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特開2023-151082検出装置、検出方法及び制御プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151082
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】検出装置、検出方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/27 20060101AFI20231005BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G01N21/27 A
A01G7/00 603
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060513
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000135771
【氏名又は名称】株式会社パスコ
(71)【出願人】
【識別番号】505398941
【氏名又は名称】東日本高速道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 智之
(72)【発明者】
【氏名】柴山 卓史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄吾
(72)【発明者】
【氏名】西村 徹
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB08
2G059BB12
2G059EE02
2G059EE11
2G059FF01
2G059HH01
2G059HH02
2G059KK04
2G059MM01
2G059MM02
2G059MM03
2G059MM05
(57)【要約】
【課題】枯損木が存在する枯損木領域を高精度に検出することができる検出装置、検出方法及び制御プログラムを提供する。
【解決手段】検出装置は、対象領域を上空から撮影した光学画像を取得する画像取得部と、光学画像に含まれる複数の画素ごとに植生指標を算出する指標算出部と、光学画像内に複数の区分領域を設定する設定部と、複数の区分領域ごとに、各区分領域に含まれる各画素の植生指標のばらつき度合いを算出するばらつき度合い算出部と、ばらつき度合いに基づいて、複数の区分領域の中から、枯損木が存在する枯損木領域を検出する検出部と、枯損木領域に関する情報を出力する出力部と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象領域を上空から撮影した光学画像を取得する画像取得部と、
前記光学画像に含まれる複数の画素ごとに植生指標を算出する指標算出部と、
前記光学画像内に複数の区分領域を設定する設定部と、
前記複数の区分領域ごとに、各区分領域に含まれる各画素の前記植生指標のばらつき度合いを算出するばらつき度合い算出部と、
前記ばらつき度合いに基づいて、前記複数の区分領域の中から、枯損木が存在する枯損木領域を検出する検出部と、
前記枯損木領域に関する情報を出力する出力部と、
を有することを特徴とする検出装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記複数の区分領域のうち、各区分領域に含まれる各画素の前記植生指標の平均値が第1閾値より小さく、且つ、各区分領域に含まれる各画素の前記植生指標の標準偏差が第2閾値より大きい区分領域を、前記枯損木領域として検出する、請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記指標算出部は、前記光学画像に含まれる複数の画素ごとにGSI指標を算出し、
前記植生指標と前記GSI指標との差分に基づいて、前記光学画像から植生領域を抽出する抽出部をさらに有し、
前記設定部は、前記植生領域内に前記複数の区分領域を設定する、請求項1又は2に記載の検出装置。
【請求項4】
コンピュータにより、
対象領域を上空から撮影した光学画像を取得し、
前記光学画像に含まれる複数の画素ごとに植生指標を算出し、
前記光学画像内に複数の区分領域を設定し、
前記複数の区分領域ごとに、各区分領域に含まれる各画素の前記植生指標のばらつき度合いを算出し、
前記ばらつき度合いに基づいて、前記複数の区分領域の中から、枯損木が存在する枯損木領域を検出し、
前記枯損木領域に関する情報を出力部から出力する、
ことを特徴とする検出方法。
【請求項5】
出力部を有するコンピュータの制御プログラムであって、
対象領域を上空から撮影した光学画像を取得し、
前記光学画像に含まれる複数の画素ごとに植生指標を算出し、
前記光学画像内に複数の区分領域を設定し、
前記複数の区分領域ごとに、各区分領域に含まれる各画素の前記植生指標のばらつき度合いを算出し、
前記ばらつき度合いに基づいて、前記複数の区分領域の中から、枯損木が存在する枯損木領域を検出し、
前記枯損木領域に関する情報を前記出力部から出力する、
ことを検出装置に実行させることを特徴とする制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置、検出方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、敷地内における植栽樹木の巨木化及び老木化の進行、並びに未管理樹木の増加等により、点検対象となる樹木が増加傾向にあり、点検作業の効率化が求められている。
【0003】
特許文献1には、衛星画像の解析により推定された樹種と、正規化植生指標(Normalized Difference Vegetation Index、NDVI)とを組み合わせて、樹木の健全度を樹種に応じて判定する樹木の健全度判定方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-144607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹木の点検作業において、枯損木が存在する枯損木領域を高精度に検出することが求められている。
【0006】
本発明は、枯損木が存在する枯損木領域を高精度に検出することができる検出装置、検出方法及び制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る検出装置は、対象領域を上空から撮影した光学画像を取得する画像取得部と、光学画像に含まれる複数の画素ごとに植生指標を算出する指標算出部と、光学画像内に複数の区分領域を設定する設定部と、複数の区分領域ごとに、各区分領域に含まれる各画素の植生指標のばらつき度合いを算出するばらつき度合い算出部と、ばらつき度合いに基づいて、複数の区分領域の中から、枯損木が存在する枯損木領域を検出する検出部と、枯損木領域に関する情報を出力する出力部と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の一側面に係る検出装置において、検出部は、複数の区分領域のうち、各区分領域に含まれる各画素の植生指標の平均値が第1閾値より小さく、且つ、各区分領域に含まれる各画素の植生指標の標準偏差が第2閾値より大きい区分領域を、枯損木領域として検出する、ことが好ましい。
【0009】
本発明の一側面に係る検出装置において、指標算出部は、光学画像に含まれる複数の画素ごとにGSI指標を算出し、植生指標とGSI指標との差分に基づいて、光学画像から植生領域を抽出する抽出部をさらに有し、設定部は、植生領域内に複数の区分領域を設定する、ことが好ましい。
【0010】
本発明の一側面に係る検出方法は、コンピュータにより、対象領域を上空から撮影した光学画像を取得し、光学画像に含まれる複数の画素ごとに植生指標を算出し、光学画像内に複数の区分領域を設定し、複数の区分領域ごとに、各区分領域に含まれる各画素の植生指標のばらつき度合いを算出し、ばらつき度合いに基づいて、複数の区分領域の中から、枯損木が存在する枯損木領域を検出し、損木領域に関する情報を出力する、ことを特徴とする。
【0011】
本発明の一側面に係る制御プログラムは、出力部を有するコンピュータの制御プログラムであって、対象領域を上空から撮影した光学画像を取得し、光学画像に含まれる複数の画素ごとに植生指標を算出し、光学画像内に複数の区分領域を設定し、複数の区分領域ごとに、各区分領域に含まれる各画素の植生指標のばらつき度合いを算出し、ばらつき度合いに基づいて、複数の区分領域の中から、枯損木が存在する枯損木領域を検出し、損木領域に関する情報を出力部から出力する、ことを検出装置に実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、検出装置、検出方法及び制御プログラムは、枯損木が存在する枯損木領域を高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】検出装置の概略構成の一例を示す図である。
図2】枯損木領域検出処理の一例を示すフローチャートである。
図3A】RGB画像の一例を示す図である。
図3B】赤バンド画像の一例を示す図である。
図4A】緑バンド画像の一例を示す図である。
図4B】青バンド画像の一例を示す図である。
図5A】近赤外バンド画像の一例を示す図である。
図5B】植生指標画像の一例を示す図である。
図6A】GSI指標画像の一例を示す図である。
図6B】植生領域について説明するための模式図である。
図7A】区分領域について説明するための模式図である。
図7B】ばらつき度合い画像の一例を示す図である。
図8】代表値画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の様々な実施形態について説明する。本発明の技術的範囲はこれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明及びその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0015】
図1は、検出装置1の概略構成の一例を示す図である。検出装置1は、コンピュータの一例であり、枯損木が存在する枯損木領域を検出する。検出装置1は、記憶部11、通信部12、表示部13、操作部14及び処理部15を備える。
【0016】
記憶部11は、プログラム又はデータを記憶する。記憶部11は、例えば、半導体メモリ装置を備える。記憶部11は、処理部15による処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。プログラムは、CD(Compact Disc)-ROM(Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM等のコンピュータ読み取り可能かつ非一時的な可搬型記憶媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶部11にインストールされる。
【0017】
通信部12は、出力部の一例である。通信部12は、検出装置1を他の装置と通信可能にする。通信部12は、通信インタフェース回路を備える。通信部12が備える通信インタフェース回路は、有線LAN(Local Area Network)又は無線LAN等の通信インタフェース回路である。通信部12は、データを他の装置から受信して処理部15に供給すると共に、処理部15から供給されたデータを他の装置に送信する。
【0018】
表示部13は、出力部の一例である。表示部13は、画像を表示する。表示部13は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイを備える。表示部13は、処理部15から供給された表示データに基づいて画像を表示する。
【0019】
操作部14は、検出装置1に対するユーザの入力操作を受け付ける。操作部14は、例えば、キーパッド、キーボード又はマウスを備える。操作部14は、表示部13と一体化されたタッチパネルを備えてもよい。操作部14は、ユーザの入力操作に応じた信号を生成して処理部15に供給する。
【0020】
処理部15は、検出装置1の動作を統括的に制御するデバイスであり、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を備える。処理部15は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を備える。処理部15は、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等を備えてもよい。処理部15は、記憶部11に記憶されているプログラム並びに通信部12及び操作部14からの入力に基づいて検出装置1の各種処理が適切な手順で実行されるように、各構成の動作を制御すると共に、各種の処理を実行する。
【0021】
処理部15は、画像取得部151、指標算出部152、抽出部153、設定部154、ばらつき度合い算出部155、検出部156及び出力制御部157を機能ブロックとして備える。これらの各部は、処理部15によって実行されるプログラムによって実現される機能モジュールである。これらの各部は、ファームウェアとして検出装置1に実装されてもよい。
【0022】
図2は、枯損木領域検出処理の一例を示すフローチャートである。枯損木領域検出処理は、予め記憶部11に記憶されているプログラムに基づき主に処理部15により検出装置1の各要素と協働して実行される。
【0023】
まず、画像取得部151は、通信部12を介して外部の情報処理装置(例えば、光学衛星に搭載された情報処理装置)から、対象領域を上空から撮影した光学画像を取得する(ステップS101)。対象領域は、森林等の樹木が含まれる領域である。検出装置1は、対象領域に含まれる樹木を点検対象とし、対象領域から、枯れた樹木である枯損木が存在する枯損木領域を検出する。
【0024】
光学画像は、Pleiades光学衛星画像等である。光学画像は、光学衛星に搭載されている光学センサが感知した、対象領域内の各位置における太陽光の反射光(電磁波)及び各位置からの放射光(電磁波)の強度を、各位置に対応する各画素の画素値とする画像である。光学画像は、光学衛星に搭載されている光学センサが感知する電磁波の波長のうちの所定幅(バンド)の波長毎に生成された複数の画像を含む。
【0025】
光学画像は、赤バンド画像と、緑バンド画像と、青バンド画像と、近赤外バンド画像とを含む。赤バンド画像は、赤色光の波長を含むバンドにおける光の強度を各画素の画素値とする画像である。緑バンド画像は、緑色光の波長を含むバンドにおける光の強度を各画素の画素値とする画像である。青バンド画像は、青色光の波長を含むバンドにおける光の強度を各画素の画素値とする画像である。近赤外バンド画像は、近赤外光の波長を含むバンドにおける光の強度を各画素の画素値とする画像である。
【0026】
光学画像は、RGB画像をさらに含む。RGB画像は、各画素の画素値を、赤バンド画像の対応する画素の画素値(16bit)と、緑バンド画像の対応する画素の画素値(16bit)と、青バンド画像の対応する画素の画素値(16bit)とからなる48bitの色値とするカラー画像である。ここで画素値のbit数は一例であり、衛星の仕様等に応じて8bitや12bitの画素値を有する画素を用いてもよい。
【0027】
図3Aは、所定の対象領域301を上空から撮像したRGB画像300の一例を示す。
【0028】
図3Aに示すように、RGB画像300に含まれる対象領域301には、樹木が含まれる植生領域302と、樹木が含まれない非植生領域303とが含まれる。また、植生領域302には、枯損木が存在する枯損木領域304と、枯損木が存在しない非枯損木領域305とが含まれる。非植生領域303には、裸地領域のように土壌が地表面に表れている土壌領域306と、コンクリート等が存在し、土壌が地表面に表れていない非土壌領域307とが含まれる。
【0029】
図3Bは、対象領域301を上空から撮像した赤バンド画像310の一例を示す。
【0030】
図3Bに示す例では、放射又は反射する赤色光の強度が大きい位置に対応する画素ほど、高い輝度(白色に近い)で示され、放射又は反射する赤色光の強度が小さい位置に対応する画素ほど、低い輝度(黒色に近い)で示されている。
【0031】
図4Aは、対象領域301を上空から撮像した緑バンド画像400の一例を示す。
【0032】
図4Aに示す例では、放射又は反射する緑色光の強度が大きい位置に対応する画素ほど、高い輝度(白色に近い)で示され、放射又は反射する緑色光の強度が小さい位置に対応する画素ほど、低い輝度(黒色に近い)で示されている。
【0033】
図4Bは、対象領域301を上空から撮像した青バンド画像410の一例を示す。
【0034】
図4Bに示す例では、放射又は反射する青色光の強度が大きい位置に対応する画素ほど、高い輝度(白色に近い)で示され、放射又は反射する青色光の強度が小さい位置に対応する画素ほど、低い輝度(黒色に近い)で示されている。
【0035】
図5Aは、対象領域301を上空から撮像した近赤外バンド画像500の一例を示す。
【0036】
図5Aに示す例では、放射又は反射する近赤外光の強度が大きい位置に対応する画素ほど、高い輝度(白色に近い)で示され、放射又は反射する近赤外光の強度が小さい位置に対応する画素ほど、低い輝度(黒色に近い)で示されている。
【0037】
次に、指標算出部152は、光学画像から、光学画像に含まれる複数の画素ごとに植生指標を算出する(ステップS102)。植生指標は、対象領域における植生の状況を把握するための指標であり、植物の量又は活力を示す。指標算出部152は、広ダイナミックレンジ植生指数(Wide Dynamic Range Vegetation Index、WDRVI)を植生指標として算出する。WDRVIは、植物の量又は活力が大きいほど、高い値を有し、植物の量又は活力が小さいほど、低い値を有する。指標算出部152は、赤バンド画像及び近赤外バンド画像に基づいて、下記式(1)から、各画素の植生指標を算出する。
WDRVI=(αIR-R)/(αIR+R) …(1)
【0038】
ここで、αは補正係数であり、例えば0.1以上且つ0.2以下の範囲内の値に設定される。IRは、近赤外バンド画像内の対応する画素の画素値、即ちその画素に対応する位置における近赤外光の強度である。Rは、赤バンド画像内の対応する画素の画素値、即ちその画素に対応する位置における赤色光の強度である。WDRVIは、-1.0以上であり且つ+1.0以下である範囲内の値を有する。植物については、クロロフィルの働きにより、近赤外光の反射率が高く、赤色光の反射率が低いことが知られている。また、植物については、衰弱することでクロロフィルの働きが鈍化し、近赤外光の反射率が低くなることが知られている。したがって、検出装置1は、上記式(1)により算出されるWDRVIを植生指標として利用することにより、植生領域の検出精度を向上できる。
【0039】
なお、指標算出部152は、WDRVIの代わりに、正規化植生指標(Normalized Difference Vegetation Index、NDVI)を植生指標として算出してもよい。その場合、指標算出部152は、赤バンド画像及び近赤外バンド画像に基づいて、下記式(2)から、各画素の植生指標を算出する。
NDVI=(IR-R)/(IR+R) …(2)
【0040】
なお、WDRVIは、葉面積指数(Leaf Area Index、LAI)が大きい領域で、NDVIの値が飽和する問題を緩和するために改良された植生指数である。LAIは、植物群落の葉量を表す指数であり、葉が多いほどLAIの値は大きい。検出装置1は、WDRVIを植生指標として利用することにより、NDVIを植生指標として利用することと比較して、植生領域の検出精度をより向上できる。
【0041】
指標算出部152は、各画素の画素値を植生指標とする植生指標画像を生成する。
【0042】
図5Bは、WDRVIを植生指標として、赤バンド画像310及び近赤外バンド画像500から生成された植生指標画像510の一例を示す。
【0043】
図5Bに示す例では、植生指標が高い画素ほど、高い輝度(白色に近い)で示され、植生指標が低い画素ほど、低い輝度(黒色に近い)で示されている。図5Bに示すように、対象領域301に対応する領域511のうち、植生領域302に対応する領域512では植生指標が高く、非植生領域303に対応する領域513では植生指標が低い。したがって、検出装置1は、WDRVIを植生指標として利用することにより、植生領域と非植生領域とを精度良く識別することができる。
【0044】
なお、植生領域302に対応する領域512のうち、非枯損木領域305に対応する領域515では全体的に植生指標が高く、枯損木領域304に対応する領域514では一部の領域で植生指標がわずかに低い。また、非植生領域303に対応する領域513のうち、非土壌領域307に対応する領域517では植生指標が十分に低いが、土壌領域306に対応する領域516では植生指標がわずかに高い。
【0045】
次に、指標算出部152は、光学画像から、光学画像に含まれる複数の画素ごとにGSI指標(Grain Size Index)を算出する(ステップS103)。GSI指標は、粒度指数とも呼ばれ、裸地領域を検出するための指標である。GSI指標は、その画素に対応する位置が裸地領域に含まれる可能性が高いほど高い値を有する。指標算出部152は、赤バンド画像、緑バンド画像及び青バンド画像に基づいて、下記式(3)から、各画素のGSI指標を算出する。
GSI指標=(R-B)/(R+G+B) …(3)
【0046】
ここで、Gは、緑バンド画像内の対応する画素の画素値、即ちその画素に対応する位置における緑色光の強度である。Bは、青バンド画像内の対応する画素の画素値、即ちその画素に対応する位置における青色光の強度である。GSI指標は、WDRVIと同様に、-1.0以上であり且つ+1.0以下である範囲内の値を有する。
【0047】
指標算出部152は、各画素の画素値をGSI指標とするGSI指標画像を生成する。
【0048】
図6Aは、赤バンド画像310、緑バンド画像400及び青バンド画像410から生成されたGSI指標画像600の一例を示す。
【0049】
図6Aに示す例では、GSI指標が高い画素ほど、高い輝度(白色に近い)で示され、GSI指標が低い画素ほど、低い輝度(黒色に近い)で示されている。図7Aに示すように、対象領域301に対応する領域601のうち、土壌領域306に対応する領域606では、植生領域302に対応する領域602及び非土壌領域307に対応する領域607と比較して、GSI指標が高い。したがって、検出装置1は、GSI指標を利用することにより、土壌領域と他の領域とを精度良く識別することができる。
【0050】
次に、指標算出部152は、光学画像に含まれる複数の画素ごとに植生指標とGSI指標との差分を算出する(ステップS104)。指標算出部152は、各画素の画素値を、植生指標画像の対応する画素の画素値から、GSI指標画像の対応する画素の画素値を減じた差分値とする画像を、植生指標画像とGSI指標画像との差分指標画像として生成する。
【0051】
上記したように、植生指標は、対象領域における植生の状況を把握するための指標であり、植生領域では高い値を有し、非植生領域では低い値を有する。しかしながら、非植生領域のうち、土壌領域には、草地又は畑地が含まれる場合があり、その場合、植生指標は土壌領域においても高い値を有する。GSI指標は、土壌領域に対応する領域において、他の領域より高い値を有する。したがって、植生指標からGSI指標を減算した差分は、植生領域では植生指標に近似する高い値を維持し、土壌領域では植生指標に対して十分に低い値を有する。なお、非土壌領域では、植生指標が低いため、植生指標からGSI指標を減算した差分は低い値を有する。指標算出部152は、裸地領域らしさを示すGSI指標を用いて植生指標を補正することにより、草地又は畑地を植生領域として抽出する可能性を低減できる。
【0052】
次に、抽出部153は、指標算出部152が生成した差分指標画像に対して二値化処理を実行する(ステップS105)。抽出部153は、差分指標画像に含まれる各画素の画素値が閾値以上であるか否かを判定する。閾値は、例えば大津の二値化により決定される。なお、閾値は、差分指標画像に含まれる各画素の画素値の平均値又は中央値等に設定されてもよい。また、閾値は、予め固定値に設定されてもよい。抽出部153は、各画素の画素値を、差分指標画像の対応する画素の画素値が閾値以上である場合に有効値とし、差分指標画像の対応する画素の画素値が閾値未満である場合に無効値とする二値画像を生成する。
【0053】
次に、抽出部153は、指標算出部152が算出した植生指標とGSI指標との差分に基づいて、光学画像から植生領域を抽出する(ステップS106)。抽出部153は、二値画像に対してラベリング等の処理を実行し、相互に隣接する有効画素で構成される領域を有効領域として抽出する。抽出部153は、抽出した有効領域の座標を示すデータを植生領域ポリゴンデータとして生成し、光学画像内で、植生領域ポリゴンデータに対応する領域を植生領域として抽出する。
【0054】
図6Bは、植生領域について説明するための模式図である。
【0055】
図6Bに示す画像610は、図3Aに示したRGB画像300と同じ画像である。画像610において、領域612は、抽出部153により抽出された植生領域302に対応する領域を示す。図6Bに示すように、植生領域302に対応する各領域が、抽出部153により植生領域612として抽出されている。このように、検出装置1は、植生指標とGSI指標との差分を利用することにより、植生領域を高精度に検出することができる。
【0056】
また、以降、この植生領域に対してのみ処理が実行されるため、検出装置1は、枯損木領域検出処理を高速化できる。なお、抽出部153は、例えばJAXAが提供する日本域高解像度土地利用土地被覆図等により、土地の利用状況を事前に取得している場合には、その利用状況に基づいて植生領域を抽出してもよい。
【0057】
次に、設定部154は、光学画像内に複数の区分領域を設定する(ステップS107)。設定部154は、光学画像内で抽出部153により抽出された植生領域を複数の領域に分割することにより、複数の区分領域を設定する。設定部154は、光学画像内で水平方向及び垂直方向にそれぞれ3画素以上の画素を含む各領域を区分領域に設定する。これにより、検出装置1は、後述する処理において、各区分領域における植生指標のばらつき度合い及び代表値を精度良く算出することができる。設定部154は、光学画像内で水平方向及び垂直方向にそれぞれ3画素ずつ含む正方形領域を区分領域として設定する。
【0058】
なお、設定部154は、水平方向と垂直方向のサイズが異なる矩形領域を区分領域として設定してもよい。また、設定部154は、円形領域、三角形領域等の他の形状を有する領域を区分領域として設定してもよい。
【0059】
図7Aは、区分領域について説明するための模式図である。
【0060】
図7Aに示す画像700は、図6Bに示した画像610と同じ画像である。画像700において、領域701は、設定部154により設定された区分領域に対応する領域を示す。図7Aに示すように、抽出部153により抽出された植生領域302に対応する領域612が複数の矩形領域に分割されることにより、複数の区分領域701が設定される。
【0061】
次に、ばらつき度合い算出部155は、複数の区分領域ごとに、各区分領域に含まれる各画素の植生指標のばらつき度合いを算出する(ステップS108)。ばらつき度合い算出部155は、各区分領域に含まれる各画素の植生指標の標準偏差をばらつき度合いとして算出する。なお、ばらつき度合い算出部155は、分散、半値幅(植生指標の分布のピーク値が半分になるところの山の幅)等の他の指標をばらつき度合いとして算出してもよい。ばらつき度合い算出部155は、各画素の画素値を、各画素に対応する画素が含まれる区分領域のばらつき度合いとするばらつき度合い画像を生成する。
【0062】
図7Bは、標準偏差をばらつき度合いとして、赤バンド画像310及び近赤外バンド画像500から生成されたばらつき度合い画像710の一例を示す。なお、図7Bに示すばらつき度合い画像710では、視認性を高めるために、植生領域302に対応する領域712以外の領域についてはRGB画像300の対応する領域が示されている。
【0063】
図7Bに示す例では、ばらつき度合いが大きい画素ほど、高い輝度(白色に近い)で示され、ばらつき度合いが小さい画素ほど、低い輝度(黒色に近い)で示されている。図7Bに示すように、植生領域302に対応する領域712のうち、枯損木領域304に対応する領域714では、非枯損木領域305に対応する領域715と比較して、ばらつき度合いが大きい。
【0064】
上記したように、植生領域302に対応する領域712のうち、非枯損木領域305に対応する領域715では全体的に植生指標が大きく、枯損木領域304に対応する領域714では一部の領域で植生指標がわずかに小さい。しかしながら、非枯損木領域305に対応する領域715と枯損木領域304に対応する領域714とで、植生指標の値自体の差は小さく、植生指標の値自体に基づいて、枯損木領域304と非枯損木領域305とを識別することは困難である。一方、検出装置1は、植生指標のばらつき度合いを利用することにより、枯損木領域と非枯損木領域とを精度良く識別することができる。
【0065】
次に、ばらつき度合い算出部155は、複数の区分領域ごとに、各区分領域に含まれる各画素の植生指標の代表値を算出する(ステップS109)。ばらつき度合い算出部155は、各区分領域に含まれる各画素の植生指標の平均値を代表値として算出する。
【0066】
なお、ばらつき度合い算出部155は、最大値、最小値、中央値等の他の指標を代表値として算出してもよい。ばらつき度合い算出部155は、各画素の画素値を、各画素に対応する画素が含まれる区分領域の代表値とする代表値画像を生成する。
【0067】
図8は、平均値を代表値として、赤バンド画像310及び近赤外バンド画像500から生成された代表値画像800の一例を示す。なお、図8に示す代表値画像800では、視認性を高めるために、植生領域302に対応する領域802以外の領域についてはRGB画像300の対応する領域が示されている。
【0068】
図8に示す例では、代表値が小さい画素ほど、高い輝度(白色に近い)で示され、代表値が大きい画素ほど、低い輝度(黒色に近い)で示されている。図8に示すように、植生領域302に対応する領域802のうち、枯損木領域304に対応する領域804では、非枯損木領域305に対応する領域805と比較して、代表値が小さい傾向にある。検出装置1は、植生指標のばらつき度合いに加えて、植生指標の代表値を利用することにより、枯損木領域と非枯損木領域とをより高精度に識別することができる。
【0069】
次に、検出部156は、ばらつき度合い算出部155が算出したばらつき度合い及び代表値に基づいて、複数の区分領域の中から、枯損木が存在する枯損木領域を検出する(ステップS110)。検出部156は、複数の区分領域のうち、各区分領域に含まれる各画素の植生指標の代表値が第1閾値より小さく、且つ、各区分領域に含まれる各画素の植生指標のばらつき度合いが第2閾値より大きい区分領域を枯損木領域として検出する。
【0070】
例えば、検出部156は、複数の区分領域のうち、各区分領域に含まれる各画素の植生指標の平均値が第1閾値より小さく、且つ、各区分領域に含まれる各画素の植生指標の標準偏差が第2閾値より大きい区分領域を枯損木領域として検出する。
【0071】
第1閾値は、例えば、事前の実験において、様々な光学画像に含まれる枯損木領域について算出された代表値の平均値又は最大値と、非枯損木領域について算出された代表値の平均値又は最小値との間の値に設定される。第2閾値は、例えば、事前の実験において、様々な光学画像に含まれる枯損木領域について算出されたばらつき度合いの平均値又は最小値と、非枯損木領域について算出されたばらつき度合いの平均値又は最大値との間の値に設定される。
【0072】
一方、検出部156は、複数の区分領域のうち、各区分領域に含まれる各画素の植生指標の代表値が第1閾値以上である区分領域、及び、各区分領域に含まれる各画素の植生指標のばらつき度合いが第2閾値以下である区分領域を非枯損木領域として検出する。
【0073】
通常、複数の樹木が含まれる領域において、複数の樹木が一斉に枯損する可能性は低く、複数の樹木が順次枯損していく可能性が高い。そのため、枯損した樹木が含まれる区分領域には健康な樹木も含まれている可能性が高く、健康な樹木のみが含まれる区分領域と比較して、植生指標のばらつきが大きい傾向にある。したがって、検出装置1は、植生指標のばらつき度合いを利用することによって、画像処理により枯損木領域を適切に検出することができる。
【0074】
また、ある程度の大きさを有する領域において、枯損した樹木については植生指標が小さくなるが、健康な樹木については植生指標が大きくなる。検出装置1は、ある程度の大きさを有する区分領域における植生指標の代表値を利用することによって、一部のみに枯損木が存在する区分領域を枯損木領域として精度良く検出することができる。
【0075】
例えば、植生指標の代表値が大きい場合であっても、植生指標のばらつき度合いが大きい場合、枯損木と健康な樹木が混在している可能性が高い。検出装置1は、ばらつき度合い及び代表値の両方を利用することで、枯損木領域の検出精度を向上できる。
【0076】
なお、検出部156は、複数の区分領域毎に、植生指標のばらつき度合い及び代表値から評価値を算出し、算出した評価値に基づいて枯損木領域を検出してもよい。検出部156は、植生指標のばらつき度合いが大きいほど大きくなり、植生指標の代表値が小さいほど大きくなるように評価値を算出する。
【0077】
検出部156は、複数の区分領域のうち、評価値が閾値より大きい区分領域を枯損木領域として検出し、評価値が閾値以下である区分領域を非枯損木領域として検出する。閾値は、例えば、事前の実験において、様々な光学画像に含まれる枯損木領域について算出された評価値の平均値又は最小値と、非枯損木領域について算出された評価値の平均値又は最大値との間の値に設定される。この場合も、検出部156は、精度良く枯損木領域を検出することができる。
【0078】
また、検出部156は、複数の区分領域毎に、植生指標の代表値に基づいて、植生指標のばらつき度合いと比較するための第2閾値を変更し、植生指標のばらつき度合いが第2閾値より大きいか否かにより、各区分領域が枯損木領域であるか否かを判定してもよい。その場合、検出部156は、植生指標の代表値が小さいほど、第2閾値を小さくして、各区分領域が枯損木領域であると判定しやすくする。
【0079】
なお、検出部156は、複数の区分領域毎に、植生指標のばらつき度合いに基づいて、植生指標の代表値と比較するための第1閾値を変更し、植生指標の代表値が第1閾値より小さいか否かにより、各区分領域が枯損木領域であるか否かを判定してもよい。その場合、検出部156は、植生指標のばらつき度合いが大きいほど、第1閾値を大きくして、各区分領域が枯損木領域であると判定しやすくする。これらの場合も、検出部156は、精度良く枯損木領域を検出することができる。
【0080】
なお、検出部156は、公知の数値分類技術を利用して、区分領域をグループに分類し、グループに分類された区分領域群毎に、区分領域群が枯損木領域であるか否かを判定してもよい。その場合、ばらつき度合い算出部155は、例えば相互に隣接し且つ植生指標の代表値が近似する(代表値の差が所定値以下である)区分領域を同一のグループに分類する。
【0081】
ばらつき度合い算出部155は、例えば自然分類技術を利用して、植生指標の代表値の差が比較的大きい、相互に隣接する区分領域が別のグループに分類されるように、所定値を設定してもよい。ばらつき度合い算出部155は、分類した区分領域群毎に、植生指標のばらつき度合い及び代表値を算出する。検出部156は、複数の区分領域群のうち、各区分領域群に含まれる各画素の植生指標の代表値が第1閾値より小さく、且つ、各区分領域群に含まれる各画素の植生指標のばらつき度合いが第2閾値より大きい区分領域群を枯損木領域としてまとめて検出する。
【0082】
検出部156は、枯損木領域をまとめて検出できるため、枯損木領域検出処理に要する処理時間を低減できる。また、検出部156は、画像内のノイズ等の影響による、枯損木領域の検出漏れ、又は、枯損木領域の検出誤りを低減させることができる。
【0083】
次に、出力制御部157は、枯損木領域に関する情報を出力し(ステップS111)、一連の枯損木領域検出処理を終了する。出力制御部157は、検出部156により検出された枯損木領域に関する情報を表示部13に表示することにより出力する。出力制御部157は、通信部12を介して、枯損木領域に関する情報を外部の情報処理装置に送信することにより、出力してもよい。出力制御部157は、例えばRGB画像上で枯損木領域を他の領域と異なる色で表示すること又は太線で囲うことにより強調表示して、他の領域に対して区別可能に表示した画像を生成し、枯損木領域に関する情報として出力する。出力制御部157は、枯損木領域を示す緯度又は経度を枯損木領域に関する情報として出力してもよい。
【0084】
なお、ステップS103の処理は省略され、ステップS106において、抽出部153は、GSI指標画像を用いずに、植生指標画像のみを用いて植生領域を抽出してもよい。また、ステップS106において、抽出部153は、植生指標画像を用いずに、GSI指標画像のみを用いて植生領域を抽出してもよい。また、ステップS103~S106の処理は省略され、ステップS107において、設定部154は、光学画像の全領域に複数の区分領域を設定してもよい。また、ステップS109の処理は省略され、ステップS110において、設定部154は、植生指標の代表値を用いずに植生指標のばらつき度合いのみを用いて、枯損木領域を検出してもよい。
【0085】
以上詳述したように、検出装置1は、各区分領域における植生指標のばらつき度合いに基づいて枯損木領域を検出する。これにより、検出装置1は、一部の樹木のみが枯損木である区分領域、又は、完全な枯損に至っていないものの衰弱している樹木が含まれる区分領域を枯損木領域として検出することができる。したがって、検出装置1は、枯損木が存在する枯損木領域を高精度に検出することができる。
【0086】
また、検出装置1が枯損木領域を画像処理で自動的に検出することにより、利用者は、効率良く樹木の点検作業を行うことができる。したがって、検出装置1は、利用者の利便性を向上させることができる。
【0087】
当業者は、本発明の精神及び範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。例えば、上述した各部の処理は、本発明の範囲において、適宜に異なる順序で実行されてもよい。また、上述した実施形態及び変形例は、本発明の範囲において、適宜に組み合わせて実施されてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 検出装置
151 画像取得部
152 指標算出部
153 抽出部
154 設定部
155 ばらつき度合い算出部
156 検出部
157 出力制御部
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8