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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151300
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】脱穀装置
(51)【国際特許分類】
   A01F 12/32 20060101AFI20231005BHJP
   A01F 12/44 20060101ALI20231005BHJP
   B07B 4/08 20060101ALI20231005BHJP
   B07B 11/04 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A01F12/32 C
A01F12/44 Z
B07B4/08 A
B07B11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060851
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081673
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100141483
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 生吾
(72)【発明者】
【氏名】舟木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】田中 大地
【テーマコード(参考)】
2B095
4D021
【Fターム(参考)】
2B095AA01
2B095AA07
2B095AA12
2B095BA03
2B095BA11
2B095BA18
2B095BA21
2B095BA35
2B095BB11
2B095BB29
2B095CA02
2B095EA02
2B095GA07
2B095GA16
2B095GB09
4D021AA03
4D021CA04
4D021FA09
4D021GA12
4D021GA20
4D021GA23
4D021GA27
4D021GB01
4D021HA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】脱穀処理された処理物の選別を行う脱穀装置であって、揺動選別体のチャフシーブの開度をより適切に制御することが可能な脱穀装置を提供することを課題とする。
【解決手段】処理物を揺動選別し且つその漏下量を開度を変えることにより変更するチャフシーブ28を含む揺動選別体と、チャフシーブ28に設けられたフィン32a、33a、34a、36aを前後揺動させることによって開度を変更するアクチュエータと、揺動選別体の後側に形成された排出口と、揺動選別体の前側且つ下方位置に配置され、後方斜め上方に向かって風を発生させるファンと、揺動選別体に支持され且つチャフシーブ28における後部の上面側における処理物の堆積量を検出する検出センサ63と、検出センサ63の検出結果に基づいてチャフシーブ28の開度を制御する制御部と、を備えた。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀処理された処理物の選別を行う脱穀装置であって、
脱穀処理されて落下してくる処理物を受け止める位置に配置され、自身の揺動作動によって処理物を選別するように構成され、処理物の下方への漏れ量をその開度を変えることによって変更するチャフシーブを含む揺動選別体と、
前記チャフシーブに設けられたフィンを前後揺動させることによって、該チャフシーブの開度を変更するアクチュエータと、
前記揺動選別体の後側に開口して形成され且つ機外と連通する排出口と、
前記揺動選別体の前側且つ下方位置に配置され、後方斜め上方に向かって流動する風を発生させるファンと、
前記揺動選別体に支持され且つ前記チャフシーブにおける後部の上面側における処理物の堆積量を検出する検出センサと、
前記検出センサの検出結果に基づいて前記チャフシーブの開度を前記アクチュエータによって制御する制御部と、を備えた
ことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記検出センサとは別に設けられ、該検出センサによって検出する物理量とは別の物理量を検出することによって前記揺動選別体又は前記ファンの少なくとも一方により選別する処理物の量である処理量を間接的又は直接的に検出するように構成された処理量検出手段を備え、
前記制御部が、前記処理量検出手段によって検出された処理量の増減に基づいて前記チャフシーブの開度を増減させる自動調整制御と、前記検出センサによって検出された処理物の堆積量が予め定めた量に達した場合には前記チャフシーブを予め定めた所定の開度とするロス防止制御との少なくとも2つの制御を実行可能に構成され、
前記制御部が前記ロス防止制御を前記自動調整制御に優先して実行する
請求項1に記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記自動調整制御の実行の有無を切り替える切替手段を備え、
前記制御部が、前記切替手段によって前記自動調整制御を実行しない状態であっても、前記ロス防止制御を実行するように構成された
請求項2に記載の脱穀装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀処理された処理物の選別を行う脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
脱穀処理されて落下してくる処理物を受け止める位置に配置され、自身の揺動作動によって処理物を選別するように構成され、処理物の下方への漏れ量をその開度を変えることによって変更するチャフシーブを含む揺動選別体と、前記チャフシーブに設けられたフィンを前後揺動させることによって、該チャフシーブの開度を変更するアクチュエータと、前記揺動選別体の後側に開口して形成され且つ機外と連通する排出口と、前記揺動選別体の前側且つ下方位置に配置され、後方斜め上方に向かって流動する風を発生させるファンと、選別する処理物の量を検出する処理量検出と、前記処理量検出手段の検出結果に基づき、前記チャフシーブの開度を前記アクチュエータによって制御する制御部と、を備えた脱穀装置が公知になっている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
このようなコンバインによれば、処理量に応じてチャフシーブの開度が自動的に制御されるため、利便性が高い一方で、処理量検出手段が風量を検出することによって処理物の量を間接的に検出するものであるため、状況によっては、その検出精度が低下する場合や、検出が安定しない場合があり、チャフシーブの開度を適切に制御できないケースがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-045795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、脱穀処理された処理物の選別を行う脱穀装置であって、揺動選別体のチャフシーブの開度をより適切に制御することが可能な脱穀装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、脱穀処理された処理物の選別を行う脱穀装置であって、脱穀処理されて落下してくる処理物を受け止める位置に配置され、自身の揺動作動によって処理物を選別するように構成され、処理物の下方への漏れ量をその開度を変えることによって変更するチャフシーブを含む揺動選別体と、前記チャフシーブに設けられたフィンを前後揺動させることによって、該チャフシーブの開度を変更するアクチュエータと、前記揺動選別体の後側に開口して形成され且つ機外と連通する排出口と、前記揺動選別体の前側且つ下方位置に配置され、後方斜め上方に向かって流動する風を発生させるファンと、前記揺動選別体に支持され且つ前記チャフシーブにおける後部の上面側における処理物の堆積量を検出する検出センサと、前記検出センサの検出結果に基づいて前記チャフシーブの開度を前記アクチュエータによって制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
前記検出センサとは別に設けられ、該検出センサによって検出する物理量とは別の物理量を検出することによって前記揺動選別体又は前記ファンの少なくとも一方により選別する処理物の量である処理量を間接的又は直接的に検出するように構成された処理量検出手段を備え、前記制御部が、前記処理量検出手段によって検出された処理量の増減に基づいて前記チャフシーブの開度を増減させる自動調整制御と、前記検出センサによって検出された処理物の堆積量が予め定めた量に達した場合には前記チャフシーブを予め定めた所定の開度とするロス防止制御との少なくとも2つの制御を実行可能に構成され、前記制御部が前記ロス防止制御を前記自動調整制御に優先して実行するものとしてもよい。
【0008】
前記自動調整制御の実行の有無を切り替える切替手段を備え、前記制御部が、前記切替手段によって前記自動調整制御を実行しない状態であっても、前記ロス防止制御を実行するように構成されたものとしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に構成によれば、脱穀処理された処理物の選別を行うにあたり、チャフシーブにおける後部の上面側における処理物の堆積量を検出センサにより検出することによって、排出口から排出してロスする処理物の量を安定的に把握することが可能になるとともに、この検出センサを揺動作動する揺動選別体自体に支持させることによって、その検出精度が向上するため、該検出センサの検出結果を利用してチャフシーブの開度をより適切に制御することが可能になる。
【0010】
また、前記検出センサとは別に設けられ、該検出センサによって検出する物理量とは別の物理量を検出することによって前記揺動選別体又は前記ファンの少なくとも一方により選別する処理物の量である処理量を間接的又は直接的に検出するように構成された処理量検出手段を備え、前記制御部が、前記処理量検出手段によって検出された処理量の増減に基づいて前記チャフシーブの開度を増減させる自動調整制御と、前記検出センサによって検出された処理物の堆積量が予め定めた量に達した場合には前記チャフシーブを予め定めた所定の開度とするロス防止制御との少なくとも2つの制御を実行可能に構成され、前記制御部が前記ロス防止制御を前記自動調整制御に優先して実行するものによれば、処理量検出手段による検出結果を利用したチャフシーブの開度の制御である自動調整制御も利用可能とし、そのうえで、ロス防止制御を優先させたので、検出センサ及び処理量検出手段を設け、それらの検出結果を利用して制御を行う場合でも、その制御内容を簡素化できる。
【0011】
また、前記自動調整制御の実行の有無を切り替える切替手段を備え、前記制御部が、前記切替手段によって前記自動調整制御を実行しない状態であっても、前記ロス防止制御を実行するように構成されたものによれば、自動調整制御を実行しないような状況になった場合でも、ロス防止制御は実行できるため、その制御を利用する機会が広がる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明を適用した脱穀装置を搭載した自脱式のコンバインの側面図である。
図2図1に示す脱穀装置の側面図である。
図3】揺動選別体のサイドフレームの外面側の構成を示す側面図である。
図4図3のサイドフレームの内面側の構成を説明する側面図である。
図5】制御部の構成を示すブロック図である。
図6】(A),(B)はエアフローセンサを含む風量検出装置の構成を示す断面図及び側面図である。
図7】(A),(B)は堆積量検出装置の要部構成を示す側面図及び平面図である。
図8】制御部の処理手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明を適用した脱穀装置を搭載した自脱式のコンバインの側面図であり、図2図1に示す脱穀装置の側面図である。本コンバインは、左右一対のクローラ式走行装置(走行部)1,1と、クローラ式走行装置1,1に支持された走行機体2と、走行機体2の前方に配置され且つ走行機体2に昇降可能に連結して支持された刈取部3と、を備えている。
【0014】
走行機体2は、左右のクローラ式走行装置2,2に下支え支持されたシャーシである機体フレーム2aと、機体フレーム2a上において走行機体2の前進方向左(以下、単に「左」)に設置された脱穀装置4と、機体フレーム2a上においてその右側且つ後方寄りに設置されたグレンタンク6と、機体フレーム2a上においてグレンタンク6の真正面側に設置され且つオペレータが乗り込む運転席(図示しない)と、該運転席を覆うように機体フレーム2a側から立設されたキャビン7と、を有している。
【0015】
刈取部3は、本コンバインの前進走行中、圃場において稲や麦等の穀稈を刈り取り、その穀稈を後方に搬送するように構成されている。刈取部3から搬送されてくる穀稈は、脱穀装置4に渡される。
【0016】
脱穀装置4は、機体フレーム2aに固定されたボックス状の脱穀フレーム8と、脱穀フレーム8によって少なくともその一部を形成された上下2つの処理室9,11と、刈取部3から渡される穀稈を受け取って後方に搬送するフィードチェーン12と、上側の処理室である扱室9に配置され且つその軸心が前後方向を向いた円筒状に成形された扱胴13と、下側の処理室である選別室11の上部に配置され且つ脱穀フレーム8に前後揺動作動可能に支持された揺動選別体14と、選別室11の下部且つ前部に配置され後方斜め上方に流動する風(選別風)を起こす唐箕ファン(ファン)16と、選別室11の下部における唐箕ファン16よりも後方に配置された左右方向の一番ラセン17と、選別室11の下部における一番ラセン17よりも後方に配置された左右方向の二番ラセン18と、を有している。
【0017】
フィードチェーン12は、穀稈の穂先側及び中途側が扱室9に挿入されるようにして、該穀稈の株元側を保持して後方に搬送する。扱胴13は、自身の軸心を支点として回転駆動可能に脱穀フレーム8側に支持されている。扱室9にその一部が挿入された穀稈は、回転作動する扱胴13によって扱ぎ下ろされて脱穀処理される。
【0018】
脱穀処理によって穀稈から分離された処理物は、正断面視で扱胴13に沿う円弧状をなし且つ扱胴13の直下における前後方向の略全体範囲をカバーする受網20から下方に漏れ出て(漏下)して選別室11に落下するか、或いは受網20の後端側から選別室11に落下する。ちなみに、処理物は、穀粒及び空の外皮(例えば、籾殻)等の粒状物が大部分であるが、穀稈から分離された稈状物も若干量含まれている可能性がある。選別室11では、処理物を、穀粒と、それ以外の空の外皮及び稈状物等とに選別し、前者をグレンタンク6に貯める一方で、後者を排出物として機外に排出する。なお、脱穀処理された穀稈は、排藁として、走行機体2の後端側から機外に排出される。
【0019】
選別室11に落下してくる処理物は、揺動選別体14の上面側に受け止められ、該揺動選別体14の前後揺動によって選別(揺動選別)されるとともに、上述した選別風によっても選別(風選)される。
【0020】
具体的には、揺動選別や風選の作用によって一番ラセン17に落下した処理物である一番物は、該一番ラセン17によってその一方側の端部まで搬送され、そこから搬送ラセンを内装した揚穀筒19によってグレンタンク6側に上昇搬送され、穀粒として該グレンタンク6の内部に貯蔵される。揺動選別や風選の作用によって二番ラセン18に落下した処理物である二番物は、該二番ラセン18によってその一方側の端部まで搬送され、そこから搬送ラセンを内装した還元筒21によって上昇搬送され、揺動選別体14の上面側に再度導入される(言い換えると、選別室11に還元される)。
【0021】
一方、揺動選別や風選の作用によって選別室11の上部且つ後部まで搬送された処理物は、上述した排出物として、脱穀装置4の後端部に開口して形成され且つ選別室11と本コンバインの外側(機外)との連通させる排出口22を介して、機外に排出される。
【0022】
排出物の機外への排出を促進するため、選別室11における排出口22寄りの部分には、選別室11から排出口22を経由して機外に流動する風を起こす排塵ファン23が設けられている。ちなみに、この排塵ファン23は、上述した選別風の風量(風速、風圧)を増加させるように作用する他、一番ラセン17と二番ラセン18との間に設置された補助ファン24によっても選別風の風量が増加する。ただし、これらのファン23,24により選別風の風量を増加させる作用はあくまでも補助的なものである。
【0023】
図3は揺動選別体のサイドフレームの外面側の構成を示す側面図であり、図4図3のサイドフレームの内面側の構成を説明する側面図である。図2乃至図4に示す通り、揺動選別体14は、その全体が前後方向に揺動駆動可能な状態で選別室11の室内に配置されている。この揺動選別体14は、前後方向に長くその厚み方向が左右方向に向けられた板状部材である左右一対のサイドフレーム26,26と、左右のサイドフレーム26,26の間においてその前側に設置して固定されたグレンパン(移送板)27と、左右のサイドフレーム26,26の間においてグレンパン27の後部の真下側から後方斜め上方に延びるチャフシーブ28と、左右のサイドフレーム26,26の間においてチャフシーブ28の後端からさらに後方に延設されたストローラック29と、を有している。
【0024】
揺動選別体14の各部の前後の位置関係について説明すると、グレンパン27は、底面視で、扱胴13の前部から中途部に至る範囲までをカバーしている。チャフシーブ28は、底面視で、扱胴13の中途部から該扱胴13よりもさらに後方に至る範囲までカバーしている。ストローラック29は、その直上に排塵ファン23が配置されている。
【0025】
左右のサイドフレーム26,26は、揺動選別体14の枠状のフレーム部の少なくとも一部を構成している。
【0026】
グレンパン27は側面視への字状に屈曲し且つ左右方向に所定の幅を有する複数の山部27aを有し、この複数の山部27aは前後に連続して並べられている。各山部27aは、前側の上方傾斜部分に比べて後側の下方傾斜部分が急傾斜になっているか、或いは垂直に落ち込んでいる。揺動選別体14の前後揺動作動時、グレンパン27の上面側に落下した処理物は、各山部27aの上述の形状による作用によって順次後方に送られ、最終的には、該グレンパン27の後端側からチャフシーブ28の前端側に落下する。
【0027】
ストローラック29は、前後方向に長くその厚み方向が左右方向を向けられた複数のラック板31を有している。この複数のラック板31は、左右に並列して配置する状態でユニット化された状態で、揺動選別体14のフレーム部に取り付け固定されている。各ラック板31の上縁部は連続する複数の波状に成形されている。揺動選別体14の前後揺動作動時、処理物の一種である上述の稈状物は、ラック31の上縁部の上述した形状による作用によって後方に搬送され、排出口22から機外に排出される一方で、処理物の一種である上述の粒状物は隣接するラック板31の間の隙間から揺動選別体14の下方に落下する。
【0028】
チャフシーブ28は、その開度を変更することによって、自身の上側に存在する処理物の下方への漏れ量(漏下量)を調整する。詳細を説明すると、このチャフシーブ28は、左右方向に長い板状の複数のフィン32a,33a,34a,36aを有している。各フィン32a,33a,34a,36aは、側面視で前方に向かって下方に傾斜した姿勢を維持する範囲で、その上端部を支点として上下揺動可能に左右のサイドフレーム26,26の間に架設して支持されている。
【0029】
チャフシーブ28の前寄り部分に配置された複数のフィン32aは、その下端部同士が前後方向に形成された板状の連結具32bによって連結され、互いに同一の姿勢を保持した状態で、一体的に揺動作動する第1開閉ユニット32を構成している。
【0030】
チャフシーブ28における第1開閉ユニット32の真後ろ側に配置された複数のフィン33aは、その下端部同士が前後方向に形成された板状の連結具33bによって連結され、互いに同一の姿勢を保持した状態で、一体的に揺動作動する第2開閉ユニット33を構成している。
【0031】
チャフシーブ28における第2開閉ユニット33の真後ろ側に配置された複数のフィン34aは、その下端部同士が前後方向に形成された板状の連結具34bによって連結され、互いに同一の姿勢を保持した状態で、一体的に揺動作動する第3開閉ユニット34を構成している。
【0032】
チャフシーブ28における第3開閉ユニット34の真後ろ側に配置された複数のフィン36aは、その下端部同士が前後方向に形成された板状の連結具36bによって連結され、互いに同一の姿勢を保持した状態で、一体的に揺動作動する第4開閉ユニット36を構成している。
【0033】
各開閉ユニット32,33,34,36は、自身を構成するフィン32a,33a,34a,36aが上方に揺動された場合、その開度が小さくなる。すなわち、フィン32a,33a,34a,36aの上方揺動作動は、開閉ユニット32,33,34,36の閉作動に該当する。そして、フィン32a,33a,34a,36aを最上方位置まで揺動させた場合、開閉ユニット32,33,34,36が全閉又は略全閉状態に切り換えられる。
【0034】
一方、各開閉ユニット32,33,34,36は、自身を構成するフィン32a,33a,34a,36aが下方に揺動された場合、その開度が大きくなる。すなわち、フィン32a,33a,34a,36aの下方揺動作動は、開閉ユニット32,33,34,36の開作動に該当する。そして、フィン32a,33a,34a,36aを最下方位置まで揺動させた場合、開閉ユニット32,33,34,36が全開状態に切り換えられる。
【0035】
開閉ユニット32,33,34,36は、開閉ユニット32,33,34,36毎に個別に設けられ且つサイドフレーム26におけるフィン32a,33a,34a,36aが配置されていない側の面である外面側に位置する作動アーム37,38,39,41によって、その作動が制御される。この作動アーム37,38,39,41は、自身の制御対象となる開閉ユニット32,33,34,36の複数のフィン32a,33a,34a,36aと一体的に上下揺動するように、該フィン32a,33a,34a,36aの1つに機械的に連結される。
【0036】
作動アーム37,38,39,41は、側面で後方に向かって上方傾斜した状態を維持する範囲で、その下端側を支点として上下揺動するようにサイドフレーム26に支持されている。そして、作動アーム37,38,39,41は、その上方揺動によって自身の制御対象の開閉ユニット32,33,34,36を開作動させる一方で、その下方揺動によって自身の制御対象の開閉ユニット32,33,34,36を閉作動させる。
【0037】
作動アーム37,38,39,41の自由端側である上端側には、当接ローラ37a,38a,39a,41aが回転自在に設けられる。サイドフレーム26の外面側には、前後方向に長い単一の板状部材であるカム部材42が前後スライド移動可能に支持されている。このカム部材42の下縁部には、当接ローラ37a,38a,39a,41aと当接するカム部43,44,46,47が複数の作動アーム37,38,39,41毎に個別に設けられている。
【0038】
各当接ローラ37a,38a,39a,41aとカム部43,44,46,47との当接位置は、カム部材42の前後スライド位置によって適宜変更され、これによって作動アーム37,38,39,41の上下揺動位置が制御される。ちなみに、各作動アーム37,38,39,41は、対応するカム部43,44,46,47との当接を維持するように、図示しない付勢部材により上方揺動側に常時弾性的に付勢されている。
【0039】
図示する例では、全ての開閉ユニット32,33,34,36が全閉状態とする最後方位置にスライドされた状態のカム部材42を、その最前方位置までスライド移動させる過程で、まず、最後方位置の開閉ユニット36が開作動を開始し、続いて、その前方の開閉ユニット34が開作動を開始し、続いて、その前方の開閉ユニット33が開作動を開始し、最後に、その前方の開閉ユニット32が開作動を開始する。
【0040】
各開閉ユニット32,33,34,36は、カム部材42の前方スライドに伴って開作動し始めると、カム部材42のスライド量に比例してその開度を増加させ、最後に、全開状態になる。カム部材42の前方スライドに伴って全体状態になる開閉ユニット32,33,34,36の順番は、開作動を開始する順番と同様である。全ての開閉ユニット32,33,34,36を全開状態に切り換えた場合、カム部材42は最前方位置にスライドされた状態になる。
【0041】
ちなみに、前後スライド範囲は、サイドフレーム26から外側側方に突出した規制ピン48と、該規制ピン48が挿通させるようにカム部材42に穿設された前後方向の長孔である規制孔42aとによって規定される。図示する例では、規制ピン48と規制孔42aとの組合せが複数組(図示する例では、前後2組)設けられ、複数の規制ピン48,48を対応する規制孔42a,42aに挿通させることによって、カム部材42がサイドフレーム26側に前後スライド可能に支持される。
【0042】
また、カム部材42のカム部43,44,46,47が形成された部分からさらに前方に延設された部分にはラックギヤ49が形成され、このラックギヤ49と常時噛み合うピニオンギヤ50は、アクチュエータである電動式の開度調整モータ51(図5参照)によって回転駆動される。
【0043】
すなわち、この開度調整モータ51を正逆転方向に回転駆動させることによってカム部材42が前後にスライド移動し、チャフシーブ28の開度が調整される。これに対応して、本例では、カム部材42の前後スライド位置を検出するポテンショメータを、チャフシーブ28の開度を検出する開度検出手段52として設けている。
【0044】
以上のように構成される揺動選別体14によれば、チャフシーブ28を開作動させることによって、処理物が揺動選別体14から漏下する量と、揺動選別体14から上方に吹き抜ける選別風の風量とを増加させる一方で、チャフシーブ28を閉作動させることによって、処理物が揺動選別体14から漏下する量と、揺動選別体14から上方に吹き抜ける選別風の風量とを減少させる。すなわち、選別する処理物の量の増加に伴ってチャフシーブ28の開度を大きくする一方で、選別する処理物の量の減少に伴ってチャフシーブ28の開度を小さくすることにより、適切な選別処理を行うことが可能になる。
【0045】
このチャフシーブ28の開度調整を、マイコン等から構成された制御部53(図5参照)によって行う。具体的には、制御部53が、選別する処理物の量に応じてチャフシーブ28の開度を自動的に制御する自動調整制御と、手動で設定した開度にチャフシーブ28の開度を制御する手動調整制御と、適切な選別が行われずに機外に外出される処理物の量であるロス量が増加することを防止するロス防止制御との3つの制御を実行可能に構成されている。
【0046】
図5は制御部の構成を示すブロック図である。制御部53は、一又は複数のマイコンから構成されている。ちなみに、複数のマイコンから制御部53を構成する場合、マイコン同士はCAN等で相互通信可能に接続される。
【0047】
制御部53の入力側には、運転席に配置され且つ自動調整制御の実行の有無を切り替える自動スイッチ(切替手段)54と、運転席に配置されたクラッチスイッチ(断続状態検出手段)56と、運転席に配置され且つチャフシーブ28の開度を手動で設定する選別ダイヤル(手動設定操作手段)57と、刈取部3の昇降高さを検出するポテンショメータ等のセンサである昇降高さ検出手段58と、選別室11で選別する処理物の量である処理量を予め定めた所定の物理量を検出することによって直接的又は間接的に把握するための複数の処理量検出手段59,61,62,63と、上述した開度検出手段52と、が接続されている。
【0048】
クラッチスイッチ56は、走行機体2に搭載されたエンジン(動力源)から刈取部3及び脱穀装置4への動力の有無を切り替える。
【0049】
本コンバインの作業側への動力伝動構造について簡単に説明すると、走行機体2には、エンジンから刈取部3及び脱穀装置4への動力伝動を断続させる脱穀クラッチと、脱穀クラッチから刈取部3の動力伝動経路の途中に設けられ且つ該脱穀クラッチから刈取部3への動力伝動を断続させる刈取クラッチと、が搭載されている。また、脱穀クラッチから刈取クラッチへの動力伝動経路の途中には、エンジンから刈取部3へ伝動される動力を無段又は有段で変速する変速機構又はHST等(本例ではHST)の刈取変速装置が設けられている。ちなみに、刈取変速装置によって変速された動力がフィードチェーン12にも伝動される。すなわち、刈取変速装置によって、フィードチェーン12及び刈取部3の駆動速度が増減される。
【0050】
そして、上述したクラッチスイッチ56は、脱穀クラッチ及び刈取クラッチを切断状態に切り換えることによって刈取部3及び脱穀装置4を駆動停止させた停止状態と、脱穀クラッチを接続状態に切り換えるとともに刈取クラッチを切断状態に切り換えることによって刈取部3を駆動停止させ且つフィードチェーン12を含む脱穀装置4を駆動させる脱穀状態と、脱穀クラッチ及び刈取クラッチを接続状態に切り換えることによって刈取部3及び脱穀装置4を駆動させる刈取状態と、の3種類の作業伝動状態の切替操作を行うように構成されている。
【0051】
一の処理量検出手段59は、物理量の一種である車速を検出する。具体的には、エンジンから左右のクローラ式走行装置1,1に伝動する動力を有段又は無段で変速する変速機構又はHST等の走行変速装置(本例ではHST)に機械的に連結され且つこの走行変速装置を介した走行変速操作を行う変速レバー側に設けられ、且つ、該走行レバーのレバー操作位置を検出するポテンショメータ等のセンサである操作位置検出手段を、処理量検出手段59として設けている。本例では、本コンバインの走行速度である車速(物理量)の増減に応じて処理量が増減することに着目し、この操作位置検出手段59によって処理量を間接的に検出することが可能になる。
【0052】
その他の一の処理量検出手段61として、左右のクローラ式走行装置1,1を駆動するドライブシャフト等の走行伝動軸の回転数を検出する走行回転センサを設けている。この走行回転センサ61によれば、上述した車速をより直接的に検出することが可能になり、これによって処理量を取得可能になる。
【0053】
選別風に起因した選別室11の風量(物理量)の増減と、処理量の増減との間には、上述の構成によれば、相関関係がある。この相関関係に着目し、選別室11の風量を検出するエアフローセンサである風量検出手段を、上述した2つの処理量検出手段59,61以外の一の処理量検出手段62として設けている。詳細は後述する。
【0054】
チャフシーブ28の上面側における処理物の堆積量(層厚)は、上述した処理量がより直接的に反映された物理量であることに着目し、その堆積量を検出するポテンショメータ(検出センサ)を、上述した3つのの処理量検出手段59,61,62以外の一の処理量検出手段63として設けている。ちなみに、チャフシーブ28における排出口22により近い側の部位である後端部における処理物の堆積量を検出すれば、該堆積量は上述したロス量もより反映した物理量になるため、図4に示す通り、ポテンショメータ63は、チャフシーブ28の後端部の上面側に配置されている。詳細は後述する。
【0055】
一方、制御部53の出力側には、自動スイッチ54によって自動調整制御が実行可能な状態である自動状態に切り替えられている場合には点灯する一方で実行されない状態である手動状態に切り替えられている場合には消灯する自動ランプ(報知手段)64と、運転席にいるオペレータに対してブザー音による報知を行うブザー(報知手段)66と、該オペレータの他、本コンバインの周囲の者でも聞きとることが可能な程度の音量で報知を行うホーン(報知手段)67と、オペレータに対して視覚を介した各種の情報を提供するとともに、その情報提供によって各種の報知を行う液晶モニタ(報知手段)68と、刈取部3へのエンジン動力の伝動の有無や脱穀装置4へのエンジン動力の伝動の有無を切り換える断続アクチュエータ69と、上述した刈取変速装置を変速作動させる電動式モータ等の変速アクチュエータ71と、エンジン制御手段72と、上述した開度調整モータ51と、が接続されている。
【0056】
断続アクチュエータ69は、上述した脱穀クラッチ及び刈取クラッチを断続作動させる電動式モータ等であり、この断続アクチュエータ69によって上述した3種類の作業伝動状態の切換を行う。
【0057】
エンジン制御手段72は、ECU等から構成され、エンジンの駆動・駆動停止の切換や、エンジンの回転数の制御等を実行する。エンジンが停止すれば、本コンバインも走行停止するため、このエンジン制御手段72は、走行停止手段としても機能する。
【0058】
このような構成の制御部53は、上述した自動調整制御、手動調整制御及びロス防止制御の他、運転席のオペレータの操作によって刈取部3が刈取作業を行わない高さ(非作業高さ)まで上昇した場合に、刈取クラッチを切断する自動停止制御も実行可能に構成されている。
【0059】
また、制御部53は、車速の増加に伴って刈取部3及びフィードチェーン12の駆動スピードを比例的に高速に切り換える一方で、車速の減少に伴って刈取部3及びフィードチェーン12の駆動スピードを比例的に低速に切り換える車速連動制御を実行可能に構成されている。
【0060】
図6(A),(B)はエアフローセンサを含む風量検出装置の構成を示す断面図及び側面図である。同図及び図2に示す通り、風量検出装置73は、その主要部分が、脱穀フレーム8の一部を構成し且つ少なくとも選別室11の右側方をカバーする側板78における該選別室11に接する側の反対側の面(外面)側に配置されている。この風量検出装置73は、上述したエアフローセンサ62と、選別室11内のエアをエアフローセンサ62に導入可能なように配管された一又は複数(本例では複数)のパイプ74,76,77と、を有している。
【0061】
一のパイプ74は、その一端側が側板78に挿通させて選別室11内に臨んでいる。パイプ74における選別室11内に臨んだ端部には、該選別室11内のエアを該パイプ74の内部に導入する導入口74aが開口形成されている。すなわち、このパイプ74は、風量検出にあたり、選別風それ自体又はその影響を受けたエアが導入される導入側パイプとなる。この導入側パイプ74の導入口74aと反対側の端部は、T字状の継手75によって、その他の2つのパイプ76,77と接続されている。ちなみに、この導入口74aは、側面視で一番ラセン17の真上側で且つ唐箕ファン16の真後ろ側に位置する部分に配置されている(図2参照)。
【0062】
上述した2つのパイプ76,77における一方のパイプ76は、導入側パイプ74と一直線状に接続され、選別室11から導入パイプ74の内部にエアと共に意図せずに混入した屑等の異物を、その内部に留める。すなわち、このパイプ76は、混入した異物を留めおき、導入口74aからエアフローセンサ62に至るエアの流動経路が塞がれるのを防止する異物回収パイプとなる。このため、異物回収パイプ76の導入パイプ74と接続される側の反対側の端部は、上述した異物を回収するために開放されており、この開放された部分は、着脱可能な閉塞キャップ79によって閉塞されている。
【0063】
上述した2つのパイプ76,77における他方のパイプ77は、導入パイプ74からのエアを、L次状にカーブさせて流動させるように該導入パイプ7にL字状に接続されている。このパイプ77は、異物回収パイプ76にもL字状に接続されており、結果として、該パイプ77が、直線状に接続された導入パイプ72及び異物回収パイプ76に対して、T字状に連結されている。そして、このパイプ77における導入パイプ74及び異物回収パイプ76と接続された側と反対側の端部は、エアフローセンサ62に接続されている。
【0064】
エアフローセンサ62は、2つのポート62a,62bを有し、その一方のポート62aに上述したパイプ77の一端側を接続してエアを供給する構造とした場合、その他方のポート62bから該エアが排出される状態になる。エアフローセンサ62は、このようなエアの供給から排出に至る過程で、選別室11の内部の風量を検出するように構成されている。ちなみに、このような構成から、エアフローセンサ62に接続されるパイプ77は、風量を検出する側により近い検出側パイプになる。また、ポート62bから吐出されるエアは、選別室11外に排出される。
【0065】
風量検出装置73の支持構造についても説明すると、エアフローセンサ62は保護カバー81によって覆われた状態で側板78の外面側に取り付け支持され、上述した複数のパイプ74,76,77も、個別に設けられた固定バンド82具等によって側板78の外面側に取り付け支持されている。
【0066】
図7(A),(B)は堆積量検出装置の要部構成を示す側面図及び平面図である。同図及び図4に示す通り、堆積量検出装置83は、左右のサイドフレーム26,26の間のスペースにおいて、一方(図示する例では左)のサイドフレーム26に着脱可能に支持されている。
【0067】
具体的には、堆積量検出装置83が、上述したポテンショメータ63と、ポテンショメータ63が支持されたハウジング84と、該ハウジング84をポテンショメータ63と共にサイドフレーム26(揺動選別体14)に着脱可能に取り付けて支持するブラケット86と、ハウジング84から後方に一体的に延設されたカバーフレーム87とを一体的に有している。
【0068】
ハウジング84は、その上端部から揺動選別体14の左右中央側に向かって一体的に延設された水平板状の突出部84aと、その下端部からは揺動選別体14の左右中央側に向かって一体的に延設された水平板状の突出部84bとを有している。また、このハウジング84によってポテンショメータ63少なくとも一部(図示する例では大部分)をカバーして保護されている。
【0069】
ブラケット86には、上下方向を向いた長孔86a,86aが前後に並べて複数形成されている。この長孔86a,86aに挿通されたボルト88,88によって、ブラケット86は、サイドフレーム26に着脱可能に締着固定される。ブラケット86の固定に伴い、該ブラケット86とユニット化されたハウジング84、ポテンショメータ63及びカバーフレーム87もサイドフレーム26側に取り付け支持される。
【0070】
ちなみに、サイドフレーム26に取り付けられた状態の堆積量検出装置83は、各ボルト88を緩めることによって、該ボルト88が長孔86aに沿って変位するようにして、その上下位置を調整することが可能になる。この堆積量検出装置83の上下位置調整によって、チャフシーブ28と、その真上に配置されたポテンショメータ63との相対位置を変化させ、その検出状態を適宜調整することが可能になる。
【0071】
カバーフレーム87は、ハウジング86から後方に延出され、ポテンショメータ63の配線等を行う空間をカバーするように構成されている。
【0072】
ポテンショメータ63は、ハウジング86から揺動選別体14の左右方向中央側に突出した左右方向の揺動軸63aと、チャフシーブ28の後端部の直上に位置するように前記揺動軸63aから後方に突出し且つ該揺動軸63aを支点として上下揺動する検出アーム63bと、揺動軸63aに外装され且つ検出アーム63bを下方揺動側に弾性的に付勢する付勢部材であるねじりスプリング(図示しない)と、を備えている。
【0073】
ハウジング84における上述した下側の突出部84bは、検出アーム63bの上下揺動範囲の下限を定めるストッパとして機能している。ねじりスプリングの螺旋部分から突出した両端部の一方の端部も該突出部84bに当接しており、その他方の端部は検出アーム63b側の部分と当接しており、これによってねじりスプリングの弾性力を検出アーム63bに作用させ、上述した弾性的な付勢を実現している。
【0074】
以上ように構成される堆積量検出装置83によれば、チャフシーブ28の後端部の上面側において、処理物の堆積量が増加した場合には、堆積した処理物によって検出アーム63bが上方位置に揺動作動する一方で、処理物の無くなるか、或いはその堆積量が減少した場合には、ねじりスプリングの弾性力によって検出アーム63bが下方位置に揺動作動する。
【0075】
このため、検出アーム63bの上下揺動位置を検出すれば、チャフシーブ28の後端部の上面側における処理物の堆積量を直接的に把握することが可能になる。ちなみに、この検出アーム63bは、その下部がその中途部及び上部に対して、処理物の選別下流側である後方に向かって曲げ形成されている。
【0076】
図8は制御部の処理手順を示すフロー図である。制御部53は、ステップS1から処理を開始する。ステップS1では、クラッチスイッチ56の過去の操作履歴や断続アクチュエータ69の過去の作動履歴等から、その時点での作業伝動状態の確認を行い、作業伝動状態が停止状態であることが確認された場合には、自動調整制御、手動調整制御又はロス防止制御の何れも実施される可能性がないため、そのルーチン処理を終了させ、次のルーチン処理においてステップS1から再度処理を開始する。
【0077】
一方、ステップS1において、作業伝動状態が刈取状態又は脱穀状態の何れかである場合には、自動調整制御、手動調整制御又はロス防止制御の何れかが実行される可能性があるため、ステップS2に進む。ちなみに、自動調整制御、手動調整制御及びロス防止制御は、互いが同時に実行されることはなく、自動調整制御、手動調整制御及びロス防止制御の3つの内の何れか1つの制御が実行されている場合、それ以外の制御の実行は停止された状態になる。また、作業伝動状態が停止状態であることが確認された場合、自動調整制御、手動調整制御及びロス防止制御の全ての実行が停止される。
【0078】
ステップS2では、ロス防止制御を実行するための条件であるロス防止制御実行条件を満たしているか否かを確認し、該条件を満たしている場合にはロス防止制御を実行すべくステップS3に進む一方で、満たしていなければステップS4に進む。
【0079】
ロス防止制御実行条件が満たされている場合とは、ロス防止制御が実行されている状態と、堆積量検出装置83によって検出されるチャフシーブ28の後端部の上面側の処理物の堆積量が予め定めた所定の値(第1設置値)を超えている状態との少なくとも何れか一方の該当している場合を意味している。ちなみに、チャフシーブ28の後端部の上面側の処理物の堆積量が第1設定値を超えている状態とは、選別対象である処理物の量が多すぎてロス量が増大してオーバーフローしている状態か、近い将来にオーバーフローするリスクがある状態等を想定している。
【0080】
なお、図5に仮想線で示す通り、この第1設定値を手動操作によって変更する設定変更手段89を制御部53の入力側に接続して設けてもよい。
【0081】
ステップS3では、ロス防止制御を実行中にセットし、その回のルーチン処理を終了させ、続いて次のルーチン処理に移行し、ステップS1から再度処理を開始する。このロス防止制御の内容の詳細については後述する。
【0082】
ステップS4では、自動スイッチ54によって自動調整制御が実行可能な状態になっているか否かを確認し、実行可能な状態に切り替えられていればステップS5に進む。ステップS5では、自動調整制御を実行するための条件である自動調整制御実行条件を満たしているか否かを確認し、該条件を満たしている場合には自動調整制御を実行すべくステップS6に進む一方で、満たしていなければ、その回のルーチン処理を終了させ、続いて次のルーチン処理に移行し、ステップS1から再度処理を開始する。
【0083】
自動調整制御実行条件が満たされている場合とは、自動調整制御が実行されている状態と、選別室11の処理物の量である処理量が予め定めた所定の値(第2設定値)を超えている状態との少なくとも何れか一方の該当している場合を意味している。
【0084】
自動調整制御実行条件を満たしているか否かを判断する目的で処理量を確認するにあたり、堆積量検出装置83による検出結果を利用することも論理的には可能であるたが、ここでは、堆積量検出装置83とは異なる処理量検出手段を用い、且つ、堆積量検出装置83が検出する物理量とは異なる種類の物理量を、その検出の対象にしている処理量検出手段を用いる。本例では、風量検出装置73による検出結果によって把握される処理量が第2設定値を超えているか否かによって、自動調整制御実行条件が満たされているか否かを判断する。
【0085】
なお、本例では、第2設定値も、上述した設定変更手段89による操作によって、適宜変更することを可能としてもよい。
【0086】
ステップS6では、自動調整制御を実行中にセットし、その回のルーチン処理を終了させ、続いて次のルーチン処理に移行し、ステップS1から再度処理を開始する。この自動調整制御の内容の詳細については後述する。
【0087】
ステップS4において、自動調整制御を実行可能な状態に切り替えられていないことが確認された場合、それは手動調整制御を実行すべき状態であることを意味するため、ステップS7に進む。ステップS7では、手動調整制御を実行し、その回のルーチン処理を終了させ、続いて次のルーチン処理に移行し、ステップS1から再度処理を開始する。
【0088】
手動調整制御の実行中、チャフシーブ28の開度は、選別ダイヤル57によって手動設定された値に制御される。
【0089】
続いて、ロス防止制御の内容について詳述すると、ロス防止制御の実行中、チャフシーブ28が予め定めた所定の開度(ロス防止開度)になるようにフィン32a,33a,34a,36aの揺動位置が制御されるとともに、制御部53の出力側に接続された各種の上述した報知手段66,67,68によってロス防止制御が実行する状態になっていることを、運転席のオペレータや本コンバインの周囲の者に報知する処理(ロス防止時警報)を行う。
【0090】
ロス防止開度は、オーバーフローを防止又は抑制するため、物理的に調整可能なチャフシーブ28の開度の範囲中において、大きい側の値又は範囲に設定する必要があり、本例では、全開に設定されている。
【0091】
ちなみに、ロス防止制御実行条件と、自動調整制御実行条件とは、上述した内容により、同時に満たされる場合もあるが、この場合、1回のルーチン処理において、ステップS2の処理がステップS5処理よりも必ず先に実行されるため、ロス防止制御は、自動調整制御に優先して実行される。
【0092】
また、上述のフロー図に示された内容によれば、自動スイッチ54の操作によって自動調整制御は実行されない状態になるが、1回のルーチン処理において、ステップS2の処理は、ステップS4の処理よりも必ず先に行われるため、自動調整制御が実行されない状態でもロス防止制御を実行することが可能である。
【0093】
なお、このロス防止開度を上述した設定変更手段89によって変更できるようにしてもよい。
【0094】
また、図5に仮想線で示す通り、ロス防止制御の実行中に継続して行われる上述のロス防止時警報を解除する解除手段91を制御部53の入力側に接続して設けてもよい。制御部53は、解除手段91による上述の解除が実行された後、自動スイッチ54により自動調整制御が実行可能な状態に切り替えられていること、或いは、刈取部3が上述した非作業高さ以上の高さに上昇駆動されていること、の何れかの状態を満たしたことを条件として、ロス防止制御の実行を終了させる。
【0095】
続いて、自動調整制御の内容について詳述すると、自動調整制御の実行が開始されると、フィードチェーン28の開度が予め定めた値(開始開度)に切り換えられているか、或いは、フィードチェーン28の開度が開始開度になるようにフィン32a,33a,34a,36aが揺動される。
【0096】
開始開度は、リアルタイムで検出される上述の車速と、選別ダイヤル57により手動設定された値とに基づいて決定され、随時変更される。そして、チャフシーブ28の開度は、自動調整制御が実行された時点で、開始開度に切り換えてもよいが、自動調整制御、手動調整制御又はロス防止制御の何れも実行されていないことを条件として、チャフシーブ28の開度が開始開度で維持されるように、フィン32a,33a,34a,36aを適宜揺動作動させてもよい。
【0097】
そして、制御部53は、自動調整制御の実行中、ポテンショメータ63以外の処理量検出手段59,61,62(本例では、エアフローセンサ62)によって検出される上述の処理量が、予め定めた所定の値(基準値)又は基準(基準範囲)を超えた値になっている状態(ランクアップ状態)が予め定めた所定時間(設定計測時間)継続して確認された場合には、チャフシーブ28の開度を一段階アップさせるランクアップ処理が行われる一方で、該処理量が基準値以下の状態又は基準範囲外の小さな値になっている状態(ランクダウン状態)が、上述した設定計測時間以上継続して確認された場合には、チャフシーブ28の開度を一段階ダウンさせるランクダウン処理が行われる。
【0098】
基準値や基準範囲の上限を、第2設定値を同一としてもよいし、或いは異なる値に設定してもよい。また、この基準値や基準範囲を上述した設定変更手段89によって適宜変更可能としてもよい。ちなみに、自動調整制御の実行中、上述した処理量が基準範囲内に収まっている場合、チャフシーブ28の開度は、その時点での状態で維持される。
【0099】
設定計測時間も、上述した設定変更手段89によって適宜変更可能としてもよい。また、設定計測時間という概念を設けず、ランクアップ状態が確認された場合には直ちにランクアップ処理を実行する一方で、ランクダウン状態が確認された場合には直ちにランクダウン処理を実行するようにしてもよい。
【0100】
また、制御部53は、自動調整制御の実行中、チャフシーブ28の開度が上述した開始開度に基づいて予め定めた所定の開度(設定下限開度)未満にならないように、その制御を実行してもよい。
【0101】
同様に、制御部53は、自動調整制御の実行中、チャフシーブ28の開度が予め定めた所定の開度(設定上限開度)を超えて大きくならないように、その制御を実行してもよい。設定上限開度を、チャフシーブ28の物理的な上限とすることも勿論可能である。
【0102】
さらに、制御部53は、自動調整制御の実行中、チャフシーブ28の開度が設定上限開度に達した場合、或いは、検出される上述の処理量が基準値又は基準範囲の上限よりもさらに大きな値(異常値)を超えている場合には、その旨を、上述した報知手段66,67,68によって運転席のオペレータや本コンバインの拾遺の者に報知する処理(自動調整時警報)を行う。この報知は、ランクダウン状態が確認されるまで継続して行う。
【0103】
なお、ロス防止時警報が実行される状態は、自動調整時警報の処理が実行される状態よりもより深刻で、その実行頻度も低い。この事態を反映させるため、自動調整時警報を注意喚起程度とし且つロス防止時警報を深刻な警報とすべく、その報知に使用する報知手段66,67,68の数や、報知する音の大小若しくは種類や、報知する情報の内容を変えること等も可能である。
【0104】
また、ロス防止制御の実行中、車速に基づく刈取部3及びフィードチェーン12の駆動速度の連動制御をより低速に設定し、上述した処理量が低下するようにしてもよい。
【0105】
以上のように構成される本コンバインによれば、チャフシーブ28の開度を、状況に応じてより適切に制御すること可能になるとともに、適切なタイミングで適切な報知を行うことが可能になる。
【符号の説明】
【0106】
4 脱穀装置
14 揺動選別体
16 唐箕ファン(ファン)
22 排出口
28 チャフシーブ
32a,33a,34a,36a フィン
51 開度調整モータ(アクチュエータ)
53 制御部
54 自動スイッチ(切替手段)
59 操作位置検出手段(処量検出手段)
61 走行回転センサ(処理量検出手段)
62 エアフローセンサ(処理量検出手段)
63 ポテンショメータ(検出センサ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8