(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151255
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】排ガス中のN2O排出量低減方法および制御装置
(51)【国際特許分類】
F23G 5/50 20060101AFI20231005BHJP
F23L 5/02 20060101ALI20231005BHJP
F23G 5/46 20060101ALI20231005BHJP
F23G 5/30 20060101ALI20231005BHJP
F23N 3/08 20060101ALN20231005BHJP
【FI】
F23G5/50 E
F23G5/50 H
F23L5/02
F23G5/46 A
F23G5/50 Z
F23G5/30 B
F23G5/30 M
F23N3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060766
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090985
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100093388
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 喜三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100093506
【弁理士】
【氏名又は名称】小野寺 洋二
(74)【代理人】
【識別番号】100206302
【弁理士】
【氏名又は名称】落志 雅美
(72)【発明者】
【氏名】杉原 全信
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 均
【テーマコード(参考)】
3K003
3K023
3K062
3K065
【Fターム(参考)】
3K003JA05
3K003KA02
3K003LA05
3K003MA05
3K023HA06
3K062AA11
3K062AB01
3K062AC02
3K062BA02
3K062BB04
3K065AA11
3K065AB01
3K065AC02
3K065BA02
3K065JA05
3K065JA15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】N
2O分解に必要な焼却温度を維持するにあたり、焼却設備の耐熱性等を向上させることでコストを増大させることなく、N
2Oの排出量を確実にする流動焼却炉における運転方法およびその装置の提供。
【解決手段】汚泥を主たる焼却対象とする焼却対象物を焼却する流動焼却炉2を制御するための排ガス中のN
2O排出量を低減する方法であって、前記流動焼却炉内で発生するガスに基づいて、前記流動焼却炉から排出される排ガス量を算出し、あるいは排ガス量を直接測定し、算出あるいは測定された前記排ガス量に基づいて前記流動焼却炉の空塔速度を算出し、過給機50から供給される圧縮空気の圧力を調節して、前記空塔速度を制御することを特徴とする排ガス中のN
2O排出量低減方法、および、N
2O排出量低減を実行する制御プログラムに基づいて動作する制御装置90。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥を主たる焼却対象とする焼却対象物を焼却する流動焼却炉を制御するための排ガス中のN2O排出量を低減する方法であって、
前記流動焼却炉内で発生するガスに基づいて、前記流動焼却炉から排出される排ガス量を算出し、あるいは排ガス量を直接測定し、
算出あるいは測定された前記排ガス量に基づいて前記流動焼却炉の空塔速度を算出し、
過給機から供給される圧縮空気の圧力を調節して、前記空塔速度を制御することを特徴とする排ガス中のN2O排出量低減方法。
【請求項2】
前記空塔速度を設定された最小値と比較し、空塔速度が最小値を下回ったならば過給機の排ガスバイパス路途中の調節弁の開度を大きくし、過給機へ送る排ガス量を少なくして過給機の回転数を低下させるとともに余剰空気調節弁の開度を小さくして、前記供給路以降の圧力を保つようにし、
前記空塔速度を設定された最大値と比較し、空塔速度が最大値を上回ったならば過給機の排ガスバイパス路途中の調節弁の開度を小さくし、過給機へ送る排ガス量を多くして過給機の回転数を増加させるとともに余剰空気調節弁の開度を大きくして、前記供給路以降の圧力を保つようにすることを特徴とする請求項1に記載の排ガス中のN2O排出量低減方法。
【請求項3】
前記空塔速度と、相関式算出N2OとN2O測定値の乖離との関係において、乖離が0以下となる空塔速度に制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の排ガス中のN2O排出量低減方法。
【請求項4】
汚泥を主たる焼却対象とする焼却対象物を焼却する流動焼却炉を制御するための排ガス中のN2O排出量を低減する方法であって、
前記流動焼却炉内で発生するガスに基づいて、前記流動焼却炉から排出される排ガス量を算出し、あるいは排ガス量を直接測定し、
算出あるいは測定された前記排ガス量に基づいて前記流動焼却炉の空塔速度を算出し、
過給機から供給される圧縮空気の圧力を調節して、前記空塔速度を制御することを特徴とする排ガス中のN2O排出量低減を実行する制御プログラムに基づいて動作する制御装置。
【請求項5】
前記空塔速度を設定された最小値と比較し、空塔速度が最小値を下回ったならば過給機の排ガスバイパス路途中の調節弁の開度を大きくし、過給機へ送る排ガス量を少なくして過給機の回転数を低下させるとともに余剰空気調節弁の開度を小さくして、前記供給路以降の圧力を保つようにし、
前記空塔速度を設定された最大値と比較し、空塔速度が最大値を上回ったならば過給機の排ガスバイパス路途中の調節弁の開度を小さくし、過給機へ送る排ガス量を多くして過給機の回転数を増加させるとともに余剰空気調節弁の開度を大きくして、前記供給路以降の圧力を保つようにすることを特徴とする請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記空塔速度と、相関式算出N2OとN2O測定値の乖離との関係において、乖離が0以下となる空塔速度に制御することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥等の焼却炉内で流動する流動媒体の流動状態を制御する流動焼却炉の制御に係り、特に、流動焼却炉内の燃焼ガス滞留時間調整における温室効果ガスであるN2O排出量低減方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流動焼却炉は、炉に入れた砂等の流動媒体を炉の下部から送り込まれる空気により流動させて流動層(流動床)を生成し、熱せられた流動層内に投入された下水汚泥または都市ゴミ等の焼却対象物を流動媒体とともに撹拌させて焼却する焼却炉である。流動焼却炉内の流動状態は、炉に供給する空気(単に供給空気、燃焼空気、流動空気あるいは予熱空気とも称す。)、焼却対象物や補助燃料等の量、および炉内の温度、圧力に依存して変化し、流動状態を安定させて燃焼状態を最適にすることは、焼却対象物の燃焼効率を上げるために重要である。
また、焼却対象物に含まれる有機成分を焼却する際の排ガスから生じる温室効果ガスの1つであるN2O(亜酸化窒素)の排出を、地球温暖化防止のために低減していく必要がある。
【0003】
例えば、流動焼却炉において、炉内の明るさ、焼却対象物の供給量、温度、酸素濃度または炉内の圧力に応じて流動媒体を流動させるために炉内に供給する空気量を調節する手法が提案されている(特許文献1参照)。
また、流動焼却炉において、排ガスの酸素濃度と炉内上部の水分濃度とに基づいて下水汚泥のケーキの含水率の増減を推定し、推定結果に基づいて炉に供給する空気の量、炉内温度、炉に供給する焼却対象物の量等を調節することで、燃焼の安定化を計る手法が提案されている(特許文献2参照)。
排ガス、特に、N2O(以下、N2Oと記す)やNOxの排出量の低減に関しては、アンモニア系の還元剤と多孔性流動媒体のスラリー状混合物を炉内に噴射する方法が知られている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3108742号公報
【特許文献2】特開2004-125332号公報
【特許文献3】特許第5640120号公報
【特許文献4】特開2020-159655号公報
【0005】
下水汚泥の排出量は年々増加しており、その内の約70%は、焼却処理されている。汚泥は、それを燃焼させた際手他の燃料と比べて窒素含有量が非常に高く、焼却処理によってN2Oが排出されることが懸念されている。
過給式流動焼却炉システムは圧力下の燃焼による高温域の形成で、燃焼排ガスに含まれるN2Oを低減できる。
過給式流動焼却炉においては、流動床で燃焼させる燃焼(汚泥等)を炉頂、炉出口にかけ、例えば870~880℃の温度で燃焼し温室効果ガスである一酸化二窒素(N2O)を分解させる。なお、N2Oの温室効果はCO2換算量で298倍である)。
焼却炉の温度調節は、脱水汚泥性状に応じて炉内温度を維持するために、補助燃料供給による燃焼(助燃状態)、または、脱水汚泥の水分が少なく燃えやすい場合、補助燃料を供給せず、炉内温度が高まるときに炉内注水によって冷却する状態の燃焼(自燃状態)による温度調整を行っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この種の流動焼却炉では、焼却炉内の流動状態を示す指標の1つに空塔速度がある。例えば、流動焼却炉を設計する際には、所定の焼却負荷での運転時に適した空塔速度が設定され、設定された空塔速度で焼却対象物が焼却されるように焼却炉の大きさや流動媒体の粒子径等が決められる。炉内の流動状態は炉内の空塔速度と相関があるため、設計値ではない運転中の空塔速度を求めることができれば流動状態を間接的に確認することが可能である。
例えば、空塔速度が適正範囲を下回り、流動媒体の流動不足が発生すると、燃焼効率が低下し、さらに、燃焼により発生した灰が炉から排出されにくくなることにより炉内の流動砂に灰分を含めた流動媒体が増加してしまう。
【0007】
一方、空塔速度が適正範囲を上回り、流動媒体が過剰に流動すると、良好に排出される灰に加えさらに流動砂である流動媒体が炉外に飛散し、炉内の流動媒体が減少してしまう。増加した流動媒体の炉からの引き抜き、および減少した流動媒体の炉への補充は、流動焼却炉の運転コストを上昇させる。したがって、空塔速度が適正範囲に収まるように流動焼却炉を運転することが望ましい。
【0008】
しかしながら、焼却炉内の空塔速度は、炉に供給される空気の量だけでなく、焼却対象物、補助燃料の燃焼や炉内注水により発生するガスの量に依存して変化する。このため、例えば、空気の供給量だけを用いて求めた空塔速度では、炉内の流動状態を正確に表すことは困難である。
【0009】
特許文献1では、設計時に各要素制御の結果により制御可能な空塔速度範囲を設定しているが、上述のように実際の空塔速度の計測が難しく実施されていない。
【0010】
また、排出ガスのうち、特に、N2O排出量を低減するためには、高温でN2Oを分解することが行われる。後述の実施の形態では、N2Oの排出量低減を例として説明する。
【0011】
図3は炉内最高温度とN
2O排出係数の相関例を説明する図で、横軸に炉内最高温度[℃]を、縦軸に脱水ケーキ乾燥重量あたりのN
2O排出係数[kg-N
2O/t-DS]を取って相関式を近似したものである。N
2Oの分解は、
図3に示されるように、炉内温度と相関関係にある。
【0012】
しかし、更なるN
2Oの分解をするために温度を上げると、
図3の近似曲線から明らかなように、N
2Oの減少量が低下する。そのため、N
2Oの排出量低減の要求に対して炉内温度の高温化のみでの対応は難しくなってくる。
【0013】
炉内温度を更に上昇させることでN2Oの分解促進が可能であるとしても、より局所的に高温場の発生による弊害、空気予熱器流入排ガス温度の高温化や炉出口温度の上昇による飛灰の溶融付着による弊害を生じる可能性が高くなってしまい、焼却設備の耐熱性向上や飛灰の溶融付着対策のためのコストが増大し、N2O分解のために運転管理対策を別途施す必要がある。
【0014】
本発明の目的は、N2O分解に必要な焼却温度を維持するにあたり、焼却設備の耐熱性等を向上させることでコストを増大させることなく、N2Oの排出量を確実にする流動焼却炉における運転方法およびその装置、より詳しくは流動焼却炉内ガス滞留時間調整についての運転指標を実現するN2O排出量低減制御方法および制御装置を提供することにある。
【0015】
さらに、低含水率の汚泥を焼却する過給式流動焼却において、自然状態の場合、炉内温度が高まって注水量が増加し、炉内の排ガスの滞留時間が短くなってN2Oが増加するので、過給機で圧力を増加させて炉内空塔速度(以降、スペースレートと称す。)を抑え、炉内で生じる排ガスの滞留時間を増やすことでN2O排出量を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するための本発明に係るN2O低減技術は、温度条件以外に炉内で発生するガスの炉内滞留時間に着目し、炉内滞留時間もN2O低減の指標としたことを特徴とする。
【0017】
上記したように、N
2Oの排出量抑制には、炉内の排出ガス最高温度に相関があると考えられていたが、本発明者等の研究により、炉内ガス滞留時間にも相関があることが判明した。すなわち、後述するように、炉内ガス滞留時間の増加に伴いN
2Oの排出量が抑制されるという反比例関係を明らかにしている。なお、これは特許文献3の
図3にも上述の相関性を示唆するデータが認められる。
【0018】
上記の炉内ガス滞留時間を長くするためには、(1)炉を大きくする、(2)炉内の排ガススペースレートを小さくする、といった二つの方法がある。スペースレートは、
図1で示す汚泥供給装置10からの汚泥等の焼却対象物〔供給汚泥量計測器82(F3のプロセス値)〕、炉内注水を行う水供給装置15の水〔供給水量計測器83(F4のプロセス値)〕、燃料供給装置20の重油などの燃料〔供給燃料量計測器84(F5のプロセス値)〕、及び、流動焼却炉2への燃焼空気〔空気予熱器空気量計測器27(F2のプロセス値)〕の各供給量に基づき、流動焼却炉内からのガス発生量を算出して求める。流動焼却炉2からの排ガス発生量は直接測定してもよいし、排ガス中の灰の影響で測定が困難な場合には、集塵機40出口以降の下流の排ガス経路(供給路41等)で排ガス量を測定するようにしてもよい。
【0019】
各計測器で指示する各供給量からスペースレートを求める場合、先ず各供給量から質量流量を算出しておき、容積流量に換算してガス発生量を求めスペースレートを算出する。焼却対象物のガス発生量の算出については、例えば、測定装置や分析作業による含水率、有機成分率および元素組成に基づいて前記焼却対象物を焼却した場合の前記ガス発生量を算出する。リアルタイムでの測定値でなく、日常的に測定装置や分析作業での値を統計的に整理した値を使用して、焼却対象物のガス発生量を算出することでよい。
【0020】
前記(1)は設備コストの増大につながることから、通常前記(2)で対応する。炉内の排ガスのスペースレートを小さくするためには、質量流量が一定であるならば、炉内圧力を大きくすることが有効である。すなわち炉内で生じる排ガスの滞留時間を長くすることで、N2Oを分解抑制するためのスペースレートを保持させるのである。
【0021】
このように、N
2Oの分解は、前記で説明した
図3に示される温度相関以外に、高温度場でのガス滞留時間に比例した分解が行われる。本発明では、炉内で生ずるガスが炉内を通過する速度(スペースレート)を指標に炉内滞留時間を十分に確保する運転手法を採用することでN
2Oの低減を図った。
【0022】
同種の手法として、特許文献4があるが、本発明は、N2Oの分解における高温場炉内ガス滞留時間を目的としたスペースレート管理・調整を、上述の「運転圧力による調整」の技術を応用し、N2Oの低減を図る構成および方法とした点に特徴を有する。
【0023】
本発明では、(a):例えば、低含水率の汚泥を焼却する過給式流動炉において、自燃状態の場合、炉内温度が高まって注水量が増加し、炉内高温場の滞留時間が短くなってN2Oが増加するので、過給機で圧力を増加させて炉内スペースレートを抑えることで滞留時間を増やしてN2O排出量を低減するようにした。
【0024】
また、(b):増加した圧力を保つために、流動空気の一部を余剰空気逃し経路中にある
図1で示す調節弁49で排出するようにした。余剰空気を逃さないと流動焼却炉内の流動床3で流動不良となって焼却対象物の不完全燃焼につながるほどにスペースレートが小さくなりすぎてしまうので、適切なスペースレートにするために余剰空気を逃して増加した圧力を保つのである。
【0025】
本発明に係るN2O排出量低減制御手段の代表的な特徴を列挙すれば、以下のとおりである。なお、ここでは、発明の理解を容易にするため、各構成に後述する実施の形態で説明する図面で使用される符号を併記するが、本発明はこの符号で示される具体的な構成要素に限定されるものではない。
【0026】
汚泥を主たる焼却対象とする焼却対象物を焼却する流動焼却炉における排ガス中のN2O排出量低減方法ついては以下の〔1〕~〔3〕のとおりである。
〔1〕汚泥を主たる焼却対象とする焼却対象物を焼却する流動焼却炉を制御するための排ガス中のN2O排出量を低減する方法であって、前記流動焼却炉内で発生するガスに基づいて、前記流動焼却炉から排出される排ガス量を算出し、あるいは排ガス量を直接測定し、算出あるいは測定された前記排ガス量に基づいて前記流動焼却炉の空塔速度を算出し、過給機から供給される圧縮空気の圧力を調節して、前記空塔速度を制御することを特徴とする排ガス中のN2O排出量低減方法。
〔2〕前記空塔速度を設定された最小値と比較し、空塔速度が最小値を下回ったならば過給機の排ガスバイパス路途中の調節弁の開度を大きくし、過給機へ送る排ガス量を少なくして過給機の回転数を低下させるとともに余剰空気調節弁の開度を小さくして、前記供給路以降の圧力を保つようにし、前記空塔速度を設定された最大値と比較し、空塔速度が最大値を上回ったならば過給機の排ガスバイパス路途中の調節弁の開度を小さくし、過給機へ送る排ガス量を多くして過給機の回転数を増加させるとともに余剰空気調節弁の開度を大きくして、前記供給路以降の圧力を保つようにすることを特徴とする〔1〕に記載の排ガス中のN2O排出量低減方法。
〔3〕前記空塔速度と、相関式算出N2OとN2O測定値の乖離との関係において、乖離が0以下となる空塔速度に制御することを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載の排ガス中のN2O排出量低減方法。
【0027】
汚泥を主たる焼却対象とする焼却対象物を焼却する流動焼却炉における排ガス中のN2O排出量低減装置ついては以下の〔4〕~〔6〕のとおりである。
〔4〕汚泥を主たる焼却対象とする焼却対象物を焼却する流動焼却炉を制御するための排ガス中のN2O排出量を低減する方法であって、前記流動焼却炉内で発生するガスに基づいて、前記流動焼却炉から排出される排ガス量を算出し、あるいは排ガス量を直接測定し、算出あるいは測定された前記排ガス量に基づいて前記流動焼却炉の空塔速度を算出し、過給機から供給される圧縮空気の圧力を調節して、前記空塔速度を制御することを特徴とする排ガス中のN2O排出量低減を実行する制御プログラムに基づいて動作する制御装置。
〔5〕前記空塔速度を設定された最小値と比較し、空塔速度が最小値を下回ったならば過給機の排ガスバイパス路途中の調節弁の開度を大きくし、過給機へ送る排ガス量を少なくして過給機の回転数を低下させるとともに余剰空気調節弁の開度を小さくして、前記供給路以降の圧力を保つようにし、前記空塔速度を設定された最大値と比較し、空塔速度が最大値を上回ったならば過給機の排ガスバイパス路途中の調節弁の開度を小さくし、過給機へ送る排ガス量を多くして過給機の回転数を増加させるとともに余剰空気調節弁の開度を大きくして、前記供給路以降の圧力を保つようにすることを特徴とする〔4〕に記載の制御装置。
〔6〕前記空塔速度と、相関式算出N2OとN2O測定値の乖離との関係において、乖離が0以下となる空塔速度に制御することを特徴とする〔4〕または〔5〕に記載の制御装置。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、N2O分解に必要な焼却温度を維持するにあたり、流動焼却設備の耐熱性等を向上させることでコストを増大させることなく、N2Oの排出量を確実にすることができると共に、下記の効果を得ることができる。
【0029】
低含水で固形物の量が多い脱水汚泥(ケーキ)を焼却するとき、N2O発生量は固形物量に相関する。低含水で固形物量が多い脱水汚泥は発熱量が高いため、自燃状態となりやすい。自燃時には炉内温度が上昇しやすいことから炉内注水量が増加する。炉内注水により炉内温度が抑えられるが、排ガス量が増加するので、炉内スペースレートが速くなり、炉内高温場のガス滞留時間が短くなる。そして後述するようにN2Oの分解が減じてしまう。そこで、運転圧力を上昇させ、スペースレートを遅くして排ガス滞留時間を増やすことで、N2Oの分解反応が保持されN2O排出量を増加させない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】第1の実施形態における流動焼却炉の制御装置を含む焼却システムの一例を示す概要図である。
【
図2】空気予熱器の構造の一例を示す断面図である。
【
図3】炉内最高温度とN
2O排出係数の相関例を説明する図である。
【
図4】炉内スペ-スレート[m/sec]に対する
図3における相関式から求めた算出N
2Oと分析装置で測定した排ガスのN
2O測定値の乖離[%]を説明する図である。
【
図5】制御装置が実行する演算の流れを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本実施形態について図面を参照して説明する。
図は第1の実施形態における流動焼却炉の制御装置を含む焼却システムの一例を示す概要図、
図2は空気予熱器の構造の一例を示す断面図である。
以下、本実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態における流動焼却炉の制御装置を含む焼却システムの一例を示す。
【0032】
図1に示す焼却システム1は、流動焼却炉2、汚泥(ケーキ)供給装置10、水供給装置15、燃料供給装置20、空気予熱器30、集塵機40、過給機50、起動用ブロワ60、白煙防止ファン70、制御装置90からなる。
なお白煙防止ファン70は取り込んだ空気を下流にある白煙防止器75に送り込み、白煙防止器75は、白煙防止ファン70から送り込まれる空気と、供給路42を介して供給される過給機50から排出される排ガスと熱交換して昇温させる。昇温された空気は下流にある排煙処理塔80に向けて送られる。
また、焼却システム1は、温度計23、24、圧力計25、空気予熱器空気量計測器26、27、過給機回転数計測機器28を有している。
図1における空気予熱器空気量計測器27に記載されているF2は、過給機50から空気予熱器30へ供給する圧縮空気量を表す。
【0033】
例えば、本発明の実施態様において流動焼却炉2は、過給式の流動焼却炉である。流動焼却炉2は、昇温された圧縮空気を焼却炉2に供給し、高温・高圧の状態で焼却炉2内の焼却対象物を燃焼することで、燃焼速度を高くすることができ、N2Oの有害物質の排出量を減らすことができる。
なお、以下の説明では、流動焼却炉2は、単に焼却炉2とも称される。
【0034】
矢印の付いた太い実線は、汚泥(ケーキ)、補助燃料、空気、水又は排ガスの供給路(供給管)を示し、矢印の付いた破線は、バイパス路を示す。
矢印の付いた細い実線(例えば、〈1〉圧力計25から調節弁48(CV4)に接続されている線、〈2〉調節弁48(CV4)から過給機回転数計測機器28に、〈3〉過給機回転数計測機器28から空気予熱器空気量計測器27に、〈4〉空気予熱器空気量計測器27から調節弁49(CV5)に接続されている線、〈5〉温度計23から調節弁17(CV2)、調節弁22(CV1)に接続されている線、〈6〉調節弁17(CV2)から温度計24に接続されている線、〈7〉温度計24から調節弁47(CV3)に接続されている線、〈8〉空気予熱器空気量計測器26から調節弁47(CV3)に接続されている線等)は、制御装置からこれらの調節弁に制御信号を送る信号線を示す。
例えば、制御装置90は、圧力計25からの圧力値を受け、該圧力値に基づいて開度指令信号を調節弁48(CV4)に送り、前記調節弁48の開度を調節する。
【0035】
流動焼却炉2は、炉内に流動床3、予熱空気取入口4、始動用バーナ5を備えている。また、汚泥(ケーキ)供給装置10に接続された供給路(汚泥供給管)11から供給される汚泥を取り込む汚泥込み口(図示しない)、水供給装置15に接続された供給路(水供給管)16から供給される水(注水)を取り込む水(注水)取込口(図示しない)、燃料供給装置20に接続された供給路(燃料供給管)21から供給される補助燃料を取り込む燃料取込口(図示しない)が設けられている。
汚泥(ケーキ)供給装置10は、下水処理設備から送られてホッパ(図示しない)に貯められた下水汚泥のケーキを供給管11から焼却炉2に順次供給する。
【0036】
水供給装置15は、接続された供給管16から水(注水)を焼却炉2内へ送り込むことで焼却炉2内の燃焼温度を調整し、燃料供給装置20は、接続された供給管21から補助燃料を焼却炉2内へ送り込むことで焼却炉2内の燃焼温度を調整する。
水供給管16には、調節弁17(CV2)が、燃料供給管21には、調節弁22(CV1)が設けられている。
調節弁17(CV2)及び調節弁22(CV1)は、制御装置90に接続されていて該制御装置90から出力される制御信号に応じて開度が調節される。
【0037】
温度計23は、流動焼却炉2内に備えている流動床3の温度を計測する。温度計23は、制御装置90に接続されていて計測された温度値を該制御装置90に出力する。
温度計24は、空気予熱器30から流動焼却炉2内に供給される余熱空気の温度を計測する。温度計24は、制御装置90に接続されていて計測された温度値を該制御装置90に出力する。
【0038】
圧力計25は、流動焼却炉2内の排ガスの圧力を計測する。圧力計25は、制御装置90に接続されていて計測された圧力値を該制御装置90に出力する。
空気予熱器空気量計測器26は、過給機50から空気予熱器30に供給される圧縮空気量を計測する。空気予熱器空気量計測器26は、制御装置90に接続されていて計測された圧縮空気量値を該制御装置90に出力する。
【0039】
空気予熱器空気量計測器27は、過給機50から供給される圧縮空気量を計測する。空気予熱器空気量計測器27は、制御装置90に接続されていて計測された圧縮空気量値を該制御装置90に出力する。
回転数計測器28は、過給機50の回転数を計測する。回転数計測器28は、制御装置90に接続されていて計測された回転数値を該制御装置90に出力する。
【0040】
図2は、空気予熱器の構造の一例を示す断面図である。
前記空気予熱器30は、円筒の筐体30aからなり、該筐体30aの内部を仕切り板30cで仕切り上部の並流式の熱交換室30dと下部の向流式の熱交室30eを設けて構成される。
30fは高温側管板、30gは低温側管板、30hは伝熱管、30iはバッフルプレート、30jは排ガス排出室、30kは上部の並流式の熱交換室30dに圧縮空気を送る圧縮空気導入ヘッダー、30mは下部の向流式の熱交換室30eに圧縮空気を送る圧縮空気導入ヘッダー、30nは熱流体排出ヘッダー、F1は高温排ガス、F2は低温排ガスである。
流動焼却炉2から供給路58を介して空気予熱器30に供給される高温排ガスF1と上部の熱交換室30dとは高温側管板30fにより隔てられると共に、上記排ガス排出室30jと上部熱交換室30d及び下部の向流式の熱交換室30eは上記低温側管板30gにより隔てられる。
熱交換室(熱交換室30d及び熱交換室30e)内には多数本の伝熱管30hが配管され、その上下端は、上記高温側管板30fおよび上記低温側管板30gにそれぞれ接続されている。伝熱管30hを通じて上記熱交換室(熱交換室30d及び熱交換室30e)内に流入する高温排ガスF1は、流動焼却炉2から供給路58を介して送り込まれる。
また、上記熱交換室の中間部には、仕切り板30cが取り付けられていて、該熱交換室を、上部熱交換室30dと下部熱交換室30eに二分する。これら上部熱交換室30dと下部熱交換室30e内には、数枚のバッフルプレート(邪魔板)30iが配設されている。
【0041】
上部の並流式の熱交換室30dは、空気と排ガスの流れが同じ方向になり、熱交換量が少ないので空気予熱器から排出される空気が暖まり難く、一方下部の向流式熱交換室30eは、空気と排ガスの流れが逆になり、熱交換量が多いので出てくる空気が暖まり易い。
そして前記供給路29が接続される位置の熱流体排出ヘッダー30nにおいて、上部の並流式の熱交換室から流れてくる予熱空気と下部の向流式熱交換室から流れてくる予熱空気とが混合され、混合された予熱空気が焼却炉へ供給される。
【0042】
本発明の実施態様である空気予熱器30は、流動焼却炉2から供給路58を介して送り込まれた排ガスと、過給機50から供給路56、分岐供給路56a、分岐供給路56bを介して送り込まれた圧縮空気とが熱交換される。
そして熱交換された空気は、予熱流体排出ヘッダー30nから供給路29を介して予熱空気取入口4から焼却炉2内へ供給される。
【0043】
集塵機40は、供給路31から送り込まれた空気予熱器30から排出される排ガスから、該排ガスに含まれる灰等の固形成分を分離して回収し、灰等の固形成分が取り除かれた排ガスを、供給路41を介して過給機50へ送り込み、該送られた排ガスは過給機50から供給路42を介して白煙防止器75に送り込まれる。
【0044】
過給機50は、共通の回転軸51に接続されたタービン52およびコンプレッサ53を有する。タービン52は、集塵機40から供給路41を介して過給機50に送られる排ガスを受けて高速回転することで、コンプレッサ53を高速回転させる。
コンプレッサ53は、過給機50に取り込まれた空気を圧縮し、圧縮した空気を供給路56、分岐供給路56a、分岐供給路56bを介して空気予熱器30に送り込む。空気予熱器30では、排ガスと圧縮空気とが熱交換され、昇温された圧縮空気が供給路29を介して焼却炉2の予熱空気取入口4に送られる。
【0045】
供給路56には、分岐供給路56aと分岐供給路56bの間に前記空気予熱器30の上部加熱室30dと下部加熱室30eに供給する圧縮空気量を調節する調節弁47(CV3)が設けられている。調節弁47(CV3)は制御装置90に接続されていて該制御装置90から出力される制御信号に応じて開度が調節される。
この開度の調節により空気予熱器30の上側に供給する分岐供給路56aと空気予熱器30の下側に供給する分岐供給路56bに供給する圧縮空気量が調整される。
【0046】
起動用ブロワ60は、焼却システム1の起動時に取り込んだ空気を供給路61から前記空気供給路56に、供給路62から前記過給機50に供給する。63は前記供給路62に設けられた逆止弁である。
起動後に流動焼却炉2からの排ガスで過給機50のコンプレッサ53からの流動空気を確保できる段階になったときには、起動用ブロワ60からの大気(空気)供給を停止し、大気を供給路65から前記過給機50に供給するよう切り替える。66は、前記供給路65に設けられた調節弁であり制御装置90に接続されていて該制御装置90から出力される制御信号に応じて開度が調節される。
【0047】
白煙防止ファン70は、取り込んだ空気を、供給路71を介して白煙防止器75に送り込む。
白煙防止器75は、大気を取り込む白煙防止ファン70から送り込まれる空気と、供給路42を介して供給される過給機50から排出される排ガスと熱交換して昇温させる。昇温された空気は排煙処理塔80に向けて送られる。
排煙処理塔80では、排ガスに含まれる硫黄酸化物および煤塵などの大気汚染物質を排ガスから除去する。
【0048】
前記供給路41と供給路42との間に設けられたバイパス路43には、過給機から供給される排ガス量を調節する調節弁48(CV4)が設けられている。
調節弁48(CV4)は、制御装置90に接続されていて該制御装置90から出力される制御信号に応じて開度が調節される。
この開度の調節により供給路41から過給機50に送られる排ガス量が調整される。例えば、調節弁48(CV4)の開度を大きくすると集塵機40から過給機に排ガスを供給する供給路41から過給機50に送られる排ガスの一部が過給機50から白煙防止器75へ排ガスを供給する供給路42へ流れるため、供給路41から過給機50に送られる排ガス量が減少される。そして供給路41から過給機50に送られる排ガス量に応じて、コンプレッサ53下流の圧縮空気の供給路、空気予熱器30及び焼却炉2内の圧力が調整される。
例えば、空気予熱器30での供給空気の圧力を上昇させたいときは、調節弁48(CV4)を閉じて過給機50の回転数を上昇させる。逆に供給空気の圧力を減少させたいときは、調節弁48(CV4)の開度を大きくして過給機の回転数を減少させる。
【0049】
また、空気供給路56と供給路71との間に設けられたバイパス路53には、余剰空気量を調整する調節弁49(CV5)が設けられている。
余剰空気調節弁49(CV5)は、制御装置90に接続されていて該制御装置90から出力される開度指令の制御信号に応じて開度が調節される。
供給空気の圧力調節の際には、この開度の調節により過給機50から供給路56へ送られる圧縮空気の圧力が調整されて圧縮空気量が調整される。
【0050】
例えば、圧縮空気の質量流量が一定の場合においては、圧力が大きいときは容積流量が少なくなるので、余剰空気調節弁49(CV5)の開度を大きくしてバイパス路53から供給路71へ余剰空気を逃して圧力を開放することで、供給路56から空気予熱器30に送られる圧縮空気の容積流量を増加させるのに対して、圧力が小さいときは容積流量が多くなるので、余剰空気調節弁49(CV5)の開度を小さくしてバイパス路53から供給路71へ余剰空気を逃さず圧力を保持することで、供給路56から空気予熱器30に送られる圧縮空気の容積流量を減少させる。
つまり、流動空気の圧力変化に伴う容積流量の変化により流動空気量が影響を受けるので、余剰空気調節弁49(CV5)の開度調節をすることで、流動空気量を一定範囲にし、流動焼却炉での流動床の流動状態を安定化させ、燃焼状態を適切にすることができるのである。
【0051】
制御装置90は、例えば、PLC(Programmable Logic Controller)を含み、PLCが実行する制御プログラムに基づいて動作する。
そして、制御装置90は、各種センサ(温度計、圧力計、空気予熱器空気量計測器、過給機回転数計測機器等)からの信号を受け取り、内蔵する制御プログラムにより、前記受け取った信号に対応した制御信号を各種機器(調節弁)に送り各種機器を制御する。
【0052】
第1演算部91は流動焼却炉2に供給される供給物である前記焼却対象物の供給装置10、水供給装置15、燃料供給装置20および過給機50等の空気供給元の、これら複数種の供給物の供給量に基づいて、前記流動焼却炉から排出される排ガス量を算出する。第2演算部92は算出された前記排ガス量に基づいて前記流動焼却炉のスペースレートを算出する。
【0053】
図4は炉内スペ-スレート[m/sec]に対する
図3における相関式から求めた算出N
2Oと分析装置で測定した排ガスのN
2O測定値の乖離[%]を説明する図である。
図4に示すように、炉内スペ-スレート[m/sec]の増減に対する相関式算出N
2OとN
2O測定値の乖離[%]は、略一次直線で近似できる。炉内スペースレート0.73m/sec付近で乖離がなくなり、相関式からの算出N
2OとN
2O測定値が一致する。これより大きい範囲では乖離がプラス方向に大きくなって、算出N
2OよりもN
2O測定値が大きくなり、スペースレートが大きい範囲では炉内ガス滞留時間が小さくなることで実際の排出N
2O量が増加してしまうことを意味する。一方、炉内スペースレート0.73m/sec付近より小さい範囲では乖離がマイナス方向に大きくなって、算出N
2OよりもN
2O測定値が小さくなり、スペースレートが小さい範囲では炉内ガス滞留時間が大きくなることで実際の排出N
2O量が減少していることを意味する。このことから、炉内スペ-スレート[m/sec]を可能な範囲で小さくすることで、N
2O排出量を抑制することができる。
【0054】
図5は、
図1に示す制御装置90の排出N
2O抑制の一例を説明するフローチャートである。制御装置90は、この処理を所定の周期で繰り返し実行する所定の周期の一般例としては数秒毎である。
【0055】
焼却炉が稼働し、上記所定の周期の開始時間になると、この制御がスタートする(START)。スタートすると先ず、排ガス質量流量を測定又は算出する(ステップ1、以下S1のように記す)。
【0056】
次に、炉内温度T3、炉内圧力P1から排ガス容積流量を算出し(S2)、続いて炉内スペースレートS1を算出する(S3)。
【0057】
炉内スペースレートS1を設定された最小値S1minと比較し(S4)、S1<S1minならばP1を低下させる操作を実行する(S5)。P1を低下させる操作とは、バイパス路43途中の調節弁48の開度を大きくし、過給機50へ送る排ガス量を少なくして過給機50の回転数を低下させるが、炉内スペースレートがN2Oを分解する適切な範囲よりも大きくなりすぎてしまうおそれがあるので、さらに供給路56で空気予熱器30へ送る圧縮空気を、余剰空気調節弁49の開度を小さくして、供給路56以降の圧力を保つようにする例がある。
【0058】
(S4)でS1<S1minでないときは(S1≧S1min)、S1max<S1であるか否かを判断する(S6)。S1max<S1である場合はP1を上昇させる操作を実施する(S7)。P1を上昇させる操作とは、バイパス路43途中の調節弁48の開度を小さくし、過給機50へ送る排ガス量を多くして過給機50の回転数を増加させるが、炉内スペースレートがN2Oを分解するに十分に低い一方で、流動焼却炉内の流動床3が十分に流動できずに焼却対象物の不完全燃焼につながってしまうおそれがあるので、さらに供給路56で空気予熱器30へ送る圧縮空気を、余剰空気調節弁49の開度を大きくして、供給路56以降の圧力を保つようにする例がある。S1max<S1でない場合はそのまま処理を終了する(END)。
以上のステップを周期的に行うことで、過給式流動焼却炉を用いた焼却システム1における系内の圧力を調整し、炉内スぺースレートを制御して、N2Oの発生を抑制する炉内ガス発生に伴うガスの滞留時間に保持させることができる。
【符号の説明】
【0059】
1:焼却システム
2:流動焼却炉
10:汚泥供給装置
15:水供給装置
17:調節弁(CV2)
20:燃料供給装置
22:調節弁(CV1)
23:温度計
24:温度計
25:圧力計
26:空気予熱機空気量計測器
27:空気予熱機空気量計測器
28:過給機回転数計測器
30:空気予熱機
40:集塵機
47:調節弁(CV3)
48:調節弁(CV4)
49:調節弁(CV5)
50:過給機
60:起動用ブロワ
70:白煙防止ファン
75:白煙防止器
80:排煙処理塔
90:制御装置