(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151336
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】スピンドルモータ及びハードディスク装置
(51)【国際特許分類】
H02K 5/167 20060101AFI20231005BHJP
G11B 33/12 20060101ALI20231005BHJP
G11B 19/20 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H02K5/167 A
G11B33/12 313C
G11B19/20 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060904
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 昭彦
【テーマコード(参考)】
5H605
【Fターム(参考)】
5H605AA12
5H605BB05
5H605BB10
5H605BB14
5H605CC04
5H605EB06
5H605EB10
5H605GG01
(57)【要約】
【課題】電気接続を安定させることがする。
【解決手段】スピンドルモータは、貫通孔が形成されたベースプレートを含むベース部と、略環状体の形状を有し、軸方向に延在する軸受機構と、を備える。前記軸受機構は、可動部と固定部とを備える。前記軸受機構の固定部は、前記軸方向における一端側の端面と、外周面とを有し、前記固定部は、接着剤を介して、前記貫通孔に嵌挿され、前記一端側の端面の一部は、前記ベース部の一部と、軸方向において直接接する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔が形成されたベースプレートを含むベース部と、
略環状体の形状を有し、軸方向に延在する軸受機構と、
を備え、
前記軸受機構は、可動部と固定部とを備え、
前記軸受機構の固定部は、前記軸方向における一端側の端面と、外周面とを有し、
前記固定部は、接着剤を介して、前記貫通孔に嵌挿され、
前記一端側の端面の一部は、前記ベース部の一部と、軸方向において直接接する、
スピンドルモータ。
【請求項2】
前記外周面の一部は、接着剤を介して、前記貫通孔の内周面に接着され、
軸方向において、前記固定部の一端側の端面の一部と、前記ベース部の一部との間には、全周に亘って接着剤が配置されない、
請求項1に記載のスピンドルモータ。
【請求項3】
前記貫通孔の内周面は、径方向外側に向かって形成される環状の溝を備え、
前記環状の溝は、径方向において、前記固定部の外周面と対向する、
請求項1又は2に記載のスピンドルモータ。
【請求項4】
前記固定部の外周面は、径方向内側に向かって形成される切り欠きを備え、
前記切り欠きは、径方向において、前記貫通孔の内周面と対向する、
請求項1乃至3のいずれか1つに記載のスピンドルモータ。
【請求項5】
前記固定部は、シャフトと、前記一端側の端面及び前記外周面を備えるカップ部とを備え、
前記カップ部の一端側の端面の一部が、前記ベースプレートと電気的に接続される、
請求項1乃至4のいずれか1つに記載のスピンドルモータ。
【請求項6】
前記可動部は、シャフトを備え、
前記固定部は、前記シャフトの径方向における外側に位置し、前記一端側の端面及び前記外周面を備え、
前記一端側の端面の一部が、前記ベースプレートと電気的に接続される、
請求項1乃至4のいずれか1つに記載のスピンドルモータ。
【請求項7】
前記ベースプレートは、前記貫通孔の内周面よりも径方向において内側に突出するフランジ部を備え、
前記フランジ部は、前記固定部の一端側の端面の一部と、軸方向において直接接する前記ベース部の一部を含む、
請求項1乃至6のいずれか1つに記載のスピンドルモータ。
【請求項8】
前記フランジ部は、軸方向において切り欠かれた環状の溝を備える、
請求項7に記載のスピンドルモータ。
【請求項9】
前記ベース部は、前記固定部及び前記ベースプレートと電気的に接続される環状部材をさらに備え、
前記環状部材は、前記固定部の一端側の端面の一部と、軸方向において直接接する前記ベース部の一部を含み、
前記環状部材は、径方向において、前記貫通孔の内周面に圧入される、
請求項1乃至6のいずれか1つに記載のスピンドルモータ。
【請求項10】
前記環状部材は、径方向において、前記貫通孔の内周面に接する角部を備える多角形状の部材である、
請求項9に記載のスピンドルモータ。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1つに記載のスピンドルモータを備えた、ハードディスク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピンドルモータ及びハードディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク装置等においては、ディスクが帯電することで読み書きエラー等が生じる場合がある。そこで、ハードディスク装置等に用いられるスピンドルモータにおいて、ディスク等の回転部分に生じた電荷を、ベース部材に逃す技術が知られている。例えば、導電性接着剤を用いて、スリーブとベース部材とを接着する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-268264号公報
【特許文献2】特開2013-133941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
導電性接着剤を用いた場合、塗布状態や温度変化等により、電気抵抗が増大し、又は電気接続が切断される場合がある。
【0005】
一つの側面では、電気接続を安定させることができるスピンドルモータ及びハードディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの態様において、スピンドルモータは、貫通孔が形成されたベースプレートを含むベース部と、略環状体の形状を有し、軸方向に延在する軸受機構と、を備える。前記軸受機構は、可動部と固定部とを備える。前記軸受機構の固定部は、前記軸方向における一端側の端面と、外周面とを有し、前記固定部は、接着剤を介して、前記貫通孔に嵌挿され、前記一端側の端面の一部は、前記ベース部の一部と、軸方向において直接接する。
【0007】
一つの態様によれば、電気接続を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、ハードディスク装置の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態におけるスピンドルモータの一例を示す断面図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態におけるスピンドルモータの一例を示す拡大断面図である。
【
図4】
図4は、第1の変形例におけるスピンドルモータの一例を示す拡大断面図である。
【
図5】
図5は、第2の変形例におけるスピンドルモータの一例を示す拡大断面図である。
【
図6】
図6は、第3の変形例におけるスピンドルモータの一例を示す拡大断面図である。
【
図7】
図7は、第4の変形例におけるスピンドルモータの一例を示す断面図である。
【
図8】
図8は、第4の変形例におけるスピンドルモータの一例を示す拡大断面図である。
【
図9】
図9は、第5の変形例におけるスピンドルモータの一例を示す断面図である。
【
図10】
図10は、第2の実施形態におけるスピンドルモータの一例を示す断面図である。
【
図11】
図11は、第2の実施形態におけるスピンドルモータの一例を示す拡大断面図である。
【
図12】
図12は、第2の実施形態におけるスピンドルモータの一例を示す拡大底面図である。
【
図13】
図13は、第6の変形例におけるスピンドルモータの一例を示す拡大底面図である。
【
図14】
図14は、第7の変形例におけるスピンドルモータの一例を示す拡大底面図である。
【
図15】
図15は、第8の変形例におけるスピンドルモータの一例を示す拡大底面図である。
【
図16】
図16は、第3の実施形態におけるスピンドルモータの一例を示す断面図である。
【
図17】
図17は、第3の実施形態におけるスピンドルモータの一例を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願の開示するスピンドルモータ及びハードディスク装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面における各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。各図面において、説明を分かりやすくするために、
図2に示すシャフト510の中心軸に平行な方向を「軸方向」といい、シャフト510の中心軸に垂直な方向を「径方向」という場合がある。また、
図1における軸方向の上方(シャフト510の上方の部分519が位置する側)を「軸方向の一方側」といい、
図1における軸方向の下方(スリーブ520の第1凹部529が開口する側)を「軸方向の他方側」という場合がある。
【0010】
[第1の実施形態]
図1は、ハードディスク装置の一例を示す斜視図である。
図2は、第1の実施形態におけるスピンドルモータの一例を示す断面図である。
図2には、
図1に示すスピンドルモータ11を、シャフト510の中心軸を含む面で切断した断面の状態が示されている。
【0011】
図1に示すように、ハードディスク装置100は、ベースプレート400を含むスピンドルモータ11を備える。ベースプレート400は、例えば、アルミダイキャストにより形成される。ベースプレート400の側壁401と底板405とに囲まれた部分には、スピンドルモータ11により回転可能に支持される磁気ディスク24が配置される。磁気ディスク24の読み書きは、アクチュエータ28により駆動するヘッド29により行われる。なお、第1の実施形態におけるベースプレート400は、ベース部に含まれる。
【0012】
図2に示すように、スピンドルモータ11の軸受機構50は、
図1に示すベースプレート400に形成された貫通孔410に配置される。貫通孔410の周縁には、全周にわたり軸方向上方に突設するボス部409が形成される。貫通孔410は、軸方向において、ボス部409の上端から、底板405まで貫通するように形成される。
【0013】
軸受機構50は、略環状体の形状を有し、固定部と、固定部に対して相対的に回転する可動部と、固定部と静止部との間に配置される軸受とを備える。第1の実施形態において、軸受機構50の固定部はスリーブ520を備え、可動部は、シャフト510を備える。第1の実施形態における軸受は、例えばスラストワッシャー530を含む。
図2に示すスピンドルモータ11は、シャフト510がスリーブ520に対して相対的に回転する、軸回転型のスピンドルモータである。軸受機構50は、スリーブ520の外周面523が、貫通孔410の内周面411に接するように、ベースプレート400に挿通される。
【0014】
スリーブ520の中央にはシャフト挿通孔521が形成され、当該シャフト挿通孔521にシャフト510が挿通される。すなわち、スリーブ520は、シャフト510に対して、径方向における外側に位置する。スリーブ520の軸方向における下端側には、下方に向けて開口する第1凹部529が形成されている。第1凹部529には、カウンタープレート25が嵌合される。カウンタープレート25は、溶着や接着等により、スリーブ520の軸方向下端側の第1凹部529に固定され、スリーブ520の下端を気密的に閉塞する。
【0015】
ベースプレート400の底板405には、フランジ部420が形成される。フランジ部420は、
図2に示すように、ベースプレート400の貫通孔410の内周面411よりも、径方向における内側に突出する。また、フランジ部420の上面422は、
図3に示すように、軸方向において、スリーブ520の軸方向における端面522と対向する。
図3は、第1の実施形態におけるスピンドルモータの一例を示す拡大断面図である。
図3は、
図2の枠F1に示す部分を拡大した図である。
【0016】
ベースプレート400のボス部409の外周側には、ステータ21が固定される。ステータ21は、環状に加工された電磁鋼板を軸方向で複数積層した構造を有するステータコア211と、ステータコア211に巻回された複数のコイル212とを有する。ステータ21は、コイル212に与えられた駆動電流に応じて、磁束を発生させる機能を有する。コイル212は、例えば配線218及び半田219を介して、電源(不図示)に接続される。
【0017】
シャフト510は、ロータハブ23を支持した状態で、固定部に対して相対回転する部材である。シャフト510の下端は、カウンタープレート25により回転可能に支持される。
【0018】
ロータハブ23は略有底円筒形状に形成され、内側円筒壁部233と円板部231と外側円筒壁部232とを含んで構成される。第1の実施形態では、内側円筒壁部233と円板部231と外側円筒壁部232とを一体に形成したロータハブ23を例示しているが、内側円筒壁部233及び円板部231の中央部分と、円板部231の内側円筒壁部233よりも外側の部分及び外側円筒壁部232とを別体として形成してもよいし、複数の部材の組み合わせによりロータハブ23を形成してもよい。
【0019】
例えば、ハードディスク装置の場合、円板部231及び外側円筒壁部232の外側に磁気ディスク24が配置される。なお、
図2では、磁気ディスク24が一枚だけ図示されているが、複数の磁気ディスク24が、軸方向に離間して積層されていてもよい。また、ロータハブ23は、アルミニウム合金で構成してもよい。
【0020】
内側円筒壁部233は、略円筒形状の形状を有し、スピンドルモータ11の回転軸と同軸に配置される。内側円筒壁部233は、円板部231における外側円筒壁部232の基端位置よりも径方向内方の位置を基端として、軸方向下方に延在する。
【0021】
円板部231は、径方向外側に延在した略円板形状を有する。円板部231の中央には、軸方向に貫通する軸孔234が形成され、この軸孔234に、シャフト510の軸方向における上方の部分519が貫通する。円板部231の下面は、スリーブ520における軸方向上側の端面528に対向する。
【0022】
ロータマグネット221は、略円環形状に形成され、シャフト510の中心軸と同軸に、外側円筒壁部232の内周側に配置されている。ロータマグネット221は、ロータヨーク222を介して、ロータハブ23に支持される。ロータマグネット221の内周面は、ステータ21と、径方向(軸方向に垂直な方向)に隙間を介して対向する。また、ロータマグネット221の内周面は、N極とS極とが交互に配列された磁極面となっている。
【0023】
スリーブ520の内周面と、シャフト510の外周面との少なくとも一方には、
図2に例示されるように、スラストワッシャー530が配置される。第1の実施形態において、スラストワッシャー530は、例えば、スリーブ520に形成された第2凹部525に配置される。
【0024】
スリーブ520の外周面523の一部は、ベースプレート400の貫通孔410の内周面411と、接着剤G1により固定される。スリーブ520は、例えば貫通孔410の内周面411に接着剤G1が塗布された状態で、軸方向における正方向側(図中における上側)から挿通されることにより、ベースプレート400の貫通孔410に嵌挿される。第1の実施形態において、接着剤G1は、例えば内周面411の軸方向における上側に、周方向において全体にわたって塗布される。なお、かかる接着剤G1は、導電性接着剤である必要はない。
【0025】
また、スリーブ520の軸方向における他方側(軸方向負方向側)の端面522は、ベースプレート400の一部と直接接する。第1の実施形態において、端面522は、ベースプレート400のフランジ部420の上面422と、接着剤を介することなく接する。なお、端面522は、一端側の端面の一部の一例であり、上面422は、ベース部の一部の一例である。
【0026】
また、ベースプレート400は、例えばエポキシ系の電着塗装膜M1により絶縁される。しかし、第1の実施形態において、フランジ部420の上面422には電着塗装膜M1が形成されない。これにより、上面422は、直接接するスリーブ520の端面522との間で、電気的接続を確立させることができる。
【0027】
かかる構成によれば、導電性接着剤を用いる必要がないので、温度変化や高湿度等により、導電接続が不安定になることが抑制される。また、スリーブ520の外周面523と貫通孔410の内周面411との間に、導電性を有しない通常の接着剤G1を用いることができるので、スリーブ520をベースプレート400により安定的に固定することができる。
【0028】
以上説明したように、第1の実施形態におけるスピンドルモータ11は、貫通孔410が形成されたベースプレート400を含むベース部と、略環状体の形状を有し、軸方向に延在する軸受機構50とを備える。軸受機構50は、可動部510と固定部520とを備え、軸受機構50の固定部520は、軸方向における一端側の端面522と、外周面523とを有する。固定部520は、接着剤G1を介して、貫通孔410に嵌挿され、一端側の端面522の一部は、ベース部の一部422と、軸方向において直接接する。かかる構成によれば、導電性接着剤を用いる必要がないので、電気接続を安定させることができる。
【0029】
[変形例]
以上、第1の実施形態における構成について説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、スリーブ520と貫通孔410との間に配置される接着剤G1が、スリーブ520とフランジ部420との間に流れ込むと、導電性が損なわれる場合がある。第1の実施形態において、貫通孔410の内周面411に塗布された接着剤G1は、軸方向における下側に移動する軸受機構50に引き摺られて、軸方向における下側に移動することで、フランジ部420に接しやすくなる。そこで、
図4以下に示すように、軸受機構又は貫通孔が、接着剤の流出を防ぐような構成を備えていてもよい。
【0030】
図4は、第1の変形例におけるスピンドルモータの一例を示す拡大断面図である。なお、以下の各実施形態及び各変形例において、先に説明した図面に示す部位と同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、以下の各実施形態及び各変形例において、接着剤G1及び電着塗装膜M1の図示を省略する場合がある。
図4に示すように、第1の変形例においては、ベースプレート4A0の貫通孔430の内周面431に、径方向における外側に切り欠かれた溝439が形成される。
【0031】
かかる構成においては、軸受機構50を貫通孔430に嵌挿する際に、軸方向の他方側(下方向)に引き摺られて移動する接着剤は、溝439に留まり、スリーブ520の端面522とフランジ部420の上面422との間には移動しない。すなわち、溝439が、接着剤溜まりとなる。これにより、スリーブ520とフランジ部420との電気的な接続が、接着剤の流入により妨げられることを抑制できる。
【0032】
また、かかる溝が形成される場所は、
図4に示すものに限られない。
図5は、第2の変形例におけるスピンドルモータの一例を示す拡大断面図である。
図5に示すように、第2の変形例において、溝449は、ベースプレート4B0の貫通孔410の内周面411ではなく、フランジ部440に形成される。かかる構成においても、溝449が接着剤溜まりとなるので、接着剤がスリーブ520とフランジ部440との電気的な接続を妨げることを抑制できる。
【0033】
さらに、以上説明した溝は、スリーブに形成されていてもよい。
図6は、第3の変形例におけるスピンドルモータの一例を示す拡大断面図である。
図6に示すように、第3の変形例において、スリーブ540の外周面543と端面542との交点付近に、溝549が形成される。かかる構成においても、溝549が接着剤溜まりとなるので、接着剤がスリーブ540とフランジ部420との電気的な接続を妨げることを抑制できる。
【0034】
さらに、溝が形成される場所は、以上の各変形例に示すものに限られず、またスリーブと貫通孔の内周面との両方に形成されていてもよい。
図7は、第4の変形例におけるスピンドルモータの一例を示す断面図である。
図8は、第4の変形例におけるスピンドルモータの一例を示す拡大断面図である。
図8は、
図7の枠F2に示す部分を拡大した図である。
【0035】
図7及び
図8に示すように、第4の変形例におけるスリーブ560には、外周面563と端面562との交点付近にある溝569に加えて、外周面563における軸方向の一方側(上側)に、別の溝568がさらに形成される。また、ベースプレート4D0の貫通孔470の内周面471には、軸方向において溝568と対向する位置に、溝479が形成される。かかる構成によれば、接着剤は、溝568と溝479とが形成する空間と、溝569とに留まるので、接着剤がスリーブ560とフランジ部420との電気的な接続を妨げることをより効果的に抑制できる。
【0036】
また、軸受機構の固定部は、スリーブに加えて、
図9に示すようにスリーブの外周側に位置するケースをさらに備えていてもよい。
図9は、第5の変形例におけるスピンドルモータの一例を示す断面図である。
図9に示すように、第5の変形例における軸受機構5Eの固定部は、スリーブに加えて、ケース580をさらに備える。かかる構成において、ベースプレート4E0の貫通孔450の内周面451には、ケース580の外周面583が対向する。なお、第5の変形例において、スラストワッシャー530は、
図9に示すように、スリーブ560の端面562と軸方向において接し、ケース580の内周面581と径方向において接する。
【0037】
また、第5の変形例において、フランジ部420の上面422には、ケース580の端面582が接する。これにより、軸受機構5Eとベースプレート4E0とが電気的に接続される。なお、第5の変形例においても、
図9に示すように、ベースプレート4E0の貫通孔450の内周面451に、接着剤溜まりとなる溝459が形成されていてもよい。
【0038】
[第2の実施形態]
第1の実施形態において、ハードディスク装置100のベース部は、ベースプレート400のみを含むが、ベース部が、ベースプレート以外の部材をさらに含んでもよい。例えば、
図10に示すように、ベースプレート600とスリーブ520とが、別の環状部材730を介して連結していてもよい。
図10は、第2の実施形態におけるスピンドルモータの一例を示す断面図である。
図10に示すように、第2の実施形態におけるベースプレート600には、第1の実施形態におけるベースプレート400のフランジ部420に相当する部分が形成されない。なお、
図10では、磁気ディスク24の図示を省略している。
【0039】
第2の実施形態において、フランジ部420に相当する部分には、環状部材730が配置される。環状部材730は、導電性の金属により形成される。環状部材730は、例えばベースプレート600と同じアルミダイキャストにより形成されていてもよい。第2の実施形態において、ベース部60は、ベースプレート600と、環状部材730とを含む。
【0040】
図11は、第2の実施形態におけるスピンドルモータの一例を示す拡大断面図である。
図11は、
図10の枠F3に示す部分を拡大した図である。環状部材730は、ベースプレート600に、軸方向における下側から装着される。環状部材730は、例えば、ベースプレート600の貫通孔610に軸受機構50が嵌挿された状態で装着される。
【0041】
この場合において、環状部材730は、
図12に示すように、軸方向において接するスリーブ520に対してではなく、径方向において接するベースプレート600の貫通孔610の内周面61aに対して、すなわち径方向に圧入される。
図12は、第2の実施形態におけるスピンドルモータの一例を示す拡大底面図である。
図12は、スピンドルモータ12のベースプレート600を、底面605側から見た図である。底面605には、
図12に示すように、例えばフレキシブルプリント基板27が配置される。
に示す。
【0042】
かかる構成において、環状部材730は、
図11に示すように、第1の実施形態におけるフランジ部420と同様に、上面732が、スリーブ520の端面522と接する。これにより、環状部材730は、スリーブ520と電気的に接続される。
【0043】
また、第2の実施形態において、ベースプレート600は、
図11に示すように、電着塗装膜M2により絶縁される。しかし、ベースプレート600の貫通孔610の内周面611のうち、環状部材730と径方向において接する部分61aには、電着塗装膜M2が形成されない。これにより、環状部材730とベースプレート600とは電気的に接続される。
【0044】
かかる構成においても、環状部材730に導通するスリーブ520とベースプレート600とを、電気的に接続させることができる。また、第2の実施形態において、環状部材730は、ベースプレート600の貫通孔610の内周面611に圧入されるので、環状部材730からスリーブ520に応力が加わることを抑制できる。
【0045】
なお、第2の実施形態における環状部材は、
図12に示すような略円形状のものに限られず、例えば
図13乃至
図15に示すような多角形状であってもよい。
図13は、第6の変形例におけるスピンドルモータの一例を示す拡大底面図である。
図14は、第7の変形例におけるスピンドルモータの一例を示す拡大底面図である。
図15は、第8の変形例におけるスピンドルモータの一例を示す拡大底面図である。第6乃至第8の変形例は、それぞれ、環状部材が略正方形状、略正六角形状、略正八角形状である場合を示す。
【0046】
図13に示す例において、多角形状の環状部材740の角部746は、貫通孔610の内周面611に、径方向内側から圧入される。これにより、環状部材740とベースプレート600とが電気的に接続される。この場合、スリーブ520の突出部527と、環状部材740の辺745の一部とが、径方向において接するような構成であってもよい。
図14及び
図15に示す各環状部材750及び760の各辺755,765及び各角部756,766についても同様である。
【0047】
以上説明したように、第2の実施形態におけるスピンドルモータ12のベース部60は、固定部520及びベースプレート600と電気的に接続される環状部材730をさらに備える。環状部材730は、固定部520の一端側の端面522の一部と、軸方向において直接接するベース部の一部732を含む。環状部材730は、径方向において、貫通孔610の内周面61aに圧入される。かかる構成によれば、ベースプレートにフランジ部420を形成する場合よりも、容易にベースプレートを加工できる。
【0048】
なお、環状部材730乃至760は、ベースプレート600との間で導通されていれば、例えば隙間嵌めによる接着固定であってもよい。この場合、接着剤を塗布する領域に隙間を偏らせ、ベースプレート600の貫通孔610の内周面611に、接着剤を設けない領域を確保すればよい。
【0049】
また、環状部材730乃至760の内周面の形状は、図示したものに限られず、外周面の形状と異なっていてもよい。例えば、外周面が略円形状である環状部材730の内周面が略多角形状であってもよく、外周面が多角形状の環状部材730乃至760の内周面が、外周面とは異なる多角形状であっても、又は略円形状であってもよい。
【0050】
[第3の実施形態]
第1及び第2の実施形態においては、軸回転型のスピンドルモータについて説明したが、
図16に示すような軸固定型のスピンドルモータにも適用可能である。
図16は、第3の実施形態におけるスピンドルモータの一例を示す断面図である。第3の実施形態において、スピンドルモータ13は、ベースプレート800と、軸受機構90とを備える。
【0051】
図16に示すように、軸受機構90の固定部は、シャフト910及びカップ部930を備える。シャフト910は、軸方向における一方側に先端部918を備える。先端部918の一部は、ロータハブ26のキャップ268により覆われる。この場合において、先端部918と、キャップ268との間には、
図16に示すように所定の間隙が形成される。かかる構成により、ロータハブ26は、シャフト910により、回動可能に支持される。
【0052】
ロータハブ26は略有底円筒形状に形成され、内側円筒壁部263と円板部261と外側円筒壁部262とを含んで構成される。第3の実施形態でも、内側円筒壁部263及び円板部261の中央部分と、円板部261の内側円筒壁部263よりも外側の部分及び外側円筒壁部262とを別体として形成してもよいし、複数の部材の組み合わせによりロータハブ26を形成してもよい。第3の実施形態においても、磁気ディスク24は、円板部261及び外側円筒壁部262の外側に配置される。なお、
図16では、磁気ディスク24の図示を省略している。
【0053】
内側円筒壁部263は、略円筒形状の形状を有し、スピンドルモータ13の回転軸と同軸に配置される。内側円筒壁部263は、円板部261における外側円筒壁部262の基端位置よりも径方向内方の位置を基端として、軸方向下方に延在する。第3の実施形態において、ロータハブ26の内側円筒壁部263は、カップ部930に収容される。この場合において、内側円筒壁部263の軸方向における他方側の端面269は、カップ部930の軸方向における一方側の端面938と接する。ロータマグネット226は、略円環形状に形成され、シャフト510の中心軸と同軸に、外側円筒壁部232の内周側に配置されている。
【0054】
図16に示すように、スピンドルモータ13の軸受機構90は、ベースプレート800に形成された貫通孔810に配置される。貫通孔810の周縁には、全周にわたり軸方向上方に突設するボス部809が形成される。貫通孔810は、軸方向において、ボス部809の上端から、底板805まで貫通するように形成される。
【0055】
カップ部930の中央にはシャフト挿通孔931が形成され、当該シャフト挿通孔931にシャフト910が挿通される。軸受機構90は、
図17に示すように、カップ部930の外周面933が、貫通孔810の内周面811に接するように、ベースプレート800に挿通される。
図17は、第3の実施形態におけるスピンドルモータの一例を示す拡大断面図である。
図17は、
図16の枠F4に示す部分を拡大した図である。
【0056】
図17に示すように、第3の実施形態においても、ベースプレート800の底板805には、貫通孔810の内周面811よりも径方向における内側に突出するフランジ部820が形成される。また、フランジ部820の上面822は、
図17に示すように、軸方向において、カップ部930の軸方向における端面932と対向する。
【0057】
第3の実施形態において、カップ部930の外周面933の一部は、第1の実施形態と同様に、ベースプレート800の貫通孔810の内周面811と、接着剤により固定される。一方、カップ部930の軸方向における他方側(軸方向負方向側)の端面932は、ベースプレート800のフランジ部820の上面822と、接着剤を介することなく接する。これにより、カップ部930とベースプレート800とが電気的に接続される。
【0058】
以上説明したように、第3の実施形態におけるスピンドルモータ13の固定部は、シャフト910と、一端側の端面932及び外周面933を備えるカップ部930とを備える。カップ部930の一端側の端面932の一部が、ベースプレート800と電気的に接続される。かかる構成においても、電気接続を安定させることができる。
【0059】
以上、本発明を実施形態及び各変形例に基づき説明したが、本発明は実施形態及び各変形例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の変更が可能であることも言うまでもない。そのような要旨を逸脱しない範囲での種々の変更を行ったものも本発明の技術的範囲に含まれるものであり、そのことは、当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0060】
例えば、第2の実施形態や第3の実施形態において、貫通孔やスリーブ520、カップ部930に、接着剤溜まりとなる溝が形成されていてもよく、また第3の実施形態に示す軸固定型の構成において、フランジ部820の代わりに環状部材730乃至760を備えていてもよい。なお、
図3に示すフランジ部420の上面422や、
図10に示す貫通孔610の内周面611における部分61aに電着塗装膜が形成された後に、電着塗装膜が削除されるような構成であってもよい。
【符号の説明】
【0061】
100 ハードディスク装置、11,12,13 スピンドルモータ、21 ステータ、221,226 ロータマグネット、222 ロータヨーク、23,26 ロータハブ、268 キャップ、24 磁気ディスク、25 カウンタープレート、28 アクチュエータ、29 ヘッド、 60 ベース部、400,4A0,4B0,4D0,4E0,600,800 ベースプレート、410,430,450,470,610,810 貫通孔、411,431,451,471,581,611,811 内周面、439,449,479,549,568,569 溝、420,440,820 フランジ部、422,442,822 上面、50,5E,90 軸受機構、510,910 シャフト、918 先端部、520,540,560 スリーブ、530 スラストワッシャー、580 ケース、930 カップ部、521,931 シャフト挿通孔、522,542,562,582,932 端面、523,543,563,583,933 外周面、730,740,750,760 環状部材