32は送り板31後端部から上側に延び、更に前側へ屈曲して延びる。押え腕32は送り板31後端をY移動板上面との間で挟んで固定する。押え腕32の先端部37は正面視略矩形状である。一対の連結部33は先端部37にて左右方向に並び、上下動できる。一対の連結部33は押え枠34を支持する。押え枠34は平面視略矩形枠状であり、挟み枠36と上下方向に対向する。一対のエアシリンダ35は押え腕32の左部と右部に設ける。一対のエアシリンダ35は夫々一対の連結部33と連結する。一対のエアシリンダ35が駆動して一対の連結部33を上下動すると、押え枠34は挟持位置と離隔位置の間を上下動する。挟持位置は挟み枠36で支持した被縫製物19を上方から押える位置である。離隔位置は被縫製物19から上方に離れる位置である。縫製装置1は縫針15に対し、被縫製物19を保持した布保持体22をX軸方向とY軸方向に移動することで360度方向に縫製できる。
【0024】
図2の如く、縫製装置1は針板11の下面側に切断機構60と上糸保持機構80を備える。切断機構60は、モータ59の動力で駆動し、縫製動作終了時に上糸と下糸の切断動作を行う。上糸保持機構80は、モータ59の動力で駆動し、針板11の下側で縫針15に通された上糸の上糸端部U(図12参照)を解除可能に保持する。上糸保持機構80は縫製開始時の一針目で被縫製物19の下方に通過した上糸を屈曲して保持する。故に上糸保持機構80は縫針15からの糸抜けを防止する。縫製装置1はベッド部2の背面側にモータ59を固定する。モータ59はパルスモータであり、切断機構60と上糸保持機構80の駆動源である。
【0025】
図2図5の如く、切断機構60は、固定刃61、可動刃62、付勢部材65、支軸69、及び移動部67を備える。図の如く、固定刃61は、縫製装置1の縫針15を挿通する針穴12が形成された針板11の下側に固定される。固定刃61は平面視略L字状で且つ針板11の下面に二つの螺子611で固定する。固定刃61は刃部612を備える。刃部612は、固定刃61の右後部に設けられ、針穴12の左方から針穴12の前方に向かって延びる。
【0026】
可動刃62は、固定刃61に対して水平に回動可能に設けられる。可動刃62は、糸捌き部621、刃部622、糸係合部623、糸案内部624、糸捕捉部625、糸挟持部66、及び糸解放部68等を有する。糸捌き部621は後方に向かって尖った先端部を有し、上糸が形成する上糸環内に進入する部分である。刃部622は可動刃62を上下方向に貫通する、底面視円状の貫通穴の端部である。糸係合部623は上糸環のうち縫針15から延びる側を引掛ける部分である。糸案内部624は支軸69に対し、リンク76のピン763とは反対側において、糸捌き部621と糸捕捉部625の間で湾曲する部分である。糸案内部624は上糸環のうち被縫製物19から延びる側を糸捕捉部625に案内する。糸捕捉部625は上糸環を捕捉する部分である。
【0027】
糸挟持部66は、可動刃62の下面の内の、可動刃62により切断後の下糸の下糸端部D(図13(A)参照)を付勢部材65との間で挟持できる部分である。糸解放部68は、可動刃62の下面の内の、下糸端部Dを付勢部材65との間で挟持不能な部分である。糸解放部68は、糸捌き部621と糸捕捉部625とによって挟まれる部分の可動刃62の下面の内、糸捕捉部625と接する部分、且つ、糸挟持部66に隣接して設けられた上方に向かって凹んだ凹部である。つまり、糸挟持部66は糸解放部68よりも下方に位置する。
【0028】
可動刃62は、挿通部626、627が形成される。挿通部626は、可動刃62の長手方向の内、糸捌き部621が設けられた側とは反対側の端部(図3の位置では可動刃62の後端部)に設けられた上下方向に貫通する孔である。挿通部626は、後述のリンク76のピン763を挿通する。挿通部627は、可動刃62の長手方向の中心部に設けられた上下方向に貫通する孔である。支軸69は、挿通部627に挿通され、針板11下面に固定し、可動刃62を針板11に平行な水平方向に往復回動可能に支持する。可動刃62の回動中心である支軸69は、針板11と平行な面のモータ59から針穴12へと向かう方向において、本実施形態では前後方向において、針穴12に対し、モータ59側とは反対側に設けられる。支軸69は螺子611の右方に位置する。
【0029】
図4の如く、付勢部材65は、二つの螺子651により針穴12よりも前方において、針板11の下側に固定される。付勢部材65は、屈曲した板バネである。付勢部材65は、固定部652、押圧部653、及び案内部654、655を備える。固定部652は、針穴12の前方から右後方に延びる針板11と平行な板状であり、二つの螺子651により針板11に固定される。押圧部653は、固定部652の左後端部から下方に折り曲げられた後、後方に折り曲げられた、底面視U字状の部分である。押圧部653は、後下側に向かって緩やかに傾斜する。図13(A)の如く、案内部654は、押圧部653の後部において、後方ほど下方になるように傾斜した部分である。案内部655は、案内部654の左端から上方に屈曲した部分である。案内部654、655は、可動刃62が付勢部材65と針板11との間に配置されるように移動するのを案内する。付勢部材65は可動刃62の糸挟持部66を上方に付勢できる。
【0030】
図2の如く、移動部67は、モータ59を有し、モータ59の動力で可動刃62を水平方向に回動する。移動部67は、モータ59、カム板70、及びリンク機構72を備える。モータ59は、パルスモータであり、出力軸98を下向きにした姿勢でベッド部2の背面下部(図1参照)に固定する。カム板70は、モータ59の出力軸98の回転力を、リンク機構72を駆動する動力に変換する。リンク機構72はカム板70の回転方向と角度に応じて切断機構60の可動刃62を駆動し、上糸と下糸を切断する。リンク機構72はカム板70の回転方向と角度に応じて、上糸保持機構80の第二保持部材82を駆動し縫製開始時の所定時期の上糸端部Uを保持する。
【0031】
図6の如く、カム板70はモータ59の下方に配置し、モータ59の出力軸98の先端部に固定する。カム板70は底面視略半円形状に形成し、中央に軸穴701が形成される。モータ59の出力軸98の先端部は軸穴701に挿入固定する。カム板70は出力軸98と一体して回転する。カム板70は軸穴701を中心とする約180度の範囲に溝カム71を備える。溝カム71は平面視半円弧状で且つカム板70の下面を厚み方向に凹ませた溝状である。
【0032】
図2及び図6の如く、リンク機構72は、リンク73~76、コロ部材77を備える。リンク73~76は各々、モータ59側から切断機構60側に向かって順に並ぶ。リンク73は平面視略L字板状であり、カム板70の下方に配置する。リンク73は一端部731上側にコロ部材77を回転可能に固定する。コロ部材77は、上下方向に延びる回転軸を備える。コロ部材77はカム板70の溝カム71と係合する。リンク73は一端部731と他端部732の間の略直角に屈曲する中央部733に軸穴734を設ける。支軸735は軸穴734に挿入するので、リンク73は支軸735を中心に回動できる。コロ部材77はカム板70の溝カム71と係合する。リンク73の他端部732はピン736を介してリンク74の一端部741と回動可能に連結する。
【0033】
リンク74は、前後方向に延びる棒状である。リンク74の他端部742は螺子743でリンク75の一端部751と固定する。リンク75は、正面視右方が開放するC状の板部材である。リンク75の他端部752は一端部751の上方に位置し、螺子743でリンク76の一端部761と固定する。リンク75のうち上下方向に延びる中心部753は、上下方向に延びる支軸754を挿通する。リンク75は支軸754を中心に回動できる。リンク76は、前後方向に延びる。図3及び図4の如く、リンク76の他端部762は、右方に略円弧状に膨出する。リンク76の他端部762は、上方に突出するピン763、764を有する。ピン763は、リンク76の前端部に設け、可動刃62の挿通部626に挿通される。可動刃62はリンク76のピン763によりリンク76と連結する。ピン764は、ピン763よりも後方に設け、後述の上糸保持機構80の第二保持部材82の挿通部861に挿通される。第二保持部材82はリンク76のピン764により、リンク76と連結する。リンク76は、第二保持部材82及び可動刃62の下方に位置する。
【0034】
移動部67は、モータ59の動力で、リンク76を前後方向に移動させることで可動刃62を支軸69を中心に、針板11に平行な水平方向に回動可能できる。移動部67は、モータ59の駆動に応じて、可動刃62を図5に示す刃待機位置P1、解放位置P2、切断位置P3、可動端位置P4に移動できる。図5では、固定刃61、可動刃62、及びリンク76以外の部材の図示を省略し、可動刃62の位置を、刃部622の位置で示している。
【0035】
刃待機位置P1は、可動刃62が固定刃61から離れた位置にあり、且つ、可動刃62の糸挟持部66が針板11と付勢部材65との間で、付勢部材65に対向して配置され、糸挟持部66が下糸端部Dを付勢部材65と共に挟持可能な位置である。解放位置P2は、可動刃62の糸解放部68が針板11と付勢部材65との間で、付勢部材65に対向して配置される位置である。切断位置P3は、可動刃62が固定刃61と交差して上糸と下糸を切断する位置である。可動端位置P4は、切断位置P3に対して刃待機位置P1とは反対側の位置である。つまり、可動端位置P4は、切断位置P3に対して支軸69中心に底面視反時計回りの方向にあり、刃待機位置P1は、切断位置P3に対して支軸69中心に底面視時計回りの方向にある。可動刃62の移動軌道J1上において、切断位置P3は、刃待機位置P1と可動端位置P4との間にあり、解放位置P2は、刃待機位置P1と、切断位置P3との間にある。縫製装置1が可動刃62を各位置に移動させる主処理については後述する。
【0036】
図2図4及び図7の如く、上糸保持機構80は、第一保持部材81、第二保持部材82、及び移動部67を備える。本実施形態の上糸保持機構80は更に、固定メス97を備える。移動部67は、前述の上糸保持機構80と共通である。第一保持部材81は、縫製装置1の縫針15を挿通する針穴12が形成された針板11の下方に設けられる。第一保持部材81は、針板11と平行な水平方向に延びる、左右方向に長い板状の部材である。第一保持部材81は、可動刃62の糸案内部624よりも下方において水平方向に延びる。第一保持部材81は、針穴12に対し左方に配置され、前後一対の螺子811によって針板11の下側に固定される。第一保持部材81の右端部は、右側ほど後方に傾斜する。図13(A)の如く、第二保持部材82の第一保持部86は、可動刃62と同一水平面上に配置されている。ここで 同一水平面とは、第一保持部86と可動刃62との両者を通過する任意の仮想的な水平面を意味し、第一保持部86の上下方向の延設範囲と、可動刃62との上下方向の延設範囲とは、少なくとも一部が重なる。
【0037】
図2図4及び図7の如く、第二保持部材82は、第一保持部材81と協働して上糸の上糸端部Uを保持する。第二保持部材82は、第一保持部86、第二保持部87、及び支持部84を備える。第一保持部86は、針板11よりも下方、且つ、第一保持部材81よりも上方に設けられる。第一保持部86には、前後方向に長い板状であり、第二保持部材82が図7の待機位置Q1に位置する時に縫針15の通過を許容する挿通部88が形成されている。第一保持部86は、挿通部861、863、一対の螺子孔862が形成される。挿通部861は、第一保持部86の端部に設けられた上下方向に貫通する孔である。挿通部861には、リンク76のピン764が挿通される。挿通部863は、挿通部861の前方に設けられた上下方向に貫通する孔である。第二保持部材82は、第一保持部86の挿通部863に挿通された支持部84により、針板11に平行な水平方向に回動可能に支持される。支持部84は針板11に垂直に設けられたピン部材である。第二保持部材82は、第一保持部86に挿通された支持部84により、針板11に平行な水平方向に回動可能に支持される。支持部84は、針穴12の後方、つまり、針板11と平行な面のモータ59から針穴12へと向かう方向において、本実施形態では前後方向において、針穴12に対し、モータ59側に設けられる。支軸69の中心と、ピン764の中心との間の距離は、支持部84の中心と、ピン764の中心との間の距離E2よりも短い。故に、リンク76の移動量に対する可動刃62の回動量は、リンク76の移動量に対する第二保持部材82の回動量よりも大きい。
【0038】
第二保持部87は、前後方向に長い板状であり、第一保持部材81よりも下方に設けられる。第二保持部87の前後方向の長さは、第一保持部86の前後方向の長さよりも短い。第二保持部87には、第二保持部材82が待機位置Q1に位置する時に縫針15の通過を許容する挿通部89が形成されている。第二保持部87は、左右方向に貫通する二つ孔872が形成される。第二保持部87は、第一保持部86に重ね合わされた状態で、孔872に挿通された螺子871により、第一保持部86の下面に固定される。この時、第二保持部87は、支持部84よりも前方に位置する。本実施形態の挿通部88、89は、左方に開放する切欠きであり、挿通部88、89の平面視の輪郭は互いに重なる。挿通部88、89は、第二保持部材82の内、支持部84に対し挿通部861側とは反対側に形成されている。第二保持部87は、第一保持部86に対して移動不能であり、第一保持部86と共に水平方向に移動する。図12(A)の如く、第一保持部86及び第二保持部87の厚みは、第一保持部材81の厚みよりも大きい。第一保持部86の厚みは、第二保持部87の厚みよりも大きい。
【0039】
図3の如く、固定メス97は、縫針15を挿通する針穴12が形成された針板11の下側に固定される。固定メス97は刃部96を備える。刃部96は、固定刃61の右部に設けられ、針穴12の左方に配置される。図12(A)の如く、刃部96の右端は右下方に向けて傾斜する。固定メス97は上下方向に貫通する前後一対の孔971を備える。固定メス97は、第一保持部材81よりも上方に位置する。固定メス97は一対の孔971に挿通された螺子811によって、第一保持部材81と共に針板11の下側に固定される。
【0040】
移動部67は、リンク76のピン764を第二保持部材82の挿通部861に挿通することで、第二保持部材82と連結する。移動部67は、モータ59の動力で、リンク76を前後動させることで、第二保持部材82を支持部84を中心に、針板11に平行な水平方向に回動可能できる。即ち、移動部67は可動刃62と、第二保持部材82との各々を移動できる。具体的には移動部67は、図7に示す、待機位置Q1と、保持位置Q2と、上糸切断位置Q3と、切断時位置Q4と、可動端時位置Q5とに第二保持部材82を移動する。図7では、第一保持部86、第二保持部87、支持部84、固定メス97、及びリンク76以外の部材の図示を省略し、第二保持部材82の位置を、挿通部89の円弧状の右端部分に内接する仮想円の位置で示している。
【0041】
待機位置Q1は、水平方向において、第一保持部材81と第二保持部材82との間に、針穴12が配置された位置である。保持位置Q2は、水平方向において第二保持部材82が針穴12から離隔し、且つ、第二保持部材82が第一保持部材81と上下方向に重なる位置である。上糸切断位置Q3は、第一保持部材81と第二保持部材82とで保持する上糸端部Uを固定メス97で切断する位置である。第二保持部材82の移動軌道J2上において、保持位置Q2は、待機位置Q1と、上糸切断位置Q3との間に位置する。切断時位置Q4と、可動端時位置Q5とは各々、可動刃62の切断位置P3と、可動端位置P4とに対応する位置である。縫製装置1が第二保持部材82を各位置に移動させる主処理については後述する。
【0042】
図8を参照し縫製装置1の電気的構成を説明する。縫製装置1の制御部10はCPU41、ROM42、RAM43、記憶装置45、I/Oインターフェース(以下I/Oと呼ぶ)46、駆動回路51~56等を備える。CPU41は縫製装置1の動作を制御する。CPU41はROM42、RAM43、記憶装置45、I/O46と接続する。ROM42は後述の主処理(図9参照)等、各種処理を実行する為のプログラム等を記憶する。RAM43は各種情報を一時的に記憶する。記憶装置45は不揮発性であり、縫製情報等を記憶する。縫製情報とは、針落ち点を含む情報である。
【0043】
I/O46は駆動回路51~56、入力部16に接続する。駆動回路51は主モータ17に接続する。駆動回路52はXモータ21に接続する。駆動回路53はYモータ25に接続する。駆動回路57はモータ59に接続する。Xモータ21、Yモータ25、モータ59はパルスモータである。駆動回路54は一対のエアシリンダ35と接続する。駆動回路55は表示部13に接続する。CPU41は駆動回路51~54を制御することで主モータ17、Xモータ21、Yモータ25、一対のエアシリンダ35を駆動制御する。CPU41は駆動回路56を制御することで表示部13を制御する。入力部16は作業者が入力した情報を検出し、検出結果をI/O46を介してCPU41に出力する。
【0044】
エンコーダ91~93は夫々、主モータ17、Xモータ21、Yモータ25と接続する。エンコーダ91は主モータ17の出力軸の回転位置を検出する。エンコーダ92はXモータ21の出力軸の回転位置を検出する。エンコーダ93はYモータ25の出力軸の回転位置を検出する。エンコーダ91~93は検出結果をI/O46を介してCPU41に出力する。
【0045】
図9図15を参照して、上糸切断時機が互いに異なる具体例1、2の縫製装置1で実行される主処理を説明する。主処理では、縫製パターンに従って被縫製物19に縫目を形成する処理が実行される。縫製装置1の電源がONになった場合、CPU41は主処理を起動する。CPU41は縫製装置1の電源がONになると、ROM42のプログラム記憶エリアに記憶された主処理を実行する為のプログラムを、RAM43に読み出す。CPU41は、RAM43に読み出したプログラムに含まれる指示に従って、以下のステップを実行する。以下ではステップをSと略記する。主処理を実行するのに必要な各種パラメータは、記憶装置45に記憶されている。主処理の過程で得られた各種データは、適宜RAM43に記憶される。上糸切断時機は主処理実行迄に設定されればよく、作業者により設定されてもよいし、被縫製物19の種類、厚み等の縫製条件に応じて自動で設定されてもよい。
【0046】
図9の如く、CPU41は原点検出指示を検出したかを判断する(S1)。作業者は、入力部16を操作して原点検出指示を入力する。原点検出指示を未検出時(S1:NO)、CPU41は処理をS1に戻す。原点検出指示を検出時(S1:YES)、CPU41は原点検出を実行後(S2)、押え足9を上昇する(S3)。
【0047】
作業者は縫製する被縫製物19を布保持体22の間に設置し、入力部16を操作して、押え足9の下降指示を入力する。CPU41は押え足9の下降指示を検出したか判断する(S4)。下降指示を未検出時(S4:NO)、CPU41は処理をS4に戻す。下降指示を検出時(S4:YES)、CPU41は押え足9を下降する(S5)。図10(A)の如く、移動部67のリンク73の一端部731に設けたコロ部材77は、溝カム71の左端部に位置する。図11(A)の如く、切断機構60の可動刃62は刃待機位置P1に位置し、上糸保持機構80の第二保持部材82は待機位置Q1に位置する。つまり、第二保持部材82が待機位置Q1に在る時、可動刃62は刃待機位置P1に在る。底面視において、第一保持部材81と、第二保持部材82とは一部が上下方向に重なる。底面視において、針穴12は、第一保持部材81と、第二保持部材82とによって囲まれる。可動刃62の刃部622は、案内部654と押圧部653との境界付近に位置する。図12(A)の如く、上糸保持機構80の第二保持部材82は上糸端部Uから離隔する。第一保持部材81と第二保持部材82とで、針穴12の下方に位置する上糸端部Uは囲まれている。図13(A)の如く、切断機構60の可動刃62の糸挟持部66は、付勢部材65と共に下糸端部Dを上下方向に挟持する。付勢部材65の押圧部653の上端部は、可動刃62の糸挟持部66と当接する。
【0048】
CPU41は縫製指示を検出したかを判断する(S6)。作業者は入力部16を操作して縫製指示を入力する。縫製指示を未検出時(S6:NO)、CPU41は処理をS6に戻す。縫製指示を検出時(S6:YES)、CPU41は主モータ17を駆動して縫製パターンの縫製を開始する(S7)。CPU41は、エンコーダ91の検出結果に基づき、上糸保持時機かを判断する(S8)。本実施形態の縫製装置1の上糸保持時機は、一針目を縫製後、且つ、二針目を縫製前に設定される。上糸保持時機ではない時(S8:NO)、CPU41は処理をS8に戻す。上糸保持時機である時(S8:YES)、CPU41は、第二保持部材82を待機位置Q1から保持位置Q2に移動する上糸保持制御処理を実行する(S9)。
【0049】
CPU41は、モータ59を駆動させ、モータ59の出力軸98を原点から図10(B)の位置迄、底面視時計回りに回転させる。図10(B)の如く、コロ部材77は、溝カム71の左端部から相対的に底面視反時計回りに回転した位置に移動する。リンク73は、支軸735を中心に底面視反時計回りに回転し、リンク74~76を移動させる。図11(B)の如く、切断機構60の可動刃62は刃待機位置P1の後方に移動し、上糸保持機構80の第二保持部材82は待機位置Q1から保持位置Q2に移動する。水平方向において第二保持部材82が針穴12から離隔し、且つ、第二保持部材82が第一保持部材81と上下方向に重なる。図12(B)の如く、上糸保持機構80は上糸端部Uを第一保持部材81と第二保持部材82との間で側面視S字状に屈曲させた状態で保持する。図13(B)の如く、切断機構60の可動刃62の糸挟持部66は、付勢部材65と共に下糸端部Dを上下方向に挟持した状態を維持する。
【0050】
CPU41は、エンコーダ91の検出結果に基づき、上糸切断時機かを判断する(S10)。本実施形態の縫製装置1の上糸切断時機は、S9後に設定されればよい。具体例1では、上糸保持制御処理後、且つ、二針目の針落ち前に、上糸切断時機が設定される。具体例2では、上糸保持制御処理後、且つ、二針目の針落ち後の所定時機に、上糸切断時機が設定される。具体例2の所定時期は、適宜設定されればよく、本例では三針目の針落ち後、且つ、四針目の針落ち前である。上糸切断時機ではない時(S10:NO)、CPU41は処理をS10に戻す。上糸保持時機である時(S10:YES)、CPU41は、モータ59を制御して、S9後に第二保持部材82を保持位置Q2から上糸切断位置Q3に移動する上糸切断処理を実行する(S12)。CPU41は、モータ59を制御して、可動刃62を刃待機位置P1から解放位置P2に移動させて、前回の主処理のS17の処理で挟持した下糸端部Dを解放する解放処理を実行する(S12)。
【0051】
CPU41は、モータ59を駆動させ、モータ59の出力軸98を図10(B)の位置から図10(C)の位置迄、底面視時計回りに回転させる。図10(C)の如く、コロ部材77は、図10(B)の位置から相対的に底面視反時計回りに回転した位置に移動する。リンク73は、支軸735を中心に底面視反時計回りに回転し、リンク74~76を移動させる。図11(C)の如く、切断機構60の可動刃62は解放位置P2に移動し、上糸保持機構80の第二保持部材82は保持位置Q2から上糸切断位置Q3に移動する。水平方向において第二保持部材82が針穴12から離隔し、且つ、第二保持部材82が第一保持部材81と上下方向に重なった状態が維持される。第二保持部材82が固定メス97の刃部96と上下に重なる。切断機構60の可動刃62が刃待機位置P1から解放位置P2迄の範囲の位置に在る時、可動刃62の糸捌き部621は針穴12よりも前方に位置する。
【0052】
図12(C)の如く、上糸保持機構80は上糸端部Uを第一保持部材81と第二保持部材82との間で側面視S字状に屈曲させた状態を維持しつつ、第二保持部材82の第一保持部86が固定メス97と上下方向に重なる。これにより、上糸端部Uは、固定メス97により切断される。第二保持部材82が保持位置Q2から上糸切断位置Q3に移動した時、第一保持部材81と第二保持部材82とは上糸端部Uの保持を継続している。故に、上糸端部Uは、第一保持部材81と第二保持部材82とにより保持された状態で固定メス97により切断される。固定メス97により切断される上糸を切断する位置は、第一保持部材81と第二保持部材82とが上糸を保持する位置より上糸の上流側、つまり上方の部分である。図13(C)の如く、切断機構60の可動刃62の糸解放部68が付勢部材65の押圧部653と上下方向に離隔して対向する。糸挟持部66は、付勢部材65の押圧部653から退避した状態に移動され、付勢部材65と共に下糸端部Dを上下方向に挟持した状態が解除される。これにより、縫製開始時に上糸保持機構80により保持されていた上糸端部Uが針穴12付近で切断後に解放され、切断機構60により挟持されていた下糸端部Dが解放される。
【0053】
CPU41は、モータ59を駆動させ、切断機構60の可動刃62を刃待機位置P1に移動させ、上糸保持機構80の第二保持部材82を待機位置Q1に移動させる(S13)。CPU41は、モータ59の出力軸98を図10(C)の位置から図10(A)の位置迄、底面視反時計回りに回転させる。
【0054】
CPU41は縫針15の次の針落ち動作が縫製動作の最終針か否か判断する(S14)。CPU41は現在縫製中の縫製パターンの針落ち数を計数してRAM43に記憶する。故にCPU41はROM42に記憶する縫製パターンの縫製情報を参照することで、次の針落ち動作が最終針か否か判断できる。最終針でない時(S14:NO)、CPU41はS14に戻り、縫製動作を継続する。最終針の時(S14:YES)、CPU41は、主モータ17を停止する(S15)。
【0055】
CPU41は、モータ59を制御して、可動刃62を刃待機位置P1から可動端位置P4に移動後、切断位置P3に移動して上糸と下糸とを切断する糸切断処理を実行する(S16)。CPU41は、モータ59を駆動させ、モータ59の出力軸98を図10(A)の位置から図14(A)の位置迄、底面視時計回りに回転させ、可動刃62を刃待機位置P1から可動端位置P4に移動させる。図14(A)の如く、コロ部材77は、溝カム71の右端部(図10(A)の溝カム71の左端部とは反対側の端部)に移動する。リンク73は、支軸735を中心に底面視反時計回りに回転し、リンク74~76を移動させる。図15(A)の如く、切断機構60の可動刃62は可動端位置P4に移動する。可動刃62の刃部622は、支軸69の後方、且つ、針穴12よりも後方に位置する。可動刃62の糸挟持部66及び糸解放部68は何れも、付勢部材65から退避した位置に配置される。可動刃62の一部は、刃待機位置P1から可動端位置P4に移動する過程で、第一保持部材81の上方を通過する。上糸保持機構80の第二保持部材82は可動端時位置Q5に移動する。水平方向において第二保持部材82が針穴12から離隔し、且つ、第二保持部材82は第一保持部材81及び固定メス97の何れとも上下方向に重ならない。切断機構60の可動刃62の糸捌き部621は支軸69の後方、且つ、針穴12よりも後方に位置する。切断機構60の可動刃62の糸捌き部621は、ピン764の前方に位置し、第二保持部材82とは干渉しない。
【0056】
CPU41は、モータ59を駆動させ、モータ59の出力軸98を図14(A)の位置から図14(B)の位置迄、底面視反時計回りに回転させ、可動刃62を可動端位置P4から切断位置P3に移動させる。図14(B)の如く、コロ部材77は、溝カム71の右端部から、相対的に底面視時計回りに移動した位置に移動する。リンク73は、図14(A)の位置から支軸735を中心に底面視時計回りに回転し、リンク74~76を移動させる。図15(B)の如く、切断機構60の可動刃62は切断位置P3に移動する。可動刃62の刃部622は、針穴12と上下に重なる位置にある。可動刃62の糸挟持部66及び糸解放部68の前部が、付勢部材65から退避した位置に配置される。上糸保持機構80の第二保持部材82は切断時位置Q4に移動する。水平方向において第二保持部材82が針穴12から離隔し、且つ、第二保持部材82は第一保持部材81及び固定メス97の何れとも上下方向に重ならない。切断機構60の可動刃62が可動端位置P4から切断位置P3迄の範囲の位置に在る時、可動刃62の糸捌き部621は針穴12よりも後方に位置する。
【0057】
CPU41は、モータ59を制御して、可動刃62を切断位置P3から刃待機位置P1に移動させて、糸切断処理で切断した下糸端部Dを付勢部材65と糸挟持部66とで挟持する挟持処理を実行する(S17)。CPU41は、モータ59を駆動させ、モータ59の出力軸98を図14(B)の位置から図10(A)の位置迄、底面視反時計回りに回転させ、可動刃62を切断位置P3から刃待機位置P1に移動させる。リンク73は、図14(B)の位置から支軸735を中心に底面視時計回りに回転し、リンク74~76を移動させる。可動刃62は、切断位置P3から刃待機位置P1に移動する過程で、S16で切断された下糸端部Dを糸挟持部66上に配置しながら、付勢部材65の案内部654、655に案内されて、糸挟持部66が付勢部材65と針板11との間に配置される。これにより図13(A)の如く、可動刃62が切断位置P3から刃待機位置P1に移動された時、下糸端部Dは、可動刃62の糸挟持部66と、付勢部材65の押圧部653とにより挟持される。下糸端部Dは、次回の主処理のS12が実行される迄、可動刃62の糸挟持部66と、付勢部材65の押圧部653とにより挟持される。CPU41は以上で主処理を終了する。
【0058】
上記実施形態において、縫製装置1、針板11、針穴12、縫針15、及びCPU41は各々、本発明の縫製装置、針板、針穴、縫針、及び制御装置の一例である。切断機構60、モータ59、固定刃61、可動刃62、支軸64、付勢部材65、糸挟持部66、及び糸解放部68は各々、本発明の切断機構、モータ、固定刃、可動刃、回動中心、付勢部材、糸挟持部、及び糸解放部の一例である。移動部67は、刃移動部及び保持移動部の一例である。上糸保持機構80、第一保持部材81、第二保持部材82、支持部84、及び固定メス97は各々、本発明の上糸保持機構、第一保持部材、第二保持部材、支持部、及び固定メスの一例である。刃待機位置P1、解放位置P2、切断位置P3、可動端位置P4、待機位置Q1、保持位置Q2、上糸切断位置Q3、上糸端部U、及び下糸端部Dは各々、本発明の刃待機位置、解放位置、切断位置、可動端位置、待機位置、保持位置、上糸切断位置、上糸端部、及び下糸端部の一例である。S16、S17の処理は糸切断処理の一例である。S17の処理は挟持処理の一例である。S12の処理は解放処理の一例である。
【0059】
上記実施形態の縫製装置1は、切断機構60は、固定刃61、付勢部材65、可動刃62、及び移動部67を備える。固定刃61は、縫製装置1の縫針15を挿通する針穴12が形成された針板11の下側に固定される。付勢部材65は、針板11の下側に固定される。可動刃62は、固定刃61に対して水平に回動可能に設けられる。可動刃62は、糸挟持部66及び糸解放部68を備える。糸挟持部66は、可動刃62により切断後の下糸の下糸端部Dを付勢部材65との間で挟持可能である。可動刃62は、下糸端部Dを付勢部材65との間で挟持不能な糸解放部68とを有する。移動部67は、モータ59を有し、モータ59の動力で可動刃62を水平方向に回動する。移動部67は、刃待機位置P1、解放位置P2、切断位置P3、可動端位置P4の間で可動刃62を移動する、刃待機位置P1は、可動刃62が固定刃61から水平方向で離れた位置にあり、且つ、可動刃62の糸挟持部66が針板11と付勢部材65との間で、付勢部材65に対向して配置され、糸挟持部66が下糸端部Dを付勢部材65と共に挟持可能な位置である。解放位置P2は、可動刃62の糸解放部68が針板11と付勢部材65との間で、付勢部材65に対向して配置される位置である。切断位置P3は、可動刃62が固定刃61と交差して上糸と下糸を切断する位置である。可動端位置P4は、切断位置P3に対して刃待機位置P1とは反対側の位置である。切断機構60は、可動刃62が刃待機位置P1に在る時に、下糸端部Dを付勢部材65と糸挟持部66とで挟持できる。切断機構60は、可動刃62が解放位置P2に在る時に、下糸端部Dを付勢部材65と糸挟持部66とで挟持したのを解放できる。切断機構60は、上糸及び下糸を切断するモータ59の動力を利用して、下糸端部Dの挟持と解放とを行うことができる。
【0060】
可動刃62の回動中心である支軸64は、針穴12に対し、モータ59側とは反対側、即ち、針穴12に対し前方に設けられる。切断機構60は、可動刃62の回動中心である支軸64が、針穴12に対し、モータ59側にある場合に比べ、針穴12に対し、モータ59側の設計の自由度を高めることができる。
【0061】
付勢部材65は、板バネである。切断機構60は、付勢部材65と可動刃62の糸挟持部66とが当接する位置及び範囲を調節しやすく、付勢部材65の構成を比較的簡単にできる。
【0062】
糸解放部68は、可動刃62の下面の内、糸挟持部66に隣接して設けられた上方に向かって凹んだ凹部である。切断機構60は、糸解放部68の構成を比較的簡単にできる。切断機構60は、下糸端部Dの挟持を解放する位置を糸解放部68の延設範囲を調整することで簡単に調整できる。
【0063】
縫製装置1は、針板11及び切断機構60を備える。針板11は、縫針15を挿通する針穴12が形成される。縫製装置1は、切断機構60の可動刃62が刃待機位置P1に在る時に、下糸端部Dを付勢部材65と糸挟持部66とで挟持できる。縫製装置1は、可動刃62が解放位置P2に在る時に、下糸端部Dを付勢部材65と糸挟持部66とで挟持したのを解放できる。縫製装置1は、上糸及び下糸を切断するモータ59の動力を利用して、下糸端部Dの挟持と解放とを行うことができる。
【0064】
上糸保持機構80は、モータ59の動力で駆動し、針板11の下側で縫針15に通された上糸の上糸端部Uを解除可能に保持する。縫製装置1は、一つのモータ59で、切断機構60と、上糸保持機構80とを行うことができる。縫製装置1は切断機構60で、下糸端部Dを保持し、上糸保持機構80で上糸端部Uを保持することで、縫目に上糸端部U又は下糸端部Dが巻き込まれることに起因する不具合が生じることを抑制できる。
【0065】
上糸保持機構80は、第一保持部材81、第二保持部材82、及び移動部67を備える。第一保持部材81は、針板11の下面に設けられる。第二保持部材82は、針板11に鉛直の支持部84により回動可能に支持され、第一保持部材81と協働して上糸端部Uを保持する。移動部67は、モータ59の動力で第二保持部材82を水平方向に移動する。移動部67は、待機位置Q1と、保持位置Q2とに第二保持部材82を移動する。待機位置Q1は、水平方向において、第一保持部材81と第二保持部材82との間に、針穴12が配置された位置である。保持位置Q2は、水平方向において第二保持部材82が針穴12から離隔し、且つ、第二保持部材82が第一保持部材81と上下方向に重なる。縫製装置1は、上糸保持機構80の動力を切断機構60と共通化しているので、上糸保持機構80の動力と、切断機構60の動力とが別に設けられる縫製装置1に比べ、構成を簡単にできる。
【0066】
支持部84は、針板11と平行な面のモータ59から針穴12へと向かう方向において、針穴12に対し、モータ59側に設けられる。縫製装置1は、切断機構60の可動刃62の支軸64が、針穴12に対し、モータ59側とは反対側にある場合には、上糸保持機構80が、切断機構60と干渉する可能性を低減し、針穴12に対し、モータ59側とは反対側の設計の自由度を高めることができる。
【0067】
第二保持部材82が待機位置Q1に在る時、可動刃62は刃待機位置P1に在る。第二保持部材82が保持位置Q2に在る時、可動刃62と付勢部材65は下糸端部Dを挟持する。縫製装置1は、上糸保持機構80と、切断機構60との動作を同期できる。縫製装置1は、上糸保持機構80が待機位置Q1に在る時と、保持位置Q2に在る時との各々で、切断機構60により下糸端部Dを挟持できる。
【0068】
縫製装置1は、固定メス97を備える。固定メス97は、針板11の下側に固定される。移動部67は、待機位置Q1と、保持位置Q2とに加え、第一保持部材81と第二保持部材82とで保持する上糸端部Uを固定メス97で切断する上糸切断位置Q3に第二保持部材82を移動可能である。第二保持部材82が上糸切断位置Q3に在る時、可動刃62は解放位置P2にある。縫製装置1は、上糸保持機構80と、切断機構60との動作を同期できる。縫製装置1は、上糸保持機構80が上糸切断位置Q3に在る時に、切断機構60により下糸端部Dの挟持を解放できる。
【0069】
CPU41は、モータ59を制御して、可動刃62を刃待機位置P1から可動端位置P4に移動後、切断位置P3に移動して上糸と下糸とを切断する糸切断処理(S16、S17)を実行する。CPU41は、モータ59を制御して、可動刃62を切断位置P3から刃待機位置P1に移動させて、糸切断処理で切断した下糸端部Dを付勢部材65と糸挟持部66とで挟持する挟持処理(S17)を実行する。CPU41は、モータ59を制御して、可動刃62を刃待機位置P1から解放位置P2に移動させて、挟持処理で挟持した下糸端部Dを解放する解放処理(S12)を実行する。縫製装置1は、糸切断処理と、挟持処理と、解放処理とを自動で実行できる。
【0070】
本発明の切断機構及び縫製装置は上記実施形態の他に種々変更できる。縫製装置1及び切断機構60の構成は適宜変更されてよく、例えば、縫製装置1は布送り装置5、上糸保持機構80、固定メス97、表示部13の少なくとも何れかを備えなくてもよい。付勢部材65は、コイルバネ等の板バネ以外の構成でもよい。支軸69は、針板11と平行な面のモータ59から針穴12へと向かう方向において、針穴12に対しモータ59側、即ち後方に固定されてもよい。
【0071】
上糸保持機構80の構成は適宜変更されてよい。第一保持部材81、第二保持部材82の構成、形状、大きさ、配置等は適宜変更されてよい。第一保持部86と、第二保持部87は一体の部材であってもよいし、第二保持部材82は第二保持部87を備えず、第一保持部材81と第二保持部材82とで、上糸端部Uを上下に挟持してもよい。挿通部88、89は省略されてもよいし、挿通部88、89の平面形状は、例えば、上下方向に貫通する任意の形状の孔であってもよい。挿通部88、89は互いに同じ形状であってもよいし、互いに異なる形状であってもよい。第一保持部材81は、縫針15の通過を許容する、切欠き及び貫通孔等の挿通部が形成されてもよい。第一保持部86は、可動刃62と同一水平面上に設けられなくてもよい。第二保持部材82の位置は、待機位置Q1、保持位置Q2は適宜変更されてよい。第二保持部材82が待機位置Q1にある時、水平方向において、第二保持部材82は針穴12及び第一保持部材81と離隔してもよい。上糸保持機構80は、切断機構60のモータ59とは別のモータの動力で動作してもよいし、モータ59の動力により、リンク機構72とは別の動力伝達部材を介して第二保持部材82を動かしてもよい。切断機構60の可動刃62の位置と、上糸保持機構80の第二保持部材82の位置との対応関係は、適宜変更されてよい。支持部84は、第二保持部材82を回動可能に支持できればよく、筒状の部材であってもよい。支持部84は針穴12に対しモータ59側とは反対側、即ち前方に固定されてもよい。
【0072】
縫製装置1が主処理を行う為の指令を含むプログラムはCPU41がプログラムを行う迄に、記憶装置45に記憶されればよい。従って、プログラムの取得方法、取得経路、プログラムを記憶する機器の夫々は適宜変更してもよい。CPU41が行うプログラムはケーブル又は無線通信を介して、他の装置から受信し、不揮発性の記憶装置に記憶してもよい。他の装置は例えば、PC、ネットワーク網を介して接続されるサーバを含む。
【0073】
縫製装置1が行う処理の一部又は全部はCPU41とは別の電子機器(例えば、ASIC)が行ってもよい。縫製装置1が行う処理は複数の電子機器(例えば、複数のCPU)が分散処理してもよい。縫製装置1が行う処理の各ステップは必要に応じて順序の変更、ステップの省略、追加ができる。本発明の範囲は縫製装置1上で稼動しているオペレーティングシステム(OS)等が、CPU41の指令で各処理の一部又は全部を行う態様も含む。
【0074】
縫製装置1が固定メス97を備えない場合、S10では、CPU41は上糸端部Uを解放する解放時機かを判断し、解放時機である場合に、上糸保持機構80による上糸端部Uの保持を解放してもよい。この場合CPU41は、上糸端部Uの保持を解放する処理として、第二保持部材82を待機位置Q1に移動させてもよい。上糸保持機構80が下糸端部Dを解放する時機と、上糸端部Uを解放又は切断する時機とは互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。縫製装置1が上糸保持機構80を備えない場合、縫製装置1は、S8、S9の処理を省略してよい。S17の挟持処理は、S17で上糸と下糸とを切断する処理とは別途実行されてもよい。CPU41は、S16、S17の処理で第二保持部材82を回動させなくてもよい。
【0075】
固定メス97を第一保持部材81よりも下方に位置するようにし、第二保持部材82が保持位置Q2から上糸切断位置Q3に移動した時、第二保持部材82の第二保持部87と固定メス97とが上下方向に重なることで上糸を切断してもよい。この場合、固定メス97により切断される上糸を切断する位置は、第一保持部材81と第二保持部材82とが上糸を保持する位置より上糸の下流側、つまり下方の部分である。また、上糸を切断しても、切断部より上流で第一保持部材81と第二保持部材82とにより保持されるので、三針目の針落ち前に上糸切断処理が実行されても、上糸が針穴12から抜ける虞がない。
【0076】
上記の変形例は矛盾がない範囲で適宜組み合わされてもよい。本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、縫製装置の制御方法、上記方法を実現する為のコンピュータプログラム、及びそのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 :縫製装置
11 :針板
12 :針穴
15 :縫針
41 :CPU
59 :モータ
60 :切断機構
61 :固定刃
62 :可動刃
64 :支軸
65 :付勢部材
66 :糸挟持部
67 :移動部
68 :糸解放部
80 :上糸保持機構
81 :第一保持部材
82 :第二保持部材
84 :支持部
97 :固定メス
D :下糸端部
P1 :刃待機位置
P2 :解放位置
P3 :切断位置
P4 :可動端位置
Q1 :待機位置
Q2 :保持位置
Q3 :上糸切断位置
U :上糸端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15