(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023015135
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】薬剤送達装置
(51)【国際特許分類】
A61K 9/00 20060101AFI20230124BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230124BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230124BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230124BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20230124BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230124BHJP
A61M 35/00 20060101ALI20230124BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
A61K9/00
A61P29/00
A61P35/00
A61P37/02
A61K9/70
A61K45/00
A61M35/00 Z
A61K38/16
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171479
(22)【出願日】2022-10-26
(62)【分割の表示】P 2021131298の分割
【原出願日】2016-07-22
(31)【優先権主張番号】62/196,558
(32)【優先日】2015-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/196,568
(32)【優先日】2015-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517284522
【氏名又は名称】ソレント・セラピューティクス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ラッセル・フレデリック・ロス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】生物活性薬剤などの薬剤を送達する薬剤送達装置を提供する。
【解決手段】具体的には、薬剤を表皮の一つまたは複数の領域に送達し、それによってリンパ系に送達するための薬剤送達装置であって、表皮の1つ以上の層と、ナノ構造またはナノトポグラフィー表面を含む1つ以上の可逆的透過性促進剤とを接触させるように構成された、薬剤送達装置が提供される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書の一部に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は米国特許仮出願第62/196,558号および第62/196,568号(
両方とも2015年7月24日出願)の優先権を主張し、その内容全体を参照により本明
細書に組み込む。
【0002】
本発明は皮膚を通した薬剤の送達に関する。生物活性薬剤などの薬剤を送達する方法が
本発明で企図されている。具体的には、薬剤を表皮の一つまたは複数の領域に送達し、そ
れによってリンパ系に送達するための方法が記述されている。
【背景技術】
【0003】
リンパ系への薬物の送達は、多くの疾患の治療のために不可欠な機構として実現されて
きた。しかし、リンパ管の生理機能および流体静力学は、リンパ系を標的として薬剤を直
接送達する現在の方法論を無効にしてきた。現在利用されている多くの方法は血液系をま
ず標的としており、これは低流量では毛細血管から出て、間質組織の中およびリンパ系の
中に入る。これらのアプローチは特定の薬物化学修飾または薬物脂質またはナノ担体に依
存する。
【0004】
リンパ系は免疫系の主な構成要素の一つである。これは、免疫原、病原体、体液および
、間質組織からのタンパク質および脂肪粒子を含む粒状物質の輸送に重要な役割を持つ。
リンパ管は、免疫および多数の疾患状態に重要な役割を持つことも以前から理解されてい
た。リンパ管は特定癌の発生および原発腫瘍の転移性播種の両方の主要経路である。例え
ば、リンパ腫(例えば、ホジキンリンパ腫およびBIT細胞新生物)は、すべての癌発生
の少なくとも5%およびすべての血液癌の半数以上を占めると予測される。さらに、転移
の最も一般的な経路は、原発腫瘍からの悪性細胞がリンパ系に入り、遠隔場所およびその
他の器官組織に二次腫瘍を播種するというものである。非小細胞肺癌(NSCLC)では
、手術後の生存は、腫瘍が肺内のリンパ節で見つかった場合ほぼ半分に低下し、肺のすぐ
外側(縦隔)のリンパ節が浸潤している場合はそのまた半分となる。
【0005】
リンパ管は、感染症および慢性疾患に起因する炎症のエピソード時に重要な役割を果た
すことも知られている。感染の間、有害な微生物、損傷細胞、および有毒な副産物を除去
してろ過するために、間質液排出の生理学的必要性がある。これに応じて、局所リンパ管
は強い炎症誘発性リンパ管新生(すなわち、毛細リンパ管成長および伸展)を受ける。し
ばしば、炎症状態の存在はリンパ節腫脹またはリンパ節炎をもたらす。さらに、リンパ管
新生およびリンパ節炎の生理学的反応は、関節リウマチ、糖尿病、炎症性腸疾患、および
慢性移植拒絶反応を含む、慢性疾患のいくつかのクラスで重要なことが知られている。
【0006】
リンパ管構造への送達の非標的試行には、静脈内(i.v.)、皮下(s.c.)、筋
肉内(i.m.)もしくは皮内(i.d.)注射の異なる非経口投与方法または経口送達
方法が含まれた。これらの方法のそれぞれは、注射部位、試験動物の生理機能、および非
常に変わりやすい吸収動態を持つリンパ管の全体的生理機能に依存する可能性が高い、様
々なレベルのリンパ吸収を受けてきた。経口または静脈内送達された薬物はまず血液系に
入り、これは異なる器官への全身分布をもたらし、経口送達薬物はしばしば初回通過代謝
効果に悩まされる。リンパ送達のためのその他の非経口投与方法(s.c.、i.m.、
i.d.)は一貫性がなく、再現性がなかった。このような一つの試験で、ヒツジのカニ
ューレ処置脚のs.c.またはi.d.注射後に、高レベルの遺伝子組み換えインターフ
ェロンα-2aがリンパ内にあることが分かった。Supersaxo, A. et
al., Pharm.Res., 5(8), 472-476 (1988)を参照
のこと。しかし、これらの結果は、ウサギを使用したその他の試験のs.c.投与後では
再現することができなかった(Yoshikawa, H. et al., J Ph
armacobio-Dyn., 8(3), 206-210 (1985)を参照)
。
【0007】
リンパ管を標的とする担体ベースのシステムを使用するために、様々な第二世代標的送
達試行が行われてきており、これには経リンパ管薬物送達システム(例えば、リポソーム
および脂質ベースのナノ製剤)、マイクロまたはナノ粒子担体、マクロ分子ポリマー、ポ
リマーミセル、活性炭素、シリコン、およびO/WまたはW/Oナノエマルジョンおよび
抗体ベースのリンパ標的が含まれる。例えば、Xie et al., Expert
Opin. Drug Deliv., 6(8), 25 785-792 (200
9)およびZhang and Wei-Yue., Cancer Biol Med
., (11), 247-254 (2014)を参照。
【0008】
典型的には、これらの担体システムは従来型のi.v.、s.c.、i.d.、または
i.m.経路で体に注射するか、または経口的に服用する。上述のように、i.v.およ
び経口経路の投与は、これらの投与担体が全身に希釈される可能性があり、まず血液系を
出てリンパ管に入る必要もあるため、不良なリンパ取り込みをもたらす。リポソームおよ
びナノ粒子製剤と関連する既知の問題には、低いリンパ取り込み率および予測不能な薬物
放出率が含まれ、各薬物が送達されるためには、高度に特異的なリポソーム製剤を送達す
る必要がある。さらに、注射されたリポソーム担体はしばしば、リンパ系に入ることがで
きない間質組織内に詰まり、マクロファージ媒介輸送の二次機構を必要とする。Ouss
oren et al., Adv. Drug Deliv. Rev., 50(1
-2), 143-156 (2001)を参照。
【0009】
リンパ管に薬物を局所的に放出するための移植可能な装置を描写したその他のアプロー
チが、WO2007/047539およびUS2010/0278725に記述されてい
る。しかし、リンパ送達のためのこれらの移植可能な装置は高額で侵襲的であり、これは
患者の痛みの増加ならびにコンプライアンスおよび満足度の減少につながりうる。さらに
、これらのアプローチは、血管またはリンパ管構造をほとんどまたは全く持たない皮膚の
皮下層内へのこのような装置の配置に依存している。皮内注射を使用したリンパ管への送
達アプローチが、US2005/0180952に記述されている。これらのような技術
は領域集中ボーラス注射を利用し、これは注射の領域に依存した制御不能な薬物吸収速度
および高価な薬物材料の浪費につながりうる。さらに、真皮の単一投与深さに薬物を注射
することは、薬物が毛細リンパ管の少ない場所に送達されることまたは皮下組織中への薬
物の拡散もしくは移動のために、患者間での変動につながりうる。マントーツベルクリン
皮膚検査などのその他の一般的な皮内注射技術は、不正確であり、再現性良く投与するこ
とが困難なことが知られている。
【0010】
このように、薬剤(例えば、生物活性薬剤)をリンパ系に送達するための、新しくて再
現性があり効率的な方法に対するニーズがある。
【発明の概要】
【0011】
本明細書に記述の一実施形態は、一つまたは複数の薬剤を被験者の一つまたは複数のリ
ンパ組織に送達する方法であり、本方法は、(a)表皮の一つまたは複数の層を一つまた
は複数の可逆的透過性促進剤と接触させる工程であって、一つまたは複数の可逆的透過性
促進剤が、少なくとも一つまたは複数の薬剤に対する表皮の一つまたは複数のバリア細胞
の透過性の可逆的増加を誘発する工程と、(b)制御された投与流量の一つまたは複数の
薬剤の2~50,000部分用量で、合計液体投薬量を投与する工程であって、一つまた
は複数の薬剤の表皮内のその後の拡散または移動前に、一つまたは複数の薬剤の各部分用
量が、表皮内の複数の独立した深さに独立して投与され、投与の後、一つまたは複数のバ
リア細胞の透過性が、表皮が一つまたは複数の透過性促進剤と接触する前に、正常状態に
戻る工程とを含む。
【0012】
本明細書に記述した別の実施形態は、リンパ節炎の一つまたは複数の部位に一つまたは
複数の生物活性薬剤を投与することにより、リンパ節炎の一つまたは複数の部位を含む疾
患を持つ被験者を治療する方法であって、(a)2~50,000個の送達構造を持つ一
つまたは複数の送達装置を、リンパ管構造を持つ皮膚の一つまたは複数の部位に適用する
工程であって、送達装置が、表皮の一つまたは複数の層と、少なくとも一つまたは複数の
生物活性薬剤に対する表皮の一つまたは複数のバリア細胞の透過性の可逆的増加を誘発す
る一つまたは複数の可逆的透過性促進剤とを接触させる工程と、(b)送達装置を通して
制御された投与流量で、一つまたは複数の生物活性薬剤の2~50,000部分用量の合
計液体投薬量を投与する工程であって、一つまたは複数の生物活性薬剤の各部分用量が、
一つまたは複数の薬剤の表皮内のその後の拡散または移動前に、表皮内の複数の独立した
深さに独立して投与され、投与段階の後、一つまたは複数の生物活性薬剤が表皮を通り表
皮の基底層を通って、下にある生育可能な真皮の少なくとも一部分の中へと深く移動また
は拡散して、一つまたは複数の感受性毛細リンパ管叢によって一つまたは複数の生物活性
薬剤を、同一の一つまたは複数の生物活性薬剤の静脈内、皮内、または皮下送達と比べて
、より多くリンパ管構造に送達することを達成し、投与および取込み後、一つまたは複数
の生物活性薬剤が血管構造を通って一つまたは複数のリンパ節を含む一つまたは複数の二
次リンパ組織へと循環し、それによって一つまたは複数の生物活性薬剤をリンパ節炎の一
つまたは複数の部位に投与する工程とを含む方法。
【0013】
本明細書に記述した実施形態の一部の態様では、表皮は生育不能な表皮および生育可能
な表皮の両方を含む。
【0014】
本明細書に記述した実施形態の一部の態様では、複数の独立した深さは、表皮内投与の
複合平均深さを持ち、独立して投与される部分用量それぞれは、表皮内の深さがより深い
深さ、より浅い深さ、または同じ深さである。
【0015】
本明細書に記述した実施形態の一部の態様では、表皮内の複数の深さに投与された一つ
または複数の薬剤の合計液体投薬量は、生育不能な表皮の少なくとも一部分および/また
は生育可能な表皮の少なくとも一部分内の深さへの投与を含む。
【0016】
本明細書に記述した実施形態の一部の態様では、表皮内の複数の深さは、被験者の表皮
の最表面層を約1μm~約500μm超えた深さである。
【0017】
本明細書に記述した実施形態の一部の態様では、生育可能な表皮内の複数の深さは、最
も深い生育不能な表皮層を約1μm~約250μm超えるが、それでもまだ生育可能な表
皮内にある深さである。
【0018】
本明細書に記述した実施形態の一部の態様では、独立した複数の深さの平均は、表皮の
最表面層を約70μm~約175μm超えた表皮内の複合平均部分用量送達深さを示す。
【0019】
本明細書に記述した実施形態の一部の態様では、一つまたは複数の薬剤の合計液体投薬
量は、一つまたは複数の生育可能な表皮層のみから成り、生育不能な表皮層は含まない表
皮内の複数の深さに投与される。
【0020】
部分用量本明細書に記述した実施形態の一部の態様では、生育可能および/または生育
不能な表皮内の独立した部分用量投与深さのそれぞれの頻度は、深さのガウス分布を示す
。
【0021】
本明細書に記述した実施形態の一部の態様では、一つまたは複数の薬剤は、一つまたは
複数の送達装置を皮膚の一つまたは複数の部位に適用することによって投与される。
【0022】
本明細書に記述した実施形態の一部の態様では、送達装置は、液体担体媒体中の一つま
たは複数の薬剤と流体連通している送達構造2~50,000個を備えるアレイを含み、
送達装置は投与流量を制御する手段を備え、送達構造は少なくとも表皮の最表層を透過す
るための手段を備え、液体担体媒体中の一つまたは複数の薬剤は送達構造によって被験者
の生育可能な表皮内の複数の深さに送達され、それによって一つまたは複数の薬剤の2~
50,000部分用量を投与しうる。
【0023】
本明細書に記述した実施形態の一部の態様では、送達構造は標準的または非標準的幾何
学形状を備える。
【0024】
本明細書に記述した実施形態の一部の態様では、送達構造はニードルを備える。
【0025】
本明細書に記述した実施形態の一部の態様では、一つまたは複数の薬剤は、送達構造あ
たり約0.01μl/時間~約100μl/時間の制御投与流量で投与される。
【0026】
本明細書に記述した実施形態の一部の態様では、表皮内の複数の深さへの一つまたは複
数の薬剤の全体的な制御投与流量は、被験者の皮膚と接触している送達装置の合計表面積
に基づいて、約0.02μl/時間/cm2~約50,000μl/時間/cm2である
。
【0027】
本明細書に記述した実施形態の一部の態様では、一つまたは複数の薬剤は、約0.7m
m3~約2,500mm3の表皮内の一つまたは複数の薬剤のその後の拡散または移動前
の一つまたは複数の薬剤を取り囲む表皮の組織容積に送達される。
【0028】
本明細書に記述した実施形態の一部の態様では、一つまたは複数の薬剤は、約0.1時
間~約96時間の間、被験者に連続的に投与される。
【0029】
本明細書に記述した実施形態の一部の態様では、一つまたは複数の透過性促進剤は、一
つまたは複数の化学的、物理的、または電気的透過性促進剤である。
【0030】
本明細書に記述した実施形態の一部の態様では、物理的透過性促進剤はナノ構造または
ナノトポグラフィー表面を備える。
【0031】
本明細書に記述した実施形態の一部の態様では、ナノトポグラフィー表面は、本明細書
に記述した送達構造の表面上に作製される。
【0032】
本明細書に記述した実施形態の一部の態様では、皮膚内の複数の深さに投与された一つ
または複数の薬剤は、表皮を通り表皮の基底層を通って、下にある生育可能な真皮の少な
くとも一部分へと深く移動または拡散する。
【0033】
本明細書に記述した実施形態の一部の態様では、一つまたは複数の薬剤の投与は、下に
ある真皮の約1mmHg~約15mmHgの皮膚間質液圧力を達成する。
【0034】
本明細書に記述した実施形態の一部の態様では、一つまたは複数の薬剤は、表皮への送
達後、一つまたは複数の感受性毛細リンパ管叢によって吸収される。
【0035】
本明細書に記述した実施形態の一部の態様では、一つまたは複数の薬剤は、毛細リンパ
管叢およびリンパ管構造を通って、一つまたは複数のリンパ組織へと循環する。
【0036】
本明細書に開示した実施形態の一部の態様では、一つまたは複数のリンパ組織は一つま
たはリンパ節を含む。
【0037】
本明細書に開示した実施形態の一部の態様では、一つまたは複数のリンパ節中の一つま
たは複数の薬剤はリンパ節組織のグラムあたりの初期投投薬量の約0.5%~約30%で
ある。
【0038】
本明細書に記述した実施形態の一部の態様では、一つまたは複数の感受性リンパ組織内
の一つまたは複数の薬剤の濃度は、同一の一つまたは複数の薬剤の静脈内、皮内、または
皮下送達よりも約1.25倍~約50倍高い。
【0039】
本明細書に記述した実施形態の一部の態様では、一つまたは複数の薬剤の血清吸収速度
は、一つまたは複数の薬剤の皮内送達および皮下送達と同等である。
【0040】
本明細書に記述した実施形態の一部の態様では、リンパ節組織に対する全血液組織のグ
ラムあたりの局在化した一つまたは複数の薬剤の初期用量の比率は約36時間後に約5:
1~約15:1である。
【0041】
本明細書に記述した実施形態の一部の態様では、リンパ節組織に対する皮膚組織のグラ
ムあたりの局在化した一つまたは複数の薬剤の初期用量の比率は約36時間後に約0.5
:1~約1:1である。
【0042】
本明細書に記述した実施形態の一部の態様では、一つまたは複数の薬剤は生物活性薬剤
を含む。
【0043】
本明細書に記述した実施形態の一部の態様では、生物活性薬剤は、その治療を必要とす
る患者の疾患を治療する、その進行を遅らせる、発症を遅延する、その予防、その寛解、
または症状を減少するために有用である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】表皮および真皮を含み皮膚のさまざまな組織を示す、皮膚の概略図。
【
図3】活性薬剤を生育可能な皮膚に投与するための例示的送達構造の概略図。
【
図4】活性薬剤を生育可能な皮膚に投与するためのナノトポグラフィー表面を持つ例示的送達構造の概略図。
【
図5】送達の平均深さを示す、生育可能な皮膚への送達方法の概略図。
【
図6】ニードルアレイでの皮膚の貫通後の皮膚の光干渉断層撮影(OCT)画像。
【
図7】Caco-2上皮細胞にニードルを含むナノトポグラフィーによる密着結合タンパク質の調整。
【
図8】リンパ管構造およびリンパ節組織への直接送達を示す、生育可能な皮膚に投与された蛍光標識薬物エタネルセプト(エンブレル(登録商標)として市販されている抗炎症剤)の画像。
【
図9】腋窩および下顎リンパ節への送達を示す、生育可能な皮膚に投与された蛍光標識エタネルセプトの画像。
【
図10】従来型送達方法と比べてリンパ節への送達増加を示す、本発明の方法を使用した生育可能な皮膚への送達後のエタネルセプト生体内分布。
【
図11】皮下注射法と比べて炎症組織領域の濃度の増加を示す、生育可能な皮膚への送達後のエタネルセプトの局在化。
【
図12】皮下注射法と比べた、生育可能な皮膚への投与後の関節炎ラットの炎症減少におけるエタネルセプトの有効性。
【
図13】血清吸収速度が従来型の参照送達方法と同様であることを示す、生育可能な皮膚への送達後のエタネルセプトの血清吸収速度。
【発明を実施するための形態】
【0045】
薬剤がリンパ組織によって制御可能かつ再現性良く吸収される、被験者への生物活性薬
剤の制御送達方法に対するニーズがある。従って、本明細書には、皮膚への一つまたは複
数の薬剤の制御送達の方法が記述されている。本明細書に記述した制御送達方法は、リン
パ組織、特に生育可能な皮膚内の一つまたは複数の感受性毛細リンパ管叢による、一つま
たは複数の薬剤の取り込みを提供する。
【0046】
「生育可能な皮膚」という用語は本明細書で使用する場合、真皮を含む表皮の角質層の
すぐ下にあるが、皮下組織層より上にある皮膚の領域を指す。この用語は生育可能な表皮
および生育可能な真皮の両方を包含する。生育可能な皮膚の実際の深さは、皮膚の場所、
年齢、および所与の被験者の生理機能に応じて異なる。生育可能な皮膚という用語は、皮
膚のこの部分が有核生細胞、しばしば有糸分裂を含むことをさらに指定する。本明細書に
記述した一部の態様では、生育可能な皮膚は、少なくとも一つまたは複数の毛細リンパ管
叢および/または一つまたは複数の毛細血管叢も備える。
【0047】
「生育可能な真皮」という用語は本明細書で使用する場合、表皮の基底層のすぐ下にあ
るが、皮下組織層より上にある皮膚の領域を指す。生育可能な真皮は、真皮の乳頭および
網状層の両方を備え、さらに例えば、その他の組織タイプの中でも特に毛細血管および毛
細リンパ管を備える。
【0048】
「生育可能な表皮」という用語は本明細書で使用する場合、角質層のすぐ下にある皮膚
の領域を指す。生育可能な表皮は、基底層または胚芽層、扁平上皮細胞層または有棘層お
よび顆粒細胞層または顆粒層を備える。
【0049】
「薬剤」という用語は本明細書で使用する場合、送達される化合物、物質、組成物、ま
たは分子を指す。例示的および非限定的例には、生物活性薬剤、核酸(例えば、マイクロ
RNA)、染料(例えば、造影剤および蛍光レポーター)、ワクチンなどが含まれる。
【0050】
「生物活性薬剤」という用語は本明細書で使用する場合、細胞応答を引き出す任意の生
体適合性薬剤を指す。生物活性薬剤という用語には、任意の薬物、活性成分、活性原薬、
またはワクチンを含む。例えば、本明細書の実施形態に記述した生物活性薬剤には、小分
子薬物、バイオシミラー薬物、生物製剤などの薬物、ナノ粒子、脂質、リポソーム、タン
パク質(例えば、組み換えタンパク質、抗体など)および同種のものが含まれうる。
【0051】
「薬物」、「活性成分」、「活性原薬」、または「活性薬剤」という用語は本明細書で
使用する場合、しばしば有益な薬理効果を提供する活性成分、化合物、または物質、組成
物、またはそれらの混合物を指す。特定の活性成分への言及には、該当する場合、活性成
分およびその薬学的に許容可能な塩またはエステルのすべてが含まれる。「投薬量」また
は「用量」という用語は、単回投与で治療効果を生じるのに十分な量を含む活性成分製剤
の任意の形態を示す。
【0052】
「タイトレーション」という用語は本明細書で使用する場合、最適治療効果を提供する
レベルへの薬物投薬量または投与速度の増加を指す。
【0053】
「制御送達」という用語は本明細書で使用する場合、所望の時間にわたって一つまたは
複数の薬剤の制御可能な送達をもたらす投与方法を指す。
【0054】
「制御送達」は本明細書で使用する場合、「修正送達」、「持続性送達」、「延長送達
」および「遅延送達」という用語を包含する。本明細書に記述した一部の態様では、制御
送達方法は、最大時間、治療閾値を達成するための、一つまたは複数の薬剤または活性原
薬の送達をもたらす。
【0055】
「遅延送達」という用語は本明細書で使用する場合、生理学的条件下またはインビトロ
試験で、長期間にわたって望ましいプロファイルに従って一つまたは複数の薬剤を送達す
ることを指す。「長期間」とは、少なくとも約20分、約30分、約1時間、約2時間、
約4時間、約6時間、約8時間、約10時間、約12時間、約14時間、約16時間、約
18時間、約20時間、約24時間、またはそれより長い時間の連続的期間を意味する。
【0056】
「修正送達」という用語は本明細書で使用する場合、生理学的条件下またはインビトロ
試験で、一つまたは複数の薬剤を、即時送達製剤よりも遅い速度で送達することを指す。
【0057】
「持続性送達」という用語は本明細書で使用する場合、活性成分が部分的に初期に放出
されるように、例えば、数分、数時間、または数日などの長期間にわたって一つまたは複
数の薬剤を送達することを指す。持続性放出速度は、例えば、生理学的条件下またはイン
ビトロ試験の、一定時間にわたる一つまたは複数の薬剤または活性原薬のある特定量の送
達を提供しうる。
【0058】
「延長送達」という用語は本明細書で使用する場合、少なくとも約20分、約30分、
約1時間、約2時間、約4時間、約6時間、約8時間、約10時間、約12時間、約14
時間、約16時間、約18時間、約20時間、約24時間、約48時間、約72時間、ま
たはそれより長い時間など、長期間にわたる一つまたは複数の薬剤の送達を指す。
【0059】
「初期送達」または「初期に送達された」という用語は、薬剤が最初に接触する組織の
場所を指す。本明細書に記述した一部の態様では、初期送達は、一つまたは複数の薬剤が
送達装置または送達装置の一つまたは複数の送達構造を通して送達された後、最初に接触
する皮膚(例えば、生育不能表皮、生育可能な表皮、または生育可能な真皮)内の場所を
指す場合がある。
【0060】
本明細書で使用する場合、「従来型送達」とは、静脈内(i.v.)、イオン導入、皮
下(s.c.)、筋肉内(i.m.)、または皮内(i.d.)注射、または局所製剤と
類似の生物学的動力学または活性を持つ、一つまたは複数の物質を送達するために本技術
分野で使用される、本発明前の任意の方法を意味する。例示的方法には、US 5,80
0,420、US 20050180952、ならびにXie et al., Exp
ert Opin. Drug Deliv., 6(8), 785-792 (20
09)、ZhangおよびWei-Yue., Cancer Biol Med.,
(11), 247-254 (2014)(これらのそれぞれは、従来型送達方法の一
般的記述に関して、参照により本明細書に組み込まれる)に記述されたものなど、皮下、
イオン導入、および皮内送達方法が含まれる。
【0061】
「BCSクラスI、II、II、またはIV」という用語は、化合物または活性原薬が
高いまたは低い透過性および高いまたは低い溶解性(例えば、溶解が不十分)を持つかど
うかを指す。BCSクラスI薬物は高い透過性および高い溶解性を持ち、BCSクラスI
I薬物は高い透過性および低い溶解性を持ち、BCSクラスIII薬物は低い透過性およ
び高い溶解性を持ち、BCSクラスIV薬物は低い透過性および低い溶解性を持つ。即時
放出原薬は、最高用量強度が、37±1℃、1~7.5のpH範囲で250mL以下の水
性媒体中に溶ける時、高度に可溶性と見なされる。pH-溶解性プロファイルを正確に規
定するためには、十分な数のpH条件を評価すべきである。胃腸管での不安定性を示す証
拠がない場合、即時放出原薬は、物質収支測定に基づいてまたは静脈内参照用量と比較し
て、ヒトでの吸収の程度が投与用量の90%以上である時、高度に透過性と見なされる。
透過性は物質収支、絶対バイオアベイラビリティ、または腸灌流アプローチを使用して決
定できる。1つの方法で透過性分類を確定的に決定できない時は、2つの異なる方法を使
用するのが得策でありうる。製剤は、USP装置Iを使用して100rpm(または装置
IIを使用して50rpm)で、以下の媒体のそれぞれの900ml以下の容量に、原薬
の表示量の85%以上が30分以内に溶解する時、迅速溶解性と見なされる:(1)0.
1 N HClまたは酵素を含まないUSP人工胃液、(2)pH 4.5緩衝液、およ
び(3)pH 6.8緩衝液または酵素を含まないUSP人工腸液。業界用FDAガイド
ラインを参照のこと:Waiver of In Vivo Bioavailabil
ity and Bioequivalence Studies for Immed
iate-Release Solid Oral Dosage Forms Bas
ed on a Biopharmaceutics Classification
System. (2000年8月)、これはこのような教示について参照によって本明
細書に組み込まれる。
【0062】
本明細書で使用する場合、「バイオアベイラビリティ」とは、血液コンパートメントに
達する、所与投薬量の投与薬剤の合計量を意味する。これは一般的に、濃度・時間のプロ
ットの曲線下面積として測定される。
【0063】
本明細書で使用する場合「組織」とは、皮膚組織、リンパ組織(例えば、リンパ節)、
粘膜組織、生殖組織、頸部組織、膣組織を含むがこれらに限定されない、機能を一緒に実
施する細胞の群または層、および肺、脾臓、結腸、胸腺を含むがこれらに限定されない、
異なるタイプの組織から成り、特定の機能を実施する体の任意の部分(すなわち、器官)
を指す。本明細書で使用する場合、組織には、環境(例えば、皮膚または粘膜組織)と相
互作用する、または環境にアクセスできる任意の組織が含まれる。
【0064】
本明細書で使用する場合、「組織バイオアベイラビリティ」とは、特定の組織のインビ
ボで生物学的に利用できる薬剤の量を意味する。これらの量は、結合、標識化、検出、輸
送、安定性、生物学的効果、または診断および/もしくは療法のために有用なその他の測
定可能な特性に関連しうる活動として一般的に測定される。さらに、「組織バイオアベイ
ラビリティ」は、特定組織での使用に利用可能な薬剤の量も含むことが理解される。「組
織バイオアベイラビリティ」には、特定組織に蓄積された薬剤の合計量、特定組織に提示
される薬剤の量、特定組織の質量/容積あたり蓄積された薬剤の量、特定組織の特定質量
/容積に単位時間あたり蓄積された薬剤の量を含む。組織バイオアベイラビリティには、
脈管構造および/または体の様々な器官を作るもの(例えば、リンパ管構造または血液な
ど、異なるタイプの組織から成り、特定機能を実行する体の部分)など、特定組織または
組織の一群中のインビボで利用可能な薬剤の量を含む。
【0065】
「Cmax」という用語は本明細書で使用する場合、最大観察血液(血漿、血清、また
は全血)濃度または濃度・時間曲線から計算もしくは予測された最大血液濃度を指し、該
当する場合、mg/Lまたはng/mLの単位で表される。
【0066】
「Cmin」という用語は本明細書で使用する場合、最小観察血液(血漿、血清、また
は全血)濃度または濃度・時間曲線から計算もしくは予測された最小血液濃度を指し、該
当する場合、mg/Lまたはng/mLの単位で表される。
【0067】
「Cavg」という用語は本明細書で使用する場合、投与間隔内の薬物の血液(血漿、
血清、または全血)濃度を指し、AUC/投与間隔として計算され、該当する場合、mg
/Lまたはng/mLの単位で表される。
【0068】
「Tmax」という用語は本明細書で使用する場合、Cmaxが起こる、投与後の時間
を指し、該当する場合、時間(h)または分(min)の単位で表される。
【0069】
「AUC0→τ」という用語は本明細書で使用する場合、定常状態の投与間隔にわたる
時間ゼロから時間タウ(τ)までの血液(血漿、血清、または全血)濃度・時間曲線下面
積を指し、該当する場合、h・mg/Lまたはh・ng/mLの単位で表される。例えば
、用語AUC0→12は本明細書で使用する場合、0~12時間の濃度・時間曲線下面積
を指す。
【0070】
「AUC0→∞」という用語は本明細書で使用する場合、時間0から無限大までの血液
(血漿、血清、または全血)濃度・時間曲線下面積を指し、該当する場合、h・mg/L
またはh・ng/mLの単位で表される。
【0071】
「AUCoverall」という用語は本明細書で使用する場合、血液(血漿、血清、
または全血)濃度・時間曲線下複合面積を指し、本明細書に記述した医薬組成物の少なく
とも一つまたは複数の用量に対してh・mg/L(またはh・ng/mL)の単位で表さ
れる。一態様では、「AUCoverall」は、本明細書に記述した医薬組成物の少な
くとも2用量に対する血液濃度・時間曲線下複合面積を指す。
【0072】
「治療する」という用語は、障害に関連する状態、症状、またはパラメータを改善する
ために有効な量、方法、またはモードで療法を実施することを指す。
【0073】
「予防」という用語は、障害の進行を、統計的に有意な程度まで、または当業者に検出
可能な程度まで防止または減少することを指す。
【0074】
「実質的に」という用語は本明細書で使用する場合、大きなまたは有意な程度であるが
完全にではないことを意味する。一部の態様では、実質的にとは、本明細書に記述した様
々な実施形態の90%~99%を意味し、指定範囲内の各整数を含む。
【0075】
本明細書で使用する場合、「被験者」および「患者」という用語は互換的に使用される
。本明細書で使用する場合、被験者は、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イ
ヌ、ラット、ウサギなど)または霊長類(例えば、サルおよびヒト)などの哺乳類である
ことが好ましい。
【0076】
本明細書で使用する場合、「障害」および「疾患」という用語は被験者の状態を指すた
めに互換的に使用される。疾患には、身体機能、システムまたは器官の中断、中止、また
は障害が含まれる。
【0077】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療すること」および「治療」という用
語は、疾患または障害の症状の根絶、減少または寛解を指す。一部の実施形態では、治療
とは、一つまたは複数の治療薬の投与から生じる原発性、領域性、または転移性癌組織の
根絶、除去、変更または制御を指す。特定の実施形態では、このような用語は、このよう
な疾患を持つ被験者への一つまたは複数の治療薬の投与から生じる、癌の広がりの最小化
または遅延を指す。
【0078】
本明細書で使用する場合、「管理する」、「管理すること」、および「管理」という用
語は、被験者が予防薬または治療薬の投与から得る有益な効果であって、疾患の治癒をも
たらさないものを指す。特定の実施形態では、被験者は、疾患の進行または悪化を防止す
るために、一つまたは複数の予防薬または治療薬を投与して「管理」する。
【0079】
本明細書で使用する場合、「予防する」、「予防すること」および「予防」という用語
は、予防薬または治療薬の投与からもたらされる、被験者の障害の一つまたは複数の症状
の再発または発症の防止を指す。
【0080】
本明細書で使用する場合、「副作用」という語句は、予防薬または治療薬の望ましくな
い有害作用を包含する。有害作用はいつも望ましくないが、望ましくない作用が必ずしも
有害なわけではない。予防薬または治療薬からの有害作用は、有害または不快または危険
でありうる。化学療法からの副作用には、早発性および遅発性の下痢および鼓腸などであ
るがこれらに限定されない胃腸毒性、悪心、嘔吐、摂食障害、白血球減少、貧血、好中球
減少、無力、腹部痙攣、発熱、疼痛、体重減少、脱水、脱毛、呼吸困難、不眠、めまい、
粘膜炎、口内乾燥、および腎不全、ならびに便秘、神経および筋肉への影響、一時的また
は永久的な腎臓および膀胱への損傷、インフルエンザ様症状、水分貯留、および一時的ま
たは永久的な不妊が含まれるがこれらに限定されない。放射線療法からの副作用には、疲
労、口内乾燥、食欲不振が含まれるがこれらに限定されない。生物学的療法/免疫療法か
らの副作用には、投与部位の発疹または腫れ、発熱、悪寒および疲労などのインフルエン
ザ様症状、消化管の問題ならびにアレルギー反応が含まれるがこれらに限定されない。ホ
ルモン療法からの副作用には、悪心、不妊の問題、うつ病、食欲不振、眼の問題、頭痛、
および体重変動が含まれるがこれらに限定されない。患者が典型的に経験する追加的な望
ましくない作用は多くあり、当技術分野で知られている。例えば、Physicians
' Desk Reference (69th ed., 2015)(これは参照に
よりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0081】
本明細書で使用する場合、「感受性組織への送達」または「生育可能な組織への送達」
という語句は、例えば、皮膚、血管構造、リンパ管構造、およびリンパ節など、生きた組
織または組織構造への一つまたは複数の薬剤の送達を指す。本明細書に記述した一部の実
施形態では、本明細書にさらに記述した方法、組成物、および装置は、生きた組織または
組織構造の構造を調整し、一つまたは複数の薬剤の吸収を促進しうる。一部の態様では、
生きた組織または組織構造は、皮膚および皮膚を含む個別の生育可能な細胞を含む。本明
細書に記述した一部の態様では、送達方法は、特定の細胞または組織(例えば、生育可能
な皮膚)を、その特定組織への一つまたは複数の薬剤の送達の影響を受けやすいように誘
導する。本明細書に記述した一部の態様では、生きた組織または組織構造は、表皮および
下にある真皮の生育可能な層など、生育可能な皮膚の一つまたは複数の層を備える。本明
細書に記述した一部の態様では、生きた組織または組織構造は、毛細リンパ管(例えば、
感受性毛細リンパ管叢への送達)を備える。
【0082】
皮膚に薬剤を送達するための方法および装置が本明細書に記述されている。特定の実施
形態では、リンパ管構造に薬剤を送達するための方法が本明細書に記述されている。
【0083】
本明細書の実施形態には、一つまたは複数の薬剤を皮膚に送達するための方法が記述さ
れている。一部の態様では、一つまたは複数の薬剤は、生育可能または生育不能な皮膚の
少なくとも一つの部分または領域に送達される。一部の態様では、一つまたは複数の薬剤
は、生育可能な表皮の少なくとも一つの部分または領域に送達される。一部の態様では、
一つまたは複数の薬剤は、生育不能な表皮の少なくとも一つの部分または領域に送達され
る。本明細書にさらに記述するように、一つまたは複数の薬剤は生育可能な表皮を通過し
て真皮に入ることができ、それによって一つ複数の毛細血管および毛細リンパ管の近傍に
入る。
【0084】
皮膚への送達は、皮膚の機能を提供するバリアに基づいたいくつかの問題を示す。解剖
学的に、皮膚は大まかに、外側の表皮および下にある真皮の2つの主な組織層からなり、
これらが共に皮膚を構成する。より広い外皮系は、皮膚、毛、爪、外分泌腺、および皮下
組織を含む。このバリア機能の結果、送達された物質が表皮の一つまたは複数の層内に保
持されるので、表皮を通り生育可能な真皮へと入る皮膚への送達のための多くの経皮また
はマイクロニードルアプローチが不成功に終わっている。
【0085】
表皮は4つの主な層に細分される。下から上の順に、基底膜、基底層または胚芽層、鱗
状細胞層または有棘層、顆粒細胞層または顆粒層、および角化層または角質層である。こ
れらの3層のうち、下の3層(すなわち、胚芽層、有棘層、および顆粒層)が表皮の生き
た層を構成する。
【0086】
表皮の3つの生きた層は皮膚のバリア機能のために重要であり、これは基底部にある幹
細胞の自己再生および分化に依存して、皮膚の上層を再生しバリア層または角質層に除核
細胞を提供する。表皮のバリア機能は主に、高分子(例えば、タンパク質)、微生物、お
よびその他の潜在的に有毒な化学物質の通過を防止する密着結合の存在の結果である。こ
のように、これらの密着結合は、隣接した原形質膜(例えば、クローディン、オクルジン
、および接合部接着分子)および複数のプラーク・タンパク質(例えば、ZO-1、ZO
-2、ZO-3、シングリン、シンプレキン)に埋め込まれた膜貫通タンパク質のネット
ワークを含むバリア構造である。密着結合は、内部上皮(例えば、腸上皮、血液脳関門、
血管、リンパ管)を含む組織のバリアタイプのすべてのほぼすべてのタイプ、ならびに皮
膚の生育可能な表皮の至る所に見られる。
【0087】
皮膚の厚さは場所および年齢に応じて異なる。例えば、まぶたは約0.2mm未満のか
なり薄い層の表皮を持ち、手のひらおよび足の裏は1.5mm近くあるかなり厚い層の表
皮を持つ。真皮の厚さも組織の場所に応じて異なり、背中の真皮は表皮よりも30~40
倍厚い。William D. James, Timothy Berger, an
d Dirk Elston., Clinical Dermatology (1
1th ed., 2011)を参照のこと(これは参照によりその全体が本明細書に組
み込まれる)。
【0088】
表皮の下には真皮があり、これは真皮乳頭層と呼ばれる最外部および真皮網状層と呼ば
れる深層の2つの層を含む。真皮乳頭層は広大な微小循環血管叢およびリンパ管叢を含む
。対照的に、真皮網状層は比較的非細胞性であり、コラーゲン性で弾力のある密集した結
合組織で構成される。表皮および真皮の下は、下皮とも呼ばれる皮下組織であり、結合組
織および脂肪組織から成る。Physiology, Biochemistry, a
nd Molecular Biology of the Skin, Second
Edition, (L.A. Goldsmith, Ed., 2nd ed.
Oxford University Press, New York, 1991)
を参照のこと(これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0089】
一部の実施形態では、本明細書に記述した方法は、一つまたは複数の薬剤の一つまたは
複数のリンパ組織への送達の増加を提供する。一部の態様では、一つまたは複数の薬剤は
、リンパ管構造を通って一つまたは複数のリンパ節に移動する。本明細書にさらに記述し
たように、リンパ管構造は、毛細リンパ管、より大きなリンパ管、および集合管を構成す
るリンパ管内皮細胞のすべてを含む。リンパ管構造内の液体およびこの液体中のすべての
生体材料は、やがては一つまたは複数のリンパ節の中、最後には血流の中に排出されて、
体循環に入る。リンパ生理学の完全レビューについては、William N. Cha
rman and Valentino J. Stella, Lymphatic
Transport of Drugs (1992)を参照のこと(これは参照により
その全体が本明細書に組み込まれる)。
【0090】
リンパ系は免疫系の一部であり、感染症および外来生物による侵入から体を守る。リン
パ球およびマクロファージは、侵入ウィルス、細菌、腫瘍細胞、異種タンパク質、毒素、
損傷および死にかけている細胞、ならびに異種組織移植片などの異種細胞を探して体の組
織のほとんどを巡回する。リンパ管はほとんどの組織と連通し、免疫細胞をリンパ節なら
びに、脾臓および胸腺などのリンパ器官に運ぶリンパ液を輸送する。リンパ管構造とも呼
ばれるリンパ管は、血管のように、体の全体にわたる組織へと枝分かれする薄い不透明な
管状構造のネットワークである。ヒトを含む哺乳類では、ほとんどの組織および器官はリ
ンパ系によって排出される。
【0091】
循環系とは異なり、リンパ系は閉じておらず中央ポンプを持たない。リンパ系は心臓に
向かって一方向流れシステムを形成する。毛細リンパ管の精巧なネットワークは組織から
の間質液を排出し、その後、この液体はリンパ液と呼ばれる。軟骨および角膜などの多く
の結合組織は、血管を持たず、リンパ管も欠く。リンパは、蠕動収縮からゆっくりと低い
圧力下で移動する。
【0092】
これらの毛細リンパ管は10~50マイクロメートルの直径である。それらは盲嚢から
、または吻合管から始まる。内皮は、不完全な基底膜を持つ単一層である。それらは、血
漿タンパク質および炭素粒子などを含む大きな粒子、ウィルス、細菌細胞、および寄生生
物などの病原体、例えば、免疫細胞および腫瘍細胞などを含む細胞、ならびに細胞破片に
対して高度に透過性のギャップ結合を有する。毛細リンパ管は、流れが一方向のみである
ことを確実にする一方向弁を持つ。毛細リンパ管の外側の間質液の圧力が毛細管の内側の
圧力より大きい時、フラップが開いて液体が入ることを可能にする。逆に、毛細管の内側
の圧力がより大きい時、フラップは閉じることを強いられ、管からリンパが漏れ出るのを
防止する。炎症の間、毛細管は、より大きな分子および細胞破片の取り込みを可能にする
さらなる開口部を生じる。
【0093】
リンパは毛細管から集合リンパ管へと流れ込み、そこで多くのリンパ節の最初のものと
遭遇する。これらの「輸入」リンパ管はリンパをリンパ節に運び、「輸出」リンパ管はリ
ンパをリンパ節から運び去る。リンパは無色の水様液であり、間質液に由来する。リンパ
は循環系の毛細血管床から失われた血漿として源を発し、周辺組織に漏れ出る。循環系の
毛細管はそれらを通過して間質組織へ移動する液体の体積の約1%のみを失うが、多くの
血液が循環するので、平均的な人体の累積液体損失は1日当たり約3リットルである。リ
ンパ系は毛細リンパ管への拡散によってこの液体を取り戻し、様々なリンパ節を通してそ
れをろ過し、胸管によってそれを循環系に戻す。リンパ系内に一旦入ると、液体はリンパ
と呼ばれるが、元の間質液とほとんど同じ組成を持つ。
【0094】
毛細リンパ管は遍在し、体の至る所で見られる。このような場所の非限定的例には、生
育可能な皮膚(真皮)、腱、横紋筋、筋鞘、骨の骨膜、関節嚢、肋膜、腹膜、および心膜
腔の中皮ライニングの下、消化管、唾液腺、肝臓、脾臓、鼻腔、気管、気管支、甲状腺、
胸腺、副腎、腎臓、膀胱、尿道、前立腺、精巣、子宮、卵巣、および心臓が含まれる。
【0095】
リンパ節は、細菌およびウィルスを収集して破壊するリンパ球で満たされた結合組織の
内部ハニカムでリンパをろ過する。リンパ節はリンパ球および抗体も生成する。体が感染
と戦っている時、これらのリンパ球は素早く増殖し、リンパ節の特徴的な腫脹を生じる。
リンパは、より大きなリンパ管に次第に輸送され、ついに(右上半身からのリンパについ
ては)右リンパ本幹および(体の残りについては)胸管に入る。これらの管は肩の近くの
左右の鎖骨下静脈で循環系に排出される。リンパ管のネットワークに沿って、リンパ結節
、パイエル板、扁桃腺、リンパ節、胸腺、および脾臓を含む、一連のさまざまなリンパ組
織および器官がある。
【0096】
リンパ結節は、感染の部位で形成しその後消失する、リンパ球の一時的集団である。結
節を周辺細胞および液体から分離する被嚢または外側被覆はなく、これは結節へと直接浸
透する。リンパ節は硬い被嚢内に多くのリンパ結節を被包し、血管およびリンパを持つ。
リンパ節は、リンパ管によってそれらに送達されたリンパをろ過する。このように、リン
パ節は、リンパ節が位置する毛細リンパ管床から排出するリンパをろ過する。パイエル板
は腸の壁にあるリンパ球の集団であり、扁桃腺は咽頭の粘膜内に包まれた結節組織の嚢で
ある。パイエル板および扁桃腺は、それぞれ消化管および気道からの抗原を途中で捕らえ
るように位置している。
【0097】
脾臓、リンパ節、および副リンパ組織(扁桃腺および虫垂を含む)は二次リンパ器官で
ある。これらの器官は、循環BおよびTリンパ球および、例えばマクロファージ、樹状細
胞および好酸球などの、その他の免疫細胞を保持する結合組織の足場材料から成る。微生
物が体に侵入した時、または体がその他の抗原と遭遇した時、抗原は典型的には組織から
リンパに輸送される。リンパはリンパ管の中を所属リンパ節まで運ばれる。リンパ節では
、マクロファージおよび樹状細胞が抗原を貪食し、抗原を処理し、抗原をリンパ球に提示
し、次にこれは抗体を生成し始めるか、または将来再び抗原を認識するために記憶細胞と
しての役割を果たす。このように、リンパおよびリンパ組織は抗体および免疫細胞を含む
。
【0098】
間質組織からの液体のリンパ吸収速度は幅広い。例えば、リンパ管によって腸の場所か
ら排除される水のパーセントは、1%~85%近くの範囲であると予測されており、その
他の予測はリンパ系が間質液の15~20%の吸収を担当していることを示す。この食い
違いは、測定されたリンパ組織の目下の生理状態による可能性が高い。
【0099】
毛細リンパ管は哺乳類の皮膚の全体に渡って広く分布する。特に、指および手のひらな
らびに足および足指の足底面ならびに陰嚢など、特定の領域はリンパ管の分布が最も高い
ことが認められている。皮膚リンパは、皮膚構造の外側3分の2の部分から真皮乳頭層へ
と上向きに延びる真皮の表面リンパ管叢で主に構成される。より深い叢は、真皮網状層の
領域の皮下組織境界に近い真皮内にある。一般的に、表皮または皮下組織層内に、リンパ
組織はほとんどまたは全く見られない。リンパ管は典型的に、より厚い皮層を持つ皮膚の
領域ではより均一である(例えば、手の手掌面および足の足底面)。腸組織と同様に、皮
膚の間質液およびタンパク質の吸収は大きなばらつきがあり、例えば、動物モデルでは皮
膚領域のリンパの流れは約1ml/時間/組織100gであり、リンパ管構造を取り囲む
局所生理機能に応じて10倍以上増加しうる。静脈圧、周辺組織および血管の収縮、なら
びに呼吸数を含む様々な因子が、リンパ吸収に影響することが分かっている。例えば、ス
ターリングの式は、半透性毛細管壁を横切る静水力および膠質浸透力の競合による間質液
の生成を説明する。このように、血管内の静水圧の増加もしくは膠質浸透圧の減少、また
は毛細管透過性の増加は、間質液体積および、毛細リンパ管によるその後の液体吸収また
は浮腫を促進する傾向がある。
【0100】
タンパク質および脂質の吸収も同様に大きなばらつきがあり、液体吸収速度、皮膚内の
場所、および分子サイズに大きく依存する。一般的に、分子のサイズおよび親油性または
親水性はその相対的吸収に大きな役割を果たす。例えば、いかなる理論にも制限されるも
のではないが、10kDaよりも小さな分子は毛細血管および毛細リンパ管によってほぼ
同じ速度で吸収されるのに対して、20kDaよりも大きな分子は、本明細書に記述した
所与の局所毛細リンパ管の生理学的状態に応じて、リンパ管に入る可能性が高いと考えら
れる。
【0101】
このように、毛細リンパ管の偏在性および異なるサイズの薬剤の過多を吸収する能力の
ために、リンパ系への送達が大いに望ましいことが広く認められている。上述の炎症およ
び様々な癌の発生および播種ならびに感染症の間のリンパ系の関与は、炎症および癌の局
所および全身治療の両方に重要な代替経路を与える。
【0102】
本明細書に記述した一部の実施形態では、一つまたは複数の薬剤は液体担体溶液中で送
達されうる。一態様では、液体担体の張性は、毛細血管または毛細リンパ管内の液体より
高張でありうる。別の態様では、液体担体溶液の張性は、毛細血管または毛細リンパ管内
の液体より低張でありうる。別の態様では、液体担体溶液の張性は、毛細血管または毛細
リンパ管内の液体と等張でありうる。液体担体溶液は、一つまたは複数の薬学的に許容可
能な賦形剤、希釈剤、共溶媒、微粒子、またはコロイドをさらに含みうる。液体担体溶液
に使用するための薬学的に許容可能な賦形剤が知られている。例えば、Pharmace
utics: Basic Principles and Application
to Pharmacy Practice (Alekha Dash et al.
eds., 1st ed. 2013)を参照のこと(これはその教示について、参
照により本明細書に組み込まれる)。
【0103】
本明細書に記述した一部の実施形態では、一つまたは複数の薬剤は表皮内のある位置に
直接送達される。一部の態様では、一つまたは複数の薬剤は、リンパ管構造に近接した位
置に、拡散、移動、流入、または移行する。本明細書に記述したように、本明細書に記述
した方法の後の表皮内のこの配置は、表皮を通して生育可能な表皮中に入る薬剤の拡散ま
たは移動をもたらし、所与の場所の間質液をリンパ系の他の場所に排出するように生理的
に機能する、最表面にある毛細リンパ管床または別名リンパ液排出床もしくは毛細リンパ
管叢への薬剤の直接接触を可能にする。本明細書に記述した毛細リンパ管床への一つまた
は複数の薬剤の送達方法は、「一次」リンパ節とも呼ばれる、毛細リンパ管床を排出する
第一のリンパ節への薬剤の送達をさらにもたらしうる。一部の態様では、一つまたは複数
の薬剤の限局性送達は、「二次」リンパ節とも呼ばれる、一次リンパ節の下流の追加的リ
ンパ節への薬物の送達ももたらしうる。一部の態様では、薬剤はやがては血流に入り、全
身的に送達される。
【0104】
本明細書に記述した一部の実施形態は、一つまたは複数の毛細リンパ管、リンパ結節、
リンパ節、パイエル板、および/または扁桃腺を含むリンパ組織への一つまたは複数の薬
剤の送達の方法を含む。一部の態様では、本明細書に記述した方法は、体の任意の組織ま
たは領域の一つまたは複数のリンパ節への送達に適している。適切な非限定的例は、手、
足、大腿(大腿リンパ節)、腕、脚、腋(腋窩リンパ節)、鼠径部(鼠径リンパ節)、首
(頸部リンパ節)、胸(胸筋リンパ節)、腹部(腸骨リンパ節)、膝窩リンパ節、胸骨傍
リンパ節、外側大動脈リンパ節、傍大動脈リンパ節、オトガイ下リンパ節、耳下腺リンパ
節、顎下リンパ節、鎖骨上リンパ節、肋間リンパ節、横隔膜リンパ節、膵リンパ節、乳糜
槽、腰部リンパ節、仙骨リンパ節、閉鎖リンパ節、腸間膜リンパ節、結腸間膜リンパ節、
縦隔リンパ節、胃リンパ節、肝リンパ節、および脾リンパ節に見られるリンパ節を含む。
【0105】
一部の実施形態では、少なくとも一つの毛細リンパ管叢を持つ一つまたは複数の組織内
の、被験者の一つまたは複数の毛細リンパ管叢に一つまたは複数の薬剤を送達する方法が
本明細書に記述されている。一部の態様では、一つまたは複数の薬剤は、皮膚の生育可能
な層内に位置する一つまたは複数の毛細リンパ管叢に送達されうる。一部の態様では、一
つまたは複数の薬剤は、生育可能な真皮内に位置する一つまたは複数の毛細リンパ管叢に
よって吸収されうる。一部の態様では、送達された一つまたは複数の薬剤は、生育可能な
真皮乳頭層内に位置する一つまたは複数の毛細リンパ管叢によって吸収されうる。一部の
態様では、送達された一つまたは複数の薬剤は、生育可能な真皮網状層内に位置する一つ
または複数の毛細リンパ管叢によって吸収されうる。
【0106】
一部の実施形態では、一つまたは複数の薬剤を皮膚内のさまざまな深さに送達するため
の方法が本明細書に記述されている。一部の態様では、一つまたは複数の薬剤は、生育不
能な表皮(例えば、角質層)および生育不能な表皮の下にある生育可能な表皮の両方を備
える表皮に送達される。生育可能な皮膚の深さは、本明細書に記述するように、場所、年
齢、および所与の被験者の生理機能に応じて異なりうる。一つまたは複数の薬剤の送達の
皮膚の全体的深さは、本明細書に記述した方法を使用した一つまたは複数の薬剤の初期投
与後に一つまたは複数の薬剤が位置しうる複数の深さの分布として説明されうる。一つま
たは複数の活性薬剤の送達の深さの総分布は、本明細書にさらに記述するように、投与速
度、容積、および送達構造の皮膚内の深さに依存する。従って、合計送達薬剤の部分は、
より浅薄な深さまたはより深い深さにある可能性があり、合計送達薬剤は、さまざまな送
達深さの平均送達深さおよび標準偏差を持つ。従って、一部の態様では、本明細書に記述
した一つまたは複数の薬剤の皮膚への送達は、皮膚内でシンプルな正規分布(すなわち、
ガウス分布)に従いうる。その他一部の態様では、一つまたは複数の薬剤の生育可能な皮
膚への送達は、皮膚内の深さの多モード分布に従いうる。
【0107】
送達された一つまたは複数の薬剤が表皮内の深さの分布を示す一つまたは複数の薬剤の
表皮への送達は、潜在的な皮膚の毛細リンパ管のすべてのレベルを接触させる、これまで
に未実現の態様を提供する。本明細書に記述した方法は、皮膚のバリア機能の空隙率を可
逆的に増大させて、表皮のすべての層を通した生育可能な真皮の中への薬剤の下向き(上
部から下部へ)の拡散または移動を促進する工程をさらに含む。本明細書に記述した一部
の態様では、表皮への送達は、表皮の基底膜のすぐ下の初期毛細リンパ管を逃す可能性が
あり、リンパ取り込みの減少をもたらす、直接的皮内送達技術などの代替的な非経口送達
方法と比べて、より大きなリンパ取り込みを生じる。いかなる理論にも束縛されるもので
はないが、これは、薬剤が真皮網状層を通って皮下組織中に下向きに自由に移動しうるた
めに起こる可能性がある。従って、本明細書に記述したように複数の流量で表皮を通した
薬剤の拡散または移動を許容する方法を提供することにより、表面リンパ管および真皮内
の深部リンパ管が薬剤と接触でき、これは一つまたは複数の感受性毛細リンパ管による薬
剤の吸収速度または量を増加させる。
【0108】
本明細書に記述した一部の実施形態では、一つまたは複数の薬剤の少なくとも一部分ま
たはすべてが、生育不能な表皮および/または生育可能な表皮を備える皮膚の初期深さに
直接送達または投与されうる。一部の態様では、一つまたは複数の薬剤の一部分は、表皮
に加えて生育可能な真皮にも直接送達されうる。送達深さの範囲は、治療される疾患およ
び所与の被験者の皮膚生理機能に依存する。送達のこの初期深さは、皮膚内の場所として
定義することができ、投与薬剤はまず本明細書に記述したように接触する。いかなる理論
にも束縛されるものではないが、投与された一つまたは複数の薬剤は、送達の初期部位(
例えば、生育不能な表皮、生育可能な表皮、または生育可能な真皮)から生育可能な皮膚
内のより深い位置に移動(例えば、拡散)しうると考えられる。例えば、投与薬剤の一部
分またはすべてが、生育不能な表皮に送達され、その後引き続き生育可能な表皮の中に移
動(例えば、拡散)し、生育可能な表皮の基底層を通り越して、生育可能な真皮の中に入
りうる。あるいは、投与薬剤の一部分またはすべてが、生育可能な表皮(すなわち、角質
層のすぐ下)に送達され、その後引き続き生育可能な表皮の基底層を通り越して移動(例
えば、拡散)し、生育可能な真皮の中に入りうる。最後に、投与薬剤の一部分またはすべ
てが生育可能な真皮に送達されうる。皮膚の隅から隅までの一つまたは複数の活性薬剤の
移動は多因子的であり、例えば、液体担体組成物(例えば、その粘度)、投与速度、送達
構造などに依存する。表皮を通した真皮の中へのこの移動は輸送現象としてさらに定義す
ることができ、物質移動速度および/または流体力学(例えば、質量流量)によって定量
化される。
【0109】
このように、本明細書に記述した一部の実施形態では、一つまたは複数の薬剤は表皮の
ある深さに送達され、一つまたは複数の薬剤は生育可能な表皮の基底層を通り越して生育
可能な真皮の中に移動する。本明細書に記述した一部の態様では、一つまたは複数の薬剤
は、その後一つまたは複数の感受性毛細リンパ管叢または毛細血管によって吸収される。
【0110】
本明細書に記述した一部の実施形態では、一つまたは複数の薬剤の少なくとも一部分ま
たはすべてが初期に送達される皮膚の深さの分布は、約5μm~約4,500μmの範囲
であり、指定範囲内の各整数を含む。一部の態様では、一つまたは複数の薬剤の送達のた
めの皮膚の深さは、約5μm~約2,000μmの範囲であり、指定範囲内の各整数を含
む。一部の態様では、一つまたは複数の薬剤の送達のための皮膚の深さは、約5μm~約
1,000μmの範囲であり、指定範囲内の各整数を含む。一部の態様では、一つまたは
複数の薬剤の送達のための皮膚の深さは、約5μm~約500μmの範囲であり、指定範
囲内の各整数を含む。一部の態様では、一つまたは複数の薬剤の送達のための皮膚の深さ
は、約5μm~約250μmの範囲であり、指定範囲内の各整数を含む。一部の態様では
、一つまたは複数の薬剤の送達のための皮膚の深さは、約5μm~約100μmの範囲で
あり、指定範囲内の各整数を含む。一部の態様では、一つまたは複数の薬剤を送達するた
めの皮膚の平均深さは、約5μm、約10μm、約20μm、約30μm、約40μm、
約50μm、約70μm、約80μm、約90μm、約100μm、約125μm、約1
50μm、約175μm、約200μm、約225μm、約250μm、約275μm、
約300μm、約350μm、約400μm、約450μm、約500μm、約550μ
m、約600μm、約650μm、約700μm、約750μm、約800μm、約85
0μm、約900μm、約950μm、約1,000μm、約1,100μm、約1,2
00μm、約1,300μm、約1,400μm、約1,500μm、約1,600μm
、約1,700μm、約1,800μm、約1,900μm、約2,000μm、約2,
250μm、約2,500μm、約2,750μm、約3,000μm、約3,250μ
m、約3,500μm、約3,750μm、または約4,000μmである。
【0111】
本明細書に記述した一部の実施形態では、一つまたは複数の薬剤は生育可能な皮膚に初
期送達され、一つまたは複数の薬剤の送達のための生育可能な皮膚の深さの分布は、表皮
の角質層を通り越してすぐであるが皮下組織より上である。一部の態様では、一つまたは
複数の薬剤を送達するための生育可能な皮膚の深さは、角質層を約1μm~約4,000
μm超えているが、まだ皮下組織より上の生育可能な皮膚内の範囲である。薬剤が表皮内
であるか真皮内であるかは、表皮の厚さに依存し、例えば、角質層を約1μm~約250
μm通り越した所を含む、送達のより浅い深さは生育可能な表皮内であると予測されるで
あろう。400μm、500μm、または700μmより大きな深さは、生育可能な真皮
の少なくとも最表部分(例えば、真皮乳頭層)内であると予測される可能性が高いであろ
う。一部の態様では、一つまたは複数の薬剤を送達するための生育可能な皮膚の深さは、
角質層を約1μm~約5,000μm超えているが、まだ皮下組織より上の生育可能な皮
膚内の範囲であり、指定範囲内の各整数を含む。一部の態様では、一つまたは複数の薬剤
を送達するための生育可能な皮膚の深さは、角質層を約1μm~約3,500μm超えて
いるが、まだ皮下組織より上の生育可能な皮膚内の範囲であり、指定範囲内の各整数を含
む。一部の態様では、一つまたは複数の薬剤を送達するための生育可能な皮膚の深さは、
角質層を約1μm~約2,000μm超えているが、まだ皮下組織より上の生育可能な皮
膚内の範囲であり、指定範囲内の各整数を含む。一部の態様では、一つまたは複数の薬剤
を送達するための生育可能な皮膚の深さは、角質層を約1μm~約1,000μm超えて
いるが、まだ皮下組織より上の生育可能な皮膚内の範囲であり、指定範囲内の各整数を含
む。一部の態様では、一つまたは複数の薬剤を送達するための生育可能な皮膚の深さは、
角質層を約1μm~約500μm超えているが、まだ皮下組織より上の生育可能な皮膚内
の範囲であり、指定範囲内の各整数を含む。一部の態様では、一つまたは複数の薬剤を送
達するための生育可能な皮膚の深さは、角質層を約1μm~約250μm超えているが、
まだ皮下組織より上の生育可能な皮膚内の範囲であり、指定範囲内の各整数を含む。一部
の態様では、一つまたは複数の薬剤を送達するための生育可能な皮膚の深さは、角質層を
約1μm~約100μm超えているが、まだ皮下組織より上の生育可能な皮膚内の範囲で
あり、指定範囲内の各整数を含む。一部の態様では、一つまたは複数の薬剤を送達するた
めの生育可能な皮膚の深さは、角質層を約1μm~約50μm超えているが、まだ皮下組
織より上の生育可能な皮膚内の範囲であり、指定範囲内の各整数を含む。一部の態様では
、一つまたは複数の薬剤を送達するための皮膚の平均深さは、角質層を約1μm、約5μ
m、約10μm、約20μm、約30μm、約40μm、約50μm、約60μm、5約
70μm、約80μm、約90μm、約100μm、約150μm、約250μm、約3
50μm、約450μm、約550μm、約650μm、約750μm、約850μm、
約950μm、約1,000μm、約1,100μm、約1,200μm、約1,300
μm、約1,400μm、約1,500μm、約1,600μm、約1,700μm、約
1,800μm、約1,900μm、約2,000μm、約2,250μm、約2,50
0μm、約2,750μm、約3,000μm、約3,250μm、約3,500μm、
約3,750μm、約4,000μm、約4,500μm、または約5,000μm超え
ているが、まだ皮下組織より上の生育可能な皮膚内にある深さである。
【0112】
皮膚の初期送達深さを評価するための非限定的検査は侵襲的(例えば、生検)または非
侵襲的(例えば、撮像)でありうる。拡散反射法、蛍光分光法、光熱分光法、または光干
渉断層撮影(OCT)を含む従来型の非侵襲的光学方法論を使用して、皮膚中への薬剤の
送達深さを評価しうる。撮像を使用する方法は、初期送達深さを評価するためにリアルタ
イムで実施しうる。あるいは、侵襲的な皮膚生検を薬剤の投与直後に実施し、その後標準
的な組織学的および染色方法論を行って、薬剤の送達深さを決定しうる。投与薬剤の皮膚
貫通深さを決定するために有用な光学撮像方法の例については、Sennhenn et
al., Skin Pharmacol., 6(2), 152-160 (19
93), Gotter et al., Skin Pharmacol. Phys
iol., 21, 156-165 (2008), or Mogensen et
al., Semin. Cutan. Med. Surg,. 28, 196-
202 (2009)を参照のこと(これらのそれぞれはその教示について、参照により
本明細書に組み込まれる)。
【0113】
一部の実施形態では、一つまたは複数の薬剤の少なくとも一部分を被験者の感受性毛細
リンパ管叢に間接的または直接的に送達する方法が本明細書に記述されている。一部の態
様では、一つまたは複数の薬剤の少なくとも一部分が、生育不能な表皮および生育可能な
表皮を含む表皮に初期送達され、送達は、一つまたは複数の薬剤の本明細書に記述した生
育可能な真皮への拡散または移動後、一つまたは複数の薬剤の感受性毛細リンパ管叢への
間接的送達をもたらす。一部のその他の態様では、一つまたは複数の薬剤の少なくとも一
部分が、感受性毛細リンパ管叢を持つ皮膚の生育可能な領域に直接送達される。一部の態
様では、感受性毛細リンパ管叢は本明細書に記述した生育可能な真皮の領域内に位置する
。一部の態様では、感受性毛細リンパ管叢は、局所的周囲皮膚間質組織から一つまたは複
数の薬剤を容易に吸収する。一部の態様では、感受性毛細リンパ管叢は、局所生理環境の
ために、局所的周囲皮膚間質組織からの一つまたは複数の薬剤の吸収を受けやすい。一部
の態様では、局所生理環境は、炎症の存在、リンパ管内圧と比べて高い皮膚間質液圧、よ
り高い毛細血管液体交換速度、組織収縮、呼吸またはこれらの因子の組み合わせのために
、一つまたは複数の薬剤の吸収を受けやすい。一態様では、感受性毛細リンパ管叢は、一
つまたは複数の薬剤が位置する周囲皮膚間質液と比べて毛細リンパ管内部の圧力が低く、
それによって毛細リンパ管叢による一つまたは複数の薬剤の局所吸収速度が増加する。別
の態様では、感受性毛細リンパ管叢および一つまたは複数の薬剤は炎症の領域内に位置し
、ここでは局所炎症が毛細リンパ管叢の多孔度を促進し、これによりそこに送達される一
つまたは複数の薬剤の局所吸収速度が増加する。その他の一部の態様では、毛細リンパ管
叢の多孔度は、本明細書にさらに記述するように一つまたは複数の透過性促進剤によって
増加される。
【0114】
一部の実施形態では、一つまたは複数の感受性毛細リンパ管叢を持つ生育可能な皮膚(
例えば、生育可能な真皮)内の領域に一つまたは複数の薬剤を間接的に送達する方法が本
明細書に記述されている。一部の態様では、送達方法は、適切な媒体中の一つまたは複数
の薬剤を制御速度で皮膚の表皮に投与する工程を含み、送達は、一つまたは複数の薬剤が
表皮を通り、薬剤が一つまたは複数の感受性毛細リンパ管叢を取り囲む生育可能な真皮の
中へと下向きに拡散する結果をもたらす。一部の態様では、一つまたは複数の薬剤は、液
体担体中の懸濁液または溶液として送達される。いかなる理論にも束縛されるものではな
いが、液体担体溶液中の一つまたは複数の薬剤を制御速度で投与することは、一つまたは
複数の毛細リンパ管叢が一つまたは複数の薬剤を含む溶液によって取り囲まれている場合
、毛細リンパ管叢による溶液の吸収を促進しうると考えられる。ここでもいかなる理論に
も束縛されるものではないが、一つまたは複数の薬剤を含む溶液の吸収は、毛細リンパ管
叢の周りの局所皮膚間質液圧の増加のためであると考えられる。
【0115】
一部の実施形態では、一つまたは複数の薬剤を持つ液体担体溶液と一つまたは複数の感
受性毛細リンパ管叢の生理的吸収速度を一致させるための方法が本明細書に記述されてい
る。本明細書に記述した一部の態様では、感受性毛細リンパ管叢の組織吸収速度を一致さ
せる方法は、一つまたは複数の毛細リンパ管叢を取り囲む局所組織液圧または組織静水圧
を増加させる工程を含む。毛細リンパ管叢の吸収速度は、本明細書にさらに記述するよう
な多くの因子に依存する(例えば、毛細血管流量およびろ過速度、組織膠質浸透圧および
静水圧、ならびに組織コンプライアンスなど)。いかなる理論にも束縛されるものではな
いが、一般的に、局所皮膚間質組織静水圧の比較的小さな増加がリンパ吸収速度を増加さ
せる。低めの組織間質組織吸収速度では、リンパ管が液体除去の主な経路である。間質液
が間質組織液から毛細リンパ管へと排出される時に、様々なタンパク質およびその他の生
体粒子が間質液と共に運ばれる。結果として生じる組織静水圧の増加は、組織膠質浸透圧
を有意に低下させることなく、リンパ管の水力学的コンダクタンスの全般的増加により、
液体を毛細血管にではなくリンパ中に優先的に押し込む。対照的に、比較的高い間質組織
吸収速度では、一般的に毛細管が液体除去の主要経路である。これは典型的には、増加し
た液体が間質組織に押し込まれる時、組織膠質浸透圧が減少して、比較的高い毛細血管膠
質浸透圧のために液体が毛細血管中に押し込まれるからである。さらに、中等度~高いレ
ベルの間質組織液の存在は、細胞外マトリックスへの圧力を増加させ、組織コンプライア
ンス(例えば、組織伸展)を増加し、静水圧を全般的に低下する。これはリンパ排液の減
少をもたらす。このように、間質静水圧および膠質浸透圧は毛細管壁に力を加えるのに対
し、組織圧のみがリンパ排液に影響を与える。
【0116】
本明細書に記述した一部の実施形態では、感受性毛細リンパ管叢による一つまたは複数
の薬剤の吸収速度は、一つまたは複数の毛細リンパ管叢の生理学的皮膚間質液組織吸収速
度の約10%~約99%である可能性があり、指定範囲内の各整数を含む。一部の態様で
は、感受性毛細リンパ管叢による一つまたは複数の薬剤の吸収速度は、生理学的皮膚間質
液組織吸収速度の約25%~約99%である可能性があり、指定範囲内の各整数を含む。
一部の態様では、感受性毛細リンパ管叢による一つまたは複数の薬剤の吸収速度は、生理
学的皮膚間質液組織吸収速度の約50%~約99%である可能性があり、指定範囲内の各
整数を含む。一部の態様では、感受性毛細リンパ管叢による一つまたは複数の薬剤の吸収
速度は、生理学的皮膚間質液組織吸収速度の約75%~約99%である可能性があり、指
定範囲内の各整数を含む。一部の態様では、感受性毛細リンパ管叢による一つまたは複数
の薬剤の吸収速度は、生理学的皮膚間質液組織吸収速度の約10%、約15%、約20%
、約25%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%
、または99%でありうる。
【0117】
本明細書に記述した一部の実施形態では、一つまたは複数の薬剤を含む液体の投与は、
局所皮膚間質液圧の増加を達成し一つまたは複数の薬剤のリンパ取り込みを促進する。い
かなる理論にも制限されるものではないが、約1mmHg~約3mmHgの間質液圧が間
質液(例えば、皮膚間質液)リンパ排液をもたらすと考えられる。この程度の圧力は、本
明細書に記述した圧力感応リンパ弁の開放をもたらし、間質液を毛細リンパ管に排出させ
る。一部の態様では、本明細書に記述した一つまたは複数の薬剤の投与のために皮膚間質
液圧が増加している真皮の領域は、表皮内の投与部位より下である。一部の態様では、特
定の皮膚間質組織圧力値は約1mmHg~約15mmHgでありうる。一部の態様では、
皮膚間質組織圧力値は本明細書に記述した方法によって増加し、約1mmHg~約10m
mHgとなりうる。一部の態様では、特定の皮膚間質組織圧力値は本明細書に記述した方
法によって増加し、約1mmHg~約5mmHgとなりうる。一部の態様では、特定の皮
膚間質組織圧値は本明細書に記述した方法によって増加し、約1mmHgより大きい、約
2mmHgより大きい、約3mmHgより大きい、約4mmHgより大きい、約5mmH
gより大きい、約6mmHgより大きい、約7mmHgより大きい、約8mmHgより大
きい、約9mmHgより大きい、約10mmHgより大きい、約11mmHgより大きい
、約12mmHgより大きい、約13mmHgより大きい、約14mmHgより大きい、
約15mmHgより大きい、約16mmHgより大きい、約17mmHgより大きい、約
18mmHgより大きい、約19mmHg、または約20mmHgより大きい場合がある
。
【0118】
本技術分野で知られている任意の間質液圧評価方法を使用しうる。例えば、マイクロピ
ペット、wick-in-needle、またはwick catheter技術は高レ
ベルのアッセイ内精度を示しており、本明細書に記述した方法を使用して薬剤を投与する
間または薬剤の投与後に、被験者の間質空間(例えば、皮膚間質空間)に挿入されたプロ
ーブの部分を取り囲む静水圧を評価するために使用しうる。例えば、Wiig and
Swartz., Phsiol. Rev., 1005-1060 (2012)を
参照のこと(これはその教示について、参照により本書に組み込まれる)。
【0119】
一部の実施形態では、本明細書に記述した一つまたは複数の薬剤の延長送達(または投
与)のための方法が記述されている。一部の態様では、一つまたは複数の薬剤は、約0.
1時間~約96時間の時間にわたって送達され、指定範囲内の時間の各整数を含む。一部
の態様では、一つまたは複数の薬剤は、約0.1時間~約72時間の時間にわたって送達
され、指定範囲内の時間の各整数を含む。一部の態様では、一つまたは複数の薬剤は、約
0.5時間~約48時間の時間にわたって送達され、指定範囲内の時間の各整数を含む。
一部の態様では、一つまたは複数の薬剤は、約0.5時間~約24時間の時間にわたって
送達され、指定範囲内の時間の各整数を含む。一部の態様では、一つまたは複数の薬剤は
、約0.5時間~約12時間の時間にわたって送達され、指定範囲内の時間の各整数を含
む。一部の態様では、一つまたは複数の薬剤は、約0.5時間~約6時間の時間にわたっ
て送達され、指定範囲内の時間の各整数を含む。一部の態様では、一つまたは複数の薬剤
は、約0.5時間、約1時間、約1.5時間、約2時間、約2.5時間、約3時間、約3
.5時間、約4時間、約4.5時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時
間、約10時間、約1.1時間、約12時間、約16時間、約20時間、約24時間、約
28時間、約32時間、約36時間、約40時間、約44時間、約48時間、約52時間
、約56時間、約60時間、約64時間、約68時間、または約72時間の時間にわたっ
て送達される。
【0120】
本明細書に記述した一部の実施形態では、液体担体溶液中の一つまたは複数の薬剤は、
皮膚の初期のおよその空間に投与される。(例えば、その後の移動または拡散前に)皮膚
に初期送達された液体担体溶液中の一つまたは複数の薬剤は、皮膚のおよその三次元体積
内に分配されるか、またはそれによって取り囲まれうる。このように、本明細書にさらに
記述するように、一つまたは複数の初期送達薬剤は、送達深さのガウス分布を示し、皮膚
組織の三次元体積内にもガウス分布を有することになる。一部の態様では、液体担体溶液
中の一つまたは複数の薬剤は皮膚に投与することができ、液体担体溶液中の一つまたは複
数の薬剤を含む組織体積は約0.7mm3~約2,500mm3であり、指定範囲内の各
整数を含む。一部の態様では、液体担体溶液中の一つまたは複数の薬剤は皮膚に投与する
ことができ、一つまたは複数の薬剤を含む投薬液体担体溶液の合計三次元表面積は約18
mm2~約20,000mm2であり、指定範囲内の各整数を含む。一部の態様では、液
体担体溶液中の一つまたは複数の薬剤は皮膚に投与することができ、一つまたは複数の薬
剤を含む投薬液体担体溶液の合計三次元表面積対体積比は約35mm-1~約5mm-1
であり、指定範囲内の各整数を含む。例示的な体積、表面積、および表面積対体積比は、
局所的生理投与部位、送達装置のサイズ、送達深さ、および治療される疾患に応じて異な
りうる。
【0121】
送達薬剤の組織体積、表面積、および表面積対体積比は、被験者と接触している送達装
置の全体的寸法(幅および長さ)および初期投与薬剤の最深送達深さを、本明細書に記述
した送達深さ測定の標準方法および技術を使用して測定した後に、標準幾何学計算を使用
して決定しうる。
【0122】
本明細書に記述した一部の実施形態では、本明細書に記述した液体担体溶液中の一つま
たは複数の薬剤の複数投薬量は、被験者の皮膚に同時に投与される。一部の態様では、液
体担体溶液中の一つまたは複数の薬剤は、2~50,000部分用量で同時に投与され、
指定範囲の各整数を含む。一部の態様では、液体担体溶液中の一つまたは複数の薬剤は、
2~25,000部分用量で同時に投与される。一部の態様では、液体担体溶液中の一つ
または複数の薬剤は、2~15,000部分用量で同時に投与され、指定範囲の各整数を
含む。一部の態様では、液体担体溶液中の一つまたは複数の薬剤は、2~10,000部
分用量で同時に投与され、指定範囲の各整数を含む。一部の態様では、液体担体溶液中の
一つまたは複数の薬剤は、2~5,000部分用量で同時に投与され、指定範囲の各整数
を含む。一部の態様では、液体担体溶液中の一つまたは複数の薬剤は、2~1,000部
分用量で同時に投与され、指定範囲の各整数を含む。一部の態様では、液体担体溶液中の
一つまたは複数の薬剤は、2~500部分用量で同時に投与され、指定範囲の各整数を含
む。一部の態様では、液体担体溶液中の一つまたは複数の薬剤は、2~250部分用量で
同時に投与され、指定範囲の各整数を含む。一部の態様では、液体担体溶液中の一つまた
は複数の薬剤は、2~150部分用量で同時に投与され、指定範囲の各整数を含む。一部
の態様では、液体担体溶液中の一つまたは複数の薬剤は、2~100部分用量で同時に投
与される。一部の態様では、液体担体溶液中の一つまたは複数の薬剤は、2~50部分用
量で同時に投与され、指定範囲の各整数を含む。一部の態様では、液体担体溶液中の一つ
または複数の薬剤は、2~25部分用量で同時に投与され、指定範囲の各整数を含む。一
部の態様では、液体担体溶液中の一つまたは複数の薬剤は、2~15部分用量で同時に投
与され、指定範囲の各整数を含む。一部の態様では、液体担体溶液中の一つまたは複数の
薬剤は、2~10部分用量で同時に投与される。部分用量一部の態様では、液体担体溶液
中の一つまたは複数の薬剤は、約2部分用量、約5部分用量、約10部分用量、約15部
分用量、約20部分用量、約25部分用量、約30部分用量、約35部分用量、約40部
分用量、約45部分用量、約50部分用量、約75部分用量、約80部分用量、約85部
分用量、約90部分用量、約95部分用量、約100部分用量、約150部分用量、約2
00部分用量、約250部分用量、約300部分用量、約350部分用量、約400部分
用量、約450部分用量、約500部分用量、約600部分用量、約700部分用量、約
800部分用量、約900部分用量、約1,000部分用量、約2,000部分用量、約
3,000部分用量、約4,000部分用量、約5,000部分用量、約6,000部分
用量、約7,000部分用量、約8,000部分用量、約9,000部分用量、約10,
000部分用量、約15,000部分用量、約20,000部分用量、約25,000部
分用量、約30,000部分用量、約35,000部分用量、約40,000部分用量、
約45,000部分用量、または約50,000部分用量で同時に投与される。一部の態
様では、上述の部分用量は、本明細書でさらに記述する適切な送達装置で投与しうる。
【0123】
本明細書に記述した一部の実施形態では、本明細書にさらに記述する独立送達装置を利
用して、一つまたは複数の薬剤の各部分用量を被験者の皮膚に投与しうる。一部の実施形
態では、本明細書に記述した単一送達構造あたりの一つまたは複数の投薬薬剤の流量は、
約0.01μl/時間~約500μl/時間とすることができ、指定範囲内の各整数を含
む。一部の態様では、本明細書に記述した単一送達構造あたりの一つまたは複数の投薬薬
剤の制御流量は、約0.01μl/時間~約250μl/時間とすることができ、指定範
囲内の各整数を含む。一部の態様では、本明細書に記述した単一送達構造あたりの一つま
たは複数の投薬薬剤の制御流量は、約0.01μl/時間~約150μl/時間とするこ
とができ、指定範囲内の各整数を含む。一部の態様では、本明細書に記述した単一送達構
造あたりの一つまたは複数の投薬薬剤の制御流量は、約0.01μl/時間~約100μ
l/時間とすることができ、指定範囲内の各整数を含む。一部の態様では、本明細書に記
述した単一送達構造あたりの一つまたは複数の投薬薬剤の制御流量は、約0.01μl/
時間~約50μl/時間とすることができ、指定範囲内の各整数を含む。一部の態様では
、本明細書に記述した単一送達構造あたりの一つまたは複数の投薬薬剤の制御流量は、約
0.01μl/時間~約25μl/時間とすることができ、指定範囲内の各整数を含む。
一部の態様では、本明細書に記述した単一送達構造あたりの一つまたは複数の投薬薬剤の
制御流量は、約0.01μl/時間~約10μl/時間とすることができ、指定範囲内の
各整数を含む。一部の態様では、本明細書に記述した単一送達構造あたりの一つまたは複
数の投薬薬剤の制御流量は、約0.01μl/時間、約0.5μl/時間、約1μl/時
間、約1.5μl/時間、約2μl/時間、約2.5μl/時間、約3μl/時間、約3
.5μl/時間、約4μl/時間、約4.5μl/時間、約5μl/時間、約10μl/
時間、約15μl/時間、約20μl/時間、約25μl/時間、約30μl/時間、約
35μl/時間、約40μl/時間、約45μl/時間、約50μl/時間、約60μl
/時間、約70μl/時間、約80μl/時間、約90μl/時間、約100μl/時間
、約125μl/時間、約150μl/時間、約175μl/時間、約200μl/時間
、約225μl/時間、約250μl/時間、約300μl/時間、約350μl/時間
、約400μl/時間、約450μl/時間、または約500μl/時間でありうる。
【0124】
本明細書に記述した一部の実施形態では、本明細書に記述した送達構造を通した被験者
の皮膚への一つまたは複数の投薬薬剤の複合全体的制御流量は、約0.02μl/時間~
約50,000μl/時間とすることができ、指定範囲内の各整数を含む。一部の態様で
は、本明細書に記述した一つまたは複数の投薬薬剤の全体的制御流量は、約0.02μl
/時間~約25,000μl/時間とすることができ、指定範囲内の各整数を含む。一部
の態様では、本明細書に記述した一つまたは複数の投薬薬剤の全体的制御流量は、約0.
02μl/時間~約15,000μl/時間とすることができ、指定範囲内の各整数を含
む。一部の態様では、本明細書に記述した一つまたは複数の投薬薬剤の全体的制御流量は
、約0.02μl/時間~約10,000μl/時間とすることができ、指定範囲内の各
整数を含む。一部の態様では、本明細書に記述した一つまたは複数の投薬薬剤の全体的制
御流量は、約0.02μl/時間~約5,000μl/時間とすることができ、指定範囲
内の各整数を含む。一部の態様では、本明細書に記述した一つまたは複数の投薬薬剤の全
体的制御流量は、約0.02μl/時間~約2,500μl/時間とすることができ、指
定範囲内の各整数を含む。一部の態様では、本明細書に記述した一つまたは複数の投薬薬
剤の全体的制御流量は、約0.02μl/時間~約1,250μl/時間とすることがで
き、指定範囲内の各整数を含む。一部の態様では、本明細書に記述した一つまたは複数の
投薬薬剤の全体的制御流量は、約0.02μl/時間~約500μl/時間とすることが
でき、指定範囲内の各整数を含む。一部の態様では、本明細書に記述した一つまたは複数
の投薬薬剤の全体的制御流量は、約0.02μl/時間~約250μl/時間とすること
ができ、指定範囲内の各整数を含む。一部の態様では、本明細書に記述した一つまたは複
数の投薬薬剤の全体的制御流量は、約0.02μl/時間~約125μl/時間とするこ
とができ、指定範囲内の各整数を含む。一部の態様では、本明細書に記述した一つまたは
複数の投薬薬剤の全体的制御流量は、約0.02μl/時間~約50μl/時間とするこ
とができ、指定範囲内の各整数を含む。一部の態様では、本明細書に記述した一つまたは
複数の投薬薬剤の全体的制御流量は、約0.02μl/時間~約25μl/時間とするこ
とができ、指定範囲内の各整数を含む。一部の態様では、本明細書に記述した一つまたは
複数の投薬薬剤の全体的制御流量は、約0.02μl/時間~約10μl/時間とするこ
とができ、指定範囲内の各整数を含む。一部の態様では、本明細書に記述した一つまたは
複数の薬剤の全体的制御流量は、約0.02μl/時間、約0.5μl/時間、約1μl
/時間、約1.5μl/時間、約2μl/時間、約2.5μl/時間、約3μl/時間、
約3.5μl/時間、約4μl/時間、約4.5μl/時間、約30 5μl/時間、約
10μl/時間、約15μl/時間、約20μl/時間、約25μl/時間、約30μl
/時間、約35μl/時間、約40μl/時間、約45μl/時間、約50μl/時間、
約60μl/時間、約70μl/時間、約80μl/時間、約90μl/時間、約100
μl/時間、約125μl/時間、約150μl/時間、約175μl/時間、約200
μl/時間、約225μl/時間、約250μl/時間、約300μl/時間、約350
μl/時間、約400μl/時間、約450μl/時間、約500μl/時間、約550
μl/時間、約600μl/時間、約650μl/時間、約700μl/時間、約750
μl/時間、約800μl/時間、約850μl/時間、約900μl/時間、約950
μl/時間、約1,000μl/時間、約1,250μl/時間、約1,500μl/時
間、約1,750μl/時間、約2,000μl/時間、約2,250μl/時間、約2
,500μl/時間、約2,750μl/時間、約3,000μl/時間、約3,250
μl/時間、約3,500μl/時間、約10 3,750μl/時間、約4,000μ
l/時間、約4,250μl/時間、約4,500μl/時間、約4,750μl/時間
、約5,000μl/時間、約5,500μl/時間、約6,000μl/時間、約6,
500μl/時間、約7 ,000μl/時間、約7,500μl/時間、約8,000
μl/時間、約8,500μl/時間、約9,000μl/時間、約9,500μl/時
間、約10,000μl/時間、約20,000μl/時間、約30,000μl/時間
、約40,000μl時間、または約50,000μl/時間でありうる。
【0125】
本明細書に記述した一部の実施形態では、本明細書に記述した被験者の皮膚への一つま
たは複数の薬剤の複合全体的制御投与流量は、本明細書にさらに記述する被験者の皮膚と
接触している送達装置の合計表面積に基づいて、約0.02μl/時間/cm2~約50
,000μl/時間/cm2の範囲とすることができ、指定範囲内の各整数を含む。一態
様では、送達装置の合計表面積は、被験者の皮膚と接触している送達装置裏打ち基材の二
次元表面積を指す。別の態様では、送達装置の合計表面積は、被験者の皮膚と接触してい
る独立送達装置それぞれの二次元断面表面積を合わせたものを指す。一部の態様では、本
明細書に記述した一つまたは複数の投薬薬剤の全体的制御流量は、約0.02μl/時間
/cm2~約50,000μl/時間/cm2の範囲とすることができ、指定範囲内の各
整数を含む。一部の態様では、本明細書に記述した一つまたは複数の投薬薬剤の全体的制
御流量は、約0.02μl/時間/cm2~約15,000μl/時間/cm2の範囲と
することができ、指定範囲内の各整数を含む。一部の態様では、本明細書に記述した一つ
または複数の投薬薬剤の全体的制御流量は、約0.02μl/時間/cm2~約10,0
00μl/時間/cm2の範囲とすることができ、指定範囲内の各整数を含む。一部の態
様では、本明細書に記述した一つまたは複数の投薬薬剤の全体的制御流量は、約0.02
μl/時間/cm2~約5,000μl/時間/cm2の範囲とすることができ、指定範
囲内の各整数を含む。一部の態様では、本明細書に記述した一つまたは複数の投薬薬剤の
全体的制御流量は、約0.02μl/時間/cm2~約2,500μl/時間/cm2の
範囲とすることができ、指定範囲内の各整数を含む。一部の態様では、本明細書に記述し
た一つまたは複数の投薬薬剤の全体的制御流量は、約0.02μl/時間/cm2~約1
,250μl/時間/cm2の範囲とすることができ、指定範囲内の各整数を含む。一部
の態様では、本明細書に記述した一つまたは複数の投薬薬剤の全体的制御流量は、約0.
02μl/時間/cm2~約500μl/時間/cm2の範囲とすることができ、指定範
囲内の各整数を含む。一部の態様では、本明細書に記述した一つまたは複数の投薬薬剤の
全体的制御流量は、約0.02μl/時間/cm2~約250μl/時間/cm2の範囲
とすることができ、指定範囲内の各整数を含む。一部の態様では、本明細書に記述した一
つまたは複数の投薬薬剤の全体的制御流量は、約0.02μl/時間/cm2~約125
μl/時間/cm2の範囲とすることができ、指定範囲内の各整数を含む。一部の態様で
は、本明細書に記述した一つまたは複数の投薬薬剤の全体的制御流量は、約0.02μl
/時間/cm2~約50μl/時間/cm2の範囲とすることができ、指定範囲内の各整
数を含む。一部の態様では、本明細書に記述した一つまたは複数の投薬薬剤の全体的制御
流量は、約0.02μl/時間/cm2~約25μl/時間/cm2の範囲とすることが
でき、指定範囲内の各整数を含む。一部の態様では、本明細書に記述した一つまたは複数
の投薬薬剤の全体的制御流量は20、約0.02μl/時間/cm2~約μl/時間/c
m2の範囲とすることができ、指定範囲内の各整数を含む。一部の態様では、本明細書に
記述した一つまたは複数の投薬薬剤の全体的制御流量は、約0.02μl/時間/cm2
~約10μl/時間/cm2の範囲とすることができ、指定範囲内の各整数を含む。一部
の態様では、本明細書に記述した一つまたは複数の薬剤の全体的制御流量は、約0.02
μl/時間/cm2、約0.5μl/時間/cm2、約1μl/時間/cm2、約1.5
μl/時間/cm2、約2μl/時間/cm2、約2.5μl/時間/cm2、約3μl
/時間/cm2、約3.5μl/時間/cm2、約4μl/時間/cm2、約4.5μl
/時間/cm2、約5μl/時間/cm2、約10μl/時間/cm2、約15μl/時
間/cm2、約20μl/時間/cm2、約25μl/時間/cm2、約30μl/時間
/cm2、約35μl/時間/cm2、約40μl/時間/cm2、約45μl/時間/
cm2、約50μl/時間/cm2、約60μl/時間/cm2、約70μl/時間/c
m2、約80μl/時間/cm2、約90μl/時間/cm2、約100μl/時間/c
m2、約125μl/時間/cm2、30約150μl/時間/cm2、約175μl/
時間/cm2、約200μl/時間/cm2、約225μl/時間/cm2、約250μ
l/時間/cm2、約300μl/時間/cm2、約350μl/時間/cm2、約40
0μl/時間/cm2、約450μl/時間/cm2、約500μl/時間/cm2、約
550μl/時間/cm2、約600μl/時間/cm2、約650μl/時間/cm2
、約700μl/時間/cm2、約750μl/時間/cm2、約800μl/時間/c
m2、約850μl/時間/cm2、約900μl/時間/cm2、約950μl/時間
/cm2、約1,000μl/時間/cm2、約1,250μl/時間/cm2、約1,
500μl/時間/cm2、約1,750μl/時間/cm2、約2,000μl/時間
/cm2、約2,250μl/時間/cm2、約2,500μl/時間/cm2、約5
2,750μl/時間/cm2、約3,000μl/時間/cm2、約3,250μl/
時間/cm2、約3,500μl/時間/cm2、約3,750μl/時間/cm2、約
4,000μl/時間/cm2、約4,250μl/時間/cm2、約4,500μl/
時間/cm2、約4,750μl/時間/cm2、約5,000μl/時間/cm2、約
5,500μl/時間/cm2、約6,000μl/時間/cm2、約6,500μl/
時間/cm2、約7,000μl/時間/cm2、約7,500μl/時間/cm2、約
8,000μl/時間/cm2、約8,500μl/時間/cm2、約9,000μl/
時間/cm2、約9,500μl/時間/cm2、約10,000μl/時間/cm2、
約20,000μl/時間/cm2、約30,000μl/時間/cm2、約40,00
0μl/時間/cm2、または約50,000μl/時間/cm2でありうる。
【0126】
一部の実施形態では、本明細書に記述した液体担体液中の一つまたは複数の薬剤の制御
送達方法が本明細書に記述されている。一部の態様では、方法は、表皮の少なくとも最も
表面の層を本明細書に記述した送達構造で貫通する工程と、表皮に一つまたは複数の透過
性促進剤を接触させる工程と、液体担体溶液中の一つまたは複数の薬剤を約2~50,0
00部分用量で投与する工程とを含み、部分用量は表皮の最表層を約10μm~約4,5
00μmまたは約1μm~約4,000μm超えているが、まだ皮下組織より上の生育可
能な皮膚内である深さで皮膚(例えば、生育不能な表皮および/または生育可能な表皮お
よび/または生育可能な真皮)に投与され、投与は(a)組織リンパ排出速度と一致する
投与流量、(b)送達装置または送達構造の表面積に基づいた約0.02μl/時間/c
m2~約50,000μl/時間/cm2の全体的投与流量、(c)一つまたは複数の感
受性毛細リンパ管叢の局所近傍の約2mmHgより大きな間質液圧、および(d)液体担
体内の一つまたは複数の薬剤を皮膚に送達する工程であって、送達液体が約0.7mm3
~約2,500mm3の三次元組織体積と接触しているかまたはそれによって取り囲まれ
ている工程のうち一つまたは複数を含む。
【0127】
一部の実施形態では、一つまたは複数の活性原薬を生育可能な皮膚内の感受性毛細リン
パ管叢に制御送達するための方法が本明細書に記述されている。一部の態様では、液体担
体中の一つまたは複数の活性原薬の全体用量が、表皮に送達され、その後生育可能な皮膚
内の一つまたは複数の感受性毛細リンパ管叢に送達される。この全体用量は本明細書に記
述したように2~50,000部分用量を含みうる。一部の態様では、一つまたは複数の
活性原薬の全体用量は体重の約0.0001mg/kg~体重の約100mg/kgを含
むことができ、指定範囲内の各整数を含む。一部の態様では、一つまたは複数の活性原薬
の全体用量は体重の約0.001mg/kg~体重の約100mg/kgを含むことがで
き、指定範囲内の各整数を含む。一部の態様では、一つまたは複数の活性原薬の全体用量
は体重の約0.01mg/kg~体重の約100mg/kgを含むことができ、指定範囲
内の各整数を含む。一部の態様では、一つまたは複数の活性原薬の全体用量は体重の約0
.1mg/kg~体重の約100mg/kgを含むことができ、指定範囲内の各整数を含
む。一部の態様では、一つまたは複数の活性原薬の全体用量は体重の約0.1mg/kg
~体重の約50mg/kgを含むことができ、指定範囲内の各整数を含む。一部の態様で
は、一つまたは複数の活性原薬の全体用量は体重の約0.1mg/kg~体重の約25m
g/kgを含むことができ、指定範囲内の各整数を含む。一部の態様では、一つまたは複
数の活性原薬の全体用量は体重の約0.1mg/kg~体重の約25mg/kgを含むこ
とができ、指定範囲内の各整数を含む。一部の態様では、一つまたは複数の活性原薬の全
体用量は体重の約0.1mg/kg~体重の約10mg/kgを含むことができ、指定範
囲内の各整数を含む。一部の態様では、一つまたは複数の活性原薬の全体用量は体重の約
0.1mg/kg~体重の約5mg/kgを含むことができ、指定範囲内の各整数を含む
。一部の態様では、一つまたは複数の活性原薬の全体用量は、0.0001mg/kg、
約0.001mg/kg、約0.01mg/kg、約0.2mg/kg、約0.5mg/
kg、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/
kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約9mg/kg、約10mg
/kg、約20mg/kg、約30mg/kg、約40mg/kg、約50mg/kg、
約60mg/kg、約25mg/kg、約70mg/kg、約80mg/kg、約90m
g/kg、または約100mg/kgを含みうる。
【0128】
本明細書に記述した一部の実施形態では、本明細書に記述した制御送達の方法は、一つ
または複数の薬剤が一つまたは複数のリンパ節またはリンパ組織に蓄積されるという結果
をもたらす。一部の態様では、一つまたは複数の活性原薬の濃度は、リンパ節組織のグラ
ムあたり初期投薬量の約0.5%~約75%であり、指定範囲内の各整数を含む。一部の
態様では、一つまたは複数の活性原薬の濃度は、リンパ節組織のグラムあたり初期投薬量
の約0.5%~約50%であり、指定範囲内の各整数を含む。一部の態様では、一つまた
は複数の活性原薬の濃度は、リンパ節組織のグラムあたり初期投薬量の約0.5%~約2
5%であり、指定範囲内の各整数を含む。一部の態様では、一つまたは複数の活性原薬の
濃度は、リンパ節組織のグラムあたり初期投薬量の約0.5%~約15%であり、指定範
囲内の各整数を含む。一部の態様では、一つまたは複数の活性原薬の濃度は、リンパ節組
織のグラムあたり初期投薬量の約0.5%~約10%であり、指定範囲内の各整数を含む
。一部の態様では、一つまたは複数の活性原薬の濃度は、リンパ節組織のグラムあたり初
期投薬量の約0.5%~約5%であり、指定範囲内の各整数を含む。一部の態様では、一
つまたは複数の活性原薬の濃度は、リンパ節組織のグラムあたり初期投薬量の約10%~
約60%であり、指定範囲内の各整数を含む。一部の態様では、一つまたは複数の活性原
薬の濃度は、リンパ節組織のグラムあたり初期投薬量の約30%~約55%であり、指定
範囲内の各整数を含む。一部の態様では、一つまたは複数の活性原薬の濃度は、リンパ節
組織のグラムあたり初期投薬量の約40%~約50%であり、指定範囲内の各整数を含む
。一部の態様では、一つまたは複数の活性原薬の濃度は、リンパ節組織のグラムあたり初
期投薬量の約0.5%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約
10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約
50%、約55%、約60%、約65%、約70%、または約75%である。
【0129】
本明細書に記述した一部の実施形態では、本明細書に記述した制御送達の方法は、一つ
または複数の活性原薬が一つまたは複数のリンパ節に蓄積されるという結果をもたらし、
リンパ節組織に対する全血液組織のグラムあたり局在化した一つまたは複数の薬剤の初期
用量の比率は約36時間後に約2:1~約50:1であり、指定範囲内のすべての比率を
含む。一部の態様では、リンパ節組織に対する全血液組織のグラムあたり局在化した一つ
または複数の薬剤の初期用量の比率は約36時間後に約2:1~約25:1であり、指定
範囲内のすべての比率を含む。一部の態様では、リンパ節組織に対する全血液組織のグラ
ムあたり局在化した一つまたは複数の薬剤の初期用量の比率は約36時間後に約2:1~
約15:1であり、指定範囲内のすべての比率を含む。一部の態様では、リンパ節組織に
対する全血液組織の25グラムあたり局在化した一つまたは複数の薬剤の初期用量の比率
は約36時間後に約2:1~約10:1であり、指定範囲内のすべての比率を含む。一部
の態様では、リンパ節組織に対する全血液組織のグラムあたり局在化した一つまたは複数
の薬剤の初期用量の比率は約36時間後に約2:1~約5:1であり、指定範囲内のすべ
ての比率を含む。一部の態様では、リンパ節組織に対する全血液組織のグラムあたり局在
化した一つまたは複数の薬剤の初期用量の比率は、約2:1、約3:1、約4:1、約5
:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1、約12:1、約14:1
、約16:1、約18:1、約20:1、約25:1、約30:1、約35:1、約40
:1、約45:1、または約50:1である。
【0130】
本明細書に記述した一部の実施形態では、本明細書に記述した制御送達の方法は、一つ
または複数の活性原薬が一つまたは複数のリンパ節に蓄積されるという結果をもたらし、
リンパ節組織に対する皮膚のグラムあたり局在化した一つまたは複数の薬剤の初期用量の
比率は約36時間後に約0.2:1~約3:1であり、指定範囲内のすべての比率を含む
。一部の態様では、リンパ節組織に対する皮膚のグラムあたり局在化した一つまたは複数
の薬剤の初期用量の比率は約36時間後に約0.25:1~約3:1であり、指定範囲内
のすべての比率を含む。一部の態様では、リンパ節組織に対する皮膚のグラムあたり局在
化した一つまたは複数の薬剤の初期用量の比率は約36時間後に約0.5:1~約3:1
であり、指定範囲内のすべての比率を含む。一部の態様では、リンパ節組織に対する皮膚
のグラムあたり局在化した一つまたは複数の薬剤の初期用量の比率は約36時間後に約1
:1~約3:1であり、指定範囲内のすべての比率を含む。一部の態様では、リンパ節組
織15個に対する皮膚のグラムあたり局在化した一つまたは複数の薬剤の初期用量の比率
は、約0.2:1、約0.2:1、約0.4:1、約0.6:1、約0.8:1、約1:
1、約2:1、または約3:1である。
【0131】
薬物生体分布および組織による吸収薬物動態の非侵襲的定量法はよく知られており、初
期用量の組織グラムあたりの吸収薬物のパーセントを評価するために使用される。本明細
書に記述したリンパ節組織のグラム当たりに送達された一つまたは複数の薬剤の初期投薬
量パーセントは、一つまたは複数の薬剤を検出可能な放射標識で直接標識した後、本明細
書に記述した方法を使用して薬剤を投与することにより定量化しうる。放射標識薬剤の撮
像および定量化は、標準ポジトロン放出断層撮影(PET)もしくは単一光子放射型コン
ピュータ断層撮影法(SPECT)、またはこれらの技術とX線コンピュータ断層撮影(
CT)もしくは核磁気共鳴画像法(MRI)との組み合わせを使用して評価しうる。例え
ば、Ding and Wu., Theranostics, 2(11), 104
0-1053 (2012)を参照のこと(これはその教示について、参照により本明細
書に組み込まれる)。有用な放射標識は、11C、15O、18F、68Ga、64Cu
、76Br、89Zr、124Iなどの、短寿命または長寿命同位体を含みうる。選択さ
れる放射標識は、試験される薬剤および当技術分野でよく知られている特定の標識プロト
コルに依存する。PETまたはSPECT撮像のいずれかを使用して最初に測定されたリ
ンパ節組織の吸収初期用量/グラムのパーセントは、標準放射線医薬品線量計および組織
密度表を使用して計算しうる。Bolch et al., J. Nucl. Med
., 50(3), 477 (2009)を参照のこと(これはその教示について、参
照により本書に組み込まれる)。
【0132】
その他の比較方法論を使用して、リンパ組織に送達された、組織のグラムあたりの薬物
量を評価しうる。適切な比較方法論は、上述の短寿命または長寿命同位体のいずれかで一
つまたは複数の薬剤を放射標識する工程と、本明細書に記述した方法を使用して標識され
た一つまたは複数の薬剤を適切な比較試験被験者に投与する工程とを含む。被験者は、ラ
ット、モルモット、マウスまたはサルなどの実験動物を含みうる。リンパ組織のグラムあ
たりに送達された初期用量の生体分布およびパーセントを決定するために、その他の相対
的器官の中でもとりわけリンパ組織(例えば、一つまたは複数のリンパ節)を、被験動物
から採取することができ、その組織内の比放射能計数値を、よく知られた標準技術を使用
して測定・定量化し、初期投薬量の放射能測定値と比較することができる。
【0133】
本明細書に記述した一部の実施形態では、本明細書に記述した制御送達の方法は、静脈
内(i.v.)、皮下(s.c.)、筋肉内(i.m.)、または皮内(i.d.)注射
経路または従来的な経皮パッチなど、その他の従来型送達経路と比べて、一つまたは複数
の薬剤の初期投薬量のより多くが一つまたは複数の感受性毛細リンパ管叢に吸収されると
いう結果をもたらす。一部の態様では、本明細書に記述した制御送達方法は、i.v.、
s.c.、i.m.、またはi.d.非経口送達経路と比べて、一つまたは複数の薬剤の
リンパ送達の約1.25倍~約50倍の増加をもたらし、指定範囲内の各整数を含む。一
部の態様では、本明細書に記述した制御送達方法は、i.v.、s.c.、i.m.、ま
たはi.d.非経口送達経路と比べて、一つまたは複数の薬剤のリンパ送達の約1.25
倍~約20倍の増加をもたらし、指定範囲内の各整数を含む。一部の態様では、本明細書
に記述した制御送達方法は、i.v.、s.c.、i.m.、またはi.d.非経口送達
経路と比べて、一つまたは複数の薬剤のリンパ送達の約1.25倍~約10倍の増加をも
たらし、指定範囲内の各整数を含む。一部の態様では、本明細書に記述した制御送達方法
は、i.v.、s.c.、i.m.、またはi.d.非経口送達経路と比べて、一つまた
は複数の薬剤のリンパ送達の約1.25倍~約5倍の増加をもたらし、指定範囲内の各整
数を含む。
【0134】
一つまたは複数の毛細リンパ管叢による本明細書に記述した方法を使用して送達した薬
剤の取り込みの評価および比較は、本明細書に記述した方法を使用して送達される薬剤ま
たは生物活性薬剤に付着した一つまたは複数の造影剤を使用することによって決定しうる
。これらの造影剤を使用して、例えば、一つまたは複数の毛細リンパ管叢またはリンパ節
組織などの、毛細リンパ管および組織を撮像することができる。適切な造影剤は、生体適
合性であり、生物活性または副作用を持たない任意の薬剤でありうる。例示的および非限
定的な造影剤は、直接的または間接的X線リンパ管造影に使用される一つまたは複数の薬
剤、核磁気共鳴画像法(MRI)に使用される一つまたは複数の造影剤、蛍光マイクロリ
ンパ管造影(FML)に使用される一つまたは複数の蛍光造影剤、またはCGリンバ管造
影で使用するための組織貫通近赤外光(NIR)で励起する一つまたは複数の蛍光造影剤
でありうる。リンパ管造影に使用される技術および薬剤は当技術で知られており、例えば
、Sevick-Muraca et al., J. Clin Invest.,
124(3), 905-914 (2014)を参照のこと(これはその教示について
、参照により本明細書に組み込まれる)。標準的画像解析アルゴリズムおよびソフトウェ
アを使用して、上述の造影剤で標識またはタグ付けされた送達薬剤の発蛍光団強度を計算
し、従来型のi.v.、s.c.、i.m.、またはi.d.非経口送達経路と比較しう
る。
【0135】
一部の実施形態では、本明細書に記述した制御送達方法は、本明細書に記述したように
比較的高い速度のリンパ送達を維持しながら、i.v.、s.c.、i.m.、またはi
.d.非経口送達経路と比べて、本明細書に記述した一つまたは複数の薬剤の同等の血清
吸収速度をもたらす。いかなる理論にも束縛されるものではないが、送達の速度は、胸管
を通り血液循環中に入る一つまたは複数の薬剤のリンパ循環の結果でありうる。放射免疫
測定法、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、蛍光偏光免疫測定法(FPIA)、
酵素免疫測定法(EMIT)または酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)など、当技術
分野でよく知られている標準的な高正確性で高精度の方法論を、望ましい時点での血清濃
度測定および治療モニタリングのために使用しうる。上述の方法を使用して吸収速度を計
算するためには、投与直後から開始してその後徐々にCmax値が確立されるまでいくつ
かの時点での薬剤濃度を測定し、関連する吸収速度を計算すべきである。
【0136】
一部の実施形態では、本明細書に記述した制御送達方法は、既知の有効治療閾値より上
の生物活性薬剤(例えば、活性原薬)レベルの生理学的延長をもたらす。一部の態様では
、本明細書に記述した制御送達方法は、本明細書に記述した一つまたは複数の活性原薬の
ボーラス投与を減少または予防する。一部の態様では、これは、一つまたは複数の生物活
性薬剤の全身血漿循環中の潜在的に危険なスパイクを制限することにより、一つまたは複
数の生物活性薬剤の安全性プロファイル増加をもたらしうる。さらに、本明細書に記述し
た制御送達方法はさらに、治療または有益効果のために必要な用量を低下させることによ
り、一つまたは複数の投与活性原薬の治療可能比を増加させうる。
【0137】
一部の実施形態では、本明細書に記述した制御送達方法は、一つまたは複数の薬剤が疾
患の部位(例えば、一つまたは複数のリンパ節)に保持されて、全身に広がらないという
結果をもたらし、活性原薬の既知の副作用の発生率減少をもたらす。例えば、炎症を伴う
疾患(例えば、癌、感染症、関節炎)では、一つまたは複数の薬剤は感受性毛細リンパ管
叢によって吸収されて炎症の部位に分配され、体循環中にはさらに分配されない可能性が
ある。ここでも疾患に応じて、一つまたは複数の薬剤は、リンパ管構造およびリンパ組織
を通り、胸管を通って全身血液循環に入って循環することにより、全身的に分配されうる
。
【0138】
一部の実施形態では、本明細書に記述した制御送達方法は、有効治療閾値より上に一つ
または複数の活性原薬の生理的延長レベルを維持しながら、最大治療有効性またはTma
xまでの比較的短い時間をもたらす。Tmaxは活性原薬のCmaxまたは合計血清濃度
とは独立している場合があり、疾患または状態の寛解の認知によって評価することができ
る。本明細書に記述した一部の実施形態では、本明細書に記述した方法によって、皮膚お
よび感受性毛細リンパ管叢に送達される一つまたは複数の生物活性薬剤は、活性原薬を含
みうる。例えば、活性原薬は、細胞受容体または表面タンパク質に作用し、作動薬、拮抗
薬、逆作動薬などとして機能できる化合物(例えば、小分子)とすることができ、これは
疾患経路の変更および、しばしば本明細書に記述した疾患または障害に苦しむ被験者に対
する有効で有益な転帰をもたらす。活性原薬は、癌細胞に対して毒性を示すか、または殺
菌または抗ウィルス活性を持ちうる。適切な活性原薬は、治療される疾患または障害およ
び特定活性原薬の投与に対する被験者の寛容性に依存する。本明細書に記述した適切な活
性原薬は、活性原薬が親水性、親油性、または両親媒性であるかどうかにかかわらず投与
しうる。活性原薬は、水性環境に難溶性または高度に可溶性であり、低いまたは高い全身
透過性を示しうる(例えば、任意のBCSクラスI,II、IIIまたはIV薬物)。さ
らに本明細書に記述した活性原薬は、抗体(例えば、ヒト化抗体)など、任意のタンパク
質薬物も含みうる。
【0139】
例示的活性原薬は小分子を含みうる。一部の態様では、小分子は約50g/モル~約1
,000g/モル(すなわち、≒50Da~1,000Da)の分子量を持つことができ
、指定範囲内の各整数を含む。一部の態様では、小分子は、約50g/モル、約100g
/モル、約150g/モル、約200g/モル、約250g/モル、約300g/モル、
約350g/モル、約400g/モル、約450g/モル、約500g/モル、約550
g/モル、約600g/モル、約650g/モル、約700g/モル、約750g/モル
、約800g/モル、約850g/モル、約900g/モル、約950g/モル、または
約1000g/モルの分子量を持ちうる。
【0140】
その他の適切な活性原薬はより大きな化合物またはタンパク質を含みうる。一部の態様
では、化合物またはタンパク質は、約1kDa~約250kDaの原子量を含むことがで
き、指定範囲内の各整数を含む。一部の態様では、化合物またはタンパク質は約1kDa
、約5kDa、約10kDa、約15kDa、約20kDa、約25kDa、約50kD
a、約75kDa、約100kDa、約125kDa、約150kDa、約175kDa
、約200kDa、約225kDa、または約250kDaの原子量を持ちうる。
【0141】
一部の実施形態では、本明細書に記述した方法によって、一つまたは複数の生物活性薬
剤を被験者の皮膚(例えば、表皮)に送達することによる、疾患、障害、または感染症に
関連する一つまたは複数の症状を予防、治療、または改善するための、一つまたは複数の
生物活性薬剤の動物(好ましくは哺乳類、および最も好ましくはヒト)への投与方法が記
述されている。本明細書に記述した方法は、リンパ系の疾患または障害、原発または転移
性腫瘍性疾患(すなわち、癌)、自己免疫障害、および感染症の治療または予防に有用で
ある。生物活性薬剤は、本技術分野で知られているか、または本明細書に記述した薬学的
に許容可能な組成物または製剤で提供しうる。
【0142】
本明細書に記述した一部の実施形態では、一つまたは複数の生物活性薬剤は、実質的に
溶解した溶液、懸濁液、またはコロイド懸濁液として液体担体中に存在する。少なくとも
米国薬局方(USP)規格を満たす任意の適切な液体担体溶液を使用することができ、こ
のような溶液の張性は変更することができ、例えば、Remington: The S
cience and Practice of Pharmacy (Lloyd V
. Allen Jr. ed., 22nd ed.2012)を参照のこと。例示的
な非限定的液体担体溶液は、投与される生物活性薬剤に応じて、水性、半水溶性、または
非水性でありうる。例えば、水性液体担体は、水ならびに、水混和性媒体エチルアルコー
ル、液体(低分子量)ポリエチレングリコール、および同種のものの任意の一つまたは組
み合わせを含みうる。非水性担体は、トウモロコシ油、綿実油、ピーナッツ油、またはゴ
マ油、および同種のものなど、不揮発性油を含みうる。適切な液体担体溶液は、保存剤、
抗酸化剤、錯化促進剤、緩衝剤、酸性化剤、生理食塩水、電解質、粘度促進剤、粘度減少
剤、アルカリ化剤、抗菌剤、抗真菌剤、溶解性増強剤またはこれらの組み合わせをさらに
含みうる。
【0143】
本明細書に記述した一部の実施形態は、それを必要とする被験者の疾患または障害を治
療する、予防する、可能性を減少する、改善する、または管理する方法を含み、方法は、
一つまたは複数の生物活性薬剤(例えば、活性原薬)の治療有効用量または予防有効用量
を、それを必要とする被験者の皮膚(例えば、表皮)に投与する工程を含み、一つまたは
複数の生物活性薬剤は感受性毛細リンパ管叢によって吸収される。一部の態様では、一つ
または複数の生物活性薬剤を被験者の生育可能または生育不能な表皮に送達することによ
って被験者の疾患を治療または予防する方法は、従来型経路(例えば、i.v.、s.c
.、i.m.、またはi.d.注射)よりも効果的である。
【0144】
本明細書に記述した方法は、表皮(生育不能な表皮および生育可能な表皮)への送達に
よってさまざまな生物活性薬剤の直接リンパ標的を提供し、用量節約、薬物有効性の増加
、副作用の減少、転移可能性の減少、炎症の減少、および被験者の生存延長を含む、過去
に未達の有益な治療転帰をもたらす。よって、本明細書に記述した方法は、i.v.、s
.c.、i.m.、またはi.d.注射法と比べた時、治療薬の全身および/または局所
蓄積増加を提供する。このように、任意の適切な疾患または状態を本明細書に記述した方
法で治療することができる。
【0145】
一部の実施形態では、表皮を通した投与薬剤の拡散または移動は、一つまたは複数の透
過性または浸透性促進剤の投与または被験者の表皮との接触によって増加しうる。一部の
態様では、透過性または浸透性促進剤は化学的、物理的、または電気的でありうる。透過
性促進剤は、表皮の角質層を通り生育可能な表皮へと入る一つまたは複数の薬剤の移動ま
たは拡散を増加するように機能する。透過性促進剤は、生育可能な表皮の基底膜を含む生
育可能な表皮を通り下にある生育可能な真皮に入る一つまたは複数の投与薬剤の移動また
は拡散をさらに促進しうる。例えば、Prasunitz and Langer.,
Nature Biotechnol., 26(11), 1261-1268 (2
008)を参照のこと(これは、経皮薬物送達の表皮透過性促進剤の使用の教示について
、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0146】
本明細書に記述した一部の実施形態では、一つまたは複数の化学的透過性促進剤の有効
量を表皮に送達しうる。いかなる理論にも束縛されるものではないが、本明細書に記述し
た化学的透過性促進剤は、変性細胞内ケラチンによって、投与薬剤に対する角質層の浸透
性を増進し、水和作用のために腫脹を起こし、角質細胞接着を維持しているデスモソーム
に影響を与えるか、または脂質二重層内の脂質を生成しているバリアを変更しうると考え
られる。化学的透過性促進剤の非限定的例には、スルホキシド(ジメチルスルホキシドお
よびドデシルメチルスルホキシドなど)、尿素、アルコール(エタノール、カプリルアル
コールおよびプロピレングリコールなど)、ピロリドンおよび誘導体(N-メチル-2-
ピロリドンおよび2-ピロリドン)、アゾンおよび誘導体(1-ドデシルアザシクロヘプ
タン-2-オンなど)、ジオキソラン誘導体、アニオン、カチオン、非イオン、または双
性イオン界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム、セチルトリメチルアンモニウムブロミド
、ソルビタンモノラウレート、ポリソルベート80、ドデシルジメチルアンモニオプロパ
ンサルフェートなど)、テルペン(メントールまたはリモネンなど)、脂肪酸(オレイン
酸またはウンデカン酸など)、または水の水和量が含まれうる。
【0147】
本明細書に記述した一部の実施形態では、物理的透過性促進剤を使用して、投与薬剤に
対する表皮の透過性を増加しうる。一部の態様では、物理的透過性促進剤は、表皮の透過
性を増加するために、音、電界の適用、または表皮との特定構造相互作用に依拠しうる。
非限定的例には、ソノフォレーシス(例えば、超音波)、イオン泳動、電気穿孔法、また
はナノ構造接触面(例えば、ナノトポグラフィー)が含まれる。
【0148】
本明細書に記述した一部の実施形態では、本明細書に記述した感受性毛細リンパ管叢に
一つまたは複数の薬剤を制御送達する方法は、角質層を貫通して皮膚の送達深さおよび体
積を得て、本明細書に記述した投与速度で一つまたは複数の薬剤を制御送達することがで
きる、2~50,000個の送達構造を備える送達装置で一つまたは複数の薬剤を送達す
る工程を含みうる。送達構造は、角質層を貫通し一つまたは複数の薬剤を送達するために
、送達装置の裏打ち基材に取り付け、一つまたは複数の異なる角度に配置しうる。本明細
書に記述した一部の態様では、送達構造を含む裏打ち基材は、被験者の皮膚と接触するこ
とができ、円筒形、長方形、または幾何学的に不規則な形状を持ちうる。裏打ち基材は、
一部の態様では約1mm2~約10,000mm2でありうる二次元表面積をさらに含む
。
【0149】
一部の態様では、送達構造は任意の幾何学形状(例えば、円筒形、長方形または幾何学
的に不規則な形状)を備えうる。さらに、送達構造は長さおよび断面表面積を備えうる。
一部の態様では、送達構造は、断面直径または幅よりも大きな全長を持ちうる。一部の態
様では、送達構造は、全長よりも大きな断面直径または幅を持ちうる。一部の態様では、
送達構造のそれぞれの断面幅は約5μm~約140μmとすることができ、断面積は約2
5μm2~約15,000μm2とすることができ、指定範囲内の各整数を含む。一部の
態様では、送達構造のそれぞれの長さは約10μm~約1,000μmとすることができ
、指定範囲内の各整数を含む。本明細書に記述した表面積および断面積は、当技術分野で
知られている標準幾何学的計算を使用して決定しうる。
【0150】
本明細書に記述した送達構造は互いに同一である必要はない。複数の送達構造を持つ装
置はそれぞれ、様々な長さ、外径、内径、断面形状、ナノトポグラフィー表面、および/
またはそれぞれの送達構造間の間隔を持ちうる。例えば、送達構造は、例えば長方形もし
くは正方形のグリッドまたは同心円など、均一に間隔を置きうる。間隔は、送達構造の高
さおよび幅、ならびに送達構造を通して送達することが意図される薬剤の量およびタイプ
を含む、多くの因子に依存しうる。一部の態様では、各送達構造の間隔は約1μm~約8
00μmとすることができ、指定範囲内の各整数を含む。
【0151】
一部の実施形態では、送達構造は一つまたは複数の薬剤を含む液体担体媒体と流体連通
したニードルアレイを備えうる。一部の態様では、ニードルアレイは皮膚貫通および皮膚
への液体送達(例えば、皮膚への貫通および送達)を制御するための構造的手段を持つ複
数のニードルを含みうる。例えば、US2015/0367117を参照のこと(これは
参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。一部の実施形態では、ニードルアレイ
は、皮膚貫通および皮膚への液体送達を制御するための構造的手段を持つニードル2~5
0,000本を含みうる。その他一部の態様では、ニードルアレイは、各ニードルの上に
製作されたランダムなまたは構造化されたナノトポグラフィーをさらに含みうる。ニード
ルまたはニードルアレイは、流体送達速度コントロール、皮膚に取り付けるための接着剤
、流体ポンプ、および同種のものを含むより大きな薬物送達装置に取り付けうる。必要に
応じて、薬剤の送達速度は、圧力生成手段によって可変的に制御しうる。本明細書に記述
した表皮への望ましい送達速度は、圧力、またはポンプ、シリンジ、ペン、エラストマー
膜、ガス圧、圧電、電動、電磁もしくは浸透圧ポンプを含むその他の駆動手段の適用、も
しくは流量制御膜の使用またはこれらの組み合わせによって、本明細書に記述した一つま
たは複数の薬剤を駆動することによって、開始されうる。一つまたは複数の薬剤を表皮に
制御可能に送達する手段を備える特定の例示的構造および装置が、US2011/027
0221、US2012/0187814、US2013/0144217、US201
3/0144257、US2013/0150822、US2013/0158505、
US2013/0165861、US2014/0343532、US2015/036
0018、US2015/0367117、US2016/0106965に記述されて
おり、それぞれが参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0152】
本明細書に記述された一部の実施形態では、送達装置はパッチの形態のニードルアレイ
を備えうる。一部の態様では、ニードルアレイは、角質層の最表層を貫通し、本明細書に
記述した一つまたは複数の薬剤を生育不能な表皮の少なくとも一部分またはすべて、生育
可能な表皮の少なくとも一部分またはすべて、および/または被験者の生育可能な真皮の
少なくとも一部分に初期送達することができる。これらのニードルは、ランダムまたは組
織立ったパターンのニードルの表面上にナノトポグラフィーをさらに備えうる。一部の態
様では、ナノトポグラフィーパターンはフラクタル形状を示しうる。
【0153】
皮膚に一つまたは複数の薬剤を送達するための例示的および非限定的装置および構造を
図3および4に示す。
図3に示すように、図示したニードル組立品は、上面44および下
面46を持ち、上面44と下面46の間に複数の開口部50を画定するサポート42を含
みうる。さらに、ニードル組立品は、底面46から外向きに延長する複数のニードル48
も含みうる。上述のように、各ニードル48は、開口部50と流体連結している一つまた
は複数のチャネル56を画定しうる。従って、適切なレザバー内に含まれる本明細書に記
述した液体担体中の活性製剤は、使用者の皮膚へのその後の送達のために、サポート42
の上面44から開口部50を通り、ニードル48の中へと方向付けられる場合がある。本
明細書に記述した方法は、皮膚の生育可能な層および最終的には感受性毛細リンパ管叢お
よび/または毛細血管叢への一つまたは複数の薬剤の送達を提供する。
【0154】
上述のニードルは本明細書に記述したナノトポグラフィーをさらに備えうる。
図4は、
2個の代表的なニードル22の端部を模式的に図示する。この特定実施形態では、ニード
ル22は、本明細書に記述したニードルアレイの各ニードル22による薬剤の送達に使用
されうる中央出口管腔24を画定する。その他一部の実施形態では、ニードルは、ニード
ルによる薬剤の送達のために複数の出口管腔を持ちうる。ニードル22の表面25はナノ
トポグラフィー領域26を画定しうる。この特定実施形態では、ナノトポグラフィー26
は、ニードル22の表面25上にランダムパターンを画定するが、その他一部の実施形態
では、ナノトポグラフィーは構造化されているか、または部分的に構造化/非構造化され
た様式でありうる。
【0155】
本明細書に記述した一部の実施形態では、本明細書に記述したナノトポグラフィーを持
つニードルアレイを含む送達装置は、透過性促進剤として機能し、表皮を通した一つまた
は複数の薬剤の送達を増加させうる。本明細書に記述したように、この送達は、経細胞輸
送機構(例えば、能動または受動機構)の調整を通して、または傍細胞浸透を通して起こ
りうる。いかなる理論にも束縛されるものではないが、ナノ構造またはナノトポグラフィ
ー表面は、細胞間密着結合を変更して傍細胞または細胞能動輸送経路(例えば、経細胞輸
送)の変更を可能にし、生育可能な表皮を通り下にある生育可能な真皮中への投与薬剤の
拡散もしくは移動および/または能動輸送を許すことにより、上皮基底膜を含む生育可能
な表皮の一つまたは複数の層の透過性を増加させうる。この効果は、細胞間密着結合タン
パク質の遺伝子発現の調整によるものでありうる。すでに述べたように、密着結合は生育
可能な皮膚内、特に生育可能な表皮内に見られる。密着結合の開口部は、以前は皮膚を通
した送達が遮断されていたものなど、任意の薬剤の送達改善のための傍細胞経路を提供し
うる。
【0156】
本明細書に記述した一部の実施形態では、ナノトポグラフィーを持つニードルアレイを
備える送達装置は、一つまたは複数の生育可能な上皮細胞タイプ(例えば、生育可能な上
皮、真皮皮膚細胞、毛細血管細胞または毛細リンパ管細胞)の細胞間接触遺伝子の遺伝子
核酸発現を調整する。一部の態様では、一つまたは複数の細胞間接触タンパク質の核酸遺
伝子発現が増加する。一部の態様では、一つまたは複数の細胞間接触タンパク質の核酸遺
伝子発現が減少する。PCR、RT-PCR、qRT-PCR、マイクロアレイ、ノーザ
ンブロッティング、RNAシークエンシング、および同種のものを含むがこれらに限定さ
れない遺伝子発現レベルの任意の測定方法を使用しうる。
【0157】
個別細胞とナノトポグラフィー構造との間の相互作用は、上皮組織(例えば、表皮)の
透過性を増加し、バリア細胞を通した薬剤の通過を誘発し、経細胞輸送を促進しうる。例
えば、生育可能な表皮のケラチノサイトとの相互作用は、ケラチノサイト中への薬剤の分
配に続いて、細胞を通して、脂質二重層を再び横切る拡散を促進しうる。さらに、ナノト
ポグラフィー構造と角質層の角質細胞との相互作用は、バリア脂質またはコルネオデスモ
ソーム内に変化を誘発し、角質層を通り下にある生育可能な表皮層中への薬剤の拡散をも
たらしうる。薬剤は傍細胞および経細胞経路に従ってバリアを横切りうるが、優勢な輸送
経路は薬剤の性質に応じて異なりうる。
【0158】
本明細書に記述した一部の実施形態では、ナノトポグラフィーを持つニードルアレイを
備える送達装置は、一つまたは複数の生育可能な上皮細胞タイプ(例えば、生育可能な表
皮、真皮皮膚細胞、毛細血管細胞または毛細リンパ管細胞)の細胞間接触遺伝子のタンパ
ク質発現を調整する。一部の態様では、一つまたは複数の細胞間接触タンパク質のタンパ
ク質発現が増加する。一部の態様では、一つまたは複数の細胞間接触タンパク質のタンパ
ク質発現が減少する。ウェスタンブロッティング、組織画像法(例えば、蛍光または化学
発光画像法)、質量分析法、および同種のものを含むがこれらに限定されないタンパク質
発現レベルの任意の測定方法を使用しうる。
【0159】
本明細書に記述した一部の実施形態では、装置は上皮組織の一つまたは複数の構成要素
と相互作用して組織の多孔度を増加し、傍細胞および/または経細胞輸送機構の影響を受
けやすくしうる。上皮組織は体の主な組織タイプの一つである。より多孔性にされうる上
皮組織には、ケラチン性上皮および移行上皮の両方を含む、単層および重層上皮の両方が
含まれうる。さらに、本明細書で包含する上皮組織には、ケラチノサイト、内皮細胞、リ
ンパ管内皮細胞、扁平上皮細胞、円柱細胞、立方細胞および多列上皮を含むがこれらに限
定されない上皮層の任意の細胞タイプが含まれうる。任意の上皮透過性アッセイを含むが
これに限定されない、任意の多孔度測定方法を使用しうる。例えば、ホールマウント透過
性アッセイを使用して、上皮(例えば、皮膚)多孔度またはバリア機能をインビボで測定
しうる。一実施形態では、ホールマウント透過性アッセイは5-ブロモ-4-クロロ-3
-インドリル-β、D-ガラクトピラノシド(X-Gal)を使用する。固定されていな
い未処理試料をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)ですすぎ、短時間乾燥する。試料を、p
Hを4.5に調整した標準X-Gal反応混合物中に浸漬する。37℃で8~10時間培
養した後、試料をPBSで1~2分間洗浄し、解析する。一実施形態では、ホールマウン
ト透過性アッセイは、トルイジンブルーまたはヘマトキシリンなどであるがこれらに限定
されない組織学的染料を使用する。固定されていない未処理試料をメタノール中、1~5
分間培養し、PBSですすぐ。0.5%ヘマトキシリンまたは0.1%トルイジンブルー
中、試料を培養し、その後分析のためにアガロースに包埋する。一実施形態では、試料分
析は調製サンプルを写真撮影することによって実施され、染料浸透の程度に基づいて評価
される。本技術分野で知られているその他の方法も使用しうる。例えば、Indra a
nd Leid, Methods Mol Biol. (763) 73-81を参
照のこと(これはその教示について、参照により本書に組み込まれる)。
【0160】
本明細書に記述した一部の実施形態では、バリア細胞上のナノトポグラフィー表面の存
在によって誘発される構造変化は一時的および可逆的である。驚くことに、ナノ構造化さ
れたナノトポグラフィー表面の使用は、結合安定性および動力学を変化させることにより
、上皮組織の多孔度を一時的および完全に可逆的に増加させることが分かり、いかなる理
論にも束縛されるものではないが、これは表皮を通って生育可能な真皮中に入る投与薬剤
の傍細胞および経細胞輸送の一時的増加をもたらしうる。このように一部の態様では、一
つまたは複数の薬剤の傍細胞または経細胞拡散または移動の促進など、ナノトポグラフィ
ーによって誘発される表皮または上皮組織の透過性の増加は、ナノトポグラフィーの除去
後は、上皮細胞をナノトポグラフィーと接触させる前に存在した正常な生理状態に戻る。
こうして、バリア細胞(例えば、表皮細胞)の正常なバリア機能が回復し、被験者の組織
内の分子の正常な生理的拡散または移動を超えた、分子のさらなる拡散または移動は起こ
らない。
【0161】
ナノトポグラフィーによって誘発されるこれらの可逆的な構造変化は、二次的皮膚感染
、有害毒素の吸収を制限し、真皮の刺激を制限しうる。表皮の上層から基底層への表皮透
過性の漸進的逆転は、表皮を通って真皮中に入る一つまたは複数の薬剤の下向きの移動を
促進し、一つまたは複数の薬剤が表皮中に逆流または逆拡散するのを防ぎうる。
【0162】
一部の代替的実施形態では、一つまたは複数の薬剤を皮膚に送達する方法は、ニードル
、マイクロニードル、またはナノニードルベースの注射手段だけでなく、液体のニードル
なしまたはニードルフリーバリスティック注射、イオン泳動技術、および液体、固体また
はその他の投薬形態の皮膚の表皮中への直接堆積など、その他の送達方法を含む。
【0163】
一部の実施形態では、本明細書に記述した疾患または障害の治療のために、少なくとも
二つ以上の送達構造を持つ装置を被験者の皮膚の表面に適用する方法が本明細書に記述さ
れている。一部の態様では、装置は被験者の皮膚の領域に適用され、体の皮膚のこの場所
は毛細リンパ管が密集している。毛細リンパ管の密集ネットワークを持つ皮膚の一つまた
は複数の場所に複数の装置を適用しうる。一部の態様では、1、2、3、4、5個または
それ以上の装置を適用しうる。これらの装置は、空間的に離れてまたは互いに近接もしく
は並置して適用されうる。リンパ管が密集する例示的な非限定的場所は、手の掌側面、陰
嚢、足の足底面および下腹部を含む。
【0164】
本明細書の任意の実施形態または態様の範囲から逸脱することなく、本明細書に記述し
た組成物、方法および適用に対する適切な変更および適用を行いうることが当業者には明
らかであろう。提供された組成物および方法は例示的であり、指定実施形態の範囲を限定
することを意図しない。本明細書に開示した様々な実施形態、態様および選択肢のすべて
をすべてのバリエーションで組み合わせることができる。本明細書に記述した組成物、製
剤、方法およびプロセスの範囲には、本明細書に開示した実施形態、態様、選択肢、例、
および好みのすべての実際または潜在的組み合わせが含まれる。本明細書に引用されたす
べての特許および出版物は、その特定の教示について、参照により本明細書に組み込まれ
る。
【実施例0165】
皮膚のダイアグラム
真皮および表皮を含む皮膚の全体構造が
図1に示されている。真皮は無数の組織タイプ
から成り、一般的に約500μm~約4,000μmの範囲の全厚を示す。リンパおよび
毛細血管はしばしば図示するように一緒に見られるか、別々の実体として存在することが
できる。図示したように、血液および毛細リンパ管はしばしば、真皮乳頭層の一部内の真
皮の上部内(例えば、表皮真皮または表皮基底膜の近く)に位置する。大きめの管は下部
真皮網状層(例えば、示した血管)内に一般的に見られる。皮膚機能に重要なその他の組
織タイプには、大きめの動脈、細動脈、汗腺管、皮脂腺、神経小体、結合組織および細胞
外基質、平滑筋、ならびに毛包が含まれる。真皮網状層の下には皮下組織層があり、これ
は主に脂肪組織から成り、一般的にどのリンパ管または血管構造もない。
【0166】
図2Aに示すように、皮膚上皮層は、真皮のその他多くの組織タイプ(例えば、血液お
よび毛細リンパ管など)を欠く4つの主な細胞相から形成され、一般的な厚さは約20μ
m~約400μmの範囲である。上から下の順に示すように、基底膜に続いて、基底層ま
たは胚芽層、鱗状細胞層または有棘層(棘層)、顆粒細胞層または顆粒層、および角化層
または角質層である。表皮は主に非有糸分裂であり、生育不能な除核バリア提供細胞を含
む角質層を持つが、
図2Bに示すように、基底層は、角質の再生のための対称分割幹細胞
およびその他のTA細胞から構成される。