(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151315
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】品質管理システム及び品質管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20231005BHJP
【FI】
G06T7/00 350B
G06T7/00 610C
G06T7/00 300E
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060873
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】西形 光祐
(72)【発明者】
【氏名】石坂 昭信
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA02
5L096AA06
5L096BA03
5L096CA02
5L096DA01
5L096EA39
5L096FA02
5L096FA32
5L096FA33
5L096FA69
5L096GA08
5L096GA17
5L096GA51
5L096HA11
5L096JA11
5L096KA04
5L096KA15
(57)【要約】
【課題】被検物の特徴のばらつきを理解しやすい機械学習を用いた品質管理システムを提供する。または、被検物の特徴のばらつきを理解しやすい機械学習を用いた品質管理プログラムを提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る品質管理システムは、複数の学習用画像データと、学習用画像データから生成した復元画像データとの差を含む差分データを生成するオートエンコーダと、所定の区間毎に差分データの平均値及び分散値を算出してファイルを生成するファイル生成部と、ファイルのデータに基づいて、画像を生成する可視化処理部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の学習用画像データと、前記学習用画像データから生成した復元画像データとの差を含む差分データを生成するオートエンコーダと、
所定の区間毎に前記差分データの平均値及び分散値を算出してファイルを生成するファイル生成部と、
前記ファイルのデータに基づいて、画像を生成する可視化処理部と、を備える、品質管理システム。
【請求項2】
前記オートエンコーダは、複数の学習用画像データのピクセル毎に複数の学習用画像データから特徴を抽出し、抽出した前記特徴に基づいて、復元画像データを生成し、
前記ファイル生成部は、混合ガウスモデルを適用して、前記差分データの平均値及び分散値を算出する、請求項1に記載の品質管理システム。
【請求項3】
前記可視化処理部は、前記ファイルに含まれる平均値ばらつき又は分散値ばらつきに基づいて画像を生成する、請求項2に記載の品質管理システム。
【請求項4】
前記差分データにおける異常値の有無を判定する判定部、をさらに備え、
前記判定部は、被検物の第1の画像データから生成された前記差分データについて異常値の有無を判定し、
前記可視化処理部は、前記被検物の第1の画像データと、前記判定部の判定結果とに基づいて、前記異常値を含む第2の画像を生成する、請求項1乃至3の何れか1項に記載の品質管理システム。
【請求項5】
前記判定部は、前記異常値と判定された差分データを含む第1の区間の範囲に基づき、前記第1の区間とは異なる大きさを有する第2の区間を設定し、前記第2の区間毎に前記差分データの平均値及び分散値を算出する、請求項4に記載の品質管理システム。
【請求項6】
前記差分データにおける異常値の有無を判定する判定部、をさらに備え、
前記判定部は、設計データと前記差分データとを比較して、前記差分データにおける異常値の有無を判定する、請求項1乃至3の何れか1項に記載の品質管理システム。
【請求項7】
前記設計データは、部分毎に所定の許容値の範囲を有し、
前記判定部は、前記許容値の範囲と前記差分データとを比較して、前記差分データにおける異常値の有無を判定して、異常値を含む前記部分に重み付けし、
前記可視化処理部は、重み付けされた前記部分を含む前記画像を生成する、請求項6に記載の品質管理システム。
【請求項8】
複数の学習用画像データと、前記学習用画像データから生成した復元画像データとの差を含む差分データをコンピュータに生成させ、
所定の区間毎に前記差分データの平均値及び分散値を前記コンピュータに算出させてファイルを生成させ、
前記ファイルのデータに基づいて、前記コンピュータに画像を生成させること、を備える、品質管理プログラム。
【請求項9】
複数の学習用画像データから画素毎に特徴を前記コンピュータに抽出させ、抽出した前記特徴に基づいて、復元画像データを前記コンピュータに生成させ、
混合ガウスモデルを適用させて、前記差分データの平均値及び分散値を前記コンピュータに算出させる、請求項8に記載の品質管理プログラム。
【請求項10】
前記ファイルに含まれる平均値ばらつき又は分散値ばらつきに基づいて前記コンピュータに画像を生成させる、請求項9に記載の品質管理プログラム。
【請求項11】
被検物の第1の画像データから生成された前記差分データについて異常値の有無を前記コンピュータに判定させ、
前記被検物の第1の画像データと、判定結果とに基づいて、前記異常値を含む第2の画像を前記コンピュータに生成させる、請求項8乃至10の何れか1項に記載の品質管理プログラム。
【請求項12】
前記異常値と判定された差分データを含む第1の区間の範囲に基づき、前記第1の区間とは異なる大きさを有する第2の区間を前記コンピュータに設定させ、前記第2の区間毎に前記差分データの平均値及び分散値を前記コンピュータに算出させる、請求項11に記載の品質管理プログラム。
【請求項13】
設計データと前記差分データとを比較して、前記差分データにおける異常値の有無を前記コンピュータに判定させる、請求項8乃至10の何れか1項に記載の品質管理プログラム。
【請求項14】
前記設計データは、部分毎に所定の許容値の範囲を有し、
前記許容値の範囲と前記差分データとを前記コンピュータに比較させて、前記差分データにおける異常値の有無を前記コンピュータに判定させて、異常値を含む前記部分に重み付けさせ、
重み付けされた前記部分を含む前記画像を前記コンピュータに生成させる、請求項13に記載の品質管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、品質管理システム、特に、機械学習を用いた品質管理システムに関する。または、本発明は、機械学習を用いた品質管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像認識技術として、機械学習を用いた技術が数多く報告されている。例えば、特許文献1には、画像を入力する画像入力手段と、入力した画像から2つの画素の組合せを取得する画素組合せ取得手段と、取得した組合せに係る2つの画素の輝度の勾配方向の共起を取得する共起取得手段と、取得する画素の組合せを変化させながら、取得する共起の出現頻度の分布を取得する出現頻度取得手段と、取得した出現頻度の分布に対応する確率密度関数を生成する確率密度関数生成手段と、生成した確率密度関数を、当該確率密度関数を規定するパラメータによって出力する確率密度関数出力手段と、を具備したことを特徴する画像処理装置が記載されている。
【0003】
また、機械学習を用いた画像認識技術を利用して、被検体の異常の有無を判定する方法として、特許文献2には、被検体について連続的に取得された複数の画像データから被検体の特徴量を抽出する特徴抽出部と、特徴抽出部により抽出された特徴量と予め定められた閾値とに基づいて検体の異常の有無を判定する判定部とを備え、特徴抽出部が、デコーダおよび識別器と共に敵対的自己符号化器を構成するエンコーダに相当しており、エンコーダにより抽出された特徴量からデコーダにより入力画像データが復元されるようにする第1の学習と、識別器が予め定められた分布からのサンプルとエンコーダにより抽出された特徴量とを識別できるようにする第2の学習と、識別器の識別結果に基づいてエンコーダにより抽出される特徴量の分布が予め定められた分布に近づくようにする第3の学習とを順番に繰り返すことにより適合され、閾値が、適合された特徴抽出部により複数の正常な被検体から抽出された複数の特徴量をクラスタリングして定められる異常判別システムが記載されている。
【0004】
従来の機械学習を用いたシステムは、学習が完了すると、深層学習アルゴリズム(AutoEncoder)で復元した画像と元画像との差分データを、特徴のばらつきとして保存する。特徴のばらつきは、細分化された画像区間毎の画素値の平均値、及び分散値情報としてgmm形式で出力される。
【0005】
画像区間毎に1つのgmmファイルが生成されるが、gmmファイルは数値を記録したデータである。このため、数万点以上のgmmファイルが生成される場合、特徴のばらつきがどのように分布しているかを解析しようとしても、人が感覚として捉えることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-124963号公報
【特許文献2】特開2020-177282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一実施形態は、被検物の特徴のばらつきを理解しやすい機械学習を用いた品質管理システムを提供することを目的の一つとする。または、本発明の一実施形態は、被検物の特徴のばらつきを理解しやすい機械学習を用いた品質管理プログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る品質管理システムは、複数の学習用画像データと、学習用画像データから生成した復元画像データとの差を含む差分データを生成するオートエンコーダと、所定の区間毎に差分データの平均値及び分散値を算出してファイルを生成するファイル生成部と、ファイルのデータに基づいて、画像を生成する可視化処理部と、を備える。
【0009】
オートエンコーダは、複数の学習用画像データのピクセル毎に複数の学習用画像データから特徴を抽出し、抽出した特徴に基づいて、復元画像データを生成し、ファイル生成部は、混合ガウスモデルを適用して、差分データの平均値及び分散値を算出してもよい。
【0010】
可視化処理部は、ファイルに含まれる平均値ばらつき又は分散値ばらつきに基づいて画像を生成してもよい。
【0011】
差分データにおける異常値の有無を判定する判定部、をさらに備え、判定部は、被検物の第1の画像データから生成された差分データについて異常値の有無を判定し、可視化処理部は、被検物の第1の画像データと、判定部の判定結果とに基づいて、異常値を含む第2の画像を生成してもよい。
【0012】
判定部は、異常値と判定された差分データを含む第1の区間の範囲に基づき、第1の区間とは異なる大きさを有する第2の区間を設定し、第2の区間毎に差分データの平均値及び分散値を算出してもよい。
【0013】
差分データにおける異常値の有無を判定する判定部、をさらに備え、判定部は、設計データと差分データとを比較して、差分データにおける異常値の有無を判定してもよい。
【0014】
設計データは、部分毎に所定の許容値の範囲を有し、判定部は、許容値の範囲と差分データとを比較して、差分データにおける異常値の有無を判定して、異常値を含む部分に重み付けし、可視化処理部は、重み付けされた部分を含む画像を生成してもよい。
【0015】
本発明の一実施形態に係る品質管理プログラムは、複数の学習用画像データと、学習用画像データから生成した復元画像データとの差を含む差分データをコンピュータに生成させ、所定の区間毎に差分データの平均値及び分散値を前記コンピュータに算出させてファイルを生成させ、ファイルのデータに基づいて、コンピュータに画像を生成させること、を備える。
【0016】
複数の学習用画像データから画素毎に特徴をコンピュータに抽出させ、抽出した特徴に基づいて、復元画像データをコンピュータに生成させ、混合ガウスモデルを適用させて、差分データの平均値及び分散値をコンピュータに算出させてもよい。
【0017】
ファイルに含まれる平均値ばらつき又は分散値ばらつきに基づいてコンピュータに画像を生成させてもよい。
【0018】
被検物の第1の画像データから生成された差分データについて異常値の有無をコンピュータに判定させ、被検物の第1の画像データと、判定結果とに基づいて、異常値を含む第2の画像を前記コンピュータに生成させてもよい。
【0019】
異常値と判定された差分データを含む第1の区間の範囲に基づき、第1の区間とは異なる大きさを有する第2の区間をコンピュータに設定させ、第2の区間毎に差分データの平均値及び分散値をコンピュータに算出させてもよい。
【0020】
設計データと差分データとを比較して、差分データにおける異常値の有無をコンピュータに判定させてもよい。
【0021】
設計データは、部分毎に所定の許容値の範囲を有し、許容値の範囲と差分データとをコンピュータに比較させて、差分データにおける異常値の有無をコンピュータに判定させて、異常値を含む部分に重み付けさせ、重み付けされた部分を含む画像をコンピュータに生成させてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一実施形態は、被検物の特徴のばらつきを理解しやすい機械学習を用いた品質管理システムを提供する。または、本発明の一実施形態は、被検物の特徴のばらつきを理解しやすい機械学習を用いた品質管理プログラムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係る品質管理システム100を示すブロック構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る処理の概略を説明するフロー図である。
【
図3】(A)は、本発明の一実施形態に係る差分データを生成する工程S10を説明するフロー図であり、(B)は、本発明の一実施形態に係る差分データを生成する工程S10を説明する概念図である。
【
図4】(A)~(D)は、画像データについて、1ピクセル(px)と、ファイル生成部130が用いる所定の区間Aとの関係を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る差分データの平均値及び分散値を算出してファイルを生成する工程S20を説明するフロー図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る特徴を可視化する工程S30を説明するフロー図である。
【
図7】(A)は、可視化処理部150が生成した画像を示す模式図であり、(B)は、その製品の上面図の模式図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る製品の品質管理方法を示すフロー図である。
【
図9】(A)は、可視化処理部150が生成した画像を示す模式図であり、(B)は、傷を有する被検物の上面図の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に示す実施形態は本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0025】
本実施形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号又は類似の符号(数字の後にA、Bなどを付しただけの符号)を付す。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なったり、構成の一部が図面から省略されたりする場合がある。なお、本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの序数は、説明を簡潔にするためだけに用いられており、限定的に解釈されるべきではない。
【0026】
[品質管理システム]
図1は、本発明の一実施形態に係る品質管理システム100を示すブロック構成図である。品質管理システム100は、例えば、オートエンコーダ120、ファイル生成部130、可視化処理部150を含む。また、一実施形態において、品質管理システム100は、例えば、入力部110、判定部140、制御部160及び出力部170をさらに含む。一実施形態において、品質管理システム100は、記憶部180及び通信部190をさらに含むが、これらに限定されるものではない。
【0027】
図3(B)にオートエンコーダ120を説明する図を示す。また、
図4は、品質管理をする製品の画像データについて、1ピクセル(px)と、ファイル生成部130が用いる所定の区間Aとの関係を示す図である。
図4(A)~
図4(D)においては、e×fピクセルの画像データを示す。オートエンコーダ120は、ニューラルネットワークを使用した次元圧縮のための公知のアルゴリズムの1つであり、入力層121を中間層123に圧縮することにより特徴を抽出するエンコーダ127と、中間層123から出力層125に復元するデコーダ129を備える。一実施形態において、オートエンコーダ120は、記憶部180に格納され、制御部160で実行される、プログラム又はモジュールであってもよい。本実施形態において、オートエンコーダ120は、複数の学習用画像データ10の入力を受けて、学習用画像データ10の1枚毎にエンコードとデコードを実施する。オートエンコーダ120は、学習用画像データ10の1ピクセル(第1の区間)のデータ毎にエンコードとデコードを実施することにより、複数の学習用画像データ10のそれぞれに対して、復元画像データ30を生成する。このとき、オートエンコーダ120は、1ピクセル毎に学習用画像データ10に含まれる特徴を抽出し、学習用画像データ10と復元画像データ30との差分データを学習用画像データ10のそれぞれに対して生成する。一実施形態において、差分データは、1ピクセル毎に整数値として生成され、0以下の値を含んでもよい。なお、オートエンコーダ120は、品質管理システム100において演算処理の負荷が大きいため、品質管理システム100の外部に配置され、通信部190からネットワークを介してと通信可能な演算処理装置により構成されてもよい。
【0028】
ファイル生成部130は、混合ガウスモデルを適用して、差分データについて、所定の区間(第2の区間)毎に平均値及び分散値を算出するプログラム又はモジュールである。一実施形態において、ファイル生成部130は、記憶部180に格納され、制御部160で実行される。ファイル生成部130は、所定の区間毎に算出した差分データの平均値及び分散値を含むファイルを生成する。本明細書において、「所定の区間」は、品質管理の対象となる製品に求められる品質や、製品に生じる欠陥等のサイズを考慮して設定することができる。なお、
図4においては、一例として、3×4ピクセルを所定の区間として設定した例を示すが、これに限定されるものではない。ファイル生成部130により算出された分散値は、単峰又は多峰の正規分布となる。なお、オートエンコーダ120とファイル生成部130は、一連の処理を実行する1つのプログラマ又はモジュールであってもよい。
【0029】
可視化処理部150は、ファイル生成部130により生成されたファイルに含まれる平均値ばらつき又は分散値ばらつきに基づいて画像を生成するプログラム又はモジュールである。一実施形態において、ファイル生成部130は、記憶部180に格納され、制御部160で実行される。品質管理システム100においては、可視化処理部150が、ファイル生成部130により生成されたファイルに含まれる平均値ばらつき又は分散値ばらつきを人が視認可能な画像に変換して出力するため、製品の品質管理において、製品の製造誤差や傷の発生を視覚的に認識することが可能となり、製造工程の見直しに重要な情報を人が容易に理解することができる。
【0030】
入力部110は、品質管理システム100を操作するための入力装置であり、キーボード、マウス及びを備えた表示装置(例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ)等の公知の入力装置を用いることができる。また、入力部110は、オートエンコーダ120に提供する画像データを取得する撮像部111を備えることができる。撮像部111は、画像データを取得なカメラであり、CCDやCMOS等の公知の撮像素子を用いることができる。
【0031】
判定部140は、ファイル生成部130により生成された差分データにおける異常値の有無を判定するプログラム又はモジュールである。一実施形態において、判定部140は、記憶部180に格納され、制御部160で実行される。一実施形態において、判定部140は、被検物の画像データから生成された差分データについて異常値の有無を判定することができる。また、利用者が異常値を認識しやすくする目的で、判定部は、予め設定された許容値の範囲から外れた異常値を検出した場合に、異常値を含む区間に重み付けした画像を生成してもよい。
【0032】
制御部160は、品質管理システム100を制御するための公知の中央処理装置(CPU)、オペレーティングシステム(OS)及び制御プログラム又はモジュールで構成される。または、制御部160は、OSと制御プログラム又はモジュールを含む1つのプログラムとして提供されてもよい。制御部160を構成する制御プログラム又はモジュールは、記憶部180に格納されてCPUで実行される。
【0033】
出力部170は、オートエンコーダ120で生成された差分データ、ファイル生成部130で生成されたファイル、又は可視化処理部150で生成された画像を出力するための公知の出力装置である。また、出力部170は、表示部171を含む。表示部171は、公知の表示装置(例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ)であってもよく、特には限定されない。一実施形態において、出力部170は、入力部110としても機能可能なタッチパネルを備えた表示装置であってもよい。
【0034】
記憶部180は、制御部160を構成するオペレーティングシステム(OS)及び制御プログラム又はモジュール、オートエンコーダ120を構成するプログラム又はモジュール、ファイル生成部130を構成するプログラム又はモジュール、可視化処理部150を構成するプログラム又はモジュール、オートエンコーダ120で生成された差分データ、ファイル生成部130で生成されたファイル、又は可視化処理部150で生成された画像を格納する記憶装置である。記憶部180は、公知の記憶装置により構成され、例えば、メモリ、ハードディスク、又はソリッドステートドライブ(SSD)等を用いることができる。なお、記憶部180は、制御部160を有するコンピュータに内蔵されてもよく、又は、通信部190を介して通信可能なサーバやネットワークドラブに配置されてもよい。
【0035】
通信部190は、制御部160により制御可能な公知の有線又は無線の通信装置である。通信部190は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)及びインターネット等の通信ネットワークに接続することができる。通信部190は、例えば、Wi-Fi(登録商標)(IEEE 802.11規格を使用する通信手段)やBluetooth(登録商標)等の無線通信規格に適合した通信装置であってもよい。通信部190は、通信部190を有するコンピュータの外部に配置されたサーバやネットワークドラブとのデータ通信を行ってもよい。
【0036】
[品質管理システムによる処理]
品質管理システム100による処理について
図2~
図9を参照して説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る処理の概略を説明するフロー図である。品質管理システム100は、複数の学習用画像データと、学習用画像データから生成した復元画像データとの差を含む差分データを生成する(工程S10)。品質管理システム100は、所定の区間毎に差分データの平均値及び分散値を算出してファイルを生成する(工程S20)。そして、品質管理システム100は、生成されたファイルのデータに基づいて、画像を生成する(工程S30)。
【0037】
図3を参照する。
図3(A)は、本発明の一実施形態に係る差分データを生成する工程S10を説明するフロー図である。
図3(B)は、本発明の一実施形態に係る差分データを生成する工程S10を説明する概念図である。オートエンコーダ120が、複数の学習用画像データ10を取り込む(工程S11)。複数の学習用画像データ10は、撮像部111が製品を撮像することにより取得することができる。または、予め取得され、記憶部180に格納された複数の学習用画像データ10をオートエンコーダ120が取り込んでもよい。
【0038】
オートエンコーダ120は、入力層121に入力された学習用画像データ10をエンコーダ127で圧縮し、中間層123を生成する。また、オートエンコーダ120は、デコーダ129で出力層125に復元して、復元画像データ30を生成する(工程S15)。オートエンコーダ120は、この処理により1ピクセル毎に学習用画像データ10から特徴を抽出する(工程S13)。
【0039】
より詳細には、例えば、e×fピクセルの学習用画像データ10には、mピクセル分のサブピクセルデータが含まれる。また、それぞれのピクセルは、赤(R)、緑(G)及び青(B)の3つの成分(サブピクセル)の値(輝度値)を含む。オートエンコーダ120が学習用画像データ10をn枚用いた学習を行う場合、1枚目の学習用画像データ10~n枚目の学習用画像データ10について、色成分毎にエンコーダ127での圧縮及びデコーダ129での復元を行う。オートエンコーダ120は、複数の学習用画像データ10について、復元画像データ30との差分データを生成する。例えば、1枚目の学習用画像データの1番目のピクセルを(R11,G11,B11)、m番目のピクセルを(R1m,G1m,B1m)とし、n枚目の学習用画像データの1番目のピクセルを(Rn1,Gn1,Bn1)、m番目のピクセルを(Rnm,Gnm,Bnm)とすると、オートエンコーダ120が生成する差分データは、1枚目の学習用画像データの1番目のピクセルが(ΔR11,ΔG11,ΔB11)、m番目のピクセルが(ΔR1m,ΔG1m,ΔB1m)となり、n枚目の学習用画像データの1番目のピクセルが(ΔRn1,ΔGn1,ΔBn1)、m番目の区間が(ΔRnm,ΔGnm,ΔBnm)となる。
【0040】
本実施形態においては、複数の学習用画像データ10を用いて、工程S10を繰り返した機械学習を実行することにより、学習用画像データ10と復元画像データ30との差分データの値が0に近づく。得られたデータは、次の工程S20で処理されてもよく、記憶部180に格納されてもよい。
【0041】
一実施形態において、人が画像処理ソフトウェア等を利用して、学習用画像データ10を加工することにより、オートエンコーダ120が生成する差分データを修正してもよい。または、差分データが規定値以上の異常値を含む場合に、品質管理システム100が異常値を認識して、異常であることを表示してもよい。
【0042】
図5を参照する。
図5は、本発明の一実施形態に係る差分データの平均値及び分散値を算出してファイルを生成する工程S20を説明するフロー図である。ファイル生成部130は、オートエンコーダ120が1ピクセル毎に生成した差分データについて、所定の区間毎に平均値及び分散値を算出する。ファイル生成部130は、1ピクセル毎の複数の差分データを基に、区間毎に混合ガウスモデルを適用したファイルを生成する。例えば、1番目の区間の差分データは、(μ
R1 μ
G1 μ
B1 σ
R1 σ
G1 σ
B1 σ
RG1 σ
GB1 σ
BR1)、2番目の区間の差分データは、(μ
R2 μ
G2 μ
B2 σ
R2 σ
G2 σ
B2 σ
RG2 σ
GB2 σ
BR2)、k番目の区間の差分データは、(μ
Rk μ
Gk μ
Bk σ
Rk σ
Gk σ
Bk σ
RGk σ
GBk σ
BRk)と規定される。
【0043】
例えば、ファイル生成部130は、区間毎の色成分について平均μを算出する。例えば、区間1/kの赤(R)成分の平均μ
R1は、下記式(1)により算出する。
【数1】
【0044】
また、ファイル生成部130は、区間毎の色成分について分散σを算出する。例えば、区間1/kの赤(R)成分の分散σ
R1は、下記式(2)により算出する。
【数2】
【0045】
また、ファイル生成部130は、区間毎の色成分について共分散σを算出する(工程S21)。例えば、区間1/kの赤(R)及び緑(G)成分の共分散σ
RG1は、下記式(3)により算出する。
【数3】
【0046】
ファイル生成部130は、算出結果を正規分布として出力する(工程S23)。
【0047】
得られたファイルは、次の工程S30で処理されてもよく、記憶部180に格納されてもよい。
【0048】
工程S20でファイルを生成するための所定の区間(第2の区間)の設定は、品質管理の対象となる製品に求められる品質や、製品に生じる欠陥等のサイズを考慮して人が入力部110を介して設定してもよい。所定の区間のサイズを小さくすると、生成されるファイルの精度は高くなるが、演算量が増加して、ファイル生成部130での処理時間が長くなる。一実施形態において、初期値として第2の区間を与えると、判定部140が、異常値と判定した差分データを含む第2の区間の範囲に基づき、第2の区間とは異なる大きさを有する第3の区間を再設定して、より適切な第3の区間毎にファイル生成部130が差分データを用いた演算処理を実行して、差分データの平均値及び分散値を含むファイルを生成してもよい。このような再設定処理(リファインメント)を繰り返すことにより、最適な区画を設定してもよい。
【0049】
また、(A)想定する欠陥を検出できる最大区間サイズ≦(X)最適な区間サイズ≦(B)学習用画像データ10のばらつきを吸収可能な最小区間サイズであることから、(A)のサイズを製品規格から算出し、(A)のサイズ以上となる区間設定(X)を、演算処理時間を考慮して仮設定する。学習用画像データ10からファイル生成部130によりモデルデータを生成する。生成したモデルデータから、可視化処理部150により画像を生成して、解析する。モデルデータが、ばらつきが少ない分布を示す場合は、学習を完了する。一方、モデルデータが、ばらつきが多い分布を示す場合は、(X)のサイズが(B)のサイズ以上と判断し、(X)のサイズを(B)のサイズ以下となるよう、設定値を自動で数値変更して、学習用画像データ10からファイル生成部130によりモデルデータを生成する。このように、品質管理システム100は、最適な区間サイズを自動的に設定することができる。
【0050】
一実施形態において、ファイル生成部130は、学習用画像データ10に対して、所定の区間毎に上記の演算を行う際に、1番目の区間に対して、2番目の区間の一部が重畳するように、学習用画像データ10に対して所定の区間が移動するように設定されることが好ましい。例えば、
図4(A)において、1ピクセル目を含む区間Aが設定される。ファイル生成部130は、平均値及び分散値を算出するために、区間AをX軸方向へ移動させる。例えば、ファイル生成部130は、
図4(B)に示したように、区間Aの右側の2ピクセルと、移動後の区間A’の左側の2ピクセルが重畳するように、区間A’を設定する。また、
図4(C)に示したように、ファイル生成部130は、区間Aの下側の2ピクセルと、Y軸方向への移動後の区間Bの上側の2ピクセルが重畳するように、区間Bを設定する。さらに、
図4(D)に示したように、ファイル生成部130は、区間Bの右側の2ピクセルと、移動後の区間B’の左の2ピクセルが重畳するように、区間B’を設定する。すなわち、ファイル生成部130は、区間Aの右側の2ピクセル且つ下側の2ピクセルと、Y軸方向への移動後の区間Bの左側の2ピクセル且つ上側の2ピクセルが重畳するように、区間Bを設定する。
【0051】
ここで、学習用画像データ10のサイズを縦(Him)×横(Wim)、所定の区間のサイズを縦(Hsp)×横(Wsp)、区間の移動量を縦(Hsd)×横(Wsd)とすると、
H = [(Him - Hsp) / Hsd] + 1
W = [(Wim - Wsp) / Wsd] + 1
※大括弧[ ]は、小数点以下切り捨てを示す。
となり。生成されるファイルの数は、H×Wとなる。このように移動前後の区間が重畳するように設定することにより、ファイル生成部130は、より精度の高い平均値及び分散値を生成することができ、製品の欠陥を見逃すことを防止することができる。一方、移動前後の区間が重畳させることにより、重畳させない場合よりも生成するファイルの数が多くなるため、演算処理に係る時間が長くなり、ファイル生成部130の負荷が大きくなる。このため、移動前後の区間を重畳させる割合、即ち、区間の移動量を、演算速度等を考慮して設定してもよい。また、ファイル生成部130は、品質管理システム100の外部に配置され、通信部190からネットワークを介してと通信可能な演算処理装置により構成されてもよい。
【0052】
可視化処理部150は、ファイル生成部130が出力したファイルを画像として集約する。
図6は、本発明の一実施形態に係る特徴を可視化する工程S30を説明するフロー図である。可視化処理部150は、区間毎に得られたデータを1枚の画像として集約する(工程S31)。ファイル生成部130が出力した平均値又は分散値を、可視化処理部150が、差分データのピクセルの位置情報に基づいて結合する。これにより、可視化処理部150は、色成分毎に平均値又は分散値を画像として出力する(工程S33)。出力される平均値の画像は、色成分の枚数となり、出力される分散値の画像は、色成分の2乗の枚数となる。
【0053】
表示部171は、可視化処理部150により出力された画像を表示して、被検物の特徴のばらつきを利用者が視認可能にすることができる。または、可視化処理部150は、画像を記憶部180に格納してもよく、出力部170を介して、プリンタへ出力してもよい。さらに、通信部190が、画像をサーバやネットワークドラブに送信してもよい。
【0054】
可視化処理部150が集約した画像が、人の直観と異なる場合もある。一実施形態において、人が加工した画像を新たなファイルの可視化情報として上書きしてもよい。これにより、可視化情報からファイル生成部130が出力したファイルを理想状態へ修正して、学習用画像データ10から生成された画像における想定外のばらつきを補正して、正しい判定をすることができる。
【0055】
[製造誤差の評価]
一実施形態において、品質管理システム100において、学習用画像データ10として、不良品ではない製品(良品又は合格品)を用いた機械学習を実施した場合、利用者は、製品におけるばらつきを視覚的に認識することができる。具体的には、可視化処理部150は、ファイルに含まれる平均値ばらつき又は分散値ばらつきに基づいて画像を生成する。
図7(A)は、可視化処理部150が生成した画像を示す模式図であり、
図7(B)は、その製品の上面図の模式図である。一例として、
図7(A)においては、ばらつきが大きな製品の部分を濃い色で表示する。
図7(A)の画像から、
図7(B)に示した製品において、破線で囲んだ領域では、大きなばらつき、即ち、大きな製造誤差が生じることが認識される。
【0056】
[製品の評価]
一実施形態において、上述した機械学習を実行した後に、被検物である製品を品質管理システム100に評価させることができる。
図8を参照する。
図8は、本発明の一実施形態に係る製品の品質管理方法を示すフロー図である。撮像部111により、被検物である製品の画像を撮像し、オートエンコーダ120は、被検物の画像データを入力層121として取り込む(工程S50)。オートエンコーダ120は、被検物の画像データを圧縮して、復元する。このとき、被検物が傷を有する場合にも、機械学習済みのオートエンコーダ120は、傷がない復元画像データ30を生成する。ファイル生成部130は、オートエンコーダ120に入力された被検物の画像データと、復元画像データ30を比較して、被検物の傷を示す異常値を含む差分データを生成する(工程S60)。判定部140は、差分データに含まれる異常値から、被検物に傷があると判定する。判定部140による判定結果に基づいて、可視化処理部150は、被検物の画像データに傷が存在することを示す画像を生成する(工程S70)。
【0057】
一実施形態において、品質管理システム100は、オートエンコーダ120を用いずに、被検物の画像データについて、学習時に生成した復元画像データ30と比較することにより、差分データを生成してもよい。この処理では、オートエンコーダ120での演算処理が省略されるため、差分データの精度は僅かに低下する可能性があるものの、全体の処理時間を低減することができる。
【0058】
本実施形態においては、オートエンコーダ120が、被検物の画像データと、復元画像データとの差分データを生成することにより、差分データに含まれる異常値から、被検物の傷等を判断するが、変形例として、オートエンコーダ120が、被検物の画像データから復元画像データを生成した際に再構成できないことにより、被検物の傷等を判断することもできる。
【0059】
図9(A)は、可視化処理部150が生成した画像を示す模式図であり、
図9(B)は、傷を有する被検物の上面図の模式図である。一例として、
図9(A)においては、利用者が、被検物に傷があることを視認しやすくする目的から、可視化処理部150は、異常値が検出された部分に色付けをして、被検物の画像データと合成した画像を生成する。
図9(A)の画像から、
図9(B)に示した被検物において、破線で囲んだ領域に傷を有することが認識される。また、可視化処理部150は、異常値が検出された部分に近接する領域に線を描画して、被検物の傷を取り囲む円形や楕円形等の図を画像に表示させて、表示部171に表示してもよい。
【0060】
[設計データと製品の比較]
一実施形態において、製品の良品の画像データを用いて機械学習を実行した後に、製品の設計データを評価させることにより、設計データと製品との製造誤差を評価することができる。具体的には、ファイル生成部130は、オートエンコーダ120に入力された設計データと、復元画像データ30を比較して、設計データと復元画像データ30との差異を示す異常値を含む差分データを生成する。判定部140は、差分データに含まれる異常値から、製品が設計データから乖離(又は相違)していると判定する。判定部140による判定結果に基づいて、可視化処理部150は、製品が設計データから乖離していることを示す画像を生成することができる。
【0061】
上述した異常値やばらつきを、利用者が視認しやすくする目的から、判定部140が差分データにおける異常値を検出した場合に、異常値を含む部分に重み付けをし、可視化処理部150は、重み付けされた部分を含む画像を生成してもよい。即ち、可視化処理部150は、重み付けされた部分を強調した画像を生成することができる。
【0062】
[区間の再設定処理]
上述したように、ファイル生成部130が利用する区間の大きさを再設定することができる。初期値として第2の区間を与えると、判定部140が、異常値と判定した差分データを含む第2の区間の範囲、又はばらつきが大きいと判断した差分データを含む第2の区間の範囲に基づき、第2の区間とは異なる大きさを有する第3の区間を再設定して、より適切な第3の区間毎にファイル生成部130が差分データを演算処理して、差分データの平均値及び分散値を含むファイルを生成することができる。
【0063】
[品質管理プログラム]
本発明の一実施形態において、上述した各処理を実行するためのプログラムを提供することができる。または、一実施形態において、プログラムを格納した記録媒体として提供することもできる。
図2~
図9を参照して説明する。
【0064】
本プログラムは、品質管理システムに、複数の学習用画像データと、学習用画像データから生成した復元画像データとの差を含む差分データを生成させる(工程S10)。本プログラムは、オートエンコーダ120に、複数の学習用画像データ10を取り込ませる(工程S11)。
【0065】
本プログラムは、オートエンコーダ120に、入力層121に入力された学習用画像データ10をエンコーダ127で圧縮させ、中間層123を生成させる。また、本プログラムは、デコーダ129で出力層125に復元させて、復元画像データ30を生成させる(工程S15)。本プログラムは、オートエンコーダ120に、この処理により1ピクセル毎に学習用画像データ10から特徴を抽出させる(工程S13)。
【0066】
より詳細には、本プログラムは、上述したように、学習用画像データ10のピクセル毎の赤(R)、緑(G)及び青(B)の3つの成分について圧縮及び復元を行い、差分データを生成する。本プログラムは、得られた差分データを、次の工程S20で処理されるか、記憶部180に格納させる。
【0067】
本実施形態においては、学習用画像データを用いて、工程S10を繰り返した機械学習を実行することにより、本プログラムは、学習用画像データと復元画像データとの差分データの値を0に近づかせることができる。
【0068】
本プログラムは、品質管理システム100に、所定の区間毎に差分データの平均値及び分散値を算出させてファイルを生成させる(工程S20)。本プログラムは、オートエンコーダ120が生成した差分データから、ファイル生成部130に区間毎の平均値及び分散値を算出させる。本プログラムは、上述したように、得られた差分データから、ファイル生成部130に、区間毎の色成分について平均μを算出させる。また、本プログラムは、ファイル生成部130に、区間毎の色成分について分散σを算出させる。さらに、本プログラムは、ファイル生成部130に、区間毎の色成分について共分散σを算出させる(工程S21)。
【0069】
本プログラムは、ファイル生成部130に、算出結果を正規分布として出力させる(工程S23)。得られたファイルは、次の工程S30で処理されてもよく、記憶部180に格納されてもよい。
【0070】
本プログラムは、品質管理システム100に、生成されたファイルのデータに基づいて、画像を生成させる(工程S30)。所定の区間毎に差分データの平均値及び分散値を算出してファイルを生成するため、本プログラムは、精度と処理時間のバランスを考慮して区間を設定させてもよい。区間の設定は、人が入力部110を介して設定することもできる。または、初期値として第2の区間を与えると、本プログラムは、判定部140に、異常値と判定した差分データを含む第2の区間の範囲に基づき、第2の区間とは異なる大きさを有する第3の区間を再設定させて、より適切な第3の区間毎にファイル生成部130に差分データを用いた演算処理を実行させ、差分データの平均値及び分散値を含むファイルを生成させることができる。このような再設定処理(リファインメント)を繰り返すことにより、最適な区画を設定することができる。
【0071】
本プログラムは、可視化処理部150に、区間毎に得られたデータを1枚の画像として集約させる(工程S31)。本プログラムは、ファイル生成部130に出力させた平均値又は分散値を、可視化処理部150に、差分データのピクセルの位置情報に基づいて結合させる。本プログラムは、可視化処理部150に、色成分毎に平均値又は分散値を画像として出力させる(工程S33)。
【0072】
本プログラムは、表示部171に、可視化処理部150により出力された画像を表示させて、被検物の特徴のばらつきを利用者が視認可能にすることができる。または、可視化処理部150が、画像を記憶部180に格納されてもよく、出力部170を介して、プリンタへ出力されてもよい。さらに、本プログラムは、通信部190に、画像をサーバやネットワークドラブに送信させてもよい。
【0073】
[製造誤差評価プログラム]
一実施形態において、品質管理システム100において、学習用画像データ10として、不良品ではない製品(良品又は合格品)を用いた機械学習を実施させた場合、利用者は、製品におけるばらつきを視覚的に認識することができる。製造誤差評価プログラムは、可視化処理部150に、ファイルに含まれる平均値ばらつき又は分散値ばらつきに基づいて画像を生成させることができる。一例として、
図7(A)に示したように、製造誤差評価プログラムは、ばらつきが大きな部分を濃い色で表示させる。
図7(A)の画像から、
図7(B)に示した製品において、破線で囲んだ領域では、大きなばらつき、即ち、大きな製造誤差が生じることが認識される。
【0074】
[製品評価プログラム]
一実施形態において、製品評価プログラムは、上述した機械学習を実行した後に、被検物である製品を品質管理システム100に評価させる。製品評価プログラムは、撮像部111に、被検物である製品の画像を撮像させ、オートエンコーダ120に、被検物の画像データを入力層121として取り込ませる(工程S50)。製品評価プログラムは、オートエンコーダ120に、被検物の画像データを圧縮させて、復元させる。このとき、被検物が傷を有する場合にも、機械学習済みのオートエンコーダ120は、傷がない復元画像データ30を生成する。製品評価プログラムは、ファイル生成部130に、オートエンコーダ120に入力された被検物の画像データと、復元画像データ30を比較させて、被検物の傷を示す異常値を含む差分データを生成させる(工程S60)。製品評価プログラムは、判定部140に、差分データに含まれる異常値から、被検物に傷があると判定させる。判定部140による判定結果に基づいて、製品評価プログラムは、可視化処理部150に、被検物の画像データに傷が存在することを示す画像を生成させる(工程S70)。
【0075】
一例として、
図9(A)においては、利用者が、被検物に傷があることを視認しやすくする目的から、製品評価プログラムは、可視化処理部150に、異常値が検出された部分に色付けをさせて、被検物の画像データと合成した画像を生成させる。
図9(A)の画像から、
図9(B)に示した被検物において、破線で囲んだ領域に傷を有することが認識される。また、製品評価プログラムは、可視化処理部150に、異常値が検出された部分に近接する領域に線を描画させて、被検物の傷を取り囲む円形や楕円形等の図を画像に表示させて、表示部171に表示させることができる。
【0076】
[設計データと製品の比較プログラム]
一実施形態において、製品の良品の画像データを用いて機械学習を実行した後に、製品の設計データを評価させることにより、設計データと製品との製造誤差を評価することができる。比較プログラムは、ファイル生成部130に、オートエンコーダ120に入力された設計データと、復元画像データ30を比較させて、設計データと復元画像データ30との差異を示す異常値を含む差分データを生成させる。比較プログラムは、判定部140に、差分データに含まれる異常値から、製品が設計データから乖離(又は相違)していると判定させる。判定部140による判定結果に基づいて、比較プログラムは、可視化処理部150に、製品が設計データから乖離していることを示す画像を生成させることができる。
【0077】
上述した異常値やばらつきを、利用者が視認しやすくする目的から、一実施形態に係るプログラムは、判定部140が差分データにおける異常値を検出した場合に、異常値を含む部分に重み付けをさせ、可視化処理部150に、重み付けされた部分を含む画像を生成させることができる。即ち、比較プログラムは、可視化処理部150に、重み付けされた部分を強調した画像を生成させることができる。
【0078】
[区間の再設定処理プログラム]
上述したように、オートエンコーダ120が利用する区間の大きさを再設定することができる。初期値として第2の区間を与えると、再設定処理プログラムは、判定部140に、異常値と判定した差分データを含む第2の区間の範囲、又はばらつきが大きいと判断した差分データを含む第2の区間の範囲に基づき、第2の区間とは異なる大きさを有する第3の区間を再設定させて、より適切な第3の区間毎に差分データをオートエンコーダ120に算出させ、差分データの平均値及び分散値を含むファイルをファイル生成部130に生成させることができる。
【0079】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明したが、本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、本実施形態の品質管理システム又は品質管理プログラムを基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。さらに、上述した各実施形態は、相互に矛盾がない限り適宜組み合わせが可能であり、各実施形態に共通する技術事項については、明示の記載がなくても各実施形態に含まれる。
【0080】
上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0081】
100 品質管理システム、110 入力部、120 オートエンコーダ、130 ファイル生成部、140 判定部、150 可視化処理部、160 制御部、170 出力部、180 記憶部、190 通信部