(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151112
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】屋外スペースの隔て構造
(51)【国際特許分類】
E04G 21/32 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
E04G21/32 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060553
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】500489015
【氏名又は名称】建装工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002011
【氏名又は名称】弁理士法人井澤国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100072039
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 洵
(74)【代理人】
【識別番号】100123722
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 幹
(74)【代理人】
【識別番号】100157738
【弁理士】
【氏名又は名称】茂木 康彦
(72)【発明者】
【氏名】佐井 清人
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 皇
(57)【要約】
【課題】 集合住宅などの修繕工事の効率化
【解決手段】 互いに連結する通気性シートと支持部とを含み、上記通気性シートが展開状態と縮小状態との間で可逆的に変化することによって可逆的に開閉することができ、建築物の屋外スペースに用いられる、隔て構造。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに連結する通気性シートと支持部とを含み、
上記通気性シートが展開状態と縮小状態との間で可逆的に変化することによって可逆的に開閉することができ、
建築物の屋外スペースに用いられる、
隔て構造。
【請求項2】
上記通気性シートが少なくとも1枚のメッシュシートからなる、請求項1に記載の隔て構造。
【請求項3】
上記通気性シートが光反射性の素材を含む、請求項1に記載の隔て構造。
【請求項4】
上記通気性シートが、巻回あるいは折畳みによって展開状態と縮小状態との間で可逆的に変化する、請求項1に記載の隔て構造。
【請求項5】
上記通気性シートが編込仕様のシートである、請求項1に記載の隔て構造。
【請求項6】
上記支持部が棒状部材からなり、上記屋外スペースを構成する構造物あるいは上記屋外スペースに近隣する構造物に上記棒状部材を倹飩式に固定することができる、請求項1に記載の隔て構造。
【請求項7】
表示部を更に有する、請求項1に記載の隔て構造。
【請求項8】
上記屋外スペースが、ベランダ、バルコニー、デッキ、テラス、通路である、請求項1に記載の隔て構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は屋外スペースの隔て構造に関する。上記屋外スペースは、主に建築物の修繕工事の際に作業員が通行する可能性のある領域を指す。上記屋外スペースは、典型的には集合住宅で一般的なベランダやバルコニーであるが、一般住宅や店舗などに設置されたデッキやテラスと呼ばれる屋外スペースも含む。
【背景技術】
【0002】
集合住宅や店舗、オフィスビルなどの建築物では、入居区画の独立性や安全性を確保するために屋外スペースに隔壁(あるいは間仕切板)が設置されている。これら建築物の修繕工事では、隔壁を回避して作業員や資材を移動させるための仮設足場やゴンドラを必要とするため、追加的な工事コストや危険が伴う。
隔壁を一時的に撤去して一つの入居区画間から屋外スペースを経て別の入居区画へ人員や資材を移動・搬入すれば、低コストで安全に工事を行うことができる。しかし、この方法では入居区画の独立性や安全性が損なわれるため、実効性に乏しい。
隣り合う区画を簡単に通行するための機能を有するベランダの隔壁は、既に提案されている。例えば特許文献1には、外壁に収納できるバルコニーの隔壁が記載されている。例えば特許文献2には、ドア状開口部を設けたバルコニーの隔壁が記載されている。例えば特許文献3には、いわゆる網戸の形態をとり簡単に蹴破ることができるバルコニーの隔壁が記載されている。
しかし、これらの隔壁を繰り返し素早く開閉することは簡単でなく、多くの作業員や資材が移動する修繕工事ではこれらの隔壁の実用性は低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005- 2643号公報
【特許文献2】特開2008-163583号公報
【特許文献3】特許登録第6535900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
集合住宅や店舗、オフィスビルなどの建築物の修繕工事において、入居区画の独立性や安全性を確保しつつ仮設足場やゴンドラを用いずに人員や資材の導線を確保する実用性の高い手段については未だ検討の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者はこのような手段を、これまでの隔壁の構造変更から離れ、全く別のアプローチを試みた。その結果、驚くべきことに、実に簡素な構造物によって、入居区画の独立性や安全性を確保しつつ仮設足場やゴンドラを用いずに人員や資材の導線を確保することに成功した。すなわち本発明は以下のものである。
(発明1)互いに連結する通気性シートと支持部とを含み、上記通気性シートが展開状態と縮小状態との間で可逆的に変化することによって可逆的に開閉することができ、建築物の屋外スペースに用いられる、隔て構造。
(発明2)上記通気性シートが少なくとも1枚のメッシュシートからなる、発明1の隔て構造。
(発明3)上記通気性シートが光反射性の素材を含む、発明1の隔て構造。
(発明4)上記通気性シートが、巻回あるいは折畳みによって展開状態と縮小状態との間で可逆的に変化する、発明1の隔て構造。
(発明5)上記通気性シートが編込仕様のシートである、発明1の隔て構造。
(発明6)上記支持部が棒状部材からなり、上記屋外スペースを構成する構造物あるいは上記屋外スペースに近隣する構造物に上記棒状部材を倹飩式に固定することができる、発明1の隔て構造。
(発明7)表示部を更に有する、発明1の隔て構造。
(発明8)上記屋外スペースが、ベランダ、バルコニー、デッキ、テラス、通路である、発明1の隔て構造。
【発明の効果】
【0006】
本発明の隔て構造は通気性と遮視性を兼ね備えるため、本発明の隔て構造を屋外スペースに比較的長期に渡って設置した場合でも建物の使用区画や居住区画の安全と独立性が保たれる。本発明の隔て構造は少ない点数の部品からなり比較的軽量であるため、大きな設置労力を必要とせず、しかも材料コストを抑えることもできる。本発明の隔て構造を簡単な操作で繰り返し開閉することができる。本発明の隔て構造は通気性により風に対する耐久性も優れる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の隔て構造の例。通気性シートを展開した状態を示す。
【
図2】本発明の隔て構造の例。通気性シートを縮小した状態を示す。
【
図3】本発明の隔て構造に含まれる通気性シートの断面。
【
図4】本発明の隔て構造の例。通気性シートを展開した状態を示す。
【
図5】本発明の隔て構造の例。通気性シートを縮小した状態を示す。
【
図6】本発明の隔て構造の例。通気性シートを出し入れする様子を示す。
【
図7】本発明の隔て構造の例。通気性シートを出し入れする様子を示す。
【
図8】本発明の隔て構造に含まれる支持部材を固定する様子を示す。
【
図9】本発明の隔て構造に含まれる支持部材を固定する様子を示す。
【
図10】本発明の隔て構造に含まれる支持部材を固定する様子を示す。
【
図11】本発明の隔て構造に含まれる支持部材を固定する様子を示す。
【
図12】本発明の隔て構造に含まれる支持部材を上から見た様子を示す。
【
図13】本発明の隔て構造に付属する通気性シートと表示部。
【
図14】本発明の隔て構造に含まれる編込仕様の通気性シートの表面。
【
図15】本発明の隔て構造に含まれる編込仕様の通気性シートの断面。なお、図面には本発明品を模式的に示す。図面に示す寸法、形状、位置関係には省略や誇張がある。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[隔て構造]
本発明の隔て構造は、互いに連結する支持部と通気性シートとを有する。本発明の隔て構造は、建築物の修繕や保守点検のための作業の際に屋外スペースに仮設することを主な目的とする構造物である。本発明の隔て構造を設置する上記屋外スペースは、上記作業が行われない状態では独立性や安全性のために隔壁が設置されているが、上記作業の効率化のために上記隔壁無しで利用することが望ましい区域を指す。このような屋外スペースは、作業用通路として使用可能な屋外の区画であり、典型的には集合住宅で一般的なベランダやバルコニーであるが、一般住宅や店舗などに設置されたデッキやテラスと呼ばれる屋外スペースも含む。
[支持部]
上記支持部は、本発明の隔て構造を上記屋外スペースで位置決めする機能と、上記通気性シートの形状を維持する機能とを有する。これらの機能を発揮するために、好ましくは上記支持部が比較的強度が高く形状変化が乏しい部材からなる。一般的には、上記支持部には金属、木材、硬質プラスチック、あるいはこれらの複合物が用いられる。
本発明の隔て構造を使用する現場では、上記屋外スペースを構成する構造物あるいは上記屋外スペースに近隣する構造物に上記支持部を固定する。固定された支持部には通気性シートが連結しているので、本発明の隔て構造全体が上記屋外スペースにおいて固定される。
典型的には、上記支持部は少なくとも1本の棒材を含む。一般的には、棒状支持部材は直接にあるいは他の支持部材を介して設置対象である屋外スペースの床及び/又は上記屋外スペースに近隣する壁や手摺などの構造物に少なくとも1点以上で固定される。上記固定には、ネジ、釘、蝶番、ワイヤ、紐、リング、溝レールなどの適当な連結部材が使用される。
棒状の支持部を簡単に確実に固定するための方式として、倹飩方式が好適である。ここでの倹飩は、支持部の少なくとも2箇所の端部をそれぞれ挿入することができる少なくとも2つの凹部を屋外スペースに設け、支持部の一つの端部を一つの凹部に挿入した後に支持部の他の一つの端部を他の凹部に挿入して、屋外スペースに対して限定された方向にだけ支持部全体が移動できるように本発明の隔て構造を固定することを意味する。この意味で、上記屋外スペースの床に対して2つの環状ストッパーを上下に設置し、上記棒状支持部材をまず上の環状ストッパーに次に下の環状ストッパーに貫通させる方式は、倹飩式にあたる。また棒状支持部材からなる枠で囲まれた面に開閉可能な通気性シートを連結したもの(あたかも、紙の面が開閉可能な通気性シートで構成された襖のような構造物)を、屋外スペースに予め設置された互いに平行な溝つき棒状支持部材と噛み合わせる方式(あたかも、屋外スペースの床に対して上下あるいは両脇にある敷居に襖を取り付ける方式)も、倹飩式にあたる。
[通気性シート]
上記通気性シートにおける「通気」は、シートの一方の面から他方の面に外気の流路が形成されていることを意味する。したがって本発明の隔て構造に含まれる通気性シートには、適度な密度で多数の微小あるいは小型の貫通孔が形成されている。このような通気性シートとしては、不織布、織布、多孔質膜などのいずれもが使用される。通気性シートを風が通り抜けることによって本発明の隔て構造が風力を受けても変形あるいは移動し難く(耐風性)、しかも、上記通気性シートが屋外スペースで視界を遮るため本来設置されていた隔壁と同様に居住者のプライバシーや安全を確保すること(遮視性)ができる。
上記通気性シートとして用いる織布としてはメッシュシートが一般的である。メッシュシートは網構造によって多数の穴が表面に存在する薄物を指し、網の素材はアルミニウムやステンレス、スチールなどの金属類、木綿、麻、羊毛、紙などの天然繊維、ポリエステルやポリアミド(ナイロン類)、レーヨンなどの合成繊維あるいは半合成繊維、これらの複合物のいずれであってもよい。
本発明で用いる通気性シートとしては、ポリエステルやポリアミド、結晶性ポリオレフィンなどの耐久性に優れる合成繊維製メッシュシートが好ましい。メッシュ(網目)の粗さは、本発明の隔て構造の設置環境に応じて適宜選択される。メッシュの形式(網構造)も、メッシュの粗さに応じて適宜選択される。
本発明の隔て構造が適度な耐風性と遮視性を兼ね備えるために、複層のメッシュシートで上記通気性シートを構成することが好ましい。通気性シートの一部分を複層構造としてもよい。メッシュの粗さが異なる複数のメッシュシートを積層してもよい。
耐風性と遮視性を兼ね備えた通気性シートとしては、
図14,
図15に示す編込仕様のシートが特に好ましい。
図14には通気性シート表面の様子を、
図15には通気性シート断面を示す。
図14に示す編込仕様のシート(310)では、柔軟で長尺の織布片(301)と柔軟な横糸部分(302)とが組み合わさることによって、シート(310)の表面に限定的な隙間(303)が規則的に形成されている。シート(310)に風が当たると、どの隙間(303)もわずかに広がる。シート(310)の面全体では閉塞部分が殆どを占めるが風は隙間(303)を通り抜ける。
図15では風が通る向きを矢印で示す。ただし、実際には風によってもっと複雑な空気流路がシート(310)の周りに発生している。
図15ではシート(310)の通気性を理解するためごく一部の流路を簡略化して示している。このようなシート(310)は耐風性と遮視性を兼ね備え、本発明で用いる通気性シートとして好ましい。
本発明の通気性シートとして用いる編込仕様のシートは、
図14,
図15に示すものに限られない。シート表面に吹き付ける風が編地の隙間を通過することができ、しかもこの時にシート表面の全体としてはほとんどの部分が閉塞しているような編地を用いたシートであれば、本発明の通気性シートとして仕様することができる。
本発明の隔て構造が適度な耐風性と遮視性を兼ね備えるために、本発明の通気性シートの色や素材を可視光反射性の高いものにすることも好ましい。可視光反射性の高い素材としては、白色やシルバー色などの繊維や塗膜が用いられる。通常のメッシュシートの一部以上に上記可視光反射性素材を積層してもよい。
本発明の隔て構造において、通気性シートの展開と縮小を繰り返すことができる。通気性シートを完全に展開して屋外スペースの両端に差し渡した状態では、本発明の隔て構造により上記屋外スペースが隔てられた状態である。通気性シートを完全に縮小して屋外スペースを開放した状態では、本発明の隔て構造により上記屋外スペースが隔てられていない状態である。上記通気性シートが展開状態と縮小状態との間で可逆的に変化することによって、本発明の隔て構造が可逆的に開閉することができる。
通気性シートを展開・縮小する手段は、薄物部材を展開・縮小するための任意の手段であり得る。このような手段としては巻回や折畳みが一般的である。通気性シートが移動する方向は、屋外スペースの床に対して幅方向(例えば、左右向きに展開し折り畳めるアコーディオンカーテン式)であってもよく、屋外スペースの床に対して高さ方向(例えば、上下にロールアップ・ダウンできるロールスクリーン式)であってもよい。
[その他の部材]
本発明の隔て構造には様々な部材を追加的に付属させることができる。例えば、紐、テープ、クリップなどの部材を支持部材または通気性シートに接続する。これらの部材を介して通気性シートを上記支持部材に連結する。その結果、通気性シートの展張を維持し本発明の隔て構造で屋外スペースを確実に閉塞することができる。またその結果、通気性シートをコンパクトに縮小し本発明の隔て構造を設置した場合でも屋外スペースを広く開通することができる。
巻回した通気性シートを格納する容器を支持部材の一つに配置してもよい。この場合、あたかもロールカーテンを巻取り・引き出すように、通気性シートを上記容器内に巻取り上記容器外に引き出すことができる。この場合に通気性シートの出し入れを自動で・機械的に行ってもよい。
さらに、本発明の隔て構造を目的地に正確に設置するために、更に表示部を設けてもよい。表示部には、例えば住戸や区画に対応する番号や名称を表示することができる。上記表示部として、印刷物を挿入できるポケット、番号札とフック、複層からなる通気性シートの表層への印刷・印字などが用いられる。
これらの追加的な部材は、本発明の隔て構造の耐風性と遮視性を妨げない範囲で制限なく配置される。
【実施例0009】
[例1]
図1に、本発明の隔て構造の1例(1)を示す。隔て構造(1)の支持部材(2)は、3本の棒状支持部材(21,22,23)と環状ストッパー(24,25)を含む。支持部材(21)はベランダ(6)の手摺(7)に固定されている(
図1では固定のための部材は省略されている)。支持部材(22)はベランダ(6)に近隣する壁(8)に固定されている(
図1では固定のための部材は省略されている)。環状ストッパー(24)は支持部材(21)の上端部近くに配置されている。環状ストッパー(25)は支持部材(21)の下端部近くに配置されている。環状ストッパー(24)と環状ストッパー(25)は、プラスチックや金属などの硬質材料からなる。支持部材(23)は2つの環状ストッパー(24,25)に貫通している。通気性シート(3)は2枚重ねのメッシュシート(31)からなる(
図1では通気性シート全体を1枚のシートとして示す)。
図1は、通気性シート(3)を完全に展開し隔て構造(1)によりベランダ(6)の導線を閉塞した状態を示す。通気性シート(3)の一方の端部(32)には面ファスナーを有するテープ(4)が付属している。面ファスナーを有するテープ(4)は支持部材(22)に巻きつけられ、通気性シート(3)の形態は最も広がった状態で維持されている。
通気性シート(3)の他方の端部(33)にも面ファスナーを有するテープ(5)が付属している。面ファスナーを有するテープ(5)は支持部材(23)に巻きつけられ、通気性シート(3)が支持部材(23)に連結されている。面ファスナーを有するテープ(5)は通気性シート(3)を縮小する際にも用いられる。
面ファスナーを有するテープ(4)は2本1組で端部(32)の1箇所に配置され、面ファスナーを有するテープ(5)は2本1組で端部(33)の1箇所に配置される。上記テープ(4)あるいは上記テープ(5)の1組を2本一組の紐に置き換えてもよい。この場合、2本一組の紐を結んで支持部材(22)と支持部材(23)に通気性シート(3)を固定する。
上記テープ(4)あるいは上記テープ(5)を通気性シート(3)に取り付ける一と数は、通気性シート(3)の大きさや重量に応じて適宜設定でき、制限されない。
図1に示す状態で、隔て構造(1)の手前から隔て構造(1)の向こうのベランダを見通すことはできないが、隔て構造(1)は風が吹いても傾くことはない。
通気性シート(3)を縮小する際には、まず面ファスナーを有するテープ(4)を支持部材(22)から離す。次に、通気性シート(3)を、端部(32)から他方の端部(33)に向かって巻き取る。面ファスナーを有するテープ(5)を緩めて、巻き取った通気性シート(3)と支持部材(23)の両方に巻きつける。
[例2]
図2に、隔て構造(1)において通気性シート(3)を巻回し隔て構造を開放し、ベランダ(6)の導線を開通した状態を示す。面ファスナーを有するテープ(5)は通気性シート(3)の外面と支持部材(23)とに巻きつけられている。この状態で通気性シート(3)はロール状のコンパクトな形状に縮小されている。
隔て構造(1)でベランダ(6)の導線を再び閉塞する場合には、面ファスナーを有するテープ(5)を解いて通気性シート(3)を再び展開し、
図1に示す状態で固定する。隔て構造(1)の形態は
図1に示す状態と
図2に示す状態とを繰り返し変化することができる。
面ファスナーを有するテープ(5)は2本一組の紐に
[例3]
図3に、通気性シート(3)を外気が通過する様子を模式的に示す。
図3は、2層構造の通気性シート(31)を通気性シート(31)の面に垂直な平面で切った時の断面を拡大して模式的に示す。
メッシュシート(311)とメッシュシート(312)が端部(33)で密着して2層構造の通気性シート(31)を構成している。メッシュシート(311)とメッシュシート(312)とは他の端部(32)でも密着している(密着部は
図3に表示されていない)。
図3では通気性シート(31)
メッシュシート(311)には、貫通孔部分(3110)とシート材部分(3111)とが存在する。メッシュシート(312)には、貫通孔部分(3120)とシート材部分(3121)とが存在する。貫通孔部分(3110)と貫通孔部分(3120)とは通気性シート(31)の表裏面を結ぶ線上に重ならないので通気性シート(31)は遮光性と隠蔽性を有する。外気は貫通孔部分(3110)と貫通孔部分(3120)とを結ぶ経路を通過するので、通気性シート(31)は十分な通気性を有する。このため通気性シート(31)を備える隔て構造(1)は風を受けていても倒れにくい。
図3には空気流を点線の矢印で示す。
[例4]
図4に、本発明の隔て構造の他の1例(10)を示す。隔て構造(10)の支持部材(20)は、3本の棒状支持部材(201,202,203)と複数の環状フック(204)を含む。棒状支持部材(201)はベランダ(6)の手摺(7)に固定されている(
図4では固定のための部材は省略されている)。棒状支持部材(202)はベランダ(6)に近隣する壁(8)に固定されている(
図4では固定のための部材は省略されている)。環状フック(24)は棒状支持部材(203)の長手方向に沿う溝(
図4では見えない)の内側で滑り移動するように配置されている。環状フック(24)に通気性シート(30)が懸架されている。通気性シート(30)には折畳み用のひだ(301)がある。ひだ(301)はカーテンの「プリーツ」と同様の手段で形成される。環状フック(24)とひだ(301)の数は適宜設定可能である。
図4では環状フック(24)とひだ(301)の形状・寸法を模式的に示すに過ぎない。
図4は、通気性シート(30)を完全に展開し隔て構造(10)によりベランダ(6)の導線を閉塞した状態を示す。通気性シート(30)の端部に
図1,
図2について述べたようなテープや紐を付け、これらのテープや紐を支持部材(201,202)に結びつけて通気性シート(30)の展開状態を維持することもできる。このような通気性シート(30)と棒状支持部材(203)との関係は、室内のカーテンとカーテンレールとの関係に類似している。
[例5]
図5に、隔て構造(10)において通気性シート(30)をひだ(301)部分で折畳み、ベランダ(6)の導線を開通した状態を示す。
図4では通気性シート(30)を棒状支持部材(201)側に引き寄せた状態を示す。通気性シート(30)の端部に
図1,
図2について述べたようなテープや紐を付け、これらのテープや紐で通気性シート(30)全体を棒状支持部材(201)に密着させてもよい。この場合には、通気シート(30)とテープ又は紐との関係はカーテンとカーテンタッセルとの関係に類似している。
[例6]
図6,
図7に、本発明の隔て構造の他の例(100)を示す。隔て構造(100)は固定部材(200)と通気性シート(300)とを含む。棒状支持部材(2001)はベランダ(6)の手摺に固定されている。支持部材(2002)は筒状で、壁(8)に固定されており、通気性シート(300)の容器を兼ねる。通気性シート(300)を支持部材(2002)の内部に配置された軸(2100)に巻き取ることができる。通気性シート(300)の端部(3001)を引っ張ることによって支持部材(2002)から通気性シート(300)を繰り出すことができる。端部(3001)に付属する係止具(3002)を支持部材(2001)に付属する係止具(2003)に連結することによって、支持部材(2001)と支持部材(2002)の間に通気性シート(300)を差し渡すことができる。
図7は、係止具(2003)と係止具(3002)を通り引き出された通気性シート(300)に垂直な面で隔て構造(100)を切った時の断面子を示す。
図6,
図7では、通気性シート(300)の動く向きを矢印で示す。通気性シート(300)の縮小と引出には、ロールスクリーンの巻上・繰出に用いられる機構、例えばスプリング機構と同様の機構を用いることができる。
[例7]
図1,
図2に示す棒状支持部材(23)を倹飩式に環状ストッパー(24)と環状ストッパー(25)に挿入する様子を、
図8,
図9,
図10,
図11に示す。
図8,
図9,
図10,
図11はベランダ(6)の床(61)を下にして棒状支持部材(23)、環状ストッパー(24)、環状ストッパー(25)、支持部材(21)を横から見た様子を示す。環状ストッパー(24)と環状ストッパー(25)は固定部材(21)に連結している(
図8~
図11では連結具を省略している)。固定部材(21)はベランダ(6)の手摺(7)に連結している(
図8~
図11では連結具を省略している)棒状支持部材(23)の下端(230)の上方に突起した部材(以下「突起部材」)(231)が配置されている。
図8,
図9,
図10,
図11では突起部材(231)は短い棒状の部材として表示されている。実際には突起部材(231)の形状は、後述のように環状ストッパー(25)に係止されて突起部材(231)を床(61)から浮かせるものであれば制限されない。突起部材(231)は例えばボタン状や掛け金タイプの部材であってもよい。
まず
図8に示すように、棒状支持部材(23)を上側の環状ストッパー(24)に下から挿入する。
図8には棒状支持部材(23)の上端が挿入されたら、棒状支持部材(23)をベランダ(6)の床面(61)に対して鉛直に立てる。すると、棒状支持部材(23)、環状ストッパー(24)、環状ストッパー(25)の位置関係が
図9に示す状態に至る。
図9に示す状態では、棒状支持部材(23)の上部は環状ストッパー(24)の内部を貫通しているが、棒状支持部材(23)の下端(230)と突起部材(231)はベランダ(6)に対して環状ストッパー(25)よりも上方にある。
次に、
図10に示す矢印の向き(ベランダの床向き、下向き)に動かして棒状支持部材(23)の下部を環状ストッパー(25)の内部に挿入する。棒状支持部材(23)の下端(231)が環状ストッパー(25)の内部に入り、さらに突起部材(231)が環状ストッパー(25)の上端に接すると、
図11に示す状態に至る。
図11に示す状態では、突起部材(231)は環状ストッパー(25)で係止され、棒状支持部材(23)はこれ以上床(61)に近づくことはない。こうして棒状支持部材(23)は環状ストッパー(24)と環状ストッパー(25)とに倹飩式に固定される。
図11に示す、倹飩式固定が完了した状態では、棒状支持部材(23)の下端(230)と床面(61)との間には隙間(200)がある。
図11に示すように棒状支持部材(23)は床(61)から「浮いた」状態で固定される。
図12に、
図11に示す状態にある棒状支持部材(23)、環状ストッパー(24)、棒状支持部材(21)をベランダ(6)の床(61)の上から(棒状支持部材(23)の上端の上側から)見た様子を示す。
図12は、支持部材(23)の断面中心と環状ストッパー(24)の断面中心とがほぼ一致する(棒状支持部材(23)の外表面が環状ストッパー(24)の内表面からほぼ等距離で離れた)状態を示す。棒状支持部材(23)の下端(230)が環状ストッパー(25)に密着している状態であっても、棒状支持部材(23)の上部の周辺には環状ストッパー(24)の内側の幅Wの範囲で「遊び」がある。このため棒状支持部材(23)を環状ストッパー(24)から簡単に引き抜くことができる。上述の棒状支持部材(23)の固定手順を逆に行って、すなわち
図11,
図10,
図9,
図8の順で棒状支持部材(23)の位置を変えれば、棒状支持部材(23)はベランダ(6)から取り外される。
図8~
図12に示す例では、環状ストッパー(25)と突起部材(231)との係止によって、棒状支持部材(231)の可動域と移動方向が上下の環状ストッパー(24,25)に対して一定の範囲に制限されているという意味で、棒状支持部材(23)が倹飩式に固定されている。
[例8]
図13に、本発明の隔て構造に更に表示部(9)を配置した様子を示す。この例では、表示部(9)は、通気シート(3)の片面に取り付けられたポケット(91)である。この例では、ポケット(91)に住居番号札(901)が挿入されている。通気シート(3)の他方の面にもポケット(92)(
図13では総略)が取り付けられており、ポケット(92)にも別の住居番号札(902)(
図13では総略)が挿入されている。
建築物の修繕工事で、屋外スペースに設置された隔壁を一時的に撤去し、本発明の隔て構造を仮設の隔壁として用いることができる。本発明の隔て構造を仮設の隔壁として用いると、入居者の独立性と安全性を維持しつつ効率よく修繕工事を行うことができる。本発明の隔て構造によって、集合住宅や店舗、オフィスビルなどの建築物の修繕工事における工数の省略、工事コストの低減、作業員の安全確保、建築物の使用者の利便性や景観を損なわない工事を実現することができる。