(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151216
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】シーラントフィルム、積層体、包装袋及び包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20231005BHJP
B65D 81/26 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B65D81/26 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060707
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】工藤 瑠里
【テーマコード(参考)】
3E067
3E086
【Fターム(参考)】
3E067BA12A
3E067BB11A
3E067BB14A
3E067BB25A
3E067CA04
3E067CA09
3E067EA09
3E067EB07
3E067EB17
3E067EE33
3E067FA01
3E067FC01
3E086AC05
3E086AC07
3E086AC15
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA15
3E086BA35
3E086BB01
3E086DA08
(57)【要約】
【課題】位置による吸湿能力のばらつきが十分に低減されたシーラントフィルム及びこれを備える積層体を提供すること。
【解決手段】樹脂成分と粒状の吸湿剤を含有する吸湿層11と、ヒートシール層12と、を備え、吸湿層11の厚みが10μm以上であり、長さ1mmあたりの吸湿層11の厚みの変化幅Vが0.05μm以下である、シーラントフィルム10を提供する。シーラントフィルム10と、シーラントフィルム10の吸湿層11側にガスバリア層16と、を備える、積層体40を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成分と粒状の吸湿剤とを含有する吸湿層と、ヒートシール層と、を備え、
前記吸湿層の厚みが10μm以上であり、
長さ1mmあたりの前記吸湿層の厚みの変化幅Vが0.05μm以下である、シーラントフィルム。
【請求項2】
前記ヒートシール層と前記吸湿層との合計厚みに対する前記吸湿層の厚み比率Rの最小値が30%以上であり、当該厚み比率Rの最大値が80%以下である、請求項1に記載のシーラントフィルム。
【請求項3】
前記吸湿層における前記吸湿剤の含有量が30~60質量%である、請求項1又は2に記載のシーラントフィルム。
【請求項4】
前記吸湿剤の平均粒子径が3μm以下であり、前記吸湿層の表面において0.06m2の領域に含まれる、粒子径が4μmを超える粗大粒子の数が1個以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のシーラントフィルム。
【請求項5】
吸湿能力の平均値が2g/m2以上であり、前記吸湿能力の標準偏差が0.8g/m2以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のシーラントフィルム。
【請求項6】
前記吸湿層のメルトフローレートの値が、前記ヒートシール層のメルトフローレートの値よりも小さい、請求項1~5のいずれか一項に記載のシーラントフィルム。
【請求項7】
前記吸湿層及び前記ヒートシール層の厚さ方向に直交し、且つ互いに直交する第1方向及び第2方向の少なくとも一方に沿う長さが300mm以上であり、
前記第1方向及び前記第2方向に沿って測定される前記吸湿層の厚みの最大値に対する前記吸湿層の厚みの最小値の比が0.6以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載のシーラントフィルム。
【請求項8】
前記吸湿層に含まれる前記樹脂成分が低密度ポリエチレンを含有し、
前記ヒートシール層が低密度ポリエチレンを含有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のシーラントフィルム。
【請求項9】
前記粒状の吸湿剤は酸化カルシウムである、請求項1~8のいずれか一項に記載のシーラントフィルム。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のシーラントフィルムと、当該シーラントフィルムの前記吸湿層側にガスバリア層と、を備える、積層体。
【請求項11】
請求項10に記載の積層体を備える包装袋。
【請求項12】
請求項11に記載の包装袋と、前記包装袋に収容される被包装物と、を備える、包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シーラントフィルム、積層体、包装袋及び包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
吸湿する製品を包装する包装材としては、大気中の水分から内容物である製品を保護するため、シリカゲル、ゼオライト、吸水ポリマー、ハロゲン化金属塩、及び金属硫酸塩等の吸湿剤を含むフィルムが検討されている。例えば、特許文献1では、非晶質シリカと水溶性樹脂と吸湿剤を含み、多孔構造を有する吸湿層と、シリカ蒸着フィルム又はアルミナ蒸着フィルム等の防湿層とを含む積層構造を有する吸湿材料を用いて、収容部を有する袋状の包装体を形成することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸湿能力に優れる積層体は、水分に敏感な内容物を収容する包装材に有用であると考えられる。ところが、このような積層体は、位置によってその吸湿能力がばらつく現象が生じる。積層体には、樹脂成分と吸湿剤を含む樹脂組成物を成形して得られる吸湿層を有するシーラントフィルムが用いられている。このようなシーラントフィルムを成形する際、樹脂成分と粒状の吸湿剤を含有する吸湿層は、製膜の際に粒状の吸湿剤と溶融状態にある樹脂成分と混合流体になる。このような混合流体は、吸湿剤を含有しない樹脂成分と流動性が大きく異なる。このため、粒状の吸湿剤の含有量が互いに異なる流体を共押出してシーラントフィルムを成形すると、シーラントフィルムの幅方向において、それぞれの流体から形成される各層の厚みが大きく変動する現象が生じる。これが位置による吸湿能力のばらつき発生の要因となっている。
【0005】
そこで、位置による吸湿能力のばらつきが十分に低減されたシーラントフィルム及びこれを備える積層体を提供する。また、このような積層体を備える包装袋、及びこのような包装袋を備える包装体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面は、樹脂成分と粒状の吸湿剤とを含有する吸湿層と、ヒートシール層と、を備え、吸湿層の厚みが10μm以上であり、長さ1mmあたりの吸湿層の厚みの変化幅Vが0.05μm以下である、シーラントフィルムを提供する。
【0007】
上記シーラントフィルムは、10μm以上の吸湿層の厚みを有しつつ、長さ1mmあたりの吸湿層の厚みの変化幅Vが0.05μm以下である。このようなシーラントフィルムは、位置による吸湿能力のばらつきを十分に低くすることができる。したがって、水分に敏感な内容物を収容する包装材に有用である。
【0008】
上記シーラントフィルムにおいて、ヒートシール層と吸湿層との合計厚みに対する吸湿層の厚み比率Rの最小値が30%以上であり、当該厚み比率Rの最大値が80%以下であってよい。これによって、位置による吸湿能力のばらつきを一層低減しつつ、吸湿能力とシール性とを高い水準で両立することができる。
【0009】
上記シーラントフィルムにおいて、上記吸湿剤の含有量が30~60質量%であってよい。このような吸湿層を備えるシーラントフィルムは、十分に高い吸湿能力を有しつつ、位置による吸湿層の厚みのばらつきを十分に低減することができる。
【0010】
上記吸湿剤の平均粒子径は3μm以下であり、吸湿層の表面において0.06m2の領域に含まれる、粒子径が4μmを超える粗大粒子の数が1個以下であってよい。このような吸湿層における吸湿剤は高い均一性で吸湿層中に分散する。したがって、このような吸湿層を備えるシーラントフィルムは、十分に高い吸湿能力を有する。
【0011】
シーラントフィルムの吸湿能力の平均値は2g/m2以上であり、吸湿能力の標準偏差は0.8g/m2以下であってよい。このようなシーラントフィルムは、十分に高い吸湿能力を有している。したがって、水分に敏感な内容物を収容する包装材に特に有用である。
【0012】
上記シーラントフィルムにおいて、吸湿層のメルトフローレートの値が、ヒートシール層のメルトフローレートの値よりも小さくてよい。これによって、吸湿層及びヒートシール層の厚みのばらつきを十分に小さくすることができる。
【0013】
上記シーラントフィルムは、吸湿層及びヒートシール層の厚さ方向に直交し、且つ互いに直交する第1方向及び第2方向の少なくとも一方に沿う長さが300mm以上であり、第1方向及び第2方向に沿って測定される吸湿層の厚みの最大値に対する吸湿層の厚みの最小値の比が0.6以上であってよい。これによって、位置による吸湿能力のばらつきを一層低減することができる。
【0014】
上記シーラントフィルムにおいて、吸湿層に含まれる樹脂成分が低密度ポリエチレンを含有し、ヒートシール層が低密度ポリエチレンを含有してもよい。このようなシーラントフィルムは、製膜し易いうえにシール性にも優れる。
【0015】
上記シーラントフィルムにおいて、粒状の吸湿剤は酸化カルシウムであってよい。これによって、比較的低コストでシーラントフィルムの吸湿能力を十分に高くするができる。
【0016】
本開示の一側面は、上述のいずれかのシーラントフィルムと、当該シーラントフィルムの吸湿層側にガスバリア層と、を備える、積層体を提供する。この積層体は、上述のいずれかのシーラントフィルムを備えることから、位置による吸湿能力のばらつきを十分に低減することができる。したがって、水分に敏感な内容物を収容する包装材に有用である。
【0017】
本開示の一側面は、上述の積層体を備える包装袋を提供する。この包装袋は、上述の積層体を備える。したがって、位置による吸湿能力のばらつきを十分に低減することができる。よって、水分に敏感な内容物を収容する包装袋として有用である。
【0018】
本開示の一側面は、上述の包装袋と、この包装袋に収容される被包装物と、を備える、包装体を提供する。この包装体は、位置による吸湿能力のばらつきが十分に低減された包装袋を備える。よって、水分に敏感な内容物を長期間に亘って安定的に収容することができる。
【発明の効果】
【0019】
位置による吸湿能力のばらつきが十分に低減されたシーラントフィルム及びこれを備える積層体を提供することができる。また、このような積層体を備える包装袋、及びこのような包装袋を備える包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】(A)は積層体の平面図であり、(B)は(A)の積層体のB-B線断面図である。
【
図2】(A)はシーラントフィルムの断面図であり、(B)は積層体の断面図である。
【
図4】実施例1~7で用いたシーラントフィルムの平面図である。
【
図5】実施例1のシーラントフィルムにおける吸湿層とヒートシール層の厚み比率と、吸湿能力のばらつきを示す図である。
【
図6】実施例8~13で用いたシーラントフィルムの平面図である。
【
図7】実施例9のシーラントフィルムにおける吸湿層とヒートシール層の厚み比率と、吸湿能力のばらつきを示す図である。
【
図8】実施例12のシーラントフィルムにおける吸湿層とヒートシール層の厚み比率と、吸湿能力のばらつきを示す図である。
【
図9】比較例1のシーラントフィルムにおける吸湿層とヒートシール層の厚み比率と、吸湿能力のばらつきを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、場合により図面を参照して、本開示の実施形態を説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す符号の向きを基準としたときの位置関係である。さらに、各要素の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0022】
図1(A)は積層体40の一方面を示しており、
図1(B)は積層体40の厚さ方向z(積層方向)に沿う断面を示している。積層体40は、ヒートシール層12及び吸湿層11を有するシーラントフィルム10と、中間層14と、ガスバリア層16と、この順に備える。
【0023】
シーラントフィルム10の厚み(吸湿層11とヒートシール層12の合計厚み)は、例えば、30μm以上であってよく、40μm以上であってよく、45μm以上であってよい。これによって、吸湿能力とシール性能とを十分に高い水準で両立することができる。シーラントフィルム10の厚みは、120μm以下であってよく、90μm以下であってよく、80μm以下であってもよい。これによって、位置による吸湿能力のばらつきを十分に低減することができる。シーラントフィルム10の厚みは、例えば、30~120μmであってよい。
【0024】
吸湿層11の厚み(厚みの最小値)は、10μm以上である。吸湿層11の厚み(厚みの最小値)は、15μm以上であってよく、18μm以上であってもよい。これによって、シーラントフィルム10の吸湿能力を十分に高くすることができる。吸湿層11の厚み(厚みの最大値)は、70μm以下であってよく、60μm以下であってよく、50μm以下であってもよい。これによって、吸湿層11の厚みのばらつきを十分に小さくすることができる。吸湿層11の厚みは、例えば10~70μmであってよい。
【0025】
ヒートシール層12の厚み(厚みの最小値)は、10μm以上であってよく、15μm以上であってよく、18μm以上であってもよい。これによって、ヒートシール性を十分に高くすることができる。ヒートシール層12の厚み(厚みの最大値)は、70μm以下であってよく、60μm以下であってよく、50μm以下であってもよい。これによって、ヒートシール層12の厚みのばらつきを十分に小さくすることができる。ヒートシール層12の厚みは、例えば、10~70μmであってよい。
【0026】
積層体40、ヒートシール層12及び各層の厚みは、断面又は側面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して測定することができる。吸湿層11の厚みの最大値に対する、吸湿層11の厚みの最小値の比は0.6以上であってよく、0.7以上であってよく、0.8以上であってもよい。この比を十分に大きくすること(1に近づけること)によって、シーラントフィルム10の位置による吸湿能力のばらつきを十分に低減することができる。製造の容易性の観点から、吸湿層11の厚みの最大値に対する、吸湿層11の厚みの最小値の比は0.99以下であってよい。
【0027】
吸湿層11及びヒートシール層12の厚み、並びにシーラントフィルム10(積層体40)の厚みは、積層体40の厚さ方向zに直交する少なくとも一つの方向(x方向又はy方向)に沿って、それぞれ変動していてもよい。吸湿層11及びヒートシール層12の厚みの変化幅は、シーラントフィルム10が押出成形で製造される場合、シーラントフィルム10の厚さ方向zと押出方向に直交する方向に沿って、大きくなる傾向にある。例えば、y方向が押出方向である場合、x方向に沿って、位置による吸湿層11及びヒートシール層12の厚みの変化幅が大きくなる。
【0028】
シーラントフィルム10(積層体40)の位置による吸湿能力の局所的なばらつきを低減する観点から、シーラントフィルム10(積層体40)の長さ1mmあたりの吸湿層11の厚みの変化幅Vは、0.05μm以下である。ここでいう「シーラントフィルム10(積層体40)の長さ」とは、厚さ方向zに直交する平面、すなわち、x-y平面におけるあらゆる方向(x軸方向及びy軸方向を含む)における直線長さを意味する。
【0029】
「長さ1mmあたりの吸湿層11の厚みの変化幅V」は、吸湿層をx-y平面における第1方向(例えばx軸方向又はy軸方向)に沿って吸湿層11の厚みを測定したとき、最大値(最大厚み)と最小値(最小厚み)の差Δを、最大値と最小値が検知されたx-y平面における線分の長さ(=間隔A)で割って求められる。すなわち、差Δ/間隔Aの割り算で求められる。このようにして求められる、長さ1mmあたりの吸湿層11の厚みの変化幅Vが小さいと、吸湿層11の厚みの均一性が向上する。なお、最大厚み又は最小厚みが複数箇所で検知された場合は、最も小さい間隔を間隔Aとする。また、x-y平面における方向によって差Δ及び間隔Aが異なる場合、差Δ/間隔Aの値が最も大きくなる方向において、0.05μm以下である必要がある。
【0030】
押出成形されたときのフィルム幅方向に沿ってシーラントフィルム10の吸湿層11の厚みのばらつきを見たときに、吸湿層11は幅方向の端部より中央部の厚みが薄くなり易い。ここで、「長さ1mmあたりの吸湿層11の厚みの変化幅V」という指標を採用し、これに上限値を設けることによって、例えば、幅方向の端部より中央部の厚みが大きくなり過ぎたり、小さくなり過ぎたりすることを抑制することができる。
【0031】
第1方向(例えばx軸方向又はy軸方向)に沿って吸湿層11の厚みを測定する位置(測定間隔)は、例えば、シーラントフィルム10(積層体40)のサイズに応じて適宜変更してもよい。過剰にこの測定間隔が大きくなると、変化幅Vが小さく算定されてしまう場合があることから、測定間隔は、例えば50~200mmであってよい。ただし、シーラントフィルム10の幅(長さ)が50mm未満である場合は、測定間隔を適宜調整してよい。
【0032】
長さ1mmあたりの吸湿層11の厚みの変化幅Vは、位置による吸湿能力のばらつきを十分に低減する観点から、0.04μm以下であってよく、0.03μm以下であってもよい。長さ1mmあたりの吸湿層11の厚みの変化幅Vは、シーラントフィルム10及び積層体40を円滑に製造することを可能にする観点から、0.001μm以上であってよく、0.003μm以上であってもよい。長さ1mmあたりの吸湿層11の厚みの変化幅Vは、例えば、0.001~0.05μmであってよい。
【0033】
上述の変化幅Vは、x-y平面における特定の方向のみならず、x-y平面における全ての方向(x軸方向及びy軸方向を含む)において上述の数値範囲内である。これによって、位置による吸湿能力のばらつきを十分に低減することができる。吸湿層11の最大厚みと最小厚みが検知された位置の間隔Aは、x-y平面における線分の長さとして測定される。この間隔Aは、例えば50~400mmであってよく、100~300mmであってよい。
【0034】
シーラントフィルム10(積層体40)のサイズに特に制限はない。吸湿層11とヒートシール層12の厚さ方向zに直交し、互いに直交する第1方向及び第2方向の少なくとも一方(例えば、x方向又はy方向)に沿う長さが300mm以上であってよく、500mm以上であってよく、800mm以上であってもよい。当該長さは、3000mm以下であってよく、2000mm以下であってよく、1500mm以下であってもよい。互いに直交する上記第1方向及び上記第2方向(例えば、x方向及びy方向)における長さが、上述の範囲であってよい。
【0035】
ヒートシール層12と吸湿層11との合計厚みに対する吸湿層11の厚み比率Rの最小値は、30%以上であってよく、35%以上であってよく、39%以上であってもよい。これによって、吸湿能力のばらつきを十分に低減しつつ、吸湿能力を十分に高くすることができる。
【0036】
ヒートシール層12と吸湿層11との合計厚みに対する吸湿層11の厚み比率Rの最大値は、80%以下であってよく、70%以下であってよく、65%以下であってもよい。これによって、ヒートシール性を十分に高くして密封性に優れる包装袋を形成することができる。
【0037】
吸湿層11は、樹脂成分と粒状の吸湿剤とを含有し、水分を吸収する機能を有する。樹脂成分としては、ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。より具体的には、低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-メタアクリル酸樹脂共重合体等のエチレン系樹脂;ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂;ホモポリプロピレン樹脂、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体等のポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。
【0038】
吸湿層11に含まれる樹脂成分のメルトフローレート(MFR0)は、製膜を円滑にする観点から、3[g/10分]以上であってよく、4[g/10分]以上であってよく、5[g/10分]以上であってもよい。吸湿層11に含まれる樹脂成分のメルトフローレート(MFR0)は、厚みの均一性を向上する観点から、8[g/10分]以下であってよく、6[g/10分]以下であってよく、5[g/10分]以下であってもよい。吸湿層11に含まれる樹脂成分のメルトフローレート(MFR0)は、例えば3[g/10分]~8[g/10分]であってよい。
【0039】
吸湿層11の密度(1)は、吸湿性を十分に確保する観点から、1.1g/cm3以上であってよく、1.2g/cm3以上であってよく、1.3g/cm3以上であってもよい。吸湿層11の密度(1)は、良好な製膜性を十分に維持する観点から、1.5g/cm3以下であってよく、1.4g/cm3以下であってもよい。吸湿層11に含まれる樹脂成分の密度(1)は、例えば1.1~1.5g/cm3であってよい。
【0040】
吸湿層11における樹脂成分の含有量は、シーラントフィルム10のシール性と柔軟性を向上する観点から、40質量%以上であってよく、45質量%以上であってよく、55質量%以上であってもよい。吸湿層11における樹脂成分の含有量は、吸湿能力を十分に高くする観点から、80質量%以下であってよく、70質量%以下であってよく、60質量%以下であってもよい。
【0041】
吸湿層11における粒状の吸湿剤の含有量は、シーラントフィルム10の吸湿能力を十分に高くする観点から、20質量%以上であってよく、30質量%以上であってよく、40質量%以上であってもよい。吸湿層11における粒状の吸湿剤の含有量は、吸湿層11の厚みのばらつきを低減する観点から、60質量%以下であってよく、55質量%以下であってよく、50質量%以下であってもよい。吸湿層11における粒状の吸湿剤の含有量は、例えば、20~60質量%であってよい。
【0042】
粒状の吸湿剤の平均粒子径は3μm以下であってよく、2.5μm以下であってもよい。粒状の吸湿剤の平均粒子径は、入手のし易さの観点から、0.5μm以上であってよく、1μm以上であってもよい。本明細書の平均粒子径は、実施例に記載された走査型電子顕微鏡による観察画像から求められる。
【0043】
吸湿層11の表面において0.06m2の領域に含まれる、粒子径が4μmを超える粗大粒子の数は1個以下であってよく、0個であってもよい。吸湿層11は、粒子径が4μmを超える粗大粒子を含んでいなくてよい。これによって、高い吸湿能力とシール性能とを高い水準で両立することができる。
【0044】
粒状の吸湿剤としては、酸化カルシウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、ゼオライト、シリカゲル等が挙げられる。これらのうち、比較的低コストでありながら、吸湿能力を十分に高くする観点から、酸化カルシウム粒子(CaO粒子)を含んでよい。
【0045】
吸湿層11における酸化カルシウム粒子の含有量は、シーラントフィルム10の吸湿能力を十分に高くする観点から、30質量%以上であってよく、40質量%以上であってもよい。吸湿層11における酸化カルシウム粒子の含有量は、吸湿層11の厚みのばらつきを低減する観点から、60質量%以下であってよく、55質量%以下であってよく、50質量%以下であってもよい。吸湿層11における酸化カルシウム粒子の含有量は、例えば30~60質量%であってよい。
【0046】
吸湿層11のメルトフローレート(MFR1)は、製膜を円滑にする観点から、1.5[g/10分]以上であってよく、2[g/10分]以上であってよく、2.5[g/10分]以上であってもよい。吸湿層11に含まれる樹脂成分のメルトフローレート(MFR)は、厚みの均一性を向上する観点から、7[g/10分]以下であってよく、5[g/10分]以下であってよく、4[g/10分]以下であってもよい。吸湿層11のメルトフローレート(MFR1)は、例えば、1.5[g/10分]~7[g/10分]であってよい。
【0047】
吸湿層11のメルトフローレート(MFR1)は、吸湿層11の樹脂のメルトフローレート(MFR0)よりも小さくてよい。MFR0に対するMFR1の比(MFR1/MFR0)は、0.5以上であってよく、0.6以上であってもよい。これによって、吸湿層11の製膜性が安定し、厚みのばらつきを十分に低減することができる。MFR0に対するMFR1の比(MFR1/MFR0)は、0.9以下であってよく、0.85以下であってよく、0.8以下であってもよい。これによって、吸湿層11の吸湿能力を十分に高くすることができる。MFR0に対するMFR1の比(MFR1/MFR0)は、例えば、0.5~0.9であってよい。
【0048】
ヒートシール層12は、加熱すると溶けて被着物と接着する機能を有する。シーラントフィルム10の一方面はヒートシール層12で構成される。ヒートシール層12は、樹脂成分を含有し、粒状の吸湿剤を含まなくてよい。ヒートシール層12に含まれる樹脂成分(第2樹脂成分)は、吸湿層11に含まれる樹脂成分(第1樹脂成分)と同じであってもよいし、異なっていてもよい。ヒートシール層12に含まれる樹脂成分としては、ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。より具体的には、低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-メタアクリル酸樹脂共重合体等のエチレン系樹脂;ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂;ホモポリプロピレン樹脂、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体等のポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。
【0049】
ヒートシール層12のメルトフローレート(MFR2)は、製膜を円滑にする観点から、3[g/10分]以上であってよく、4[g/10分]以上であってよく、5[g/10分]以上であってもよい。ヒートシール層12のメルトフローレート(MFR2)は、厚みの均一性を向上する観点から、9[g/10分]以下であってよく、7[g/10分]以下であってよく、6[g/10分]以下であってもよい。ヒートシール層12のメルトフローレート(MFR2)は、例えば、3[g/10分]~9[g/10分]であってよい。ヒートシール層12に含まれる樹脂成分のメルトフローレートも上述の範囲であってよい。
【0050】
吸湿層11のメルトフローレート(MFR1)は、ヒートシール層12のメルトフローレート(MFR2)よりも小さい方が好ましい。これによって、位置による吸湿層11及びヒートシール層12の厚みのばらつきを十分に低減することができる。その理由としては、製膜時の吸湿層11用及びヒートシール層12用の樹脂組成物の流量差を小さくできることと、粒状の吸湿剤の重みによる偏りを低減できることが挙げられる。MFR1に対するMFR2の比(MFR2/MFR1)は、1.1以上であってよく、1.2以上であってもよい。これによって、ヒートシール層12と吸湿層11の製膜性が安定し、それぞれの厚みのばらつきを十分に低減することができる。MFR1に対するMFR2の比(MFR2/MFR1)は、3以下であってよく、2以下であってもよい。これによって、製膜性を向上することができる。MFR1に対するMFR2の比(MFR2/MFR1)は、例えば、1.1~3であってよい。
【0051】
ヒートシール層12の密度(2)は、製膜性の観点から、0.89~0.95g/cm3であってよく、0.90~0.94g/cm3であってよく、0.91~0.92g/cm3であってもよい。ヒートシール層12の密度(2)は、吸湿層11に含まれる樹脂成分の密度(1)よりも小さくてよい。
【0052】
シーラントフィルム10において、複数箇所の位置で測定される吸湿能力の平均値は、2g/m2以上であってよく、3g/m2以上であってよく、4g/m2以上であってもよい。当該平均値の上限は、例えば10g/m2である。シーラントフィルム10において、複数箇所の位置で測定される吸湿能力の標準偏差は、0.8g/m2以下であってよく、0.6g/m2以下であってよく、0.4g/m2以下であってもよい。この標準偏差が小さいことは、位置による吸湿能力のばらつきが低いことを意味する。
【0053】
本開示におけるシーラントフィルムの吸湿能力は、一方面が1m2の面積を有する、乾燥状態にある試験片が吸収する水の量である。具体的には、実施例に記載の方法で測定される。吸湿能力の平均値及び標準偏差は、値の精度向上の観点から、3箇所以上又は5箇所以上で採取された試験片を用いて計測された値に基づいて算定されることが好ましい。
【0054】
吸湿層11及びヒートシール層12は、上述の成分とは異なる他の成分を含んでよい。そのような他の成分としては、例えば、分散剤、及び酸化防止剤等が挙げられる。吸湿層11は、粒状の吸湿剤の含有量が互いに異なる2層以上で構成されていてもよい。この場合も、吸湿層11全体として上述の各数値が求められる。
【0055】
中間層14は、接着剤層であってもよいし、樹脂フィルムで構成されてよい。接着剤層としては、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、エポキシ系接着剤、及びイソシアネート系接着剤などの公知の接着剤を含むものが挙げられる。樹脂フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルム;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム;ポリスチレンフィルム;6,6-ナイロン等のポリアミドフィルム;ポリカーボネートフィルム;ポリアクリロニトリルフィルム、及びポリイミドフィルム等が挙げられる。
【0056】
中間層14の厚みは、特に制限されず、例えば、3~100μmであってよく、6~50μmであってもよい。樹脂フィルムは、フィラー、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、及び酸化防止剤等から選ばれる少なくとも一種の添加剤を含有してもよい。樹脂フィルムは、延伸及び未延伸のどちらであってもよい。少なくとも一つの延伸フィルムと少なくとも一つの未延伸フィルムとが積層されているものであってもよい。中間層14は、二軸方向に任意に延伸されたフィルムを有することによって、機械強度及び寸法安定性を向上することができる。
【0057】
ガスバリア層16は、ガスバリア性を有する層である。ガスバリア層16としては、例えば、無機物からなる蒸着フィルム、金属箔、樹脂フィルム、及び樹脂フィルムに蒸着層を積層したもの等が挙げられる。具体的には、アルミナ又はシリカ等の無機蒸着フィルム、アルミ蒸着フィルム、アルミニウム箔、アルミニウム箔積層PETフィルム、並びに、ナイロン系バリアフィルム及びエチレンビニルアルコール系のバリアフィルムなどの各種バリアフィルムが挙げられる。これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて有していてもよい。
【0058】
ガスバリア層16の厚みは特に限定されない。ガスバリア層16が蒸着層からなる場合、その厚みは、例えば5~100nmであってよい。ガスバリア層16がアルミニウム箔からなる場合、その厚みは例えば7~9μmであってよい。ガスバリア層16は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)、ドライラミネート法、エクストルージョンラミネート法等によって形成することができる。
【0059】
シーラントフィルム及び積層体は、
図1(A)及び
図1(B)の形状及び構造を有するものに限定されない。例えば、
図2(A)に示すように、シーラントフィルム10の変形例の一つであるシーラントフィルム10Aは、吸湿層11のヒートシール層12側とは反対側に、ラミネート層15を備えていてもよい。ラミネート層15は、吸湿剤を含有しない樹脂層であってもよいし、吸湿剤を含有する吸湿層であってもよい。この吸湿層は、上述の吸湿層11と同じ組成を有していてもよいし、異なる組成を有していてもよい。ラミネート層15(樹脂層又は吸湿層)に含まれる樹脂成分としては、吸湿層11に含まれる樹脂成分として例示したものが挙げられる。ラミネート層15が樹脂層であれば、ガスバリア層16との接着性を向上することができる。ラミネート層15が吸湿剤を含有する吸湿層であれば、吸湿層の厚みを十分に大きくすることができる。このようにシーラントフィルムの吸湿層が複数の層(吸湿層)で構成される場合、本明細書における吸湿層の厚みは、複数の層(吸湿層)の厚みの合計値として把握される。積層体の変形例は、
図2(B)に示すようにシーラントフィルム10Aを備える積層体40Aであってよい。中間層14及びガスバリア層16は上述したとおりである。積層体の別の変形例は、中間層14を備えていなくてもよいし、各層の間に任意の層を備えていてもよい。任意の層としては、接着剤で構成される接着剤層、樹脂フィルムで構成される外層等が挙げられる。
【0060】
接着剤層を構成する接着剤としては、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、エポキシ系接着剤、及びイソシアネート系接着剤などの公知の接着剤が挙げられる。外層は、中間層14で例示した樹脂フィルムで構成されてもよい。外層は、ガスバリア層16の上に設けられてもよい。また、外層の上にインキ層を設けて装飾してもよい。外層の厚みは、特に制限されず、例えば、3~100μmであってもよく、6~50μmであってもよい。積層体の厚みは、40~300μmであってよく、50~150μmであってもよい。
【0061】
シーラントフィルム10及び積層体40は、位置による吸湿能力のばらつきが十分に低減されている。このため、水分に敏感な内容物を包装する包装材として好適に用いることができる。すなわち高い耐湿性能が求められる包装袋又は包装容器の包装材として好適に用いることができる。シーラントフィルム10及び積層体40は、プレス・スルー・パック(PTP)包装、又はブリスター包装に用いてもよい。
【0062】
シーラントフィルム10の製造方法は、第1樹脂成分と粒状の吸湿剤とを含有する第1樹脂組成物と、第2樹脂成分を含有し、第1樹脂組成物よりも吸湿剤の含有比率が少ない第2樹脂組成物と、を共押出ししてシーラントフィルム10を得る工程を有する。共押出し成形は、Tダイを用いて行うことができる。このような多層Tダイ法により、吸湿層11及びヒートシール層12を有するシーラントフィルム10を得ることができる。シーラントフィルムは、吸湿層11及びヒートシール層12の厚みのバランスに応じて、二種二層共押出しで成形してもよいし、二種三層共押出し又は三種三層共押出しによって成形してもよい。
【0063】
第1樹脂組成物の性状及び組成(含有成分)は、吸湿層11と同様であってよい。このため、吸湿層11についての説明は、第1樹脂組成物にも適用される。第2樹脂組成物の性状及び組成(含有成分)は、ヒートシール層12と同様であってよい。このため、ヒートシール層12についての説明は、第1樹脂組成物にも適用される。
【0064】
吸湿層11及びヒートシール層12の説明でも述べたのと同様に、第1樹脂組成物のメルトフローレート(MFR1)は、第2樹脂組成物のメルトフローレート(MFR2)よりも小さい方が好ましい。これによって、得られるシーラントフィルム10の位置による吸湿層11及びヒートシール層12の厚みのばらつきを十分に低減することができる。MFR1に対するMFR2の比(MFR2/MFR1)は、例えば、1.1~3であってよい。
【0065】
第2樹脂組成物の密度(2)は、製膜性の観点から、0.89~0.95g/cm3であってよく、0.90~0.94g/cm3であってよく、0.91~0.92g/cm3であってもよい。第2樹脂組成物の密度(2)は、第1樹脂組成物に含まれる樹脂成分の密度(1)よりも小さくてよい。
【0066】
本明細書における第1樹脂組成物、第2樹脂組成物、吸湿層11、ヒートシール層及びこれらに含まれる樹脂成分のメルトフローレート(MFR)は、JIS K 6922-2:1997付属書に準拠して、190℃において2.16kg荷重で測定される。本明細書における第1樹脂組成物、第2樹脂組成物、吸湿層11、ヒートシール層12及びこれらに含まれる樹脂成分の密度(23℃)は、JIS K6922-1の方法に従い、沸騰水で30分間熱処理し、1時間かけて放冷条件で室温まで徐冷した後、JIS K7112の方法に従い、密度勾配管により測定される。
【0067】
積層体40の製造方法は、ドライラミネートによってシーラントフィルム10の一方面(吸湿層11側の表面)とガスバリア層16とを貼り合わせる。これによって、ガスバリア層16が、接着剤で構成される中間層14を介してシーラントフィルム10の吸湿層11に接着される。その後、必要に応じてガスバリア層16の上に、接着剤を用いて外層を貼り合わせてもよいし、印刷を行ってもよい。このようにして積層体40(積層フィルム)を得ることができる。なお、積層体40の製造方法はこの例に限定されない。
【0068】
一実施形態に係る包装袋は、上述の積層体40又はその変形例を備えてよい。
図3には、包装袋100の一方面を模式的に示している。包装袋100は、略矩形の一対の積層体40の周縁を貼り合わせて構成される。一対の積層体40は、それぞれのシーラントフィルム10(ヒートシール層12)同士が対向するように重ね合わせられており、側端部54、下端部56及び上端部57において、互いに接着している。
【0069】
側端部54、下端部56及び上端部57がヒートシールされることによって、包装袋100の収容部(非シール部)が形成される。この収容部には、食料品、及び医薬品等の被包装物が収容される。包装体110は、包装袋100とこの収容部に収容された被包装物とを備える。なお、下端部56のシール部は、被包装物を収容部に充填した後にシールしてもよい。
【0070】
包装袋100の側端部54には、収容部を開封する際に使用されるノッチ64が形成されている。また、ノッチ64よりも下側に、ノッチ64から切り開いて開封した後に収容部を再封止する再封止部60を備える。再封止部60は、開封と密封とを繰り返して行うことが可能な公知の構造を適宜採用することができる。例えば、帯状の突起部と帯状の溝部が嵌合することによって繰り返し密封することが可能な合成樹脂製のファスナーであってもよく、粘着シールであってもよい。
【0071】
包装袋の形状は、四方袋に限定されるものではない。例えば、二方袋、三方袋又は合掌袋でもよい。包装袋は、再封止部、及びノッチを備えていなくてもよい。ノッチは、V字状のものに限定されず、U字状又はI字状等であってもよい。また、ノッチに代えて傷痕群が形成されていてもよい。
【0072】
包装袋100及び包装体110は、例えば、以下の手順で作製できる。一対の積層体40のヒートシール層12同士を対向させ、再封止部60となる例えばファスナーテープを挟んだ状態で、ヒートシール層12同士を接着し、上端部57及び側端部54をシールする。これによって、コの字状のシール部で包囲された非シール部が形成される。シール部を切断すると共に化粧裁ちをして個々の袋に分割する。このようにして、包装袋が得られる。この本開示の包装袋には、このように被包装物が未だ収容されておらず、外縁の一部がシールされていない状態のものも含む。
【0073】
その後、側端部54に、ノッチ64を形成する。未シール状態にある下端部56から被包装物を収容する。その後、下端部56においてヒートシール層12同士を接着して、下端部56にもシール部を形成する。このようにして、包装袋100の収容部に被包装物が収容された包装体110を製造することができる。ただし、包装袋及び包装体の製造方法はこのような方法に限定されない。
【0074】
包装袋100は、位置による吸湿能力のばらつきが十分に低減された吸湿層11を有する積層体40で構成される。このため、包装袋100を用いれば、水分に敏感な被包装物を安定的に保存することができる。水分に敏感な被包装物としては、例えば、食品、医薬品、電子部品等が挙げられる。
【0075】
以上、本開示の幾つかの実施形態を説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
【実施例0076】
実施例及び比較例を参照して本開示の内容をより詳細に説明するが、本開示は下記の実施例に限定されるものではない。
【0077】
[実施例1]
<樹脂組成物の調製>
市販の低密度ポリエチレン樹脂(メルトフローレート(MFR0):7g/10mm)と、酸化カルシウム粒子とを、55:45の質量比で配合し、第1樹脂組成物を調製した。この第1樹脂組成物の密度は1.35g/cm3であり、メルトフローレート(MFR1)は6.2g/10minであった。別の市販の低密度ポリエチレン樹脂(メルトフローレート(MFR2):7g/10mm、密度:0.918g/cm3)を第2樹脂組成物として準備した。第1樹脂組成物及び第2樹脂組成物の性状及び含有成分を表1に纏めて示した。
【0078】
<シーラントフィルムの製造>
第1樹脂組成物及び第2樹脂組成物を、共押出製膜機を用いて製膜し、第1樹脂組成物で構成される吸湿層と、第2樹脂組成物で構成されるヒートシール層との積層構造を有するシーラントフィルム(幅:400mm)を製造した。製膜は、共押出しTダイ法で行った。
【0079】
<シーラントフィルムの評価>
(吸湿層の厚みに関する評価)
作製したシーラントフィルムを切り出し、
図4に示す3本の破線L
-100,破線L
0,破線L
+100に沿って、シーラントフィルム20を切断した。
図4中、y方向がシーラントフィルム20の押出方向であり、x方向がシーラントフィルム20の幅方向である。シーラントフィルム20を切断することによって、100mm幅の4つの切断片20a,20b,20c,20dを得た。
【0080】
切断前のシーラントフィルム20の端面20A,20Bと、試験片の切断面を、走査型電子顕微鏡(SEM、倍率:500倍)で観察して、吸湿層とヒートシール層の厚みを測定した。また、吸湿層とヒートシール層の合計厚みを求めた。それぞれの端面及び切断面における各層の厚み及び合計厚み、並びに合計厚みに対する吸湿層の厚み比率Rは、表2に示すとおりであった。表2中、端面20Aにおける測定値をL-200の欄に、端面20Bにおける測定値をL+200の欄にそれぞれ示した。表2中のxは、中心を基準(0)とする座標を示しており、その絶対値がシーラントフィルムの幅方向における中心からの距離に相当する。
【0081】
表2に示す測定値から、吸湿層の厚みの最大値(Max)、最小値(Min)及びこれらの差Δと、最大値に対する最小値の比(Max/Min)を求めた。また、吸湿層の厚みが最小値であった位置と最大値であった位置との間隔A(x方向における距離)を求めた。差Δをこの間隔Aで割って、シーラントフィルム1mm当たりの吸湿層の厚みの変化幅Vを求めた。これらの結果を表4に示す。表2に示す測定値から、吸湿層とヒートシール層との合計厚みに対する吸湿層の厚み比率Rの最大値(Max)、最小値(Min)及び平均値(Ave)を求めた。これらの結果も表4に示す。
【0082】
(吸湿層の吸湿能力に関する評価)
シーラントフィルム20の中心部(破線L0が通過する部分)と両端部から、それぞれ50mm×200mmのサイズを有する短冊状の試験片を切り出した。この試験片を、60℃で6時間、相対湿度100%の水蒸気含有雰囲気下において水分を吸収させた。試験片の吸収前後の質量から求めた水分の吸収量を試験片の一方面の面積で除して吸湿能力を算定した。吸湿能力の算定結果は、表2に示すとおりであった。中心部の試験片の測定結果はL0の欄に、両端部の試験片の測定結果はL-200,L+200の欄にそれぞれ示した。吸湿能力の測定値の最大値、最小値及び平均値は、表5に示すとおりであった。
【0083】
図5には、実施例1のシーラントフィルムにおいて、吸湿層とヒートシール層の合計を基準(100%)とする各層の厚み比率(層比)を棒グラフで示した。棒グラフの下側が吸湿層の厚みの比率を、上側がヒートシール層の厚みの比率を示している。また、吸湿能力の評価結果を黒丸でプロットした。吸湿層の厚みの比率が大きい部分の方が、吸湿能力が高くなる傾向にあった。
【0084】
(吸湿層におけるCaO粒子の評価)
シーラントフィルム20の切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。3つの視野の画像(倍率:3000倍)において観察される粒子のうち、粒径が大きい方から2つと、粒子径が小さい方から2つとを選択した。粒子径は、各粒子における輪郭線上において選択される2点間の距離のうち最大値とした。このときの4つの粒子の粒子径の算術平均値を求めた。これを平均粒子径とした。その結果、平均粒子径は、2μmであった。また、3つの視野において検知される、粒子径が4μmを超える粗大粒子の個数(合計値)は表5に示すとおり0個であった。
【0085】
[実施例2]
表1に示すとおり、市販の低密度ポリエチレン樹脂(メルトフローレート(MFR0):7g/10mm)と、酸化カルシウム粒子とを、56:44の質量比で配合し、第1樹脂組成物を調製した。この第1樹脂組成物を用いたこと、及び、共押出製膜機の設定を変更して、ヒートシール層の厚みを変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2のシーラントフィルムを製造し、評価を行った。結果は表2、表4及び表5に示すとおりであった。
【0086】
[実施例3]
第1樹脂組成物及び第2樹脂組成物で用いる市販の低密度ポリエチレン樹脂、並びに第1樹脂組成物における酸化カルシウム粒子の比率を表1に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例3のシーラントフィルムを製造し、評価を行った。結果は表2、表4及び表5に示すとおりであった。
【0087】
[実施例4]
第1樹脂組成物及び第2樹脂組成物で用いる市販の低密度ポリエチレン樹脂、並びに第1樹脂組成物における酸化カルシウム粒子の比率を表1に示すとおりに変更したこと以外は、実施例2と同様にして実施例4のシーラントフィルムを製造し、評価を行った。結果は表2、表4及び表5に示すとおりであった。
【0088】
[実施例5,6]
第2樹脂組成物で用いる市販の低密度ポリエチレン樹脂を表1に示すものに変更したこと以外は、実施例3,4と同様にして実施例5,6のシーラントフィルムを製造し、評価を行った。結果は表2、表4及び表5に示すとおりであった。
【0089】
[実施例7]
第2樹脂組成物で用いる樹脂を、市販の低密度ポリエチレン樹脂から、表1に示す性状を有する市販の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂に変更したこと以外は、実施例4と同様にして実施例7のシーラントフィルムを製造し、評価を行った。結果は表2、表4及び表5に示すとおりであった。
【0090】
[実施例8]
<樹脂組成物の調製>
市販の低密度ポリエチレン樹脂(メルトフローレート(MFR0):4g/10mm)と、酸化カルシウム粒子とを、56.3:43.7の質量比で配合し、第1樹脂組成物を調製した。この第1樹脂組成物の密度(1)は1.36g/cm3であり、メルトフローレート(MFR1)は2.9g/10minであった。実施例7で用いた直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を第2樹脂組成物として用いた。
【0091】
<シーラントフィルムの製造>
第1樹脂組成物及び第2樹脂組成物を、共押出製膜機を用いて製膜し、第1樹脂組成物で構成される吸湿層と第2樹脂組成物で構成されるヒートシール層との積層構造を有するシーラントフィルム(幅:800mm)を製造した。製膜は、共押出しTダイ法で行った。
【0092】
<シーラントフィルムの評価>
(吸湿層の厚みに関する評価)
作製したシーラントフィルムを切り出し、
図6に示す5本の破線L
-300,破線L
-150,破線L
0,破線L
+150,破線L
+300に沿って、シーラントフィルム30を切断した。
図6中、y方向がシーラントフィルム30の押出方向であり、x方向がシーラントフィルム30の幅方向である。シーラントフィルム30を切断することによって、150mm幅の6つの切断片30a,30b,30c,30d,30e,30fを得た。
【0093】
切断前のシーラントフィルム30の端面30A,30Bと、試験片の切断面を、実施例1と同様にして走査型電子顕微鏡(SEM、倍率:500倍)で観察して、吸湿層とヒートシール層の厚みを測定した。また、吸湿層とヒートシール層の合計厚みを求めた。それぞれの端面及び切断面における各層の厚み及び合計厚み、並びに合計厚みに対する吸湿層の厚み比率Rは、表3に示すとおりであった。表3中、端面30Aにおける測定値をL-400の欄に、端面30Bにおける測定値をL+400の欄にそれぞれ示した。表3中のxは、中心を基準(0)とする座標を示しており、その絶対値がシーラントフィルムの幅方向における中心からの距離に相当する。
【0094】
表3に示す測定値から、吸湿層の厚みの最大値(Max)、最小値(Min)及びこれらの差Δと、最大値に対する最小値の比(Max/Min)を求めた。また、吸湿層の厚みが最小値であった位置と最大値であった位置との間隔A(x方向における距離)を求めた。差Δをこの間隔Aで割って、シーラントフィルム1mm当たりの吸湿層の厚みの変化幅Vを求めた。これらの結果を表4に示す。表3に示す測定値から、吸湿層とヒートシール層との合計厚みに対する吸湿層の厚みの比率の最大値(Max)、最小値(Min)及び平均値(Ave)を求めた。これらの結果も表4に示す。
【0095】
(吸湿層の吸湿能力に関する評価)
シーラントフィルム30から中心部(破線L0が通過する部分)、両端部、並びに、破線L-300、破線L-150、破線L+150及び破線L+300が通過する部分から、それぞれ50mm×200mmのサイズを有する短冊状の試験片を切り出した。この試験片を用いて実施例1と同様にして吸湿能力を求めた。吸湿能力の測定結果は、表3に示すとおりであった。中心部の試験片の測定結果はL0の欄に、両端部の試験片の測定結果はL-400,L+400の欄にそれぞれ示した。吸湿能力の測定値の最大値、最小値及び平均値は、表5に示すとおりであった。
【0096】
(吸湿層におけるCaO粒子の評価)
実施例1と同様にしてシーラントフィルムに含まれるCaO粒子のうち、粒子径が4μmを超える粗大粒子の個数(合計値)を調べた。結果は、表5に示すとおりであった。
【0097】
[実施例9]
共押出製膜機の設定を変更して吸湿層の厚みを変更したこと以外は、実施例8と同様にして実施例9のシーラントフィルムを製造し、評価を行った。結果は表3、表4及び表5に示すとおりであった。
【0098】
図7には、実施例9の吸湿層とヒートシール層の合計を基準(100%)とする各層の厚み比率(層比)を棒グラフで示した。棒グラフの下側が吸湿層の厚みの比率を、上側がヒートシール層の厚みの比率を示している。また、吸湿能力の評価結果を丸印でプロットした。吸湿層の厚みの比率は中心部において小さくなる傾向にあったものの、大きな変動はなかった。吸湿能力のばらつきは十分に低減されていた。
【0099】
[実施例10]
表1に示すとおり、第2樹脂組成物として用いる樹脂を、実施例3で用いた低密度ポリエチレン樹脂にしたこと以外は、実施例8と同様にして実施例10のシーラントフィルムを製造し、評価を行った。結果は表3、表4及び表5に示すとおりであった。
【0100】
[実施例11]
共押出製膜機の設定を変更して吸湿層の厚みを変更したこと以外は、実施例10と同様にして実施例11のシーラントフィルムを製造し、評価を行った。結果は表3、表4及び表5に示すとおりであった。
【0101】
[実施例12]
表1に示すとおり、市販の低密度ポリエチレン樹脂(メルトフローレート(MFR0):4g/10mm、密度:1.36g/cm3)と、酸化カルシウム粒子とを、53.5:46.5の質量比で配合し、第1樹脂組成物を調製した。この第1樹脂組成物を用いたこと以外は、実施例10と同様にして実施例12のシーラントフィルムを製造し、評価を行った。結果は表3、表4及び表5に示すとおりであった。
【0102】
図8には、実施例12の吸湿層とヒートシール層の合計を基準(100%)とする各層の厚み比率(層比)を棒グラフで示した。棒グラフの下側が吸湿層の厚みの比率を、上側がヒートシール層の厚みの比率を示している。また、吸湿能力の評価結果を黒丸でプロットした。吸湿層の厚みの比率は位置によらずほぼ一定であり、吸湿能力のばらつきが十分に低減されていた。
【0103】
[実施例13]
共押出製膜機の設定を変更してヒートシール層の厚みを変更したこと以外は、実施例12と同様にして実施例13のシーラントフィルムを製造し、評価を行った。結果は表3、表4及び表5に示すとおりであった。
【0104】
[比較例1]
表1に示すとおり、市販の低密度ポリエチレン樹脂(メルトフローレート(MFR0):7g/10mm、密度:1.35g/cm3)と、酸化カルシウム粒子とを、51:49の質量比で配合し、第1樹脂組成物を調製した。この第1樹脂組成物を用いたこと以外は、実施例10と同様にして実施例12のシーラントフィルムを製造し、評価を行った。結果は表3、表4及び表5に示すとおりであった。なお、比較例1では、シーラントフィルムの幅が780mmであったため、中心から端部までの長さは390mmであった。
【0105】
図9には、比較例1の吸湿層とヒートシール層の合計を基準(100%)とする各層の厚み比率(層比)を棒グラフで示した。棒グラフの下側が吸湿層の厚みの比率を、上側がヒートシール層の厚みの比率を示している。また、吸湿能力の評価結果を黒丸でプロットした。吸湿層の厚みの比率は、中心部に向かって小さくなっていた。このため、両端部よりも中心部において、吸湿能力が低くなっており、位置によって吸湿能力がばらついていた。
【0106】
【0107】
表1には、第1樹脂組成物のメルトフローレート(MFR1)に対する第2樹脂組成物のメルトフローレート(MFR2)の比を示した。実施例1~13では、当該比は、いずれも1を超えていた。
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
表4に示すとおり、実施例1~13のシーラントフィルムは、長さ1mmあたりの吸湿層の厚みの変化幅Vが、いずれも0.05μm以下であった。一方、比較例1のシーラントフィルムは変化幅Vが0.05μmを超えていた。実施例1~13のシーラントフィルムでは、吸湿層の厚みの最大値に対する最小値の比は0.6以上であった。実施例1~13のシーラントフィルムでは、吸湿層の厚み比率Rの最大値と最小値の差が、比較例1よりも小さかった。これらの結果から、実施例1~13のシーラントフィルムは、比較例1のシーラントフィルムよりも吸湿層の厚みのばらつきが低減されていることが確認された。
【0112】
【0113】
表5に示すとおり、実施例1~13のシーラントフィルムは、比較例1のシーラントフィルムよりも吸湿能力の標準偏差が小さかった。このことから、実施例1~13のシーラントフィルムでは、位置による吸湿能力のばらつきが低減されていることが確認された。
位置による吸湿能力のばらつきが十分に低減されたシーラントフィルム及びこれを備える積層体を提供することができる。また、このような積層体を備える包装袋、及びこのような包装袋を備える包装体を提供することができる。
10,10A,20,30…シーラントフィルム、11…吸湿層、12…ヒートシール層、14…中間層、15…ラミネート層、16…ガスバリア層、20A,20B,30A,30B…端面、20a,20b,20c,20d,30a,30b,30c,30d,30e,30f…切断片、40,40A…積層体、54…側端部、56…下端部、57…上端部、60…再封止部、64…ノッチ、100…包装袋、110…包装体。