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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151354
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】光電解モジュール
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/50 20210101AFI20231005BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C25B9/50
B01J35/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060931
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】戸澤 友和
(72)【発明者】
【氏名】杉山 幹人
【テーマコード(参考)】
4G169
4K021
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA04A
4G169BA48A
4G169BB04A
4G169BB06A
4G169BC22A
4G169BC25A
4G169BC54A
4G169BC60A
4G169BC66A
4G169CC33
4G169DA06
4G169HA01
4G169HB01
4G169HB06
4G169HE09
4K021AA01
4K021DB18
4K021DB43
4K021DB53
(57)【要約】
【課題】本発明は、外部から電解液を供給可能な光電解モジュールを提供する。
【解決手段】透明基板と、電解部と、裏面封止部材と、側面封止部材と、電解液導入部を有し、電解部は、透明基板と裏面封止部材の間に位置し、光触媒電極部と、イオン交換膜と、対向電極部を有し、イオン交換膜は、光触媒電極部と対向電極部の間に位置し、光触媒電極部側の空間と対向電極部側の空間に区画しており、裏面封止部材は、シート状又は板状で透明基板及び側面封止部材とともに電解部を封止するものであり、側面封止部材は、透明基板を平面視したときに電解部を囲繞するように設けられ、かつ、第1封止部と第2封止部が積層された積層構造を有し、第1封止部と第2封止部は、イオン交換膜を挟んでイオン交換膜の姿勢を保持しており、電解液導入部は、外部から第1封止部と第2封止部の間を通過して光触媒電極部側の空間に挿入されている構成とする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、電解部と、裏面封止部材と、側面封止部材と、電解液導入部を有し、
前記電解部は、前記透明基板と前記裏面封止部材の間に位置し、光触媒電極部と、イオン交換膜と、対向電極部を有するものであり、
前記イオン交換膜は、前記光触媒電極部と前記対向電極部の間に位置し、前記光触媒電極部側の空間と前記対向電極部側の空間に区画しており、
前記裏面封止部材は、シート状又は板状であって、前記透明基板及び前記側面封止部材とともに前記電解部を封止するものであり、
前記側面封止部材は、前記透明基板を平面視したときに前記電解部を囲繞するように設けられ、かつ、第1封止部と第2封止部が積層された積層構造を有し、
前記第1封止部と前記第2封止部は、前記イオン交換膜を挟んで前記イオン交換膜の姿勢を保持しており、
前記電解液導入部は、外部から前記第1封止部と前記第2封止部の間を通過して前記光触媒電極部側の空間又は前記対向電極部側の空間に挿入されている、光電解モジュール。
【請求項2】
水平面に対して傾斜又は直交した姿勢で設置されるものであり、
前記電解液導入部は、前記光触媒電極部側の空間に電解液を導入可能であって、かつ前記光触媒電極部よりも上方側の位置で前記第1封止部と前記第2封止部の間を通過している、請求項1に記載の光電解モジュール。
【請求項3】
水平面に対して傾斜又は直交した姿勢で設置されるものであり、
前記光触媒電極部側の空間を第1区画空間と第2区画空間とに区画する区画部材と、前記光触媒電極部よりも上方側の位置で前記第1区画空間と前記第2区画空間を連通させる上方側連通部と、前記光触媒電極部よりも下方側の位置で前記第1区画空間と前記第2区画空間を連通させる下方側連通部を備える、請求項1又は2に記載の光電解モジュール。
【請求項4】
前記光触媒電極部は、透明電極層上に光触媒が積層されており、
前記光触媒電極部は、前記透明電極層上に前記透明電極層よりも導電率が高い補助電極層を備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の光電解モジュール。
【請求項5】
前記光触媒電極部側の空間内で前記電解液導入部と接続され、前記イオン交換膜に電解液を供給する供給配線部を有し、
前記供給配線部は、面状に広がりをもって前記イオン交換膜上を這っている、請求項1~4のいずれか1項に記載の光電解モジュール。
【請求項6】
前記対向電極部側の空間からガスを排出するガス排出配管部を有し、
前記ガス排出配管部は、外部から前記第1封止部と前記第2封止部の間を通過して前記対向電極部側の空間に挿入されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の光電解モジュール。
【請求項7】
水平面に対して傾斜又は直交した姿勢で設置されるものであり、
前記ガス排出配管部は、前記対向電極部よりも上方側の位置で前記第1封止部と前記第2封止部の間を通過している、請求項6に記載の光電解モジュール。
【請求項8】
前記透明基板と前記裏面封止部材を挟持するフレーム部材を有し、
前記ガス排出配管部は、前記側面封止部材と前記フレーム部材の間を通過している、請求項6又は7に記載の光電解モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光エネルギーを用いて水等の電解液を分解する光電解モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料電池モジュールの普及により、燃料電池モジュールの燃料極に使用される水素原料の需要が増えており、太陽光によって水を分解し、水素を発生させる光触媒の研究が注目されている(例えば、特許文献1)。
光触媒による水素原料の製法は、光触媒を塗膜した電極(以下、光触媒電極ともいう)で太陽光を受光し、太陽電池等の再生可能エネルギー装置によって光触媒電極と対極との間で水の分解電圧を印加することで、対極上で水が分解され、二酸化炭素を排出させずに水素を発生できるので、従来の化石燃料を用いた水素の製法に比べて環境負荷が小さい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5628840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、工業的に光触媒を用いて水素を大量に生成するためには、長期間、連続的に水素を発生させる必要がある。
しかしながら、特許文献1の水素発生デバイスは、電解液層が密閉されており、水素と酸素がともに発生して外部に排出される。そのため、電解液を何らかの手段で継続的に補填する必要となる問題があり、更なる改良の余地があった。
【0005】
そこで、本発明は、外部から電解液を供給可能な光電解モジュールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するための本発明の一つの様相は、透明基板と、電解部と、裏面封止部材と、側面封止部材と、電解液導入部を有し、前記電解部は、前記透明基板と前記裏面封止部材の間に位置し、光触媒電極部と、イオン交換膜と、対向電極部を有するものであり、前記イオン交換膜は、前記光触媒電極部と前記対向電極部の間に位置し、前記光触媒電極部側の空間と前記対向電極部側の空間に区画しており、前記裏面封止部材は、シート状又は板状であって、前記透明基板及び前記側面封止部材とともに前記電解部を封止するものであり、前記側面封止部材は、前記透明基板を平面視したときに前記電解部を囲繞するように設けられ、かつ、第1封止部と第2封止部が積層された積層構造を有し、前記第1封止部と前記第2封止部は、前記イオン交換膜を挟んで前記イオン交換膜の姿勢を保持しており、前記電解液導入部は、外部から前記第1封止部と前記第2封止部の間を通過して前記光触媒電極部側の空間又は前記対向電極部側の空間に挿入されている、光電解モジュールである。
【0007】
本様相によれば、外部から第1封止部と第2封止部の間を通過して光触媒電極部側の空間又は対向電極部側の空間に挿入された電解液導入部が設けられている。そのため、外部から光触媒電極部側の空間又は対向電極部側の空間に電解液を供給することができ、長期間、連続的に水素ガスを発生できる。
本様相によれば、側面封止部材が封止機能とイオン交換膜の保持機能を兼ねているので、部品点数を少なくでき、コストを低減でき、モジュール全体の厚みも薄くできる。
【0008】
好ましい様相は、水平面に対して傾斜又は直交した姿勢で設置されるものであり、前記電解液導入部は、前記光触媒電極部側の空間に電解液を導入可能であって、かつ前記光触媒電極部よりも上方側の位置で前記第1封止部と前記第2封止部の間を通過していることである。
【0009】
本様相によれば、電解液導入部が光触媒電極部よりも上方側の位置で第1封止部と第2封止部の間を通過しているため、重力を利用して、電解液を光触媒電極部側の空間に供給できる。
【0010】
好ましい様相は、水平面に対して傾斜又は直交した姿勢で設置されるものであり、前記光触媒電極部側の空間を第1区画空間と第2区画空間とに区画する区画部材と、前記光触媒電極部よりも上方側の位置で前記第1区画空間と前記第2区画空間を連通させる上方側連通部と、前記光触媒電極部よりも下方側の位置で前記第1区画空間と前記第2区画空間を連通させる下方側連通部を備えることである。
【0011】
本様相によれば、気体は上方側連通部で第1区画空間と第2区画空間を行き来でき、液体は下方側連通部で第1区画空間と第2区画空間を行き来できる。そのため、第1区画空間及び第2区画空間のそれぞれで反応できる。
【0012】
好ましい様相は、前記光触媒電極部は、透明電極層上に光触媒が積層されており、前記光触媒電極部は、前記透明電極層上に前記透明電極層よりも導電率が高い補助電極層を備えることである。
【0013】
本様相によれば、光触媒電極部での抵抗損失を抑制できる。
【0014】
好ましい様相は、前記光触媒電極部側の空間内で前記電解液導入部と接続され、前記イオン交換膜に電解液を供給する供給配線部を有し、前記供給配線部は、面状に広がりをもって前記イオン交換膜上を這っていることである。
【0015】
本様相によれば、イオン交換膜にまんべんなく電解液を供給することができるので、反応場を作りやすく、従来に比べて反応効率を向上できる。
【0016】
好ましい様相は、前記対向電極部側の空間からガスを排出するガス排出配管部を有し、前記ガス排出配管部は、外部から前記第1封止部と前記第2封止部の間を通過して前記対向電極部側の空間に挿入されていることである。
【0017】
本様相によれば、対向電極部側の空間の気密性を保ったまま、対向電極部側の空間内のガスを外部に排出できる。
【0018】
より好ましい様相は、水平面に対して傾斜又は直交した姿勢で設置されるものであり、前記ガス排出配管部は、前記対向電極部よりも上方側の位置で前記第1封止部と前記第2封止部の間を通過していることである。
【0019】
本様相によれば、対向電極部側の空間内のガスを、簡単にガス排出配管部へ捕集できる。
【0020】
より好ましい様相は、前記透明基板と前記裏面封止部材を挟持するフレーム部材を有し、前記ガス排出配管部は、前記側面封止部材と前記フレーム部材の間を通過していることである。
【0021】
本様相によれば、ガス排出配管部がフレーム部材に隠されて見えにくく、見栄えが良好である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、外部から電解液を供給可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施形態の光電解システムの要部の水平面への設置状況を模式的に示した斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態の光電解システムの説明図であり、(a)は配管系統図であり、(b)は電気回路図である。
図3図1の光電解モジュールの分解斜視図である。
図4図1の光電解モジュールのA-A断面図である。
図5図4の光電解モジュールの断面に対して直交する断面図である。
図6図3の光電解パネルの分解斜視図である。
図7図6の電解部の分解斜視図である。
図8図7の光触媒電極部の分解斜視図である。
図9図1の光電解モジュールの液体及びガスの流れを表す説明図であり、(a)は光触媒側空間における水と過酸化水素の流れ及び酸素ガスの流れを表す図であり、(b)は対向側空間における水の流れ及び水素ガスの流れを表す図である。
図10図1の光電解システムにおいて過酸化水素を濃縮する際の配管系統図である。
図11】本発明の他の実施形態の光電解モジュールの断面図である。
図12】本発明の他の実施形態の光電解モジュールの要部の一部破断斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0025】
本発明の第1実施形態の光電解システム1は、図1図2のように、複数の光電解モジュール2(2a~2c)と、電解液供給装置3と、水素貯留部5と、過酸化水素貯留部6と、気液分離部7と、酸素処理部8と、外部電源装置9を備えており、各光電解モジュール2a~2cで電解液37,38たる水を光電解して主に水素ガスと過酸化水素を生成するものである。
【0026】
(光電解モジュール2)
光電解モジュール2は、図1のように、受光面40が水平面GLに対して傾斜角度θ1で傾斜又は直交した姿勢で設置されるものである。
傾斜角度θ1は、0度超過90度以下であることが好ましく、15度以上60度以下であることが好ましい。
光電解モジュール2は、図3のように、光電解パネル10と、ガスケット部材11a,11bと、フレーム部材12a,12bを備えている。
【0027】
(光電解パネル10)
光電解パネル10は、図6のように、透明基板20と、電解部21と、側面封止部材22と、裏面封止部材23と、光触媒用ケーブル25と、対向電極用ケーブル26と、電解液導入配管部27,28(電解液導入部)と、ガス排出配管部30と、ガス連通配管部31(31a,31b)を備えている。
光電解パネル10は、図4図5のように、電解部21のイオン交換膜53によって光触媒側空間35と、対向側空間36に区画されており、各空間35,36内に電解液37,38が充填されている。
【0028】
(透明基板20)
透明基板20は、透光性と絶縁性を有した透明絶縁基板であり、電解部21を支持する支持基板である。
透明基板20は、透光性と絶縁性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ガラス基板が使用できる。
本実施形態の透明基板20は、光電解パネル10の受光面40を構成している。
【0029】
(電解部21)
電解部21は、各電解液37,38をそれぞれ電解する部位であり、図7のように、主に光触媒電極部50と、供給配線部51と、区画部材52と、イオン交換膜53と、対向電極部55によって構成されている。
【0030】
(光触媒電極部50)
光触媒電極部50は、図8のように、透明基板20側から、透明電極層60、補助電極層61、及び光触媒層62の順に積層されて構成され、光触媒層62で光を受光することで第1電解液37を酸化して過酸化水素を発生させるアノード電極層である。
透明電極層60は、透光性と導電性を有する透明導電層である。
透明電極層60は、透光性と導電性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)等の透明導電性酸化物が使用できる。
補助電極層61は、透明電極層60の導電性を補助する導電層であり、透明電極層60よりも導電率が高い。
補助電極層61は、図8のように、細線が網目状になったものであり、厚み方向に光を透過させるための光透過孔を複数有している。
光触媒層62は、光触媒で構成される層である。
光触媒層62を構成する光触媒は、光触媒活性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、三酸化タングステン(WO)触媒、バナジン酸ビスマス(BiVO)触媒、酸化スズ(SnO)触媒、酸化チタン(TiO)触媒、ヘマタイト(Fe)触媒などが使用できる。
【0031】
(供給配線部51)
供給配線部51は、イオン交換膜53に第1電解液37を供給する電解液供給配線部であり、本実施形態ではイオン交換膜53に第1電解液37として水を給水する給水部である。
供給配線部51は、図7のように、網目状であり、厚み方向に光を透過させるための光透過孔を複数有している。
供給配線部51は、多孔質樹脂で構成され、第1電解液37が供給されると孔内の空気と第1電解液37が置換されて第1電解液37を吸い込み、外力を受けると第1電解液37を放出することが可能となっている。
本実施形態の供給配線部51は、具体的にはスポンジであり、電解液導入配管部27,28から導入された電解液37を吸い込み、イオン交換膜53に供給することが可能となっている。
また、本実施形態の供給配線部51は、イオン交換膜53に接触し、かつ光触媒電極部50と近接又は接触しており、光電解モジュール2に外力が働いたときに光触媒電極部50とイオン交換膜53の間隔を維持する間隔維持部材でもある。
【0032】
(区画部材52)
区画部材52は、図9(a)のように、光触媒側空間35を区画して仕切り、蛇行して連続した反応流路65とガス移動流路66を形成する区画壁部である。
区画部材52は、透明基板20とイオン交換膜53を接着する接着部材であり、光電解モジュール2に外力が働いたときに、光触媒電極部50とイオン交換膜53の間隔を維持する間隔維持部材でもある。
本実施形態の区画部材52は、液状の接着剤が硬化して形成されたものであり、封止性と接着性を有している。
【0033】
(イオン交換膜53)
イオン交換膜53は、図4図5のように、光触媒側空間35と対向側空間36を仕切るセパレータである。
イオン交換膜53は、厚み方向において、特定のイオンのみを移動可能とし、残りのイオンや電子の移動を規制する膜である。
本実施形態のイオン交換膜53は、陽イオン交換膜であり、陰イオンや電子の移動を制限又は不能にし、陽イオンだけを移動可能としている。
また、イオン交換膜53は、厚み方向のガスの流通を遮断する遮断膜でもある。
イオン交換膜53は、イオン交換が可能であり、水素や酸素がクロスオーバーしなければ材質は特に限定されない。
イオン交換膜53としては、例えば、ナフィオン(登録商標)等のパーフルオロアルキルスルホン酸系ポリマーの膜などの高分子膜が使用できる。
【0034】
(対向電極部55)
対向電極部55は、光触媒電極部50と対をなし、イオン交換膜53を挟んで光触媒電極部50と対向する電極であり、第2電解液38を還元して水素ガスを発生させるカソード電極である。
対向電極部55は、図7のように、網目状であって複数の開口部を有しており、厚み方向に光が透過可能となっている。
【0035】
(側面封止部材22)
側面封止部材22は、透明基板20と裏面封止部材23を接着する接着部材である。
側面封止部材22は、図6のように、第1封止部70と、第2封止部71が積層構造をしており、第1封止部70と第2封止部71によって挟んでイオン交換膜53を保持する保持部材である。
第1封止部70は、透明基板20を平面視したときに、光触媒電極部50の周囲を囲繞し、光触媒側空間35の内壁を構成する囲繞壁部である。
第2封止部71は、透明基板20を平面視したときに、対向電極部55の周囲を囲繞し、対向側空間36の内壁を構成する囲繞壁部である。
本実施形態の封止部70,71は、ともに区画部材52と同様の材料によって構成されている、すなわち、封止部70,71は、液状の接着剤が硬化して形成されており、接着性と封止性を有している。
【0036】
(裏面封止部材23)
裏面封止部材23は、図4図5のように、光電解パネル10の裏面を構成し、透明基板20と側面封止部材22とともに、電解部21を封止する部材である。
裏面封止部材23は、図6のように、シート状又は板状であって、絶縁層75と、防湿層76と、裏面基板77を備えている。
絶縁層75は、絶縁性を有する絶縁フィルムである。
絶縁層75としては、絶縁性を有するものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレンフィルムやポリイミドフィルムなどが使用できる。
防湿層76は、厚み方向に水分を透過しない防止フィルムである。
防湿層76は、光を反射する光反射層でもある。
防湿層76としては、防湿性を有するものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウムフィルムなどが使用できる。
裏面基板77は、絶縁層75と防湿層76を支持する支持基板である。
裏面基板77としては、絶縁層75と防湿層76を支持できる剛性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ガラス基板や樹脂基板などが使用できる。
【0037】
(光触媒用ケーブル25)
光触媒用ケーブル25は、光触媒電極部50に接続される配線部材であり、図2(b)に示される外部電源装置9から光触媒電極部50に給電する給電ケーブルである。
【0038】
(対向電極用ケーブル26)
対向電極用ケーブル26は、対向電極部55に接続される配線部材であり、図2(b)に示される外部電源装置9から対向電極部55に給電する給電ケーブルである。
【0039】
(電解液導入配管部27,28)
電解液導入配管部27,28は、図2(a)のように、外部の電解液供給装置3から電解液37,38を空間35,36に供給する配管である。
【0040】
(ガス排出配管部30)
ガス排出配管部30は、図2(a)のように、対向側空間36内の水素ガスを外部に排出し、外部の水素貯留部5に送り出す配管である。
【0041】
(ガス連通配管部31)
ガス連通配管部31は、図2(a)のように、光触媒側空間35を他の光電解モジュール2の光触媒側空間35又は外部の気液分離部7と連通させる配管である。
【0042】
(光触媒側空間35)
光触媒側空間35は、図4図5のように、側面封止部材22の第1封止部70によって囲繞される空間であって、透明基板20とイオン交換膜53の間の空間である。
【0043】
(対向側空間36)
対向側空間36は、図4図5のように、側面封止部材22の第2封止部71によって囲繞される空間であって、イオン交換膜53と裏面封止部材23の間の空間である。
【0044】
(電解液37,38)
第1電解液37は、光触媒電極部50によって酸化されて過酸化水素が発生する電解液であり、少なくとも水素元素を含む電解液である。
第2電解液38は、対向電極部55によって還元されて水素ガスが発生する電解液であり、少なくとも水素元素を含む電解液である。
本実施形態では、電解液37,38は、ともに電解質として炭酸水素ナトリウムなどを含む水である。
【0045】
(ガスケット部材11a,11b)
ガスケット部材11a,11bは、弾性を有し、図3のように光電解パネル10の端部を保護する緩衝部材である。
ガスケット部材11a,11bは、断面形状が「コ」字状であり、受光側覆部80と、裏側覆部81と、受光側覆部80と裏側覆部81を接続する端面側覆部82を備えている。
ガスケット部材11aの端面側覆部82は、光電解パネル10の上端面と対向する部分において各ケーブル25,26及び各配管部27,28,30を挿通可能な挿通孔83a~83eを備えており、光電解パネル10の側面と対向する部分においてガス連通配管部31aを挿通可能な挿通孔84a(図示せず)を備えている。
ガスケット部材11bの端面側覆部82は、光電解パネル10の側面と対向する部分においてガス連通配管部31bを挿通可能な挿通孔84bを備えている。
【0046】
(フレーム部材12a,12b)
フレーム部材12a,12bは、光電解パネル10を保護する保護フレームである。
フレーム部材12a,12bは、図3のように、断面形状が「コ」字状であり、受光側覆部85と、裏側覆部86と、受光側覆部85と裏側覆部86を接続する端面側覆部87を備えている。
フレーム部材12aの端面側覆部87は、光電解パネル10の上端面とガスケット部材11aを挟んで対向する部分において各ケーブル25,26及び各配管部27,28,30を挿通可能な挿通孔88a~88eを備えており、光電解パネル10の側面とガスケット部材11aを挟んで対向する部分においてガス連通配管部31aを挿通可能な挿通孔89a(図示せず)を備えている。
フレーム部材12bの端面側覆部87は、光電解パネル10の側面とガスケット部材11bを挟んで対向する部分においてガス連通配管部31bを挿通可能な挿通孔89bを備えている。
【0047】
(電解液供給装置3)
電解液供給装置3は、電解液37,38を貯留可能な貯留タンクを有し、貯留タンクから各光電解モジュール2に電解液37,38を供給可能な装置である。
電解液供給装置3は、図2(a)のように電解液供給流路100を介して各光電解モジュール2の電解液導入配管部27,28に接続されている。
電解液供給流路100は、電解液供給装置3から中途で分岐して各光電解モジュール2の電解液導入配管部27,28に接続される流路である。
電解液供給流路100は、電解液37,38の流れ方向において、各光電解モジュール2の電解液導入配管部27,28の上流側に開閉弁110,111が設けられている。
【0048】
(水素貯留部5)
水素貯留部5は、図2(a)のように各光電解モジュール2で生成された水素ガスを貯留する貯留タンクであり、水素貯留流路101を介して各光電解モジュール2のガス排出配管部30と接続されている。
【0049】
(過酸化水素貯留部6)
過酸化水素貯留部6は、各光電解モジュール2で生成された過酸化水素を貯留する貯留タンクである。
過酸化水素貯留部6は、図2(a)のように過酸化水素貯留流路102を介して光電解モジュール2cのガス連通配管部31と接続されている。
【0050】
(気液分離部7)
気液分離部7は、気体と液体を分離する部位である。
本実施形態の気液分離部7は、図2(a)のように過酸化水素貯留流路102の中途に設けられ、光電解モジュール2cのガス連通配管部31から排出される過酸化水素と酸素ガスを分離し、過酸化水素を過酸化水素貯留部6側に流し、酸素ガスを酸素処理部8側に流す部位である。
【0051】
(酸素処理部8)
酸素処理部8は、気液分離部7で過酸化水素から分離された酸素ガスを貯留、再利用、又は大気中に放出する部位である。
【0052】
(外部電源装置9)
外部電源装置9は、各光電解モジュール2に直流電力を供給する電力供給装置である。
外部電源装置9としては、各光電解モジュール2に電力を供給できるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、商用電源装置や太陽電池等の再生可能エネルギー生成装置、二次電池等の蓄電装置が使用できる。
外部電源装置9は、交流電力を直流電力に変換する電力変換装置を備えていてもよい。
外部電源装置9は、図2(b)のように各光電解モジュール2が電気的に並列接続されている。
【0053】
続いて、光電解モジュール2の各部位の位置関係について説明する。
【0054】
光電解パネル10は、図4図5のように、透明基板20上に電解部21が積層されている。具体的には、光電解パネル10は、透明基板20上に透明電極層60、補助電極層61、光触媒層62がこの順に積層されて光触媒電極部50が形成されている。
イオン交換膜53は、光触媒側空間35側(受光面40側)に供給配線部51が格子状に設けられて接しており、対向側空間36側に対向電極部55が接している。
光電解パネル10は、透明基板20とイオン交換膜53との間に光触媒側空間35が形成されており、イオン交換膜53と裏面封止部材23との間に対向側空間36が形成されている。
光電解パネル10は、光触媒側空間35に第1電解液37が充填されており、対向側空間36に第2電解液38が充填されている。
第1電解液37の液位は、光触媒電極部50の光触媒層62の大部分が浸漬される高さとなっており、第2電解液38の液位は、対向電極部55の大部分が浸漬される高さとなっている。
ここでいう「大部分」とは、全体の50%超過をいう。
第1電解液37の液位は、光触媒電極部50の光触媒層62の80%以上の部分が浸漬される高さとなっていることが好ましく、光触媒電極部50の光触媒層62の高さ以上となっていることがより好ましい。
第2電解液38の液位は、対向電極部55の80%以上の部分が浸漬される高さとなっていることが好ましく、対向電極部55の高さ以上となっていることがより好ましい。
側面封止部材22は、透明基板20を平面視したときに電解部21を囲繞するように設けられており、第1封止部70と第2封止部71によってイオン交換膜53を挟持してイオン交換膜53の姿勢を保持している。
【0055】
光触媒用ケーブル25は、外部からフレーム部材12aの挿通孔88a、ガスケット部材11aの挿通孔83aを通過し、さらに透明基板20と第1封止部70の間を通過して光触媒側空間35に挿入されている。
電解液導入配管部27は、外部からフレーム部材12aの挿通孔88c、ガスケット部材11aの挿通孔83cを通過し、さらに第1封止部70と第2封止部71の間を通過して光触媒側空間35に挿入されている。
ガス連通配管部31a,31bは、外部からフレーム部材12a,12bの挿通孔89a,89b、ガスケット部材11a,11bの挿通孔84a,84bを通過し、さらに第1封止部70と第2封止部71の間を通過して光触媒側空間35に挿入されている。
対向電極用ケーブル26、電解液導入配管部28、及びガス排出配管部30は、外部からフレーム部材12aの挿通孔88b,88d,88e、ガスケット部材11aの挿通孔83b,88d,88eを通過し、さらに第1封止部70と第2封止部71の間を通過して対向側空間36に挿入されている。
【0056】
区画部材52は、図9(a)のように、透明基板20を平面視したときに、上下方向に延びて光触媒側空間35を複数の区画空間90a,90bに区画している。
区画部材52は、上方側端部と下方側端部が側面封止部材22の第1封止部70と接しておらず、第1封止部70との間に隣接する区画空間90a,90bを連通させる連通部91,92が形成されている。
上方側連通部91は、区画空間90a,90b間で副生成物である酸素ガスの行き来を可能にする部位であり、区画部材52の上方側端部と第1封止部70との間の隙間である。
下方側連通部92は、区画空間90a,90b間で第1電解液37及び過酸化水素の行き来を可能にする部位である。
上方側連通部91の高さは、第1電解液37の液位よりも高く、下方側連通部92の高さは、第1電解液37の液位よりも低い。
すなわち、光電解パネル10は、光触媒側空間35において、電解液導入配管部27又はガス連通配管部31aから下方側連通部92を通過してガス連通配管部31bに電解液37が流れる反応流路65と、ガス連通配管部31aから上方側連通部91を通過してガス連通配管部31bに酸素ガスが流れるガス移動流路66がある。
反応流路65では、第1電解液37が光触媒電極部50上で反応して過酸化水素と酸素ガスとしてガス連通配管部31bから排出される。
【0057】
また、光電解パネル10は、対向側空間36において、電解液導入配管部28から第2電解液38が落下し、第2電解液38が対向電極部55上で反応して水素ガスとしてガス排出配管部30から排出される。
【0058】
本実施形態の光電解モジュール2によれば、外部から封止部70と第2封止部71の間を通過して空間35,36に挿入された電解液導入配管部27,28が設けられている。そのため、外部から空間35,36に電解液37,38を供給することができ、長期間、連続的に水素ガスを発生できる。
【0059】
本実施形態の光電解モジュール2によれば、側面封止部材22が封止機能とイオン交換膜53の保持機能を兼ねているので、部品点数を少なくでき、コストを低減でき、厚みも薄くできる。
【0060】
本実施形態の光電解モジュール2によれば、電解液導入配管部27,28が電極部50,55よりも上方側の位置で第1封止部70と第2封止部71の間を通過しているため、重力を利用して、電解液37,38を空間35,36に供給できる。
【0061】
本実施形態の光電解モジュール2によれば、図9(a)のように、酸素ガスは上方側連通部91で第1区画空間90aと第2区画空間90bを行き来でき、過酸化水素は下方側連通部92で第1区画空間90aと第2区画空間90bを行き来できる。そのため、第1電解液37を光触媒側空間35に供給することで過酸化水素が第1電解液37とともに反応流路65に沿って押し出され、効率良くフレッシュな第1電解液37を光触媒電極部50に晒すことができ、光触媒側空間35全体で反応できる。また、反応流路65の下流側に行くにつれて第1電解液37が過酸化水素に置換されていき、過酸化水素の濃度が濃くなっていくので、過酸化水素の濃縮が可能である。
【0062】
本実施形態の光電解モジュール2によれば、光触媒電極部50は、透明電極層60上に光触媒層62が積層されており、さらに透明電極層60上に透明電極層60よりも導電率が高い補助電極層61を備える。そのため、補助電極層61を設けない場合に比べて抵抗損失を抑制でき、光分解効率を向上できる。
【0063】
本実施形態の光電解モジュール2によれば、電解液導入配管部27と接続され、イオン交換膜53に第1電解液37を供給する供給配線部51が面状に広がりをもってイオン交換膜53上を這っている。そのため、イオン交換膜53にまんべんなく電解液37を供給することができ、従来に比べて反応効率を向上できる。
【0064】
本実施形態の光電解モジュール2によれば、ガス排出配管部30は、外部から封止部70,71の間を通過して対向側空間36に挿入されているので、対向側空間36の気密性を保ったまま、対向側空間36内の水素ガスを外部に排出できる。
【0065】
本実施形態の光電解モジュール2によれば、ガス排出配管部30は、対向電極部55よりも上方側の位置で封止部70,71の間を通過しているので、対向側空間36内の水素ガスを、簡単にガス排出配管部30へ捕集できる。
【0066】
本実施形態の光電解システム1によれば、各光電解モジュール2a~2cの電解液導入配管部27の上流側に開閉弁110が設けられているので、過酸化水素を濃縮させたい場合には、図10のように、光電解モジュール2b,2cの開閉弁110を閉状態にし、稼働することで各光電解モジュール2a~2cの光触媒電極部50上で生成された過酸化水素が下流側の光電解モジュール2側に向かうにつれて濃縮される。その結果、高濃度の過酸化水素を生成することができる。
【0067】
上記した実施形態では、電解液供給装置3から光触媒側空間35と対向側空間36のそれぞれに電解液37,38を供給したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図11のように、イオン交換膜53の下部側に連通孔120をもうけ、電解液供給装置3から光触媒側空間35と対向側空間36のうち一方の空間にのみ電解液37,38を供給してもよい。この場合、連通孔120は、電解液37,38の液位よりも低い位置に設けられることが好ましい。
【0068】
上記した実施形態では、各ケーブル25,26及び配管部27,28,30は、フレーム部材12aの延び方向に対して直交するように内外に通過していたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図12のように、各ケーブル25,26及び配管部27,28,30は、図12のようにフレーム部材12aの延び方向に沿って側面封止部材22とフレーム部材12aの間を通過していてもよい。
こうすることで、フレーム部材12aによって各ケーブル25,26及び配管部27,28,30が隠されるので、見えにくく、見栄えが良好となる。
【0069】
上記した実施形態では、一つの電解液供給装置3から各光電解モジュール2に電解液37,38を供給したが、本発明はこれに限定されるものではない。各光電解モジュール2に対応させてそれぞれ別個独立した電解液供給装置3を設けてもよい。
【0070】
上記した実施形態では、一つの電解液供給装置3から各光電解モジュール2の光触媒側空間35と対向側空間36のそれぞれに電解液37,38を供給したが、本発明はこれに限定されるものではない。各光電解モジュール2の光触媒側空間35と対向側空間36のそれぞれ別個独立した電解液供給装置3を設けてもよい。
【0071】
上記した実施形態では、電解液37,38は同一のものを使用していたが、本発明はこれに限定されない。電解液37,38は異なる種類のものを使用してもよい。
【0072】
上記した実施形態では、各光電解モジュール2は、外部電源装置9に対してそれぞれ電気的に並列接続されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。各光電解モジュール2は、外部電源装置9に対して電気的に直列接続されていてもよい。
【0073】
上記した実施形態では、各光電解モジュール2は、ガス連通配管部31によって接続され、光触媒側空間35が連通していたが、本発明はこれに限定されるものではない。各光電解モジュール2は、ガス連通配管部31によって光触媒側空間35を互いに連通させずに直接気液分離部7につながっていてもよい。
【0074】
上記した実施形態では、光電解システム1は、3つの光電解モジュール2を備えていたが、本発明はこれに限定されるものではない。光電解システム1は、1つの光電解モジュール2を備えていてもよいし、2つの光電解モジュール2を備えていてもよい。4つ以上の光電解モジュール2を備えていてもよい。
【0075】
上記した実施形態は、本発明の技術的範囲に含まれる限り、各実施形態間で各構成部材を自由に置換や付加できる。
【符号の説明】
【0076】
1 光電解システム
2,2a~2c 光電解モジュール
12a,12b フレーム部材
20 透明基板
21 電解部
22 側面封止部材
23 裏面封止部材
27,28 電解液導入配管部(電解液導入部)
30 ガス排出配管部
35 光触媒側空間
36 対向側空間
37 第1電解液
38 第2電解液
50 光触媒電極部
51 供給配線部
52 区画部材
53 イオン交換膜
55 対向電極部
60 透明電極層
61 補助電極層
62 光触媒層
70 第1封止部
71 第2封止部
90a 第1区画空間
90b 第2区画空間
91 上方側連通部
92 下方側連通部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12