(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151162
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】歯科用接着性組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 6/30 20200101AFI20231005BHJP
A61K 6/60 20200101ALI20231005BHJP
A61K 6/62 20200101ALI20231005BHJP
【FI】
A61K6/30
A61K6/60
A61K6/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060618
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】515279946
【氏名又は名称】株式会社ジーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】東 爽佳
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 憂菜
(72)【発明者】
【氏名】庄司 拓未
【テーマコード(参考)】
4C089
【Fターム(参考)】
4C089AA10
4C089BD01
4C089BE03
4C089BE11
4C089CA01
4C089CA05
4C089CA09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】セラミックスに対する接着力が優れた歯科用接着性組成物を提供する。
【解決手段】第1剤および第2剤を含む2剤型の歯科用接着性組成物であって、第1剤は、酸基を有する(メタ)アクリレートおよび下記一般式(1)で表される直鎖状シロキサンを含有し、第2剤は、(メタ)アクリレートを含有する歯科用接着性組成物。
(式中、X
1~X
6は、独立に、C1~6のアルキル基またはエチレン性不飽和基であり、mは、0以上500以下の整数であり、mが2以上の場合に、X
3、X
4は、繰返し単位毎に同一または異なり、Y
1、Y
2は、独立に、C1~20の直鎖状若しくは分岐状炭化水素基であり、Z
1~Z
4は、独立に、Hまたはエチレン性不飽和基であり、X
1~X
6およびZ
1~Z
4のうち、少なくとも1個はエチレン性不飽和基である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1剤および第2剤を含む2剤型の歯科用接着性組成物であって、
前記第1剤は、酸基を有する(メタ)アクリレートおよび下記一般式(1)で表される直鎖状シロキサンを含有し、
前記第2剤は、(メタ)アクリレートを含有する歯科用接着性組成物。
【化1】
(前記一般式(1)中、
X
1~X
6はそれぞれ独立な、炭素数1以上6以下のアルキル基またはエチレン性不飽和基であり、
mは、0以上500以下の整数であり、
mが2以上の場合に、X
3、X
4は、繰返し単位毎に同一または異なっており、
Y
1、Y
2は、それぞれ独立な、炭素数1以上20以下の直鎖状若しくは分岐状炭化水素基であり、
Z
1~Z
4は、それぞれ独立な、水素原子またはエチレン性不飽和基であり、
X
1~X
6およびZ
1~Z
4のうち、少なくとも1個はエチレン性不飽和基である。)
【請求項2】
前記第1剤は、さらに水を含有し、
前記第1剤および前記第2剤の少なくとも一方は、光重合開始剤を含有する請求項1に記載の歯科用接着性組成物。
【請求項3】
対象に前記第1剤を適用した後にエアーブローを行い、さらに対象に前記第2剤を適用することにより使用される、請求項1または請求項2に記載の歯科用接着性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用接着性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
2剤型の歯科用接着性組成物は、歯質およびコンポジットレジンの何れに対しても、1剤型の歯科用接着性組成物に比べて良好な接着力を示すことが知られている。
【0003】
2剤型の歯科用接着性組成物として、例えば、(a)酸性基を有する重合性単量体、(b)水酸基を有する重合性単量体、及び(c)水とからなるプライマー組成物と、(d)アシルホスフィンオキサイド化合物、及び(e)重合性単量体とからなるボンディング組成物から構成されることを特徴とする歯科用接着剤システムが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の歯科用接着性組成物では、セラミックスに対する接着力が十分に得られていなかった。
【0006】
そこで上記従来技術が有する問題に鑑み、本発明の一側面では、セラミックスに対する接着力が優れた歯科用接着性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る歯科用接着性組成物は、第1剤および第2剤を含む2剤型の歯科用接着性組成物であって、
前記第1剤は、酸基を有する(メタ)アクリレートおよび下記一般式(1)で表される直鎖状シロキサンを含有し、
前記第2剤は、(メタ)アクリレートを含有する歯科用接着性組成物。
【0008】
【化1】
(前記一般式(1)中、
X
1~X
6はそれぞれ独立な、炭素数1以上6以下のアルキル基またはエチレン性不飽和基であり、
mは、0以上500以下の整数であり、
mが2以上の場合に、X
3、X
4は、繰返し単位毎に同一または異なっており、
Y
1、Y
2は、それぞれ独立な、炭素数1以上20以下の直鎖状若しくは分岐状炭化水素基であり、
Z
1~Z
4は、それぞれ独立な、水素原子またはエチレン性不飽和基であり、
X
1~X
6およびZ
1~Z
4のうち、少なくとも1個はエチレン性不飽和基である。)
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、セラミックスに対する接着力が優れた歯科用接着性組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0011】
[歯科用接着性組成物]
本実施形態に係る歯科用接着性組成物は、第1剤および第2剤を含む2剤型の歯科用接着性組成物である。なお、本実施形態の歯科用接着性組成物は第1剤および第2剤のみから構成することもできる。
【0012】
以下、第1剤、第2剤の構成について説明する。
【0013】
(1)第1剤
2剤型の歯科用接着性組成物において、第1剤は、前処理剤、またはプライマーとも呼ばれる。第1剤は、酸基を有する(メタ)アクリレート、および所定の構造を有する直鎖状シロキサンを含有する。
【0014】
本明細書において、(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイルオキシ基を1個以上有するモノマー、オリゴマー、またはプレポリマーを示す。ここで、(メタ)アクリレートは、アクリレートおよびメタクリレートの一方または両方を示す。
【0015】
また、シロキサンは、-ケイ素(Si)-酸素(O)-[-ケイ素(Si)-酸素(O)-]L-ケイ素(Si)-(Lは0以上の整数である。)で表される構造である。
【0016】
第1剤が含有する各成分について以下に説明する。
(1-1)第1剤が含有する成分について
(A)酸基を有する(メタ)アクリレート
第1剤に含まれる酸基を有する(メタ)アクリレートは、特に限定されないが、例えば、リン酸基、ピロリン酸基、チオリン酸基、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基等の酸基を有する(メタ)アクリレートを好適に用いることができる。なお、酸基を有する(メタ)アクリレートは、複数個の酸基を有していてもよい。
【0017】
リン酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、ビス[2-(メタ)アクリロイルオキシエチル]ハイドロジェンホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルフェニルハイドロジェンホスフェート、10-(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、1,3-ジ(メタ)アクリロイルプロパン-2-ジハイドロジェンホスフェート、1,3-ジ(メタ)アクリロイルプロパン-2-フェニルハイドロジェンホスフェート、ビス[5-{2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニル}ヘプチル]ハイドロジェンホスフェート等が挙げられる。
【0018】
ピロリン酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、ピロリン酸ビス[2-(メタ)アクリロイルオキシエチル]、ピロリン酸ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシブチル]、ピロリン酸ビス[6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル]、ピロリン酸ビス[8-(メタ)アクリロイルオキシオクチル]、ピロリン酸ビス[10-(メタ)アクリロイルオキシデシル]等が挙げられる。
【0019】
チオリン酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンチオホスフェート、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンチオホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチルジハイドロジェンチオホスフェート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチルジハイドロジェンチオホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンチオホスフェート、7-(メタ)アクリロイルオキシヘプチルジハイドロジェンチオホスフェート、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルジハイドロジェンチオホスフェート、9-(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンチオホスフェート、10-(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンチオホスフェート、11-(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンチオホスフェート、12-(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンチオホスフェート、13-(メタ)アクリロイルオキシトリデシルジハイドロジェンチオホスフェート、14-(メタ)アクリロイルオキシテトラデシルジハイドロジェンチオホスフェート、15-(メタ)アクリロイルオキシペンタデシルジハイドロジェンチオホスフェート、16-(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルジハイドロジェンチオホスフェート、17-(メタ)アクリロイルオキシヘプタデシルジハイドロジェンチオホスフェート、18-(メタ)アクリロイルオキシオクタデシルジハイドロジェンチオホスフェート、19-(メタ)アクリロイルオキシノナデシルジハイドロジェンチオホスフェート、20-(メタ)アクリロイルオキシイコシルジハイドロジェンチオホスフェート等が挙げられる。
【0020】
カルボン酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸、4-(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸、4-(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸無水物、4-(メタ)アクリロイルオキシデシルトリメリット酸、4-(メタ)アクリロイルオキシデシルトリメリット酸無水物、11-(メタ)アクリロイルオキシ-1,1-ウンデカンジカルボン酸、1,4-ジ(メタ)アクリロイルオキシピロメリット酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。
【0021】
スルホン酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2-スルホエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0022】
ホスホン酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルホスホネート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-3-ホスホノプロピオネート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-3-ホスホノプロピオネート、10-(メタ)アクリロイルオキシデシル-3-ホスホノプロピオネート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-3-ホスホノアセテート、10-(メタ)アクリロイルオキシデシル-3-ホスホノアセテート等が挙げられる。
【0023】
これら酸基を有する(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、歯科用接着性組成物による歯面のスメアー層の溶解性や歯質脱灰性、特に、エナメル質に対する接着性の点で、リン酸基、チオリン酸基、およびカルボン酸基から選択された1種類以上を有する(メタ)アクリレートが好ましい。
【0025】
さらに、これらの中でも、歯科用接着性組成物の接着性を向上させる点で、酸基を有する(メタ)アクリレートは、10-メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート(MDP)、10-メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンチオホスフェート(MDTP)、4-メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸無水物(4-META)等から選択された1種類以上が好ましい。
【0026】
第1剤中の酸基を有する(メタ)アクリレートの含有量は、特に限定されず、第1剤100質量%に対して、例えば0.1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、1質量%以上25質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上25質量%以下であることがさらに好ましい。
【0027】
なお、第1剤が酸基を有する(メタ)アクリレートを複数種類含む場合には、合計の含有量が上記範囲を充足することが好ましい。
【0028】
第1剤中の酸基を有する(メタ)アクリレートの含有量が0.1質量%以上であると、歯科用接着性組成物の歯質に対する脱灰力がさらに向上し、40質量%以下であると、歯科用接着性組成物の硬化性が向上する。
(B)直鎖状シロキサン
第1剤が含有する直鎖状シロキサンは、下記一般式(1)で表される。
【0029】
【化2】
一般式(1)において、X
1~X
6はそれぞれ独立な、炭素数1以上6以下のアルキル基またはエチレン性不飽和基である。ここでいうそれぞれ独立とは、X
1~X
6の間で、構造や、炭素数が異なっていてもいいことを意味する。
【0030】
X1~X6における炭素数の上限は、好ましくは4であり、より好ましくは3、さらに好ましくは2である。
【0031】
X1~X6における炭素数1以上6以下のアルキル基としては、特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、3-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、2-エチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基等が挙げられる。
【0032】
エチレン性不飽和基としては、特に限定されず、例えば、ビニル基、アリル基、アクリル基(アクリロイル基ともいう)、メタクリル基(メタクリロイル基ともいう)等が挙げられる。エチレン性不飽和基は、炭素数1以上6以下のアルキレン基を有していてもよい。
【0033】
一般式(1)において、mは、0以上500以下の整数であり、好ましくは0以上300以下、より好ましくは0以上100以下、さらに好ましくは0以上50以下、特に好ましくは0以上10以下の整数である。
【0034】
なお、mが2以上の場合に、X3、X4は、繰返し単位毎に同一であっても異なっていてもよい。具体的には、例えば、mが2のとき、繰返し単位の1個は、X3およびX4の炭素数が1のアルキル基であり、繰返し単位の他の1個は、X3およびX4の炭素数が2のアルキル基であってもよい。
【0035】
一般式(1)において、Y1、Y2は、それぞれ独立な、炭素数1以上20以下の直鎖状若しくは分岐状炭化水素基である。Y1、Y2は、エーテル結合を有していてもよい。
【0036】
ここで、「炭素数1以上20以下の直鎖状若しくは分岐状炭化水素基」とは、炭素数1以上20以下の直鎖状炭化水素基、若しくは炭素数1以上20以下の分岐状炭化水素基を意味する。
【0037】
Y1、Y2における炭素数の上限は、好ましくは16であり、より好ましくは8、さらに好ましくは2である。
【0038】
Y1、Y2における炭素数1以上20以下の直鎖状若しくは分岐状炭化水素基としては、特に限定されず、例えば、CαH2α、CαH2α-1(αは、1以上20以下の整数である。)で表される構造が挙げられる。
【0039】
一般式(1)において、Z1~Z4は、それぞれ独立な、水素原子またはエチレン性不飽和基である。例えば、Z1およびZ2のいずれか一方が水素で他方がエチレン性不飽和基のときは、該エチレン性不飽和基が一般式(1)で示される直鎖状シロキサンの末端基となる。また、Z1およびZ2の両方が水素原子の場合は、Y1が一般式(1)で示される直鎖状シロキサンの末端基となる。
【0040】
また、Z3およびZ4のいずれか一方が水素で他方がエチレン性不飽和基のときは、該エチレン性不飽和基が一般式(1)で示される直鎖状シロキサンの末端基となる。また、Z3およびZ4の両方が水素原子の場合は、Y2が一般式(1)で示される直鎖状シロキサンの末端基となる。
【0041】
一般式(1)において、X1~X6およびZ1~Z4のうち、少なくとも1個はエチレン性不飽和基である。
【0042】
すなわち、一般式(1)で示される直鎖状シロキサンは、シロキサンの片末端にエチレン性不飽和基を有していてもよく、両末端にエチレン性不飽和基を有していてもよく、側鎖にエチレン性不飽和基を有していてもよい。
【0043】
一般式(1)で示される直鎖状シロキサンが側鎖にエチレン性不飽和基を有している場合は、表面改質効果が得られ、架橋密度も向上し、硬度も上昇することから、好ましい。
【0044】
また、シロキサンの片末端または両末端にエチレン性不飽和基を有している場合は、表面改質効果、架橋密度、および硬度を高めることができる。
【0045】
少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する直鎖状シロキサンの具体例として、ポリシロキサンの両末端に(メタ)アクリロイル基を含む成分(信越化学工業社製、「X-22-164」、「X-22-164AS」、「X-22-164A」、「X-22-164B」、「X-22-164C」、「X-22-164E」、「KP-410」、「KP-411」、「KP-412」、「KP-413」、「KP-414」、「KP-415」、「KP-423」、Gelest社製「DMS-U21」)、ポリシロキサンの片末端に(メタ)アクリロイルオキシ基を含む成分(信越化学工業社製、「X-22-174ASX」、「X-22-174BX」、「KF-2012」、「X-22-2426」、「X-22-2404」、「KP-416」、「KP-418」、「KP-422」)、ポリシロキサンの側鎖に(メタ)アクリロイルオキシ基を含む成分(信越化学工業社製、「KP-420」)等が挙げられる。
【0046】
これらの直鎖状シロキサンは、1種を単独で用いてもよく、または2種以上を併用してもよい。
【0047】
第1剤中の該直鎖状シロキサンの含有量は、特に限定されず、第1剤100質量%に対して、例えば、0.01質量%以上30質量%以下にすることが好ましく、より好ましくは0.05質量%以上25質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以上20質量%以下である。
【0048】
なお、第1剤が上記直鎖状シロキサンを複数種類含む場合には、合計の含有量が上記範囲を充足することが好ましい。
【0049】
第1剤中の該直鎖状シロキサンの含有量が0.01質量%以上であると、低表面張力化によってセラミックスへの接着強さが向上し、30質量%以下であると、歯科用接着性組成物の親水性が維持され歯質に対する接着性が向上する。
【0050】
第1剤は、本発明の目的を損なわない限り、その他の成分を含有してもよい。第1剤に含まれるその他の成分としては、例えば、酸基を有さない(メタ)アクリレート、重合開始剤、重合禁止剤、フィラー、溶媒が挙げられる。重合開始剤としては、化学重合開始剤および光重合開始剤が挙げられる。
【0051】
以下、上記成分についても説明する。
(C)酸基を有さない(メタ)アクリレート
第1剤は、酸基を有さない(メタ)アクリレートを含有してもよい。
【0052】
酸基を有さない(メタ)アクリレートとしては、特に限定されない。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレート、ジ-2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、1,3,5-トリス[1,3-ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}-2-プロポキシカルボニルアミノヘキサン]-1,3,5-(1H,3H,5H)トリアジン-2,4,6-トリオン、2,2-ビス[4-(3-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)フェニル]プロパン、N,N'-(2,2,4-トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2-(アミノカルボキシ)プロパン-1,3-ジオール〕テトラメタクリレート等が挙げられる。
【0053】
これらの酸基を有さない(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いてもよく、または2種以上を併用してもよい。
【0054】
酸基を有さない(メタ)アクリレートとしては、これらの中でも、歯科用接着性組成物の硬化体の機械的強度を向上させ、セラミックスおよび歯質に対する接着性を向上させる点で、2-ヒドロキシ-1,3-ジメタクリロイルオキシプロパン、トリエチレングリコールジメタクリレートが好ましい。
【0055】
第1剤中の酸基を有さない(メタ)アクリレートの含有量は、第1剤100質量%に対して、3質量%以上50質量%以下にすることが好ましく、より好ましくは5質量%以上40質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上30質量%以下である。
【0056】
なお、第1剤が酸基を有さない(メタ)アクリレートを複数種類含む場合には、合計の含有量が上記範囲を充足することが好ましい。
【0057】
第1剤中の酸基を有さない(メタ)アクリレートの含有量が3質量%以上であると、歯科用接着性組成物の操作性を向上させることができる。また、第1剤中の酸基を有さない(メタ)アクリレートの含有量が50質量%以下であると、歯科用重合性組成物の機械的強度を向上させることができる。
(D)化学重合開始剤
化学重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、チオ尿素誘導体、バナジウム化合物、有機過酸化物から選択された1種類以上を用いることができる。
(D-1)チオ尿素誘導体
チオ尿素誘導体は、化学重合開始剤の中でも、還元剤として機能する。
【0058】
チオ尿素誘導体としては、特に限定されず、例えば、エチレンチオ尿素、N-メチルチオ尿素、N-エチルチオ尿素、N-プロピルチオ尿素、N-ブチルチオ尿素、N-ラウリルチオ尿素、N-フェニルチオ尿素、N-シクロヘキシルチオ尿素、N,N-ジメチルチオ尿素、N,N-ジエチルチオ尿素、N,N-ジプロピルチオ尿素、N,N-ジブチルチオ尿素、N,N-ジラウリルチオ尿素、N,N-ジフェニルチオ尿素、N,N-ジシクロヘキシルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、N-アセチルチオ尿素、N-ベンゾイルチオ尿素、1-アリル-3-(2-ヒドロキシエチル)-2-チオ尿素、1-(2-テトラヒドロフルフリル)-2-チオ尿素、N-tert-ブチル-N'-イソプロピルチオ尿素、2-ピリジルチオ尿素等が挙げられる。
【0059】
これらのチオ尿素誘導体は、1種を単独で用いてもよく、または2種以上を併用してもよい。これらの中でも、歯科用接着性組成物の硬化性を向上させる点で、N-ベンゾイルチオ尿素が好ましい。
【0060】
第1剤中のチオ尿素誘導体の含有量は、特に限定されないが、第1剤100質量%に対して、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以上3質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以上1質量%以下である。
【0061】
なお、第1剤がチオ尿素誘導体を複数種類含む場合には、合計の含有量が上記範囲を充足することが好ましい。
【0062】
第1剤中のチオ尿素誘導体の含有量が0.1質量%以上であると、歯科用接着性組成物の硬化性がさらに向上し、5質量%以下であると、歯科用接着性組成物におけるチオ尿素誘導体の(メタ)アクリレートに対する溶解性が向上する。
(D-2)バナジウム化合物
バナジウム化合物は、化学重合開始剤の中でも還元剤として機能する。
【0063】
バナジウム化合物としては、特に限定されず、例えば、シュウ酸オキソバナジウム、バナジルアセチルアセトネート、バナジウムアセチルアセトネート、バナジルステアレート、バナジウムナフテネート、バナジウムベンゾイルアセトネート等が挙げられ、2種以上併用してもよい。これらの中でも、歯科用接着性組成物の硬化性の点で、バナジルアセチルアセトネートが好ましい。
【0064】
第1剤中のバナジウム化合物の含有量は、特に限定されないが、第1剤100質量%に対して、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、より好ましくは0.0015質量%以上1質量%以下、さらに好ましくは0.002質量%以上0.1質量%以下である。
【0065】
なお、第1剤がバナジウム化合物を複数種類含む場合には、合計の含有量が上記範囲を充足することが好ましい。
【0066】
第1剤中のバナジウム化合物の含有量が0.001質量%以上であると、歯科用接着性組成物の硬化性がさらに向上し、5質量%以下であると、歯科用接着性組成物の保存安定性がさらに向上する。
(D-3)有機過酸化物
有機過酸化物は、化学重合開始剤の中でも、酸化剤として機能する。
【0067】
有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド、t-アミルヒドロペルオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ヒドロペルオキシ)ヘキサン、p-ジイソプロピルベンゼンモノヒドロペルオキシド、p-メタンヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシド等が挙げられる。
【0068】
これらの有機過酸化物は、1種を単独で用いてもよく、または2種以上を併用してもよい。これらの中でも、歯科用接着性組成物の硬化性の点で、クメンヒドロペルオキシドが好ましい。
【0069】
第1剤中の有機過酸化物の含有量は、特に限定されないが、第1剤100質量%に対して、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.05質量%以上5質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以上3質量%以下である。
【0070】
なお、第1剤が有機過酸化物を複数種類含む場合には、合計の含有量が上記範囲を充足することが好ましい。
【0071】
第1剤中の有機過酸化物の含有量が0.01質量%以上であると、歯科用接着性組成物の硬化性がさらに向上し、10質量%以下であると、歯科用接着性組成物の操作余裕時間が長くなる。
(E)光重合開始剤
【0072】
光重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、カンファーキノン(CQ)、第3級アミン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(TPO)、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ベンジルケタール、ジアセチルケタール、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルビス(2-メトキシエチル)ケタール、4,4'-ジメチル(ベンジルジメチルケタール)、アントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-クロロアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、1-ヒドロキシアントラキノン、1-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、1-ブロモアントラキノン、チオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-ニトロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-クロロ-7-トリフルオロメチルチオキサントン、チオキサントン-10,10-ジオキシド、チオキサントン-10-オキシド、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)ケトン、4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0073】
光重合開始剤の1種である第3級アミンについて説明する。
(E-1)第3級アミン
第3級アミンは、光重合開始剤の中でも、還元剤として機能する。
【0074】
第3級アミンは、特に限定されず、例えば、第3級脂肪族アミン、第3級芳香族アミンが挙げられる。
【0075】
第3級脂肪族アミンとしては、例えば、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0076】
第3級芳香族アミンとしては、例えば、p-ジアルキルアミノ安息香酸アルキル、7-ジメチルアミノ-4-メチルクマリン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジベンジルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジエチル-p-トルイジン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、N,N,2,4,6-ペンタメチルアニリン、N,N,2,4-テトラメチルアニリン、N,N-ジエチル-2,4,6-トリメチルアニリン等が挙げられる。
【0077】
第3級アミンは、これらの中でも、第3級芳香族アミンが好ましく、より好ましくはp-ジアルキルアミノ安息香酸アルキルである。
【0078】
p-ジアルキルアミノ安息香酸アルキルとしては、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸メチル(EPA)、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、p-ジメチルアミノ安息香酸プロピル、p-ジメチルアミノ安息香酸アミル、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、p-ジエチルアミノ安息香酸エチル、p-ジエチルアミノ安息香酸プロピル等が挙げられる。
【0079】
これらの第3級アミンは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0080】
これらの光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、または2種以上を併用してもよい。これらの中でも、歯科用接着性組成物の硬化性を向上させる点で、カンファーキノン(CQ)、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル(EPA)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(TPO)が好ましい。
【0081】
第1剤中の光重合開始剤の含有量は、特に限定されないが、第1剤100質量%に対して、例えば0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、より好ましくは0.05質量%以上8質量%以下、さらに好ましくは1質量%以上5質量%以下である。
【0082】
なお、第1剤が光重合開始剤を複数種類含む場合には、合計の含有量が上記範囲を充足することが好ましい。
【0083】
第1剤中の光重合開始剤の含有量が0.01質量%以上であると、歯科用接着性組成物の硬化性がさらに向上し、10質量%以下であると、歯科用接着性組成物の保存安定性がさらに向上する。
【0084】
ここまで説明した重合開始剤は、第1剤と、第2剤とのいずれかが含有していても良く、両剤が含有していても良い。このため、第1剤および第2剤の少なくとも一方が重合開始剤を含有することが好ましい。なお、本実施形態の歯科用接着性組成物は、紫外線の照射等により硬化させる場合が多いため、重合開始剤としては、特に上記光重合開始剤を好適に用いることができる。このため、第1剤および第2剤の少なくとも一方が、光重合開始剤を含有することが好ましい。
(F)重合禁止剤
重合禁止剤は、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール)(BHT)、6-tert-ブチル-2,4-キシレノール等が挙げられる。
【0085】
これらの重合禁止剤は、1種を単独で用いてもよく、または2種以上を併用してもよい。これらの中でも、歯科用接着性組成物の硬化性を向上させる点で、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)が好ましい。
【0086】
第1剤中の重合禁止剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、第1剤100質量%に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、より好ましくは0.05質量%以上3質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以上1質量%以下である。
【0087】
なお、第1剤が重合禁止剤を複数種類含む場合には、合計の含有量が上記範囲を充足することが好ましい。
【0088】
第1剤中の光重合開始剤の含有量が0.01質量%以上5質量%以下であると、歯科用接着性組成物の保存安定性が向上する。
(G)フィラー
フィラーは、特に限定されないが、例えば、コロイダルシリカ、表面が疎水化処理された微粒子シリカ(疎水性ヒュームドシリカ)、酸化アルミニウム、フルオロアルミノシリケートガラス、バリウムガラス等が挙げられる。これらの中でも、疎水性ヒュームドシリカ(例えば、アエロジル(登録商標))が好ましい。これらのフィラーは、1種を単独で用いてもよく、または2種以上を併用してもよい。
【0089】
第1剤中のフィラーの配合量は、第1剤100質量%に対して、例えば0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上20質量%以下、さらに好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0090】
なお、第1剤がフィラーを複数種類含む場合には、合計の含有量が上記範囲を充足することが好ましい。
【0091】
第1剤中のフィラーの配合量が0.1質量%以上であると、歯科用接着性組成物の粘性が高くなり、歯科用接着性組成物の操作性を向上させることができる。また、第1剤中のフィラーの配合量が30質量%以下であると、歯科用接着性組成物の粘性を抑制し、歯科用接着性組成物の高い操作性を維持することができる。
(H)溶媒
溶媒は、特に限定されないが、例えば、水、有機溶媒から選択された1種類以上が挙げられる。なお、第1剤は溶媒として、水と有機溶媒との両方を含むこともできる。
(H-1)有機溶媒
有機溶媒としては、例えばエタノール、アセトン、2-プロパノール、エチルメチルケトン等が挙げられる。
【0092】
第1剤中の有機溶媒の含有量は、特に限定されないが、例えば、第1剤100質量%に対して10質量%以上50質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以上40質量%以下である。
【0093】
なお、第1剤が有機溶媒を複数種類含む場合には、合計の含有量が上記範囲を充足することが好ましい。
【0094】
第1剤中の有機溶媒の含有量が10質量%以上であると、歯科用接着性組成物の均一性が向上し、50質量%以下であると、歯科用接着性組成物のプライマーとしての接着性が向上する。
(H-2)水
水としては、特に限定されないが、好ましくはイオン交換水または蒸留水を使用できる。第1剤が水を含むと、酸基を有する(メタ)アクリレートの酸基が解離し、歯面のスメアー層の溶解性、歯科用接着性組成物のプライマーとしての歯質脱灰性および歯質への浸透性が向上する。このため、第1剤により歯面を前処理すると、歯科用接着性組成物のプライマーとしての歯質への浸透性が向上し、歯科用接着性組成物の接着性が向上する。
【0095】
そこで、第1剤は、さらに水を含有することが好ましい。
【0096】
第1剤中の水の含有量は、特に限定されず、例えば、第1剤100質量%に対して1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、5質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。第1剤中の水の含有量が1質量%以上50質量%以下であると、歯面のスメアー層の溶解性、歯科用接着性組成物のプライマーとしての歯質脱灰性及び歯質への浸透性が向上する。
(1-2)pH
第1剤は、pHが1.2以上4.0以下であることが好ましく、より好ましくは1.5以上3.0以下である。第1剤のpHを1.2以上4.0以下にすることで、歯面のスメアー層の溶解性および歯質脱灰性が向上し、歯科用接着性組成物の接着性が向上する。
(2)第2剤
本実施形態の歯科用接着性組成物において、第2剤は、ボンディング剤またはボンドとも呼ばれ、(メタ)アクリレートを含有する。
(2-1)第2剤が含有する成分について
以下、第2剤が含有する成分について説明する。
(A)(メタ)アクリレート
第2剤中の(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、好ましくは、ジ(メタ)アクリレートであり、より好ましくは分子量400以上のジ(メタ)アクリレート、および分子量400未満のジ(メタ)アクリレートが挙げられる。また、(メタ)アクリレートとしては、多官能(メタ)アクリレートを好ましく用いることができる。
【0097】
分子量400以上のジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、分子量400以上の脂肪族ジ(メタ)アクリレート、分子量400以上の芳香族ジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0098】
分子量400以上の脂肪族ジ(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、1,6-ビス-[2-メタクリロイルオキシエトキシカルボニルアミノ]-2,4,4-トリメチルヘキサン(UDMA)、ポリエチレングリコール♯400ジメタクリレート、ポリエチレングリコール♯600ジメタクリレート、ポリエチレングリコール♯1000ジメタクリレート等が挙げられる。
【0099】
分子量400以上の芳香族ジ(メタ)アクリレートの具体例としては、ビスフェノールAジグリシジルメタクリレート(Bis-GMA)、2-(4-(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)-2-(4-(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2-(4-(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)-2-(4-(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0100】
分子量400未満のジ(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、好ましくは、分子量300未満のジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0101】
分子量300未満のジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシ-1,3-ジメタクリロイルオキシプロパン、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコール♯200ジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート等が挙げられる。これらの中でも、水酸基を含有するジ(メタ)アクリレートが好ましく、2-ヒドロキシ-1,3-ジメタクリロイルオキシプロパンがより好ましい。
【0102】
第2剤中の(メタ)アクリレートの含有量は、特に限定されないが、例えば、第2剤100質量%に対して50質量%以上99質量%以下が好ましく、より好ましくは60質量%以上95質量%以下である。
【0103】
なお、第2剤が(メタ)アクリレートを複数種類含む場合には、合計の含有量が上記範囲を充足することが好ましい。
【0104】
第2剤中の(メタ)アクリレートの含有量が50質量%以上99質量%以下であると、歯科用接着性組成物の接着性が向上し、歯科用接着性組成物の硬化体の機械的強度が向上する。
【0105】
第2剤は、分子量400以上のジ(メタ)アクリレートと、分子量400未満のジ(メタ)アクリレートとの両方を含むこともできる。
【0106】
第2剤中の分子量400以上のジ(メタ)アクリレートの含有量(A)に対する、分子量400未満のジ(メタ)アクリレートの含有量(B)の比率(B/A)は、特に限定されないが、質量割合で0.5以上2以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.8以上1.4以下である。第2剤中の分子量400以上のジ(メタ)アクリレートの含有量に対する、分子量400未満のジ(メタ)アクリレートの含有量の比率を0.5以上2以下にすることで、歯科用接着性組成物の接着性が向上する。
【0107】
第2剤は、本発明の目的を損なわない限り、その他の成分を含有してもよい。第2剤に含まれるその他の成分としては、例えば、光重合開始剤、フィラー、重合禁止剤等が挙げられる。
【0108】
以下、上記成分についても説明する。
(B)光重合開始剤
第2剤が光重合開始剤を含有する場合、光重合開始剤としては特に限定されないが、例えば、カンファーキノン等のα-ジケトン化合物、第3級アミン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6-ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド化合物、ベンジルケタール、ジアセチルケタール、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルビス(2-メトキシエチル)ケタール、4,4'-ジメチル(ベンジルジメチルケタール)、アントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-クロロアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、1-ヒドロキシアントラキノン、1-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、1-ブロモアントラキノン、チオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-ニトロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-クロロ-7-トリフルオロメチルチオキサントン、チオキサントン-10,10-ジオキシド、チオキサントン-10-オキシド、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)ケトン、4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、アジド基を含む化合物等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、または2種以上を併用してもよい。
【0109】
第2剤で光重合開始剤として第3級アミンを用いる場合、特に限定されないが、例えば、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル等の芳香族第3級アミン等を好適に用いることができる。
【0110】
第2剤中の光重合開始剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、第2剤100質量%に対して0.01質量%以上8質量%以下が好ましく、より好ましくは3質量%以上6質量%以下である。
【0111】
なお、第2剤が光重合開始剤を複数種類含む場合には、合計の含有量が上記範囲を充足することが好ましい。
【0112】
第2剤中の光重合開始剤の含有量が0.01質量%以上8質量%以下であると、歯科用接着性組成物の接着性が向上し、歯科用接着性組成物のボンディング剤としての保存安定性が向上する。
(C)フィラー
第2剤は、フィラーを含有していてもよい。第2剤中のフィラーの含有量は0以上50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以上20質量%以下である。すなわち、第2剤がフィラーを含有する場合は、50質量%を超えるフィラーを含有しないことが好ましい。
【0113】
なお、第2剤がフィラーを複数種類含む場合には、合計の含有量が上記範囲を充足することが好ましい。
【0114】
これは、第2剤中のフィラーの含有量が50質量%以下であると、第2剤の分散性が向上し、歯科用接着性組成物のボンディング剤としての保存安定性が向上する。また、第2剤中のフィラーの含有量が50質量%以下であると、重合成分の割合も高くなるため、特に接着性を高められる。
【0115】
フィラーとしては、第1剤で説明したものと同じものを好適に用いることができるため、ここでは説明を省略する。
(D)重合禁止剤
第2剤に用いる重合禁止剤は、特に限定されず、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール)(BHT)、2,6-t-ブチル-2,4-キシレノール等が挙げられる。第2剤が重合禁止剤を含有する場合、第2剤中の重合禁止剤の含有量は特に限定されないが、例えば、第2剤100質量%に対して0.01質量%以上3質量%以下が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上1質量%以下である。
【0116】
なお、第2剤が重合禁止剤を複数種類含む場合には、合計の含有量が上記範囲を充足することが好ましい。
【0117】
(3)歯科用接着性組成物の使用態様
本実施形態に係る歯科用接着性組成物は、対象に上述の第1剤を適用した後にエアーブローを行い、さらに該対象に上述の第2剤を適用することにより使用できる。
【0118】
すなわち、本実施形態の歯科用接着性組成物の使用方法は、被接着物である対象に第1剤を適用する第1剤塗布工程と、第1剤の塗布面にエアーブローを行うエアーブロー工程と、第1剤の塗布面上に第2剤を塗布する第2剤塗布工程と、を有することができる。
【0119】
なお、第2塗布工程の後に接着する接着物を第2剤の塗布面に配置し、第2剤を硬化する配置、硬化工程をさらに実施することで、被接着物と、接着物とを接着し、接着構造体を製造できるため、上述の工程を含む接着構造体の製造方法ということもできる。
【0120】
エアーブローは、公知の方法により行うことができ、第1剤を適用した直後に行ってもよい。
【0121】
対象に第1剤を適用する態様は、任意であり、例えば、公知の方法により対象に第1剤を塗布することができる。また、対象に第2剤を適用する態様についても任意であり、例えば、第1剤が塗布された対象に、公知の方法により、上述の第2剤を塗布することができる。
【0122】
本実施形態に係る歯科用接着性組成物は、このような使用態様で使用されることで、従来の2剤型の歯科用接着性組成物と同等に使用することができるため、容易に取り扱うことができる。
【0123】
本実施形態の歯科用接着性組成物は、セラミックス、エナメル質、象牙質の何れに対しても高い接着性を示すことができる。そのため、本実施形態の歯科用接着性組成物によれば、例えばセラミックス素材の歯科用補綴物と歯質との間の接着力を高めることができる。
【0124】
本実施形態の歯科用接着性組成物の用途は、特に限定されないが、例えば、各種歯科材料に用いることができる。
【0125】
本実施形態の歯科用接着性組成物の用途としては、例えば、歯科用セメント、歯科用接着剤、歯科用仮封材、歯科用コート材、歯科用硬質レジン、歯科切削加工用レジン材料、歯科用暫間修復材、歯科用充填剤、歯磨剤などが挙げられる。これらの中でも、本実施形態の歯科用接着性組成物は、歯科用接着剤に好適に用いられる。
【実施例0126】
以下、本発明について、さらに実施例および比較例を用いて説明する。なお、以下において、「部」及び「%」は、特に断りのない限り、質量基準である。また、各種の試験及び評価は、下記の方法に従う。
(1)評価方法
以下の実施例、比較例で作製した歯科用接着性組成物の評価方法について説明する。
(1-1)対セラミックス接着強さ
以下の(A)~(I)の順で試験体の作製、評価を行った。
(A)セラミックスを#600耐水研磨紙で研磨した。
(B)セラミックスの研磨面について、サンドブラスターにてサンドブラストを行った。この際、サンドブラストの圧力を0.2MPaとした。
(C)セラミックスを水に浸漬して、10分間の超音波洗浄を2回行った。
(D)サンドブラストした表面に第1剤を塗布し、すぐにエアーブローで乾燥させた。
(E)第1剤を塗布後、乾燥した面の上から第2剤をアプリケーターで塗布し、すぐにエアーブローで接着面を平坦にした。
(F)直径2.38mmの円形の穴の開いたウルトラデント社の型を、上記第1剤、第2剤の塗布面の上に重ね、型の上から光照射器(ジーシー社製、G-ライトプリマIIプラス)により光照射を10秒行った。
(G)上記型の穴内にコンポジットレジン(クリアフィルAP-X、クラレノリタケデンタル社製)を充填し、さらに光照射を20秒行った。
(H)37℃の水中に24時間浸漬して試験体を得た。
(I)作製した5個の試験体について、オートグラフ(島津製作所社製、EZ-S)を用いて、クロスヘッドスピード1mm/分の条件で、剪断試験を実施した。そして、5個の試験体についての剪断接着強さの平均値を求め、歯科用接着性組成物使用時のコンポジットレジンのセラミックスに対する接着性を評価した。
【0127】
なお、第1剤は、表1に示した配合の各実施例、比較例で作製したものを用いた。また、第2剤は各実施例、比較例について、表1の第2剤の欄にA~Cで示したいずれかのものを用いている。第2剤の具体的な配合は表2に示している。
【0128】
そして、各実施例、比較例で、同じ条件で作製した5個の試験体について、上述のように評価を行った。
【0129】
歯科用接着性組成物使用時のコンポジットレジンのセラミックスに対する接着性(対セラミックス接着強さ)の評価基準は以下の通りである。なお、評価が優、良の場合はセラミックスに対して十分な接着強さを有していると判定し、不可の場合はセラミックスに対する接着強さが不十分であると判定した。表1の対セラミックス接着強さの測定値の欄に上記5個の試験体についての平均値を、評価の欄に上記評価結果を示している。
〔評価基準〕
優:剪断接着強さの平均が20MPa以上である場合
良:剪断接着強さの平均が17.5MPa以上20MPa未満である場合
不可:剪断接着強さの平均が17.5MPa未満である場合
(1-2)対エナメル質接着強さおよび対象牙質接着強さ
以下の(A)~(G)の順で試験体の作製、評価を行った。
(A)牛歯のエナメル質または象牙質を#400耐水研磨紙で研磨し、新鮮面を露出させた。なお、牛歯のエナメル質を用いた場合には対エナメル質接着強さの評価になり、象牙質を用いた場合には対象牙質接着強さの評価となる。
(B)露出させた新鮮面に第1剤を塗布し、すぐにエアーブローで乾燥させた。
(C)第1剤を塗布後、乾燥した面の上から第2剤をアプリケーターで塗布し、すぐにエアーブローで接着面を平坦にした。
(D)直径2.38mmの円形の穴の開いたウルトラデント社の型を、上記第1剤、第2剤の塗布面の上に重ね、型の上から光照射器(ジーシー社製、G-ライトプリマIIプラス)により光照射を10秒行った。
(E)上記型の穴内にコンポジットレジン(クリアフィルAP-X、クラレノリタケデンタル社製)を充填し、さらに光照射を20秒行った。
(F)37℃の水中に24時間浸漬して試験体を得た。
(G)作製した5個の試験体について、オートグラフ(島津製作所社製、EZ-S)を用いて、クロスヘッドスピード1mm/分の条件で、剪断試験を実施した。そして、5個の試験体についての剪断接着強さの平均値を求め、歯科用接着性組成物使用時のコンポジットレジンのエナメル質および象牙質に対する接着性を評価した。
【0130】
なお、第1剤は、表1に示した配合の各実施例、比較例で作製したものを用いた。また、第2剤は各実施例、比較例について、表1の第2剤の欄にA~Cで示したいずれかのものを用いている。第2剤の具体的な配合は表2に示している。
【0131】
そして、各実施例、比較例で、同じ条件で作製した5個の試験体について、上述のように評価を行った。なお、各実施例、比較例では、エナメル質についての試験体を5個、象牙質についての試験体を5個作製している。
【0132】
歯科用接着性組成物使用時のコンポジットレジンの歯質(エナメル質、象牙質)に対する接着性(対エナメル質接着強さおよび対象牙質接着強さ)の評価基準は以下の通りである。なお、評価が優、良の場合は各歯質に対して十分な接着強さを有していると判定し、不可の場合は各歯質に対する接着強さが不十分であると判定した。表1の対エナメル質接着強さ、対象牙質接着強さの測定値の欄に、それぞれ上記5個の試験体についての平均値を、評価の欄に上記評価結果を示している。
〔評価基準〕(対エナメル質接着強さ)
優:剪断接着強さの平均が35MPa以上である場合
良:剪断接着強さの平均が25MPa以上35MPa未満である場合
不可:剪断接着強さの平均が25MPa未満である場合
〔評価基準〕(対象牙質接着強さ)
優:剪断接着強さの平均が40MPa以上である場合
良:剪断接着強さの平均が35MPa以上40MPa未満である場合
不可:剪断接着強さの平均が35MPa未満である場合
(2)歯科用接着性組成物の作製条件
[実施例1]
(A)試料(第1剤)
2剤型の歯科用接着性組成物を構成する第1剤を、表1に示す配合となるように調製した。なお、表1で配合した第1剤はpHが1.5であった。以下の他の実施例、比較例でも第1剤のpH値は同じ値になっていた。
【0133】
表1中の略称または製品名で示される成分の仕様は、以下のとおりである。
【0134】
GDMA:2-ヒドロキシ-1,3-ジメタクリロイルオキシプロパン
TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート
4-META:4-メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸無水物
MDP:10-メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート
CQ:カンファーキノン
EPA:4-ジメチルアミノ安息香酸エチル
TPO:2,4,6-トリメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド
BHT:ジブチルヒドロキシトルエン
AEROSIL(登録商標)R972:ジメチルジクロロシラン(DDS)で表面処理された微粒子シリカ(日本アエロジル社製)
シリコーン化合物のうち、KP-410、KP-422、KP-423、DMS-U21が既述の一般式(1)を充足する直鎖状シロキサンになる。また、シリコーン化合物のうち、KL-700は、既述の一般式(1)を充足しないシリコーン含有アクリルポリマーになる。
(B)第2剤
2剤型の歯科用接着性組成物を構成する第2剤を、表2のAに示す配合で、調製した。
【0135】
なお、表2中の略称または製品名で示される成分の仕様は、以下のとおりである。
【0136】
GDMA:2-ヒドロキシ-1,3-ジメタクリロイルオキシプロパン
UDMA:1,6-ビス-[2-メタクリロイルオキシエトキシカルボニルアミノ]-2,4,4-トリメチルヘキサン
TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート
Bis-GMA:ビスフェノールAジグリシジルメタクリレート
AEROSIL(登録商標)RX50:ヘキサメチルジシラザンで表面処理された微粒子シリカ(日本アエロジル社製)
AEROSIL(登録商標)RX200:ヘキサメチルジシラザンで表面処理された微粒子シリカ(日本アエロジル社製)
CQ:カンファーキノン
EPA:4-ジメチルアミノ安息香酸エチル
TPO:2,4,6-トリメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド
BHT:ジブチルヒドロキシトルエン
得られた第1剤、第2剤を用いて、既述の評価を行った。評価結果を表1に示す。
[実施例2~実施例15]
第1剤の配合を表1に示した配合とし、第2剤として、表1の第2剤の欄に示したA~Cのいずれかを用いた点以外は、実施例1と同じ操作により歯科用接着性組成物を作製し、既述の評価を行った。第2剤の具体的な配合は表2に示している。評価結果を表1に示す。
[比較例1~比較例3]
第1剤の配合割合を表1に示した割合とし、第2剤として、表1の第2剤の欄に示したAまたはBを用いた点以外は、実施例1と同じ操作により歯科用接着性組成物を作製し、既述の評価を行った。第2剤の具体的な配合は表2に示している。評価結果を表1に示す。
【0137】
【0138】
【表2】
表1に示した結果より、実施例1~実施例15の歯科用接着性組成物を用いた場合には、何れの項目も優または良であり、セラミックスに対しても良好な接着性を有する歯科用接着性組成物であることが分かる。
【0139】
一方、第1剤に既述の一般式(1)で表される直鎖状シロキサンを含有しない比較例1~3の歯科用接着性組成物は、対セラミックス接着強さが十分ではないことが確認できた。
【0140】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。