(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151322
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】診療支援システム、診療支援装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 10/60 20180101AFI20231005BHJP
【FI】
G16H10/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060885
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 文彦
(72)【発明者】
【氏名】金澤 亜依
(72)【発明者】
【氏名】臼井 弘
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA22
(57)【要約】
【課題】医療支援に係るシステムに関し、医療従事者が患者の診療対象となる疾病について重症度を含む診断を行うことの負荷を低減することが可能な技術を提供する。
【解決手段】第1所定期間内における最小運動強度を求める最小運動強度算出手段と、前記最小運動強度に基づいて推定重症度情報を求める推定重症度情報算出手段と、第2所定期間を時間軸として示すとともに、前記時間軸に沿って、前記第1所定期間又は前記第1所定期間に代替する期間である代替第1所定期間ごとに、当該期間の前記推定重症度情報が識別可能に特徴表示された推定重症度表示バーを示す推定重症度時系列グラフ、を含む診療支援画像を生成する診療支援画像生成手段と、前記診療支援画像を出力する出力手段と、を有する診療支援システム。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1所定期間内において患者の診療対象となる疾病に係る症状が出現した運動のうち、最も運動強度の小さい運動の運動強度である最小運動強度を求める、最小運動強度算出手段と、
前記最小運動強度に基づいて、前記患者の疾病の推定重症度を示す推定重症度情報を求める、推定重症度情報算出手段と、
前記第1所定期間を含む過去の所定期間である第2所定期間を時間軸として示すとともに、前記時間軸に沿って、前記第1所定期間又は前記第1所定期間に代替する期間である代替第1所定期間ごとに当該期間の前記推定重症度情報が識別可能に特徴表示された、推定重症度表示バーを示す推定重症度時系列グラフ、を含む診療支援画像を生成する診療支援画像生成手段と、
前記診療支援画像を出力する出力手段と、
を有する、診療支援システム。
【請求項2】
前記疾病に係る症状が出現した運動の内容を含む情報である症状出現運動情報を取得する、症状出現運動情報取得手段をさらに有し、
前記最小運動強度算出手段は、前記症状出現運動情報に基づいて前記最小運動強度を算出する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の診療支援システム。
【請求項3】
前記症状出現運動情報取得手段は、第3所定期間ごとの前記患者の前記疾病に係る症状の有無に関する情報をさらに取得し、
前記診療支援画像生成手段は、前記時間軸に沿って前記第3所定期間ごとの前記症状の有無に係る情報を表示する前記診療支援画像を生成する、
ことを特徴とする、請求項2に記載の診療支援システム。
【請求項4】
前記推定重症度時系列グラフにおいて、一の前記推定重症度表示バーが示す期間の長さは前記第3所定期間を最小値とする、
ことを特徴とする、請求項3に記載の診療支援システム。
【請求項5】
少なくとも前記患者の直近の前記第1所定期間内における前記症状出現運動情報を含む患者情報の入力を前記患者に求める自動問診処理を実行する、自動問診端末をさらに有しており、
前記症状出現運動情報取得手段は、前記自動問診端末において実行される自動問診処理を介して前記患者から入力される前記症状出現運動情報を取得する、
ことを特徴とする、請求項2から4のいずれか一項に記載の診療支援システム。
【請求項6】
前記患者によって前記症状出現運動情報の入力が2回以上行われた際の当該入力の間隔が前記第1所定期間を超えている場合には、
前記診療支援画像生成手段は、前記推定重症度表示バーを、後の前記症状出現運動情報の入力が行われたタイミングから遡って前記第1所定期間の長さで表示する、
ことを特徴とする、請求項5に記載の診療支援システム。
【請求項7】
前記患者によって前記症状出現運動情報の入力が2回以上行われた際の当該入力の間隔が前記第1所定期間に満たない場合には、
前記診療支援画像生成手段は、前記間隔を前記代替第1所定期間として、前記推定重症度表示バーを、後の前記症状出現運動情報の入力が行われたタイミングから遡って前記代替第1所定期間の長さで表示する、
ことを特徴とする、請求項5又は6に記載の診療支援システム。
【請求項8】
前記診療支援画像生成手段は、前記推定重症度表示バーが前記推定重症度情報に応じて色分け表示されるとともに、前記推定重症度表示バーに重畳して又は前記推定重症度表示バーの近傍に、前記患者の第1所定期間における前記最小運動強度及び/又は前記推定重症度情報に係るテキスト情報を示す前記診療支援画像を生成する、
ことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の診療支援システム。
【請求項9】
前記診療対象となる疾病は心不全であり、前記推定重症度情報は、NYHA分類を推定したものである、
ことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の診療支援システム。
【請求項10】
前記最小運動強度算出手段と、前記推定重症度情報算出手段と、前記診療支援画像生成手段と、を有しており、請求項1から9のいずれか一項に記載の診療支援システムの少なくとも一部を構成する、診療支援装置。
【請求項11】
コンピュータを請求項10の診療支援装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘルスケア関連の技術分野に属し、診療支援システム、診療支援装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、患者の生体情報を継続的に取得、記録し、これらの生体情報の経時的な変遷を示すことで、医師の診療を支援するシステムが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、患者のバイタルデータを時間に対応付けて記憶し、当該バイタルデータを時系列表示するとともに、当該時系列表示されるバイタルデータに係る統計情報を算出及び表示する医用情報処理システムが開示されている。これによれば、医師などの操作者は患者のバイタルデータの傾向を容易に把握し、患者状態の把握や、患者に処方する薬剤の種類や投薬量を決定することを容易にすることができる。
【0004】
このようなシステムにより、特に慢性疾患を有する患者の診療について医師の負担を軽減することができ、これによって適切な治療方針が迅速に決定されることができれば、その効果は患者に対しても及ぶことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、主要な慢性疾患の一つである心不全の診断・治療においては、NYHA分類(New York HeartAssociation functional classification)などを用いて、日常の様々な身体活動により生じる自覚症状に基づいて疾病の重症度(進行度)を評価することが一般的に行われている。そして、医師は、評価した重症度に応じて、処方する薬剤の種類や投薬量、その他の治療方針の決定などを行う。
【0007】
従来、患者が上記の分類のいずれに当てはまるのかは、患者に対してどのような身体活動を行ったときに、顕著な(つらい)症状が出現したか(或いはしなかったか)を、診察時に医師が問診することによって判断されていた。このような方法では、限られた診察時間において的確に患者から情報を聞き出し、正確な分類(評価)を行うことが困難であるという問題がある。また、患者の立場からも、外来診察の度に同じような問答を強いられることはストレスであり、患者にとっても負荷の大きなものであった。
【0008】
特許文献1のような従来の診療支援システムでは、患者の脈拍数や血圧値などのバイタルデータの変遷情報を示すことができるものの、上記のような身体活動と自覚症状に基づく重症度の分類を行うことの支援はできないという問題があった。
【0009】
上記のような問題に鑑みて、本発明は、医療支援に係るシステムに関し、医療従事者が患者の診療対象となる疾病について重症度を含む診断を行うことの負荷を低減することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。即ち、
第1所定期間内において患者の診療対象となる疾病に係る症状が出現した運動のうち、最も運動強度の小さい運動の運動強度である最小運動強度を求める、最小運動強度算出手段と、
前記最小運動強度に基づいて、前記患者の疾病の推定重症度を示す推定重症度情報を求める、推定重症度情報算出手段と、
前記第1所定期間を含む過去の所定期間である第2所定期間を時間軸として示すとともに、前記時間軸に沿って、前記第1所定期間又は前記第1所定期間に代替する期間である代替第1所定期間ごとに、当該期間の前記推定重症度情報が識別可能に特徴表示された推定重症度表示バーを示す推定重症度時系列グラフ、を含む診療支援画像を生成する診療支援画像生成手段と、
前記診療支援画像を出力する出力手段と、
を有する、診療支援システムである。
【0011】
ここで、「第1所定期間」とは、患者が身体活動の振り返りが負担なく行える程度の期間、及び/又は、症状の推移や重症度の変化を把握しやすい期間であればどのような期間であってもよいが、例えば1週間(7日間)とすることができる。また、「第2所定期間」とは、例えば患者の病状の変遷を一覧性良く確認できる程度の期間であればよく、例えば1カ月間(或いは4週間)とすることができる。即ち、第2所定期間は複数の第1所定期間を含み得るものである。また、推定重症度時系列グラフにおける第2所定期間に含まれる第1所定期間は、必ずしも最新の第1所定期間を含んでいなくともよい。また、ここでいう(疾病の)重症度とは、当該疾患の診療ガイドライン等で定められた重症度分類なども含むし、身体機能の低下度合いなども含む意味である。また、「運動強度」は例えばMETsなどの指標を用いて示すことができる。METsは、安静時(静かに座っている状態)を1METsとして、様々な活動がその何倍のエネルギーを消費するか示した活動強度の指標である。また、「出力手段」は例えば液晶ディスプレイなどの表示装置であってもよいし、プリンタなどの印刷装置であってもよい。
【0012】
このような構成によれば、医師は、出力される診療支援画像を参照することで、患者の診療対象となる疾病についての推定重症度の変遷を参照することができる。これにより、例えば、患者の診察に先立ち必要な情報の取得(入力)を済ませておき、これに基づいて生成される診療支援画像を予め参照することで、診察時において患者の病状の変遷を確認するための質問や、重症度を診断するための質問の内容を無駄のないものとすることができ、より効率的に適切な診察を行うことができる。また、診察の度に定型的かつ冗長な問診を行うことを抑制することができるため、患者の負荷低減にも資することができる。
【0013】
また、前記診療支援システムは、前記疾病に係る症状が出現した運動の内容を含む情報である症状出現運動情報を取得する、症状出現運動情報取得手段をさらに有し、前記最小運動強度算出手段は、前記症状出現運動情報に基づいて前記最小運動強度を算出する、ものであってもよい。このような構成によれば、患者の日々の症状の発生とその際の運動内容の情報に基づいて、容易に最小運動強度を求めることができる。
【0014】
また、前記症状出現運動情報取得手段は、第3所定期間ごとの前記患者の前記疾病に係る症状の有無に関する情報をさらに取得し、前記診療支援画像生成手段は、前記時間軸に沿って前記第3所定期間ごとの前記症状の有無に係る情報を表示する前記診療支援画像を生成するものであってもよい。
【0015】
ここで、「第3所定期間」とは、一定の生活活動サイクルに即して症状の有無の振り返りを行うことに適した期間であることが望ましく、例えば1日(24時間)とすることができる。このような構成によれば、医師は診療支援画像を参照することにより、患者が日
々どのような自覚症状を感じているのか(その種類や頻度)の変遷を、前記推定重症度の変遷と併せて確認することができ、より適切に患者の病状の診断を行うことが可能になる。
【0016】
前記推定重症度時系列グラフにおいて、一の前記推定重症度表示バーが示す期間の長さは前記第3所定期間を最小値とするものであってもよい。
【0017】
なお、前記症状出現運動情報取得手段は、例えば医師などの医療従事者が使用する情報処理端末の入力手段(例えば、キーボード、マウス、タッチパネル)などを含むものであってもよい。即ち、医療従事者が、医療機関、患者宅などにおいて患者からヒアリングを行って前記症状出現運動情報を入力するようにしてもよい。また、前記症状出現運動情報取得手段は、患者自身(或いはその介護者)に前記症状出現運動情報の入力を求める手段を含むものであってもよい。
【0018】
即ち、前記診療支援システムは、少なくとも前記患者の直近の前記第1所定期間内における前記症状出現運動情報を含む患者情報の入力を前記患者に求める自動問診処理を実行する、自動問診端末をさらに有しており、前記症状出現運動情報取得手段は、前記自動問診端末において実行される自動問診処理を介して前記患者から入力される前記症状出現運動情報を取得するものであってもよい。なお、前記自動問診処理は、所定のスケジュール(例えば第1所定期間の到来ごと、など)に従って、患者に患者情報の入力を促す報知を行うことを含んでいてもよい。
【0019】
ここで、「自動問診端末」は、医療機関において設置される端末であってもよいし、患者が所持する情報処理端末(例えば、スマートフォンなど)であってもよい。また、前記症状出現運動情報取得手段は、自動問診端末において実行されるアプリケーションによって提供されるユーザーインターフェースを介して、前記患者情報の入力を受け付けるようになっていてもよい。また、アプリケーションを日々の健康管理機能を含むものとしてもよい。これによれば、患者の健康管理を兼ねることができる。
【0020】
なお、前記患者によって前記症状出現運動情報の入力が2回以上行われた際の当該入力の間隔が前記第1所定期間を超えている場合には、前記診療支援画像生成手段は、前記推定重症度表示バーを、後の前記症状出現運動情報の入力が行われたタイミングから遡って前記第1所定期間の長さで表示するようにしてもよい。
【0021】
患者の情報入力(以下、回答ともいう)の間隔が、前回回答時から第1所定期間を超えてしまっているような場合において、推定重症度表示バーの表示を上記のように行うことで、前回回答時から空白の期間(グラフ上にバーが表示されていない期間)が生じる。これにより、「第1所定期間ごとに評価を行っている」ことが、医師・患者の共通認識としやすくなる。また、空白の期間がなるべく生じないように、と患者が定期的な情報入力を行うモチベーションを高めることができる。また、バーを過去に延ばしすぎると、その期間内で病状の変化があった場合には、実際の重症度と異なる重症度が表示されてしまうリスクがあるが、バーの長さの限度を第1所定期間とすることで、当該リスクを防止することもできる。
【0022】
また、前記患者によって前記症状出現運動情報の入力が2回以上行われた際の当該入力の間隔が前記第1所定期間に満たない場合には、前記診療支援画像生成手段は、前記間隔を前記代替第1所定期間として、前記推定重症度表示バーを、後の前記症状出現運動情報の入力が行われたタイミングから遡って前記代替第1所定期間の長さで表示するようにしてもよい。
【0023】
患者の情報入力の間隔が、前回回答時から第1所定期間に満たない場合において、直近の回答に基づく推定重症度表示バーの長さを第1所定期間と同一の長さにしてしまうと、前回回答時の回答内容に基づく推定重症度表示バーを上書きすることになってしまう(前回回答日を超えてバーが伸びてしまう)。このため、回答の間隔が第1所定期間に満たない場合には、上記のように回答間隔分の期間を代替第1所定期間として、推定重症度表示バーの長さを代替第1所定期間の長さとすることにより、このような上書きを防止し、より正確な患者の重症度を把握することができる。
【0024】
また、前記診療支援画像生成手段は、前記推定重症度表示バーが前記推定重症度情報に応じて色分け表示されるとともに、前記推定重症度表示バーに重畳して又は前記推定重症度表示バーの近傍に、前記患者の第1所定期間における前記最小運動強度及び/又は前記推定重症度情報に係るテキスト情報を示す前記診療支援画像を生成するのであってもよい。このような構成によれば、医師は診療支援画像を参照することにより、より容易に推定重症度の変遷を確認することができる。
【0025】
また、前記診療対象となる疾病は心不全であり、前記推定重症度情報は、NYHA分類を推定したものであってもよい。このような場合には本発明は好適である。
【0026】
また、本発明は、前記最小運動強度算出手段と、前記推定重症度情報算出手段と、前記診療支援画像生成手段と、を有し、前記診療支援システムの少なくとも一部を構成する診療支援装置としても捉えることもできる。
【0027】
また、本発明は、コンピュータをこのような診療支援装置として機能させるためのプログラム、そのようなプログラムを非一時的に記録したコンピュータ読取可能な記録媒体として捉えることもできる。
【0028】
なお、上記構成及び処理の各々は技術的な矛盾が生じない限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、医療支援に係るシステムに関し、医療従事者が患者の診療対象となる疾病について重症度を含む診断を行うことの負荷を低減することが可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、実施例に係る診療支援システムの構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、実施例に係るサーバ装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施例に係るデータテーブルの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施例に係る医師側端末の機能構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、医師側端末において出力される診療支援画像の一例を説明する第1の図である。
【
図6】
図6Aは、医師側端末において出力される診療支援画像の一例を説明する第2の図である。
図6Bは、医師側端末において出力される診療支援画像の一例を説明する第3の図である。
【
図7】
図7Aは、医師側端末において出力される診療支援画像の一例を説明する第4の図である。
図7Bは、医師側端末において出力される診療支援画像の一例を説明する第5の図である。
【
図8】
図8Aは、医師側端末において出力される診療支援画像の一例を説明する第6の図である。
図8Bは、医師側端末において出力される診療支援画像の一例を説明する第7の図である。
【
図9】
図9は、医師側端末において出力される診療支援画像の一例を説明する第8の図である。
【
図10】
図10は、実施例に係る患者側端末の機能構成を示すブロック図である。
【
図11】
図11Aは、患者側端末において表示されるユーザーインターフェースの一例を説明する第1の図である。
図11Bは、患者側端末において表示されるユーザーインターフェースの一例を説明する第2の図である。
【
図12】
図12は、実施例に係る診療支援システム内で行われる情報の授受、及び処理の流れを示す図である。
【
図13】
図13は、その他の態様の診療支援システムの概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<実施例1>
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成要素の寸法、形状、その相対配置などは、特に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0032】
(システム構成)
図1は、本実施例に係る診療支援システム1の構成を示す概略図である。
図1に示すように、診療支援システム1は、サーバ装置100、医師が使用する医師側端末200、患者Pが使用する患者側端末300及び計測機器400を含んで構成され、これらの各構成は通信ネットワークNを介して相互に通信可能となっている。
【0033】
本実施例に係る診療支援システム1は医療に係るシステムであり、患者が自宅等で計測した心拍数、脈拍数、血圧値、体重等の生体情報の計測値を、ネットワークNを介してサーバ装置100に送信し、当該情報を処理して医療従事者に提供することによって、医師が患者の治療を行うことを支援するためのものである。
【0034】
心不全等の確定診断を受けるなど、継続的な生体情報のモニタリングが必要と判断された患者は、医師の診断に従って治療を開始し、自宅において自ら継続的に生体情報を計測し、日々の生活における自覚症状を記録する。診療支援システム1は当該計測値や自覚症状に係る情報を収集し、これに基づいて医師等の医療従事者が患者の診療に関して参照するための診療支援画像を生成し、出力手段を介して出力する。当該診療支援画像は、患者の診察時において参照される他、適宜診療の必要に応じて参照される。
【0035】
なお、診療支援システム1は、収集した患者の計測値が予め設定しておいたアラート条件を満たす場合には、アラート情報を診療支援画像に示すようにしてもよい。また、医師の保有する情報処理端末、携帯通信端末などにアラート信号を送信してもよい。以下、システムの各構成について詳細に説明する。
【0036】
(サーバ装置)
図2はサーバ装置100の機能構成を示すブロック図である。サーバ装置100は、一般的なサーバコンピュータにより構成され、
図2に示すように、制御部110、通信手段120、記憶手段130を備えている。
【0037】
制御部110はサーバ装置100の制御を司る手段であり、例えばCPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)などのプロセッサによって構成される。また、制御部110は、生体情報管理に係る機能モジュールとして、計測情報取得部111、日次計測値算出部112、症状出現運動情報取得部113、最小運動強度算出部114、推定重症度算出部115、自覚症状情報取得部116、服薬関連情報取得部117、診療支援画像生成部118の
各機能部を備えている。これらの各機能部については後に詳しく説明する。
【0038】
通信手段120は、サーバ装置100を通信ネットワークNに接続するための通信手段であり、例えば通信インターフェースボードや、無線通信のための無線通信回路を含んで構成される。
【0039】
記憶手段130は、図示しないが、ROM(Read only memory)、RAM(Random access memory)等の主記憶部と、EPROM、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Device)、リムーバブルメディア等の補助記憶部とが含まれている。補助記憶部には、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラムなどが格納されている。そして、該格納されたプログラムを主記憶部の作業領域にロードして実行し、プログラムの実行を通じて各構成部等が制御されることによって、所定の目的を果たす各機能部を実現することができる。
【0040】
計測情報取得部111は、後述するように患者Pが計測機器400で計測した心拍数、脈拍数、血圧値、体重などの生体情報の計測値を、通信ネットワークNを介して取得し、記憶手段130に格納する。なお、これらの計測値は、既知の各種計測機器で取得することができる。また、計測機器はそれぞれの生体情報に対応する別々の機器を用いてもよいし、例えば上腕式のオシロメトリック方式血圧計を用いて血圧値と脈拍数を取得するなど、1台(1回の測定)で異なる計測値を取得できる計測機器を用いることもできる。
【0041】
また、計測情報取得部111は、心拍数計測時に心房細動(AF: Atrial Fibrillation)など特定の症状またはその疑いが検出された場合には心拍数とともにその情報も取得し、記憶手段130に格納する。また、計測情報取得部111は、脈拍数計測時に不整脈など特定の症状またはその疑いが計測された場合にはその旨の情報も取得し、記憶手段130に格納する。なお、計測情報取得部111によって取得される計測値の情報には、計測が行われた時刻情報や、計測が行われた場所に係る情報(例えば、自宅、診察室の別など)、が含まれる。
【0042】
日次計測値算出部112は、記憶手段130に格納された計測値及び所定の算出規則に基づいて、1日ごとの患者Pの1機会における一の心拍数計測値、及び一の脈拍数計測値を算出し、記憶手段130に格納する。なお、1機会とは、例えば高血圧の診断・治療に関するガイドラインにおける「朝(起床後1時間以内)」と「晩(就床前)」など、一の生体情報についての測定タイミングを指すものである。そして、本実施例ではそのような測定タイミングについて、例えば「1機会=(最初の生体情報の計測開始から)10分間」として一定の時間幅を設定し、その時間内に測定された一連の複数(種類の相違も含む)の生体情報をまとめて「1機会に得られた生体情報」とする。即ち、生体情報の計測に関し、上記の一定時間内に複数回の計測を行った場合には当該複数の計測をまとめて1機会の計測とし、複数計測された生体情報は1機会で得られた生体情報となる。ここで、同一の生体情報のみ複数回計測した場合と、異なる生体情報をそれぞれ1回ずつ計測した場合と、異なる生体情報をそれぞれ1回以上計測した場合のいずれであっても、その全ての計測が一定時間内に行われているのであれば、それらの複数の計測が1機会における計測となる。
【0043】
一方、一の生体情報について2回の計測を行った場合であっても、当該2回の計測が一定時間内の計測でない場合(例えば、朝起床時に1回、夜就寝前に1回のような場合)には、2つの生体情報は別々の機会に計測された(2機会分の計測に係る)生体情報、ということになる。
【0044】
ここで、日次計測値算出部112による日次計測値の算出について、心拍数を例として具体的に説明する。まず、心拍数について1日に1回のみの計測が行われ、記憶手段130に当該計測値のみが格納されている場合には、日次計測値算出部112は当該計測値を日次の心拍数計測値とする。一方、1日に複数の計測が行われ、当該複数の計測が全て所定の時間内に収まっている場合には、日次計測値算出部112は、当該複数の計測値は全て1機会内の計測値であるとして、当該複数の計測値に基づいて一の値(例えば、複数の計測値の平均値)を1機会における計測値として求め、これを日次の心拍数計測値として算出する。また、1日に複数の計測が行われ、当該複数の計測が所定の時間内に収まっていない場合(即ち、複数機会分の計測が行われた場合)には、日次計測値算出部112は、複数機会のうちのいずれか1機会の計測値を用いて(例えば、朝起床時の1機会の計測値などのように、予め設定されたタイミングでの計測機会の計測値)を用いて、日次の心拍数計測値を算出する。この場合において、1機会内に複数の計測が行われていた場合の当該1機会の計測値の求め方は上述の通りである。なお、ここでは心拍数を例として説明したが、日次計測値算出部112は、脈拍数など他の生体情報についても同様の算出処理を行う。
【0045】
症状出現運動情報取得部113は、患者Pの診療対象となる疾病(ここでは心不全)に係る症状が出現した運動の内容を含む情報である症状出現運動情報を取得し、記憶手段130に格納する。具体的には、後述する患者側端末300において実行されるアプリケーションにより、所定期間(例えば1週間)ごとに症状を自覚した運動(身体活動)を患者Pに入力・又は選択させることで、患者側端末300を介して症状出現運動情報を取得する。
【0046】
最小運動強度算出部114は、記憶手段130に格納された症状出現運動情報に基づいて、所定期間内において心不全に係る症状が出現した運動のうち、最も運動強度の小さい運動の運動強度である最小運動強度を算出する。なお、本実施例では運動強度はMETsにより示すものとし、以下では所定期間内において心不全に係る症状が出現した運動のうち、最も運動強度の小さい運動の運動強度を、症状出現最小METsともいう。最小運動強度算出部114は、具体的には運動の内容と当該運動の運動強度とを対応付けた運動強度テーブルを記憶手段130に保持しておき、当該運動強度テーブルを参照することで、症状出現最小METsを求めるようにするとよい。また、ここで算出された症状出現最小METsは記憶手段130に格納される。
【0047】
推定重症度算出部115は、記憶手段に130に格納された症状出現最小METsに基づいて、心不全の重症度を示す推定重症度情報を求める。本実施例では重症度はNYHA分類によるものとし、以下では、推定重症度は推定NYHA分類ともいう。推定重症度算出部115は、例えば、記憶手段130に保存されている症状出現最小METs数と推定NYHA分類が対応付けられたデータテーブルを参照することにより、推定重症度を求めるようにしてもよい。
図3に、運動の内容と、当該運動のMETs(数値)と、当該運動のMETsが症状出現最小METs数である場合の推定NYHA分類とを対応付けたデータテーブルの一例を示す。なお、
図3に示す運動の内容(及びそれに対応する、METs、推定NYHA分類)は代表的なものを抜粋したものであり、実際にはより多くの運動の内容が記憶されている。ここで算出された推定重症度は記憶手段130に格納される。
【0048】
自覚症状情報取得部116は、患者Pにおける所定期間ごと(例えば毎日)の心不全に係る症状の有無(及びその種類)についての情報を取得し、記憶手段130に格納する。具体的には、症状出現運動情報と同様に、患者側端末300において実行されるアプリケーションにより、毎日決まった時間にその日に自覚した症状を患者Pに選択させることで、患者側端末300を介して取得するようにすればよい。具体的には、例えば症状のリストを提示し、当該リストから患者に症状を選択させるようにしてもよいし、或いはメモな
どとして自覚症状に係るテキスト情報の入力を受け付けるのであってもよい。
【0049】
また、服薬関連情報取得部117は、患者の服薬の有無や服薬率(服薬の頻度)に関する情報を取得し、記憶手段130に格納する。また、服薬時の副作用の内容や頻度などに関する情報を取得してもよい。これらの情報は、例えば、症状出現運動情報と同様に、患者側端末300において実行されるアプリケーションにより、毎日決まった時間にその日の服薬の有無を患者Pに選択させることで、患者側端末300を介して取得するようにすればよい。また、服薬関連情報取得部117は、図示しないが外部のシステム(例えば電子カルテシステム)などと連携し、患者Pに処方された薬剤の情報(処方情報)を取得するようになっていてもよい。
【0050】
診療支援画像生成部118は、計測情報取得部111、日次計測値算出部112、症状出現運動情報取得部113、最小運動強度算出部114、推定重症度算出部115、自覚症状情報取得部116、服薬関連情報取得部117の各機能部から出力され、記憶手段130に格納されたデータに基づいて、医療従事者が参照するための診療支援画像を生成する。生成された診療支援画像は、通信ネットワークNを介して医師側端末200に送信される。診療支援画像の詳細については後に詳述する。
【0051】
(医師側端末)
図4は医師側端末200の機能構成を示すブロック図である。医師側端末200は、一般的なコンピュータ、例えば固定設置型のパーソナルコンピュータ、携帯型のノート型パーソナルコンピュータ或いはタブレット型端末などであり、制御部210、入力手段220、出力手段230、記憶手段240、通信手段250を備えている。
【0052】
制御部210は医師側端末200の制御を司る手段であり、例えば、CPUなどによって構成される。また、入力手段220は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、カメラ、マイクなど、外部からの情報入力を受け付ける手段である。また、出力手段230は、液晶ディスプレイ、スピーカー、プリンタなどを含んで構成される。記憶手段240は、サーバ装置と同様に、主記憶部、補助記憶部などを含んで構成され、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラム、その他、通信ネットワークNを介して取得する各種データが格納される。また、通信手段250は、例えば通信インターフェースボードや、無線通信のための無線通信回路を含んで構成される。
【0053】
なお、図示しないが医師側端末は電子カルテ管理システムにアクセス可能になっていてもよい。このような場合には、電子カルテ管理システムに記憶された患者の電子カルテデータを読み出し、この電子カルテデータをサーバ装置100へ送信するようにしてもよいし、また、サーバ装置100から送信される情報を電子カルテデータと連携させるようにしてもよい。このような場合は、医師が電子カルテ管理システムを介して診療支援画像を確認できるようにすることも可能になる。
【0054】
医師側端末200では、通信ネットワークNを介してサーバ装置100から、診療支援画像が取得され、これらの情報は出力手段230に出力される。
図5から
図9に、医師側端末200の出力手段230で表示される画面(診療支援画像)の一例を示す。
図5は、端末の管理者である医師が受け持つ患者Pの一人についての診療支援画像の一例を示す説明図である。
図5に示すように、本実施例に係る診療支援画像はそれぞれ異なる情報を示す複数の領域を含んで構成されている。具体的には、概要情報領域OV、体重情報領域W、推定NYHA分類変遷領域NT、自覚症状情報領域S、服薬情報領域ME、血圧情報領域BP、心拍脈拍情報領域HP、が含まれている。なお、診療支援画像は、その全体が出力手段に表示される必要はなく、適宜表示領域の選択(画面スクロールや、縮小・拡大)を行うことができる。また、予め医師が指定した項目の組み合わせ・順序で診療支援画像
が生成されるようにしてもよい。
【0055】
以下では、診療支援画像各領域で表示される情報について具体的に説明する。
図6Aは、概要情報領域OVの拡大図である。
図6Aに示すように、概要情報領域OVには、患者氏名、性別、年齢などの患者属性に関する情報と、直近に取得された患者情報及び前回診察時における患者情報が表示されている。そして、患者情報の一つとして、症状出現最小METs数(及び推定NYHA分類)を示す最小METs情報MMが示される。このような表示により、医師は患者Pの直近の症状出現最小METs(及び推定NYHA分類)を確認できるとともに、前回の症状出現最小METs(及び推定NYHA分類)を参照することができ、診察時には患者Pの重症度を診断するための問診を効率的に行うことができる。
【0056】
図6Bは、体重情報領域Wの拡大図である。
図6Bに示すように、体重情報領域Wには、表示期間内(例えば、前月の1日から末日まで、過去一ヶ月、過去一週間など)の患者Pの体重の変遷がグラフにより示される。心臓の機能が悪化すると、血流が悪くなることから体内に水分が貯留しやすくなるため、(当該貯留水分に由来する)体重の増加(例えば1週間当たりの増加量)が、心不全の重症度に係る重要な指標となる。このため、体重情報領域Wには、所定期間内の体重の増減値が閾値を逸脱したような場合には、アラート情報を表示するようになっていてもよい。
【0057】
図7Aは、推定NYHA分類変遷領域NTの拡大図である。
図7Aに示すように、推定NYHA分類変遷領域NTには、表示期間内(30日間)における所定期間ごとの推定NYHA分類を、色の違いによりクラスの違いを識別可能にした推定重症度表示バーSBで示す推定重症度時系列グラフが示される。また、推定重症度表示バーSBの近傍には、これに対応する症状出現最小METs(及び推定NYHA分類)がテキスト表示される。このような表示により、医師は表示期間内の患者の推定NYHA分類の変遷を容易に確認することができ、診察時には患者Pの重症度を診断するための問診を効率的に行うことができる。
【0058】
なお、推定重症度表示バーSBは、症状出現運動情報取得部113が所定期間ごとに取得した(即ち、患者が入力した)症状出現運動情報に基づいて算出される推定NYHA分類を表示するものであるため、当該情報取得間隔に従って、基本的には所定期間(例えば、1週間)ごとに表示される。ただし、症状出現運動情報取得部113による情報の取得タイミングに変更があった場合や、所定期間が表示領域の初日より前や末日より後の日程を含んでいる場合など、推定重症度表示バーSBが所定期間に満たない期間で表示されることがある。このような期間が本発明に係る代替第1所定期間に相当する。また、推定重症度表示バーSBは所定期間を超えた期間の長さで表示されるようにしてもよい。このような場合の期間も代替第1所定期間に相当する。なお、推定重症度表示バーSBが表示される最小の期間の長さは、1日となっている。
【0059】
ここで、推定重症度表示バーSBの長さ(グラフ内の期間)は、診療支援システム1によって、例えば次のように決定することができる。症状出現運動情報取得部113による症状出現運動情報の取得間隔(即ち、患者による当該情報の入力の間隔)が第1所定期間通りである場合には、診療支援システム1は推定重症度表示バーSBの長さを回答時から所定期間分遡った長さとして決定する。
図7Aの左から三つ目のバーがこのような場合に
該当し、表示期間(30日間)のうち、回答のタイミングが21日目である場合には、推定重症度表示バーSBの長さは回答時(21日)から第1所定期間(7日)分遡った長さ(15日目から21日目の7日分)として決定される。そして、診療支援画像生成部118が、当該決定された長さ(日数)を反映した推定重症度表示バーSBを表示する診療支援画像を作成する。
【0060】
一方、患者の回答間隔が第1所定期間を超えている場合には、診療支援システム1は推定重症度表示バーSBの長さを、後の回答時から第1所定期間(7日)分遡った長さとして、決定する。
図7Aの左から二つ目の推定重症度表示バーSBがこのような場合に該当し、回答のタイミングが14日目である場合には、推定重症度表示バーSBの長さは回答時(14日)から第1所定期間(7日)分遡った長さ(8日目から14日目の7日分)として決定される。そして、診療支援画像生成部118が、当該決定された長さ(日数)を反映した推定重症度表示バーSBを表示する診療支援画像を作成する。
【0061】
また、患者の回答間隔が所定期間よりも短い場合には、診療支援システム1は当該回答間隔を代替第1所定期間として、推定重症度表示バーSBの長さを後の回答時から代替第1所定期間分遡った長さとして決定する。
図7Aの右から二つ目の推定重症度表示バーSBがこのような場合に該当し、前回の回答日(21日)から後の回答日(27日)までの間隔が6日(=第1所定期間よりも短い)場合には、代替第1所定期間を6日分の長さとして決定する。そして、診療支援画像生成部118が、当該決定された代替第1所定期間の長さ(日数)を反映した推定重症度表示バーSBを表示する診療支援画像を作成する。このようにすることで、その前の第1所定期間の推定重症度表示バーSB(左から三つ目)を上書きしてしまうことを防止することができる。なお、症状出現運動情報の取得間隔は第1所定期間の通りであるものの、表示領域の初日より前や末日より後の日程を含んでいる場合などの代替第1所定期間の決定方法、表示方法についても同様である(
図7Aの
両端の推定重症度表示バーSBがこれに該当する)。
【0062】
図7Bは、自覚症状情報領域Sの拡大図である。
図7Bに示すように、自覚症状情報領域Sには、時系列に沿って一日ごとに、心不全にかかる自覚症状があったか否かを、その症状の種類ごとにドットを表示することにより示す(ドット表示された症状が、その日に自覚のあった症状)情報が表示される。また、後述する患者側端末300を介して、患者が日次のメモを記している場合には、そのことを示す表示も併せて表示してもよい。このような表示を参照することにより、医師は患者Pが日々どのような自覚症状を感じているのか(その種類や頻度)の変遷を容易に確認することができる。
【0063】
また、このような自覚症状情報領域Sを、推定重症度表示バーSBと時間軸を揃えたうえで並べて配置することにより、医師は日々の自覚症状の変遷と推定重症度の変遷との対応関係を容易に確認することができ、患者の病状の経過の把握を効率的に行うことができる。
【0064】
図8Aは、服薬情報領域MEの拡大図である。
図8Aに示すように、服薬情報領域MEには、表示期間内における患者の服薬の情報(処方された薬剤を正しく服薬したか否か)が、カプセルマークの表示の活性化・非活性化によって、日次で示される。また、頓服薬を服薬した場合には、服薬した日付の欄に別途その旨が表示される。また、1日当たりに複数回(例えば、朝、昼、晩)服薬すべき場合には、各回に対応する服薬有無の欄を設けてもよい。或いは、その1日当たりの服薬率に係る表示(例えば、服薬した分の数だけマークを表示、分数で表示する、など)や、パイチャートによる表示を行ってもよい。
【0065】
図8Bは、血圧情報領域BPの拡大図である。
図8Bに示すように、血圧情報領域BPには、表示期間内の血圧値が日次で表示される。具体的には、収縮期血圧を上端とし、拡張期血圧を下端とする棒グラフによって、1機会の血圧値が示される。なお、2機会以上(例えば、朝起床時、夜就寝前)の計測値が存在する場合には、
図8Bに示すように、これらを並列表示することができる。また、色分け表示などにより、計測機会の別(例えば、朝/夜/それ以外)を識別可能に表示することもできる。
【0066】
図9は、心拍脈拍情報領域HPの拡大図である。
図9に示すように、心拍脈拍情報領域HPは、日次計測値算出部112が算出した日々の日次心拍数及び日次脈拍数、さらに心房細動(AF)が検出されている場合には当該AFが検出された際の心拍数、を同一のグラフエリア(X軸が時間軸、Y軸が拍数)上にプロットしたグラフが表示される。なお、当該グラフにおいて日次心拍数及び日次脈拍数は一日につき一の数値となるが、AFが検出された際の心拍数は、一日に複数回のAFが検出された場合には、検出された際の心拍数の全てがプロットされる。このようにすることで、時系列で変化を追いたい項目と、単発の情報を把握したい項目を区別しつつ、関連付けて把握することができる。また、AFが検出された日及び不規則脈波(不整脈)が検出された日には、そのことを示すマークを別途表示するようにしてもよい。
【0067】
なお、
図9に示す例では、表示期間の全ての日において、心拍数と脈拍数の日次計測値を決定できる計測機会があり、当該計測機会の心拍数、脈拍数がプロットされたものである。一方、心拍数と脈拍数のいずれもが適切に計測されている計測機会のない日がある場合には、その日の分は心拍数・脈拍数のいずれもプロットしないようにしてもよい。或いは、心拍数・脈拍数のうち予め優先する生体情報を決めておき、当該生体情報の値のみをプロット(表示)するようにしてもよい。或いは、適切に計測されている生体情報の値のみを、参考値であることを識別可能な態様で表示するようにしてもよい。
【0068】
このような表示を参照することにより、医師は患者Pの心収縮機能の変遷を容易に確認することが可能になる。また、心拍数と脈拍数とを同一のグラフエリアにプロットすることにより、心拍数の計測或いは脈拍数の計測のいずれかに計測エラーがあったとしても、他方の数値により患者Pの心収縮機能を診断することができる。心拍数と脈拍数に相違がある場合には、計測エラーに由来するものなのか、患者の症状の変化などの注目すべき事象が生じているのかを、その他の情報を踏まえて検討・判断することもできる。
【0069】
医師は、上記のような情報が表示される診療支援画像を参照することで、患者Pに関する情報を効率的に取得でき、多くの受け持ち患者の情報を把握しなければならない医師の負担を大きく低減することができる。また、医師が診療支援画像を参照して、診察時の問診の内容を無駄のないものとすることにより、患者Pの診察時における負荷を軽減することができる。
【0070】
(患者側端末)
図10は患者側端末300の機能構成を示すブロック図である。患者側端末300は、例えばスマートフォンやタブレット端末、腕時計型のウェアラブル端末などの携帯型情報処理端末などであり、制御部310、入力手段320、出力手段330、記憶手段340、通信手段350を備えている。なお、本実施例では、患者側端末300が本発明に係る自動問診端末に該当する。
【0071】
制御部310は患者側端末300の制御を司る手段であり、例えば、CPUなどによって構成される。また、入力手段320は出力手段330と一体となったタッチパネルディスプレイなどを採用することができる。記憶手段340は、他の端末と同様に、主記憶部、補助記憶部などを含んで構成され、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラム、その他、通信ネットワークNを介して取得する各種データが格納される。また、通信手段250は、例えば無線通信のための無線通信回路などを含んで構成される。
【0072】
制御部310は、症状出現運動情報などを含む患者情報管理に係る機能モジュールとして、自動問診実行部311を備えている。自動問診実行部311は、例えばアプリケーションプログラムにより提供される機能として実装され、問診を行うようにユーザーに情報の入力を求めるユーザーインターフェース(以下、UIという)を介して患者情報の入力
を受け付ける。自動問診実行部311は、例えば予め定められた所定の項目に関するアイコンを複数表示し、ユーザーに選択を求めるようなUIを表示するのであってもよいし、いわゆるチャットボットのような形式を採用することもできる。また、アプリケーションプログラムは患者側端末300の記憶手段340に格納されているのであってもよいし、サーバ装置100においてSaaS(Software as a Service)の態様で提供されるのであってもよい。
【0073】
自動問診実行部311は、患者に入力を求める情報(例えば、服薬情報、自覚症状の有無についての情報、症状運動情報、など)に応じてそれぞれ設定される所定期間ごとに自動問診を実行する。また、当該自動問診を実行するタイミングで(即ち、所定期間ごとに)患者に情報の入力を促す通知(画面表示、音声出力など)を行う。
【0074】
図11A、
図11Bは、患者側端末300の一例としてのスマートフォンの画面に、自動問診実行部311によって提供されるUIが表示された状態の例を示す図である。
図11Aは、毎日の服薬情報及び自覚症状の有無についての情報(自覚症状情報)の入力を受け付けるUIを示している。
図11Aに示すように、服薬情報については、朝・昼・夕の各時間帯の薬アイコンを選択することによって入力するUIとなっており、選択されたアイコンは表示が活性化される。また、自覚症状情報についても、各症状を示すアイコンが表示され、自覚した症状のアイコンを選択することにより入力を行うUIとなっている。ここでも、選択されたアイコンは表示が活性化される。自動問診実行部311は、
図11Aの画面を通じて、毎日スケジューリングされた時刻(例えば21:00)に患者に服薬情報及び自覚症状情報の入力を求める自動問診処理を実行する。なお、
図11Aに示す画面は服薬情報、自覚症状入力に係るUIの一例であり、これ以外のUIによってユーザーに自覚症状の入力を求めるようになっていてもよい。具体的には、例えば症状のリストを提示し、当該リストから患者に症状を選択させるようにしてもよいし、或いはメモなどとして自覚症状に係るテキスト情報の入力を受け付けるのであってもよい。
【0075】
図11Bは、所定期間(例えば、1週間)ごとの症状出現運動情報の入力を受け付けるUIの例を示している。
図11Bに示すように、運動強度の異なる複数の運動の内容(身体活動)を示す項目が一覧表示されており、自覚症状の出現した身体活動を選択することによって入力を行うUIとなっている。なお、選択した身体活動にはチェックマークが表示されることにより、選択された項目が明示されるようになっている。なお、
図11Bに示す画面は、症状出現運動情報入力に係るUIの一例であり、これ以外のUIを用いてもよい。
【0076】
自動問診実行部311は、
図11Bの画面を通じて、予め設定されたタイミング(例えば、毎週土曜日の21:00、など)に患者に症状出現運動情報の入力を求める自動問診処理を実行する。なお、自動問診実行部311が自動問診処理を行うタイミング(情報入力を促す通知のタイミング)は、上記のように「具体的な曜日(及び時刻)ごと」即ち、暦に所定期間を当てはめたものに限らず、「前回自動問診処理実行日(回答日)から7日後」のように、前回の回答日と所定期間とを用いて相対的に算出したタイミングであってもよい。
【0077】
また、自動問診実行部311は、情報入力を促す通知を行ったにもかかわらず、患者から情報の入力が行われなかった場合には、次の所定期間の到来を待たずに所定のタイミングで再度情報の入力を促す通知(リマインド)を行ってもよい。ここで、所定のタイミングとしては、例えば、翌日の同時刻のように予めスケジュールされるものであってもよい。また、患者が次に患者側端末300を利用した際にリマインドするのであってもよい。具体的には、例えば、後述の計測機器400による生体情報の計測時に、計測結果を表示するとともに、リマインドのメッセージを表示するようにしてもよい。
【0078】
また、自動問診実行部311は、自動問診処理によって患者の入力を受け付けた後は、次の自動問診処理の通知を行うまでは、再度の情報入力を受け付けないこととしてもよい。これによれば、患者の回答間隔が所定期間よりも短くなることを防止できる。
【0079】
上記のようにして患者Pがアプリケーションを介して行った情報の入力は、通信手段350からネットワークNを介してサーバ装置100に送信される。また、後述するように計測機器400から取得した計測データ、患者Pが入力する必要な情報なども、同様にしてサーバ装置100に送信される。
【0080】
(計測機器)
計測機器400は、患者Pが日々の生体情報の計測に用いるものであり、ここでは一つの機器に限らず、血圧計、心電計、体重計(体組成計)などの複数の計測機器を含む概念として計測機器400の語を用いる。また、各計測機器は、どのような形態のものであってもよい。例えば、心電計と血圧計が一体となったタイプの機器であってもよいし、心電計測が可能な体組成計であってもよい。また、据え置き型の機器であってもよいし、携帯可能な機器であってもよい。また、常時患者に装着されるようなウェアラブルタイプの機器を含んでいてもよい。また、計測機器400は患者側端末300と一体のものであってもよい。
【0081】
計測機器400を用いて計測された、心拍数、脈拍数、血圧値、体重などの各種計測データは、計測時刻に関する情報とともに、有線又は無線通信により患者側端末300に送信される。無線通信による場合には、計測機器400と患者側端末300との間で使用される通信インタフェースとしては、Bluetooth(登録商標)、赤外線通信等の近距離無線データ通信規格を採用することができる。
【0082】
なお、計測機器400は、通信手段を持たないものであってもよく、その場合には、患者Pが患者側端末300へ計測データ(及び計測日時情報)を手入力し、当該情報がサーバ装置100へ送られるようにしてもよい。
【0083】
また、患者側端末300が計測機器400の機能を兼ね備えるものであってもよい。例えば、患者側端末300が患者Pに装着されるウェアラブル端末の場合には、このウェアラブル端末内に計測機能が設けられていれば、計測機器400を兼ねることができる。或いは逆に、例えば据え置き型の計測機器400が情報処理端末としての機能を備え、患者側端末300を兼ねるようになっていてもよい。
【0084】
(システム内の情報処理の流れ)
次に、上記のような構成を有する本実施例に係る診療支援システム1で行われる情報処理の流れを説明する。
図12は、診療支援システム1内で行われる情報の授受、及び処理の流れを示す図である。
図12に示すように、先ず、患者Pが計測機器400で計測して得られた計測データ、症状出現運動情報、自覚症状情報、服薬情報などが患者側端末300に入力される(S101)。これらの情報は都度、或いは所定期間(例えば1週間)分まとめて、患者側端末300からサーバ装置100に送られる(S102)。
【0085】
サーバ装置100では、受け取った各種情報が記憶手段130に格納されるとともに、当該情報に基づいて、診療支援画像が生成される(S103)。
【0086】
その後、医師が医師側端末200を介して診療支援画像のリクエスト情報をサーバ装置100に送信する(S104)。そして、リクエストを受けたサーバ装置100は、診療支援画像を医師側端末200に提供し(S105)、医師側端末200の出力手段230
に、診療支援画像が表示される(S106)。ここで、診療支援画像は、データが医師側端末200に送信され、医師側端末200の記憶手段240に保存されるのであってもよいし、SaaSの態様で提供され、画像データの保存は不可となっていてもよい。なお、診療支援画像の内容は上述の通りである。
【0087】
以上、説明したような本実施例に係る診療支援システム1によれば、医師は心不全患者の自覚症状に係る情報及び推定重症度の変遷を、生体情報の計測データと共通の時間軸で示す診療支援画像を参照することができる。このような画面によれば効率的に患者の病状の変遷と直近の状態を容易に把握することができ、毎回の診察時に非効率的な問診を行うことを抑止して、効率的に患者の診断を行うことが可能になる。
【0088】
<変形例1>
なお、上記実施例では、症状出現運動情報取得部113による症状出現運動情報の取得間隔(即ち、患者の回答間隔)が所定期間を超えている場合には、推定重症度表示バーSBは後の回答時から所定期間分遡った長さだけ表示するようになっていたが、このような表示に限られるわけではない。即ち、患者の回答間隔が所定期間を超えている場合において、推定重症度表示バーSBを後の回答時から前の回答時までの期間分の長さで表示してもよい。このような表示方法によれば、推定NYHA分類変遷領域NTにおいて、推定重症度表示バーSBが表示されていない空白の期間が生じないことになる。
【0089】
<変形例2>
また、上記実施例では、自動問診実行部311は、自動問診処理によって患者の入力を受け付けた後は、次の自動問診処理の通知を行うまでは、再度の情報入力を受け付けないこととしていたが、必ずしもこのようにする必要はない。決まったタイミングでしか情報の入力を行えない、ということが却って患者のストレスになる虞もあるため、通知が無いタイミング(即ち、所定期間の到来前)であっても、自動問診処理を実行して情報の入力を可能な状態としてもよい。
【0090】
また、このように、所定期間ごと以外のタイミングでの情報入力を受け付ける場合には、所定期間ごとに行う(即ち定時処理の)自動問診処理によって入力された情報と、患者が任意のタイミングで入力した情報と、をタグ付けするなどして識別可能にしておいてもよい。
【0091】
また、自動問診実行部311は、1日の間に複数の症状出現運動情報の入力を受け付けた場合には、当該複数回分の症状出現運動情報のうち、最も重い症状が出現した際の運動の内容を含む情報のみを、その日の症状出現運動情報として採用(サーバ装置100に送信)してもよい。なお、全ての症状出現運動情報をサーバ装置100に送信したうえで、最小運動強度算出部114がそれら全ての症状出現運動情報に基づいて、最小運動強度を算出するのであってもよい。
【0092】
<その他>
上記各例の説明は、本発明を例示的に説明するものに過ぎず、本発明は上記の具体的な形態には限定されない。本発明は、その技術的思想の範囲内で種々の変形及び組み合わせが可能である。例えば、上記の実施例では、医師側端末200、患者側端末300をそれぞれ一つずつの構成で説明を行ったが、
図13に示すように、本発明は、複数の医師側端末200a~200n、及び/又は複数の患者側端末300a~300nを備える診療支援システム2として適用することも、当然に可能である。
【0093】
また、診療支援画像生成手段118は、
図3で示したようなデータテーブルの内容を表す一覧表を含む診療支援画像を生成するのであってもよい。このような一覧表を含む診療
支援画像を診察時に参照することができれば、医師は患者の重症度の診断を行うための問診をより効率的に行うことができる。
【0094】
また、上記実施例では、本発明に係る自動問診端末を患者側端末300(患者が有するスマートフォン)として説明したが、自動問診端末は必ずしもこのようなものに限られない。例えば、医療機関などに設置される情報処理端末であってもよいし、訪問看護師などが持参して患者に入力させる携帯型情報処理端末であってもよい。
【0095】
また、本発明に係る診療支援システムは、自動問診端末を備えない構成であってもよい。即ち、診察時の問診、電話問診などによって患者からヒアリングした情報を、マウスやキーボードを介した操作により、システムに入力するのであってもよい。
【0096】
また、上記実施例では、計測機器400は患者側端末300に計測データを送信するようになっていたが、計測データ(及びこれに付随する情報)を、直接サーバ装置100に送信するような構成となっていてもよい。このような構成であれば、自動問診端末としての患者側端末300が無い場合であっても、サーバ装置100は患者Pの日々の計測データを取得することができる。
【0097】
また、上記実施例では、最小運動強度算出部114は、症状出現運動情報に基づいて最小運動強度を算出していたが、これ以外の方法によって最小運動強度を算出するのであってもよい。例えば、患者側端末による自動問診処理によって、直接的に最小運動強度を質問するUIを提供し、これに対する回答情報に基づいて最小運動強度を導くようにしてもよい。
【0098】
また、上記実施例では、心不全の重症度を示す情報としてNYHA分類を例示したが、必ずしもこれに限定する必要はなく、例えば重症度を示す情報としてACC/AHA(American Heart Association / American College of Cardiology)ステージ分類などを用いてもよい。また、このような分類に限らず、身体機能の低下度合いなども示すものであってもよい。また、上記実施例では対象となる疾病を心不全としたが、診療対象の疾病はこれに限られない。例えば、高血圧患者の診療などにも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0099】
1、2・・・診療支援システム
100・・・サーバ装置
110、210、310・・・制御部
120、240、340・・・記憶手段
130、250、350・・・通信手段
200・・・医師側端末
220、320・・・入力手段
230、330・・・出力手段
300・・・患者側端末
400・・・計測機器
P・・・患者
N・・・通信ネットワーク
OV・・・概要情報領域
MM・・・最小METs情報
W・・・体重情報領域
NT・・・推定NYHA分類変遷領域
SB・・・推定重症度表示バー
S・・・自覚症状情報領域
ME・・・服薬情報領域
BP・・・血圧情報領域
HP・・・心拍脈拍情報領域