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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151261
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】吸音システム
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/16 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
G10K11/16 140
G10K11/16 120
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060778
(22)【出願日】2022-03-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】594192095
【氏名又は名称】株式会社昭和サイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】内田 岳男
(72)【発明者】
【氏名】花田 光弘
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061BB01
5D061CC04
5D061DD06
(57)【要約】
【課題】 省スペースで且つ吸音効果を向上した吸音システムを提供する。
【解決手段】 一実施形態に係る吸音システムは、第1吸音層、第2吸音層、および第1吸音層と第2吸音層とに挟まれた第1区分層を含む第1吸音材と、第3吸音層、第4吸音層、および第3吸音層と第4吸音層とに挟まれた第2区分層を含む第2吸音材と、を含む吸音システムであって、第1吸音材が第1壁の第1壁領域に接して配置され、第1吸音層が第1壁領域と第1区分層との間に配置され、第2吸音材が第1壁と180°未満で交差する第2壁の第2壁領域に接して配置され、第3吸音層が第2壁領域と第2区分層との間に配置され、第1壁領域と第2壁領域との間の第3壁領域は、第1吸音材および第2吸音材から離隔し、第1吸音材と第2吸音材との間の距離が、第1吸音材および第2吸音材のいずれの厚さよりも小さい。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1吸音層、第2吸音層、および前記第1吸音層と前記第2吸音層とに挟まれた第1区分層を含む第1吸音材と、
第3吸音層、第4吸音層、および前記第3吸音層と前記第4吸音層とに挟まれた第2区分層を含む第2吸音材と、
を含む吸音システムであって、
前記第1吸音材が第1壁の第1壁領域に接して配置され、
前記第1吸音層が前記第1壁領域と前記第1区分層との間に配置され、
前記第2吸音材が前記第1壁と180°未満で交差する第2壁の第2壁領域に接して配置され、
前記第3吸音層が前記第2壁領域と前記第2区分層との間に配置され、
前記第1壁領域と前記第2壁領域との間の第3壁領域は、前記第1吸音材および前記第2吸音材から離隔し、
前記第1吸音材と前記第2吸音材との間の距離が、前記第1吸音材および前記第2吸音材のいずれの厚さよりも小さい、
吸音システム。
【請求項2】
前記第1吸音材と前記第2吸音材との間の距離が、前記第1吸音層および前記第3吸音層のいずれの厚さよりも小さい、請求項1に記載の吸音システム。
【請求項3】
前記第1吸音材と前記第2吸音材とが接触する、請求項1または請求項2に記載の吸音システム。
【請求項4】
前記第1壁および前記第2壁と180°未満で交差する第3壁と前記第1吸音材および前記第2吸音材との間の距離が、前記第1吸音材および前記第2吸音材のいずれの厚さよりも小さい、請求項1乃至3の何れか1項に記載の吸音システム。
【請求項5】
前記第2吸音層の端面の少なくとも一部が前記第4吸音層の面と対向する、請求項1乃至4の何れか1項に記載の吸音システム。
【請求項6】
前記第1吸音層の端面の一部が前記第4吸音層の面と対向する、請求項5に記載の吸音システム。
【請求項7】
前記第1吸音材は第1方向に延在し、前記第2吸音材は前記第1方向に延在する、請求項1乃至6の何れか1項に記載の吸音システム。
【請求項8】
第5吸音層、第6吸音層、および前記第5吸音層と前記第6吸音層とに挟まれた第3区分層を含む第3吸音材をさらに含み、
前記第3吸音材が前記第1壁および前記第2壁と180°未満で交差する第3壁の第4壁領域に接して配置され、
前記第5吸音層が前記第4壁領域と前記第3区分層との間に配置され、
前記第1壁領域と前記第4壁領域との間の第5壁領域は、前記第1吸音材および前記第3吸音材から離隔し、
前記第1吸音材と前記第3吸音材との間の距離が、前記第1吸音材および前記第3吸音材のいずれの厚さよりも小さい、
請求項1乃至7の何れか1項に記載の吸音システム。
【請求項9】
前記第1吸音材と前記第3吸音材との間の距離が、前記第1吸音層および前記第5吸音層のいずれの厚さよりも小さい、請求項8に記載の吸音システム。
【請求項10】
前記第2吸音層の端面の少なくとも一部が前記第6吸音層の面と対向する、請求項8または9に記載の吸音システム。
【請求項11】
前記第1吸音層の端面の一部が前記第6吸音層の面と対向する、請求項10に記載の吸音システム。
【請求項12】
前記第1吸音材は第1方向に延在し、前記第2吸音材は前記第1方向に延在し、前記第3吸音材は前記第1方向と交わる第2方向に延在する、請求項8乃至11の何れか1項に記載の吸音システム。
【請求項13】
第7吸音層、第8吸音層、および前記第7吸音層と前記第8吸音層とに挟まれた第4区分層を含む第4吸音材を含む吸音システムであって、
前記第4吸音材が
前記第2壁の第6壁領域に接して配置され、
前記第7吸音層が前記第6壁領域と前記第4区分層との間に配置され、
前記第1壁領域と前記第6壁領域との間の第7壁領域は、前記第1吸音材および前記第4吸音材から離隔し、
前記第1吸音材と前記第4吸音材との間の距離が、前記第1吸音材および前記第4吸音材のいずれの厚さよりも小さい、
請求項8乃至12の何れか1項に記載の吸音システム。
【請求項14】
前記第1吸音材は第1方向に延在し、前記第2吸音材は前記第1方向に延在し、前記第3吸音材は前記第1方向と交わる第2方向に延在し、前記第4吸音材は前記第1方向および前記第2方向と交わる第3方向に延在する、請求項13に記載の吸音システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、吸音システムに関する。
【背景技術】
【0002】
空気の粘性抵抗を利用し、音波のエネルギーを熱エネルギーに変換して吸音する多孔質吸音構造体に、密度が異なる発泡体層を積層した吸音材がある。
【0003】
特許文献1には、発泡体層と、この発泡体層の両側に多孔質体層が積層された吸音材が開示されている。ここで、発泡体層は、分子量500~5000の第1のジオール、分子量500以下の第2のジオール、無機充填材、発泡剤としての水、およびイソシアネートの各成分を原料成分とする発泡体で形成され、また、多孔質体層は、汎用のグラスウール若しくはロックウールで形成されている。
【0004】
このような構成の吸音材においては、高密度である発泡体層が付加質量、壁側の低密度である多孔質体層がバネの役割を担うことで、動吸振機を構成させて、特に低周波数帯域の吸音率を向上させることができる。さらに音源側にも多孔質体層を備えることにより、150Hz以上の高周波領域における吸音特性が向上し、ひいては広帯域の周波数領域においても対応可能な吸音材を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4148318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示に係る実施形態は、省スペースで且つ吸音効果を向上した吸音システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係る吸音システムは、第1吸音層、第2吸音層、および第1吸音層と第2吸音層とに挟まれた第1区分層を含む第1吸音材と、第3吸音層、第4吸音層、および第3吸音層と第4吸音層とに挟まれた第2区分層を含む第2吸音材と、を含む吸音システムであって、第1吸音材が第1壁の第1壁領域に接して配置され、第1吸音層が第1壁領域と第1区分層との間に配置され、第2吸音材が第1壁と180°未満で交差する第2壁の第2壁領域に接して配置され、第3吸音層が第2壁領域と第2区分層との間に配置され、第1壁領域と第2壁領域との間の第3壁領域は、第1吸音材および第2吸音材から離隔し、第1吸音材と第2吸音材との間の距離が、第1吸音材および第2吸音材のいずれの厚さよりも小さい。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る実施形態は、省スペースで且つ吸音効率を向上した吸音システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る吸音システムを概略的に示す斜視図である。
図2】一実施形態に係る吸音システムを概略的に示す上面図である。
図3】一実施形態に係る吸音システムを概略的に示す斜視図である。
図4】一実施形態に係る吸音システムを概略的に示す上面図である。
図5】一実施形態に係る吸音システムを概略的に示す斜視図である。
図6】一実施形態に係る吸音システムを概略的に示す上面図である。
図7】一実施形態に係る吸音システムを概略的に示す斜視図である。
図8】一実施形態に係る吸音システムを概略的に示す上面図である。
図9】一実施形態に係る吸音システムを概略的に示す斜視図である。
図10】一実施形態に係る吸音システムを概略的に示す断面図である。
図11】一変形例に係る吸音システムを概略的に示す斜視図である。
図12】一変形例に係る吸音システムを概略的に示す上面図である。
図13】一変形例に係る吸音システムを概略的に示す斜視図である。
図14】比較例1に対する実施例1の1/3オクターブバンド中心周波数における吸音の割合の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態に係る吸音システムについて図面を参照して具体的に説明する。以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する要素について、同一符号又は同一符号の後にアルファベットが追加された符号が付されており、必要な場合にのみ重複して説明する。以下に示す各実施形態は、この実施形態の技術的思想を具体化するためのシステムや方法を例示する。実施形態の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定されない。実施形態は、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。これら実施形態やその変形例は、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0011】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図面において、既出の図面に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。
【0012】
本明細書において「αはA、B又はC」を含む、「αはA,B及びCのいずれか」を含む、「αはA,B及びCからなる群から選択される一つ」を含む、といった表現は、特に明示が無い限り、αがA~Cの複数の組み合わせを含む場合を排除しない。さらに、これらの表現は、αが他の要素を含む場合も排除しない。
【0013】
以下の各実施形態および変形例は、技術的な矛盾を生じない限り、互いに組み合わせることができる。
【0014】
[第1実施形態]
<吸音システム>
図1は、一実施形態に係る吸音システムの全体構成を概略的に示す斜視図である。図2は、一実施形態に係る吸音システムを概略的に示す上面図である。図1において、鉛直方向をZ方向といい、Z方向と交差する2方向をX方向及びY方向という。XZ面を第1壁100、YZ面を第2壁200、XY面(床面)を第3壁300という。
【0015】
図1および図2に示すように、本実施形態に係る吸音システム1は、第1壁100と第2壁200が接続する端部に適用する例を示して説明する。しかしながらこれに限定されず、吸音システム1は、吸音を必要とする空間を囲う壁、床、天井などの2面が接続する端部に適用することができる。吸音システム1は、第1壁100に配置される第1吸音材10と、第2壁200に配置される第2吸音材20と、を備える。
【0016】
第1吸音材10は、第1吸音層11、第2吸音層12、および第1区分層13を含む。第1吸音層11、第1区分層13、および第2吸音層12は平面状にこの順に積層されている。第1区分層13は、第1吸音層11と第2吸音層12とに接して挟まれている。第1吸音材10は、第1壁100の第1領域101に接して配置される。第1吸音材10は、第2吸音層12が吸音を必要とする空間側に向くように配置される。すなわち、第1吸音層11は、第1領域101と第1区分層13との間に配置される。第1区分層13は、第1壁100と略平行に配置される。第1吸音材10は、第2壁200から離隔している。
【0017】
第2吸音材20は、第3吸音層21、第4吸音層22、および第2区分層23を含む。第3吸音層21、第2区分層23、および第4吸音層22は平面状にこの順に積層されている。第2区分層23は、第3吸音層21と第4吸音層22とに接して挟まれている。第2吸音材20は、第2壁200の第2領域201に接して配置される。第2吸音材20は、第4吸音層22が吸音を必要とする空間側に向くように配置される。すなわち、第3吸音層21は、第2領域201と第2区分層23との間に配置される。第2区分層23は、第2壁200と略平行に配置される。第2吸音材20は、第1壁100から離隔している。
【0018】
第1区分層13および第2区分層23としては、例えば、高分子有機物であって樹脂などの被膜が用いられる。第1吸音層11、第2吸音層12、第3吸音層21、および第4吸音層22としては、繊維質の集合体であって、例えば、グラスウール若しくはロックウールのどちらか一方若しくはこれらの組み合わせたものが用いられる。
【0019】
第1吸音材10の、第1区分層13の密度は、第1吸音層11および第2吸音層12の密度よりも大きい。第2吸音材20の、第2区分層23の密度は、第3吸音層21および第4吸音層22の密度よりも大きい。ここで第1区分層13、第1吸音層11、第2吸音層12、第2区分層23、第3吸音層21、第4吸音層22の密度とは、それぞれの層を構成する材料の密度ではなく、層全体の密度を示す。
【0020】
第1吸音材10の、第1吸音層11および第2吸音層12のヤング率は、第1区分層13のヤング率よりも小さい。第2吸音材20の、第3吸音層21および第4吸音層22のヤング率は、第2区分層23のヤング率よりも小さい。
【0021】
音波が第2吸音層12または第4吸音層22に入射すると、吸音層の空隙部分の空気が振動し、この空気の粘性抵抗によって音波のエネルギーが熱エネルギーに変換されて高周波数帯域の吸音が行われる。
【0022】
音波が第1区分層13に入射すると、第1区分層13と第1壁100の間に第1吸音層11が配置されていることで、第1区分層13が付加質量(錘)、第1吸音層11がバネ(空気バネ)の役割として作用し、膜振動による低周波数帯域の吸音を行わせることができる。同様に、音波が第2区分層23に入射すると、第2区分層23と第2壁200の間に第3吸音層21が配置されていることで、第2区分層23が付加質量(錘)、第3吸音層21がバネ(空気バネ)の役割として作用し、膜振動による低周波数帯域の吸音を行わせることができる。
【0023】
ここで、第1壁100の第1吸音材10が接する領域を第1領域101、第2壁200の第2吸音材20が接する領域を第2領域201、第1領域101と第2領域201の間の領域を第3領域301とする。第1領域101と、第2領域201とは接せず、少なくとも一部が対向する。第3領域301は、第1吸音材10および第2吸音材20から離隔している領域である。
【0024】
本実施形態において、第1吸音材10と第2吸音材20とは離隔している。第1吸音材10と第2吸音材20との間の距離D1は、第1吸音材10の厚さd10および第2吸音材20の厚さd20のいずれの厚さよりも小さい。第1吸音材10と第2吸音材20との間の距離D1は、第1壁100から第1区分層13までの距離d11および第2壁200から第2区分層23までの距離d21のいずれの距離よりも小さいことが好ましい。別言すると、第1吸音材10と第2吸音材20との間の距離D1は、第1吸音層11の厚さd11および第3吸音層21の厚さd21のいずれの厚さよりも小さいことが好ましい。第1吸音材10と第2吸音材20との間の距離D1は、後述するようにゼロであってもよく、その場合は、どこかで接触していることを示す。第1吸音材10と第2吸音材20との間の距離D1がより小さいことで、第1壁100と第2壁200が接続する端部において乱反射する音波を、第1吸音材10と第2吸音材20とで逃さず吸音することができ、吸音効率を向上することができる。第1吸音材10と第2吸音材20の表面(第2吸音層12および第4吸音層22側の面)が吸音を必要とする空間側に露出することで、吸音領域を最大限活かすことができる。また、第1壁100と第2壁200が接続する端部に第1吸音材10と第2吸音材20とを配置することで、省スペース化が可能となる。ここで距離D1とは第1吸音材10と第2吸音材20との最小距離を示し、第1吸音材10の厚さd10は第1吸音材10の積層方向(Y方向)の厚さを示し、第2吸音材20の厚さd20は第2吸音材20の積層方向(X方向)の厚さを示す。第1吸音層11の厚さd11は第1吸音層11の積層方向(Y方向)の厚さを示し、第3吸音層21の厚さd21は第3吸音層21の積層方向(X方向)の厚さを示す。
【0025】
本実施形態において、第2吸音層12と第4吸音層22との間の距離は、第1吸音層11と第3吸音層21との間の距離よりも小さいことが好ましい。第2吸音層12と第4吸音層22との間の距離は、後述するようにゼロであってもよく、その場合は、どこかで接触していることを示す。第2吸音層12と第4吸音層22との間の距離がより小さいことで、第1壁100と第2壁200が接続する端部において乱反射する音波を、第1吸音材10と第2吸音材20とで逃さず吸音することができ、吸音効率を向上することができる。第2吸音層12および第4吸音層22の面が吸音を必要とする空間側に露出することで、吸音領域を最大限活かすことができる。また、第1壁100と第2壁200が接続する端部に第1吸音材10と第2吸音材20とを配置することで、省スペース化が可能となる。ここで第2吸音層12と第4吸音層22との間の距離とは第2吸音層12と第4吸音層22とのとの最小距離を示し、第1吸音層11と第3吸音層21との間の距離とは第1吸音層11と第3吸音層21との最小距離を示す。
【0026】
本実施形態において第1吸音材10と第2壁200との間の距離d12は、第2吸音材20の厚さd20よりも大きい。第2吸音材20と第1壁100との間の距離d22は、第1吸音材10の厚さd10よりも大きい。第1吸音材10と第2壁200との間の距離d12および第2吸音材20と第1壁100との間の距離d22によって、吸音できる音波の周波数が変わり、周波数によって吸音効率が向上する。
【0027】
第1吸音材10と、第1壁100と第2壁200に接続する第3壁300との間の距離d13は、第1吸音材10の厚さd10および第2吸音材20の厚さd20のいずれの厚さよりも小さいことが好ましい。第2吸音材20と第3壁300との間の距離d23は、第1吸音材10の厚さd10および第2吸音材20の厚さd20のいずれの厚さよりも小さいことが好ましい。第1吸音材10と第3壁300との間の距離d13と、第2吸音材20と第3壁300との間の距離d23は同じであってもよいし、異なってもよい。第1吸音材10と第3壁300との間の距離d13と、第2吸音材20と第3壁300との間の距離d23は、ゼロであってもよく、その場合は、第3壁300と接触していることを示す。第1吸音材10と第3壁300との間の距離d13および第2吸音材20と第3壁300との間の距離d23がより小さいことで、第1壁100と第2壁200と第3壁300とが接続する端部において乱反射する音波を、第1吸音材10と第2吸音材20とで逃さず吸音することができ、吸音効率を向上することができる。
【0028】
本実施形態において第1壁100と第2壁200とは互いに平面状で交差し、角部を形成する。第3領域301は、この角部の第1壁100の一部と第2壁200の一部とを含む。すなわち第3領域301は、第1壁100の第1領域101から角部まで延在する平面と、第2壁200の第2領域201から角部まで延在する平面と、を含む。しかしながらこれに限定されず、第3領域301の形状は、第1壁100の第1領域101から第2壁200の第2領域201まで、なだらかに曲面で接続されてもよいし、2つ以上の平面で接続されてもよいし、平面と曲面の組み合わせであってもよい。第3領域301は、凹部を含んでもよいし、凸部を含んでもよい。第3領域301は、第1吸音材10および第2吸音材20から離隔していればよい。
【0029】
本実施形態において第1壁100と第2壁200のなす角度は約90°である。しかしながらこれに限定されず、第1壁100と第2壁200のなす角度は180°未満であればよい。この角度は、150°以下であることが好ましく、一般的には90°以上135°以下の範囲にあることが好ましい。ここで第1壁100と第2壁200のなす角度とは、第1壁100と第2壁200が形成する空間側の角度を示す。第1壁100と第2壁200のなす角度が小さくなるほど、第1壁100および第2壁200で挟まれる空間が狭くなり、音波の乱反射が起こりやすくなる。第1壁100と第2壁200のなす角度が大きくなるほど、第1吸音材10と第2吸音材20の配置が角部から近くなることで、第1壁100、第2壁200、第1吸音材10、および第2吸音材20で囲われる空間が小さくなり、音波の乱反射が起こりやすくなる。
【0030】
第1壁100と第2壁200のなす角度が小さくなるほど、第1吸音材10と第2吸音材20とが角部から遠くなる一方、第1吸音材10と第2吸音材20とを薄くすれば、それぞれを角部に近づけることができ、省スペース化が可能となる。第1壁100と第2壁200のなす角度が大きくなるほど、第1吸音材10と第2吸音材20とが角部から近くなる一方、それぞれを角部から遠ざけることで、第1吸音材10と第2吸音材20とを厚くすることができ、吸音効率を向上することができる。いずれの場合も、吸音効率と部屋の活用部分との関係で適宜設定することができる。
【0031】
本実施形態において第1吸音材10と第2吸音材20の形状は略長方形であり、第1壁100と第2壁200とが接続する角部が延在する方向(Z方向)に沿って長辺が延在する。第1吸音材10と第2吸音材20が対向する領域は、角部が延在する方向(Z方向)に沿って長手を有することが好ましい。すなわち、第1吸音材10と第2吸音材20の長辺はできるだけ大きい方が好ましい。第1領域101と第2領域201の間の第3領域301は、第1吸音材10と第2吸音材20の長辺に沿って延在する。上記条件を満たすかぎり、第3領域301は、角部が延在する方向(Z方向)に沿って長手を有することが好ましい。このような構成を有することで、第1吸音材10と第2吸音材20の吸音効率を向上することができる。第1吸音材10の幅w10は第1吸音材10の厚さd10より大きいことが好ましい。第2吸音材20の幅w20は第2吸音材20の厚さd20より大きいことが好ましい。このような構成を有することで、省スペース化が可能となる。しかしながら第1吸音材10と第2吸音材20の形状はとくに限定されず、上記条件を満たしていればよい。
【0032】
本実施形態に係る吸音システム1は、第1吸音材10と第2吸音材20とが第1壁100または第2壁200に沿うように配置されることによって、音が最も反響する端部に向かって壁伝いに伝わる音波が、第1吸音層11または第3吸音層21に入射する。さらに、第1吸音材10と第2吸音材20とが、第1壁100と第2壁200とが接続する端部に配置されることによって、吸音しきれずに第1吸音層11または第3吸音層21を通過した音波は、第1壁100または第2壁200で跳ね返り、再度、第1吸音層11または第3吸音層21に入射する。音波が第1吸音層11または第3吸音層21に入射すると、吸音層の空隙部分の空気が振動し、この空気の粘性抵抗によって音波のエネルギーが熱エネルギーに変換されて高周波数帯域の吸音が行われる。本実施形態に係る吸音システム1は上述の構成を有することによって、吸音効率を向上することができ、省スペース化が可能となる。
【0033】
<吸音材の構成>
本実施形態において、第1吸音材10と第2吸音材20とは同じ構成を有する。しかしながらこれに限定されず、第1吸音材10と第2吸音材20とは異なる構成を有してもよい。第1吸音材10および第2吸音材20としては、例えば、特許第4148318号公報に記載の吸音材を用いてもよい。
【0034】
本実施形態における第1区分層13および第2区分層23の面密度は、100kg/m以上1000kg/m以下の範囲にあることが好ましい。第1区分層13および第2区分層23の面密度が100kg/m未満では通気性が良くなり過ぎて、低周波数領域の吸音効率が悪くなり、1000kg/mを超えると反対に通気性が悪くなり過ぎて、音が反射し吸音が困難になる。
【0035】
本実施形態における第1区分層13および第2区分層23としては、高分子有機物であって樹脂などの被膜を用いることができる。
【0036】
本実施形態において第1吸音層11、第2吸音層12、第3吸音層21、および第4吸音層22は、同じ構成を有してもよく、異なる構成を有しても良い。
【0037】
第1吸音層11、第2吸音層12、第3吸音層21、および第4吸音層22は、具体的には、グラスウール若しくはロックウールを同種同士若しくは異種同士を積層したもので形成されていてもよい。
【0038】
[第2実施形態]
<吸音システム>
本実施形態に係る吸音システムの構成は、第1吸音材10と第2吸音材20が接触すること以外、第1実施形態に係る吸音システムの構成と同じである。第1実施形態と同じである説明は省略し、ここでは第1実施形態に係る吸音システムの構成と相違する部分について説明する。図3は、一実施形態に係る吸音システムの全体構成を概略的に示す斜視図である。図4は、一実施形態に係る吸音システムを概略的に示す上面図である。
【0039】
図3および図4に示すように、本実施形態に係る吸音システム2は、第1壁100に配置される第1吸音材10と、第2壁200に配置される第2吸音材20と、を備える。第1吸音材10が配置される第1領域101と、第2吸音材20が配置される第2領域201と、第1領域101と第2領域201の間の第3領域301との関係は第1実施形態と同じであることからここでは省略する。
【0040】
本実施形態において、第1吸音材10と第2吸音材20とは接触している。第1吸音材10と第2吸音材20は、第2吸音層12の端部と第4吸音層22の端部で接触している。しかしながらこれに限定されず、後述するように第1吸音材10と第2吸音材20とはどこかで接触していることを示す。
【0041】
本実施形態において第1吸音材10と第2壁200との間の距離d12は、第2吸音材20の厚さd20と略同じである。第2吸音材20と第1壁100との間の距離d22は、第1吸音材10の厚さd10と略同じである。
【0042】
本実施形態に係る吸音システム2は、第1吸音材10と第2吸音材20とが第2吸音層12の端部と第4吸音層22の端部で接触していることによって、第1壁100、第2壁200、第1吸音材10、および第2吸音材20で囲われる空間が閉じる。この空間で音波の乱反射が起こっても、再度、第1吸音材10および第2吸音材20に入射する。音波が第1吸音層11、第2吸音層12、第3吸音層21、または第4吸音層22に入射すると、吸音層の空隙部分の空気が振動し、この空気の粘性抵抗によって音波のエネルギーが熱エネルギーに変換されてさらに高周波数帯域の吸音が行われる。本実施形態に係る吸音システム2は上述の構成を有することによって、吸音効率をさらに向上することができ、省スペース化が可能となる。
【0043】
[第3実施形態]
<吸音システム>
本実施形態に係る吸音システムの構成は、第1吸音材10と第2吸音材20が重なり合うこと以外、第1実施形態に係る吸音システムの構成と同じである。第1実施形態と同じである説明は省略し、ここでは第1実施形態に係る吸音システムの構成と相違する部分について説明する。図5は、一実施形態に係る吸音システムの全体構成を概略的に示す斜視図である。図6は、一実施形態に係る吸音システムを概略的に示す上面図である。
【0044】
図5および図6に示すように、本実施形態に係る吸音システム3は、第1壁100に配置される第1吸音材10と、第2壁200に配置される第2吸音材20と、を備える。第1吸音材10が配置される第1領域101と、第2吸音材20が配置される第2領域201と、第1領域101と第2領域201の間の第3領域301との関係は第1実施形態と同じであることからここでは省略する。
【0045】
本実施形態において、第1吸音材10と第2吸音材20とは接触している。しかしながらこれに限定されず、後述するように第1吸音材10と第2吸音材20とは離隔していてもよい。
【0046】
本実施形態において第1吸音材10と第2壁200との間の距離d12は、第2吸音材20の厚さd20と略同じである。第2吸音材20と第1壁100との間の距離d22は、第1吸音材10の厚さd10よりも小さい。
【0047】
第2吸音層12の端面の少なくとも一部は、第2吸音材20の第4吸音層22側の面と対向する。本実施形態において第2吸音層12の端面の少なくとも一部と、第4吸音層22の一部は接触している。しかしながらこれに限定されず、後述するように第2吸音層12と第4吸音層22とは離隔していてもよい。
【0048】
本実施形態に係る吸音システム3は、第1吸音材10と第2吸音材20とが、第2吸音層12の端面の少なくとも一部と、第4吸音層22の一部とで接触していることによって、第1壁100、第2壁200、第1吸音材10、および第2吸音材20で囲われる空間が閉じる。ここで音波の乱反射が起こっても、再度、第1吸音材10および第2吸音材20に入射する。音波が第1吸音層11、第2吸音層12、第3吸音層21、または第4吸音層22に入射すると、吸音層の空隙部分の空気が振動し、この空気の粘性抵抗によって音波のエネルギーが熱エネルギーに変換されてさらに高周波数帯域の吸音が行われる。さらに第2吸音材20と第1壁100との間の距離d22によって、吸音できる音波の周波数が変わり、周波数によって吸音効率が向上する。本実施形態に係る吸音システム3は上述の構成を有することによって、吸音効率をさらに向上することができ、省スペース化が可能となる。
【0049】
[第4実施形態]
<吸音システム>
本実施形態に係る吸音システムの構成は、第1吸音材10と第2吸音材20が重なり合うこと以外、第1実施形態に係る吸音システムの構成と同じである。第1実施形態と同じである説明は省略し、ここでは第1実施形態に係る吸音システムの構成と相違する部分について説明する。図7は、一実施形態に係る吸音システムの全体構成を概略的に示す斜視図である。図8は、一実施形態に係る吸音システムを概略的に示す上面図である。
【0050】
図7および図8に示すように、本実施形態に係る吸音システム4は、第1壁100に配置される第1吸音材10と、第2壁200に配置される第2吸音材20と、を備える。第1吸音材10が配置される第1領域101と、第2吸音材20が配置される第2領域201と、第1領域101と第2領域201の間の第3領域301との関係は第1実施形態と同じであることからここでは省略する。
【0051】
本実施形態において、第1吸音材10と第2吸音材20とは接触している。しかしながらこれに限定されず、後述するように第1吸音材10と第2吸音材20とは離隔していてもよい。
【0052】
本実施形態において第1吸音材10と第2壁200との間の距離d12は、第2吸音材20の厚さd20と略同じである。第2吸音材20と第1壁100との間の距離d22は、第1区分層13と第1壁100との間の距離よりも小さい。
【0053】
第2吸音層12の端面は、第2吸音材20の第4吸音層22側の面と対向する。本実施形態において第2吸音層12の端面と、第4吸音層22の一部は接触している。しかしながらこれに限定されず、後述するように第2吸音層12と第4吸音層22とは離隔していてもよい。
【0054】
第1区分層13の端面は、第2吸音材20の第4吸音層22側の面と対向する。本実施形態において第1区分層13の端面と、第4吸音層22の一部は接触している。しかしながらこれに限定されず、後述するように第1区分層13と第4吸音層22とは離隔していてもよい。
【0055】
第1吸音層11の端面の一部は、第2吸音材20の第4吸音層22側の面と対向する。本実施形態において第1吸音層11の端面の一部と、第4吸音層22の一部は接触している。しかしながらこれに限定されず、後述するように第1吸音層11と第4吸音層22とは離隔していてもよい。
【0056】
本実施形態に係る吸音システム4は、第1吸音材10と第2吸音材20とが、第1吸音層11の端面の一部と、第4吸音層22の一部とで接触していることによって、第1壁100、第2壁200、第1吸音材10、および第2吸音材20で囲われる空間が閉じる。ここで音波の乱反射が起こっても、再度、第1吸音材10および第2吸音材20に入射する。第2吸音層12および第4吸音層22に入射する音波は、さらに吸音層内での距離を稼ぐことができる。音波が第1吸音層11、第2吸音層12、第3吸音層21、または第4吸音層22に入射すると、吸音層の空隙部分の空気が振動し、この空気の粘性抵抗によって音波のエネルギーが熱エネルギーに変換されてさらに高周波数帯域の吸音が行われる。さらに第2吸音材20と第1壁100との間の距離d22によって、吸音できる音波の周波数が変わり、周波数によって吸音効率が向上する。本実施形態に係る吸音システム4は上述の構成を有することによって、吸音効率をさらに向上することができ、省スペース化が可能となる。
【0057】
[第5実施形態]
<吸音システム>
本実施形態に係る吸音システムの構成は、第3吸音材30、第4吸音材40、第5吸音材50、第6吸音材60をさらに有すること以外、第1実施形態に係る吸音システムの構成と同じである。第1実施形態と同じである説明は省略し、ここでは第1実施形態に係る吸音システムの構成と相違する部分について説明する。図9は、一実施形態に係る吸音システムの全体構成を概略的に示す斜視図である。図10は、一実施形態に係る吸音システムを概略的に示す断面図である。図10は、図9のA-A’断面図である。
【0058】
図9および図10に示すように、本実施形態に係る吸音システム5は、第1壁100と、第2壁200と、第3壁300とが接続する端部に適用する例を示して説明する。しかしながらこれに限定されず、吸音システム5は、吸音を必要とする空間を囲う壁、床、天井などの3面が接続する端部に適用することができる。吸音システム5は、第1壁100に配置される第1吸音材10と第6吸音材60、第2壁200に配置される第2吸音材20と第3吸音材30、第3壁300に配置される第4吸音材40と第5吸音材50を備える。それぞれの吸音材の構成と、吸音材と接する壁の関係は、第1実施形態と同じであることからここでは省略する。第1吸音材10と第2吸音材20、第3吸音材30と第4吸音材40、第5吸音材50と第6吸音材60の関係は、第1実施形態と同じであることからここでは省略する。第1吸音材10と第6吸音材60、第2吸音材20と第3吸音材30、第4吸音材40と第5吸音材50の関係はそれぞれ同じであることから、ここでは第1吸音材10と第2吸音材20と第3吸音材30について説明する。
【0059】
第3吸音材30は、第5吸音層31、第6吸音層32、および第3区分層33を含む。第5吸音層31、第3区分層33、および第6吸音層32は平面状にこの順に積層されている。第3吸音材30は、第2壁200の第4領域401に接して配置される。第3吸音材30は、第6吸音層32が吸音を必要とする空間側に向くように配置される。すなわち、第5吸音層31は、第4領域401と第3区分層33との間に配置される。第3区分層33は、第2壁200と略平行に配置される。第3吸音材30は、第1壁100および第3壁300から離隔している。
【0060】
ここで、第1壁100の第1吸音材10が接する領域を第1領域101、第2壁200の第2吸音材20が接する領域を第2領域201、第2壁200の第3吸音材30が接する領域を第4領域401、第1領域101と第4領域401の間の領域を第5領域501とする。第1領域101と、第4領域401とは隣接しない。第5領域501は、第1吸音材10および第3吸音材30から離隔している。第2領域201と、第4領域401とは離隔している。すなわち、第2吸音材20と第3吸音材30とは離隔している。しかしながらこれに限定されず、第2吸音材20と第3吸音材30とは接して配置されてもよい。第2吸音材20と第3吸音材30とは一体形成されてもよい。
【0061】
本実施形態において、第1吸音材10と第3吸音材30とは離隔している。第1吸音材10と第3吸音材30との間の距離D2は、第1吸音材10の厚さd10および第3吸音材30の厚さd30のいずれの厚さよりも小さい。第1吸音材10と第3吸音材30との間の距離D2は、第1壁100から第1区分層13までの距離d11および第2壁200から第3区分層33までの距離d31のいずれの距離よりも小さいことが好ましい。別言すると、第1吸音材10と第3吸音材30との間の距離D2は、第1吸音層11の厚さd11および第5吸音層31の厚さd31のいずれの厚さよりも小さいことが好ましい。第1吸音材10と第3吸音材30との間の距離D2は、前述するようにゼロであってもよく、その場合は、どこかで接触していることを示す。ここで距離D2とは第1吸音材10と第3吸音材30との最小距離を示し、第3吸音材30の厚さd30は第3吸音材30の積層方向(X方向)の厚さを示す。第5吸音層31の厚さd31は第5吸音層31の積層方向(X方向)の厚さを示す。
【0062】
図10において第3吸音材30と第1壁100との間の距離d32は、第1吸音材10の厚さd10よりも大きい。しかしながらこれに限定されず、第3吸音材30と第1壁100との間の距離d32は、第1吸音材10の厚さd10および第3吸音材30の厚さd30のいずれの厚さよりも小さいことが好ましい。第3吸音材30と第1壁100との間の距離d32は、第1壁100から第1区分層13までの距離d11および第2壁200から第3区分層33までの距離d31のいずれの距離よりも小さいことが好ましい。第3吸音材30と第1壁100との間の距離d32は、ゼロであってもよく、その場合は、第1壁100と接触していることを示す。第3吸音材30と第1壁100との間の距離d32が小さいことで、第1壁100と第2壁200が接続する端部において乱反射する音波を、第1吸音材10と第3吸音材30とで逃さず吸音することができ、吸音効率を向上することができる。また、第1壁100と第2壁200が接続する端部に第1吸音材10と第3吸音材30とを配置することで、省スペース化が可能となる。第3吸音材30と第1壁100との間の距離d32が大きいことで、第1吸音材10と第3吸音材30の表面(第2吸音層12および第6吸音層32側の面)が吸音を必要とする空間側に露出することで、吸音領域を最大限活かすことができる。
【0063】
第1吸音材10と第3壁300との間の距離d13は、第1吸音材10の厚さd10および第3吸音材30の厚さd30のいずれの厚さよりも小さいことが好ましい。第1吸音材10と第3壁300との間の距離d13は、ゼロであってもよく、その場合は、第3壁300と接触していることを示す。第2吸音材20と第3壁300との間の距離d23は第3吸音材30の幅w30より大きい。第3吸音材30と第3壁300との間の距離d33は、第1吸音材10の厚さd10および第3吸音材30の厚さd30のいずれの厚さよりも小さいことが好ましい。第3吸音材30と第3壁300との間の距離d33は、第1壁100から第1区分層13までの距離d11および第2壁200から第3区分層33までの距離d31のいずれの距離よりも小さいことが好ましい。第1吸音材10と第3壁300との間の距離d13と、第3吸音材30と第3壁300との間の距離d33は同じであってもよいし、異なってもよい。第1吸音材10と第3壁300との間の距離d13および第3吸音材30と第3壁300との間の距離d33がより小さいことで、第1壁100と第2壁200と第3壁300とが接続する端部において乱反射する音波を、第1吸音材10と第3吸音材30とで逃さず吸音することができ、吸音効率を向上することができる。
【0064】
第5領域501は、角部の第1壁100の一部と第2壁200の一部とを含む。すなわち第5領域501は、第1壁100の第1領域101から角部まで延在する平面と、第2壁200の第4領域401から角部まで延在する平面と、を含む。しかしながらこれに限定されず、第5領域501の形状は、特に限定しない。第5領域501は、第1吸音材10および第3吸音材30から離隔していればよい。
【0065】
本実施形態において第1吸音材10と第2吸音材20と第3吸音材30の形状は略長方形である。第1吸音材10と第2吸音材20とは、第1壁100と第2壁200とが接続する角部が延在する方向(Z方向)に長辺が延在する。第3吸音材30は、第2壁200と第3壁300とが接続する角部が延在する方向(Y方向)に長辺が延在する。第3吸音材30の幅w30は第3吸音材30の厚さd30より大きいことが好ましい。しかしながら第3吸音材30の形状はとくに限定されず、上記条件を満たしていればよい。
【0066】
本実施形態に係る吸音システム5は、第1吸音材10と第2吸音材20と第3吸音材30とが第1壁100または第2壁200に沿うように配置されることによって、音が最も反響する端部に向かって壁伝いに伝わる音波が、第1吸音層11、第3吸音層21、または第5吸音層31に入射する。さらに、第1吸音材10と第2吸音材20と第3吸音材30とが、第1壁100と第2壁200とが接続する端部に配置されることによって、吸音しきれずに第1吸音層11、第3吸音層21、または第5吸音層31を通過した音波は、第1壁100または第2壁200で跳ね返り、再度、第1吸音層11、第3吸音層21、または第5吸音層31に入射する。音波が第1吸音層11、第3吸音層21、または第5吸音層31に入射すると、吸音層の空隙部分の空気が振動し、この空気の粘性抵抗によって音波のエネルギーが熱エネルギーに変換されて高周波数帯域の吸音が行われる。本実施形態に係る吸音システム5は上述の構成を有することによって、さらに吸音効率を向上することができ、省スペース化が可能となる。
【0067】
本実施形態に係る吸音システム5は、第1吸音材10と第2吸音材20、第3吸音材30と第4吸音材40、第5吸音材50と第6吸音材60が、第1壁100と第2壁200と第3壁300が接続するそれぞれの端部に配置されることによって、第1壁100、第2壁200、第3壁300、第1吸音材10、第2吸音材20、第3吸音材30、第4吸音材40、第5吸音材50、および第6吸音材60で囲われる空間が閉じる。ここで音波の乱反射が起こっても、再度、第1吸音材10、第2吸音材20、第3吸音材30、第4吸音材40、第5吸音材50、および第6吸音材60に入射する。音波がそれぞれの吸音層に入射すると、吸音層の空隙部分の空気が振動し、この空気の粘性抵抗によって音波のエネルギーが熱エネルギーに変換されてさらに高周波数帯域の吸音が行われる。本実施形態に係る吸音システム5は上述の構成を有することによって、吸音効率をさらに向上することができ、省スペース化が可能となる。
【0068】
[変形例1]
<吸音システム>
本変形例に係る吸音システムの構成は、第1吸音材10と第2吸音材20が離隔していること以外、第3実施形態に係る吸音システムの構成と同じである。第3実施形態と同じである説明は省略し、ここでは第3実施形態に係る吸音システムの構成と相違する部分について説明する。図11は、一変形例に係る吸音システムの全体構成を概略的に示す斜視図である。図12は、一変形例に係る吸音システムを概略的に示す上面図である。
【0069】
本実施形態において、第1吸音材10と第2吸音材20とは離隔している。第1吸音材10と第2吸音材20との間の距離D3は、第1実施形態の距離D1と同じ条件であることからここでは省略する。ここで距離D3とは第1吸音材10と第2吸音材20との最小距離を示す。
【0070】
[変形例2]
<吸音システム>
本変形例に係る吸音システムの構成は、第1吸音材10と第2吸音材20とを第1壁100と第2壁200と第3壁300が接続するそれぞれの端部に配置すること以外、第1実施形態に係る吸音システムの構成と同じであるので、ここでは説明は省略する。図13は、一変形例に係る吸音システムの全体構成を概略的に示す斜視図である。
【実施例0071】
[実施例1]
第5実施形態に係る吸音システム5を用いて、JIS-A-1409 (1998)に準拠した残響室法吸音率測定試験を行った。実施例1で用いた吸音材の総面積は0.444mであった。実施例1に係る条件下での1/3オクターブバンド中心周波数における音の残存時間を測定し、吸音システムなしのときと比較した単位面積当たりの吸音量を算出した。
【0072】
[比較例1]
板状の吸音材を床面に1つ配置して、実施例1と同様にJIS-A-1409 (1998)に準拠した残響室法吸音率測定試験を行った。比較例1で用いた吸音材の総面積は0.888mであった。比較例1に係る条件下での1/3オクターブバンド中心周波数における音の残存時間を測定し、吸音システムなしのときと比較した単位面積当たりの吸音量を算出した。
【0073】
図14は、比較例1の吸音量を1としたときの、実施例1の吸音量の割合を示すグラフである。図14に示すように、同じ吸音材であっても、実施例1に第5実施形態に係る吸音システム5を用いることで、特に、高周波数帯域側(概ね400Hz以上)の吸音率が大幅に向上したことがわかる。
【符号の説明】
【0074】
1、2、3、4、5 吸音システム、10 第1吸音材、11 第1吸音層、12 第2吸音層、13 第1区分層、20 第2吸音材、21 第3吸音層、22 第4吸音層、23 第2区分層、30 第3吸音材、31 第5吸音層、32 第6吸音層、33 第3区分層、40 第4吸音材、50 第5吸音材、60 第6吸音材、100 第1壁、101 第1領域、200 第2壁、201 第2領域、300 第3壁、301 第3領域、401 第4領域

図1
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