(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151083
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】モニタリング分析装置およびモニタリング分析方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20231005BHJP
G01N 35/10 20060101ALI20231005BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G01N35/00 E
G01N35/10 A
G01N1/00 101N
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060514
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】長井 悠佑
(72)【発明者】
【氏名】岩田 庸助
【テーマコード(参考)】
2G052
2G058
【Fターム(参考)】
2G052FC07
2G052FC11
2G058EA02
(57)【要約】
【課題】 連続的に生成される反応生成物に対する分析の頻度を向上させる。
【解決手段】 モニタリング分析装置100は、反応装置210により生成された反応生成物を順次取得する取得部と、取得部により取得された反応生成物を順次分析する分析部30と、分析部30による反応生成物の分析前の前処理を実行する前処理部と、分析部30による第1の分析が行われている間に第1の分析の次に行われるべき第2の分析のための前処理が実行されるように前処理部を制御する制御部40とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応装置により生成された反応生成物を順次取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記反応生成物を順次分析する分析部と、
前記分析部による前記反応生成物の分析前の前処理を実行する前処理部と、
前記分析部による第1の分析が行われている間に前記第1の分析の次に行われるべき第2の分析のための前記前処理が実行されるように前記前処理部を制御する制御部とを備える、モニタリング分析装置。
【請求項2】
前記取得部は、
内部流路を有するとともに前記内部流路にそれぞれ連通する第1および第2のポートを有するサンプル取得容器と、
前記反応装置により生成された反応生成物を前記サンプル取得容器の前記第1のポートに導く第1の流路と、
前記サンプル取得容器の前記第2のポートから前記サンプル取得容器の外へ反応生成物を導く第2の流路とを含む、請求項1記載のモニタリング分析装置。
【請求項3】
前記前処理は、前記取得部を洗浄する洗浄処理を含み、
前記前処理部は、前記洗浄処理を行う洗浄部を含む、請求項2記載のモニタリング分析装置。
【請求項4】
前記洗浄部は、前記第1の流路、前記第2の流路および前記サンプル取得容器の前記内部流路を洗浄するように構成され、
前記洗浄部は、前記第1の流路、前記サンプル取得容器の前記内部流路および前記第2の流路に洗浄液を流すように構成される、請求項3記載のモニタリング分析装置。
【請求項5】
前記洗浄部は、
前記第1の流路に介挿される第1の切替バルブと、
前記第2の流路に介挿される第2の切替バルブとをさらに含み、
前記第1の切替バルブは、前記反応装置から前記第1のポートへの反応生成物の流入を可能にする第1の状態と、前記反応装置から前記第1のポートへの反応生成物の流入を阻止しかつ前記第1の流路を通しての前記第1のポートへの洗浄液の流入を可能にする第2の状態とに選択的に切り替え可能に構成され、
前記第2の切替バルブは、前記第2のポートから前記反応装置への反応生成物の流出を可能にする第3の状態と、前記第2のポートから前記反応装置への反応生成物の流出を阻止しかつ前記第2のポートから前記第2の流路を通しての洗浄液の排出を可能にする第4の状態とに選択的に切り替え可能に構成され、
前記制御部は、前記反応装置からの反応生成物の取得時に、前記第1の切替バルブを前記第2の状態に切り替えかつ前記第2の切替バルブを前記第4の状態に切り替え、前記洗浄処理時に、前記第1の切替バルブを前記第2の状態に切り替えかつ前記第2の切替バルブを前記第4の状態に切り替える、請求項4記載のモニタリング分析装置。
【請求項6】
前記反応装置と前記取得部との間に前記反応生成物の不純物を取り除くフィルタリング処理部を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のモニタリング分析装置。
【請求項7】
前記前処理は、分析精度の向上のために前記取得部により取得された前記反応生成物に対して前記分析部による分析前に行われるべき反応生成物処理を含み、
前記前処理部は、前記反応生成物処理を行う反応生成物処理部を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のモニタリング分析装置。
【請求項8】
前記反応生成物処理は、前記反応生成物に対して物理的な振動を与えることにより前記反応生成物の再溶解を促す再溶解処理を含む、請求項7記載のモニタリング分析装置。
【請求項9】
前記反応生成物処理は、前記反応生成物の反応の進行を抑制するためのクエンチング処理を含む、請求項7または8記載のモニタリング分析装置。
【請求項10】
前記反応生成物処理は、前記反応生成物を希釈する希釈処理をさらに含む、請求項7~9のいずれか一項に記載のモニタリング分析装置。
【請求項11】
前記反応生成物処理は、前記反応生成物を気体および液体に分離する気液分離処理を含む、請求項7~10のいずれか一項に記載のモニタリング分析装置。
【請求項12】
前記反応生成物処理は、前記分析部において検量線を作成可能にするために前記反応生成物に対して標準試料を添加する添加処理を含む、請求項7~11のいずれか一項に記載のモニタリング分析装置。
【請求項13】
反応装置により生成された反応生成物を順次取得するステップと、
前記取得された前記反応生成物を順次分析するステップと、
前記分析されるべき前記反応生成物の分析前の前処理を実行するステップとを含み、
前記前処理を実行するステップは、前記分析するステップにおいて第1の分析が行われている間に前記第1の分析の次に行われるべき第2の分析のための前記前処理を実行することを含む、モニタリング分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モニタリング分析装置およびモニタリング分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油業界および化学業界では、プロセス分析システム(Process Analytical Technology:PAT)が導入されている。プロセス分析システムにおいては、連続的に生産される反応生成物に対して分析および管理が行われる。プロセス分析システムによれば、製造途中の反応生成物に対して継続的な検査およびモニタリングが可能である。一方、製薬業界では、プロセス分析システムの導入が検討されている。特許文献1には、プロセス合成等の製造工程のモニタリングを行う場合に用いられるフローバイアルが記載される。特許文献1によれば、フローバイアルを用いることにより、分析対象の試料(反応生成物)をオンラインで分析装置に導入することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のプロセス分析システムにおいて、反応生成物に対して分析を行う場合、一の分析を開始する前に種々の前処理を行う必要がある。この場合、前処理のために多大な時間が費やされる。そのため、連続的に生成される反応生成物に対する分析の頻度が低下する。反応生成物の変化を細かくモニターするためには、一定時間内に行われる分析の頻度を向上させることが望まれる。
【0005】
本発明の目的は、連続的に生成される反応生成物に対する分析の頻度を向上させることが可能なモニタリング分析装置およびモニタリング分析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面に従うモニタリング分析装置は、反応装置により生成された反応生成物を順次取得する取得部と、前記取得部により取得された前記反応生成物を順次分析する分析部と、前記分析部による前記反応生成物の分析前の前処理を実行する前処理部と、前記分析部による第1の分析が行われている間に前記第1の分析の次に行われるべき第2の分析のための前記前処理が実行されるように前記前処理部を制御する制御部とを備える。
【0007】
本発明の他の局面に従うモニタリング分析方法は、反応装置により生成された反応生成物を順次取得するステップと、前記取得された前記反応生成物を順次分析するステップと、前記分析されるべき前記反応生成物の分析前の前処理を実行するステップとを含み、前記前処理を実行するステップは、前記分析するステップにおいて第1の分析が行われている間に前記第1の分析の次に行われるべき第2の分析のための前記前処理を実行することを含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、連続的に生成される反応生成物に対する分析頻度を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施の形態に係るモニタリング分析装置の構成を説明するための図である。
【
図2】制御部の制御動作を時系列で図示したタイミングチャートである。
【
図3】制御部の制御動作を示すフローチャートである。
【
図4】制御部の制御動作を示すフローチャートである。
【
図5】制御部の制御動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態に係るモニタリング分析装置およびモニタリング分析方法について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
(1)モニタリング分析装置の構成
図1は、一実施の形態に係るモニタリング分析装置の構成を説明するための図である。反応系200は、複数の反応装置210を含む。複数の反応装置210においては、互いに異なる反応生成物が順次生成される。ここで、反応生成物は、最終生成物に限らず、中間生成物をも含む。また、反応生成物は、複数の材料の化合物、および複数の材料の混合物等を含む。例えば、反応生成物は、複数の薬剤の混合物である。
【0012】
モニタリング分析装置100は、複数の反応装置210により生成される反応生成物を監視するために用いられる。モニタリング分析装置100は、取得部10、前処理部20、分析部30および制御部40を含む。取得部10は、例えばオートサンプラである。取得部10は、吸引吐出系11、複数のサンプル取得容器(以下、フローバイアルと呼ぶ。)12、試料収容器13および注入ポート14を含む。吸引吐出系11は、吸引吐出部11a、サンプリングニードル11bおよび駆動部11cを含む。吸引吐出部11aは、吸引機構および吐出機構を含み、サンプリングニードル11b内への液体の吸引およびサンプリングニードル11b外への液体の吐出を可能に構成される。駆動部11cは、サンプリングニードル11bを複数のフローバイアル12、試料収容器13、注入ポート14および後述する前処理部20の間で移動させるように構成される。前処理部20は、反応生成物処理部20a、洗浄液供給部20b、廃液槽20c、第1の切替バルブV1および第2の切替バルブV2を含む。
【0013】
複数のフローバイアル12は、複数の反応装置210に対応して設けられる。
図1の例では、単一の反応装置210および単一のフローバイアル12が示される。フローバイアル12には、内部流路IC、第1のポート(液入口)RIおよび第2のポート(液出口)ROが設けられる。第1のポートRIおよび第2のポートROには、第1の流路FP1の一端および第2の流路FP2の一端がそれぞれ接続される。第1の流路FP1の他端および第2の流路FP2の他端には、反応装置210が接続される。
【0014】
本実施の形態において、第1および第2の流路FP1,FP2には、前処理部20の第1および第2の切替バルブV1,V2がそれぞれ介挿される。第1の切替バルブV1は、2つの液入口および1つの液出口を有する。第2の切替バルブV2は、1つの液入口および2つの液出口を有する。
【0015】
第1の流路FP1は、流路部分fp11,fp12を含む。流路部分fp11は、フローバイアル12の第1のポートRIと第1の切替バルブV1のとの間に接続される。流路部分fp11は、反応装置210と第1の切替バルブV1の1つの液入口との間に接続される。流路部分fp12は、第1の切替バルブV1の液出口とフローバイアル12の第1のポートRIとの間に接続される。第2の流路FP2は、流路部分fp21,fp22を含む。流路部分fp21は、フローバイアル12の第2のポートROと第2の切替バルブV2の液入口とのの間に接続される。流路部分fp22は、第2の切替バルブV2の1つの液出口と反応装置210との間に接続される。
【0016】
本実施の形態においては、流路部分fp12において、フローバイアル12の第1のポートRIと第1の切替バルブV1のとの間にフィルタリング処理部15が介挿される。フィルタリング処理部15は、反応生成物中の夾雑物等を取り除くフィルタリング処理を行う。
【0017】
洗浄液供給部20bと第1の切替バルブV1の他の液入口との間に、第3の流路FP3が接続される。洗浄液としては、フローバイアル12の内部流路ICならびに第1および第2の流路FP1,FP2を洗浄可能な純水等の液体が用いられる。第2の切替バルブV2の他の液出口と廃液槽20cとの間に第4の流路FP4が接続される。
【0018】
第1の切替バルブV1は、第1の状態および第2の状態に切り替え可能に構成される。第1の状態では、流路部分fp11と流路部分fp12とが接続される。第2の状態では、第3の流路FP3と流路部分fp12とが接続される。また、第2の切替バルブV2は、第3の状態および第4の状態に切り替え可能に構成される。第3の状態では、流路部分fp21と流路部分fp22とが接続される。第2の状態では、流路部分fp21と第4の流路FP4とが接続される。
【0019】
第1の切替バルブV1が第1の状態でかつ第2の切替バルブV2が第3の状態である場合、反応装置210により順次生成された反応生成物が第1の流路FP1、フローバイアル12の第1のポートRI、内部流路IC、第2のポートROおよび第2の流路FP2をこの順に通過した後に反応装置210に導かれる。それにより、反応装置210で順次生成された反応生成物が反応装置210内に継続的に供給される。
【0020】
一方、第1の切替バルブV1が第2の状態でかつ第2の切替バルブV2が第4の状態である場合、洗浄液供給部20bにより供給された洗浄液が第3の流路FP3、第1の流路FP1の流路部分fp12、フローバイアル12の第1のポートRI、内部流路IC、第2のポートROおよび第2の流路FP2の流路部分fp21および第4の流路FP4をこの順に通過した後に廃液槽20cに導かれる。それにより、第1の流路FP1、フローバイアル12および第2の流路FP2が洗浄される。以下、この処理を洗浄処理と呼ぶ。
【0021】
本実施の形態では、第1および第2の切替バルブV1,V2が洗浄部を構成する。前処理部20の洗浄部は、分析部30による分析前に行われるべき前処理として第1の流路FP1、第2の流路FP2およびフローバイアル12を洗浄する。
【0022】
本実施の形態では、前処理部20の反応生成物処理部20aは、再溶解装置、希釈装置、クエンチング装置および添加装置等の反応生成物に対する前処理を実行する装置を含む。反応装置210から取得した反応生成物は溶媒から析出していたり、濃度が高すぎたりする等、そのままの状態では分析できない場合があるため、反応生成物ごとの前処理が必要になる。
【0023】
再溶解装置は、超音波等の物理的な振動を反応生成物に与えることにより、反応生成物を再溶解させる再溶解処理を行う。希釈装置は、反応生成物を希釈する希釈処理を行う。クエンチング装置は、反応生成物の反応の進行を抑制するクエンチング処理を行う。その他、気液分離装置は、反応生成物を気体および液体に分離する気液分離処理を行う。添加装置は、分析部30において検量線を作成するための内部標準試料を添加する添加処理を行う。以下、再溶解処理、希釈処理、クエンチング処理、気液分離処理および添加処理を反応生成物処理と総称する。また、上述した洗浄処理および反応生成物処理を含む動作を前処理動作と呼ぶ。
【0024】
反応生成物処理部20aは、分析精度の向上のために反応生成物に対して一または複数の反応生成物処理を行う。反応生成物処理部20aにより反応生成物処理が行われた反応生成物を試料と呼ぶ。本実施の形態においては、反応生成物処理部20aにおいて、上記の反応生成物処理のすべてが行われる。
【0025】
なお、反応生成物処理部20aの反応生成物処理においては、反応装置210により生成される反応生成物の種類に応じて適宜選択されてもよい。また、反応装置210により生成される反応生成物に対して反応生成物処理を行う必要がない場合、前処理部20による反応生成物処理が行われなくてもよい。
【0026】
試料収容器13は、反応生成物処理部20aにより得られた試料を一時的に収容するために用いられる。注入ポート14には、サンプリングニードル11bにより分析部30に供給するための試料が注入される。注入ポート14に注入された試料は、分析部30に供給される。
【0027】
分析部30は、注入ポート14から供給された試料を分析する。分析部30は、例えば、液体クロマトグラフまたは超臨界流体クロマトグラフ等のクロマトグラフおよび質量分析装置を含む。本実施の形態において、分析部30は、液体クロマトグラフである。
【0028】
制御部40は、CPU(中央演算処理装置)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(リードオンリメモリ)、入出力I/F(インターフェイス)および記憶装置より構成される。ROMまたは記憶装置に制御プログラムが記憶される。CPUは、ROMまたは記憶装置に記憶された制御プログラムをRAM上で実行することにより吸引吐出系11、前処理部20および分析部30を制御する。制御部40には、図示しない表示部および操作部等が接続される。使用者が操作部を通して、反応装置210の反応生成物の分析を指令することにより、制御部40の制御が開始される。本実施の形態においては、反応装置210の反応生成物に対してバッチ分析が行われる。本実施の形態においては、使用者により分析条件および分析回数等を含むバッチファイルが制御部40に登録される。本実施の形態のバッチ分析においては、分析が予め定められた条件でk回連続的に行われる。kは、2以上の整数である。
【0029】
(2)制御部40の制御動作
図2は、制御部40の制御動作を時系列で図示したタイミングチャートである。
図3~
図5は、制御部40の制御動作を示すフローチャートである。
図2においては、時点t0の時点で試料収容器13(
図1参照)に前処理後の試料が収容されているものとする。
【0030】
まず、制御部40は、使用者により、反応装置210からの反応生成物の分析が指令されたか否かを判定する(
図3のステップS1)。分析が指令されていない場合、分析が指令されるまで待機する。分析が指令された場合、制御部40は、変数nに1を設定する(ステップS2)。この状態で、
図2の時点t0において、分析部30は、n回目の分析を開始する(ステップS3)。以下、時点t0から後述する時点t5までの期間を分析期間T1と呼ぶ。
【0031】
駆動部11cは、サンプリングニードル11bを試料収容器13の上方の位置に移動させる。時点t0において、吸引吐出部11aは、サンプリングニードル11bにより試料収容器13に収容される試料を吸引する(ステップS4)。次に、駆動部11cは、サンプリングニードル11bを注入ポート14の上方の位置に移動させる。時点t1において、吸引吐出部11aは、サンプリングニードル11bにより試料を注入ポート14に注入することにより、分析部30に試料を供給する(ステップS5)。
【0032】
また、時点t1において、制御部40は、第1の切替バルブV1を第1の状態から第2の状態に切り替え、かつ第2の切替バルブV2を第3の状態から第4の状態に切り替えることにより、前処理部20の洗浄部にフローバイアル12ならびに第1および第2の流路FP1,FP2の洗浄を開始させる(ステップS6)。
【0033】
制御部40は、時点t1から予め定められた期間(以下、洗浄期間T2と呼ぶ。)が経過したか否かを判定する(ステップS7)。時点t1から洗浄期間T2が経過していない場合、フローバイアル12ならびに第1および第2の流路FP1,FP2の洗浄が継続される。時点t1から洗浄期間T2が経過した場合、制御部40は、第1の切替バルブV1を第2の状態から第1の状態に切り替え、かつ第2の切替バルブV2を第4の状態から第3の状態に切り替えることにより、時点t2において、フローバイアル12ならびに第1および第2の流路FP1,FP2の洗浄を終了させる(ステップS8)。
【0034】
このとき、フローバイアル12内に反応装置210から反応生成物が供給される。次に、駆動部11cは、サンプリングニードル11bをフローバイアル12の上方の位置に移動させる。吸引吐出部11aは、フローバイアル12内の反応生成物をサンプリングニードル11bにより吸引する(ステップS9)。
【0035】
その後、駆動部11cは、サンプリングニードル11bを前処理部20の反応生成物処理部20aに移動させる。吸引吐出部11aは、サンプリングニードル11bから反応生成物処理部20aに反応生成物を供給する(ステップS10)。
【0036】
時点t2以降の時点t3において、反応生成物処理部20aは、上述した反応生成物処理を開始する(ステップS11)。反応生成物処理は、時点t3から時点t4の間で行われる。以下、反応生成物処理が行われる期間を反応生成物処理期間T3と呼ぶ。また、時点t1~t4の期間を前処理期間T4と呼ぶ。
図2に示すように、前処理期間T4は、洗浄期間T2および反応生成物処理期間T3を含む。
【0037】
図5には、本実施の形態における前処理部20の反応生成物処理部20aの反応生成物処理が示される。なお、
図2のタイミングチャートおよび
図5のフローチャートにおいては、反応生成物処理部20aの再溶解装置、希釈装置、クエンチング装置、気液分離装置および添加装置の間でのサンプリングニードル11bの移動およびサンプリングニードル11bによる反応生成物の吸引および吐出の動作が省略される。
【0038】
本実施の形態において、前処理部20の反応生成物処理部20aにおいては、まず、クエンチング装置が反応生成物に対してクエンチング処理を行う(ステップS21)。次に、再溶解装置が反応生成物に対して再溶解処理を開始する(ステップS22)。希釈装置が反応生成物に対して希釈処理を行う(ステップS23)。また、気液分離装置が反応生成物に対して気液分離処理を行う(ステップS24)。次いで、添加装置が反応生成物に対して添加処理を行う(ステップS25)。
図2の時点t4おいて、反応生成物処理が終了する。
【0039】
次に、吸引吐出部11aは、前処理部20の反応生成物処理部20aからサンプリングニードル11bにより反応生成物を試料として吸引する(
図4のステップS12)。その後、駆動部11cは、サンプリングニードル11bを試料収容器13の上方位置に移動させる。吸引吐出部11aは、サンプリングニードル11bにより吸引された試料を試料収容器13に供給する(ステップS13)。
【0040】
制御部40は、分析部30によるn回目の分析が終了したか否かを判定する(ステップS14)。分析部30によるn回目の分析が終了していない場合、制御部40は、分析部30によるn回目の分析が終了するまで待機する。分析部30によるn回目の分析が終了(
図2の時点t5)した場合、制御部40は、変数nの値に1を加算する(ステップS15)。ここで、制御部40は、変数nの値が分析回数kより大きいか否かを判定する(ステップS16)。変数nの値が分析回数k以下である場合、ステップS3に戻る。それにより、時点t5以降の時点t6において、n+1回目の分析が開始される。
【0041】
ステップS16において変数nの値が分析回数kより大きい場合、制御部40の動作が終了する。これにより、k回の分析を行うバッチ分析が終了する。
【0042】
(3)実施の形態の効果
上記実施の形態のモニタリング分析装置100によれば、一の分析における分析期間T1内で、次の分析のための前処理が実行される。この場合、一の分析についての分析動作に並行して次の分析のための前処理が実行される。それにより、分析部における一の分析の終了から次の分析の開始までの時間を短縮することが可能になる。その結果、連続的に生成される反応生成物に対する分析の頻度を向上させることが可能になる。
【0043】
また、前処理は、洗浄処理を含む。それにより、一の分析により分析されるべき反応生成物と次の分析により分析されるべき反応生成物とのコンタミネーションが防止される。
【0044】
また、本実施の形態では、第1および第2の切替バルブV1,V2の切り替えにより、フローバイアル12への反応生成物の供給と洗浄処理とを簡単な構成および制御で切り替えることが可能になる。
【0045】
さらに、前処理は、反応生成物処理を含む。それにより、精度の高い分析結果を得ることが可能になるとともに、連続的に生成される反応生成物に対する分析の頻度を向上することが可能になる。
【0046】
また、モニタリング分析装置100は、フィルタリング処理部15を含むことにより、反応生成物の不純物が取り除くことができる。それにより、連続的に生成される反応生成物に対する分析の頻度を向上させつつ、より精度の高い分析結果を得ることが可能になる。
【0047】
また、反応生成物処理は、再溶解処理を含むことにより、反応生成物を溶解状態に保つことができるので、連続的に生成される反応生成物に対する分析の頻度を向上させつつ、より精度の高い分析結果を得ることが可能になる。
【0048】
また、反応生成物処理は、クエンチング処理を含むことにより、反応生成物の状態を安定させることができるので、連続的に生成される反応生成物に対する分析の頻度を向上させることが可能になる。
【0049】
さらに、反応生成物処理は、希釈処理を含むことにより、反応生成物の濃度を分析部による分析に適合させることができるので、連続的に生成される反応生成物に対する分析の頻度を向上させつつ、より精度の高い分析結果を得ることが可能になる。
【0050】
また、反応生成物処理は、気液分離処理を含むことにより、反応生成物中に混入する気体を除去することができるので、連続的に生成される反応生成物に対する分析の頻度を向上させつつ、より精度の高い分析結果を得ることが可能になる。
【0051】
また、反応生成物処理は、添加処理を含むことにより、反応生成物に標準試料を添加することができるので、連続的に生成される反応生成物に対する分析の頻度を向上させつつ、より精度の高い分析結果を得ることが可能になる。
【0052】
(4)他の実施の形態
上記実施の形態において、反応生成物処理部20aの反応生成物処理においては、クエンチング処理、再溶解処理、希釈処理、気液分離処理および添加処理がこの順に行われるが、本発明はこれに限定されない。反応生成物処理においては、反応生成物の種類に応じて適宜処理順序が変更されてもよい。
【0053】
(5)態様
上述した複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0054】
(第1項)一態様に係るモニタリング分析装置は、反応装置により生成された反応生成物を順次取得する取得部と、前記取得部により取得された前記反応生成物を順次分析する分析部と、前記分析部による前記反応生成物の分析前の前処理を実行する前処理部と、前記分析部による第1の分析が行われている間に前記第1の分析の次に行われるべき第2の分析のための前記前処理が実行されるように前記前処理部を制御する制御部とを備える。
【0055】
第1項に記載のモニタリング分析装置によれば、反応生成物の第1の分析に並行して第2の分析の前処理が実行される。それにより、分析部における一の分析の終了から次の分析の開始までの時間を短縮することが可能になる。その結果、連続的に生成される反応生成物に対する分析の頻度を向上させることが可能になる。
【0056】
(第2項)第1項に記載のモニタリング分析装置において、前記取得部は、内部流路を有するとともに前記内部流路にそれぞれ連通する第1および第2のポートを有するサンプル取得容器と、前記反応装置により生成された反応生成物を前記サンプル取得容器の前記第1のポートに導く第1の流路と、前記サンプル取得容器の前記第2のポートから前記サンプル収容器の外へ反応生成物を導く第2の流路とを含んでもよい。
【0057】
第2項に記載のモニタリング分析装置によれば、簡単な構成で反応生成物を取得することが可能になるとともに、順次取得される反応生成物のコンタミネーションを防止することが可能になる。
【0058】
(第3項)第2項に記載のモニタリング分析装置において、前記前処理は、前記取得部を洗浄する洗浄処理を含み、前記前処理部は、前記洗浄処理を行う洗浄部を含んでもよい。
【0059】
第3項に記載のモニタリング分析装置によれば、反応生成物の第1の分析に並行して取得部が洗浄される。それにより、第1の分析により分析されるべき反応生成物と第2の分析により分析されるべき反応生成物とのコンタミネーションを防止しつつ、連続的に生成される反応生成物に対する分析の頻度を向上させることが可能になる。
【0060】
(第4項)第3項に記載のモニタリング分析装置において、前記洗浄部は、前記第1の流路、前記第2の流路および前記サンプル取得容器の内部流路を洗浄するように構成され、前記洗浄部は、前記第1の流路、前記サンプル取得容器の内部流路および前記第2の流路に洗浄液を流すように構成されてもよい。
【0061】
第4項に記載のモニタリング分析装置によれば、簡単な動作で第1の流路、サンプル取得容器の内部流路および第2の流路を洗浄することが可能になるとともに、連続的に生成される反応生成物に対する分析の頻度を向上することが可能になる。
【0062】
(第5項)第4項に記載のモニタリング分析装置において、前記洗浄部は、前記第1の流路に介挿される第1の切替バルブと、前記第2の流路に介挿される第2の切替バルブとをさらに含み、前記第1の切替バルブは、前記反応装置から前記第1のポートへの反応生成物の流入を可能にする第1の状態と、前記反応装置から前記第1のポートへの反応生成物の流入を阻止しかつ前記第1の流路を通しての前記第1のポートへの洗浄液の流入を可能にする第2の状態とに選択的に切り替え可能に構成され、前記第2の切替バルブは、前記第2のポートから前記反応装置への反応生成物の流出を可能にする第3の状態と、前記第2のポートから前記反応装置への反応生成物の流出を阻止しかつ前記第2のポートから前記第2の流路を通しての洗浄液の排出を可能にする第4の状態とに選択的に切り替え可能に構成され、前記制御部は、前記反応装置からの反応生成物の取得時に、前記第1の切替バルブを前記第2の状態に切り替えかつ前記第2の切替バルブを前記第4の状態に切り替え、前記洗浄処理時に、前記第1の切替バルブを前記第2の状態に切り替えかつ前記第2の切替バルブを前記第4の状態に切り替えてもよい。
【0063】
第5項に記載のモニタリング分析装置によれば、第1の切替バルブが第1の状態でかつ第2の切替バルブが第3の状態である場合、反応装置から第1の流路を通してサンプル取得容器の内部流路に反応生成物が流入し、サンプル取得容器の内部流路の反応生成物が第2の流路を通して反応装置に流出する。また、第1の切替バルブが第2の状態でかつ第2の切替バルブが第4の状態である場合、第1の流路、サンプル取得容器の内部流路および第2の流路を通して洗浄液が流れる。この場合、第1および第2の切替バルブの切り替えにより、取得部による反応生成物の取得と取得部の洗浄とを簡単な構成および制御で切り替えることが可能になる。
【0064】
(第6項)第1項~第5項に記載のモニタリング分析装置において、前記反応装置と前記取得部との間に前記反応生成物の不純物を取り除くフィルタリング処理部を含んでもよい。
【0065】
第6項に記載のモニタリング分析装置によれば、前の分析と並行して次に分析されるべき反応生成物の不純物が取り除かれるので、連続的に生成される反応生成物に対する分析の頻度を向上させつつ、より精度の高い分析結果を得ることが可能になる。
【0066】
(第7項)第1項~第6項のいずれか一項に記載のモニタリング分析装置において、前記前処理は、分析精度の向上のために前記取得部により取得された前記反応生成物に対して前記分析部による分析前に行われるべき反応生成物処理を含み、前記前処理部は、前記反応生成物処理を行う反応生成物処理部を含んでもよい。
【0067】
第7項に記載のモニタリング分析装置によれば、反応生成物の第1の分析に並行して第2の分析の前に反応生成物に対して行われるべき反応生成物処理が行われる。それにより、精度の高い分析結果を得ることが可能になるとともに、連続的に生成される反応生成物に対する分析の頻度を向上することが可能になる。
【0068】
(第8項)第7項に記載のモニタリング分析装置において、前記反応生成物処理は、前記反応生成物に対して物理的な振動を与えることにより前記反応生成物の再溶解を促す再溶解処理を含んでもよい。
【0069】
第8項に記載のモニタリング分析装置によれば、前の分析と並行して次に分析されるべき反応生成物を溶解状態に保つことができるので、連続的に生成される反応生成物に対する分析の頻度を向上させつつ、より精度の高い分析結果を得ることが可能になる。
【0070】
(第9項)第7項または第8項に記載のモニタリング分析装置において、前記反応生成物処理は、前記反応生成物の反応の進行を抑制するためのクエンチング処理を含んでもよい。
【0071】
第9項に記載のモニタリング分析装置によれば、前の分析と並行して次に分析されるべき反応生成物の状態を安定させることができるので、連続的に生成される反応生成物に対する分析の頻度を向上させつつ、より精度の高い分析結果を得ることが可能になる。
【0072】
(第10項)第7項~第9項のいずれか一項に記載のモニタリング分析装置において、前記反応生成物処理は、前記反応生成物を希釈する希釈処理をさらに含んでもよい。
【0073】
第10項に記載のモニタリング分析装置によれば、前の分析と並行して次に分析されるべき反応生成物の濃度を分析部による分析に適合させることができるので、連続的に生成される反応生成物に対する分析の頻度を向上させつつ、反応生成物に対してより精度の高い分析結果を得ることが可能になる。
【0074】
(第11項)第7項~第10項のいずれか一項に記載のモニタリング分析装置において、前記反応生成物処理は、前記反応生成物を気体および液体に分離する気液分離処理を含んでもよい。
【0075】
第11項に記載のモニタリング分析装置によれば、前の分析と並行して次に分析されるべき反応生成物中に混入する気体を除去することができるので、連続的に生成される反応生成物に対する分析の頻度を向上させつつ、精度の高い分析結果を得ることが可能になる。
【0076】
(第12項)第7項~第11項のいずれか一項に記載のモニタリング分析装置において、前記反応生成物処理は、前記分析部において検量線を作成可能にするために前記反応生成物に対して標準試料を添加する添加処理を含んでもよい。
【0077】
第12項に記載のモニタリング分析装置によれば、前の分析と並行して次に分析されるべき反応生成物に標準試料を添加することができるので、連続的に生成される反応生成物に対する分析の頻度を向上させつつ、精度の高い分析結果を得ることが可能になる。
【0078】
(第13項)他の態様に係るモニタリング分析方法は、反応装置により生成された反応生成物を順次取得するステップと、前記取得された前記反応生成物を順次分析するステップと、前記分析されるべき前記反応生成物の分析前の前処理を実行するステップとを含み、前記前処理を実行するステップは、前記分析するステップにおいて第1の分析が行われている間に前記第1の分析の次に行われるべき第2の分析のための前記前処理を実行することを含む。
【0079】
第13項に記載のモニタリング分析方法によれば、反応生成物の第1の分析に並行して第2の分析の前処理が実行される。それにより、一の分析の終了から次の分析の開始までの時間を短縮することが可能になる。その結果、連続的に生成される反応生成物に対する分析の頻度を向上させることが可能になる。
【符号の説明】
【0080】
10…取得部,11…吸引吐出系,11a…吸引吐出部,11b…サンプリングニードル,11c…駆動部,12…フローバイアル,13…試料収容器,14…注入ポート,15…フィルタリング処理部,20…前処理部,20a…反応生成物処理部,20b…洗浄液供給部,20c…廃液槽,30…分析部,40…制御部,100…モニタリング分析装置,200…反応系,210…反応装置,FP1…第1の流路,FP2…第2の流路,FP3…第3の流路,FP4…第4の流路,IC…内部流路,RI…第1のポート,RO…第2のポート,V1…第1の切替バルブ,V2…第2の切替バルブ,fp11,fp12,fp21,fp22…流路部分