(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151158
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/01 123
B41J2/01 305
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060613
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(72)【発明者】
【氏名】福井 優悟
(72)【発明者】
【氏名】小林 昭仁
(72)【発明者】
【氏名】川俣 範幸
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB06
2C056EB29
2C056EB30
2C056EC06
2C056EC12
2C056EC28
2C056EC29
2C056HA42
2C056HA60
(57)【要約】
【課題】前処理剤が揮発成分を含む場合でも、被記録媒体に塗布された前処理剤が揮発してヘッド内のインクと反応することを抑制する画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置は冷却部71~75により前処理剤80を冷却させる。冷却部71はタンク77に収容された前処理剤80を冷却する。冷却部72はサブパウチ8に収容された前処理剤80を冷却する。冷却部73Aは前処理剤流路26の内側の前処理剤80を冷却する。冷却部73Bは前処理剤流路27の内側の前処理剤80を冷却する。冷却部74はヘッド14Aの内側の前処理剤80を冷却する。冷却部75はプラテン15に載置された被記録媒体に塗布された前処理剤80を冷却する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するヘッドと、
揮発性を有する揮発成分を含み、且つ前記インクと反応する前処理剤を冷却する冷却部と
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記前処理剤を吐出する吐出部を備え、
前記冷却部は、前記吐出部により吐出される前の前記前処理剤を冷却すること
を特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記前処理剤を収容する収容部を備え、
前記冷却部は、前記収容部に収容された前記前処理剤を冷却することを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記収容部は、断熱材を有することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記前処理剤を吐出する吐出部と、
前記前処理剤を収容する収容部とを備え、
前記冷却部は、前記収容部と前記吐出部とをつなぐ流路内の前記前処理剤を冷却することを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記冷却部は、前記吐出部内の前記前処理剤を冷却することを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記前処理剤が塗布された被記録媒体を支持するプラテンを備え、
前記冷却部は、前記被記録媒体に塗布された前記前処理剤を、前記プラテンを介して冷却することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記冷却部を制御する第一制御部を備え、
前記第一制御部は、温度を計測する温度計側部により計測された温度が所定温度以上である場合、及び湿度を計測する湿度計側部により計測された湿度が所定湿度以下である場合の少なくとも一方の場合、前記冷却部に前記前処理剤を冷却させることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記冷却部を制御する第二制御部を備え、
前記第二制御部は、所定時間内における前記画像形成装置の稼働時間に基づき、前記冷却部を制御することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記冷却部は、前記前処理剤の温度が前記前処理剤の凝固点よりも高くなるように前記前処理剤を冷却することを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷刷媒体に吐出されたインクの定着を向上させるために、インクの吐出前に前処理剤を印刷媒体に塗布するプリンタが知られている。特許文献1に記載のプリンタは、前処理剤を布帛に塗布し、塗布された前処理剤で濡れた状態の布帛にインクを吐出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
布帛に塗布された前処理剤は、インクを吐出するときに揮発する可能性がある。揮発した前処理剤がインクを吐出するインクジェットノズルに付着すると、付着した前処理剤がインクジェットノズル内のインクと反応し、例えばインクが増粘、または凝集する場合がある。この場合、インクジェットノズルがインクを吐出しにくくなるという問題点がある。又、例えば、インクジェットノズル内のインクが前処理剤と反応して色変化する場合があるという問題点がある。
【0005】
本発明の目的は、前処理剤が揮発成分を含む場合でも、被記録媒体に塗布された前処理剤が揮発してヘッド内のインクと反応することを抑制する画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る画像形成装置は、インクを吐出するヘッドと、揮発性を有する揮発成分を含み、且つ前記インクと反応する前処理剤を冷却する冷却部とを備えることを特徴とする。
【0007】
上記態様によれば、冷却部は前処理剤を冷却する。これにより、被記録媒体に塗布された前処理剤は、冷却されない前処理剤と比較して、揮発しにくくなる。よって、画像形成装置は、前処理剤が揮発成分を含む場合でも、前処理剤が揮発してヘッド内のインクと反応することを抑制できる。
【0008】
前記前処理剤を吐出する吐出部を備え、前記冷却部は、前記吐出部により吐出される前の前記前処理剤を冷却してもよい。
【0009】
この場合、冷却部は、吐出部により吐出される前の前処理剤を冷却する。冷却された前処理剤が吐出されるので、吐出後の前処理剤は、吐出される前に冷却されない前処理剤と比べて揮発しにくくなる。よって、画像形成装置は、前処理剤が揮発成分を含む場合でも、前処理剤が揮発してヘッド内のインクと反応することを抑制できる。
【0010】
前記前処理剤を収容する収容部を備え、前記冷却部は、前記収容部に収容された前記前処理剤を冷却してもよい。
【0011】
この場合、冷却部は、収容部に収容された前処理剤を冷却する。収容部にて冷却された前処理剤が吐出されるので、吐出後の前処理剤は、収容部にて冷却されない前処理剤と比べて揮発しにくくなる。よって、画像形成装置は、前処理剤が揮発成分を含む場合でも、前処理剤が揮発してヘッド内のインクと反応することを抑制できる。
【0012】
前記収容部は、断熱材を有してもよい。
【0013】
この場合、収容部は、冷却部により冷却された前処理剤の温度が収容部の周囲の大気により上昇することを抑制する。冷却部にて冷却された前処理剤が、周囲の大気による温度状態が抑制された状態で吐出されるので、吐出後の前処理剤は、断熱材を有さない収容部に収容された前処理剤と比較して、揮発しにくくなる。よって、画像形成装置は、前処理剤が揮発成分を含む場合でも、前処理剤が揮発してヘッド内のインクと反応することを抑制できる。
【0014】
前記前処理剤を吐出する吐出部と、前記前処理剤を収容する収容部とを備え、前記冷却部は、前記収容部と前記吐出部とをつなぐ流路内の前記前処理剤を冷却してもよい。
【0015】
この場合、冷却部は、収容部と吐出部とをつなぐ流路内の前処理剤を冷却する。流路にて冷却された前処理剤が吐出されるので、吐出後の前処理剤は、流路にて冷却されない前処理剤と比べて揮発しにくくなる。よって、画像形成装置は、前処理剤が揮発成分を含む場合でも、前処理剤が揮発してヘッド内のインクと反応することを抑制できる。
【0016】
前記冷却部は、前記吐出部内の前記前処理剤を冷却してもよい。
【0017】
この場合、冷却部は、吐出部内の前処理剤を冷却する。吐出部にて冷却された前処理剤が吐出されるので、吐出後の前処理剤は、吐出部にて冷却されない前処理剤と比べて揮発しにくくなる。よって、画像形成装置は、前処理剤が揮発成分を含む場合でも、前処理剤が揮発してヘッド内のインクと反応することを抑制できる。
【0018】
前記前処理剤が塗布された被記録媒体を支持するプラテンを備え、前記冷却部は、前記プラテンにより支持された前記被記録媒体に塗布された前記前処理剤を、冷却してもよい。
【0019】
この場合、冷却部は、プラテンに支持された被記録媒体に塗布された前処理剤を冷却する。被記録媒体に塗布された前処理剤は冷却部により冷却されているので、冷却されない前処理剤と比べて、被記録媒体に塗布された状態で揮発しにくくなる。よって、画像形成装置は、前処理剤が揮発成分を含む場合でも、前処理剤が揮発してヘッド内のインクと反応することを抑制できる。
【0020】
前記冷却部を制御する第一制御部を備え、前記第一制御部は、温度を計測する温度計側部により計測された温度が所定温度以上である場合、及び湿度を計測する湿度計側部により計測された湿度が所定湿度以下である場合の少なくとも一方の場合、前記冷却部に前記前処理剤を冷却させてもよい。
【0021】
この場合、第一制御部は、温度計測部により計測された温度が所定温度以上である場合、及び湿度計測部により計測された湿度が所定湿度以下である場合の少なくとも一方の場合、冷却部に前処理剤を冷却させる。これにより、前処理剤が揮発しやすい環境下でも、被記録媒体に塗布された前処理剤は冷却により揮発しにくくなる。よって、画像形成装置は、前処理剤が揮発成分を含む場合でも、前処理剤が揮発してヘッド内のインクと反応することを抑制できる。
【0022】
前記冷却部を制御する第二制御部を備え、前記第二制御部は、所定時間内における前記画像形成装置の稼働時間に基づき、前記冷却部を制御してもよい。
【0023】
画像形成装置は、稼働時間において、前処理剤が塗布された被記録媒体にヘッドからインクを吐出する。第二制御部は、稼働時間において、冷却部に前処理剤を冷却させる。よって、画像形成装置1は、稼働時間以外の時間では前処理剤を冷却しないことにより、冷却部の消費電力を低減できる。
【0024】
前記冷却部は、前記前処理剤の温度が前記前処理剤の凝固点よりも高くなるように前記前処理剤を冷却してもよい。
【0025】
冷却部は、前処理剤の温度が前処理剤の凝固点よりも高くなるように前処理剤を冷却する。これにより、画像形成装置は、前処理剤が冷却により凝固することを抑制できる。従って、画像形成装置は、前処理剤が冷却により凝固して記録媒体に塗布されにくくなることを抑制できる。または、画像形成装置は、前処理剤が凝固して被記録媒体に前処理剤を塗布しにくくなることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図2】前処理剤80を供給するための流路構成、及び前処理剤80を冷却するための流路構成を説明する図である。
【
図3】画像形成装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<画像形成装置1の概略構成>
本発明の一実施形態である画像形成装置1を説明する。本実施形態では、図面中の機械的要素は、各図面において実際のスケールを示す。
図1の画像形成装置1は例えばインクジェットプリンタであり、被記録媒体(図示略)にインクまたは
図2に示す前処理剤80を吐出し、印刷を行う。被記録媒体は布、紙等であり、例えばTシャツである。
【0028】
インクは例えば白(W)、黒(K)、イエロー(Y)、シアン(C)、またはマゼンタ(M)である。以下では、5色のインクのうち白色のインクを「白インク」といい、黒、シアン、イエロー、およびマゼンタの4色のインクを総称する場合、またはいずれかを特定しない場合、「カラーインク」という。
【0029】
白インクは画像の白色を表す部分として、またはカラーインクの下地として印刷に用いられる。カラーインクは、被記録媒体上に直接、または白インクによる下地の上に吐出され、カラー画像の印刷に用いられる。
【0030】
前処理剤80は例えばベースコート剤であり、カラーインク、または白インクでの印刷の前に被記録媒体上に塗布される。被記録媒体に塗布された前処理剤80はインクと反応し、被記録媒体へのインクの定着またはインクの発色を向上させる。前処理剤80はインクと反応する成分として、例えばギ酸、酢酸を含む。ギ酸、酢酸は揮発性が高く、前処理剤80は揮発性を有する。なお本実施形態において、「前処理剤80がインクと反応する」とは、前処理剤80がインクを増粘させる、又は、前処理剤80がインクを凝集させることを示す。
【0031】
<画像形成装置1の機械的構成>
以下では、
図1の左上方、右下方、左下方、右上方、上方、および下方を、それぞれ、画像形成装置1の左方、右方、前方、後方、上方、および下方とする。
【0032】
図1に示すように、画像形成装置1は筐体2と枠体10と搬送部11とプラテン15とガイドシャフト12Aとレール12Bとキャリッジ13と複数のヘッド14とを備える。枠体10は、平面視長方形状の枠状であり、筐体2の上部に設置される。枠体10は、前方にガイドシャフト12Aを、後方にレール12Bをそれぞれ支持する。ガイドシャフト12Aは、枠体10内側において左右方向に延びる。レール12Bは、ガイドシャフト12Aに対向して配置され、左右方向に延びる。キャリッジ13は、ガイドシャフト12Aに沿って左右方向に搬送可能に支持されている。
【0033】
搬送部11は、例えば前後方向に延びる軸を含む。プラテン15は搬送部11の上方に位置し、搬送部11によって支持される。プラテン15は板状であり、前後左右方向に延びる。プラテン15の上面には被記録媒体(図示略)が載置される。プラテン15は
図3に示す副走査モータ52の駆動によって、搬送部11に沿って前後方向に搬送される。したがって、本実施形態では、画像形成装置1の前後方向が副走査方向となる。
【0034】
キャリッジ13には、ヘッド14A、14Bが搭載されている。以下、それぞれを区別しない場合、「ヘッド14」と総称する。ヘッド14の下面はプラテン15よりも上方に位置し、キャリッジ13から下方に露出する。ヘッド14の下面には複数のノズル(図示略)が設けられている。ヘッド14は
図3に示すヘッド駆動部53の駆動によって、複数のノズルからインクまたは前処理剤80を吐出する。ヘッド駆動部53は例えば圧電素子または発熱素子によって構成される。ヘッド14Aは、前処理剤80を吐出する。前処理剤80は、タンク77(
図2参照)からヘッド14Aに供給される。ヘッド14Bは、カラーインクを吐出する。カラーインクは、非図示のタンクからヘッド14Bに供給される。
【0035】
キャリッジ13は
図3に示す主走査モータ51の駆動によって、ガイドシャフト12A及びレール12Bに沿って左右方向に搬送される。これにより、ヘッド14も左右方向に搬送される。したがって、本実施形態では、画像形成装置1の左右方向が主走査方向となる。
【0036】
図2に示すように、画像形成装置1は、前処理剤80を収容するタンク77を備える。タンク77の周囲は、断熱材76により覆われている。断熱材76は、伝導、対流や放射による熱移動を防ぐための部材である。断熱材76の材料として、例えば発泡ポリエチレンが用いられる。断熱材76は、タンク77に収容された前処理剤80の温度が周囲の大気の熱が伝わることにより上昇することを抑制する。なお、断熱材76の材料は発泡ポリエチレンに限定されず、他の発泡系断熱材でもよい。又、例えば断熱材76は、グラスウール、ロックウール等の繊維系断熱材でもよい。このほかにも、断熱材76は内層と外層との間が真空引きされた容器であってもよい。
【0037】
<前処理剤80を供給するための流路構成>
図2を参照し、タンク77からヘッド14Aに前処理剤80を供給するための流路構成について説明する。前処理剤供給部61はタンク77からヘッド14Aに前処理剤80を供給する。前処理剤供給部61はサブパウチ8と前処理剤流路26、27とポンプ20とバルブ22とフィルタ(図示略)を備える。
【0038】
サブパウチ8は袋状である。前処理剤流路26、27は例えば中空状のチューブである。前処理剤流路26はタンク77とサブパウチ8とを接続する。前処理剤流路27はサブパウチ8とヘッド14Aとを接続する。
【0039】
ポンプ20は前処理剤流路26に設けられる。ポンプ20は
図3に示すポンプモータ54により駆動する。ポンプ20は、タンク77から前処理剤80を吸引し、前処理剤流路26、サブパウチ8、及び前処理剤流路27を介して、ヘッド14Aに向けて送る。サブパウチ8はタンク77から送られた前処理剤80を収容する。
【0040】
バルブ22は前処理剤流路26のうちポンプ20よりも下流に設けられる。バルブ22は前処理剤流路26を開閉する。フィルタは前処理剤流路26、27に設けられ、前処理剤80をろ過する。
【0041】
<前処理、印刷処理の概要>
画像形成装置1は印刷処理の前に前処理を行う。前処理が行われる前、ユーザは被記録媒体をプラテン15に載置する。例えば前処理では、画像形成装置1は
図3に示す副走査モータ52の駆動によってプラテン15を前後方向に移動させながら、
図3に示す主走査モータ51の駆動によってキャリッジ13を左右方向に往復移動させる。ヘッド14Aは左右方向に移動しながら、タンク77から供給された前処理剤80を吐出する。これにより、プラテン15に載置された被記録媒体に前処理剤80が塗布される。
【0042】
前処理の後、画像形成装置1は印刷処理を行う。なお、本実施例では、前処理後の被記録媒体を加熱する熱処理機構を有さないので、被記録媒体は前処理剤80により濡れた状態である。例えば印刷処理では、画像形成装置1は
図3に示す副走査モータ52の駆動によってプラテン15を前後方向に移動させながら、
図3に示す主走査モータ51の駆動によってキャリッジ13を左右方向に往復移動させる。ヘッド14Bは左右方向に移動しながら、非図示のタンクから供給されたインクを吐出する。これにより、プラテン15に載置された被記録媒体に印刷画像が印刷される。
【0043】
<前処理剤80の被記録媒体からの揮発を抑制するための構成>
被記録媒体に塗布された前処理剤80が揮発することを抑制するため、画像形成装置1は冷却部71~75により前処理剤80を冷却する。以下、冷却部71~75を総称する場合、またはいずれかを特定しない場合、冷却部70と総称する。冷却部70は冷媒により前処理剤80を冷却する。冷媒は、例えばハイドロフルオロカーボンである。
【0044】
冷却部71は断熱材76とタンク77との間に設けられる。冷却部71は、タンク77を冷却することで、タンク77に収容された前処理剤80を冷却する。なお、タンク77の周囲に設けられた断熱材76は、冷却部71により冷却された前処理剤80の周囲を、タンク77の外側から覆うことで、冷却された前処理剤80の温度が周囲の大気の熱が伝わることにより上昇することを抑制する。
【0045】
冷却部72は、サブパウチ8の周囲を覆う。冷却部72はサブパウチ8に収容された前処理剤80を冷却する。冷却部73Aは前処理剤流路26に設けられる。冷却部73Aは前処理剤流路26の内側の前処理剤80を冷却する。冷却部73Bは前処理剤流路27に設けられる。冷却部73Bは前処理剤流路27の内側の前処理剤80を冷却する。冷却部74はヘッド14Aに設けられる。冷却部74はヘッド14Aの内側の前処理剤80を冷却する。冷却部75は、プラテン15の下面に固定される。冷却部75はプラテン15に載置された被記録媒体に塗布された前処理剤80を冷却する。
【0046】
冷媒循環部62は、冷却部70に冷媒を供給する。冷媒循環部62は冷媒流路28、29、および熱交換器81を備える。冷媒流路28、29は例えば中空状のチューブである。冷媒流路28、29は冷却部70と熱交換器81とを接続する。熱交換器81は、圧縮機82(
図3参照)、凝縮器(図示略)、ファン83(
図3参照)、膨張弁(図示略)を備える。圧縮機82は冷媒を圧縮する。凝縮器及びファン83は、圧縮された冷媒から熱を放出させる。膨張弁は、熱が放出された冷媒の圧力を調整し、冷媒を冷却する。
【0047】
熱交換器81により冷却された冷媒は、熱交換器81から冷媒流路28を介して冷却部70へと送られる。冷却部70にて前処理剤80を冷却するために使用された冷媒は、冷媒流路29を介して冷却部70から熱交換器81へと送られる。冷媒流路29を介して熱交換器81に送られた冷媒は、熱交換器81により冷却される。即ち、冷媒は冷媒流路28、29を介して冷却部70と熱交換器81との間を循環する。
【0048】
<画像形成装置1の電気的構成>
図3に示すように、画像形成装置1は制御装置40を備える。制御装置40は枠体10に固定され、CPU41、ROM42、RAM43、フラッシュメモリ44、およびRTC45を備える。CPU41は画像形成装置1の制御を司り、プロセッサとして機能する。CPU41は例えば前処理と印刷処理を制御する。CPU41はROM42、RAM43、フラッシュメモリ44、およびRTC45と電気的に接続する。
【0049】
ROM42は、CPU41が画像形成装置1の動作を制御するための制御プログラム、各種プログラムの実行時にCPU41が必要な情報等を記憶する。RAM43は、制御プログラムで用いられる各種データ等を一時的に記憶する。フラッシュメモリ44は、不揮発性メモリであり、画像形成装置1の各種設定等を記憶する。RTC45は画像形成装置1の内部時計として現在の時刻を計時する。
【0050】
CPU41には主走査モータ51、副走査モータ52、ヘッド駆動部53、ポンプモータ54、圧縮機82、ファン83、温度センサ55、湿度センサ56、および操作部57が電気的に接続される。主走査モータ51、副走査モータ52、ヘッド駆動部53、圧縮機82、およびファン83はCPU41による制御によって駆動する。
【0051】
温度センサ55は前処理剤流路27に設けられる。温度センサ55は前処理剤流路27を介して前処理剤流路27の内側の前処理剤80の温度Tを検出する。温度センサ55は検出した温度Tを示す信号をCPU41に出力する。湿度センサ56は枠体10に設けられる。湿度センサ56は画像形成装置1の筐体2の内側の湿度Hを検出する。湿度センサ56は検出した湿度Hを示す信号をCPU41に出力する。なお、温度センサ55が設けられる位置は、前処理剤流路27に限定されず、吐出前の前処理剤80の温度の計測が可能な他の位置でもよい。例えば温度センサ55は、タンク77、前処理剤流路26、サブパウチ8、及びヘッド14Aの何れかに設けられてもよい。
【0052】
操作部57はタッチパネルディスプレイ等であり、各種情報を表示し、且つユーザによる操作に応じた情報をCPU41に出力する。ユーザは操作部57を操作することで、画像形成装置1による前処理を開始するための前処理指示等を画像形成装置1に入力できる。
【0053】
<前準備>
ユーザは、前処理剤80の温度制御を開始する時刻である冷却開始時刻を、一日における画像形成装置1の稼働時間に基づいて決定する。画像形成装置1の稼働時間は、例えば、前処理および印刷処理が行われる時間である。ユーザは、例えば一日において前処理が初めて開始されると予想される時刻の1時間前となる時刻を、冷却開始時刻として決定する。ユーザは、操作部57を操作することで、決定した冷却開始時刻を画像形成装置1に入力する。CPU41は、入力された冷却開始時刻をフラッシュメモリ44に記憶する。
【0054】
又、ユーザは、前処理剤80の温度制御を終了する時刻である冷却終了時刻を、一日における画像形成装置1の稼働時間に基づいて決定する。ユーザは、例えば一日における印刷処理が全て終了した時刻の30分後となる時刻を、冷却終了時刻として決定する。ユーザは、操作部57を操作することで、決定した冷却終了時刻を画像形成装置1に入力する。CPU41は、入力された冷却終了時刻をフラッシュメモリ44に記憶する。
【0055】
<冷却制御処理>
例えばCPU41は、フラッシュメモリ44に冷却開始時刻及び冷却終了時刻が記憶された状態で画像形成装置1に電源が投入された場合、ROM42から制御プログラムを読み出して動作することで、
図4に示す冷却制御処理を実行する。CPU41は、冷却制御処理を実行することにより、冷却部70による前処理剤80の冷却に関する制御を行う。
【0056】
図4に示すように、冷却制御処理が開始されると、CPU41はRTC45に基づき、現在の時刻が、フラッシュメモリ44に記憶された冷却開始時刻と一致するか否かを判断する(S1)。現在の時刻が冷却開始時刻と一致しない場合(S1:NO)、CPU41は処理をS1に戻す。現在の時刻が冷却開始時刻と一致する場合(S1:YES)、CPU41は温度センサ55から前処理剤80の温度Tを取得する(S2)。CPU41は温度Tが上限温度T
H以上であるか否かを判断する(S3)。上限温度T
Hは前処理剤80の冷却を開始または継続するか否かを判断する為の閾値であり、フラッシュメモリ44に記憶される。
【0057】
温度Tが上限温度TH以上である場合(S3:YES)、CPU41は冷却処理を実行する(S4)。CPU41は冷却処理において、圧縮機82、ファン83を駆動する。冷媒は冷却部70と熱交換器81との間を循環し、冷却部70は前処理剤80を冷却する。CPU41は処理をS11に移行する。
【0058】
温度Tが上限温度THよりも小さい場合(S3:NO)、CPU41は温度Tが下限温度TL以下であるか否かを判断する(S5)。下限温度TLは前処理剤80の冷却を停止するか否かを判断する為の閾値であり、フラッシュメモリ44に記憶される。下限温度TLは前処理剤80の凝固点よりも高い。前処理剤80の凝固点は、例えば0℃である。
【0059】
温度Tが下限温度TL以下である場合(S5:YES)、CPU41は冷却停止処理を実行する(S6)。CPU41は冷却停止処理において、圧縮機82、ファン83の駆動を停止する。冷媒の冷却部70と熱交換器81との間の循環が停止され、冷却部70は前処理剤80の冷却を停止する。CPU41は処理をS11に移行する。
【0060】
温度Tが下限温度TLよりも大きい場合(S5:NO)、CPU41は湿度センサ56から画像形成装置1の筐体2の内側の湿度Hを取得する(S7)。CPU41は画像形成装置1の筐体2の内側の湿度Hが下限湿度HL以下であるか否かを判断する(S8)。下限湿度HLは前処理剤80の冷却を開始または継続するか否かを判断する為の閾値であり、フラッシュメモリ44に記憶される。
【0061】
画像形成装置1の筐体2の内側の湿度Hが下限湿度HL以下である場合(S8:YES)、CPU41は冷却処理を実行する(S9)。S9で実行される冷却処理はS4で実行される冷却処理と同様である。CPU41は処理をS11に移行する。画像形成装置1の筐体2の内側の湿度Hが下限湿度HLよりも大きい場合(S8:NO)、CPU41は冷却停止処理を実行する(S10)。S10で実行される冷却停止処理はS6で実行される冷却停止処理と同様である。CPU41は処理をS11に移行する。
【0062】
CPU41はRTC45に基づき、現在の時刻が、フラッシュメモリ44に記憶された冷却終了時刻と一致するか否かを判断する(S11)。現在の時刻が冷却終了時刻と一致しない場合(S11:NO)、CPU41は処理をS2の処理に戻す。現在の時刻が冷却終了時刻と一致する場合(S11:YES)、CPU41は冷却停止処理を実行する(S12)。S12で実行される冷却停止処理はS6、S10で実行される冷却停止処理と同様である。CPU41は処理をS1に戻す。
【0063】
なお、ギ酸、酢酸が本発明の「揮発成分」の一例である。ヘッド14Aが本発明の「吐出部」の一例である。タンク77、サブパウチ8が本発明の「収容部」の一例である。前処理剤流路26、27が本発明の「流路」の一例である。CPU41が本発明の「第一制御部」「第二制御部」の一例である。温度センサ55が本発明の「温度計側部」の一例である。湿度センサ56が本発明の「湿度計側部」の一例である。一日が本発明の「所定時間」の一例である。
【0064】
<本実施形態の作用、効果>
画像形成装置1において、冷却部70は前処理剤80を冷却する。これにより、被記録媒体に塗布された前処理剤80は、冷却されない前処理剤80と比較して揮発しにくくなる。よって、画像形成装置1は、ヘッド14B内のインクと揮発した前処理剤80とが反応することを抑制できる。このため画像形成装置1は、ヘッド14Bがインクを吐出しにくくなることを抑制できる。
【0065】
画像形成装置1において、冷却部71~74はヘッド14Aにより吐出される前の前処理剤80を冷却する。冷却された前処理剤80がヘッド14Aから吐出されるので、吐出後の前処理剤80は、吐出される前に冷却されない前処理剤80と比べて揮発しにくくなる。よって、画像形成装置1は、前処理剤80が揮発してヘッド14B内のインクと反応することを抑制できる。
【0066】
画像形成装置1において、冷却部71はタンク77に収容された前処理剤80を冷却する。冷却部72はサブパウチ8に収容された前処理剤80を冷却する。タンク77やサブパウチ8で冷却された前処理剤80が吐出されるので、吐出後の前処理剤80は、タンク77で冷却されない前処理剤80と比べて揮発しにくくなる。よって、画像形成装置1は、前処理剤80が揮発してヘッド14B内のインクと反応することを抑制できる。
【0067】
タンク77の断熱材76は、タンク77に収容された前処理剤80の温度が周囲の大気の熱が伝わることにより上昇することを抑制する。タンク77で冷却された前処理剤80が、周囲の大気による温度上昇が抑制された状態で吐出されるので、吐出後の前処理剤80は、断熱材76を有さないタンク77で冷却された前処理剤80と比較して、揮発しにくくなる。よって、画像形成装置1は、前処理剤80が揮発してヘッド14B内のインクと反応することを抑制できる。
【0068】
冷却部73Aは前処理剤流路26の内側の前処理剤80を冷却する。冷却部73Bは前処理剤流路27の内側の前処理剤80を冷却する。前処理剤流路26、27で冷却された前処理剤80が吐出されるので、吐出後の前処理剤80は、前処理剤流路26、27で冷却されない前処理剤80と比べて揮発しにくくなる。よって、画像形成装置1は、前処理剤80が揮発してヘッド14B内のインクと反応することを抑制できる。
【0069】
冷却部74はヘッド14Aの内側の前処理剤80を冷却する。ヘッド14Aで冷却された前処理剤80が吐出されるので、吐出後の前処理剤80は、ヘッド14Aで冷却されない前処理剤80と比べて揮発しにくくなる。よって、画像形成装置1は、前処理剤80が揮発してヘッド14B内のインクと反応することを抑制できる。
【0070】
冷却部75はプラテン15に載置された被記録媒体に塗布された前処理剤80を冷却する。被記録媒体に塗布された前処理剤80は冷却部75により冷却されているので、冷却されない前処理剤80と比べて、被記録媒体に塗布された状態で揮発しにくくなる。よって、画像形成装置1は、前処理剤80が揮発してヘッド14B内のインクと反応することを抑制できる。
【0071】
前処理剤80の温度Tが上限温度TH以上である場合(S3:YES)、CPU41は冷却処理を実行する(S4)。画像形成装置1の筐体2の内側の湿度Hが下限湿度HL以下である場合(S8:YES)、CPU41は冷却処理を実行する(S9)。CPU41は温度センサ55が検出した温度T、および湿度センサ56が検出した湿度Hに基づき、冷却部70により前処理剤80を冷却させる。これにより、前処理剤80が揮発しやすい環境下でも、被記録媒体に塗布された前処理剤80は冷却により揮発しにくくなる。よって、画像形成装置1は、前処理剤80が揮発してヘッド14B内のインクと反応することを抑制できる。
【0072】
現在の時刻が冷却開始時刻から冷却終了時刻までの間、CPU41は冷却部70による前処理剤80の温度制御を実行する。冷却開始時刻および冷却終了時刻は一日における画像形成装置1の稼働時間に基づき決定される。よって、画像形成装置1は、稼働時間以外の時間で前処理剤80の冷却をしないことにより、冷却部70の消費電力を低減できる。
【0073】
前処理剤80の温度Tが下限温度TL以下である場合(S5:YES)、CPU41は冷却停止処理を実行する(S6)。下限温度TLは前処理剤80の凝固点よりも高い。CPU41は冷却停止処理を実行することで、温度Tが前処理剤80の凝固点よりも高くなるように前処理剤80の冷却制御を実行する。これにより、画像形成装置1は、前処理剤80が冷却により凝固することを抑制できる。従って、画像形成装置1は、前処理剤80が冷却により凝固して被記録媒体に塗布されにくくなることを抑制できる。または、画像形成装置1は、前処理剤80が凝固して被記録媒体に前処理剤80を塗布しにくくなることを抑制できる。
【0074】
<変形例>
本発明は上記実施形態から種々変更できる。以下説明する各種変形例は、矛盾が生じない限りそれぞれ組み合わせ可能である。前処理剤80には、揮発性の高い成分として、ギ酸、酢酸以外の物質が含まれていてもよい。又、このような揮発性の高い成分は、インクを増粘させたり凝集させたりしなくてもよい。例えば、前処理剤80はインクとの反応し、インクを変色させてもよい。
【0075】
画像形成装置1の構成は上記実施形態に限定されない。前処理剤80はヘッド14Aから吐出されなくてもよい。前処理剤80は、例えばスプレー、スタンプ、刷毛、ローラ等で被記録媒体に塗布されてもよい。
【0076】
前処理剤80は揮発性を有し、且つインクと反応する成分を含んでいてもよい。前処理剤80は、インクを変色させる成分を含み、インクを増粘させる成分とインクを凝集させる成分は含まれなくてもよい。
【0077】
画像形成装置1は、前処理剤80を貯めるタンクが収容されたカートリッジを着脱可能であってもよい。前処理剤80は、画像形成装置1に装着されたカートリッジのタンクからヘッド14Aに供給されてもよい。画像形成装置1は前処理剤80を収容するサブパウチ8を備えなくてもよい。前処理剤流路26、27のうち一方にのみ冷却部が設けられてもよい。前処理剤流路26、27に冷却部は設けられなくてもよい。
【0078】
タンク77は、断熱材76の代わりに例えばデュワー瓶のように二重の壁を有する構造体により覆われていてもよい。タンク77は断熱材76を備えなくてもよい。サブパウチ8は断熱材により覆われていてもよい。サブパウチ8に収容された前処理剤80の温度上昇は、断熱材により抑制されてもよい。前処理剤流路26、27は断熱材により覆われていてもよい。前処理剤流路26、27の内側の前処理剤80の温度上昇は、断熱材により抑制されてもよい。ヘッド14Aのうちノズルを除く部分は断熱材により覆われていてもよい。ヘッド14Aの内側の前処理剤80の温度上昇は、断熱材により抑制されてもよい。冷却部71~75の少なくとも何れかに断熱材が設けられていてもよい。
【0079】
冷却部70の構成は上記実施形態に限定されない。画像形成装置1は、冷却部71~75のうち少なくとも1つを備えればよい。前処理剤80を冷却させる冷媒の状態は、固体、液体、気体の何れでもよい。冷却部70は循環させた冷媒により前処理剤80を冷却しなくてもよい。冷却部70は、例えばペルチェ素子などを用いた電子冷却方式により前処理剤80を冷却してもよい。冷却部71は、タンク77の内側に設けられてもよい。この場合、冷却部71は、タンク77の内側から前処理剤80を冷却してもよい。又、冷却部71は、タンク77の内側及び外側の両方に設けられてもよい。冷却部72は、サブパウチ8の内側に設けられてもよい。この場合、冷却部72は、サブパウチ8の内側から前処理剤80を冷却してもよい。又、冷却部72は、サブパウチ8の内側及び外側の両方に設けられてもよい。冷却部73Aは前処理剤80を前処理剤流路26の外側から冷却してもよいし、前処理剤流路27の内側から冷却してもよい。冷却部73Bは前処理剤80を前処理剤流路27の外側から冷却してもよいし、前処理剤流路27の内側から冷却してもよい。冷却部74は前処理剤80をヘッド14Aの外側から冷却してもよいし、ヘッド14Aの内側から冷却してもよい。冷却部75は、例えばプラテン15に載置された被記録媒体に冷風を当てることで、プラテン15に載置された被記録媒体に塗布された前処理剤80を冷却してもよい。冷却部71~75の構成は、それぞれ同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0080】
CPU41は温度センサ55により検出される温度Tおよび湿度センサ56により検出される湿度Hに基づき冷却処理または冷却停止処理を実行しなくてもよい。この場合、CPU41は冷却処理においてS2、S3、S5~S10の処理を省略してもよい。CPU41は温度センサ55により検出される温度Tおよび湿度センサ56により検出される湿度Hのいずれか一方に基づき冷却処理を実行してもよい。温度センサ55により検出される温度Tに基づき冷却処理が実行される場合、CPU41は冷却制御処理においてS7~S9の処理を省略してもよい。この場合、画像形成装置1は湿度センサ56を備えなくてもよい。湿度センサ56により検出される湿度Hに基づき冷却処理が実行される場合、CPU41は冷却制御処理においてS2~S6の処理を省略してもよい。この場合、画像形成装置1は温度センサ55を備えなくてもよい。
【0081】
上記実施形態では、温度センサ55は前処理剤流路27に設けられていたが、これに限定されない。温度センサ55は、例えばプラテン15、タンク77、前処理剤供給部61、ヘッド14Aの少なくとも何れかに設けられてもよい。温度センサ55は被記録媒体に塗布された前処理剤80の温度を検出してもよい。温度センサ55は画像形成装置1の周囲の温度を検出してもよい。上記実施形態では、湿度センサ56は枠体10に設けられ、画像形成装置1の筐体2の内側の湿度Hを検出したが、これに限定されない。湿度センサ56は画像形成装置1の筐体2の外側の湿度を検出してもよい。画像形成装置1は、温度センサ55及び湿度センサ56のうち少なくとも一方を有さなくてもよい。画像形成装置1に温度センサ55及び湿度センサ56は設けられなくてもよい。
【0082】
冷却制御処理において、CPU41は温度センサ55により検出される温度Tに基づく制御の処理(S3、S5)を行う前に、湿度センサ56により検出される湿度Hに基づく制御の処理(S7)を行ってもよい。この場合、S4、S6、S9、S10の順番が合わせて変更される。CPU41はS3の処理の前にS5の処理を実行してもよい。この場合、S4とS6の順番が変更される。
【0083】
CPU41は温度センサ55により検出される温度Tおよび湿度センサ56により検出される湿度Hの組み合わせに応じて、冷却部70による前処理剤80の冷却を制御してもよい。この場合、フラッシュメモリ44は
図5に示すプリセット90を記憶する。プリセット90では、冷却処理を行うか又は冷却停止処理を行うかを示す制御情報が、温度Tおよび湿度Hの組み合わせに対応付けて記憶される。CPU41は冷却制御処理において、温度Tおよび湿度Hを取得した場合、プリセット90に基づき、取得した温度Tおよび湿度Hの組み合わせに対応する制御情報に基づき、冷却処理および冷却停止処理のうちいずれか一方を実行する。
【0084】
CPU41は画像形成装置1の所定時間内における稼働時間に基づき、冷却部70を制御しなくてもよい。この場合、CPU41は冷却処理においてS1、S11、S12の処理を省略してもよい。冷却開始時刻は上記実施形態に限定されない。冷却開始時刻は、例えば一週間における画像形成装置1の稼働時間に基づき決定されてもよい。冷却開始時刻は一日における画像形成装置1による印刷処理の実行が開始する時刻に基づき決定されてもよい。冷却開始時刻は画像形成装置1の過去の稼働時間に基づきCPU41が決定してもよい。この場合、CPU41は冷却制御処理の実行中(例えば、S12からS1に処理が戻される間)に冷却開始時刻を決定してもよい。
【0085】
冷却終了時刻は上記実施形態に限定されない。冷却終了時刻は、例えば一週間における画像形成装置1の稼働時間に基づき決定されてもよい。冷却終了時刻は一日における画像形成装置1による前処理の実行が終了する時刻に基づき決定されてもよい。冷却終了時刻は画像形成装置1の過去の稼働時間に基づきCPU41が決定してもよい。この場合、CPU41は冷却制御処理の実行中(例えば、S12からS1に処理が戻される間)に冷却終了時刻を決定してもよい。
【0086】
フラッシュメモリ44には冷却開始時刻に代えて、待機時間が記憶されてもよい。この場合、CPU41はS1の処理において、待機時間が経過したか否かを判断してもよい。CPU41は待機時間が経過した場合に、S2からS11までの処理を行ってもよい。例えば待機時間が1時間の場合、CPU41は1時間ごとに冷却制御処理を行う。このように、CPU41は冷却制御処理を定期的に行ってもよい。
【0087】
冷却制御処理において、CPU41はS2からS11までの処理を不定期に行ってもよい。つまり、CPU41は決まった時刻(冷却開始時刻)にS2からS11までの処理を行わなくてもよい。例えばCPU41はユーザが操作部57を操作し、冷却開始指示を画像形成装置1に入力した場合、CPU41はS2からS11までの処理を行ってもよい。
【0088】
フラッシュメモリ44には冷却終了時刻に代えて、実行時間が記憶されてもよい。この場合、CPU41は、S11の処理において、冷却開始時刻から実行時間が経過した場合に、S12の処理を行ってもよい。
【0089】
冷却制御処理において、CPU41はS12の処理を不定期に行ってもよい。つまり、CPU41は決まった時刻(冷却終了時刻)にS12の処理を行わなくてもよい。例えばCPU41はユーザが操作部57を操作し、冷却終了指示を画像形成装置1に入力した場合、CPU41はS12の処理を行ってもよい。
【0090】
下限温度TLは前処理剤80の凝固点よりも低くてもよい。例えば、冷却部75は前処理剤80の凝固点よりも低い温度で冷却してもよい。画像形成装置1は、例えばヒータにより加熱することで、冷却部70により凝固された前処理剤80を融点以上の温度にして融解させてもよい。冷却部71~75における下限温度TLはそれぞれ同一でもよいし、異なっていてもよい。下限温度TLは、例えば画像形成装置1の筐体2の内側の温度、湿度、および気圧に基づき変動してもよい。冷却部71~75における上限温度THはそれぞれ同一でもよいし、異なっていてもよい。上限温度THは、例えば画像形成装置1の筐体2の内側の温度、湿度、および気圧のいずれかに基づき変動してもよい。
【0091】
冷却部71~75における下限湿度HLはそれぞれ同一でもよいし、異なっていてもよい。下限湿度HLは、例えば画像形成装置1の筐体2の内側の温度、湿度、および気圧のいずれかに基づき変動してもよい。
【0092】
CPU41の代わりに、マイクロコンピュータ、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等が、プロセッサとして用いられてもよい。冷却制御処理は、複数のプロセッサによって分散処理されてもよい。ROM42、フラッシュメモリ44等の非一時的な記憶媒体は、情報を記憶する期間に関わらず、情報を留めておくことが可能な記憶媒体であればよい。非一時的な記憶媒体は、一時的な記憶媒体(例えば、伝送される信号)を含まなくてもよい。制御プログラムは、例えば、図示外のネットワークに接続されたサーバからダウンロードされて(すなわち、伝送信号として送信され)、ROM42またはフラッシュメモリ44に記憶されてもよい。この場合、制御プログラムは、サーバに備えられたHDD等の非一時的な記憶媒体に保存されていればよい。
【符号の説明】
【0093】
1 画像形成装置
14 ヘッド
15 プラテン
26、27 前処理剤流路
41 CPU
55 温度センサ
56 湿度センサ
70~75 冷却部
76 断熱部
77 タンク
80 前処理剤