(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151296
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】搬送装置及び搬送方法
(51)【国際特許分類】
B65H 29/28 20060101AFI20231005BHJP
B65G 61/00 20060101ALI20231005BHJP
B65G 47/90 20060101ALN20231005BHJP
【FI】
B65H29/28
B65G61/00
B65G47/90 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060843
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000223193
【氏名又は名称】東罐興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 充広
(74)【代理人】
【識別番号】100171848
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 裕美
(72)【発明者】
【氏名】中山 健
(72)【発明者】
【氏名】馬込 礼貴
(72)【発明者】
【氏名】山口 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】阿部 裕
(72)【発明者】
【氏名】加藤 琢也
【テーマコード(参考)】
3F072
3F106
【Fターム(参考)】
3F072AA28
3F072GD06
3F072GG03
3F072KD01
3F106AA02
3F106AA05
3F106AB01
3F106AC21
3F106CA02
3F106CA04
3F106CA12
3F106CA13
3F106LA16
3F106LB01
(57)【要約】
【課題】対象物を傷つけることなく精度よく移載すること。
【解決手段】搬送装置100は、対象であるブランク・バッチBBを下方から支持する載置部材18と、載置部材18を移動させる移動機構14,15と、対象であるブランク・バッチBBの移載開始する箇所で、載置部材18を下方向と水平方向とに移動させることによって、ブランク・バッチBBを落下させつつ、載置部材18をブランク・バッチBBの下方から退避させる制御装置40とを備える。これにより、載置部材18からブランク・バッチBBに付与される力を低減しつつブランク・バッチBBの移載を行うことができ、ブランク・バッチBBを傷つけることなく精度よく移載することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移載する対象を下方から支持する載置部材と、
前記載置部材を移動させる移動機構と、
前記対象の移載開始する箇所で、前記載置部材を下方向と水平方向とに移動させることによって、前記対象を落下させつつ、前記載置部材を前記対象の下方から退避させる制御装置とを備える搬送装置。
【請求項2】
前記移動機構は、前記対象の移載を開始する箇所で重力加速度よりも大きな加速度で前記載置部材を降下させる、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記移動機構は、前記載置部材を降下させる上下移動機構と、前記載置部材を後退させる前後移動機構とを有する、請求項1及び2のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記上下移動機構は、前記前後移動機構による退避動作よりも早いタイミングで動作を開始する、請求項3に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記移動機構は、前記対象を上方から支持する上側支持部材を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記載置部材及び前記移動機構の配置を変化させる駆動機構をさらに有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項7】
移載する対象を下方から支持する載置部材と、前記載置部材を移動させる移動機構とを備える搬送装置を用いた搬送方法であって、
前記対象の移載開始する箇所で、前記対象を落下させつつ、前記載置部材を下方向と水平方向とに移動させることによって、前記載置部材を前記対象の下方から退避させる搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象を搬送する搬送装置及び搬送方法に関し、特に多数の要素を積層した対象を移載する搬送装置及び搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物として紙コップのブランクを移載する様々な搬送装置が公知となっている(例えば、特許文献1参照)。この種の搬送装置では、スタックされたブランクから個々のブランクを取り出して加工位置まで搬送することが行われる。
【0003】
上記のような搬送装置は、スタックされたブランクから個々のブランクを取り出して搬送するものであり、スタックされたブランク・バッチを全体として精度よく搬送するものではない。なお、スタックされたブランク・バッチを搬送する方法として、ブランク・バッチをロボットハンドで上下から挟んで搬送する方法も考えられるが、ブランク・バッチを別の個所にスタックする場合、既にスタックされているブランク・バッチやこれからスタックするブランク・バッチを傷つけることなく移載することは容易でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、スタックされている対象を傷つけることなく精度よく移載することができる搬送装置及び搬送方法を提供することを目的とする。
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る搬送装置は、移載する対象を下方から支持する載置部材と、載置部材を移動させる移動機構と、対象の移載開始する箇所で、載置部材を下方向と水平方向とに移動させることによって、対象を落下させつつ、載置部材を対象の下方から退避させる制御装置とを備える。ここで、水平方向は、載置部材を対象からより遠い背後から見て前後左右の方向に相当する。移動機構の構造にもよるが、水平方向は、通常は退避の容易性から移動機構の後方を意味するが、これに限るものではない。
【0007】
本発明の搬送装置によれば、制御装置が、対象を落下させつつ、載置部材を下方向と水平方向とに移動させることによって、載置部材を対象の下方から退避させるので、載置部材から対象に付与される力を低減しつつ対象の移載を行うことができ、対象を傷つけることなく精度よく移載することができる。
【0008】
本発明の具体的な側面において、移動機構は、対象の移載を開始する箇所で重力加速度よりも大きな加速度で載置部材を降下させる。この場合、対象に力を付与することなく載置部材を対象から完全に離間させることができ、対象を傷つける可能性をより低減することができる。
【0009】
本発明の別の側面において、移動機構は、載置部材を降下させる上下移動機構と、載置部材を後退させる前後移動機構とを有する。この場合、上下移動機構によって、対象を落下させつつ、前後移動機構によって、載置部材と対象の下方の物体との干渉を回避することができる。
【0010】
本発明のさらに別の側面において、上下移動機構は、前後移動機構による退避動作(具体的には後退動作)よりも早いタイミングで降下動作を開始する。この場合、対象の落下を先行させ、載置部材の上面と対象の下面とが擦れることを確実に回避することができる。
【0011】
本発明のさらに別の側面において、移動機構は、対象を上方から支持する上側支持部材を有する。この場合、載置部材と上側支持部材との間に対象を挟むことができ、載置部材を小型に保ちつつ対象の保持を安定化することができる。
【0012】
本発明のさらに別の側面において、載置部材及び移動機構の配置を変化させる駆動機構をさらに有する。
【0013】
上記課題を解決するため、本発明に係る搬送方法は、移載する対象を下方から支持する載置部材と、載置部材を移動させる移動機構とを備える搬送装置を用いた搬送方法であって、対象の移載開始する箇所で、対象を落下させつつ、載置部材を下方向と水平方向とに移動させることによって、載置部材を対象の下方から退避させる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る搬送装置の一実施形態を説明する図である。
【
図2】(A)は、ブランク・バッチを説明する概念的な斜視図であり、(B)は、胴ブランク等を説明する概念図である。
【
図3】把持装置における第1~第3移動機構の動作状態を説明する側面図である。
【
図4】(A)は、集積用のパレットを説明する平面図であり、(B)は、パレットを説明する側面図である。
【
図5】搬送装置によるブランク・バッチの移載を説明する斜視図である。
【
図7】降下開始後の載置部材の支持面位置と、ブランク・バッチの下面位置との関係を説明する図である。
【
図8】(A)~(C)は、把持装置からパレットへの移載動作を例示する図である。
【
図9】(A)~(C)は、把持装置からパレットへの移載動作を例示する図である。
【
図10】(A)~(D)は、受取ステージから把持装置への受取動作を例示する図である。
【
図11】変形例の把持装置を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明に係る搬送装置の一実施形態を示している。
図1中において、紙面に垂直な方向をX方向とし、紙面に沿った左右をY方向とし、紙面に沿った上下を鉛直方向に相当するZ方向とする。
【0016】
搬送装置100は、対象であるブランク・バッチBBを所定ルートで搬送しパレットに移載する装置であり、把持装置10と、アーム装置20と、制御装置40とを備える。
【0017】
図2(A)に示すように、搬送や移載の対象であるブランク・バッチBBは、例えば紙コップ用の胴ブランク91を多数スタックした積層体である。ブランク・バッチBBは、扇形形状に対応する輪郭を有する。ブランク・バッチBBは、元になる原紙から切り抜かれたものである。ブランク・バッチBBは、一方面にポリエチレン等の樹脂コートが施され、他方面に印刷が施されている。このため、ブランク・バッチBBを搬送する際には、上面や下面に摩擦によって掻き傷が形成されることを回避することが望ましい。なお、
図2(B)に示すように、胴ブランク91は、円形の底紙92と組み合わせることで、円錐台状の外形を有する紙コップ(不図示)の製造を可能にする。
【0018】
ブランク・バッチBBは、10cm~数10cmの厚みを有する。ブランク・バッチBBを構成する胴ブランク91は、弧に垂直な方向に10cm~数10cm程度の幅を有する薄いシートである。
【0019】
搬送装置100による搬送及び移載の対象は、紙コップ用のブランク・バッチBBに限らず、様々な紙製又はプラスチック製のシートの積層体とすることができ、搬送装置100によってブロック状の製品又は半製品を搬送することもできる。
【0020】
図1に戻って、把持装置10は、上部支持体11と、第1移動機構13と、第2移動機構14と、第3移動機構15と、上側支持部材17と、載置部材18と、連結部材19とを備える。
【0021】
上部支持体11は、アーム装置20から延びる支持体21に支持されて3次元的に移動する。上部支持体11は、第1移動機構13及び第2移動機構14を支持している。
【0022】
第1移動機構13は、箱状の輪郭を有し、上部支持体11の側部に固定されている。第1移動機構13は、具体的にはエアシリンダであり、上側支持部材17をZ方向に平行な上下方向に昇降させる。第1移動機構13によって上側支持部材17を降下させることにより、上側支持部材17と載置部材18との間にブランク・バッチBBを挟んで固定することができ、ブランク・バッチBBの安定した搬送が可能になる。第1移動機構13の動作タイミングや動作量は、アーム装置20を介して制御装置40によって制御されている。
【0023】
第2移動機構14は、箱状の輪郭を有し、上部支持体11の下部に固定されている。第2移動機構14は、具体的にはエアシリンダであり、連結部材19を介して第3移動機構15を水平方向であって前後の±Y方向に進退させる。第2移動機構14は、移載に際して載置部材18を後退させる前後移動機構である。第2移動機構14によって第3移動機構15を+Y方向に前進させることで、第3移動機構15に支持された載置部材18を上部支持体11の直下に配置することができる。また、第2移動機構14によって第3移動機構15を-Y方向に後退させることで、載置部材18を上部支持体11の直下から後退した状態とすることができる。第2移動機構14の動作タイミングや動作量は、アーム装置20を介して制御装置40によって制御されている。
【0024】
第3移動機構15は、箱状の輪郭を有し、L字状の連結部材19を介して第2移動機構14に支持されている。第3移動機構15は、具体的にはエアシリンダであり、載置部材18を上下の±Z方向に昇降させる。第3移動機構15は、移載に際して載置部材18を降下させる上下移動機構である。第3移動機構15によって載置部材18を降下させることにより、上部支持体11と載置部材18との間に挟まれたブランク・バッチBBから載置部材18を離間させることができる。載置部材18を重力加速度9.8m/s2よりも大きな加速度で降下させることにより、ブランク・バッチBBの落下を防止すべくブランク・バッチBBを他の部材によって下方から支持させなくても、ブランク・バッチBBから載置部材18を離間させることができ、ブランク・バッチBBと載置部材18との干渉を回避することができる。第3移動機構15の動作タイミングや動作量は、アーム装置20を介して制御装置40によって制御されている。
【0025】
上側支持部材17は、第1移動機構13に駆動されて上下の±Z方向に昇降する。上側支持部材17は、ブランク・バッチBBの上面Baに当接してブランク・バッチBBの上方からの把持を可能にする。上側支持部材17の押圧面17aは、平面となっているが、支持突起やエンボスを形成することができる。
【0026】
載置部材18は、第2移動機構14に駆動されて前後の±Y方向に進退し、第3移動機構15に駆動されて上下の±Z方向に昇降する。載置部材18は、ブランク・バッチBBの下面Bbに当接してブランク・バッチBBの下方からの把持を可能にする。載置部材18の支持面18aは、平面となっているが、支持突起やエンボスを形成することができる。載置部材18の下面18cは、後述する引き抜き動作を容易にするため、載置部材18が先端部18tに向けて肉薄になるように傾斜している。また、先端部18tの上面には、面取り部18fが形成されており、先端部18tがブランク・バッチBBの下面Bbに掻き傷を形成することを防止する。
【0027】
図3を参照して、第1移動機構13に駆動されて動作位置P11にある上側支持部材17が実線で示され、退避位置P12にある上側支持部材17が一点鎖線で示されている。動作位置P11にある上側支持部材17の押圧面17aは、ブランク・バッチBBの上面Baに当接して所定の力でブランク・バッチBBを下方に付勢する。
【0028】
第2移動機構14及び第3移動機構15に駆動されて動作位置P21にある載置部材18が二点鎖線で示され、退避位置P22にある載置部材18が実線で示されている。動作位置P21にある載置部材18の支持面18aは、ブランク・バッチBBの下面Bbに当接してブランク・バッチBBを下方から支持する。
【0029】
図4(A)及び4(B)は、搬送装置100によるブランク・バッチBBの搬送先を説明する図である。ブランク・バッチBBは、原紙から胴ブランク91を切り抜きつつ多数スタックしたものであり(
図2(A)参照)、一定数の胴ブランク91のスタックが完了した段階で、ブランク・バッチBBとして集積用のパレット60に順次搬送される。パレット60は、水平方向に延びる支持盤62上に鉛直方向に延びる多数のガイドロッド63を立設したものである。パレット60上には、複数のブランク・バッチBBを積み上げた集積ブランクIBを配置するための配置領域PAが2次元的に形成されている。複数の配置領域PAは、ガイドロッド63によって区分されている。図示の例では、集積ブランクIBが6つのガイドロッド63によって周囲から倒れないように支持されている。ガイドロッド63により、パレット60上において、複数の集積ブランクIBをX方向及びY方向に安定して配列することができる。
【0030】
図4(A)等の紙面左側である-Y側の端の配置領域PAにおいては、単一のブランク・バッチBBが移載されており、搬送装置100の把持装置10によって次のブランク・バッチBB'が追加で移載されつつある。
【0031】
図5は、搬送装置100の把持装置10によって、最下段のブランク・バッチBB上に次のブランク・バッチBB'を移載する様子を示す斜視図である。搬送装置100はブランク・バッチBB'を保持する把持装置10を配置領域PAの上方から降下させ、最下段のブランク・バッチBBの直上方の所定高さ位置において、載置部材18を-Z方向に重力加速度より大きな加速度で降下させつつ-Y方向に同様の加速度で後退させることで、移載中の次のブランク・バッチBB'の下方から載置部材18を退避させ、ブランク・バッチBB'を直下のブランク・バッチBB上に積み重ねることができる。なお、
図5は、概念図であり、複数の配置領域PAがY方向に配列されている状態のみを示しているが、複数の配置領域PAは、X方向にも配列される。
【0032】
図1に戻って、アーム装置20は、支持体21を介して把持装置10を支持している。アーム装置20は、3軸の移動や3軸の回転を可能にする駆動機構22を有し、把持装置10を3次元的に移動させ、把持装置10の姿勢を自在に変化させることができる。アーム装置20は、アーム装置20自体を3次元的に移動させる移動装置を有していてもよい。アーム装置20は、制御装置40の制御下で動作し、把持装置10の配置や姿勢を任意の軌跡及び速度で変化させることができ、把持装置10の第1~第3移動機構13~15を任意のタイミングで動作させることができる。
【0033】
制御装置40は、コンピュータであり、プログラムやオペレータの指示に従ってアーム装置20の動作状態を管理し、アーム装置20を介して把持装置10の動作を管理する。これにより、用意されたブランク・バッチBBをパレット60に搬送し、パレット60上の複数の配置領域PAに移載しつつ各配置領域PAに複数段のブランク・バッチBBを積み重ねることを可能にする。
【0034】
図6は、搬送装置100の動作を説明する工程図である。まず、搬送装置100は、アーム装置20を複数の受取ステージに移動させて、アーム装置20及び把持装置10を適宜動作させることによりブランク・バッチBBを受け取る(ステップS11)。次に、搬送装置100は、アーム装置20及び把持装置10をパレット60の設置個所に移動させる(ステップS12)。次に、搬送装置100は、アーム装置20を介して把持装置10を移動させ、把持したブランク・バッチBB'を移載すべき配置領域PAの上方に位置決めする(ステップS13)。次に、搬送装置100は、把持装置10を降下させ、把持したブランク・バッチBB'を直下のブランク・バッチBBに対して所定距離だけ離間させた放置位置に配置する(ステップS14)。放置位置は、ブランク・バッチBB'に移載を開始する位置である。その後、搬送装置100は、把持装置10の第1移動機構13を動作させ、上側支持部材17を退避動作させる。これと同期して、搬送装置100は、把持装置10の第2移動機構14及び第3移動機構15を動作させ、載置部材18を退避動作させ、把持したブランク・バッチBB'を放す(ステップS15)。この際、載置部材18は、第3移動機構15に駆動されて-Z方向に重力加速度より大きな加速度で降下し、第2移動機構14に駆動されて-Y方向に同様の加速度で後退する。つまり、載置部材18は、上部支持体11に対する相対的な配置として、動作位置P21から退避位置P22に移動する。結果的に、載置部材18を第3移動機構15によって下方向に移動させ、載置部材18を第2移動機構14によって後方(つまり水平方向)に移動させることになる。載置部材18の自由落下によるブランク・バッチBB'の落下の遅延を利用した退避により、ブランク・バッチBB'を直下のブランク・バッチBB上に非接触的な工程で積み重ねることができる。
【0035】
図7は、降下開始後の載置部材18の支持面18aの位置と、ブランク・バッチBB'の下面Bbの位置との関係を示している。強制落下する載置部材18の支持面18aの位置(二点鎖線)は、自由落下するブランク・バッチBB'の下面Bbの位置(実線)よりも常に下になっている。載置部材18の支持面18aを示す二点鎖線において終端点PEは、載置部材18が十分に後退し、載置部材18がブランク・バッチBB'の下方から外れて相互に干渉しなくなり、退避が完了したことを意味する。
【0036】
図3及び4を参照して、載置部材18の第3移動機構15による後退の加速度や速度は、載置部材18が並行して同時に降下する際に下のブランク・バッチBBの上面Baと干渉しないように、十分な大きさに設定することが望ましい。具体的には、第2移動機構14及び第3移動機構15が動作を開始した後に、載置部材18が所定の加速度で後退して支持面18aの有効支持長dがブランク・バッチBBの下面Bbから外れる退避時間がTrとした場合に、この退避時間Trで、載置部材18が下方に移動する量、つまり載置部材18の下方への移動速度の積分値や、載置部材18の下方への移動加速度の2階積分値である移動距離Ltは、ブランク・バッチBB,BB'の間隔Dから載置部材18の先端部の厚みhを差し引いた値Ls=D-h以下とする。これにより、動作位置P21から動作位置P22に移動する載置部材18が下のブランク・バッチBBの上面Baと接触することを回避することができる。また、載置部材18の第2移動機構14による後退開始のタイミングは、載置部材18の第3移動機構15による降下開始のタイミングよりも若干遅らせる。つまり、上下移動機構である第3移動機構15は、前後移動機構である第2移動機構14よりも早いタイミングで動作を開始する。つまり、降下動作は、退避動作(具体的には後退動作)よりも早いタイミングで開始する。これにより、把持したブランク・バッチBB'と載置部材18との接触が当初から或いは早期に解消され、載置部材18の後退によってブランク・バッチBB'の下面Bbに摩擦力が加えられて下面Bbにキズが発生することを防止できる。なお、載置部材18がブランク・バッチBB'に追いつかれないように動作するという意味では、載置部材18の加速度の加速度が重力加速度よりも一時的に低下してもよい。
【0037】
図8及び9は、把持装置10からパレット60への移載動作を具体的に例示する側面図である。
図8(A)に示すように、
図1に示す制御装置40の制御下で把持装置10を移動させ、把持したブランク・バッチBB'を移載すべき配置領域PAの上方に位置決めする。次に、
図8(B)に示すように、制御装置40の制御下で把持装置10を降下させ、把持したブランク・バッチBB'を直下のブランク・バッチBBに対して所定距離だけ離間させた放置位置に配置する。次に、
図8(C)に示すように、搬送装置100は、把持装置10の第1移動機構13を動作させ、上側支持部材17を上方に移動させ上側支持部材17に退避動作を行わせる。次に、
図9(A)に示すように、搬送装置100は、把持装置10の第3移動機構15を動作させ、載置部材18の下方への移動を開始させる。次に、
図9(B)に示すように、搬送装置100は、把持装置10の第3移動機構15の動作を継続しつつ第2移動機構14を動作させ、載置部材18の後方への移動を開始させる。この際、載置部材18に支持されていたブランク・バッチBB'は自由落下するが、載置部材18の降下速度の方が早く、載置部材18は、ブランク・バッチBB'から離間したままで、動作位置P21から退避位置P22に移動する。その後、
図9(C)に示すように、把持装置10から放されたブランク・バッチBB'は、自由落下し、直下のブランク・バッチBB上に積み重ねられる。
【0038】
図10(A)~10(D)は、受取ステージ80から把持装置10への受取動作を具体的に例示する側面図である。
図10(A)に示すように、
図1に示す制御装置40の制御下で把持装置10を移動させ、受取ステージ80の前に位置決めする。受取ステージ80上には、ブランク・バッチBB'が載置され、ガイドロッド83によって水平方向に関する位置決めがなされている。なお、把持装置10をブランク・バッチBB'の前に位置決めする準備段階で、上側支持部材17は、第1移動機構13に駆動されて、上方の退避位置に移動させられている。次に、
図10(B)に示すように、制御装置40の制御下で把持装置10を前進させ、載置部材18をブランク・バッチBB'の下方に挿入する。受取ステージ80には、載置部材18を挿入するスリット81が形成されている。その後、
図10(C)に示すように、第1移動機構13を動作させ、上側支持部材17を下方の動作位置に移動させる。これにより、上側支持部材17と載置部材18との間に適切な力でブランク・バッチBB'を挟むことができ、把持装置10によってブランク・バッチBB'を安定した状態で把持することができる。その後、
図10(D)に示すように、把持装置10を上昇させることにより、これに把持されたブランク・バッチBB'をガイドロッド83と干渉が生じなくなるまで上昇させる。その後、把持装置10は、ブランク・バッチBB'をパレット60の設置個所に移動させる。
【0039】
図11は、図等に示す把持装置10の変形例を示している。この場合、第2移動機構14が省略され、第3移動機構215は、載置部材18を斜め方向に移動させる。載置部材18が斜め下方向の後方に移動すると、載置部材18によるブランク・バッチBB'の支持が解除され、かつ、載置部材18の後方退避も達成される。なお、第3移動機構15は、載置部材18を並進移動させるものに限らず、載置部材18を根元側で回転させるようなものであてってもよい。
【0040】
以上で説明した実施形態の搬送装置100は、移載する対象であるブランク・バッチBBを下方から支持する載置部材18と、載置部材18を移動させる移動機構14,15と、対象であるブランク・バッチBBの移載開始する箇所で、載置部材18を下方向と水平方向とに移動させることによって、ブランク・バッチBBを落下させつつ、載置部材18をブランク・バッチBBの下方から退避させる制御装置40とを備える。
【0041】
上記搬送装置100によれば、制御装置40が、対象であるブランク・バッチBBを落下させつつ、載置部材18を下方向と水平方向具体的には後方とに移動させることによって、載置部材18を対象の下方から退避させるので、載置部材18からブランク・バッチBBに付与される力を低減しつつブランク・バッチBBの移載を行うことができ、ブランク・バッチBBを傷つけることなく精度よく移載することができる。
【0042】
以上で説明した実施形態の搬送装置100において、第3移動機構15は、ブランク・バッチBBの移載を開始する箇所で重力加速度よりも大きな加速度で載置部材18を降下させる。この場合、ブランク・バッチBBに力を付与することなく載置部材18をブランク・バッチBBから完全に離間させることができ、ブランク・バッチBBを傷つける可能性をより低減することができる。
【0043】
以上で説明した実施形態の搬送装置100は、例示であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0044】
第2移動機構14は、第3移動機構15を左右つまり±X方向に移動させるものであってもよい。この場合、ブランク・バッチBBの後方ではなく左右の一方に載置部材18等のための退避スペースを確保する必要がある。
【0045】
第1~第3移動機構13~15は、エアシリンダを用いたものであるが、エアシリンダに代えて電動モータ等を用いることができる。
【0046】
搬送装置100による搬送対象は、紙製の胴ブランク91を積層したブランク・バッチBB'に限らず、樹脂シートを積層したシート積層体であってもよい。また、搬送装置100による搬送対象は、シート積層体に限らず、カップ状の容器を積層した容器積層体であってもよい。
【符号の説明】
【0047】
10…把持装置、13…第1移動機構、14…第2移動機構、15…第3移動機構、17…上側支持部材、17a…押圧面、18…載置部材、18a…支持面、18f…面取り部、20…アーム装置、22…駆動機構、40…制御装置、60…パレット、80…受取ステージ、91…胴ブランク、100…搬送装置、BB,BB,BB'…ブランク・バッチ、IB…集積ブランク、P11…動作位置、P12…退避位置、P21…動作位置、P22…退避位置、PA…配置領域