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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151168
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20231005BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20231005BHJP
   B26D 3/00 20060101ALI20231005BHJP
   B26D 3/10 20060101ALI20231005BHJP
   B28D 5/00 20060101ALI20231005BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20231005BHJP
   B24B 7/22 20060101ALI20231005BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H01L21/78 L
H01L21/304 622N
B26D3/00 601B
B26D3/10 C
B28D5/00 A
B24B41/06 L
B24B7/22 Z
B24B27/06 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060627
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 智
(72)【発明者】
【氏名】鳥越 翔斗
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
3C069
3C158
5F057
5F063
【Fターム(参考)】
3C034BB73
3C034DD10
3C034DD20
3C043DD05
3C069AA03
3C069BA04
3C069BA08
3C069BB04
3C069CA05
3C069CB01
3C069EA04
3C158AA03
3C158AB04
3C158CB02
3C158CB10
3C158DA17
5F057AA04
5F057BA11
5F057CA14
5F057DA01
5F057EC15
5F063AA05
5F063CB06
5F063CB08
5F063CB24
5F063DF12
5F063DG16
(57)【要約】      (修正有)
【課題】半導体加工用粘着テープの切断時に生じるカットダストを抑えることのできる半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】方法は、下記工程S1及びS2をこの順で含む。
・工程S1:回路が形成された表面及び裏面を有する半導体ウエハの表面に半導体加工用粘着テープを貼付した後、半導体加工用粘着テープを前記半導体ウエハの外形に沿って刃で切断し、半導体加工用粘着テープのうち半導体ウエハに貼付されていない非貼付部分を除去する工程。
・工程S2:半導体ウエハの前記裏面を研削する工程。
また、工程S1において、半導体ウエハに貼付されている半導体加工用粘着テープの水平面に対する垂直方向のうち、半導体加工用粘着テープの半導体ウエハとの貼付面側を下方向とし、反対側を上方向とした場合に、非貼付部分の切断縁が上方向に反り上がるように刃を進行させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程(S1)及び(S2)をこの順で含み、
・工程(S1):回路が形成された表面及び裏面を有する半導体ウエハの前記表面に半導体加工用粘着テープを貼付した後、前記半導体加工用粘着テープを前記半導体ウエハの外形に沿って刃で切断し、前記半導体加工用粘着テープのうち前記半導体ウエハに貼付されていない非貼付部分を除去する工程。
・工程(S2):前記半導体ウエハの前記裏面を研削する工程。
前記工程(S1)において、前記半導体ウエハの水平面に対する垂直方向のうち、前記半導体ウエハの裏面側を下方向とし、前記半導体ウエハの表面側を上方向とした場合に、前記非貼付部分の切断縁が上方向に反り上がるように前記刃を進行させる、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記工程(S1)において、前記刃を進行させる際に、下記条件(α1)を満たす、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
・条件(α1):前記刃の刃先のA軸の角度を0°未満に調整する。
【請求項3】
さらに、下記条件(α2)を満たす、請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
・条件(α2):前記刃のB軸の角度を0°以上に調整し、かつ前記刃のC軸の角度を0°以上に調整する。
【請求項4】
前記工程(S1)において、前記刃を進行させる際に、下記条件(β1)を満たす、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
・条件(β1):前記刃のB軸の角度を0°超+45°未満に調整し、かつ前記刃のC軸の角度を0°超+30℃未満に調整する。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
さらに、下記工程(S3)を含む、半導体装置の製造方法。
・工程(S3):前記半導体ウエハをダイシングして個片化する工程
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体ウエハとして、表面側に溝が形成された半導体ウエハを用い、
前記工程(S2)において、前記半導体ウエハを、前記溝を起点として複数のチップに個片化させる、製造方法。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体ウエハとして、内部に改質領域が形成された半導体ウエハを用いるか、又は、前記工程(S1)の後に前記半導体ウエハの内部に改質領域を形成し、
前記工程(S2)において、前記半導体ウエハを、前記改質領域を起点として複数のチップに個片化させる、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、半導体加工用粘着テープを利用した、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器の小型化及び多機能化の急速な進展に伴い、各種電子機器に搭載される半導体チップの小型化及び薄型化が求められている。
半導体チップの薄型化は、一般に、半導体ウエハの裏面を研削することにより行われる。また、薄型化された半導体チップを得るための手法として、先ダイシング法(DBG:Dicing Before Grinding)と呼ばれる手法が知られている。DBGは、半導体ウエハの表面側(回路形成面側)から所定深さの溝をダイシングブレード等により形成した後、半導体ウエハ裏面側から研削を行い、研削により半導体ウエハを個片化して半導体チップを得る手法である。
DBGでは、半導体ウエハの裏面研削と、半導体ウエハの個片化を同時に行うことができるので、薄型化された半導体チップを効率よく製造することができる。
【0003】
また、DBGの変形法として、半導体ウエハの表面側に溝を形成することなく、半導体ウエハの内部にレーザー又はプラズマ等により改質領域を形成し、半導体ウエハの裏面研削時の応力等で半導体ウエハを個片化して半導体チップを得る手法も提案されている。この手法の場合、半導体ウエハが改質領域を起点として結晶方向に切断される。そのため、ダイシングブレードを用いたDBGよりもチッピングの発生を低減できる。その結果、抗折強度に優れた半導体チップを得ることができ、半導体チップのさらなる薄型化が可能となる。また、ダイシングブレード等により半導体ウエハ表面に所定深さの溝を形成するDBGと比較して、ダイシングブレードにより半導体ウエハを削り取る領域がないため(換言すれば、カーフ幅が極小であるため)、半導体チップの収率に優れるという利点もある。
【0004】
ところで、DBG又はDBGの変形法等の半導体ウエハの裏面研削工程を含む半導体チップの製造時には、半導体ウエハ表面の回路を保護し、また、半導体ウエハ及び半導体チップを保持するために、半導体ウエハ表面にバックグラインドシートと呼ばれる半導体加工用粘着テープを貼付するのが一般的である。
このような半導体加工用粘着テープとしては、例えば、基材と、粘着剤層とが積層された半導体加工用粘着テープが利用される。また、最近では、半導体ウエハの裏面研削時の応力を緩和して、半導体ウエハに割れ及び欠けが生じることを防止すべく、緩衝層と、基材と、粘着剤層とがこの順で積層された積層構造を有する半導体加工用粘着テープも提案されている(例えば、特許文献1等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-183008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、DBG又はDBGの変形法等の半導体ウエハの裏面研削工程を含む半導体チップの製造時において、半導体ウエハをグラインダ等により裏面研削する際に、半導体ウエハの外周に余分な半導体加工用粘着テープがあると、グラインダが余分な半導体加工用粘着テープを咬み込むことがある。そこで、半導体加工用粘着テープは、裏面研削の前に半導体ウエハの外形に沿って切断される。
【0007】
しかしながら、半導体チップの小型化及び薄型化に伴い、半導体加工用粘着テープの切断時に生じるカットダストによって、半導体チップの欠けや破損(以下、これらを「半導体チップのクラック」と称する)が発生することがある。そのため、半導体チップのクラックの要因となるカットダストの発生を抑制することが求められている。
【0008】
そこで、本発明は、半導体加工用粘着テープの切断時に生じるカットダストを抑えることのできる、半導体装置の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、半導体ウエハの表面に貼付された半導体加工用粘着テープを半導体ウエハの外形に沿って切断する際に、ある特定の条件を満たすことによって、上記課題を解決し得ることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、下記[1]~[7]に関する。
[1] 下記工程(S1)及び(S2)をこの順で含み、
・工程(S1):回路が形成された表面及び裏面を有する半導体ウエハの前記表面に半導体加工用粘着テープを貼付した後、前記半導体加工用粘着テープを前記半導体ウエハの外形に沿って刃で切断し、前記半導体加工用粘着テープのうち前記半導体ウエハに貼付されていない非貼付部分を除去する工程。
・工程(S2):前記半導体ウエハの前記裏面を研削する工程。
前記工程(S1)において、前記半導体ウエハの水平面に対する垂直方向のうち、前記半導体ウエハの裏面側を下方向とし、前記半導体ウエハの表面側を上方向とした場合に、前記非貼付部分の切断縁が上方向に反り上がるように前記刃を進行させる、半導体装置の製造方法。
[2] 前記工程(S1)において、前記刃を進行させる際に、下記条件(α1)を満たす、上記[1]に記載の半導体装置の製造方法。
・条件(α1):前記刃の刃先のA軸の角度を0°未満に調整する。
[3] さらに、下記条件(α2)を満たす、上記[2]に記載の半導体装置の製造方法。
・条件(α2):前記刃のB軸の角度を0°以上に調整し、かつ前記刃のC軸の角度を0°以上に調整する。
[4] 前記工程(S1)において、前記刃を進行させる際に、下記条件(β1)を満たす、上記[1]に記載の半導体装置の製造方法。
・条件(β1):前記刃のB軸の角度を0°超+45°未満に調整し、かつ前記刃のC軸の角度を0°超+30℃未満に調整する。
[5] 上記[1]~[4]のいずれかに記載の半導体装置の製造方法において、
さらに、下記工程(S3)を含む、半導体装置の製造方法。
・工程(S3):前記半導体ウエハをダイシングして個片化する工程
[6] 上記[1]~[4]のいずれかに記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体ウエハとして、表面側に溝が形成された半導体ウエハを用い、
前記工程(S2)において、前記半導体ウエハを、前記溝を起点として複数のチップに個片化させる、製造方法。
[7] 上記[1]~[4]のいずれかに記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体ウエハとして、内部に改質領域が形成された半導体ウエハを用いるか、又は、前記工程(S1)の後に前記半導体ウエハの内部に改質領域を形成し、
前記工程(S2)において、前記半導体ウエハを、前記改質領域を起点として複数のチップに個片化させる、製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、半導体加工用粘着テープの切断時に生じるカットダストを抑えることのできる、半導体装置の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の半導体装置の製造方法の工程(S1)の実施態様を示す図である。
図2】半導体ウエハに半導体加工用粘着テープを貼付するための、粘着テープ貼付装置の一例を示す概略図である。
図3】刃の部位に関する説明図である。
図4】A軸の定義に関する概略説明図である。
図5】A軸に関し、刃の形状の変形例を示す概略説明図である。
図6】B軸の定義に関する概略説明図である。
図7】B軸に関し、刃の形状の変形例を示す概略説明図である。
図8】C軸の定義に関する概略説明図である。
図9】Abaqusによる解析モデルを示す図である。
図10】実施例において使用した刃の寸法の詳細を示す図である。
図11】「刃による切断性の評価(2):シミュレーションによる評価」における実施例II-3sim.と比較例II-2sim.のAbaqusによる解析画像である。
図12】「刃による切断性の評価(4):実験による評価」における実施例II-3exp.と比較例II-2exp.の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)の観察結果(図面代用写真)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書に記載された数値範囲の上限値および下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、数値範囲として「A~B」及び「C~D」が記載されている場合、「A~D」及び「C~B」の数値範囲も、本発明の範囲に含まれる。
本明細書に記載された数値範囲「下限値~上限値」は、特に断りのない限り、下限値以上、上限値以下であることを意味する。
本明細書において、実施例の数値は、上限値又は下限値として用いられ得る数値である。
【0014】
また、本明細書中、基準となる図を挙げることなく、例えば、上、下、左、右、または、手前、奥といった方向を示した場合は、上、下、左、右方向が紙面に平行な方向であり、手前、奥方向が紙面に直交する方向とする。
【0015】
[半導体装置の製造方法の態様]
本発明の半導体装置の製造方法(以下、「本製造方法」ともいう)は、下記工程(S1)及び(S2)をこの順で含む。
・工程(S1):回路が形成された表面及び裏面を有する半導体ウエハの前記表面に半導体加工用粘着テープを貼付した後、前記半導体加工用粘着テープを前記半導体ウエハの外形に沿って刃で切断し、前記半導体加工用粘着テープのうち前記半導体ウエハに貼付されていない非貼付部分を除去する工程。
・工程(S2):前記半導体ウエハの前記裏面を研削する工程。
そして、本製造方法では、前記工程(S1)において、前記半導体ウエハの水平面に対する垂直方向のうち、前記半導体ウエハの裏面側を下方向とし、前記半導体ウエハの表面側を上方向とした場合に、前記非貼付部分の切断縁が上方向に反り上がるように前記刃を進行させるようにしている。
なお、半導体ウエハの裏面には、回路は形成されていない。
【0016】
本製造方法における工程(S1)の実施態様を図1に示す。図1(A)が工程(S1)の実施態様を示す斜視図であり、図1(B)が工程(S1)の実施態様を示す断面図である。
なお、図1中、半導体加工用粘着テープASの積層構造は図示省略している。また、図1を含め、以降の説明で用いる図は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合がある。したがって、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0017】
図1に示すように、工程(S1)では、半導体加工用粘着テープASを半導体ウエハWFの外形に沿って刃56で切断する際に、半導体ウエハWFの水平面に対する垂直方向のうち、半導体ウエハWFの裏面側を下方向とし、半導体ウエハWFの表面側(半導体加工用粘着テープASとの貼付面側)を上方向とした場合に、半導体加工用粘着テープASの半導体ウエハWFとの非貼付部分AS1の切断縁AS1aが上方向に反り上がるように刃56を進行させるようにしている。
このように、半導体加工用粘着テープASの半導体ウエハWFとの非貼付部分AS1の切断縁AS1aが上方向に反り上がるように刃56を進行させるようにすることで、半導体加工用粘着テープASの刃56による切断時に、半導体加工用粘着テープASの切断面を荒れさせることなく、切断性を良好なものとして、カットダストの発生を抑制できることを本発明者らは見出した。
なお、半導体加工用粘着テープASの半導体ウエハWFとの非貼付部分AS1の切断縁AS1aが下方向に沈み込むように刃56を進行させると、半導体加工用粘着テープASの刃56による切断時に、半導体加工用粘着テープASの切断面が荒れ、カットダストの発生を抑えることができない。
【0018】
以下、本製造方法における工程(S1)及び(S2)について、半導体加工用粘着テープの半導体ウエハとの非貼付部分の切断縁が上方向に反り上がるように刃を進行させるための具体的な方法も踏まえつつ、詳細に説明する。なお、以降の説明では、「半導体加工用粘着テープ」を、単に「粘着テープ」ともいう。
【0019】
[工程(S1)]
工程(S1)では、回路が形成された表面及び裏面を有する半導体ウエハの前記表面に半導体加工用粘着テープを貼付した後、前記半導体加工用粘着テープを前記半導体ウエハの外形に沿って刃で切断し、前記半導体加工用粘着テープのうち前記半導体ウエハに貼付されていない非貼付部分を除去する。
【0020】
工程(S1)は、例えば、図2に示す粘着テープ貼付装置1を用いて行われる。
図2に示す粘着テープ貼付装置1は、帯状の粘着テープASを供給する供給手段2と、半導体ウエハWFを支持する支持手段3と、粘着テープASを半導体ウエハWFに押圧して貼付する押圧手段4と、粘着テープASを所定形状に切断する切断手段5と、粘着テープASから半導体ウエハWFへの貼付部が切り抜かれた不要部(半導体ウエハWFとの非貼付部分)AS1を除去する除去手段6と、不要部AS1を回収する回収手段7とを備えている。
なお、図2中、半導体ウエハWFはXY平面に載置される。また、切断手段5に備えられた刃56の上下動は、Z軸に沿って行われる。
【0021】
供給手段2は、粘着テープASを巻回して支持する支持ローラ21と、支持ローラ21から引き出された粘着テープASを案内するガイドローラ22と、駆動機器としての回動モータ23で駆動されて粘着テープASを送り出す駆動ローラ24と、駆動ローラ24との間に粘着テープASを挟み込むピンチローラ25とを備えている。
【0022】
支持手段3は、外側テーブル31の凹部32内に収容された駆動機器としての直動モータ33と、直動モータ33の出力軸34に支持された内側テーブル35とを備えている。内側テーブル35の上面は、支持面36とされ、外側テーブル31の上面は、支持面36と平行な上面37とされる。
【0023】
押圧手段4は、駆動機器としてのリニアモータ41と、リニアモータ41のスライダ42に支持された駆動機器としての直動モータ43と、直動モータ43の出力軸44に支持されたブラケット45と、ブラケット45に回転可能に支持され、半導体ウエハWFの直径以上の長さを有する押圧ローラ46とを備えている。
【0024】
切断手段5は、駆動機器としての直動モータ51と、直動モータ51の出力軸52に支持された駆動機器としての回動モータ53と、この回動モータ53の出力軸54に支持されたブラケット55と、このブラケット55の先端に設けられた刃56とを備えている。
【0025】
除去手段6は、リニアモータ41のスライダ61に支持された駆動機器としての回動モータ62と、回動モータ62で駆動される駆動ローラ63と、駆動ローラ63との間に不要部AS1を挟み込むピンチローラ64とを備えている。
【0026】
回収手段7は、不要部AS1を巻き取る複数の巻取手段70(第1および第2巻取手段70A、70B)と、当該複数の巻取手段70を支持するとともに駆動機器としての回動モータ72の出力軸73によって回動可能に支持されるアーム74と、一の巻取手段70(第1巻取手段70A)で巻き取っている不要部AS1を切断する不要部切断手段77と、不要シート切断手段77で切断された先端部AS11を他の巻取手段70(第2巻取手段70B)に巻き付ける巻付手段78とを有している。第1巻取手段70Aは、不要部AS1を巻回して巻き取る第1巻取部材71A(巻取部材70)と、アーム74の一端において駆動機器としての第1回動モータ75A(回動モータ75)の図示しない出力軸によって回動可能に支持される第1支持軸76A(支持軸76)とを備えている。第2巻取手段70Bは、アーム74の他端に支持され、実質的に第1巻取手段70Aと同様の構造が採用されているので、第1巻取手段70Aの構成に対し、符号の末尾を「B」とし、詳細な説明を省略する。不要部切断手段77は、アーム74の奥側に設けられた駆動機器としてのリニアモータ771のスライダ772に支持された切断刃773を備えている。巻付手段78は、図示しない加圧ポンプやタービン等の加圧手段により不要部AS1の先端部に気体AIを吹き付ける第1および第2吹付手段781、782を備えている。
【0027】
はじめに、工程(S1)のうち、回路が形成された表面及び裏面を有する半導体ウエハの表面に半導体加工用粘着テープを貼付する工程について、図2を参照しながら説明する。
【0028】
まず、支持ローラ21に巻回された粘着テープASを、図2に示すようにセットし、その先端側を分離手段6の後段に設置された巻取手段70に巻き付けて固定する。
次に、図示省略する搬送手段が半導体ウエハWFを内側テーブル35の支持面36上に載置する。その際、半導体ウエハWFの裏面と内側テーブル35の支持面36と接するように載置する。そして、支持手段3が直動モータ33を駆動し、内側テーブル35を上昇または下降させ、外側テーブル31の上面37と半導体ウエハWFの上面とが同一面上に位置するように調整する。
次に、押圧手段4が図2中実線で示す位置で直動モータ43を駆動し、押圧ローラ46を下降させて粘着テープASを押圧して外側テーブル31に貼付する。次いで、押圧手段4がリニアモータ41を駆動し、押圧ローラ46を左方向に移動させて半導体ウエハWFに粘着テープASを貼付する。
【0029】
以上の手順により、工程(S1)のうち、回路が形成された表面及び裏面を有する半導体ウエハの表面に半導体加工用粘着テープを貼付する工程が完了する。
【0030】
なお、本製造方法において、工程(S1)で用いられる粘着テープASは、バックグラインドシートとして用いられる一般的な粘着テープを、特に制限なく使用することができる。なお、図2中、符号BSは支持シートを示し、符号ADは粘着剤層を示す。粘着テープが有する支持シートは、基材であってもよく、緩衝層と基材とが積層された積層体であってもよい。すなわち、粘着テープASは、基材の一方の面に粘着剤層が積層されて構成された粘着テープであってもよく、緩衝層、基材、及び粘着剤層がこの順で積層された積層構造を有する粘着テープであってもよい。また、当該粘着テープは、これら以外の他の層を有していても勿論よい。当該他の層としては、例えばプライマー層、ウエハの回路面に形成されているバンプを埋め込むための層等が挙げられる。また、粘着剤層の表面には、使用時まで粘着剤層を保護するための剥離シートが積層されていてもよい。さらに、緩衝層の表面にはコート層が設けられていてもよい。
ここで、粘着テープに備えられる緩衝層は、半導体ウエハの裏面研削時の応力を緩和して、半導体ウエハに割れ及び欠けが生じることを防止する機能を有する。また、半導体ウエハに粘着テープを貼付し、半導体ウエハの外周に沿って粘着テープが切断された後、半導体ウエハは粘着テープを介してチャックテーブル上に配置され裏面研削されるが、粘着テープが緩衝層を有することで、半導体ウエハがチャックテーブルに適切に保持されやすくなる。このように、半導体ウエハの裏面研削を行う場合、粘着テープが緩衝層を有することによって、多大な利点がある。
しかし、その一方で、緩衝層が基材と比較して軟質であるが故に、欠点も存在する。具体的には、粘着テープの切断時に緩衝層の樹脂が撚れ等を起こし、カットダストが発生することがある。
本製造方法によれば、緩衝層、基材、及び粘着剤層がこの順で積層された積層構造を有する粘着テープであっても、刃による切断時に良好な切断性を発揮するため、カットダストの発生が抑えられる。したがって、緩衝層を有する粘着テープが有する上記欠点を抑えつつ、上記利点を発揮させることができる。
【0031】
また、本製造方法において、工程(S1)で用いられる半導体ウエハとしては、例えば、シリコンウエハ、ガリウム砒素ウエハ、炭化ケイ素ウエハ、タンタル酸リチウムウエハ、ニオブ酸リチウムウエハ、窒化ガリウムウエハ、インジウム燐ウエハ、及びガラスウエハ等が挙げられる。
半導体ウエハの裏面研削前の厚さは特に限定されないが、通常、500μm~1000μm程度である。
また、半導体ウエハの表面への回路形成は、エッチング法及びリフトオフ法等の従来汎用されている方法を含む様々な方法により行うことができる。
【0032】
ここで、本製造方法においてDBGを採用する場合、工程(S1)において半導体加工用粘着テープを貼付する半導体ウエハは、表面(回路形成面)に溝が形成された半導体ウエハである。表面に溝が形成された半導体ウエハは、従来公知のウエハダイシング装置等を用いてブレードダイシングやレーザーダイシング等により作製することができる。当該溝は、後述する工程(S2)において半導体ウエハを裏面研削する際に、半導体ウエハの分割起点となる。
【0033】
また、本製造方法においてDBGの変形法を採用する場合、工程(S1)において半導体加工用粘着テープを貼付する半導体ウエハは、内部に改質領域が形成された半導体ウエハである。但し、当該改質領域は、工程(S1)の後に形成してもよい。
内部に改質領域が形成された半導体ウエハは、半導体ウエハの内部に焦点を合わせたレーザーの照射やプラズマの照射により作製される。レーザー又はプラズマの照射は、半導体ウエハの表面側から行っても、裏面側から行ってもよい。
改質領域は、半導体ウエハにおいて、脆質化された部分であり、後述する工程(S2)において半導体ウエハを裏面研削する際に、半導体ウエハの分割起点となる。
【0034】
次に、工程(S1)のうち、半導体加工用粘着テープを半導体ウエハの外形に沿って刃で切断し、半導体加工用粘着テープのうち半導体ウエハに貼付されていない非貼付部分を除去する工程について、図2を参照しながら説明する。
【0035】
まず、切断手段5が直動モータ51を駆動し、刃56を下降させて当該刃56を粘着テープASに貫通させる。この後、切断手段5が回動モータ53を駆動し、出力軸54の軸心を中心に刃56を旋回させることによって、粘着テープASを半導体ウエハWFの外形に沿って切断する。切断速度は、通常10~300mm/sである。切断時の刃56の温度は室温でもよく、また、刃を加熱して切断してもよい。
切断完了後、切断手段5が直動モータ51を駆動し、刃56を上昇させ、押圧手段4が直動モータ43を駆動し、押圧ローラ46を上昇させる。
【0036】
次に、押圧手段4がリニアモータ41を駆動し、押圧ローラ46を右方向に移動させ、押圧ローラ46を実線で示す位置に復帰させる。また、除去手段6が回動モータ62を駆動するとともに押圧手段4がリニアモータ41を駆動し、駆動ローラ63を回転させながらスライダ61を右方向に移動させることで、不要部AS1を外側テーブル31から除去する。
【0037】
次に、図示省略する搬送手段で粘着テープASが貼付された半導体ウエハWFを搬送する。その後、除去手段6が回動モータ62の駆動を停止したまま、供給手段2、押圧手段4、及び巻取手段70が回動モータ23、リニアモータ41および第1回動モータ75Aを駆動し、スライダ61を左方向に移動し、第1巻取部材71Aが不要シートAS1を巻き取りつつ、支持ローラ21から粘着テープASの未使用部分を引き出す。そして、新しい半導体ウエハWFが内側テーブル35に載置され、以後上述の同様の動作が繰り返される。
【0038】
ここで、本製造方法における工程(S1)では、既述のように、半導体ウエハWFの水平面に対する垂直方向のうち、半導体ウエハWFの裏面側を下方向とし、半導体ウエハWFの表面側を上方向とした場合に、非貼付部分AS1の切断縁AS1aが上方向に反り上がるように刃56を進行させるようにしている。
粘着テープASの非貼付部分AS1の切断縁AS1aが上方向に反り上がるように刃56を進行させる方法としては、刃56について、A軸、B軸、C軸の角度を調整する方法が挙げられる。
以下、刃のA軸、B軸、C軸の角度を調整する方法について、詳細に説明する。
【0039】
<刃の各部位の説明>
刃のA軸、B軸、C軸の角度を調整する方法を説明するのに先立ち、刃の各部位について図3を用いて説明する。
図3(a)は刃の側面図であり、図3(b)は図3(a)のP-P’断面図である。また、図3(c)は図3(a)の変形例である。
刃56は、刃先56aと峰56とを有する。部材を切断する際には、刃56を、刃先56a、峰56bの順で進行させて切断する。
以降の説明では、刃56の長手方向の軸(Z軸方向の軸)を、「刃の長軸」と呼ぶこととする。刃の長軸は、好ましくは刃の峰56bと平行である。また、以降の説明では、峰56bの幅方向における中心線と刃先56aとを結び、かつ刃の長軸と垂直である軸を、「刃の短軸」と呼ぶこととする。
また、刃は、一般的には、図3(c)に示すように、刃の進行方向に傾倒した傾斜部を有し、当該傾斜部を刃先56aとするものが多い。このような刃を用いる場合、以降の説明における「刃の刃先のA軸の角度」とは、刃先としての当該傾斜部との角度を意味する。
なお、本実施形態において、X軸、Y軸、及びZ軸は、以下を意味する。
Y軸は、半導体ウエハWFの接線方向の軸であり、Y軸と半導体ウエハWFとの接点が原点である。また、Y軸のうち刃の進行方向が正方向である。
X軸は、Y軸と垂直であり、かつ前記原点から半導体ウエハWFの中心点に向かう軸である。
Z軸は、XY平面と垂直な軸である。
【0040】
<刃のA軸の角度の調整>
本明細書において、A軸は、一般的な工作機械と同様、X軸を中心として回転する軸である。
A軸の角度は、詳細には、図4に示すように、刃56の進行方向に対する刃56の刃先56aの傾倒角度であり、半導体ウエハWF(又は粘着テープAS)の水平面に対する法線方向(Z軸方向)と刃先56aとが平行である場合、刃56の刃先56aのA軸の角度は0°である。そして、刃56が進行方向に傾倒し、刃先56aが半導体ウエハWF(又は粘着テープAS)の水平面と平行である場合、刃56の刃先56aのA軸の角度は+90℃である。また、刃56が進行方向とは逆方向に傾倒し、刃先56aが半導体ウエハWF(又は粘着テープAS)の水平面と平行である場合、刃56の刃先56aのA軸の角度は-90℃である。
A軸を回転軸とする、刃56の刃先56aの可動域は、通常、-90°超、+90°未満である。
【0041】
本発明の一態様では、刃を進行させる際に、下記条件(α1)を満たすように調整される。
・条件(α1):刃の刃先のA軸の角度を0°未満に調整する。
つまり、本発明の一態様では、刃を進行させる際に、刃の刃先を進行方向とは逆方向に傾倒させるようにしている。
これにより、粘着テープASの非貼付部分AS1の切断縁AS1aが上方向に反り上がるように刃56を進行させることができ、切断時におけるカットダストの発生が抑制される。
なお、切断時におけるカットダストの発生をより抑制しやすくする観点から、刃の刃先のA軸の角度は、-5°以下、より好ましくは-10°以下、更に好ましくは-20°以下、より更に好ましくは-30°以下である。また、好ましくは-70°以上、より好ましくは-60°以上、更に好ましくは-50°以上、より更に好ましくは-40°以上である。
【0042】
刃56の刃先56aのA軸の角度の調整は、上述した切断手段5等に備えられた駆動機構及び旋回機構等の各種機構によって適宜行うことができる。
また、刃56の刃先56aのA軸の角度の調整は、刃56の刃先56aの形状を変更することによっても調整することができる。例えば、図5に示すように、刃56の形状を略長靴形状とし、刃56の下端に向けて形成される傾斜部を刃先56aとして、刃先56aを進行方向に対して逆方向に傾斜させることで、刃56の刃先56aのA軸の角度を0°未満に調整することもできる。
あるいは、刃56を、粘着テープASの粘着剤層側から入刃することによっても、刃56の刃先56aのA軸の角度を0°未満に調整することができる。
【0043】
<刃のB軸及びC軸の調整>
本明細書において、B軸は、一般的な工作機械と同様、Y軸を中心として回転する軸である。
B軸の角度は、図6に示すように、半導体ウエハWF(又は粘着テープAS)の水平面に対する刃56の傾倒角度であり、半導体ウエハWF(又は粘着テープAS)の水平面に対する法線方向(Z軸)と刃56の長軸とが平行である場合、B軸の角度は0°である。そして、刃56が半導体ウエハWF(又は粘着テープAS)に接近する方向に傾倒し、刃56の長軸と半導体ウエハWF(又は粘着テープAS)の水平面と平行になった場合、B軸の角度は+90℃である。また、刃56が半導体ウエハWF(又は粘着テープAS)から遠ざかる方向に傾倒し、刃56の長軸が半導体ウエハWF(又は粘着テープAS)の水平面と平行になった場合、B軸の角度は-90℃である。
B軸を回転軸とする、刃56の可動域は、通常、-90°超、+90°未満である。
【0044】
また、本明細書において、C軸は、一般的な工作機械と同様、Z軸を中心として回転する軸である。
C軸の角度は、図8に示すように、刃56の峰56bの幅方向における中心線を軸とする刃56の回転角度であり、XY平面状において、刃56の短軸が、半導体ウエハWFの外周の接線と平行である場合、C軸の角度は0℃である。そして、刃56を反時計回りに回転させ、刃56の短軸が半導体ウエハWFの外周の接線と垂直になったとき、C軸の角度は90°である。また、刃56を時計回りに回転させ、刃56の短軸が半導体ウエハWFの外周の接線と垂直になったとき、C軸の角度は-90°である。なお、刃56の側面と半導体ウエハWFとの間には、C軸の角度に応じて適宜ギャップが設けられ、刃先56aと半導体ウエハとを近接させながらも、刃先56aと半導体ウエハWFとが接触することなく、刃56を回転可能としている。
なお、図8において、紙面はXY平面であり、紙面の奥方向及び手前方向はZ軸である。
C軸を回転軸とする、刃56の可動域は、通常、-90°超、+90°未満である。
【0045】
本発明の一態様では、刃を進行させる際に、下記条件(β1)を満たすように調整される。
・条件(β1):刃のB軸の角度を0°超+45°未満に調整し、かつ刃のC軸の角度を0°超+30℃未満に調整する。
これにより、粘着テープASの非貼付部分AS1の切断縁AS1aが上方向に反り上がるように刃56を進行させることができ、切断時におけるカットダストの発生が抑制される。
なお、切断時におけるカットダストの発生をより抑制しやすくする観点から、B軸の角度は、好ましくは+5°以上、より好ましくは+10°以上、更に好ましくは+15°以上である。また、好ましくは+40°以下、より好ましくは+35°以下、更に好ましくは+30°以下である。
また、同様の観点から、C軸の角度は、好ましくは+5°以上、より好ましくは+10°以上である。また、好ましくは+25°以下、より好ましくは+20°以下である。
【0046】
刃56の刃先56aのB軸及びC軸の角度の調整は、上述した切断手段5等に備えられた駆動機構及び旋回機構等の各種機構によって適宜行うことができる。
また、刃56の刃先56aのB軸及びC軸の角度の調整は、刃56の刃先56aの形状を変更することによっても調整することができる。例えば、図7に示すように、刃56の形状をくの字形状とし、傾斜部に刃先56aを形成して、刃先56aを半導体ウエハWF(又は粘着テープAS)に接近する方向に傾斜させることで、刃56の刃先56aのB軸の角度を0°超+45°未満に調整することもできる。
【0047】
<条件(α1)を満たす場合のB軸及びC軸の角度の調整>
上記条件(α1)を満たす場合、B軸及びC軸の角度は特に制限されないが、切断時におけるカットダストの発生をより抑制しやすくする観点から、さらに下記条件(α2)を満たすことが好ましい。
・条件(α2):刃の刃先のB軸の角度を0°以上に調整し、かつ刃の刃先のC軸の角度を0°以上に調整する。
また、上記条件(α1)を満たす場合、切断時におけるカットダストの発生をさらに抑制しやすくする観点から、B軸の角度は、好ましくは+40°以下、より好ましくは+30°以下、更に好ましくは+20°以下、より更に好ましくは+10°以下、更になお好ましくは+5°以下、最も好ましくは0°である。
また、上記条件(α1)を満たす場合、同様の観点から、C軸の角度は、好ましくは+25°以下、より好ましくは+20°以下、更に好ましくは+10°以下、より更に好ましくは+5°以下、最も好ましくは0°である。
【0048】
<条件(β1)を満たす場合のA軸の角度の調整>
上記条件(β1)を満たす場合、A軸の角度は特に制限されない。
但し、切断時におけるカットダストの発生をより抑制しやすくする観点から、好ましくは-70°以上、より好ましくは-60°以上、更に好ましくは-50°以上、より更に好ましくは-40°以上である。また、好ましくは+70°以下、より好ましくは+60°以下、更に好ましくは+50°以下、より更に好ましくは+40°以下である。
【0049】
<摩擦係数>
本製造方法の一態様において、半導体加工用粘着テープを半導体ウエハの外形に沿って刃で切断する際に、半導体加工用粘着テープと刃の擦れを抑制して、カットダストの発生をさらに抑制しやすくする観点から、切断対象物である半導体加工用テープと刃との間の摩擦係数が低いことが好ましい。具体的には、摩擦係数が0.25以下であることが好ましい。本発明者らの検討によると、切断対象物である半導体加工用テープと刃との間の摩擦係数を0.25以下とすることで、刃による半導体加工用粘着テープの切断性をさらに向上できることが確認されている。なお、当該摩擦係数は、刃の表面研磨、表面コーティング、及び材質変更等から選択される1種以上の処理により、調整し得る。
【0050】
工程(S1)が完了した後、半導体加工用粘着テープ付きの半導体ウエハは、次工程(S2)に供される。
【0051】
[工程(S2)]
工程(S2)では、半導体ウエハの裏面を研削する。
詳細には、工程(S1)が完了した後、半導体加工用粘着テープ付きの半導体ウエハを、チャックテーブル上に載置し、チャックテーブルに吸着させて保持する。その際、半導体加工用粘着テープ付きの半導体ウエハは、チャックテーブルと半導体加工用粘着テープの支持シートの最表面(基材又は緩衝層)が直接接するようにチャックテーブル上に載置される。つまり、半導体ウエハは、表面側がチャックテーブル側に配置される。
【0052】
前記半導体ウエハは、工程(S2)の後、ダイシングして個片化してもよい(態様1)。
また、前記半導体ウエハは、工程(S2)において個片化してもよい(態様2)。
具体的には、前記半導体ウエハとして、表面側に溝が形成された半導体ウエハを用い、工程(S2)において、前記半導体ウエハを、前記溝を起点として複数のチップに個片化させてもよい。
また、前記半導体ウエハとして、内部に改質領域が形成された半導体ウエハを用いるか、又は、前記工程(S1)の後に前記半導体ウエハの内部に改質領域を形成し、工程(S2)において、前記半導体ウエハを、改質領域を起点として複数のチップに個片化させてもよい。
【0053】
<態様1>
態様1では、工程(S2)を実施した後、工程(S3)を実施して、半導体ウエハを個片化する。
態様1では、表面に溝が形成された半導体ウエハや内部に改質領域が形成された半導体ウエハのような分割起点を有する半導体ウエハではなく、このような分割起点を有しない半導体ウエハが用いられる。
(工程(S2))
工程(2)では、チャックテーブル上の半導体ウエハの裏面を研削する。
裏面研削後の半導体ウエハの厚さは、特に限定されないが、好ましくは5μm~100μm程度、より好ましくは10μm~45μmである。
【0054】
(工程(S3))
工程(S3)では、工程(S2)を実施した半導体ウエハをダイシングして個片化する。
具体的には、工程(S2)の後、裏面研削された半導体ウエハから、半導体加工用粘着テープを剥離する。次いで、当該半導体ウエハの裏面側にダイシングテープを貼付し、ダイシングを行う。ダイシングは、ブレードダイシングやレーザーダイシング等、従来公知の方法を採用して適宜実施することができる。
【0055】
個片化された半導体チップの形状は、方形でもよいし、矩形等の細長形状となっていてもよい。また、個片化された半導体チップの厚さは特に限定されないが、好ましくは5μm~100μm程度、より好ましくは10μm~45μmである。
個片化された半導体チップの面積は特に限定されないが、好ましくは600mm未満、より好ましくは400mm未満、さらに好ましくは300mm未満である。
【0056】
<態様2>
態様2では、工程(S2)において、半導体ウエハを裏面研削するとともに、半導体ウエハを個片化する。
(工程(S2))
工程(S2)では、チャックテーブル上の半導体ウエハの裏面を研削して、半導体ウエハを複数の半導体チップに個片化する。
【0057】
ここで、態様2における第一実施形態では、表面に溝が形成された半導体ウエハが用いられる。この場合には、少なくとも溝の底部に至る位置まで半導体ウエハの裏面研削を行う。この裏面研削により、溝は、半導体ウエハを貫通する切り込みとなり、半導体ウエハは切り込みにより分割されて、個々の半導体チップに個片化されることになる。
【0058】
また、態様2における第二実施形態では、内部に改質領域が形成された半導体ウエハが用いられる。又は、前記工程(S1)の後に前記半導体ウエハの内部に改質領域を形成してもよい。態様2における第二実施形態では、改質領域に至るまで裏面研削を行ってもよいが、厳密に改質領域まで至らなくてもよい。すなわち、改質領域を起点として半導体ウエハが破壊されて半導体チップに個片化されるように、改質領域に近接する位置まで裏面研削を行えばよい。
【0059】
また、得られた複数の半導体チップは、後述するピックアップテープを貼付してからピックアップテープを延伸し、チップ間の隙間を広げるようにしてもよい。
【0060】
また、裏面研削の終了後、チップのピックアップに先立ち、ドライポリッシュを行ってもよい。
【0061】
個片化された半導体チップの形状、厚さ、面積は、態様1で説明したとおりである。
なお、内部に改質領域が形成された半導体ウエハを用いる場合、個片化された半導体チップの厚さを50μm以下、より好ましくは10μm~45μmとすることが容易になる。
【0062】
本発明の半導体加工用粘着テープは、刃による切断性に優れる。そのため、上記工程(S1)において、カットダストが発生し難い。したがって、態様1の工程(S2)及び態様2の工程(S2)において、薄型化・小型化された半導体チップを製造する場合であっても、当該カットダストに起因する半導体チップの欠けや破損の発生が抑制される。
【0063】
工程(S2)の後、個片化された半導体ウエハ(すなわち、複数の半導体チップ)から、半導体加工用粘着テープを剥離する。
本工程は、例えば、以下の方法により行う。
半導体加工用粘着テープの粘着剤層が、エネルギー線硬化性粘着剤から形成される場合には、エネルギー線を照射して粘着剤層を硬化する。次いで、個片化された半導体ウエハの裏面側に、ピックアップテープを貼付し、ピックアップが可能なように位置及び方向合わせを行う。その際、ウエハの外周側に配置したリングフレームもピックアープテープに貼り合わせ、ピックアップテープの外周縁部をリングフレームに固定する。ピックアップテープには、ウエハとリングフレームを同時に貼り合わせてもよいし、別々のタイミングで貼り合わせてもよい。次いで、ピックアップテープ上に保持された複数の半導体チップから粘着テープを剥離する。
【0064】
その後、ピックアップテープ上にある複数の半導体チップをピックアップし基板等の上に固定化して、半導体装置を製造する。なお、ピックアップテープは、特に限定されないが、例えば、基材と、基材の少なくとも一方の面に設けられた粘着剤層を備える粘着テープによって構成される。
【0065】
また、ピックアップテープの代わりに、接着テープを用いることもできる。接着テープとは、フィルム状接着剤と剥離シートとの積層体、ダイシングテープとフィルム状接着剤との積層体や、ダイシングテープとダイボンディングテープの両方の機能を有する接着剤層と剥離シートとからなるダイシング・ダイボンディングテープ等が挙げられる。また、ピックアップテープを貼付する前に、個片化された半導体ウエハの裏面側にフィルム状接着剤を貼り合わせてもよい。フィルム状接着剤を用いる場合、フィルム状接着剤はウエハと同形状としてもよい。
【0066】
接着テープを用いる場合やピックアップテープを貼付する前に個片化された半導体ウエハの裏面側にフィルム状接着剤を貼り合わせる場合には、接着テープやピックアップテープ上にある複数の半導体チップは、半導体チップと同形状に分割された接着剤層と共にピックアップされる。そして、半導体チップは接着剤層を介して基板等の上に固定化され、半導体装置が製造される。接着剤層の分割は、レーザーやエキスパンドによって行われる。
【0067】
以上、本発明の半導体装置の製造方法について説明したが、本発明の半導体加工用粘着テープは、半導体ウエハを個片化した際に、カーフ幅の小さく、より薄化された半導体チップ群が得られるDBGの変形法に特に好ましく使用できる。
【実施例0068】
本発明について、以下の実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0069】
[半導体加工用粘着テープの準備]
緩衝層と、基材と、粘着剤層とがこの順で積層された積層構造を有する半導体加工用粘着テープを準備した。
【0070】
<緩衝層の形成>
ウレタンアクリレートオリゴマー(CN8888、アルケマ株式会社製)75質量部と、4-tert-ブチルシクロヘキサノールアクリレート25質量部との合計100質量部に対して、光重合開始剤(BASF社製「イルガキュア1173」、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン)を2.0質量部配合し、緩衝層用組成物を得た。
得られた緩衝層用組成物を、ナイフコート法により、基材であるPETフィルム(東洋紡株式会社製「コスモシャインA4300」、両面易接着層付PETフィルム、厚み:50μm)の上に厚みが28μmになるように塗工して緩衝層用組成物層を形成し、塗工直後に緩衝層用組成物層に高圧水銀ランプを用いて、照度160mW/cm、照射量500mJ/cmの条件で紫外線照射を行うことにより緩衝層用組成物層を硬化させ、基材であるPETフィルム上の一方の面に厚さ28μmの緩衝層を形成し、緩衝層付きPET基材を作製した。
【0071】
<粘着剤層>
n-ブチルアクリレート(BA)65質量部、メチルメタクリレート(MMA)15質量部、及び2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)28質量部を共重合して得たアクリル系重合体に、当該アクリル系重合体の全水酸基のうち80モル%の水酸基に付加するように、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)を反応させて、エネルギー線硬化性のアクリル系樹脂(Mw:50万)を得た。
このエネルギー線硬化性のアクリル系樹脂100質量部に、エネルギー線硬化性化合物である多官能ウレタンアクリレートを6質量部、イソシアネート系架橋剤(東ソー株式会社製「コロネートL」)を0.375質量部、光重合開始剤としてビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシドを1質量部配合し、メチルエチルケトンで希釈し、固形分濃度32質量%の粘着剤組成物の塗工液を調製した。
【0072】
<半導体加工用粘着テープの作製>
剥離シート(リンテック社製、商品名「SP-PET381031」)の剥離処理面に、上記で得た粘着剤組成物の塗工液を塗工し、加熱乾燥させて、剥離シート上に厚さが30μmの粘着剤層を形成した。
そして、緩衝層付きPET基材のPET基材に、粘着剤層を貼り合わせ、緩衝層/PET基材/粘着剤層の積層構造を有する半導体加工用粘着テープを作製した。
【0073】
[緩衝層及び基材の各種物性値の測定]
緩衝層の弾性率、破断エネルギー、破断応力、及び破断ひずみを、精密万能試験機(株式会社島津製作所製装置名「オートグラフAG-IS」)を用いて測定した。
具体的には、緩衝層について、幅1.5mm×長さ150mm×厚さ0.2mmの測定用サンプルを作製した。そして、当該測定用サンプルについて、チャック間100mm(測定用サンプルの長手方向の両端25mmずつを装置に固定)、引張速度200mm/sec、23℃、50%RHの条件にて、測定を行った。
【0074】
<刃による切断性の評価(1):シミュレーションによる評価(A軸)>
汎用有限要素解析ソフトウエアである「Abaqus」を用い、半導体加工用粘着テープを刃で切断した際の断面の状態をシミュレーションにより評価した。
解析モデルを図9に示す。
また、刃については、アートナイフ(OLFA社製、型番「XB10」)の使用を想定し、当該アートナイフのうち、切断に関与する箇所のみをモデル化して、寸法を入力した。図10に、シミュレーションに用いた刃の実寸法を示す。
半導体ウエハは長方形とし、該半導体ウエハ上に緩衝層と基材とが積層した積層構造を有する半導体加工用粘着テープを積層した解析モデルを想定した。なお、当該解析モデルでは、半導体加工用粘着テープの一方の端部は半導体ウエハに拘束された状態であり、もう一方の端部は外周テーブル側に完全拘束された状態を想定した。
そして、刃のB軸の角度を0°、C軸の角度を0°に固定し、刃の刃先のA軸の角度を以下のように調整して、切断速度80mm/sで、刃を半導体ウエハに沿った直線方向に移動させたときの半導体加工用粘着テープの断面の状態を解析した。
なお、上記解析モデルにおいて、刃物性は剛体とした。
・実施例I-1sim.:A軸=-32.8°
・実施例I-2sim.:A軸=-7.2°
・比較例I-1sim.:A軸=0°
・比較例1-2sim.:A軸=+32.8°
・比較例I-3sim.:A軸=+62.8°
緩衝層の厚さは28μmとした。基材の厚さは50μmとした。
また、緩衝層及び基材の物性値として、上記精密万能試験機により測定した応力-ひずみデータと、当該データに基づく弾性率、降伏応力、及び破断点を入力した。
なお、刃と緩衝層間の摩擦係数は0.25に設定した。
【0075】
評価基準は、以下のとおりとし、4以上を合格とした。
1:シート断面が非常に荒れている。
2:シート断面が荒れている。
3:シート断面がやや荒れている。
4:シート断面に荒れが僅かに見られる程度である。
5:シート断面に荒れが見られない。
【0076】
<刃による切断性の評価(2):シミュレーションによる評価(B軸及びC軸)>
刃の刃先のA軸の角度を、32.8°、-32.8°、又は62.8°に固定し、刃のB軸及びC軸の角度を以下のように調整したこと以外は、刃による切断性の評価(1)と同様の方法でシミュレーションを行い、半導体加工用粘着テープを刃で切断した際の断面の状態を評価した。
・実施例II-1sim.:A軸=+32.8°、B軸=+30°、C軸=+20°
・実施例II-2sim.:A軸=+32.8°、B軸=+25°、C軸=+20°
・実施例II-3sim.:A軸=+32.8°、B軸=+15°、C軸=+10°
・実施例II-4sim.:A軸=+32.8°、B軸=+5°、 C軸=+5°
・実施例II-5sim.:A軸=-32.8°、B軸=+5°、 C軸=+5°
・比較例II-1sim.:A軸=+32.8°、B軸=+15°、C軸=0°
・比較例II-2sim.:A軸=+32.8°、B軸=0°、 C軸=+10°
・比較例II-3sim.:A軸=+62.8°、B軸=+15°、C軸=0°
・比較例II-4sim.:A軸=+32.8°、B軸=0°、 C軸=0°
・比較例II-5sim.:A軸=+32.8°、B軸=+45°、C軸=+20°
【0077】
<刃による切断性の評価(3):実験による評価(A軸)>
準備した半導体加工用粘着テープを、直径12インチ、厚み775μmのシリコンウエハに、バックグラインド用テープラミネーター(リンテック社製、装置名「RAD-3510F/12」)を用いて貼付した。そして、半導体加工用粘着テープを、シリコンウエハの外周に沿って、アートナイフ(OLFA社製、型番「XB10」)で切断した。アートナイフは、半導体加工用粘着テープの緩衝層側から入刃した。また、アートナイフのB軸の角度を0°、C軸の角度を0°に固定し、アートナイフの刃先のA軸の角度を以下のように調整し、切断速度は80mm/sとした。切断した半導体加工用粘着テープの断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、刃による切断性の評価(1)と同様の基準にて評価した。
・比較例1-2exp.:A軸=+32.8°
・比較例I-3exp.:A軸=+62.8°
【0078】
<刃による切断性の評価(4):実験による評価(B軸及びC軸)>
アートナイフの刃先のA軸の角度を、+32.8°に固定し、アートナイフのB軸及びC軸の角度を以下のように調整したこと以外は、刃による切断性の評価(3)と同様の方法で実験を行い、切断した半導体加工用粘着テープの断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、刃による切断性の評価(1)と同様の基準にて評価した。
・実施例II-3exp.:A軸=+32.8°、B軸=+15°、C軸=+10°
・実施例II-4exp.:A軸=+32.8°、B軸=+5°、 C軸=+5°
・比較例II-1exp.:A軸=+32.8°、B軸=+15°、C軸=0°
・比較例II-2exp.:A軸=+32.8°、B軸=0°、 C軸=+10°
・比較例II-4exp.:A軸=+32.8°、B軸=0°、 C軸=0°
・比較例II-6exp.:A軸=+32.8°、B軸=+15°、C軸=+30°
【0079】
「刃による切断性の評価(1):シミュレーションによる評価(A軸)」と「刃による切断性の評価(3):実験による評価(A軸)」を表1に示す。
また、「刃による切断性の評価(2):シミュレーションによる評価(B軸及びC軸)」と「刃による切断性の評価(4):実験による評価(B軸及びC軸)」を表2に示す。
さらに、「刃による切断性の評価(2):シミュレーションによる評価(B軸及びC軸)」における実施例II-3sim.と比較例II-2sim.の解析画像を図11に示し、「刃による切断性の評価(4):実験による評価」における実施例II-3exp.と比較例II-2exp.の走査型電子顕微鏡(SEM)の観察結果を図12に示す。
なお、表1及び表2中、A軸、B軸、及びC軸の欄に記載された数値の単位は、「°」である。
【0080】
【表1】

【0081】
【表2】
【0082】
表1より、以下のことがわかる。
刃の刃先のA軸の角度が0°未満であり、条件(α1)を満たす実施例I-1sim.及び実施例I-2sim.では、粘着テープの非貼付部分の切断縁が上方向に反り上がるように刃を進行させることができ、いずれも刃による切断性が良好であることがわかる。したがって、切断時のカットダストの発生が抑制されることがわかる。
これに対し、刃の刃先のA軸の角度が0°以上であり、条件(α1)を満たさない比較例I-1sim.~比較例I-3sim.では、粘着テープの非貼付部分の切断縁が上方向に反り上がるように刃を進行させることができず、いずれも刃による切断性に劣ることがわかる。したがって、切断時のカットダストの発生が抑制できないことがわかる。
【0083】
なお、比較例I-2exp.及び比較例I-3exp.は、比較例I-2sim.及び比較例I-3sim.を実験的に確かめた結果である。比較例I-2exp.及び比較例I-3exp.により検討した刃による切断性の評価結果は、比較例I-2sim.及び比較例I-3sim.により検討した刃による切断性の評価結果と完全に一致していることがわかる。
【0084】
表2より、以下のことがわかる。
刃のB軸の角度が0°超+45°未満であり、刃のC軸の角度が0°超+30℃未満であり、条件(β1)を満たす実施例II-1sim.及び実施例II-5sim.では、粘着テープの非貼付部分の切断縁が上方向に反り上がるように刃を進行させることができ、いずれも刃による切断性が良好であることがわかる。なお、実施例II-1sim.及び実施例II-4sim.に示す結果から、A軸の角度が0°以上であり、条件(α1)を満たさなくても、条件(β1)を満たせば、刃による切断性が良好であることがわかる。したがって、切断時のカットダストの発生が抑制されることがわかる。
これに対し、比較例II-1sim.及び比較例II-3sim.のように、刃のC軸の角度が0°であり、条件(β1)を満たさず、さらに条件(α1)も満たさない場合には、粘着テープの非貼付部分の切断縁が上方向に反り上がるように刃を進行させることができず、いずれも刃による切断性に劣ることがわかる。
比較例II-2sim.のように、刃のB軸の角度が0°であり、条件(β1)を満たさず、さらに条件(α1)も満たさない場合にも、粘着テープの非貼付部分の切断縁が上方向に反り上がるように刃を進行させることができず、刃による切断性に劣ることがわかる。
そして、比較例II-4sim.のように、刃のB軸の角度もC軸の角度も0°であり、条件(β1)を満たさず、さらに条件(α1)も満たさない場合にも、粘着テープの非貼付部分の切断縁が上方向に反り上がるように刃を進行させることができず、刃による切断性に劣ることがわかる。
また、比較例II-5sim.のように、刃のB軸の角度45°であり、条件(β1)を満たさず、さらに条件(α1)も満たさない場合には、粘着テープの非貼付部分の切断縁が上方向に反り上がるように刃を進行させることができず、刃による切断性に劣ることがわかる。
したがって、比較例II-1sim.~比較例II-5sim.の場合、切断時のカットダストの発生が抑制できないことがわかる。
【0085】
なお、実施例II-3exp.、実施例II-4exp.、比較例II-1exp.、比較例II-2exp.、及び比較例II-4exp.は、実施例II-3sim.、実施例II-4sim.、比較例II-1sim.、比較例II-2sim.、及び比較例II-4sim.を実験的に確かめた結果である。実施例II-3exp.、実施例II-4exp.、比較例II-1exp.、比較例II-2exp.、及び比較例II-4exp.により検討した刃による切断性の評価結果は、実施例II-3sim.、実施例II-4sim.、比較例II-1sim.、比較例II-2sim.、及び比較例II-4sim.により検討した刃による切断性の評価結果と完全に一致していることがわかる。
このことは、図11及び図12に示す結果からも明らかである。
また、比較例II-6exp.のように、刃のC軸の角度30°であり、条件(β1)を満たさず、さらに条件(α1)も満たさない場合には、粘着テープの非貼付部分の切断縁が上方向に反り上がるように刃を進行させることができず、刃による切断性に劣ることがわかる。
【符号の説明】
【0086】
AS 半導体加工用粘着テープ
AS1 半導体加工用粘着テープの半導体ウエハとの非貼付部分
AS1a 半導体加工用粘着テープの非貼付部分の切断縁
WF 半導体ウエハ
56 刃
56a 刃先
56b 峰
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11
図12