(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151208
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】魚の加工品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 17/00 20160101AFI20231005BHJP
【FI】
A23L17/00 A
A23L17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060686
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】503398118
【氏名又は名称】双日株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】大西 啓之
【テーマコード(参考)】
4B042
【Fターム(参考)】
4B042AC06
4B042AG30
4B042AH01
4B042AP18
4B042AP21
4B042AP30
4B042AW06
(57)【要約】
【課題】魚の身を包装した後の消費期限を長くすることができる魚の加工品の製造方法を提供すること。
【解決手段】マグロ加工品の製造方法は、マグロに電気的な刺激を与える電気刺激工程と、マグロに対して、血抜き、少なくとも一部の内蔵の除去、及びエラの除去を行う前処理工程と、マグロを冷却する第1冷却工程と、を備え、電気刺激工程の開始時点から、第1冷却工程の開始時点までの時間が、7分以内である。第1冷却工程は、マグロを海水氷水中で冷却することが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグロに電気的な刺激を与える電気刺激工程と、
前記マグロに対して、血抜き、少なくとも一部の内蔵の除去、及びエラの除去を行う前処理工程と、
前記マグロを冷却する第1冷却工程と、を備え、
前記電気刺激工程の開始時点から、前記第1冷却工程の開始時点までの時間が、7分以内である、
マグロ加工品の製造方法。
【請求項2】
前記第1冷却工程は、前記マグロを海水氷水中で冷却することを含む、
請求項1に記載のマグロ加工品の製造方法。
【請求項3】
前記電気刺激工程の後、前記前処理工程の前に、スパイキーで前記マグロを刺すことを含む、
請求項1又は2に記載のマグロ加工品の製造方法。
【請求項4】
前記冷却工程後の前記マグロに対して、エラ内膜及び生殖腺の除去を行うトリミング工程と、
前記マグロを海水氷水中で10時間以上冷却する第2冷却工程と、を備える、
請求項1から3の何れか1項に記載のマグロ加工品の製造方法。
【請求項5】
前記第2冷却工程は、前記マグロを、前記マグロの芯温が15℃以下になるまで冷却することを含む、
請求項4に記載のマグロ加工品の製造方法。
【請求項6】
前記トリミング工程において、マグロを微酸性電解水で洗浄する、
請求項4又は5に記載のマグロ加工品の製造方法。
【請求項7】
電気刺激工程の開始時点から、前記トリミング工程の開始時点までの時間が、3時間以内である、
請求項4から6の何れか1項に記載のマグロ加工品の製造方法。
【請求項8】
前記第2冷却工程後の前記マグロを裁割する裁割工程と、
前記マグロをフィルムで包装する包装工程と、を含む、
請求項4から7の何れか1項に記載のマグロ加工品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚、特にはマグロの加工品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、魚の鮮度を長く保つことを目的とした魚の加工方法が提案されている。例えば、特許文献1には、まぐろを25cm以下の厚さに裁割し、その後、芯温が10度以下になるように冷却する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の魚の加工方法には、魚の身を包装した後の消費期限が短い、との問題がある。
【0005】
本発明は、魚の身を包装した後の消費期限を長くすることができる魚の加工品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のマグロ加工品の製造方法は、マグロに電気的な刺激を与える電気刺激工程と、
マグロに対して、血抜き、少なくとも一部の内蔵の除去、及びエラの除去を行う前処理工程と、マグロを冷却する第1冷却工程と、を備え、電気刺激工程の開始時点から、第1冷却工程の開始時点までの時間が、7分以内である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、魚の身を包装した後の消費期限を長くすることができる魚の加工品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明のマグロ加工品の製造方法を示すフローチャートである。
【
図2】製造条件による生菌数の相違を示す図である。
【
図3】製造条件による身の外観の相違を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について
図1に基づいて説明する。
図1は、本発明のマグロ加工品の製造方法を示すフローチャートである。
以下の説明では、生簀で養殖されたマグロの加工を例にして、魚の加工品の製造方法について説明する。
図1に示す製造方法は、生簀での処理、船上での処理、及び陸上での処理を順に含んでいる。ステップS1及びS2が生簀での処理であり、ステップS3及びS4が船上での処理であり、ステップS5からS8が陸上での処理である。
【0010】
<生簀での処理>
生簀での処理は、生簀の中の養殖マグロを捕獲することである。マグロの捕獲では、マグロを手早く捕獲することが重要である。
まず、マグロを捕獲しやすくするために、生簀の深さを浅くする。例えば、生簀が円形の場合、生簀の中央付近の底の網を持ち上げる。例えば、網に浮きをつけ、その浮きの浮力で網を持ち上げる。その結果、生簀の中央部分の網が持ち上がり、生簀の縁にマグロが集まる。これにより、マグロが捕獲しやすくなる。
【0011】
<ステップS1:電気刺激工程>
ステップS1は、電気刺激工程である。電気刺激工程では、電気銛でマグロを感電させる。
具体的には、マグロの捕獲者は、生簀内を遊泳しているマグロ付近で電気銛に通電する。これにより、マグロは感電する。そして、この感電により、マグロは、その背骨が折れて、気絶する。この気絶した状態で、マグロは捕獲者により捕獲される。
【0012】
<ステップS2:脳破壊工程>
ステップS2は、脳破壊工程である。脳破壊工程では、マグロの脳を破壊する。
具体的には、捕獲者は、ステップS1で気絶したマグロの脳にスパイキーを刺し込み、マグロの脳を破壊する。スパイキーとは、先が尖った金属製の金具である。
脳にスパイキーが差し込まれたことにより、マグロは脳死する。マグロを脳死させることで、マグロが暴れることを防止することができる。
ステップS1及びS2の後、マグロはクレーンなどを用いて船上に引き上げられる。
【0013】
<船上での処理>
船上での処理は、マグロの冷却と、その準備としての前処理である。
<ステップS3:前処理工程>
ステップS3は、前処理工程である。マグロは、生簀から陸に運搬される間冷却される。前処理工程では、その冷却に先立つ処理が行われる。この前処理工程は、分単位や秒単位で、手早く行われる。
前処理工程では、マグロの血抜き、ワタ抜き、及びエラ取りが行われる。ワタ抜きとは、マグロの内臓の少なくとも一部を除去することである。
具体的には、マグロを船上に引き上げた後、直ちにマグロの2か所の体側大静脈及び尾部大動脈を切断して、放血を行う。心臓の動きが弱まる前に放血させることで、適度な血抜きを行うことができる。
続いて、神経を抜くことで、マグロの死後硬直の開始を遅らせる。具体的には、ステップS2においてスパイキーで刺した部分から神経を抜く。
続いて、エラ及び内臓の除去を行う。エラ及び内臓を除去することで、ステップS4の冷却の効果を高めることができる。
<ステップS4:第1冷却工程>
【0014】
また、「海水氷水」の説明を追加致しました。
ステップS4は、第1冷却工程である。第1冷却工程では、マグロが陸揚げされるまでの間、船上においてマグロが冷却される。
具体的には、ステップS3で前処理が行われたマグロは、直ちに海水氷水に投入されて、冷却される。ここで、海水氷水とは、海水に氷を加えた氷水をいう。海水氷水の水温は、約-1.5℃である。これにより、マグロが生簀から陸まで船で運搬される間、マグロの冷やし込みが行われる。
【0015】
本実施形態の製造方法では、ステップS1の電気刺激工程の開始時点から、ステップS4の第1冷却工程の開始時点までの時間が、7分以内である。この時間は、5分以内とすることが好ましく、さらには、2分以内とすることがより好ましい。
ここで、電気刺激工程の開始時点は、マグロの付近で最初に電気銛に通電させた時点をいう。また、第1冷却工程の開始時点は、マグロを海水氷水に投入した時点をいう。
ステップS1の電気刺激工程の開始時点から、ステップS4の第1冷却工程の開始時点までの時間を7分以内にするために、ステップS3の前処理を素早く行う。また、マグロを捕獲する際、マグロが暴れないようする。
ステップS1の電気刺激工程の開始時点から、ステップS4の第1冷却工程の開始時点までの時間を短くすることで、マグロ加工品の消費期限を長くすることができる。
【0016】
また、捕獲する際にマグロが暴れないようにすることは、電気刺激工程の開始時点から第1冷却工程の開始時点までの時間を短くすることに加えて、マグロの商品価値を低下させないためにも重要である。マグロは、暴れると、体温が上昇したり、乳酸が溜まったりする。体温上昇や乳酸の蓄積は、マグロのうまみを低下させ、延いては、マグロの商品価値を低下させるためである。
【0017】
<陸上での処理>
船で陸まで運ばれたマグロは、加工工場で加工され、包装されたマグロ加工品になる。陸上での処理は、トリミングから、真空包装したマグロ加工品の冷蔵温度への冷却までを含む。
<ステップS5:トリミング工程>
ステップS5は、トリミング工程である。トリミング工程では、マグロのエラの内膜の除去や、生殖腺の除去などが行われる。また、微酸性電解水によるマグロの洗浄及び消毒が行われる。
トリミング工程は、陸上の加工工場で行われる。マグロは、船中の海水氷水の中から、陸上に用意された容器の中にクレーンで移動される。この容器には、海水氷水が入れられている。海水氷水が入れられた容器にマグロを移動することで、船から、陸上の加工工場までマグロを運搬する間の、マグロの品質低下を抑制することができる。
トリミング工程では、まず、微酸性電解水を用いてマグロの体表が洗浄される。その後、エラの内膜や生殖腺が除去される。さらに腹腔内が微酸性電解水で洗浄される。
微酸性電解水は、pHが6.4の電解水である。微酸性電解水でマグロを洗浄することで、マグロを殺菌することが可能である。これにより、経時での細菌の増殖を抑制することができる。さらに、細菌の数が少なくなることで、マグロの生臭さを抑えることができる。
電気刺激工程の開始時点から、トリミング工程の開始時点までの時間は、3時間以内であることが好ましい。さらには、この時間は、2時間以内であることがより好ましい。
電気刺激工程の開始時点から、トリミング工程の開始時点までの時間を短くすることで、マグロ加工品の経時での品質低下を遅らせることができる。
【0018】
<ステップS6:第2冷却工程>
ステップS6は、第2冷却工程である。第2冷却工程では、-1.5℃の海水氷水でのマグロの冷やし込みが15時間以上行われる。この冷やし込みにより、マグロは、芯温が10℃以下になるまで冷却される。
第2冷却工程は、トリミング工程が終了した後に引き続いて行われる。具体的には、トリミングの処理を終えたマグロは、微酸性電解水で洗浄される。そして、洗浄されたマグロは、海水氷水が満たされた容器に投入される。その後、15時間以上、海水氷水のなかでマグロの冷やし込みが行われる
なお、マグロの芯温は、芯温計を用いてマグロの背骨付近の血合肉部位の温度を測定した。また、測定は、第2冷却工程での冷却を終了する時点で行った。
【0019】
本実施形態の製造方法では、第2冷却工程でマグロを海水氷水に浸漬する時間は、15時間以上とした。この時間は10時間以上とすることができ、また、20時間以上とすることが好ましい。
また、本実施形態の製造方法では、第2冷却工程でのマグロの芯温は、10℃以下とした。この温度は、15℃以下をすることができ、また、5℃以下とすることが好ましい。
なお、HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)などの衛生管理に従い、マグロの芯温は、例えば、8℃未満とすることがより好ましい。
【0020】
<ステップS7:裁割工程>
ステップS7は、裁割工程である。裁割工程では、マグロの身を切断し、マグロの身を個別に包装することができるようにする。また、マグロの身を微酸性電解水(pH=6.4)で洗浄すると共に、マグロの身を消毒する。
【0021】
具体的には、裁割されるマグロは、加工工場内の清潔区に、専用の搬入口から搬入される。搬入されたマグロは、裁割される前に、微酸性電解水で洗浄される。
裁割では、まずマグロの身をロインに切り出す。ロインとは、マグロの身を左右に割り、さらに背と腹に分けることで、マグロの身を4つ割りの状態にしたものをいう。
次に、このロインをさらに分割することでブロックを作成する。マグロは、このブロックの形態で包装される。
【0022】
裁割の際、用いる包丁に刃こぼれがないかを逐次確認する。
また、マグロをロインに切り出した際、マグロの切断面を殺菌したタオルで拭く。これにより、マグロの切断面を殺菌する。使用するタオルは、微酸性電解水であらかじめ殺菌し洗浄しておく。
また、ロインからブロックを作成する際、マグロの身から骨を除去する。これにより、ステップS8においてフィルムでブロックを包装する際に、フィルムにピンホールが形成されることを抑制することができる。
また、1つのロインについての加工を終えた際、用いたまな板や包丁などの道具、及び作業者の前掛けなどを微酸性電解水で洗浄し、殺菌する。
なお、第2冷却工程による冷やし込みを経たマグロは、冷却された状態で裁割される。冷却された状態で裁割することで、マグロの切断が容易になるためである。
【0023】
<ステップS8:包装工程>
ステップS8は、包装工程である。包装工程では、裁割されたマグロの身を、フィルムを用いて真空包装する。
具体的には、ロインから切り出されたブロックを、樹脂製の包装フィルムで包装する。
また、包装する際、身の皮目の切断面には、ドリップシートを配置する。ドリップシートとは、身から出る解凍水などを吸収するフィルムを意味する。
【0024】
包装は、真空包装機を用いることで、真空包装とする。すなわち、本実施形態のマグロ加工品は、真空包装品の形態で提供される。
真空包装を行う際、マグロの身の状況などに応じて、真空引きをする時間を調節する。標準となる真空引きの時間は、例えば、35秒や45秒である。
真空引きが十分でないと、真空包装品の消費期限が短くなる。逆に、真空引きが過剰になると、身が崩れたりする。
また、真空引きの度合いは、包装を開いた際の身の発色にも関係する。例えば真空引きが十分でないと、包装を開いた際、身が赤黒くなりやすい。
包装されたマグロ加工品としての真空包装品は、例えば4℃、好ましくは4℃未満に設定された恒温冷蔵庫で保存される。
また、真空包装品において、酸素をバリアし過ぎると、包装されたマグロの身に、嫌気性細菌のボツリヌス菌が発生する場合がある。そこで、包装に用いるフィルムの酸素透過率は、例えば20cm3/m2/24h、以上とすることが好ましい。
【0025】
<効果>
本実施形態の真空包装品は、消費期限が長い。
消費期限とは、真空包装品を4℃の恒温冷蔵庫で保存した際、生菌数が所定の数を超えない期限をいう。本実施形態では、消費期限の判断基準は、生菌数が100,000個/グラム以下であるか否かとした。
本実施形態の真空包装品の消費期限は、20日以上であった。
【0026】
図2に基づいて、真空包装品の製造条件と、生菌数との関係について説明する。
図2は、真空包装品の製造条件と、経時による生菌数の変化とを示す図である。
実施例及び比較例ともに、真空包装品は、包装後、4℃の恒温冷蔵庫で保存された。そして、所定の日数が経過した後に開封され、その生菌数が測定された。
また、
図3を参照しながら、
図2に示す各々の時点での、身の外観の目視評価の結果を説明する。
図3は、真空包装品の製造条件と、経時による外観の変化とを示す図である。外観は、目視にて、身の色味及び身からのドリップを評価した。
【0027】
<第1冷却工程までの時間>
まず、電気刺激工程の開始から第1冷却工程の開始までの時間について、生菌数、外観の目視評価の順で説明する。
(生菌数)
図2の実施例1、2及び7に示すように、本発明の真空包装品は、経過日数20日においても、生菌数は、100,000個/グラム以下であり、消費期限の基準を満たした。
また、第1冷却工程の開始までの時間が2分である実施例1では、経過日数20日において、実施例2及び7に比べて、生菌数が少なかった。
一方、電気刺激工程の開始から第1冷却工程の開始までの時間が7分を超える、比較例1及び2では、包装加工後の経過日数が14日であっても、生菌数は、100,000個/グラムを超え、消費期限の基準を満たさなかった。
【0028】
(身の外観の目視評価)
図3の実施例1、2及び7に示すように、本発明の真空包装品は、経過日数20日において、色味の変化は見られず、またドリップの流出もなかった。
なお、ドリップとは、マグロの破壊された細胞から流出した組織液や、血液などを含む液体である。ドリップは、通常、ミオグロビンを含有する。ミオグロビンは、赤い色素を含有する。そのため、ドリップは、通常、赤色に見える。
一方、電気刺激工程の開始から第1冷却工程の開始までの時間が7分を超える、比較例1及び2では、包装加工後の経過日数が14日であっても、身が褐変したり、多くのドリップが流出したりした。
なお褐変とは、身が黒ずんで茶色がかった赤色になることを意味する。
【0029】
<第2冷却工程での冷却時間>
次に、第2冷却工程での冷却時間について、生菌数、外観の目視評価の順で説明する。
(生菌数)
図2の実施例2、3及び4に示すように、本発明の真空包装品は、第2冷却工程での冷却時間を長くすることで、経時での生菌数の増加を抑制することができる。
具体的には、第2冷却工程での冷却時間が20時間の場合、すなわち実施例2では、冷却時間が15時間又は10時間の場合、すなわち実施例3又は4に比べて、経過日数20日において、生菌数が少なかった。
【0030】
(身の外観の目視評価)
また
図3の実施例2、3及び4に示すように、本発明の真空包装品は、第2冷却工程での冷却時間を長くすることで、経時での外観品位の低下を抑制することができる。
具体的には、第2冷却工程での冷却時間が15時間又は10時間の場合、すなわち実施例3又は4では、経過日数20日において、ごくわずかな色味の変化又はごくわずかなドリップの流出があった。これに対して、冷却時間が20時間の場合、すなわち実施例2では、経過日数20日においても、色味の変化やドリップの流出は見られなかった。
【0031】
<第2冷却工程での芯温>
次に、第2冷却工程でのマグロの芯温について、生菌数を説明する。
(生菌数)
図2の実施例4、5及び6に示すように、本発明の真空包装品は、第2冷却工程での冷却終了時のマグロの芯温を低くすることで、経時での生菌数の増加を抑制することができる。
具体的には、第2冷却工程での冷却終了時のマグロの芯温が5℃の場合、すなわち実施例4では、芯温が10℃又は15℃の場合、すなわち実施例5又は6に比べて、経過日数20日において、生菌数が少なかった。
【0032】
以上のように、本実施形態の製造方法では、電気刺激工程の開始時点から第1冷却工程の開始時点までの時間は、7分以内が好ましく、より好ましくは5分以内であり、さらに好ましくは2分以内である。
また、本実施形態の製造方法では、第2冷却工程でマグロを海水氷水に浸漬する時間は、10時間以上が好ましく、より好ましくは15時間以上であり、さらに好ましくは20時間以上である。
また、本実施形態の製造方法では、第2冷却工程での冷却終了時のマグロの芯温は、15℃以下が好ましく、より好ましくは10℃以下であり、さらに好ましくは5℃以下である。
【0033】
本実施形態の真空包装品は、例えば消費期限を包装加工後20日とする場合であっても、真空包装品を冷凍保存する必要はない。上述のように、例えば4度などで冷蔵保存することで、真空包装品の消費期限を20日とすることができる。
なお、上述の20日に、例えば0.7の安全係数を乗じて、消費期限を14日とすることもできる。この場合、仮に、真空包装品の製造工程や、真空包装品の保存過程で条件変動が生じたとしても、消費期限内に、生菌数が100,000個/グラムを超えることを抑制することができる。
【0034】
また、本実施形態の真空包装品は、上述の生菌数の基準を満たすことに加えて、大腸菌群については陰性であり、また腸炎ビブリオ最確数は100MPN/g以下であった。
【0035】
本実施形態のでは、微酸性電解水を用いてマグロを洗浄や殺菌することで、マグロの生菌数を抑制できると共に、マグロから生臭さを抑制することができる。
なお、本実施形態では、微酸性電解水のpHは6.4には限定されず、微酸性電解水のpHは、弱酸性の範囲で適宜変更することが可能である。
【0036】
本実施形態では、マグロの冷やし込みに用いる海水氷水が含まれる氷水の温度は、-1.5℃である場合を例示した。ただ、マグロの冷やし込みに用いる海水氷水の温度は、-1.8℃などに、適宜変更することができる。
【0037】
本発明の製造方法が対象とする魚は、マグロには限定されず、他の種々の魚に適用することができる。
また、本発明の製造方法が対象とする魚は、生簀内の魚には限定されず、海洋を自由に遊泳する魚に適用することができる。