(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151299
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】管制システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20231005BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20231005BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G08G1/00 X
G08G1/09 V
G08G1/16 D
G08G1/09 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060850
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 充広
(74)【代理人】
【識別番号】100181146
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 啓
(72)【発明者】
【氏名】鹿子田 嵩大
(72)【発明者】
【氏名】星 悠太郎
(72)【発明者】
【氏名】青木 芳憲
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA20
5H181AA27
5H181CC01
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF05
5H181FF13
5H181FF22
5H181FF27
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
5H181LL15
5H181MB02
5H181MB06
(57)【要約】
【課題】 道路に沿って設けられた情報収集設備を利用して、自動運転車両の自動運転と遠隔操縦との切り替えを安全かつ円滑に行うことができる管制システムを提供すること。
【解決手段】管制システム100は、自動運転車両VEと通信し周囲を監視する路側機PVと、路側機PVを監視する路側機監視システム50と、自動運転車両VEを遠隔操縦する遠隔操縦システム60と、路側機監視システム50から路側機PVの監視結果を取得し、監視結果から自動運転及び遠隔操縦の切り替え判断を行い、遠隔操縦に切り替えると判断した場合、遠隔操縦システム60に自動運転車両VEの遠隔操縦を指示する運行管理システム70と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転車両と通信し周囲を監視する路側機と、
前記路側機を監視する路側機監視システムと、
前記自動運転車両を遠隔操縦する遠隔操縦システムと、
前記路側機監視システムから前記路側機の監視結果を取得し、前記監視結果から自動運転及び遠隔操縦の切り替え判断を行い、前記遠隔操縦に切り替えると判断した場合、前記遠隔操縦システムに前記自動運転車両の遠隔操縦を指示する運行管理システムと、
を備える管制システム。
【請求項2】
前記運行管理システムは、前記自動運転車両と通信し、前記自動運転車両から異常情報を取得した場合、前記遠隔操縦システムに前記自動運転車両の遠隔操縦を指示する、請求項1に記載の管制システム。
【請求項3】
前記路側機は、前記自動運転車両の進行経路を含む検知領域を監視する路側機センサを有し、前記路側機センサが前記自動運転車両の前記進行経路上に障害物を検知した場合、前記路側機監視システムに障害物情報を通知し、
前記路側機監視システムは、前記路側機の前記監視結果として前記障害物情報を前記運行管理システムに通知し、
前記運行管理システムは、前記障害物情報により前記自動運転から前記遠隔操縦に切り替えると判断する、請求項1及び2のいずれか一項に記載の管制システム。
【請求項4】
前記路側機は、前記自動運転車両の進行経路を含む検知領域を監視する路側機センサを有し、前記路側機センサが故障した場合、前記路側機監視システムに前記路側機センサの故障情報を通知し、
前記路側機監視システムは、前記路側機の前記監視結果として前記故障情報を前記運行管理システムに通知し、
前記運行管理システムは、前記故障情報により前記自動運転から前記遠隔操縦に切り替えると判断する、請求項1及び2のいずれか一項に記載の管制システム。
【請求項5】
前記路側機監視システムは、前記自動運転車両の進行経路を含む検知領域を監視する前記路側機との通信が途絶えた場合、前記路側機の前記監視結果として前記路側機の通信断情報を前記運行管理システムに通知し、
前記運行管理システムは、前記通信断情報により前記自動運転から前記遠隔操縦に切り替えると判断する、請求項1及び2のいずれか一項に記載の管制システム。
【請求項6】
前記自動運転車両は、前記自動運転車両の進行経路を含む検知領域を監視する前記路側機との通信が途絶えた場合、前記異常情報として前記路側機の通信断情報を前記運行管理システムに通知し、
前記運行管理システムは、前記通信断情報により前記自動運転から前記遠隔操縦に切り替えると判断する、請求項2に記載の管制システム。
【請求項7】
前記遠隔操縦システムは、前記遠隔操縦から前記自動運転に復帰可能であると判断した場合、前記運行管理システムに前記遠隔操縦の終了を通知し、
前記運行管理システムは、前記自動運転車両に前記自動運転を指示する、請求項1~6のいずれか一項に記載の管制システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路に沿って設けられた設備を利用して、自動運転車両の自動運転と遠隔操縦との切り替えを行う管制システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動運転車両の遠隔支援システムとして、自動運転車両の周辺状況からの判断に基づいて自動運転車両の遠隔操縦モードと自動運転モードとの切り替えを行い、自動運転が困難な場合、管制センターのオペレータが遠隔操縦を行うものがある(特許文献1)。
【0003】
上記特許文献1のシステムでは、自動運転車両の死角に対応しておらず、見通しが悪い等の危険な道路において、自動運転車両の周辺状況からの判断のみでは、遠隔操縦に切り替えるための条件として不足している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本発明は、上記背景に鑑みてなされたものであり、道路に沿って設けられた情報収集設備を利用して、自動運転車両の自動運転と遠隔操縦との切り替えを安全かつ円滑に行うことができる管制システムを提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る管制システムは、自動運転車両と通信し周囲を監視する路側機と、路側機を監視する路側機監視システムと、自動運転車両を遠隔操縦する遠隔操縦システムと、路側機監視システムから路側機の監視結果を取得し、監視結果から自動運転及び遠隔操縦の切り替え判断を行い、遠隔操縦に切り替えると判断した場合、遠隔操縦システムに自動運転車両の遠隔操縦を指示する運行管理システムと、を備える。なお、路側機監視システムから取得する路側機の監視結果には、路側機の周囲の障害物の有無等の周囲情報の他に、路側機の故障等の死活情報も含む。
【0007】
上記管制システムでは、自動運転及び遠隔操縦の切り替え判断の際に、路側機の監視結果を利用することにより、自動運転車両の自動運転での通行が危険となる場所を事前に把握し、自動運転から遠隔操縦への切り替えを円滑に行うことができる。また、路側機の故障による自動運転の機能低下にも対応することができる。つまり、自動運転及び遠隔操縦のモード切り替えの判断の際に路側機の監視状況を加味することにより、適切なモード切り替えを実施することができる。
【0008】
本発明の具体的な側面によれば、上記管制システムにおいて、運行管理システムは、自動運転車両と通信し、自動運転車両から異常情報を取得した場合、遠隔操縦システムに自動運転車両の遠隔操縦を指示する。この場合、自動運転車両から異常情報も加味して遠隔操縦の切り替えを行うことができる。
【0009】
本発明の別の側面によれば、路側機は、自動運転車両の進行経路を含む検知領域を監視する路側機センサを有し、路側機センサが自動運転車両の進行経路上に障害物を検知した場合、路側機監視システムに障害物情報を通知し、路側機監視システムは、路側機の監視結果として障害物情報を運行管理システムに通知し、運行管理システムは、障害物情報により自動運転から遠隔操縦に切り替えると判断する。この場合、自動運転車両の進行経路上に障害物が存在しても遠隔操縦の切り替えを円滑に行うことができる。また、自動運転車両よりも先の障害物の検知が可能であり、十分な余裕をもって遠隔操縦に切り替えを行うことができ、障害物を安全に回避することができる。
【0010】
本発明のさらに別の側面によれば、路側機は、自動運転車両の進行経路を含む検知領域を監視する路側機センサを有し、路側機センサが故障した場合、路側機監視システムに路側機センサの故障情報を通知し、路側機監視システムは、路側機の監視結果として故障情報を運行管理システムに通知し、運行管理システムは、故障情報により自動運転から遠隔操縦に切り替えると判断する。この場合、路側機センサが故障しても遠隔操縦の切り替えを円滑に行うことができる。
【0011】
本発明のさらに別の側面によれば、路側機監視システムは、自動運転車両の進行経路を含む検知領域を監視する路側機との通信が途絶えた場合、路側機の監視結果として路側機の通信断情報を運行管理システムに通知し、運行管理システムは、通信断情報により自動運転から遠隔操縦に切り替えると判断する。この場合、路側機との通信が途絶えても遠隔操縦の切り替えを円滑に行うことができる。
【0012】
本発明のさらに別の側面によれば、自動運転車両は、自動運転車両の進行経路を含む検知領域を監視する路側機との通信が途絶えた場合、異常情報として路側機の通信断情報を運行管理システムに通知し、運行管理システムは、通信断情報により自動運転から遠隔操縦に切り替えると判断する。この場合、自動運転車両と路側機との通信が途絶えても遠隔操縦の切り替えを円滑に行うことができる。
【0013】
本発明のさらに別の側面によれば、遠隔操縦システムは、遠隔操縦から自動運転に復帰可能であると判断した場合、運行管理システムに遠隔操縦の終了を通知し、運行管理システムは、自動運転車両に自動運転を指示する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態に係る管制システムを設けた道路について概念的に示す平面図である。
【
図2】管制システムの一構成例について示すブロック図である。
【
図3】管制システムにおける一連の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図4】管制システムにおける一連の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図5】管制システムにおける一連の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔第1実施形態〕
以下、
図1等を参照して、本発明に係る第1実施形態の管制システムについて、一例を説明する。
図1は、本実施形態に係る管制システム100を道路RAに適用した場合について概要を説明するための概念図である。
【0016】
図1では、管制システム100による支援の対象となる自動運転車両VEが、片側1車線の直線の道路RAを走行する場合について、一動作例を示している。なお、自動運転車両VEの一例として、予め定められたルートに沿って走行するバスBUを示しているが、管制システム100は、バスBUに限らず、普通乗用車や、トラック、あるいはトレーラーや牽引車等、種々の自動運転車両VEに対応することができる。自動運転車両VEは、道路RAにおいて、将来位置情報TRに対応する走行ルートTR1に従って走行するものである。
【0017】
管制システム100は、自動運転車両VEに搭載される車載システムVSと、道路RAに沿って設けられた設備である路側機PVと、車載システムVSや路側機PVを監視及び制御する管制センターCCとを備える。管制システム100は、車載システムVS、路側機PV、及び管制センターCCが協働することで、システムとしての機能が成立している。管制システム100は、車載システムVSや路側機PVを利用して、道路RAや自動運転車両VEの状況を監視しつつ、道路RAを走行する自動運転車両VEの運転を支援する。具体的には、管制システム100は、道路RA、路側機PV、自動運転車両VE等の監視状況により、自動運転車両VEの自動運転と遠隔操縦との切り替えを行う。
【0018】
図2は、管制システムの一構成例について示すブロック図である。
図1及び
図2に示すように、車載システムVSは、自動運転車両VEに搭載され、通信ネットワークNT1a,NT1bを利用する管制センターCCとの通信CT1により、自動運転と遠隔操縦との切り替えが可能となっている。また、車載システムVSは、管制センターCCとの通信CT1に加え、通信ネットワークNT2を利用する路側機PVとの通信CT2により、自車両や自車両周辺の状況を表す周辺状況を相互に提供するものとなっている。
【0019】
自動運転車両VEにおいて、車載システムVSは、運転操作部11と、自動運転装置12と、遠隔操縦装置13と、車載センサ14と、GNSS取得用媒体15と、路車間通信装置16と、管制用通信装置17と、ルートデータ部18と、地図データ部19とを備える。
【0020】
運転操作部11は、ステアリング、アクセル、ブレーキ等の通常の運転のための各種操作に必要な各部で構成される。自動運転装置12は、自動運転車両VEの自動運転を行うため、運転操作部11の操作に対応するエンジン動作等の自動制御を行う。遠隔操縦装置13は、運転操作部11の操作に対応するエンジン動作等の遠隔制御を行う。車載センサ14は、不図示の撮像部(カメラ)やLiDAR等の測距部で構成され、自動運転車両VEの周囲の状況を検知する。GNSS取得用媒体15は、GPS受信機等で構成される。路車間通信装置16は、路側機PVとの無線通信を行う。管制用通信装置17は、管制センターCCとの無線通信を行う。ルートデータ部18は、走行ルートTR1についての情報を蓄積する。地図データ部19は、ルートデータ部18の走行ルートTR1と示される位置を把握するためのものである。
【0021】
なお、地図データ部19については、少なくとも走行ルートTR1として含まれ得る範囲についての地図データが蓄積されており、例えば全国ロードマップデータが組み込まれているもの等が想定される。自動運転車両VEは、ルートデータ部18のうちから設定された一の走行ルートTR1について、地図データ部19に蓄積された地図データに沿って走行を行う。
【0022】
上記のような構成の自動運転車両VEの場合、例えば、自動運転装置12は、自動運転を行うために必要な各種プログラムのほか、車載センサ14を構成する各部の動作を制御して、自動運転車両VEの周辺の状況に関する情報(例えば道路RA上における車線を定める白線の位置等についての情報)を取得したり、GNSS取得用媒体(GPS受信機等)15を介したGNSS(GPS等)による自己位置の情報を取得したりする。これにより、的確に自己位置を推定しつつ、推定結果に基づいて自動運転を行うことが可能となる。
【0023】
自動運転装置12には、将来位置情報TRを生成するための将来位置情報生成部12aが含まれている。将来位置情報TRは、GNSS取得用媒体15等を利用して、ルートデータ部18から設定された一の走行ルートTR1における自動運転車両VE自身についての現在位置や現在位置に基づく今後の進路予定の情報等で構成される。なお、将来位置情報TRは、自動運転車両VEの走行経路上に障害物OB等が存在した場合の迂回ルートTR2を含むものであってもよい。走行ルートTR1や迂回ルートTR2は、将来位置情報TRに基づく自動運転車両VEの移動軌跡であり、将来位置情報TRは、自動運転車両VEにおいて、自動運転車両VEの持つ経路情報、自動運転車両VEの速度、及び時間に基づいて作成される。なお、迂回ルートTR2は、路側機PVや管制センターCCから提供されるものであってもよい。
【0024】
また、ここでの一例では、自動運転車両VEにおいて、上記一の走行ルートTR1として、既定の箇所を走行するルートが予め定められているものとして説明する。つまり、自動運転車両VEは、ルートデータ部18中の一の走行ルートTR1について、地図データ部19に沿って自動運転を行っており、この際、自動運転に際しての走行ルートTR1に対応する将来位置情報TRを、路車間通信装置16や管制用通信装置17を介して、路側機PVや管制センターCCに送信している。
【0025】
自動運転装置12は、車載センサ14で取得された撮影画像やセンサ検出情報に基づいて、自動運転車両VEの自動運転を行う。なお、自動運転装置12は、映像情報に対応する撮影画像やセンサ検出情報について、管制用通信装置17を介して、管制センターCCに送信している。管制センターCCに送信された車載センサ14の撮影画像等は、遠隔操縦に利用される。
【0026】
遠隔操縦装置13は、後述する管制センターCCの遠隔制御装置62から受信する遠隔操縦情報に従って、自動運転車両VEの運転を行う。ここで、遠隔操縦情報は、管制センターCCのオペレータが遠隔操縦端末61によって行った遠隔操縦の操作に基づいた運転制御信号である。
【0027】
路車間通信装置16は、通信ネットワークNT2と接続して無線通信を行う機能を有する。路車間通信装置16は、例えば5G、4GLTEに代表される移動体通信回線を利用する通信方式、無線LAN等に代表される中域の無線通信方式、DSRC等の狭域無線通信方式、ビーコン等のスポット通信方式を利用する通信回路を内蔵し、路側機PVとの間で、相手機器を識別しつつデジタルデータ通信を行う。路車間通信装置16では、上記通信方式のいずれか1つ又は複数の組み合わせを採用することができる。
【0028】
管制用通信装置17は、後述する管制センターCCの遠隔操縦システム60と運行管理システム70との間でデジタルデータ通信を行う。本実施形態では、管制用通信装置17と遠隔操縦システム60との間の無線通信と、管制用通信装置17と運行管理システム70との間の無線通信とは、異なる通信ネットワークNT1a,NT1bを利用している。管制用通信装置17と遠隔操縦システム60との間の通信ネットワークNT1aは、セキュリティを高めた高速回線であり、リアルタイムで遠隔操縦可能な通信回線であり、例えば、IP-VPNに代表される移動体通信回線を利用したものである。管制用通信装置17と運行管理システム70との間の通信ネットワークNT1bは、一般回線とすることができ、例えば5G、4GLTEに代表される移動体通信回線を利用したものである。なお、管制用通信装置17と遠隔操縦システム60との間の無線通信と、管制用通信装置17と運行管理システム70との間の無線通信とは、異なる通信ネットワークNT1a,NT1bを利用するものに限らず、共通の通信回線を利用するものであってもよい。
【0029】
次に、路側機PVは、道路RAの近辺に設置された路側装置である。路側機PVは、自動運転車両VEが走行ルートTR1を含む検知範囲SAについて監視を行うとともに、自動運転車両VEと通信して自動運転車両VEに関する情報を自動運転車両VE自身から取得する。また、路側機PVは、監視結果や自動運転車両VEに関する情報等に基づいて、道路RAの状況を自動運転車両VEに通知する。また、路側機PVは、通信ネットワークNT3を利用する管制センターCCとの通信CT3によって、道路RAの監視状況や路側機PVの監視状況を路側機監視システム50に通知する。路側機PVは、信号機、電柱、電灯等に設けられており、また、既存物に設置することに限らず、別途独立したものとして設置してもよい。
【0030】
路側機PVは、自動運転車両VEが走行する走行車線に対応する第1車線RA1と第1車線RA1の対向車線に対応する第2車線RA2とを含む範囲であって、自動運転車両VEが走行する所定の区間を、周囲として監視する。路側機PVによる周囲、すなわち検知範囲SAの監視により、自動運転車両VEに設けられた車載センサ14から得られる周辺情報よりも広い範囲の周辺情報を得ることができ、自動運転車両VEの死角を補うことができる。図示を省略するが、道路RAにカーブがあり、カーブの見通しが悪い場合等、特に死角が生じやすくなる。なお、検知範囲SAの位置や大きさは適宜変更することができる。
【0031】
路側機PVは、検知範囲SAについての交通状況を監視して移動体MBや障害物OB等の物標情報を取得するとともに、自動運転車両VEからは道路RAを走行するに際しての走行ルートTR1を示す経路情報(後述する将来位置情報)を取得する。路側機PVは、検知範囲SAにおける移動体MBや障害物OBとの衝突を回避するため、自動運転車両VEや路側機監視システム50に危険情報や障害物情報を通知する。なお、路側機PVは、危険情報や障害物情報に基づいて、移動体MBや障害物OBとの衝突回避予測を行い、衝突回避のための情報を提供することもできる。障害物情報としては、例えば、現在時間、種類、位置、速度等が含まれている。危険情報としては、例えば、移動体MBや障害物OBとの衝突可能性が含まれ、具体的には、自動運転車両VEの走行経路上に他の車両等と衝突するか否か判断し、停止させることが含まれている。
【0032】
路側機PVは、路側制御装置21と、路側機センサ22と、路車間通信装置23と、管制用通信装置24と、地図データ部25とを備える。
【0033】
路側制御装置21は、各種回路基板、CPU、ストレージデバイス等で構成される路側判定部21aと、検知範囲SAについて監視する路側機センサ22と接続するためのセンサインタフェース21bとを有する。
【0034】
路側判定部21aは、路車間通信装置23で受け付けた自動運転車両VEの将来位置情報TR、車両情報、さらに、路側機センサ22による検知結果としての物標情報等を収集し、これらに道路状況の判定を行う。典型的には、
図1に示すように、道路RAを直進して通過しようとする場合であれば、画像解析処理等による物標情報としての障害物OBの状況、移動体MBである前方車両GMの走行状況の抽出や、地図データ部25に格納された検知範囲SAにおける道路形状等に関するデータの取得等により、検知範囲SAにおける道路状況についての判定が可能となる。判定の結果、障害物情報や危険情報を、自動運転車両VEに対して送信する。なお、車両情報としては、例えば、現在時間、種類、位置、速度等が含まれている。
【0035】
センサインタフェース21bは、路側機センサ22で取得された情報すなわち物標情報を取り込んで路側判定部21aに出力する。すなわち、センサインタフェース21bは、検知範囲SAについての物標情報を取得するためのものである。
【0036】
また、路側制御装置21は、路側機センサ22に対して一定時間ごとにヘルスチェックを行い、路側機センサ22が正常に稼働しているか否かを監視している。ヘルスチェックの結果であるヘルス情報は、路側機センサ22から定期的に送信される。
【0037】
路側機センサ22は、不図示の撮像部(カメラ)や測距部で構成され、監視の対象となる所定範囲としての検知範囲SAに存在する移動体MBや障害物OB等を検知する。つまり、路側機センサ22は、自動運転車両VEの進行経路を含む検知領域である検知範囲SAを監視する。なお、移動体MBについては、車両のほか、自転車や歩行者等が想定される。撮像部は、検知範囲SAについて監視すべく、撮像を行って画像データを生成する。また、測距部については、例えばLiDARのほか、ミリ波センサや、レーダを採用することが考えられ、測距を行って測距データを生成することで、移動体MBの位置等を取得可能にする。なお、路側機センサ22は、移動体MB等の物標情報を取得できるものであれば、撮像部及び測距部のいずれか一方を設ける構成でもよい。図中では、1つの路側機センサ22のみ示しているが、検知範囲SAについて隈なく監視を行うべく、複数のカメラ等を設置する構成にできる。また、ここでは、検知範囲SAを一例として示しているが、情報を提供する対象となる自動運転車両VEの進行方向A1によって検知範囲SAが変更される場合には、これに応じて、使用するカメラ等を適宜選択する等も可能である。ここで、路側機センサ22により取得される検知結果であり、検知範囲SAに存在する移動体MBに関する画像データや測距データ等の各種情報を、物標情報とする。すなわち、物標情報には、検知範囲SAに存在する移動体MBの動作状況のほか、障害物OBの存在等についての情報が含まれている。
【0038】
なお、路側機PVは、路側機センサ22で取得した映像情報に対応する撮影画像やセンサ検出情報について、後述する管制用通信装置24を介して、管制センターCCに送信してもよい。この場合、管制センターCCに送信された路側機センサ22の撮影画像等は、遠隔操縦に利用することができる。
【0039】
路車間通信装置23は、自動運転車両VEと無線通信を行う。路車間通信装置23は、路車間通信装置16と同様の通信機能を有し、例えば5G、4GLTEに代表される移動体通信回線を利用する通信方式、無線LAN等に代表される中域の無線通信方式、DSRC等の狭域無線通信方式、ビーコン等のスポット通信方式による通信を可能にする通信ネットワークNT2を介して、所定の通信ゾーンに存在する自動運転車両VEとの間で、相手機器を識別しつつデジタルデータ通信を行う。路車間通信装置23では、上記通信方式のいずれか1つ又は複数の組み合わせを採用することができる。ここで、通信相手である自動運転車両VEについては、既述のように、路側機PVに対して、判定を行うためのデータとして、自己の将来位置を示す将来位置情報TRを送信するものとなっている。将来位置情報TRには、自動運転車両VEの現在位置(現在時刻における位置)や、これに基づき作成される将来位置(到達予測時刻を含む)のほか、これらの各時刻(予定時刻)における速度や方位(方位角)等の情報が含まれている。したがって、路側機PVは、自動運転車両VEから将来位置情報TRを受け付けることで、例えば自動運転車両VEの目的地への到達予測時刻や、検知範囲SAの通過所要時間等を把握できる。
【0040】
管制用通信装置24は、管制センターCCと無線通信を行う。管制用通信装置24は、例えば5G、4GLTEに代表される移動体通信回線を利用する通信方式による通信を可能にする通信ネットワークNT3を介して、後述する管制センターCCの路側機監視システム50との間でデジタルデータ通信を行う。なお、通信ネットワークNT3は、有線通信回線であってもよい。
【0041】
地図データ部25は、路側機PVが設置される箇所、及びその周辺についての詳細な形状等に関するデータ、例えば、道路情報(座標、形状、幅員、車線、交差点等の道路と道路の接続関係、交通規制等)、地形情報等が蓄積されている。
【0042】
次に、管制センターCCでは、道路RA、自動運転車両VE、路側機PV等の監視状況に応じて、自動運転車両VEの自動運転と遠隔操縦との切り替え要否を判定し、遠隔操縦に切り替えると判断した場合、遠隔操縦を行う。
【0043】
管制センターCCは、路側機監視システム50と、遠隔操縦システム60と、運行管理システム70とを備える。
【0044】
路側機監視システム50は、路側機PVを監視する。なお、路側機監視システム50から取得する路側機PVの監視結果には、路側機PVの周囲の移動体MBや障害物OBの有無等の周囲情報(障害物情報)、及び危険情報の他に、路側機PVの故障等の死活情報(ヘルス情報)も含まれる。
【0045】
路側機監視システム50は、監視制御装置51と、路側用通信装置52とを有する。また、図示を省略するが、路側機監視システム50は、有線、無線、又はこれらの組み合わせによって運行管理システム70と通信可能となっている。
【0046】
監視制御装置51は、路側用通信装置52を介して所定のタイミングで路側機PVと通信し、路側機PVの状況確認を行う。監視制御装置51は、路側機PVからの通信が途絶えていたり、故障していたりしないかを監視する。監視制御装置51は、路側機PVに対して一定時間ごとにヘルスチェックを行い、路側機PVが正常に稼働しているか否かを監視している。ヘルスチェックの結果であるヘルス情報は、路側用通信装置52を介して、路側機PVから定期的に送信される。
【0047】
また、監視制御装置51は、路側機PVにおいて、路側機センサ22で取得した障害物情報や、路側制御装置21の路側判定部21aで判定した危険情報についても、路側用通信装置52を介して、路側機PVから送信される。
【0048】
監視制御装置51は、路側機PVから取得した障害物情報、危険情報、ヘルス情報、及びセンサ故障情報等を後述する運行管理システム70に送信する。
【0049】
路側用通信装置52は、路側機PVとの無線通信を行う。路側用通信装置52は、管制用通信装置24と同様の通信機能を有し、例えば5G、4GLTEに代表される移動体通信回線を利用する通信方式による通信を可能にする通信ネットワークNT3を介して、路側機PVとの間でデジタルデータ通信を行う。
【0050】
遠隔操縦システム60は、自動運転車両VEを遠隔操縦するためのものである。遠隔操縦システム60は、遠隔操縦端末61と、遠隔制御装置62と、車両用通信装置63とを有する。また、図示を省略するが、遠隔操縦システム60は、有線、無線、又はこれらの組み合わせによって運行管理システム70と通信可能となっている。
【0051】
遠隔操縦端末61は、オペレータが自動運転車両VEを遠隔操縦するためのものである。遠隔操縦端末61には、不図示のモニタ画面や操作部が設けられている。操作部は、ハンドルやブレーキ等と同等の機能を有するものである。モニタ画面には、自動運転車両VEや路側機PVから取得した映像情報に対応する撮影画像等が表示される。オペレータは、モニタ画面を見ながら、操作部を操作して自動運転車両VEを遠隔操縦する。
【0052】
遠隔制御装置62は、遠隔操縦端末61の操作情報を自動運転車両VEの遠隔操縦に対応する運転制御信号に変換する。遠隔制御装置62は、車両用通信装置63を介して自動運転車両VEに遠隔操縦情報である運転制御信号を送信する。自動運転車両VEの遠隔操縦装置13では、運転制御信号に基づいて遠隔操縦が行われる。なお、遠隔制御装置62は、自動運転の障害となる問題が解消し、自動運転に復帰可能になった場合、遠隔操縦の終了を運行管理システム70に通知する。
【0053】
車両用通信装置63は、自動運転車両VEとの無線通信を行う。車両用通信装置63は、管制用通信装置17と同様に、セキュリティを高めた高速通信機能を有し、例えば、IP-VPNに代表される移動体通信回線を利用する通信方式による通信を可能にする通信ネットワークNT1aを介して、自動運転車両VEとの間でデジタルデータ通信を行う。
【0054】
運行管理システム70は、路側機監視システム50から路側機PVの監視結果を取得し、監視結果から自動運転及び遠隔操縦の切り替え判断を行う。また、運行管理システム70は、自動運転車両VEから異常情報等を取得し、監視結果から自動運転及び遠隔操縦の切り替え判断を行う。
【0055】
運行管理システム70は、自動運転車両VEの状態、及び自動運転車両VEの周辺状況をモニタリングする機能を有する。運行管理システム70は、自動運転車両VEが走行する検知範囲SA内に設置された各路側機PVから、危険情報、障害物情報、及び路側機PVの死活情報を取得する。上記情報により、運行管理システム70は、路側機PVが故障しているか正常かの状態管理を行う。なお、路側機PVの情報は、路側機監視システム50により、エリアごとに集約され、運行管理システム70に通知される。
【0056】
運行管理システム70は、運行管理制御装置71と、車両側用通信装置72とを有する。また、図示を省略するが、運行管理システム70は、有線、無線、又はこれらの組み合わせによって路側機監視システム50や遠隔操縦システム60と通信可能となっている。
【0057】
運行管理制御装置71は、運転モード切替判定部71aを有する。運転モード切替判定部71aは、路側機監視システム50から取得した路側機PVの監視結果、及び自動運転車両VEの状況に基づき、自動運転及び遠隔操縦の切り替え判断を行う。運行管理制御装置71は、遠隔操縦に切り替えると判断した場合、遠隔操縦システム60に自動運転車両VEの遠隔操縦を指示する。なお、運行管理制御装置71は、遠隔操縦システム60から遠隔操縦終了の通知を受けた場合、車両側用通信装置72を介して、自動運転車両VEに自動運転への切替指示に関する情報(自動運転復帰要求)を送信する。また、運行管理制御装置71は、路側機PVからの危険情報により障害物OB等との衝突に緊急性があると判断した場合、自動運転車両VEに緊急停止要求を通知することができる。
【0058】
車両側用通信装置72は、自動運転車両VEとの無線通信を行う。車両側用通信装置72は、管制用通信装置17と同様に、一般的な通信機能を有し、例えば5G、4GLTEに代表される移動体通信回線を利用する通信方式による通信を可能にする通信ネットワークNT1bを介して、車両側用通信装置72と自動運転車両VEとの間でデジタルデータ通信を行う。
【0059】
以上において、自動運転車両VEと路側機PVとは、検知範囲SAの進入及び通過に際して、通信により、将来位置情報TRや車両情報(車両状態)等についての情報を、送受信する。この際、路側機PVは、各情報を路側機監視システム50に通知するのと同時に、路側機PVの通信エリア(通信範囲)内の自動運転車両VEと直接通信する。自動運転車両VEと運行管理システム70や遠隔操縦システム60とは、一定時間ごと又は運転モード切り替え時に通信する。表1は、各装置間でやりとりされる通信内容をまとめたものである。表1において、自動運転車両VEや路側機PVのヘルス情報は、一定時間ごとに送信される。
〔表1〕
【0060】
本実施形態の管制システム100は、自動運転と遠隔操縦とのモード切替の判断情報に関して、自動運転車両VEからの情報の他に、路側機PVの監視状況も付加することで、適切なモード切替を実施するものである。すなわち、管制システム100は、路側機PVの死活監視を利用した自動運転車両VEの運転モードの切り替えを行うことができ、自動運転車両VEの周辺情報と路側機PVとからの情報を包括した運転モードの切り替えを行うことができる。特に、路側機PVの監視状況としては、以下の事項が挙げられる。
(1)路側機PVと自動運転車両VEとの通信異常(路車間通信異常)
(2)路側機PVの路側機センサ22による障害物検知
(3)路側機PVによる危険判定
(4)路側機PVの路側機センサ22の故障
(5)路側機監視システム50による路側機PVの故障検知(ヘルスチェックによる異常検知)
【0061】
上記(1)は、表1の通信内容a1に対応し、上記(2)は、表1の通信内容a2に対応し、上記(3)は、表1の通信内容a3に対応し、上記(4)は、表1の通信内容a4,a5に対応し、上記(5)は、表1の通信内容a5に対応する。また、表1に示す自動運転車両VEのヘルス情報は、
図1に示す自動運転車両VEから運行管理システム70に送信される異常情報に対応する。異常情報は、自動運転車両VEのヘルス情報に基づき、例えば、路側機PVとの通信が途絶えた場合や、自動運転車両VEの機器にトラブルが発生した場合等を含むものである。
【0062】
以下、管制システム100の動作の一例について説明する。運行管理システム70は、例えば、以下の状況で自動運転から遠隔操縦に切り替えると判断し、管理下の自動運転車両VEに対して、自動運転と遠隔操縦とで切り替えを行う。管制センターCCでは、問題発生時、すなわち遠隔操縦切替トリガが発生した場合、運行管理システム70に通知され、運転モードの切り替え判断がなされるとともに警報が出される。管制センターCCでは、遠隔操縦システム60にオペレータを配置して円滑に遠隔操縦を開始できる状態としている。
【0063】
運行管理システム70は、遠隔操縦切替トリガが発生した場合、運転モード切替判定後、自動運転から遠隔操縦に自動で切り替える。また、運行管理システム70は、復帰トリガが発生した場合、運転モード切替判定後、遠隔操縦から自動運転に自動で切り替える。すなわち、遠隔操縦モードにて運転した後、遠隔操縦システム60は、遠隔操縦から自動運転に復帰可能であると判断した場合、運行管理システム70に遠隔操縦の終了を通知する。運行管理システム70は、自動運転復帰要求によって自動運転車両VEに自動運転を指示する。
【0064】
<路側機の路側機センサによる障害物検知>
トリガ元は、路側機PVである。路側機PVは、路側機センサ22において自動運転車両VEの進行経路上に自動運転で回避不可能な障害物OBを検知した場合、路側機監視システム50に障害物情報を通知する。路側機監視システム50は、路側機PVの監視結果として障害物情報を運行管理システム70に通知する。運行管理システム70は、障害物情報により自動運転から遠隔操縦に切り替えると判断し、遠隔操縦システム60に自動運転車両VEの遠隔操縦を指示する。遠隔操縦による障害物OBの迂回後、運行管理システム70は、自動運転車両VEの自動運転に切り替えると判定し、自動運転車両VEは、自動運転を再開する。これにより、自動運転車両VEの進行経路上に障害物OBが存在しても遠隔操縦の切り替えを円滑に行うことができる。また、自動運転車両VEよりも先の障害物OBの検知が可能であり、十分な余裕をもって遠隔操縦に切り替えを行うことができ、障害物OBを安全に回避することができる。
【0065】
<路側機センサの故障>
トリガ元は、路側機PVである。路側機PVは、路側機センサ22が故障した場合、路側機監視システム50に路側機センサ22の故障情報を通知する。路側機監視システム50は、路側機PVの監視結果として故障情報を運行管理システム70に通知する。運行管理システム70の運転モード切替判定部71aは、故障情報により自動運転から遠隔操縦に切り替えると判断し、遠隔操縦システム60に自動運転車両VEの遠隔操縦を指示する。遠隔操縦による検知範囲SAの通行後、運行管理システム70は、自動運転車両VEの自動運転に切り替えると判定し、自動運転車両VEは、自動運転を再開する。これにより、路側機センサ22が故障しても遠隔操縦の切り替えを円滑に行うことができる。なお、後続の自動運転車両VEに対しては、故障中の路側機PVに進入する前に遠隔操縦を開始させる。
【0066】
<路側機の管制用通信装置の故障>
トリガ元は、管制センターCCである。路側機監視システム50は、自動運転車両VEの進行経路を含む検知領域である検知範囲SAを監視する路側機PVとの通信が途絶えた場合、路側機の監視結果として路側機PVの通信断情報を運行管理システム70に通知する。運行管理システム70は、通信断情報により自動運転から遠隔操縦に切り替えると判断し、遠隔操縦システム60に自動運転車両VEの遠隔操縦を指示する。遠隔操縦による検知範囲SAの通行後、運行管理システム70は、自動運転車両VEの自動運転に切り替えると判定し、自動運転車両VEは、自動運転を再開する。これにより、路側機PVとの通信が途絶えても遠隔操縦の切り替えを円滑に行うことができる。なお、後続の自動運転車両VEに対しては、故障中の路側機PVに進入する前に遠隔操縦を開始させる。
【0067】
<路側機の路車間通信装置の故障>
トリガ元は、自動運転車両VEである。自動運転車両VEは、自動運転車両VEの進行経路を含む検知領域である検知範囲SAを監視する路側機PVとの通信が途絶えた場合、異常情報として路側機PVの通信断情報を運行管理システム70に通知する。運行管理システム70は、通信断情報により自動運転から遠隔操縦に切り替えると判断し、遠隔操縦システム60に自動運転車両VEの遠隔操縦を指示する。遠隔操縦による検知範囲SAを含む路側機PVの通信エリア(通信範囲)の通行後、運行管理システム70は、自動運転車両VEの自動運転に切り替えると判定し、自動運転車両VEは、自動運転を再開する。これにより、自動運転車両VEと路側機PVとの通信が途絶えても遠隔操縦の切り替えを円滑に行うことができる。なお、後続の自動運転車両VEに対しては、故障中の路側機PVに進入する前に遠隔操縦を開始させる。
【0068】
自動運転車両VEの路車間通信装置16が故障した場合、路側機PVの情報を利用せずに、遠隔操縦への切り替えが可能であるが、路側機PVの情報を利用した切り替えよりも円滑な切り替えとならないため、検知範囲SA内での自動運転車両VEの走行は、徐行することが好ましい。
【0069】
<自動運転車両での機器トラブル発生>
トリガ元は、自動運転車両VEである。自動運転車両VEは、走行中の自己診断により、機器トラブルを検知した場合、自動運転の続行が不可能であると判定し、異常情報として上記機器トラブルの情報(車両情報)を運行管理システム70に通知する。機器トラブルとしては、例えば、自動走行に必要なセンサ(LiDAR、GNSS等)の出力異常等が挙げられる。運行管理システム70は、通信断情報により自動運転から遠隔操縦に切り替えると判断し、遠隔操縦システム60に自動運転車両VEの遠隔操縦を指示する。機器トラブルが解消した後、運行管理システム70は、自動運転車両VEの自動運転に切り替えると判定し、自動運転車両VEは、自動運転を再開する。
【0070】
<自動運転車両の車載センサによる障害物検知>
トリガ元は、自動運転車両VEである。自動運転車両VEは、車載センサ14において自動運転車両VEの進行経路上に自動運転で回避不可能な障害物OBを検知した場合、運行管理システム70に障害物情報を通知する。運行管理システム70は、障害物情報により自動運転から遠隔操縦に切り替えると判断し、遠隔操縦システム60に自動運転車両VEの遠隔操縦を指示する。遠隔操縦による障害物OBの迂回後、運行管理システム70は、自動運転車両VEの自動運転に切り替えると判定し、自動運転車両VEは、自動運転を再開する。
【0071】
以上において、路側機PVや自動運転車両VEの死活管理は、各装置間で定期的に通信を行うことで確認する。なお、路側機PVと自動運転車両VEとの間の通信装置の故障のみ、自動運転車両VEが路側機PVと通信を行う範囲に進入しなければ検出できない。また、路側機PV及び自動運転車両VEのいずれからも情報がない場合、管制センターCCの運行管理システム70が全て判断する。
【0072】
以下、フローチャートを参照しつつ、上述した管制システム100における各状況のうち、一部の状況についての一連の動作例を説明する。なお、自動運転車両VEは、路側機PVから情報提供を受ける間において、自己の将来位置情報TRの送信を路側機PVに対して、継続的に行っている。
【0073】
<路側機の路側機センサによる障害物検知>
図3は、路側機PVの検知範囲SA内で障害物等が発生した場合の管制システム100の一連の動作例を説明するフローチャートである。
図3において、自動運転車両VEは、初期状態において、道路RA上を走行ルートTR1に従って自動運転している(ステップS10)。
【0074】
まず、路側機PVの路側制御装置21は、路側機センサ22において自動運転車両VEの進行経路上に障害物OBを検知した場合(ステップS11のYes)、路側機監視システム50に障害物情報を通知する(ステップS12)。障害物情報としては、例えば、駐車中の大型車両、工事による通行止め等が挙げられる。
【0075】
路側機監視システム50の監視制御装置51は、路側機PVから障害物情報を受信した場合(ステップS13のYes)、路側機PVの監視結果として障害物情報を運行管理システム70に通知する(ステップS14)。
【0076】
運行管理システム70の運行管理制御装置71は、路側機監視システム50から障害物情報を受信した後、該当路側機PVの検知範囲SAに進入する自動運転車両VEを検索する(ステップS15)。
【0077】
運行管理システム70の運行管理制御装置71は、運転モード切替判定部71aとして、通知された障害物OBが運行管理システム70に登録された迂回ルートTR2で回避可能か否かを判定する(ステップS16)。障害物OBを回避不可能である場合(ステップS16のNo)、障害物情報により自動運転から遠隔操縦に切り替えると判断し、遠隔操縦システム60に自動運転車両VEの遠隔操縦を指示し、自動運転車両VEに対して遠隔操縦を要求する(ステップS17)。すなわち、運行管理システム70は、遠隔操縦システム60に遠隔操縦要求を通知する。
【0078】
遠隔操縦システム60の遠隔制御装置62は、該当する路側機PVの検知範囲SAを走行する自動運転車両VEの遠隔操縦を開始する(ステップS18)。具体的には、遠隔制御装置62は、オペレータによる遠隔操縦端末61の操作に対応する運転制御信号を自動運転車両VEの遠隔操縦装置13に送信する。自動運転車両VEでは、遠隔操縦システム60からの遠隔操縦要求により(ステップS19のYes)、自動運転から遠隔操縦に切り替えられ、遠隔操縦による走行が行われる(ステップS20)。遠隔操縦は、自動運転の妨げとなる障害物OBの回避が完了するまで行われる。
【0079】
遠隔操縦システム60の遠隔制御装置62は、遠隔操縦による障害物OBの迂回後、すなわち自動運転の妨げとなる状況から復帰した後、運行管理システム70に遠隔操縦終了としての自動運転復帰要求を通知する(ステップS21)。自動運転復帰要求は、例えば、オペレータが遠隔操縦システム60を介して運行管理システム70に通知する。
【0080】
運行管理システム70の運行管理制御装置71は、遠隔操縦システム60から遠隔操縦終了を受信し、運転モード切替判定部71aとして、遠隔操縦から自動運転に切り替え、自動運転車両VEの自動運転を復帰させる(ステップS22)。すなわち、運行管理システム70は、自動運転車両VEに自動運転復帰要求を通知する。自動運転車両VEでは、運行管理システム70からの自動運転復帰要求により(ステップS23のYes)、自動運転を再開させる(ステップS24)。
【0081】
運行管理システム70の運行管理制御装置71は、ステップS16において、迂回ルートTR2で障害物OBを回避可能である場合(ステップS16のYes)、自動運転車両VEに迂回ルートTR2を通知する(ステップS25)。自動運転車両VEは、運行管理システム70から迂回ルートTR2を受信し、自動運転から運転モードを切り替えず(ステップS19のNo)、迂回ルートTR2に従って自動運転する(ステップS26)。自動運転車両VEは、自動運転による障害物OBの迂回後、元の走行ルートTR1に戻って自動運転を維持する(ステップS27)。
【0082】
<路側機の路車間通信装置の故障>
図4は、路側機PVと自動運転車両VEとの間に通信断(路側機PVの路車間通信装置23の故障)が発生した場合の管制システム100の一連の動作例を説明するフローチャートである。
図4において、自動運転車両VEは、初期状態において、道路RA上を走行ルートTR1に従って自動運転している(ステップS30)。また、路側機PVにおいて、路車間通信装置23が故障している(ステップS31)。
【0083】
まず、自動運転車両VEは、自動運転装置12として、自己の位置により、検知範囲SAを含む路側機PVとの通信エリアに進入したと判定した際に(ステップS32のYes)、路側機PVと通信できないと判定した場合(ステップS33のYes)、運行管理システム70に路側機PVとの通信断として通信断情報(異常情報)を通知する(ステップS34)。なお、路側機PVとの通信エリアは、自動運転車両VEと路側機PVとの両方で設定することができる。
【0084】
運行管理システム70の運行管理制御装置71は、自動運転車両VEから路側機PVとの通信断を受信した場合(ステップS35のYes)、運転モード切替判定部71aとして、通信断情報により自動運転から遠隔操縦に切り替えると判断し、遠隔操縦システム60に自動運転車両VEの遠隔操縦を指示し、自動運転車両VEに対して遠隔操縦を要求する(ステップS36)。
【0085】
遠隔操縦システム60の遠隔制御装置62は、該当する自動運転車両VEの遠隔操縦を開始する(ステップS37)。自動運転車両VEでは、遠隔操縦システム60からの遠隔操縦要求により(ステップS38のYes)、自動運転から遠隔操縦に切り替えられ、遠隔操縦による走行が行われる(ステップS39)。遠隔操縦は、路側機PVの通信エリアの通過が完了するまで行われる。なお、後続の自動運転車両VEに対しては、故障中の路側機PVに進入する前に遠隔操縦を開始させる。
【0086】
遠隔操縦システム60の遠隔制御装置62は、遠隔操縦による路側機PVの通信エリアの通過後、すなわち自動運転の妨げとなる状況から復帰した後、運行管理システム70に遠隔操縦終了としての自動運転復帰要求を通知する(ステップS40)。
【0087】
運行管理システム70の運行管理制御装置71は、遠隔操縦システム60から遠隔操縦終了を受信し、運転モード切替判定部71aとして、遠隔操縦から自動運転に切り替え、自動運転車両VEの自動運転を復帰させる(ステップS41)。自動運転車両VEでは、運行管理システム70からの自動運転復帰要求により(ステップS42のYes)、自動運転を再開させる(ステップS43)。
【0088】
ステップS38において、自動運転モードを維持する場合、自動運転車両VEは、自動運転から運転モードを切り替えず(ステップS38のNo)、走行ルートTR1に従って自動運転する(ステップS44)。
【0089】
<路側機センサの故障>
図5は、路側機PVに故障が発生した場合の管制システム100の一連の動作例を説明するフローチャートである。
図5において、自動運転車両VEは、初期状態において、道路RA上を走行ルートTR1に従って自動運転している(ステップS50)。路側機PVの故障は、路側機センサ22の故障の他に路側制御装置21の故障等が挙げられ、この場合も同様の動作となる。なお、路側機PVの管制用通信装置24が故障している場合には、路側機PVでの故障の判定は路側機監視システム50に通知されない。この場合、路側機PVの故障は、路側機監視システム50での一定時間に通知される路側機PVのヘルス情報の通信断によって、路側機PVの故障の有無を判断する。
【0090】
まず、路側機PVは、一定時間に通知される路側機センサ22のヘルス情報の通信断や出力異常の検知等によって、路側機センサ22の故障を判断した場合(ステップS51のYes)、路側機監視システム50に路側機PVの故障情報を通知する(ステップS52)。なお、路側機センサ22の出力異常の例としては、路側機センサ22として利用するカメラから決められたfpsで情報が送信されない、出力される画像に欠けがある等が挙げられる。
【0091】
路側機監視システム50の監視制御装置51は、路側機PVの故障情報を受信した場合(ステップS53のYes)、路側機PVの監視結果として故障情報を運行管理システム70に通知する(ステップS54)。
【0092】
運行管理システム70の運行管理制御装置71は、路側機監視システム50から故障情報を受信した後、該当路側機PVの検知範囲SAに進入する自動運転車両VEを検索する(ステップS55)。
【0093】
運行管理システム70の運行管理制御装置71は、運転モード切替判定部71aとして、故障情報により自動運転から遠隔操縦に切り替えると判断し、遠隔操縦システム60に自動運転車両VEの遠隔操縦を指示し、自動運転車両VEに対して遠隔操縦を要求する(ステップS56)。
【0094】
遠隔操縦システム60の遠隔制御装置62は、該当する自動運転車両VEの遠隔操縦を開始する(ステップS57)。自動運転車両VEでは、遠隔操縦システム60からの遠隔操縦要求により(ステップS58のYes)、自動運転から遠隔操縦に切り替えられ、遠隔操縦による走行が行われる(ステップS59)。遠隔操縦は、路側機PVの通信エリアの通過が完了するまで行われる。なお、後続の自動運転車両VEに対しては、故障中の路側機PVに進入する前に遠隔操縦を開始させる。
【0095】
遠隔操縦システム60の遠隔制御装置62は、遠隔操縦による路側機PVの通信エリアの通過後、すなわち自動運転の妨げとなる状況から復帰した後、運行管理システム70に遠隔操縦終了としての自動運転復帰要求を通知する(ステップS60)。
【0096】
運行管理システム70の運行管理制御装置71は、遠隔操縦システム60から遠隔操縦終了を受信し、運転モード切替判定部71aとして、遠隔操縦から自動運転に切り替え、自動運転車両VEの自動運転を復帰させる(ステップS61)。自動運転車両VEでは、運行管理システム70からの自動運転復帰要求により(ステップS62のYes)、自動運転を再開させる(ステップS63)。
【0097】
ステップS58において、自動運転モードを維持する場合、自動運転車両VEは、自動運転から運転モードを切り替えず(ステップS58のNo)、走行ルートTR1に従って自動運転する(ステップS64)。
【0098】
以上で説明した実施形態の管制システム100では、自動運転及び遠隔操縦の切り替え判断の際に、路側機PVの監視結果を利用することにより、自動運転車両VEの自動運転での通行が危険となる場所を事前に把握し、自動運転から遠隔操縦への切り替えを円滑に行うことができる。また、路側機PVの故障による自動運転の機能低下にも対応することができる。つまり、自動運転及び遠隔操縦のモード切り替えの判断の際に、路側機PVの死活情報等の路側機PVの監視状況を加味することにより、適切なモード切り替えを実施することができる。
【0099】
〔その他〕
この発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0100】
上記実施形態において、道路RAの形状等については、一例であり、これに限らず、種々の形状や構造となっている場合において適用可能である。
【0101】
上記実施形態において、走行ルートTR1の基準点を自動運転車両VEの先頭の中央としたが、例えば、自動運転車両VEの車体の中心や後端の中央等のように、適宜変更することができる。
【0102】
上記実施形態において、管制システム100は、車載システムVSと、路側機PVと、管制センターCC内の路側機監視システム50と、遠隔操縦システム60と、運行管理システム70とで構成されるとしたが、自動運転車両VEからの情報提供の有無に関わらず、路側機PVと、路側機監視システム50と、遠隔操縦システム60と、運行管理システム70とで構成されるものとしてもよい。
【0103】
また、上記では、管制システム100を構成する路側機PV等を、現場付近すなわち道路RAの付近に設置するものとしているが、これに限らず、例えば各種情報処理やデータ管理を担う箇所等については、遠隔した場所に管制センターCCの管理サーバ等として設けたり、あるいは、クラウド上において、各種処理やデータ保管を行ったりすることも考えられる。
【符号の説明】
【0104】
11…運転操作部、12…自動運転装置、12a…将来位置情報生成部、13…遠隔操縦装置、14…車載センサ、15…取得用媒体、16…路車間通信装置、17…管制用通信装置、18…ルートデータ部、19…地図データ部、21…路側制御装置、21a…路側判定部、21b…センサインタフェース、22…路側機センサ、23…路車間通信装置、24…管制用通信装置、25…地図データ部、50…路側機監視システム、51…監視制御装置、52…路側用通信装置、60…遠隔操縦システム、61…遠隔操縦端末、62…遠隔制御装置、63…車両用通信装置、70…運行管理システム、71…運行管理制御装置、71a…運転モード切替判定部、72…車両側用通信装置、100…管制システム、BU…バス、CC…管制センター、GM…前方車両、MB…移動体、OB…障害物、PV…路側機、RA…道路、RA1…車線、RA2…車線、SA…検知範囲、TR…将来位置情報、TR1…走行ルート、TR2…迂回ルート、VE…自動運転車両、VS…車載システム