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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151143
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/2733 20220101AFI20231005BHJP
   H02K 1/22 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H02K1/2733
H02K1/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060590
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 修二
(72)【発明者】
【氏名】新子 剛央
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 弘明
【テーマコード(参考)】
5H601
5H622
【Fターム(参考)】
5H601AA20
5H601AA22
5H601BB20
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD18
5H601DD25
5H601DD32
5H601DD47
5H601EE18
5H601GA15
5H601JJ05
5H601KK30
5H622AA02
5H622CA01
5H622CA05
5H622CA14
5H622CB04
5H622DD01
5H622PP19
(57)【要約】      (修正有)
【課題】トルクリップルおよびコギングトルクを抑制できる回転電機を提供する。
【解決手段】回転電機10は、回転軸J1を中心として回転可能なロータ20と、ロータの径方向外側に配置されるステータと、を備える。ロータ20は、回転軸J1に沿って配置されたロータコア21と、ロータコアの径方向外側に配置され、ロータコアを囲むリングマグネット22と、を有する。リングマグネット22の中心軸J2は、回転軸J1に対して傾斜している。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心として回転可能なロータと、
前記ロータの径方向外側に配置されるステータと、
を備え、
前記ロータは、
前記回転軸に沿って配置されたロータコアと、
前記ロータコアの径方向外側に配置され、前記ロータコアを囲むリングマグネットと、
を有し、
前記リングマグネットの中心軸は、前記回転軸に対して傾斜している、回転電機。
【請求項2】
前記リングマグネットの内周面の一部が、前記ロータコアの外周面と接触する、請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記ロータコアの外周面は、前記リングマグネットの内周面と接触する第1接触部および第2接触部を有し、
前記第1接触部は、回転軸方向における前記ロータコアの中心よりも、回転軸方向一方側に位置し、
前記第2接触部は、回転軸方向における前記ロータコアの中心よりも、回転軸方向他方側に位置し、
径方向において、前記第2接触部は、前記回転軸を挟んで、前記第1接触部の反対側に位置する、請求項1または2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記第1接触部の回転軸方向他方側における、前記ロータコアの外周面と、前記リングマグネットの内周面との間には、第1隙間部が設けられ、
前記第2接触部の回転軸方向一方側における、前記ロータコアの外周面と、前記リングマグネットの内周面との間には、第2隙間部が設けられ、
前記第1隙間部の回転軸方向他方側の端部の径方向の寸法と、前記第2隙間部の回転軸方向一方側の端部の径方向の寸法とは、同じ寸法である、請求項3に記載の回転電機。
【請求項5】
前記第1接触部の回転軸方向他方側における、前記ロータコアの外周面と、前記リングマグネットの内周面との間には、第1隙間部が設けられ、
前記第2接触部の回転軸方向一方側における、前記ロータコアの外周面と、前記リングマグネットの内周面との間には、第2隙間部が設けられ、
前記リングマグネットおよび前記ロータコアは、接着剤を介して互いに固定され、
前記第1隙間部および前記第2隙間部それぞれにおいて、前記接着剤は、前記ロータコアの外周面、および前記リングマグネットの内周面の両方と、回転軸方向に亘って接触する、請求項3または4に記載の回転電機。
【請求項6】
前記第1接触部の回転軸方向他方側における、前記ロータコアの外周面と、前記リングマグネットの内周面との間には、第1隙間部が設けられ、
前記第2接触部の回転軸方向一方側における、前記ロータコアの外周面と、前記リングマグネットの内周面との間には、第2隙間部が設けられ、
前記第1隙間部の径方向の最大寸法および前記第2隙間部の径方向の最大寸法は、それぞれ、0.3mm以下である、請求項3から5のいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項7】
前記中心軸が、前記回転軸に対して成す角度が0.2°以上である、請求項1から6のいずれか一項に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータおよびステータを有する回転電機においては、駆動時の低振動化および低騒音化が要求されている。そのため、例えば、特許文献1には、トルクリップルを抑制する技術として、ロータが備えるリングマグネットの外周面にギャップ形成部を形成するモータ装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-37032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなモータでは、ロータの回転軸に対してリングマグネットの中心軸がずれた状態でリングマグネットがロータコアに固定される場合、リングマグネットからステータに入る磁束が周方向にばらつくため、トルクリップルおよびコギングトルクが増大する虞がある。
【0005】
本発明の一つの態様は、上記事情に鑑みて、トルクリップルおよびコギングトルクを抑制できる回転電機を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の回転電機の一つの態様は、回転軸を中心として回転可能なロータと、前記ロータの径方向外側に配置されるステータと、を備える。前記ロータは、前記回転軸に沿って配置されたロータコアと、前記ロータコアの径方向外側に配置され、前記ロータコアを囲むリングマグネットと、を有する。前記リングマグネットの中心軸は、前記回転軸に対して傾斜している。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、回転電機において、トルクリップルおよびコギングトルクを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態の回転電機を示す模式断面図である。
図2図2は、一実施形態の回転電機の一部を示す図1のII-II断面図である。
図3図3は、一実施形態のロータを示す上面図である。
図4図4は、一実施形態の回転電機の一部を示す図3のIV-IV断面図である。
図5A図5Aは、一実施形態のリングマグネット固定工程を示す第1の断面図である。
図5B図5Bは、一実施形態のリングマグネット固定工程を示す第2の断面図である。
図5C図5Cは、一実施形態のリングマグネット固定工程を示す第3の断面図である。
図6図6は、従来例の回転電機ロータの一部を示す断面図である。
図7図7は、一実施形態の回転電機の一部を示す断面図である。
図8A図8Aは、一実施形態の偏心量と回転径方向の磁気力の関係を示す図である。
図8B図8Bは、一実施形態の偏心量と回転周方向の磁気力の関係を示す図である。
図8C図8Cは、一実施形態の偏心量とトルクリップルの関係を示す図である。
図8D図8Dは、一実施形態の偏心量とコギングトルクの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明において図には、適宜、Z軸を示す。Z軸は、以下に説明する実施形態のロータの回転軸J1が延びる方向を示している。各図に示す回転軸J1は、仮想軸線である。以下の説明においては、回転軸J1が延びる方向、つまりZ軸と平行な方向を「回転軸方向」と呼ぶ。回転軸J1を中心とする径方向を単に「回転径方向」または「径方向」と呼ぶ。回転軸J1を中心とする周方向を単に「回転周方向」または「周方向」と呼ぶ。回転周方向は、各図において矢印θ1または矢印θで示される。軸方向のうちZ軸の矢印が向く側(+Z側)を「上側」または「回転軸方向一方側」と呼ぶ。軸方向のうちZ軸の矢印が向く側と逆側(-Z側)を「下側」または「回転軸方向他方側」と呼ぶ。なお、上側および下側は、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
【0010】
<第1実施形態>
図1に示す本実施形態の回転電機10は、車両に搭載される機器等に取り付けられるモータである。回転電機10が取り付けられる機器は、自動変速機であってもよいし、車両の車軸を駆動する駆動装置であってもよい。回転電機10は、ハウジング11と、ロータ20と、ステータ30と、第1軸受15と、第2軸受16と、を備える。
【0011】
図1に示すように、ハウジング11は、ロータ20、ステータ30、第1軸受15、および第2軸受16を内部に収容する。ハウジング11は、筒状部12と、上カバー部13と、第1軸受保持部14と、を有する。筒状部12は、回転軸J1を中心として回転軸方向に延びる円筒状である。筒状部12は、側壁部12aと、下壁部12bと、第2軸受保持部12cと、を有する。
【0012】
側壁部12aは、回転軸J1を中心として回転軸方向に延びる円筒状である。側壁部12aは、ロータ20、ステータ30、第1軸受15、および第2軸受16を回転径方向に囲む。側壁部12aの上側の端部には、上側に開口する開口部12dが設けられる。
【0013】
下壁部12bは、回転軸J1を中心とする円環板状である。下壁部12bの板面は、回転軸方向を向く。下壁部12bの回転径方向外側の端部は、側壁部12aの下側の端部と繋がる。下壁部12bには、下壁部12bを回転軸方向に貫通する下壁孔12eが設けられる。下壁孔12eは、回転軸J1を中心とする円形状の孔である。
【0014】
第2軸受保持部12cは、下壁部12bから上側に突出する。第2軸受保持部12cは、回転軸J1を中心とする円筒状である。第2軸受保持部12cの内周面には、第2軸受16が保持される。
【0015】
図1に示すように、上カバー部13は、回転軸J1を中心とする円板状である。上カバー部13の板面は、回転軸方向を向く。上カバー部13は、筒状部12の上側の端部に固定される。上カバー部13は、開口部12dを上側から塞ぐ。
【0016】
第1軸受保持部14は、側壁部12aの内周面のうち、ロータ20およびステータ30よりも上側の部分に固定される。第1軸受保持部14は、回転軸J1を中心とする略円環状である。第1軸受保持部14の内周面には、第1軸受15が保持される。
【0017】
ロータ20は、回転軸J1を中心として回転可能である。図1に示すように、ロータ20は、ロータコア21と、リングマグネット22と、シャフト23と、を有する。
【0018】
ロータコア21は、回転軸J1を中心として回転軸方向に延びる円筒状である。ロータコア21は、回転軸J1に沿って配置される。ロータコア21は、シャフト23を回転径方向に囲んでいる。ロータコア21は、磁性を有する。ロータコア21は、例えば、複数の電磁鋼板が回転軸方向に積層されて構成される積層鋼板である。ロータコア21は、ロータコア外周面21aと、貫通孔21bと、を有する。
【0019】
ロータコア外周面21aは、ロータコア21の外側面のうち、回転径方向外側を向く面である。図2に示すように、回転軸方向に見て、ロータコア外周面21aは、回転軸J1を中心とする円形状である。
【0020】
図1に示すように、貫通孔21bは、ロータコア21を回転軸方向に貫通する孔である。貫通孔21bは、回転軸J1を中心とする円形状の孔である。図1に示すように、貫通孔21bには、シャフト23が挿入される。貫通孔21bの内周面には、シャフト23が固定される。これにより、ロータコア21はシャフト23と固定される。
【0021】
図2に示すように、リングマグネット22は、ロータコア21の回転径方向外側に配置される。リングマグネット22は、ロータコア21を回転径方向に囲む。リングマグネット22は、中心軸J2を中心とする環状である。図3に示すように、リングマグネット22の内径R2は、ロータコア21の外径R1よりも大きい。リングマグネット22およびロータコアは、接着剤50を介して互いに固定される。図4に示すように、中心軸J2は、回転軸J1に対して、傾斜している。中心軸J2と回転軸J1とが成す傾斜角度αは、0.2°以上であることが好ましい。本実施形態において、傾斜角度αは、0.25°である。ロータコア21に対するリングマグネット22の詳細な配置等については、後段で詳細に説明する。リングマグネット22の回転軸方向の長さは、ロータコア21の回転軸方向の長さとほぼ同じ長さである。本実施形態において、リングマグネット22は、ネオジム磁石である。なお、リングマグネット22は、フェライト磁石等であってもよい。
【0022】
なお、以下の説明において、中心軸J2に平行な方向を単に「中心軸方向」と呼び、中心軸J2を中心とする径方向を単に「中心径方向」と呼び、中心軸J2を中心とする周方向、つまり中心軸J2の軸回りを単に「中心周方向」と呼ぶ。中心周方向は、各図において矢印θ2または矢印θで示される。
【0023】
図2に示すように、リングマグネット22は、中心周方向に沿って複数の磁極を有する。より詳細には、リングマグネット22は、複数のN極部22Nと、複数のS極部22Sと、を有する。複数のN極部22Nは、それぞれ、中心径方向外側を向く面の磁極がN極である。複数のN極部22Nは、中心周方向に沿って、互いに略等間隔をあけて配置される。本実施形態において、N極部22Nは、4個設けられる。複数のS極部22Sは、中心径方向外側を向く面の磁極がS極である。複数のS極部22Sは、中心周方向に沿って、互いに略等間隔をあけて配置される。本実施形態において、S極部22Sは、4個設けられる。N極部22NとS極部22Sとは、中心周方向に沿って、交互に配置される。
【0024】
図1に示すように、シャフト23は、回転軸J1を中心として回転軸方向に延びる略円柱状である。シャフト23は、ロータコア21の貫通孔21bに固定される。シャフト23の上側の部分は、ロータコア21よりも上側に延び、第1軸受15に支持される。シャフト23の下側の部分は、ロータコア21よりも下側に延び、下壁孔12eを介して、ハウジング11の外部に突出する。シャフト23の下側の部分は、第2軸受16に支持される。シャフト23は、第1軸受15および第2軸受16によって、回転軸J1を中心として回転可能に支持される。これにより、ロータ20は、回転軸J1を中心として回転可能である。
【0025】
第1軸受15は、シャフト23のうちロータコア21よりも上側の部分を回転可能に支持する。第2軸受16は、シャフト23のうちロータコア21よりも下側の部分を回転可能に支持する。本実施形態において、第1軸受15および第2軸受16は、ボールベアリングである。第1軸受15および第2軸受16は、ボールベアリング以外の転がり軸受であってもよいし、滑り軸受であってもよい。
【0026】
図1に示すように、ステータ30は、ロータ20の回転径方向外側、すなわち径方向外側に配置される。ステータ30は、ロータ20と回転径方向に隙間を介して対向する。ステータ30は、側壁部12aの内周面に固定される。ステータ30は、ステータコア31と、インシュレータ37と、複数のコイル38と、を有する。
【0027】
ステータコア31は、回転軸J1を中心として回転軸方向に延びる環状である。ステータコア31は、ロータ20と回転径方向に隙間を介して対向する。ステータコア31は、磁性を有する。ステータコア31は、例えば、複数の電磁鋼板が回転軸方向に積層されて構成される積層鋼板である。ステータコア31は、コアバック部32と、複数のティース部33と、を有する。
【0028】
図1に示すように、コアバック部32は、回転軸J1を中心とする環状である。コアバック部32の外周面は、側壁部12aの内周面に固定される。これにより、ステータ30は、ハウジング11に固定される。
【0029】
図2に示すように、複数のティース部33は、それぞれ、コアバック部32から回転径方向内側に向けて延びている。複数のティース部33は、それぞれ、ロータ20と回転径方向に隙間をあけて対向する。複数のティース部33は、コアバック部32の内周面に沿って互いに間隔をあけて配置される。本実施形態において、ティース部33は、12個設けられる。複数のティース部33は、それぞれ、ティース本体部34と、アンブレラ部35と、を有する。
【0030】
ティース本体部34は、コアバック部32の内周面から回転径方向内側に延びている。回転軸方向に見て、ティース本体部34は、略長方形状である。
【0031】
図2に示すように、アンブレラ部35は、ティース本体部34の先端、すなわち回転径方向内側の端部と繋がっている。アンブレラ部35は、ティース本体部34よりも回転周方向の両側に突出している。回転軸方向に見て、アンブレラ部35の回転径方向内側を向く面は、回転軸J1を中心とする円弧状である。アンブレラ部35の回転径方向内側の端部は、ロータ20と回転径方向に隙間をあけて対向する。回転周方向において、隣り合うアンブレラ部35同士は、空隙部60を介して、互いに離れて配置される。空隙部60は、回転周方向に互いに隣り合うアンブレラ部35同士の隙間である。
【0032】
インシュレータ37は、ステータコア31とコイル38とを絶縁する。インシュレータ37は、絶縁性を有する。本実施形態において、インシュレータ37は、樹脂製である。図1に示すように、インシュレータ37は、複数のティース部33のそれぞれに装着される。
【0033】
複数のコイル38は、それぞれ、インシュレータ37を介して、ティース部33に装着される。複数のコイル38のそれぞれには、図示しない外部電源から電流が供給される。本実施形態において、コイル38は、12個設けられる。
【0034】
次に、ロータコア21に対するリングマグネット22の詳細な配置等について説明する。図4は、本実施形態の回転電機10の一部を示す断面図である。なお、図4では、ロータコア21と、リングマグネット22との配置等を分かり易くするため、本実施形態の傾斜角度αである0.25°よりも大きな角度で中心軸J2を傾けた状態のリングマグネット22を示す。
【0035】
上述のように、本実施形態において、リングマグネット22の内径R2は、ロータコア21の外径R1よりも大きく、リングマグネット22の中心軸J2は、回転軸J1に対して傾斜している。本実施形態において、回転軸J1と中心軸J2とが成す角度である傾斜角度αは、0.25°である。マグネット内周面22aは、ロータコア外周面21aの一部である第1接触部21dおよび第2接触部21eの2箇所において、ロータコア外周面21aと接触する。すなわち、ロータコア外周面21aは、マグネット内周面22aと接触する第1接触部21dおよび第2接触部21eを有する。また、マグネット内周面22aの一部が、ロータコア外周面21aと接触する。
【0036】
第1接触部21dは、回転軸J1と直交し、回転軸方向におけるロータコア21の中心を通るロータコア中心線L1よりも、上側、すなわち回転軸方向一方側に位置する。ロータコア中心線L1は、回転軸J1と直交する方向に延びる仮想線である。本実施形態において、第1接触部21dは、ロータコア21の上側縁部に位置する。第1接触部21dにおいて、ロータコア21の上側縁部とリングマグネット22の上側縁部とが、互いに接触する。
【0037】
第2接触部21eは、ロータコア中心線L1よりも、下側、すなわち回転軸方向他方側に位置する。本実施形態において、第2接触部21eは、ロータコア21の下側縁部に位置する。第2接触部21eにおいて、ロータコア21の下側縁部とリングマグネット22の下側縁部とが、互いに接触する。第2接触部21eは、回転軸J1を挟んで、第1接触部21dの反対側に位置する。
【0038】
図4に示すように、第1接触部21dの下側、すなわち回転軸方向他方側における、ロータコア外周面21aと、マグネット内周面22aとの間には、第1隙間部G1が設けられる。第1隙間部G1において、ロータコア外周面21aと、マグネット内周面22aとは互いに回転径方向に離れている。回転周方向に見て、第1隙間部G1は、略三角形状である。第1隙間部G1には、接着剤50が設けられる。第1隙間部G1において、接着剤50は、ロータコア外周面21a、およびマグネット内周面22aの両方と、回転軸方向に亘って接触する。
【0039】
第2接触部21eの上側、すなわち回転軸方向一方側における、ロータコア外周面21aと、マグネット内周面22aとの間には、第2隙間部G2が設けられる。第2隙間部G2において、ロータコア外周面21aと、マグネット内周面22aとは互いに回転径方向に離れている。回転周方向に見て、第2隙間部G2は、略三角形状である。第2隙間部G2には、接着剤50が設けられる。第2隙間部G2において、接着剤50は、ロータコア外周面21a、およびマグネット内周面22aの両方と、回転軸方向に亘って接触する。
【0040】
よって、本実施形態によれば、第1隙間部G1および第2隙間部G2それぞれにおいて、接着剤50は、ロータコア外周面21a、およびマグネット内周面22aの両方と、回転軸方向に亘って接触する。そのため、リングマグネット22が、ロータコア21に対して傾斜して配置されても、リングマグネット22とロータコア21とを互いに固定できる。したがって、ロータコア21とリングマグネット22との相対的な位置を好適に決めることができる。なお、接着剤50としては、例えば、エポキシ樹脂系接着剤、メラミン樹脂系接着剤およびフェノール樹脂系接着剤などの熱硬化性を有する接着剤を用いることができる。本実施形態において、接着剤50は、エポキシ樹脂系接着剤である。
【0041】
また、本実施形態において、第1隙間部G1の下側、すなわち回転軸方向他方側の端部の回転径方向の寸法である第1隙間幅LG1と、第2隙間部G2の上側、すなわち回転軸方向一方側の端部の回転径方向の寸法である第2隙間幅LG2とは、同じ寸法である。そのため、中心軸J2と直交し、リングマグネット22の中心軸方向の中心を通るマグネット中心線L2と中心軸J2との交点に位置するマグネット中心22gが、回転軸J1と重なる。マグネット中心線L2は、中心軸J2と直交する方向に延びる仮想線であるロータ20が回転軸J1回りに回転する際に、マグネット中心22gは、回転軸J1上に位置する。よって、ロータ20が回転軸J1回りに回転する際に、リングマグネット22の外周面のうち中心軸方向の中心の部分は、回転軸J1を中心として回転する。以下の説明では、マグネット中心22gと回転軸J1との間の回転径方向の距離を偏心量Leと呼ぶ。なお、本実施形態では、上述のように、マグネット中心22gが、回転軸J1と重なるため、偏心量Leはゼロである。
【0042】
図4に示すように、第1隙間部G1における回転径方向の寸法は、第1隙間部G1の下側の端部で最大となる。本実施形態において、第1隙間部G1における回転径方向の最大寸法である第1最大隙間幅LGm1は、0.3mm以下である。なお、第1最大隙間幅LGm1は、第1隙間幅LG1と同じ寸法である。第2隙間部G2における回転径方向の寸法は、第2隙間部G2の上側の端部で最大となる。本実施形態において、第2隙間部G2における回転径方向の最大寸法である第2最大隙間幅LGm2は、0.3mm以下である。なお、第2最大隙間幅LGm2は、第2隙間幅LG2と同じ寸法である。よって、本実施形態によれば、第1最大隙間幅LGm1および第2最大隙間幅LGm2は、それぞれ、0.3mm以下である。よって、第1隙間部G1および第2隙間部G2の回転径方向の寸法を小さく設けることができる。そのため、第1隙間部G1および第2隙間部G2それぞれにおいて、接着剤50は、ロータコア外周面21a、およびマグネット内周面22aの両方と、回転軸方向に亘って安定して接触できる。よって、接着剤50を介して、リングマグネット22をロータコア21に安定的に接着して固定できる。
【0043】
図4に示すように、リングマグネット22の外周面と、アンブレラ部35の回転径方向内側を向く面との隙間のうち、第1隙間部G1の回転径方向外側に位置する部分を第3隙間部G3と呼ぶ。リングマグネット22の外周面は、中心軸方向に沿って直線状に延び、アンブレラ部35の回転径方向内側を向く面は、回転軸方向に沿って直線状に延びる。そのため、第3隙間部G3の回転径方向の寸法の回転軸方向における平均寸法である第1間隔LS1は、リングマグネット22の外周面のうち、中心軸方向の中心に位置する部分である第1外周部22cと、アンブレラ部35との距離である。リングマグネット22の外径をR3、回転軸J1とアンブレラ部35の回転径方向内側を向く面までの径方向の距離をR4とする場合、第1間隔LS1は、R4-R3×cosαである。
【0044】
一方、リングマグネット22の外周面と、アンブレラ部35の回転径方向内側を向く面との隙間のうち、第2隙間部G2の回転径方向外側に位置する部分を第4隙間部G4と呼ぶ。第4隙間部G4の回転径方向の寸法の回転軸方向における平均寸法である第2間隔LS2は、リングマグネット22の外周面のうち、中心軸方向の中心に位置する部分である第2外周部22dと、アンブレラ部35との距離である。本実施形態において、第2間隔LS2は、R4-R3×cosαである。したがって、本実施形態において、第1間隔LS1と第2間隔LS2とは、同じ寸法である。上述のように、本実施形態では、偏心量Leがゼロであるため、第1間隔LS1と第2間隔LS2とが同じ寸法になる。そのため、ロータ20が回転軸J1回りに回転する際に、ロータ20から各ティース部33に流れる磁束の差分を抑制できる。したがって、後段で説明するように、本実施形態の回転電機10では、トルクリップルおよびコギングトルクを好適に抑制できる。
【0045】
次に、本実施形態における、回転電機10の製造工程のうち、ロータコア21にリングマグネット22を固定する、リングマグネット固定工程Prについて説明する。なお、本明細書において「作業者等」とは、作業を行う作業者および組立装置等を含む。リングマグネット固定工程Prの作業は、作業者のみによって行われてもよいし、組立装置のみによって行われてもよいし、作業者と組立装置とによって行われてもよい。また、以下の説明において、図5Aから図5Cの各図に示すZ2軸は、リングマグネット固定工程Prにおいて、リングマグネット22を移動する方向である。Z2軸の矢印が向く側(+Z2側)を「Z2方向の一方側」と呼び、Z軸の矢印が向く側と逆側(-Z2側)を「Z2方向の他方側」と呼ぶ。
【0046】
図5Aに示すように、回転電機10の製造工程のうち、リングマグネット固定工程Prよりも以前の工程において、作業者等は、ロータコア21の貫通孔21bにシャフト23を固定する。リングマグネット固定工程Prにおいて、作業者等は、まず、ロータコア外周面21aに、接着剤50を塗布する。このとき、接着剤50の回転径方向の厚みは、0.2mm以上であることが好ましい。本実施形態において、接着剤50の回転径方向の厚みは、0.3mm程度である。次に、作業者等は、ロータコア21よりもZ2方向の一方側(+Z2側)から、リングマグネット22をZ2方向の他方側(-Z2側)に移動させて、図5Bに示すように、リングマグネット22の内部にロータコア21を挿入する。このとき、ロータコア外周面21aとマグネット内周面22aとは、接着剤50を介して接触する。
【0047】
次に、作業者等は、Z2軸と略直交する方向を向く力である外力Fを、シャフト23に加える。これにより、図5Cに示すように、ロータコア21およびシャフト23が、中心軸J2に対して傾き、ロータコア外周面21aは、第1接触部21dおよび第2接触部21eにおいて、マグネット内周面22aと接触する。第1接触部21dの回転軸方向他方側には第1隙間部G1が設けられ、第2接触部21eの回転軸方向一方側には、第2隙間部G2が設けられる。第1隙間部G1および第2隙間部G2それぞれの全域において、ロータコア外周面21aとマグネット内周面22aとは、接着剤50を介して接触する。
【0048】
次に、作業者等は、ロータコア外周面21aの第1接触部21dおよび第2接触部21eの両方が、マグネット内周面22aと接触する状態で、ロータコア21およびリングマグネット22とを治具等によって互いに固定し、図示しない加熱炉において、接着剤50を加熱して硬化させる。作業者等は、接着剤50が硬化して、ロータコア21とリングマグネット22とが、互いに固定されると、ロータ20を加熱炉から取り出し、リングマグネット固定工程Prが完了する。リングマグネット固定工程Prが完了すると、図4に示すロータ20が構成される。
【0049】
よって、本実施形態によれば、リングマグネット固定工程Prにおいて、リングマグネット22の内部にシャフト23を固定したロータコア21を挿入した後に、シャフト23に外力Fを加えて、ロータコア外周面21aをマグネット内周面22aに突き当てた状態で、ロータコア21とリングマグネット22とを互いに接着して固定する簡易な作業によって、リングマグネット22を回転軸J1に対して傾けて配置できる。したがって、ロータ20および回転電機10の製造工数が増大することを抑制できる。
【0050】
次に、本実施形態の回転電機10および従来例の回転電機210における、トルクリップルおよびコギングトルクについて説明する。図6に示すように、従来例の回転電機210のロータ220では、回転軸J1と中心軸J2とが、互いに平行に配置される。ロータコア外周面21aとマグネット内周面222aとは、接着剤250を介して、互いに接触する。上述のように、リングマグネット222の内径R2は、ロータコア21の外径R1よりも大きい。回転軸J1と中心軸J2とが互いに回転径方向に平行にずれる場合、つまり、ロータコア21に対してリングマグネット222が偏心して配置される場合に、マグネット中心222gと回転軸J1との間の回転径方向の距離である偏心量Leは、回転軸J1と中心軸J2との間の回転径方向の距離になる。また、従来例において、偏心量Leの最大値である最大偏心量Lemax2は、R2-R1である。
【0051】
図6に示すように、従来例において、第3隙間部G3は、リングマグネット222の外周面と、アンブレラ部35の回転径方向内側を向く面との隙間のうち、中心軸J2が回転軸J1から回転径方向にずれる方向と反対側の部分である。従来例において、第3隙間部G3の回転径方向の寸法の回転軸方向における平均寸法である第3間隔LS3は、R4-R3×cosα+Leである。一方、従来例において、第4隙間部G4は、リングマグネット222の外周面と、アンブレラ部35の回転径方向内側を向く面との隙間のうち、中心軸J2が回転軸J1から回転径方向にずれる側の部分である。従来例において、第4隙間部G4の回転径方向の寸法の回転軸方向における平均寸法である第4間隔LS4は、R4-R3×cosα-Leである。よって、従来例において、中心軸J2が回転軸J1に対して回転径方向に平行にずれる場合、第3間隔LS3と第4間隔LS4は異なる寸法になる。したがって、従来例において、ロータコア21対してリングマグネット222が偏心して配置されると、ロータ20が回転軸J1回りに回転する際に、ロータ20から各ティース部33それぞれに流れる磁束の差分が増大する。また、第3間隔LS3と第4間隔LS4との差分である第2間隔差LSd2は、2×Leである。よって、偏心量Leが大きくなるほど、ロータ20が回転軸J1回りに回転する際に、ロータ20から各ティース部33それぞれに流れる磁束の差分が増大し、トルクリップルおよびコギングトルクが増大する。なお、第2間隔差LSd2の最大寸法である第2最大間隔差LSdmax2は、2×(R2-R1)である。なお、第2最大間隔差LSdmax2は、リングマグネット22の外周面とアンブレラ部35の回転径方向内側を向く面との間の隙間の回転軸方向における平均の寸法の回転周方向のばらつきの最大値である。
【0052】
次に、本実施形態における、傾斜角度αと偏心量Leとの関係について説明する。上述のように、本実施形態において、中心軸J2と回転軸J1とが成す角度である傾斜角度αが0.25°のとき、ロータコア外周面21aは、マグネット内周面22aと、第1接触部21dおよび第2接触部21eの2箇所で接触するため、偏心量Leがゼロになる。傾斜角度αが、0.25°より小さい場合、ロータコア外周面21aは、マグネット内周面22aと2箇所で接触しないため、マグネット中心22gが、回転軸J1から回転径方向にずれて位置する場合、リングマグネット22がロータコア21に対して偏心する。
【0053】
図7に示すように、本実施形態において、傾斜角度αが0.25°よりも小さい場合、ロータコア外周面21aは、マグネット内周面22aと2箇所で接触しない。図7には、ロータコア外周面21aがマグネット内周面22aと接触点21hの1箇所で接触する場合のロータ20を示す。この場合、偏心量Leが最大となる。マグネット中心線L2と、中心軸J2との交点に位置するマグネット中心22gは、回転軸J1から回転径方向にずれる。リングマグネット22の中心軸方向の長さをLrmとするとき、偏心量Leの最大値である最大偏心量Lemax3は、R2-R1-Lrm×sinα/2となる。上述のように、中心軸J2が回転軸J1と平行に配置される従来例において、最大偏心量Lemax2は、R2-R1である。したがって、中心軸J2を回転軸J1に対して傾斜させてリングマグネット22を配置することにより、最大偏心量を低減できる。
【0054】
図7に示すように、第5隙間部G5は、リングマグネット222の外周面と、アンブレラ部35の回転径方向内側を向く面との隙間のうち、マグネット中心22gが回転軸J1から回転径方向にずれる方向と反対側の部分である。第5隙間部G5の回転径方向の寸法の回転軸方向における平均寸法である第5間隔LS5は、R4-R3×cosα+Lemax3である。一方、第6隙間部G6は、リングマグネット222の外周面と、アンブレラ部35の回転径方向内側を向く面との隙間のうち、マグネット中心22gが回転軸J1から回転径方向にずれる側の部分である。第6隙間部G6の回転径方向の寸法の回転軸方向における平均寸法である第6間隔LS6は、R4-R3×cosα-Lemax3である。よって、第5間隔LS5と第6間隔LS6は異なる寸法である。しかしながら、第5間隔LS5と第6間隔LS6との差分の最大寸法である第3最大間隔差LSdmax3は、2×(R2-R1)-Lrm×sinαとなり、上述の、従来例における第2最大間隔差LSdmax2よりも小さい。したがって、本実施形態では、中心軸J2を回転軸J1に対して傾斜させて、リングマグネット22を配置することにより、ロータ20が回転軸J1回りに回転する際に、ロータ20から各ティース部33に流れる磁束の差分を抑制できる。なお、第3最大間隔差LSdmax3は、リングマグネット22の外周面とアンブレラ部35の回転径方向内側を向く面との間の隙間の回転軸方向における平均の寸法の回転周方向のばらつきの最大値である。
【0055】
また、本実施形態によれば、上述のように、中心軸J2が、回転軸J1に対して成す傾斜角度αが0.2°以上である。そのため、第3最大間隔差LSdmax3を抑制できる。そのため、ロータ20が回転軸J1回りに回転する際に、ロータ20から各ティース部33に流れる磁束の差分を好適に抑制できる。したがって、回転電機10の駆動時において、トルクリップルおよびコギングトルクを抑制できる。
【0056】
次に、本実施形態および従来例における、トルクリップルおよびコギングトルクについて説明する。図8Aは、本実施形態の回転電機10と従来例の回転電機210における、偏心量Leと1つのティース部33に加わる回転径方向の磁気力のリップルFrとの関係を示す図である。横軸は、偏心量Leである。縦軸は、回転径方向の磁気力のリップルFrである。従来例では、偏心量Leが大きくなるにしたがって、回転径方向の磁気力のリップルFrが大きくなる。これは、上述のように、偏心量Leが大きくなるにしたがって、第3間隔LS3と第4間隔LS4との差分である第2間隔差LSd2が大きくなるため、ロータ20が回転軸J1回りに回転する際に、ロータ20から各ティース部33それぞれに流れる磁束の差分が増大することに起因する。
【0057】
一方、本実施形態では、上述のように、偏心量Leがゼロであるため、第1間隔LS1と第2間隔LS2は同じ寸法となり、第1間隔LS1と第2間隔LS2との差分である第1間隔差LSd1がゼロである。そのため、ロータ20が回転軸J1回りに回転する際に、ロータ20から各ティース部33それぞれに流れる磁束の差分を抑制でき、回転径方向の磁気力のリップルFrを抑制できる。
【0058】
図8Bは、本実施形態の回転電機10と従来例の回転電機210における、偏心量Leと1つのティース部33に加わる回転周方向の磁気力のリップルFθ1との関係を示す図である。横軸は、偏心量Leである。縦軸は、回転周方向の磁気力のリップルFθ1である。従来例では、偏心量Leに依らず、回転周方向の磁気力のリップルFθ1がほぼ一定である。
【0059】
一方、本実施形態の回転周方向の磁気力のリップルFθ1は、従来例の偏心量Leがゼロになる場合における回転周方向の磁気力のリップルFθ1よりも小さい。
【0060】
図8Cは、本実施形態の回転電機10と従来例の回転電機210における、偏心量LeとトルクリップルTrとの関係を示す図である。横軸は、偏心量Leである。縦軸は、トルクリップルTrである。従来例では、偏心量Leが大きくなるにしたがって、トルクリップルTrが増加する。これは、図8Aに示すように、偏心量Leが大きくなるにしたがって、回転径方向の磁気力のリップルFrが増加することに主に起因する。
【0061】
一方、本実施形態のトルクリップルTrは、従来例の偏心量LeがゼロにおけるトルクリップルTrよりも小さい。これは、図8Bに示すように、偏心量Leがゼロにおいて、回転周方向の磁気力のリップルFθ1が従来例よりも小さいことに主に起因する。よって、本実施形態では、リングマグネット22を回転軸J1に対して傾けて配置することによって、トルクリップルが増大することを抑制できる。
【0062】
図8Dは、本実施形態の回転電機10と従来例の回転電機210における、偏心量LeとコギングトルクTcとの関係を示す図である。横軸は、偏心量Leである。縦軸は、コギングトルクTcである。従来例では、偏心量Leが大きくなるにしたがって、コギングトルクTcが大きくなる。偏心量Leが大きくなるにしたがって、第4隙間部G4の回転径方向の寸法の回転軸方向における平均寸法である第4間隔LS4が小さくなる。そのため、偏心量Leが大きくなるにしたがって、ロータ20から各ティース部33のそれぞれに流れる最大の磁束密度が大きくなり、ロータ20が回転軸J1回りに回転する際に、ロータ20から各ティース部33のそれぞれに流れる磁束密度の変動が増大することに起因するものと推察される。
【0063】
一方、本実施形態のコギングトルクTcは、従来例の偏心量LeがゼロにおけるコギングトルクTcよりも小さい。コギングトルクTcは、図2に示すように、透磁率が高いアンブレラ部35同士の回転周方向の間に、透磁率が小さい空隙部60が設けられるために、回転周方向における、アンブレラ部35と空隙部60との透磁率の差分によって、ロータ20の回転時に、ロータ20から各ティース部33に入る磁束密度が変化するために発生する。これに鑑みると、本実施形態では、リングマグネット22が回転軸J1に対して傾いて配置されるため、図4に示すように、リングマグネット22とアンブレラ部35との間の回転径方向の寸法が、回転軸方向において異なる。そのため、回転軸方向において、リングマグネット22からアンブレラ部35に入る磁束密度が異なり、回転軸方向におけるリングマグネット22からアンブレラ部35間の透磁率が実質的に異なる。そのため、回転周方向におけるアンブレラ部35と空隙部60との透磁率の差分の影響が抑制されるため、ロータ20の回転時に、ロータ20から各ティース部33に入る磁束密度の変動を抑制でき、コギングトルクが抑制されるものと推察される。
【0064】
本実施形態によれば、ロータ20は、回転軸J1に沿って配置されたロータコア21と、ロータコア21の回転径方向、すなわち径方向外側に配置され、ロータコア21を囲むリングマグネット22と、を有し、リングマグネット22の中心軸J2は、回転軸J1に対して傾斜している。よって、中心軸J2が回転軸J1と平行に設けられる構成と比較して、回転軸J1に対するリングマグネット22の回転径方向の偏心量Leの最大値である最大偏心量を低減できる。そのため、リングマグネット22外周面とアンブレラ部35の回転径方向内側を向く面との間の隙間の回転軸方向における平均の寸法の回転周方向のばらつきの最大値である最大間隔差を低減できる。そのため、ロータ20が回転軸J1回りに回転する際に、ロータ20から各ティース部33それぞれに流れる磁束の差分を抑制できる。また、ロータ20の回転時に、ロータ20から各ティース部33に入る磁束密度の変動を抑制できる。したがって、トルクリップルおよびコギングトルクを抑制でき、回転電機10の駆動時における騒音および振動を抑制できる。
【0065】
本発明は上述の実施形態に限られず、本発明の技術的思想の範囲内において、他の構成および他の方法を採用することもできる。例えば、ステータコアが有するティース部の個数は12個に限定されず、11個以下であってもよく、13個以上であってもよい。また、ステータコアは、ステータコアの回転径方向外側の端部がロータと対向し、ティース部が回転径方向外側に向けて突出する、アウターロータ構成の回転電機に用いられるステータコアであってもよい。
【0066】
また、リングマグネットの磁極の個数は8個に限定されず、7個以下であってもよく、9個以上であってもよい。また、リングマグネットの傾斜角度は2.5°に限定されず、ティース部の個数およびリングマグネットの磁極の個数、マグネットの中心軸方向の長さ、マグネットとステータとの間の距離などに応じて、適宜定めることができる。
【0067】
本発明が適用される回転電機は、モータに限られず、発電機であってもよい。回転電機の用途は、特に限定されない。回転電機は、車両以外の機器に搭載されてもよい。本発明が適用される回転電機の用途は、特に限定されない。回転電機は、例えば、車軸を回転させる用途以外の用途で車両に搭載されてもよいし、車両以外の機器に搭載されてもよい。
以上、本明細書において説明した構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0068】
10…回転電機、20…ロータ、21…ロータコア、22…リングマグネット、21d…第1接触部、21e…第2接触部、50…接着剤、30…ステータ、G1…第1隙間部、G2…第2隙間部、J1…回転軸、J2…中心軸、L1…ロータコア中心線
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D