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  • 特開-重ね合わせ体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151265
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】重ね合わせ体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/50 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
H01L21/50 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060784
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 亘
(72)【発明者】
【氏名】西尾 太寿
(72)【発明者】
【氏名】米田 卓郎
(57)【要約】      (修正有)
【課題】製造上、装置が単純で容易に短時間で位置合わせができ、且つ重ね合わせ精度が維持できる重ね合わせ体の製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも2つの位置決めピン2が設けられた位置決め治具1と、ピンに対応する位置に位置決め用貫通孔3を有する第1基材4と、ピンに対応する位置に位置決め用貫通孔を有する第2基材6とを準備し、ピンに位置決め用貫通孔を通すように、位置決め治具上に、第1基材、第2基材の順に重ね合わせする、重ね合わせ体の製造方法であって、第1基材及び第2基材は、中央を占める矩形の中央領域5、矩形の中央領域以外を占める周縁領域6並びに中央領域の対向する第一辺7及び第二辺8と直交し且つ矩形の中央領域の中心点を通る直線上であって第一辺よりも外側の周縁領域及び第二辺よりも外側の周縁領域の各々に設けられた第1の位置決め用貫通孔3L及び第2の位置決め用貫通孔3Rをそれぞれ有している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの位置決めピンが設けられた治具と、前記ピンに対応する位置に貫通孔を有する第1基材と、前記ピンに対応する位置に貫通孔を有する第2基材とを準備し、前記ピンに前記貫通孔を通すように、前記治具上に、前記第1基材、前記第2基材の順に重ね合わせする、重ね合わせ体の製造方法であって、
前記第1基材は、中央を占める矩形の中央領域、前記中央領域以外を占める周縁領域、並びに、前記中央領域の対向する第一辺及び第二辺と直交し且つ前記矩形の中心点を通る直線上であって前記第一辺よりも外側の周縁領域及び前記第二辺よりも外側の周縁領域の各々に設けられた第1の位置決め用貫通孔及び第2の位置決め用貫通孔を有しており、
前記第2基材は、中央を占める矩形の中央領域、前記中央領域以外を占める周縁領域、並びに、前記中央領域の対向する第一辺及び第二辺と直交し且つ前記矩形の中心点を通る直線上であって前記第一辺よりも外側の周縁領域及び前記第二辺よりも外側の周縁領域の各々に設けられた第1の位置決め用貫通孔及び第2の位置決め用貫通孔を有している、重ね合わせ体の製造方法。
【請求項2】
前記第1基材及び/又は前記第2基材が樹脂材料を含有する、請求項1に記載の重ね合わせ体の製造方法。
【請求項3】
前記第1基材及び/又は前記第2基材がさらに機能層を含む、請求項1又は2に記載の重ね合わせ体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重ね合わせ体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体デバイス、ディスプレイデバイス等の電子デバイスを製造する工程において、例えば、電子デバイスを構成する一方の基材に対し他方の基材を貼り合わせる工程がある。この場合、製造される電子デバイスを構成することはもとより、且つ電子デバイスの性能を十分に発揮する観点から、両方の基材同士を位置精度よく貼り合わせることが要求されることがあった。
特許文献1には、例えば、半導体デバイスを構成する素子にかかる三次元実装パッケージの製造にあたり、各薄型基材2と各プリプレグ5との位置決め、すなわち層間での位置ズレの発生が抑制されるように、薄型基材2及びプリプレグ5において4つあるコーナー部のうちの2つには、位置決め孔12が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-246540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、各薄型基材2と各プリプレグ5との位置決めを行うための位置決め孔12は、薄型基材2及びプリプレグ5における対角線上に位置している。そして、薄型基材としてエポキシ、ポリイミド、ポリプロピレン等が用いられていることから、例えば、熱履歴により薄型基材の変形量が大きくなるおそれがあり、当該薄型基材の2つの位置決め孔12のうちどちらか一方をピン25に通しづらくなることがある。たとえ、通すことができたとしても位置精度が悪くなるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記を鑑み、製造上、装置が単純で容易に短時間で位置合わせができ、且つ重ね合わせ精度が維持できる重ね合わせ体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、第1基材及び第2基材のそれぞれの位置決め用貫通孔を、両基材で共通し且つ中央を占める矩形の中央領域、中央領域以外を占める周縁領域、並びに、中央領域の対向する第一辺及び第二辺と直交し且つ矩形の中心点を通る直線上であって、第一辺よりも外側の周縁領域及び第二辺よりも外側の周縁領域の各々に設けることにより、装置が単純で容易に短時間で重ね合わせ体を位置合わせでき、且つ重ね合わせの精度を維持できることを見出だし、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[3]を提供するものである。
[1]少なくとも2つの位置決めピンが設けられた治具と、前記ピンに対応する位置に貫通孔を有する第1基材と、前記ピンに対応する位置に貫通孔を有する第2基材とを準備し、前記ピンに前記貫通孔を通すように、前記治具上に、前記第1基材、前記第2基材の順に重ね合わせする、重ね合わせ体の製造方法であって、前記第1基材は、中央を占める矩形の中央領域、前記中央領域以外を占める周縁領域、並びに、前記中央領域の対向する第一辺及び第二辺と直交し且つ前記矩形の中心点を通る直線上であって前記第一辺よりも外側の周縁領域及び前記第二辺よりも外側の周縁領域の各々に設けられた第1の位置決め用貫通孔及び第2の位置決め用貫通孔を有しており、前記第2基材は、中央を占める矩形の中央領域、前記中央領域以外を占める周縁領域、並びに、前記中央領域の対向する第一辺及び第二辺と直交し且つ前記矩形の中心点を通る直線上であって前記第一辺よりも外側の周縁領域及び前記第二辺よりも外側の周縁領域の各々に設けられた第1の位置決め用貫通孔及び第2の位置決め用貫通孔を有している、重ね合わせ体の製造方法。
[2]前記第1基材及び/又は前記第2基材が樹脂材料を含有する、上記[1]に記載の重ね合わせ体の製造方法。
[3]前記第1基材及び/又は前記第2基材がさらに機能層を含む、上記[1]又は[2]に記載の重ね合わせ体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、製造上、装置が単純で容易に短時間で位置合わせができ、且つ重ね合わせ精度が維持できる重ね合わせ体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に用いた基材の中央領域と位置決め治具上の位置決めピンと基材の位置決め用貫通孔との配置の関係の一例を示す説明図である。
図2】本発明の重ね合わせ体の製造方法に従った工程の一例を工程順に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[重ね合わせ体の製造方法]
本発明の重ね合わせ体の製造方法は、少なくとも2つの位置決めピンが設けられた治具と、前記ピンに対応する位置に貫通孔を有する第1基材と、前記ピンに対応する位置に貫通孔を有する第2基材とを準備し、前記ピンに前記貫通孔を通すように、前記治具上に、前記第1基材、前記第2基材の順に重ね合わせする、重ね合わせ体の製造方法であって、前記第1基材は、中央を占める矩形の中央領域、前記中央領域以外を占める周縁領域、並びに、前記中央領域の対向する第一辺及び第二辺と直交し且つ前記矩形の中心点を通る直線上であって前記第一辺よりも外側の周縁領域及び前記第二辺よりも外側の周縁領域の各々に設けられた第1の位置決め用貫通孔及び第2の位置決め用貫通孔を有しており、前記第2基材は、中央を占める矩形の中央領域、前記中央領域以外を占める周縁領域、並びに、前記中央領域の対向する第一辺及び第二辺と直交し且つ前記矩形の中心点を通る直線上であって前記第一辺よりも外側の周縁領域及び前記第二辺よりも外側の周縁領域の各々に設けられた第1の位置決め用貫通孔及び第2の位置決め用貫通孔を有していることを特徴とする。
本発明の重ね合わせ体の製造方法では、第1基材及び第2基材のそれぞれの位置決め用貫通孔を、両基材で共通し且つ位置精度を要する中央を占める矩形の中央領域、中央領域以外を占める周縁領域、並びに、中央領域において対向する第一辺及び第二辺と直交し且つ矩形の中心点を通る直線上であって、第一辺よりも外側の周縁領域及び第二辺よりも外側の周縁領域の各々に設けることにより、装置が単純で容易に短時間で重ね合わせ体の位置合わせができ、且つ重ね合わせの精度が低下することなく維持することができる。
【0010】
本明細書において、好ましいとする規定は任意に選択でき、好ましいとする規定同士の組み合わせはより好ましいといえる。
本明細書において、「XX~YY」との記載は、「XX以上YY以下」を意味する。
本明細書において、好ましい数値範囲について、段階的に記載された下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10~90、より好ましくは30~60」という記載から、「好ましい下限値(10)」と「より好ましい上限値(60)」とを組み合わせて、「10~60」とすることもできる。
以下、本発明の重ね合わせ体の製造方法について、図を用いて説明する。
【0011】
図1は本発明に用いた基材の中央領域と位置決め治具上の位置決めピンと基材の位置決め用貫通孔との配置の関係の一例を示す説明図であり、(a)は、第1基材4の平面図であり、第1基材4は、その中央を占める矩形の中央領域5、また中央領域5以外を占める周縁領域6、並びに、中央領域5の対向する第一辺7及び第二辺8と直交し且つ矩形の中央領域5の中心点Cを通る直線上であって、第一辺7よりも外側の周縁領域6及び第二辺8よりも外側の周縁領域6の各々に設けられた第1の位置決め用貫通孔3及び第2の位置決め用貫通孔3を有している。
(b)は、第1の位置決め用貫通孔3及び第2の位置決め用貫通孔3を有する第1基材4の断面構成図であり、(c)は、第1の位置決め用貫通孔3及び第2の位置決め用貫通孔3のそれぞれの対応する位置に、2つの位置決めピン2が設けられた位置決め治具1の断面構成図である。
なお、第2基材についても、第1基材と同様である。
【0012】
図2は本発明の重ね合わせ体の製造方法に従った工程の一例を工程順に示す説明図であり、(a)は、上が2つの位置決めピン2が設けられた位置決め治具1の平面図、下が断面構成図である。2つの位置決めピン2は、第1基材、第2基材で共通し且つ位置精度を要する中央を占める矩形の中央領域5より外側になるように配置される。
(b)は、第1の位置決め用貫通孔3及び第2の位置決め用貫通孔3を有する第1基材4と2つの位置決めピン2が設けられた位置決め治具1とを対向させた態様を示す断面構成図である。
(c)は、下が第1基材4の第1の位置決め用貫通孔3及び第2の位置決め用貫通孔3を位置決めピン2に通し、第1基材4を位置決め治具1上に配置した後の態様を示す断面構成図であり、上が平面図である。ここで、5は矩形の中央領域を示す。
(d)は、第1の位置決め用貫通孔3及び第2の位置決め用貫通孔3を有する第2基材6と2つの位置決めピン2が設けられた位置決め治具1とを対向させた態様を示す断面構成図である。ここで、9は封止層を示す。封止層9は、第2基材6の主面上に設けられている。本例において、封止層9は、第2基材6の主面のうち、第1の位置決め用貫通孔3と第2の位置決め用貫通孔3との間の領域に設けられている。
(e)は、下が第2基材6の第1の位置決め用貫通孔3及び第2の位置決め用貫通孔3を位置決めピン2に通し、第2基材4を位置決め治具1上に配置した第1基材4上に重ね合わせた後の態様を示す断面構成図であり、上が平面図である。
【0013】
<基材重ね合わせ工程>
本発明の重ね合わせ体の製造方法は、一態様として、基材重ね合わせ工程を含む。
基材重ね合わせ工程は、位置決め治具準備工程、位置決め用貫通孔準備工程、第1基材配置工程、及び第2基材配置工程を含むことが好ましい。
【0014】
(位置決め治具準備工程)
位置決め治具準備工程は、位置決めピンが設けられた位置決め治具を準備する工程であり、例えば、前述した図2(a)において、2つの位置決めピン2が設けられた位置決め治具1を準備する工程である。
【0015】
(位置決め用貫通孔準備工程)
位置決め用貫通孔準備工程は、第1基材の位置決め用貫通孔及び第1基材の位置決め用貫通孔を準備する工程であり、例えば、前述した図2(b)において、第1の位置決め用貫通孔3及び第2の位置決め用貫通孔3を有する第1基材4を準備する工程であり、また、例えば、前述した図2(d)において、第1の位置決め用貫通孔3及び第2の位置決め用貫通孔3を有する第2基材6を準備する工程である。
【0016】
〈位置決めピン〉
位置決めピンは、第1基材と第2基材とを重ね合わせる際の位置決めに用いられる。
位置決めピンの形状は、突起構造であって、前記突起は、特に制限されないが、位置精度の観点から、円柱状、四角柱状や六角柱状などの多角柱状のピンであることが好ましい。
位置決めピンの材料としては、特に制限されないが、金属、セラミックス、又は樹脂等が挙げられる。耐熱性、機械強度、加工性の観点から、金属、セラミックスが好ましい。
位置決めピンの形状が円柱状の場合、位置決めピンの外径は、基材の用途に応じた貫通孔の大きさにより適宜選択することができる。例えば、0.1mm以上20mm以下であってもよく、1mm以上10mm以下であってもよい。
例えば、貫通孔の内径を2.00±0.03mmに設定した場合、位置決めピンの外径は、少なくとも貫通孔の内径より小さくする必要があることから、例えば、位置決めピンの外径を好ましくは1.94以上1.97mm未満、より好ましくは1.95mm以上1.97mm未満、さらに好ましくは1.96mm以上1.97mm未満に設定することができる。貫通孔の内径を2.00±0.03mmに設定した場合、位置決めピンの外径がこの範囲にあると、基材として後述する樹脂材料を使用して熱履歴を経た後でも、例えば、第1基材4の第1の位置決め用貫通孔3及び第2の位置決め用貫通孔3を、それぞれ対応する位置決めピン2に通し易くできる。
【0017】
(第1基材配置工程)
第1基材配置工程は、第1基材の位置決め用貫通孔を位置決めピンに通し、第1基材を位置決め治具1上に配置する工程である。例えば、前述した図2(b)において、第1の位置決め用貫通孔3及び第2の位置決め用貫通孔3を有する第1基材4と2つの位置決めピン2が設けられた位置決め治具1とを対向させ、次いで(c)において、第1基材4の第1の位置決め用貫通孔3及び第2の位置決め用貫通孔3を、それぞれ対応する位置決めピン2に通し、第1基材4を位置決め治具1上に配置する工程である。
【0018】
(第2基材配置工程)
第2基材配置工程は、第2基材の位置決め用貫通孔を位置決めピンに通し、第2基材を位置決め治具1上の第2基材に重ね合わせるように配置し、第1基材と第2基材との重ね合わせ体を得る工程である。例えば、前述した図2(d)において、第1の位置決め用貫通孔3及び第2の位置決め用貫通孔3を有する第2基材6と2つの位置決めピン2が設けられた位置決め治具1とを対向させ、次いで(e)において、封止層9を有する第2基材6の第1の位置決め用貫通孔3及び第2の位置決め用貫通孔3を、それぞれ対応する位置決めピン2に通し、第2基材4を位置決め治具1上に配置した第1基材4上に重ね合わせるように配置し、封止層9を介し第1基材4と第2基材6との重ね合わせ体を得る工程である。
【0019】
〈位置決め用貫通孔〉
位置決め用貫通孔は、第1基材と第2基材とを重ね合わせる際の位置決めに用いられる。
位置決め用貫通孔の形状は、特に制限されないが、位置精度の観点から、円柱状、四角柱状や六角柱状などの多角柱状であることが好ましい。
位置決め用貫通孔を形成する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、プラズマエッチングやウェットエッチング等のエッチング、レーザー照射、又はサンドブラストや超音波ドリル等の機械的な加工法が挙げられる。
貫通孔が円柱状の場合、貫通孔の内径は、基材の用途に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、0.1mm以上20mm以下であってもよく、0.5mm以上10mm以下であってもよい。
【0020】
〈基材〉
本発明に用いる第1基材及び第2基材としては、特に制限はなく、それぞれ独立に、ガラス、シリコン、セラミック、金属、樹脂等が挙げられる。
基材の厚さは、プロセス及び寸法安定性の観点から、10~10000μmのものが使用できる。
【0021】
第1基材及び/又は前記第2基材は樹脂材料を含有していてもよい。
第1基材及び第2基材の樹脂材料としては、それぞれ独立して、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアラミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、又はフッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)が好ましく、さらに、耐熱性、汎用性が高いという点から、ポリイミド樹脂が特に好ましい。
【0022】
基材として樹脂材料を用いた場合、基材の厚さは、屈曲性、耐熱性及び寸法安定性の観点から、それぞれ独立に、好ましくは10~1000μm、より好ましくは15~500μm、特に好ましくは20~100μmである。
基材として樹脂材料を用いた場合、基材のサイズは、位置精度の観点から、それぞれ独立に、幅が、好ましくは5~500mm、より好ましくは20~300mm、さらに好ましくは30~200mmであり、奥行きが、好ましくは5~500mm、より好ましくは20~300mmm、さらに好ましくは30~200mmである。
また、樹脂材料における、熱重量分析(TG)で測定される5%質量減少温度は、好ましくは300℃以上、より好ましくは400℃以上である。JIS K7133(1999)に準拠して200℃で測定した加熱寸法変化率は、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.3%以下である。JIS K7197(2012)に準拠して測定した平面方向の線膨脹係数は、好ましくは0.1~50ppm・℃-1、より好ましくは0.1~30ppm・℃-1である。
樹脂材料のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは200℃以上であり、より好ましくは220℃以上であり、さらに好ましくは250℃以上である。
ここでTgは、示差走査熱量計(昇温速度5℃/分で0~500℃の範囲で測定)により得られたtanδ(損失弾性率/貯蔵弾性率)の最大点の温度をいう。
【0023】
〈封止層〉
本発明に用いる後述する機能層としての封止層を構成する主成分としては、特に制限はなく、ポリオレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂、又はアクリル系樹脂であることが好ましい。また、封止層が粘接着性を有する封止剤(以下、「封止剤組成物」ということがある。)からなることが好ましく、重ね合わせ時に粘着性を有し、その後エネルギーの付加により接着し硬化する。
例えば、封止剤組成物中のアクリル系樹脂の含有量は、好ましくは30~95質量%、さらに好ましくは40~90質量%である。
封止層の形成は、公知の方法で行うことができ、例えば、所望の層の面に直接形成してもよい。また、予め剥離シート上に形成した封止層を、所望の層の面に貼り合わせて、封止層を所望の層の面に転写させて形成してもよい。さらに、封止層は、2種以上積層してよい。
封止層の厚さは、好ましくは0.5~100μm、より好ましくは3~50μm、さらに好ましくは5~30μmである。
【0024】
第1基材及び/又は第2基材は、さらに機能層を含むことが好ましい。
前記機能層は、高熱伝導層、粘着剤層、接着剤層、封止層、導電層、及び熱電変換素子層から少なくとも1層以上選択される。
【0025】
例えば、機能層として用いる導電層(電極、透明導電層等)を構成する材料としては、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物等が挙げられる。透明導電層では、例えば、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO);フッ素をドープした酸化スズ(FTO);酸化スズ、ゲルマニウムをドープした酸化亜鉛(GZO)、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の半導電性金属酸化物;金、銀、クロム、ニッケル等の金属;これら金属と導電性金属酸化物との混合物;ヨウ化銅、硫化銅等の無機導電性物質;ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の有機導電性材料;等が挙げられる。
導電層の形成方法としては、例えば、印刷法、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD法、プラズマCVD法等が挙げられる。
導電体層の厚さはその用途等に応じて適宜選択すればよい。通常10nmから50μm、好ましくは20nmから20μmである。
【0026】
本発明の重ね合わせ体の製造方法は、機能層としての熱電変換素子層、機能層としての導電層からなる電極、機能層としての高熱伝導層からなる放熱板とを含む、熱電変換モジュールの製造工程に適用することができる。具体的には、第1基材には、例えば、電極並びに、P型熱電素子層及びN型熱電素子層からなる熱電変換素子層がこの順に積層され、第2基材には、放熱板がそのまま対応する構成であり、第2基材としての放熱板を第1基材上のP型熱電素子層、N型熱電素子層の境界間を跨ぐように位置精度良く配置するように重ね合わせ、重ね合わせ体(熱電変換モジュール)を製造することにより、本来熱電変換モジュールが有する熱電性能を最大限発揮させることができる。
【0027】
熱電変換モジュールの製造方法は、電極を形成する工程、熱電変換素子層を形成する工程、及び放熱板(高熱伝導層)を形成する工程を含んでいてもよい。
【0028】
〈電極形成工程〉
熱電変換モジュールの製造工程において、一態様として、基板上に、金、銀、ニッケル、銅又はこれらの合金等の電極材料等を用い、電極を形成する電極形成工程を含む。第1基材上に電極を形成する方法としては、パターンが形成されていない電極を設けた後、フォトリソグラフィー法を主体とした公知の物理的処理もしくは化学的処理、又はそれらを併用する等により、所定のパターン形状に加工する方法、または、スクリーン印刷法、インクジェット法等により直接電極のパターンを形成する方法等が挙げられる。
パターンが形成されていない電極の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD(物理気相成長法)、もしくは熱CVD、原子層蒸着(ALD)等のCVD(化学気相成長法)等のドライプロセス、又はディップコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、ドクターブレード法等の各種コーティングや電着法等のウェットプロセス、銀塩法、電解めっき法、無電解めっき法、金属箔の積層等が挙げられ、電極の材料に応じて適宜選択される。
【0029】
〈熱電変換素子層形成工程〉
熱電変換モジュールの製造工程には、一態様として、P型熱電素子層、N型熱電素子層を形成する熱電変換素子層形成工程を含む。P型熱電素子層及びN型熱電素子層は、一態様として、第1基材の一方の面上に、P型ビスマステルライド、N型ビスマステルライド等のビスマス-テルル系熱電半導体材料、ポリイミド等の樹脂、1-ブチルピリジニウムブロミド等のイオン液体等を含む熱電半導体組成物から形成される。
熱電半導体組成物を第1基材上に塗布する方法としては、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、スピンコート、ディップコート、ダイコート、スプレーコート、バーコート、ドクターブレード等の公知の方法が挙げられ、特に制限されない。塗膜をパターン状に形成する場合は、所望のパターンを有するスクリーン版を用いて簡便にパターン形成が可能なスクリーン印刷、スロットダイコート等が好ましく用いられる。
次いで、得られた塗膜を乾燥することにより、薄膜が形成されるが、乾燥方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等、従来公知の乾燥方法が採用できる。加熱温度は、通常、80~150℃であり、加熱時間は、加熱方法により異なるが、通常、数秒~数十分である。
また、熱電半導体組成物の調製において溶媒を使用した場合、加熱温度は、使用した溶媒を乾燥できる温度範囲であれば、特に制限はない。
薄膜形成後、さらにアニール処理を行うことが好ましい。該アニール処理を行うことで、熱電性能を安定化させるとともに、薄膜中の熱電半導体微粒子を結晶成長させることができ、熱電性能をさらに向上させることができる。アニール処理は、特に限定されないが、通常、ガス流量が制御された、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、還元ガス雰囲気下、または真空条件下で行われ、用いる樹脂及びイオン液体等の耐熱温度等に依存するが、100~500℃で、数分~数十時間行われる。
【0030】
〈放熱板形成工程〉
熱電変換モジュールの製造工程には、一態様として、放熱板形成工程を含む。放熱板形成工程は熱電変換素子層上に放熱板を形成する工程である。
放熱板(高熱伝導層)の材料としては、高熱伝導性材料を用いることができ、高熱伝導率、加工性、屈曲性の観点から、金属材料が好ましい。金属材料の中で、好ましくは銅(無酸素銅含む)、ステンレスであり、熱伝導率が高く、加工性がさらに容易であることから、銅がより好ましい。
放熱板の形成は、公知の方法で行うことができ、例えば、放熱板を、熱電変換素子層の面に直接形成してもよい。また、封止層や接着剤層を介して形成してもよい。
フォトリソグラフィー法を主体とした公知の物理的処理もしくは化学的処理、又はそれらを併用する等により、所定のパターン形状に加工したものを、第1基材上に直接、又は、封止層や接着剤層を介して貼り合わせてもよい。
【0031】
本発明の重ね合わせ体の製造方法によれば、第1基材及び第2基材のそれぞれの位置決め用貫通孔を、両基材で共通し且つ中央を占める矩形の中央領域、中央領域以外を占める周縁領域、並びに、中央領域の対向する第一辺及び第二辺と直交し且つ矩形の中心点を通る直線上であって、第一辺よりも外側の周縁領域及び第二辺よりも外側の周縁領域の各々に設けることにより、装置が単純で容易に短時間で重ね合わせ体を位置合わせでき、且つ重ね合わせの精度を維持できる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の重ね合わせ体の製造方法は、装置が単純で容易に短時間で位置合わせができ、且つ重ね合わせ精度が維持できることから、半導体デバイス、ディスプレイデバイス等の電子デバイスを製造する工程において、例えば、電子デバイスを構成する一方の基材に対し他方の基材を貼り合わせる工程に適用することが期待できる。
【符号の説明】
【0033】
1:位置決め治具
2:位置決めピン
:第1の位置決め用貫通孔
:第2の位置決め用貫通孔
4:第1基材
5:矩形の中央領域
6:周縁領域
7:第一辺
8:第二辺
9:封止層
C:矩形の中央領域の中心点
図1
図2