IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 五洋建設株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-捨石マウンドの施工方法 図1
  • 特開-捨石マウンドの施工方法 図2
  • 特開-捨石マウンドの施工方法 図3
  • 特開-捨石マウンドの施工方法 図4
  • 特開-捨石マウンドの施工方法 図5
  • 特開-捨石マウンドの施工方法 図6
  • 特開-捨石マウンドの施工方法 図7
  • 特開-捨石マウンドの施工方法 図8
  • 特開-捨石マウンドの施工方法 図9
  • 特開-捨石マウンドの施工方法 図10
  • 特開-捨石マウンドの施工方法 図11
  • 特開-捨石マウンドの施工方法 図12
  • 特開-捨石マウンドの施工方法 図13
  • 特開-捨石マウンドの施工方法 図14
  • 特開-捨石マウンドの施工方法 図15
  • 特開-捨石マウンドの施工方法 図16
  • 特開-捨石マウンドの施工方法 図17
  • 特開-捨石マウンドの施工方法 図18
  • 特開-捨石マウンドの施工方法 図19
  • 特開-捨石マウンドの施工方法 図20
  • 特開-捨石マウンドの施工方法 図21
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151277
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】捨石マウンドの施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 15/10 20060101AFI20231005BHJP
   G01C 13/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
E02D15/10
G01C13/00 L
G01C13/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060810
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山野井 章
(72)【発明者】
【氏名】馬場 哲平
(72)【発明者】
【氏名】三木 孝行
【テーマコード(参考)】
2D045
【Fターム(参考)】
2D045AA04
2D045BA02
2D045CA32
2D045CA36
(57)【要約】
【課題】捨石マウンドの均し施工において重錘を落下させる適切な高さを算出する。
【解決手段】計測値取得手段111は、打突前の捨石マウンド3の天端面30の高さの計測値と、打突後の捨石マウンド3の高さの変位量の計測値とを取得する。教師データ生成手段112は、実行した打突の条件と取得した計測値とから、説明変数、及び目的変数を特定、又は算出して第1教師データ121を生成する。学習モデル構築手段113は、生成された第1教師データ121を用いて、その説明変数から目的変数が導かれるためのパラメータ群等を算出し、これらを用いて第1学習モデル122を構築する。落下高さ推定手段114は、構築された第1学習モデル122に基づいて、次に指示する打突の際に重錘212を吊り上げて落下させるべき高さを推定する。表示制御手段115は、表示部15に対し、落下高さの推定値を表示する指示を行う。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
捨石マウンドの天端面を区分して得られる複数の区画の各々に関し、重錘による打突前の前記捨石マウンドの天端面の高さを計測するステップと、
前記複数の区画の各々に、前記重錘を複数回、設定した高さから落下させて打突し、打突による前記捨石マウンドの高さの変位量を計測するステップと、
前記重錘を落下させた高さと落下させた回数との積の平方根に対する前記変位量の比率を、前記複数の区画、及び前記天端面の全領域のそれぞれについて算出するステップと、
前記複数の区画、及び前記全領域における、前記重錘を落下させた高さ、前記回数、前回の打突による前記捨石マウンドの高さの変位量を示す前回変位量、前回までの打突による前記捨石マウンドの高さの変位の累積量を示す前回迄累積変位量、及び
前記比率を説明変数とし、前記変位量を目的変数とする教師データを用いて第1学習モデルを構築するステップと、
前記第1学習モデルを用いて、前記捨石マウンドに対し前記重錘を落下させる高さを推定するステップと、
前記推定するステップにおいて推定した高さから前記重錘を落下させて、前記捨石マウンドの天端面を前記重錘で打突するステップと、
を備える捨石マウンドの施工方法。
【請求項2】
前記比率を算出するステップにおいて、前記全領域の前記比率は、前記複数の区画の全ての前記比率の相加平均値、最頻値、中央値、相乗平均値又は最大値のいずれかである
請求項1に記載の捨石マウンドの施工方法。
【請求項3】
前記比率を算出するステップは、前記複数の区画、及び前記全領域のそれぞれに加えて、前記複数の区画のうち重錘を移動させて落下させる二以上の区画からなるグループごとに前記比率を算出するステップであり、
前記構築するステップは、前記区画、前記グループ、及び前記全領域の、前記重錘を落下させた高さ、前記回数、前記前回変位量、前記前回迄累積変位量、及び前記比率を説明変数とし、前記変位量を目的変数とする教師データを用いて前記第1学習モデルを構築するステップである
請求項1又は2に記載の捨石マウンドの施工方法。
【請求項4】
前記比率を算出するステップにおいて、前記グループの前記比率は、該グループに属する全ての区画の前記比率の相加平均値、最頻値、中央値、相乗平均値又は最大値のいずれかである
請求項3に記載の捨石マウンドの施工方法。
【請求項5】
前記複数の区画、及び前記全領域における、前記重錘を落下させた高さ、前記回数、前記前回変位量、前記前回迄累積変位量、及び前記比率を説明変数とし、該重錘を落下させた区画と異なる区画の変位量を目的変数とする教師データを用いて第2学習モデルを構築するステップと、
前記第2学習モデルを用いて、前記複数の区画のうちの或る区画に前記重錘を落下させることによって生じる他の区画の変位量を算出するステップと、
算出された前記他の区画の変位量を通知するステップと、
を有する請求項1から4のいずれか一項に記載の捨石マウンドの施工方法。
【請求項6】
前記第1学習モデルを用いて、
前記複数の区画のいずれかに、前記重錘を落下させることによる前記変位量が閾値未満になる状態が生じるか否かを予測するステップと、
前記変位量が前記閾値未満になる状態が予測されたことを通知するステップと、
前記変位量が前記閾値未満になる状態と予測された捨石マウンドの天端面と所定の高さとの比較を行うステップと
を有する請求項1から5のいずれか一項に記載の捨石マウンドの施工方法。
【請求項7】
前記第2学習モデルを用いて、
前記複数の区画のいずれかに、前記重錘を落下させることによる前記他の区画の前記変位量が閾値未満になる状態が生じるか否かを予測するステップと、
前記他の区画の前記変位量が前記閾値未満になる状態が予測されたことを通知するステップと、
前記他の区画の前記変位量が前記閾値未満になる状態と予測された捨石マウンドの天端面と所定の高さとの比較を行うステップと、
を有する請求項5に記載の捨石マウンドの施工方法。
【請求項8】
前記打突による前記捨石マウンドの高さの変位量を計測するステップは、計測器により計測した前記重錘の上面の少なくとも3点の深度を用いる
請求項1から7のいずれか一項に記載の捨石マウンドの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捨石マウンドの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
護岸用ケーソン(コンクリートブロック)を水平に据え付けるためには、据え付け前に土台となる捨石マウンドを指定された高さ(設計高さ)に略均等に均す必要がある。均し方法としてはローラ転圧方式や重錘式、油圧ハンマー式及びバイブロハンマー式などがあるが、現在では重錘式、油圧ハンマー式、バイブロハンマー式による締固めが主体となっている。
【0003】
重錘式による締固めは、重錘を所定の高さから自由落下させその衝撃エネルギーにより捨石マウンドの捨石を締め固める方法である。
【0004】
特許文献1には、捨石マウンドの天端面を設計高さに近づけるため、重錘の捨石マウンド上への落下後の高さ方向位置を計測することにより、捨石マウンドの天端面の高さを取得することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-152839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、捨石マウンドの天端面の高さをより大きく変位させる(沈下させる)ためには、重錘をより高い位置から落下させればよい。しかしながら、必要以上に高い位置から落下させると天端面の高さを設計高さより低い位置まで変位させることとなる。一度、設計高さより低い位置まで変位すると天端面の高さを容易に元に戻すことはできず、大幅に工事の手戻りとなる。また、重錘を比較的低い位置から落下させると捨石マウンドが変位せず、天端面の高さを設計高さに調整するためには、多くの落下回数が必要になり、施工効率が低下する。効率よく施工するには捨石マウンドを強固に締め固める前提でいかに少ない落下回数で設計高さである均し面に締め固めるかが求められるが、捨石マウンドの天端面の現状での高さを測定し設計高さとの差が認識できても、現状の高さを設計高さに近づけるための変位量を得るために、重錘をどの程度の高さから落下させればよいかは、作業者等の経験則に頼らざるを得ない。さらに、捨石マウンドの天端面の或る区画にして打突した場合、その周囲の区画が打突済みであるか否かによって、打突による高さの変位量が異なることもある。
【0007】
上述の背景に鑑み、本発明は、作業者の経験則に頼らずに捨石マウンドの均し施工において重錘を落下させる適切な高さを算出する手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る施工方法は、捨石マウンドの天端面を区分して得られる複数の区画の各々に関し、重錘による打突前の前記捨石マウンドの天端面の高さを計測するステップと、前記複数の区画の各々に、前記重錘を複数回、設定した高さから落下させて打突し、打突による前記捨石マウンドの高さの変位量を計測するステップと、前記重錘を落下させた高さと落下させた回数との積の平方根に対する前記変位量の比率を、前記複数の区画、及び前記天端面の全領域のそれぞれについて算出するステップと、前記複数の区画、及び前記全領域における、前記重錘を落下させた高さ、前記回数、前回の打突による前記捨石マウンドの高さの変位量を示す前回変位量、前回までの打突による前記捨石マウンドの高さの変位の累積量を示す前回迄累積変位量、及び前記比率を説明変数とし、前記変位量を目的変数とする教師データを用いて第1学習モデルを構築するステップと、前記第1学習モデルを用いて、前記捨石マウンドに対し前記重錘を落下させる高さを推定するステップと、前記推定するステップにおいて推定した高さから前記重錘を落下させて、前記捨石マウンドの天端面を前記重錘で打突するステップと、を備える捨石マウンドの施工方法である。
【0009】
本発明の請求項2に係る施工方法は、前記比率を算出するステップにおいて、前記全領域の前記比率は、前記複数の区画の全ての前記比率の相加平均値、最頻値、中央値、相乗平均値又は最大値のいずれかである請求項1に記載の捨石マウンドの施工方法である。
【0010】
本発明の請求項3に係る施工方法は、前記比率を算出するステップは、前記複数の区画、及び前記全領域のそれぞれに加えて、前記複数の区画のうち重錘を移動させて落下させる二以上の区画からなるグループごとに前記比率を算出するステップであり、前記構築するステップは、前記区画、前記グループ、及び前記全領域の、前記重錘を落下させた高さ、前記回数、前記前回変位量、前記前回迄累積変位量、及び前記比率を説明変数とし、前記変位量を目的変数とする教師データを用いて前記第1学習モデルを構築するステップである請求項1又は2に記載の捨石マウンドの施工方法である。
【0011】
本発明の請求項4に係る施工方法は、前記比率を算出するステップにおいて、前記グループの前記比率は、該グループに属する全ての区画の前記比率の相加平均値、最頻値、中央値、相乗平均値又は最大値のいずれかである請求項3に記載の捨石マウンドの施工方法である。
【0012】
本発明の請求項5に係る施工方法は、前記複数の区画、及び前記全領域における、前記重錘を落下させた高さ、前記回数、前記前回変位量、前記前回迄累積変位量、及び前記比率を説明変数とし、該重錘を落下させた区画と異なる区画の変位量を目的変数とする教師データを用いて第2学習モデルを構築するステップと、前記第2学習モデルを用いて、前記複数の区画のうちの或る区画に前記重錘を落下させることによって生じる他の区画の変位量を算出するステップと、算出された前記他の区画の変位量を通知するステップと、を有する請求項1から4のいずれか一項に記載の捨石マウンドの施工方法である。
【0013】
本発明の請求項6に係る施工方法は、前記第1学習モデルを用いて、前記複数の区画のいずれかに、前記重錘を落下させることによる前記変位量が閾値未満になる状態が生じるか否かを予測するステップと、前記変位量が前記閾値未満になる状態が予測されたことを通知するステップと、前記変位量が前記閾値未満になる状態と予測された捨石マウンドの天端面と所定の高さとの比較を行うステップとを有する請求項1から5のいずれか一項に記載の捨石マウンドの施工方法である。
【0014】
本発明の請求項7に係る施工方法は、前記第2学習モデルを用いて、前記複数の区画のいずれかに、前記重錘を落下させることによる前記他の区画の前記変位量が閾値未満になる状態が生じるか否かを予測するステップと、前記他の区画の前記変位量が前記閾値未満になる状態が予測されたことを通知するステップと、前記他の区画の前記変位量が前記閾値未満になる状態と予測された捨石マウンドの天端面と所定の高さとの比較を行うステップと、を有する請求項5に記載の捨石マウンドの施工方法である。
【0015】
本発明の請求項8に係る施工方法は、前記打突による前記捨石マウンドの高さの変位量を計測するステップは、計測器により計測した前記重錘の上面の少なくとも3点の深度を用いる請求項1から7のいずれか一項に記載の捨石マウンドの施工方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、捨石マウンドの均し施工において重錘を落下させる適切な高さを算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】施工方法Mにより捨石マウンド3の天端面30が均される状態を示した図。
図2】均し機2を上から見た図。
図3】均し機2の構成の例を示す図。
図4】打突機21の構成の例を示す図。
図5】幅方向に並ぶ均し高さセンサ23の例を示す図。
図6】均し枠Rの例を示す図。
図7】学習装置1の構成の例を示す図。
図8】第1教師データ121の例を示す図。
図9】制御装置4の構成の例を示す図。
図10】管理装置5の構成の例を示す図。
図11】学習装置1の機能的構成の例を示す図。
図12】施工方法Mの処理の流れの例を示すフロー図。
図13】均し機2が天端面30を均す前の様子を示す図。
図14】均し機2がレーキ均しを行う様子を示す図。
図15】重錘均しの処理の流れの例を示すフロー図。
図16】重錘212による天端面30の打突前の様子を示す図。
図17】重錘212による天端面30の打突後の様子を示す図。
図18】変形例における学習装置1の構成の例を示す図。
図19】変形例における第2教師データ123の例を示す図。
図20】変形例における学習装置1の機能的構成の例を示す図。
図21】変形例における学習装置1の機能的構成の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態>
<全体構成>
以下に本発明の一実施形態に係る捨石マウンドの天端面の施工方法Mを説明する。図1は、施工方法Mにより捨石マウンド3の天端面30が均される状態を示した図である。以下の説明において、捨石マウンド3における方向は、図中の3つの矢印が示すX軸、Y軸、Z軸を用いて記載する。ここで-Zは、重力方向、すなわち下方向である。また、+Xは例えば北方向であり、+Yは例えば西方向である。
【0019】
施工方法Mは、海面W上に停止している船に搭載された学習装置1、制御装置4、及び管理装置5と、捨石マウンド3の上に配置された均し機2と、を用いて実施される。
【0020】
捨石マウンド3は、海底Bに捨石を投入して築造される。海底Bに築造された捨石マウンド3は、その上に構築されるケーソン等の港湾構造物の基礎部分となる。
【0021】
学習装置1、制御装置4、及び管理装置5は、有線又は無線により通信回線を介して互いに通信可能に接続されている。
【0022】
制御装置4は、均し機2を制御する装置であり、例えばプログラマブルロジックコントローラ等である。制御装置4は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)を含んでもよい。また、この実施形態において制御装置4は、操作者の操作を受け付ける。
【0023】
管理装置5は、均し機2及び制御装置4から均し機2を管理するためのデータを取得して記憶する装置である。管理装置5は、例えば、コンピュータである。
【0024】
学習装置1は、管理装置5から上述したデータの少なくとも一部を取得して機械学習を行う装置である。学習装置1は、例えば、コンピュータである。
【0025】
均し機2は、起重機船等によって海上から海底に向けて降ろされ、捨石マウンド3の天端面30のうち、計画された場所に配置される。図2は、均し機2を上から見た図である。図3は、均し機2の構成の例を示す図である。
【0026】
<均し機の構成>
図3に示す通り、均し機2は、架台20、打突機21、レーキ装置22、均し高さセンサ23、通信線24、測位機25、制御線26、及び方位傾斜計27を有する。
【0027】
架台20は、均し機2の各構成を支持する構造物である。架台20は、天端面30に接触する三本以上の脚部と、これら脚部を相互に連結する連結部とを有している。なお、図3に示す均し機2は、図示しないが脚部を八本有する。これら八本の脚部のうち、四本は均し機2を支持する脚であり、残りの四本は均し機2を移動させるときに天端面30に接触する移動用の脚である。脚部、連結部は例えば鋼材で構成される。水平方向に延びるフレーム上には打突機21、レーキ装置22、均し高さセンサ23がX軸、Y軸に沿って移動可能に支持される。
【0028】
図4は、打突機21の構成の例を示す図である。図4に示す打突機21は、吊ワイヤ210、重錘高さセンサ211、重錘212、重錘嵌合台盤213、台盤高さセンサ214、重錘昇降ウインチ215、及び重錘走横行台車216を有する。
【0029】
重錘走横行台車216は、架台20のフレーム上に沿って水平方向等に走行する台車である。重錘走横行台車216は、重錘昇降ウインチ215を搭載しており、これを重錘212の落下予定領域の上方に移動する。
【0030】
重錘昇降ウインチ215は、重錘走横行台車216に搭載されたウインチであり、吊ワイヤ210の巻き上げ、及び繰り出しを行う。
【0031】
吊ワイヤ210は、重錘嵌合台盤213を吊り下げて保持(「吊持」ともいう)するワイヤである。
【0032】
重錘嵌合台盤213は、上面が吊ワイヤ210によって吊持された台盤である。重錘嵌合台盤213は、例えば下面に重錘212を嵌め合わせる(「嵌合する」ともいう)ラッチ等の嵌合部材を有する。
【0033】
重錘212は、鋼等の金属でできた直方体形状の物体である。この重錘212の上面は、上述した嵌合部材により重錘嵌合台盤213と着脱可能になっている。重錘212は、重錘嵌合台盤213から脱離させられて、捨石マウンド3の天端面30上に落下された際、捨石マウンド3の天端面30を打突して締め固め、天端面30の高さを均一化する。
【0034】
重錘212は、重錘走横行台車216を介してフレーム上を走行して所定箇所に配置された重錘昇降ウインチ215を起点として重錘嵌合台盤213とともに吊ワイヤ210により吊り下げられている。重錘212の落下高さは、この重錘昇降ウインチ215による吊ワイヤ210の巻取量により調整される。重錘昇降ウインチ215が吊ワイヤ210の巻取量を調整すると、重錘嵌合台盤213は、指示された高さに吊持される。この重錘昇降ウインチ215は、吊ワイヤ210の長さを維持するために、重錘212及び重錘嵌合台盤213にかかる重力に抗する力で巻取った吊ワイヤ210を保持している。
【0035】
この調整された高さで重錘嵌合台盤213が嵌合部材を外して重錘212を保持する力を解放すれば、重錘212は、重錘嵌合台盤213から脱離し、捨石マウンド3の上面である天端面30に自由落下する。
【0036】
つまり、重錘昇降ウインチ215が吊ワイヤ210を所定の長さだけ巻き上げ若しくは繰り出すことにより、重錘212は指示された高さに吊持される。そして、その後、重錘嵌合台盤213が重錘212を解放すると、重錘212は、天端面30に向けて落下し、その落下位置を打突する。
【0037】
打突の後、重錘昇降ウインチ215は、吊ワイヤ210を繰り出して重錘嵌合台盤213を重錘212の高さまで下げる。下げられた重錘嵌合台盤213は、嵌合部材により重錘212と再び嵌合する。そして、重錘昇降ウインチ215が吊ワイヤ210を巻き取ると、重錘嵌合台盤213、及び重錘212は天端面30から浮き上がり、巻取量に応じた高さまで吊り上げられる。すなわち、天端面30を打突した重錘212は、再び、重錘昇降ウインチ215から吊り下げられた吊ワイヤ210の末端に接続している重錘嵌合台盤213と嵌合して、これにより吊持される。
【0038】
台盤高さセンサ214は、重錘走横行台車216の下面に設置され、重錘嵌合台盤213までの距離を計測するセンサである。この台盤高さセンサ214は、重錘走横行台車216の下面に取り付けられている。台盤高さセンサ214は、重錘走横行台車216の下面から重錘嵌合台盤213の上面までの距離を計測するが、これは吊ワイヤ210の繰り出し量と対応する。
【0039】
したがって、台盤高さセンサ214による距離の計測結果は、重錘昇降ウインチ215に備えられたロータリーエンコーダ等により計測される吊ワイヤ210の繰り出し量を検証するために用いられてもよい。吊ワイヤ210の繰り出し量、又は台盤高さセンサ214による距離の計測結果は、重錘走横行台車216の下面の位置を基準とした重錘嵌合台盤213の上面の深度の算出に用いられる。
【0040】
重錘高さセンサ211は、重錘212の上面での深度を計測する計測器であり、超音波距離計である。重錘高さセンサ211は、重錘嵌合台盤213の下面に取り付けられている。重錘高さセンサ211は、下方に存在する重錘212の上面に向けて超音波を送波する送波部を有する。また、重錘高さセンサ211は、重錘212の上面で反射した超音波を受波する受波部を有する。重錘高さセンサ211は、送波部から送波した超音波が反射して受波部に戻ってくるまでの時間に基づいて、重錘嵌合台盤213の下面から重錘212の上面までの距離を計測する。
【0041】
例えば、吊ワイヤ210の繰り出し量で算出した重錘嵌合台盤213の上面の深度に、重錘嵌合台盤213の厚みをオフセットすると、重錘嵌合台盤213の下面の深度が求まる。この深度からさらに、重錘高さセンサ211により計測された距離を降下した位置に重錘212の上面がある。この重錘212の上面の位置から、重錘212の厚みをオフセットすることで重錘212の下面、つまり天端面30の深度が計測される。
【0042】
重錘高さセンサ211は、重錘嵌合台盤213の下面の少なくとも3ヶ所に水平方向に等間隔を於いて取り付けられていることが望ましく、当該間隔は出来るだけ広いほうがより望ましい。これにより重錘212の上面は、平面として捉えられ、その傾きが特定されるからである。
【0043】
なお、均し機2は、落下する時の重錘212に側面で接触してその落下位置を誘導するガイドを有してもよい。ガイドは例えば天端面30に対して垂直に立てられたレール状の鋼材等である。
【0044】
図3に示すレーキ装置22は、Y軸及びZ軸方向に移動でき、その先端が天端面30に接触してY軸方向に移動させられることにより、天端面30の上面の捨石等をかき取って均す部材である。なお、レーキ装置22は、図2に示す中央線Cから遠ざかる方向に移動して均されることが好ましい。
【0045】
例えば、図2に示す通り、均し枠Rが中央線Cよりも+Y側にある場合、レーキ装置22は、+Y方向に移動しながら天端面30の上面の捨石をかき取る。これにより、かき取られた捨石は、天端面30よりも+Y側の斜面に落とされる。このように、レーキ装置22は、中央線Cから遠ざかる方向に捨石をかき取って斜面から落とすので、かき取られた捨石が天端面30の中央に集まることがない。
【0046】
レーキ装置22は、レーキ装置22の進行方向における後側に均し高さセンサ23を備える。これら均し高さセンサ23は、レーキ装置22を前後に移動させて捨石マウンド3の天端面30の形状を計測する。この実施形態において均し高さセンサ23は、レーキ装置22の移動に伴って移動する。
【0047】
均し高さセンサ23を用いた計測は、前測、中測、後測の3回がそれぞれ行われる。前測は捨石が投入された捨石マウンド3のうちレーキ装置22で均す前の天端面30の形状を計測する。
中測は、レーキ装置22による均した後のマウンドの形状を計測する。
後測は、レーキ装置22が均した後の天端面30を重錘212が落下締固めた後の形状を計測する。なお、この均し高さセンサ23は、例えば、超音波センサである。
【0048】
均し高さセンサ23は、レーキ装置22の幅方向に複数台並んでいてもよい。図5は、幅方向に並ぶ均し高さセンサ23の例を示す図である。図5には、レーキ装置22、及び均し高さセンサ23を上から見た概略図が示されている。図5に示すレーキ装置22の-Y側には、+X側から-X側に5台の均し高さセンサ23-1、23-2、23-3、23-4、23-5(以下、これらを区別しない場合、単に「均し高さセンサ23」という)が並んでいる。
【0049】
均し高さセンサ23-1、23-2、23-3、23-4、23-5は、レーキ装置22が通過した部分の天端面30の高さを幅方向の凹凸とともに計測する。なお、本説明において均し高さセンサの設置数は5台としたが、均し機の横方向の全巾の範囲を計測できるのであれば5台でなくとも構わないし、6台以上であっても構わない。
【0050】
測位機25は、均し機2の位置を測定する。測位機25は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System/全球測位衛星システム)受信機を有する。また、方位傾斜計27は、ジャイロセンサを有する。
【0051】
測位機25のGNSS受信機は、複数の衛星からの電波を受信することにより、均し機2の地球上の三次元位置を計測する。ただし、衛星からの電波が水中まで届かないことがあるため、この測位機25は、海面Wよりも上に設置される。また、この施工方法Mは、海面W上に停止している船舶にGNSS受信機とトランシーバを設置し、架台20の既知の位置にトランスポンダを設置するようにしてもよい。
【0052】
GNSS受信機により、図2に示す測位点Pの座標が測定され、この測位点Pを基準にして均し機2の位置は特定される。
【0053】
方位傾斜計27のジャイロセンサは、均し機2の姿勢、すなわち、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向に対する均し機2の傾きを計測する。これにより、地球上の東西南北の各方角を示すグローバル座標と、均し機2の各構成部材間の相対的な位置関係を示すローカル座標とが対応付けられる。
【0054】
そして、均し機2の設置位置が定まり、グローバル座標とローカル座標とが対応付けられることにより、重錘212が落下して打突することが可能な天端面30の範囲は、図2に示す均し枠Rとして定まる。
【0055】
通信線24は、海面Wよりも上に配置された測位機25と海面Wよりも下に配置された各構成とを通信可能に接続する。
【0056】
制御線26は、通信用電線であり、均し機2の制御指示、計測データの送受信、並びに均し機2への送電を行う複合ケーブルで、均し機2と制御装置4及び管理装置5とを通信可能に接続する。なお、制御線26は、制御指示、計測データの送受信に関しては、無線であってもよい。無線による通信を行う場合、電波が水中まで届かないことがあるため、均し機2は、制御装置4及び管理装置5と無線通信をする通信機を海面Wよりも上に設置していればよい。制御線26は、均し機2を制御装置4及び管理装置5と通信させ、制御装置4の制御下におく。
【0057】
制御線26は、制御装置4からの制御信号等を図示しない均し機2の駆動装置に伝える。これにより、この駆動装置が駆動させる打突機21、レーキ装置22、重錘走横行台車216、重錘嵌合台盤213は制御装置4によって、均し高さセンサ23、台盤高さセンサ214、及び重錘高さセンサ211は、管理装置5によって制御される。
なお、各種センサ類は用いる通信形式によっては、管理装置5ではなく制御装置4によって制御されるようにしてもよい。
【0058】
図6は、均し枠Rの例を示す図である。図6に示す均し枠Rは、8つの区画R1~R8が二行四列に並べられて構成される。天端面30であって重錘212の底面によって一回に打突される面(打突面)は、例えば2メートル四方の正方形である。この場合、この打突面が二行四列に並ぶため、均し枠Rとしての設定区域は、X軸方向に4メートル、Y軸方向に8メートルの矩形である。
【0059】
操作者は、制御装置4を用いて、まず、捨石マウンド3の天端面30の全領域を均すため、その全領域を複数の均し枠Rに区分する。そして、操作者は、区分された複数の均し枠Rに順序を割り当てて、制御装置4に順番にこれらを指定する。そして、制御装置4は、指定された均し枠Rを均すための位置に、均し機2を移動させるよう指示する。さらに、制御装置4は、均し機2に対し、天端面30の高さを計測して、計測された高さが、打突機21による打突に適した設定高さの条件を満たすまでレーキ均しをするように指示する。
【0060】
上記位置に移動した均し機2においてレーキ装置22が移動し、天端面30が均されるとき、レーキ装置22に伴って移動する均し高さセンサ23は、均した後の天端面30の高さを計測して管理装置5を経由して制御装置4に送る。計測された天端面30の高さが打突開始設定高さの条件を満たすと、操作者は、指定した均し枠Rをさらに複数に区分した区画(R1~R8)に順序を割り当てて、制御装置4に順番にこれらの区画を指定する。
【0061】
そして、操作者は、制御装置4に指定された或る区画に対する打突前の捨石マウンド3の天端面30の高さを計測する指示、その区画に重錘212を落下させて天端面30を打突する指示、その区画の打突後の高さの変位量を計測する指示を行う。
【0062】
制御装置4の操作者は、第1学習モデル122が構築される前で落下高さが推定されないときには、操作部を介して均し機2に対し、予め設定された落下高さで打突を行う旨を指示する。また、制御装置4の操作者は、第1学習モデル122が構築された後で落下高さが推定されるときには、表示部15に表示されたこの落下高さを確認して、又は参考にして落下高さを操作部に入力し、これにより均し機2に対して入力された落下高さで打突を行う旨を指示する。
【0063】
この指示を制御線26経由で受けた均し機2は、まず、重錘昇降ウインチ215を作動させて吊ワイヤ210を巻き取り、指示された落下高さまで重錘嵌合台盤213、及び重錘212を吊り上げる。次に、均し機2は、重錘嵌合台盤213の嵌合部材を解放して重錘212を落下させる。そして、その後、均し機2は、重錘高さセンサ211により打突による捨石マウンド3の高さの変位量を計測する。
【0064】
管理装置5は、計測された変位量を制御線26経由で取得する。管理装置5は、計測された変位量、及び打突の際の各条件を取得して記憶する。学習装置1は、機械学習を行う際に、制御装置4から上述した変位量等のデータを取得する。
【0065】
<学習装置の構成>
図7は、学習装置1の構成の例を示す図である。学習装置1は、プロセッサ11、メモリ12、及びインタフェース13を有する。また、学習装置1は、図7に示すように操作部14、及び表示部15を有してもよい。これらの構成は、例えばバスで、互いに通信可能に接続されている。
【0066】
プロセッサ11は、メモリ12に記憶されているコンピュータプログラム(以下、単にプログラムという)を読み出して実行することにより学習装置1の各部を制御する。プロセッサ11は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。
【0067】
メモリ12は、プロセッサ11に読み込まれるオペレーティングシステム、各種のプログラム、データ等を記憶する記憶手段である。メモリ12は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)を有する。なお、メモリ12は、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ等を有してもよい。
【0068】
また、メモリ12は、第1教師データ121、及び第1学習モデル122を記憶する。図8は、第1教師データ121の例を示す図である。第1教師データ121は、重錘212による天端面30への打突ごとに計測される各種の計測値、及び諸条件を対応付けて記憶する。図8に示す第1教師データ121は、打突ごとにデータを識別する識別情報であるデータIDを割り当て、説明変数として落下回数、落下高さ、重錘を落下させた高さと落下させた回数との積の平方根に対する変位量の比率である前回区画定数、前回枠定数、前回全体定数、前回の打突による前記捨石マウンドの高さの変位量を示す前回変位量、及び前回までの打突による前記捨石マウンドの高さの変位の累積量を示す前回迄累積変位量を記憶する。
【0069】
ここで、落下回数は、今回の打突を含めて、打突の対象となっている天端面30の或る区画に対して今までに重錘212を落下させた回数である。落下高さは、今回の打突において重錘を落下させた高さである。
【0070】
また、前回区画定数、前回枠定数、及び前回全体定数は、いずれも打突定数αである。ここで打突定数αについて説明する。重錘締固めには、以下の式(1)で示される関係性があることが知られている。
【0071】
【数1】
ここで、Pは重錘貫入量であり、単位は例えば[m]である。重錘貫入量は、重錘212を落下させて貫入させた天端面30の変位量である。cは地盤定数であり、単位は例えば[ms/t]である。mは重錘質量であり、単位は例えば[t]である。Aは重錘底面積であり、単位は例えば[m]である。vは衝突速度であり、単位は例えば[m/s]である。Nは打撃回数(落下回数)である。Hは落下高さであり、単位は例えば[m]である。
【0072】
したがってこの式(1)によれば、重錘貫入量は、重錘質量、衝突速度、及び落下回数の平方根に、それぞれ比例する。また、この式(1)によれば、重錘貫入量は、重錘底面積に反比例する。
【0073】
ところで、Hで示す距離を落下して天端面30に衝突したときの重錘212の衝突速度vは、重力加速度gを用いて以下の式(2)で表される。
【0074】
【数2】
つまり、衝突速度に比例する重錘貫入量は、落下高さHの平方根に比例する。以下の式(3)は、上述した式(1)(2)をまとめて表したものである。
【0075】
【数3】
ここで、打突定数αは、捨石等の特性に依存する地盤定数cのほか、重錘質量m、重錘底面積A等の、打突に関係する様々な条件を含む定数である。この式において、Pは、重錘212のN回目の落下(打突)の際の重錘貫入量である。式(3)を変形すると、打突定数αは、重錘貫入量Pを落下回数Nと落下高さHとの積の平方根√(NH)で除した値であることがわかる。そして重錘貫入量PはN回目の打突による捨石マウンド3の天端面30の高さの変位量である。したがって、打突定数αは、重錘を落下させた高さと落下させた回数との積の平方根に対する、打突による捨石マウンドの高さの変位量の比率の例である。
【0076】
そして、N回目の打突における重錘貫入量と、前回(つまり、(N-1)回目)の打突における重錘貫入量との差は、以下の式(4)で表される。
【0077】
【数4】
【0078】
打突定数αは、重錘の打突ごとに更新され、区画ごとに異なる計測値に基づいて算出される。また、複数の区画で構成される均し枠に対応付けて算出される打突定数αは、区画それぞれにおいて算出された打突定数αの代表値が採用される。さらに、捨石マウンド3の天端面30の全領域に対応付けて算出される打突定数αは、この全領域に含まれる全ての区画それぞれにおいて算出された打突定数αの代表値が採用される。
【0079】
つまり、前回区画定数は、或る区画に対する前回の打突が終わった時に算出された打突定数αである。
【0080】
また、前回枠定数は、均し枠Rを構成する全ての区画の各々について、前回の打突が終わった時にそれぞれ算出された打突定数αの代表値である。この代表値は、例えば、均し枠Rを構成する8つの区画R1~R8についてそれぞれ算出された打突定数αの相加平均値である。均し枠Rは、二以上の区画からなるグループである。つまり、この前回枠定数は、グループに属する全ての区画の比率の相加平均値の例である。
【0081】
そして、前回全体定数は、天端面30の全領域を構成する全ての区画の各々について、前回の打突が終わった時にそれぞれ算出された打突定数αの代表値である。この代表値は、例えば、天端面30の全領域を構成する全ての区画の各々についてそれぞれ算出された打突定数αの相加平均値である。この場合、この前回全体定数は、捨石マウンドの天端面を区分して得られる複数の区画の全ての比率の相加平均値の例である。なお、この代表値は、区画それぞれの打突定数αの相加平均値に限らず、最頻値、中央値、相乗平均値、最大値等の各種の統計量であってもよい。
【0082】
そして、この第1教師データ121は、上述した打突を示すデータIDに対応付けて、目的変数としてその打突による天端面30の変位量、つまり、今回の打突による変位量を記憶する。また、この第1教師データ121は、打突ごとに特定された変位量に基づいて特定された前回の変位量である前回変位量を記憶する。また、この第1教師データ121は、前回までの変位量の累積量である前回迄累積変位量を記憶する。
【0083】
図7に示す第1学習モデル122は、第1教師データ121に基づいた機械学習により生成される。この第1学習モデルは、第1教師データ121に記憶された説明変数から、目的変数が予測されるための数式、行列等に使われるパラメータ群を含む。第1学習モデルを生成するための機械学習には、例えば、線形回帰、決定木、xgboost等が適用可能である。
【0084】
インタフェース13は、有線又は無線により通信回線を介して、学習装置1を管理装置5及び制御装置4と通信可能に接続する通信回路である。
【0085】
操作部14は、各種の指示をするための操作ボタン、キーボード、タッチパネル、マウス等の操作子を備えており、操作を受付けてその操作内容に応じた信号をプロセッサ11に送る。この操作は、例えば、キーボードに対する押下やタッチパネルに対するジェスチャー等である。
【0086】
表示部15は、液晶ディスプレイ等の表示画面を有しており、プロセッサ11の制御の下、画像を表示する。表示画面の上には、操作部14の透明のタッチパネルが重ねて配置されてもよい。なお、学習装置1は、操作部14及び表示部15を有しなくてもよい。学習装置1は、インタフェース13を介して外部の装置から操作され、又は外部の装置に情報を提示してもよい。
【0087】
<制御装置の構成>
図9は、制御装置4の構成の例を示す図である。図9に示す制御装置4は、プロセッサ41、メモリ42、インタフェース43、操作部44、及び表示部45を有する。これらの構成は、例えばバスで、互いに通信可能に接続されている。
【0088】
プロセッサ41は、メモリ42に記憶されているプログラムを読出して実行することにより制御装置4の各部を制御する。プロセッサ41は、例えばCPUである。
【0089】
インタフェース43は、有線又は無線により制御装置4を、他の装置に通信可能に接続する通信回路である。
【0090】
操作部44は、各種の指示をするための操作ボタン、レバーボックス、タッチパネル等の操作子を備えており、操作を受付けてその操作内容に応じた信号をプロセッサ41に送る。
【0091】
表示部45は、液晶ディスプレイ等の表示画面を有しており、プロセッサ41の制御の下、画像を表示する。表示画面の上には、操作部44の透明のタッチパネルが重ねて配置されてもよい。なお、制御装置4は、操作部44及び表示部45を有しなくてもよい。制御装置4は、インタフェース43を介して外部の装置から操作され、又は外部の装置に情報を提示してもよい。
【0092】
メモリ42は、プロセッサ41に読み込まれるオペレーティングシステム、各種のプログラム、データ等を記憶する記憶手段である。メモリ42は、RAMやROMを有する。なお、メモリ42は、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ等を有してもよい。
【0093】
<管理装置の構成>
図10は、管理装置5の構成の例を示す図である。図10に示す管理装置5は、プロセッサ51、メモリ52、インタフェース53、操作部54、及び表示部55を有する。これらの構成は、例えばバスで、互いに通信可能に接続されている。
【0094】
プロセッサ51は、メモリ52に記憶されているプログラムを読出して実行することにより管理装置5の各部を制御する。プロセッサ51は、例えばCPUである。
【0095】
インタフェース53は、有線又は無線により管理装置5を、他の装置に通信可能に接続する通信回路である。
【0096】
操作部54は、各種の指示をするための操作ボタン、キーボード、タッチパネル、マウス等の操作子を備えており、操作を受付けてその操作内容に応じた信号をプロセッサ51に送る。操作部を有する。
【0097】
表示部55は、液晶ディスプレイ等の表示画面を有しており、プロセッサ51の制御の下、画像を表示する。表示画面の上には、操作部54の透明のタッチパネルが重ねて配置されてもよい。なお、管理装置5は、操作部54及び表示部55を有しなくてもよい。管理装置5は、インタフェース53を介して外部の装置から操作され、又は外部の装置に情報を提示してもよい。
【0098】
メモリ52は、プロセッサ51に読み込まれるオペレーティングシステム、各種のプログラム、データ等を記憶する記憶手段である。メモリ52は、RAMやROMを有する。なお、メモリ52は、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ等を有してもよい。
【0099】
<学習装置の機能的構成>
図11は、学習装置1の機能的構成の例を示す図である。学習装置1は、プロセッサ11がプログラムを実行することにより、計測値取得手段111、教師データ生成手段112、学習モデル構築手段113、落下高さ推定手段114、及び表示制御手段115として機能する。
【0100】
計測値取得手段111は、打突前の捨石マウンド3の天端面30の高さの計測値と、打突後の捨石マウンド3の高さの変位量の計測値とを管理装置5からインタフェース13経由で取得する。
【0101】
教師データ生成手段112は、実行した打突の条件と取得した計測値とから、説明変数、及び目的変数を特定、又は算出して第1教師データ121を生成する。
【0102】
学習モデル構築手段113は、生成された第1教師データ121を用いて、その説明変数から目的変数が導かれるためのパラメータ群等を算出し、これらを用いて第1学習モデル122を構築する。
【0103】
落下高さ推定手段114は、構築された第1学習モデル122に基づいて、次に指示する打突の際に重錘212を吊り上げて落下させるべき高さ(落下高さ)を推定する。まず、落下高さ推定手段114は、重錘212が落下し天端面30を締め固めたとしても設計均し高さ以上沈下しないであろう落下高さ、例えば1mに落下高さを指定し、その落下高さで重錘212を落下させた場合の或る区画の変位量を推算する。そして、落下高さ推定手段114は、その推算された変位量が、予め設定された望ましい変位量に近づくように落下高さを変動させていく。これにより、落下高さ推定手段114は、重錘212を落下させるべき適切な高さである「落下高さ」を推定する。これにより推定した落下高さは、表示制御手段115に伝えられる。表示制御手段115は、表示部15に対し、落下高さの推定値を表示する指示を行う。
【0104】
<施工方法の処理>
図12は、施工方法Mの処理の流れの例を示すフロー図である。操作者は、制御装置4の操作部を介して均し機2に指示をして、作業開始位置調整を行わせる(ステップS001)。これにより均し機2の位置が定まり、均し枠Rが決定される。次に、操作者は、管理装置5より均し機2に指示をして、均し高さセンサ23で前測を行わせ、制御装置4の操作部を介して設定高さとなるまでレーキ均しを行わせる(ステップS002)。これにより、均し枠Rが荒く均される。
【0105】
均し機2は、管理装置5よりの指示に従い均し高さセンサ23でレーキ均し後の天端面30の高さを計測(中測)する。管理装置5は、計測した結果に基づいて天端面30が打突開始時設定高さの条件を満たすか否か判断する(ステップS003)。管理装置5が、天端面30が打突開始設定高さの条件を満たさない、と判断した場合(ステップS003;NO)、制御装置4は、均し機2にレーキ均しを再度指示する。
【0106】
図13は、均し機2が天端面30を均す前の様子を示す図である。均し機2は、制御装置4及び管理装置5の制御の下、レーキ装置22とともに均し高さセンサ23を走査させて天端面30の高さを計測(前測)する。このとき、レーキ装置22は、レーキの先端を引き上げて天端面30から離して計測する。制御装置4は、予め打突開始設定高さの条件として、天端面30の高さの上限、及びその最高点と最低点との高低差の範囲を定めている。均し高さセンサ23が計測した高さは、均し機2から管理装置5に送信され、この設定高さの条件を満たしているか否か判断される。
【0107】
図14は、均し機2がレーキ均しを行う様子を示す図である。均し機2は、制御装置4の制御の下、レーキ装置22を図14に示す矢印方向に駆動させて天端面30の捨石等をかき取って均す「レーキ均し」を行う。かき取られた天端面30の捨石等は、天端面30の外側に移動される。均し高さセンサ23は、レーキ装置22が均した後、水中の濁りが落ち着いた後に中測として天端面30の高さを計測し、管理装置5経由で制御装置4にこれを伝える。
【0108】
一方、天端面30が打突開始設定高さの条件を満たした、と判断すると(ステップS003;YES)、制御装置4は、均し機2に指示をして重錘均しの処理を実行させる(ステップS100)。
【0109】
重錘均しの処理が完了すると、制御装置4は、天端面30の全領域の均しが終了したか否か判断する(ステップS004)。天端面30の全領域のレーキ均し及び重錘均しが終了していない、と判断した場合(ステップS004;NO)、操作者は、ステップS001に処理を戻す。すなわち、操作者は、天端面30のうちで均しが終了していない均し枠Rを指定し、均し機2に指示をして、位置調整→レーキ均し→重錘均しの一連の処理を、新たな均し枠Rに対して行わせる。一方、天端面30の全領域の均しが終了した、と判断すると、操作者は処理を終了する。
【0110】
図15は、重錘均しの処理(ステップS100)の流れの例を示すフロー図である。制御装置4は、指定した均し枠Rをさらに区分して区画R1~R8を決める。そして、操作者は、これらの区画R1~R8に順序を割り当て、その順序に沿って重錘落下締固めを開始するいずれかの区画を決める。操作者は、均し機2に指示をして、決めた区画への打突に先立って、その高さを計測(中測)させる(ステップS101)。この計測の結果は、均し機2から管理装置5経由で制御装置4に伝えられ、データは管理装置5に蓄積される。学習装置1は、管理装置5から記録したデータを取得し、第1教師データの生成、及び第1学習モデルの構築を行う。
【0111】
このステップS101は、捨石マウンド3の天端面30を区分して得られる複数の区画の各々に対して均し枠R毎に順次、行われる。したがって、このステップS101は、捨石マウンドの天端面を区分して得られる複数の区画の各々に関し、重錘による打突前の捨石マウンドの天端面の高さを計測するステップの例である。
【0112】
学習装置1は、メモリ12に第1学習モデルがある(構築済みである)か否かを判断する(ステップS102)。なお、新規の工事においては、他の工事で用いた生成済み学習モデルを用いて再学習するようにしてもよい。メモリ12に第1学習モデルがない、と判断する場合(ステップS102;NO)、操作者は、均し機2に予め決められた落下高さを制御装置4に指定する(ステップS103)。
【0113】
一方、メモリ12に第1学習モデルがある、と判断する場合(ステップS102;YES)、学習装置1は、この第1学習モデルを用いて重錘212の落下高さを推定し、推定したその落下高さを表示部15に表示させて、操作者に確認させる(ステップS104)。このステップS104は、第1学習モデルを用いて、捨石マウンドに対し重錘を落下させる高さを推定するステップの例である。落下高さの表示を確認した操作者は、第1学習モデルによる落下高さ指示数値に調整が必要であれば操作部を介して制御装置4の落下高さを調整し、調整が不要であれば推定された落下高さからの打突を均し機2に指示する。
【0114】
均し機2の打突機21は、制御装置4の制御の下、指示された落下高さに重錘212を吊り上げ、その後、重錘212を解放して自由落下させ、上述した区画を打突する(ステップS105)。このステップS105は、推定するステップにおいて推定した高さから重錘を落下させて、捨石マウンドの天端面を重錘で打突するステップの例である。
【0115】
図16は、重錘212による天端面30の打突前の様子を示す図である。重錘走横行台車216は、均し枠Rのうち、指示された区画の上方に移動する。移動が完了すると、重錘昇降ウインチ215は、吊ワイヤ210を繰り出して重錘嵌合台盤213を指示された落下高さに相当する高さまで降ろす。
【0116】
図17は、重錘212による天端面30への打突後の様子を示す図である。所定位置まで降ろされた重錘嵌合台盤213は、嵌合部材を外すことにより重錘212を解放する。これにより、重錘212は、自由落下して捨石マウンド3の天端面30を打突する。これにより、天端面30は重錘212が貫入され、その高さが変位する。
【0117】
このステップS105は、捨石マウンド3の天端面30を区分して得られる複数の区画の各々に対して、それぞれ設計締固め高さから所定の範囲内となるまで行われる。したがって、このステップS105は、捨石マウンドの天端面を区分して得られる複数の区画の各々に、重錘を所定の回数、設定した高さから落下させて打突するステップの例である。
【0118】
一回の打突が行われて重錘212が天端面30に貫入すると、均し機2は、管理装置5の制御の下、打突による捨石マウンド3の高さの変位量を計測する(ステップS106)。このとき、均し機2は、天端面30に貫入した状態の重錘212が有する重錘高さセンサ211を用いて、変位量を計測する。この計測は、打突が行われる度に行われる。したがって、このステップS106は、打突による捨石マウンドの高さの変位量を計測するステップの例である。
【0119】
なお、均し機2が、重錘212の上面の少なくとも3ヶ所に取り付けられたトランスポンダである重錘高さセンサ211を用いて高さの変位量を計測する場合、このステップS106は、計測器により計測した重錘の上面の少なくとも3点の深度を用いて、打突による前記捨石マウンドの高さの変位量を計測するステップ、の例である。
【0120】
次に学習装置1は、重錘212を落下させた高さ(落下高さ)と、落下させた回数(落下回数)との積の平方根を算出し、その平方根に対する上述した変位量の比率を算出する(ステップS107)。このステップS107は、天端面30を構成する複数の均し枠R、それら均し枠Rを構成する複数の区画、及び天端面30の全領域のそれぞれに対して行われる。つまり、このステップS107は、捨石マウンドの天端面を区分して得られる複数の区画、及び捨石マウンドの天端面の全領域のそれぞれについて、重錘を落下させた高さと落下させた回数との積の平方根に対する変位量の比率を算出するステップの例である。
【0121】
また、均し枠Rは、重錘212を移動させて落下させる二以上の区画からなるグループである。つまり、このステップS107は、天端面の複数の区画、及び天端面の全領域のそれぞれに加えて、複数の区画のうち重錘を移動させて落下させる二以上の区画からなるグループごとに比率を算出するステップの例である。
【0122】
学習装置1は、比率を算出すると、打突の諸条件とともにこの比率を用いて第1教師データ121を生成する。また、学習装置1は、既に第1教師データ121が生成されている場合、算出した新たな比率を用いてこの第1教師データ121を更新する(ステップS108)。これにより学習装置1のメモリ12には、図8に示す第1教師データ121が生成される。つまり、このステップS108は、天端面の複数の区画、及び天端面の全領域における、重錘を落下させた高さ、回数、前回の打突による捨石マウンドの高さの変位量を示す前回変位量、前回までの打突による捨石マウンドの高さの前回迄累積変位量、及び落下高さと落下回数との積の平方根に対する変位量の比率を説明変数とし、今回の打突による変位量を目的変数とする教師データを生成するステップの例である。
【0123】
また、均し枠Rは、重錘212を移動させて落下させる二以上の区画からなるグループである。つまり、このステップS108は、天端面の複数の区画、その複数の区画のうち重錘を移動させて落下させる二以上の区画からなるグループ、及び天端面の全領域の、重錘を落下させた高さ、回数、前回変位量、前回迄累積変位量、及び落下高さと落下回数との積の平方根に対する変位量の比率を説明変数とし、今回の打突による変位量を目的変数とする教師データを生成するステップの例である。
【0124】
学習装置1は、第1教師データ121を生成、又は更新すると、この第1教師データ121を用いて第1学習モデルを構築、又は更新する(ステップS109)。このステップS109は、生成、又は更新された教師データを用いて第1学習モデルを構築するステップの例である。
【0125】
制御装置4は、天端面30の全区画の重錘均し処理が終了したか否かを判断する(ステップS110)。全区画の重錘均し処理が終了していない、と判断する場合(ステップS110;NO)、制御装置4は、上述した順序に従って均し枠Rの複数の区画の内の未処理の区画を均し機2に指定して処理をステップS101に戻す。一方、均し枠Rの全区画の重錘均し処理が終了した、と判断する場合(ステップS110;YES)、制御装置4は、処理を終了する。
【0126】
操作者は、ステップS110がYESとなった際(均し枠R内の全区画の重錘締固めが終了したと制御装置4が判断した際)に、均し機2に指示をして、前述した後測として、均し高さセンサ23を走査させて天端面30の高さを計測させる。この計測の結果は、均し機2から管理装置5経由で制御装置4に伝えられ、データは管理装置5に蓄積される。
【0127】
後測で均し枠R内が全て設計高さに締め固まっていることを確認したのちに、操作者は、均し機2を次の均し枠Rへ移動させる。その結果、施工方法Mの工程は、ステップS100の呼び出し元に戻り、ステップS004(図12参照)に移行する。
【0128】
以上の通り、説明した施工方法Mによれば、天端面の複数の区画、及び天端面の全領域における、重錘を落下させた高さ、回数、前回の打突による捨石マウンドの高さの前回変位量、前回までの打突による捨石マウンドの高さの前回迄累積変位量、及び落下高さ、落下回数の積の平方根に対する変位量の比率を説明変数とし、変位量を目的変数とする第1教師データが生成される。そしてこの施工方法Mによれば、第1教師データを用いて構築された第1学習モデルにより重錘212を落下させる高さが推定されるので、作業者等の経験則に頼ることなく、重錘締固め時の重錘212の落下高さを設定することができる。
【0129】
<変形例>
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例を組合せてもよい。
【0130】
<1>
上述した実施形態において、第1教師データ121は、天端面の複数の区画、及び天端面の全領域における、重錘を落下させた高さ、回数、前回の打突による捨石マウンドの高さの前回変位量、前回までの打突による捨石マウンドの高さの前回迄累積変位量、及び落下高さ、落下回数の積の平方根に対する変位量の比率を説明変数とし、変位量を目的変数とする教師データであったが、他の指標を目的変数とする教師データが生成されてもよい。例えば、教師データの目的変数は、打突された区画とは異なる「他の区画」の変位量であってもよい。
【0131】
図18は、変形例における学習装置1の構成の例を示す図である。図18に示す学習装置1は、第1教師データ121及び第1学習モデル122に代えて、若しくは加えてメモリ12に第2教師データ123、及び第2学習モデル124を記憶する。
【0132】
図19は、変形例における第2教師データ123の例を示す図である。第2教師データ123は、第1教師データ121と同じく、打突ごとにデータを識別する識別情報であるデータIDを割り当て、説明変数として落下回数、落下高さ、前回区画定数、前回枠定数、前回全体定数、前回変位量、及び前回迄累積変位量を記憶する。
【0133】
一方、第2教師データ123は、第1教師データ121と異なり、目的変数は打突した或る区画の周辺の区画であって、その或る区画とは均し枠R内の何れかの異なる区画(周辺区画ともいう)の変位量(周辺変位量)を記憶する。この第2教師データ123は、周辺変位量を推定するための第2学習モデル124の構築に用いられる。
【0134】
ここで、周辺変位量とは、沈下する量に限らない。或る区画を打突することにより、その区画が沈下するとき、周辺区画には捨石等が押し出されて隆起することもあるからである。
【0135】
図20は、変形例における学習装置1の機能的構成の例を示す図である。図20に示す教師データ生成手段112は、上述した第1教師データ121に加えて、もしくは代えて第2教師データ123を生成する。
【0136】
また、図20に示す学習モデル構築手段113は、上述した第1教師データ121を用いて第1学習モデル122を構築することに加えて、もしくは代えて第2教師データ123を用いて第2学習モデル124を構築する。
【0137】
第2教師データ123は、周辺変位量を目的変数としているため、第2学習モデル124は、上述した説明変数から目的変数である周辺変位量が導かれるためのパラメータ群が含まれる。
【0138】
つまり、この変形例において施工方法Mには、天端面の複数の区画、及び天端面の全領域における、重錘を落下させた区画、高さ、回数、前回変位量、前回迄累積変位量、及び落下高さと落下回数との積の平方根に対する変位量の比率を説明変数とし、重錘を落下させた区画と異なる他の区画の変位量を目的変数とする第2教師データ123を生成するステップが行われる。
【0139】
また、この変形例において施工方法Mには、生成した第2教師データ123を用いて第2学習モデル124を構築するステップが行われる。
【0140】
また、図20に示すプロセッサ11は、周辺変位量算出手段116、及び通知手段117としても機能する。
【0141】
周辺変位量算出手段116は、構築された第2学習モデル124を用いて、今回の打突によって周辺区画に生じる変位量を算出する。つまり、この周辺変位量算出手段116は、第2学習モデルを用いて、或る区画に重錘を落下させることによって生じる他の区画の変位量を算出するステップを実行する手段の例である。
【0142】
通知手段117は、周辺変位量算出手段116が算出した周辺区画の推定変位量を表示部15に表示させて、又はインタフェース13を介して管理装置5の表示部55に表示させて、通知する。つまり、この通知手段117は、算出された他の区画の推定変位量を通知するステップを実行する手段の例である。
【0143】
この変形例における施工方法Mによれば、今回の打突によって他の区画に生じる推定変位量を知ることができる。
【0144】
<2>
上述した実施形態において、学習装置1は、第1学習モデル122を用いて、重錘212を落下させるべき適切な高さである「落下高さ」を推定していたが、どの落下高さにしても変位量が閾値未満になる状態を予測してもよい。
【0145】
図21は、新たな変形例における学習装置1の機能的構成の例を示す図である。図21に示すプロセッサ11は、プログラムを実行することにより、計測値取得手段111、教師データ生成手段112、及び学習モデル構築手段113として機能することに加えて、変位量予測手段118、比較手段119、及び通知手段117として機能する。
【0146】
変位量予測手段118は、第1学習モデル122を用いて、複数の区画のそれぞれに対して、複数の落下高さを仮定して、その区画が、それらの落下高さに関わらず、いかなる打突によっても変位量が閾値未満になる状態になっているか否かを判断する。この状態になっていると判断するとき、変位量予測手段118は、この状態を予測したことを比較手段119、及び通知手段117に伝える。この変位量予測手段118は、第1学習モデルを用いて、複数の区画のいずれかに、重錘を落下させることによる変位量が閾値未満になる状態が生じるか否かを予測するステップを実行する手段の例である。
【0147】
比較手段119は、変位量予測手段118が上述した状態を予測した場合に、現状の捨石マウンド3の天端面30の高さを設計高さである所定の高さと比較する。つまり、この比較手段119は、変位量が閾値未満になる状態と予測された捨石マウンドの天端面と設計締固め高さとの比較を行うステップを実行する手段の例である。
【0148】
通知手段117は、変位量予測手段118が上述した状態を予測した場合に、この状態が予測されたことを表示部15により、又はインタフェース13を介して管理装置5の表示部55に表示して利用者に通知する。また、通知手段117は、比較手段119による比較結果を表示部15により、又は管理装置5の表示部55に表示して利用者に通知する。つまり、この通知手段117は、変位量が閾値未満になる状態が予測されたことを通知するステップを実行する手段の例である。
【0149】
この変形例によれば、捨石マウンド3の天端面30の高さが、重錘212の自由落下による打突により閾値以上、変位しなくなるか否かがわかる。また、この変形例によれば、この捨石マウンド3の天端面30の高さが、閾値以上、変位しなくなった状態において、その高さが設計高さである所定の高さにどれほど近づいているかがわかる。
【0150】
なお、この変形例において変位量予測手段118は、第1学習モデル122を用いて、複数の区画のいずれかに上述した状態が生じるか否かを予測していたが、第2学習モデル124を用いてこれを予測してもよい。この場合、変位量予測手段118は、第2学習モデルを用いて、複数の区画のいずれかに、重錘を落下させることによる他の区画の変位量が閾値未満になる状態が生じるか否かを予測するステップを実行する手段の例である。
【0151】
<3>
上述した実施形態において、施工方法Mは、学習装置1と均し機2と制御装置4と管理装置5とによって行われたが、他の構成によって行われてもよい。例えば、施工方法Mは、海面W上に停止している起重機船に搭載された起重機と、起重機から吊り下げられた重錘と、起重機船内に設置された情報処理装置とを用いて実施されてもよい。
【0152】
また、施工方法Mは、教師データ生成手段112において生成した第1教師データ121と第2教師データ123を同時に用いて、第1学習モデル122と第2学習モデル124を構築し、両学習モデルを併用して用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0153】
1…学習装置、11…プロセッサ、111…計測値取得手段、112…教師データ生成手段、113…学習モデル構築手段、114…落下高さ推定手段、115…表示制御手段、116…周辺変位量算出手段、117…通知手段、118…変位量予測手段、119…比較手段、12…メモリ、121…第1教師データ、122…第1学習モデル、123…第2教師データ、124…第2学習モデル、13…インタフェース、14…操作部、15…表示部、2…均し機、20…架台、21…打突機、210…吊ワイヤ、211…重錘高さセンサ、212…重錘、213…重錘嵌合台盤、214…台盤高さセンサ、215…重錘昇降ウインチ、216…重錘走横行台車、22…レーキ装置、23(23-1、23-2、23-3、23-4、23-5)…均し高さセンサ、24…通信線、25…測位機、26…制御線、27…方位傾斜計、3…捨石マウンド、30…天端面、4…制御装置、
41…プロセッサ、42…メモリ、43…インタフェース、44…操作部、45…表示部、5…管理装置、51…プロセッサ、52…メモリ、53…インタフェース、54…操作部、55…表示部、C…中央線、D1~D5…矢印(均し機センサの移動経路)、P…測位点、R…均し枠、R1~R8…区画
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21