(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151341
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】内燃エンジン
(51)【国際特許分類】
F01B 13/00 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
F01B13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060914
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯野 宏
(57)【要約】
【課題】往復回転変換機構を用いながらも簡易な構成にする。
【解決手段】ピストン432の周囲をピストン432と同軸上で回転可能に配置された回転部材433と、ピストン432と回転部材433との間に介在され、ピストン432の往復を回転部材433の回転に変換する変換機構450を備える。また、シリンダ431に配置され、燃焼室405に連通可能で、連通により外部から空気を吸入する吸入路と、シリンダ431に配置され、燃焼室405に連通可能で、連通により外部に排出ガスを排出する排出路と、回転部材433の回転により駆動され、空気の吸入時には、吸入路と燃焼室405とを連通し、かつ、排出路と燃焼室405とを遮断し、排出ガスの排出時には、排出路と燃焼室405とを連通し、かつ、吸入路と燃焼室405とを遮断する切替機構473を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
前記シリンダ内を軸方向に往復可能に配置され、燃料を燃焼させる燃焼室を前記シリンダとともに形成するピストンと、
前記ピストンの周囲を前記ピストンと同軸上で回転可能に配置された回転部材と、
前記ピストンと前記回転部材との間に介在され、前記ピストンの往復を前記回転部材の回転に変換する第1変換機構であって、前記ピストン及び前記回転部材の一方に配置され、かつ、前記回転部材の回転方向の全周に亘って前記軸方向に交互に変位した波形状である波形溝と、前記ピストン及び前記回転部材の他方に配置され、かつ、前記波形溝に嵌合して案内されるローラ部と、を有する第1変換機構と、
前記シリンダに配置され、前記燃焼室に連通可能で、連通により外部から空気を吸入する吸入路と、
前記シリンダに配置され、前記燃焼室に連通可能で、連通により外部に排出ガスを排出する排出路と、
前記回転部材の回転により駆動され、空気の吸入時には、前記吸入路と前記燃焼室とを連通し、かつ、前記排出路と前記燃焼室とを遮断し、排出ガスの排出時には、前記排出路と前記燃焼室とを連通し、かつ、前記吸入路と前記燃焼室とを遮断する切替機構と、を備える、
内燃エンジン。
【請求項2】
前記吸入路及び前記排出路は、それぞれ前記シリンダにおいて内周側面に開口して前記燃焼室に連通可能に設けられ、
前記切替機構は、
前記シリンダを径方向に貫通して前記燃焼室に開口する吸入孔及び排出孔と、
前記シリンダの外周側において前記回転部材と同軸上で同期して回転する環状部材と、
前記環状部材に形成され、前記径方向に貫通する貫通孔と、を有し、
前記環状部材が回転して、前記貫通孔が前記吸入孔に重なったときに前記吸入路と前記燃焼室とを連通し、かつ、前記排出路と前記燃焼室とを遮断し、前記貫通孔が前記排出孔に重なったときに前記排出路と前記燃焼室とを連通し、かつ、前記吸入路と前記燃焼室とを遮断する、
請求項1に記載の内燃エンジン。
【請求項3】
前記吸入路及び前記排出路は、それぞれ前記シリンダを前記軸方向に貫通して前記燃焼室に連通可能に設けられ、
前記切替機構は、
前記燃焼室において、前記軸方向に関して前記ピストンと反対側の端部で、前記回転部材と同軸上で同期して回転する円板状部材と、
前記円板状部材に形成され、前記軸方向に貫通する貫通孔と、を有し、
前記円板状部材が回転して、前記貫通孔が前記吸入路に重なったときに前記吸入路と前記燃焼室とを連通し、かつ、前記排出路と前記燃焼室とを遮断し、前記貫通孔が前記排出路に重なったときに前記排出路と前記燃焼室とを連通し、かつ、前記吸入路と前記燃焼室とを遮断する、
請求項1に記載の内燃エンジン。
【請求項4】
前記切替機構は、
前記軸方向に往復することで前記吸入路を開放及び閉塞する吸入弁と、
前記軸方向に往復することで前記排出路を開放及び閉塞する排出弁と、
前記吸入弁及び前記排出弁と前記回転部材との間に介在され、前記回転部材の回転を前記吸入弁及び前記排出弁の開閉に変換する第2変換機構であって、前記回転部材に配置され、かつ、前記回転部材の回転方向の全周に亘って前記軸方向に交互に変位した波形状である切替溝と、前記吸入弁に配置され、かつ、前記切替溝に嵌合して案内される吸入ローラ部と、前記排出弁に配置され、かつ、前記切替溝に嵌合して案内される排出ローラ部と、を有する第2変換機構と、を有し、
前記回転部材が回転して、前記吸入弁が開放して前記排出弁が閉塞したときに、前記吸入路と前記燃焼室とを連通し、かつ、前記排出路と前記燃焼室とを遮断し、前記排出弁が開放して前記吸入弁が閉塞したときに、前記排出路と前記燃焼室とを連通し、かつ、前記吸入路と前記燃焼室とを遮断する、
請求項1に記載の内燃エンジン。
【請求項5】
前記切替機構は、
前記シリンダに配置され、前記燃焼室に開口した連通孔と、
前記軸方向に往復することで前記連通孔を開放及び閉塞する吸排弁と、
前記吸排弁と前記回転部材との間に介在され、前記回転部材の回転を前記吸排弁の開閉に変換する第2変換機構であって、前記回転部材に配置され、かつ、前記回転部材の回転方向の全周に亘って前記軸方向に交互に変位した波形状である切替溝と、前記吸排弁に配置され、かつ、前記切替溝に嵌合して案内される吸排ローラ部と、を有する第2変換機構と、
前記軸方向において、前記吸排弁と前記吸入路及び前記排出路との間に介在され、前記回転部材と同軸上で同期して回転する円板状部材と、
前記円板状部材に形成され、前記軸方向に貫通する貫通孔と、を有し、
前記回転部材及び前記円板状部材が回転して、
前記吸排弁が開放して、かつ、前記貫通孔が前記吸入路に重なったときに、前記吸入路と前記燃焼室とを連通し、かつ、前記排出路と前記燃焼室とを遮断し、
前記吸排弁が開放して、かつ、前記貫通孔が前記排出路に重なったときに、前記排出路と前記燃焼室とを連通し、かつ、前記吸入路と前記燃焼室とを遮断する、
請求項1に記載の内燃エンジン。
【請求項6】
前記回転部材は、駆動力を外部に出力する出力部材である、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の内燃エンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この技術は、燃焼室で燃料を燃焼して駆動力を出力する内燃エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動モータの回転をピストンの往復運動に変換して空気を吸引して加圧し、吐出するポンプ装置が普及している。近年では、モータにより回転される略円筒形状の回転部材の内側にピストンを配置し、回転部材の回転軸線方向とピストンの往復方向とを一致させたポンプ装置が開発されている(特許文献1参照)。このポンプ装置では、回転部材の回転をピストンの往復に変換するために、変換機構が用いられている。
【0003】
このような変換機構を内燃エンジンに適用し、ピストンの往復を回転に変換して駆動力として外部に出力させることが考えられる。一方、燃焼室の吸排気を切り替えるバルブは、従来はクランク軸に平行な回転軸を利用したカム機構により開閉される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の変換装置を内燃エンジンに単に適用しようとしても、エンジンの出力部材はピストンに同軸の回転部材になり、回転部材の回転によって燃焼室のバルブを開閉するカム機構を駆動するためには、回転部材の中心軸から90度変換した駆動力が必要になり、構成が複雑になってしまうという課題がある。
【0006】
そこで、往復回転変換機構を用いながらも簡易な構成にできる内燃エンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本内燃エンジンは、シリンダと、前記シリンダ内を軸方向に往復可能に配置され、燃料を燃焼させる燃焼室を前記シリンダとともに形成するピストンと、前記ピストンの周囲を前記ピストンと同軸上で回転可能に配置された回転部材と、前記ピストンと前記回転部材との間に介在され、前記ピストンの往復を前記回転部材の回転に変換する第1変換機構であって、前記ピストン及び前記回転部材の一方に配置され、かつ、前記回転部材の回転方向の全周に亘って前記軸方向に交互に変位した波形状である波形溝と、前記ピストン及び前記回転部材の他方に配置され、かつ、前記波形溝に嵌合して案内されるローラ部と、を有する第1変換機構と、前記シリンダに配置され、前記燃焼室に連通可能で、連通により外部から空気を吸入する吸入路と、前記シリンダに配置され、前記燃焼室に連通可能で、連通により外部に排出ガスを排出する排出路と、前記回転部材の回転により駆動され、空気の吸入時には、前記吸入路と前記燃焼室とを連通し、かつ、前記排出路と前記燃焼室とを遮断し、排出ガスの排出時には、前記排出路と前記燃焼室とを連通し、かつ、前記吸入路と前記燃焼室とを遮断する切替機構と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本内燃エンジンによると、往復回転変換機構を用いながらも簡易な構成にできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係る内燃エンジンを示す断面図である。
【
図2】(a)は波形溝を示す展開図であり、(b)は変換機構を示す水平断面図であり、(c)は燃料燃焼機構を示す平面図である。
【
図3】第2の実施形態に係る内燃エンジンを示す断面図である。
【
図4】第2の実施形態に係る燃料燃焼機構を示す水平断面図である。
【
図5】第3の実施形態に係る内燃エンジンを示す断面図である。
【
図6】(a)は燃料燃焼機構を示す平面図であり、(b)は切替溝の展開図である。
【
図7】第4の実施形態に係る内燃エンジンを示す断面図である。
【
図8】(a)は燃料燃焼機構を示す平面図であり、(b)は変形例に係る燃料燃焼機構を示す平面図であり、(c)は(b)に示す燃料燃焼機構の切替溝の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1の実施形態>
以下、本開示の第1の実施形態を、
図1及び
図2(a)~(c)を参照しながら詳細に説明する。まず、内燃エンジン400について、
図1を用いて概要を説明する。内燃エンジン400は、4ストロークエンジンであって、ケース410と、第1ユニット401と、第2ユニット402と、第3ユニット403とを有している。各ユニット401,402,403には1つずつピストンが設けられ、全体で3気筒の内燃エンジン400となっている。各ユニット401,402,403は回転部材433の位相が120度(240度)ずつずれている他は同様の構成であるので、第1ユニット401について説明し、他のユニット402,403については詳細な説明を省略する。
【0011】
第1ユニット401は、往復回転変換機構430と、燃料燃焼機構470とを有している。本実施形態では、往復回転変換機構430のピストン432の中心線と回転部材433の回転中心とが一致しており、これを中心線C1とし、この中心線C1に沿った方向を軸方向D1とする。また、説明の便宜上、軸方向D1は、上方向Duと下方向Ddとを向いているものとする。尚、軸方向D1は、上下方向を向いていることには限られないのは勿論である。また、ピストンの中心線C1に直交する方向を、ピストン432の径方向D2とする。
【0012】
往復回転変換機構430は、ケース410に固定されたシリンダ431と、シリンダ431内(シリンダ内)を軸方向D1に往復可能に配置されたピストン432と、円筒形状の回転部材433と、ピストン432と回転部材433との間に介在され、ピストン432の往復と回転部材433の回転とを変換する第1変換機構の一例である変換機構450と、ピストン432がシリンダ431に対して回転することを規制する規制機構460と、を有している。往復回転変換機構430の詳細は後述する。
【0013】
ケース410は、シリンダケース411と、シリンダケース411を閉塞するシリンダカバー412と、シリンダケース411の底部を閉塞する底カバー413とを有している。シリンダケース411は、シリンダ431を形成する円筒形状の穴部を有している。ピストン432は、シリンダケース411とシリンダカバー412とともに燃焼室405を形成する。
【0014】
[往復回転変換機構]
次に、往復回転変換機構430について、詳細に説明する。回転部材433は、ピストン432の周囲を同軸上に回転可能に配置されている。変換機構450は、回転部材433に形成された波形溝451と、ピストン432に支持されたローラ部452とを有している。回転部材433には、ケース410の下方向Dd側から突出した出力軸406が一体化して設けられている。波形溝451は、回転部材433の回転方向の全周に亘って軸方向D1に交互に変位した波形状である(
図2(a)参照)。ピストン432の軸方向D1の下部には、径方向D2の片方に突出した回転可能な軸状のローラ部452と、ローラ部452をピストン432に対して径方向D2を中心に回転可能に支持する軸受453とが、一対設けられている(
図2(b)参照)。即ち、ピストン432の径方向D2の両側に、別々のローラ部452の先端部が突出しており、それぞれ波形溝451に嵌合して案内される。
【0015】
尚、本実施形態では、波形溝451が回転部材433に形成され、ローラ部452がピストン432に設けられた場合について説明しているが、これには限られず、波形溝451がピストン432に形成され、ローラ部452が回転部材433に設けられるようにしてもよい。即ち、波形溝451は、ピストン432及び回転部材433の一方に配置され、ローラ部452は、ピストン432及び回転部材433の他方に配置される。
【0016】
規制機構460は、ピストン432に形成された軸方向溝461と、シリンダ431に配置された軸463と、軸463に設けられた転動部材462とを有している。軸方向溝461は、軸方向D1が長手方向となるように、かつ、ピストン432を径方向D2に貫通して形成されている。軸463は、シリンダ431に対して、軸方向D1及び回転方向への相対移動を規制され、かつ、軸方向溝461に係合して軸方向D1に案内される。転動部材462は、軸463に対して回転可能に取り付けられた例えばボール軸受やローラ軸受であり、軸463と軸方向溝461との間で摩擦を低減する。
【0017】
尚、本実施形態では、軸方向溝461がピストン432に形成され、軸463がシリンダ431に設けられた場合について説明しているが、これには限られず、軸方向溝461がシリンダ431に形成され、軸463がピストン432に設けられるようにしてもよい。即ち、軸方向溝461は、シリンダ431及びピストン432の一方に配置され、軸463は、シリンダ431及びピストン432の他方に配置される。
【0018】
上述した往復回転変換機構430では、ピストン432が往復することで、ローラ部452を軸方向D1に移動させ、波形溝451が回転し、回転部材433が回転し、出力軸406から駆動力が出力される。尚、本実施形態では、往復回転変換機構430は、往復を回転に変換する場合について説明したが、これには限られず、回転を往復に変換することも可能である。例えば、内燃エンジン400が車両の車輪に駆動連結されて走行に使用される場合は、エンジンブレーキを使用する場合に出力軸406側から動力が入力され、回転部材433が回転して波形溝451及びローラ部452を介してピストン432を往復させることができる。
【0019】
回転部材433の外周面にはギヤ部433aが形成されている。各ユニット401,402,403は、軸方向D1から視て直線状に配置され、ギヤ部433aが順に噛合して、同期して回転するようになっている。このとき、同期の位相は、120°(240°)ごとにずれるように噛合される。
【0020】
[燃料燃焼機構]
次に、燃料燃焼機構470について、
図1及び
図2(c)を用いて詳細に説明する。尚、ここでは、
図1を用いた説明において、便宜上、第3ユニット403の燃料燃焼機構470を用いて説明するが、第1ユニット401の燃料燃焼機構470も同様の構成である。燃料燃焼機構470は、シリンダ431の内部において燃料を燃焼することでピストン432を押圧して出力を得る。燃料燃焼機構470は、空気を外部から燃焼室405に吸入するための吸入路471と、排気ガスを燃焼室405から外部に排出するための排出路472と、吸気及び排気を切り替える切替機構473と、を有している。吸入路471は、シリンダカバー412に形成された軸方向D1に貫通した透孔からなり、燃焼室405に連通可能で、連通により外部から空気を吸入するようになっている。排出路472は、シリンダカバー412に形成された軸方向D1に貫通した透孔からなり、燃焼室405に連通可能で、連通により外部に排出ガスを排出するようになっている。即ち、吸入路471及び排出路472は、それぞれシリンダ431のヘッドを軸方向D1に貫通して燃焼室405に連通可能に設けられている。シリンダカバー412において、燃焼室405の中央部に相当する位置には、燃焼室405に露出したインジェクション477が設けられている。
【0021】
切替機構473は、円板状部材の一例であるロータリバルブ474を有している。ロータリバルブ474は、燃焼室405において、軸方向D1に関してピストン432と反対側の端部に設けられ、回転部材433と同軸上で同期して回転する。ロータリバルブ474の外周面にはギヤ部474aが形成されている。本実施形態では、第3ユニット403の径方向D2に並んで、軸方向D1を長手方向として伝達軸475が設けられている。伝達軸475は、シリンダカバー412と底カバー413に回転可能に支持され、回転部材433のギヤ部433aに噛合するギヤ部475aと、ロータリバルブ474のギヤ部474aに噛合するギヤ部475bとを有している。回転部材433が回転すると、伝達軸475が回転し、ロータリバルブ474も同期して回転する。尚、回転部材433とロータリバルブ474とを同期回転させる手段としては、伝達軸475のような別部材をもちいることには限られず、回転部材433とロータリバルブ474とを一体化させてもよい(第4の実施形態参照)。
【0022】
ロータリバルブ474は、軸方向D1に貫通する貫通孔476を有している。貫通孔476は、ロータリバルブ474の回転によって、吸入路471及び排出路472のそれぞれに連通可能になっている。従って、ロータリバルブ474が回転して、貫通孔476が吸入路471に重なったときに、吸入路471と燃焼室405とを連通し、かつ、排出路472と燃焼室405とを遮断する。また、貫通孔476が排出路472に重なったときに、排出路472と燃焼室405とを連通し、かつ、吸入路471と燃焼室405とを遮断する。
【0023】
次に、内燃エンジン400の動作について説明する。吸入工程では、ロータリバルブ474及び回転部材433が同期して回転することで、貫通孔476が吸入路471に重なると共に、ピストン432が下降する。これにより、外部から空気が燃焼室405に吸入される。圧縮工程では、ロータリバルブ474及び回転部材433が同期して回転することで、貫通孔476が吸入路471及び排出路472のいずれにも重ならない位置になり、ピストン432が上死点まで上昇して空気を圧縮し、インジェクション477から燃料が噴射される。燃焼工程では、貫通孔476が吸入路471及び排出路472のいずれにも重ならないまま、点火プラグにより混合気が点火されて燃焼し、燃焼ガスが膨張してピストン432が下死点まで押し下げられる。排気工程では、ロータリバルブ474及び回転部材433が同期して回転することで、貫通孔476が排出路472に重なると共に、ピストン432が上昇して排気ガスを排出する。
【0024】
以上説明したように、本実施形態の内燃エンジン400によれば、吸排気を切り替えるロータリバルブ474がピストン432の中心線C1を中心に回転可能に設けられている。このため、従来のクランク軸と平行な回転軸を用いて吸排気を切り替える場合に比べて、往復回転変換機構430を用いながらも内燃エンジン400を簡易な構成にすることができる。
【0025】
また、本実施形態の内燃エンジン400によれば、ロータリバルブ474を使用しているので、ポペットバルブのようなばね反力が発生することはなく、燃費を向上することができる。
【0026】
また、本実施形態の内燃エンジン400によれば、規制機構460において、軸463と軸方向溝461との間に転動部材462が設けられているので、転動部材462が設けられていない場合に比べて、規制機構460における摩擦抵抗を抑制することができる。このため、回転と往復の変換効率を向上することができ、内燃エンジン400の燃費を向上することができる。
【0027】
尚、本実施形態の内燃エンジン400は、例えば、車両に搭載して発電用に使用したり、駆動力を用いて走行用に使用することができ、用途は限定されない。
【0028】
<第2の実施形態>
次に、本開示の第2の実施形態を、
図3及び
図4を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、環状部材534が吸入路571及び排出路572に対して軸方向D1ではなく径方向D2に連通している点で、第1の実施形態と構成を異にしている。
【0029】
内燃エンジン500は、4ストロークエンジンであって、ケース510と、第1ユニット501と、第2ユニット502と、第3ユニット503とを有している。各ユニット501,502,503には1つずつピストンが設けられ、全体で3気筒の内燃エンジン500となっている。各ユニット501,502,503は回転部材533の位相が120度(240度)ずつずれている他は同様の構成であるので、第1ユニット501について説明し、他のユニット502,503については詳細な説明を省略する。
【0030】
第1ユニット501は、往復回転変換機構530と、燃料燃焼機構570とを有している。往復回転変換機構530は、ケース510に固定されたシリンダ531と、シリンダ531内を軸方向D1に往復可能に配置されたピストン532と、円筒形状の回転部材533と、ピストン532と回転部材533との間に介在され、ピストン532の往復と回転部材533の回転とを変換する変換機構550と、ピストン532がシリンダ531に対して回転することを規制する規制機構560と、を有している。往復回転変換機構530の詳細は後述する。
【0031】
ケース510は、ケース本体511と、ケース本体511に取り付けられたカバー512と、カバー512に取り付けられたシリンダケース513とを有している。シリンダケース513は、シリンダ531を形成する円筒部513a及びヘッド部513bを有している。ピストン532は、シリンダケース513とともに燃焼室505を形成する。
【0032】
[往復回転変換機構]
次に、往復回転変換機構530について説明する。回転部材533は、ピストン532の周囲を同軸上に回転可能に配置されている。回転部材533は、シリンダケース513の円筒部513a及びヘッド部513bの外部を覆うように設けられている。回転部材533には、ケース510の下方向Dd側から突出した出力軸506が一体化して設けられている。変換機構550は、回転部材533に形成された波形溝551と、ピストン532に支持されたローラ部552とを有している。波形溝551は、回転部材533の回転方向の全周に亘って軸方向D1に交互に変位した波形状である(
図2(a)参照)。ピストン532の軸方向D1の下部には、径方向D2の片方に突出した回転可能な軸状のローラ部552と、ローラ部552をピストン532に対して径方向D2を中心に回転可能に支持する軸受553とが、一対設けられている(
図2(b)参照)。
【0033】
規制機構560は、ピストン532に形成された軸方向溝561と、シリンダ531に配置された軸563と、軸563に設けられた転動部材562とを有している。軸方向溝561は、軸方向D1が長手方向となるように、かつ、ピストン532を径方向D2に貫通して形成されている。軸563は、シリンダ531に対して、軸方向D1及び回転方向への相対移動を規制され、かつ、軸方向溝561に係合して軸方向D1に案内される。転動部材562は、軸563に対して回転可能に取り付けられた例えばボール軸受やローラ軸受であり、軸563と軸方向溝561との間で摩擦を低減する。
【0034】
本実施形態では、波形溝551とローラ部552との接触面は、径方向D2の外径側が大径(拡張)になるような勾配を有するようにしている。これにより、接触部分の内径側と外径側との回転差による滑りの発生を軽減できるので、摩擦抵抗を小さくすることができる。往復回転変換機構530の作用については、第1の実施形態と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0035】
[燃料燃焼機構]
次に、燃料燃焼機構570について、
図3及び
図4を用いて詳細に説明する。尚、ここでは、
図3を用いた説明において、便宜上、第3ユニット503の燃料燃焼機構570を用いて説明するが、第1ユニット501の燃料燃焼機構570も同様の構成である。燃料燃焼機構570は、シリンダ531の内部において燃料を燃焼することでピストン532を押圧して出力を得る。燃料燃焼機構570は、空気を外部から燃焼室505に吸入するための吸入路571と、排気ガスを燃焼室505から外部に排出するための排出路572と、吸気及び排気を切り替える切替機構573と、を有している。吸入路571は、シリンダケース513の外部に設けられ、シリンダケース513の円筒部513aに形成された吸入孔513cを介して燃焼室505に連通可能で、連通により外部から空気を吸入するようになっている。排出路572は、シリンダケース513の外部に設けられ、シリンダケース513の円筒部513aに形成された排出孔513dを介して燃焼室505に連通可能で、連通により外部に排出ガスを排出するようになっている。即ち、吸入路571及び排出路572は、それぞれシリンダ531において内周側面に開口して燃焼室505に連通可能に設けられている。シリンダケース513の燃焼室405の中央部に相当する位置には、燃焼室505に露出したインジェクション577が設けられている。
【0036】
切替機構573は、吸入孔513c及び排出孔513dと、環状部材534と、貫通孔534aとを有している。吸入孔513c及び排出孔513dは、シリンダ531を径方向D2に貫通して燃焼室505に開口する透孔である。環状部材534は、シリンダ531の外周側において回転部材533と同軸上で同期して回転する部材であり、本実施形態では、回転部材533と一体化されている。但し、一体化されていることには限られず、第1の実施形態のように軸部材などの伝達部材を用いて同期回転するようにしてもよい。
【0037】
貫通孔534aは、環状部材534に形成され、径方向D2に貫通する。貫通孔534aは、環状部材534の回転によって、吸入路571と吸入孔513cとを連通可能であり、また、排出路572と排出孔513dとを連通可能である。従って、環状部材534が回転して、貫通孔534aが吸入孔513cに重なったときに吸入路571と燃焼室505とを連通し、かつ、排出路572と燃焼室505とを遮断し、貫通孔534aが排出孔513dに重なったときに排出路572と燃焼室505とを連通し、かつ、吸入路571と燃焼室505とを遮断する、
【0038】
次に、内燃エンジン500の動作について説明する。吸入工程では、環状部材534及び回転部材533が同期して回転することで、貫通孔534aが吸入路571に重なると共に、ピストン532が下降する。これにより、外部から空気が燃焼室505に吸入される。圧縮工程では、環状部材534及び回転部材533が同期して回転することで、貫通孔534aが吸入路571及び排出路572のいずれにも重ならない位置になり、ピストン532が上死点まで上昇して空気を圧縮し、インジェクション577から燃料が噴射される。燃焼工程では、貫通孔534aが吸入路571及び排出路572のいずれにも重ならないまま、点火プラグにより混合気が点火されて燃焼し、燃焼ガスが膨張してピストン532が下死点まで押し下げられる。排気工程では、環状部材534及び回転部材533が同期して回転することで、貫通孔534aが排出路572に重なると共に、ピストン532が上昇して排気ガスを排出する。
【0039】
以上説明したように、本実施形態の内燃エンジン500によれば、吸排気を切り替える環状部材534がピストン532の中心線C1を中心に回転可能に設けられている。このため、従来のクランク軸と平行な回転軸を用いて吸排気を切り替える場合に比べて、往復回転変換機構530を用いながらも内燃エンジン500を簡易な構成にすることができる。
【0040】
また、本実施形態の内燃エンジン500によれば、環状部材534を使用しているので、ポペットバルブのようなばね反力が発生することはなく、燃費を向上することができる。また、環状部材534は軸方向D1に押圧されずに回転可能であるので、例えば燃焼工程のような軸方向D1に大きな力が作用する場合であっても、環状部材534は円滑に回転でき、軸受の負荷を減らすことができる。
【0041】
また、本実施形態の内燃エンジン500によれば、規制機構560において、軸563と軸方向溝561との間に転動部材562が設けられているので、転動部材562が設けられていない場合に比べて、規制機構560における摩擦抵抗を抑制することができる。また、変換機構550において、波形溝551とローラ部552とに勾配を設けているので、摩擦抵抗を更に抑制することができる。このため、回転と往復の変換効率を向上することができ、内燃エンジン500の燃費を向上することができる。
【0042】
<第3の実施形態>
次に、本開示の第3の実施形態を、
図5及び
図6(a),(b)を参照しながら詳細に説明する。内燃エンジン700について、
図5を用いて概要を説明する。内燃エンジン700は、4ストロークエンジンであって、ケース710と、第1ユニット701と、第2ユニット702と、第3ユニット703とを有している。各ユニット701,702,703には1つずつピストンが設けられ、全体で3気筒の内燃エンジン700となっている。各ユニット701,702,703は回転部材733の位相が120度(240度)ずつずれている他は同様の構成であるので、第1ユニット701について説明し、他のユニット702,703については詳細な説明を省略する。尚、
図5を用いた説明の便宜上、ユニット702,703の構成を用いて説明する場合もある。
【0043】
第1ユニット701は、往復回転変換機構730と、燃料燃焼機構770とを有している。往復回転変換機構730は、ケース710に固定されたシリンダ731と、シリンダ731内を軸方向D1に往復可能に配置されたピストン732と、円筒形状の回転部材733と、ピストン732と回転部材733との間に介在され、ピストン732の往復と回転部材733の回転とを変換する変換機構550と、ピストン732がシリンダ731に対して回転することを規制する規制機構560と、を有している。変換機構550と規制機構560とは、第2の実施形態と同様であるので、同符号を付して詳細な説明は省略する。
【0044】
ケース710は、ケース本体711と、ケース本体711に取り付けられたカバー712と、カバー712に取り付けられたシリンダケース713とを有している。シリンダケース713は、シリンダ731を形成する円筒部713a及びヘッド部713bを有している。ピストン732は、シリンダケース713とともに燃焼室705を形成する。
【0045】
回転部材733は、ピストン732の周囲を同軸上に回転可能に配置されている。回転部材733は、シリンダケース713の円筒部713aの外周部を覆うように設けられている。回転部材733には、ケース710の下方向Dd側から突出した出力軸706が一体化して設けられている。往復回転変換機構730の作用については、第1の実施形態と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0046】
[燃料燃焼機構]
燃料燃焼機構770は、シリンダ731の内部において燃料を燃焼することでピストン732を押圧して出力を得る。燃料燃焼機構770は、
図5及び
図6(a)に示すように、空気を外部から燃焼室705に吸入するための吸入路771と、排気ガスを燃焼室705から外部に排出するための排出路772と、吸気及び排気を切り替える切替機構773と、を有している。吸入路771は、ヘッド部713bに形成され、燃焼室705に連通可能で、連通により外部から空気を吸入するようになっている。排出路772は、ヘッド部713bに形成され、燃焼室705に連通可能で、連通により外部に排出ガスを排出するようになっている。
【0047】
図6(a)に示すように、カバー712には、軸方向D1に貫通した吸入口712aと排出口712bとが形成されている。吸入口712aは、ヘッド部713bとの間の流路(吸入路771の一部)を介して吸入弁774に連通している。排出口712bは、ヘッド部713bとの間の流路(排出路772の一部)を介して排出弁775に連通している。吸入路771と排出路772との間には、隔壁713cが設けられている。また、ヘッド部713bの中央部には、燃焼室705に露出したインジェクション776が設けられている。
【0048】
切替機構773は、吸入弁774と、排出弁775と、第2変換機構の一例である変換機構780とを有している。吸入弁774は、ヘッド部713bに設けられたポペット弁であり、軸方向D1に往復することで吸入路771を開放及び閉塞する。排出弁775は、ヘッド部713bに設けられたポペット弁であり、軸方向D1に往復することで排出路772を開放及び閉塞する。変換機構780は、吸入弁774及び排出弁775と回転部材733との間に介在され、回転部材733の回転を吸入弁774及び排出弁775の開閉に変換する。変換機構780は、切替溝781と、吸入ローラ部782と、不図示の排出ローラ部とを有している。切替溝781は、回転部材733に形成され、かつ、回転部材733の回転方向の全周に亘って軸方向D1に交互に変位した波形状のカム溝である。切替溝781の一例を
図6(b)に示す。吸入ローラ部782は、吸入弁774から径方向D2に突出して設けられ、切替溝781に嵌合して案内される軸状の部材である。排出ローラ部は、排出弁775から径方向D2に突出して設けられ、切替溝781に嵌合して案内される軸状の部材である。
【0049】
図6(a)に示す矢印は、切替機構773の回転方向を示す。この切替機構773では、回転部材733を回転し、空気の吸入時には、吸入弁774が開放して排出弁775が閉塞し、吸入路771と燃焼室705とを連通し、かつ、排出路772と燃焼室705とを遮断する。回転部材733を回転し、排気ガスの排出時には、排出弁775を開放して吸入弁774が閉塞したときに、排出路772と燃焼室705とを連通し、かつ、吸入路771と燃焼室705とを遮断する。
【0050】
次に、内燃エンジン700の動作について説明する。吸入工程では、回転部材733が回転することで、吸入弁774が開くと共に、ピストン532が下降する。これにより、外部から空気が燃焼室705に吸入される。圧縮工程では、回転部材733が回転することで、吸入弁774及び排出弁775のいずれも閉じ、ピストン732が上死点まで上昇して空気を圧縮し、インジェクション776から燃料が噴射される。燃焼工程では、吸入弁774及び排出弁775のいずれも閉じたまま、点火プラグにより混合気が点火されて燃焼し、燃焼ガスが膨張してピストン732が下死点まで押し下げられる。排気工程では、回転部材733が回転することで、排出弁775が開くと共に、ピストン732が上昇して排気ガスを排出する。
【0051】
以上説明したように、本実施形態の内燃エンジン700によれば、吸排気を切り替える回転部材733がピストン732の中心線C1を中心に回転可能に設けられている。このため、従来のクランク軸と平行な回転軸を用いて吸排気を切り替える場合に比べて、往復回転変換機構730を用いながらも内燃エンジン700を簡易な構成にすることができる。
【0052】
<第4の実施形態>
次に、本開示の第4の実施形態を、
図7及び
図8(a)~(c)を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、燃料燃焼機構870において、ポペットバルブとロータリバルブとを併用している点で、第3の実施形態と構成を異にする。内燃エンジン800について、
図7を用いて概要を説明する。内燃エンジン800は、4ストロークエンジンであって、ケース810と、第1ユニット801と、第2ユニット802と、第3ユニット803とを有している。各ユニット801,802,803には1つずつピストンが設けられ、全体で3気筒の内燃エンジン800となっている。各ユニット801,802,803は回転部材833の位相が120度(240度)ずつずれている他は同様の構成であるので、第1ユニット801について説明し、他のユニット802,803については詳細な説明を省略する。
【0053】
第1ユニット801は、往復回転変換機構830と、燃料燃焼機構870とを有している。往復回転変換機構830は、ケース810に固定されたシリンダ831と、シリンダ831内を軸方向D1に往復可能に配置されたピストン832と、円筒形状の回転部材833と、ピストン832と回転部材833との間に介在され、ピストン832の往復と回転部材833の回転とを変換する変換機構550と、ピストン832がシリンダ831に対して回転することを規制する規制機構560と、を有している。変換機構550と規制機構560とは、第2の実施形態と同様であるので、同符号を付して詳細な説明は省略する。
【0054】
ケース810は、ケース本体811と、ケース本体811に取り付けられたカバー812と、カバー812に取り付けられたシリンダケース813とを有している。シリンダケース813は、シリンダ831を形成する円筒部813a及びヘッド部813bを有している。ピストン832は、シリンダケース813とともに燃焼室805を形成する。
【0055】
回転部材833は、ピストン832の周囲を同軸上に回転可能に配置されている。回転部材833は、シリンダケース813の円筒部813a及びヘッド部813bの外部を覆うように設けられている。回転部材833には、ケース810の下方向Dd側から突出した出力軸806が一体化して設けられている。往復回転変換機構830の作用については、第1の実施形態と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0056】
[燃料燃焼機構]
燃料燃焼機構870は、シリンダ831の内部において燃料を燃焼することでピストン832を押圧して出力を得る。燃料燃焼機構870は、
図7及び
図8(a)に示すように、空気を外部から燃焼室805に吸入するための吸入路871と、排気ガスを燃焼室805から外部に排出するための排出路872と、吸気及び排気を切り替える切替機構873と、を有している。吸入路871は、ヘッド部813bに形成され、燃焼室805に連通可能で、連通により外部から空気を吸入するようになっている。排出路872は、ヘッド部813bに形成され、燃焼室805に連通可能で、連通により外部に排出ガスを排出するようになっている。
【0057】
図8(a)に示すように、カバー812には、軸方向D1に貫通した吸入口812aと排出口812bとが形成されている。吸入口812aは、軸方向D1から視て吸入弁874と重なる位置に配置され、吸入弁874に連通している。排出口812bは、軸方向D1から視て排出弁875と重なる位置に配置され、排出弁875に連通している。吸入路871と排出路872との間には、隔壁813cが設けられている。また、ヘッド部813bの中央部には、燃焼室805に露出したインジェクション876が設けられている。
【0058】
切替機構873は、吸入弁874と、排出弁875と、変換機構880と、ロータリバルブ877とを有している。吸入弁874は、ヘッド部813bに設けられたポペット弁であり、軸方向D1に往復することで吸入路871を開放及び閉塞する。排出弁875は、ヘッド部813bに設けられたポペット弁であり、軸方向D1に往復することで排出路872を開放及び閉塞する。変換機構880は、吸入弁874及び排出弁875と回転部材833との間に介在され、回転部材833の回転を吸入弁874及び排出弁875の開閉に変換する。変換機構880は、切替溝881と、吸入ローラ部882と、不図示の排出ローラ部とを有している。切替溝881は、回転部材833に形成され、かつ、回転部材833の回転方向の全周に亘って軸方向D1に交互に変位した波形状のカム溝である(
図6(b)参照)。吸入ローラ部882は、吸入弁874から径方向D2に突出して設けられ、切替溝881に嵌合して案内される軸状の部材である。排出ローラ部は、排出弁875から径方向D2に突出して設けられ、切替溝881に嵌合して案内される軸状の部材である。
【0059】
ロータリバルブ877は、ヘッド部813bの上側に設けられ、回転部材433と一体化されて同軸上で同期して回転する。
図8(a)に示す矢印は、ロータリバルブ877の回転方向を示す。ロータリバルブ877は、軸方向D1に貫通する貫通孔877aを有している。貫通孔877aは、ロータリバルブ877の回転によって、吸入口812a及び排出口812bのそれぞれに連通可能になっている。尚、
図8(a)における貫通孔877aの位置は、上死点着火時の位置を示す。
【0060】
この切替機構873では、空気の吸入時には、吸入弁874が開放して排出弁875が閉塞し、かつ、貫通孔877aが吸入口812aに重なったときに、吸入路871と燃焼室805とを連通し、かつ、排出路872と燃焼室805とを遮断する。一方、空気の排出時には、排出弁875が開放して吸入弁874が閉塞し、かつ、貫通孔877aが排出口812bに重なったときに、排出路872と燃焼室805とを連通し、かつ、吸入路871と燃焼室805とを遮断する。
【0061】
以上説明したように、本実施形態の内燃エンジン800によれば、吸排気を切り替える回転部材833がピストン832の中心線C1を中心に回転可能に設けられている。このため、従来のクランク軸と平行な回転軸を用いて吸排気を切り替える場合に比べて、往復回転変換機構830を用いながらも内燃エンジン800を簡易な構成にすることができる。
【0062】
尚、本実施形態では、吸入弁874及び排出弁875の2つのポペットバルブを適用した場合について説明したが、これには限られず、ロータリバルブ877を併用することで、吸排気のポペットバルブを1つの吸排弁で兼用することができる。この構成について、以下で説明する。
【0063】
この場合、例えば、
図8(b)に示すように、切替機構873は、シリンダ831に形成され燃焼室805に開口した連通孔878と、軸方向D1に往復することで連通孔878を開放及び閉塞するポペットバルブからなる吸排弁879と、変換機構880と、ロータリバルブ877と、貫通孔877aとを有する。変換機構880は、吸排弁879と回転部材833との間に介在され、回転部材833の回転を吸排弁879の開閉に変換する。変換機構880は、切替溝883と、吸排ローラ部とを有する。切替溝883は、
図8(c)に示すように、回転部材833に配置され、かつ、回転部材833の回転方向の全周に亘って軸方向D1に交互に変位した波形状である。吸排ローラ部は、吸排弁879に配置され、かつ、切替溝883に嵌合して案内される。
【0064】
この切替機構873では、空気の吸入時には、吸排弁879が開放して、かつ、貫通孔877aが吸入口812aに重なったときに、吸入路871と燃焼室805とを連通し、かつ、排出路872と燃焼室805とを遮断する。一方、空気の排出時には、吸排弁879が開放して、かつ、貫通孔877aが排出口812bに重なったときに、排出路872と燃焼室805とを連通し、かつ、吸入路871と燃焼室805とを遮断する。
【符号の説明】
【0065】
400,500,700,800…内燃エンジン、405,505,705,805…燃焼室、431,531,731,831…シリンダ、432,532,732,832…ピストン、433,533,733,833…回転部材、450,550…変換機構(第1変換機構)、451,551…波形溝、452,552…ローラ部、471,571,771,871…吸入路、472,572,772,872…排出路、473,573,773,873…切替機構、474…ロータリバルブ(円板状部材)、476…貫通孔、513c…吸入孔、513d…排出孔、534…環状部材、534a…貫通孔、774,874…吸入弁、775,875…排出弁、780,880…変換機構(第2変換機構)、781,881…切替溝、782,882…吸入ローラ部、D1…軸方向、D2…径方向