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特開2023-151340往復回転変換機構及びこれを用いた電動ポンプ並びに内燃エンジン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151340
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】往復回転変換機構及びこれを用いた電動ポンプ並びに内燃エンジン
(51)【国際特許分類】
   F04B 9/04 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
F04B9/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060913
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯野 宏
【テーマコード(参考)】
3H075
【Fターム(参考)】
3H075AA01
3H075AA18
3H075BB03
3H075BB17
3H075CC25
3H075DA01
3H075DA03
3H075DA04
3H075DB03
3H075DB24
(57)【要約】
【課題】摩擦抵抗を低減して変換効率を向上する。
【解決手段】ピストン132の往復と回転部材133の回転とを変換する変換機構150は、ピストン132がシリンダ131に対して回転することを規制する規制機構160を備える。規制機構160は、シリンダ131及びピストン132の一方に配置され、かつ、軸方向D1が長手方向となるように形成された軸方向溝161と、シリンダ131及びピストン132の他方に対して軸方向D1及び回転方向への相対移動を規制されるように配置され、かつ、軸方向溝161により軸方向D1に案内される軸部材153と、軸方向溝161と軸部材153との間に介在するように配置された転動部材162と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
前記シリンダ内を軸方向に往復可能に配置されたピストンと、
前記ピストンの周囲を同軸上に回転可能に配置された回転部材と、
前記ピストンと前記回転部材との間に介在され、前記ピストンの往復と前記回転部材の回転とを変換する変換機構であって、前記ピストン及び前記回転部材の一方に配置され、かつ、前記回転部材の回転方向の全周に亘って前記軸方向に交互に変位した波形状である波形溝と、前記ピストン及び前記回転部材の他方に配置され、かつ、前記波形溝に嵌合して案内されるローラ部と、を有する変換機構と、
前記ピストンが前記シリンダに対して回転することを規制する規制機構と、を備え、
前記規制機構は、
前記シリンダ及び前記ピストンの一方に配置され、かつ、前記軸方向が長手方向となるように形成された軸方向溝と、前記シリンダ及び前記ピストンの他方に対して前記軸方向及び前記回転方向への相対移動を規制されるように配置され、かつ、前記軸方向溝により前記軸方向に案内される軸と、前記軸方向溝と前記軸との間に介在するように配置された転動部材と、を有する、
往復回転変換機構。
【請求項2】
前記波形溝は、前記回転方向の全周に亘って前記軸方向の一方側に面した第1カム面と、前記回転方向の全周に亘って前記軸方向の他方側に面した第2カム面と、を有し、
前記ローラ部は、前記第1カム面に接触して案内される第1ローラと、前記第2カム面に接触して案内される第2ローラと、を有する、
請求項1に記載の往復回転変換機構。
【請求項3】
前記波形溝は、前記回転方向の全周に亘って前記軸方向の一方側に面した第1カム面と、前記回転方向の全周に亘って前記軸方向の他方側に面した第2カム面と、を有し、
前記第1カム面は、前記ピストンの径方向の外径側が内径側よりも前記第2カム面から離隔した勾配を有し、
前記第2カム面は、前記径方向の外径側が内径側よりも前記第1カム面から離隔した勾配を有し、
前記ローラ部は、前記径方向の外径側が内径側よりも大径となる勾配を有する外周面を有する、
請求項1又は2に記載の往復回転変換機構。
【請求項4】
シリンダと、
前記シリンダ内を軸方向に往復可能に配置されたピストンと、
前記ピストンの周囲を同軸上に回転可能に配置された回転部材と、
前記ピストンと前記回転部材との間に介在され、前記ピストンの往復と前記回転部材の回転とを変換する変換機構であって、前記ピストン及び前記回転部材の一方に配置され、かつ、前記回転部材の回転方向の全周に亘って前記軸方向に交互に変位した波形状である波形溝と、前記ピストン及び前記回転部材の他方に配置され、かつ、前記波形溝に嵌合して案内されるローラ部と、を有する変換機構と、
前記ピストンが前記シリンダに対して回転することを規制する規制機構と、を備え、
前記波形溝は、前記回転方向の全周に亘って前記軸方向の一方側に面した第1カム面と、前記回転方向の全周に亘って前記軸方向の他方側に面した第2カム面と、を有し、
前記ローラ部は、前記第1カム面に接触して案内される第1ローラと、前記第2カム面に接触して案内される第2ローラと、を有する、
往復回転変換機構。
【請求項5】
シリンダと、
前記シリンダ内を軸方向に往復可能に配置されたピストンと、
前記ピストンの周囲を同軸上に回転可能に配置された回転部材と、
前記ピストンと前記回転部材との間に介在され、前記ピストンの往復と前記回転部材の回転とを変換する変換機構であって、前記ピストン及び前記回転部材の一方に配置され、かつ、前記回転部材の回転方向の全周に亘って前記軸方向に交互に変位した波形状である波形溝と、前記ピストン及び前記回転部材の他方に配置され、かつ、前記波形溝に嵌合して案内されるローラ部と、を有する変換機構と、
前記ピストンが前記シリンダに対して回転することを規制する規制機構と、を備え、
前記波形溝は、前記回転方向の全周に亘って前記軸方向の一方側に面した第1カム面と、前記回転方向の全周に亘って前記軸方向の他方側に面した第2カム面と、を有し、
前記第1カム面は、前記ピストンの径方向の外径側が内径側よりも前記第2カム面から離隔した勾配を有し、
前記第2カム面は、前記径方向の外径側が内径側よりも前記第1カム面から離隔した勾配を有し、
前記ローラ部は、前記径方向の外径側が内径側よりも大径となる勾配を有する外周面を有する、
往復回転変換機構。
【請求項6】
前記第1カム面と前記第2カム面と前記ローラ部の前記外周面とは、前記波形溝における前記回転方向に沿った部位において前記ローラ部が前記第1カム面及び前記第2カム面に対して外径側及び内径側で滑りを生じない勾配角より小さい勾配角を有する、
請求項5に記載の往復回転変換機構。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の往復回転変換機構と、
前記ピストンの往復動により流体を吸引して加圧して排出するポンプ部と、を備え、
前記回転部材は、電動モータのロータと一体回転する、
電動ポンプ。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の往復回転変換機構と、
前記シリンダにおいて燃料を燃焼することで前記ピストンを押圧して出力を得る燃料燃焼機構と、を備え、
前記回転部材は、外部に駆動力を出力する出力軸である、
内燃エンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この技術は、往復運動と回転運動とを変換する往復回転変換機構と、これを用いた電動ポンプ及び内燃エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動モータの回転をピストンの往復運動に変換して空気を吸引して加圧し、吐出するポンプ装置が普及している。近年では、モータにより回転される略円筒形状の回転部材の内側にピストンを配置し、回転部材の回転軸線方向とピストンの往復方向とを一致させたポンプ装置が開発されている(特許文献1参照)。このポンプ装置では、回転部材の回転をピストンの往復に変換するために、変換機構が用いられている。
【0003】
この変換機構は、回転部材の内周面に形成されたカム溝と、ピストンから径方向に突出して設けられたカムフォロアとを有し、回転部材の回転によりカムフォロアがカム溝に沿ってピストンの往復方向に案内されることで、ピストンを往復させるようにしている。また、この変換機構では、ピストンがシリンダに対して回転しないように、ピストンから径方向に突出したカムフォロアを形成する軸状部材が、シリンダに形成された往復方向を長手方向とする長孔内を往復しつつ、ピストンの回り止めをしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-223513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、ピストンの回り止めの構成に関して、ピストンから径方向に突出した軸状部材がシリンダの長孔に直接設けられているので、軸状部材が往復する際に長孔の内面に摺接して摩擦抵抗が発生する虞がある。回転と往復の変換効率を向上するために、摩擦抵抗を小さくすることが望まれていた。
【0006】
そこで、摩擦抵抗を低減して変換効率を向上可能な往復回転変換機構及びこれを用いた電動ポンプ並びに内燃エンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本往復回転変換機構は、シリンダと、前記シリンダ内を軸方向に往復可能に配置されたピストンと、前記ピストンの周囲を同軸上に回転可能に配置された回転部材と、前記ピストンと前記回転部材との間に介在され、前記ピストンの往復と前記回転部材の回転とを変換する変換機構であって、前記ピストン及び前記回転部材の一方に配置され、かつ、前記回転部材の回転方向の全周に亘って前記軸方向に交互に変位した波形状である波形溝と、前記ピストン及び前記回転部材の他方に配置され、かつ、前記波形溝に嵌合して案内されるローラ部と、を有する変換機構と、前記ピストンが前記シリンダに対して回転することを規制する規制機構と、を備え、前記規制機構は、前記シリンダ及び前記ピストンの一方に配置され、かつ、前記軸方向が長手方向となるように形成された軸方向溝と、前記シリンダ及び前記ピストンの他方に対して前記軸方向及び前記回転方向への相対移動を規制されるように配置され、かつ、前記軸方向溝により前記軸方向に案内される軸と、前記軸方向溝と前記軸との間に介在するように配置された転動部材と、を有する。
【0008】
本往復回転変換機構は、シリンダと、前記シリンダ内を軸方向に往復可能に配置されたピストンと、前記ピストンの周囲を同軸上に回転可能に配置された回転部材と、前記ピストンと前記回転部材との間に介在され、前記ピストンの往復と前記回転部材の回転とを変換する変換機構であって、前記ピストン及び前記回転部材の一方に配置され、かつ、前記回転部材の回転方向の全周に亘って前記軸方向に交互に変位した波形状である波形溝と、前記ピストン及び前記回転部材の他方に配置され、かつ、前記波形溝に嵌合して案内されるローラ部と、を有する変換機構と、前記ピストンが前記シリンダに対して回転することを規制する規制機構と、を備え、前記波形溝は、前記回転方向の全周に亘って前記軸方向の一方側に面した第1カム面と、前記回転方向の全周に亘って前記軸方向の他方側に面した第2カム面と、を有し、前記ローラ部は、前記第1カム面に接触して案内される第1ローラと、前記第2カム面に接触して案内される第2ローラと、を有する。
【0009】
本往復回転変換機構は、シリンダと、前記シリンダ内を軸方向に往復可能に配置されたピストンと、前記ピストンの周囲を同軸上に回転可能に配置された回転部材と、前記ピストンと前記回転部材との間に介在され、前記ピストンの往復と前記回転部材の回転とを変換する変換機構であって、前記ピストン及び前記回転部材の一方に配置され、かつ、前記回転部材の回転方向の全周に亘って前記軸方向に交互に変位した波形状である波形溝と、前記ピストン及び前記回転部材の他方に配置され、かつ、前記波形溝に嵌合して案内されるローラ部と、を有する変換機構と、前記ピストンが前記シリンダに対して回転することを規制する規制機構と、を備え、前記波形溝は、前記回転方向の全周に亘って前記軸方向の一方側に面した第1カム面と、前記回転方向の全周に亘って前記軸方向の他方側に面した第2カム面と、を有し、前記第1カム面は、前記ピストンの径方向の外径側が内径側よりも前記第2カム面から離隔した勾配を有し、前記第2カム面は、前記径方向の外径側が内径側よりも前記第1カム面から離隔した勾配を有し、前記ローラ部は、前記径方向の外径側が内径側よりも大径となる勾配を有する外周面を有する。
【0010】
本電動ポンプは、上記の往復回転変換機構と、前記ピストンの往復動により流体を吸引して加圧して排出するポンプ部と、を備え、前記回転部材は、電動モータのロータと一体回転する。
【0011】
本内燃エンジンは、上記の往復回転変換機構と、 前記シリンダにおいて燃料を燃焼することで前記ピストンを押圧して出力を得る燃料燃焼機構と、を備え、前記回転部材は、外部に駆動力を出力する出力軸である。
【発明の効果】
【0012】
本往復回転変換機構及びこれを用いた電動ポンプ並びに内燃エンジンによると、摩擦抵抗を低減して変換効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a)は第1の実施形態に係る電動ポンプを示す断面図であり、(b)は波形溝を示す展開図である。
図2】第2の実施形態に係る電動ポンプを示す断面図である。
図3】第3の実施形態に係る電動ポンプを示す断面図である。
図4】第4の実施形態に係る内燃エンジンを示す断面図である。
図5】(a)は第4の実施形態に係る内燃エンジンの燃料燃焼機構を示す平面図であり、(b)は切替溝を示す展開図である。
図6】第5の実施形態に係る内燃エンジンを示す断面図である。
図7】第5の実施形態に係る波形溝を示す展開図である。
図8】第6の実施形態に係る内燃エンジンを示す断面図である。
図9】第6の実施形態に係る波形溝を示す展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1の実施形態>
以下、本開示の第1の実施形態を、図1(a),(b)を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、往復回転変換機構130を電動ポンプ100に適用した場合について説明する。まず、電動ポンプ100について、図1(a)を用いて概要を説明する。電動ポンプ100は、電動アキシャルポンプであって、ケース110と、電動モータ120と、往復回転変換機構130と、ポンプ部140とを有している。また、本実施形態では、電動モータ120のロータ123の回転中心と往復回転変換機構130のピストン132の中心線とが一致しており、これを中心線C1とし、この中心線C1に沿った方向を軸方向D1とする。また、説明の便宜上、軸方向D1は、上方向Duと下方向Ddとを向いているものとする。尚、軸方向D1は、上下方向を向いていることには限られないのは勿論である。また、ピストンの中心線C1に直交する方向を、ピストン132の径方向D2とする。また、ここでの電動ポンプ100は、例えば、バキュームポンプ、ウォータポンプ、エアコンプレッサなどに適用することができるものである。
【0015】
電動モータ120は、ケース110に固定されたステータ121と、ステータ121の内側で回転可能に設けられたロータ123とを有している。ステータ121は、ケース110に取り付けられたマグネット122を有している。ロータ123は、中心線C1を中心に回転可能に設けられた円筒状のロータコア124と、ロータコア124に巻回されたコイル125と、を有している。ロータコア124は、軸受により回転可能にケース110に支持されている。また、電動モータ120には、外部電源101に接続されて、コイル125への通電を切り替えるブラシ126が設けられている。
【0016】
往復回転変換機構130は、ケース110に固定されたシリンダ131と、シリンダ131内(シリンダ内)を軸方向D1に往復可能に配置されたピストン132と、ロータ123により回転される円筒形状の回転部材133と、ピストン132と回転部材133との間に介在され、ピストン132の往復と回転部材133の回転とを変換する変換機構150と、ピストン132がシリンダ131に対して回転することを規制する規制機構160と、を有している。往復回転変換機構130の詳細は後述する。
【0017】
ケース110は、ケース本体111と、ケース本体111に固定されたシリンダケース112と、シリンダケース112を閉塞するシリンダカバー113と、を有している。シリンダケース112は、シリンダ131を形成する円筒部112a及び底部112bと、ケース本体111の開口部を閉塞する蓋部112cとを有している。ピストン132は、円筒部112aと底部112bとともに第1作動室S1を形成する。シリンダカバー113は、シリンダ131内に嵌合され、円筒部112aとピストン132とともに第2作動室S2を形成する。
【0018】
ポンプ部140は、ピストン132の往復動により流体を吸引して加圧して排出する。本実施形態では、流体は空気であり、ポンプ部140は、ケース110の外部から内部に連通する吸気路a1と、ケース110の内部からシリンダケース112及びピストン132を介して第1作動室S1に連通する第1吸気路a2と、ケース110の内部からシリンダケース112及びピストン132を介して第2作動室S2に連通する第2吸気路a3と、第1作動室S1からシリンダケース112の底部112bを介して外部に連通する第1排気路a4と、第2作動室S2からシリンダカバー113を介して外部に連通する第2排気路a5と、を有している。第1吸気路a2には、第1作動室S1に吸入される空気のみを流通させる逆止弁b1が設けられ、第2吸気路a3には、第2作動室S2に吸入される空気のみを流通させる逆止弁b2が設けられ、第1排気路a4には、第1作動室S1から排出される空気のみを流通させる逆止弁b3が設けられ、第2排気路a5には、第2作動室S2から排出される空気のみを流通させる逆止弁b4が設けられている。
【0019】
従って、この電動ポンプ100では、電動モータ120に電力が供給されると、ロータ123が回転し、ロータ123の回転が往復回転変換機構130によってピストン132の往復に変換される。第1作動室S1では、拡張時に外部から第1吸気路a2を介して空気が吸引され、圧縮時に室内の空気が加圧されて第1排気路a4を介して外部に吐出される。第2作動室S2では、拡張時に外部から第2吸気路a3を介して空気が吸引され、圧縮時に室内の空気が加圧されて第2排気路a5を介して外部に吐出される。
【0020】
[往復回転変換機構]
次に、往復回転変換機構130について、詳細に説明する。回転部材133は、ピストン132の周囲を同軸上に回転可能に配置されており、電動モータ120のロータ123に取り付けられて一体回転する。変換機構150は、回転部材133に形成された波形溝151と、ピストン132に形成されたローラ部152とを有している。波形溝151は、回転部材133の回転方向の全周に亘って軸方向D1に交互に変位した波形状である(図1(b)参照)。ピストン132の軸方向D1の中央部には、径方向D2に貫通して両端部が径方向D2に突出した軸部材153が設けられている。ローラ部152は、軸部材153の両端部に回転可能に設けられ、内部に転動体を内包したローラであり、波形溝151に嵌合して案内される。ローラ部152は、転動体を内包しているので、波形溝151との摺動抵抗を低減することができる。また、ローラ部152の外周面は、径方向D2に平行な円周面となっており、波形溝151の軸方向D1の両側のカム面は、いずれも径方向D2に平行な面となっている。
【0021】
尚、本実施形態では、波形溝151が回転部材133に形成され、ローラ部152がピストン132に設けられた場合について説明しているが、これには限られず、波形溝151がピストン132に形成され、ローラ部152が回転部材133に設けられるようにしてもよい(第3の実施形態参照)。即ち、波形溝151は、ピストン132及び回転部材133の一方に配置され、ローラ部152は、ピストン132及び回転部材133の他方に配置される。
【0022】
規制機構160は、シリンダ131に形成された軸方向溝161と、ピストン132に配置された軸の一例である軸部材153と、軸部材153に設けられた転動部材162とを有している。軸方向溝161は、軸方向D1が長手方向となるように、かつ、シリンダ131を径方向D2に貫通して形成されている。軸部材153は、ピストン132に対して、軸方向D1及び回転方向への相対移動を規制され、かつ、軸方向溝161に係合して軸方向D1に案内される。転動部材162は、軸部材153に対して回転可能に取り付けられた例えばボール軸受やローラ軸受のような内部に転動体を内包した部材であり、軸部材153と軸方向溝161との間で摩擦を低減する。本実施形態では、ローラ部152よりもピストン132側(径方向D2の内径側)に転動部材162が配置されている。
【0023】
尚、本実施形態では、軸方向溝161がシリンダ131に形成され、軸部材153がピストン132に設けられた場合について説明しているが、これには限られず、軸方向溝161がピストン132に形成され、軸部材153がシリンダ131に設けられるようにしてもよい(第2の実施形態参照)。即ち、軸方向溝161は、シリンダ131及びピストン132の一方に配置され、軸部材153は、シリンダ131及びピストン132の他方に配置される。また、本実施形態では、転動部材162が軸部材153に設けられた場合について説明したが、これには限られず、軸方向溝161に設けられていてもよい。また、本実施形態では、1本の軸部材153に対してローラ部152及び転動部材162が取り付けられている場合について説明したが、これには限られず、ローラ部152が取り付けられる軸部材と転動部材162が取り付けられる軸部材とは別個であってもよい(第2の実施形態参照)。
【0024】
上述した往復回転変換機構130では、ロータ123の回転により回転部材133が回転することで、波形溝151が回転し、ローラ部152を介して軸部材153を移動させる。このとき、軸部材153は軸方向溝161によって回転方向への移動を規制されるので、軸部材153の移動は軸方向D1の往復のみになる。これにより、ピストン132が往復して、ポンプとして作動する。尚、本実施形態では、往復回転変換機構130は、回転を往復に変換する場合について説明したが、これには限られず、往復を回転に変換することも可能である。即ち、ピストン132を外力により往復させることで、軸部材153が波形溝151を回転させ、回転部材133を回転させることも可能である。
【0025】
以上説明したように、本実施形態の往復回転変換機構130によれば、軸部材153と軸方向溝161との間に転動部材162が設けられているので、転動部材162が設けられていない場合に比べて、規制機構160における摩擦抵抗を抑制することができる。このため、回転と往復の変換効率を向上することができ、電動ポンプ100の電費を向上することができる。
【0026】
また、本実施形態の電動ポンプ100によれば、中空モータにポンプ部140を内蔵させて構成されているので、電動モータ120とポンプ部140とを軸方向D1に並べて配置する場合に比べて、装置全体で小型化を図ることができる。
【0027】
<第2の実施形態>
次に、本開示の第2の実施形態を、図2を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、ローラ部252の外周面252aは、径方向D2に対して勾配を有する勾配面となっており、波形溝251の軸方向D1の両側のカム面251a,251bは、いずれもローラ部252の外周面252aに沿って径方向D2に対して勾配した勾配面となっている点と、軸方向溝261がピストン232に形成され、かつ、軸263がシリンダ231に固定されている点とで、第1の実施形態と構成を異にしている。本実施形態での電動ポンプ200は、電動アキシャルポンプであって、ケース110と、電動モータ120と、往復回転変換機構230と、ポンプ部140とを有しており、ケース110と、電動モータ120と、ポンプ部140については、第1の実施形態と同様であるので、符号を同じくして詳細な説明を省略する。
【0028】
本実施形態の往復回転変換機構230について、詳細に説明する。往復回転変換機構230は、ケース110に固定されたシリンダ231と、シリンダ231内を軸方向D1に往復可能に配置されたピストン232と、ロータ123により回転される円筒形状の回転部材233と、ピストン232と回転部材233との間に介在され、ピストン232の往復と回転部材233の回転とを変換する変換機構250と、ピストン232がシリンダ231に対して回転することを規制する規制機構260と、を有している。
【0029】
回転部材233は、ピストン232の周囲を同軸上に回転可能に配置されており、電動モータ120のロータ123に取り付けられて一体回転する。変換機構250は、回転部材233に形成された波形溝251と、ピストン232に形成されたローラ部252とを有している。波形溝251は、回転部材233の回転方向の全周に亘って軸方向D1に交互に変位した波形状である(図1(b)参照)。
【0030】
ピストン232の軸方向D1の中央部には、径方向D2に貫通された貫通孔232aが形成されている。貫通孔232aには径方向D2の片方に突出した回転可能な軸状のローラ部252と、ローラ部252をピストン232に対して径方向D2を中心に回転可能に支持する軸受253とが、一対設けられている。即ち、ピストン232の径方向D2の両側に、別々のローラ部252の先端部が突出しており、それぞれ波形溝251に嵌合して案内される。軸受253は、例えばニードルベアリングからなる。このため、ローラ部252の回転時の抵抗を低減することができる。
【0031】
規制機構260は、ピストン232に形成された軸方向溝261と、シリンダ231に配置された軸263と、軸263に設けられた転動部材262とを有している。軸方向溝261は、軸方向D1が長手方向となるように、かつ、ピストン232を径方向D2に貫通して形成されている。軸263は、シリンダ231に対して、軸方向D1及び回転方向への相対移動を規制され、かつ、軸方向溝261に係合して軸方向D1に案内される。転動部材262は、軸263に対して回転可能に取り付けられた例えばボール軸受やローラ軸受のような内部に転動体を内包した部材であり、軸263と軸方向溝261との間で摩擦を低減する。本実施形態では、軸方向D1から視たときに、ローラ部252と軸263とは中心線C1を中心に約90度ずれて配置されている。
【0032】
ここで、波形溝251のカム面とローラ部252の外周面との接触部位(接触線)について考察する。この接触部位において、中心線C1からの距離が遠い位置と近い位置とで、回転部材233の回転角度に対する移動距離が異なる。即ち、中心線C1からの距離が遠い位置の方が、近い位置よりも回転部材233の回転角度に対する移動距離が長くなる。従って、波形溝251のカム面とローラ部252の外周面との接触線が径方向D2に平行である場合は、接触部位において中心線C1からの距離が遠い位置と近い位置とで、滑りを発生して、摩擦抵抗が大きくなる虞がある。そこで、本実施形態では、接触部位において中心線C1からの距離が遠い位置と近い位置とで径を異ならせて、滑りの発生を低減するようにして、摩擦抵抗を小さくする。
【0033】
具体的には、波形溝251は、回転方向の全周に亘って軸方向D1の一方側である上方向Du側に面した第1カム面251aと、回転方向の全周に亘って軸方向D1の他方側である下方向Ddに面した第2カム面251bと、を有している。第1カム面251aは、径方向D2の外径側が内径側よりも第2カム面251bから離隔した勾配を有している。第2カム面251bは、径方向D2の外径側が内径側よりも第1カム面251aから離隔した勾配を有している。ローラ部252は、波形溝251に接触する部位において、径方向D2の外径側が内径側よりも大径となる勾配を有する外周面252aを有しており、第1カム面251a及び第2カム面251bに対して線接触するように勾配角を同一にして設けられている。
【0034】
ここで、径方向D2の外径側と内径側とで滑りを発生しない勾配角度は、波形溝251の回転方向に対する傾斜角度によって変わってくる。例えば、波形溝251の傾斜角度が回転方向と平行である場合は、滑りを発生しない勾配角度が最大(以下、最大勾配という)であり、波形溝251の傾斜角度が回転方向に対して傾斜するほど、滑りを発生しない勾配角度が小さくなる。即ち、最大勾配とは、波形溝251における回転方向に沿った部位においてローラ部252が第1カム面251a及び第2カム面251bに対して外径側及び内径側で滑りを生じない勾配角を意味する。一方、カム面は位置によって勾配角度を変更することができるが、ローラ部252は常に同じ勾配角度になる。このため、仮にカム面の勾配角度を波形溝251の傾斜角度に対応させて位置によって変更しても、ローラ部252の傾斜角度が一定であることから、場所によっては点接触になってしまう虞があり、摩擦抵抗の十分な低下を図れない可能性がある。そこで、本実施形態では、第1カム面251aと第2カム面251bとローラ部252の外周面252aとの勾配については、最大勾配より小さい勾配角であって、径方向D2と平行な角度よりも大きくするものとし、例えば、最大勾配と平行との中間の角度としている。尚、勾配角度は最大勾配と平行との中間の角度には限られず、例えば、波形溝251が回転方向に対して斜めに直線状になっている部分で線接触する勾配角度としたり、この勾配角度と最大勾配角度との中間にしたり、最大勾配と平行との間で適宜設定することができる。
【0035】
以上説明したように、本実施形態の往復回転変換機構230によれば、第1カム面251a、第2カム面251b、ローラ部252の外周面252aのいずれも勾配を有しているので、勾配を有していない場合に比べて、変換機構250における摩擦抵抗を抑制することができる。このため、回転と往復の変換効率を向上することができ、電動ポンプ200の電費を向上することができる。
【0036】
また、本実施形態の往復回転変換機構230によれば、第1カム面251aと第2カム面251bとローラ部252の外周面252aとの勾配については、最大勾配と平行との中間の角度としている。このため、最大勾配や平行にした場合に比べて、1カム面251aと第2カム面251bとローラ部252の外周面252aとが滑りを発生しない割合を増やすことができ、摩擦抵抗を小さくすることができる。
【0037】
<第3の実施形態>
次に、本開示の第3の実施形態を、図3を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、波形溝351がピストン332に形成され、ローラ部352が回転部材333に設けられている点で、第2の実施形態と構成を異にしている。本実施形態での電動ポンプ300は、電動アキシャルポンプであって、ケース110と、電動モータ120と、往復回転変換機構330と、ポンプ部140とを有しており、ケース110と、電動モータ120と、ポンプ部140については、第1及び第2の実施形態と同様であるので、符号を同じくして詳細な説明を省略する。
【0038】
本実施形態の往復回転変換機構330について、詳細に説明する。往復回転変換機構330は、ケース110に固定されたシリンダ331と、シリンダ331内を軸方向D1に往復可能に配置されたピストン332と、ロータ123により回転される円筒形状の回転部材333と、ピストン332と回転部材333との間に介在され、ピストン332の往復と回転部材333の回転とを変換する変換機構350と、ピストン332がシリンダ331に対して回転することを規制する規制機構360と、を有している。回転部材333は、ピストン332の周囲を同軸上に回転可能に配置されており、電動モータ120のロータ123に取り付けられて一体回転する。規制機構360は、ピストン332に形成された軸方向溝361と、シリンダ331に配置された軸363と、軸363に設けられた転動部材362とを有している。転動部材362は、軸363に対して回転可能に取り付けられた例えばボール軸受やローラ軸受のような内部に転動体を内包した部材であり、軸363と軸方向溝361との間で摩擦を低減する。
【0039】
変換機構350は、ピストン332に形成された波形溝351と、回転部材333に形成されたローラ部352とを有している。波形溝351は、回転部材333の回転方向の全周に亘って軸方向D1に交互に変位した波形状である(図1(b)参照)。回転部材333の軸方向D1の中央部には、径方向D2に形成された支持孔333aが形成されている。支持孔333aには径方向D2の内径側に突出した回転可能な軸状のローラ部352と、ローラ部352を回転部材333に対して径方向D2を中心に回転可能に支持する軸受353とが、一対設けられている。即ち、回転部材333の径方向D2の内側に、別々のローラ部352の先端部が突出しており、波形溝351に嵌合して案内される。軸受353は、例えばニードルベアリングからなる。このため、ローラ部352の回転時の抵抗を低減することができる。
【0040】
波形溝351は、回転方向の全周に亘って軸方向D1の一方側である上方向Du側に面した第1カム面351aと、回転方向の全周に亘って軸方向D1の他方側である下方向Ddに面した第2カム面351bと、を有している。第1カム面351aは、径方向D2の外径側が内径側よりも第2カム面351bから離隔した勾配を有している。第2カム面351bは、径方向D2の外径側が内径側よりも第1カム面351aから離隔した勾配を有している。ローラ部352は、波形溝351に接触する部位において、径方向D2の外径側が内径側よりも大径となる勾配を有する外周面352aを有しており、第1カム面351a及び第2カム面351bに対して線接触するように設けられている。第1カム面351aと第2カム面351bとローラ部352の外周面352aとの勾配については、最大勾配より小さい勾配角であって、径方向D2と平行な角度よりも大きくするものとし、例えば、最大勾配と平行との中間の角度としている。尚、勾配角度は最大勾配と平行との中間の角度には限られず、例えば、波形溝351が回転方向に対して斜めに直線状になっている部分で線接触する勾配角度としたり、この勾配角度と最大勾配角度との中間にしたり、最大勾配と平行との間で適宜設定することができる。
【0041】
以上説明したように、本実施形態の往復回転変換機構330によれば、第1カム面351a、第2カム面351b、ローラ部352の外周面352aのいずれも勾配を有しているので、勾配を有していない場合に比べて、変換機構350における摩擦抵抗を抑制することができる。このため、回転と往復の変換効率を向上することができ、電動ポンプ300の電費を向上することができる。
【0042】
<第4の実施形態>
次に、本開示の第4の実施形態を、図4及び図5(a),(b)を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、往復回転変換機構730を内燃エンジン700に適用している点で、第1~第3の実施形態と構成を異にしている。まず、内燃エンジン700について、図4を用いて概要を説明する。本実施形態では、内燃エンジン700は、4ストロークエンジンであって、ケース710と、往復回転変換機構730と、燃料燃焼機構770とを有している。また、本実施形態では、往復回転変換機構730及び燃料燃焼機構770の組み合わせを3つ有しており、3気筒の内燃エンジン700を構成している。尚、3組の往復回転変換機構730及び燃料燃焼機構770は、回転部材733の位相が120度(240度)ずつずれている他は同様の構成である。
【0043】
往復回転変換機構730は、ケース710に固定されたシリンダ731と、シリンダ731内を軸方向D1に往復可能に配置されたピストン732と、円筒形状の回転部材733と、ピストン732と回転部材733との間に介在され、ピストン732の往復と回転部材733の回転とを変換する変換機構750と、ピストン732がシリンダ731に対して回転することを規制する規制機構760と、を有している。往復回転変換機構730の詳細は後述する。
【0044】
ケース710は、ケース本体711と、ケース本体711の開口部を閉塞するカバー713と、カバー713に固定されたシリンダケース712とを有している。シリンダケース712は、シリンダ731を形成する円筒部712a及びヘッド712bを有している。ピストン732は、円筒部712aとヘッド712bとともに燃焼室705を形成する。
【0045】
燃料燃焼機構770は、シリンダ731において燃料を燃焼することでピストン732を押圧して出力を得る。燃料燃焼機構770は、図4及び図5(a)に示すように、空気を外部から燃焼室705に吸入するための吸入路771と、排気ガスを燃焼室705から外部に排出するための排出路772と、吸気及び排気を切り替える切替機構773と、を有している。吸入路771は、ヘッド712bに形成され、燃焼室705に連通可能で、連通により外部から空気を吸入するようになっている。排出路772は、ヘッド712bに形成され、燃焼室705に連通可能で、連通により外部に排出ガスを排出するようになっている。
【0046】
図5(a)に示すように、カバー713には、軸方向D1に貫通した吸入口713aと排出口713bとが形成されている。吸入口713aは、ヘッド712bとの間の流路(吸入路771の一部)を介して吸入弁774に連通している。排出口713bは、ヘッド712bとの間の流路(排出路772の一部)を介して排出弁775に連通している。吸入路771と排出路772との間には、隔壁712cが設けられている。また、ヘッド712bの中央部には、燃焼室705に露出したインジェクション776が設けられている。
【0047】
切替機構773は、吸入弁774と、排出弁775と、変換機構780とを有している。吸入弁774は、ヘッド712bに設けられたポペット弁であり、軸方向D1に往復することで吸入路771を開放及び閉塞する。排出弁775は、ヘッド712bに設けられたポペット弁であり、軸方向D1に往復することで排出路772を開放及び閉塞する。変換機構780は、吸入弁774及び排出弁775と回転部材733との間に介在され、回転部材733の回転を吸入弁774及び排出弁775の開閉に変換する。変換機構780は、切替溝781と、吸入ローラ部782と、不図示の排出ローラ部とを有している。切替溝781は、回転部材733に形成され、かつ、回転部材733の回転方向の全周に亘って軸方向D1に交互に変位した波形状のカム溝である。切替溝781の一例を図5(b)に示す。吸入ローラ部782は、吸入弁774から径方向D2に突出して設けられ、切替溝781に嵌合して案内される軸状の部材である。排出ローラ部は、排出弁775から径方向D2に突出して設けられ、切替溝781に嵌合して案内される軸状の部材である。
【0048】
図5(a)に示す矢印は、切替機構773の回転方向を示す。この切替機構773では、回転部材733を回転し、空気の吸入時には、吸入弁774が開放して排出弁775が閉塞し、吸入路771と燃焼室705とを連通し、かつ、排出路772と燃焼室705とを遮断する。回転部材733を回転し、排気ガスの排出時には、排出弁775を開放して吸入弁774が閉塞したときに、排出路772と燃焼室705とを連通し、かつ、吸入路771と燃焼室705とを遮断する。
【0049】
[往復回転変換機構]
次に、往復回転変換機構730について、詳細に説明する。回転部材733は、ピストン732の周囲を同軸上に回転可能に配置されている。変換機構750は、回転部材733に形成された波形溝751と、ピストン732に形成されたローラ部752とを有している。波形溝751は、回転部材733の回転方向の全周に亘って軸方向D1に交互に変位した波形状である(図1(b)参照)。
【0050】
ピストン732の軸方向D1の下方向Dd側には、径方向D2の片方に突出した回転可能な軸状のローラ部752と、ローラ部752をピストン732に対して径方向D2を中心に回転可能に支持する軸受753とが、一対設けられている。即ち、ピストン732の径方向D2の両側に、別々のローラ部752の先端部が突出しており、それぞれ波形溝751に嵌合して案内される。
【0051】
規制機構760は、ピストン732に形成された軸方向溝761と、シリンダ731に配置された軸763と、軸763に設けられた転動部材762とを有している。軸方向溝761は、軸方向D1が長手方向となるように、かつ、ピストン732を径方向D2に貫通して形成されている。軸763は、シリンダ731に対して、軸方向D1及び回転方向への相対移動を規制され、かつ、軸方向溝761に係合して軸方向D1に案内される。転動部材762は、軸763に対して回転可能に取り付けられた例えばボール軸受やローラ軸受であり、軸763と軸方向溝761との間で摩擦を低減する。本実施形態では、軸方向D1から視たときに、ローラ部752と軸763とは同方向を向いて重なるように配置されている。
【0052】
波形溝751は、回転方向の全周に亘って軸方向D1の一方側である上方向Du側に面した第1カム面751aと、回転方向の全周に亘って軸方向D1の他方側である下方向Ddに面した第2カム面751bと、を有している。第1カム面751aは、径方向D2の外径側が内径側よりも第2カム面751bから離隔した勾配を有している。第2カム面751bは、径方向D2の外径側が内径側よりも第1カム面751aから離隔した勾配を有している。ローラ部752は、波形溝751に接触する部位において、径方向D2の外径側が内径側よりも大径となる勾配を有する外周面752aを有しており、第1カム面751a及び第2カム面751bに対して線接触するように勾配角を同一にして設けられている。
【0053】
第1カム面751aと第2カム面751bとローラ部752の外周面752aとの勾配については、最大勾配より小さい勾配角であって、径方向D2と平行な角度よりも大きくするものとし、例えば、最大勾配と平行との中間の角度としている。尚、勾配角度は最大勾配と平行との中間の角度には限られず、例えば、波形溝751が回転方向に対して斜めに直線状になっている部分で線接触する勾配角度としたり、この勾配角度と最大勾配角度との中間にしたり、最大勾配と平行との間で適宜設定することができる。
【0054】
本実施形態では、3つの回転部材733のそれぞれの外周面にギヤ部733aが形成されており、位相を120度(240度)ずらして順に噛合している。このため、3つの回転部材733は位相をずらしたまま同期して回転し、3気筒の内燃エンジン700として機能することができる。また、この内燃エンジン700は、第1出力軸701と第2出力軸702との2つの出力軸を有している。第1出力軸701は、1つの回転部材733と一体的に形成され、第2出力軸702は、他の回転部材733と一体的に形成されている。
【0055】
以上説明したように、本実施形態の往復回転変換機構730によれば、第1カム面751a、第2カム面751b、ローラ部752の外周面752aのいずれも勾配を有しているので、勾配を有していない場合に比べて、変換機構750における摩擦抵抗を抑制することができる。このため、回転と往復の変換効率を向上することができ、内燃エンジン700の燃費を向上することができる。
【0056】
また、本実施形態の往復回転変換機構730によれば、軸763と軸方向溝761との間に転動部材762が設けられているので、転動部材762が設けられていない場合に比べて、規制機構760における摩擦抵抗を抑制することができる。このため、回転と往復の変換効率を向上することができ、内燃エンジン700の燃費を更に向上することができる。
【0057】
<第5の実施形態>
次に、本開示の第5の実施形態を、図6及び図7を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、2つのピストン1032が中心線C1を一致させて軸方向D1に並べて配置されている点で、第4の実施形態と構成を異にしている。この内燃エンジン1000について、図6を用いて概要を説明する。本実施形態では、内燃エンジン1000は、4ストロークエンジンであって、ケース1010と、往復回転変換機構1030と、燃料燃焼機構1070とを有している。本実施形態では、往復回転変換機構1030及び燃料燃焼機構1070の組み合わせを2つ有しており、2気筒の内燃エンジン1000を構成している。2気筒を構成する2つのピストン1032は、ボクサーエンジンのように互い近接及び離隔するように往復する。また、各ピストン1032により回転される回転部材1033は一体化している。尚、2組の往復回転変換機構1030及び燃料燃焼機構1070は、回転部材1033の位相が180度ずれている他は同様の構成である。
【0058】
往復回転変換機構1030は、ケース1010に固定されたシリンダ1031と、シリンダ1031内を軸方向D1に往復可能に配置されたピストン1032と、円筒形状の回転部材1033と、ピストン1032と回転部材1033との間に介在され、ピストン1032の往復と回転部材1033の回転とを変換する変換機構1050と、ピストン1032がシリンダ1031に対して回転することを規制する規制機構1060と、を有している。往復回転変換機構1030の詳細は後述する。
【0059】
ケース1010は、軸方向D1の下方向Dd側を形成する下ケース1011と、下ケース1011に連結されて上方向Du側を形成する上ケース1013と、下ケース1011及び上ケース1013のそれぞれに取り付けられたシリンダケース1012とを有している。シリンダケース1012は、シリンダ1031を形成する円筒部1012a及びヘッド1012bを有している。ピストン1032は、円筒部1012aとヘッド1012bとともに燃焼室1005を形成する。
【0060】
燃料燃焼機構1070は、空気を外部から燃焼室1005に吸入するための吸入路と、排気ガスを燃焼室1005から外部に排出するための排出路と、吸気及び排気を切り替える切替機構1080と、を有している。燃料燃焼機構1070の構成は第4の実施形態と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0061】
[往復回転変換機構]
次に、往復回転変換機構1030について、詳細に説明する。回転部材1033は、ピストン1032の周囲を同軸上に回転可能に配置されている。変換機構1050は、回転部材1033に形成された第1波形溝1051及び第2波形溝2051と、ピストン1032に形成された第1ローラ部1052及び第2ローラ部2052とを有している(図7参照)。第1波形溝1051及び第2波形溝2051は、回転部材1033の回転方向の全周に亘って軸方向D1に交互に変位した波形状である。
【0062】
上方向Du側のピストン1032の軸方向D1の下方向Dd側には、径方向D2の片方に突出した回転可能な軸状の第1ローラ部1052と、第1ローラ部1052をピストン1032に対して径方向D2を中心に回転可能に支持する軸受1053とが、一対設けられている。即ち、ピストン1032の径方向D2の両側で、別々の第1ローラ部1052の先端部が内径側に突出しており、それぞれ第1波形溝1051に嵌合して案内される。
【0063】
下方向Dd側のピストン1032の軸方向D1の上方向Du側には、径方向D2の片方に突出した回転可能な軸状の第2ローラ部2052と、第2ローラ部2052をピストン1032に対して径方向D2を中心に回転可能に支持する軸受2053とが、一対設けられている。即ち、ピストン1032の径方向D2の両側で、別々の第2ローラ部2052の先端部が内径側に突出しており、それぞれ第2波形溝2051に嵌合して案内される。
【0064】
ここで、波形溝とローラ部との押圧関係について考察する。ピストン1032が往復する場合に、ローラ部と波形溝がそれぞれ1つずつであると、ローラ部は波形溝の対向する第1カム面と第2カム面とに回転部材1033が90度回転するごとに反対側のカム面に乗り移るようになる。このとき、ローラ部の回転方向が反転するので、摩擦が発生してしまう。即ち、回転部材1033が1回転する間に4回のローラ部の回転反転によって摩擦が発生するので、摩擦低減が不十分になる可能性があった。そこで、本実施形態では、ローラ部が常に同じ側のカム面に当接するように、2カムフォロアを有する構成としている。
【0065】
即ち、図7に示すように、波形溝1051,2051は、回転方向の全周に亘って軸方向D1の下方向Dd側(一方側)に面した第1波形溝1051の第1カム面1051aと、回転方向の全周に亘って軸方向D1の上方向Du側(他方側)に面した第2波形溝1051の第2カム面2051aと、を有している。そして、ローラ部1052,2052は、第1カム面1051aに接触して案内される第1ローラ部(第1ローラ)1052と、第2カム面2051aに接触して案内される第2ローラ部(第2ローラ)2052と、を有している。これにより、第1ローラ部1052は第1カム面1051aのみに接触して案内され、第2ローラ部2052は第2カム面2051aのみに接触して案内される。尚、各カム面1051a,2051aと、ローラ部1052,2052の外周面とは勾配を有しているが、これについては第4の実施形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0066】
規制機構1060は、ピストン1032に形成された軸方向溝1061と、シリンダ1031に配置された軸1063と、軸1063に設けられた転動部材1062とを有している。規制機構1060の構成と動作は、第4の実施形態と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0067】
この内燃エンジン1000では、ピストン1032の往復により回転部材1033が回転し、回転部材1033の外周面に形成されたギヤ部1033aから駆動力を出力する。
【0068】
以上説明したように、本実施形態の往復回転変換機構1030によれば、第1ローラ部1052は第1カム面1051aのみに接触して案内され、第2ローラ部2052は第2カム面2051aのみに接触して案内されるので、ローラ部が他のカム面に乗り移ることが無く、変換機構1050における摩擦抵抗を小さくすることができる。このため、回転と往復の変換効率を向上することができ、内燃エンジン1000の燃費を向上することができる。
【0069】
<第6の実施形態>
次に、本開示の第6の実施形態を、図8及び図9を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、1つの波形溝1251に2つのローラ部1252,2252を軸方向D1にずらして配置し、各ローラ部1252,2252がそれぞれ片方のカム面のみに接触するようにした点で、第5の実施形態と構成を異にしている。この内燃エンジン1200について、図8を用いて概要を説明する。本実施形態では、内燃エンジン1200は、4ストロークエンジンであって、ケース1210と、往復回転変換機構1230と、燃料燃焼機構1270とを有している。本実施形態では、1つの往復回転変換機構1230の軸方向D1の両端部に燃料燃焼機構1270を設け、1つのピストン1232の両側に燃焼室1205を設けた構成になっている。このような組み合わせを、径方向D2に隣り合わせて2組有している。それぞれの往復回転変換機構1230及び燃料燃焼機構1270は、位相を異ならせている他は同様の構成である。
【0070】
往復回転変換機構1230は、ケース1210に固定されたシリンダ1231と、シリンダ1231内を軸方向D1に往復可能に配置されたピストン1232と、円筒形状の回転部材1233と、ピストン1232と回転部材1233との間に介在され、ピストン1232の往復と回転部材1233の回転とを変換する変換機構1250と、ピストン1232がシリンダ1231に対して回転することを規制する規制機構1260と、を有している。往復回転変換機構1230の詳細は後述する。
【0071】
ケース1210は、ケース本体1211と、ケース本体1211の軸方向D1の上方向Du側に取り付けられた上蓋1213と、上蓋1213に取り付けられたシリンダケース1212と、ケース本体1211の軸方向D1の下方向Dd側に取り付けられた下蓋1214と、下蓋1214に取り付けられたシリンダケース1215とを有している。シリンダケース1212は、シリンダ1231を形成する円筒部1212a及びヘッド1212bを有している。シリンダケース1215は、シリンダケース1212と同様の構成である。ピストン1232は、円筒部1212aとヘッド1212bとともに燃焼室1205を形成する。
【0072】
燃料燃焼機構1270は、空気を外部から燃焼室1205に吸入するための吸入路と、排気ガスを燃焼室1205から外部に排出するための排出路と、吸気及び排気を切り替える切替機構1280と、を有している。燃料燃焼機構1270の構成は第4の実施形態と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0073】
[往復回転変換機構]
次に、往復回転変換機構1230について、詳細に説明する。回転部材1233は、ピストン1232の周囲を同軸上に回転可能に配置されている。変換機構1250は、回転部材1233に形成された波形溝1251と、ピストン1232に形成された第1ローラ部1252及び第2ローラ部2252とを有している(図9参照)。波形溝1251は、回転部材1233の回転方向の全周に亘って軸方向D1に交互に変位した波形状である。
【0074】
ピストン1232の軸方向D1の中央部には、径方向D2の片方に突出した回転可能な軸状の第1ローラ部1252と、第1ローラ部1252をピストン1232に対して径方向D2を中心に回転可能に支持する軸受1253とが、一対設けられている。即ち、ピストン1232の径方向D2の両側で、別々の第1ローラ部1252の先端部が内径側に突出しており、それぞれ波形溝1251に嵌合して案内される。
【0075】
第1ローラ部1252の下方向Dd側に並んで、径方向D2の片方に突出した回転可能な軸状の第2ローラ部2252と、第2ローラ部2252をピストン1232に対して径方向D2を中心に回転可能に支持する軸受2253とが、一対設けられている。即ち、ピストン1032の径方向D2の両側で、別々の第2ローラ部2252の先端部が内径側に突出しており、それぞれ波形溝1251に嵌合して案内される。
【0076】
図9に示すように、波形溝1251は、回転方向の全周に亘って軸方向D1の下方向Dd側(一方側)に面した第1カム面1251aと、回転方向の全周に亘って軸方向D1の上方向Du側(他方側)に面した第2カム面1251bと、を有している。そして、ローラ部1252,2252は、第1カム面1251aに接触して案内される第1ローラ部(第1ローラ)1252と、第2カム面1251bに接触して案内される第2ローラ部(第2ローラ)2252と、を有している。これにより、第1ローラ部1252は第1カム面1251aのみに接触して案内され、第2ローラ部2252は第2カム面1251bのみに接触して案内されるので、ローラ部が他のカム面に乗り移ることが無く、摩擦抵抗を小さくすることができる。尚、各カム面1051a,2051aと、ローラ部1052,2052の外周面とは勾配を有しているが、これについては第4の実施形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0077】
規制機構1260は、ピストン1232に形成された軸方向溝1261と、シリンダ1231に配置された軸1263と、軸1263に設けられた転動部材1262とを有している。規制機構1260の構成と動作は、第4の実施形態と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0078】
この内燃エンジン1000では、ピストン1232の往復により回転部材1233が回転し、回転部材1233の外周面に形成されたギヤ部1233a同士が噛合して同期する。また、1つの回転部材1233のギヤ部1233aには、出力軸1201がギヤ部1201aを介して駆動連結されている。この出力軸1201から駆動力を出力する。
【0079】
以上説明したように、本実施形態の往復回転変換機構1230によれば、第1ローラ部1252は第1カム面1251aのみに接触して案内され、第2ローラ部2252は第2カム面1251bのみに接触して案内されるので、ローラ部が他のカム面に乗り移ることが無く、変換機構1250における摩擦抵抗を小さくすることができる。このため、回転と往復の変換効率を向上することができ、内燃エンジン1200の燃費を向上することができる。
【0080】
尚、上述した第4~第6の実施形態では、規制機構760,1060,1260において、軸763,1063,1263と軸方向溝761,1061,1262との間に転動部材762,1062,1262が設けられている場合について説明したが、これには限られず、例えば、転動部材762,1062,1262は無くてもよい。この場合、軸763,1063,1263と軸方向溝761,1061,1261との摩擦抵抗は増加するが、部品点数を削減することができる。また、上述した第4~第6の実施形態では、波形溝のカム面とローラ部の外周面とは勾配を有する場合について説明したが、これには限られず、勾配を有さないようにしてもよい。
【符号の説明】
【0081】
100,200,300…電動ポンプ、130,230,330,730,1030,1230…往復回転変換機構、131,231,331,731,1031,1231…シリンダ、132,232,332,732,1032,1232…ピストン、133,233,333,733,1033,1233…回転部材、140…ポンプ部、150,250,350,750,1050,1250…変換機構、151,251,351,751,1051,1251,2051…波形溝、152,252,352,752,1052,1252,2052,2252…ローラ部、153…軸部材(軸)、160,260,360,760,1060,1260…規制機構、161,261,361,761,1061,1261…軸方向溝、162,262,362,762,1062,1262…転動部材、251a,351a,751a,1051a,1251a…第1カム面、251b,351b,751b,1251b,2051a…第2カム面、252a,352a,752a…外周面、263…軸、700,1000,1200…内燃エンジン、701…第1出力軸(出力軸)、702…第2出力軸(出力軸)、770,1070,1270…燃料燃焼機構、1052,1252…第1ローラ部(第1ローラ)、1202…出力軸、2052,2252…第2ローラ部(第2ローラ)、D1…軸方向、D2…径方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9