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特開2023-151257蛍光体分散体、及びこれを用いた蛍光体感光性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151257
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】蛍光体分散体、及びこれを用いた蛍光体感光性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20231005BHJP
   C09K 11/02 20060101ALI20231005BHJP
   C08F 283/00 20060101ALI20231005BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C08F2/44 A
C09K11/02 Z
C08F283/00
C08F2/44 C
C08L83/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060772
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000180058
【氏名又は名称】山陽色素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】村上 博昭
【テーマコード(参考)】
4H001
4J002
4J011
4J026
【Fターム(参考)】
4H001CA01
4J002BN171
4J002BN191
4J002GP00
4J002GQ00
4J002HA08
4J011AA05
4J011AC04
4J011BA04
4J011PA04
4J011PA05
4J011PA07
4J011PA99
4J011PB25
4J011PC02
4J011PC08
4J011RA10
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA01
4J026AB44
4J026BA27
4J026BA28
4J026BA29
4J026BA30
4J026BA50
4J026DB06
4J026DB29
4J026DB36
4J026FA05
4J026GA07
(57)【要約】
【課題】耐熱性に優れた蛍光体分散体を提供することにある。また本発明の他の課題は、耐熱性及び現像性に優れた蛍光体感光性組成物を提供すること。
【解決手段】赤色系蛍光、緑色系蛍光又は青色系蛍光を放出する無機蛍光体と変性シリコーン系分散剤とシリコーン系樹脂と光重合性化合物と光重合開始剤と有機溶剤とを含有する蛍光体感光性組成物、並びに赤色系蛍光、緑色系蛍光又は青色系蛍光を放出する無機蛍光体と変性シリコーン系分散剤と有機溶剤とを含有する蛍光体分散体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤色系蛍光、緑色系蛍光又は青色系蛍光を放出する無機蛍光体と、
変性シリコーン系分散剤と、
シリコーン系樹脂と、
光重合性化合物と、
光重合開始剤と、
有機溶剤と
を含有することを特徴とする、蛍光体感光性組成物。
【請求項2】
前記変性シリコーン系分散剤が脂肪族変性シリコーンである、請求項1に記載の蛍光体感光性組成物。
【請求項3】
前記蛍光体感光性組成物が、前記無機蛍光体、前記変性シリコーン系分散剤及び前記有機溶剤を含有する蛍光体分散体と、前記シリコーン系樹脂、前記光重合性化合物、前記光重合開始剤及び前記有機溶剤との混合物である、請求項1又は2に記載の蛍光体感光性組成物。
【請求項4】
前記無機蛍光体10~35重量%、
変性シリコーン系分散剤1~16重量%、
シリコーン系樹脂5~20重量%、
光重合性化合物1~15重量%、
光重合開始剤0.1~3重量%、及び
有機溶剤13~74重量%を含有する、請求項1~3のいずれかに記載の蛍光体感光性組成物。
【請求項5】
波長変換層用である、請求項1~4のいずれか一項に記載の蛍光体感光性組成物。
【請求項6】
赤色系蛍光、緑色系蛍光又は青色系蛍光を放出する無機蛍光体と、
変性シリコーン系分散剤と、
有機溶剤と
を含有することを特徴とする、蛍光体分散体。
【請求項7】
前記変性シリコーン系分散剤が脂肪族変性シリコーンである、請求項6に記載の蛍光体
分散体。
【請求項8】
前記蛍光体分散体が、さらにシリコーン系樹脂を含有する、請求項6又は7に記載の蛍光体分散体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体感光性組成物に関するものである。より詳しくは、有機ELディスプレイ、マイクロLEDディスプレイにおける波長変換層に使用するための蛍光体感光性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオード(LED)が急速に普及している。LEDは、テレビ、パソコン、タブレット、スマートフォン等のディスプレイや照明等に利用される。LEDを利用した画像表示装置は、光の透過、非透過を切り替える液晶を用いずに表示を行うことができる。このため、LEDを利用した画像表示装置は、黒表示時に光漏れが生じることが課題であった液晶表示装置と比較して、暗所での視認性に特に優れる。
【0003】
マイクロLEDディスプレイは、およそ2μmから50μmサイズのLEDチップがマトリクス状に配列した構造を有し、複数のLEDの各々を個別駆動することによって表示を行う画像表示装置である。このようなマイクロLEDディスプレイは、液晶を用いずに表示を行うことができる。
【0004】
マイクロLEDディスプレイは、赤色発光、緑色発光、青色発光の3種類のLED素子を用いる方式と、青色から近紫外の波長域の光を発する発光LEDチップ等の単色発光LED素子のみを用いる方式とに大別される。マイクロLEDディスプレイにおいては、個々のLED素子が表示機能層の役割を果たす。赤色発光、緑色発光、青色発光の3種類のLED素子を用いる方式では、輝度や寿命に優れる長所を有する一方で、発光色の異なるLED素子を実装するプロセスが多く、コストがかかるという欠点や、LED素子の発光特性ばらつきがあり、その制御が困難であるという欠点等、がある。
【0005】
単色発光LED素子を用いる方式では、複数の単色発光LED素子の各々に、発光波長を赤色、緑色、及び青色のいずれかへ波長を変換する波長変換層(例えば、量子ドットや無機蛍光体等の分散体)を積層することで、カラー表示を実現している。
前記波長変換層用の感光性樹脂組成物として、少なくとも、h線の吸光係数が100mL/g・cm以上である光重合開始剤、ピロメテン誘導体、光重合性化合物及びアルカリ可溶性樹脂を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。前記感光性樹脂組成物では、前記アルカリ可溶性樹脂としてアクリル樹脂が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2019/181698号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
有機ELディスプレイ、マイクロLEDディスプレイの波長変換層を形成する場合、段階的に加熱硬化させる手法は公知である。しかしながら、従来品であるアクリル樹脂やウレタン樹脂を含有した感光性樹脂組成物を加熱硬化させると硬化膜の発光維持率が低下するという、耐熱性の問題が存在する。
また、短時間で現像した場合に、現像性の点で十分でない問題も存在する。
そこで、本発明の課題は、耐熱性に優れた蛍光体分散体を提供することにある。また本発明の他の課題は、耐熱性及び現像性に優れた蛍光体感光性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る第1の態様は、赤色系蛍光、緑色系蛍光又は青色系蛍光を放出する無機蛍光体と、変性シリコーン系分散剤と、シリコーン系樹脂と、光重合性化合物と、光重合開始剤と、有機溶剤とを含有することを特徴とする、蛍光体感光性組成物に関する。
【0009】
前記蛍光体感光性組成物では、前記変性シリコーン系分散剤は、脂肪族変性シリコーンであってもよい。
【0010】
前記蛍光体感光性組成物は、前記無機蛍光体、前記変性シリコーン系分散剤及び前記有機溶剤を含有する蛍光体分散体と、前記シリコーン系樹脂、前記光重合性化合物、前記光重合開始剤及び前記有機溶剤との混合物であってもよい。
【0011】
前記蛍光体感光性組成物は、前記無機蛍光体10~35重量%、変性シリコーン分散剤1~16重量%、シリコーン系樹脂5~20重量%、光重合性化合物1~15重量%、光重合開始剤0.1~3重量%、及び有機溶剤13~74重量%を含有してもよい。
【0012】
前記蛍光体感光性組成物は、波長変換層用であってもよい。
【0013】
本発明に係る第2の態様は、赤色系蛍光、緑色系蛍光又は青色系蛍光を放出する無機蛍光体と、変性シリコーン系分散剤と、有機溶剤とを含有することを特徴とする、蛍光体分散体に関する。
【0014】
前記蛍光体分散体では、前記変性シリコーン系分散剤が脂肪族変性シリコーンであってもよい。
【0015】
前記蛍光体分散体は、さらにシリコーン系樹脂を含有してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る蛍光体感光性組成物は、耐熱性に優れるために加熱硬化させた場合でも発光維持率が高く、現像性にも優れる。そのため、この蛍光体感光性組成物を用いて作製した波長変換層を有する表示装置用基板は、単位面積あたり従来より少ない蛍光体量でも、必要な発光輝度を保つことができる。
また、本発明に係る蛍光体感光性組成物は発光維持率が高いため、従来品に比べて表示装置用基板を効率よく低コストで製造することができる。
本発明に係る蛍光体感光性組成物は、現像性にも優れる。
前記蛍光体感光性組成物は、本発明に係る蛍光体分散体を用いることで効率よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る蛍光体感光性組成物及び蛍光体分散体の実施形態について説明する。
【0018】
(蛍光体感光性組成物)
本発明の実施形態に係る蛍光体感光性組成物(以下、本発明の組成物ともいう)は、赤色系蛍光、緑色系蛍光又は青色系蛍光を放出する無機蛍光体と、変性シリコーン系分散剤と、シリコーン系樹脂と、光重合性化合物と、光重合開始剤と、有機溶剤とを含有することを特徴とする。
【0019】
本発明の組成物では、変性シリコーン系分散剤と、シリコーン系樹脂とを併用することで、組成物中における赤色系蛍光、緑色系蛍光又は青色系蛍光を放出する無機蛍光体の分散性が向上し、かつ耐熱性及び現像性が優れたものとなる。
【0020】
[無機蛍光体]
前記無機蛍光体とは、無機化合物からなり、かつ紫外線を吸収して赤色光、緑色光又は青色光を放出する蛍光体であり、従来から種々のものが知られている。
本発明において、市販されている前記無機蛍光体であれば、その粒径等に関わらず、使用することができる。
本発明では、前記無機蛍光体を、1種単独で又は異なる2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0021】
無機蛍光体は、有機溶剤に分散させた分散体として使用する。
無機蛍光体の分散粒子径は、前記無機蛍光体の作用効果を十分に発揮する観点から、0.5~30μmが好ましく、1~20μmがより好ましい。
本明細書において、無機蛍光体の分散粒子径は、蛍光体を樹脂組成物に分散させた後の平均粒子径のことを指し、光子相関法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒子径を意味する。
【0022】
本発明の組成物中における前記無機蛍光体の含有量としては、前記無機蛍光体の作用効果を十分に発揮する観点から、10~35重量%が好まく、15~30重量%がより好ましい。
【0023】
[変性シリコーン系分散剤]
前記無機蛍光体と共に必須成分として用いられる変性シリコーン系分散剤は、蛍光体層において無機蛍光体を保持するマトリックス樹脂になる。さらに、前記無機蛍光体を高温から保護し、高温に晒されても、前記無機蛍光体の熱による変質や劣化を抑制する。
【0024】
変性シリコーン系分散剤は、ケイ素と酸素が化学結合により交互に連なったシロキサン結合を主骨格に持つシリコーンの一部に置換基が導入された構造をもつ変性シリコーン系化合物を主成分とするものである。
前記変性シリコーン系分散剤としては、脂肪族変性シリコーン及び芳香族変性シリコーンが挙げられる。
【0025】
前記脂肪族変性シリコーンとしては、ポリエステル、ポリエーテル等の側鎖を有する脂肪族ポリエステル変性シリコーンが挙げられる。
前記脂肪族ポリエステル変性シリコーンにおける側鎖を構成する炭素数としては、特に限定はないが、本発明の効果が奏されやすい観点から、1~10であることが好ましい。
また、前記脂肪族変性シリコーンの主鎖は、直鎖型、分岐型、環状型のいずれでもよい。
前記脂肪族変性シリコーンとしては、市販品を使用することができ、例えば、
KR-5230、KR-5234、KR-5235(いずれも商品名、信越化学工業(株)製)、BYK(登録商標)-313、BYK-302(いずれも商品名、BYK-Chemie社製)、TSR180、(いずれも商品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)
等が挙げられる。
【0026】
前記芳香族変性シリコーンとしては、芳香族ポリエステル変性シリコーン、半芳香族ポリエステル変性シリコーン等が挙げられる。
【0027】
前記芳香族変性シリコーンとしては、市販品を使用することができ、例えば、BYK-322、BYK-323(いずれも商品名、BYK-Chemie社製)
KR-112、KR-211、KR-212、KR-255、KR-271、KR-282、KR-300、KR-311、KR-2621-1、X-40-2667A、KR-480(いずれも商品名、信越化学工業(株)製)、
SILIKOFTAL(登録商標) HTT(商品名、エボニック社製)、TSRl16、TSRl17、TSR144、YR47(いずれも商品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)
等を用いてもよい。
【0028】
本発明では、本発明の効果が奏されやすい観点から、前記脂肪族変性シリコーンが好ましい。
【0029】
前記変性シリコーン系分散剤として使用される前記樹脂の分子量は、無機蛍光体の種類や含有量、本発明の組成物の用途等に応じて広い範囲から適宜選択できる。
【0030】
本発明の組成物においては、前記変性シリコーン系分散剤が存在することにより前記無機蛍光体の熱による劣化や変質が顕著に抑制される。前記変性シリコーン系分散剤の配合量は特に制限されず、使用する前記無機蛍光体の種類や粒径、前記変性シリコーン系分散剤の種類、本発明の組成物の用途等に応じ、その保存安定性、塗工性、ハンドリング性や、硬化後の蛍光体層の機械強度や耐久性、等を考慮して、適した範囲を適宜選択すればよい。
【0031】
本発明の組成物中における前記変性シリコーン系分散剤の含有量としては、前記無機蛍光体の熱による劣化又は変質を抑制又は防止する観点から、1~16重量%が好ましく、1~10重量%がより好ましい。
【0032】
なお、前記変性シリコーン系分散剤ではなく、アクリル樹脂等の他の樹脂系分散剤を用いた場合には、耐熱性及び現像性が共に優れた蛍光体感光性組成物とはならない。
【0033】
[シリコーン系樹脂]
本発明における「シリコーン系樹脂」は、前記無機蛍光体の分散媒として作用する成分である。なお、シリコーン系樹脂には、前記変性シリコーン系分散剤として使用される樹脂は含まれない。
【0034】
前記シリコーン系樹脂は、シロキサン結合(Si-O-Si結合)を主鎖とする樹脂である。
本実施形態のシリコーン系樹脂は、下記式(ia)で表される繰り返し単位を含有する。
【0035】
【化1】
【0036】
式(ia)中、Rは、水素原子又は炭素数1~30かつ1価~3価の炭化水素基である。炭化水素基は、脂肪族でも芳香族でもよく、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状でも分岐状でも環状でもよい。炭化水素基の炭素数が2以上の場合、炭化水素基における1つ以上のメチレン基は非置換であってもよく、酸素、イミド基又はカルボニル基で置換されていてもよい。炭化水素基の炭素数が2以上の場合、炭化水素基における1つ以上の水素は非置換であってもよく、フッ素、水酸基又は炭素数1~20のアルコキシ基で置換されていてもよい。炭化水素基の炭素数が2以上の場合、炭化水素基における1つ以上の炭素は非置換であってもよく、ケイ素で置換されていてもよい。炭化水素基が2価又は3価の場合、炭化水素基は、複数の繰り返し単位に含まれるSi同士を連結していてもよい。
【0037】
式(ia)中、Rは、アルキル基が好ましい。
Rが炭化水素基の場合、炭化水素基の炭素数は、1~10が好ましく、1~6がより好ましい。炭化水素基の価数は、2価又は3価が好ましく、3価がより好ましい。炭化水素基は、脂肪族が好ましい。炭化水素基は、飽和が好ましい。炭化水素基は、分岐状が好ましい。
【0038】
炭化水素基における水素がアルコキシ基で置換されている場合、アルコキシ基の炭素数は、1~20が好ましく、1~6がより好ましい。
【0039】
式(ia)で表される繰り返し単位は、シルセスキオキサン構造単位である。
シルセスキオキサンは、3官能性シランを加水分解することで得られる(RSiO1.5)n(nは自然数)の構造を有するネットワーク型ポリマー又は多面体クラスターである。各ケイ素原子は、平均1.5個の酸素原子と、1つの炭化水素基と結合している。最大8個の有機官能基と、Si-O結合とでできたカゴ状骨格を有する無機化合物である。シルセスキオキサンは、シリカ(SiO2)とシリコーン(R2SiO)の中間の量論的化合物であり、有機物に親和性を有する無機物である。
シリコーン系樹脂は、シルセスキオキサン構造単位を有することで、耐熱性及び耐黄変性により優れる。
【0040】
シルセスキオキサン構造単位の含有量は、シリコーン系樹脂を構成する繰り返し単位の総数に対して、40~80モル%であり、45~75モル%が好ましく、50~70モル%がより好ましい。シルセスキオキサン構造単位の含有量が上記下限値以上であると、蛍光体感光性組成物の耐熱性及び耐黄変性をより高められる。シルセスキオキサン構造単位の含有量が上記上限値以下であると、蛍光体感光性組成物の透明性をより高められる。
【0041】
シリコーン系樹脂は、下記式(ib)で表される繰り返し単位を含有してもよい。
【0042】
【化2】
【0043】
式(ib)で表される繰り返し単位の含有量は、シリコーン系樹脂を構成する繰り返し単位の総数に対して、40モル%以下が好ましく、10~20モル%がより好ましい。式(ib)で表される繰り返し単位の含有量が上記下限値以上であると、蛍光体感光性組成物の耐熱性及び耐黄変性をより高められる。式(ib)で表される繰り返し単位の含有量が上記上限値以下であると、蛍光体感光性組成物の透明性をより高められる。
式(ib)で表される繰り返し単位の含有量は、例えば、ガスクロマトグラフィー(GC)により求めることができる。
【0044】
シリコーン系樹脂は、式(ia)で表される繰り返し単位及び式(ib)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位(以下、「他の繰り返し単位」ともいう。)を含有してもよい。他の繰り返し単位としては、例えば、ビニル化合物に由来する繰り返し単位、アクリル化合物に由来する繰り返し単位、ポリエステル化合物に由来する繰り返し単位等が挙げられる。他の繰り返し単位の含有量は、シリコーン系樹脂を構成する繰り返し単位の総数に対して、1モル%以下が好ましく、0モル%がより好ましい。他の繰り返し単位の含有量が上記上限値以下であると、蛍光体感光性組成物の有機物含有率を低減でき、蛍光体感光性組成物の耐熱性及び耐黄変性をより高められる。
他の繰り返し単位の含有量は、例えば、ガスクロマトグラフィーにより求めることができる。
【0045】
シリコーン系樹脂の質量平均分子量は、500~25,000が好ましく、1,000~20,000がより好ましい。シリコーン系樹脂の質量平均分子量が上記下限値以上であると、蛍光体感光性組成物の耐熱性及び耐黄変性をより高められる。シリコーン系樹脂の質量平均分子量が上記上限値以下であると、蛍光体感光性組成物の透明性をより高められる。
本明細書において、質量平均分子量は、ポリスチレン換算の質量平均分子量を意味し、ポリスチレンを基準物質として、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求められる。
【0046】
本発明の組成物中における前記シリコーン系樹脂の含有量としては、フォトレジストの現像性の観点から、5~20重量%が好ましい。
【0047】
[光重合性化合物]
本発明における「光重合性化合物」とは、エチレン性不飽和基を有する化合物をいう。光重合性化合物としては、例えば、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、PEG400ジ(メタ)アクリレート、PEG600ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAエポキシ(メタ)アクリレート、リ(メタ)アクリレートカルバメート、アジピン酸1,6-ヘキサンジオール(メタ)アクリル酸エステル、無水フタル酸プロピレンオキサイド(メタ)アクリル酸エステル、トリメリット酸ジエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、ロジン変性エポキシジ(メタ)アクリレート、アルキッド変性(メタ)アクリレートなどのオリゴマー、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリアクリルホルマール、トリス[2-(アクリロイルオキシ)エチル]イソシアヌラート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリアクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、ジシクロペンタンジエニルジアクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、これらのアルキル変性物、アルキルエーテル変性物やアルキルエステル変性物などが挙げられる。本発明の組成物では、光重合性化合物として、これらを2種以上含有してもよい。
【0048】
本発明の組成物中における光重合性化合物の含有量としては、硬化させた塗膜の強度の観点から、1~15重量%が好ましい。
【0049】
[光重合開始剤]
本発明における「光重合開始剤」とは、光(紫外線、電子線を含む)により分解及び/又は反応し、前記光重合性化合物の重合を開始するための化合物であればよい。例えば、2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1などのα-アミノアルキルフェノン化合物;2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-(2,4,4-トリメチルペンチル)-ホスフィンオキサイドなどのアシルホスフィンオキサイド化合物;1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシム、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンゾイルオキシム)、1-フェニル-1,2-ブタジオン-2-(O-メトキシカルボニル)オキシム、1,3-ジフェニルプロパントリオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシム、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)などのオキシムエステル化合物;ベンジルジメチルケタールなどのベンジルケタール化合物;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトンなどのα-ヒドロキシケトン化合物;ベンゾフェノン、4,4-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、O-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4,4-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、アルキル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン化合物;2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,3-ジエトキシアセトフェノン、4-t-ブチルジクロロアセトフェノン、ベンザルアセトフェノン、4-アジドベンザルアセトフェノンなどのアセトフェノン化合物;2-フェニル-2-オキシ酢酸メチルなどの芳香族ケトエステル化合物;4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸(2-エチル)ヘキシル、4-ジエチルアミノ安息香酸エチル、2-ベンゾイル安息香酸メチルなどの安息香酸エステル化合物などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0050】
本発明の組成物中における光重合開始剤の含有量としては、重合速度と塗膜の物性との観点から、0.1~3重量%が好ましい。
【0051】
[有機溶剤]
本発明の組成物で使用する有機溶剤は、前記無機蛍光体及び前記変性シリコーン系分散剤の分散性や保存安定性(特に前記無機蛍光体の凝集や沈殿の防止)、蛍光体層における前記無機蛍光体の均一分散性、本発明の組成物のハンドリング性、塗工性等を向上させるのに有用である。
【0052】
有機溶剤としては、前記無機蛍光体や前記変性シリコーン系分散剤の種類、これらの配合量、得られる本発明の組成物の用途等、種々の条件に応じて適宜選択される。例えば、芳香族系溶剤、脂肪族系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、アルコール系溶剤等が挙げられる。これらの中でも、シリコーン系樹脂との相溶性等を観点からは、芳香族系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、グリコールエーテル系剤等が好ましい。有機溶剤は、1種を単独で又は可能であれば2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0053】
芳香族系溶剤としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類が挙げられる。
脂肪族系溶剤としては、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素等が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルインブチルケトン、ジインブチルケトン、アセトン、アセチルアセトン、イソホロン、アセトフェノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0054】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸インプロピル、プロピオン酸メチル、酢酸-3-メトキシブチル、エチルグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、モノクロロ酢酸メチル、モノクロロ酢酸エチル、モノクロロ酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ブチルカルビトールアセテート、乳酸ブチル、エチル-3-エトキシプロピオネート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸プロピル、1,3-ブチレングリコールジアセテート等が挙げられる。
【0055】
グリコールエーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-iso-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-iso-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、1-メチル-1-メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-iso-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-iso-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル等の水溶性のグリコールエーテル類、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコール-2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコール-n-ヘキシルエーテル、ジエチレングリコール-2-エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルプロピオネート等の非水溶性のグリコールエーテル類等が挙げられる。
【0056】
アルコール系溶剤としては、例えば、エタノール、メタノール、n-ブタノール、n-プロパノール、インプロパノール等の炭素数1~4のアルキルアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ペンタメチレングリコール、 トリメチレングリコール、2-ブテンー1,4-ジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、トリプロピレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、インプロピレングリコール、インブチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、グリセリン、メノエリスリトール、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0057】
本発明の組成物中における有機溶剤の含有量としては、塗膜作製時のハンドリングを考慮して、13~74重量%が好ましく、50~65重量%がより好ましい。
【0058】
本発明の組成物は、前述成分の他に、必要に応じて、感光性組成物に用いられる任意の添加剤を含むことができる。該添加剤としては、例えば、増粘剤、分散助剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、防カビ剤、界面活性剤、密着促進剤、表面調整剤、等が挙げられる。
前記増粘剤として、シリカ粒子ACEMATT(登録商標) 3600(エボニック社製)、NIPSIL(登録商標) SS-50F(東ソー・シリカ社製)等が挙げられる。
本発明の組成物における添加剤の含有量は、本発明の組成物中の0.01~10重量%の範囲から適宜選択される。
【0059】
本発明の組成物は、各成分を任意の順番で混合することにより製造してもよい。
中でも、効率よく本発明の組成物を製造できる観点から、前記無機蛍光体、前記変性シリコーン系分散剤及び前記有機溶剤を含有する蛍光体分散体を予め作製し、この蛍光体分散体、前記シリコーン系樹脂、前記光重合性化合物、前記光重合開始剤及び前記有機溶剤を混合することで本発明の組成物を製造することが好ましい。
【0060】
前記蛍光体分散体と混合するための、前記シリコーン系樹脂、前記光重合性化合物、前記光重合開始剤及び前記有機溶剤については、これらの成分を混合したレジスト溶液としてもよい。この場合、蛍光体分散体とレジスト溶液との混合比率(重量比)は3:7~7:3の範囲で好ましく選択できる。
【0061】
前記蛍光体分散体、前記シリコーン系樹脂、前記光重合性化合物、前記光重合開始剤及び前記有機溶剤を混合する方法としては、公知の混合方法を利用できる。
【0062】
(蛍光体分散体)
本発明に係る蛍光体分散体(以下、本発明の分散体ともいう)に含有される前記無機蛍光体、前記変性シリコーン系分散剤及び前記有機溶剤は、いずれも本発明の組成物に使用できるものであればよい。
【0063】
中でも、本発明の分散体では、本発明の効果が奏されやすい観点から、前記変性シリコーン系分散剤が脂肪族変性シリコーンであることが好ましい。
【0064】
また、本発明の分散体は、本発明の効果が奏されやすい観点から、さらにシリコーン系樹脂を含有していることが好ましい。前記シリコーン系樹脂としては、本発明の組成物に使用できるものであればよい。
【0065】
前記蛍光体分散体は、前記無機蛍光体、前記変性シリコーン系分散剤、前記有機溶剤、及び必要に応じて前記シリコーン系樹脂を混合することにより製造できる。前記無機蛍光体の分散性を高める等の目的で、前記無機蛍光体及び有機溶剤を含む分散体と、前記変性シリコーン系分散剤又はその有機溶剤溶液と、必要に応じてシリコーン系樹脂等とを混合することにより蛍光体分散体を製造してもよい。
また、前記無機蛍光体の有機溶剤への分散には、微細粒子の有機溶剤への分散に利用される種々の分散方法を利用できる。
【0066】
前記蛍光体分散体における各成分の含有量としては、例えば、
前記無機蛍光体20~70重量%、
前記変性シリコーン系分散剤2~32重量%、
前記有機溶剤20~78重量%、
前記シリコーン系樹脂0~20重量%
の範囲に調整されていればよい。
【0067】
本発明の分散体は、本発明の組成物を作製する原料として使用できる以外に、波長変換の必要な場所に使用することもできる。
【0068】
(波長変換層)
以上のようにして得られる本発明の分散体及び組成物は、自発光型ディスプレイの発光素子を構成する表示装置用基板の表面に形成される波長変換層の材料として使用することができる。
【0069】
前記波長変換層は、本発明の分散体を表示装置用基板表面の所定領域にインクジェット塗布又はノズル塗布し、自然硬化又は加熱硬化させて、硬化層とすることにより形成される。
また、本発明の組成物を表示装置用基板表面の所定領域に塗布し、自然硬化又は加熱硬化させて、硬化層とすることにより形成される。
本発明の組成物の塗布方法としては公知の塗布(又は印刷)方法をいずれも採用できる。例えば、ロールコーティング、スピンコーティング、スロットコーティング、スクリーン印刷等の手法を利用できる。
【0070】
表示装置用基板表面に塗布された本発明の組成物の塗膜は、例えば加熱や光照射により硬化される。該塗膜の加熱硬化において、加熱温度及び加熱時間は本発明の組成物に含まれる前記変性シリコーン系分散剤や有機溶剤の種類等に応じて適宜選択される。例えば80~120℃程度の温度下で、1分~30分程度でプリベーク加熱を行い、次いで200~250℃程度の温度下に行なわれ、20分~60分程度で本加熱を行う。前記波長変換層の厚みは、有機ELディスプレイの場合には、好ましくは0.5~10μm程度、マイクロLEDディスプレイの場合には、好ましくは10~30μm程度である。
【実施例0071】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明を具体的に説明する。
【0072】
(製造例1:赤色系の蛍光体分散体1の製造)
表1に示す組成のように、赤色系無機蛍光体(以下、赤色蛍光体)と、変性シリコーン系分散剤A(市販の脂肪族変性シリコーン)と、有機溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAc))とを混合して赤色系の蛍光体分散体1を製造した(無機蛍光体の分散粒径3.8μm)。
前記蛍光分散体1は、その組成が無機蛍光体/変性シリコーン系分散剤/有機溶剤=36/7.2/56.8(重量%)となるように調整した。
【0073】
(製造例2:緑色系の蛍光体分散体2の製造)
表1に示す組成のように、赤色蛍光体に変えて緑色系無機蛍光体(以下、緑色蛍光体)を用いた以外は、製造例1と同様にして、緑色系の蛍光体分散体2を製造した(無機蛍光体の分散粒径3.7μm)。
前記蛍光分散体2は、その組成が無機蛍光体/変性シリコーン系分散剤/有機溶剤=28/5.6/66.4(重量%)となるように調整した。
【0074】
(製造例3:緑色系の蛍光体分散体3の製造)
表1に示す組成のように、変性シリコーン系分散剤として、変性シリコーン系分散剤B(市販の脂肪族変性シリコーン)を用いた以外は、製造例2と同様にして、緑色系の蛍光体分散体3を製造した(無機蛍光体の分散粒径3.9μm)。
前記蛍光分散体3は、その組成が無機蛍光体/変性シリコーン系分散剤/有機溶剤=28/5.6/66.4(重量%)となるように調整した。
【0075】
(製造例4:青色系の蛍光体分散体4の製造)
表1に示す組成のように、青色系無機蛍光体(以下、青色蛍光体)と、変性シリコーン系分散剤Aと、有機溶剤(PGMAc)とを混合して青色系の蛍光体分散体4を製造した(無機蛍光体の分散粒径4.9μm)。
前記蛍光体分散体4は、その組成が無機蛍光体/変性シリコーン系分散剤/有機溶剤=35/3.5/61.5(重量%)となるように調整した。
前記蛍光分散体4は、その組成が無機蛍光体/変性シリコーン系分散剤/有機溶剤=42/4.2/53.8(重量%)となるように調整した。
【0076】
(製造例5:赤色系の蛍光体分散体5の製造)
変性シリコーン系分散剤C(芳香族変性シリコーン)を用いた以外は、製造例1と同様にして、赤色系の蛍光体分散体5を製造した(無機蛍光体の分散粒径3.6μm)。
【0077】
(比較製造例1:赤色系の蛍光体分散体6の製造)
変性シリコーン系分散剤Aを市販のアクリル樹脂Aに変えた以外は、製造例1と同様にして赤色系の蛍光体分散体6を製造した(無機蛍光体の分散粒径3.2μm)。
【0078】
(比較製造例2:青色系の蛍光体分散体7の製造)
変性シリコーン系分散剤Aを市販のアクリル樹脂Aに変えた以外は、製造例4と同様にして青色系の蛍光体分散体7を製造した(無機蛍光体の分散粒径4.1μm)。
【0079】
(比較製造例3:赤色系の蛍光体分散体8の製造)
変性シリコーン系分散剤Aを市販のアクリル樹脂Bに変えた以外は、製造例1と同様にして赤色系の蛍光体分散体8を製造した(無機蛍光体の分散粒径3.1μm)。
【0080】
(比較製造例4:緑色系の蛍光体分散体9の製造)
変性シリコーン系分散剤Aを市販のアクリル樹脂Bに変えた以外は、製造例2と同様にして緑色系の蛍光体分散体9を製造した(無機蛍光体の分散粒径3.6μm)。
【0081】
(比較製造例5:青色系の蛍光体分散体10の製造)
変性シリコーン系分散剤Aを市販のアクリル樹脂Bに変えた以外は、製造例4と同様にして青色系の蛍光体分散体10を製造した(無機蛍光体の分散粒径4.3μm)。
【0082】
(実施例1:赤色系の蛍光体感光性組成物1の製造)
表1に示す組成となるように、製造例1で作製した蛍光体分散体1に対して、樹脂組成物の母材としてシリコーン系樹脂(光硬化型シロキサン樹脂D)、光重合性化合物E、光重合開始剤F及び有機溶剤を添加し、均一になるように混合して赤色系の蛍光体感光性組成物1(固形分中の蛍光体濃度40重量%)を製造した。
【0083】
(実施例2、3:緑色系の蛍光体感光性組成物2、3の製造)
表1に示す組成となるように、実施例1と同様にして、緑色系の蛍光体感光性組成物2、3を作製した。
【0084】
(実施例4:青色系の蛍光体感光性組成物4の製造)
表1に示す組成となるように、実施例1と同様にして青色系の蛍光体感光性組成物4を作製した。
【0085】
(実施例5:赤色系の蛍光体感光性組成物5の製造)
表1に示す組成となるように、実施例1と同様にして赤色系の蛍光体感光性組成物5を作製した。
【0086】
(比較例1:赤色系の蛍光体感光性組成物6の製造)
表1に示す組成となるように、実施例1と同様にして赤色系の蛍光体感光性組成物6を作製した。
【0087】
(比較例2:青色系の蛍光体感光性組成物7の製造)
表1に示す組成となるように、実施例1と同様にして青色系の蛍光体感光性組成物7を作製した。
【0088】
(比較例3:赤色系の蛍光体感光性組成物8の製造)
表1に示す組成となるように、実施例1と同様にして赤色系の蛍光体感光性組成物8を作製した。
【0089】
(比較例4:緑色系の蛍光体感光性組成物9の製造)
表1に示す組成となるように、実施例1と同様にして緑色系の蛍光体感光性組成物9を作製した。
【0090】
(比較例5:青色系の蛍光体感光性組成物10の製造)
表1に示す組成となるように、実施例1と同様にして青色系の蛍光体感光性組成物10を作製した。
【0091】
【表1】
【0092】
(試験例1:現像性評価)
スピンコーター(ミカサ(株)製)を用いて、実施例1~5、比較例1~5で作製した感光性組成物を10cm角の無アルカリガラス基板上に、キュア後の膜厚が15μmとなるように塗布し、ホットプレート(アズワン(株)製)を用いて温度100℃で3分間プリベークし、プリベーク膜を形成した。作製したプリベーク膜を、パラレルライトマスクアライナー((株)トプコン製)を用いて、超高圧水銀灯を光源とし、マスクを介さず、露光量200mJ/cm2(ghi線)で、100μmのギャップで露光した。その後、自動現像装置(ミカサ(株)製「AD-1200(商品名)」)を用いて、0.5重量%水酸化ナトリウム水溶液を用いてシャワー現像し、次いで水を用いて15秒間リンスした。リンス後の基板を230℃で30分間乾燥して、波長変換層を得た。
シャワー現像に要した現像時間及び現像状態の結果を表2に示す。
前記現像状態については、溶解現象が良好な結果であり、一方、剥離現像であるとうまく像(パターン)が現れないことを示す。
【0093】
【表2】
【0094】
表2に示すように、本発明を適用した実施例1は、分散剤としてアクリル樹脂Bを用いた比較例3に比べて、短時間でシャワー現像ができることから、良好なアルカリ溶解性を有し、現像性が優れることが分かった。
本発明を適用した実施例2及び実施例3は、分散剤としてアクリル樹脂Bを用いた比較例4に比べて、短時間でシャワー現像ができることから、良好なアルカリ溶解性を有し、現像性が優れることが分かった。
本発明を適用した実施例4は、分散剤としてアクリル樹脂Bを用いた比較例5に比べて、短時間でシャワー現像ができることから、良好なアルカリ溶解性を有し、現像性が優れることが分かった。
なお、本発明を適用した実施例1は、分散剤として変性部位が芳香族系である変性シリコーン系分散剤Cを用いた比較例5に比べて、短時間でシャワー現像ができ、良好なアルカリ溶解性を有し、現像性が優れることが分かった。
【0095】
[試験例2:耐湿熱性評価]
試験例1で得られた波長変換層について、1cm角に切り出し、絶対量子収率測定装置(浜松ホトニクス(株)製「C11347(商品名)」)にて385nmの励起光における量子収率、吸収率、発光強度、半値幅を測定した。また、波長変換層を385nmの光を発するLED素子の上に配置し、LED素子を発光させて、正面輝度計(コニカミノルタ(株)製「CS-1000(商品名)」)にて発光スペクトルを測定した(初期)。
次いで、波長変換層が形成された基板を恒温恒湿槽(エスペック(株)製)に入れ、温度85℃、湿度85%で500時間加熱した。上記基板を室温(15~25℃)で一晩静置後、上記の量子収率測定装置及び正面輝度計を用いて測定した(加熱後)。得られたスペクトルから、量子収率の変化率(ΔPLQY)、発光強度の変化率(Δピーク強度)、光学濃度の変化率(ΔOD)をそれぞれ計算し、結果を表2に示す。
【0096】
表2に示すように、本発明を適用した実施例1は、分散剤としてアクリル樹脂Aを用いた比較例1に比べて、発光強度の変化率が小さく、耐湿熱性が優れることが分かった。
本発明を適用した実施例2及び実施例3は、分散剤としてアクリル樹脂Bを用いた比較例4に比べて、発光強度の変化率が小さく、耐湿熱性が優れることが分かった。
本発明を適用した実施例4は、分散剤としてアクリル樹脂Aを用いた比較例2、及びアクリル樹脂Bを用いた比較例5に比べて、発光強度の変化率が小さく、耐湿熱性が優れることが分かった。
以上のことから、製造例1~5で作製した分散体1~5、及び実施例1~5で作製した感光性組成物1~5はいずれも耐熱性及び現像性に優れたものであることがわかった。