IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 横浜ゴム株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ゴム組成物及びタイヤ 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151211
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】ゴム組成物及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20231005BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20231005BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20231005BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20231005BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20231005BHJP
   C08C 19/20 20060101ALI20231005BHJP
   C08F 36/04 20060101ALI20231005BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C08L9/00
C08L7/00
C08L15/00
C08K3/36
C08K5/54
C08C19/20
C08F36/04
B60C1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060695
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100181179
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 洋一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197295
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 三千代
(72)【発明者】
【氏名】樋口 亮太
(72)【発明者】
【氏名】杉本 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】上西 和也
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
3D131AA03
3D131BA01
3D131BB01
3D131BC12
3D131BC18
3D131BC31
4J002AC01X
4J002AC03W
4J002AC08W
4J002AC11Y
4J002DJ016
4J002EX087
4J002FD016
4J002FD02Y
4J002GN01
4J100AS02P
4J100BA20H
4J100BA51H
4J100CA01
4J100CA31
4J100EA01
4J100FA03
4J100FA19
4J100HA61
4J100HC70
4J100HE14
4J100JA29
(57)【要約】
【課題】氷上性能、貯蔵安定性が優れるゴム組成物、及び、タイヤの提供。
【解決手段】天然ゴムを含むジエン系ゴムと、シリカと、特定官能基を主鎖に有し、重量平均分子量が1,000~100,000である、変性液状ジエン系重合体とを含有し、天然ゴムの含有量がジエン系ゴム100質量部中の20質量部以上であり、ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度が-50℃以下であり、シリカの含有量がジエン系ゴム100質量部に対して30~70質量部であり、変性液状ジエン系重合体の含有量がシリカの含有量の1~25質量%である、ゴム組成物、及び、これを用いるタイヤ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴムを含むジエン系ゴムと、
シリカと、
下記式(1)で表される官能基及び下記式(2)で表される官能基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基である特定官能基を主鎖に有し、重量平均分子量が1,000~100,000である、変性液状ジエン系重合体とを含有し、
前記天然ゴムの含有量が、前記ジエン系ゴム100質量部中の20質量部以上であり、
前記ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度が-50℃以下であり、
前記シリカの含有量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して、30~70質量部であり、
前記変性液状ジエン系重合体の含有量が、前記シリカの含有量の1~25質量%である、ゴム組成物。
【化1】
【化2】
式(1)及び式(2)中、
及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキレン基を表し、
は、カルボキシ基を表し、
及びXは、それぞれ独立に、水素原子又はカルボキシ基を表し、
*は、結合位置を表す。
ただし、X及びXの少なくとも一方はカルボキシ基である。
【請求項2】
前記変性液状ジエン系重合体が、1分子当たり、前記主鎖に有する前記特定官能基の平均の数が、1~6個である、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記変性液状ジエン系重合体の骨格が、ジエンの重合体、又は、芳香族ビニル-ジエン共重合体である、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記変性液状ジエン系重合体の骨格が、ブタジエン及びイソプレンからなる群より選択される少なくとも1種の重合体である、又は、
ブタジエン及びイソプレンからなる群より選択される少なくとも1種とスチレンとの共重合体である、請求項1~3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記シリカのCTAB比表面積が、100~300m2/gである、請求項1~4のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
更に、シランカップリング剤を含有し、
前記シランカップリング剤の含有量が、前記シリカの含有量の1~20質量%である、請求項1~5のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のゴム組成物を用いて形成されたタイヤ。
【請求項8】
前記ゴム組成物を用いて形成されたキャップトレッドを有する、請求項7に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤの転がり抵抗低減のため、タイヤに用いられるゴム組成物にはシリカが多用されている。シリカは粒子同士が凝集しやすいため、シリカをゴムへ分散させることは一般的に困難である。
一方、シリカ等のフィラーの分散性等を向上させるために、変性液状ジエン系ゴム等を含有するゴム組成物が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-172859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようななか、本発明者らは特許文献1を参考にして変性液状ジエン系ゴムを含有するゴム組成物を調製しこれを評価したところ、このようなゴム組成物は、氷上性能又は貯蔵安定性が悪い場合があることが明らかとなった。
【0005】
そこで、本発明は、氷上性能、貯蔵安定性が優れるゴム組成物、及び、タイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、ゴム組成物が特定の官能基を有する変性液状ジエン系重合体等を含有することによって、所望の効果が得られることを見出し、本発明に至った。
本発明は上記知見等に基づくものであり、具体的には以下の構成により上記課題を解決するものである。
【0007】
[1] 天然ゴムを含むジエン系ゴムと、
シリカと、
下記式(1)で表される官能基及び下記式(2)で表される官能基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基である特定官能基を主鎖に有し、重量平均分子量が1,000~100,000である、変性液状ジエン系重合体とを含有し、
上記天然ゴムの含有量が、上記ジエン系ゴム100質量部中の20質量部以上であり、
上記ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度が-50℃以下であり、
上記シリカの含有量が、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、30~70質量部であり、
上記変性液状ジエン系重合体の含有量が、上記シリカの含有量の1~25質量%である、ゴム組成物。
【0008】
【化1】
【0009】
【化2】
式(1)及び式(2)中、
及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキレン基を表し、
は、カルボキシ基を表し、
及びXは、それぞれ独立に、水素原子又はカルボキシ基を表し、
*は、結合位置を表す。
ただし、X及びXの少なくとも一方はカルボキシ基である。
[2] 上記変性液状ジエン系重合体が、1分子当たり、上記主鎖に有する上記特定官能基の平均の数(主鎖官能基数)が、1~6個である、[1]に記載のゴム組成物。
[3] 上記変性液状ジエン系重合体の骨格が、ジエンの重合体、又は、芳香族ビニル-ジエン共重合体である、[1]又は[2]に記載のゴム組成物。
[4] 上記変性液状ジエン系重合体の骨格が、ブタジエン及びイソプレンからなる群より選択される少なくとも1種の重合体である、又は、
ブタジエン及びイソプレンからなる群より選択される少なくとも1種とスチレンとの共重合体である、[1]~[3]のいずれかに記載のゴム組成物。
[5] 上記シリカのCTAB比表面積が、100~300m2/gである、[1]~[4]のいずれかに記載のゴム組成物。
[6] 更に、シランカップリング剤を含有し、
上記シランカップリング剤の含有量が、上記シリカの含有量の1~20質量%である、[1]~[5]のいずれかに記載のゴム組成物。
[7] [1]~[6]のいずれかに記載のゴム組成物を用いて形成されたタイヤ。
[8] 上記ゴム組成物を用いて形成されたキャップトレッドを有する、[7]に記載のタイヤ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、氷上性能、貯蔵安定性が優れるゴム組成物、及び、上記ゴム組成物を用いたタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のタイヤの実施態様の一例を表す部分断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明について以下詳細に説明する。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその成分に該当する物質をそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。成分が2種以上の物質を含む場合、成分の含有量は、2種以上の物質の合計の含有量を意味する。
本明細書において、氷上性能及び貯蔵安定性のうちの少なくとも1つがより優れることを、本発明の効果がより優れるということがある。
また、本明細書において、液状とは、20℃、1気圧において、液状であることを意味する。
【0013】
[ゴム組成物]
本発明のゴム組成物は、
天然ゴムを含むジエン系ゴムと、
シリカと、
後述する式(1)で表される官能基及び後述する式(2)で表される官能基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基である特定官能基を主鎖に有し、重量平均分子量が1,000~100,000である、変性液状ジエン系重合体とを含有し、
上記天然ゴムの含有量が、上記ジエン系ゴム100質量部中の20質量部以上であり、
上記ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度が-50℃以下であり、
上記シリカの含有量が、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、30~70質量部であり、
上記変性液状ジエン系重合体の含有量が、上記シリカの含有量の1~25質量%である、ゴム組成物である。
以下、本発明のゴム組成物に含有される各成分について詳述する。
本明細書において、上記の変性液状ジエン系重合体を「特定重合体」とも称する。
【0014】
[ジエン系ゴム]
本発明のゴム組成物は、天然ゴムを含むジエン系ゴムを含有する。なお、本発明において、ジエン系ゴムは特定重合体を含まない。ジエン系ゴムは固体(20℃、1気圧において、固体)であることが好ましい態様として挙げられる。また、ジエン系ゴムは、共役ジエン系ゴムであることが好ましい態様として挙げられる。
【0015】
[天然ゴム]
本発明のゴム組成物に含有される天然ゴムは特に制限されない。例えば、従来公知の天然ゴムが挙げられる。
【0016】
[天然ゴムの含有量]
本発明のゴム組成物において、天然ゴムの含有量はジエン系ゴム100質量部(ジエン系ゴム全量100質量部。以下同様)中の20質量部以上である。
天然ゴムの含有量は、本発明の効果がより優れるという観点から、ジエン系ゴム100質量部中の20~60質量部が好ましく、20~40質量部がより好ましい。
【0017】
(その他のゴム成分)
ジエン系ゴムは天然ゴム以外のジエン系ゴム(その他のジエン系ゴム)を更に含んでもよい。
その他のジエン系ゴムとしては、例えば、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)のような芳香族ビニル-共役ジエン系ゴム、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br-IIR、Cl-IIR)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられ、本発明の効果がより優れる理由から、SBR及び/又はBRが好ましく、SBR及びBRがより好ましい。
その他のジエン系ゴムは、本発明の効果がより優れる理由から、シリカと相互作用する官能基で変性されたものであってもよい。シリカと相互作用する官能基としては、例えば、ヒドロカルビルオキシシリル基、シラノール基、ヒドロキシル基(シラノール基を除く。)、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、エポキシ基、アミド其、チオール基、シロキサン結合、エーテル結合などが挙げられる。
【0018】
・その他のジエン系ゴムの含有量
天然ゴムを含むジエン系ゴムが更にその他のジエン系ゴムを含む場合、その他のジエン系ゴムの含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、ジエン系ゴム100質量部中の、0質量部超80質量部以下が好ましく、40~80質量部がより好ましく、60~80質量部が更に好ましい。
ジエン系ゴムが更に、その他のジエン系ゴムとしてSBR及びBRを含む場合、SBRの含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、ジエン系ゴム100質量部中の、0質量部超40質量部以下が好ましく、10~30質量部がより好ましい。
ジエン系ゴムが更に、その他のジエン系ゴムとしてSBR及びBRを含む場合、BRの含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、ジエン系ゴム100質量部中の、0質量部超70質量部が好ましく、10~60質量部がより好ましい。
【0019】
[ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度]
本発明のゴム組成物において、上記ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度(平均Tg)は-50℃以下である。
上記ジエン系ゴムの平均Tgは、本発明の効果がより優れる理由から、-100~-55℃が好ましく、-95~-60℃がより好ましい。
【0020】
ここで、ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度とは、ジエン系ゴムが1種類のゴム成分のみを含む場合には、1種類のゴム成分のガラス転移温度そのものを指し、ジエン系ゴムが2種類以上のゴム成分を含む場合には、各ゴム成分のガラス転移温度と、ジエン系ゴム中の各ゴム成分の含有割合(質量基準)と、を掛け合わせて得られる値を足し合わせたものである。各ゴム成分のガラス転移温度は、デュポン社製の示差熱分析計(DSC)を用い、ASTM D3418-82に従い、昇温速度10℃/minで測定した値である。
【0021】
[シリカ]
本発明のゴム組成物に含有されるシリカは、特に制限されず、従来公知の任意のシリカを用いることができる。上記シリカの具体例としては、湿式シリカ、乾式シリカ、ヒュームドシリカ、珪藻土などが挙げられる。
【0022】
(シリカのCTAB比表面積)
シリカのCTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロマイド)比表面積は、本発明の効果がより優れる理由から、100~300m2/gであることが好ましい。
CTAB吸着比表面積は、シリカ表面へのCTAB吸着量をJIS K6217-3:2001「第3部:比表面積の求め方-CTAB吸着法」にしたがって測定することができる。
【0023】
[シリカの含有量]
本発明のゴム組成物において、シリカの含有量は、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、30~70質量部である。
シリカの含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、40~60質量部であることが好ましい。
【0024】
[変性液状ジエン系重合体]
本発明のゴム組成物は、変性液状ジエン系重合体(特定重合体)を含有する。本発明において、特定重合体は、可塑剤、及び、シリカ分散剤として機能することができる。
本発明において、変性液状ジエン系重合体(特定重合体)は、下記式(1)で表される官能基及び下記式(2)で表される官能基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基である特定官能基を主鎖に有する。また、変性液状ジエン系重合体(特定重合体)の重量平均分子量は、1,000~100,000である。
【0025】
【化3】
【0026】
【化4】
式(1)及び式(2)中、
及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキレン基を表し、
は、カルボキシ基を表し、
及びXは、それぞれ独立に、水素原子又はカルボキシ基を表し、
*は、結合位置を表す。
ただし、X及びXの少なくとも一方はカルボキシ基である。
【0027】
(骨格)
特定重合体の骨格(主鎖構造)としては、例えば、ジエン重合体、又は、芳香族ビニル-ジエン共重合体が挙げられる。
上記骨格は、本発明の効果がより優れる理由から、ジエン重合体であることが好ましい。
ジエン重合体とは、ジエン(特に共役ジエン)の重合体である。ジエン重合体は、ジエン(特に共役ジエン)の単独重合体(ホモポリマー)であっても、ジエン(特に共役ジエン)の共重合体(コポリマー)であってもよいが、本発明の効果がより優れる理由から、ジエン(特に共役ジエン)の単独重合体であることが好ましい。
芳香族ビニル-ジエン共重合体とは、芳香族ビニルとジエン(特に共役ジエン)との共重合体である。
上記共重合体は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。
【0028】
上記ジエン重合体のジエンの具体例としては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。上記ジエンは、本発明の効果がより優れる理由から、ブタジエン又はイソプレンであることが好ましく、ブタジエンであることがより好ましい。
上記芳香族ビニル-ジエン共重合体の芳香族ビニルの具体例としては、スチレンが挙げられる。上記芳香族ビニル-ジエン共重合体のジエンの具体例及び好適な態様は上記ジエン重合体と同じである。
【0029】
特定重合体の骨格(主鎖構造)の具体例としては、ブタジエン重合体(BR)、イソプレン重合体(IR)、クロロプレン重合体(CR)、イソプレンブタジエン共重合体(IBR)、スチレンブタジエン共重合体(SBR)、イソプレンスチレン共重合体等が挙げられる。
【0030】
<好適な態様>
特定重合体の骨格(主鎖構造)は、本発明の効果がより優れる理由から、ブタジエン及びイソプレンからなる群より選択される少なくとも1種の重合体、又は、ブタジエン及びイソプレンからなる群より選択される少なくとも1種とスチレンとの共重合体であることが好ましく、ブタジエン及びイソプレンからなる群より選択される少なくとも1種の重合体であることがより好ましく、ブタジエンの重合体であることがさらに好ましい。
【0031】
〔特定官能基〕
特定重合体は、下記式(1)で表される官能基及び下記式(2)で表される官能基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基である特定官能基を主鎖に有する。
上記特定官能基は、本発明の効果がより優れる理由から、式(1)で表される官能基であることが好ましい。
【0032】
【化5】
【0033】
【化6】
【0034】
式(1)及び式(2)中、
及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキレン基を表し、
は、カルボキシ基を表し、
及びXは、それぞれ独立に、水素原子又はカルボキシ基を表し、
*は、結合位置を表す。
ただし、X及びXの少なくとも一方はカルボキシ基である。
【0035】
及びRは、本発明の効果がより優れる理由から、炭素数1~3のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~2のアルキレン基であることがより好ましい。
としては、具体的には例えば、炭素数1のアルキレン基が挙げられる。
【0036】
特定官能基が式(2)で表される官能基である場合、X及びXは、本発明の効果がより優れる理由から、両方ともカルボキシ基であることが好ましい。
【0037】
<主鎖官能基数>
特定重合体の主鎖官能基数は、本発明の効果がより優れる理由から、1~10(単位は個。単位を省略する。以下同様)であることが好ましく、1~6であることがより好ましく、3~6であることがさらに好ましい。
ここで、主鎖官能基数とは、1分子当たりの特定重合体(変性液状ジエン系重合体)が主鎖に有する特定官能基の数(1分子あたりの平均の数)を表す。
【0038】
特定重合体が式(1)で表される官能基を有する場合、主鎖官能基数は、本発明の効果がより優れる理由から、1~10であることが好ましく、1~6であることがより好ましく、3~6であることがさらに好ましい。
【0039】
特定重合体が1分子当たり平均で有する、特定官能基に由来するカルボキシ基の数は、本発明の効果がより優れる理由から、1~10であることが好ましく、1~6であることがより好ましく、3~6であることがさらに好ましい。
【0040】
<変性率>
特定重合体の変性率は、本発明の効果がより優れる理由から、1.0~10.0モル%であることが好ましく、2.0~5.0モル%であることがより好ましい。
ここで、変性率とは、特定重合体の重合度に対する、特定重合体が主鎖に有する特定官能基の数(1分子あたりの平均の数)の割合を表す。上記重合度は、特定重合体の重量平均分子量(Mw)と特定重合体を構成する繰り返し単位の分子量から算出するものとする。
【0041】
[分子量]
本発明のゴム組成物において、特定重合体の重量平均分子量(Mw)は、1,000~100,000である。
特定重合体の重量平均分子量(Mw)は、本発明の効果がより優れる理由から、5,000~50,000であることが好ましく、8,000~20,000であることがより好ましい。
特定重合体の数平均分子量(Mn)は、本発明の効果がより優れる理由から、1,000~100,000であることが好ましく、5,000~50,000であることがより好ましく、8,000~20,000であることがさらに好ましい。
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、以下の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により得られる標準ポリスチレン換算値とする。
・溶媒:テトラヒドロフラン
・検出器:RI検出器
【0042】
〔液状〕
特定重合体は、20℃、1気圧において、液状である。
【0043】
[変性液状ジエン系重合体の含有量]
本発明のゴム組成物において、特定重合体(変性液状ジエン系重合体)の含有量は、シリカの含有量の1~25質量%である。
特定重合体の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、シリカの含有量の10~25質量%であることが好ましく、15~20質量%であることが好ましい。
【0044】
本発明のゴム組成物が特定重合体以外の可塑剤を更に含有する場合、特定重合体及び特定重合体以外の可塑剤の合計含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、ジエン系ゴム100質量部に対して、1~60質量部であることが好ましい。
本発明のゴム組成物が特定重合体以外の可塑剤を更に含有する場合、特定重合体及び特定重合体以外の可塑剤の合計含有量中の、特定重合体の割合は、10~50質量%が好ましい。
【0045】
[特定重合体の製造方法]
特定重合体を製造する方法は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、
液状ジエン重合体、又は、液状芳香族ビニル-ジエン共重合体(液状ジエン系重合体)と、
ラジカル開始剤と、
後述する式(1A)で表される化合物及び後述する式(2A)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である特定化合物とを反応させることで、特定重合体を得る方法(以下、製造方法1」とも言う)が好ましい。
なお、本明細書において、液状ジエン重合体、及び、液状芳香族ビニル-ジエン共重合体をまとめて「液状ジエン系重合体」とも称するが、上記液状ジエン系重合体は特定重合体(変性液状ジエン系重合体)の原料を意味する。
上記製造方法1においては、ラジカル開始剤によって液状ジエン系重合体の二重結合のα炭素原子から水素原子が引き抜かれ、そこに特定化合物が反応して、液状ジエン系重合体の主鎖に上述した特定官能基が導入される。
上記製造方法1の反応は、本発明の効果がより優れる理由から、バルク又は有機溶媒中で行うのが好ましい。
【0046】
以下、製造方法1で使用される各成分について説明する。
【0047】
〔液状ジエン系重合体〕
液状ジエン系重合体は、液状のジエン系重合体を意味する。
液状ジエン系重合体におけるジエン系重合体、液状ジエン重合体におけるジエン重合体及び液状芳香族ビニル-ジエン共重合体における芳香族ビニル-ジエン共重合体の定義、具体例及び好適な態様は、上述した特定重合体の骨格と同じである。
また、液状ジエン系重合体は、20℃、1気圧において、液状である。
【0048】
〔ラジカル開始剤〕
上記ラジカル開始剤は特に限定されず、その具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルパーオキシヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルパーオキシ-3-ヘキシン、2,4-ジクロロ-ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシ-ジ-イソプロピルベンゼン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチル-シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタンなどの有機過酸化物、アゾジカーボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス-(2-アミジノプロパン)ジハイドロクロライド、ジメチル2,2’-アゾビス(イソブチレート)、アゾビス-シアン吉草酸、1,1’-アゾビス-(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、アゾビスメチルブチロニトリル、2,2’-アゾビス-(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)などのラジカル発生剤、等が挙げられる。
上記ラジカル開始剤は、本発明の効果がより優れる理由から、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)であることが好ましい。
【0049】
<添加量>
上記ラジカル開始剤の添加量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、上述した液状ジエン系重合体に対して、0.1~10質量%であることが好ましく、1~5質量%であることがより好ましい。
【0050】
〔特定化合物〕
上述のとおり、製造方法1では、式(1A)で表される化合物及び式(2A)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である特定化合物が使用されることが好ましく、式(1A)で表される化合物が使用されることがより好ましい。
【0051】
【化7】
【0052】
【化8】
【0053】
式(1A)及び式(2A)中、
及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキレン基を表し、
は、カルボキシ基を表し、
及びXは、それぞれ独立に、水素原子又はカルボキシ基を表す。
ただし、X及びXの少なくとも一方はカルボキシ基である。
【0054】
式(1A)及び式(2A)中の各記号の具体例及び好適な態様は、上述した式(1)及び式(2)と同じである。
【0055】
<具体例>
式(1A)で表される化合物の具体例としては、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸等が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、メルカプト酢酸が好ましい。
式(2A)で表される化合物の具体例としては、メルカプトこはく酸、2-メルカプトグルタル酸、2-メルカプトアジピン酸等が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、メルカプトコハク酸が好ましい。
【0056】
<添加量>
特定化合物の添加量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、上述した液状ジエン系重合体に対して、1~50質量%であることが好ましく、5~40質量%であることがより好ましく、15~30質量%であることがさらに好ましい。
【0057】
〔好適な態様〕
上記製造方法1は、本発明の効果がより優れる理由から、下記(1)~(2)の工程を備える方法(以下、「製造方法2」とも言う)であることが好ましい。
【0058】
(1)モノマー重合工程
有機リチウム化合物を用いてジエンを含有するモノマーを重合し、液状ジエン系重合体を得る工程
(2)主鎖変性工程
上記液状ジエン系重合体と、ラジカル開始剤と、上述した特定化合物とを反応させることで、特定重合体を得る工程
【0059】
以下、製造方法2の各工程について説明する。
【0060】
<モノマー重合工程>
モノマー重合工程は、有機リチウム化合物を用いてジエンを含有するモノマーを重合し、液状ジエン系重合体を得る工程である。
【0061】
(ジエンを含有するモノマー)
上記ジエンを含有するモノマーについて、ジエン(特に共役ジエン)の具体例及び好適な態様は、上述した特定重合体の骨格を構成し得るジエンと同じである。
また、上記モノマーについて、ジエン以外のモノマーとして芳香族ビニルを含有していてもよい。上記芳香族ビニルの具体例及び好適な態様は、上述した特定重合体の骨格を構成し得る芳香族ビニルと同じである。
【0062】
(有機リチウム化合物)
上記有機リチウム化合物は特に制限されないが、その具体例としては、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、n-プロピルリチウム、iso-プロピルリチウム、ベンジルリチウム等のモノ有機リチウム化合物;1,4-ジリチオブタン、1,5-ジリチオペンタン、1,6-ジリチオヘキサン、1,10-ジリチオデカン、1,1-ジリチオジフェニレン、ジリチオポリブタジエン、ジリチオポリイソプレン、1,4-ジリチオベンゼン、1,2-ジリチオ-1,2-ジフェニルエタン、1,4-ジリチオ-2-エチルシクロヘキサン、1,3,5-トリリチオベンゼン、1,3,5-トリリチオ-2,4,6-トリエチルベンゼン等の多官能性有機リチウム化合物が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウムのモノ有機リチウム化合物が好ましく、n-ブチルリチウムがより好ましい。
【0063】
有機リチウム化合物の使用量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、上記モノマーに対して、0.001~10モル%であることが好ましい。
【0064】
<主鎖変性工程>
主鎖変性工程は、上記液状ジエン系重合体と、ラジカル開始剤と、上述した特定化合物とを反応させることで、上記液状ジエン系重合体の主鎖に上述した特定官能基を導入し、特定重合体を得る工程である。
上記主鎖変性工程は、上述した製造方法1と同じである。
【0065】
(シランカップリング剤)
本発明のゴム組成物は、本発明の効果がより優れるという観点から、更に、シランカップリング剤を含有することが好ましい。
本発明のゴム組成物が更に含有することができるシランカップリング剤は、加水分解性基および有機官能基を有するシラン化合物であれば特に制限されない。シラン化合物において、加水分解性基はケイ素原子に結合することができる。
上記加水分解性基は特に制限されないが、例えば、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、アルコキシ基が好ましい。加水分解性基がアルコキシ基である場合、アルコキシ基の炭素数は、本発明の効果がより優れる理由から、1~16が好ましく、1~4がより好ましい。炭素数1~4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。
【0066】
上記有機官能基は特に制限されないが、有機化合物と化学結合を形成し得る基が好ましく、例えば、エポキシ基、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アミノ基、スルフィド基、メルカプト基、ブロックメルカプト基(保護メルカプト基)(例えば、オクタノイルチオ基)などが挙げられ、なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、スルフィド基(特に、ジスルフィド基、テトラスルフィド基)、メルカプト基、ブロックメルカプト基が好ましい。
【0067】
シランカップリング剤において、加水分解性基と有機官能基とは連結基を介して結合することができる。上記連結基は特に制限されない。
【0068】
シランカップリング剤の具体例としては、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイル-テトラスルフィド、トリメトキシシリルプロピル-メルカプトベンゾチアゾールテトラスルフィド、トリエトキシシリルプロピル-メタクリレート-モノスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイル-テトラスルフィド、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらのうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
(シランカップリング剤の含有量)
本発明のゴム組成物が更にシランカップリング剤を含有する場合、シランカップリング剤の含有量は、本発明の効果がより優れるという理由から、シリカの含有量の1~20質量%であることが好ましい。
【0070】
(任意成分)
本発明のゴム組成物は、必要に応じて、上述した成分以外の成分(任意成分)を含有することができる。
そのような成分としては、例えば、シリカ以外の充填剤(例えば、カーボンブラック)、テルペン樹脂(好ましくは、芳香族変性テルペン樹脂)、熱膨張性マイクロカプセル、発泡成分、酸化亜鉛(亜鉛華)、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、加工助剤、可塑剤(ただし特定重合体を除く)、熱硬化性樹脂、加硫剤(例えば、硫黄)、加硫促進剤などのゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤などが挙げられる。
【0071】
・可塑剤(ただし特定重合体を除く)
上記可塑剤(ただし特定重合体を除く)としては、例えば、プロセスオイル、アロマオイルが挙げられる。
【0072】
・カーボンブラック
本発明のゴム組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、カーボンブラックを含有するのが好ましい。
上記カーボンブラックは特に限定されず、例えば、SAF-HS、SAF、ISAF-HS、ISAF、ISAF-LS、IISAF-HS、HAF-HS、HAF、HAF-LS、FEF、GPF、SRF等の各種グレードのものを使用することができる。
上記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、50~200m/gが好ましく、70~150m/gがより好ましい。
ここで、窒素吸着比表面積(NSA)は、カーボンブラック表面への窒素吸着量をJIS K6217-2:2001「第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」にしたがって測定した値である。
【0073】
本発明のゴム組成物において、カーボンブラックの含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、ジエン系ゴム100質量部に対して、1~100質量部が好ましく、2~10質量部がより好ましい。
【0074】
(ゴム組成物の製造方法)
本発明のゴム組成物の製造方法は特に限定されず、その具体例としては、例えば、上述した各成分を、公知の方法、装置(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど)を用いて混合する方法などが挙げられる。本発明のゴム組成物が硫黄又は加硫促進剤を含有する場合は、硫黄及び加硫促進剤以外の成分を先に高温(好ましくは100~160℃)で混合し、冷却してから、硫黄又は加硫促進剤を加えて更に混合することが好ましい。
本発明のゴム組成物は従来公知の加硫又は架橋条件で加硫又は架橋することができる。
【0075】
本発明のゴム組成物の用途としては、例えば、スタッドレスタイヤのようなタイヤが挙げられる。
また、本発明のゴム組成物をタイヤに適用する場合、タイヤが有する構成部材のいずれを本発明のゴム組成物で形成するかは特に制限されないが、例えば、タイヤのトレッド部に本発明のゴム組成物を適用することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0076】
[タイヤ]
本発明のタイヤは、本発明のゴム組成物を用いて形成されたタイヤである。
本発明のタイヤは、空気入りタイヤであることが好ましく、空気、窒素等の不活性ガス及びその他の気体を充填することができる。なかでも、本発明のゴム組成物をタイヤトレッド(キャップトレッド)に用いた(配置した)空気入りタイヤであることが好ましい。
本発明のタイヤは、スタッドレスタイヤであることが好ましい。
【0077】
図1に、本発明のタイヤの実施態様の一例を表すタイヤの部分断面概略図を示す。ただし、本発明のタイヤは図1に示す態様に限定されるものではない。
【0078】
図1において、符号1はビード部を表し、符号2はサイドウォール部を表し、符号3はタイヤトレッド部を表す。
また、左右一対のビード部1間においては、繊維コードが埋設されたカーカス層4が装架されており、カーカス層4の端部はビードコア5およびビードフィラー6の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。
タイヤトレッド部3においては、カーカス層4の外側に、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。
ビード部1においては、リムに接する部分にリムクッション8が配置されている。
タイヤトレッド部3は上述した本発明のゴム組成物により形成されていることが好ましい。
【0079】
本発明のタイヤは、例えば、従来公知の方法に従って製造することができる。また、タイヤに充填し得る気体としては、通常のまたは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いることができる。
【実施例0080】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。
【0081】
〔変性液状ジエン系重合体の製造〕
以下のとおり、変性液状ジエン系重合体を製造した。
なお、製造例1~5の変性液状ジエン系重合体は、特定官能基を主鎖に有する液状ジエン系重合体であるため、本発明における特定重合体に該当する。
【0082】
<製造例1>
下記のとおり、変性液状ジエン系重合体1を製造した。
【0083】
(モノマー重合工程)
シクロヘキサン4.2kgに1,3-ブタジエン1200mL、n-ブチルリチウム30mL、2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン0.1mLを添加し加熱攪拌(60℃、24時間)して、1,3-ブタジエンを重合した。その後、メタノール40mLを添加し攪拌(室温、2.0時間)して重合を停止した。次いで、重合溶液を多量のメタノールに添加し精製を行い、50℃で24時間真空乾燥を行うことで、Mw10,000の液状ブタジエン重合体を得た。
【0084】
(主鎖変性工程)
MEK(メチルエチルケトン)200mLに得られた液状ブタジエン重合体200g、メルカプト酢酸(上述した式(1A)で表される化合物に該当)24g、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)2.5gを添加し加熱攪拌(80℃、24時間)した。
反応溶液を多量のメタノールに添加し精製を行い、50℃で24時間真空乾燥を行うことで、上述した式(1)で表される官能基(ただし、式(1)中、Rはメチレン基である)を主鎖に有する液状ブタジエン重合体である変性液状ブタジエン重合体(Mw:10,000)を得た。得られた変性液状ブタジエン重合体において、主鎖に有する上記官能基の数(1分子あたりの平均の数)は3であった。得られた変性液状ブタジエン重合体を変性液状ブタジエン重合体1と称する。
【0085】
<製造例2>変性液状ジエン系重合体2
主鎖変性工程でメルカプト酢酸の代わりにメルカプトこはく酸(上述した式(2A)で表される化合物に該当)47gを使用した点以外は、製造例1と同様の手順に従って変性液状ブタジエン重合体を得た。得られた変性液状ブタジエン重合体は、上述した式(2)で表される官能基(ただし、式(2)中、Rはメチレン基であり、X及びXは両方ともカルボキシ基である)を主鎖に有する液状ブタジエン重合体である変性液状ブタジエン重合体(Mw:10,000)であった。得られた変性液状ブタジエン重合体において、主鎖に有する上記官能基の数(1分子あたりの平均の数)は3であった。得られた変性液状ブタジエン重合体を変性液状ブタジエン重合体2と称する。
【0086】
<製造例3>変性液状ジエン系重合体3
主鎖変性工程で使用されたメルカプト酢酸の量を48gに変更した点以外は、製造例1と同様の手順に従って、変性液状ブタジエン重合体を得た。得られた変性液状ブタジエン重合体は、上述した式(1)で表される官能基(ただし、式(1)中、Rはメチレン基である)を主鎖に有する液状ブタジエン重合体である変性液状ブタジエン重合体(Mw:10,000)を得た。得られた変性液状ブタジエン重合体において、主鎖に有する上記官能基の数(1分子あたりの平均の数)は6であった。得られた変性液状ブタジエン重合体を変性液状ブタジエン重合体3と称する。
【0087】
<製造例4>変性液状ジエン系重合体4
主鎖変性工程で使用されたメルカプト酢酸の量を79gに変更した点以外は、製造例1と同様の手順に従って、変性液状ブタジエン重合体を得た。得られた変性液状ブタジエン重合体は、上述した式(1)で表される官能基(ただし、式(1)中、Rはメチレン基である)を主鎖に有する液状ブタジエン重合体である変性液状ブタジエン重合体(Mw:10,000)を得た。得られた変性液状ブタジエン重合体において、主鎖に有する上記官能基の数(1分子あたりの平均の数)は10であった。得られた変性液状ブタジエン重合体を変性液状ブタジエン重合体4と称する。
【0088】
<製造例5>変性液状ジエン系重合体5
主鎖変性工程でメルカプト酢酸の代わりにメルカプトこはく酸(上述した式(2A)で表される化合物に該当)78gを使用した点以外は、製造例1と同様の手順に従って変性液状ブタジエン重合体を得た。得られた変性液状ブタジエン重合体は、上述した式(2)で表される官能基(ただし、式(2)中、Rはメチレン基であり、X及びXは両方ともカルボキシ基である)を主鎖に有する液状ブタジエン重合体である変性液状ブタジエン重合体(Mw:10,000)であった。得られた変性液状ブタジエン重合体において、主鎖に有する上記官能基の数(1分子あたりの平均の数)は5であった。得られた変性液状ブタジエン重合体を変性液状ブタジエン重合体5と称する。
【0089】
[ゴム組成物の製造]
下記第1表の各成分を同表に示す組成(質量部)で用いて、まず、硫黄及び加硫促進剤を除く成分を1.7Lのバンバリーミキサーで5分間混練し、145℃に達したとき放出しマスターバッチとした。得られたマスターバッチに、硫黄及び加硫促進剤を加えて70℃のオープンロールで混練し、各ゴム組成物を製造した。
【0090】
[評価]
上記のとおり製造された各ゴム組成物を用いて以下の評価を行った。結果を第1表に示す。
<氷上性能>
・評価方法
上記のとおり製造された各ゴム組成物をトレッド部に用いて、加硫成型し、空気入りタイヤ(タイヤサイズ:215/60R16)を製造した。上記空気入りタイヤを、16×7Jのリムに組み付け、空気圧(220[kPa])を充填し、試験車両(国産2リットルセダンFF車)に装着した。続いて、氷盤路であるテストコースにて上記試験車両により初速40[km/h]から急制動して、完全停止するまでの制動距離を測定した。
上記のとおり測定された制動距離の結果を、標準例1の逆数を100とする指数で示した。
・評価基準
本発明において、上記指数が100を超えた場合、氷上性能が優れると評価した。上記指数が100よりも大きいほど、氷上性能がより優れる。
一方、上記指数が100以下であった場合、氷上性能が悪いと評価した。
【0091】
<貯蔵安定性>
・評価方法
上記のとおり製造された各ゴム組成物を所定の金型中で160℃、20分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を得た。次に、JIS K6253-2:2012の方法に則り、25℃の条件下において、上記各加硫ゴム試験片の硬度を測定した(1回目)。測定後室温(25℃)の条件下で1ヶ月加硫ゴム試験片を保管した後、もう一度加硫ゴム試験片の硬度を上記と同様の方法で測定し(2回目)、1回目に測定した硬度の値を2回目に測定した値で除した比率(=1回目の硬度÷2回目の硬度)を算出した。
結果は、標準例の測定値(比率)を各実施例の測定値(比率)で除して100を掛けた指数(=標準例の測定値÷各実施例の測定値×100)で表した。
【0092】
・評価基準
本発明において、上記指数が100を超えた場合、貯蔵安定性が優れると評価した。上記指数が100よりも大きいほど、貯蔵安定性がより優れる。上記のような優れた貯蔵安定性は、加硫ゴムにおける、経時的なシリカの再凝集が抑制されたためであると考えられる。
一方、上記指数が100以下であった場合、貯蔵安定性が悪いと評価した。
【0093】
【表1】
【0094】
第1表に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
(ジエン系ゴム)
・ジエン系ゴム1(天然ゴム):STR20。Tg-73℃
・ジエン系ゴム2(芳香族ビニル-共役ジエン系ゴム):スチレンブタジエンゴム。日本ゼオン社製Nipol 1502。Tg-54℃
・ジエン系ゴム3(ブタジエンゴム):日本ゼオン社製Nipol 1220。Tg-105℃
【0095】
(特定重合体)
・変性液状ジエン系重合体1~5:上記のとおり製造された変性液状ジエン系重合体1~5
【0096】
・比較変性液状ジエン系重合体1:クラレ社製LIR-410。カルボキシル基を有する官能基を有する液状イソプレンゴム。特定官能基を有さない。カルボキシル基を有する官能基の数は、1分子の比較変性液状ジエン系重合体1当たり、10個
・比較変性液状ジエン系重合体2:クラレ社製LIR-403。カルボキシル基を有する官能基を有する液状イソプレンゴム。特定官能基を有さない。カルボキシル基を有する官能基の数は、1分子の比較変性液状ジエン系重合体2当たり、3個
【0097】
・シリカ1:Solvay社製Zeosil 1165MP。CTAB159m2/g
・シリカ2:Solvay社製Zeosil 115GR。CTAB103m2/g
【0098】
・カーボンブラック:東海カーボン社製 シースト KH
【0099】
・シランカップリング剤:Evonik社製 Si69
【0100】
・プロセスオイル:昭和シェル石油社製 エキストラクト4号S
・老化防止剤:Korea Kumho Petrochemical社製、6PPD
・酸化亜鉛:正同化学工業社製 酸化亜鉛3種
・ステアリン酸:日油社製 ビーズステアリン酸
【0101】
・加硫促進剤(DPG):住友化学社製 ソクシノールD-G
・加硫促進剤(CZ):大内新興化学工業株式会社製 ノクセラーCZ-G
・硫黄:鶴見化学工業性 金華印油入微粉硫黄
【0102】
第1表に示す結果から、特定重合体の含有量が所定よりも少ない比較例1は、氷上性能が悪かった。
特定重合体の含有量が所定よりも多い比較例2は、氷上性能が悪かった。
シリカの含有量が所定よりも少ない比較例3は、氷上性能が悪かった。
シリカの含有量が所定よりも多い比較例4は、氷上性能及び貯蔵安定性が悪かった。
特定重合体を含有せず、代わりに特定官能基以外の官能基を有する比較変性液状ジエン系重合体1を含有する比較例5は、氷上性能及び貯蔵安定性が悪かった。
特定重合体を含有せず、代わりに特定官能基以外の官能基を有する比較変性液状ジエン系重合体2を含有する比較例6は、氷上性能及び貯蔵安定性が悪かった。
【0103】
これに対して、本発明のゴム組成物は、氷上性能及び貯蔵安定性が優れた。
また、本発明のタイヤは氷上性能が優れた。本発明のゴム組成物は上記のとおり貯蔵安定性が優れたので、本発明のタイヤは上記の優れた氷上性能を経時的に維持することができ、また、耐久性に優れると考えられる。
【符号の説明】
【0104】
1 ビード部
2 サイドウォール部
3 タイヤトレッド部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
図1