(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151352
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】蓄電池の劣化状態を推定するためのシステム、作業機械、及び蓄電池の劣化状態を推定するための方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/392 20190101AFI20231005BHJP
G01R 31/382 20190101ALI20231005BHJP
G01R 31/385 20190101ALI20231005BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231005BHJP
B66F 9/24 20060101ALI20231005BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G01R31/392
G01R31/382
G01R31/385
H02J7/00 Y
B66F9/24 W
H01M10/48 P
H01M10/48 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060928
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹島 慶二
(72)【発明者】
【氏名】長倉 隻人
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 佑人
【テーマコード(参考)】
2G216
3F333
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216BA01
2G216BA21
3F333AA02
3F333AE02
3F333CA09
3F333DB05
3F333FA05
3F333FD01
3F333FD06
5G503BA01
5G503BB02
5G503EA08
5G503FA06
5H030AA10
5H030AS08
5H030FF22
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】蓄電池の劣化状態を精度良く推定すること。
【解決手段】蓄電池の劣化状態を推定するためのシステムは、コントローラを備える。コントローラは、蓄電池の使用状態を特定し、複数の使用状態のそれぞれにおいて蓄電池の劣化状態を算出する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池の劣化状態を推定するためのシステムであって、
コントローラを備え、
前記コントローラは、
前記蓄電池の使用状態を特定し、
複数の前記使用状態のそれぞれにおいて前記蓄電池の劣化状態を算出する、
システム。
【請求項2】
前記使用状態は、充電状態、放電状態、及び休止状態を含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記蓄電池の劣化速度に係る特性値を示すパラメータを記憶し、
前記蓄電池の動作条件を取得するし、
前記パラメータと前記動作条件とに基づいて、前記劣化状態を算出する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記蓄電池の動作条件と前記蓄電池の劣化速度との関係を示す相関データを記憶し、
前記パラメータは、前記相関データから導出される、
請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記パラメータと前記動作条件とに基づいて、前記動作条件を前記相関データに代入して得られる劣化速度を示す劣化速度影響度を算出し、
前記動作条件と前記劣化速度影響度とに基づいて、現在の使用状態における前記蓄電池の劣化速度を示す今回劣化速度を算出し、
前記今回劣化速度と、前回の使用状態において算出した前記劣化状態を示す前回SOHとに基づいて、前記SOHに至る前記蓄電池の使用時間のルート値を示す前回ルート時間を算出し、
前記前回ルート時間と、前記今回劣化速度と、現在の使用状態のルート時間を示す今回ルート時間とに基づいて、現在の使用状態における前記蓄電池の劣化状態を示す今回SOHを算出する、
請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記動作条件は、複数の前記使用状態の使用時間のそれぞれにおける前記蓄電池の平均電流、平均温度、平均充電率、及び充電率変化量を含む、
請求項3に記載のシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムを備える、
作業機械。
【請求項8】
蓄電池の劣化状態を推定するための方法であって、
前記蓄電池の使用状態を特定することと、
複数の前記使用状態のそれぞれにおいて前記蓄電池の劣化状態を算出することと、を含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電池の劣化状態を推定するためのシステム、作業機械、及び蓄電池の劣化状態を推定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械に係る技術分野において、バッテリフォークリフト又はバッテリショベルのような、蓄電池を動力源とする作業機械が知られている。特許文献1には、蓄電池の劣化状態(SOH:State of Health)を推定する技術の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電池の劣化状態は、蓄電池の使用状態によって変化する可能性がある。そのため、蓄電池の使用状態を考慮せずに劣化状態を推定すると、劣化状態の推定精度が低下する可能性がある。
【0005】
本開示は、蓄電池の劣化状態を精度良く推定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従えば、蓄電池の劣化状態を推定するためのシステムは、コントローラを備える。コントローラは、蓄電池の使用状態を特定する。コントローラは、複数の使用状態のそれぞれにおいて蓄電池の劣化状態を算出する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、蓄電池の劣化状態が精度良く推定される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る作業機械を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る作業機械の一部を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る充電制御システムを示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る蓄電池の劣化状態推定システムを示す機能ブロック図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るパラメータ記憶部に記憶されるパラメータを説明するための図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係るパラメータ記憶部に記憶されるパラメータを説明するための図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係るパラメータ記憶部に記憶されるパラメータを説明するための図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係るパラメータ記憶部に記憶されるパラメータを説明するための図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る蓄電池の劣化状態推定方法を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、実施形態に係る蓄電池の劣化状態の算出方法を説明するための図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係るコンピュータシステムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示は実施形態に限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
[作業機械]
図1は、実施形態に係る作業機械1を示す斜視図である。本実施形態においては、作業機械1は、蓄電池を動力源とするバッテリフォークリフトである。
【0011】
作業機械1は、車体2と、走行装置3と、作業機4と、バッテリパック5と、インタフェース装置6と、接続部10とを備える。
【0012】
車体2は、フレーム2Aと、収容部材2Bと、カウンタウエイト2Cとを有する。収容部材2Bは、フレーム2Aに支持される。収容部材2Bは、車体2の後部に配置される。収容部材2Bは、バッテリパック5が配置されるバッテリ室を有する。カウンタウエイト2Cは、収容部材2Bの下方に配置される。
【0013】
走行装置3は、車体2を支持する。走行装置3は、前輪3Fと、後輪3Rとを有する。
【0014】
作業機4は、車体2に支持される。作業機4は、車体2に支持されるマスト4Aと、マスト4Aに支持されるフォーク4Bとを有する。作業機4は、作業機シリンダ7により駆動される。作業機シリンダ7は、マスト4Aを前後方向に傾斜させるチルトシリンダ7Aと、フォーク4Bを上下方向に移動させるリフトシリンダ7Bとを含む。チルトシリンダ7Aの駆動によりマスト4Aが前後方向に傾斜されることにより、フォーク4Bは、マスト4Aに支持された状態で前後方向に傾斜する。フォーク4Bは、リフトシリンダ7Bの駆動により、マスト4Aに支持された状態で上下方向に移動する。
【0015】
バッテリパック5は、蓄電池50を含む。バッテリパック5は、収容部材2Bに収容される。蓄電池50は、作業機械1の動力源である。蓄電池50は、充電と放電とを繰り返すことができる。蓄電池50として、リチウムイオン電池が例示される。実施形態において、複数のバッテリパック5が作業機械1に搭載される。実施形態において、バッテリパック5は、2つ設けられる。バッテリパック5は、第1バッテリパック5Aと、第2バッテリパック5Bとを含む。
【0016】
作業機械1は、運転シート8に着座した操作者による運転操作により稼働する。運転シート8は、フレーム2Aに支持される。作業機械1は、操作者により操作される複数の操作部材を有する。操作部材として、ステアリングホイール9が例示される。操作者は、手でステアリングホイール9を操作して、走行装置3を操舵する。また、不図示ではあるが、操作部材として、アクセルペダル、ブレーキペダル、作業機レバー、及び前後進レバーが例示される。操作者は、足でアクセルペダルを操作して、走行装置3を駆動する。操作者は、足でブレーキペダルを操作して、走行装置3を制動する。操作者は、手で作業機レバーを操作して、作業機4を動作させる。操作者は、手で前後進レバーを操作して、走行装置3の進行方向を前進と後進とに切り換える。
【0017】
インタフェース装置6は、車体2に配置される。インタフェース装置6は、運転シート8の前方に配置される。
【0018】
接続部10は、充電装置20に接続される。接続部10は、収容部材2Bの後部に配置される。実施形態において、接続部10は、作業機械1に複数設けられる。実施形態において、接続部10は、2つ設けられる。接続部10は、第1接続部10Aと、第2接続部10Bとを含む。
【0019】
充電装置20は、蓄電池50を充電する。充電装置20は、作業機械1の外部に配置される。充電装置20は、作業機械1の外部から蓄電池50を充電する。実施形態において、蓄電池50は、複数の充電装置20により同時に充電可能である。実施形態において、蓄電池50は、2台の充電装置20により同時に充電可能である。複数の接続部10のそれぞれに複数の充電装置20のそれぞれが接続される。実施形態において、充電装置20は、第1接続部10Aに接続される第1充電装置20Aと、第2接続部10Bに接続される第2充電装置20Bとを含む。
【0020】
充電装置20は、ケーブル21及びプラグ22を介して接続部10に接続される。接続部10は、プラグ22が挿入される挿入口を含む。充電装置20は、インタフェース装置23を有する。インタフェース装置23は、操作者により操作される操作装置23Aと、表示データを表示する表示装置23Bとを含む。
【0021】
図2は、実施形態に係る作業機械1の一部を示す図である。
図1及び
図2に示すように、作業機械1は、接続部10を覆うカバー2Dを有する。第1接続部10Aと第2接続部10Bとは、作業機械1の車幅方向に間隔をあけて配置される。車体2の後部には、電源スイッチ51及び稼働ランプ52が配置される。電源スイッチ51及び稼働ランプ52は、第1接続部10Aと第2接続部10Bとの間に配置される。電源スイッチ51は、例えば、モーメンタリスイッチであるが、他の種類の操作部材であってもよい。稼働ランプ52は、蓄電池50の使用状態に基づいて作動する。蓄電池50の使用状態は、充電状態、放電状態、及び待機状態を含む。一例として、蓄電池50が充電状態である場合、稼働ランプ52が点滅し、蓄電池50が放電状態である場合、稼働ランプ52が点灯する。
【0022】
[充電制御システム]
図3は、実施形態に係る充電制御システム100を示すブロック図である。充電制御システム100は、バッテリパック5と、充電装置20と、接続部10と、管理コントローラ11と、制御回路30と、電源コントローラ12と、マスタコントローラ13と、インタフェース装置6とを有する。
【0023】
バッテリパック5は、蓄電池50と、蓄電池50の電圧を検出する電圧センサ53と、蓄電池50の温度を検出する温度センサ54と、蓄電池50を加温するヒータ55と、バッテリコントローラ56とを有する。
【0024】
充電装置20は、操作装置23Aと、表示装置23Bと、商用電源27に接続されるAC/DC変換モジュール24と、商用電源27とAC/DC変換モジュール24との間に配置されるコンタクタ25と、充電コントローラ26とを有する。
【0025】
操作装置23Aは、充電装置20に充電動作させる充電開始操作部231と、充電装置20に充電停止動作させる充電停止操作部232と、充電装置20に緊急停止動作させる緊急停止操作部233とを含む。充電開始操作部231及び充電停止操作部232は、例えば、トグルスイッチ、ロッカスイッチ、又はプッシュボタンスイッチであるが、他の種類の操作部材であってもよい。緊急停止操作部233は、例えば、プッシュボタンスイッチであるが、他の種類の操作部材であってもよい。
【0026】
接続部10は、プラグ22と接続部10とがロックされたことを検出するロックセンサ14を有する。また、接続部10には、充電装置20のプラグ22と接続部10とが接続されたときに通電される通電ライン15が設けられる。通電ライン15は、検出ライン16を介して電源コントローラ12に接続される。電源コントローラ12は、ロックセンサ14の検出信号又は検出ライン16を介して取得される通電ライン15の通電状態に基づいて、充電装置20のプラグ22と接続部10とが接続されたか否かを判定することができる。
【0027】
制御回路30は、接続部10を介して充電装置20の正極に接続される正極ライン31と、接続部10を介して充電装置20の負極に接続される負極ライン32と、接続部10を介して管理コントローラ11と充電コントローラ26とを接続する信号ライン33と、管理コントローラ11とバッテリコントローラ56とを接続する信号ライン34とを有する。
【0028】
信号ライン33は、管理コントローラ11と第1充電装置20Aの充電コントローラ26とを接続する信号ライン33Aと、管理コントローラ11と第2充電装置20Bの充電コントローラ26とを接続する信号ライン33Bとを含む。
【0029】
信号ライン34は、管理コントローラ11と第1バッテリパック5Aのバッテリコントローラ56とを接続する信号ライン34Aと、管理コントローラ11と第2バッテリパック5Bのバッテリコントローラ56とを接続する信号ライン34Bとを含む。
【0030】
第1充電装置20Aと第2充電装置20Bとは、正極ライン31に対して並列接続される。第1充電装置20Aと第2充電装置20Bとは、負極ライン32に対して並列接続される。第1充電装置20Aと正極ライン31とは、正極ライン31Aを介して接続される。第2充電装置20Bと正極ライン31とは、正極ライン31Bを介して接続される。第1充電装置20Aと負極ライン32とは、負極ライン32Aを介して接続される。第2充電装置20Bと負極ライン32とは、負極ライン32Bを介して接続される。
【0031】
第1バッテリパック5Aの蓄電池50と第2バッテリパック5Bの蓄電池50とは、直列接続される。正極ライン31は、正極ライン35を介して第1バッテリパック5Aの蓄電池50の正極に接続される。負極ライン32は、負極ライン36を介して第2バッテリパック5Bの蓄電池50の負極に接続される。正極ライン35にヒューズ35Aが配置される。
【0032】
第1バッテリパック5Aのヒータ55と第2バッテリパック5Bのヒータ55とは、直列接続される。正極ライン31は、正極ライン57を介して第1バッテリパック5Aのヒータ55の正極に接続される。負極ライン32は、負極ライン58を介して第2バッテリパック5Bのヒータ55の負極に接続される。
【0033】
正極ライン35は、正極ライン37及び正極ライン39を介して走行インバータ61及び作業機インバータ62のそれぞれに接続される。負極ライン36は、負極ライン38及び負極ライン40を介して走行インバータ61及び作業機インバータ62のそれぞれに接続される。走行インバータ61と作業機インバータ62とは、正極ライン39に対して並列接続される。走行インバータ61と作業機インバータ62とは、負極ライン40に対して並列接続される。
【0034】
また、制御回路30は、正極ライン31に配置される充電コンタクタ41を有する。充電コンタクタ41がONされることにより、充電装置20と蓄電池50とが正極ライン31及び正極ライン35を介して接続され、蓄電池50が充電装置20により充電される。充電コンタクタ41がOFFされることにより、充電装置20と蓄電池50とが分離され、蓄電池50は充電されない。
【0035】
実施形態において、充電コンタクタ41は、第1充電装置20Aと蓄電池50との接続と分離とを切り換える充電コンタクタ41Aと、第2充電装置20Bと蓄電池50との接続と分離とを切り換える充電コンタクタ41Bとを含む。充電コンタクタ41Aは、正極ライン31Aに配置される。充電コンタクタ41Bは、正極ライン31Bに配置される。充電コンタクタ41AがONされることにより、第1充電装置20Aと蓄電池50とが接続され、蓄電池50が第1充電装置20Aにより充電される。充電コンタクタ41AがOFFされることにより、第1充電装置20Aと蓄電池50とが分離され、蓄電池50が第1充電装置20Aでは充電されない。充電コンタクタ41BがONされることにより、第2充電装置20Bと蓄電池50とが接続され、蓄電池50が第2充電装置20Bにより充電される。充電コンタクタ41BがOFFされることにより、第2充電装置20Bと蓄電池50とが分離され、蓄電池50が第2充電装置20Bでは充電されない。
【0036】
管理コントローラ11は、制御ライン71を介して充電コンタクタ41に接続される。制御ライン71は、管理コントローラ11と充電コンタクタ41Aとを接続する制御ライン71Aと、管理コントローラ11と充電コンタクタ41Bとを接続する制御ライン71Bとを含む。管理コントローラ11は、制御ライン71を介して充電コンタクタ41を制御する。
【0037】
また、制御回路30は、正極ライン37に配置される放電コンタクタ42を有する。放電コンタクタ42がONされることにより、蓄電池50と走行インバータ61及び作業機インバータ62のそれぞれとが正極ライン37及び正極ライン39を介して接続され、蓄電池50からの放電により走行インバータ61及び作業機インバータ62のそれぞれに電力が供給される。放電コンタクタ42がOFFされることにより、蓄電池50と走行インバータ61及び作業機インバータ62のそれぞれとが分離され、蓄電池50から走行インバータ61及び作業機インバータ62のそれぞれに電力が供給されない。
【0038】
管理コントローラ11は、制御ライン72を介して放電コンタクタ42に接続される。管理コントローラ11は、制御ライン72を介して放電コンタクタ42を制御する。
【0039】
また、制御回路30は、正極ライン57に配置されるヒータコンタクタ43を有する。ヒータコンタクタ43がONされることにより、充電装置20及び蓄電池50の少なくとも一方とヒータ55とが正極ライン57を介して接続され、ヒータ55に電力が供給される。ヒータコンタクタ43がOFFされることにより、充電装置20及び蓄電池50とヒータ55とが分離され、ヒータ55に電力が供給されない。
【0040】
管理コントローラ11は、制御ライン73を介してヒータコンタクタ43に接続される。管理コントローラ11は、制御ライン73を介してヒータコンタクタ43を制御する。
【0041】
実施形態において、電圧センサ53の検出信号は、信号ライン34を介してバッテリコントローラ56から管理コントローラ11に送信される。温度センサ54の検出信号は、信号ライン34を介してバッテリコントローラ56から管理コントローラ11に送信される。
【0042】
蓄電池50には、蓄電池50が放電するときの推奨電圧範囲及び推奨温度範囲が定められている。管理コントローラ11は、蓄電池50の電圧が推奨温度範囲でない場合又は蓄電池50の温度が推奨温度範囲でない場合、蓄電池50が放電しないように、放電コンタクタ42を制御する。すなわち、管理コントローラ11は、電圧センサ53の検出信号に基づいて、蓄電池50の電圧が推奨温度範囲でないと判定した場合、又は、温度センサ54の検出信号に基づいて、蓄電池50の温度が推奨温度範囲でないと判定した場合、放電コンタクタ42をOFFにする。管理コントローラ11は、蓄電池50の電圧が推奨温度範囲であり、且つ、蓄電池50の温度が推奨温度範囲であると判定した場合、放電コンタクタ42をONにする。
【0043】
また、蓄電池50には、蓄電池50を充電するときの推奨温度範囲が定められている。管理コントローラ11は、温度センサ54の検出信号に基づいて、蓄電池50の温度が推奨温度範囲以下であると判定した場合、ヒータ55に電力が供給されるように、ヒータコンタクタ43を制御する。ヒータ55に電力が供給されることにより、蓄電池50がヒータ55により加温される。蓄電池50がヒータ55により加温されることにより、蓄電池50の温度が推奨温度範囲になるまで上昇する。
【0044】
また、制御回路30は、管理コントローラ11の電源回路17と、管理コントローラ11の自己保持リレー44とを有する。正極ライン31は、電源スイッチ51及び正極ライン45を介して電源回路17に接続される。また、正極ライン31は、自己保持リレー44を介して電源回路17に接続される。負極ライン32は、負極ライン46を介して電源回路17に接続される。上述のように、電源スイッチ51は、車体2の後部に配置される。操作者は、電源スイッチ51を操作することができる。電源スイッチ51がONされることにより、電源回路17に電力が供給され、管理コントローラ11が起動する。電源スイッチ51がOFFされることにより、電源回路17に対する電力の供給が遮断され、管理コントローラ11が停止する。
【0045】
管理コントローラ11は、制御ライン74を介して自己保持リレー44に接続される。管理コントローラ11は、制御ライン74を介して自己保持リレー44を制御する。管理コントローラ11は、蓄電池50の容量が予め定められている閾値以下になったときに、電源回路17に対する電力の供給が遮断されるように自己保持リレー44を制御する。
【0046】
また、制御回路30は、正極ライン31Aの電圧を検出する電圧センサ47Aと、正極ライン31Bの電圧を検出する電圧センサ47Bと、正極ライン39の電圧を検出する電圧センサ48と、負極ライン36の電流を検出する電流センサ49とを有する。
【0047】
管理コントローラ11は、電圧センサ47Aの検出信号に基づいて、充電コンタクタ41Aの動作不良が発生したか否かを判定する。充電コンタクタ41AがOFFにされた場合、電圧センサ47Aにより検出される電圧は低くなる。管理コントローラ11は、充電コンタクタ41AをOFFにする制御信号を出力したにも関わらず、電圧センサ47Aにより検出される電圧が高い場合、充電コンタクタ41Aの動作不良が発生したと判定することができる。
【0048】
同様に、管理コントローラ11は、電圧センサ47Bの検出信号に基づいて、充電コンタクタ41Bの動作不良が発生したか否かを判定することができる。管理コントローラ11は、電圧センサ48の検出信号に基づいて、放電コンタクタ42の動作不良が発生したか否かを判定することができる。
【0049】
走行インバータ61は、正極ライン39からの直流電流を三相交流電流に変換して、走行モータ63に供給する。走行モータ63は、走行インバータ61から供給された三相交流電流に基づいて駆動する。走行モータ63は、走行装置3を動作させる。実施形態において、走行モータ63は、前輪3F及び後輪3Rの少なくとも一方を回転させる動力を発生する。
【0050】
作業機インバータ62は、正極ライン39からの直流電流を三相交流電流に変換して、作業機モータ64に供給する。作業機モータ64は、作業機インバータ62から供給された三相交流電流に基づいて駆動する。作業機モータ64は、作業機4を動作させる。実施形態において、作業機モータ64は、不図示の油圧ポンプを駆動させる動力を発生する。油圧ポンプから吐出された作動油は、作業機シリンダ7に供給される。作業機シリンダ7に作動油が供給されることにより、作業機4が動作する。
【0051】
電源コントローラ12は、通信ライン75を介して管理コントローラ11に接続される。電源コントローラ12は、通信ライン76を介してマスタコントローラ13に接続される。電源コントローラ12は、管理コントローラ11の上位コントローラである。管理コントローラ11は、電源コントローラ12からの制御信号に基づいて作動する。
【0052】
マスタコントローラ13は、上述の操作部材の操作に基づいて、走行インバータ61及び作業機インバータ62を制御する。マスタコントローラ13は、例えばアクセルペダル及びブレーキペダルの少なくとも一方の操作に基づいて、走行インバータ61を制御する。マスタコントローラ13は、作業レバーの操作に基づいて、作業機インバータ62を制御する。
【0053】
作業機械1は、インタフェース装置6と、キースイッチ80と、緊急停止操作部81とを有する。インタフェース装置6は、操作者により操作される操作装置6Aと、表示データを表示する表示装置6Bとを有する。操作装置6Aは、充電装置20を充電動作させる充電開始操作部と、充電装置20を充電停止動作させる充電停止操作部とを含む。操作装置6Aは、例えば、コンピュータ用キーボード、プッシュボタンスイッチ、又は表示装置6Bの表示画面に配置されるタッチパネルである。表示装置6Bは、例えば、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイのようなフラットパネルディスプレイである。
【0054】
キースイッチ80は、車体2に配置される。キースイッチ80は、例えば運転シート8に着座した操作者により操作される。キースイッチ80がONされることにより、作業機械1は稼働可能な状態になる。
【0055】
緊急停止操作部81は、車体2に配置される。緊急停止操作部81は、例えば運転シート8に着座した操作者により操作される。緊急停止操作部81は、例えばプッシュボタンスイッチであるが、他の種類の操作部材であってもよい。
【0056】
[劣化状態推定システム]
図4は、実施形態に係る蓄電池50の劣化状態推定システム200を示す機能ブロック図である。劣化状態推定システム200は、作業機械1に搭載された蓄電池50の劣化状態(SOH:State of Health)を推定する。蓄電池50は、相互に異なる複数の使用状態で使用される。蓄電池50の使用状態は、蓄電池50の充電状態、蓄電池50の放電状態、及び蓄電池50の休止状態を含む。蓄電池50の充電状態とは、蓄電池50が充電されている状態をいう。蓄電池50の放電状態とは、蓄電池50が放電している状態をいう。蓄電池50の休止状態とは、蓄電池50が充電されてなく、且つ、放電していない状態をいう。なお、蓄電池50の休止状態において、蓄電池50は自然放電する可能性がある。
【0057】
蓄電池50の劣化状態は、蓄電池50の使用状態によって変化する可能性がある。実施形態において、劣化状態推定システム200は、複数の使用状態のそれぞれにおいて、蓄電池50の劣化状態を推定する。
【0058】
劣化状態推定システム200は、管理コントローラ11と、マスタコントローラ13と、電流センサ49と、電圧センサ53と、温度センサ54と、ロックセンサ14と、キースイッチ80とを有する。
【0059】
図3に示したように、電流センサ49は、負極ライン36に配置される。電流センサ49は、蓄電池50の複数の使用状態のそれぞれにおいて、負極ライン36の電流を検出する。すなわち、電流センサ49は、蓄電池50の充電状態、蓄電池50の放電状態、及び蓄電池50の休止状態のそれぞれにおいて、負極ライン36の電流を検出する。蓄電池50の充電状態において、電流センサ49は、蓄電池50を充電する電流を検出する。蓄電池50の放電状態において、電流センサ49は、蓄電池50が放電する電流を検出する。蓄電池50の休止状態において、電流センサ49は、負極ライン36の電流を検出する。蓄電池50の休止状態において、蓄電池50の自然放電に起因して、負極ライン36の電流が検出される可能性がある。以下の説明において、負極ライン36の電流を適宜、蓄電池50の電流、と称する。
【0060】
図3に示したように、電圧センサ53は、バッテリパック5に配置される。電圧センサ53は、蓄電池50の複数の使用状態のそれぞれにおいて、蓄電池50の電圧を検出する。すなわち、電圧センサ53は、蓄電池50の充電状態、蓄電池50の放電状態、及び蓄電池50の休止状態のそれぞれにおいて、蓄電池50の電圧を検出する。
【0061】
図3に示したように、温度センサ54は、バッテリパック5に配置される。温度センサ54は、蓄電池50の複数の使用状態のそれぞれにおいて、蓄電池50の温度を検出する。すなわち、温度センサ54は、蓄電池50の充電状態、蓄電池50の放電状態、及び蓄電池50の休止状態のそれぞれにおいて、蓄電池50の温度を検出する。
【0062】
ロックセンサ14は、プラグ22と接続部10とがロックされたことを検出する。ロックセンサ14は、充電装置20と作業機械1の接続部10とが接続されたか否かを検出することができる。
【0063】
キースイッチ80は、少なくとも充電制御システム100及びマスタコントローラ13を起動するために操作者に操作される。電源スイッチ51の操作により充電制御システム100が起動され、キースイッチ80がキーオンされることにより、充電制御システム100及びマスタコントローラ13が起動する。充電制御システム100及びマスタコントローラ13が起動することにより、作業機械1が稼働可能になる。
【0064】
管理コントローラ11は、蓄電池50の動作条件を算出する。蓄電池50の動作条件は、複数の使用状態の使用時間hのそれぞれにおける蓄電池50の平均電流、平均温度、平均充電率(平均SOC)、及び充電率変化量(ΔSOC)を含む。管理コントローラ11は、使用時間hを計測するタイマを有する。
【0065】
蓄電池50の使用時間hとは、蓄電池50の複数の使用状態のそれぞれが継続されている時間をいう。実施形態において、蓄電池50の使用時間hは、蓄電池50の使用状態が充電状態であるときの使用時間を示す充電時間、蓄電池50の使用状態が放電状態であるときの使用時間を示す放電時間、蓄電池50の使用状態が休止状態であるときの使用時間を示す休止時間を含む。
【0066】
管理コントローラ11は、平均電流算出部11Aと、平均温度算出部11Bと、平均充電率算出部11Cと、充電率変化量算出部11Dとを有する。
【0067】
平均電流算出部11Aは、蓄電池50の使用時間hにおける蓄電池50の電流の平均値を示す平均電流を算出する。蓄電池50の電流は、電流センサ49により検出される。平均電流算出部11Aは、電流センサ49の検出信号とタイマの計測結果とに基づいて、使用時間hにおける蓄電池50の平均電流を算出する。実施形態において、平均電流算出部11Aは、充電時間における平均電流、放電時間における平均電流、及び休止時間における平均電流のそれぞれを算出する。
【0068】
平均温度算出部11Bは、蓄電池50の使用時間hにおける蓄電池50の温度の平均値を示す平均温度を算出する。蓄電池50の温度は、温度センサ54により検出される。平均温度算出部11Bは、温度センサ54の検出信号とタイマの計測結果とに基づいて、使用時間hにおける蓄電池50の平均温度を算出する。実施形態において、平均温度算出部11Bは、充電時間における平均温度、放電時間における平均温度、及び休止時間における平均温度のそれぞれを算出する。
【0069】
平均充電率算出部11Cは、蓄電池50の使用時間hにおける蓄電池50の充電率(SOC:State Of Charge)の平均値を示す平均充電率(平均SOC)を算出する。平均充電率算出部11Cは、電圧センサ53により検出される蓄電池50の電圧と、電流センサ49により検出される蓄電池50の電流とに基づいて、SOCを算出することができる。平均充電率算出部11Cは、電圧センサ53の検出信号と電流センサ49の検出信号とタイマの計測結果とに基づいて、使用時間hにおける蓄電池50の平均SOCを算出する。実施形態において、平均充電率算出部11Cは、充電時間における平均SOC、放電時間における平均SOC、及び休止時間における平均SOCのそれぞれを算出する。
【0070】
充電率変化量算出部11Dは、蓄電池50の使用時間hにおける充電率(SOC)の変化量を示す充電率変化量(ΔSOC)を算出する。充電率変化量算出部11Dは、電圧センサ53の検出信号と電流センサ49の検出信号とタイマの計測結果とに基づいて、蓄電池50のΔSOCを算出する。実施形態において、充電率変化量算出部11Dは、充電時間におけるΔSOC、放電時間におけるΔSOC、及び休止時間におけるΔSOCのそれぞれを算出する。
【0071】
マスタコントローラ13は、パラメータ記憶部13Aと、使用状態特定部13Bと、動作条件取得部13Cと、劣化状態算出部13Dとを有する。
【0072】
パラメータ記憶部13Aは、複数の使用状態のそれぞれにおける蓄電池50の劣化速度影響度を算出するときに使用されるパラメータを記憶する。パラメータは、蓄電池50の負荷及び蓄電池50の劣化状態の実測データに基づいて予め導出され、パラメータ記憶部13Aに記憶される。パラメータは、蓄電池50の劣化速度に係る特性値を示す。
【0073】
図5、
図6、
図7、及び
図8のそれぞれは、実施形態に係るパラメータ記憶部13Aに記憶されるパラメータを説明するための図である。パラメータ記憶部13Aは、蓄電池50の動作条件と蓄電池50の劣化速度との関係を示す相関データを記憶する。
図5に示すように、パラメータ記憶部13Aは、蓄電池50の平均電流と蓄電池50の劣化速度との関係を示す相関データを記憶する。パラメータ記憶部13Aは、蓄電池50の平均温度と蓄電池50の劣化速度との関係を示す相関データを記憶する。本実施形態においては、蓄電池50の平均温度と蓄電池50の劣化速度との関係を示す相関データは、
図6に示すように、横軸を温度逆数、縦軸を劣化速度の対数としたアレニウスの法則から導出される。
図7に示すように、パラメータ記憶部13Aは、蓄電池50の平均SOCと蓄電池50の劣化速度との関係を示す相関データを記憶する。
図8に示すように、パラメータ記憶部13Aは、蓄電池50のΔSOCと蓄電池50の劣化速度との関係を示す相関データを記憶する。
図5、
図6、
図7、及び
図8のそれぞれに示す相関データは、予備実験から導出される実測データである。なお、相関データは、シミュレーションにより導出されてもよい。
【0074】
図5に示すように、平均電流が高いほど劣化速度は速くなる。
図5に示すグラフにおいて、横軸xを平均電流、縦軸yを劣化速度とした場合、実測データを1次近似すると、平均電流と劣化速度との間には、1次関数[y=Ai×x+Bi]で示される比例関係が成立する。
【0075】
図6に示すように、平均温度が高いほど劣化速度は速くなる。
図6に示すグラフにおいて、横軸xを平均温度、縦軸yを劣化速度とした場合、実測データを1次近似すると、平均温度と劣化速度との間には、1次関数[y=At×x+Bt]で示される比例関係が成立する。
【0076】
図7に示すように、平均SOCが高いほど劣化速度は速くなる。
図7に示すグラフにおいて、横軸xを平均SOC、縦軸yを劣化速度とした場合、実測データを1次近似すると、平均SOCと劣化速度との間には、1次関数[y=As×x+Bs]で示される比例関係が成立する。
【0077】
図8に示すように、ΔSOCが高いほど劣化速度は速くなる。
図8に示すグラフにおいて、横軸xをΔSOC、縦軸yを劣化速度とした場合、実測データを1次近似すると、ΔSOCと劣化速度との間には、1次関数[y=Ad×x+Bd]で示される比例関係が成立する。
【0078】
パラメータは、
図5から
図8のそれぞれに示したような、1次関数で示される相関データから導出される。実施形態において、パラメータは、平均電流と劣化速度との関係を示す1次関数の傾きAi及び切片Biと、平均温度と劣化速度との関係を示す1次関数の傾きAt及び切片Btと、平均SOCと劣化速度との関係を示す1次関数の傾きAs及び切片Bsと、ΔSOCと劣化速度との関係を示す1次関数の傾きAd及び切片Bdとを含む。パラメータ記憶部13Aは、傾きAi、切片Bi、傾きAt、切片Bt、傾きAs、切片Bs、傾きAd、及び切片Bdを記憶する。
【0079】
使用状態特定部13Bは、作業機械1に搭載された蓄電池50の使用状態を特定する。上述のように、蓄電池50の使用状態は、蓄電池50の充電状態、蓄電池50の放電状態、及び蓄電池50の休止状態を含む。実施形態において、使用状態特定部13Bは、キースイッチ80の操作信号及びロックセンサ14の検出信号に基づいて、蓄電池50の使用状態を特定する。例えば、ロックセンサ14の検出信号に基づいてプラグ22が接続部10に接続されていると判定した場合、使用状態特定部13Bは、蓄電池50が充電状態であることを特定する。キースイッチ80の操作信号に基づいてキースイッチ80がキーオンされたと判定し、且つ、ロックセンサ14の検出信号に基づいてプラグ22が接続部10に接続されていないと判定した場合、使用状態特定部13Bは、蓄電池50が放電状態であることを特定する。キースイッチ80の操作信号に基づいてキースイッチ80がキーオフされたと判定し、且つ、ロックセンサ14の検出信号に基づいてプラグ22が接続部10に接続されていないと判定した場合、使用状態特定部13Bは、蓄電池50が休止状態であることを特定する。
【0080】
動作条件取得部13Cは、蓄電池50の動作条件を取得する。上述のように、蓄電池50の動作条件は、複数の使用状態の使用時間hのそれぞれにおける蓄電池50の平均電流、平均温度、平均SOC、及びΔSOCを含む。動作条件取得部13Cは、平均電流算出部11Aから、蓄電池50の平均電流を取得する。動作条件取得部13Cは、平均温度算出部11Bから、蓄電池50の平均温度を取得する。動作条件取得部13Cは、平均充電率算出部11Cから、蓄電池50の平均SOCを取得する。動作条件取得部13Cは、充電率変化量算出部11Dから、蓄電池50のΔSOCを取得する。
【0081】
劣化状態算出部13Dは、蓄電池50の複数の使用状態のそれぞれにおいて蓄電池50の劣化状態を算出する。劣化状態算出部13Dは、使用状態特定部13Bにより特定された使用状態における蓄電池50の劣化状態を算出する。蓄電池50の使用状態が充電状態であることが特定された場合、劣化状態算出部13Dは、充電状態における蓄電池50の劣化状態を算出する。蓄電池50の使用状態が放電状態であることが特定された場合、劣化状態算出部13Dは、放電状態における蓄電池50の劣化状態を算出する。蓄電池50の使用状態が休止状態であることが特定された場合、劣化状態算出部13Dは、休止状態における蓄電池50の劣化状態を算出する。
【0082】
劣化状態算出部13Dは、パラメータ記憶部13Aに記憶されているパラメータと、動作条件取得部13Cにより取得された蓄電池50の動作条件とに基づいて、使用状態特定部13Bにより特定された使用状態における蓄電池50の劣化状態を算出する。蓄電池50の使用状態が充電状態であることが特定された場合、劣化状態算出部13Dは、パラメータと動作条件とに基づいて、充電状態における蓄電池50の劣化状態を算出する。蓄電池50の使用状態が放電状態であることが特定された場合、劣化状態算出部13Dは、パラメータと動作条件とに基づいて、放電状態における蓄電池50の劣化状態を算出する。蓄電池50の使用状態が休止状態であることが特定された場合、劣化状態算出部13Dは、パラメータと動作条件とに基づいて、休止状態における蓄電池50の劣化状態を算出する。
【0083】
[劣化状態推定方法]
図9は、実施形態に係る蓄電池50の劣化状態推定方法を示すフローチャートである。以下の説明においては、蓄電池50の劣化状態を適宜、SOH、と称する。
【0084】
使用状態特定部13Bは、キースイッチ80の操作信号及びロックセンサ14の検出信号に基づいて、蓄電池50の現在の使用状態を特定する(ステップS1)。
【0085】
管理コントローラ11は、蓄電池50の現在の動作条件を算出する(ステップS2)。すなわち、平均電流算出部11Aは、蓄電池50の現在の平均電流を算出する。平均温度算出部11Bは、蓄電池50の現在の平均温度を算出する。平均充電率算出部11Cは、蓄電池50の現在の平均SOCを算出する。充電率変化量算出部11Dは、蓄電池50の現在のΔSOCを算出する。
【0086】
動作条件取得部13Cは、管理コントローラ11から、蓄電池50の現在の動作条件を取得する(ステップS3)。すなわち、動作条件取得部13Cは、管理コントローラ11から、蓄電池50の現在の平均電流、平均温度、平均SOC、及びΔSOCを取得する。
【0087】
使用状態特定部13Bは、蓄電池50の使用状態の切り換わりを検出する(ステップS4)。実施形態において、蓄電池50の使用状態の切り換わりは、充電状態から放電状態への切り換わり、放電状態から休止状態への切り換わり、休止状態から充電状態への切り換わり、充電状態から休止状態への切り換わり、休止状態から放電状態への切り換わり、及び放電状態から充電状態への切り換わりの少なくとも一つを含む。
【0088】
ステップS4において、蓄電池50の使用状態の切り換わりが使用状態特定部13Bにより検出された場合、劣化状態算出部13Dは、パラメータ記憶部13Aに記憶されているパラメータと、ステップS3において動作条件取得部13Cにより取得された蓄電池50の動作条件とに基づいて、ステップS4において使用状態特定部13Bにより特定された使用状態における蓄電池50のSOHの算出を開始する。
【0089】
まず、劣化状態算出部13Dは、パラメータ記憶部13Aに記憶されているパラメータと、動作条件取得部13Cにより取得された蓄電池50の動作条件とに基づいて、蓄電池50の劣化速度影響度を算出する(ステップS5)。劣化速度影響度とは、動作条件取得部13Cにより取得された動作条件を、1次関数で示される相関データに代入して得られる劣化速度をいう。
【0090】
劣化状態算出部13Dは、パラメータである傾きAi及び切片Biと、動作条件である平均電流とに基づいて、平均電流に係る劣化速度影響度を算出する。平均電流をIa、平均電流に係る劣化速度影響度をImとした場合、平均電流Iaに係る劣化速度影響度Imは、以下の(1)式に基づいて算出される。(1)式に示すように、劣化速度影響度Imは、平均電流Iaを、平均電流と劣化速度との関係を示す1次関数[y=Ai×x+Bi]に代入して得られる劣化速度である。
【0091】
【0092】
劣化状態算出部13Dは、パラメータである傾きAt及び切片Btと、動作条件である平均温度とに基づいて、平均温度に係る劣化速度影響度を算出する。平均温度をTa、平均温度に係る劣化速度影響度をTmとした場合、平均温度Taに係る劣化速度影響度Tmは、以下の(2)式に基づいて算出される。(2)式に示すように、劣化速度影響度Tmは、平均温度Taを、平均温度と劣化速度との関係を示す1次関数[y=At×x+Bt]に代入して得られる劣化速度である。
【0093】
【0094】
劣化状態算出部13Dは、パラメータである傾きAs及び切片Bsと、動作条件である平均SOCとに基づいて、平均SOCに係る劣化速度影響度を算出する。平均SOCをSa、平均SOCに係る劣化速度影響度をSmとした場合、平均SOCSaに係る劣化速度影響度Smは、以下の(3)式に基づいて算出される。(3)式に示すように、劣化速度影響度Smは、平均SOCSaを、平均SOCと劣化速度との関係を示す1次関数[y=As×x+Bs]に代入して得られる劣化速度である。
【0095】
【0096】
劣化状態算出部13Dは、パラメータである傾きAd及び切片Bdと、動作条件であるΔSOCとに基づいて、ΔSOCに係る劣化速度影響度を算出する。ΔSOCをDa、ΔSOCに係る劣化速度影響度をDmとした場合、ΔSOCDaに係る劣化速度影響度Dmは、以下の(4)式に基づいて算出される。(4)式に示すように、劣化速度影響度Dmは、ΔSOCDaを、ΔSOCと劣化速度との関係を示す1次関数[y=Ad×x+Bd]に代入して得られる劣化速度である。
【0097】
【0098】
劣化速度影響度Im、劣化速度影響度Tm、劣化速度影響度Sm、及び劣化速度影響度Dmを算出した後、劣化状態算出部13Dは、劣化速度影響度(Im,Tm,Sm,Dm)と、ベース劣化速度Vbと、その動作条件における劣化速度影響度(Imb,Tmb,Smb,Dmb)とに基づいて、現在の使用状態における蓄電池50の劣化速度を示す今回劣化速度Vnを算出する(ステップS6)。今回劣化速度Vnは、以下の(5)式に基づいて算出される。(5)式において、蓄電池50のベース劣化速度Vbとは、動作条件における蓄電池50の劣化速度であり、パラメータとしてパラメータ記憶部13Aに予め記憶されている。(5)式において、劣化速度影響度(Imb,Tmb,Smb,Dmb)は、蓄電池50の負荷及び蓄電池50の劣化状態の実測データに基づいて、ベース劣化速度Vbの動作条件から予め算出され、パラメータとしてパラメータ記憶部13Aに予め記憶されている。
【0099】
【0100】
今回劣化速度Vnを算出した後、劣化状態算出部13Dは、今回劣化速度Vnと、前回の使用状態において算出したSOHを示す前回SOHとに基づいて、前回SOHに至る蓄電池50のルート時間を示す前回ルート時間Hbを算出する(ステップS7)。実施形態において、ルート時間とは、使用時間hのルート値(平方根)をいう。前回SOHをSOHbとした場合、前回ルート時間Hbは、以下の(6)式に基づいて算出される。
【0101】
【0102】
前回ルート時間Hbを算出した後、劣化状態算出部13Dは、前回ルート時間Hbと、今回劣化速度Vnと、現在の使用状態のルート時間を示す今回ルート時間Hnとに基づいて、現在の使用状態における蓄電池50のSOHを示す今回SOHを算出する(ステップS8)。今回ルート時間をHn、今回SOHをSOHnとした場合、今回SOHは、以下の(7)式に基づいて算出される。
【0103】
【0104】
図10は、実施形態に係る蓄電池50の劣化状態の算出方法を説明するための図である。
図10に示すグラフにおいて、横軸はルート時間であり、縦軸はSOHである。前回SOHは、蓄電池50の前回の使用状態において既に算出されており、マスタコントローラ13のSOH記憶部(不図示)に記憶されている。ステップS6に算出された今回劣化速度Vnは、
図10に示すラインの傾きを示す。なお、
図10において、「A点」、「B点」、「C点」、「D点」のそれぞれは、過去の複数の使用状態のそれぞれにおいて算出されたSOHの実測データを示す。「D点」におけるSOHが前回SOHである。
【0105】
前回ルート時間Hbは、蓄電池50が過去において今回劣化速度Vnで劣化したと想定した場合に、前記SOHに至るまでに要するルート時間である。今回ルート時間Hnは、タイマの計測結果に基づいて算出される。
図10に示すように、劣化状態算出部13Dは、D点を通り、且つ、傾きがVnであるラインを作成して、前回ルート時間Hbと今回ルート時間Hnと今回劣化速度Vnとに基づいて、「E点」で示される今回SOHを算出することができる。
【0106】
劣化状態算出部13Dは、現在の使用状態の開始時点と終了時点との間のSOHの変化量を示すΔSOHを算出する(ステップS9)。ΔSOHは、以下の(8)式に基づいて算出される。
【0107】
【0108】
ΔSOHは、現在の使用状態のみの劣化状態を示す。劣化状態算出部13Dは、複数の使用状態のそれぞれにおける個別の劣化状態を示すΔSOHを算出することもできる。上述の今回SOHは、複数の使用状態を経たトータルの劣化状態を示す。今回SOHは、複数のΔSOHの総和に相当する。劣化状態算出部13Dは、複数の使用状態を経た現在のトータルの劣化状態を示す今回SOHを算出することができる。
【0109】
[コンピュータシステム]
図11は、実施形態に係るコンピュータシステム1000を示すブロック図である。上述の管理コントローラ11、電源コントローラ12、及びマスタコントローラ13のそれぞれは、コンピュータシステム1000を含む。コンピュータシステム1000は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサ1001と、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリ及びRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含むメインメモリ1002と、ストレージ1003と、入出力回路を含むインタフェース1004とを有する。上述の管理コントローラ11、電源コントローラ12、及びマスタコントローラ13のそれぞれの機能は、コンピュータプログラムとしてストレージ1003に記憶されている。プロセッサ1001は、コンピュータプログラムをストレージ1003から読み出してメインメモリ1002に展開し、プログラムに従って上述の処理を実行する。なお、コンピュータプログラムは、ネットワークを介してコンピュータシステム1000に配信されてもよい。
【0110】
コンピュータプログラム又はコンピュータシステム1000は、上述の実施形態に従って、作業機械1に搭載された蓄電池50の使用状態を特定することと、複数の使用状態のそれぞれにおいて蓄電池50の劣化状態を算出することと、を実行することができる。
【0111】
[効果]
以上説明したように、実施形態に係る蓄電池50の劣化状態推定システム200は、作業機械1に搭載された蓄電池50の使用状態を特定する使用状態特定部13Bと、複数の使用状態のそれぞれにおいて蓄電池50の劣化状態(ΔSOH)を算出する劣化状態算出部13Dと、を備える。ΔSOHは、充電状態における劣化状態、放電状態における劣化状態、及び休止状態における劣化状態の少なくとも一つを含む。蓄電池50の劣化状態は、蓄電池50の使用状態によって変化する可能性がある。実施形態において、劣化状態算出部13Dは、蓄電池50の使用状態を考慮して劣化状態を推定する。これにより、劣化状態算出部13Dは、複数の使用状態を経た現在のトータルの劣化状態(今回SOH)を精度良く推定することができる。
【0112】
[その他の実施形態]
上述の実施形態において、作業機械1がバッテリフォークリフトであることとした。作業機械1はバッテリショベルでもよい。また、作業機械1は、バッテリフォークリフト又はバッテリショベルに限定されず、蓄電池50を動力源とする作業機械であればよい。
【符号の説明】
【0113】
1…作業機械、2…車体、2A…フレーム、2B…収容部材、2C…カウンタウエイト、2D…カバー、3…走行装置、3F…前輪、3R…後輪、4…作業機、4A…マスト、4B…フォーク、5…バッテリパック、5A…第1バッテリパック、5B…第2バッテリパック、6…インタフェース装置、6A…操作装置、6B…表示装置、7…作業機シリンダ、7A…チルトシリンダ、7B…リフトシリンダ、8…運転シート、9…ステアリングホイール、10…接続部、10A…第1接続部、10B…第2接続部、11…管理コントローラ、11A…平均電流算出部、11B…平均温度算出部、11C…平均充電率算出部、11D…充電率変化量算出部、12…電源コントローラ、13…マスタコントローラ、13A…パラメータ記憶部、13B…使用状態特定部、13C…動作条件取得部、13D…劣化状態算出部、14…ロックセンサ、15…通電ライン、16…検出ライン、17…電源回路、20…充電装置、20A…第1充電装置、20B…第2充電装置、21…ケーブル、22…プラグ、23…インタフェース装置、23A…操作装置、23B…表示装置、24…AC/DC変換モジュール、25…コンタクタ、26…充電コントローラ、27…商用電源、30…制御回路、31…正極ライン、31A…正極ライン、31B…正極ライン、32…負極ライン、32A…負極ライン、32B…負極ライン、33…信号ライン、33A…信号ライン、33B…信号ライン、34…信号ライン、34A…信号ライン、34B…信号ライン、35…正極ライン、35A…ヒューズ、36…負極ライン、37…正極ライン、38…負極ライン、39…正極ライン、40…負極ライン、41…充電コンタクタ、41A…充電コンタクタ、41B…充電コンタクタ、42…放電コンタクタ、43…ヒータコンタクタ、44…自己保持リレー、45…正極ライン、46…負極ライン、47A…電圧センサ、47B…電圧センサ、48…電圧センサ、49…電流センサ、50…蓄電池、51…電源スイッチ、52…稼働ランプ、53…電圧センサ、54…温度センサ、55…ヒータ、56…バッテリコントローラ、57…正極ライン、58…負極ライン、61…走行インバータ、62…作業機インバータ、63…走行モータ、64…作業機モータ、71…制御ライン、71A…制御ライン、71B…制御ライン、72…制御ライン、73…制御ライン、74…制御ライン、75…通信ライン、76…通信ライン、80…キースイッチ、81…緊急停止操作部、100…充電制御システム、200…劣化状態推定システム、231…充電開始操作部、232…充電停止操作部、233…緊急停止操作部、1000…コンピュータシステム、1001…プロセッサ、1002…メインメモリ、1003…ストレージ、1004…インタフェース。