(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151324
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】二重容器
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20231005BHJP
B65D 77/06 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B65D1/02 110
B65D1/02 ZAB
B65D1/02 221
B65D77/06 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060889
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】石井 裕介
【テーマコード(参考)】
3E033
3E067
【Fターム(参考)】
3E033AA02
3E033BA15
3E033BA16
3E033BA18
3E033BB08
3E033CA20
3E033DA02
3E033DA03
3E033DA08
3E033DB01
3E033DC04
3E033DC10
3E033FA03
3E033GA02
3E067AA03
3E067AC01
3E067BA03C
3E067BA13B
3E067BB15B
3E067BB15C
3E067BB16B
3E067BB16C
3E067BB25B
3E067BB25C
3E067BB26B
3E067BB26C
3E067CA04
3E067EB27
3E067EE59
3E067FA04
3E067FC01
3E067GB01
3E067GD08
(57)【要約】
【課題】容易な分別を実現し易い二重容器を提供する。
【解決手段】口部4、口部4よりも拡径する胴部5、ヒール部6及び底部7をこの順に有し、外層体2aと外層体2aの内側に剥離可能に積層される内層体2bとによって形成され、内層体2bが、口部4において外層体2aの内周面に螺脱可能に螺合する螺合部4eを有し、少なくとも胴部5の下端部5eが、ヒール部6の上端から上方に向けて徐々に拡径する、二重容器1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部、口部よりも拡径する胴部、ヒール部及び底部をこの順に有し、
外層体と前記外層体の内側に剥離可能に積層される内層体とによって形成され、
前記内層体が、前記口部において前記外層体の内周面に螺脱可能に螺合する螺合部を有し、
少なくとも前記胴部の下端部が、前記ヒール部の上端から上方に向けて徐々に拡径する、二重容器。
【請求項2】
前記胴部の前記下端部が、前記ヒール部の上端から胴部の全高に対する15%の高さの部分までにわたる部分として定義され、
前記二重容器の中心軸線を含む縦断面において、前記胴部の前記下端部における下端と上端を結ぶ直線が前記中心軸線に対して20°以下の角度で傾く、請求項1に記載の二重容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二重容器に関する。
【背景技術】
【0002】
外層体と外層体の内側に剥離可能に積層される内層体とによって形成される二重容器が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような二重容器は、リサイクル性などの観点から、内層体を外層体から容易に分別できれば望ましい。
【0005】
そこで本発明の目的は、容易な分別を実現し易い二重容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の二重容器は、口部、口部よりも拡径する胴部、ヒール部及び底部をこの順に有し、外層体と前記外層体の内側に剥離可能に積層される内層体とによって形成され、前記内層体が、前記口部において前記外層体の内周面に螺脱可能に螺合する螺合部を有し、少なくとも前記胴部の下端部が、前記ヒール部の上端から上方に向けて徐々に拡径する、二重容器である。
【0007】
本発明の二重容器は、上記構成において、前記胴部の前記下端部が、前記ヒール部の上端から胴部の全高に対する15%の高さの部分までにわたる部分として定義され、前記二重容器の中心軸線を含む縦断面において、前記胴部の前記下端部における下端と上端を結ぶ直線が前記中心軸線に対して20°以下の角度で傾く、二重容器であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、容易な分別を実現し易い二重容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態の二重容器を示す一部断面側面図である。
【
図2】
図1に示す二重容器の分別時の様子を示す一部断面側面図である。
【
図4】
図1に示す二重容器の変形例の分別時の様子を示す一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を例示説明する。
【0011】
図1に示すように、本発明の一実施形態において二重容器1は、口部4、胴部5、ヒール部6及び底部7をこの順に有する容器本体2と、口部4に取り付けられるキャップ3と、を有する。なお、二重容器1はキャップ3を有する構成に限らず、例えば、口部4に取り付けられる吐出具(ポンプ等)を有する構成としてもよい。容器本体2は、外層体2aと外層体2aの内側に剥離可能に積層される内層体2bとによって形成される。
【0012】
外層体2aは、口部4を構成する部分である外口部4aと、胴部5を構成する部分である外胴部5aと、ヒール部6を構成する部分である外ヒール部6aと、底部7を構成する部分である外底部7aと、を有する。また内層体2bは、口部4を構成する部分である内口部4bと、胴部5を構成する部分である内胴部5bと、ヒール部6を構成する部分である内ヒール部6bと、底部7を構成する部分である内底部7bと、を有する。外層体2aと内層体2bは、胴部5、ヒール部6及び底部7において剥離可能に接触する。
【0013】
なお、本願における「剥離」とは、接着状態又は接着力が殆ど介在しない擬似接着状態から内層体2bと外層体2aが離れる場合だけでなく、接着力が介在しない接触状態から内層体2bと外層体2aが離れる場合も含む。
【0014】
容器本体2は、2軸延伸可能なポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を例えば射出成形して形成される外プリフォームと、ポリプロピレン(PP)樹脂(ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーのいずれであるかを問わない)を例えば射出成形して形成される内プリフォームとを組み合わせた二重構造のプリフォーム組み立て体を二軸延伸ブロー成形することによって形成される。なお、外プリフォームは外層体2aに対応し、内プリフォームは内層体2bに対応する。
【0015】
2軸延伸可能なポリエチレンテレフタレート樹脂としては、例えばホモPET等が挙げられるが、IPA(イソフタル酸)変性PET又はCHDM変性PET等の他のPETを用いてもよい。外プリフォームは、ポリエチレンテレフタレート樹脂製に限らず、例えばポリプロピレン(PP)樹脂製やポリエチレン(PE)樹脂製など、他の樹脂材料により形成してもよい。外プリフォームは単層構造に限らず、主材層に加えてバリア性等の機能を向上させる1層以上の機能層も含む複数層構造としてもよい。
【0016】
内プリフォームは、ポリプロピレン樹脂製に限らず、内層体2bが外層体2aから剥離可能となる材料から適宜選択することができ、例えばポリエチレン(PE)樹脂製や2軸延伸可能なポリエチレンテレフタレート樹脂製などにより形成してもよい。内プリフォームは単層構造に限らず、主材層に加えてバリア性等の機能を向上させる1層以上の機能層も含む複数層構造としてもよい。
【0017】
内層体2bと外層体2aの分離性を高めるために、内プリフォームの外面と外プリフォームの内面との少なくとも一方にシリコンからなる層を例えば塗布によって設けてもよい。
【0018】
なお、容器本体2は、上記のようなプリフォーム組み立て体をブロー成形して得られるものに限らない。
【0019】
容器本体2は、図示しない内容物を収容する収容空間Sを内層体2bの内面によって形成する。内容物は特に限定されず、例えば液体である。
【0020】
本実施形態では、二重容器1の中心軸線Oに沿う方向を上下方向といい、底部7から口部4に向かう方向を上方といい、その反対方向を下方といい、中心軸線Oに直交する直線に沿う方向を径方向といい、中心軸線Oを周回する方向を周方向といい、中心軸線Oを含む断面を縦断面という。
【0021】
口部4は、中心軸線Oを中心とする筒状をなし、通常は、図示するような円筒状をなす。より具体的には口部4は、外口部4aと内口部4bとで構成される2重筒状をなし、通常は、図示するような2重円筒状をなす。口部4(より詳細には、外口部4aと、内口部4bの下端部を除く部分)は、2軸延伸ブロー成形時に実質的に延伸されず、成形後もプリフォーム組み立て体の時と同等の形状を有する。
【0022】
外口部4aの外周面は、径方向に突出するとともに周方向に連続して延びるネックリング4cを有する。なお、ネックリング4cは周方向に断続して延びる構成としてもよい。また、ネックリング4cを設けない構成としてもよい。外口部4aの内周面は、内口部4bの螺合部4eに螺脱可能に螺合し中心軸線Oを中心とする雌ねじ状をなす被螺合部4dを有する。なお被螺合部4dは、雌ねじ状に限らず、螺合部4eに螺脱可能に螺合する構成であればよい。
【0023】
内口部4bの外周面は、外口部4aの内周面の被螺合部4dに螺脱可能に螺合し中心軸線Oを中心とする雄ねじ状をなす螺合部4eを有する。なお螺合部4eは、雄ねじ状に限らず、被螺合部4dに螺脱可能に螺合する構成であればよい。
【0024】
なお、螺合部4eと被螺合部4dはそれぞれ、1条ねじとして構成してもよいし、2条以上の多条ねじとして構成してもよいし、間欠ねじとして構成してもよい。
【0025】
また内口部4bは、螺合部4eを被螺合部4dに螺合させた状態で外口部4aの上端面に全周に亘って接するように径方向外側に突出する段差部4fを有する。段差部4fは、内口部4bから径方向外側に突出するとともに周方向に連続して延びるフランジ4gの下面によって形成される。なお段差部4fは、外口部4aの上端面に全周に亘って接する構成に限らず、外口部4aの上端面に周方向の所定箇所のみにおいて接する構成としてもよい。また段差部4fは、フランジ4gの下面によって形成される構成に限らない。
【0026】
内口部4bの上端部(段差部4fよりも上方の部分)は、外層体2aに対して中心軸線Oを中心にキャップ3と共回り可能にキャップ3に取り付けられる。より具体的には内口部4bの上端部は、キャップ3に対して凹凸形状同士の係合により、周方向の回転と上下方向の移動を規制され且つ取り付けられる。
【0027】
胴部5は、口部4の下端に連なり、中心軸線Oを中心とし、口部4よりも拡径する筒状をなす。より具体的には、胴部5は、口部4の下端から下方に向けて徐々に拡径する肩領域5cと、肩領域5cの下端から下方に延びる胴本体領域5dと、を有する。胴部5は、図示しない周リブや縦リブを有する構成としてもよく、そのような構成の場合においても、概略円形状をなす水平断面形状を全高にわたって有するのが好ましい。
【0028】
ヒール部6は、縦断面において底部7の接地部7cの外周縁から上方に向けて曲がる部分である。本実施形態では、ヒール部6は縦断面において底部7の接地部7cの外周縁から所定の曲率で容器外側に凸となるように湾曲し、胴部5の下端に連なる。なお、ヒール部6は、湾曲部に限らず、屈曲部として構成してもよい。
【0029】
底部7は、底部7の外周縁を形成し、周方向に全周にわたって連続して延びる接地部7cと、接地部7cよりも径方向内側で容器内側に凸となる底凹部7dと、を有する。なお、接地部7cは全周にわたって連続して延びる構成に限らず、周方向に断続して延びる構成としてもよい。また、底部7は底凹部7dを有する構成に限らず、例えば底部7の全面を接地部7cとして構成してもよい。
【0030】
本実施形態の二重容器1は、内容物を使い切って廃棄する際などに、
図2に示すように、外層体2aに対してキャップ3を内口部4bとともに捻り、螺合部4eを被螺合部4dに対して上方に螺脱させる操作により、ねじの力を利用して小さな操作力で内層体2b全体を外層体2aに対して持ち上げて分離させることができる。このとき、外層体2aに密着している内層体2bが、外層体2aより剥離する。しかし、例えば胴本体領域5dが上下方向に一定の径を有する構成の場合には、内ヒール部6b付近において内層体2bが外層体2aの内周面に強く接触し、高い摩擦抵抗を生じ易く、その結果、内層体2bを外層体2a内から抜き出すのが難しい場合がある。
【0031】
そこで、本実施形態の二重容器1は、そのような摩擦抵抗を抑制するために、少なくとも胴部5の下端部5eがヒール部6の上端から上方に向けて徐々に拡径するように構成される。
【0032】
このような構成によれば、螺合部4eを被螺合部4dから螺脱させるのに伴って内層体2bが上昇する際に内ヒール部6bが外胴部5aの内周面に接触しにくくなり、その結果、容易な分別を実現することができる。
【0033】
このような効果を得易くするためには、胴部5の下端部5eは、ヒール部6の上端から胴部5の全高に対する15%の高さの部分までにわたる部分として定義するのが好ましい。すなわち、胴部5の下端部5eの下端P1はヒール部6の上端に位置し、胴部5の下端部5eの上端P2は胴部5の全高に対する15%の高さの部分に位置するのが好ましい。この場合、胴部5の下端部5eの上端P2の高さhは、胴部5の上端の高さHの15%となる。なお、高さとは、接地部7cからの高さである。
【0034】
また、上記効果を得易くするためには、胴部5の下端部5eは、縦断面において、胴部5の下端部5eにおける下端P1と上端P2を結ぶ直線が中心軸線Oに対して20°以下の角度θで傾くように構成するのが好ましい。例えば、胴部5の下端部5eの上端P2よりも上側の胴本体領域5dを上下方向に径が一定の円筒状に構成した場合には、内胴部5bの下端部5eの上端が最大径部分となり、角度θが20°を超えると当該部分で分別時の上記摩擦抵抗を生じ易くなってしまう。また、胴部5の下端部5eの上端P2よりも上側の胴本体領域5dを、胴部5の下端部5eと同じ傾斜角度の傾斜面状に構成した場合には、胴本体領域5dの上端側部分が大きく不安定となり、且つ、外観や操作性(持ち易さ等)に劣ることとなってしまう。
【0035】
また、上記効果を得易くするためには、胴部5の下端部5eの上端P2での半径と胴部5の下端部5eの下端P1での半径との差ΔRが、1.0~3.0mmであるのが好ましい。
【0036】
また、上記効果を得易くするためには、胴部5の下端部5eは、縦断面において、図示するような直線状でもよいし、図示しない曲線状でもよいが、上方に向けて径が漸次増加するのが好ましい。胴部5の下端部5eを、縦断面において曲線状をなすように構成する場合には、容器外側に凸となる曲線状とするのが好ましい。なお、胴部5の下端部5eを、縦断面においてヒール部6と一続きとなる曲線状をなすように構成してもよい。つまり、胴部5の下端部5eの曲率がヒール部6の曲率と同じとなるように構成してもよいし、胴部5の下端部5eの曲率がヒール部6から離れるにつれてヒール部6の曲率から滑らかに変化する構成としてもよい。
【0037】
胴部5の下端部5eの上端P2よりも上側の胴本体領域5dは、上下方向に径が一定の円筒状に限らず例えば、
図4に示す変形例のように、胴部5の下端部5eと同じ傾斜角度の傾斜面状に構成してもよい。このような場合でも上記効果を得ることができる。また、胴部5の下端部5eの上端P2よりも上側の胴本体領域5dは、例えば、胴部5の下端部5eから傾斜角度が段階的に小さくなるなど、胴部5の下端部5eから傾斜角度が変化する構成としてもよい。
【0038】
本発明は前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0039】
したがって、前述した実施形態の二重容器1は、口部4、口部4よりも拡径する胴部5、ヒール部6及び底部7をこの順に有し、外層体2aと外層体2aの内側に剥離可能に積層される内層体2bとによって形成され、内層体2bが、口部4において外層体2aの内周面に螺脱可能に螺合する螺合部4eを有し、少なくとも胴部5の下端部5eが、ヒール部6の上端から上方に向けて徐々に拡径する、二重容器1である限り変更可能である。
【0040】
前述した実施形態では、容器本体2は、分別時まで外層体2aと内層体2bの密着状態が維持される構成とされるが、これに限らず例えば、外気導入口を有するとともに内容物の吐出による内層体2bの減容変形に伴って外気導入口から外層体2aと内層体2bの間に外気を導入可能な積層剥離容器として構成してもよい。その場合、外気導入口は、外口部4aを径方向に貫通する1つ以上の貫通穴によって構成してもよいし、内口部4bの上端面と外口部4aとの間に形成される隙間によって構成してもよい。
【0041】
なお、前述した実施形態の二重容器1は、上記構成において、胴部5の下端部5eが、ヒール部6の上端から胴部5の全高に対する15%の高さの部分までにわたる部分として定義され、二重容器1の中心軸線Oを含む縦断面において、胴部5の下端部5eにおける下端P1と上端P2を結ぶ直線が中心軸線Oに対して20°以下の角度θで傾く、二重容器1であるのが好ましい。
【符号の説明】
【0042】
1 二重容器
2 容器本体
2a 外層体
2b 内層体
3 キャップ
4 口部
4a 外口部
4b 内口部
4c ネックリング
4d 被螺合部
4e 螺合部
4f 段差部
4g フランジ
5 胴部
5a 外胴部
5b 内胴部
5c 肩領域
5d 胴本体領域
5e 下端部
6 ヒール部
6a 外ヒール部
6b 内ヒール部
7 底部
7a 外底部
7b 内底部
7c 接地部
7d 底凹部
h 胴部の下端部の上端の高さ
H 胴部の上端の高さ
O 中心軸線
P1 胴部の下端部の下端
P2 胴部の下端部の上端
S 収容空間
θ 角度
ΔR 半径差