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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151266
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】フランジ
(51)【国際特許分類】
   F16L 23/032 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
F16L23/032
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060785
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】303047034
【氏名又は名称】株式会社ジャパンエンジンコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪口 真帆
(72)【発明者】
【氏名】岡村 英生
【テーマコード(参考)】
3H016
【Fターム(参考)】
3H016AB05
3H016AC01
(57)【要約】
【課題】応力集中による破損を抑制することができるフランジを提供すること。
【解決手段】本発明の一態様であるフランジは、隅部および辺部を有する環状のフランジであって、前記隅部を形成する隅形成部を有する第1フランジ部材と、前記辺部を形成する辺形成部を有し、前記第1フランジ部材に接合される第2フランジ部材と、を備える。前記隅形成部は、所定の曲率半径を有し、前記隅部の内周面を形成する円弧面と、前記円弧面の端部から離間する方向に延在し、前記辺形成部に接合される延在部と、を備える。前記延在部と前記辺形成部との接合部は、前記曲率半径と前記辺形成部の幅とをもとに設定される離間距離以上、前記円弧面の端部から離間している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隅部および辺部を有する環状のフランジであって、
前記隅部を形成する隅形成部を有する第1フランジ部材と、
前記辺部を形成する辺形成部を有し、前記第1フランジ部材に接合される第2フランジ部材と、
を備え、
前記隅形成部は、
所定の曲率半径を有し、前記隅部の内周面を形成する円弧面と、
前記円弧面の端部から離間する方向に延在し、前記辺形成部に接合される延在部と、
を備え、
前記延在部と前記辺形成部との接合部は、前記曲率半径と前記辺形成部の幅とをもとに設定される離間距離以上、前記円弧面の端部から離間している、
ことを特徴とするフランジ。
【請求項2】
前記離間距離は、前記曲率半径の増加に伴い減少し、前記曲率半径の減少に伴い増加する、
ことを特徴とする請求項1に記載のフランジ。
【請求項3】
締結部材を挿通する挿通穴をさらに備え、
前記延在部と前記辺形成部との接合部は、前記挿通穴から外れるように位置する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のフランジ。
【請求項4】
前記第1フランジ部材および前記第2フランジ部材は、各々複数である、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載のフランジ。
【請求項5】
前記第1フランジ部材は、前記隅形成部と一体に形成された前記辺形成部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載のフランジ。
【請求項6】
当該フランジは、舶用ディーゼルエンジンの燃焼用気体を流通させる配管の周縁端部に設けられる、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載のフランジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フランジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶に搭載される舶用ディーゼルエンジンにおいては、燃焼用気体等の流体を流通させる各種管には、当該流体を扱う冷却器等の装置または他の管と接合するためのフランジが設けられている。一般に、フランジは、流体の流路を囲む環状に形成され、管の周縁端部に設けられる。当該フランジは、ボルト等の締結部材により、対象とする装置の開口端部または管の周縁端部に設けられた他のフランジと接合される。これにより、これらの装置と管、または管同士が接合される。
【0003】
上記のようなフランジの一例として、従来、複数の板状部材を環状に接合することによって形成されるものがある。例えば、図8Aに示すように、従来のフランジ201は、4つの板状部材202~205からなり、板状部材202、204の各端面と板状部材203、205の各端部側面とを接合することにより、矩形の環状に形成される。また、図8Bに示すように、従来のフランジ211は、4つの板状部材212~215からなり、板状部材212、214の各端面と板状部材213、215の各端面とを接合することにより、矩形の環状に形成される。これら従来のフランジ201、211の各板状部材同士の接合は、例えば、溶接等によって行われる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-323170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、管のフランジにおいては、管の内部を流れる流体の圧力がフランジの内周面側から加わり、これにより、当該フランジの隅部(特に内周面の角部)に応力集中が発生する。上述した従来のフランジ201、211に例示されるように、複数の板状部材同士を接合して形成されるフランジでは、当該フランジの応力集中部が当該板状部材同士の接合部(例えば図8A、8Bに示す接合部206、216)に位置している。このため、当該板状部材同士の接合部が応力集中の影響を受けて、フランジの破損を招来する恐れがある。このようなフランジの問題は、例えば、舶用ディーゼルエンジンの燃焼用気体等の高圧な流体を流通させる管のフランジにおいて顕著に生じる。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、応力集中による破損を抑制することができるフランジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るフランジは、隅部および辺部を有する環状のフランジであって、前記隅部を形成する隅形成部を有する第1フランジ部材と、前記辺部を形成する辺形成部を有し、前記第1フランジ部材に接合される第2フランジ部材と、を備え、前記隅形成部は、所定の曲率半径を有し、前記隅部の内周面を形成する円弧面と、前記円弧面の端部から離間する方向に延在し、前記辺形成部に接合される延在部と、を備え、前記延在部と前記辺形成部との接合部は、前記曲率半径と前記辺形成部の幅とをもとに設定される離間距離以上、前記円弧面の端部から離間している、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るフランジは、上記の発明において、前記離間距離は、前記曲率半径の増加に伴い減少し、前記曲率半径の減少に伴い増加する、ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るフランジは、上記の発明において、締結部材を挿通する挿通穴をさらに備え、前記延在部と前記辺形成部との接合部は、前記挿通穴から外れるように位置する、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るフランジは、上記の発明において、前記第1フランジ部材および前記第2フランジ部材は、各々複数である、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るフランジは、上記の発明において、前記第1フランジ部材は、前記隅形成部と一体に形成された前記辺形成部をさらに備える、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るフランジは、上記の発明において、当該フランジは、舶用ディーゼルエンジンの燃焼用気体を流通させる配管の周縁端部に設けられる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、応力集中によるフランジの破損を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施形態に係るフランジの一構成例を示す模式図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係るフランジを構成する複数の板状部材の一例を示す模式図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係るフランジを形成する複数の板状部材の接合位置を説明するための図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係るフランジを構成する複数のフランジ部材の切抜き方法を説明するための図である。
図5図5は、材料板からの一体型フランジの切抜き方法を説明するための図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係るフランジの一適用例を示す模式図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係るフランジの一変形例を示す模式図である。
図8A図8Aは、従来のフランジの第一例を示す模式図である。
図8B図8Bは、従来のフランジの第二例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、添付図面を参照して、本発明に係るフランジの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、各図面において、同一構成部分には同一符号が付されている。
【0016】
(フランジの構成)
まず、本発明の実施形態に係るフランジの構成について説明する。図1は、本発明の実施形態に係るフランジの一構成例を示す模式図である。図2は、本発明の実施形態に係るフランジを構成する複数の板状部材の一例を示す模式図である。図2には、図1に示すフランジを当該板状部材別に分割した状態が示されている。本発明の実施形態に係るフランジ1は、隅部および辺部を有する環状のフランジであり、例えば図1に示すように、中心軸Cの方向から見た平面視で矩形(本実施形態では正方形)をなす。なお、中心軸Cは、フランジ1が設けられる管(図示せず)の中心軸である。当該管によって形成される流路105は、図1に示すように、フランジ1の内側に囲まれる。このようなフランジ1は、複数の板状部材、例えば図1、2に示すように、2つの第1フランジ部材2、3と、2つの第2フランジ部材4、5とを備える。
【0017】
第1フランジ部材2、3の各々は、フランジ1の隅部を形成する隅形成部を有する板状部材の一例である。本実施形態において、第1フランジ部材2、3の各々は、例えば、フランジ1における一対の隅部と、当該一対の隅部間の辺部とを一体に形成する。このような第1フランジ部材2、3のうち、図1、2に示すように、第1フランジ部材2は一対の隅形成部21、22と辺形成部23とを有し、第1フランジ部材3は一対の隅形成部31、32と辺形成部33とを有する。
【0018】
一対の隅形成部21、22は、フランジ1における一対の隅部を形成する板状部材である。図1に示すように、隅形成部21は、例えば、矩形の環状をなすフランジ1が有する4つの隅部のうち1つの隅部(図1では左上の隅部)を形成するものである。詳細には、図1、2に示すように、隅形成部21は、隅形成部本体24と、延在部25と、円弧面26とを有する。
【0019】
隅形成部本体24は、隅形成部21のうち、フランジ1における1つの隅部と同じ構造を有する部分である。例えば、隅形成部本体24は、図1に示すように、フランジ1における左上の隅部と同様に、角(出隅)を含む外周面と円弧状の内周面(後述の円弧面26)とを有する。また、図1、2に示すように、隅形成部本体24の両端部24a、24bのうち、一方の端部24aは当該内周面の一方の円弧端部(円弧面26の円弧端部26a)に位置し、他方の端部24bは当該内周面の他方の円弧端部(円弧面26の円弧端部26b)に位置する。
【0020】
延在部25は、隅形成部21のうち、上述の隅形成部本体24から延在する部分である。詳細には、図1、2に示すように、延在部25は、隅形成部本体24の一方の端部24aから第2フランジ部材4の辺形成部41に向かって延在するように、隅形成部本体24と継ぎ目なく一体に形成される。ここで、隅形成部本体24の円弧状の内周面は、後述する円弧面26である。延在部25は、この円弧面26の端部(図1、2に示す円弧端部26a)から離間する方向に延在している。例えば、当該方向は、円弧端部26aにおける接線方向、すなわち、隅形成部本体24の端部24aに対して垂直な方向である。このような延在部25の端部(図2に示す延在端部25a)は、図1に示すように、第2フランジ部材4の辺形成部41に接合される。延在部25は、この辺形成部41とともに、フランジ1の辺部を形成する。
【0021】
円弧面26は、隅形成部21のうち、フランジ1の隅部における円弧状の内周面を形成するものである。詳細には、図1、2に示すように、円弧面26は、所定の曲率半径Rを有する円弧状の面であり、隅形成部本体24の内周面に該当する。円弧面26は、フランジ1の4つの隅部うち、この隅形成部本体24に対応する左上の隅部の内周面を形成する。また、図1、2に示すように、円弧面26の両端部(円弧端部26a、26b)のうち、一方の円弧端部26aは、上述した延在部25側の円弧端部であり、隅形成部本体24と延在部25との境界部(すなわち端部24a)に位置する。他方の円弧端部26bは、辺形成部23側の円弧端部であり、隅形成部本体24と辺形成部23との境界部(すなわち端部24b)に位置する。
【0022】
また、隅形成部22は、図1に示すように、フランジ1が有する4つの隅部のうち1つの隅部(図1では左下の隅部)を形成するものである。詳細には、図1、2に示すように、隅形成部22は、隅形成部本体27と、延在部28と、円弧面29とを有する。なお、本実施形態において、隅形成部22は、上述した隅形成部21と対をなすものである。このような隅形成部22は、図1、2に示すように、第1フランジ部材2における辺形成部23を挟んで隅形成部21と対称的に形成されている。
【0023】
すなわち、図1、2に示すように、隅形成部本体27は、辺形成部23を挟んで、上述した隅形成部本体24と対称的に形成される。このような隅形成部本体27は、例えば、フランジ1における左下の隅部と同様の外周面と内周面(後述の円弧面29)とを有する。また、隅形成部本体27の両端部27a、27bのうち、一方の端部27aは当該内周面の一方の円弧端部(円弧面29の円弧端部29a)に位置し、他方の端部27bは当該内周面の他方の円弧端部(円弧面29の円弧端部29b)に位置する。
【0024】
また、図1、2に示すように、延在部28は、辺形成部23を挟んで、上述した隅形成部本体24からの延在部25と対称的に形成される。すなわち、延在部28は、隅形成部本体27の一方の端部27aから第2フランジ部材5の辺形成部51に向かって延在するように、隅形成部本体27と継ぎ目なく一体に形成される。詳細には、図1、2に示すように、延在部28は、隅形成部本体27の円弧状の内周面である円弧面29の端部(円弧端部29a)から離間する方向に延在している。例えば、当該方向は、円弧端部29aにおける接線方向、すなわち、隅形成部本体27の端部27aに対して垂直な方向である。このような延在部28の端部(図2に示す延在端部28a)は、図1に示すように、第2フランジ部材5の辺形成部51に接合される。延在部28は、この辺形成部51とともに、フランジ1の辺部を形成する。
【0025】
また、図1、2に示すように、円弧面29は、辺形成部23を挟んで、上述した隅形成部21の円弧面26と対称的に形成される。すなわち、円弧面29は、隅形成部本体27の内周面に該当する、曲率半径Rの円弧面である。円弧面29は、フランジ1の4つの隅部うち、この隅形成部本体27に対応する左下の隅部の内周面を形成する。また、図1、2に示すように、円弧面29の両端部(円弧端部29a、29b)のうち、一方の円弧端部29aは、延在部28側の円弧端部であり、隅形成部本体27と延在部28との境界部(すなわち端部27a)に位置する。他方の円弧端部29bは、辺形成部23側の円弧端部であり、隅形成部本体27と辺形成部23との境界部(すなわち端部27b)に位置する。
【0026】
辺形成部23は、フランジ1が有する複数(図1では4つ)の辺部のうち1つの辺部を形成するものである。詳細には、図1、2に示すように、辺形成部23は、隅形成部21、22の間に介在するように、隅形成部21、22と継ぎ目なく一体に形成される。すなわち、辺形成部23の一端部は一方の隅形成部本体24の端部24bと一致し、辺形成部23の他端部は他方の隅形成部本体27の端部27bと一致する。このような辺形成部23は、フランジ1における4つの辺部のうち、上述した隅形成部21、22によって各々形成される一対の隅部(図1では左上の隅部および左下の隅部)の間に介在する辺部を形成する。
【0027】
また、図1、2に示すように、第1フランジ部材3は、フランジ1を形成する際の配置の向きが上述の第1フランジ部材2と異なる(例えば中心軸C周りに180°反転した向きである)こと以外、上述の第1フランジ部材2と同じ構造を有する。
【0028】
詳細には、図1、2に示すように、第1フランジ部材3は、一対の隅形成部31、32と辺形成部33とを有する。一対の隅形成部31、32は、上述の第1フランジ部材2における一対の隅形成部21、22が各々中心軸C周りに180°反転した構造のものである。すなわち、隅形成部31は、フランジ1における、隅形成部21とは対称的な位置の隅部(図1では右上の隅部)を形成する。隅形成部32は、フランジ1における、隅形成部22とは対称的な位置の隅部(図1では右下の隅部)を形成する。
【0029】
このような一対の隅形成部31、32のうち、隅形成部31は、図1、2に示すように、隅形成部本体34と、延在部35と、円弧面36とを有する。隅形成部本体34は、隅形成部31のうち、フランジ1における1つの隅部と同じ構造を有する部分である。例えば、隅形成部本体34は、図1に示すように、フランジ1における右上の隅部と同様の外周面と内周面(後述の円弧面36)とを有する。また、図1、2に示すように、隅形成部本体34の両端部34a、34bのうち、一方の端部34aは当該内周面の一方の円弧端部(円弧面36の円弧端部36a)に位置し、他方の端部34bは当該内周面の他方の円弧端部(円弧面36の円弧端部36b)に位置する。
【0030】
延在部35は、隅形成部31のうち、上述の隅形成部本体34から延在する部分である。詳細には、図1、2に示すように、延在部35は、隅形成部本体34の一方の端部34aから第2フランジ部材4の辺形成部41に向かって延在するように、隅形成部本体34と継ぎ目なく一体に形成される。すなわち、延在部35は、隅形成部本体34の円弧状の内周面である円弧面36の端部(図1、2に示す円弧端部36a)から離間する方向に延在している。例えば、当該方向は、円弧端部36aにおける接線方向、すなわち、隅形成部本体34の端部34aに対して垂直な方向である。このような延在部35の端部(図2に示す延在端部35a)は、図1に示すように、第2フランジ部材4の辺形成部41に接合される。延在部35は、この辺形成部41とともに、フランジ1の辺部を形成する。
【0031】
円弧面36は、隅形成部31のうち、フランジ1の隅部における円弧状の内周面を形成するものである。詳細には、図1、2に示すように、円弧面36は、上述した第1フランジ部材2の円弧面29と同様に曲率半径Rの円弧面であり、隅形成部本体34の内周面に該当する。円弧面36は、フランジ1の4つの隅部うち、この隅形成部本体34に対応する右上の隅部の内周面を形成する。また、図1、2に示すように、円弧面36の両端部(円弧端部36a、36b)のうち、一方の円弧端部36aは、上述した延在部35側の円弧端部であり、隅形成部本体34と延在部35との境界部(すなわち端部34a)に位置する。他方の円弧端部36bは、辺形成部33側の円弧端部であり、隅形成部本体34と辺形成部33との境界部(すなわち端部34b)に位置する。
【0032】
また、隅形成部32は、図1、2に示すように、隅形成部本体37と、延在部38と、円弧面39とを有する。なお、本実施形態において、隅形成部32は、上述した隅形成部31と対をなすものである。このような隅形成部32は、図1、2に示すように、第1フランジ部材3における辺形成部33を挟んで隅形成部31と対称的に形成されている。
【0033】
すなわち、図1、2に示すように、隅形成部本体37は、辺形成部33を挟んで、上述した隅形成部本体34と対称的に形成される。このような隅形成部本体37は、例えば、フランジ1における右下の隅部と同様の外周面と内周面(後述の円弧面39)とを有する。また、隅形成部本体37の両端部37a、37bのうち、一方の端部37aは当該内周面の一方の円弧端部(円弧面39の円弧端部39a)に位置し、他方の端部37bは当該内周面の他方の円弧端部(円弧面39の円弧端部39b)に位置する。
【0034】
また、図1、2に示すように、延在部38は、辺形成部33を挟んで、上述した隅形成部本体34からの延在部35と対称的に形成される。すなわち、延在部38は、隅形成部本体37の一方の端部37aから第2フランジ部材5の辺形成部51に向かって延在するように、隅形成部本体37と継ぎ目なく一体に形成される。詳細には、図1、2に示すように、延在部38は、隅形成部本体37の円弧状の内周面である円弧面39の端部(円弧端部39a)から離間する方向に延在している。例えば、当該方向は、円弧端部39aにおける接線方向、すなわち、隅形成部本体37の端部37aに対して垂直な方向である。このような延在部38の端部(図2に示す延在端部38a)は、図1に示すように、第2フランジ部材5の辺形成部51に接合される。延在部38は、この辺形成部51とともに、フランジ1の辺部を形成する。
【0035】
また、図1、2に示すように、円弧面39は、辺形成部33を挟んで、上述した隅形成部31の円弧面36と対称的に形成される。すなわち、円弧面39は、隅形成部本体37の内周面に該当する、曲率半径Rの円弧面である。円弧面39は、フランジ1の4つの隅部うち、この隅形成部本体37に対応する右下の隅部の内周面を形成する。また、図1、2に示すように、円弧面39の両端部(円弧端部39a、39b)のうち、一方の円弧端部39aは、延在部38側の円弧端部であり、隅形成部本体37と延在部38との境界部(すなわち端部37a)に位置する。他方の円弧端部39bは、辺形成部33側の円弧端部であり、隅形成部本体37と辺形成部33との境界部(すなわち端部37b)に位置する。
【0036】
辺形成部33は、例えばフランジ1が有する4つの辺部のうち、上述した第1フランジ部材2の辺形成部23とは対称的な位置の辺部を形成するものである。詳細には、図1、2に示すように、辺形成部33は、隅形成部31、32の間に介在するように、隅形成部31、32と継ぎ目なく一体に形成される。すなわち、辺形成部33の一端部は一方の隅形成部本体34の端部34bと一致し、辺形成部33の他端部は他方の隅形成部本体37の端部37bと一致する。このような辺形成部33は、フランジ1における4つの辺部のうち、上述した隅形成部31、32によって各々形成される一対の隅部(図1では右上の隅部および右下の隅部)の間に介在する辺部を形成する。
【0037】
また、第2フランジ部材4、5は、フランジ1の辺部を形成する辺形成部を有する板状部材の一例である。本実施形態において、第2フランジ部材4、5は、例えば、互いに同じ直線状の構造を有する。詳細には、図1、2に示すように、第2フランジ部材4、5は、各々、辺形成部41、51を有する。
【0038】
第2フランジ部材4の辺形成部41は、フランジ1が有する複数の辺部のうち1つの辺部を形成するものである。詳細には、図1、2に示すように、辺形成部41は、その長手方向の両側から、第1フランジ部材2の隅形成部21と第1フランジ部材3の隅形成部31とに接合される。この際、辺形成部41の長手方向における両端部(図2に示す辺端部41a、41b)のうち、一方の辺端部41aは隅形成部21の延在部25に接合され、他方の辺端部41bは隅形成部31の延在部35に接合される。すなわち、第1フランジ部材2と第2フランジ部材4との接合部11は、延在端部25aと辺端部41aとの接合部である。第1フランジ部材3と第2フランジ部材4との接合部12は、延在端部35aと辺端部41bとの接合部である。このような辺形成部41は、フランジ1における4つの辺部のうち、上述した隅形成部21、31によって各々形成される一対の隅部の間に介在する辺部(図1では上側の辺部)を形成する。
【0039】
第2フランジ部材5の辺形成部51は、例えばフランジ1が有する4つの辺部のうち、上述した第2フランジ部材4の辺形成部41とは対称的な位置の辺部を形成するものである。詳細には、図1、2に示すように、辺形成部51は、その長手方向の両側から、第1フランジ部材2の隅形成部22と第1フランジ部材3の隅形成部32とに接合される。この際、辺形成部51の長手方向における両端部(図2に示す辺端部51a、51b)のうち、一方の辺端部51aは隅形成部22の延在部28に接合され、他方の辺端部51bは隅形成部32の延在部38に接合される。すなわち、第1フランジ部材2と第2フランジ部材5との接合部13は、延在端部28aと辺端部51aとの接合部である。第1フランジ部材3と第2フランジ部材5との接合部14は、延在端部38aと辺端部51bとの接合部である。このような辺形成部51は、フランジ1における4つの辺部のうち、上述した隅形成部22、32によって各々形成される一対の隅部の間に介在する辺部(図1では下側の辺部)を形成する。
【0040】
また、フランジ1は、図1、2に示すように、結合穴6を備えている。結合穴6は、フランジ1が設けられた管を接合するためのボルト等の締結部材を挿通する挿通穴(貫通穴)の一例である。例えば図1、2に示すように、結合穴6は、フランジ1を形成する第1フランジ部材2、3および第2フランジ部材4、5に複数設けられている。これら複数の結合穴6は、図1に示すように、上述した第1フランジ部材2、3と第2フランジ部材4、5との接合部11、12、13、14のいずれとも重ならない位置に設けられる。なお、結合穴6の数は、図1、2に示すものに限定されず、管の接合(フランジ1の締結)に必要な数であればよい。また、結合穴6の内周面には、ねじ山が設けられていても設けられていなくてもよい。
【0041】
なお、上述した第1フランジ部材2、3および第2フランジ部材4、5の素材としては、例えば、鉄等の金属または合金が挙げられる。また、第1フランジ部材2、3と第2フランジ部材4、5との接合方法としては、例えば、溶接等が挙げられる。
【0042】
(接合位置)
つぎに、フランジ1を形成する第1フランジ部材2、3と第2フランジ部材4、5との接合位置について説明する。図3は、本発明の実施形態に係るフランジを形成する複数の板状部材の接合位置を説明するための図である。上述した第1フランジ部材2、3と第2フランジ部材4、5との接合部11、12、13、14(図1参照)は、フランジ1の各隅部の内周面端部(円弧端部)から所定の距離以上離間している。
【0043】
例えば、図3に示すように、フランジ1の一隅部において、第1フランジ部材3の延在部35と第2フランジ部材4の辺形成部41との接合部12は、離間距離Y以上、隅形成部31の円弧面36(隅形成部本体34の内周面)から離間している。離間距離Yは、隅形成部31の円弧面36から、延在部35と辺形成部41との接合部12までの離間距離の下限値であり、図3に示すように、延在部35側の円弧端部36aの位置P2から接合部12の位置P3までの距離として定義される。このような離間距離Yは、円弧端部36aと接合部12との離間方向における位置P1、P2間の距離Xと、フランジ1の辺部の板幅Wとを用い、下記の式(1)によって表される。
Y=aX+W ・・・(1)
【0044】
式(1)において、係数aは、例えば、-1以上-0.5以下の負の定数である。特に、係数aとしては、-0.8が好ましい。板幅Wは、例えば、図3に示すように辺形成部33の板幅である。また、図3に示すように、位置P1は辺形成部33側の円弧端部36bの位置であり、位置P2は延在部35側の円弧端部36aの位置である。このような位置P1、P2間の距離Xは、円弧面36の曲率半径Rに等しい。したがって、離間距離Yは、円弧面36の曲率半径Rと辺形成部33の板幅Wとをもとに設定される。
【0045】
ここで、フランジ1の隅部には、フランジ1が設けられた管の流路105(図1参照)を流通する流体(例えば圧縮ガス等の高圧な流体)の圧力の影響により、応力集中が発生する。この応力集中を低減するために、フランジ1の隅部の内周面は、曲率半径Rの円弧面(例えば図1に示す円弧面26、29、36,39)にしている。これにより、当該隅部での応力集中を、内周側に角を有する従来のフランジの隅部(図8A、8B参照)に比べて低減することができる。しかし、複数の第1フランジ部材2、3および第2フランジ部材4、5を接合して形成されるフランジ1においては、これらの部材同士の接合部(例えば図1に示す接合部11、12、13、14)を当該フランジ1の隅部から離間して、当該接合部が応力集中によって破損しないようにする必要がある。
【0046】
例えば、図3に示すように、フランジ1の一隅部における延在部35と辺形成部41との接合部12の位置P3は、上記の式(1)に基づく離間距離Y以上、当該隅部の内周面(円弧面36)の円弧端部36aから離間した位置に設定される。また、当該隅部の応力集中は、円弧面36の曲率半径Rの増加に伴い低減される。この場合、接合部12の位置P3は、応力集中が低減した分、当該隅部側へ近づけることができる。すなわち、離間距離Yは、曲率半径Rの増加に伴い減少する。一方、円弧面36の曲率半径Rが減少するに伴い、当該隅部の応力集中は増大する。この場合、接合部12の位置P3は、この応力集中から逃れるために、当該隅部から、より離間する必要がある。すなわち、離間距離Yは、曲率半径Rの減少に伴い増加する。
【0047】
また、フランジ1が設けられる管の流路105に着目すると、流路105を囲むフランジ1の内周面は、曲率半径Rの増加に伴い、中心軸Cの方向から見た平面視で円形に近づく。この場合、フランジ1は、流路105に通じる開口部を狭める傾向にある。これとは逆に、流路105を囲むフランジ1の内周面は、曲率半径Rの減少に伴い、中心軸Cの方向から見た平面視で矩形に近づく。この場合、フランジ1は、流路105に通じる開口部を広げる傾向にある。すなわち、曲率半径Rの増加は、フランジ1の隅部における応力集中の低減に有効であるが、管の流路105を狭めることになる。曲率半径Rの減少は、管の流路105の確保に有効であるが、フランジ1の隅部の応力集中を増大させることになる。したがって、管の流路105を十分に確保しつつフランジ1の隅部における応力集中を十分に低減するためには、曲率半径Rは、所定の条件を満足するように設定されることが好ましい。例えば、上記の式(1)において、曲率半径R(=距離X)は、フランジ1の板幅Wの1.25倍未満という条件を満足し、且つ、当該板幅Wは、60mm以上120mm以下という条件を満足することが好ましい。
【0048】
また、図3に示すように、延在部35と辺形成部41との接合部12は、フランジ1に結合穴6を形成する際のフランジ1の破損を防止するために、フランジ1に形成される結合穴6から外れるように位置する。例えば、円弧端部36aの位置P2と結合穴6が形成される位置P4との間の距離が、上記の式(1)によって算出される離間距離Yに等しい場合、接合部12の位置は、この位置P4よりも円弧端部36aから離間した位置P5に設定される。この場合、円弧端部36aの位置P2から接合部12の位置P5までの離間距離は、上記の式(1)による離間距離Yよりも大きい値となる。これにより、フランジ1の隅部(応力集中部)から接合部12をより離間させるとともに、接合部12と結合穴6とを互いに重ならないように位置させることができる。
【0049】
なお、図3では、フランジ1の第1フランジ部材3と第2フランジ部材4との接合部12の位置について説明したが、フランジ1における残りの接合部11、13、14の各位置についても、上記接合部12の位置と同様に設定される。
【0050】
(フランジ部材の切抜き方法)
つぎに、上述したフランジ1を構成する第1フランジ部材2、3および第2フランジ部材4、5の切抜き方法について説明する。図4は、本発明の実施形態に係るフランジを構成する複数のフランジ部材の切抜き方法を説明するための図である。第1フランジ部材2、3および第2フランジ部材4、5は、材料となる金属板等の板材から切り抜かれる。
【0051】
詳細には、図4に示すように、材料板8は、金属または当該金属を含む合金等からなり、例えば矩形状に形成された板材である。この材料板8のうち、枠状の外側部8aからは、2つの第1フランジ部材2、3が切り抜かれる。また、この外側部8aに囲まれる内側部8bからは、2つの第2フランジ部材4、5が切り抜かれる。なお、これら複数の部材を材料板8から切り抜く手法としては、例えば、レーザ加工等が挙げられる。また、上記内側部8bのうち、第2フランジ部材4、5の切抜き後に残った部分は、例えば、廃材として処理される。
【0052】
上記のように切り抜かれた第1フランジ部材2、3および第2フランジ部材4、5は、互いに接合される。詳細には、図4に示すように、第1フランジ部材2の一方の延在端部25aには第2フランジ部材4の辺端部41aが接合され、第1フランジ部材2の他方の延在端部28aには第2フランジ部材5の辺端部51aが接合される。また、第1フランジ部材3の一方の延在端部35aには第2フランジ部材4の辺端部41bが接合され、第1フランジ部材3の他方の延在端部38aには第2フランジ部材5の辺端部51bが接合される。これら部材同士の接合手法としては、例えば、溶接等が挙げられる。
【0053】
なお、上記延在端部25a、35aと辺端部41a、41bとの各接合部は、図1に示した接合部11、12に各々該当する。上記延在端部28a、35aと辺端部51a、51bとの各接合部は、図1に示した接合部13、14に各々該当する。
【0054】
上述した第1フランジ部材2、3および第2フランジ部材4、5の接合により、矩形の環状をなすフランジ1が形成される。その後、フランジ1のうち接合部11、12、13、14を除く部位には、図1に示したように、複数の結合穴6が形成される。このようにして、フランジ1が製造される。
【0055】
一方、図5は、材料板からの一体型フランジの切抜き方法を説明するための図である。図5に示すように、一体型フランジ10は、複数の部材を接合して形成されるものではなく、一体の環状部材からなるフランジである。なお、一体型フランジ10は、複数の部材同士の接合部(継ぎ目)が無いこと以外、上述したフランジ1と同様の構造を有する。
【0056】
詳細には、図5に示すように、材料板9から、枠状の外側部9aが一体型フランジ10として切り抜かれる。このようにして、一体型フランジ10が得られる。図5には示されていないが、一体型フランジ10には、図1に示したフランジ1と同様に複数の結合穴6が形成される。
【0057】
ここで、この一体型フランジ10の切抜き(製造)では、図5に示すように、材料板9のうち、外側部9aに囲まれる内側部9bが、一体型フランジ10の形成に利用されず、全て廃材として処理される。このため、材料板9に占める廃材(内側部9b)の割合が、一体型フランジ10の製造に有効活用される外側部9aの割合に比べて非常に多く、材料板9から一体型フランジ10を製造する際の歩留まり(材料効率)が悪い。延いては、製造コストが増大する。
【0058】
これに対し、本発明の実施形態に係るフランジ1では、図4に示したように、複数の第1フランジ部材2、3および第2フランジ部材4、5が、材料板8のうち、これらの部材の各々の形状に合った部分から各々切り抜かれている。特に、材料板8の内側部8bから第2フランジ部材4、5が切り抜かれることにより、当該内側部8bが、フランジ1の構成部材として有効活用されている。このため、材料板8に占める廃材の割合を、一体型フランジ10の製造の場合に比べて低く抑えることができる。これに加え、フランジ1の製造に必要な材料板8のサイズを、一体型フランジ10の材料板9に比べて小型化することができる。これにより、フランジ1を製造する際の歩留まり(材料効率)が向上し、製造コストを低減することができる。
【0059】
(適用例)
つぎに、本発明の実施形態に係るフランジ1の適用例について説明する。図6は、本発明の実施形態に係るフランジの一適用例を示す模式図である。フランジ1は、例えば図6に示すように、舶用ディーゼルエンジン100の配管を接合するためのフランジとして適用される。
【0060】
詳細には、図6に示すように、フランジ1は、舶用ディーゼルエンジン100の空気導管103に適用される。舶用ディーゼルエンジン100は、例えば、外部から取り込まれた空気等の燃焼用気体を圧縮する過給機101と、過給機101によって圧縮された燃焼用気体を冷却する空気冷却器102とを備えている。空気導管103は、舶用ディーゼルエンジン100の燃焼用気体を流通させる配管の一例であり、図6に示すように、過給機101と空気冷却器102とを連通する。フランジ1は、空気導管103の周縁端部に取り付けられ、空気導管103の中途部と空気冷却器102の筐体上端部との接合に用いられる。これら空気導管103と空気冷却器102との接合は、フランジ1における複数の結合穴6に挿通したボルト等の締結部材の締結によって行われる。
【0061】
以上、説明したように、本発明の実施形態に係るフランジは、隅部および辺部を有する環状のフランジであって、前記隅部を形成する隅形成部を有する第1フランジ部材と、前記辺部を形成する辺形成部を有し、前記第1フランジ部材に接合される第2フランジ部材と、を備えている。また、前記隅形成部は、所定の曲率半径を有し、前記隅部の内周面を形成する円弧面と、前記円弧面の端部から離間する方向に延在し、前記辺形成部に接合される延在部と、を備えるようにし、前記延在部と前記辺形成部との接合部は、前記曲率半径と前記辺形成部の幅とをもとに設定される離間距離以上、前記円弧面の端部から離間するようにしている。
【0062】
このため、前記延在部と前記辺形成部との接合部を、当該フランジの隅部における応力集中部から十分に離間させることができる。これにより、前記接合部が当該応力集中の影響を受けて破損する事態を回避することができ、この結果、フランジの応力集中による破損を抑制することができる。
【0063】
また、本発明の実施形態に係るフランジでは、前記円弧面の端部からの前記接合部の離間距離を、前記曲率半径の増加に伴い減少し、前記曲率半径の減少に伴い増加するように設定している。このため、当該フランジの隅部における応力集中の減少に伴い前記離間距離を減少させ、前記応力集中の増大に伴い前記離間距離を増加させることができる。これにより、前記接合部の位置を、当該フランジの隅部から無駄に離間させず、前記応力集中の程度に応じて、当該フランジの隅部から適度に離間した位置に設定することができる。この結果、前記延在部および前記辺形成部の各長さを、目的とするフランジの形状に合わせて適度に設定できることから、前記第1フランジ部材および前記第2フランジ部材を材料板から効率よく切り抜くことができ、当該フランジの製造時の材料効率を向上させるとともに製造コストを低減することができる。
【0064】
また、本発明の実施形態に係るフランジでは、前記延在部と前記辺形成部との接合部を、当該フランジに形成される結合穴(締結部材を挿通する挿通穴)から外れる位置に形成している。このため、当該フランジにおいて前記接合部と前記結合穴とが重なる事態を回避することができ、これにより、前記結合穴の形成時における前記接合部の破損を防止することができる。
【0065】
(変形例)
つぎに、本発明の実施形態の変形例に係るフランジについて説明する。図7は、本発明の実施形態に係るフランジの一変形例を示す模式図である。この変形例に係るフランジ1Aは、上述した実施形態に係るフランジ1とは異なる数の板状部材、例えば図7に示すように、4つの第1フランジ部材2A、2B、3A、3Bと、4つの第2フランジ部材4、4A、5、5Aとを備える。その他の構成は上述した実施形態と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0066】
図7に示すように、第1フランジ部材2A、2B、3A、3Bは、各々、フランジ1Aの隅部を形成する隅形成部を有する部材である。詳細には、第1フランジ部材2Aは、隅形成部本体24と、延在部25、25Aとを有する。延在部25Aは、フランジ1Aにおける配置の向きが延在部25と異なること以外、当該延在部25と同様の構造を有する。第1フランジ部材2Bは、隅形成部本体27と、延在部28、28Aとを有する。延在部28Aは、フランジ1Aにおける配置の向きが延在部28と異なること以外、当該延在部28と同様の構造を有する。第1フランジ部材3Aは、隅形成部本体34と、延在部35、35Aとを有する。延在部35Aは、フランジ1Aにおける配置の向きが延在部35と異なること以外、当該延在部35と同様の構造を有する。第1フランジ部材3Bは、隅形成部本体37と、延在部38、38Aとを有する。延在部38Aは、フランジ1Aにおける配置の向きが延在部38と異なること以外、当該延在部38と同様の構造を有する。
【0067】
第2フランジ部材4A、5Aは、フランジ1Aの辺部を形成する辺形成部を有する部材である。具体的には、第2フランジ部材4Aの辺形成部は、第1フランジ部材2A,2B間の辺部を形成する。第2フランジ部材5Aの辺形成部は、第1フランジ部材3A,3B間の辺部を形成する。第2フランジ部材4A、5Aは、フランジ1Aにおける配置の向きが第2フランジ部材4、5と異なること以外、当該第2フランジ部材4、5と同様の構造を有する。
【0068】
また、図7に示すように、第1フランジ部材2Aの延在部25の端部は第2フランジ部材4の辺端部に接合され、第1フランジ部材2Aの延在部25Aの端部は第2フランジ部材4Aの辺端部に接合される。第1フランジ部材2Bの延在部28の端部は第2フランジ部材5の辺端部に接合され、第1フランジ部材2Bの延在部28Aの端部は第2フランジ部材4Aの辺端部に接合される。第1フランジ部材3Aの延在部35の端部は第2フランジ部材4の辺端部に接合され、第1フランジ部材3Aの延在部35Aの端部は第2フランジ部材5Aの辺端部に接合される。第1フランジ部材3Bの延在部38の端部は第2フランジ部材5の辺端部に接合され、第1フランジ部材3Bの延在部38Aの端部は第2フランジ部材5Aの辺端部に接合される。これらの部材同士の各接合部の位置は、上述した実施形態の接合部11、12、13、14の位置と同様に設定される。
【0069】
上述した変形例に係るフランジ1Aにおいても、構成部材の数が異なること以外、上述した実施形態と同様に構成しているので、上述した実施形態と同様の作用効果を享受する。また、フランジ1Aは、上述した実施形態に係るフランジ1よりも多くの部材によって構成しているので、フランジ1Aの複数の構成部材を材料板から一層効率よく切り抜くことができ、これにより、フランジ1Aの製造時の材料効率をより向上することができる。
【0070】
なお、上述した実施形態および変形例では、フランジを構成する第1フランジ部材および第2フランジ部材の各数を2つまたは4つにしていたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、第1フランジ部材および第2フランジ部材は、各々、1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0071】
また、上述した実施形態および変形例では、フランジが設けられる管の流路の中心軸方向から見た平面視で矩形(具体的には正方形)のフランジを例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、本発明に係るフランジの上記平面視での形状は、長方形であってもよいし、三角形であってもよいし、四角形以上の多角形であってもよい。
【0072】
また、上述した実施形態および変形例では、互いに対称的な構造を有する第1フランジ部材および第2フランジ部材を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、上述した第1フランジ部材および第2フランジ部材は、各部材同士で対称的な構造を有していなくてもよい。
【0073】
また、上述した実施形態および変形例では、舶用ディーゼルエンジンの燃焼用気体を流通する配管に適用されるフランジを例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、本発明に係るフランジが適用される配管は、舶用ディーゼルエンジン以外の内燃機関の配管であってもよいし、内燃機関以外の配管であってもよい。また、当該配管は、燃焼用気体以外の流体、例えば、燃料等の液体を流通させる配管であってもよい。
【0074】
また、上述した実施形態および変形例では、フランジにおける各辺部の幅(例えば図3に示す辺形成部33、41の各板幅W)を互いに同じ値としていたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、フランジにおける各辺部の幅は、互いに異なる値であってもよい。或いは、当該フランジには、互いに異なる値の幅と互いに同じ値の幅とが混在していてもよい。
【0075】
また、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではなく、上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。その他、上述した実施形態および変形例に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
1、1A フランジ
2、2A、2B、3、3A、3B 第1フランジ部材
4、4A、5、5A 第2フランジ部材
6 結合穴
8、9 材料板
8a、9a 外側部
8b、9b 内側部
10 一体型フランジ
11、12、13、14 接合部
21、22、31、32 隅形成部
23、33 辺形成部
24、27、34、37 隅形成部本体
24a、24b、27a、27b、34a、34b、37a、37b 端部
25、25A、28、28A、35、35A、38、38A 延在部
25a、28a、35a、38a 延在端部
26、29、36、39 円弧面
26a、26b、29a、29b、36a、36b、39a、39b 円弧端部
41、51 辺形成部
41a、41b、51a、51b 辺端部
100 舶用ディーゼルエンジン
101 過給機
102 空気冷却器
103 空気導管
105 流路
201、211 従来のフランジ
202、203、204、205、212、213、214、215 板状部材
206、216 接合部
C 中心軸
P1、P2、P3、P4、P5 位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B