(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151327
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】低誘電樹脂組成物、プリプレグ、積層板、配線板
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20231005BHJP
C08F 290/00 20060101ALI20231005BHJP
C08K 5/3415 20060101ALI20231005BHJP
C08K 5/544 20060101ALI20231005BHJP
C08L 15/00 20060101ALI20231005BHJP
C08L 71/12 20060101ALI20231005BHJP
C08F 283/00 20060101ALI20231005BHJP
C08F 277/00 20060101ALI20231005BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20231005BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20231005BHJP
B32B 5/28 20060101ALI20231005BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20231005BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C08L101/00
C08F290/00
C08K5/3415
C08K5/544
C08L15/00
C08L71/12
C08F283/00
C08F277/00
C08K3/013
C08J5/24 CER
C08J5/24 CEZ
B32B5/28 Z
B32B15/08 105Z
H05K1/03 610P
H05K1/03 610T
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060893
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】大東 範行
【テーマコード(参考)】
4F072
4F100
4J002
4J026
4J127
【Fターム(参考)】
4F072AA07
4F072AB04
4F072AB05
4F072AB06
4F072AB09
4F072AD02
4F072AD05
4F072AD42
4F072AE02
4F072AE12
4F072AF06
4F072AF14
4F072AF15
4F072AF17
4F072AF23
4F072AF24
4F072AF26
4F072AF29
4F072AG03
4F072AG19
4F072AH02
4F072AJ22
4F072AK14
4F072AL13
4F100AA01A
4F100AA20
4F100AB01B
4F100AB17
4F100AB33
4F100AG00
4F100AG00A
4F100AH03A
4F100AH06
4F100AK01
4F100AK01A
4F100AK02A
4F100AK17A
4F100AK29
4F100AK41A
4F100AK45A
4F100AK46A
4F100AK49
4F100AK49A
4F100AK51A
4F100AK54
4F100AK54A
4F100AL09
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA02A
4F100CA23
4F100CA23A
4F100DG01A
4F100DH01
4F100DH01A
4F100EJ67
4F100EJ82
4F100EJ82A
4F100GB43
4F100JA05
4F100JA07A
4F100JG05
4F100JG05A
4F100JK06
4F100JL01
4F100YY00A
4J002AC032
4J002AC113
4J002BK001
4J002CG001
4J002CH074
4J002CM041
4J002DE139
4J002DE149
4J002DE189
4J002DE229
4J002DE289
4J002DF019
4J002DJ019
4J002DJ039
4J002DJ049
4J002DK009
4J002DL009
4J002EH077
4J002EU026
4J002EU197
4J002EX078
4J002FD019
4J002FD142
4J002FD143
4J002FD146
4J002FD147
4J002FD148
4J002GQ00
4J002GQ01
4J026AA59
4J026AA68
4J026AA76
4J026AC19
4J026BA40
4J026BA50
4J026DB06
4J026DB07
4J026DB15
4J026DB32
4J026FA07
4J026FA09
4J026GA06
4J026GA07
4J026GA08
4J127AA03
4J127BB031
4J127BB042
4J127BB043
4J127BB072
4J127BB111
4J127BB142
4J127BB143
4J127BB152
4J127BB221
4J127BC021
4J127BC022
4J127BC033
4J127BC151
4J127BC152
4J127BD072
4J127BD173
4J127BD231
4J127BG051
4J127BG052
4J127BG05Y
4J127BG141
4J127BG14X
4J127BG162
4J127BG16Y
4J127BG392
4J127BG39Y
4J127CB031
4J127CB203
4J127CB352
4J127CC021
4J127CC292
4J127CC293
4J127CC393
4J127DA33
4J127DA39
4J127DA51
4J127FA02
4J127FA03
4J127FA37
4J127FA38
(57)【要約】
【課題】低誘電および低誘電正接を得つつも、レーザー加工性を向上できる低誘電樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】本発明の低誘電樹脂組成物は、マレイミド化合物(A)、熱可塑性樹脂(B)、架橋剤(C)、および式(1)~(5)で示される1または2以上のシランカップリング剤(D)を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マレイミド化合物(A)、熱可塑性樹脂(B)、架橋剤(C)、および以下の式(1)~(5)で示される1または2以上のシランカップリング剤(D)を含む、低誘電樹脂組成物。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
(式(1)~(5)中、Rは、メチル基またはエチル基を示し、a~lは繰り返し単位示す。)
【請求項2】
請求項1に記載の低誘電樹脂組成物であって、
複数の芳香族エステル構造を骨格とし、末端に不飽和結合基を有する化合物(E)を含む、低誘電樹脂組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の低誘電樹脂組成物であって、
前記化合物(E)の質量平均分子量が150~3000である、低誘電樹脂組成物。
【請求項4】
請求項2または3に記載の低誘電樹脂組成物であって、
前記化合物(E)の前記芳香族エステル構造は、炭素数7~20のアリールカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリーレンカルボニルオキシ基、アリーレンオキシカルボニル基、アリールカルボニルオキシアリーレン基、アリールオキシカルボニルアリーレン基、アリーレンカルボニルオキシアリーレン基、及びアリーレンオキシカルボニルアリーレン基の中から選ばれる1種または2種以上を有する、低誘電樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれか一項に記載の低誘電樹脂組成物であって、
熱可塑性樹脂(B)は、クマロン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、およびポリノルボルネン樹脂の中から選ばれる1種または2種以上を有する、低誘電樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれか一項に記載の低誘電樹脂組成物であって、
架橋剤(C)は、トリアルケニルシアヌレート化合物、多官能ビニル化合物、ビニルベンジル化合物、多官能マレイミド化合物(ただし前記マレイミド化合物(A)を除く)、およびイソシアネート化合物のなかから選ばれる1種または2種以上である、低誘電樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれか一項に記載の低誘電樹脂組成物であって、
無機充填材(F)をさらに含む、低誘電樹脂組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の低誘電樹脂組成物であって、
前記無機充填材(F)の含有量は、当該低誘電樹脂組成物の全固形分質量に対して40~85質量%である、低誘電樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1乃至8いずれか一項に記載の低誘電樹脂組成物であって、
変性ポリフェニレンエーテル共重合体(G)をさらに含む、低誘電樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1乃至9いずれか一項に記載の低誘電樹脂組成物であって、
前記マレイミド化合物(A)の含有量は、当該低誘電樹脂組成物の全固形分質量に対して1~40質量%である、低誘電樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1乃至10いずれか一項に記載の低誘電樹脂組成物を繊維基材に含浸させて形成されたプリプレグ。
【請求項12】
請求項11に記載のプリプレグであって、
前記繊維基材が、ガラス繊維基材、ポリアミド系樹脂繊維、ポリエステル系樹脂繊維、ポリイミド樹脂繊維、およびフッ素樹脂繊維の中から選ばれる1種または2種以上を含む、プリプレグ。
【請求項13】
請求項11または12に記載のプリプレグの少なくとも一方の面上に金属層を配置してなる積層板。
【請求項14】
請求項11乃至13いずれか一項に記載のプリプレグを用いた、配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低誘電樹脂組成物、プリプレグ、積層板、配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タブレット端末やスマートフォンに代表される電子機器の高機能化が進み、信号スピードおよび作動周波数が飛躍的に増加している。そのため、高周波領域で用いられる電子機器においては、低誘電率、低誘電正接化が一層望まれている。
【0003】
そこで従来、低比誘電率および低誘電正接の材料の研究・開発が進んでいる。例えば、特許文献1には、低比誘電率および低誘電正接であり、かつ低硬度の硬化物を得るため、特定の構造を有するマレイミド化合物と、アミノ基またはチオール基を1分子中に少なくとも2個有する化合物と、(メタ)アクリル基を有する化合物と、硬化触媒とを含む樹脂組成物が開示されている。また、特許文献2には、低誘電特性と、耐熱性および接着性をえるため、質量平均分子量が500g/mol以上であり、マレイミド基を2個以上含有するポリマレイミド化合物と、エポキシ化合物と、ポリエステルと、芳香族アミン化合物とを含む樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-109941号公報
【特許文献2】特開2021-88649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1,2に記載されるような樹脂組成物においては、低誘電および低誘電正接が得られても、レーザー加工性において改善の余地があった。そのため、例えば、レーザー加工性によりプリプレグ等にスルーホールを形成したのちにメッキ加工を施す際、メッキがスルーホールの内壁からプリプレグ内部へ染み込むという問題があった。そして、基材へのレーザー加工性が十分でないため、基材に空隙が生じやすくなったり、ビア間の絶縁信頼性が低下するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、かかる課題を解決するために鋭意検討を行ったところ、特定の構造を有するシランカップリング剤を用いることで、樹脂組成物の繊維基材に対する密着性が向上し、レーザー加工性を向上できることを知見した。そして、マレイミド化合物、熱可塑性樹脂、架橋剤と組み合わせて用いることで、低誘電および低誘電正接を得つつも、良好なレーザー加工性を両立できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
本発明によれば、以下の樹脂組成物、およびこれを用いたプリプレグ、積層板、配線板が提供される。
【0008】
[1]
マレイミド化合物(A)、熱可塑性樹脂(B)、架橋剤(C)、および以下の式(1)~(5)で示される1または2以上のシランカップリング剤(D)を含む、低誘電樹脂組成物。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
(式(1)~(5)中、Rは、メチル基またはエチル基を示し、a~lは繰り返し単位示す。)
[2]
[1]に記載の低誘電樹脂組成物であって、
複数の芳香族エステル構造を骨格とし、末端に不飽和結合基を有する化合物(E)を含む、低誘電樹脂組成物。
[3]
[2]に記載の低誘電樹脂組成物であって、
前記化合物(E)の質量平均分子量が150~3000である、低誘電樹脂組成物。
[4]
[2]または[3]に記載の低誘電樹脂組成物であって、
前記化合物(E)の前記芳香族エステル構造は、炭素数7~20のアリールカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリーレンカルボニルオキシ基、アリーレンオキシカルボニル基、アリールカルボニルオキシアリーレン基、アリールオキシカルボニルアリーレン基、アリーレンカルボニルオキシアリーレン基、及びアリーレンオキシカルボニルアリーレン基の中から選ばれる1種または2種以上を有する、低誘電樹脂組成物。
[5]
[1]乃至[4]いずれか一つに記載の低誘電樹脂組成物であって、
熱可塑性樹脂(B)は、クマロン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、およびポリノルボルネン樹脂の中から選ばれる1種または2種以上を有する、低誘電樹脂組成物。
[6]
[1]乃至[5]いずれか一つに記載の低誘電樹脂組成物であって、
架橋剤(C)は、トリアルケニルシアヌレート化合物、多官能ビニル化合物、ビニルベンジル化合物、多官能マレイミド化合物(ただし前記マレイミド化合物(A)を除く)、イソシアネート化合物のなかから選ばれる1種または2種以上である、低誘電樹脂組成物。
[7]
[1]乃至[6]いずれか一つに記載の低誘電樹脂組成物であって、
無機充填材(F)をさらに含む、低誘電樹脂組成物。
[8]
[7]に記載の低誘電樹脂組成物であって、
前記無機充填材(F)の含有量は、当該低誘電樹脂組成物の全固形分質量に対して40~85質量%である、低誘電樹脂組成物。
[9]
[1]乃至[8]いずれか一つに記載の低誘電樹脂組成物であって、
変性ポリフェニレンエーテル共重合体(G)をさらに含む、低誘電樹脂組成物。
[10]
[1]乃至[9]いずれか一つに記載の低誘電樹脂組成物であって、
前記マレイミド化合物(A)の含有量は、当該低誘電樹脂組成物の全固形分質量に対して1~40質量%である、低誘電樹脂組成物。
[11]
[1]乃至[10]いずれか一つに記載の低誘電樹脂組成物を繊維基材に含浸させて形成されたプリプレグ。
[12]
[11]に記載のプリプレグであって、
前記繊維基材が、ガラス繊維基材、ポリアミド系樹脂繊維、ポリエステル系樹脂繊維、ポリイミド樹脂繊維、およびフッ素樹脂繊維の中から選ばれる1種または2種以上を含む、プリプレグ。
[13]
[11]または[12]に記載のプリプレグの少なくとも一方の面上に金属層を配置してなる積層板。
[14]
[11]乃至[13]いずれか一つに記載のプリプレグを用いた、配線板。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低誘電および低誘電正接を得つつも、レーザー加工性を向上できる低誘電樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。
【0011】
<低誘電樹脂組成物>
本実施形態の低誘電樹脂組成物は、マレイミド化合物(A)、熱可塑性樹脂(B)、架橋剤(C)、および以下の式(1)~(5)で示される1または2以上のシランカップリング剤(D)を含むものである。
これにより、低誘電樹脂組成物の繊維基材等に対する密着性が向上でき、その結果レーザー加工性を向上できる。
以下、本実施形態の低誘電樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」と表記する)に含まれる各成分について説明する。
【0012】
[マレイミド化合物(A)]
マレイミド化合物(A)のマレイミド基は、5員環の平面構造を有し、マレイミド基の二重結合が分子間で相互作用しやすく極性が高いため、マレイミド基、ベンゼン環、その他の平面構造を有する化合物等と強い分子間相互作用を示し、分子運動を抑制することができる。そのため、本実施形態の樹脂組成物は、マレイミド化合物(A)を含むことにより、得られる絶縁層の線膨張係数を下げ、ガラス転移温度を向上させることができ、さらに、耐熱性を向上させることができる。
【0013】
マレイミド化合物(A)としては、分子内に少なくとも2つのマレイミド基を有するマレイミド化合物が好ましい。
分子内に少なくとも2つのマレイミド基を有するマレイミド化合物としては、例えば、4,4'-ジフェニルメタンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、p-フェニレンビスマレイミド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス-(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、N,N'-エチレンジマレイミド、N,N'-ヘキサメチレンジマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド等の分子内に2つのマレイミド基を有する化合物、ポリフェニルメタンマレイミド等の分子内に3つ以上のマレイミド基を有する化合物等が挙げられる。
これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、2種類以上を併用することもできる。これらのマレイミド化合物(A)の中でも、安定的に所望の誘電特性を得る点等から、4,4'-ジフェニルメタンビスマレイミド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス-(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ポリフェニルメタンマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミドが好ましい。
【0014】
成分(A)の含有量は、樹脂組成物の全固形分100質量部に対して、1質量部以上40質量部以下が好ましく、2質量部以上35質量部以下がより好ましく、4質量部以上30質量部以下がさらに好ましい。
成分(A)の含有量を、上記下限値以上とすることにより、良好な誘電正接および低誘電正接としつつ、レーザー加工性を向上できる。また、線膨張係数を下げ、ガラス転移温度を向上させ、耐熱性を向上させることができる。
一方、成分(A)の含有量を、上記上限値以下とすることにより、良好な誘電正接および低誘電正接と、レーザー加工性とのバランスを向上できる。
【0015】
[熱可塑性樹脂(B)]
本実施形態の熱可塑性樹脂(B)は、密着性おより加工性を良好にするために用いられる。熱可塑性樹脂(B)としては、クマロン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、およびポリノルボルネン樹脂の中から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
【0016】
(クマロン樹脂)
上記のクマロン樹脂とは、その骨格構造にクマロン残基を含む平均重合度4~8の(共)重合体のことを示し、クマロン(1-ベンゾフラン)重合体の他、インデン(C9H8)、スチレン(C8H8)、α-メチルスチレン、メチルインデンおよびビニル卜ルエンとの共重合体であってもよい。なかでも、クマロン-インデン共重合体、クマロン-インデン-スチレン共重合体であることが好ましい。
【0017】
すなわち、クマロン樹脂は、クマロン系モノマー由来の構造単位を含むものであり、インデン系モノマー由来の構造単位、および他のモノマー由来の構造単位を有していてもよい。他のモノマー由来の構造単位としては、例えば、スチレン系モノマー由来の構造単位が挙げられる。これらの構造単位の繰り返し構造を有することができる。
【0018】
上記インデン系モノマーに由来する構造単位は、例えば、下記一般式(M1)で表されるものが挙げられる。
【0019】
【0020】
(一般式(M1)中、R1からR7は、それぞれ独立して水素または炭素数1以上3以下の有機基である。)
【0021】
上記クマロン系モノマーに由来する構造単位は、例えば、下記一般式(M2)で表されるものが挙げられる。
【0022】
【0023】
(一般式(M2)中、RCは、水素または炭素数1以上3以下の有機基である。RCは互いに同一でもよく、互いに異なっていてもよい。)
【0024】
上記スチレン系モノマーに由来する構造単位は、例えば、下記一般式(M3)で表されるものが挙げられる。
【化8】
【0025】
(一般式(M3)中、RSは、水素または炭素数1以上3以下の有機基である。RSは互いに同一でもよく、互いに異なっていてもよい。)
【0026】
上記一般式(M1)~(M3)において、R1からR7、RCおよびRSは、例えば、有機基の構造に水素および炭素以外の原子を含んでもよい。
水素および炭素以外の原子としては、具体的には、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子、フッ素原子、塩素原子等が挙げられる。水素および炭素以外の原子としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を含むことができる。
【0027】
上記一般式(M1)~(M3)において、R1からR7、RCおよびRSは、それぞれ独立して、例えば、水素または炭素数1以上3の有機基であり、水素または炭素数1の有機基であることが好ましく、水素であることがさらに好ましい。
【0028】
上記一般式(M1)~(M3)において、上記R1からR7、RCおよびRSを構成する有機基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基等のアルキル基;アリル基、ビニル基等のアルケニル基;エチニル基等のアルキニル基;メチリデン基、エチリデン基等のアルキリデン基;シクロプロピル基等のシクロアルキル基;エポキシ基、オキセタニル基等のヘテロ環基等が挙げられる。
【0029】
上記クマロン樹脂は、このなかでも、インデン、クマロンおよびスチレンの共重合体、インデンとスチレンの共重合体を含むことができる。これにより、低誘電特性を向上させることができる。
【0030】
また、クマロン樹脂は、OH基、COOH基等の反応性基を備えることにより、低誘電特性を向上させることができる。
また、上記クマロン樹脂は、内部または末端にフェノール性水酸基を有する芳香族構造を有していてもよい。
【0031】
上記クマロン樹脂の質量平均分子量Mwの上限値は、例えば、4000以下であることが好ましく、2000以下であることがより好ましく、1500以下であることがさらに好ましく、1200以下であることが一層好ましい。これにより、クマロン樹脂と他の樹脂との相溶性を高め、適切にクマロン樹脂を分散できる。
一方、クマロン樹脂の質量平均分子量Mwの下限値は、例えば、400以上であることが好ましく、500以上であることがより好ましく、550以上であることがさらに好ましく、600以上であることが一層好ましい。これにより、樹脂組成物の中にクマロン樹脂が適切に分散できる。
【0032】
クマロン樹脂の含有量の下限値は、樹脂組成物の全固形分100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.4質量部以上である。これにより、低誘電特性とレーザー加工性の良好なバランスを得つつ、低吸水特性を向上できる。
一方、クマロン樹脂の含有量の上限値は、樹脂組成物の全固形分100質量部に対して、例えば、20質量部以下、好ましくは15質量部以下、より好ましくは12質量部以下である。これにより、成形性、耐熱性等の他の物性とのバランスを図ることができる。
【0033】
クマロン樹脂の融点は、40℃~120℃であることが好ましく、分子量、重合度により融点を制御することができる。
【0034】
成分(B)の含有量の下限値は、樹脂組成物の全固形分100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.4質量部以上である。これにより、低誘電特性とレーザー加工性の良好なバランスを得つつ、低吸水特性を向上できる。
一方成分(B)の含有量の上限値は、樹脂組成物の全固形分100質量部に対して、例えば、20質量部以下、好ましくは15質量部以下、より好ましくは12質量部以下である。これにより、成形性、耐熱性等の他の物性とのバランスを図ることができる。
【0035】
[架橋剤(C)]
架橋剤(C)は、架橋反応を起こすか、または促進する能力を有するものを使用することができる。架橋反応の観点から、架橋剤(C)は、炭素-炭素不飽和二重結合、またはイソシアネート基(-N=C=O)を1分子中に平均2個以上有することが好ましい。架橋剤(C)は、1種類の化合物で構成されてもよく、2種類以上の化合物で構成されてもよい。
【0036】
架橋剤(C)としては、例えば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリメタアリルイソシアヌレート等のトリアルケニルイソシアヌレート化合物、トリアリルシアヌレート(TAC)等のトリアルケニルシアヌレート化合物、分子中にメタクリル基を2個以上有する多官能メタクリレート化合物、分子中にアクリル基を2個以上有する多官能アクリレート化合物、ポリブタジエン等の分子中にビニル基を2個以上有する多官能ビニル化合物、分子中にビニルベンジル基を有するジビニルベンゼン等のビニルベンジル化合物、4,4’-ビスマレイミドジフェニルメタン等の分子中にマレイミド基を2個以上有する多官能マレイミド化合物等、イソシアネート基(-N=C=O)を1個または2個以上有するイソシアネート化合物が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
架橋剤(C)は、これらのなかでも、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ポリブタジエンおよびジビニルベンゼンから成る群より選択される少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。これにより、良好なレーザー加工性を保持しつつも、硬化反応(架橋反応)時に架橋密度が一層高くなり、樹脂組成物の硬化物の耐熱性を向上できる。
【0037】
架橋剤(C)の数平均分子量は600~4,000であることが好ましく、800~2,000であることがより好ましい。
架橋剤(C)の数平均分子量を上記下限値以上とすることにより、反応性を高め良好な硬化物が得られる。架橋剤(C)の数平均分子量を上記上限値以下とすることにより、樹脂組成物の粘度の増大を抑制でき、良好なレーザー加工性が得られる。また加熱成型時の良好な樹脂流動性が得られる。
なお、数平均分子量は、一般的な分子量測定方法で測定したものであればよく、具体的には、GPCを用いて測定した値等が挙げられる。
【0038】
架橋剤(C)の含有量は、本実施形態の樹脂組成物の全固形分質量に対して、1~30質量%であることが好ましく、2~20質量%であることがより好ましく、4~18質量%であることがさらに好ましい。
【0039】
[シランカップリング剤(D)]
本実施形態のシランカップリング剤(D)は、以下の式(1)~(5)で示される1または2以上である。また各式中のa~lはそれぞれ繰り返し単位を示す1以上の整数値である。
【0040】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
(式(1)~(5)中、Rは、メチル基またはエチル基を示し、a~lは繰り返し単位示す。)
【0041】
本実施形態のシランカップリング剤(D)は架橋剤(C)と相溶しやすく、これにより密着性を良好にできる。なかでも、イソシアヌル骨格、ブタジエン骨格、またはスチレン骨格を有することにより、相溶性、密着性を向上しやすくなる。
【0042】
式(2)で示されるシランカップリング剤(d2)の粘度は、25℃で550,000~650,000Pa・sであり、50℃で35,000~45,000Pa・sである。
式(3)で示されるシランカップリング剤(d3)の粘度は、25℃で7,000~25,000cPである。数平均分子量(スチレン換算)は、8500~10,000であることが好ましい。
式(4)で示されるシランカップリング剤(d4)の粘度は、25℃で1,000~2,000cPである。数平均分子量(スチレン換算)は、5,500~6,500であることが好ましい。
式(5)で示されるシランカップリング剤(d5)の粘度は、25℃で6,000~7,000cPである。数平均分子量(スチレン換算)は、6,000~7,000であることが好ましい。
【0043】
シランカップリング剤(D)の含有量は、樹脂組成物の全固形分質量に対して0.05~10質量%であることが好ましく、0.1~5質量%であることがより好ましく、0.2~3質量%であることがさらに好ましい。
成分(D)の含有量を、上記下限値以上とすることにより、架橋剤(C)との良好な相溶性が得られ、密着性を向上して、レーザー加工性を向上できる。
一方、成分(D)の含有量を、上記上限値以下とすることにより、良好な誘電正接および低誘電正接と、レーザー加工性とのバランスを向上できる。
【0044】
本実施形態の樹脂組成物は上記成分の他、以下の成分を含んでもよい。
【0045】
[化合物(E)]
化合物(E)は、複数の芳香族エステル構造を骨格とし、末端に不飽和結合基を有するものである。これにより、低誘電特性を良好にしつつもレーザー加工性を向上でき、硬化物に生じうるムラを抑制できる。また、密着性を向上し、後述の金属箔に対するピール強度を向上できる。
【0046】
化合物(E)は、芳香族エステル骨格を有する。芳香族エステル骨格は、エステル結合と、そのエステル結合の一端または両端に結合した芳香環とを有する骨格を表す。なかでも、エステル結合の両端に芳香環を有するものが好ましい。このような骨格を有する基としては、例えば、アリールカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリーレンカルボニルオキシ基、アリーレンオキシカルボニル基、アリールカルボニルオキシアリーレン基、アリールオキシカルボニルアリーレン基、アリーレンカルボニルオキシアリーレン基、アリーレンオキシカルボニルアリーレン基等が挙げられる。また、このような骨格を有する基の炭素数は好ましくは7~20、より好ましくは7~15、さらに好ましくは7~11である。アリール基およびアリーレン基等の芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
【0047】
上記アリール基としては、炭素数6~30のアリール基が好ましく、炭素数6~20のアリール基がより好ましく、炭素数6~10のアリール基がさらに好ましい。このようなアリール基としては、例えば、フェニル基、フラニル基、ピロリル基、チオフェン基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、ピリジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基等の単環芳香族化合物から水素原子が1つ除かれたもの;ナフチル基、アントラセニル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、キナゾリル基、フタラジニル基、プテリジニル基、クマリニル基、インドール基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾフラニル基、アクリジニル基等の縮合環芳香族化合物から水素原子が1つ除かれたもの;等が挙げられる。
【0048】
上記アリーレン基としては、炭素数6~30のアリーレン基が好ましく、炭素数6~20のアリーレン基がより好ましく、炭素数6~10のアリーレン基がさらに好ましい。このようなアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、ビフェニレン基等が挙げられる。
【0049】
化合物(E)は、不飽和結合基を含有する。不飽和結合としては、炭素-炭素不飽和結合が挙げられる。また、化合物(E)は、不飽和結合を少なくとも1つ有する置換基として有することが好ましい。
具体的には、不飽和結合しては、例えば、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~30のアルキニル基等の不飽和炭化水素基が挙げられる。不飽和結合は、末端の芳香族炭化水素基の置換基として有することが好ましく、両末端の芳香族炭化水素基の置換基として有することがより好ましい。
【0050】
上記炭素数2~30のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、1-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、1-オクテニル基、2-オクテニル基、1-ウンデセニル基、1-ペンタデセニル基、3-ペンタデセニル基、7-ペンタデセニル基、1-オクタデセニル基、2-オクタデセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基、1,3-ブタジエニル基、1,4-ブタジエニル基、ヘキサ-1,3-ジエニル基、ヘキサ-2,5-ジエニル基、ペンタデカ-4,7-ジエニル基、ヘキサ-1,3,5-トリエニル基、ペンタデカ-1,4,7-トリエニル基等が挙げられる。
【0051】
上記炭素数2~30のアルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロパルギル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、1,3-ブタジイニル基等が挙げられる。
【0052】
なかでも、炭素数2~30のアルケニル基であることが好ましく、炭素数2~10のアルケニル基であることがより好ましく、炭素数2~5のアルケニル基であることがさらに好ましく、アリル基、イソプロペニル基、1-プロペニル基であることがさらにより好ましく、アリル基であることが特に好ましい。
【0053】
化合物(E)は、芳香族エステル骨格に加えて、芳香族炭化水素基、脂肪族炭化水素基、酸素原子、硫黄原子、およびこれらの組み合わせからなる基のいずれかを有していてもよい。
【0054】
上記芳香族炭化水素基としては、2価の芳香族炭化水素基が好ましく、アリーレン基、アラルキレン基がより好ましく、アリーレン基がさらに好ましい。アリーレン基としては、炭素数6~30のアリーレン基が好ましく、炭素数6~20のアリーレン基がより好ましく、炭素数6~10のアリーレン基がさらに好ましい。このようなアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、ビフェニレン基等が挙げられる。アラルキレン基としては、炭素数7~30のアラルキレン基が好ましく、炭素数7~20のアラルキレン基がより好ましく、炭素数7~15のアラルキレン基がさらに好ましい。これらのなかでも、フェニレン基が好ましい。
【0055】
上記脂肪族炭化水素基としては、2価の脂肪族炭化水素基が好ましく、2価の飽和脂肪族炭化水素基がより好ましく、アルキレン基、シクロアルキレン基がさらに好ましい。アルキレン基としては、炭素数1~10のアルキレン基が好ましく、炭素数1~6のアルキレン基がより好ましく、炭素数1~3のアルキレン基がさらに好ましい。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、1-メチルメチレン基、1,1-ジメチルメチレン基、1-メチルエチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、1,2-ジメチルエチレン基、ブチレン基、1-メチルプロピレン基、2-メチルプロピレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等が挙げられる。
【0056】
上記シクロアルキレン基としては、炭素数3~20のシクロアルキレン基が好ましく、3~15のシクロアルキレン基がより好ましく、5~10のシクロアルキレン基がさらに好ましい。シクロアルキレン基としては、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロペンチレン基、シクロヘプチレン基、式(a)~(d)で表されるシクロアルキレン基等が挙げられる。式(a)~(d)中、「*」は結合手を表す。
【0057】
【0058】
上記の芳香族エステル骨格、芳香族炭化水素基、脂肪族炭化水素基、および不飽和炭化水素基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、不飽和炭化水素基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。置換基は、単独で含んでいても、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0059】
上記の炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-ノニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基が挙げられる。
【0060】
上記の炭素数1~10のアルコキシ基としては、特に制限されないが、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基等が挙げられる。
【0061】
上記のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。上述の置換基は、さらに置換基を有していてもよい。不飽和炭化水素基は、上記したとおりである。二次置換基としては、特に記載のない限り、上述の置換基と同じものを用いてよい。
【0062】
化合物(E)は、以下の式(e-1)で表される化合物であることが好ましい。
【0063】
【0064】
(一般式(e-1)中、Ar11は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基を表し、Ar12は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基を表し、Ar13は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基、酸素原子、硫黄原子、またはこれらの組み合わせからなる2価の基を表す。nは0~10の整数を表す。)
【0065】
一般式(e-1)中、Ar11は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基を表す。1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、フラニル基、ピロリル基、チオフェン基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、ピリジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基等の単環芳香族化合物から水素原子が1つ除かれたもの;ナフチル基、アントラセニル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、キナゾリル基、フタラジニル基、プテリジニル基、クマリニル基、インドール基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾフラニル基、アクリジニル基等の縮合環芳香族化合物から水素原子が1つ除かれたもの等が挙げられ、なかでも、低誘電特性を得る観点から、フェニル基が好ましい。Ar11が表す1価の芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、芳香族エステル骨格が有していてもよい置換基と同様である。なかでも、Ar11の置換基は、不飽和結合を含有するこ
とが好ましい。
【0066】
一般式(e-1)中、Ar12は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基を表す。2価の芳香族炭化水素基としては、アリーレン基、アラルキレン基等が挙げられ、アリーレン基が好ましい。アリーレン基としては、炭素原子数6~30のアリーレン基が好ましく、炭素原子数6~20のアリーレン基がより好ましく、炭素原子数6~10のアリーレン基がさらに好ましい。このようなアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、ビフェニレン基等が挙げられる。アラルキレン基としては、炭素原子数7~30のアラルキレン基が好ましく、炭素原子数7~20のアラルキレン基がより好ましく、炭素原子数7~15のアラルキレン基がさらに好ましい。これらのなかでも、フェニレン基が好ましい。
【0067】
Ar12が表す2価の芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、芳香族エステル骨格が有していてもよい置換基と同様である。
【0068】
一般式(e-1)中、Ar13は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基、酸素原子、硫黄原子、またはこれらの組み合わせからなる2価の基を表し、これらの組み合わせからなる2価の基が好ましい。2価の芳香族炭化水素基としては、Ar12が表す2価の芳香族炭化水素基と同様である。
【0069】
2価の脂肪族炭化水素基としては、2価の飽和脂肪族炭化水素基がより好ましく、アルキレン基、シクロアルキレン基が好ましく、シクロアルキレン基がより好ましい。
【0070】
アルキレン基としては、炭素原子数1~10のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~3のアルキレン基がさらに好ましい。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、1-メチルメチレン基、1,1-ジメチルメチレン基、1-メチルエチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、1,2-ジメチルエチレン基、ブチレン基、1-メチルプロピレン基、2-メチルプロピレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等が挙げられる。
【0071】
シクロアルキレン基としては、炭素原子数3~20のシクロアルキレン基が好ましく、3~15のシクロアルキレン基がより好ましく、5~10のシクロアルキレン基がさらに好ましい。シクロアルキレン基としては、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロペンチレン基、シクロヘプチレン基、上記式(a)~(d)で表されるシクロアルキレン基等が挙げられ、式(c)で表されるシクロアルキレン基が好ましい。
【0072】
これらの組み合わせからなる2価の基としては、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、および置換基を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基を組み合わせた2価の基が好ましく、複数の、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、および複数の、置換基を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基を交互に組み合わせた2価の基がより好ましい。
【0073】
具体的には、以下の式(e-2)で表される化合物が挙げられる。
【0074】
【化16】
(式中、xは0または1以上の整数を表し、yは1~10の整数を表す。)
【0075】
化合物(E)の質量平均分子量は150~3000が好ましく、200~2000が好ましく、250~1500が好ましい。
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0076】
化合物(E)の含有量は、当該樹脂組成物の全固形分質量に対して0.1~30質量%であることが好ましく、0.2~20質量%であることがより好ましく、0.3~10質量%であることがさらに好ましい。
成分(E)の含有量を上記下限値以上とすることにより、低誘電正接を得つつ、密着性を向上し、ピール強度を良好にできる。一方、成分(E)の含有量を上記上限値以下とすることにより、粘度の向上を抑制し、良好なレーザー加工性が得られる。
【0077】
[無機充填材(F)]
無機充填材(F)としては、例えば、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラス等のケイ酸塩;酸化チタン、アルミナ、ベーマイト、シリカ、溶融シリカ等の酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物;硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩または亜硫酸塩;ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩;窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素等の窒化物;チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等のチタン酸塩等を挙げることができる。
これらのなかでも、タルク、アルミナ、ガラス、シリカ、マイカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムが好ましく、シリカが特に好ましい。無機充填材としては、これらの中の1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0078】
上記無機充填材(F)の平均粒子径の下限値は、特に限定されないが、例えば、0.01μm以上としてもよく、0.05μm以上としてもよい。これにより、上記熱硬化性樹脂のワニスの粘度が高くなるのを抑制でき、絶縁層作製時の作業性を向上させることができる。また、無機充填材(F)の平均粒子径の上限値は、特に限定されないが、例えば、5.0μm以下が好ましく、2.0μm以下がより好ましく、1.0μm以下がさらに好ましい。これにより、上記熱硬化性樹脂のワニス中における無機充填材の沈降等の現象を抑制でき、より均一な樹脂膜を得ることができる。
【0079】
本実施形態において、無機充填材(F)の平均粒子径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(HORIBA社製、LA-500)により、粒子の粒度分布を体積基準で測定し、累積50%となる粒径(D50)を平均粒子径とすることができる。
【0080】
上記無機充填材(F)はシリカ粒子を含むことが好ましい。シリカ粒子は球状であってもよい。上記シリカ粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、5.0μm以下としてもよく、0.1μm以上4.0μm以下としてもよく、0.2μm以上2.0μm以下としてもよい。これにより、無機充填材(F)の充填性をさらに向上させることができる。
【0081】
無機充填材(F)の含有量は、当該樹脂組成物の全固形分質量に対して40~85質量%であることが好ましく、45~75質量%であることがより好ましく、50~65質量%であることがさらに好ましい。
無機充填材(F)の含有量を上記下限値以上とすることにより、レーザー加工性を保持しつつ、樹脂膜の硬化物を特に低熱膨張、低吸水とすることができる。一方、無機充填材(F)の含有量を上記上限値以下とすることにより、樹脂組成物の粘度を下げ、レーザー加工性および成形性を向上しやすくなる。
【0082】
[変性ポリフェニレンエーテル共重合体(G)]
本実施形態の変性ポリフェニレンエーテル共重合体(G)は、ポリフェニレンエーテルを編成したものであり、例えば、国際公開第2014/203511号の段落0018~0061に記載のものを用いることができる。より具体的には、以下のとおりである。
【0083】
本実施形態に係る変性ポリフェニレンエーテル共重合体(G)は特に限定されないが、炭素-炭素不飽和結合を有する置換基により末端変性された変性ポリフェニレンエーテルであることが好ましい。
炭素-炭素不飽和結合を有する置換基としては、特に限定はされないが、例えば、下記式(g-1)で示される置換基が挙げられる。
【0084】
【0085】
上記式(g-1)中、nは0~10の整数を示し、Zはアリーレン基を示し、R1~R3は独立して水素原子またはアルキル基を示す。
【0086】
上記式(g-1)においてn=0の場合は、Zがポリフェニレンエーテルの末端に直接結合しているものを示す。また、Zのアリーレン基としては、例えば、フェニレン基等の単環芳香族基やナフタレン環等の多環芳香族基が挙げられ、芳香族環に結合する水素原子がアルケニル基、アルキニル基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、またはアルキニルカルボニル基等の官能基で置換された誘導体も含む。
【0087】
上記式(g-1)に示す官能基としては、例えば、ビニルベンジル基を含む官能基が挙げられる。より具体的には、下記式(g-2)または式(g-3)から選択される少なくとも1つの置換基等が挙げられる。
【0088】
【0089】
【0090】
また、ポリフェニレンエーテルの末端に直接結合している炭素-炭素不飽和結合を有する他の置換基としては、例えば、下記式(g-4)で示される(メタ)アクリレート基が挙げられる。
【0091】
【0092】
上記式(g-4)中、R4は水素原子またはアルキル基を示す。
【0093】
本実施形態の変性ポリフェニレンエーテルは、低誘電特性および良好なレーザー加工性を両立する観点から、両末端がヒドロキシ基、メタアクリル基またはスチレン基を有することが好ましい。
【0094】
また、本実施形態の変性ポリフェニレンエーテルにおけるポリフェニレンエーテルは、ポリフェニレンエーテル鎖を分子中に有しており、例えば、下記式(g-5)で表される繰り返し単位を分子中に有していることが好ましい。
【0095】
【0096】
上記式(g-5)において、mは1~50を示す。また、R5、R6、R7およびR8は、それぞれ独立し、それぞれ同一の基であっても、異なる基であってもよい。また、R5、R6、R7およびR8は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、またはアルキニルカルボニル基を示す。これらのなかでも、水素原子およびアルキル基が好ましい。
【0097】
上記アルキル基は特に限定されないが、例えば、炭素数1~18のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましい。より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、およびデシル基等が挙げられる。
アルケニル基は特に限定されないが、例えば、炭素数2~18のアルケニル基が好ましく、炭素数2~10のアルケニル基がより好ましい。より具体的には、ビニル基、アリル基、および3-ブテニル基等が挙げられる。
アルキニル基は特に限定されないが、例えば、炭素数2~18のアルキニル基が好ましく、炭素数2~10のアルキニル基がより好ましい。より具体的には、エチニル基、およびプロパ-2-イン-1-イル基(プロパルギル基)等が挙げられる。
【0098】
アルキルカルボニル基はアルキル基で置換されたカルボニル基であれば特に限定されないが、例えば、炭素数2~18のアルキルカルボニル基が好ましく、炭素数2~10のアルキルカルボニル基がより好ましい。より具体的には、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、およびシクロヘキシルカルボニル基等が挙げられる。
アルケニルカルボニル基はアルケニル基で置換されたカルボニル基であれば特に限定されないが、例えば、炭素数3~18のアルケニルカルボニル基が好ましく、炭素数3~10のアルケニルカルボニル基がより好ましい。より具体的には、アクリロイル基、メタクリロイル基、およびクロトノイル基等が挙げられる。
アルキニルカルボニル基はアルキニル基で置換されたカルボニル基であれば特に限定されないが、例えば、炭素数3~18のアルキニルカルボニル基が好ましく、炭素数3~10のアルキニルカルボニル基がより好ましい。より具体的には、プロピオロイル基等が挙げられる。
【0099】
本実施形態に係る変性ポリフェニレンエーテルの合成方法は、炭素-炭素不飽和結合を有する置換基により末端変性された変性ポリフェニレンエーテルを合成することができれば特に限定されない。例えば、末端のフェノール性水酸基の水素原子をナトリウムやカリウム等のアルカリ金属原子で置換したポリフェニレンエーテルと、下記式(g-6)で示されるような化合物とを反応させる方法等が挙げられる。
【0100】
【0101】
上記式(g-6)中、上記式(g-1)と同様に、nは0~10の整数を示し、Zはアリーレン基を示し、R1~R3は独立して水素原子またはアルキル基を示す。また、Xは、ハロゲン原子を示し、具体的には、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、およびフッ素原子等が挙げられる。このなかでも、塩素原子が好ましい。
【0102】
また、上記式(g-6)で表される化合物は、特に限定されないが、例えば、p-クロロメチルスチレンやm-クロロメチルスチレンが好ましい。
【0103】
また、上記式(g-6)で表される化合物は、上記例示したものを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0104】
原料であるポリフェニレンエーテルは、最終的に、所定の変性ポリフェニレンエーテルを合成することができるものであれば、特に限定されない。具体的には、2,6-ジメチルフェノールと2官能フェノールおよび3官能フェノールの少なくともいずれか一方とからなるポリアリーレンエーテル共重合体やポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンオキサイド)等のポリフェニレンエーテルを主成分とするもの等が挙げられる。このようなポリフェニレンエーテルは、より具体的には、例えば、下記式(g-7)に示す構造を有するポリフェニレンエーテル等が挙げられる。
【0105】
【0106】
上記式(g-7)中、s、tは、例えば、sとtとの合計値が、1~30であることが好ましい。また、sが、0~20であることが好ましく、tが、0~20であることが好ましい。すなわち、sは、0~20を示し、tは、0~20を示し、sとtとの合計は、1~30を示すことが好ましい。
【0107】
上記式(g-7)のポリフェニレンエーテルの末端水酸基をメタクリル基で変性した変性ポリフェニレンエーテルの市販品としては、SABICイノベーティブプラスチックス社製の「SA9000」等がある。
【0108】
成分(G)の質量平均分子量は、好ましくは500以上5,000以下であり、より好ましくは800以上4,000以下であり、さらに好ましくは1,000以上3,000以下である。
なお、質量平均分子量は、一般的な分子量測定方法で測定したものであればよく、具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定した値等が挙げられる。
【0109】
成分(G)の質量平均分子量を上記下限値以上とすることにより、ポリフェニレンエーテルが有する優れた誘電特性を発揮し、その硬化物において、さらに、密着性および耐熱性によく優れた樹脂組成物が得られる。本実施形態の成分(G)は、変性されているため、末端の反応性基、なかでも末端に不飽和二重結合を有するため、低誘電性を保持しつつ、硬化物のガラス転移温度を向上し、良好なレーザー加工性が得られるとともに、耐熱性、密着性が充分に高いものになると考えられる。
一方、成分(G)の質量平均分子量が上記上限値以下とすることにより、成形性、溶剤溶解性や保存安定性が良好となる。
【0110】
成分(G)の含有量は、当該樹脂組成物の全固形分質量に対して0.1~30質量%であることが好ましく、0.2~20質量%であることがより好ましく、0.3~15質量%であることがさらに好ましい。
成分(G)の含有量を上記下限値以上とすることにより、低誘電正接を得ることができる。一方、成分(G)の含有量を上記上限値以下とすることにより、粘度の向上を抑制し、良好なレーザー加工性が得られる。
【0111】
[ポリブタジエン系エラストマー]
本実施形態において、ポリブタジエン系エラストマーは、ブタジエン化合物をモノマー成分として用いた単独重合体または共重合体である。
本実施形態において、耐熱性、密着性を向上させる観点からは、官能基を有しているポリブタジエン系エラストマーを用いることがより好ましい。官能基としては、ビニル基、エポキシ基、カルボキシ基、水酸基、またはマレイン酸基等が挙げられる。なかでも、相溶性と密着性を向上させる観点から、側鎖にビニル基を有するポリブタジエンであることが好ましい。
また、共重合体としては、樹脂中にブタジエンから重合してなるセグメント骨格を有するものであり、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、アクリレ-トブタジエン共重合体、ビニルピリジンブタジエン共重合体、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体、カルボキシル化ブタジエン共重合体、エポキシ化ブタジエン共重合体等が挙げられる。なかでも、分散性と耐熱性を向上させる観点から、ブタジエンホモポリマーおよびスチレン-ブタジエン共重合体であることが好ましい。
【0112】
ポリブタジエン系エラストマーの含有量は、当該樹脂組成物の全固形分質量に対して0.1~20質量%であることが好ましく、0.2~15質量%であることがより好ましく、0.3~10質量%であることがさらに好ましい。
【0113】
[不飽和二重結合を有するフェノール]
本実施形態において、不飽和二重結合を有するフェノールは、誘電特性およびレーザー加工性を良好にしつつ、他の物性とのバランスを保持する観点から、主に用いられる。不飽和二重結合を有するフェノールとは、フェノール骨格を有し、ベンゼン環の置換基に不飽和二重結合を有するものをいう。
本実施形態において、不飽和二重結合を有するフェノールとしては、アリルフェノール(o-,m-またはp-)、ビニルフェノール(o-,m-またはp-)、アリルレゾルシノール、ジアリルレゾルシノール、アリルカテコール、ジアリルカテコール、アリルヒドロキノン、ジアリルヒドロキノン、アリルピロガロール、トリアリルフェノール、トリビニルフェノール、トリアリルレゾルシノール、トリビニルレゾルシノール等が挙げられる。なかでも、密着を向上させる観点から、ビニルフェノール(特にp-ビニルフェノール;4-エテニルフェノール)、2,2'-ジアリルビスフェノールA、o-アリルフェノール(2-アリルフェノール)、アリルフェノールレゾルシノール型ノボラック樹脂であることが好ましい。
【0114】
不飽和二重結合を有するフェノールの含有量は、樹脂組成物の全固形分100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下が好ましく、5質量部以上25質量部以下がより好ましく、7質量部以上22質量部以下がさらに好ましい。
【0115】
[ビニル化合物]
本実施形態において、ビニル化合物とは、分子中に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物をいう。
ビニル化合物としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン等の2官能性芳香族ビニル化合物;1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンのジオールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールアクリレート、アクリル酸アリル、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、3-メチルペンタンジオールジアクリレート、メタクリル酸アリル等の2官能性(メタ)アクリル酸エステル;トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールへキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート等の3官能性以上の(メタ)アクリル酸エステル;(ポリ)エチレングリコールジメタクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル;ジアリルマレート、ジアリルフマレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアネート、ジアリルフタレート、ビスフェノールAのビス(アクリロイロキシエチル)エーテル等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
なかでも、(ポリ)エチレングリコールジメタクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル;ジアリルマレート、ジアリルフマレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアネート、ジアリルフタレート、ビスフェノールAのビス(アクリロイロキシエチル)エーテルが好ましく、トリアリルイソシアネートがより好ましい。
【0116】
ビニル化合物の含有量は、樹脂組成物の全固形分100質量部に対して、0.5質量部以上30質量部以下が好ましく、1質量部以上20質量部以下がより好ましく、4質量部以上15質量部以下がさらに好ましい。
【0117】
[難燃剤]
本実施形態において、難燃剤としては、例えば、臭素系難燃剤等のハロゲン系難燃剤やリン系難燃剤等が挙げられる。ハロゲン系難燃剤の具体例としては、例えば、ペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモシクロドデカン等の臭素系難燃剤や、塩素化パラフィン等の塩素系難燃剤等が挙げられる。また、リン系難燃剤の具体例としては、例えば、縮合リン酸エステル、環状リン酸エステル等のリン酸エステル、環状ホスファゼン化合物等のホスファゼン化合物、ジアルキルホスフィン酸アルミニウム塩等のホスフィン酸金属塩等のホスフィン酸塩系難燃剤、リン酸メラミン、およびポリリン酸メラミン等のメラミン系難燃剤等が挙げられる。難燃剤としては、例示した各難燃剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なかでも、リン系難燃剤であることが好ましい。
【0118】
難燃剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分100質量部に対して、0.1質量部以上15質量部以下が好ましく、0.5質量部以上10質量部以下がより好ましく、1質量部以上5質量部以下がさらに好ましい。
【0119】
[重合開始剤]
本実施形態の樹脂組成物は、重合開始剤を含有してもよい。これにより、安定的に硬化進行される。重合開始剤としては、変性ポリフェニレンエーテルと熱硬化型硬化剤との硬化反応を促進することができるものであれば、特に限定されないが、例えば、1,3-ジ(t-ブチルパーオキシ-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3-ヘキシン,過酸化ベンゾイル、3,3',5,5'-テトラメチル-1,4-ジフェノキノン、クロラニル、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノキシル、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、アゾビスイソブチロニトリル等の酸化剤が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、硬化反応を一層促進させる観点から、さらにカルボン酸金属塩等を併用してもよい。
なかでも、α,α'-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼンが好ましく用いられる。α,α'-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼンは、反応開始温度が比較的に高いため、プリプレグ乾燥時等の硬化する必要がない時点での硬化反応の促進を抑制することができ、本実施形態の樹脂組成物の保存性の低下を抑制することができる。さらに、α,α'-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼンは、揮発性が低いため、プリプレグ乾燥時や保存時に揮発せず、良好な安定性が得られる。
【0120】
[その他]
なお、本実施形態の樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、上記以外の樹脂、緑、赤、青、黄、および黒等の染料、黒色顔料等の顔料、色素からなる群から選択される一種以上を含む着色剤、低応力剤、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、発泡剤、酸化防止剤、イオン捕捉剤、ゴム成分等の上記の成分以外の添加剤を含んでもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記以外の樹脂としては例えば、エポキシ樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂等の熱硬化性樹脂、フェノキシ樹脂、シアネート樹脂が挙げられる。
【0121】
(ワニス状樹脂組成物)
本実施形態において、ワニス状の樹脂組成物は、溶剤を含むことができる。
本実施形態の樹脂組成物は、上述した成分を含むため、低粘度のワニスをすることができる。その結果、基材へのレーザー加工性を高め、作業性を向上できる。また、密着性向上できる。
【0122】
上記溶剤としては、たとえばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、メシチレン、酢酸エチル、シクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、エチレングリコールエーテル、セルソルブ系、カルビトール系、アニソール、およびN-メチルピロリドン等の有機溶剤が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なかでも、ピール強度変化をより小さくできる観点から、トルエン、ヘプタン、シクロヘキサン、アニソール、およびメシチレンが好ましく、トルエンがより好ましく、少なくともトルエンを5%以上含むことがさらに好ましい。これらの溶剤は、上記の各樹脂の溶解性および相溶性に優れるため、ピール強度変化を低減できる。また溶剤の乾燥を効率的に行うことができる。
シリカ等の無機充填剤(F)とのなじみや密着を促進させて、ピール強度変化を低減する観点からは、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチレングリコールエーテルを用いることが好ましい。
【0123】
樹脂組成物がワニス状である場合において、樹脂組成物の固形分含有量は、たとえば30質量%以上80質量%以下としてもよく、より好ましくは40質量%以上70質量%以下としてもよい。これにより、作業性や成膜性に非常に優れた樹脂組成物が得られる。
【0124】
ワニス状の樹脂組成物は、上述の各成分を、たとえば、超音波分散方式、高圧衝突式分散方式、高速回転分散方式、ビーズミル方式、高速せん断分散方式、および自転公転式分散方式等の各種混合機を用いて溶剤中に溶解、混合、撹拌することにより調製することができる。
【0125】
<樹脂膜>
次いで、本実施形態の樹脂膜について説明する。
本実施形態の樹脂膜は、ワニス状である上記樹脂組成物をフィルム化することにより得ることができる。例えば、本実施形態の樹脂膜は、ワニス状の樹脂組成物を塗布して得られた塗布膜に対して、溶剤を除去することにより得ることができる。このような樹脂膜においては、溶剤含有率が樹脂膜全体に対して5質量%以下とすることができる。本実施形態において、たとえば100℃~150℃、1分~5分の条件で溶剤を除去する工程を実施してもよい。これにより、熱硬化性樹脂を含む樹脂膜の硬化が進行することを抑制しつつ、十分に溶剤を除去することが可能となる。
【0126】
本実施形態の樹脂膜は、樹脂膜単独で構成されてもよく、繊維基材を内部に含むように構成されてもよい。
【0127】
<プリプレグ>
本実施形態のプリプレグは、上記樹脂組成物を繊維基材に含浸してなるものである。例えば、プリプレグは、樹脂組成物を繊維基材に含浸させ、その後、半硬化させて得られるシート状の材料として利用できる。このような構造のシート状材料は、誘電特性、高温多湿下での機械的、電気的接続信頼性等の各種特性に優れ、例えば、プリント配線基板の絶縁層の製造に適している。
【0128】
本実施形態において、樹脂組成物を繊維基材に含浸させる方法としては、特に限定されないが、例えば、樹脂組成物を溶剤に溶かして樹脂ワニスを調製し、繊維基材を上記樹脂ワニスに浸漬する方法、各種コーターにより上記樹脂ワニスを繊維基材に塗布する方法、スプレーにより上記樹脂ワニスを繊維基材に吹き付ける方法、樹脂組成物からなる上記樹脂膜で繊維基材の両面をラミネートする方法等が挙げられる。
【0129】
上記繊維基材としては、例えば、ガラス繊布、ガラス不繊布等のガラス繊維基材、あるいはガラス以外の無機化合物を成分とする繊布又は不繊布等の無機繊維基材、芳香族ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂等の有機繊維で構成される有機繊維基材等が挙げられる。これら基材の中でも強度の点でガラス織布に代表されるガラス繊維基材を用いると、プリント配線基板の機械的強度、耐熱性を良好なものとすることができる。
【0130】
繊維基材の厚みは、とくに限定されないが、好ましくは5μm以上150μm以下であり、より好ましくは10μm以上100μm以下であり、さらに好ましくは12μm以上90μm以下である。このような厚みを有する繊維基材を用いることにより、プリプレグ製造時のハンドリング性がさらに向上できる。
繊維基材の厚みが上記上限値以下であると、繊維基材中の樹脂組成物のレーザー加工性が向上し、ストランドボイドや絶縁信頼性の低下の発生を抑制することができる。また炭酸ガス、UV、エキシマ等のレーザーによるスルーホールの形成を容易にすることができる。また、繊維基材の厚みが上記下限値以上であると、繊維基材やプリプレグの強度を向上させることができる。その結果、ハンドリング性が向上できたり、プリプレグの作製が容易となったり、樹脂基板の反りを抑制できたりする。
【0131】
上記ガラス繊維基材として、例えば、Eガラス、Sガラス、Dガラス、Tガラス、NEガラス、UTガラス、Lガラス、HPガラスおよび石英ガラスから選ばれる一種または二種以上のガラスにより形成されたガラス繊維基材が好適に用いられる。
【0132】
本実施形態において、プリプレグは、例えば、プリント配線基板におけるビルドアップ層中の絶縁層やコア層中の絶縁層を形成するために用いることができる。プリプレグをプリント配線基板におけるコア層中の絶縁層を形成するために用いる場合は、例えば、2枚以上のプリプレグを重ね、得られた積層体を加熱硬化することによりコア層用の絶縁層とすることもできる。
【0133】
<金属張積層板>
本実施形態の積層板は、上記プリプレグの硬化物の少なくとも一方の面に金属層が配置された金属張積層板である。
【0134】
また、プリプレグを用いた金属張積層板製造方法は、例えば以下の通りである。
プリプレグまたはプリプレグを2枚以上重ね合わせた積層体の外側の上下両面または片面に金属箔を重ね、ラミネーター装置やベクレル装置を用いて高真空条件下でこれらを接合する、あるいはそのままプリプレグの外側の上下両面または片面に金属箔を重ねる。また、プリプレグを2枚以上積層するときは、積層したプリプレグの最も外側の上下両面もしくは片面に金属箔を重ねる。次いで、プリプレグと金属箔とを重ねた積層体を加熱加圧成形することで金属張積層板を得ることができる。ここで、加熱加圧成形時に、冷却終了時まで加圧を継続することが好ましい。
【0135】
上記金属箔を構成する金属としては、例えば、銅、銅系合金、アルミ、アルミ系合金、銀、銀系合金、金、金系合金、亜鉛、亜鉛系合金、ニッケル、ニッケル系合金、錫、錫系合金、鉄、鉄系合金、コバール(登録商標)、42アロイ、インバー、スーパーインバー等のFe-Ni系の合金、W、Mo等が挙げられる。これらの中でも、金属箔105を構成する金属としては、導電性に優れ、エッチングによる回路形成が容易であり、また安価であることから銅または銅合金が好ましい。すなわち、金属箔としては、銅箔が好ましい。
また、金属箔としては、キャリア付金属箔等も使用することができる。
金属箔の厚みは、好ましくは0.5μm以上20μm以下であり、より好ましくは1.5μm以上18μm以下である。
【0136】
<配線板>
本実施形態において配線板とは、金属箔付きの基材の片面または両面に、金属箔を所望のパターンにエッチング等して回路が形成された導体層を備えるものという。これにより小型化、高密度化された部品を実装した配線板として用いることができる。
また、本実施形態の配線板は、金属箔をエッチングして形成されたマイクロストリップ線路を含むマイクロストリップラインを備えることができる。
また本実施形態の配線板を用いたアンテナやデバイス回路は、種々のパッド、ビア、パターンが追加されるものである。
【0137】
なお、上記のエッチングは、化学エッチング(湿式エッチング)で行うことができ、エッチング液には塩化銅溶液、硝酸等を用いることができ、或いは他の酸性溶液、アルカリ溶液等を用いる方法により行うことができる。
また、上記の金属箔との張り合わせは、公知の方法により行うことができる。例えば、一対以上の金属ロールを有する熱ロールラミネート装置或いはダブルベルトプレス(DBP)による連続処理によって、接着フィルムと金属箔とを張り合わせることができる。装置構成が単純であり、保守コストの面で有利であるという点から、接着フィルムと金属箔との張り合わせは、一対以上の金属ロールを有する熱ロールラミネート装置を用いた熱ラミネートにより行うことが好ましい。
【0138】
本実施形態の配線板は、マイクロ波帯の高周波数帯域で使用されるものであってもよく、例えば、10GHz~100GHzをマイクロ波の高周波帯域で使用される。なかでも、60GHz以上であることにより、吸湿抑制効果を効果的に得ることができ、高い信頼性が得られる。
【0139】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例0140】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0141】
(1)原料
表1における各成分の原料の詳細は下記のとおりである。表1中、各成分の配合割合を示す数値は、樹脂組成物の固形分全体に対する各成分の配合割合(質量%)を示している。
・マレイミド化合物(A):ビフェニルアラルキル型マレイミド化合物、「MIR-3000-70MT」日本化薬社製
・熱可塑性樹脂(B):クマロン樹脂:末端にフェノール基を含むインデン・クマロン・スチレン共重合体(日塗化学社製、V-120S、質量平均分子量:950、水酸基価:30mg KOH/g)
・架橋剤(C):トリアリルイソシアネート、「TAIC」三菱ケミカル社製
・シランカップリング剤(D)
シランカップリング剤(D1):式(1)で示されるシランカップリング剤「X-12-1290」信越シリコーン社製(粘度約180mm2/s)
シランカップリング剤(D2):式(2)で示されるシランカップリング剤「X-12-1281C」信越シリコーン社製(数平均分子量Mn6,000~20,000の範囲、粘度約600,000Pas)
シランカップリング剤(D3):式(3)で示されるシランカップリング剤:「X-12-1281A」信越シリコーン社製(数平均分子量Mn5,000~12,000の範囲、粘度約21,000cP)
シランカップリング剤(D4):式(4)で示されるシランカップリング剤「X-12-1267B」信越シリコーン社製(数平均分子量Mn3,000~9,000の範囲、粘度約1,600cP)
シランカップリング剤(D5):式(5)で示されるシランカップリング剤「X-12-1287A」信越シリコーン社製(数平均分子量Mn4,000~10,000の範囲、粘度約6,400cP)
シランカップリング剤(D6):ビニルトリメトキシシラン「KBM-1003」信越シリコーン社製
シランカップリング剤(D7):3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン「KBM-503」信越シリコーン社製
・複数の芳香族エステル構造を骨格とし、末端に不飽和結合基を有する化合物(E):以下の合成例1により得られた化合物。
・無機充填材(F):シリカ粒子、「SC4050」、アドマテックス社製、(平均粒径1.1μm、表面がアミノフェニルシラン処理されたもの)
・変性ポリフェニレンエーテル共重合体(G):末端メタクリル基変性ポリフェニレンエーテル、「SA9000」SABICイノベーティブプラスチックス社製
・ポリブタジエン系エラストマー1:ポリブタジエン、「B-1000」日本曹達社製
・ポリブタジエン系エラストマー2:液状ポリブタジエン、「Ricon101」クレイ・バレー社製
・重合開始剤:1,3-ジ[(t-ブチルパーオキシ)イソプロピル]ベンゼン「パーブチルP」日油社製
【0142】
[合成例1:化合物(E)]
反応容器にオルトアリルフェノール89質量部、ジシクロペンタジエン・フェノール共重合樹脂(軟化点85℃、水酸基当量約165g/eq.)110質量部、トルエン1000質量部を仕込み、容器内を減圧窒素置換させながら溶解させた。続いて、イソフタル酸クロライド135質量部を仕込み溶解させた。次いでテトラブチルアンモニウムブロミド0.5gを添加し、容器内を窒素パージしながら20%水酸化ナトリウム水溶液309gを3時間かけ滴下した。その際、系内の温度は60℃以下に制御した。その後、1時間攪拌させ反応させた。反応終了後、反応物を分液し水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返し、加熱減圧条件でトルエン等を留去させ、芳香族エステル骨格および不飽和結合を含有するビニル化合物Bを得た。得られたビニル化合物Bの不飽和結合当量は仕込み比から算出すると428g/eq.であった。
ビニル化合物Bは下記式で表され、xは0または1以上の整数を表し、仕込み比から算出されたyの平均値は1である。また、Aは、イソフタル酸クロリド、並びにフェノールの重付加反応樹脂および/またはオルトアリルフェノールが反応して得られる構造である。
【化24】
【0143】
(2)低誘電樹脂組成物の調製
表1に示す固形分割合で各成分を溶解または分散させ、トルエン15質量%、メチルエチルケトン15質量%で不揮発分70質量%となるように調整し、高速撹拌装置を用い撹拌して、ワニス状の樹脂組成物(樹脂ワニスP)を調製した。
【0144】
(3)プリプレグの調製
得られた樹脂ワニスPを、表1に示す繊維基材(クロスタイプ♯1078、NEガラス、坪量44g/m2)に塗布装置で含浸させ、150℃の熱風乾燥装置で5分間乾燥して、厚さ70μmのプリプレグを得た。
【0145】
(4)金属箔付き積層板の作製
各プリプレグの両面に極薄銅箔(三井金属鉱業社製、マイクロシンFL、1.5μm)を重ね合わせ、圧力3MPa、温度225℃で2時間加熱加圧成形することにより、金属箔付き積層板を得た。
【0146】
(5)測定・評価
・誘電率、誘電正接
得られた金属箔付き積層板をエッチングにより銅箔を除去したサンプルを用いて10GHzの空洞共振器で誘電率、誘電正接測定した。
【0147】
・ピール強度
得られた金属箔付き積層板を用い、極薄銅箔とプリプレグとを剥離する際のピール強度を測定した。測定はJIS C 6481に準拠して行った。尚、薄箔は電気メッキにより20μmとした。
【0148】
・ガラス転移温度(Tg)
動的粘弾性装置を用いて、JIS C-6481(DMA法)に準拠しておこなった。尚、金属箔付き積層板をエッチングにより銅箔を除去したサンプルを用いて8mm×40mmのテストピースを切り出し、そのテストピースに対し、昇温速度5℃/min、周波数1Hzで動的粘弾性測定をおこなった。
ガラス転移温度は、損失正接tanδが最大値を示す温度(℃)とした。
【0149】
・レーザー加工性
予め粗化された内層回路基板の両面に、上記実施例・比較例で得られた各プリプレグと極薄銅箔(三井金属鉱業社製、マイクロシンFL、1.5μm)の順に重ねて配置し、圧力3MPa、温度225℃で2時間加熱加圧成形した。次いで、予め極薄銅箔に貼付されていたキャリア箔を剥離し、金属張積層板を得た。次いで、当該極箔銅箔(後の導体回路面)の粗化処理(メック社製、メックエッチボンド CZ-8100)を行った。当該粗化処理は、液温35℃、スプレー圧0.15MPの条件でスプレー噴霧処理し、極箔銅箔の表面に粗さ3μm程度の粗面化を施すことにより行われた。次いで、極箔銅箔(後の導体回路)の表面処理(メック社製、メックエッチボンド CL-8300)を行った。当該表面処理では、液温25℃、浸漬時間20秒間の条件で浸漬して、極箔銅箔の表面に防錆処理を行った。表面を炭酸ガスレーザー(三菱電機社製、ML605GTX3-5100U2)を用いて、アパーチャーφ1.4mm、ビーム径約120μm、エネルギー3~5mJ、ショット数4の条件で、φ90μmのブラインドビアホールを形成した。
次いで、当該金属張積層板を、70℃の膨潤液(アトテックジャパン社製、スウェリングディップ セキュリガント P)に10分間浸漬し、さらに80℃の過マンガン酸カリウム水溶液(アトテックジャパン社製、コンセントレートコンパクト CP)に25分浸漬後、中和して粗化処理を行った。次に、無電解メッキ(上村工業社製、スルカップPEAプロセス)および電気メッキで上下銅箔間の導通を図り、配線板をえた。
前記で得られた配線板の断面からメッキの染み込み長さを計測し、以下の評価基準に従い、レーザー加工性を評価した。
(評価基準)
◎:なし
○:0~10μm
△:10~15μm
×:15μm以上
【0150】
・ビア間絶縁信頼性
上記レーザー加工性の評価で作製した配線板と同様にしてサンプル(配線板)を作製した。
ビア間壁間を0.1mmで、印加電圧10V、温度130℃湿度85%の条件で、連続測定を行い、以下の基準に従い評価した。なお、絶縁抵抗値が106Ω未満となる時点で終了とした。
(評価基準)
◎:絶縁抵抗値が106Ω未満となるまで、500時間以上であった(良好)。
○:絶縁抵抗値が106Ω未満となるまで、200時間以上500時間未満であった(実質上問題なし)。
△:絶縁抵抗値が106Ω未満となるまで、100時間以上200時間未満であった(実質上使用不可)。
×:絶縁抵抗値が106Ω未満となるまで、100時間未満であった(使用不可)。
【0151】
・耐熱性
まず、上記レーザー加工性の評価で作製した配線板と同様にしてサンプル(配線板)を作製した。続けて、配線板上に半田バンプを有する半導体素子(TEGチップ、サイズ10mm×10mm、厚み0.1mm)を、フリップチップボンダー装置により、加熱圧着により搭載した。次に、IRリフロー炉で半田バンプを溶融接合した後、液状封止樹脂(「CRP-4160G」、住友ベークライト社製)を充填し、150℃、2時間の条件で硬化させた。その後、14mm×14mmのサイズにルーターで個片化し、半導体装置を得た。
次に、得られた半導体装置を用いて、260℃マルチリフローで耐熱性を評価した。具体的には、半導体装置を、IPC/JEDECのJ-STD-20に準拠リフロー260℃リフロー炉を通し、5回毎に、超音波深傷検査装置で半導体装置の絶縁層の剥離、クラック、半導体素子裏面の剥離、および半田バンプの欠損、及び125℃の熱板上で銅通不良の有無について確認し、以下の評価基準に従い評価した。
(評価基準)
◎:10回以上絶縁層の剥離等、または銅通不良が無かった。
○:5回以上、10回未満で絶縁層の剥離等、または銅通不良が無かった。
△:1回以上、5回未満で絶縁層の剥離等、または銅通不良が発生した。
×:1回未満 絶縁層の剥離等、または銅通不良が発生した。
【0152】