(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151282
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】放射線検出モジュールおよび放射線検出モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01T 1/20 20060101AFI20231005BHJP
H01L 27/144 20060101ALI20231005BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20231005BHJP
A61B 6/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G01T1/20 E
G01T1/20 G
H01L27/144 K
H01L27/146 C
H01L27/146 D
A61B6/00 300Q
A61B6/00 300S
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060818
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120662
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 桂子
(74)【代理人】
【識別番号】100216770
【弁理士】
【氏名又は名称】三品 明生
(74)【代理人】
【識別番号】100217364
【弁理士】
【氏名又は名称】田端 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【弁理士】
【氏名又は名称】梶谷 美道
(72)【発明者】
【氏名】中村 渉
(72)【発明者】
【氏名】久保田 章敬
(72)【発明者】
【氏名】中村 友
【テーマコード(参考)】
2G188
4C093
4M118
【Fターム(参考)】
2G188AA03
2G188BB02
2G188BB04
2G188BB06
2G188CC22
2G188CC25
2G188DD04
2G188DD05
2G188DD10
2G188DD12
2G188DD42
2G188DD43
2G188DD44
2G188DD45
4C093AA03
4C093CA02
4C093CA06
4C093EB12
4C093EB17
4C093EB20
4M118AA01
4M118AA10
4M118AB01
4M118BA05
4M118CA05
4M118CB11
4M118EA14
4M118FB03
4M118FB08
4M118FB09
4M118FB13
4M118HA25
4M118HA26
(57)【要約】
【課題】本開示は、より高い感度で解像度の高い放射線画像を取得することが可能な放射線検出モジュールおよび放射線検出モジュールの製造方法を提供する。
【解決手段】放射線検出モジュールは、アクティブマトリクス基板10およびシンチレータ50を備える。アクティブマトリクス基板は、第1主面を有する支持基板20であって、第1主面が、第1領域20r1と、第1領域を囲んで位置する第2領域20r2とを含む支持基板と、第1主面の第1領域に1次元または2次元に配列された複数の画素であって、各画素がスイッチング素子と、スイッチング素子に電気的に接続された光電変換素子とを含む複数の画素とを備える。シンチレータは、複数の画素の光電変換素子を覆って配置されている。支持基板の第1領域における厚さは、第2領域における厚さよりも小さい。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面および前記第1主面と反対側に位置する第2主面を有する支持基板であって、前記第1主面が、第1領域と、前記第1領域を囲んで位置する第2領域とを含む、支持基板と、
前記第1主面の第1領域に1次元または2次元に配列された複数の画素であって、各画素がスイッチング素子と、前記スイッチング素子に電気的に接続された光電変換素子とを含む複数の画素と、
を備えたアクティブマトリクス基板、および
前記複数の画素の光電変換素子を覆って配置されたシンチレータ
を備え、
前記支持基板の前記第1領域における厚さは、前記第2領域における厚さよりも小さい、放射線検出モジュール。
【請求項2】
前記第2領域は、前記支持基板の第1主面において外周に沿って位置している、請求項1に記載の放射線検出モジュール。
【請求項3】
前記支持基板の前記第1領域における厚さは、前記第2領域における厚さの1/2以下である、請求項1または2に記載の放射線検出モジュール。
【請求項4】
前記支持基板は、前記第2主面の、前記第1領域に対応する領域に凹部を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の放射線検出モジュール。
【請求項5】
前記複数の画素の前記スイッチング素子に電気的に接続された走査線駆動部と、
前記複数の画素の前記スイッチング素子に電気的に接続された電荷検出部と、
をさらに備え、
前記走査線駆動部の少なくとも一部および前記電荷検出部の少なくとも一部は、前記支持基板の前記第1主面の第2領域に位置している、請求項1から4のいずれか1項に記載の放射線検出モジュール。
【請求項6】
前記支持基板の前記第2主面は、放射線の入射面である、請求項1から5のいずれか1項に記載の放射線検出モジュール。
【請求項7】
前記各画素は、前記光電変換素子で発生した電荷を増幅するアンプ回路をさらに含む請求項1から6のいずれか1項に記載の放射線検出モジュール。
【請求項8】
第1主面および前記第1主面と反対側に位置する第2主面を有する支持基板であって、前記第1主面が、第1領域と、前記第1領域を囲んで位置する第2領域とを含む支持基板の前記第1領域に、それぞれがスイッチン素子および光電変換素子を含む複数の画素を形成する工程(A)と、
前記支持基板の一部を前記第2主面から除去することによって、第2主面の、前記第1領域に対応する領域に凹部を形成し、前記支持基板の前記第1領域における厚さを、前記第2領域における厚さよりも小さくする工程(B)と、
を備えた、放射線検出モジュールの製造方法。
【請求項9】
前記工程(B)の前に、前記複数の画素の光電変換素子を覆うようにシンチレータを配置する工程(C)をさらに備えた請求項8に記載の放射線検出モジュールの製造方法。
【請求項10】
前記工程(B)の後に、前記複数の画素の光電変換素子を覆うようにシンチレータを配置する工程(C)をさらに備えた請求項8に記載の放射線検出モジュールの製造方法。
【請求項11】
前記工程(C)において、前記シンチレータはシート形状を有しており、前記シート状のシンチレータを、接着層を介して前記複数の画素に接合する請求項9または10に記載の放射線検出モジュールの製造方法。
【請求項12】
前記工程(C)において、前記シンチレータの材料を蒸着によって前記複数の画素上に堆積させ、前記シンチレータを形成する請求項9に記載の放射線検出モジュールの製造方法。
【請求項13】
前記工程(B)の後に、走査線駆動部および電荷検出部を前記支持基板の前記第1主面の第2領域に実装し、前記走査線駆動部および前記電荷検出部を前記複数の画素の前記スイッチング素子に電気的に接続する工程(D)をさらに備える請求項8から10のいずれか1項に記載の放射線検出モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放射線検出モジュールおよび放射線検出モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像処理技術の発展にともない、医療の分野においても種々の画像診断装置が広く利用されている。X線などの放射線を用いる診断装置においては、身体や対象物を透過した放射線を直接デジタルデータに変換が可能な放射線フラットパネルディテクター(FPD)が利用されている。例えば、特許文献1はこのようなFPDを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、より高い感度で解像度の高い放射線画像を取得することが可能な放射線検出モジュールおよび放射線検出モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のある実施形態に係る放射線検出モジュールは、第1主面および前記第1主面と反対側に位置する第2主面を有する支持基板であって、前記第1主面が、第1領域と、前記第1領域を囲んで位置する第2領域とを含む、支持基板と、前記第1主面の第1領域に1次元または2次元に配列された複数の画素であって、各画素がスイッチング素子と、前記スイッチング素子に電気的に接続された光電変換素子とを含む複数の画素と、を備えたアクティブマトリクス基板、および前記複数の画素の光電変換素子を覆って配置されたシンチレータを備え、前記支持基板の前記第1領域における厚さは、前記第2領域における厚さよりも小さい。
【発明の効果】
【0006】
本開示のある実施形態によれば、より高い感度で解像度の高い放射線画像を取得することが可能な放射線検出モジュールおよび放射線検出モジュールの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本実施形態の放射線検出モジュールの構成を示す模式的平面図である。
【
図2】
図2は、
図1のII-II線における放射線検出モジュールの断面図である。
【
図4】
図4は、放射線検出モジュールの回路構成を示す模式図である。
【
図5】
図5は、画素の構造の一例を示す断面図である。
【
図6】
図6は、放射線検出モジュールの動作を説明するための模式図である。
【
図7】
図7は、ガラスの厚さに対するX線の透過率を示す図である。
【
図8】
図8は、本実施形態の放射線検出モジュールの製造方法を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、本実施形態の放射線検出モジュールの製造方法の他の例を示すフローチャートである。
【
図10A】
図10Aは、本実施形態の放射線検出モジュールの製造方法における一工程断面図である。
【
図10B】
図10Bは、本実施形態の放射線検出モジュールの製造方法における一工程断面図である。
【
図10C】
図10Cは、本実施形態の放射線検出モジュールの製造方法における一工程断面図である。
【
図10D】
図10Dは、本実施形態の放射線検出モジュールの製造方法における一工程断面図である。
【
図10E】
図10Eは、本実施形態の放射線検出モジュールの製造方法における一工程断面図である。
【
図11】
図11は、本実施形態の放射線検出モジュールの製造方法における一工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。本開示は、以下の実施形態に限定されず、本開示の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行うことが可能である。また、以下の説明において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、実施形態および他の形態に記載された各構成は、本開示の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよいし、変更されてもよい。説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されていたり、一部の構成部材が省略されていたりする場合がある。各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。「行方向」とは、表示装置の画面の水平方向を意味し、「列方向」とは、表示装置の画面の垂直方向を意味する。
【0009】
本開示の放射線検出モジュールは放射線、例えば、X線を用いたX線撮影装置あるいはX線撮影に用いられるX線FPDに用いられる。
図1は、本実施形態の放射線検出モジュール101の平面図を示し、
図2は、
図1のII-II線における放射線検出モジュールの断面を示す。
【0010】
放射線検出モジュール101は、アクティブマトリクス基板10と、シンチレータ50とを備えている。また、アクティブマトリクス基板10は、支持基板20と、複数の画素を含む画素アレイ30とを含む。
【0011】
画素アレイ30は支持基板20上に形成されている。
図3は、
図1のII-II線における放射線検出モジュール101の断面図である。
【0012】
支持基板20は、第1主面20aおよび第1主面と反対側に位置する第2主面20bを有する。後述するように、第2主面20bが、放射線検出モジュール101における放射線の入射面となる。第1主面20aは、第1主面20aの中心を含み、第1主面20aの中央に位置する第1領域20r1と、第1領域20r1を囲んで位置する第2領域20r2とを含む。
【0013】
第1領域20r1は、例えば矩形形状を有しており、第1領域20r1内に画素アレイ30が位置している。第2領域20r2は第1領域20r1を囲んでおり、第1主面20aの外周に沿って位置している。第2領域20r2は切れ目なく連続して第1領域20r1を囲んでいることが好ましい。
【0014】
支持基板20は、第2主面20bの、第1領域20r1に対応する領域に凹部21を有する。凹部21が設けられていることによって、第1領域20r1における支持基板20の厚さt1は、第2領域20r2における支持基板20の厚さt2よりも小さくなっている。厚さt1は、好ましくは、厚さt2の1/2以下であり、より好ましくは、厚さt1は、厚さt2の1/3以下である。凹部21は、後述するように、ウエットエッチング、ドライエッチング、サンドブラスト、機械的研削又は研磨によって形成され得る。
【0015】
凹部21は底部21bを有している。平面視、つまり、支持基板20の第1主面20aまたは第2主面20bに垂直な方向から見て、底部21bは、第1領域20r1と重なっており、底部21bの外縁と第1領域20r1の外縁は一致している。
図1から
図3に示す例では、底部21bおよび第1領域20r1の矩形形状の4つ角が理想的な点(頂点)で示されている。しかし、矩形の角は丸まっており、明瞭な頂点を有していなくてもよい。
【0016】
図3では、凹部21の4つの側面21sは、第2主面20bに対して垂直であるが、1つまたは複数の側面21sは90°以外の角度で第2主面20bに対して傾斜していてもよい。例えば、側面21sは凹部21の開口21cに面するように傾斜していてもよい。この場合、開口21cが凹部21の底部21bよりも大きい。1つまたは複数の側面21sは凹部21の底部21bに面するように傾斜していてもよい。
【0017】
支持基板20のサイズは、放射線検出モジュール101を用いて作製される放射線FPDの用途および仕様に応じて決定される。例えば、支持基板20は、縦:50mm~500mmおよび横:50mm~500mmの矩形形状を有しており、第1領域20r1は、縦:50mm~430mmおよび横:50mm~430mmの矩形形状を有している。また、第2領域の幅wは5mm~50mmである。支持基板20の第1領域20r1における厚さt1は、例えば0.05mm~0.3mmである。また、第2領域20r2における厚さt2は、例えば0.4mm~0.7mmである。
【0018】
支持基板20は検出すべき放射線をほとんど吸収しない絶縁性の材料によって構成されていることが好ましい。例えば支持基板20は、液晶表示パネルに用いられるガラス基板であってよい。
【0019】
画素アレイ30は、支持基板20の第1領域20r1に配置されている。
図4は、画素アレイ30の回路構成の一例を示す概略的な回路図であり、
図5は画素アレイ30に含まれる1つの画素31の構造の一例を示す断面図である。
【0020】
画素アレイ30は、1次元または2次元に配列された複数の画素31を含む。本実施形態では、複数の画素31は、行方向および列方向に2次元に配置されている。各画素31は、スイッチング素子と、スイッチング素子に電気的に接続された光電変換素子とを含んでいる。スイッチング素子は、例えば、MIM素子、TFTなどの能動素子であり、本実施形態では、画素31は、TFT32を含む。TFT32は、例えば、In、Ga、およびZnからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含む酸化物半導体層、またはSi半導体層を備えている。酸化物半導体層およびSi半導体層は多結晶、微結晶、c軸配向性など種々の結晶性を備えていてもよい。
【0021】
光電変換素子は、後述するシンチレータから発するシンチレーション光を受け取り、光電変換によって電荷を発生させる。光電変換素子は、例えば、半導体層を含み、半導体層にフォトンが入射することによって生成する正孔電子対を分離し得る種々の構造を備えた素子である。本実施形態では、画素31は、フォトダイオード33を含む。フォトダイオード33は、例えば、i型Si半導体層と、i型Si半導体層を挟むp型Si半導体層およびn型Si半導体層とを含む。画素31は、フォトダイオード33で発生した電荷を増幅するアンプ回路をさらに含んでいてもよい。
【0022】
画素アレイ30は、複数の走査線34およびデータ線35を含み、例えば、列方向に並ぶ複数の画素31のTFT32のゲートが1つの走査線34に接続される。また、列方向に並ぶ複数の画素31のTFT32のソースが、1つのデータ線35に接続されている。
【0023】
画素アレイ30において、TFT32、フォトダイオード33、走査線34およびデータ線35など、電気的分離が必要な構成要素間には、種々の絶縁層や層間絶縁膜が配置されている。
図2等では、これらの絶縁層や層間絶縁膜は示されていない。このため、
図2等ではTFT32が支持基板20内に配置されているように示されているが、画素アレイ30の各構成要素は主として支持基板20の第1主面20a上に配置される。
【0024】
放射線検出モジュール101は、さらに、画素アレイ30のドライバである走査線駆動部42と、電荷検出部41とを含む。走査線駆動部42は、基板42dおよび基板42dに設けられた端子42cを含み、基板42d上に、複数の走査線34を順次選択する駆動回路が形成されている。基板42dの、少なくとも端子42cを含む部分が第2領域20r2に位置し、支持基板20に支持されている。走査線駆動部42は、端子42cを介して走査線34に接続され、複数の画素31のTFT32と電気的に接続さている。本実施形態では、走査線駆動部42は、2以上の基板に分割して構成されているが、走査線駆動部42は1つの基板上に構成されていてもよい。
【0025】
同様に、電荷検出部41は、基板41dおよび基板41dに設けられた端子41cを含み、基板41d上に、フォトダイオード33に蓄積した電荷受け取って電気信号に変換する電荷検出回路が形成されている。基板41dの、少なくとも端子41cを含む部分が第2領域20r2に位置し、支持基板20に支持されている。電荷検出部41は、端子41cを介してデータ線35に接続され、複数の画素31のTFT32と電気的に接続さている。本実施形態では、電荷検出部41は、2以上の基板に分割して構成されているが、電荷検出部41は1つの基板上に構成されていてもよい。
【0026】
シンチレータ50は、身体や対象物を透過した放射線が入射することによって、シンチレーション光を発する。シンチレータ50は、複数の画素31の光電変換素子であるフォトダイオード33を覆って配置されている。例えば、シンチレータ50は、シート形状を有しており、OCAなどの接着層51を介して複数の画素31に接合されている。シンチレータ50は蒸着膜であってもよい。
【0027】
シンチレータ50は、利用する放射線に応じた材料によって構成されている。放射線は、X線、α線、γ線などであってよい。医療用あるいは産業用の放射線FPDとしては、X線が広く利用されている。X線を検出するシンチレータ50としては、Tl:CsI(タリウム賦活ヨウ化セシウム)、GOS(酸硫化ガドリニウム)などの単結晶または多結晶材料を用いることができる。
【0028】
図6および
図7を参照しながら、放射線検出モジュール101の動作を説明する。
図6に示すように放射線検出モジュール101で放射線を検出する場合、身体や対象物を透過した放射線Xを、支持基板20の第2主面20b側に入射させる。放射線Xは、支持基板20および第1主面20aに形成された画素アレイ30を透過し、フォトダイオード33に隣接する第2主面50bからシンチレータ50に入射する。シンチレータ50に入射した放射線は、シンチレータ50の構成する物質を励起し、シンチレータ50からシンチレーション光が発する。発生したシンチレーション光をフォトダイオード33が検出し、光電変換によって電荷を生成する。各画素31でフォトダイオード33が生成した電荷は、走査線駆動部42によって制御される読み出し順序で電荷検出部41によって電気信号変換される。放射線検出モジュール101に入射する放射線は、透過した身体や対象物によって部分的に減衰しているため、2次元の強度分布を有しており、生成した電気信号による画像も、身体や対象物に対応した2次元分布を有している。
【0029】
本実施形態の放射線検出モジュール101によれば、放射線Xをフォトダイオード33に隣接する第2主面50bからシンチレータ50に入射させる。このため、発生したシンチレーション光は、シンチレータ50を厚さ方向に透過することなくフォトダイオード33に入射する。これにより、シンチレーション光がシンチレータ50内で減衰したり、拡散したりすることが抑制され、高感度および高解像度の放射線画像を取得すること可能である。
【0030】
このような検出方式を採用する放射線FPDでは、画素アレイを支持する支持基板に放射線を透過させる必要がある。本実施形態の放射線検出モジュール101によれば、画素アレイ30が位置する第1領域20r1では支持基板20の厚さt1が小さくなっているため、支持基板20における放射線の減衰が抑制される。このため、高い感度で放射線を検出することができる。
【0031】
また、支持基板20の外周部分である第2領域20r2の厚さt2が大きくなっているため、第1領域20r1の厚さt1を小さくしつつ、支持基板20の強度を確保することが可能である。さらに、電荷検出部41および走査線駆動部42などのアクティブマトリクス基板10のドライバは、支持基板20の第2領域20r2において、画素アレイ30と接続されている。このため、外部からドライバの基板や接続端子を介して支持基板20に応力が加わる場合でも、支持基板20の第2領域20r2が厚くなっているため、支持基板20の変形や破損が抑制される。
【0032】
図7は、ガラス基板の厚さを異ならせ、透過するX線の透過率を測定した結果の一例を示す。線源には、医療用のX線管を用い、70kVエネルギでX線を照射した。また、ガラス基板にはアルミノホウケイ酸ガラスを用いた。
【0033】
ガラス基板厚さが、0.1、0.2、0.5、0.7mmである場合、ガラス基板がない場合に比べて、透過率は、それぞれ、99.3、98.7、94.6、92.2%であった。このことから、支持基板20を薄くすることによって、支持基板20におけるX線における減衰を抑制でき、高い強度のX線をシンチレータ50に入射できることが分かる。
【0034】
一方、本実施形態の放射線検出モジュール101によれば、第1領域20r1の周囲の第2領域20r2では支持基板20の厚さは大きくなっている。このため、支持基板20の強度を確保し、放射線検出モジュール101の作製中あるいは、完成した放射線検出モジュールを用いてFPDを作製中に、支持基板20が割れたり、欠けたりすることを抑制することができる。また、これらの工程中における放射線検出モジュール101の取り扱いを容易にすることができる。
【0035】
次に放射線検出モジュール101の製造方法を説明する。
図8および
図9は、放射線検出モジュール101の製造方法を示すフローチャートである。また、
図10Aから
図10Eおよび
図11は、放射線検出モジュール101の製造方法の工程断面図である。
【0036】
本実施形態の放射線検出モジュール101の製造方法は、支持基板に複数の画素を形成する工程(A)と、支持基板の一部を第2主面から除去する工程(B)とを備えている。また、シンチレータを配置する工程(C)と、ドライバを実装する工程(D)とをさらに備える。以下、各工程を詳細に説明する。
【0037】
(1)支持基板に複数の画素を形成する工程(A)
図10Aに示すように、支持基板20’を用意する。支持基板20’は、第1主面20aおよび第1主面20aと反対側に位置する第2主面20bを有する。第1主面は、中央部分を含む第1領域20r1と第1領域20r1を囲む第2領域20r2を含んでいる。
【0038】
まず、支持基板20’の第1主面20aに複数の画素31を含む画素アレイ30を形成する(S1,S2)。具体的には、例えば、液晶表示装置に用いられる半導体製造技術を用いて、支持基板20’の第1主面20aの第1領域20r1に、複数のTFT32を形成する(S1)。さらに、
図10Bに示すように、複数のTFT32に接続されたフォトダイオード33を形成する(S2)。その後、支持基板20’が複数の放射線検出モジュール101に対応する集合基板である場合には、個々の放射線検出モジュール101の基板のサイズになるように支持基板20’を分割する(S3)。
【0039】
(2)シンチレータを配置する工程(C)
図10Cに示すように、複数の画素31のフォトダイオード33を覆うようにシンチレータ50を配置する。具体的には、例えば、GOSシート、CsIシートなどのシート状のシンチレータ50を用意し、接着層51を介してフォトダイオード33にシンチレータ50を接着する(S4)。シンチレータ50として蒸着膜を用いる場合には、例えば、CsIの蒸着膜を真空蒸着法によって複数の画素31のフォトダイオード33上に堆積させてもよい。
【0040】
(3)支持基板の一部を前記第2主面から除去する工程(B)
図10Dに示すように、支持基板20’の一部を第2主面20bから除去することによって、第2主面20bの、第1領域20r1に対応する領域に凹部21を形成する(S5)。例えば、第2主面20bに、第1領域20r1と対応する位置および対応する形状の開口を有するマスクをレジストなどによって形成する。その後、ウエットエッチング、ドライエッチング、またはサンドブラストによって、支持基板20’の一部を除去し、凹部21を第2主面20bに形成する。支持基板がガラス基板である場合には、ウエットチングにはフッ酸などのエッチング液を用いることができる。また、ドライエッチングにはフッ素系ガスなどのガスを用いることができる。あるいは、半導体ウエハの研削装置や、半導体装置の製造時に用いられる平坦化用の研磨装置を用いて支持基板20’の一部を除去し、凹部21を形成してもよい。これによって、第1領域20r1における厚さが第2領域20r2における厚さよりも小さい支持基板20が得られる。
【0041】
(4)ドライバを実装する工程(D)
電荷検出部41および走査線駆動部42を用意し、走査線駆動部および電荷検出部を支持基板20の第1主面20aの第2領域20r2に実装する(S6)。
図10Eに示すように、電荷検出部41の端子41cおよび走査線駆動部42の端子42cを、支持基板20の第2領域20r2において、複数の走査線34およびデータ線35と電気的に接続する。端子41cおよび端子42cが、第1領域20r2よりも厚くなっている第2領域20r2に接続されることによって、これらドライバを接続する際に、支持基板20に加えられる上から押さえる力に対する強度を確保することができる。これにより、電荷検出部41および走査線駆動部42が複数の画素31のTFT32に電気的に接続される。これによって放射線検出モジュール101が完成する(S7)。
【0042】
(5)筐体への組み込み
その後、放射線検出モジュール101を筐体に組み込むことによって、放射線FPDが完成する。
【0043】
本実施形態の放射線検出モジュール101の製造方法によれば、画素アレイ30を支持基板20’に形成し、シンチレータ50を配置した後に、支持基板20’の一部を除去する。このため、画素アレイ30の形成およびシンチレータ50の配置の際、支持基板20’が割れたり欠けたりすることが抑制される。また、画素アレイ30の形成時には、支持基板は均一な厚さを有しているため、画素アレイ30の形成時に支持基板20’が加熱および冷却されても、支持基板20’全体が均一に膨張および収縮するため、支持基板20’が変形したり、形成する画素アレイ30の構造に応力が生じたりすることが抑制される。
【0044】
また、凹部21が形成された支持基板20は、第2領域20r2での厚さが大きくなっているため、電荷検出部41および走査線駆動部42が実装される際にも適切な機械的強度が確保されており、支持基板20が割れたり欠けたりすることが抑制される。
【0045】
なお、上記実施形態では、シンチレータ50の形成後に支持基板の一部を除去しているが、シート状のシンチレータ50を用いる場合には、シンチレータ50の形成後に、支持基板の一部を除去してもよい。具体的には、
図9および
図11に示すように、フォトダイオード33を第1領域20r1に形成した後、支持基板20’の一部を第2主面20bから除去することによって、第2主面20bの、第1領域20r1に対応する領域に凹部を形成してもよい(S4’)。その後、複数の画素31のフォトダイオード33を覆うようにシンチレータ50を配置してもよい(S5’)。この場合、シンチレータ50の形成にはシート状のシンチレータを用いることが好ましい。
【0046】
本開示の放射線検出モジュールおよび放射線検出モジュールの製造方法は上記実施形態に限られず種々の改変が可能である。例えば、支持基板20および凹部21の形状、画素アレイの回路構成などは上記実施形態に限られない。また、放射線検出モジュールの製造方法において複数の工程を組み合わせて行ってもよいし、逆に1つの工程を2以上の工程に分割してもよい。
【0047】
本開示の放射線検出モジュールおよび放射線検出モジュールの製造方法は、以下のようにも説明することができる。
【0048】
第1の構成に係る放射線検出モジュールは、アクティブマトリクス基板とシンチレータとを備える。アクティブマトリクス基板は、第1主面および第1主面と反対側に位置する第2主面を有する支持基板であって、第1主面が、第1領域と、第1領域を囲んで位置する第2領域とを含む、支持基板と、第1主面の第1領域に1次元または2次元に配列された複数の画素であって、各画素がスイッチング素子と、スイッチング素子に電気的に接続された光電変換素子とを含む複数の画素と、を備える。シンチレータは、複数の画素の光電変換素子を覆って配置されている。支持基板の第1領域における厚さは、第2領域における厚さよりも小さい。
【0049】
第1の構成に係る放射線検出モジュールによれば、放射線を第2主面から入射させることによって、シンチレーション光がシンチレータを厚さ方向に透過することなく光電変換素子に入射する。このため、シンチレーション光のシンチレータ内での減衰および拡散が抑制され、高感度および高解像度の放射線画像を取得すること可能である。また、複数の画素が位置する第1領域では支持基板の厚さが小さくなっているため、支持基板における放射線の減衰が抑制され、高い放射線の検出感度を達成し得る。また、支持基板の外周部分である第2領域20r2の厚さが大きくなっているため、第1領域の厚さを小さくしつつ、支持基板全体の強度を確保することが可能である。
【0050】
第2の構成に係る放射線検出モジュールは、第1の構成において、第2領域が、支持基板の第1主面において外周に沿って位置していてもよい。
【0051】
第3の構成に係る放射線検出モジュールは、第1または第2の構成において、支持基板の第1領域における厚さが、第2領域における厚さの1/2以下であってもよい。
【0052】
第4の構成に係る放射線検出モジュールは、第1~第3の構成において、支持基板が、第2主面の、第1領域に対応する領域に凹部を有していてもよい。
【0053】
第5の構成に係る放射線検出モジュールは、第1~第4の構成において、複数の画素のスイッチング素子に電気的に接続された走査線駆動部と、複数の画素のスイッチング素子に電気的に接続された電荷検出部と、をさらに備え、走査線駆動部の少なくとも一部および電荷検出部の少なくとも一部は、支持基板の第1主面の第2領域に位置していてもよい。走査線駆動部および電荷検出部の少なくとも一部が支持基板の第2領域に配置されていることによって、外部から走査線駆動部および電荷検出部の基板や接続端子を介して支持基板20に応力が加わる場合でも、支持基板の変形や破損が抑制される。
【0054】
第6の構成に係る放射線検出モジュールは、第1~第5の構成において、支持基板の第2主面が、放射線の入射面であってもよい。
【0055】
第7の構成に係る放射線検出モジュールは、第1~第6の構成において、各画素が、光電変換素子で発生した電荷を増幅するアンプ回路をさらに含んでいてもよい。
【0056】
第8の構成に係る放射線検出モジュールの製造方法は、第1主面および第1主面と反対側に位置する第2主面を有する支持基板であって、第1主面が、第1領域と、第1領域を囲んで位置する第2領域とを含む支持基板の第1領域に、それぞれがスイッチン素子および光電変換素子を含む複数の画素を形成する工程(A)と、支持基板の一部を第2主面から除去することによって、第2主面の、第1領域に対応する領域に凹部を形成し、支持基板の第1領域における厚さを、第2領域における厚さよりも小さくする工程(B)と、を備える。
【0057】
第8の構成にかかる放射線検出モジュールの製造方法によれば、画素アレイの形成およびシンチレータの配置の際、支持基板が割れたり欠けたりすることが抑制される。また、画素アレイの形成時には、支持基板は均一な厚さを有しているため、画素アレイの形成時に支持基板が加熱および冷却されても、支持基板全体が均一に膨張および収縮し、支持基板が変形したり、形成する画素アレイの構造に応力が生じたりすることが抑制される。
【0058】
第9の構成に係る放射線検出モジュールの製造方法は、第8の構成において、工程(B)の前に、複数の画素の光電変換素子を覆うようにシンチレータを配置する工程(C)をさらに備えていてもよい。
【0059】
第10の構成に係る放射線検出モジュールの製造方法は、第8の構成において、工程(B)の後に、複数の画素の光電変換素子を覆うようにシンチレータを配置する工程(C)をさらに備えていてもよい。
【0060】
第11の構成に係る放射線検出モジュールの製造方法は、第9または第10の構成において、工程(C)において、シンチレータはシート形状を有しており、シート状のシンチレータを、接着層を介して複数の画素に接合してもよい。
【0061】
第12の構成に係る放射線検出モジュールの製造方法は、第9の構成において、工程(C)において、シンチレータの材料を蒸着によって複数の画素上に堆積させ、シンチレータを形成してもよい。
【0062】
第13の構成に係る放射線検出モジュールの製造方法は、第8~第10の構成において、工程(B)の後に、走査線駆動部および電荷検出部を支持基板の第1主面の第2領域に実装し、走査線駆動部および電荷検出部を複数の画素のスイッチング素子に電気的に接続する工程(D)をさらに備えていてもよい。電荷検出部および走査線駆動部が支持基板の第2領域に配置されていることによって、電荷検出部及び走査線駆動部の実装時に支持基板の変形や破損が抑制される。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本開示の放射線検出モジュールおよび放射線検出モジュールの製造方法は、種々の分野に好適に利用可能であり、医療用のX線FPDなどに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0064】
10…アクティブマトリクス基板、20、20’…支持基板、20a…第、主面、20b…第2主面、20r1…第1領域、20r2…第2領域、21…凹部、21b…底部、21c…開口、21s…側面、30…画素アレイ、31…画素、32…TFT、33…フォトダイオード、34…走査線、35…データ線、41…電荷検出部、41c,42d…端子、41d,d…基板、42…走査線駆動部、50…シンチレータ、51…接着層、101…放射線検出モジュール