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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151210
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】スポイト容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/18 20060101AFI20231005BHJP
   A45D 34/04 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B65D47/18 100
A45D34/04 515Z
A45D34/04 515B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060688
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】坂本 智
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA04
3E084AA12
3E084AA24
3E084AA32
3E084AB09
3E084BA02
3E084CA01
3E084CC03
3E084DA01
3E084DB12
3E084DC03
3E084EA04
3E084EC03
3E084FB01
3E084GA04
3E084GB04
3E084HA05
3E084HB03
3E084HC03
3E084HD04
3E084JA07
3E084LD29
3E084LE06
(57)【要約】
【課題】内容物の残量を低減できるスポイト容器を提供する。
【解決手段】スポイト容器1は、内容物を収容する有底筒状の容器本体2と、容器本体2の口部に着脱可能に装着されたキャップ体3と、容器本体2内の底面2bに当接可能な長さを有し、キャップ体3に対して上下方向にスライド移動可能に設けられたスポイト管4と、スポイト管4内に連通する作動空間を形成すると共に、前記作動空間を減容可能な作動部材50と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容する有底筒状の容器本体と、
前記容器本体の口部に着脱可能に装着されたキャップ体と、
前記容器本体内の底面に当接可能な長さを有し、前記キャップ体に対して上下方向にスライド移動可能に設けられたスポイト管と、
前記スポイト管内に連通する作動空間を形成すると共に、前記作動空間を減容可能な作動部材と、を備える、スポイト容器。
【請求項2】
前記スポイト管の下端部に、前記スポイト管の管本体よりも軟質の軟質部材が設けられている、請求項1に記載のスポイト容器。
【請求項3】
前記キャップ体は、
前記容器本体の口部に装着された内キャップと、
前記内キャップを覆い、前記内キャップに対して容器軸回りに回転可能な外キャップと、
前記作動部材を支持するとともに、前記外キャップに対する容器軸回りの回転が規制され、前記内キャップに対する容器軸回りの回転に伴って上下動する連動筒部材と、を備える、請求項1または2に記載のスポイト容器。
【請求項4】
前記容器本体は、前記口部の上端開口縁に固定されるとともに、前記スポイト管の外周面に当接するしごき筒部材を備え、
前記スポイト管に、前記連動筒部材に摺接する上摺動筒と、前記しごき筒部材に摺接する下摺動筒と、が設けられている、請求項3に記載のスポイト容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポイト容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に示されるように、スポイト管を有するスポイト容器が用いられている。特許文献1の構成では、外キャップ(蓋カバー)を容器本体に対して回転させると、外キャップが容器本体に対して上昇するとともに、スポイト管に内容物が吸い上げられる。その後、操作部(押釦)を外キャップに対して押下することで、内容物を吐出させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-33056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、化粧品などに多く使われる底部厚肉容器では、寸法誤差が大きくなる傾向にあり、スポイト管の下端が容器本体の底面に強く当接しまうと、スポイト管の下端が損傷したり、容器本体の底面に圧痕が生じる虞がある。このため、上記従来のスポイト容器では、スポイト管の下端が、本体容器の底面に届いておらず、内容物を最後まで吸い上げることができなかった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、内容物の残量を低減できるスポイト容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係るスポイト容器は、内容物を収容する有底筒状の容器本体と、前記容器本体の口部に着脱可能に装着されたキャップ体と、前記容器本体内の底面に当接可能な長さを有し、前記キャップ体に対して上下方向にスライド移動可能に設けられたスポイト管と、前記スポイト管内に連通する作動空間を形成すると共に、前記作動空間を減容可能な作動部材と、を備える。
【0007】
本発明に係るスポイト容器によれば、スポイト管の下端が容器本体内の底面に当接すると、容器本体の口部に装着されたキャップ体に対してスポイト管が上方にスライド移動する。これにより、スポイト管の下端が容器本体の底面に当接した状態で、スポイト管の下端から容器本体内の底面付近の内容物を吸い上げることができる。また、容器本体の成形バラツキ等があり、スポイト管の下端が容器本体の底面に強く当接するような寸法誤差があった場合でも、スポイト管が容器本体の底面との当接により上方に逃げるため、スポイト管の下端の損傷若しくは容器本体の底面の圧痕の発生を抑制できる。
【0008】
(2)前記スポイト管の下端部に、前記スポイト管の管本体よりも軟質の軟質部材が設けられていても良い。
【0009】
この場合には、スポイト管の下端が容器本体の底面に当接しても、その衝撃が軟質部材の変形により緩和されるため、スポイト管の下端の損傷若しくは容器本体の底面の圧痕の発生をより確実に抑制できる。
【0010】
(3)前記キャップ体は、前記容器本体の口部に装着された内キャップと、前記内キャップを覆い、前記内キャップに対して容器軸回りに回転可能な外キャップと、前記作動部材を支持するとともに、前記外キャップに対する容器軸回りの回転が規制され、前記内キャップに対する容器軸回りの回転に伴って上下動する連動筒部材と、を備えても良い。
【0011】
この場合には、外キャップを内キャップに対して容器軸回りに回転させると、外キャップに回転規制された連動筒部材が内キャップに対して回転する。連動筒部材が内キャップに対して回転すると、連動筒部材が内キャップに対して上下動する。連動筒部材は作動部材を支持しており、連動筒部材が上昇した場合、スポイト管内に連通する作動空間の容積が増大し、作動空間内が負圧となる。そうすると、スポイト管の下端から容器本体内の底面付近の内容物が自動で吸い上げられる。その後、スポイト管を容器本体から引き上げ、作動部材の弾性部分を下方に押し込むと、作動空間の容積が小さくなり、スポイト管内に保持されていた内容物がスポイト管の下端から吐出される。
【0012】
(4)前記容器本体は、前記口部の上端開口縁に固定されるとともに、前記スポイト管の外周面に当接するしごき筒部材を備え、前記スポイト管に、前記連動筒部材に摺接する上摺動筒と、前記しごき筒部材に摺接する下摺動筒と、が設けられていても良い。
【0013】
この場合には、スポイト管がキャップ体に対して上下方向にスライド移動した場合であっても、上摺動筒が連動筒部材に摺接し、下摺動筒がしごき筒部材に摺接しているため、作動空間の気密性を確保でき、キャップ体を外すときに、スポイト管に内容物を自動で吸い上げることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るスポイト容器によれば、内容物の残量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るスポイト容器を示す縦断面図である。
図2図1に示すII-II断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るスポイト容器の使用前の状態を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係るスポイト容器が内容物を吸い上げる様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本実施形態のスポイト容器について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、スポイト容器1は、容器本体2と、キャップ体3と、スポイト管4と、作動部材50と、を備えている。
【0017】
容器本体2は、後述する図3に示すように、有底筒状に形成されており、内容物が収容される。内容物としては、例えば人体(皮膚)に塗布(吐出)する薬剤、液体化粧料などを用いることができる。本実施形態におけるスポイト容器1の構成部品は、樹脂材料により形成されている。なお、容器本体2は、ガラス瓶などから形成されていてもよい。
【0018】
図1に戻り、キャップ体3、スポイト管4、および作動部材50は、スポイトアセンブリを構成している。詳細は後述するが、スポイト容器1が使用される際には、スポイトアセンブリが容器本体2から取り外される。
【0019】
本実施形態では、容器本体2およびスポイトアセンブリの中心軸線は共通の軸線上に位置している。以下、この共通の軸線を容器軸Oといい、容器軸Oに沿う方向を上下方向といい、上下方向に沿って、容器本体2の口部2a側を上方、容器本体2の底部側を下方という。また、上下方向から見た平面視において、容器軸Oに交差する方向を径方向といい、容器軸O回りに周回する方向を周方向という。
【0020】
また、周方向における一方側に向けた回転方向を、「緩み方向」という場合がある。緩み方向とは、キャップ体3を容器本体2に対して回転させたときに、キャップ体3が容器本体2に対して上昇する方向である。
詳細は後述するが、本実施形態のキャップ体3は、内キャップ20と、外キャップ30と、連動筒部材40と、を備え、外キャップ30を容器本体2に対して緩み方向に回転させると、連動筒部材40が内キャップ20に対して上昇し、その後で内キャップ20が容器本体2に対して緩み方向に回転するように構成されている。
【0021】
容器本体2は、しごき筒部材10を備えている。しごき筒部材10は、容器本体2の口部2aの上端開口縁に固定されるとともに、スポイト管4の外周面に当接する当接部11を備えている。しごき筒部材10は、スポイト管4が容器本体2から上方に離脱する際に、スポイト管4の外周面に付着した内容物をかき落とす役割を有する。
【0022】
キャップ体3は、内キャップ20と、外キャップ30と、連動筒部材40と、操作部材70と、を備えている。内キャップ20は、装着筒部21と、規制筒部22と、環状板部23と、螺合筒部24と、を備えている。装着筒部21は、容器本体2の口部2aに装着されている。本実施形態では、装着筒部21の内周面に形成された雌ネジ部が、口部2aの外周面に形成された雄ネジ部に螺着されている。
【0023】
容器本体2に対して内キャップ20が、容器軸O回りに回転すると、スポイトアセンブリを容器本体2の口部2aから取り外したり、再び口部2aに取り付けたりすることができる。装着筒部21は、外キャップ30のキャップ周壁31によって径方向外側から覆われている。
【0024】
規制筒部22は、装着筒部21の上端部に連設されている。規制筒部22は、連動筒部材40の下方移動を規制する。本実施形態では、規制筒部22の内周面と装着筒部21の内周面とが略同じ内径であるが、規制筒部22と装着筒部21とで内径が異なってもよい。また、装着筒部21の上端部を規制筒部22として用いてもよい。
【0025】
環状板部23は、規制筒部22から径方向内側に向けて延びており、平面視において円環状に形成されている。螺合筒部24は、規制筒部22から上方に向けて延びている。螺合筒部24の外周面には、雄ネジが形成されている。内キャップ20と連動筒部材40とが容器軸O回りに相対回転すると、連動筒部材40が内キャップ20に対して上下動する。
【0026】
螺合筒部24の内周面には、係合リブ24aが形成されている。係合リブ24aは、螺合筒部24の内周面に沿って上下方向に延びると共に、周方向に間隔をあけて複数形成されている。係合リブ24aは、スポイト管4のフランジ81と、上下方向にスライド移動可能に係合している。
【0027】
外キャップ30は、容器軸Oに沿って延びる円筒状のキャップ周壁31と、キャップ周壁31の上端から径方向内側に延びるキャップ頂壁32と、を有する。キャップ頂壁32は、平面視において円環状である。言い換えると、キャップ頂壁32には、貫通孔32aが設けられている。貫通孔32aの内側には、操作部材70の一部(ボタン部71)が位置している。
【0028】
キャップ周壁31の内周面には、上下方向に沿って延びる縦リブ33が形成されている。縦リブ33は、図2の断面図に示すように、キャップ周壁31の内周面から径方向内側に突出している。縦リブ33は、径方向において容器軸Oを挟むように一対で形成されている。また、図1に示すように、キャップ周壁31の内周面には、縦リブ33よりも下側から径方向内側に突出するアンダーカット突起34が複数形成されている。アンダーカット突起34は、内キャップ20の装着筒部21の下端にアンダーカット嵌合する。
【0029】
図2に示すように、内キャップ20の装着筒部21には、周方向で縦リブ33に係止する係止凸部21aが形成されている。係止凸部21aは、装着筒部21の外周面から径方向外側に突出している。係止凸部21aは、径方向において容器軸Oを挟むように一対で形成されている。縦リブ33は、一対の係止凸部21aの間の約90°の角度の範囲で周方向に移動可能とされている。
【0030】
外キャップ30を内キャップ20(容器本体2)に対して容器軸O回りに回転させようとすると、上記角度の範囲(約90°)内で、外キャップ30が内キャップ20に対して空転する。外キャップ30を容器本体2に対して上記角度の範囲を超えて回転させようとすると、縦リブ33が係止凸部21aの側面(周方向を向く面)に当接することで、外キャップ30と内キャップ20との相対回転が規制される。このように、縦リブ33および係止凸部21aは、外キャップ30と内キャップ20とを所定の角度の範囲内において空転させ、かつ、所定の角度を超えた両者の相対回転を規制するように構成されている。
【0031】
図1に示すように、連動筒部材40は、外キャップ30の径方向内側且つ内キャップ20の上側に配置されている。連動筒部材40は、螺着筒部41と、頂壁42と、摺動筒部43と、内側リング44と、外側リング45と、を有する。螺着筒部41の内周面には、螺合筒部24の雄ネジに螺合する雌ネジが形成されている。頂壁42は、螺着筒部41の上端から径方向内側に延びている。頂壁42は、平面視において円環状である。
【0032】
摺動筒部43は、頂壁42の径方向内端縁に連設されており、螺着筒部41よりも径方向内側に位置している。摺動筒部43は、上下方向に延び、その内周面にはスポイト管4に装着された上摺動筒60(ピストン)が摺接している。摺動筒部43の下端は、上下方向でスポイト管4のフランジ81に隙間をあけて対向している。摺動筒部43の下端は、連動筒部材40が最も下がっているとき、上下方向で係合リブ24aと重なる位置関係を有している。
【0033】
内側リング44および外側リング45は、頂壁42から上方に突出している。内側リング44は、外側リング45よりも径方向内側に位置している。内側リング44の上端には、径方向内側に突出し、上摺動筒60の上方への抜けを規制する凸部44aが形成されている。内側リング44と外側リング45との間には、作動部材50の固定部52が固定されている。外側リング45には、径方向外側に突出した規制突起47が形成されている。
【0034】
さらに、連動筒部材40は、回転規制部48を備えている。回転規制部48は、螺着筒部41の下端部から径方向外側に突出するとともに、下方に向けて延びている。回転規制部48には、凹部48aが形成されている。凹部48aは、回転規制部48の外周面における周方向中央部から、径方向内側に向けて窪んでいる。凹部48aは、回転規制部48の上下方向における全長にわたって形成されている。凹部48aの内側に、外キャップ30の縦リブ33が位置することで、外キャップ30と連動筒部材40との容器軸O回りの相対回転が規制されている。
【0035】
本実施形態では、規制突起47および回転規制部48はそれぞれ2つずつ設けられている。2つの規制突起47は、径方向において容器軸Oを間に挟むように配置されている。また、2つの回転規制部48は、径方向において容器軸Oを間に挟むように配置されている。周方向において、回転規制部48および規制突起47は交互に配置されている。つまり、規制突起47同士が対向する方向と回転規制部48同士が対向する方向とは交差(例えば直交)している。
【0036】
作動部材50は、弾性膜51と、固定部52と、を有している。作動部材50は、全体として、ゴムあるいはエラストマーなどの弾性体によって形成されている。固定部52は筒状であり、弾性膜51よりも肉厚に形成されている。弾性膜51は、固定部52から上方に延びている。弾性膜51は、上方に向けて凸の曲面状(ドーム状)に形成されている。
【0037】
操作部材70は、ボタン部71と、ボタン筒部72と、係合筒部73と、押圧部74と、を有する。ボタン部71は、平面視において円板状である。ボタン部71の上面は、初期位置では、キャップ頂壁32の上面と面一となっている。ボタン筒部72は、ボタン部71の外周縁から下方に延びている。押圧部74は、ボタン部71から下方に向けて延びる底面視十字状のリブであり、ボタン筒部72の径方向内側に位置している。押圧部74の下端は、作動部材50の弾性膜51に当接している。操作部材70が、作動部材50に対して下降すると、押圧部74によって押圧された弾性膜51が下方に弾性変形する。
【0038】
係合筒部73は、ボタン筒部72から下方に延びている。係合筒部73の外径はボタン筒部72の外径よりも大きい。係合筒部73の外周面には、上下方向に延びる凹部ないしスリットからなる係合部73aが形成されている。係合部73aは、上下方向における係合筒部73の全長にわたって形成されている。
【0039】
係合部73aの内側に、縦リブ33が位置することで、操作部材70と外キャップ30との容器軸O回りの相対回転が規制される。縦リブ33が、係合部73a、凹部48aに対して摺動することで、操作部材70および連動筒部材40は、外キャップ30に対して上下方向に相対移動することができる。なお、係合筒部73には、係合部73aと周方向で異なる位置に、規制突起47と上下方向で対向し、操作部材70が所定高さより連動筒部材40に対して上昇することを規制する図示しない被係止部が設けられている。
【0040】
具体的に、操作部材70の係合筒部73には、4つの貫通孔が設けられている。規制突起47が挿入される貫通孔(被係止部)は径方向に貫通し、その孔の下縁部が規制突起47と係合している。また、縦リブ33が挿入される貫通孔(係合部73a)は、径方向及び下方に貫通している。なお、縦リブ33が挿入される貫通孔(係合部73a)は、径方向内側に窪み、下方に延在する凹溝であってもよい。
【0041】
スポイト管4は、容器軸Oに沿って配置されている。スポイト管4の上端部4aは、作動部材50の内側に挿入されている。作動部材50の内側には、作動空間Sが形成されている。作動空間Sは、スポイト管4に装着された上摺動筒60、上摺動筒60より上方のスポイト管4の外周面、および連動筒部材40の摺動筒部43によって囲まれた空間と、当該空間に連通する弾性膜51の内側の空間とを含む。弾性膜51が下方に弾性変形すると、作動空間Sの容積が減少する。
【0042】
スポイト管4は、容器軸Oに沿って上下方向に延びる円筒状の管本体80を備えている。管本体80の外周面には、円板状のフランジ81が径方向外側に突設されている。フランジ81は、内キャップ20の環状板部23の上方に配置されている。フランジ81の外周縁には、上述した係合リブ24aが係合している。
【0043】
フランジ81と係合リブ24aとの係合代は、簡単にスポイト管4が上下方向にスライド移動しない程度の抵抗を持たせるように調整するとよい。スポイト管4は、フランジ81が環状板部23の上面から摺動筒部43の下端に当接するまでの上下方向の範囲内で、スライド移動可能とされている。
【0044】
スポイト管4には、連動筒部材40に摺接する上摺動筒60と、しごき筒部材10に摺接する下摺動筒90と、が設けられている。上摺動筒60は、フランジ81の上面に形成された支持台82に支持された状態で、管本体80に外嵌している。上摺動筒60は、径方向外側に延びて摺動筒部43の内周面に摺接する摺接部を有している。上摺動筒60の上方には、上述した作動空間Sが形成されている。
【0045】
下摺動筒90は、その上端がフランジ81の下面に当接した状態で、管本体80に外嵌している。下摺動筒90の下端は、管本体80の外周面に形成された突起部83に上下方向で係止している。下摺動筒90の下端の外周側には、突起部83より下方に延びると共に径方向外側に僅かに延びて、しごき筒部材10の当接部11より上方の内周面に摺接する摺動部を有している。
【0046】
下摺動筒90は、後述するようにスポイト管4が上昇し、フランジ81が環状板部23の上面から離間した際に、フランジ81より上側の空間(管本体80、上摺動筒60、連動筒部材40、および内キャップ20によって囲まれた空間)に、容器本体2内の内容物が入り込むのを抑制する。
【0047】
図3は、スポイト管4の下端4bが容器本体2内の底面2bに当接し、スポイト管4が上方に距離Dだけスライド移動した様子を示している。このように、スポイト管4は、容器本体2内の底面2bに当接可能な長さを有している。スポイト管4の下端部には、スポイト管4の管本体80よりも軟質の軟質部材84が設けられている。軟質部材84は、スポイト管4の下端4bを形成している。
【0048】
軟質部材84には、すり割り状の切欠部84aが設けられている。このため、スポイト管4の下端4bが容器本体2の底面2bに当接しても内容物を吸い込めるようになっている。なお、軟質部材84は、切欠部84aが変形しないように、例えば作動部材50よりも硬質な材料で形成することが好ましい。具体的に、軟質部材84は、管本体80より軟質の、例えば軟質ポリエチレンなどから形成するとよい。なお、軟質部材84は、管本体80より軟質であれば、軟質ポリエチレンに限定されない。
【0049】
次に、以上のように構成されたスポイト容器1の作用について説明する。
【0050】
スポイト容器1が未使用の状態(出荷時の状態)では、図3に示すように、スポイト管4の下端4bが容器本体2内の底面2bに当接し、スポイト管4が上方に距離Dだけスライド移動している。具体的に、スポイト管4は、容器本体2内の底面2bに当接可能な長さを有している。なお、図3においては、スポイト管4が上方にスライド移動する前(初期状態)の下端4bの位置を二点鎖線で示している。
【0051】
このため、容器本体2内に内容物を充填し、容器本体2にキャップ体3を装着する際には、スポイト管4の下端4bが容器本体2内の底面2bに必ず当接する。スポイト管4の下端4bが容器本体2内の底面2bに当接すると、その反力を受けて、スポイト管4が上方にスライド移動する。スポイト管4は、キャップ体3の締め込み完了まで上方に移動する。図1に示すフランジ81及び係合リブ24aは、スポイト管4の下端4bが容器本体2内の底面2bに当接している状態を保つ。
【0052】
スポイト容器1がキャッピングされた状態では、連動筒部材40が内キャップ20に対して下降端位置に位置している。この状態から、図4に示すように、外キャップ30を内キャップ20に対して容器軸O回りの緩み方向に回転させると、図2に示すように、所定の角度範囲内(本実施形態では約90°)においては、内キャップ20に対して外キャップ30が空転する。
【0053】
上記の角度範囲内では、外キャップ30と共に、連動筒部材40および操作部材70が内キャップ20に対して相対回転する。具体的には、図1に示すように、外キャップ30が内キャップ20に対して相対回転すると、縦リブ33及び凹部48aによって回転規制された連動筒部材40が内キャップ20に対して相対回転する。
【0054】
連動筒部材40が内キャップ20に対して相対回転すると、螺合筒部24の外側に螺合する連動筒部材40が上方にネジ送りされ、連動筒部材40が内キャップ20に対して上昇する。このとき、連動筒部材40に支持されている作動部材50が、操作部材70の押圧部74を押し上げることで、操作部材70も上昇する。その結果、操作部材70のボタン部71が外キャップ30から上方に突出する。
【0055】
また、連動筒部材40が上昇すると、上摺動筒60に対して摺動筒部43が上方に摺動し、作動空間Sの容積が増大するため、作動空間Sに連通するスポイト管4内が負圧となる。そうすると、スポイト管4の下端4bに形成された切欠部84aから容器本体2内の底面2b付近の内容物が吸い上げられる。スポイト管4内に吸い上げられる内容物の量は、上摺動筒60に対する摺動筒部43の上昇量によって定まる。したがって、スポイト容器1は、略定量の内容物をスポイト管4内に保持することができる。
【0056】
図4の状態から、外キャップ30を容器本体2に対して緩み方向にさらに回転させると、外キャップ30とともに内キャップ20が回転する。これは、図2に示すように、縦リブ33が係止凸部21aにおける周方向を向く側面に当接するためである。内キャップ20が容器本体2に対して緩み方向に回転することで、キャップ体3が容器本体2から上方に離脱する。このとき、スポイト管4の外周面に付着した内容物が、しごき筒部材10によってかき落とされる。
【0057】
キャップ体3を容器本体2から取り外した後、例えば外キャップ30を把持しながらボタン部71を押し込むと、押圧部74が弾性膜51を下方に押圧する。そうすると、押圧部74によって弾性膜51が下方に弾性変形し、作動空間Sの容積が小さくなる。その結果、スポイト管4内に保持されていた内容物が、スポイト管4の下端4bから吐出される。また、先述の通り、スポイト管4内には略定量の内容物が保持される。したがって使用者は、上記の操作によって、略定量の内容物を所望の箇所に塗布することができる。
【0058】
以上説明したように、本実施形態に係るスポイト容器1によれば、スポイト管4が容器本体2内の底面2bに当接可能な長さを有し、スポイト管4の下端4bが容器本体2内の底面2bに当接すると、容器本体2の口部2aに装着されたキャップ体3に対してスポイト管4が上方にスライド移動する。これにより、スポイト管4の下端4bが容器本体2の底面2bに当接した状態で、スポイト管4の下端4bから容器本体2内の底面2b付近の内容物を吸い上げることができる。また、容器本体2の成形バラツキ等があり、スポイト管4の下端4bが容器本体2の底面2bに強く当接するような寸法誤差があった場合でも、スポイト管4が容器本体2の底面2bとの当接により上方に逃げるため、スポイト管4の下端4bの損傷若しくは容器本体2の底面2bの圧痕の発生を抑制できる。特に容器本体2の底部が厚肉に形成された場合、更に容器本体2がガラスで形成されると、底部の上下方向における寸法誤差が大きくなる傾向にある。つまり、容器本体2がガラス瓶である場合は、樹脂製容器と比べて寸法誤差が大きくなる。このような場合であっても、本実施形態に係るスポイト容器1によれば、スポイト管4が上下方向に移動してこの寸法誤差を吸収するため、特に効果的である。
【0059】
このように、本実施形態に係るスポイト容器1は、内容物を収容する有底筒状の容器本体2と、容器本体2の口部2aに着脱可能に装着されたキャップ体3と、容器本体2内の底面2bに当接可能な長さを有し、キャップ体3に対して上下方向にスライド移動可能に設けられたスポイト管4と、スポイト管4内に連通する作動空間Sを形成すると共に、作動空間Sを減容可能な作動部材50と、を備える。この構成によれば、内容物の残量を低減できる。
【0060】
また、本実施形態では、スポイト管4の下端部に、スポイト管4の管本体80よりも軟質の軟質部材84が設けられている。この構成によれば、スポイト管4の下端4bが容器本体2の底面2bに当接しても、その衝撃が軟質部材84の変形により緩和されるため、スポイト管4の下端4bの損傷若しくは容器本体2の底面2bの圧痕の発生をより確実に抑制できる。
【0061】
また、本実施形態では、キャップ体3は、容器本体2の口部2aに装着された内キャップ20と、内キャップ20を覆い、内キャップ20に対して容器軸O回りに回転可能な外キャップ30と、作動部材50を支持するとともに、外キャップ30に対する容器軸O回りの回転が規制され、内キャップ20に対する容器軸O回りの回転に伴って上下動する連動筒部材40と、を備える。この構成によれば、外キャップ30を内キャップ20に対して容器軸O回りに回転させると、外キャップ30に回転規制された連動筒部材40が内キャップ20に対して回転する。連動筒部材40が内キャップ20に対して回転すると、連動筒部材40が内キャップ20に対して上下動する。連動筒部材40は作動部材50を支持しており、連動筒部材40が上昇した場合、スポイト管4内に連通する作動空間Sの容積が増大し、作動空間S内が負圧となる。そうすると、スポイト管4の下端4bから容器本体2内の底面2b付近の内容物が自動で吸い上げられる。その後、スポイト管4を容器本体2から引き上げ、作動部材50の弾性膜51を下方に押し込むと、作動空間Sの容積が小さくなり、スポイト管4内に保持されていた内容物がスポイト管4の下端4bから吐出される。
【0062】
また、本実施形態では、容器本体2は、口部2aの上端開口縁に固定されるとともに、スポイト管4の外周面に当接するしごき筒部材10を備え、スポイト管4に、連動筒部材40に摺接する上摺動筒60と、しごき筒部材10に摺接する下摺動筒90と、が設けられている。この構成によれば、スポイト管4がキャップ体3に対して上下方向にスライド移動した場合であっても、上摺動筒60が連動筒部材40に摺接し、下摺動筒90がしごき筒部材10に摺接しているため、作動空間Sの気密性を確保でき、キャップ体3を外すときに、スポイト管4に内容物を自動で吸い上げることができる。
【0063】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0064】
例えば、前記実施形態では、キャップ体3が、内キャップ20、外キャップ30、および連動筒部材40を備え、キャップ体3を外すときに、スポイト管4の下端4bから容器本体2内の内容物が自動で吸い上げられる構造について説明したが、キャップ体3は、単なる有頂筒状の単体キャップであっても構わない。この場合であっても、キャップ体3に対してスポイト管4が上下方向にスライド移動可能であれば、前記実施形態と同様の作用が得られる。
【0065】
また、例えば、前記実施形態では、スポイト管4の下端部に、スポイト管4の管本体80よりも軟質の軟質部材84が設けたが、スポイト管4の下端部や容器本体2の底面2b等が破損しないように構成されていれば、軟質部材84を設けなくても構わない。
【0066】
また、例えば、使用者が指などで作動部材50を直接下方に押し込む構成であってもよく、その場合は、操作部材70は設けなくともよい。
また、作動部材50の弾性部分(弾性膜51)が作動空間Sを形成したが、弾性部分が作動空間Sを形成しなくてもよい。例えば、作動部材50自体が作動空間Sを形成し、この作動部材50を操作することで、作動空間Sが減容可能となる構成であってもよい。
【0067】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…スポイト容器、2…容器本体、2a…口部、2b…底面、3…キャップ体、4…スポイト管、4a…上端部、4b…下端、10…筒部材、11…当接部、20…内キャップ、21…装着筒部、21a…係止凸部、22…規制筒部、23…環状板部、24…螺合筒部、24a…係合リブ、30…外キャップ、31…キャップ周壁、32…キャップ頂壁、32a…貫通孔、33…縦リブ、34…アンダーカット突起、40…連動筒部材、41…螺着筒部、42…頂壁、43…摺動筒部、44…内側リング、44a…凸部、45…外側リング、47…規制突起、48…回転規制部、48a…凹部、50…作動部材、51…弾性膜、52…固定部、60…上摺動筒、70…操作部材、71…ボタン部、72…ボタン筒部、73…係合筒部、73a…係合部、74…押圧部、80…管本体、81…フランジ、82…支持台、83…突起部、84…軟質部材、84a…切欠部、90…下摺動筒、D…距離、O…容器軸、S…作動空間
図1
図2
図3
図4