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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151253
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】センサー
(51)【国際特許分類】
   G01N 5/02 20060101AFI20231005BHJP
   G01N 29/036 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G01N5/02 Z
G01N29/036
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060763
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】山川 菜摘
(72)【発明者】
【氏名】辻本 浩行
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA01
2G047BA04
2G047BC15
(57)【要約】
【課題】耐湿度影響性に優れ、湿度が比較的高い条件下であっても電気シグナルを大きく減衰させることなくエタノールやアルデヒド等の高親水性のガスを測定可能であり、かつ、塗布スループットの高い感応膜をもつセンサーを提供すること。
【解決手段】感応膜を有するセンサーであって、上記感応膜が、赤外全反射吸収測定において1600~1800cm-1の領域及び1350~1450cm-1の領域に吸収ピークを有し、上記1350~1450cm-1の領域における吸収ピークの極大(B)に対する、前記1600~1800cm-1の領域における吸収ピークの極大(A)のピーク強度比(A/B)が、0.1~4.0である、センサー。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感応膜を有するセンサーであって、
前記感応膜が、赤外全反射吸収測定において1600~1800cm-1の領域及び1350~1450cm-1の領域に吸収ピークを有し、
前記1350~1450cm-1の領域における吸収ピークの極大(B)に対する、前記1600~1800cm-1の領域における吸収ピークの極大(A)のピーク強度比(A/B)が、0.1~4.0である、
センサー。
【請求項2】
前記1350~1450cm-1の領域における吸収ピークが、ケイ素原子と芳香族炭素原子との原子間結合に由来する吸収ピークを含む、
請求項1に記載のセンサー。
【請求項3】
前記1600~1800cm-1の領域における吸収ピークが、カルボニル基に由来する吸収ピークを含む、
請求項1又は2に記載のセンサー。
【請求項4】
前記1600~1800cm-1の領域における吸収ピークが、アミド結合を形成するカルボニル基の吸収ピークを含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載のセンサー。
【請求項5】
前記感応膜が、式RSiO3/2(前記式中Rは有機官能基を表す)で表される単位を含む構造を有する、
請求項1から4のいずれか一項に記載のセンサー。
【請求項6】
前記有機官能基が、アミド結合を少なくとも1以上含む、
請求項5に記載のセンサー。
【請求項7】
前記有機官能基が、少なくとも1種類以上の芳香環を含む、
請求項5又は6に記載のセンサー。
【請求項8】
表面応力型センサーである、
請求項1から7のいずれか一項に記載のセンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にセンサーは、対象となるアナライトを高感度かつ高選択的な検出を可能とする検知部(受容体)を有する。受容体として自己組織化膜、単分子膜、DNA/RNA、タンパク質、抗原/抗体、ポリマーなど多岐に渡る物質が用いられている。嗅覚/ガスセンサ分野では近年のAI,IoTの発達により、今後新たなアプリケーションが期待されている。近年、食物の輸送過程における食品の過成熟による青果物の廃棄が世界的に大きな問題と認識されている。青果物が成熟していく過程では、エチレンやエタノール、アセトアルデヒドといった固有のガスが発散される。特に、食品の品質をセンサーにより管理する場合には、食物の嫌気呼吸由来のエタノールやアルデヒドの追跡が重要となる。
【0003】
特許文献1では、多孔質材料または粒状材料を、物理パラメータを検出するタイプのセンサー本体上に被覆し、検体分子を上記多孔質材料または粒状材料が吸着することによる上記物理パラメータの変化により上記検体分子を検出するセンサーが記載されている。
【0004】
特許文献2では、低吸湿材料からなる受容体材料を用いて受容体層が水による悪影響を受けることを抑止可能な、ナノメカニカルセンサが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2016/121155号
【特許文献2】国際公開第2018/221283号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術では、高い感度と選択性、安定性を実現する一方で、乾燥雰囲気下以外では電気シグナルが大きく減衰し、嗅覚センサーとして使用できる環境が大きく制限されている。
【0007】
特許文献2に記載の技術では、サンプル中に含まれる水がセンサー出力に与える影響を低減でき、センサーとしての使用範囲が拡大できる一方で、受容体材料の溶解性が低いためインクを塗布する際のスループットが悪化しやすい。
【0008】
本発明は、上記の従来技術が有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐湿度影響性に優れ、湿度が比較的高い条件下であっても電気シグナルを大きく減衰させることなくエタノールやアルデヒド等の高親水性のガスを測定可能であり、かつ、塗布スループットの高い感応膜をもつセンサーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、本願発明者らは鋭意検討し、実験を重ねた結果、予想外に上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の態様を包含する。
[1]
感応膜を有するセンサーであって、
前記感応膜が、赤外全反射吸収測定において1600~1800cm-1の領域及び1350~1450cm-1の領域に吸収ピークを有し、
前記1350~1450cm-1の領域における吸収ピークの極大(B)に対する、前記1600~1800cm-1の領域における吸収ピークの極大(A)のピーク強度比(A/B)が、0.1~4.0である、
センサー。
[2]
前記1350~1450cm-1の領域における吸収ピークが、ケイ素原子と芳香族炭素原子との原子間結合に由来する吸収ピークを含む、
[1]に記載のセンサー。
[3]
前記1600~1800cm-1の領域における吸収ピークが、カルボニル基に由来する吸収ピークを含む、
[1]又は[2]に記載のセンサー。
[4]
前記1600~1800cm-1の領域における吸収ピークが、アミド結合を形成するカルボニル基の吸収ピークを含む、
[1]から[3]のいずれかに記載のセンサー。
[5]
前記感応膜が、式RSiO3/2(前記式中Rは有機官能基を表す)で表される単位を含む構造を有する、
[1]から[4]のいずれかに記載のセンサー。
[6]
前記有機官能基が、アミド結合を少なくとも1以上含む、
[5]に記載のセンサー。
[7]
前記有機官能基が、少なくとも1種類以上の芳香環を含む、
[5]又は[6]に記載のセンサー。
[8]
表面応力型センサーである、
[1]から[7]のいずれかに記載のセンサー。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐湿度影響性に優れ、湿度が比較的高い条件下であっても電気シグナルを大きく減衰させることなくエタノールやアルデヒド等の高親水性のガスを測定可能であり、かつ、塗布スループット(以下、単にスループット、ともいう。)の高い感応膜をもつセンサーを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1と比較例3の感応膜を塗布したチップの光学顕微鏡写真の例を示す。
図2】実施例1と比較例1の顕微ATRスぺクトルの結果を示す。
図3】実施例1の湿度が0%と50%でのエタノールへの応答性を示す。
図4】比較例1の湿度が0%と50%でのエタノールへの応答性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0014】
1.センサー
本実施形態のセンサーは、感応膜を有するセンサーであって、上記感応膜が、赤外全反射吸収測定において1600~1800cm-1の領域及び1350~1450cm-1の領域に吸収ピークを有し、上記1350~1450cm-1の領域における吸収ピークの極大(B)に対する、上記1600~1800cm-1の領域における吸収ピークの極大(A)のピーク強度比(A/B)が、0.1~4.0である、センサーである。
【0015】
本実施形態のセンサーは、特に限定されないが、例えば、物理パラメータを検出するタイプのセンサー本体を含む。物理パラメータとしては、特に限定されないが、例えば、表面応力、応力、力、表面張力、圧力、質量、弾性、ヤング率、ポアソン比、共振周波数、周波数、体積、厚み、粘度、密度、磁力、磁気量、磁場、磁束、磁束密度、電気抵抗、電気量、誘電率、電力、電界、電荷、電流、電圧、電位、移動度、静電エネルギー、キャパシタンス、インダクタンス、リアクタンス、サセプタンス、アドミッタンス、インピーダンス、コンダクタンス、プラズモン、屈折率、光度および温度やその他の様々な物理パラメータが挙げられる。
【0016】
そして、本実施形態のセンサーは、特に限定されないが、例えば、センサー本体上に直接、感応膜(本技術分野において、「受容体層」と呼ばれる場合もある。)を設けたセンサーである。すなわち、本実施形態のセンサーは、当該感応膜が検体分子を吸着することで、そこに引き起こされる物理パラメータの変化を、センサー本体により検出するものとすることができる。上記のとおり、本実施形態において使用可能なセンサー本体は、その表面上に配された感応膜が検知対象物質を吸着することによって当該感応膜に引き起こされる変化を検知するものであれば、特に限定されない。
【0017】
また、本実施形態のセンサーは、表面応力型センサー(MSS)として用いることができる。表面応力型センサーは4点固定のピエゾ素子型表面応力型センサーであることが好ましい。その場合、ピエゾ素子からなるセンサー本体の表面の少なくとも一部に感応膜を被膜することで上記表面応力型センサーを作製することができ、被覆した感応膜が検知対象物質を吸着することで、当該感応膜中に引き起こされた応力変化を検出して本体がシグナルを出力する。
【0018】
また、異なる種類のセンサー本体として、特に限定されないが、例えば、QCM(水晶振動子マイクロバランス)装置を適用しうる。QCM装置は、交流電場を印加した水晶振動子の電極表面に物質が吸着すると、その吸着質の質量や粘弾性等に応じて共振周波数が減少する性質を利用して微量な質量変化を計測する質量センサーであり、in-situでの測定が可能である。本実施形態のセンサー本体としてQCM装置として適用する場合、例えば、電極の表面に本実施形態における感応膜を形成することにより、当該感応膜が検知対象物質を吸着することで起こる質量変化をセンサー本体で検出してシグナルを出力する。
【0019】
また、QCMの電極としては、様々な導電性材料を適用しうるが、本実施形態における感応膜に導電性を持たせる場合、当該感応膜をQCMの電極として用いることもできる。
【0020】
なお、本実施形態において、吸着という用語は、任意の物体の界面において、吸着質となる他の物質の濃度が、上記界面の周囲よりも増加する現象を含むことを意味しており、単に物理吸着だけではなく、化学結合や生化学的な作用による化学吸着も含むものである。
【0021】
1.1.感応膜
本実施形態における感応膜は、赤外全反射吸収測定において1600~1800cm-1の領域及び1350~1450cm-1の領域に吸収ピークを有し、上記1350~1450cm-1の領域における吸収ピークの極大(B)に対する、上記1600~1800cm-1の領域における吸収ピークの極大(A)のピーク強度比(A/B)が、0.1~4.0である。
【0022】
該ピーク強度比(A/B)が0.1~4.0の範囲であることにより、当該感応膜を有するセンサーは耐湿度影響性及びスループットに優れる。
【0023】
なお、上記の吸収ピーク及びピーク強度比(A/B)の算定については、ベースライン補正としてピークが存在しない箇所のベースラインを吸光度0とした。ピークの定義としては、吸光度の極大値が0.02以上となるものをピークとみなした。
【0024】
ここで、上記1350~1450cm-1の領域における吸収ピークの極大(B)に対する、上記1600~1800cm-1の領域における吸収ピークの極大(A)のピーク強度比(A/B)は、特に限定されないが、例えば、有機官能基に導入するカルボニル基の量を変更することによって調整することができる。
【0025】
また、上記1350~1450cm-1の領域における吸収ピークが、ケイ素原子と芳香族炭素原子との原子間結合に由来する吸収ピークを含むことが好ましい。それにより、耐湿度影響性に優れる傾向にある。
【0026】
ここで、上記1350~1450cm-1の領域における吸収ピークは、特に限定されないが、例えば、感応膜がシランカップリング剤由来の有機官能基を有する場合に、有機官能基の種類を変更することによって調整すること等が挙げられる。
【0027】
また、1600~1800cm-1の領域における吸収ピークが、カルボニル基に由来する吸収ピークを含むことが好ましく、アミド結合を形成するカルボニル基の吸収ピークを含むことがより好ましい。それにより、スループットが向上する傾向にある。
【0028】
ここで、上記1600~1800cm-1の領域における吸収ピークは、特に限定されないが、例えば、感応膜がシランカップリング剤由来の有機官能基を有する場合に、有機官能基の種類を変更することによって調整すること等が挙げられる。
【0029】
1.1.1.有機無機ハイブリッド
本実施形態における感応膜は、高い感度を有し、耐湿度影響性に優れ、湿度が比較的高い環境下であっても感度及び電気シグナルを大きく減衰させない観点から、RSiO3/2で表される構造を含むことが好ましい。ここで、上記Rは有機官能基を表す。また、RSiO3/2で表される構造を含む分子鎖を以下、有機無機ハイブリッド、ともいう。
【0030】
RSiO3/2で表される構造を導入するためには、特に限定されないが、例えば、感応膜を構成するモノマー単位にシランカップリング剤を含めること等が挙げられる。
【0031】
本実施形態における感応膜の膜厚は、有機無機ハイブリッドが均質な膜厚分布を有する形状でもよいし、端部の膜厚が厚くなるように分布するコーヒーリング状の形状を有することができる。コーヒーリング状の形状となる場合は、感応膜の中心部分における最も薄い部分、及び端部分における最も厚い部分の膜厚は、それぞれ通常10nm以上50μm以下であることが好ましい。膜厚は、製造時における乾燥に要する時間を短縮し、生産性を高める観点から、好ましくは10nm以上30μm以下であり、感度を高める観点から、より好ましくは10nm以上20μm以下である。また、本実施形態における感応膜の最大厚みは、30μm以下であることが好ましい。
【0032】
本実施形態における感応膜で被覆した表面応力型センサー(MSS)を嗅覚センサーとして用いる為には、気相中において、有機官能基とガス分子が相互作用し、感応膜内部に拡散することにより応力発生し、それによってガスを検出することが好ましい。
【0033】
本実施形態において、有機無機ハイブリッドは、カルボニル基を有する有機基(例えば、カルボキシル基、エステル基、ウレタン基、ウレア基、アミド基等)を有することが好ましい。これらの中でもアミド基を有する有機基を有することが好ましい。アミド基を有する有機基としては、-NH-CO-Rで表される有機基を挙げることができる。Rとしては、ハロゲン原子等の置換基を有してもよい直鎖状若しくは分岐状炭化水素基(例えば、3-クロロプロピル基、オクチル基等の直鎖状若しくは分岐状C1-8アルキル基)、ハロゲン原子等の置換基を有してもよい脂環炭化水素基(例えば、シクロヘキシル基等のC5-6シクロアルキル基)、ハロゲン原子等の置換基を有してもよい1価の脂環炭化水素基(例えば、シクロヘキシル基等のC5-6シクロアルキル基)、ハロゲン原子等の置換基を有してもよい芳香族炭化水素基(例えば、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基等)、を挙げることができる。
【0034】
本実施形態において、有機無機ハイブリッドは、有機官能基が1種類以上の芳香環を含むことが好ましい。有機官能基が芳香環を含む場合、耐湿度影響性がより向上する傾向にある。芳香環としては、センサーの用途等を考慮して適宜選択できるため特に限定されないが、例えば、フェニル基、ナフチル基、p-トリル基、ビフェニル基等の芳香族炭化水素基、4-クロロフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-アミノフェニル基、ペンタフルオロフェニル基等の置換芳香族炭化水素基、3-フリル基、3-チエニル基、2-ピリジル基、3-ピリジル基、4-ピリジル基等の複素環炭化水素基、フェロセニル基等のメタロセン等が挙げられる。本実施形態における有機官能基は、適宜選択して用いることができ、上述した芳香環を1種単独で含んでいてもよく、2種以上を併せて含んでいてもよい。
【0035】
有機無機ハイブリッドにおいて、カルボニル基とケイ素原子との間、または芳香環とケイ素原子との間には、アルカンジイル基(炭素数が1から18までのもの)やエーテル基、カルボニル基、カルボキシル基、アミド基、ウレタン結合、尿素結合、イミド基、イミン基等のスペーサーとなる構造を挟んでもよい。なお、以下、芳香環とケイ素原子との間にスペーサーを有する構造を「芳香環非直結構造を有する」ともいう。芳香環とケイ素原子との間には、応答性感度の観点から、これらのスペーサーは挟まず、芳香族炭素原子が、上記有機無機ハイブリッドにおけるケイ素原子に直接的に原子間結合をしている(以下、「芳香環直結構造を有する」ともいう。)ことが好ましい。
【0036】
また、耐湿度影響性の観点から、本実施形態における有機無機ハイブリッドは、芳香環直結構造を有するモノマー単位と芳香環非直結構造を有し、かつカルボニル基を有するモノマー単位との共重合構造を含むことが好ましい。また、耐湿度影響性と様々なガス分子への選択性とを両立する観点から本実施形態における有機無機ハイブリッドは、芳香環直結構造を有するモノマー単位と芳香環構造を有し、かつカルボニル基を有するモノマー単位との共重合構造を含むことが好ましい。また、極性の高いガス・ニオイ分子への応答性の観点から、本実施形態における有機官能基は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ホウ素原子、及びリン原子からなる群より選択される1種以上の原子を含有する官能基を含むことが好ましい。これらの中でも、安定性の観点から、有機官能基は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びフッ素原子からなる群より選択される1種以上の原子を含有する官能基を含むことが好ましい。
【0037】
本実施形態における上記以外の有機官能基の具体例としては、以下に限定されないが、例えば、ハロゲン原子等の置換基を有してもよい直鎖状若しくは分岐状炭化水素基(例えば、3-クロロプロピル基、オクチル基等の直鎖状若しくは分岐状C1-8アルキル基)、ハロゲン原子等の置換基を有してもよい脂環炭化水素基(例えば、シクロヘキシル基等のC5-6シクロアルキル基)、不飽和結合を有する有機基(例えば、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基(例えば、(メタ)アクリロイルオキシプロピル基等の(メタ)アクリロイルオキシC1-3アルキル基))、酸素原子を有する有機基(例えば、エポキシ基、グリシジルオキシアルキル基(例えば、3-グリシジルオキシプロピル基等のグリシジルオキシC1-3アルキル基)、(エポキシシクロアルキル)アルキル基(例えば、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基等)、ヒドロキシ基、アルキルエーテル基)、硫黄原子を有する有機基(例えば、メルカプト基、メルカプトアルキル基(例えば、メルカプトプロピル基等のメルカプトC1-3アルキル基)、スルフィド基)、窒素原子を有する有機基(例えば、アミノ基(例えば、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基)、アミノアルキル基(例えば、アミノプロピル基等のアミノC1-3アルキル基)、(アミノアルキルアミノ)アルキル基(例えば、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピル基)、イミダゾリル基、イミダゾリルアルキル基(例えば、3-(2-イミダゾリン-1-イル)プロピル基)、アルキルアミノアルキル基(例えば、3-(ジメチルアミノ)プロピル基)、オキシム基、イミド基、イミン基、ニトリル基、)ハロゲン基、燐原子を有する有機基(例えば、ホスホン基、リン酸基)等があげられる。これらの中でも、有機官能基は、スループットに優れる観点から、アミド基を用いることが好ましい。入手性の観点から、置換基を有してもよい直鎖状又は分岐状炭化水素基、置換基を有してもよい脂環炭化水素基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基、グリシジルオキシアルキル基、(エポキシシクロアルキル)アルキル基、メルカプトアルキル基、アミノアルキル基、(アミノアルキルアミノ)アルキル基、イミダゾリルアルキル基、及びアルキルアミノアルキル基、ヒドロキシ基からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。これらの官能基は、適宜選択して用いることができ、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0038】
その中でも、有機官能基は、シランカップリング剤由来の有機官能基であることが好ましい。シランカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、アルコキシシラン、アセトキシシランもしくはクロロシラン等の加水分解性金属酸化物が挙げられる。これらの中でも、加水分解性金属酸化物は、取り扱い性、官能基の汎用性からアルコキシシランが好ましく、反応性の観点から3官能性のアルコキシシランがより好ましい。
【0039】
3官能性のアルコキシシランは1、2,4官能性のアルコキシシラン等と共重合されてもよいが、有機無機ハイブリッドのヤング率を上げ高感度化させる観点から4官能性のものとの共重合が好ましい。
【0040】
3官能性のアルコキシシランとしては、特に限定されないが、例えば、アルコキシ基にメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基を有するシランカップリング剤を使用することができる。
【0041】
芳香族系シランカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、フェニルトリアルコキシシラン、ニトロベンゼンアミドトリアルコキシシラン、ベンジルトリアルコキシシラン、4-クロロフェニルトリアルコキシシラン、フェニルアミノプロピルトリアルコキシシラン、4-アミノフェニルトリアルコキシシラン、ナフチルトリアルコキシシラン、4-メトキシトリアルコキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリアルコキシシラン、フェロセニルトリアルコキシシラン、ビフェニルトリアルコキシシラン、3―フリルトリアルコキシシラン、3-チエニルトリアルコキシシラン、2-ピリジルトリアルコキシシラン、3-ピリジルトリアルコキシシラン、4-ピリジルトリアルコキシシラン等が挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0042】
非芳香族系シランカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、シクロヘキシルトリアルコキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリアルコキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリアルコキシシラン、3-(ジメチルアミノ)プロピルトリアルコキシシラン、3-(2-イミダゾリン-1-イル)プロピルトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリアルコキシシラン、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリアルコキシシラン、3-(アクリロイルオキシ)プロピルトリアルコキシシラン、アリルトリアルコキシシラン、メチルトリアルコキシシラン、エチルトリアルコキシシラン、プロピルトリアルコキシシラン、ブチルアルコキシシラン、ヘキシルトリアルコキシシラン、オクチルトリアルコキシシラン、デシルトリアルコキシシラン、ドデシルトリアルコキシシラン、オクタデシルトリアルコキシシラン、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、シクロヘキシルアミノプロピルトリアルコキシシラン、ヘキサフルオロフェニルトリアルコキシシラン、3-クロロプロピルトリアルコキシシラン、3-ブロモプロピルトリアルコキシシラン、3-ピペラジノプロピルトリアルコキシシラン、3-モルフォリノプロピルトリアルコキシシラン、3-アリルアミノプロピルトリアルコキシシラン、ノルボルニルトリアルコキシシラン、ピペリジノプロピルトリアルコキシシラン等が挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0043】
2種類以上のシランカップリング剤を共重合する場合、芳香族系シランカップリング剤と非芳香族系シランカップリング剤の比率として、モル比で1:10から1:5であることが好ましく、耐熱性の点から1:5から1:1であることが好ましく、湿度下におけるシグナル強度低減の抑制の点から1:1から10:1であることが好ましい。
【0044】
本実施形態のセンサーにおける有機官能基については、センサー本体上の感応膜を走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)やX線光電子分光法(XPS)、赤外全反射吸収測定法(ATR)等の表面元素解析に供することにより、同定することができる。
【0045】
本実施形態において、湿度のある環境下での感度及び安定性の観点から、感応膜の体積分率としての空隙率は、10%以下となる。感度をより向上させる観点から5%以上がより好ましく、湿度下環境において感度の低減を抑制する観点から3%以下であることがさらに好ましい。上記空隙率は、例えば、フィラーとRSiO3/2で表される構造の比を調節すること等により上記範囲に調整することができる。また、上記空隙率は、特に限定されないが、例えば、以下の方法、又はこれと同等であることが当業者に理解される方法で測定される値である。
【0046】
ダイシングにより断面を形成した感応膜を加工台に固定した後、FIB Millingで加工を行い、断面SEM観察を行う。断面SEM観察で取得した像から凹凸微細構造層を切り出し、さらに有機無機ハイブリッド中に存在する空隙を抽出する。抽出については、取得像において空隙周辺がエッジ効果により明コントラストを有すること、また空隙自体は暗コントラストを有することを利用し、画像解析ソフトにて2値化処理を行ってもよく、凹凸微細構造層を白色に、空隙、基板および背景を黒色とする2値化処理を行ってもよい。また、2値化処理で追従しきれない部位については、手動による判別を行い補足してもよい。得られた空隙の抽出像にて、空隙に対応する部分の面積の、凹凸微細構造層及び空隙に対応する部分の面積に対する比を、凹凸微細構造層中の空隙率として算出できる。上記操作を数視野に対して行い、その数平均値を空隙率とすることができる。
【0047】
上記感応膜の体積分率としての空隙率は、好ましくは10%以下である。それにより、湿度が比較的高い条件下であっても電気シグナルを大きく減衰させることなくエタノールやアルデヒド等の高親水性のガスを高感度に測定することができ、更にはリフロー処理後、長時間使用後であっても感応膜の劣化がなく継続して測定することができる傾向にある。
【0048】
1.1.2.有機無機ハイブリッドの製造方法
有機無機ハイブリッドの製造方法としては、特に限定されないが、主にゾルゲル法を用いて製造される。具体的には、加水分解性シラン化合物(シランカップリング剤を含む)を水存在下で酸、塩基性条件下で加水分解及び縮合を行うことにより、シランカップリング剤の縮合体、すなわち、RSiO3/2で表される構造を含む有機無機ハイブリッドを得ることができる。
【0049】
その中でも加水分解及び縮合の反応速度を調節できる観点から、触媒の存在下で、シランカップリング剤を加水分解及び縮合、表面修飾することがより好ましい。
【0050】
触媒の種類としては、酸触媒及び塩基触媒が挙げられる。酸触媒としては、特に限定されないが、例えば、無機酸及び有機酸が挙げられる。無機酸としては、以下に限定されないが、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸、ホウ酸等が挙げられる。有機酸としては、以下に限定されないが、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、安息香酸、p-アミノ安息香酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、シトラコン酸、リンゴ酸、グルタル酸等が挙げられる。塩基触媒としては、例えば、無機塩基及び有機塩基が挙げられる。無機塩基としては、以下に限定されないが、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ又はアルカリ土類金属炭酸塩;炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム等の金属炭酸水素塩;等が挙げられる。有機塩基としては、以下に限定されないが、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン等のトリアルキルアミン;N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン等の炭素数1~4のN,N-ジアルキルアニリン誘導体;ピリジン、2,6-ルチジン等の、炭素数1~4のアルキル置換基を有していてもよいピリジン誘導体;等が挙げられる。これらの触媒は、1種で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0051】
さらに、上記加水分解及び縮合の反応系のpHを0.01~6.0の範囲、若しくはpH8~14になる量の触媒を加えることが、反応効率の点で好ましく、より効率を高めるためにはpH8~14の塩基性条件下でゾルゲル反応を行うことがより好ましい。
【0052】
また、有機無機ハイブリッドを製造するための加水分解及び縮合は、有機溶媒中で行うこともできる。縮合反応に使用できる有機溶媒としては、例えば、アルコール、エステル、ケトン、エーテル、脂肪族炭化水素化合物、芳香族炭化水素化合物、アミド化合物等が挙げられる。
【0053】
上記アルコールとしては、以下に限定されないが、特に限定されないが、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコールのような一価アルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールのような多価アルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルのような多価アルコールのモノエーテル類;等が挙げられる。
【0054】
上記エステルとしては、以下に限定されないが、特に限定されないが、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。ケトン類としては、以下に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン等が挙げられる。
【0055】
上記エーテルとしては、上記の多価アルコールのモノエーテル類の他に、特に限定されないが、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルのような多価アルコールの水酸基の全てをアルキルエーテル化した多価アルコールエーテル類;テトラヒドロフラン;1,4-ジオキサン;アニソール等が挙げられる。
【0056】
上記脂肪族炭化水素化合物としては、以下に限定されないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等が挙げられる。
【0057】
上記芳香族炭化水素化合物としては、以下に限定されないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0058】
上記アミド化合物としては、以下に限定されないが、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
【0059】
以上の溶媒の中でも、アルコールとしてメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等;ケトンとしてアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等;エーテルとしてエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等;及びアミド化合物としてジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等が水と混合しやすい点で好ましい。これらの溶媒は単独で使用してもよいし、複数の溶媒を組み合わせて使用してもよい。
【0060】
有機無機ハイブリッドにフィラーを配合する場合は、有機無機ハイブリッドはフィラーの存在下で製造してもよいし、有機無機ハイブリッドにフィラーを配合してもよい。市販の分散フィラーにシランカップリング剤の縮合物を溶解させてもよいし、フィラーとシランカップリング剤をボールミル、ジェットミル等で分散処理してもよいし、アルコキシシランとフィラーを同時に縮合反応することで製造することができるが、フィラーの溶剤分散性を高め、インクジェット塗布性を高める点でアルコキシシランとフィラーを同時に縮合する製造方法がより好ましい。コロイダルフィラーをシランカップリング剤存在下でゾルゲル法により処理した場合は、シランカップリング剤の縮合体がフィラーの表面を変性しながら隙間を埋めるように縮合体が配されることになりアルコキシシランの量を任意に調整することで細孔量を調整することができる。フィラー表面に水酸基が存在する場合、その表面水酸基とアルコキシシランの加水分解により生成される水酸基が相互作用、縮合反応によりエーテル結合を形成するため、フィラーと縮合体の相溶性を高めることができるため、より安定な感応膜を得ることができる。
【0061】
また、フィラーに対して有機官能基を用いて表面変性させることもでき、該変性は、分散媒に分散させた状態で表面修飾することにより行うことができる。具体的には、例えば、アルコール及び水を含む金属酸化物の均一分散液に、触媒存在下で上記シランカップリング剤を添加する工程により有機無機ハイブリッドが製造される。
【0062】
有機無機ハイブリッドは沈殿物、ゲル化物を遠心分離、ろ過により濾別することにより回収してもよいし、エバポレーター等で揮発性溶剤を除去することにより単離される。
【0063】
有機無機ハイブリッドに対する有機官能基の導入は、ATRにより確認することができる。波数1600~1800cm-1の領域の吸収ピークに基づいてカルボニル基(C=O結合)を同定することができる。C=O結合を有する置換基としては特に限定されないが、例えば、カルボニル基、アミド基、ウレア基、ウレタン基、エステル基、カルボン酸基、酸無水物基等が挙げられる。
【0064】
これらの中でも有機無機ハイブリッド合成の観点からアミド基、ウレア基、エステル基、が好ましく、有機溶媒への溶解性及びスループットの観点からアミド基がより好ましい。その理由としては以下のように考えられるが、以下に限定されない。アミド基の持つ窒素原子-水素原子間の結合(N-H結合)がインクとなる溶媒中の分子と水素結合をすることで溶解性が向上すためと考えられる。
【0065】
カルボニル基がアミド結合を形成するカルボニル基由来か否かは、3000~3400cm-1の領域のN-H結合の伸縮振動が観察されるか否かによって判断することができる。または、XPSのようなX線光電分光法等を用いても確認できる。
【0066】
波数1350~1450cm-1の領域における吸収ピークに基づいてケイ素原子-炭素原子間の結合(Si-C結合)を同定することができる。
【0067】
また、熱重量減少測定により確認することができる。吸着水の影響を除去するため150℃から1000℃までの、無機フィラー(i)と有機官能基(ii)を合わせた有機分の熱重量減少率が、感度の観点から、3%~75%であることが好ましく、湿度耐性の観点から5%~65%であることがより好ましく、更に熱安定性の観点から5%~60%であることが更に好ましい。すなわち、本実施形態における有機無機ハイブリッド中の有機官能基量としては、特に限定されないが、アナライトへの応答性と感応膜の安定性とのバランスの観点から、75重量%以下であることが好ましく、65重量%以下であることがより好ましい。
【0068】
1.2.フィラー
本実施形態における感応膜は、さらにフィラーを含むことが好ましい。フィラーを用いると、有機無機ハイブリッドのヤング率を向上させ、感度を高めることができる。本実施形態におけるフィラーとしては、特に限定されず、種々公知のものから選択することができる。具体例としては、以下に限定されないが、ポリスチレンやポリメチルメタクリレート、ポリフェニレンオキシド等のポリマービーズやアクリルラテックス等の球状粒子、窒化シリコン等の金属窒化物、シリカ、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化スズ等の金属酸化物、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、ITO等の複合金属化合物、金や銀、銅、パラジウム、白金、鉄、アルミニウム等の無機金属フィラーから選ばれる1種以上を含むことができる。
【0069】
本実施形態におけるフィラーとしては、分散性、塗布性の観点から、無機フィラーであることが好ましい。上記同様の観点から、本実施形態においては、シリカ、ジルコニア、チタニア、アルミナ等の金属化合物、金や銀、銅、パラジウム、白金、鉄、アルミニウム等の無機金属フィラーが好ましく、湿度下での水分によるシグナル減衰の影響が小さい点からシリカ、ジルコニア等の金属酸化物がより好ましく、経済性の観点からシリカであることがさらに好ましい。本発明者らは、特にシリカを用いる場合、湿度のある状態でもエタノール、アセトアルデヒド等の一般的な親水性ガスの応答の減衰がより顕著に改良されることを見出した。その理由としては、以下のように考えられるが、以下に限定する趣旨ではない。すなわち、シリカの骨格及びケイ素原子に結合した状態で存在する水酸基が、特許文献1のチタニア骨格もしくはチタン原子に結合した水酸基に比べて比較的疎水的であるため、疎水性相互作用により、水分由来の吸着阻害が抑制されるものと考えられる。
【0070】
フィラーの形状としては、特に限定されないが、好ましくは、球状、棒状、板状若しくは繊維状又はこれらの2種類以上が合体した形状であり、より好ましくは球状、鎖状である。なお、ここでいう球状とは、真球状の他、回転楕円体、卵形等も含む略球状を意味する。
【0071】
球状のフィラーのサイズとしては、特に限定するものではないが、インクの分散性を維持し、つまり等インクジェットでの塗布性を向上できる観点から、平均一次粒子径として、100μm以下が好ましく、感度を向上できる観点から500nm以下がさらに好ましく、より空隙を低減する観点から200nm以下であることがさらに好ましい。ここで、平均一次粒子径とは数平均での値を意味する。上記平均一次粒子径は、本明細書の実施例の項に記載の走査型電子顕微鏡を用いた方法、又はこれと同等であることが当業者に理解される方法で測定される粒子50個の数平均値である。
【0072】
鎖状のフィラーとしては、連続鎖状構造を有することが好ましく、例えば、球状の粒子が連続的に真直につながった構造、分岐してつながった構造、屈曲してつながった構造、環状につながった構造(「パールネックレス状」につながった構造ともいう。)、又は個々には連続した球状には観察されず糸状の構造が多数絡まりあった構造(「ネットワーク状」につながった構造ともいう。)が好ましい例として挙げられる。
【0073】
連続鎖状構造を構成するフィラーは、一概に球状を仮定して、一次粒子径で規定することは容易でないが、透過型又は走査型の電子顕微鏡観察により鎖幅を観察することができる。鎖幅としては、1nm~200nmであり、被表面積を大きくする観点から1nm~100nmであることが好ましく、ガス応答性の感度の観点から1nm~85nmであることがさらに好ましい。上記平均一次粒子径は、本明細書の実施例の項に記載の走査型電子顕微鏡を用いた方法、又はこれと同等であることが当業者に理解される方法で測定される粒子50個の数平均値であり、鎖幅として定義する。
【0074】
このようなフィラーとしての金属酸化物は、ゾルゲル法を用いてアルコキシ、クロロ等の4官能性加水分解基を有する金属酸化物前駆体のゾルゲル法によって製造することができるし、市販品を用いることもできる。4官能性の加水分解基を有する金属酸化物前駆体としてはテトラアルコキシシラン、テトラクロロシラン、テトラアルコキシチタン、テトラアセトキシジルコニウム等が挙げられる。これらの4官能性の加水分解性金属無機酸化物は3官能性の加水分解性金属酸化物と共重合してもよく、反応系の濃度、温度、pH、水分量等を調整することにより形状の制御を行うことができる。なお、例えばエマルジョン重合によりフィラーが製造された場合等、フィラー側にRSiO3/2で表される構造が得られることも考えられるが、感応膜中でこのような構造を持つフィラーについては本実施形態における有機無機ハイブリッドと扱うものとする。
【0075】
使用し得るフィラーの市販品としては、LEVASILシリーズ(H.C.Starck(株)製)、クオートロンP Lシリーズ(扶桑化学(株)製)、OSCALシリーズ(触媒化成工業(株)製)等;粉体状のシリカ粒子として、例えばアエロジル130、同300、同380、同TT600、同OX50(以上、日本アエロジル(株)製)、シルデックスH31、同H32、同H51、同H52、同H121、同H122(以上、旭硝子(株)製)、E220A、E220(以上、日本シリカ工業(株))、SYLYSIA470(富士シリシア(株)製)、SGフレーク(日本板硝子(株)製)等、IPA-ST, IPA-ST-L, IPA-ST-ZL, ST-XS,ST-S, ST-30,ST-50T, ST-30L,ST-YL, ST-ZL,MP-1040, MP-2040,MP-4540M,ST-OXS, ST-OS, ST-O, ST-O-40, ST-OL, ST-OYL, ST-NXS, ST-NS, ST-N, ST-N-40,ST-CXS,ST-C, ST-CM, ST-AK, ST-AK-L, ST-AK-YL,OZ-S30K,SZ-S30K-AC, OZ-S30M、セルナックス CX-S505M、IPA―ST-UP、MEK―ST―UP、ST―UP、ST-PS-S、ST-PS-M、ST-OUP、ST-PS―SO、ST-PS-MO、ST-AK-PS-S等(日産化学(株)製),SRD-K, SRD-M, SXR-CM, SZR-K, SZR-M(堺化学(株)製)があげられる。粉体状のフィラーとして、例えばアエロジル130、同300、同380、同TT600、同OX50(以上、日本アエロジル(株)製)、シルデックスH31、同H32、同H51、同H52、同H121、同H122(以上、旭硝子(株)製)、E220A、E220(以上、日本シリカ工業(株)製)、SYLYSIA470(富士シリシア(株)製)、SGフレーク(日本板硝子(株)製)等を挙げることができる。
【0076】
1.3.その他の成分
本実施形態における感応膜は、有機無機ハイブリッド以外に、特に限定されないが、例えば、任意の粒子、イオン性化合物、樹脂、及び低分子化合物等の成分を含んでもよい。上記成分は、特に限定されないが、例えば、塗布液に配合し、センサー本体の表面に塗布することにより、上記添加物を含む感応膜を有するセンサーを得ることができる。
【0077】
2.センサーの製造方法
本実施形態のセンサーの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、センサー本体上に感応膜を形成するための種々の方法により製造することができる。本実施形態における感応膜は、特に限定されないが、例えば、有機無機ハイブリッドを有機溶剤に分散させて塗布液を調製し、当該塗布液をセンサー本体上に塗布することにより製造される。塗布液をセンサーのチップ上に塗布する際には、インクジェット装置を好適に用いることができる。インクジェット装置によれば、塗布液の液滴(以下、インク、ともいう。)を射出し、インクがセンサー上に塗布され、感応膜が成膜される。チップ上に感応膜を形成した例を図1に示す。センサー1は、センサー本体に対応するチップ3と、その表面上に形成された感応膜2を有するものとして構成されており、図1に示す例において、このような構成を4箇所において備えている。
【0078】
有機無機ハイブリッドをセンサー本体(例えば、MSSセンサー本体)の表面に被覆するための手法は、特に限定されないが、例えば、ディップコーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、インクジェットスポッティング、キャスティング、ドクターブレードなどを用いた被覆方法が挙げられる。
【0079】
300μmφのMSSメンブレンに塗布するためには、インクジェット、マイクロジェット方式が好ましく、生産性の観点からマイクロジェット方式の塗布がより好ましい。
【0080】
感応膜は、例えば、有機無機ハイブリッドを有機溶剤に分散させ、その分散液をMSSチップ上に塗布することにより製造できる。有機無機ハイブリッドは、有機溶剤中に0.1g/L~50g/Lの濃度で分散されて塗布液となる。生産性の観点から、濃度は、0.5~50g/Lであることが好ましく、ノズルつまりを抑制する観点から、0.5~15g/Lであることがより好ましい。
【0081】
有機無機ハイブリッドを分散する有機溶媒としては、有機無機ハイブリッドが分散可能な溶媒であればよく、沸点としては80℃~250℃のものが好ましく、ノズルのつまりによる生産性の低下を抑制するためには100℃~250℃のものが好ましく、乾燥にかかる時間を早め、生産性を高めるために100℃~200℃であることがより好ましい。
【0082】
有機溶媒としては、以下に限定されないが、例えば、アルコール溶媒、エステル溶媒、ケトン溶媒、エーテル溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、アミド溶媒等が挙げられる。
【0083】
アルコール溶媒としては、以下に限定されないが、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等の一価アルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール等の多価アルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールのモノエーテル類;等が挙げられる。
【0084】
エステル溶媒としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。
【0085】
ケトン溶媒としては、以下に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン等が挙げられる。
【0086】
エーテル溶媒としては、以下に限定されないが、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等の多価アルコールの水酸基の全てをアルキルエーテル化した多価アルコールエーテル類;テトラヒドロフラン;1,4-ジオキサン;アニソール;等が挙げられる。
【0087】
脂肪族炭化水素溶媒としては、以下に限定されないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等が挙げられる。
【0088】
芳香族炭化水素溶媒としては、以下に限定されないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0089】
アミド溶媒としては、以下に限定されないが、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
【0090】
これらの有機溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0091】
これらの有機溶媒の中でも、安全性及び溶解性に優れることから、N,N-ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。特に、本実施形態の有機無機ハイブリッドが、有機官能基中にアミド基を有する場合は、スループットを向上させる観点から、有機溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミドを用いることが好ましい。その理由は、以下のように考えられるが、以下に限定されない。有機無機ハイブリッドが有するアミド基の持つ窒素原子-水素原子間の結合(N-H結合)がインクとなる溶媒中の分子と水素結合をすることで溶解性が向上するためと考えられる。
【実施例0092】
以下、実施例及び比較例により本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
【0093】
ピエゾ素子からなるセンサー本体の表面に対して、本実施形態の各例で作製した感応膜を被膜することで上記表面応力型センサーを作製し、各実施例及び比較例のセンサーの各種物性を以下の(1)~(3)に従って評価した。
【0094】
(1)有機無機ハイブリッドにおける有機官能基種の同定とピーク強度比の算出
下記の条件に基づき、センサー本体上の感応膜をATR法で測定することにより、有機無機ハイブリッドにおける有機官能基を同定した。同定した有機官能基の「波数1600~1800cm-1の領域における吸収ピークの極大の吸光度」/「1350~1450cm-1の領域における吸収ピークの極大の吸光度」(A/B)からピーク強度比を算出した。
【0095】
(測定条件)
使用装置;IRAffinity-1 :(島津社製)
測定方法;ATR法(プリズム:ZnSe)
検出器;DLATGS
アパーチャサイズ;auto
ATR結晶へのIR入射角 30°
分解能;4cm-1
積算回数;32scans
【0096】
(2)耐湿度影響性
25℃、エタノール250ppmを60分/窒素のみのパージを60分ずつ3度繰り返し、3度目のシグナルを採用した。100×(「乾燥下で測定された3度目のシグナルの強度」-「50RH%下で測定された3度目のシグナルの強度」)/(「乾燥下で測定された3度目のシグナルの強度」を減衰率(%)とし、当該減衰率を以て以下の評価基準により、耐湿度影響性を評価した。
[評価基準]
S:減衰率が20%以下である。
A:減衰率が20%超40%以下である。
B:減衰率が40%超60%以下である。
C:減衰率が60%超である。
【0097】
(3)スループット
有機無機ハイブリッドを有機溶剤に分散させ、インク濃度を15mg/mLとして塗布した際に、以下の評価基準により、スループットを評価した。
[評価基準]
A:塗布ができた。
B:ノズルが途中で詰まりスプリット等が生じた。
C:サンプルの沈殿が生じた。
【0098】
<実施例1>
2000mLセパラブルフラスコに水288g、28%アンモニア水32g、2-プロパノール188gに、フェニルトリメトキシシシラン43.4gと4-(トリメトキシシリル)ベンゼンアミン46.6gを2-プロパノール340gに溶解した溶液を加え80℃で3時間反応させた。反応液を空冷後、沈殿物をろ取単離した。エタノールでサンプルを十分に洗浄し80℃真空下で乾燥させたのち、2000mLセパラブルフラスコに沈殿物5gをN,N-ジメチルアセトアミド500mLに溶解しトリエチルアミン1.5gを加えたのち、0℃でo-トルオイルクロリド4.1gを添加し室温で30分反応させた。反応後、0℃に冷却した反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応終了し、酢酸エチルで3回分液抽出を行った後、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸マグネシウムで脱水したのちエバポレーターで減圧濃縮を行った。そこへ酢酸エチル10mLを加えて溶解させた溶液を撹拌中のヘキサン/酢酸エチル=10/1溶液中に滴下し析出した固体をろ取単離した。サンプルを十分に洗浄し80℃真空下で乾燥させたのち、DMFで15g/mLになるように溶解した。シリカ微粒子の2-プロパノール分散液IPA-ST-ZL(日産化学製品)をDMFで15mg/mLになるように調整した溶液と、先述の溶液を6:4の割合で混合し塗布液を得た。塗布液を、インクジェット装置を用いて1滴当たり300pLの量にて13滴を、40℃のホットプレート上に配したMSS表面上に塗布することにより感応膜付きの表面応力センサーを得た。その外観を図1に示す。
【0099】
上記(1)のとおりに有機官能基種の同定とピーク強度比の算出をした。結果は図2および表1に示す。上記(2)の方法に基づいて耐湿度の影響を検討した結果を図3に示す。湿度0%(乾燥下)では最大振幅4.52mVで湿度50%では2.86mVの最大振幅が得られた。前述の方法にて算出された耐湿度影響は37%であった。
さらに、上記(3)の方法でスループットについての評価を行った。インク濃度15mg/mlに溶解できなおかつ塗布ができたためAとした。
上述した方法と同様の要領にて、以降の実施例及び比較例についても評価を行うこととした。
【0100】
<実施例2>
2000mLセパラブルフラスコに水288g、28%アンモニア水32g、2-プロパノール340gに、フェニルトリメトキシシシラン71.5gと3-アミノプロピルトリメトキシシラン21.6gを2-プロパノール207gに溶解した溶液を加え80℃で3時間反応させた。反応液を空冷後、沈殿物をろ取単離した。エタノールでサンプルを十分に洗浄し80℃真空下で乾燥させたのち、2000mLセパラブルフラスコに沈殿物5gをN,N-ジメチルアセトアミド500mLに溶解しトリエチルアミン1.5gを加えたのち、0℃でp-トルオイルクロリド1.5gを添加し室温で30分反応させた。反応後、0℃に冷却した反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応終了し、酢酸エチルで3回分液抽出を行った後、Brineで洗浄、無水硫酸マグネシウムで脱水したのちエバポレーターで減圧濃縮を行った。そこへ酢酸エチル10mLを加えて溶解させた溶液を撹拌中のヘキサン溶液中に滴下し析出した固体をろ取単離した。以降の操作は実施例1に準じた。
【0101】
<実施例3>
p-トルオイルクロリド1.5gを2,4,6-トリクロロベンゾイルクロリド2.4gに変えた点以外は実施例2に準じて操作を行った。
【0102】
<実施例4>
p-トルオイルクロリド1.5gをアセチルクロリド0.8g、ヘキサン溶液中に滴下をヘキサン/酢酸エチル=10/1溶液中に滴下に変えた点以外は実施例2に準じて操作を行った。
【0103】
<実施例5>
p-トルオイルクロリド1.5gをメトキシアセチルクロリド1.1g、ヘキサン溶液中に滴下をヘキサン/酢酸エチル=10/1溶液中に滴下に変えた点以外は実施例2に準じて操作を行った。
【0104】
<実施例6>
p-トルオイルクロリド1.5gをペンタフルオロベンゾイルクロリド2.3g、ヘキサン溶液中に滴下をヘキサン/酢酸エチル=10/1溶液中に滴下に変えた点以外は実施例2に準じて操作を行った。
【0105】
<実施例7>
p-トルオイルクロリド1.5gを2,3,4,5-テトラフルオロベンゾイルクロリド2.1gに変えた点以外は実施例2に準じて操作を行った。
【0106】
<実施例8>
o-トルオイルクロリド4.1gを3,4-ジフルオロベンゾイルクロリド3.1g、ヘキサン/酢酸エチル=10/1溶液中に滴下をヘキサン溶液中に滴下に変えた点以外は実施例1に準じて操作を行った。
【0107】
<実施例9>
o-トルオイルクロリド4.1gをペンタフルオロベンゾイルクロリド4.1gに変えた点以外は実施例1に準じて操作を行った。
【0108】
<実施例10>
o-トルオイルクロリド4.1gを4-フェニルベンゾイルクロリド3.9g、ヘキサン/酢酸エチル=10/1溶液中に滴下をヘキサン/酢酸エチル=1/1溶液中に滴下に変えた点以外は実施例1に準じて操作を行った。
【0109】
<実施例11>
o-トルオイルクロリド4.1gを2-テノイルクロリド2.6g、ヘキサン/酢酸エチル=10/1溶液中に滴下をヘキサン/酢酸エチル=1/1溶液中に滴下に変えた点以外は実施例1に準じて操作を行った。
【0110】
<実施例12>
o-トルオイルクロリド4.1gをヘプタフルオロブチリルクロリド1.3g、ヘキサン/酢酸エチル=10/1溶液中に滴下をヘキサン溶液中に滴下に変えた点以外は実施例1に準じて操作を行った。
【0111】
<実施例13>
o-トルオイルクロリド4.1gを4-(トリフルオロメチル)ベンゾイルクロリド3.7gに変えた点以外は実施例1に準じて操作を行った。
【0112】
<実施例14>
o-トルオイルクロリド4.1gをメトキシアセチルクロリド1.9gに変えた点以外は実施例1に準じて操作を行った。
【0113】
<実施例15>
o-トルオイルクロリド4.1gを2-フロイルクロリド2.3g、ヘキサン/酢酸エチル=10/1溶液中に滴下をヘキサン/酢酸エチル=1/1溶液中に滴下に変えた点以外は実施例1に準じて操作を行った。
【0114】
<実施例16>
o-トルオイルクロリド4.1gをベンゾイルクロリド2.5g、ヘキサン/酢酸エチル=10/1溶液中に滴下をヘキサン/エタノール=7/3溶液中に滴下に変えた点以外は実施例1に準じて操作を行った。
【0115】
<実施例17>
o-トルオイルクロリド4.1gを2,4,6-トリクロロベンゾイルクロリド4.4g、ヘキサン/酢酸エチル=10/1溶液中に滴下をヘキサン/酢酸エチル=1/1溶液中に滴下に変えた点以外は実施例1に準じて操作を行った。
【0116】
<実施例18>
o-トルオイルクロリド4.1gをアセチルクロリド3.6g、ヘキサン/酢酸エチル=10/1溶液中に滴下をヘキサン/酢酸エチル=1/1溶液中に滴下に変えた点以外は実施例1に準じて操作を行った。
【0117】
<実施例19>
o-トルオイルクロリド4.1gを2,3,4,5-テトラフルオロベンゾイルクロリド3.8gにした点以外は実施例1に準じて操作を行った。
【0118】
<実施例20>
p-トルオイルクロリド1.5gをベンゾイルクロリド1.4g、ヘキサン溶液中に滴下をヘキサン/酢酸エチル=10/1溶液中に滴下に変えた点以外は実施例2に準じて操作を行った。
【0119】
<実施例21>
o-トルオイルクロリド4.1gを3,4-ジフルオロベンゾイルクロリド3.1gに変えた点以外は実施例1に準じて操作を行った。
【0120】
<実施例22>
2000mLセパラブルフラスコに水250g、28%アンモニア水17.2g、2-プロパノール110gに、4-(トリメトキシシリル)ベンゼンアミン50gを2-プロパノール230gに溶解した溶液を加え80℃で3時間反応させた。反応液を空冷後、沈殿物をろ取単離した。エタノールでサンプルを十分に洗浄し80℃真空下で乾燥させたのち、2000mLセパラブルフラスコに沈殿物5gをN,N-ジメチルアセトアミド500mLに溶解しトリエチルアミン1.5gを加えたのち、0℃でベンゾイルクロリド2.1gを添加し室温で30分反応させた。反応後、0℃に冷却した反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応終了し、酢酸エチルで3回分液抽出を行った後、Brineで洗浄、無水硫酸マグネシウムで脱水したのちエバポレーターで減圧濃縮を行った。そこへ酢酸エチル10mLを加えて溶解させた溶液を撹拌中のヘキサン/酢酸エチル=10/1溶液中に滴下し析出した固体をろ取単離した。以降は実施例1に準じて操作を行った。
【0121】
<実施例23>
o-トルオイルクロリド2.6gをo-トルオイルクロリド2.6gに変えた点以外は実施例22に準じて操作を行った。
【0122】
<実施例24>
p-トルオイルクロリド1.5gをジフェニルカルバモイルクロリド2.3g、ヘキサン溶液中に滴下をヘキサン/酢酸エチル=10/1溶液中に滴下に変えた点以外は実施例2に準じて操作を行った。
【0123】
<実施例25>
o-トルオイルクロリド4.1gをジフェニルカルバモイルクロリド4.1g、ヘキサン/酢酸エチル=10/1溶液中に滴下をヘキサン/酢酸エチル=1/1溶液中に滴下に変えた点以外は実施例1に準じて操作を行った。
【0124】
<実施例26>
500mLセパラブルフラスコに水9.4g、28%アンモニア水1.0g、2-プロパノール14.9gに、エチル‐4-(トリエトキシシリル)ベンゾエート4.8gを2-プロパノール14.1gに溶解した溶液を加え80℃で3時間反応させた。反応液を空冷後、沈殿物をろ取単離した。サンプルを十分に洗浄し80℃真空下で乾燥させたのち、DMFで15g/mLになるように溶解した。以降は実施例1に準じて操作を行った。
【0125】
<比較例1>
ポリスチレン(Aldrich社製、重量平均分子量35000)をDMFで10g/mLになるように溶解した。2-プロパノール分散液IPA-ST-ZL(日産化学製品)をDMFで10mg/mLになるように調整した溶液と、先述の溶液を6:4の割合で混合し塗布液を得た。塗布液を、インクジェット装置を用いて1滴当たり300pLの量にて20滴を、40℃のホットプレート上に配したMSS表面上に塗布することにより感応膜付きの表面応力センサーを得た。
実施例1と同様に、湿度0%と30%でのエタノール100ppmに対する応答シグナルを確認した結果を図4に示す。スループットについての評価を行った。インク濃度15mg/mLのとき、サンプルの沈殿が生じたためCとした。
【0126】
<比較例2>
シリカチタニア粒子(粒状)はWO2016/121155公報に記載の方法に準じて合成した。オクタデシルアミン(ODA)が溶解したアンモニア塩基性のイソプロパノール(IPA)水溶液中における、アミノプロピルトリメトキシシランとチタニウムテトライソプロポキシド(TTIP)の共加水分解、縮合重合反応により合成した。上記合成反応は、マイクロメートルサイズのY字型流路を有するテフロン(登録商標)製マイクロリアクタを用いて実施した。前駆溶液は、溶液1:アミノプロピルトリメトキシシラン/IPA、溶液2:HO/IPA/アンモニア、溶液3:TTIP/IPA、溶液4:HO/IPAの4つとし、溶液1から溶液4まで体積を揃えて調製した。前駆溶液はシリンジポンプにより同時に一定速度で送液した。溶液1と溶液2、溶液3と溶液4を並列したマイクロリアクタ内でそれぞれ混合し、両リアクタからの吐出液をさらに別のマイクロリアクタ内で混合することにより、1つの反応液とした。反応液は別途調製しておいた前駆溶液5:ODA/H2O/IPA中へ吐出し、吐出終了まで一定速度で撹拌した。その後、室温で静置し、ナノ粒子(NH-STNP)分散液を得た。かかるナノ粒子にRSiO3/2で表される構造が確認されたため、これを有機無機ハイブリッドと扱った。反応液を空冷後、6000rpm, 10分間遠心分離することで沈殿物を単離した。さらに沈殿物をDMAcに溶解しトリエチルアミン存在下ベンゾイルクロライドに反応させアミノ基をアミドに変性した。それを、N,N-ジメチルホルムアミドで1g/mLになるように溶解し、塗布液を得た。塗布液を、マイクロジェットを用いて1滴当たり300pLの量にて300滴を80℃のホットプレート上に配したMSS表面上に塗布することにより感応膜付きの表面応力センサーを得た。スループットについての評価を行った。インク濃度15mg/mLのとき、サンプルの沈殿が生じたためCとした。
【0127】
<比較例3>
2000mLセパラブルフラスコに水180g、28%アンモニア水20g、2-プロパノール215gに、フェニルトリメトキシシシラン54.2gを2-プロパノール120gに溶解した溶液を加え80℃で3時間反応させた。反応液を空冷後、沈殿物をろ取単離した。エタノールでサンプルを十分に洗浄し80℃真空下で乾燥させたのち、DMFで10g/mLになるように溶解した。2-プロパノール分散液IPA-ST-ZL(日産化学製品)をDMFで10mg/mLになるように調整した溶液と、先述の溶液を6:4の割合で混合し塗布液を得た。塗布液を、インクジェット装置を用いて1滴当たり300pLの量にて20滴を、40℃のホットプレート上に配したMSS表面上に塗布することにより感応膜付きの表面応力センサーを得た。スループットについての評価を行った。インク濃度15mg/mLのとき、ノズルが途中で詰まりスプリット等が生じたためBとした。その外観を図1に示す。
【0128】
上記各実施例及び比較例について上記測定(1)~(3)を行った結果を次の表1に示す。
【0129】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明のセンサーは、呼気検査やホテル、自動車、工場での匂い管理などに嗅覚センサーとして利用可能である。
図1
図2
図3
図4