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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151118
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】スタブエンドおよび接続構造
(51)【国際特許分類】
   F16L 23/028 20060101AFI20231005BHJP
   F16L 47/14 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
F16L23/028
F16L47/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060561
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】山田 智紀
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 愛美子
(72)【発明者】
【氏名】近藤 博昭
(72)【発明者】
【氏名】加藤 剛志
【テーマコード(参考)】
3H016
【Fターム(参考)】
3H016AA03
3H016AB02
3H016AC01
3H016AD06
3H016AE02
(57)【要約】
【課題】パーティクルが滞留する隙間の発生を抑制することが可能なスタブエンドを提供すること。
【解決手段】スタブエンド11のフレア部23は、流路24の開口24bと、開口24bの周囲に配置され、接続対象との間に配置されるパッキン13に接触する接触面23aと、を有する。接触面23aは、流路24の中心軸Oから離れるに従って端部21a側に向かうように傾斜している。開口24bの縁23bを通り、流路24の中心軸Oに対して垂直な直線L1上において、開口24bの縁23bから接触面23aの外側に向かって移動した点を位置P1とし、位置P1を通り中心軸Oと平行な直線L2の接触面23aとの交点を位置P2とし、直線L1上における開口24bの縁23bから位置P1までの長さをdとし、直線L2上における位置P1から位置P2までの長さをhとすると、0.5≦(h/d)×100≦18を満たす。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管の接続に用いられ、樹脂材料によって形成されたスタブエンドであって、
液体が流れる流路と、
前記流路の第1開口と、前記第1開口の周囲に配置され、接続対象との間に配置されるシール部材に接触する接触面と、を有する第1端部と、
前記第1開口に対向する前記流路の第2開口を有する第2端部と、を備え、
前記接触面は、前記流路の中心軸から離れるに従って前記第2端部側に向かうように傾斜しており、
前記開口の縁を通り、前記流路の中心軸に対して垂直な第1直線上において、前記開口の縁から前記接触面の外側に向かって移動した点を第1位置とし、前記第1位置を通り前記中心軸と平行な第2直線の前記接触面との交点を第2位置とし、前記第1直線上における前記開口の縁から前記第1位置までの長さをdとし、前記第2直線上における前記第1位置から前記第2位置までの長さをhとすると、
0.5≦(h/d)×100≦18を満たす、
スタブエンド。
【請求項2】
前記樹脂材料は、ポリエチレンである、
請求項1に記載のスタブエンド。
【請求項3】
前記樹脂材料は、高密度ポリエチレンである、
請求項1または2に記載のスタブエンド。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の第1スタブエンドと、
請求項1~3のいずれか1項に記載の第2スタブエンドと、
前記第1スタブエンドの前記接触面と前記第2スタブエンドの前記接触面の間に配置されたシール部材と、
前記第1スタブエンドの周囲に配置された第1フランジと、
前記第2スタブエンドの周囲に配置された第2フランジと、
前記第1フランジと前記第2フランジを締結する締結部と、を備え、
前記シール部材は、平面部と、前記平面部の前記第1スタブエンド側の第1面に形成された環状の第1凸部と、前記平面部の前記第2スタブエンド側の第2面に形成された環状の第2凸部と、を有し、
前記第1凸部は、前記第1スタブエンドの前記接触面によって圧縮され、前記第2凸部は、前記第2スタブエンドの前記接触面によって圧縮される、
接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スタブエンドおよび接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
工場配管等において、管の端部は、他の管の端部と管継手構造によって接続されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に示す管継手構造は、パッキンと、パッキンの両側に配置されたスタブエンドと、各々のスタブエンドの外周に設けられたルーズフランジと、を備え、ルーズフランジがボルトによって締結されている。この締結により、スタブエンドがパッキンのリブを圧縮し、リブが潰れてシール性が保たれている。
【0004】
図11は、従来の管継手構造における一対のスタブエンド1001、1002によってパッキン1003が圧縮された状態を示す模式図である。図11には、液体が流れる流路1004が示されている。パッキン1003には、スタブエンド1001とスタブエンド1002の両側に凸部1005が形成されている。スタブエンド1001、1002の各々の接触面1006によって凸部1005が圧縮されて流路1004のシール性が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-162147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示す構成では、接触面1006が流路1004の中心軸Oに対して垂直に形成されているため、パッキン1003の凸部1005の潰れが不足する場合があった。凸部1005の潰れが不足すると、パッキン1003とスタブエンド1001、1002の間に微小な隙間が発生する。図11に、凸部1005の流路1004側に発生した隙間Sが示されている(点線で囲まれている部分参照)。発生した隙間はパーティクル(微粒子)の滞留要因となり、配管の通水後にパーティクルが出る現象を引き起こす。特に、半導体製造の分野において、超純水を通水する場合には、影響が大きくなり、半導体製品の歩留まりが低下することになる。
【0007】
本開示は、パーティクルが滞留する隙間の発生を抑制することが可能なスタブエンドおよび接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1の態様にかかるスタブエンドは、管の接続に用いられ、樹脂材料によって形成されたスタブエンドであって、流路と、第1端部と、第2端部と、を備える。流路には、液体が流れる。第1端部は、流路の第1開口と、第1開口の周囲に配置され、接続対象との間に配置されるシール部材に接触する接触面と、を有する。第2端部は、第1開口に対向する流路の第2開口を有する。接触面は、流路の中心軸から離れるに従って第2端部側に向かうように傾斜している。開口の縁を通り、流路の中心軸に対して垂直な第1直線上において、開口の縁から接触面の外側に向かって移動した点を第1位置とし、第1位置を通り中心軸と平行な第2直線の接触面との交点を第2位置とし、第1直線上における開口の縁から第1位置までの長さをdとし、第2直線上における第1位置から第2位置までの長さをhとすると、0.5≦(h/d)×100≦18を満たす。
【0009】
このように、スタブエンドの接触面が傾斜することによって、シール部材の凸部の潰れを増大することができる。これにより、シール部材とスタブエンドの間の隙間が低減し、パーティクルの滞留を抑制することができる。また、半導体製造の分野では、半導体製品の歩留まりを向上することができる。
【0010】
第2の態様にかかるスタブエンドは、第1の態様にかかるスタブエンドであって、樹脂材料は、ポリエチレンである。
【0011】
このように、スタブエンドの材料としてポリエチレンを用いることによって、スタブエンドおよび管を熱融着等によって接合することができる。また、現場において、容易に切断することができるため、長さ調整等も行い易い。
【0012】
第3の態様にかかるスタブエンドは、第1または第2の態様にかかるスタブエンドであって、樹脂材料は、高密度ポリエチレンである。
【0013】
このように、スタブエンドの材料として高密度ポリエチレンを用いることによって、剛性および強度を確保することができるため、シール部材の凸部の潰れをより増大することができる。
【0014】
第4の態様にかかる接続構造は、第1~第3のいずれかの態様にかかる第1のスタブエンドと、第1~第3のいずれかの態様にかかる第2のスタブエンドと、シール部材と、第1フランジと、第2フランジと、締結部と、を備える。シール部材は、第1スタブエンドの接触面と第2スタブエンドの接触面の間に配置されている。第1フランジは、第1スタブエンドの周囲に配置されている。第2フランジは、第2スタブエンドの周囲に配置されている。締結部は、第1フランジと前記第2フランジを締結する。シール部材は、平面部と、環状の第1凸部と、環状の第2凸部と、を有する。第1凸部は、平面部の第1スタブエンド側の第1面に形成されている。第2凸部は、平面部の第2スタブエンド側の第2面に形成されている。第1凸部は、第1スタブエンドの接触面によって圧縮され、第2凸部は、第2スタブエンドの接触面によって圧縮される。
【0015】
このように、スタブエンドの接触面が傾斜することによって、シール部材のリブの潰れを増大することができる。これにより、シール部材とスタブエンドの間の隙間が低減し、パーティクルの滞留を抑制することができる。また、半導体製造の分野では、半導体製品の歩留まりを向上することができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、パーティクルが滞留する隙間の発生を抑制することが可能なスタブエンドおよび接続構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態の接続構造に第1管と第2管が接続された状態を示す斜視図である。
図2】本実施形態の接続構造に第1管と第2管を接続する前の状態を示す斜視図である。
図3】本実施形態の接続構造の断面構成図である。
図4】(a)本実施形態のスタブエンドの正断面図である、(b)本実施形態のスタブエンドの平面図である。
図5】接触面の傾斜を説明するためのスタブエンドの断面模式図である。
図6】(a)本実施形態のパッキンの平面図である、(b)図6(a)のAA間の矢視断面図である、(c)図6(b)のB部の拡大図である。
図7】(a)本実施形態のフランジの正面図である、(b)図7(a)のCC間の矢視断面図である、(c)図7(a)のDD間の矢視断面図である。
図8】本実施形態の接続構造における一対のスタブエンドによってパッキンが圧縮された状態を示す断面模式図である。
図9】本実施形態の接触構造において水漏れ試験のための貫通孔を形成した状態を示す断面構成図である。
図10】本実施形態の水漏れ試験機を示す図。
図11】従来の管継手構造における一対のスタブエンドによってパッキンが圧縮された状態を示す断面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本開示にかかる実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0019】
<構成>
(接続構造3の概要)
図1は、第1管1と第2管2が接続された接続構造3を示す斜視図である。図2は、第1管1と第2管2を接続構造3に取り付ける前の状態を示す斜視図である。
【0020】
図2に示す第1管1の端1aは、接続構造3のスタブエンド11(後述する)の端部21aと熱融着によって接合されている。この熱融着による接合部4が図1において示されている。図2に示す第2管2の端2aは、接続構造3のスタブエンド12(後述する)の端部21aと熱融着によって接合されている。この熱融着による接合部5が図1において示されている。なお、図1では、スタブエンド11と第1管1の間、およびスタブエンド12と第2管2の間が、バット融着によって接続されているが、電気融着継手を介して接続されてもよい。
【0021】
第1管1と第2管2は、樹脂材料によって形成されている。樹脂材料として、熱可塑性樹脂が用いられる。具体的には、第1管1と第2管2は、ポリエチレンなどのポリオレフィンによって形成されている。
【0022】
第1管1及び第2管2には、図2に示すように、内部に断面円形状の流路1b、2bが延びている。接続構造3には、内部に断面円形状の流路3aが延びている。第1管1と第2管2が接続構造3に接続された状態では、第1管1と第2管2と接続構造3の各々の流路の軸は、同軸O上に配置される。接続構造3、第1管1および第2管2において、それぞれの軸に直交して近接・離間する方向を径方向とし、それぞれの軸線回りに回る方向を周方向とする。
【0023】
図3は、接続構造3の断面構成を示す図である。接続構造3は、スタブエンド11(第1スタブエンドの一例)と、スタブエンド12(第2スタブエンドの一例)と、パッキン13(シール部材の一例)と、フランジ14(第1フランジの一例)と、フランジ15(第2フランジの一例)と、を有する。なお、図3では、各構成の配置関係を示すためにパッキン13はスタブエンド11,12によって圧縮されていない状態が示されている。
【0024】
スタブエンド11とスタブエンド12(接続対象の一例)はパッキン13を挟むように対向して配置される。フランジ14は、スタブエンド11の周囲に配置されている。フランジ15は、スタブエンド12の周囲に配置されている。フランジ14とフランジ15は、複数のボルト16とナット17によって締結される。図3では、ボルト16とナット17は二点鎖線で示し、紙面奥側の構成を示している。ボルト16およびナット17は、締結部の一例に相当する。
【0025】
(スタブエンド)
スタブエンド11、12は、樹脂材料によって形成されている。樹脂材料としては、ポリエチレンを用いることができる。樹脂材料として、高密度ポリエチレンを用いる方がより好ましい。高密度ポリエチレンは、JIS K 6922-1によって定義されており、密度0.942kg/m以上のポリエチレンと定義される。
【0026】
スタブエンド11とスタブエンド12の形状は同じであるため、スタブエンド11を例に挙げて説明を行う。図4(a)は、スタブエンド11の正断面図である。図4(a)は、スタブエンド11の軸Oを含む断面図である。図4(b)は、スタブエンド11の平面図である。
【0027】
スタブエンド11は、接続部21と、中間部22と、フレア部23と、流路24と、を有する。
【0028】
接続部21は、バット融着または電気融着継手を介した融着によって第1管1の端1aと接合される。フレア部23は、パッキン13を押圧する。中間部22は、軸O方向において接続部21とフレア部23(第1端部の一例)の間に配置されている。接続部21、中間部22およびフレア部23の順に外径が大きくなっている。流路24は、接続部21からフレア部23に亘って形成されている。
【0029】
接続部21は、円筒状である。接続部21は、流路24の開口24a(第2開口の一例)が形成された端部21a(第2端部の一例)を有する。接続部21の端部21aは、第1管1の端1aと熱融着接合される。
【0030】
中間部22は、円筒状である。中間部22は、接続部21の端部21aとは反対側に配置されている。中間部22は、接続部21より外径が大きく形成されている。中間部22の内径は接続部21と同じ大きさに形成されている。
【0031】
フレア部23は、円筒状である。フレア部23は、中間部22の接続部21とは反対側に配置されている。フレア部23は、中間部22より外径が大きく形成されている。フレア部23の内径は中間部22と同じ大きさに形成されている。
【0032】
フレア部23は、パッキン13側に配置される端面23eを有する。フレア部23の端面23eは、流路24の開口24b(第1開口の一例)と、接触面23aと、を有する。開口24bは、フレア部23の端面23eの中央に形成されている。開口24bは、開口24aと対向して配置されている。流路24は軸Oに沿って直線状に形成されている。接触面23aは、フレア部23の端面23eに形成されている。接触面23aは、開口24bの周囲に配置され、パッキン13に接触する。
【0033】
接触面23aは、軸Oに対して垂直な面に対して傾斜した傾斜面である。図5は、接触面23aの傾斜を説明するためのスタブエンド11の断面模式図である。図5は、軸Oを含む断面図である。図5では、分かり易くするために図4とスタブエンド11の形状が異なっている。
【0034】
接触面23aは、流路24の中心軸Oから外側に離れるに従って端部21a側に向かうように傾斜している。開口24bの縁を23bとし、接触面23aの径方向外側の縁を外縁23cとする。本実施形態では、接触面23aにおいて開口24bの縁23bよりも外縁23cの方が端部21a側に位置している。
【0035】
開口24bの縁23b上の位置P0を通り、流路24の中心軸Oに対して垂直な直線を直線L1(第1直線の一例)とする。直線L1上において、開口24bの縁23bから径方向外側に向かって任意の距離移動した点を位置P1(第1位置の一例)とする。位置P1を通り、中心軸Oと平行な直線を直線L2(第2直線の一例)とする。直線L2と接触面23aとの交点を位置P2(第2位置の一例)とする。そして、直線L1上において、位置P0から位置P1までの長さをdとし、直線L2上における位置P1から位置P2までの長さをhとする。dとhは、以下の式(1)と満たすように設定される。
【0036】
0.5(%)≦(h/d)×100≦18(%)・・・(1)
接触面23aの勾配は、上記のように(h/d)×100(%)で定義でき、0.5%以上18%以下に設定される。
【0037】
なお、本実施形態では、端面23eは、開口24bの縁23bから外縁23cまでの全体が接触面23aとして傾斜しているため、位置P2を外縁23cの位置とした場合の長さdをd1とし、長さhをh1とすると、0.5(%)≦(h1/d1)×100≦18(%)を満たすことになる。
【0038】
本実施形態では、スタブエンド12も、スタブエンド11と同様の形状であり、図3に示すように、接続部21と、中間部22と、フレア部23と、流路24と、を有する。図3に示すように、スタブエンド11とスタブエンド12は、互いの接触面23aが対向するように配置されている。
【0039】
(パッキン)
パッキン13は、図3に示すように、スタブエンド11の接触面23aとスタブエンド12の接触面23aとの間に配置されている。パッキン13は、好ましくは、エチレンプロピレンジエン(EPDM)ゴムで形成されている。パッキン13の一部が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)によって被覆されている。
【0040】
パッキン13は、環状の板状に形成されている。パッキン13の外径は、フランジ14およびフランジ15と概ね同じである。パッキン13の中心穴30の内径は、スタブエンド11およびスタブエンド12の流路24の内径と概ね同じである。パッキン13の中心穴30の中心は、軸O上に配置される。
【0041】
図6(a)は、パッキン13の平面図である。図6(b)は、図6(a)のパッキン13のAA間の矢視断面図である。図6(c)は、図6(b)のB部拡大図である。
【0042】
パッキン13は、図6(a)および図6(b)に示すように、平面部31と、内側凸部32(第1凸部の一例)と、外側凸部33と、内側凸部34(第2凸部の一例)と、外側凸部35と、を有する。
【0043】
平面部31は、スタブエンド11側の主面31a(第1面の一例)と、スタブエンド12側の主面31b(第2面の一例)と、を有する。
【0044】
内側凸部32と外側凸部33は、図6(b)に示すように、主面31aに配置されている。内側凸部32および外側凸部33は、主面31aから軸O方向に沿って突出している。内側凸部32は、中心穴30を囲むように環状に形成され、中心穴30と同心円に形成されている。外側凸部33は、内側凸部32を囲むように環状に形成され、中心穴30と同心円に形成されている。内側凸部32の直径は、スタブエンド11の接触面23aの開口24bの直径よりも大きい。外側凸部33の直径は、スタブエンド11の接触面23aの直径よりも小さい。これにより、内側凸部32および外側凸部33は、スタブエンド11の接触面23aによって接触される。
【0045】
内側凸部34と、外側凸部35は、図6(b)に示すように、主面31bに配置されている。内側凸部34および外側凸部35は、主面31bから軸O方向に沿って突出している。内側凸部34は、中心穴30を囲むように環状に形成され、中心穴30と同心円に形成されている。外側凸部35は、内側凸部34を囲むように環状に形成され、中心穴30と同心円に形成されている。内側凸部34の直径は、スタブエンド12の接触面23aの開口24bの直径よりも大きい。外側凸部35の直径は、スタブエンド12の接触面23aの直径よりも小さい。これにより、内側凸部34および外側凸部35は、スタブエンド12の接触面23aによって接触される。
【0046】
内側凸部34は、径方向において内側凸部32と同じ位置に形成されており、内側凸部32と同形状である。外側凸部35は、径方向において外側凸部33と同じ位置に形成されており、外側凸部33と同形状である。
【0047】
パッキン13は、図6(a)に示すように、内周部36と、外周部37と、を有する。内周部36は、パッキン13のうち中心穴30の縁13eから径方向外側に向かう所定範囲の部分である。内周部36は、外側凸部33および外側凸部35も含む。図6(c)に示すように、内周部36は、表面にPTFEによって被覆された被覆部36aを有している。外周部37は、パッキン13の内周部36よりも径方向外側の部分である。
【0048】
パッキン13の外周部37には、中心を基準として周方向に沿って4つのボルト穴38が形成されている。ボルト穴38は、外側凸部33および外側凸部35の径方向外側に配置されている。
【0049】
(フランジ)
フランジ14は、図3に示すように、スタブエンド11の径方向の外側に、スタブエンド11に対して回転可能に配置されている。フランジ14は、ルーズフランジである。フランジ15は、スタブエンド12の径方向の外側にスタブエンド12に対して回転可能に配置されている。フランジ15は、ルーズフランジである。
【0050】
フランジ14およびフランジ15は、樹脂材料で形成されている。フランジ14およびフランジ15は、ガラス繊維強化ポリプロピレン樹脂(glass fiber reinforced polypropylene(GFPP))で形成する方がより好ましい。
【0051】
フランジ14およびフランジ15は同様の構成であるため、フランジ14を例に挙げて説明する。図7(a)は、フランジ14の正面図である。図7(b)は、図7(a)のCC間の矢視断面図である。図7(c)は、図7(a)のDD間の矢視断面図である。
【0052】
フランジ14は、スタブエンド11のフレア部23より大径の円盤形状に形成されている。
【0053】
フランジ14は、スタブエンド11が挿入される挿入孔41と、挿入孔41の周囲に配置された複数のボルト穴42と、を有する。挿入孔41およびボルト穴42は、フランジ14のパッキン13側の面43から、パッキン13と反対側の面44まで形成されている。本実施形態では、ボルト穴42は4つ形成されている。
【0054】
挿入孔41は、内径が異なる大径部45と小径部46を有する。大径部45は、フランジ14の面43から軸Oに沿って形成されている。大径部45には、スタブエンド11のフレア部23が配置される。小径部46は、大径部45の面44側に配置されている。小径部46は、大径部45から面44まで形成されている。小径部46には、スタブエンド11の中間部22が配置される。スタブエンド11の接触面23aは、フランジ14の面43よりもパッキン13側に若干量突き出ている。本実施形態では、フランジ14の面43よりもスタブエンド11の開口24bの縁23bの方がパッキン13側に若干突き出ており、フランジ14の面43よりもスタブエンド11の外縁23cの方がパッキン13側に若干突き出ている。スタブエンド12の接触面23aとフランジ14の面43の位置関係も同様である。
【0055】
なお、フランジ14は、面44に形成された複数のリブ48と、面44に形成された複数の凹部47とを有する。リブ48は、周方向においてボルト穴42の間に配置されている。リブ48は、直径方向に沿って配置されている。リブ48は、補強のために設けられている。本実施形態では、リブ48は、4つ形成されている。凹部47は、各々のリブ48の周方向における両側に配置されている。凹部47は、肉抜き部である。
【0056】
フランジ14とフランジ15は、互いの面43が対向するように配置されている。
【0057】
(接合構造の組立)
フランジ14の挿入孔41にスタブエンド11が挿入され、フランジ15の挿入孔41にスタブエンド12が挿入される。
【0058】
スタブエンド11の接触面23aとスタブエンド12の接触面23aとの間にパッキン13が配置される。そして、フランジ14のボルト穴42と、パッキン13のボルト穴38と、フランジ15のボルト穴42にボルト16が挿入される。本実施形態では、4つのボルト16が挿入される。
【0059】
挿入されたボルト16の先端にナット17が螺合される。これによって、フランジ14とフランジ15が締結され、スタブエンド11とスタブエンド12によってパッキン13が圧接される。
【0060】
スタブエンド11の流路24と、パッキン13の中心穴30と、スタブエンド12の流路24によって、接続構造3の流路3aが形成される。
【0061】
(接続構造3の超純水用途)
本開示にかかる実施の形態の接続構造3は、例えば超純水の輸送に用いることができる。具体的には、本開示にかかる実施の形態の超純水用の接続構造3は、超純水製造装置内の配管、超純水製造装置からユースポイントに超純水を輸送する配管、及びユースポイントからの超純水返送用配管等として用いることができる。
【0062】
超純水とは、極度に純度の高い水であり、例えば半導体素子などの電子機器の洗浄に好適に用いられるものである。超純水のグレードを表すための指標は多々あるが、この実施形態では、超純水の電気抵抗率は18.2MΩ・cm以上であり、TOCは50ppb以下である。
【0063】
本開示にかかる実施の形態の接続構造3は、超純水に対する要求水質が特に厳格な、原子力発電用水配管、若しくは、医薬品の製造工程、半導体素子又は液晶、より好ましくは半導体素子の製造工程における洗浄などの湿式処理工程で用いられる超純水の輸送配管であることが好ましい。当該半導体素子としても、より高い集積度を有するものが好ましく、具体的には、最小線幅65nm以下の半導体素子の製造工程で用いられることがより好ましい。半導体製造に使用される超純水の品質等に関する規格としては、例えばSEMI F75が挙げられる。
【0064】
(特徴等)
上述したように、スタブエンド11およびスタブエンド12の接触面23aが上記式(2)を満たすように傾斜することによって、パッキン13の内側凸部32、34の潰れを増大することができる。これにより、パッキン13とスタブエンド11およびスタブエンド12の間の隙間が低減し、パーティクルの滞留を抑制することができる。特に、半導体製造の分野では、半導体製品の歩留まりを向上することができる。
【0065】
図8は、本実施形態の接続構造3における一対のスタブエンド11、12によってパッキン13が圧縮された状態を示す模式図である。従来の図11と比較して、図8に示すように、本実施形態の接続構造3では、接触面23aが傾斜しているため、内側凸部32、34の潰れが増大する。このため、内側凸部32の流路3a側においてスタブエンド11とパッキン13の間の隙間(図11の隙間S参照)の発生を低減でき、内側凸部34の流路3a側においてスタブエンド12とパッキン13の間の隙間の発生を低減できる。
【0066】
(他の実施の形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0067】
(A)
上記実施形態では、スタブエンド11とスタブエンド12は同じ構成であるが、接触面23aの勾配が上記式(2)を満たす限り、異なっていてもよい。
【0068】
(B)
上記実施形態では、勾配を有する接触面23aは、図5に示すように、スタブエンド11の端面11eの開口24bの縁23bから外縁23cまでの全体に亘って形成されているが、接触面23aの周囲に勾配が形成されていない部分(軸Oに対して垂直な部分)が形成されていてもよい。
【0069】
(C)
上記実施形態では、フランジ14およびフランジ15の双方ともスタブエンドに対して回転可能なルーズフランジであるが、どちらか一方はスタブエンドに固定されるフランジであってもよい。
【0070】
(D)
上記実施形態では、4つのボルト16によってフランジ14とフランジ15を締結しているが、4つに限らなくてもよい。
【0071】
(E)
上記実施形態では、パッキン13は、内側凸部32、34と外側凸部33、35を有しているが、外側凸部33、35の外側に更に環状に凸部が形成されていてもよいし、外側凸部33、35が形成されていなくてもよい。
【0072】
(実施例)
以下に、実施例を用いて上述した実施の形態について詳しく説明する。
【0073】
スタブエンド11およびスタブエンド12の接続部21の口径を25Aに設定する。
【0074】
図5に示すように、スタブエンド11およびスタブエンド12のフレア部23の外径をd2とし、流路24の内径をd3とする。
【0075】
接触面23aの勾配は、式(2)で計算した。
【0076】
(h1/d1)×100(%)・・・式(2)
また、d1の値は、以下の式(3)で計算した。
【0077】
d1=(d2-d3)/2(mm)・・・式(3)
設計値として、d1、d2、d3を以下の表(1)の値に設定し、h1の値を変更することで勾配の値を変更した。
(表1)
h1を1.0mm、2.0mm、3.0mmに変更することによって、接触面23aの勾配を2.7%、5.3%、10.7%に変更したスタブエンド11およびスタブエンド12を用いて接続構造3を組み立てた。本実施例ではスタブエンド11,12は同じ形状のものを用いた。
【0078】
スタブエンド11の隙間Sが生じる可能性がある部位に貫通孔を形成し、水漏れ試験を行った。具体的には、図9に示すように、スタブエンド11の接触面23aのうち内側凸部32よりも径方向内側からスタブエンド11の端部21aまで貫通孔Qが形成されている。このような貫通孔Qが形成された接続構造3を、図10に示すような水漏れ試験器に接続して水漏れ試験を実施した。
【0079】
スタブエンド11の流路24と手押しポンプ100がチューブ101によって接続される。また、スタブエンド12の流路24は塞がれている。手押しポンプ100を駆動することによって、スタブエンド11の流路24から水が注入される。手押しポンプ100には、水圧計102が設けられている。手押しポンプ100によって水圧をかけたときに、貫通孔Qから水が漏れ出すか否かの試験を行った。
【0080】
また、スタブエンドの接触面の勾配を0%に設定した比較例1の接触構造についても同様に水漏れ試験を行った。実施例1~3および比較例1の各々について3回試験を行ったがいずれも下記表2の結果となった。
(表2)
比較例1の場合、0.01MPaにおいて水漏れが発生したため、貫通孔Qがパッキンによって塞がれていないことがわかる。すなわち、比較例1では、パッキンの凸部にかかる面圧が不足するため、微小な隙間(図11の隙間S参照)が発生し、実際の配管では、パーティクルが滞留することになる。
【0081】
実施例1~3では、1.2MPaまで水圧を上げても水漏れが発生しなかった。これにより、パッキン13の内側凸部32、34に十分な面圧がかかり、パッキン13とスタブエンド11,12との間の隙間が解消されることがわかる。
【0082】
なお、勾配を15%以下に設定することによって、施工時にパッキン13とスタブエンド11,12の間において軸ズレが発生した場合であっても、片締めが発生し難い。
【0083】
一方、勾配を15%よりも大きくして片締めが発生した場合、内側凸部32,34の直径方向において一方側は顕著に潰されるが、他方側はほとんど潰されない。そのため、かえってパッキン13とスタブエンド11、12の間に隙間が発生し、パーティクルが増えることになる。また、パッキン13の内側凸部32,34および外側凸部33、35の一部の圧縮率が不足するため、長期止水性を担保できないといった問題が発生することが考えられる。
【0084】
以上より、勾配(h/d)×100を0.5%以上、18%以下に設定することによって、パッキン13とスタブエンド11,12の間の隙間を低減し、パーティクルの発生を抑制できることがわかる。
【符号の説明】
【0085】
11 :スタブエンド
23 :フレア部
23a :接触面
23b :縁
24 :流路
24b :開口
P1、P2:位置
L1、L2:直線
O :中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11