(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151343
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20231005BHJP
F16H 57/04 20100101ALI20231005BHJP
H02K 5/20 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H02K9/19 A
F16H57/04 G
H02K5/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060916
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 彰一
(72)【発明者】
【氏名】三上 淳
(72)【発明者】
【氏名】宮地 大祐
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智彦
【テーマコード(参考)】
3J063
5H605
5H609
【Fターム(参考)】
3J063AA02
3J063AB12
3J063AC01
3J063XH02
3J063XH04
3J063XH22
3J063XH42
5H605AA01
5H605BB05
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5H605DD13
5H609BB01
5H609BB19
5H609PP02
5H609PP05
5H609PP06
5H609PP07
5H609PP17
5H609QQ02
5H609QQ04
5H609QQ08
(57)【要約】
【課題】大型化及びコスト増を抑えながら回転電機を冷却する。
【解決手段】ステータ11と、ケース50に回転可能に支持されたロータシャフト13と、ロータシャフト13に固定され、かつ、ステータ11の内側でステータ11に対して回転可能に設けられたロータ12と、を有するモータ10と、を備える。ケース50は、モータ10を収容する第1空間S1と、外部に露出した外壁55を少なくとも一部に有し、かつ、第1空間S1を形成する壁部54と、第1空間S1に開口した外周側開口71と、第1空間S1に開口し、かつ、ロータシャフト13の径方向に関して外周側開口71よりも内周側に配置された内周側開口72と、少なくとも一部が外壁55の内部において形成され、かつ、壁部54の内部を通って外周側開口71と内周側開口72とを連通する連通路73と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケースに収容されて固定されたステータコアと前記ステータコアから軸方向の両側に突出したコイルエンドとを有するステータと、前記ケースに回転可能に支持された回転軸と、前記回転軸に固定され、かつ、前記ステータの内側で前記ステータに対して回転可能に設けられたロータと、を有する回転電機と、を備え、
前記ケースは、
前記回転電機を収容する空間部と、
外部に露出した外壁を少なくとも一部に有し、かつ、前記空間部を形成する壁部と、
前記空間部に開口した外周側開口と、
前記空間部に開口し、かつ、前記回転軸の径方向に関して前記外周側開口よりも内周側に配置された内周側開口と、
少なくとも一部が前記外壁の内部において形成され、かつ、前記壁部の内部を通って前記外周側開口と前記内周側開口とを連通する連通路と、を有する、
車両用駆動装置。
【請求項2】
前記ロータ及び前記回転軸の少なくとも一方に、表面が前記径方向に関して外周側に向くように立設された送風羽根を有する、
請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記ケースは、前記外壁において少なくとも前記連通路が形成されている部位の外側面に、放熱板を有する、
請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記外周側開口は、前記回転軸の軸方向に関して、前記ロータよりも軸方向一方側に配置され、
前記内周側開口は、前記軸方向に関して、前記ロータよりも軸方向他方側に配置され、
前記ロータは、前記軸方向に貫通した通気孔を有する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記ケースに収容され、外周部が前記ケースの前記壁部に接触した状態で前記ケースに固定して設けられ、内周部が前記ステータコアの外周面に接触することで前記ステータコアを冷却及び支持するウォータジャケット部を備え、
前記連通路は、前記ウォータジャケット部の前記外周部に接触する前記壁部に形成され、かつ、前記ウォータジャケット部の外周側を通過するように配置されている、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この技術は、回転電機を搭載した車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転電機を搭載し、電気自動車やハイブリッド車に適用される車両用駆動装置が普及している。このような車両用駆動装置では、搭載した回転電機の加熱を低減するために、回転電機を効果的に冷却することが望まれている。そのための構成として、回転電機のロータの内部を冷却するために、ロータシャフトと、ロータ側面と、ロータ内部に冷却油を流通させる油路を設け、冷却油を循環させる構成が開発されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、冷却油をロータシャフトからロータの軸方向端部と外周部とに循環させる複雑な油路を設けているので、全体として装置の大型化及びコスト増を招いてしまう。また、ロータの高速回転時に冷却油がロータ内部を流通する際に、遠心力で外周側に押し付けられ、冷却油が停滞する虞がある。これを解決するためには、オイルポンプを高圧化する必要があり、これによっても装置の大型化及びコスト増を招いてしまう。
【0005】
そこで、大型化及びコスト増を抑えながら回転電機を冷却可能な車両用駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本車両用駆動装置は、ケースと、前記ケースに収容されて固定されたステータコアと前記ステータコアから軸方向の両側に突出したコイルエンドとを有するステータと、前記ケースに回転可能に支持された回転軸と、前記回転軸に固定され、かつ、前記ステータの内側で前記ステータに対して回転可能に設けられたロータと、を有する回転電機と、を備え、前記ケースは、前記回転電機を収容する空間部と、外部に露出した外壁を少なくとも一部に有し、かつ、前記空間部を形成する壁部と、前記空間部に開口した外周側開口と、前記空間部に開口し、かつ、前記回転軸の径方向に関して前記外周側開口よりも内周側に配置された内周側開口と、少なくとも一部が前記外壁の内部において形成され、かつ、前記壁部の内部を通って前記外周側開口と前記内周側開口とを連通する連通路と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本車両用駆動装置によると、大型化及びコスト増を抑えながら回転電機を冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態に係る車両用駆動装置を示す断面図である。
【
図2】第1の実施形態に係るケース本体を軸方向から視た模式図である。
【
図3】第1の実施形態の変形例に係る車両用駆動装置を示す断面図である。
【
図4】第2の実施形態に係る車両用駆動装置を示す断面図である。
【
図5】第3の実施形態に係る車両用駆動装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1の実施形態>
以下、本開示の第1の実施形態を、
図1~
図3を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、車両用駆動装置1を電気自動車の前輪駆動用に適用した場合について説明する。車両用駆動装置1について、
図1を用いて概要を説明する。車両用駆動装置1は、回転電機としてのモータ10と、動力伝達機構20と、ディファレンシャル装置30と、これらを収容するケース50とを有している。尚、本実施形態では、車両用駆動装置1を搭載する車両の幅方向、即ち、モータ10やディファレンシャル装置30の回転軸の軸線方向を軸方向D1とし、
図1における右側を軸方向一方側としての右側R、左側を軸方向他方側としての左側Lと表記する。また、駆動連結とは、互いの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、それら回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いはそれら回転要素がクラッチ等を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いる。
【0010】
モータ10は、ケース50に固定されたステータ11と、ステータ11に対して内周側で回転可能に設けられたロータ12と、ケース50に回転可能に支持された回転軸の一例であるロータシャフト13と、を有している。ステータ11は、ステータコア14と、ステータコア14に巻回されたコイル15とを有している。コイル15の軸方向D1の両端部は、ステータコア14から両側に突出したコイルエンド15aを形成している。ステータコア14は、後述するウォータジャケット部60の内周部に嵌合して固定されている。
【0011】
ロータ12は、ロータシャフト13に固定され、かつ、ステータ11の内側でステータ11に対して回転可能に設けられている。ロータ12は、不図示のマグネットを有している。マグネットは、例えば、軸方向D1を長手方向とする形状であり、ロータコアに形成された軸方向D1の長孔に収容されている。モータ10には不図示のインバータが接続され、不図示のバッテリから供給された電力がインバータを介してモータ10に供給され、モータ10が駆動する。モータ10の冷却構成については、後述する。
【0012】
動力伝達機構20は、第1軸AX1に同軸に設けられた第1回転軸21と、第1軸AX1に固定して設けられたギヤ23とを有する。第1回転軸21は、ロータシャフト13に一体化されている。ギヤ23は、後述するデフリングギヤ31よりも小径でデフリングギヤ31に噛合している。従って、ロータ12の回転は、第1回転軸21を経てディファレンシャル装置30に伝達され、その際に減速される。
【0013】
ディファレンシャル装置30は、第1軸AX1と平行で異なる位置に配置された第2軸AX2に同軸に設けられている。ディファレンシャル装置30は、動力伝達機構20のギヤ23に駆動連結されたデフリングギヤ31と、デフリングギヤ31が一体化されたデフケース32と、デフケース32に内包された差動機構33と、を有する。差動機構33は、延長シャフト34を介して装着された左右のドライブシャフトの回転差を吸収する。差動機構33は、既知の適宜な機構を適用できるため、詳細な説明を省略する。
【0014】
ケース50は、モータ10と動力伝達機構20とディファレンシャル装置30とを収容するケース本体51と、モータ10を収容する空間部としての第1空間S1と、第1空間S1の左側Lを閉塞する第1カバー52と、動力伝達機構20及びディファレンシャル装置30を収容する第2空間S2と、第2空間S2の右側Rを閉塞する第2カバー53とを有している。
【0015】
また、ケース50は、第1空間S1を形成する壁部54を有し、壁部54の少なくとも一部は外部に露出した外壁55となっている。第1空間S1と第2空間S2とは、隔壁57により仕切られている。ロータシャフト13及び第1回転軸21は、隔壁57を軸方向D1に貫通して設けられている。ロータシャフト13は、軸方向D1の左側Lの端部を軸受16によって第1カバー52に回転可能に支持され、右側Rの端部を軸受17によって隔壁57に回転可能に支持されている。また、第1回転軸21と隔壁57との間には、シールリング18が設けられ、第2空間S2から第1空間S1に潤滑油が入り込むことを防止している。
【0016】
[モータの冷却構成]
次に、モータ10を冷却するための冷却構成について説明する。ケース本体51の第1空間S1には、ウォータジャケット部60が設けられている。ウォータジャケット部60は、ジャケットケース61と水路62とを有している。ジャケットケース61は、略円筒形状で、ケース本体51の第1空間S1を構成する壁部54の内周部に圧入されて固定されている。ジャケットケース61は、外周面に周方向に1周に亘る溝が形成されている。この溝と壁部54とにより、冷却水が流通する水路62が構成される。即ち、ウォータジャケット部60は、ケース50に収容され、外周部がケース50の壁部54に接触した状態でケース50に固定して設けられている。
【0017】
ジャケットケース61の内周側には、ステータコア14が配置されている。即ち、ウォータジャケット部60は、内周部がステータコア14の外周面に接触することで、ステータコア14を冷却及び支持する。水路62には、不図示のラジエータから冷却水が供給され、周方向の1周に亘って冷却水が循環することで、接触するステータコア14を冷却することができる。
【0018】
ここで、ロータ12の回転により、ロータ12に引きずられた空気が外周側に押圧され第1空間S1の内部では外周側が高圧になり内周側が低圧になる。外周側にはウォータジャケット部60や外壁55が配置されていることから、内周側よりも温度が低くなる。そこで、冷えた外周側の空気と内周側の空気とを循環させることにより、全体として空気を冷やし、これによってウォータジャケット部60では直接冷却されないロータ12やコイルエンド15aを冷却することが考えられる。以下、そのための空冷機構70について、詳細に説明する。
【0019】
ケース50は、空冷機構70として、第1空間S1に開口した外周側開口71及び内周側開口72と、外周側開口71と内周側開口72とを連通する連通路73とを有している。外周側開口71は、第1空間S1内において高圧空気のある位置に配置され、軸方向D1の右側Rの壁部54の周側部に配置されている。内周側開口72は、ロータシャフト13の径方向に関して外周側開口71よりも内周側に配置されており、本実施形態では第1空間S1内において低圧空気のある位置に配置され、左側Lの壁部54でロータ12に対して軸方向D1に対向し、かつ、径方向から視て左側Lのコイルエンド15aに重なる位置に配置されている。連通路73は、少なくとも一部が外壁55の内部において形成され、かつ、壁部54の内部を通るように形成されている。本実施形態では、連通路73は、外周側開口71から外壁55の内部を左側に向けて延設され、左側Lの壁部54を内径側に向けて延設され、内周側開口72に連通するように形成されている。これにより、ロータ12の回転中には、高圧空気が外周側開口71から連通路73に入り込み、内周側開口72から吹き出され、外周側の低温の空気が内周側との間で循環され、全体としてロータ12やコイルエンド15aを冷却することができる。
【0020】
図2は、ケース本体51を軸方向から視た模式図である。
図2に示すように、連通路73は、2本設けられている。各連通路73には、外周側開口71及び内周側開口72が1つずつ連通されている。連通路73は、第1空間S1を形成する壁部54を外側に拡張させて、その内部に形成されている。また、連通路73は、第1軸AXと第2軸AXとの両方の近傍となる位置に配置されており、例えば、第1軸AXと第2軸AXとの両方からの各距離が同程度となるように配置されている。連通路73の断面積は、適宜設定することができる。
【0021】
本実施形態では、連通路73の数量や配置位置はこれには限られず、例えば、単数としたり、3本以上としてもよい。また、連通路73に外周側開口71及び内周側開口72が1つずつ連通されていることには限られず、1本の連通路73に複数の外周側開口71、あるいは複数の内周側開口72が連通されるようにしてもよい。
【0022】
外周側開口71と内周側開口72との断面積は、広い方が空気の流通量を増やせるので好ましいが、大型化してしまうので、適宜設定するようにする。また、外周側開口71の断面積は、内周側開口72の断面積以上であることが、吹き付け力を大きくするために好ましい。
【0023】
図1に示すように、外周側開口71は、軸方向D1に関してロータ12よりも右側Rに配置され、内周側開口72は、軸方向D1に関してロータ12よりも左側Lに配置されている。連通路73は、ウォータジャケット部60の外周部に接触する壁部54、即ち外壁55に形成され、かつ、ウォータジャケット部60の外周側を通過するように配置されている。また、ロータ12は、軸方向D1に貫通した通気孔12aを有している。この通気孔12aは、マグネットを収容する長孔とは別であり、内部には収容部材は無いものとしている。
【0024】
ロータ12の軸方向D1の両端部には、送風羽根74が設けられている。送風羽根74は、表面が径方向に関して外周側に向くように立設されている。これにより、ロータ12の回転によって、送風羽根74の近傍の空気は外周側に送風される。尚、本実施形態では、送風羽根74はロータ12に設けられている場合について説明しているが、これには限られず、ロータシャフト13の外周面に設けられるようにしてもよい。即ち、送風羽根74は、ロータ12及びロータシャフト13の少なくとも一方に設けられる。尚、送風羽根74は、表面が径方向に関して外周側に向くように立設することには限られず、例えば軸方向D1に沿った形状や、軸方向D1に対して捩れた形状や、その他の形状あってもよい。
【0025】
ケース50は、外壁55において、少なくとも連通路73が形成されている部位の外側面に、放熱板56を有している。放熱板56は、外部の空気に外壁55の熱を放熱するものであり、例えばリブ状に立った状態で配置された複数のフィンからなる。放熱板56は、ケース本体51と一体であってもよく、あるいはケース本体51に後付けで取り付けた部材であってもよい。
【0026】
上述したモータ10の駆動時の冷却について説明する。モータ10の駆動時には、主としてロータ12、ステータコア14、コイルエンド15aを冷却することが望まれる。まず、ウォータジャケット部60の水路62に冷却水を流通させることで、ステータコア14を外周側から冷却することができる。そして、ロータ12の回転により、第1空間S1の内部で外周側が高圧になり、その高圧空気が外周側開口71から入り込む。この空気は、連通路73を通過する際に、内周側をウォータジャケット部60により冷却され、外周側を放熱板56を有する外壁55により冷却され、低温になる。
【0027】
冷却された空気は、更に連通路73を流通し、内周側開口72から第1空間S1に吹き出される。吹き出された空気の一部は、ロータ12の通気孔12aに入り込んで軸方向D1に流通し、その際にロータ12を内側から冷却する。この空気は、内周側開口72とは反対側(右側R)の空間に達し、右側Rのコイルエンド15aを冷却して、右側Rの送風羽根74及び遠心力によって再び外周側開口71に入り込む。内周側開口72から吹き出された空気の他の一部は、左側Lの送風羽根74及び遠心力によって外周側に流れ、コイルエンド15aを冷却する。
【0028】
以上説明したように、本実施形態の車両用駆動装置1によれば、外周側開口71と、内周側開口72と、連通路73とを有しているので、ロータ12の回転中には、高圧空気が外周側開口71から連通路73に入り込み、内周側開口72から吹き出される。連通路73には、低温の外壁55があるため、流通する空気は冷却されるので、外周側の低温の空気が内周側との間で循環され、全体としてロータ12やコイルエンド15aを冷却することができる。これにより、ポンプなどの別部材を設けることなく、高温と低温の空気の循環を実現することで、大型化及びコスト増を抑えながらモータ10を冷却することができる。
【0029】
また、本実施形態の車両用駆動装置1によれば、外周側開口71と内周側開口72とを、ロータ12の右側Rと左側Lとに分けて配置している。このため、連通路73はステータコア14の外側をステータコア14に沿って配置される。そして、連通路73が形成される壁部54にはウォータジャケット部60が接触されているので、壁部54を冷却することで、連通路73を流通する空気を効果的に冷却することができる。
【0030】
また、本実施形態の車両用駆動装置1によれば、外周側開口71と内周側開口72とをロータ12の右側Rと左側Lとに分けて配置し、ロータ12に通気孔12aが設けられているので、ロータ12を効果的に冷却することができる。しかも、ロータ12に通気孔12aを設けることで、ロータ12の軽量化を図ることもできる。
【0031】
また、本実施形態の車両用駆動装置1によれば、ロータ12に送風羽根74が設けられているので、第1空間S1における内周側の空気を外周側に送風することができ、空気の循環を促進して、モータ10の冷却をより効果的にできる。
【0032】
また、本実施形態の車両用駆動装置1によれば、外壁55に放熱板56が設けられているので、外壁55を冷却することで、連通路73を流通する空気をより効果的に冷却することができる。
【0033】
尚、本実施形態の車両用駆動装置1では、モータ10の冷却のためにウォータジャケット部60による水冷を適用しているが、これには限られず、例えばウォータジャケット部60を使用せずに冷却油を用いた冷却機構を使用するようにしてもよい。この場合、冷却機構は、冷却油がロータ12に触れないように、ステータ11の下部が漬かる程度に冷却油を吸排する。
【0034】
また、本実施形態の車両用駆動装置1では、送風羽根74や放熱板56を設けた場合について説明したが、これには限られず、他の条件で冷却効果を得られるようであれば送風羽根74や放熱板56は無くてもよい。
【0035】
また、本実施形態の車両用駆動装置1では、1本の連通路73が1つの外周側開口71と1つの内周側開口72とを有する場合について説明したが、これには限られない。例えば、
図3に示すように、1本の連通路73が1つの外周側開口71と2つの内周側開口72とを有するようにしてもよい。この場合、2つの内周側開口72の配置は、ロータシャフト13を挟んで反対側とすることが好ましい。これにより、冷却された空気を2箇所から吹き出すことができるので、ロータ12やコイルエンド15aの冷却を全体的に行うことができるようになる。
【0036】
また、本実施形態の車両用駆動装置1では、電気自動車の前輪駆動用に適用した場合について説明したが、これには限られず、例えば後輪駆動用であってもよく、あるいはハイブリッド車に適用してもよい。
【0037】
<第2の実施形態>
次に、本開示の第2の実施形態を、
図4を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、空冷機構170の外周側開口171、内周側開口172、連通路173がいずれもロータ12の片側(左側L)に配置されている点で、第1の実施形態と構成を異にしている。但し、それ以外の構成については、第1の実施形態と同様であるので、符号を同じくして詳細な説明を省略する。
【0038】
本実施形態では、外周側開口171は、左側Lのコイルエンド15aよりも外周側に配置され、内周側開口172は、左側Lのコイルエンド15aよりも内周側に配置され、連通路173は第1カバー52の外壁の内部に形成されている。
【0039】
ロータ12の回転により、第1空間S1の内部で外周側が高圧になり、高圧空気は外周側に配置されているウォータジャケット部60や外壁55により冷却される。その冷却された高圧空気が外周側開口171から入り込み、連通路173を通過する際に、第1カバー52の外壁により冷却され、更に低温になる。
【0040】
冷却された空気は、内周側開口172から第1空間S1に吹き出される。吹き出された空気の一部は、左側Lの送風羽根74及び遠心力によって外周側に流れ、コイルエンド15aを冷却し、再び外周側開口171に入り込む。内周側開口172から吹き出された空気の他の一部は、ロータ12の通気孔12aに入り込んで軸方向D1に流通し、その際にロータ12を内側から冷却する。この空気は、内周側開口172とは反対側(右側R)の空間に達し、右側Rの送風羽根74及び遠心力によって外周側に流れ、右側Rのコイルエンド15aを冷却して、ウォータジャケット部60や外壁55により冷却されて、再び外周側開口171に入り込む。
【0041】
以上説明したように、本実施形態の車両用駆動装置1によれば、外周側開口171と、内周側開口172と、連通路173とを有しているので、ロータ12の回転中には、高圧空気が外周側開口171から連通路173に入り込み、内周側開口172から吹き出される。連通路173には、低温の外壁があるため、流通する空気は冷却されるので、外周側の低温の空気が内周側との間で循環され、全体としてロータ12やコイルエンド15aを冷却することができる。これにより、ポンプなどの別部材を設けることなく、高温と低温の空気の循環を実現することで、大型化及びコスト増を抑えながらモータ10を冷却することができる。
【0042】
<第3の実施形態>
次に、本開示の第3の実施形態を、
図5を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、冷却された空気がロータシャフト13の内部空間13aを流通する点で、第1の実施形態と構成を異にしている。但し、それ以外の構成については、第1の実施形態と同様であるので、符号を同じくして詳細な説明を省略する。
【0043】
本実施形態では、空冷機構270は、第1の実施形態と同様の外周側開口271及び連通路273を有するが、内周側開口272は中空のロータシャフト13の内部空間13aに開口している。ロータシャフト13は、内部空間13aと、内外に貫通する複数の通気口13bとを有している。内周側開口272から内部空間13aに流入された冷却された空気は、ロータシャフト13内を流通することでロータ12を冷却し、通気口13bから外周側に排出されて外周側に流れる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態の車両用駆動装置1によれば、外周側開口271と、内周側開口272と、連通路273とを有しているので、ロータ12の回転中には、高圧空気が外周側開口271から連通路273に入り込み、内周側開口272から吹き出される。連通路273には、低温の外壁55があるため、流通する空気は冷却されるので、外周側の低温の空気が内周側との間で循環され、全体としてロータ12やコイルエンド15aを冷却することができる。これにより、ポンプなどの別部材を設けることなく、高温と低温の空気の循環を実現することで、大型化及びコスト増を抑えながらモータ10を冷却することができる。
【0045】
また、本実施形態の車両用駆動装置1によれば、冷却された空気がロータシャフト13の内部を流通するので、ロータ12に通気孔12a(
図1参照)を設けることなくロータ12を冷却することができる。また、通気口13bの形成箇所を周方向に増やすことで、ロータ12やコイルエンド15aの冷却をより全体的に行うことができるようになる。
【符号の説明】
【0046】
1…車両用駆動装置、10…モータ(回転電機)、11…ステータ、12…ロータ、13…ロータシャフト(回転軸)、14…ステータコア、15a…コイルエンド、50…ケース、54…壁部、55…外壁、56…放熱板、71,171…外周側開口、72,172…内周側開口、73,173…連通路、74…送風羽根、60…ウォータジャケット部、D1…軸方向、L…左側(軸方向他方側)、R…右側(軸方向一方側)、S1…第1空間(空間部)