(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151331
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】密閉型圧縮機及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F04B 39/12 20060101AFI20231005BHJP
F04C 29/12 20060101ALI20231005BHJP
F04C 29/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
F04B39/12 101F
F04C29/12 C
F04C29/12 D
F04C29/00 B
F04C29/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060898
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多田 直人
(72)【発明者】
【氏名】上田 健史
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 浩志
(72)【発明者】
【氏名】秋本 諒
(72)【発明者】
【氏名】安井 達也
(72)【発明者】
【氏名】森田 雄大
【テーマコード(参考)】
3H003
3H129
【Fターム(参考)】
3H003AA05
3H003AB04
3H003AC03
3H003CD01
3H003CD03
3H003CD06
3H129AA04
3H129AA13
3H129AA32
3H129AB03
3H129BB32
3H129CC04
3H129CC09
3H129CC10
3H129CC24
3H129CC26
(57)【要約】 (修正有)
【課題】圧縮機本体容器の径方向に対する小型化を図る。
【解決手段】圧縮機本体容器の下方に、アキュムレータ容器が設けられ、アキュムレータ容器は、カップ状のアキュムレータシェルを有し、アキュムレータシェルの開口側が圧縮機本体容器に接合される。アキュムレータシェルの内部には、上シリンダへ冷媒を供給する第1冷媒供給管と、下シリンダへ冷媒を供給する第2冷媒供給管とがそれぞれ設けられる。第1冷媒供給管及び第2冷媒供給管は、アキュムレータシェルの内部から圧縮機本体容器のボトムシェルを貫通して圧縮部に接続される。圧縮部には、第1冷媒供給管から上シリンダの上圧縮室に冷媒を供給する第1冷媒供給経路と、第2冷媒供給管から下シリンダの下圧縮室に冷媒を供給する第2冷媒供給経路とが形成される。第1冷媒供給経路には第1冷媒供給管が接続され、第2冷媒供給経路には第2冷媒供給管が接続される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦型円筒状の圧縮機本体容器の内部に、吸入した気体冷媒を圧縮して前記圧縮機本体容器内に吐出する上シリンダ及び下シリンダを有する圧縮部と、前記圧縮部を駆動するモータと、が収容され、
前記圧縮機本体容器の下方に、吸入した冷媒を気体冷媒と液体冷媒とに分離して気体冷媒を前記圧縮部に供給するアキュムレータ容器が設けられた密閉型圧縮機であって、
前記圧縮機本体容器は、円筒状のメインシェルと、前記メインシェルの下端部に接合されるボトムシェルと、を有し、
前記アキュムレータ容器は、カップ状のアキュムレータシェルを有し、前記アキュムレータシェルの開口側が前記圧縮機本体容器に接合され、
前記アキュムレータシェルの内部には、前記アキュムレータシェルから前記圧縮部の前記上シリンダへ気体冷媒を供給する第1冷媒供給管と、前記アキュムレータシェルから前記圧縮部の前記下シリンダへ気体冷媒を供給する第2冷媒供給管とがそれぞれ設けられ、
前記第1冷媒供給管及び前記第2冷媒供給管は、前記アキュムレータシェルの内部から前記圧縮機本体容器の前記ボトムシェルを貫通して前記圧縮部に接続され、
前記圧縮部には、前記第1冷媒供給管から前記上シリンダの上圧縮室に気体冷媒を供給する第1冷媒供給経路と、前記第2冷媒供給管から前記下シリンダの下圧縮室に冷媒を供給する第2冷媒供給経路とが形成され、
前記第1冷媒供給経路には前記第1冷媒供給管が接続され、前記第2冷媒供給経路には前記第2冷媒供給管が接続される、密閉型圧縮機。
【請求項2】
前記圧縮部は、前記上シリンダと前記下シリンダの間に配置された仕切板と、前記下シリンダの下端を閉塞する下端板と、を有し、
前記第1冷媒供給経路は、前記上シリンダに形成された上圧縮部吸入路と、前記仕切板に形成された連通路と、前記下シリンダに形成された上接続路と、を有し、前記上接続路に前記第1冷媒供給管が接続され、
前記第2冷媒供給経路は、前記下シリンダに形成された下圧縮部吸入路と、前記下端板に形成された下接続路と、を有し、前記下接続路に前記第2冷媒供給管が接続される、
請求項1に記載の密閉型圧縮機。
【請求項3】
前記第1冷媒供給経路は、前記下シリンダの前記上接続路から前記上シリンダの前記上圧縮部吸入路まで前記圧縮部の上下方向に沿って形成された第1直線経路を含み、
前記第2冷媒供給経路は、前記下端板の前記下接続路から前記下シリンダの前記下圧縮部吸入路まで前記圧縮部の上下方向に沿って形成された第2直線経路を含む、
請求項2に記載の密閉型圧縮機。
【請求項4】
前記第1冷媒供給管及び前記第2冷媒供給管は、前記ボトムシェルから前記圧縮部まで前記圧縮部の上下方向に沿って直線状に延ばされる、
請求項3に記載の密閉型圧縮機。
【請求項5】
前記上シリンダ、前記仕切板及び前記下シリンダは、外周の一部が当該外周から張り出した張り出し部をそれぞれ有し、
前記第1冷媒供給経路及び前記第2冷媒供給経路の少なくとも一方の経路の一部は、各張り出し部に形成される、
請求項2ないし4のいずれか1項に記載の密閉型圧縮機。
【請求項6】
前記下シリンダには、前記第1冷媒供給経路の前記上接続路と前記第2冷媒供給経路の前記下圧縮部吸入路が、前記モータの回転軸に直交する方向に並んで配置される、
請求項2ないし5のいずれか1項に記載の密閉型圧縮機。
【請求項7】
前記モータの回転軸の軸方向から前記圧縮部を見たときに、前記上圧縮部吸入路と前記下圧縮部吸入路は重なるように配置される、
請求項6に記載の密閉型圧縮機。
【請求項8】
前記第1冷媒供給管は、前記下端板の外側に配置される、
請求項2ないし7のいずれか1項に記載の密閉型圧縮機。
【請求項9】
前記下シリンダには、前記上接続路の内周と前記第1冷媒供給管の外周との間を封止する第1封止部材が設けられ、
前記下端板には、前記下接続路の内周と前記第2冷媒供給管の外周との間を封止する第2封止部材が設けられている、
請求項2ないし8のいずれか1項に記載の密閉型圧縮機。
【請求項10】
前記仕切板の端面は、前記上圧縮部吸入路の一部を形成している、
請求項2ないし9のいずれか1項に記載の密閉型圧縮機。
【請求項11】
前記下端板の端面は、前記下圧縮部吸入路の一部を形成している、
請求項2ないし10のいずれか1項に記載の密閉型圧縮機。
【請求項12】
前記第1冷媒供給管の一端部と前記第2冷媒供給管の一端部は、外径が徐々に縮径するテーパ状に形成され、
前記下シリンダの前記上接続路と前記下端板の前記下接続路は、内径が徐々に縮径するテーパ状に形成され、
前記第1冷媒供給管の前記一端部は、前記上接続路に圧入され、
前記第2冷媒供給管の前記一端部は、前記下接続路に圧入された、
請求項2ないし11のいずれか1項に記載の密閉型圧縮機。
【請求項13】
縦型円筒状の圧縮機本体容器の内部に、吸入した気体冷媒を圧縮して前記圧縮機本体容器内に吐出する上シリンダ及び下シリンダを有する圧縮部と、前記圧縮部を駆動するモータと、が収容され、前記圧縮機本体容器の下方に、吸入した冷媒を気体冷媒と液体冷媒とに分離して気体冷媒を前記圧縮部に供給するアキュムレータ容器が設けられ、前記圧縮機本体容器は、円筒状のメインシェルと、前記メインシェルの下端部に接合されるボトムシェルと、を有し、前記アキュムレータ容器は、カップ状のアキュムレータシェルを有し、前記アキュムレータシェルの開口側が前記圧縮機本体容器に接合され、前記アキュムレータシェルの内部には、前記アキュムレータシェルから前記圧縮部の前記上シリンダへ冷媒を供給する第1冷媒供給管と、前記アキュムレータシェルから前記圧縮部の前記下シリンダへ冷媒を供給する第2冷媒供給管とがそれぞれ設けられ、前記第1冷媒供給管及び前記第2冷媒供給管は、前記アキュムレータシェルの内部から前記圧縮機本体容器の前記ボトムシェルを貫通して前記圧縮部に接続され、前記圧縮部には、前記第1冷媒供給管から前記上シリンダの上圧縮室に冷媒を供給する第1冷媒供給経路と、前記第2冷媒供給管から前記下シリンダの下圧縮室に冷媒を供給する第2冷媒供給経路とが形成され、前記第1冷媒供給経路には前記第1冷媒供給管が接続され、前記第2冷媒供給経路には前記第2冷媒供給管が接続される、密閉型圧縮機の製造方法であって、
前記圧縮部に接続された前記第1冷媒供給管及び前記第2冷媒供給管が貫通して設けられると共に前記メインシェルに接合された前記ボトムシェルに対して、前記アキュムレータシェルを溶接により接合する、密閉型圧縮機の製造方法。
【請求項14】
縦型円筒状の圧縮機本体容器の内部に、吸入した気体冷媒を圧縮して前記圧縮機本体容器内に吐出する上シリンダ及び下シリンダを有する圧縮部と、前記圧縮部を駆動するモータと、が収容され、前記圧縮機本体容器の下方に、吸入した冷媒を気体冷媒と液体冷媒とに分離して気体冷媒を前記圧縮部に供給するアキュムレータ容器が設けられ、前記圧縮機本体容器は、円筒状のメインシェルと、前記メインシェルの下端部に接合されるボトムシェルと、を有し、前記アキュムレータ容器は、カップ状のアキュムレータシェルを有し、前記アキュムレータシェルの開口側が前記圧縮機本体容器に接合され、前記アキュムレータシェルの内部には、前記アキュムレータシェルから前記圧縮部の前記上シリンダへ冷媒を供給する第1冷媒供給管と、前記アキュムレータシェルから前記圧縮部の前記下シリンダへ冷媒を供給する第2冷媒供給管とがそれぞれ設けられ、前記第1冷媒供給管及び前記第2冷媒供給管は、前記アキュムレータシェルの内部から前記圧縮機本体容器の前記ボトムシェルを貫通して前記圧縮部に接続され、前記圧縮部には、前記第1冷媒供給管から前記上シリンダの上圧縮室に冷媒を供給する第1冷媒供給経路と、前記第2冷媒供給管から前記下シリンダの下圧縮室に冷媒を供給する第2冷媒供給経路とが形成され、前記第1冷媒供給経路には前記第1冷媒供給管が接続され、前記第2冷媒供給経路には前記第2冷媒供給管が接続される、密閉型圧縮機の製造方法であって、
前記アキュムレータシェルが接合された前記ボトムシェルを貫通して設けられた前記第1冷媒供給管及び前記第2冷媒供給管を前記圧縮部に接続すると共に、前記メインシェルに対して前記ボトムシェルを溶接により接合する、密閉型圧縮機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉型圧縮機及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機として、縦型円筒状の圧縮機本体容器と、圧縮機本体容器の径方向に並んで配置されたアキュムレータと、を備えるものが知られている。
【0003】
関連技術の圧縮機としては、圧縮機本体容器の下方に、アキュムレータ容器が配置されたものがある。このようにアキュムレータ容器が圧縮機本体容器の下方に配置されたことで、圧縮機本体容器の径方向に対しての圧縮機の小型化が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-27043号公報
【特許文献2】特開2020-109283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した圧縮機では、アキュムレータ容器から圧縮部のシリンダへ気体冷媒を供給する冷媒供給管が、圧縮機本体容器の外部に配置されているので、圧縮機本体容器の径方向に対して冷媒供給管が占める空間を確保することで圧縮機が大型化する問題がある。特に、圧縮部が上シリンダと下シリンダを有する場合には、各シリンダに接続される2本の冷媒供給管が圧縮機本体容器の外部に配置されるので、圧縮機本体容器の径方向に対して圧縮機が更に大型化する問題がある。
【0006】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、圧縮機本体容器の径方向に対する小型化を図ることができる密閉型圧縮機及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の開示する密閉型圧縮機の一態様は、縦型円筒状の圧縮機本体容器の内部に、吸入した気体冷媒を圧縮して圧縮機本体容器内に吐出する上シリンダ及び下シリンダを有する圧縮部と、圧縮部を駆動するモータと、が収容され、圧縮機本体容器の下方に、吸入した冷媒を気体冷媒と液体冷媒に分離して気体冷媒を圧縮部に供給するアキュムレータ容器が設けられた密閉型圧縮機であって、圧縮機本体容器は、円筒状のメインシェルと、メインシェルの下端部に接合されるボトムシェルと、を有し、アキュムレータ容器は、カップ状のアキュムレータシェルを有し、アキュムレータシェルの開口側が圧縮機本体容器に接合され、アキュムレータシェルの内部には、アキュムレータシェルから圧縮部の上シリンダへ気体冷媒を供給する第1冷媒供給管と、アキュムレータシェルから圧縮部の下シリンダへ気体冷媒を供給する第2冷媒供給管とがそれぞれ設けられ、第1冷媒供給管及び第2冷媒供給管は、アキュムレータシェルの内部から圧縮機本体容器のボトムシェルを貫通して圧縮部に接続され、圧縮部には、第1冷媒供給管から上シリンダの上圧縮室に気体冷媒を供給する第1冷媒供給経路と、第2冷媒供給管から下シリンダの下圧縮室に気体冷媒を供給する第2冷媒供給経路とが形成され、第1冷媒供給経路には第1冷媒供給管が接続され、第2冷媒供給経路には第2冷媒供給管が接続される。
【発明の効果】
【0008】
本願の開示する密閉型圧縮機の一態様によれば、圧縮機本体容器の径方向に対する小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施例のロータリ圧縮機を示す縦断面図である。
【
図2】
図2は、実施例における圧縮部を示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、実施例の要部を拡大して示す縦断面図である。
【
図4】
図4は、実施例における第1冷媒供給管及び第2冷媒供給管の形状を説明するための断面斜視図である。
【
図5】
図5は、実施例における第1冷媒供給管及び第2冷媒供給管の形状を説明するための縦断面図である。
【
図6】
図6は、実施例における第1冷媒供給管及び第2冷媒供給管の形状を説明するための横断面図である。
【
図7】
図7は、実施例における第1冷媒供給管及び第2冷媒供給管の接続構造を示す縦断面図である。
【
図8A】
図8Aは、実施例における上シリンダを上方から見た平面図である。
【
図8B】
図8Bは、実施例における上シリンダを下方から見た平面図である。
【
図9A】
図9Aは、実施例における下シリンダを上方から見た平面図である。
【
図9B】
図9Bは、実施例における下シリンダを下方から見た平面図である。
【
図10】
図10は、実施例における中間仕切板を上方から見た平面図である。
【
図11】
図11は、実施例における下端板を下方から見た平面図である。
【
図12】
図12は、実施例における下端板カバーを下方から見た平面図である。
【
図13】
図13は、実施例における第1冷媒供給管及び第2冷媒供給管の接続構造の他の例を示す縦断面図である。
【
図14】
図14は、実施例のロータリ圧縮機の製造方法を説明するための縦断面図である。
【
図15】
図15は、実施例のロータリ圧縮機の製造方法の他の例を説明するための縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本願の開示する密閉型圧縮機及びその製造方法の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例によって、本願の開示する密閉型圧縮機及びその製造方法が限定されるものではない。
【実施例0011】
(ロータリ圧縮機の構成)
本実施例では、密閉型圧縮機の一例として、ロータリ圧縮機について説明する。
図1は、実施例のロータリ圧縮機を示す縦断面図である。
図2は、実施例における圧縮部を示す分解斜視図である。
【0012】
図1に示すように、ロータリ圧縮機1は、圧縮機本体容器10の内部に、第1冷媒供給管31T及び第2冷媒供給管31Sから冷媒を吸入して圧縮した冷媒を圧縮機本体容器10の内部に吐出する圧縮部12と、圧縮部12を駆動するモータ11と、が収容され、圧縮部12で圧縮された高圧冷媒を圧縮機本体容器10の内部に吐出し、さらに吐出管107を通して冷凍サイクルに吐出する内部高圧型の密閉型圧縮機である。
【0013】
圧縮機本体容器10は、
図1に示すように、縦型円筒状のメインシェル10aと、カップ状のトップシェル10bと、カップ状のボトムシェル10cと、を有している。圧縮機本体容器10は、メインシェル10aの上端部にトップシェル10bの開口側10gが溶接によって固定され、メインシェル10aの下端部にボトムシェルの開口側10dが溶接によって固定されることで構成されている。
【0014】
圧縮部12で圧縮された高圧冷媒を圧縮機本体容器10の内部から冷凍サイクルに吐出するための吐出管107がトップシェル10bを貫通して設けられている。吐出管107はトップシェル10bに直接ろう付けによって接合されている。
【0015】
図1及び
図3に示すように、圧縮機本体容器10の下方には、後述するアキュムレータ吸入管27を介して吸入される低圧冷媒を気体冷媒と液体冷媒とに分離して気体冷媒だけを圧縮部12に吸入させるためのアキュムレータ容器25が設けられている。アキュムレータ容器25は、カップ状のアキュムレータシェル26を有しており、アキュムレータシェル26の開口側26aが圧縮機本体容器10のボトムシェル10cに溶接によって接合されている。したがって、圧縮機本体容器10のボトムシェル10cは、アキュムレータシェル26の開口側26aを塞ぐ蓋を兼ねている。なお、図示しないが、カップ状のアキュムレータシェル26は、円筒状のメインシェルと、皿状のボトムシェルと、を有し、メインシェルの下端部にボトムシェルの外周部が接合されることで形成されてもよい。
【0016】
アキュムレータシェル26には、アキュムレータ容器25の内部に冷媒を吸入するアキュムレータ吸入管27と、アキュムレータ容器25の内部から気体冷媒を圧縮部12へ送る第1冷媒供給管31T及び第2冷媒供給管31Sと、が設けられている。アキュムレータ吸入管27は、アキュムレータシェル26の側壁を貫通してアキュムレータシェル26に溶接によって接合されている。冷媒供給管31は、アキュムレータシェル26の内部に設けられており、アキュムレータシェル26の内部から圧縮機本体容器10のボトムシェル10cの底部10eを貫通して圧縮部12に接続されている。第1冷媒供給管31T及び第2冷媒供給管31Sの構造の詳細については後述する。
【0017】
図1に示すように、アキュムレータシェル26における下部、すなわち、開口側26aとは反対側である反開口側26bには、ロータリ圧縮機1全体を支持するベース部材310が溶接によって固定されている。
【0018】
図1及び
図2に示すように、圧縮部12は、上シリンダ121Tと、下シリンダ121Sと、中間仕切板140と、上端板160Tと、下端板160Sと、回転軸15と、を有する。圧縮部12は、上端板160T、上シリンダ121T、中間仕切板140、下シリンダ121S、下端板160Sの順に積層され、複数のボルト175によって固定されている。すなわち、中間仕切板140は、上シリンダ121Tと下シリンダ121Sの間に配置されている。上端板160Tは、上シリンダ121Tの上端を閉塞している。下端板160Sは、下シリンダ121Sの下端を閉塞している。
【0019】
また、上端板160Tには主軸受部161Tが設けられている。下端板160Sには副軸受部161Sが設けられている。回転軸15には主軸部153と、上偏心部152Tと、下偏心部152Sと、副軸部151と、が設けられている。回転軸15の主軸部153が上端板160Tの主軸受部161Tに嵌め込まれ、回転軸15の副軸部151が下端板160Sの副軸受部161Sに嵌め込まれることにより、回転軸15は回転自在に支持されている。
【0020】
モータ11は、外側に配置されたステータ111と、内側に配置されたロータ112と、を有している。ステータ111は、メインシェル10aの内周面に焼嵌めによって固定されている。ロータ112は、回転軸15に焼嵌めによって固定されている。
【0021】
圧縮機本体容器10の内部には、圧縮部12の摺動部材の潤滑及び圧縮室内の高圧部と低圧部とのシールのために、圧縮部12がほぼ浸漬する量の潤滑油18が封入されている。
【0022】
次に、
図2を用いて圧縮部12を詳しく説明する。上シリンダ121Tには内部に円筒状の上中空部130Tが設けられ、上中空部130Tには上ピストン125Tが配置されている。上ピストン125Tは回転軸15の上偏心部152Tに嵌め込まれている。下シリンダ121Sには内部に円筒状の下中空部130Sが設けられ、下中空部130Sには下ピストン125Sが配置されている。下ピストン125Sは回転軸15の下偏心部152Sに嵌め込まれている。
【0023】
上シリンダ121Tには上中空部130Tから外周側へ延びる溝部が設けられており、溝部に上ベーン127Tが配置されている。上シリンダ121Tは、円形状の外周の一部がこの外周から張り出した張り出し部122Tを有する。上シリンダ121Tには、張り出し部122Tの外周から溝部に通じる上スプリング穴124Tが設けられており、上スプリング穴124Tに上スプリング126Tが配置されている。下シリンダ121Sには下中空部130Sから外周側へ延びる溝部が設けられており、溝部に下ベーン127Sが配置されている。下シリンダ121Sは、円形状の外周の一部がこの外周から張り出した張り出し部122Sを有する。下シリンダ121Sには、張り出し部122Tの外周から溝部に通じる下スプリング穴124Sが設けられており、下スプリング穴124Sに下スプリング126Sが配置されている。
【0024】
上ベーン127Tの一端が上スプリング126Tによって上ピストン125Tに押し当てられることにより、上シリンダ121Tの上中空部130Tにおいて上ピストン125Tの外側の空間が、上圧縮室としての上吸入室131Tと上吐出室133Tに区画される。上シリンダ121Tには、第1冷媒供給管31Tを通して気体冷媒を上吸入室131Tに供給する第1冷媒供給経路143Tが形成されている。下ベーン127Sの一端が下スプリング126Sによって下ピストン125Sに押し当てられることにより、下シリンダ121Sの下中空部130Sにおいて下ピストン125Sの外側の空間が、下圧縮室としての下吸入室131Sと下吐出室133Sに区画される。下シリンダ121Sには、第2冷媒供給管31Sを通して気体冷媒を下吸入室131Sに供給する第2冷媒供給経路143Sが形成されている。上シリンダ121Tの第1冷媒供給経路143T及び下シリンダ121Sの第2冷媒供給経路143Sの詳細については後述する。
【0025】
上端板160Tには、上端板160Tを貫通して上吐出室133Tに連通する上吐出穴190Tが設けられている。上端板160Tには、上吐出穴190Tを開閉するリード弁である上吐出弁200Tと、上吐出弁200Tの反りを規制する上吐出弁押さえ201Tと、が上リベット202Tによって固定されている。上端板160Tの上側には、上吐出穴190Tを覆う上端板カバー170Tが配置され、上端板160Tと上端板カバー170Tとで閉塞される上端板カバー室180Tが形成される。上端板カバー170Tは、上端板160Tと上シリンダ121Tとを固定する複数のボルト175によって上端板160Tに固定される。上端板カバー170Tには、上端板カバー室180Tと圧縮機本体容器10の内部を連通する上端板カバー吐出穴172が設けられている。また、圧縮部12が圧縮機本体容器10内に設けられる際、圧縮機本体容器10の内周面が上端板160Tの外周面に焼き嵌めされると共に、圧縮機本体容器10と溶接によって接合される。
【0026】
下端板160Sには、下端板160Sを貫通して下吐出室133Sに連通する下吐出穴190Sが設けられている。下端板160Sには、下吐出穴190Sを開閉するリード弁である下吐出弁200Sと、下吐出弁200Sの反りを規制する下吐出弁押さえ201Sと、が下リベット202Sによって固定されている。下端板160Sの下側には、下吐出穴190Sを覆う下端板カバー170Sが配置され、下端板160Sと下端板カバー170Sとで閉塞される下端板カバー室180Sを形成する(
図1参照)。下端板カバー170Sは、下端板160Sと下シリンダ121Sとを固定する複数のボルト175によって下端板160Sに固定される。また、下端板160Sには、下シリンダ121Sに気体冷媒を供給する第2冷媒供給経路143Sを形成する下接続路148が設けられており、第2冷媒供給管31Sの後述する直管部32Sの上端部32Saが下接続路148に接続されている。
【0027】
また、圧縮部12には、下端板160S、下シリンダ121S、中間仕切板140、上端板160T及び上シリンダ121Tを貫通し、下端板カバー室180Sと上端板カバー室180Tとを連通する冷媒通路穴136(
図2参照)が設けられている。
【0028】
以下に、回転軸15の回転による冷媒の流れを説明する。回転軸15の回転によって、回転軸15の上偏心部152Tに嵌め込まれた上ピストン125T、及び下偏心部152Sに嵌め込まれた下ピストン125Sが公転運動することにより、上吸入室131T及び下吸入室131Sが容積を拡大しながら冷媒を吸入する。冷媒の吸入路として、低圧冷媒は、アキュムレータ吸入管27を通してアキュムレータ容器25の内部に吸入され、気体冷媒だけが第1冷媒供給管31T及び第2冷媒供給管31Sに吸入される。第1冷媒供給管31Tに吸入された気体冷媒は、後述する第1冷媒供給経路143Tを通って上シリンダ121Tの上吸入室131Tに吸入される。第2冷媒供給管31Sに吸入された気体冷媒は、後述する第2冷媒供給経路143Sを通って下シリンダ121Sの下吸入室131Sに吸入される。
【0029】
次に、回転軸15の回転による吐出冷媒の流れを説明する。回転軸15の回転によって、回転軸15の上偏心部152Tに嵌め込まれた上ピストン125Tが公転運動することにより、上吐出室133Tが容積を縮小しながら冷媒を圧縮し、圧縮した冷媒の圧力が上吐出弁200Tの外側の上端板カバー室180Tの圧力よりも高くなったとき、上吐出弁200Tが開いて上吐出室133Tから上端板カバー室180Tへ冷媒を吐出する。上端板カバー室180Tに吐出された冷媒は、上端板カバー170Tに設けられた上端板カバー吐出穴172から圧縮機本体容器10内に吐出される。
【0030】
また、回転軸15の回転によって、回転軸15の下偏心部152Sに嵌め込まれた下ピストン125Sが公転運動することにより、下吐出室133Sが容積を縮小しながら冷媒を圧縮し、圧縮した冷媒の圧力が下吐出弁200Sの外側の下端板カバー室180Sの圧力よりも高くなったとき、下吐出弁200Sが開いて下吐出室133Sから下端板カバー室180Sへ冷媒を吐出する。下端板カバー室180Sに吐出された冷媒は、冷媒通路穴136及び上端板カバー室180Tを通って上端板カバー170Tに設けられた上端板カバー吐出穴172Tから圧縮機本体容器10内に吐出される。
【0031】
圧縮機本体容器10内に吐出された冷媒は、ステータ111の外周に設けられた上下を連通する切欠き(図示せず)、又はステータ111の巻線部の隙間(図示せず)、又はステータ111とロータ112との隙間115(
図1参照)を通ってモータ11の上方に導かれ、圧縮機本体容器10の上部に配置された吐出管107から吐出される。
【0032】
次に、潤滑油18の流れを説明する。圧縮機本体容器10の下部に封入されている潤滑油18は、回転軸15の遠心力により回転軸15の内部(図示せず)を通って圧縮部12に供給される。圧縮部12に供給された潤滑油18は、冷媒に巻き込まれ霧状となって冷媒と共に圧縮機本体容器10の内部に排出される。霧状となって圧縮機本体容器10の内部に排出された潤滑油18はモータ11の回転力によって遠心力で冷媒と分離され、油滴となって再び圧縮機本体容器10の下部に戻る。しかし一部の潤滑油18は分離されずに冷媒と共に冷凍サイクルに排出される。冷凍サイクルに排出された潤滑油18は冷凍サイクルを循環してアキュムレータ容器25に戻り、アキュムレータ容器25の内部で分離されアキュムレータ容器25における下部に滞留する。アキュムレータ容器25における下部に滞留した潤滑油18は、後述する第1冷媒供給管31T及び第2冷媒供給管31Sのそれぞれに設けられた油戻し穴37を通って少量ずつ気体冷媒と共に上吸入室131T、下吸入室131Sに吸入される。
【0033】
(ロータリ圧縮機の特徴的な構成)
次に、実施例のロータリ圧縮機1の特徴的な構成について説明する。実施例の特徴には、第1冷媒供給管31T及び第2冷媒供給管31Sがアキュムレータシェル26の内部から圧縮機本体容器10のボトムシェル10cを貫通して圧縮部12に接続される構造、第1冷媒供給管31Tから供給された気体冷媒を圧縮部12へ供給する第1冷媒供給経路143Tと、第2冷媒供給管31Sから供給された気体冷媒を圧縮部12へ供給する第2冷媒供給経路143Sと、を有する構造が含まれる。
【0034】
図4は、実施例における第1冷媒供給管31T及び第2冷媒供給管31Sの形状を説明するための断面斜視図である。
図5は、実施例における第1冷媒供給管31T及び第2冷媒供給管31Sの形状を説明するための縦断面図である。
図6は、実施例における第1冷媒供給管31T及び第2冷媒供給管31Sの形状を説明するための横断面図である。
図7は、実施例における第1冷媒供給管31T及び第2冷媒供給管31Sの接続構造を示す縦断面図である。
【0035】
図4、
図5及び
図6に示すように、第1冷媒供給管31Tは、ボトムシェル10cの底部10eから圧縮部12まで圧縮部12の上下方向(回転軸15の軸方向)に沿って直線状に延ばされた直管部32Tと、直管部32Tの下端から上方に向かって略U字状に折り曲げられた曲管部33Tと、を有する。第1冷媒供給管31Tの曲管部33Tは、直管部32Tの長手方向に沿う平面と同一平面上で曲げられている(
図5及び
図6参照)。第1冷媒供給管31Tの直管部32Tの上端部32Taは、下シリンダ121Sの上接続路147に接続されている。第1冷媒供給管31Tの曲管部33Tの上端33Taは、アキュムレータシェル26の内部に配置されたアキュムレータ吸入管27の下端27aよりも上方へ延ばされており、アキュムレータシェル26の内部に開口している。
【0036】
同様に、第2冷媒供給管31Sは、ボトムシェル10cの底部10eから圧縮部12まで圧縮部12の上下方向に沿って直線状に延ばされた直管部32Sと、直管部32Sの下端から上方に向かって略U字状に折り曲げられた曲管部33Sと、を有する。第2冷媒供給管31Sの曲管部33Sは、直管部32Sの長手方向に沿う平面からこの平面と平行な別の平面上に向かうように曲げられているとともに、この別の平面上で上方に向かって曲げられている(
図5及び
図6参照)。第2冷媒供給管31Sの直管部32Sの上端部32Saは、下端板160Sの下接続路148に接続されている。第2冷媒供給管31Sの曲管部33Sの上端33Saは、アキュムレータシェル26の内部に配置されたアキュムレータ吸入管27の下端27aよりも上方へ延ばされており、アキュムレータシェル26の内部に開口している。
【0037】
第1冷媒供給管31Tと第2冷媒供給管31Sとは、ロータリ圧縮機1の上下方向(回転軸15の軸方向)において、第1冷媒供給管31Tの曲管部33Tの上端33Taと、第2冷媒供給管31Sの曲管部33Sの上端33Saとが、同じ高さに位置している。これにより、2つの冷媒供給管31T、31Sのうち、開口端の高さが低い方の冷媒供給管に多量の液体冷媒が流れ込んでしまうのを防止できる。また、第1冷媒供給管31Tの曲管部33Tの上端33Taと、第2冷媒供給管31Sの曲管部33Sの上端33Saとが、アキュムレータ吸入管27の下端27aよりも上方に延ばされていることにより、アキュムレータ吸入管27からアキュムレータ容器25内に流れ込んできた液体冷媒が第1冷媒供給管31Tや第2冷媒供給管31Sに直接流入してしまうことを防止できる。
【0038】
第1冷媒供給管31Tの直管部32Tと、第2冷媒供給管31Sの直管部32Sは、
図4及び
図6に示すように、アキュムレータシェル26の径方向に隣り合って配置されている。言い換えると、第1冷媒供給管31Tの直管部32Tと、第2冷媒供給管31Sの直管部32Sは、回転軸15に直交する方向に並んで配置されている。
【0039】
第2冷媒供給管31Sの曲管部33Sは、
図5及び
図6に示すように、直管部32Sの下端から、第1冷媒供給管31Tの曲管部33Tから離れるように曲げられると共に、第1冷媒供給管31Tの曲管部33Tと平行に延ばされている。このため、
図6に示すように、圧縮部12の上下方向(回転軸15の軸方向)から見たとき、第1冷媒供給管31Tの曲管部33Tと第2冷媒供給管31Sの曲管部33Sが並ぶ方向は、第1冷媒供給管31Tの直管部32Tと第2冷媒供給管31Sの直管部32Sが並ぶ方向と直交する。上述のように第2冷媒供給管31Sが曲げられることで、第1冷媒供給管31Tの全長と第2冷媒供給管31Sの全長がほぼ等しく形成されている。
【0040】
また、第1冷媒供給管31Tの直管部32Tは、下端板160Sを貫通せずに下端板160Sの外側に配置されている。このため、第1冷媒供給管31Tが通る貫通穴を形成するための張り出し部を下端板160Sに形成することで圧縮部12が圧縮機本体容器10の径方向に大型化することを防げる。加えて、下端板160Sに張り出し部を形成することに伴う材料コストの増加を抑え、貫通穴を下端板160Sに加工する工程を省けるので、圧縮部12の製造コストの増加を抑えられる。
【0041】
下シリンダ121Sの上接続路147には、
図7に示すように、上接続路147の内周と第1冷媒供給管31Tの外周との間を封止する第1封止部材34Tが設けられている。下端板160Sの下接続路148には、下接続路148の内周と第2冷媒供給管31Sの外周との間を封止する第2封止部材34Sが設けられている。第1封止部材34T及び第2封止部材34Sとしては、例えば、樹脂材料または金属材料によって形成されたOリングが用いられる。
【0042】
また、本実施例では、上述のように第1冷媒供給管31Tが下端板160Sの外側に配置され、第1冷媒供給管31Tの上端部32Taが接続される上接続路147と、第2冷媒供給管31Sの上端部32Saが接続される下接続路148が、圧縮部12の上下方向に対して位置を異ならせて配置されている。これにより、例えば、上接続路147と下接続路148を下端板160Sの径方向に並べて配置した場合のように、第1封止部材34T及び第2封止部材34Sが下端板160Sの径方向に並ぶことに伴う下端板160Sの大型化、それに伴う圧縮部12の大型化を防げる。
【0043】
第1冷媒供給管31Tは、ボトムシェル10cの底部10eの貫通穴10fに通されて、アキュムレータシェル26の内部に位置する、ボトムシェル10cの底部10eの下面側から貫通穴10fに溶接部Wによって接合されている。同様に、第2冷媒供給管31Sは、ボトムシェル10cの底部10eの貫通穴10fに通されて、アキュムレータシェル26の内部に位置する、ボトムシェル10cの底部10eの下面側から貫通穴10fに溶接部Wによって接合されている。
【0044】
図3に示すように、圧縮部12には、第1冷媒供給管31Tから上シリンダ121Tの上吸入室131Tに気体冷媒を供給する第1冷媒供給経路143Tが形成されている。また、圧縮部12には、第2冷媒供給管31Sから下シリンダ121Sの下吸入室131Sに気体冷媒を供給する第2冷媒供給経路143Sが形成されている。このように圧縮部12は、互いに独立した第1冷媒供給経路143Tと第2冷媒供給経路143Sを有する。
【0045】
第1冷媒供給経路143Tは、上シリンダ121Tに形成された上圧縮部吸入路144と、中間仕切板140に形成された連通路145と、下シリンダ121Sに形成された上接続路147と、を有する。第2冷媒供給経路143Sは、下シリンダ121Sに形成された下圧縮部吸入路146と、下端板160Sに形成された下接続路148と、を有する。
【0046】
また、第1冷媒供給経路143Tは、下シリンダ121Sの上接続路147から上シリンダ121Tの上圧縮部吸入路144まで圧縮部12の上下方向に沿って形成された第1直線経路143aを含んでいる。第2冷媒供給経路143Sは、下端板160Sの下接続路148から下シリンダ121Sの下圧縮部吸入路146まで圧縮部12の上下方向に沿って形成された第2直線経路143bを含んでいる。これにより、第1冷媒供給経路143T及び第2冷媒供給経路143Sを簡素に形成できるので、第1冷媒供給経路143T及び第2冷媒供給経路143Sの加工性を高めると共に、第1冷媒供給経路143T及び第2冷媒供給経路143Sを有する圧縮部12の径方向への小型化を図れる。また、圧縮部12において、第1直線経路143aと第2直線経路143bは、回転軸15に直交する方向に並んで配置されている。
【0047】
図8Aは、実施例における上シリンダ121Tを上方から見た平面図である。
図8Bは、実施例における上シリンダ121Tを下方から見た平面図である。
図3及び
図8A、8Bに示すように、上シリンダ121Tの上圧縮部吸入路144は、中間仕切板140に接する上シリンダ121Tの下端面121Tbに開口する溝状に形成されている。上圧縮部吸入路144は、上吸入室131Tに接続される第1流路144aと、中間仕切板140の連通路145に接続される第2流路144bと、を有する。第1流路144aは、第2流路144bから上シリンダ121Tの内周面まで、上シリンダ121Tの径方向に沿って延ばされている。
【0048】
図9Aは、実施例における下シリンダ121Sを上方から見た平面図である。
図9Bは、実施例における下シリンダ121Sを下方から見た平面図である。
図3及び
図9A、9Bに示すように、下シリンダ121Sの上接続路147は、張り出し部122Sに設けられており、下シリンダ121Sの厚み方向(圧縮部12の上下方向)に下シリンダ121Sを貫通して形成されている。下シリンダ121Sの下圧縮部吸入路146は、下吸入室131Sに接続される第1流路146aと、下端板160Sの下接続路148に接続される第2流路146bと、を有する。
【0049】
下圧縮部吸入路146の第1流路146a及び第2流路146bは、下端板160Sに接する下シリンダ121TS上端面121Saに開口する溝状に形成されている。第1流路146aは、第2流路146bから下シリンダ121Sの内周面まで、下シリンダ121Sの径方向に沿って延ばされている。
【0050】
また、下シリンダ121Sにおいて、上接続路147と下圧縮部吸入路146は、回転軸15に直交する方向、すなわち下シリンダ121Sの径方向に並んで配置されており、上接続路147が、下圧縮部吸入路146に対して下シリンダ121Sの径方向の外側に設けられている。これにより、回転軸15の軸方向から圧縮部12を見たときに、上圧縮部吸入路144と下圧縮部吸入路146を重なるように配置することができる。言い換えると、上シリンダ121Tの内周面の周方向(回転軸15の周方向)に対する上圧縮部吸入路144の位置と、下シリンダ121Sの内周面の周方向(回転軸15の周方向)に対する下圧縮部吸入路146の位置が同一となるように、上圧縮部吸入路144と下圧縮部吸入路146が形成されている。このように、回転軸15の周方向での上圧縮部吸入路144と下圧縮部吸入路146の各位置を揃えて配置することにより、上シリンダ121T及び下シリンダ121Sの各内周面の周方向において気体冷媒の吸入を開始及び終了するときに上ピストン125T及び下ピストン125Sとが位置する回転角度を、上吸入室131Tと下吸入室131Sとで揃えることができる。
【0051】
図10は、実施例における中間仕切板140を上方から見た平面図である。
図3に示すように、中間仕切板140は、上シリンダ121Tに接する上端面140aと、下シリンダ121Sに接する下端面140bと、を有する。
図3及び
図10に示すように、中間仕切板140は、円形状の外周の一部がこの外周から張り出した張り出し部141を有しており、張り出し部141に、連通路145が中間仕切板140の厚み方向に貫通して形成されている。
【0052】
中間仕切板140の上端面140aは、上シリンダ121Tに接することで上圧縮部吸入路144における第1流路144aの下側の流路壁を形成している。
【0053】
図11は、実施例における下端板160Sを下方から見た平面図である。
図3及び
図11に示すように、下端板160Sの上端面160Saは、下シリンダ121Sに接することで下圧縮部吸入路146における第1流路146aの下側の流路壁を形成している。
【0054】
図12は、実施例における下端板カバー170Sを下方から見た平面図である。
図3及び
図12に示すように、下端板カバー170Sの外周部には、下端板160Sに接続された第2冷媒供給管31Sとの干渉を避けるためのU字状の切り欠き部171が形成されている。したがって、第2冷媒供給管31Sが圧縮部12に接続される際、第2冷媒供給管31Sは切り欠き部171内を通って下端板160Sの下接続路148に接続される。
【0055】
上述したように、第1冷媒供給経路143Tを形成する上圧縮部吸入路144、連通路145、上接続路147(以下、各経路とも称する。)は、各張り出し部122T、141、122Sにそれぞれ形成されている。これにより、各張り出し部122T、141、122Sを利用して各経路の流路断面積を大きく形成することができる。その結果、第1冷媒供給経路143Tを流れる気体冷媒の流動抵抗を低減して気体冷媒の圧縮効率を高めつつ、各経路が形成される部分の機械的強度を各張り出し部122T、141、122Sによって適正に確保することができる。
【0056】
また、上述した実施例では、
図7に示すように、第1封止部材34Tを用いて第1冷媒供給管31Tの上端部32Taと上接続路147との接続部分が封止され、第2封止部材34Sを用いて第2冷媒供給管31Sの上端部32Saと下接続路148との接続部分が封止されたが、第1封止部材34T及び第2封止部材34Sを用いる構造に限定されない。
図13は、実施例における第1冷媒供給管31T及び第2冷媒供給管31Sの接続構造の他の例を示す縦断面図である。
【0057】
図13に示すように、第1冷媒供給管31Tの上端部32Taは、外径が徐々に縮径するテーパ状に形成されている。下シリンダ121Sの上接続路147は、内径が徐々に縮径するテーパ状に形成されている。第1冷媒供給管31Tの上端部32Taは、上接続路147に圧入されことで接続されている。同様に、第2冷媒供給管31Sの上端部32Saは、外径が徐々に縮径するテーパ状に形成されている。下端板160Sの下接続路148は、内径が徐々に縮径するテーパ状に形成されている。第2冷媒供給管31Sの上端部32Saは、下接続路148に圧入されことで接続されている。このように上接続路147に第1冷媒供給管31Tを圧入することにより、上接続路147の内周と第1冷媒供給管31Tの外周との間が密閉されるので、第1封止部材34Tを用いることや、上接続路147の内周面に第1封止部材34Tを固定する溝を加工することを省ける。このことは、下接続路148に第2冷媒供給管31Sを圧入することにおいても同様である。
【0058】
(ロータリ圧縮機の製造方法)
以上のように構成されたロータリ圧縮機1の製造方法において、アキュムレータシェル26の内部に冷媒供給管31を組み付ける工程を説明する。
図14は、実施例のロータリ圧縮機1の製造方法を説明するための縦断面図である。
図15は、実施例のロータリ圧縮機1の製造方法の他の例を説明するための縦断面図である。
【0059】
図14に示すように、メインシェル10aの内部にモータ11及び圧縮部12を組み付けると共に、ボトムシェル10cの底部10eを貫通して接合した第1冷媒供給管31Tの上端部32Taを圧縮部12の上接続路147に接続し、第2冷媒供給管31Sの上端部32Saを圧縮部12の下接続路148に接続し、ボトムシェル10cの開口側10dをメインシェル10aに接合することで中間体を製造する。続いて、圧縮部12に接続された第1冷媒供給管31T及び第2冷媒供給管31Sが貫通して設けられると共にメインシェル10aに接合されたボトムシェル10cに対して、アキュムレータシェル26の開口側26aを溶接により接合する。なお、アキュムレータ吸入管27は、アキュムレータシェル26をボトムシェル10cに接合した後に組付けられてもよい。
【0060】
または、
図15に示すように、底部10eを貫通して第1冷媒供給管31T及び第2冷媒供給管31Sを接合したボトムシェル10cに、アキュムレータシェル26の開口側26aを溶接により接合することで中間体を製造する。また、メインシェル10aの内部にモータ11及び圧縮部12を組み付けることで別の中間体を製造する。そして、アキュムレータシェル26が接合されたボトムシェル10cを貫通して設けられた第1冷媒供給管31Tの上端部32Taを圧縮部12の上接続路147に接続し、第2冷媒供給管31Sの上端部32Saを圧縮部12の下接続路148に接続すると共に、メインシェル10aに対してボトムシェル10cの開口側10dを溶接により接合する。
【0061】
(実施例の効果)
上述したように実施例のロータリ圧縮機1におけるアキュムレータシェル26の内部には、アキュムレータシェル26から上シリンダ121Tへ気体冷媒を供給する第1冷媒供給管31Tと、アキュムレータシェル26から下シリンダ121Sへ気体冷媒を供給する第2冷媒供給管31Sとがそれぞれ設けられており、第1冷媒供給管31T及び第2冷媒供給管31Sが、アキュムレータシェル26の内部から圧縮機本体容器10のボトムシェル10cを貫通して圧縮部12に接続されている。圧縮部12には、第1冷媒供給管31Tから上シリンダ121Tの上吸入室131Tに気体冷媒を供給する第1冷媒供給経路143Tと、第2冷媒供給管31Sから下シリンダ121Sの下吸入室131Sに冷媒を供給する第2冷媒供給経路143Sとが形成されており、第1冷媒供給経路143Tに第1冷媒供給管31Tが接続され、第2冷媒供給経路143Sに第2冷媒供給管31Sが接続される。このようにアキュムレータシェル26の内部から第1冷媒供給管31T及び第2冷媒供給管31Sを通って、圧縮機本体容器10の内部から圧縮部12へ気体冷媒が供給されることで、第1冷媒供給管31T及び第2冷媒供給管31Sが圧縮機本体容器10の外部に配置されないので、圧縮機本体容器10の径方向に対する小型化を図ることができる。
【0062】
また、実施例のロータリ圧縮機1の圧縮部12において、第1冷媒供給経路143Tが、下シリンダ121Sの上接続路147から上シリンダ121Tの上圧縮部吸入路144まで圧縮部12の上下方向に沿って形成された第1直線経路143aを含み、第2冷媒供給経路143Sが、下端板160Sの下接続路148から下シリンダ121Sの下圧縮部吸入路146まで圧縮部12の上下方向に沿って形成された第2直線経路143bを含む。これにより、第1冷媒供給経路143T及び第2冷媒供給経路143Sの簡素化を簡素化し、第1冷媒供給経路143T及び第2冷媒供給経路143Sの加工性を高めると共に、第1冷媒供給経路143T及び第2冷媒供給経路143Sを有する圧縮部12の小型化を図れる。
【0063】
また、実施例のロータリ圧縮機1における第1冷媒供給管31T及び第2冷媒供給管31Sは、ボトムシェル10cから圧縮部12まで圧縮部12の上下方向に沿って直線状に延ばされている。これにより、圧縮機本体容器10の内部における第1冷媒供給管31T及び第2冷媒供給管31Sの引き回しを容易にし、第1冷媒供給管31T及び第2冷媒供給管31Sを圧縮部12に接続する作業性を高められる。
【0064】
また、実施例のロータリ圧縮機1の圧縮部12における第1冷媒供給経路143Tは、上シリンダ121Tの張り出し部122T、中間仕切板140の張り出し部141、下シリンダ121Sの張り出し部122Sに形成されている。これにより、第1冷媒供給経路143Tの各経路が形成される部分の機械的強度を適正に確保されるので、各経路の流路断面積を大きく形成することが可能になり、第1冷媒供給経路143Tの流動抵抗を低減し、気体冷媒の圧縮効率を高められる。
【0065】
また、実施例における圧縮部12の下シリンダ121Sには、第1冷媒供給経路143Tの上接続路147と第2冷媒供給経路143Sの下圧縮部吸入路146が、モータ11の回転軸15に直交する方向に並んで配置されている。これにより、回転軸15の軸方向から圧縮部12を見たときに、上圧縮部吸入路144と下圧縮部吸入路146を重なるように配置することができる。
【0066】
また、実施例のロータリ圧縮機1は、モータ11の回転軸15の軸方向から圧縮部12を見たときに、上圧縮部吸入路144と下圧縮部吸入路146は重なるように配置されている。これにより、上シリンダ121Tの内周面の周方向に対する上圧縮部吸入路144の位置と、下シリンダ121Sの内周面の周方向に対する下圧縮部吸入路146の位置が同一となり、上シリンダ121T及び下シリンダ121Sの各内周面の周方向において気体冷媒の吸入を開始及び終了するときに上ピストン125T及び下ピストン125Sとが位置する回転角度を、上吸入室131Tと下吸入室131Sとで揃えることができる。
【0067】
また、実施例のロータリ圧縮機1における第1冷媒供給管31Tは、下端板160Sの外側に配置されている。これにより、第1冷媒供給管31Tが通る貫通穴を形成することで圧縮部12が圧縮機本体容器10の径方向に大型化することを防げる。加えて、下端板160Sに張り出し部を形成することに伴う材料コストの増加を抑え、貫通穴を下端板160Sに加工する工程を省けるので、圧縮部12の製造コストの増加を抑えられる。