(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151364
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、プログラム及び非一時的コンピュータ可読媒体
(51)【国際特許分類】
G16C 20/10 20190101AFI20231005BHJP
G06N 99/00 20190101ALN20231005BHJP
【FI】
G16C20/10
G06N99/00 180
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060943
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515130201
【氏名又は名称】株式会社Preferred Networks
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(74)【代理人】
【識別番号】100202429
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 信人
(72)【発明者】
【氏名】松本 皓太
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 卓
(72)【発明者】
【氏名】石井 隆文
(72)【発明者】
【氏名】澤田 亮人
(57)【要約】 (修正有)
【課題】演算中に取得する量のうちの少なくとも1つを出力する訓練済みモデルを用いることで演算の高速化等を図る情報処理装置、情報処理方法、プログラムおよび非一時的コンピュータ可読媒体を提供する。
【解決手段】情報処理装置は、1又は複数のメモリと、1又は複数のプロセッサと、を備える。1又は複数のプロセッサは、分子を構成する2以上の原子についての3次元配置を入力すると、分子に関する物理量を出力する1又は複数の訓練済みモデル用いて、反応経路を探索する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1 又は複数のメモリと、
1 又は複数のプロセッサと、
を備え、
前記 1 又は複数のプロセッサは、
分子を構成する 2 以上の原子についての 3 次元配置を入力すると、前記分子に関する物理量を出力する 1 又は複数の訓練済みモデル用いて、反応経路を探索する、
情報処理装置。
【請求項2】
前記 1 又は複数の訓練済みモデルは、エネルギー、エネルギーの一階微分、エネルギーの二階微分、エネルギーの二階微分を算出できる物理量、又は、非調和性のうち、少なくとも 1 つを出力するモデルである、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記 1 又は複数のプロセッサは、
ADDF (Anharmonic Downward Distortion Following) 法を用いて遷移状態を探索する、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記 1 又は複数のプロセッサは、
ADDF 法において、分子変形を行うごとにエネルギーの二階微分を表すヘッセ行列を、前記 1 又は複数の訓練済みモデルのうち少なくとも 1 つを用いて取得する、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記 1 又は複数のプロセッサは、
AFIR (Artificial Force Induced Reaction) 法を用いて遷移状態を探索する、
請求項1又は請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記 1 又は複数のプロセッサは、
AFIR 法における人工力パラメータを、入力されたパラメータに基づいて決定する、
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記 1 又は複数のプロセッサは、
AFIR 法における計算を実行後に、目的となる化学反応を探索できたかを判定し、
探索を続行する場合に、
人工力パラメータを更新し、
経路探索を実行する、
請求項5又は請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記訓練済みモデルは、反応遷移状態を含まない教師データを用いて訓練されたモデルである、
請求項1から請求項7のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項9】
1 又は複数のプロセッサが、分子を構成する 2 以上の原子についての 3 次元配置を入力すると、前記分子に関する物理量を出力する 1 又は複数の訓練済みモデル用いて、反応経路を探索する、
情報処理方法。
【請求項10】
1 又は複数のプロセッサに、分子を構成する 2 以上の原子についての 3 次元配置を入力すると、前記分子に関する物理量を出力する 1 又は複数の訓練済みモデル用いて、反応経路を探索する、
情報処理方法を実行させるプログラム。
【請求項11】
1 又は複数のプロセッサに、分子を構成する 2 以上の原子についての 3 次元配置を入力すると、前記分子に関する物理量を出力する 1 又は複数の訓練済みモデル用いて、反応経路を探索する、
情報処理方法を実行させるプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、情報処理方法、プログラム及び非一時的コンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
分子間における反応経路における遷移状態、活性化パラメータ又は速度定数等の情報を取得するために、反応経路探索や遷移状態探索が重要となる。反応経路の探索において、安定構造を探索することは、比較的容易であるが、この安定構造から反応経路となり得る鞍点を探索することは、一般的に困難である。反応経路探索は、例えば、停留点探索、 NEB (Nudged Elastic Band) 法を用いるが、前者は、鞍点の近傍から探索を実行しないと探索がうまくできず、後者は、前提として大まかな反応経路を取得しておく必要がある。 ADDF (Anharmonic Downward Distortion Following) 法や AFIR (Artificial Force Induced Reaction) 法といった手法又はこれらの方法を組み合わせて用いる GRRM (登録商標) (Global Reaction Route Mapping) は、これらの課題を解決しうる方法である。
【0003】
上記の方法を用いることで、反応経路を自動的に探索することが可能であるが、 ADDF 法、 AFIR 法は、計算コストが高く、計算可能な分子のサイズや探索を施行できる分子の数が限定される。これは、原子核を動かしながら、エネルギー、力、又は、ヘシアンを膨大な回数の第一原理計算により計算する必要があるためである。安定分子から離れた構造についても演算を実行する必要があり、古典力場では適用することが困難である。 ADDF 法においては、分子変形の方向は、下方非調和歪が大きい方向とするが、第一原理計算による下方非調和歪の計算は極めて演算コストが高いため、高速化手法を用いる代償として探索に失敗する懸念もある。また、 AFIR 法においては、人工力パラメータを決定することが難しく、さらには、演算終了後に反応を正しく再現できているか否かの判断も難しい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】S. Maeda, et. al., “Systematic Exploration of the Mechanism of Chemical Reactions: Global Reaction Rout Mapping (GRRM) Strategy by the ADDF and AFIR Methods”, Phys. Chem. Chem. Phys., 15, 3683-3701 (2013)
【非特許文献2】S. Maeda, et. al., “Implementation and performance of the artificial force induced reaction method in the GRRM17 program”, J. Comput. Chem., 39, 233-250(2018)
【非特許文献3】W.M.C. Sameera, S. Maeda, and K. Morokuma, “Computational Catalysis Using the Artificial Force Induced Reaction Method”, Acc. Chem. Res., 49, 763-773 (2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、演算中に取得する量のうちの少なくとも 1 つを出力する訓練済みモデルを用いることで演算の高速化等を図る情報処理装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態によれば、情報処理装置は、
1 又は複数のメモリと、
1 又は複数のプロセッサと、
を備える。
前記 1 又は複数のプロセッサは、
分子を構成する 2 以上の原子についての 3 次元配置を入力すると、前記分子に関する物理量を出力する 1 又は複数の訓練済みモデル用いて、反応経路を探索する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態に係る処理を示すフローチャート。
【
図2】一実施形態に係る処理を示すフローチャート。
【
図3】一実施形態に係る処理を示すフローチャート。
【
図4】一実施形態に係る処理を示すフローチャート。
【
図5】一実施形態に係る処理を示すフローチャート。
【
図6】一実施形態に係るハードウェア実装の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。図面及び実施形態の説明は一例として示すものであり、本発明を限定するものではない。
【0009】
まず、本開示において自動探索に用いる ADDF 法及び AFIR 法について、簡単に説明し、その後にそれぞれの方法を実装する各実施形態について図面を用いながら詳細に説明する。
【0010】
(ADDF 法)
ADDF 法は、ポテンシャルエネルギーが調和近似に比較して小さくなる方向、すなわち、下方非調和歪 (ADD: Anharmonic Downward Distortion) が極小となる方向に分子を変形させて、遷移状態を求める方法である。説明は、一例として提示するものであり、本開示における実施形態においてはこれらに限定されるものではない。
【0011】
第一原理計算においても訓練済みモデルにおいても、エネルギー E は、原子核座標 x の関数として計算される。
【数1】
ここでNは原子の数である。
【0012】
したがって、第一原理計算を用いても訓練済みモデルを用いても、例えば、最急降下方、共役勾配法、 BFGS 法 (Broyden-Fletcher-Goldfarb-Shanno algorithm) といった種々の最適化方法によって、エネルギーが極小となる構造を探索することができる。換言すると、安定構造の原子核座標である x0 = (x01, x02, x03, ..., x03N)T を探索することができる。
【0013】
x0 においては、エネルギーの座標に関する 1 階微分、すなわち、力は 0 であるため、 x0 近傍の x = (x
1, x
2, x
3, ..., x
3N)
T におけるエネルギーは、次のように調和近似される。
【数2】
【0014】
ここで、 Δx = x - x0 であり、 H は、 x0 におけるヘッセ行列 (ヘシアン) である。また、 T は、ベクトル又は行列の転置を表す。
【数3】
【0015】
直交行列 R によって、 Δ x を y に座標変換することを考える。
【数4】
【0016】
この場合、調和近似されたエネルギーは、次のように表すことができる。
【数5】
【0017】
ヘッセ行列 H は、対称行列であるから、 R を適切に選択することで RHR
T は、対角行列 D となる。
【数6】
【0018】
さらに、 z
i = D
ii
1/2 y
i と座標変換して次の式を得ることができる。
【数7】
【0019】
こうして取得された 3N 次元内の超球面上において、調和近似しない実際のエネルギーが極小となる方向が、遷移状態の存在する方向であり、その方向に分子を変形させることによって遷移状態に至ることができる。
【0020】
なお、制約条件 Σz
i
2 = r
2 のもとで、エネルギー極小の方向を探索するためには、様々な方法を利用することができる。例えば、ラグランジュの未定常数法を用いることもできる。また、以下の様に r を固定した極座標表示において θ
1 から θ
3N-1 を最適化してもよい。
【数8】
【0021】
エネルギーが極小の構造から出発して、分子を変形させる方向を探索する方法について説明したが、分子を一度変形させると、エネルギーの極小状態ではなくなる。この場合、調和近似したエネルギーは、 Δx に関する一次の項を含む。
【数9】
【0022】
しかし、この場合も ΔxTHΔx に対して同様の扱いをすることで、分子変形の方向を決定することができる。
【0023】
エネルギーの調和近似からの差が極小となる方向への分子変形を継続して行うことにより、エネルギーの鞍点である遷移状態を見いだすことができる。なお、エネルギーの鞍点そのものではなくとも鞍点の近傍に至ることができれば、ニュートン法による停留点探索といった探索をすることで、より容易に鞍点に到達することができる。
【0024】
エネルギーの鞍点である遷移状態を探索することができれば、そこからエネルギーの最小化により、反応経路を取得することができる。訓練済みモデルを用いてエネルギー又はヘッセ行列を計算することにより反応経路を自動探索する手法を、第 1 実施形態として説明する。
【0025】
訓練済みモデルが、分子の変形方向 Δx から調和近似したエネルギーが等しくなる超曲面上における調和近似との差を出力する場合、このエネルギーの差の値が極小となる方向に分子を変形させることで、遷移状態を探索することができる。訓練済みモデルを用いてこの遷移状態を探索する手法を、第 2 実施形態として説明する。
【0026】
ADDF 法においては、ヘッセ行列 (エネルギーの二階微分) を計算し、この結果に基づいて分子変形の方向を決定することに時間が掛かる。そこで、一度分子の変形方向を求めた後に、力 (エネルギーの一階微分) を計算しながら当該方向への分子変形を継続することによって、ヘッセ行列の演算回数を削減することができる。ヘッセ行列の演算は、計算コストが高く時間が掛かる。このため、この演算回数を削減することで、高速化を図ることができる。
【0027】
また、分子変形の方向を再計算する場合であっても、高コストなヘッセ行列の演算をイテレーションごとに実行することは必ずしも必須ではない。この方法の一例として、ヘシアン更新法が用いられる。ヘシアン更新法では、構造変化に伴う勾配変化を利用して、ヘッセ行列の構造変化に沿った方向成分を更新する。
【0028】
取得されるヘッセ行列は近似的なものであるので、その精度は、停留点探索計算の挙動に影響を及ぼす。構造をエネルギー停留点に近づける段階においては、ヘッセ行列の精度はそれほど重要ではない。一方で、エネルギー停留点近傍からのエネルギー停留点への収束速度は、ヘッセ行列の精度に大きく依存する。
【0029】
このため、ヘシアン更新法を用いると、極近傍において構造最適化のステップ数が増加するが、ヘッセ行列の演算による取得を必要としないため、最適化ステップそれぞれに要する時間を大幅に削減することができる。
【0030】
これらの演算の兼ね合いでトータルの計算量が決定されるが、多くの場合、ヘシアン更新法を用いることにより演算時間を削減することができる。この応用として、数ステップに一度、正確なヘッセ行列を計算し、それ以外のステップではヘシアン更新を用いる、という手法もある。
【0031】
ここで、構造 x
k と、構造 x
l の変化 Δx
kl = x
k - x
l と対応する勾配変化 Δg
kl = g
k - g
l を用いて差分を取ることで、更新行列 ΔH
kl
DIFF が得られる。
【数10】
【0032】
ここで、 H0
OLD は、更新前のヘッセ行列である。構造最適化計算を実行する場合、実際には、 H0
OLD に Hkl
DIFF を加えた行列を、最適化ステップで決定するためのヘッセ行列として用いる。右辺第 1 項から第 3 項は、 Δxkl に沿った勾配の差分であり、第 4 項から第 6 項は、その中の Δxkl 方向の射影部分を消去する項に対応する。
【0033】
詳細な説明は省略するが、極小点及び一次鞍点の構造最適化において、それぞれよい結果を与える別のヘシアン更新法もある。
【0034】
このようにヘッセ行列を適切なタイミングで演算し、又は、更新する方法について訓練済みモデルを用いる方法を、第 3 実施形態として説明する。前述したように、訓練済みモデルを用いる本開示においては、これらの演算時間短縮を実行せずに探索を確実なものとすることもできるが、これらの演算時間短縮を実行することで、さらなる高速化を図ることができる。
【0035】
(AFIR 法)
ADDF 法は、 1 分子から出発して探索する方法であるのに対して、 AFIR 法は、複数の分子が反応する経路も探索可能な方法である。
【0036】
AFIR (人工力反応誘起) 法では、反応分子同士を押しつけることで反応を誘起する。例えば、反応物A 、 B を反応する場合に、 A 、 B の距離 r
AB に比例する項をエネルギーに加算することで、反応障壁を打ち消したポテンシャル面での構造最適化を実行する。
【数11】
【0037】
これを用いることで、反応経路探索において困難であった、ポテンシャル曲面を上る方向についても探索が必要となる最適化問題を、ポテンシャル曲面を下る構造最適化問題に置き換えることができる。 AFIR 法によれば、経路計算終了後に人工力項 αrAB を取り除くことで、近似的な反応経路を取得することができ、障壁の位置を特定することもできる。
【0038】
また、 ADDF 法に対して AFIR 法は、計算コストが大きな下方非調和歪を計算せずに反応経路探索可能な手法である。
【0039】
多原子分子への応用では、次の様に表すことができる人工力関数を用いる。
【数12】
【0040】
ここで、 E(Q) は、座標 Q に依存したポテンシャルエネルギーである。 ρ = 1 の場合、人工力によって反応分子同士は押し付けられ、 ρ = -1 の場合、人工力によって反応分子同士は引き離される。 r
ij は、原子 i と j の距離である。 r
ij に重み関数 ω
ij を乗じ、フラグメント A 、 B に含まれる全原子において和を算出する。また、 Ri 及び Rj は、それぞれ原子 i と j の共有結合半径である。
【数13】
【0041】
計算は、 p の値にセンシティブではなく、任意の実数 p として、 6.0 が設定されることが多い。力の強さを求める定数 α は、次式のように与えられる。
【数14】
【0042】
定数 γ は、モデル衝突エネルギーであり、超えることができる障壁の近似的な上限を与える。モデル衝突エネルギー γ は、ユーザが設定する。ここで ε = 1.0061 [kJ/mol] 、 R0 = 3.8164 [Å] としてもよく、この場合、 α は、モデル衝突エネルギー γ での Ar 二原子の直衝突において、対応するレナードジョーンズポテンシャルのエネルギー極小点から転回点までに Ar 二原子に働く平均力に相当する。
【0043】
GRRM プログラムは、 AFIR 法を用いた反応経路自動探索手法である SC-AFIR 法 (Single-Component AFIR algorithm) が実装されている。 SC-AFIR 法では、人工力を加えるフラグメントを自動定義し、 AFIR 法を適用することで、経路探索を行って新しい安定構造 EQ を探索する。新規 EQ においても AFIR 法を適用し、新しい反応経路と EQ を取得する。
【0044】
SC-AFIR 法は、この繰り返し処理を自動で実行する。この自動探索において、力を押しつける反応 (ρ = 1) のみではなく、引き離す力 (ρ = -1) も適用するため、結合切断を伴う反応経路の探索も可能である。
【0045】
このため、適切な γ の設定等、演算条件の設定は、ユーザの経験が必要とされることがある。なお、非特許文献3には γ の設定として 100 [kJ /mol] が例示されており、目安とすることができる。
【0046】
この AFIR において訓練済みモデルを利用する方法を、第 4 実施形態として説明する。
【0047】
以下、上記のそれぞれについて、限定されない例を示す実施形態として説明する。それぞれの実施形態において、処理は、例えば、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現される。ハードウェアである情報処理装置は、例えば、 1 又は複数のプロセッサ (処理回路) と、当該プロセッサに接続される 1 又は複数のメモリ (記憶回路) と、を用いて実装される。
【0048】
情報処理装置に備えられる処理回路は、適切なタイミングで記憶回路にデータを書き込み又は読み出す。データは、処理に必要となり、又は、入出力となるデータであってもよいし、情報処理を実行するためのプログラムであってもよい。
【0049】
以下において、訓練済みモデルは、例えば、 NNP (Neural Network Potential) に関するモデルである。 NNP に関するモデルは、例えば、原子の 3 次元配置等の情報を入力すると、それぞれの原子に対するエネルギーを出力するモデルである。情報処理装置は、このモデルを処理回路が記憶回路を参照することで利用することができる。
【0050】
フローチャートにおいて太線で囲まれている処理は、本開示において訓練済みモデルを用いて演算可能な処理である。以下においては、物理量としてエネルギー等を用いるが、用いる物理量は、任意に選択することができる。また、処理回路は、一例として、エネルギーを取得するための NNP における訓練モデルを中心としたモデルを利用するが、こちらも任意の物理量を取得するための訓練モデルと適宜読み替えることができる。
【0051】
(第 1 実施形態)
図1は、第 1 実施形態に係る処理回路の処理を示すフローチャートである。本実施形態においては、 ADDF 法における処理を高速化する訓練済みモデルの利用の一例について説明する。
【0052】
処理回路は、対象となる分子等の構造に関するデータを読み込む (S100) 。構造に関するデータは、例えば、分子を構成する原子の種類、及び、当該原子の 3 次元座標を含むデータである。
【0053】
処理回路は、読み込んだ構造に対して物理量、例えば、エネルギーを計算し、この物理量が極小でない場合には、エネルギーの極小構造を探索する (S102) 。処理回路は、訓練済みモデルを用いてこの処理を実行してもよい。なお、この処理は、イテレーションの外側であるので、訓練済みモデルを用いなくても他の処理のモデル化よりもボトルネックとはなりにくい。
【0054】
この S102 において訓練済みモデルを用いる場合、この訓練済みモデルは、構造を入力するとエネルギーを出力する式 (1) の値を出力するモデルを用いることができる。また、処理回路は、上記に説明した種々の最適化手法により取得した安定構造を教師データとして訓練した訓練済みモデルを用いることができる。処理回路は、エネルギーが極小でない場合には、 S100 で読み出した構造 x に対して安定構造 x0 を、訓練済みモデルを介して取得する。
【0055】
処理回路は、読み出した構造 x から取得した物理量が極小である場合、又は、 S102 において物理量が極小となる構造 x0 を探索した後、この極小となる構造を初期値として、遷移状態の探索処理 (S104 ~ S112) を実行する。
【0056】
処理回路は、構造から、物理量を取得する (S104) 。処理回路は、一例として
図1に示すように、エネルギー及びヘッセ行列を取得する。この処理は、訓練済みモデルを用いて実行してもよい。処理回路は、訓練済みモデルを用いて構造からエネルギーを取得し、このエネルギーを二階微分することでヘッセ行列を取得してもよい。また、訓練済みモデルによって、エネルギーの二階微分を算出できる物理量を出力し、当該物理量を用いてエネルギーの二階微分 (ヘッセ行列) を取得してもよい。エネルギーの二階微分を算出できる物理量として、例えば、固有振動数と換算質量が挙げられる。
【0057】
別の例として、処理回路は、構造データを入力すると、ヘッセ行列を出力する訓練済みモデルを用いてもよい。さらに別の例として、処理回路は、力が取得できている場合、この力の値を位置微分することでヘッセ行列を取得してもよい。処理回路は、例えば、 2 回目のイテレーション以降においては前のイテレーションにおける後述する S112 の処理結果を用いることでヘッセ行列の演算時間を短縮することが可能である。
【0058】
ADDF においては、分子を変形する方向、例えば、並進、回転、屈曲等の方向は、求めることができる。処理回路は、ユーザが指定する分子変形変位量の最大値の範囲内において、この分子を変形する幅を設定する (S106) 。初期値は、ユーザが入力したものを用いてもよい。次のイテレーションからは、前のイテレーションにより取得された幅から自動的に決定、例えば、イテレーションにおいて取得した状態により、幅を狭めたり、広めたりする手法としてもよい。分子変形幅の設定は、公知の方法を用いてもよい。
【0059】
分子変形幅を設定した後、処理回路は、エネルギーの調和近似からの差が極小となる方向、すなわち、分子の変形方向を計算する (S108) 。処理回路は、例えば、式 (2,3,4,5,6,7,9) から計算される調和近似エネルギーに基づいて調和近似からの差を計算してもよく、また式 (8) で示される、調和近似エネルギーが等しい超球面上におけるエネルギー極小を探索してもよい。また、処理回路は、訓練済みモデルを用いて、この方向を取得する形態であってもよい。本ステップにおいて用いる訓練済みモデルは、例えば、式 (2) から式 (9) を用いて取得した種々の教師データを用いて訓練されたモデルであってもよい。
【0060】
処理回路は、 S108 で取得された方向に、 S106 で設定した幅内において分子を変形させたそれぞれの原子の座標を取得する (S110) 。
【0061】
処理回路は、変形した座標を含む構造を用いて、それぞれの原子に働く力を計算する (S112) 。本ステップは、訓練済みモデルを用いて実行してもよい。処理回路は、例えば、構造データからエネルギーを取得する訓練済みモデルを用いてそれぞれの原子のエネルギーを取得し、このエネルギーを位置微分 (一階微分) することで、力を取得してもよい。処理回路は、別の例として、構造データから力を取得する訓練済みモデルを用いて、力を取得してもよい。
【0062】
処理回路は、 S110 において取得した構造が停留点であるか否かを判定する (S114) 。処理回路は、例えば、 S112 で取得した力が 0 であるか否かにより、この判定を実行してもよい。また、処理回路は、例えば、この力が微小の所定値以下であるかを判定基準に用いてもよい。
【0063】
停留点ではないと判定する場合 (S114: NO) 、処理回路は、 S110 において変形した構造を用いて、 S104 からの処理を繰り返す。
【0064】
停留点であると判定する場合 (S114: YES) 、処理回路は、 S110 において変形した構造に基づいて、反応経路を決定する (S116) 。処理回路は、例えば、遷移状態から双方向に構造最適化を実行することで、反応経路を決定する。この反応経路の決定における構造最適化の処理について、処理回路は、訓練済みモデルを利用してもよい。なお、 S102 の処理と同様に、処理回路は、 S116 の処理もイテレーションの外側であるので、精度向上等の理由により、訓練済みモデルを利用するのではなく、一般的な最適化手法を用いてもよい。
【0065】
以上のように、本実施形態によれば、情報処理装置は、演算を任意の粒度で訓練済みモデルを用いて実行することができる。訓練済みモデルを使用しない場合、第一原理計算によりエネルギーを求め、このエネルギーの一階微分 (力) 及びエネルギーの二階微分 (ヘッセ行列) を求める必要があるが、このエネルギーの演算時間が長いため、これをイテレーション内において逐次的に複数回実行しなければならない停留点探索の処理は、膨大な時間を要する。
【0066】
本実施形態によれば、エネルギーの計算が大幅に高速化されるため、全体的な処理時間を短縮することが可能となる。また、訓練済みモデルがエネルギーの一階微分を出力できる場合、この値を一階微分することでヘッセ行列を取得することができる。このことも、高速化に寄与する。さらに、訓練済みモデルがエネルギーの二階微分を出力できる場合、高速化の効果は、さらに顕著なものとなる。
【0067】
なお、上述においては、処理ごとに訓練済みモデルを用いるか否かを選択できることを説明したが、これに限定されるものではない。例えば、同じ処理をイテレーションによって、訓練済みモデルを用いて実行するか、第一原理計算等により実行するかを選択できてもよい。限定されない例として、少なくとも 1 つのある処理ステップについて、所定数ごとのイテレーションにおいては、ある程度の精度を担保するために第一原理計算を実行するといった態様としてもよい。これは、本実施形態に限らず、以下に説明するいずれの実施形態においても同様である。
【0068】
(第 2 実施形態)
図2は、第 1 実施形態に係る処理回路の処理を示すフローチャートである。本実施形態においては、 ADDF 法における処理を高速化する訓練済みモデルの利用の一例について説明する。
【0069】
処理回路は、対象となる分子等の構造に関するデータを読み込む (S200) 。この処理は、第 1 実施形態における S100 と同等の処理である。
【0070】
処理回路は、読み込んだ構造に対して物理量、例えば、エネルギーを計算し、この物理量が極小でない場合には、エネルギーの極小構造を探索する (S202) 。この処理は、第 1 実施形態における S102 と同等の処理である。
【0071】
処理回路は、読み出した構造 x から取得した物理量が極小である場合、又は、 S202 において物理量が極小となる構造 x0 を探索した後、この極小となる構造を初期値として、遷移状態の探索処理 (S204 ~ S210) を実行する。
【0072】
処理回路は、分子を変形する幅を設定する (S204) 。この処理は、一例として、第 1 実施形態における S106 の処理と同等の処理である。
【0073】
別例として、この処理において、処理回路は、エネルギー、力又はヘッセ行列のうち少なくとも 1 つを訓練済みモデルを用いて取得することなく、処理を実行してもよい。処理回路は、構造を入力すると、非調和性を出力する訓練済みモデルを用いて、この変形方向を取得してもよい。
【0074】
一例として、処理回路は、分子の変更方向から、調和近似したエネルギーが等しくなる超曲面上における調和近似との差を出力するモデルを用いてもよい。このようなモデルを用いて、エネルギーの差が極小となる分子の変更方向を探索することで、処理回路は、変形方向を推定することが可能となる。この訓練モデルの訓練についても、適切な教師データを取得することが可能である。
【0075】
分子変形幅を設定した後、処理回路は、エネルギーの調和近似からの差が極小となる方向、すなわち、分子の変形方向を計算する (S206) 。この処理は、第 1 実施形態における S108 の処理と同等の処理である。
【0076】
処理回路は、 S206 で取得された方向に、 S204 で設定した幅内において分子を変形させたそれぞれの原子の座標を取得する (S208) 。この処理は、第 1 実施形態における S110 の処理と同等の処理である。
【0077】
処理回路は、変形した座標を含む構造を用いて、それぞれの原子に働く力を計算する (S210) 。この処理は、第 1 実施形態における S112 の処理と同等の処理である。
【0078】
処理回路は、 S208 において取得した構造が停留点であるか否かを判定する (S212) 。この処理は、第 1 実施形態における S114 の処理と同等の処理である。
【0079】
停留点ではないと判定する場合 (S212: NO) 、処理回路は、 S208 において変形した構造を用いて、 S204 からの処理を繰り返す。
【0080】
停留点であると判定する場合 (S212: YES) 、処理回路は、 S208 において変形した構造に基づいて、反応経路を決定する (S214) 。これ以降の処理は、第 1 実施形態における S114 ~ S116 と同等の処理である。
【0081】
本実施形態によれば、情報処理装置は、第 1 実施形態と同様に、演算を任意の粒度で訓練済みモデルを用いて実行することができる。さらに、本実施形態によれば、エネルギー等を直接的に取得することなく、変形方向を求めるためのデータを取得することが可能となる。
【0082】
分子を変形させる方向を求める探索においては、途中経過における演算の多さから実時間的には成功しないことがあった。本実施形態に係る情報処理装置によれば、エネルギー等の物理量を算出することなく、非調和性のデータを取得することができるので、より確実な探索を実現することができる。また、非調和性を取得するための種々の物理量を取得しなくてもよいことから、第 1 実施形態における手法をさらに高速化することが可能となる。
【0083】
(第 3 実施形態)
図3は、第 3 実施形態に係る処理回路の処理を示すフローチャートである。本実施形態においては、 ADDF 法における処理を高速化する訓練済みモデルの利用の一例について説明する。本実施形態に係る処理は、訓練済みモデルを利用しない ADDF の処理をトレースして、演算コストが高い処理において、訓練済みモデルを用いるものである。
【0084】
S300 及び S302 の処理は、第 1 実施形態における S100 及び S102 の処理とそれぞれ同等の処理である。
【0085】
処理回路は、イテレーションの外側において、構造から物理量、例えば、エネルギー及びヘッセ行列を取得する (S304) 。処理の内容については、第 1 実施形態の S104 と同等の処理である。
【0086】
処理回路は、 S302 において読み出した構造 x から取得した物理量が極小である場合、又は、 S302 において物理量が極小となる構造 x0 を探索した後、この極小となる構造を初期値として、遷移状態の探索処理 (S306 ~ S318) を実行する。
【0087】
S306 から S316 の処理は、 S314 の分岐先の処理を除き、それぞれ第 1 実施形態の S106 から S116 の処理と同等の処理である。
【0088】
処理回路は、変形した構造が停留点でない場合 (S314: NO) 、ヘッセ行列を取得する処理に移行する (S318) 。
【0089】
図4は、本実施形態に係るヘッセ行列を取得する処理を示すフローチャートである。
【0090】
処理回路は、ヘッセ行列を取得する判定をすると、二階微分を実行するか否かを判定する (S320) 。上述したように、分子を変形した後にさらに変形の方向を取得する場合、高コストなヘッセ行列の演算をイテレーションごとに実行することは必ずしも必要ではない。
【0091】
処理回路は、種々の条件により、二階微分を実行して精度の高いヘッセ行列を演算するか、二階微分を実行せずにヘッセ行列を更新するかを判定する。この条件は、例えば、イテレーションの回数で決定されてもよいし、エネルギー差等に基づいて決定されてもよい。
【0092】
二階微分実行すると判定した場合 (S320: YES) 、処理回路は、二階微分を実行することでヘッセ行列を取得する (S322) 。処理回路は、訓練済みモデルを用いてヘッセ行列を取得してもよい。また、訓練済みモデルによって、エネルギーの二階微分を算出できる物理量を出力し、当該物理量を用いてエネルギーの二階微分 (ヘッセ行列) を取得してもよい。エネルギーの二階微分を算出できる物理量として例えば、固有振動数と換算質量が挙げられる。
【0093】
処理回路は、例えば、エネルギーを訓練済みモデルで取得し、二階微分してもよいし、力を訓練済みモデルで取得し、一階微分してもよいし、又は、ヘッセ行列を訓練済みモデルで取得してもよい。
【0094】
二階微分実行しないと判定した場合 (S320: NO) 、処理回路は、二階微分を実行することなくヘッセ行列を取得する (S324) 。処理回路は、例えば、ヘシアン更新法を用いて、ヘッセ行列を更新する。ヘシアン更新法は、式 (10) に基づいて、ヘッセ行列を更新する。処理回路は、訓練済みモデルを用いてこの処理を実行してもよいし、訓練済みモデルを用いずにこの処理を実行してもよい。
【0095】
以上のように、本実施形態によれば、情報処理装置は、演算を任意の粒度で訓練済みモデルを用いて実行することができる。訓練済みモデルを使用しない場合、第一原理計算によりエネルギーを求め、このエネルギーの一階微分 (力) 及びエネルギーの二階微分 (ヘッセ行列) を求める必要があるが、このエネルギーの演算時間が長いため、これをイテレーション内において逐次的に複数回実行しなければならない停留点探索の処理は、膨大な時間を要する。
【0096】
本実施形態によれば、ヘッセ行列の演算を適切に省略することで、前述の実施形態と比較してさらなる高速化を実現することが可能である。
【0097】
第 1 実施形態から第 3 実施形態においては、 ADDF 法について説明したが、この ADDF 法においては、ヘッセ行列の演算が速度を律速する。一例として、第一原理計算において実行した場合、現状では、 4 コアのプロセッサで 1028 分程度、 16 コアで 340 分程度かかる。一方、本開示の実施形態によれば、 I/O を含まないと 1.33 秒程度、 I/O を含むと 33 秒程度である。このため、低く見積もっても、約 600 倍程度の高速化を実現できる。
【0098】
(第 4 実施形態)
本実施形態に係る情報処理装置は、 AFIR 法について訓練済みモデルを用いて処理を高速に実行する。
【0099】
図5は、本実施形態に係る処理の一例を示すフローチャートである。
【0100】
処理回路は、分子の初期配置を読み込む (S400) 。処理回路は、例えば、 AFIR 法において着目している分子の配置を読み込む。
【0101】
処理回路は、これらの読み込んだ分子間における式 (12) における人工力のパラメータ (人工力の係数) ωij (又は 式 (11) における α) を計算する (S402) 。処理回路は、例えば、モデル衝突エネルギー γ から、式 (14) 等に基づいて人工力の重み付け係数を取得する。処理回路は、例えば、エネルギー極大点の推定をしたり、出発構造とのエネルギー差 ΔE を計算したりすることで、このパラメータを取得してもよい。
【0102】
処理回路は、人工力パラメータを入力値から計算し、又は、自動推定するための定義をしてもよい。自動推定定義では、処理回路は、指定したフラグメントと力の方向 (引力又は斥力) から、反応する 2 原子を推定し、遷移状態付近の活性化エネルギーを推定し、経路探索に必要な人工力を自動定義する。人工力パラメータの決定法は、限定されないいくつかの例として、以下のものを用いてもよい。
【0103】
処理回路は、例えば、入力されたパラメータからこの人工力パラメータを決定してもよい。
【0104】
入力されたパラメータとして、あらかじめ設定された、推定反応 2 原子の結合形成/解離に係る典型的な活性化パラメータ、結合エネルギー、又は、反応速度定数のうち少なくとも 1 つのリストを使用し、人工力パラメータを推定してもよい。
【0105】
入力されたパラメータとして、あらかじめ設定された、推定反応 2 原子の結合形成/解離に係る遷移状態の典型的な原子間距離を使用して中間体を推定し、 1 点エネルギー計算を実行することで人工力パラメータを推定してもよい。
【0106】
入力されたパラメータとして、あらかじめ設定された推定反応 2 原子の結合形成/解離に係る遷移状態の典型的な反応座標距離を使用し、指定フラグメント間に非常に大きな人工力 (通常の化学反応で議論する値の 10 倍以上程度) を加えた PES (Potential Energy Surface) 上で典型反応座標距離分動かした構造を作成し、その点を推定中間体とし、 1 点エネルギー計算を実行することで人工力パラメータを推定してもよい。
【0107】
処理回路は、この計算した人工力のパラメータを用いて、原子の位置を探索する (S404 ~ S410) 。
【0108】
処理回路は、 S402 において求められたパラメータを用いて、式 (11) 又は 式 (12) にしたがい、力を取得する (S404) 。処理回路は、この力の取得の計算を、原子の配置及び人工力のパラメータから力を取得する訓練済みモデルを用いて実行してもよい。
【0109】
処理回路は、 S404 で取得した力にしたがい、それぞれの原子の位置を移動させる (S406) 。
【0110】
処理回路は、 S406 で移動させた原子の位置にしたがう構造に基づいて、エネルギーを取得する (S408) 。処理回路は、このエネルギーの取得の計算を、訓練済みモデルを用いて実行してもよい。
【0111】
処理回路は、 S408 で取得したエネルギーが、 S406 における原子の移動前のエネルギーと比較して低下しているか否かを判定する (S410) 。この比較において、処理回路は、前のイテレーションにおいて取得されているエネルギー値を用いてもよい。また、処理回路は、最初のイテレーションにおいては、別途移動していない原子の状態におけるエネルギーを、訓練済みモデルを用いて、又は、用いずに取得してもよい。
【0112】
処理回路は、エネルギーが低下している場合 (S410: YES) 、 S404 からの処理を繰り返す。
【0113】
処理回路は、エネルギーが低下していない場合 (S410: NO) 、原子の移動を終了するか否かを判定する (S412) 。処理回路は、例えば、結合状態の変化等から、反応を適切に追跡できたかを判定することで、この判定を実行する。処理回路は、例えば、結合状態が途中で止まっていた等の場合において、原子の移動が終了していないと判定する。
【0114】
処理回路は、例えば、人工力を加えた PES 上での反応経路探索終了時に目的化学反応を追跡できたか否かを判定してもよい。この追跡可否の判定法は、限定されないいくつかの例として、以下のものを用いてもよい。
【0115】
処理回路は、人工力を取り除いた経路探索において、極大点の有無を判定し、この判定結果に基づいて、 S412 の判定をしてもよい。
【0116】
処理回路は、典型結合距離を使用し、経路探索前後の結合情報を保存した対称行列を比較することで判断してもよい。対称行列は、例えば、典型距離を下回る場合には、 1 であり、それ以外では 0 である行列であってもよい。
【0117】
処理回路は、反応前後構造の原子位置の RMSD (二乗平均偏差: Root Mean Square Deviation) を使用し、基準値と比較することで、 S412 の判定をしてもよい。
【0118】
処理回路は、原子の移動が終了していない場合 (S412: NO) 、 S404 からの処理を繰り返す。ここで、処理回路は、同じパラメータで処理を繰り返すのではなく、例えば、 γ の値を大きくして極大点を超える可能性を有するパラメータに更新して、 S404 からの処理を繰り返してもよい。
【0119】
処理回路は、人工力の除いたエネルギーが極大となる原子の座標 (近似的遷移状態) を選択する (S414) 。
【0120】
処理回路は、 S414 で選択した近似的遷移状態から出発し、遷移状態の探索を行う (S416) 。処理回路は、この遷移状態の探索についての処理のうち少なくとも 1 つを訓練済みモデルを用いて実行してもよい。
【0121】
処理回路は、 S416 で探索した結果の構造データを取得し、遷移状態から双方向に構造最適化することで、反応経路を決定する (S418) 。
【0122】
以上のように、本実施形態に係る情報処理装置によれば、 AFIR 法についても高速に実行することが可能である。例えば、 S404 、 S408 等の演算を、訓練済みモデルを用いて高速に実行することで、情報処理装置は、多くの構造に対してエネルギー及び力を計算する必要が AFIR 法を大幅に高速化することができる。
【0123】
また、例えば、 S402 の処理を実行することで、パラメータを容易に決定することもできる。さらに、例えば、 S412 の判定を実行することで、反応経路を確実に正しく探索することができる。
【0124】
これらの実施形態において使用される訓練済みモデルを得るための学習において、教師データとして与える 3 次元構造は、必ずしも反応遷移状態を含んでいる必要は無い。たとえば分子動力学計算において得られる、エネルギー極小構造から逸脱した 3 次元構造を教師データとして与えることにより、反応遷移状態のエネルギー、エネルギーの一回微分、エネルギーの二階微分、エネルギーの非調和性を推定可能な訓練済みモデルを得ることが可能である。この場合、教師データの作成において反応遷移状態を計算する必要が無いため、教師データを高速に大量に用意でき、その結果訓練済みモデルの精度を高めることが可能である。なお、前述の実施形態における訓練済モデルは、例えば、説明したように訓練した上で、さらに、一般的な手法により蒸留されたモデルを含む概念であってもよい。
【0125】
前述した実施形態における各装置(情報処理装置)の一部又は全部は、ハードウェアで構成されていてもよいし、 CPU (Central Processing Unit) 又は GPU (Graphics Processing Unit) 等が実行するソフトウェア (プログラム) の情報処理で構成されてもよい。ソフトウェアの情報処理で構成される場合には、前述した実施形態における各装置の少なくとも一部の機能を実現するソフトウェアを、 CD-ROM (Compact Disc-Read Only Memory) 、 USB (Universal Serial Bus) メモリ等の非一時的な記憶媒体 (非一時的なコンピュータ可読媒体) に収納し、コンピュータに読み込ませることにより、ソフトウェアの情報処理を実行してもよい。また、通信ネットワークを介して当該ソフトウェアがダウンロードされてもよい。さらに、ソフトウェアの処理の全部又は一部が ASIC (Application Specific Integrated Circuit) 又は FPGA (Field Programmable Gate Array) 等の回路に実装されることにより、当該ソフトウェアによる情報処理がハードウェアにより実行されてもよい。
【0126】
ソフトウェアを収納する記憶媒体は、光ディスク等の着脱可能なものでもよいし、ハードディスク又はメモリ等の固定型の記憶媒体であってもよい。また、記憶媒体は、コンピュータ内部に備えられてもよいし (主記憶装置または補助記憶装置等) 、コンピュータ外部に備えられてもよい。
【0127】
図6は、前述した実施形態における各装置 (情報処理装置) のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。各装置は、一例として、プロセッサ71と、主記憶装置72 (メモリ) と、補助記憶装置73 (メモリ) と、ネットワークインタフェース74と、デバイスインタフェース75と、を備え、これらがバス76を介して接続されたコンピュータ7として実現されてもよい。
【0128】
図6のコンピュータ7は、各構成要素を一つ備えているが、同じ構成要素を複数備えていてもよい。また、
図6では、1台のコンピュータ7が示されているが、ソフトウェアが複数台のコンピュータにインストールされて、当該複数台のコンピュータそれぞれがソフトウェアの同一の又は異なる一部の処理を実行してもよい。この場合、コンピュータそれぞれがネットワークインタフェース74等を介して通信して処理を実行する分散コンピューティングの形態であってもよい。つまり、前述した実施形態における各装置 (情報処理装置) は、1又は複数の記憶装置に記憶された命令を1台又は複数台のコンピュータが実行することで機能を実現するシステムとして構成されてもよい。また、端末から送信された情報をクラウド上に設けられた1台又は複数台のコンピュータで処理し、この処理結果を端末に送信するような構成であってもよい。
【0129】
前述した実施形態における各装置 (情報処理装置) の各種演算は、1又は複数のプロセッサを用いて、又は、ネットワークを介した複数台のコンピュータを用いて、並列処理で実行されてもよい。また、各種演算が、プロセッサ内に複数ある演算コアに振り分けられて、並列処理で実行されてもよい。また、本開示の処理、手段等の一部又は全部は、ネットワークを介してコンピュータ7と通信可能なクラウド上に設けられたプロセッサ及び記憶装置の少なくとも一方により実現されてもよい。このように、前述した実施形態における各装置は、1台又は複数台のコンピュータによる並列コンピューティングの形態であってもよい。
【0130】
プロセッサ71は、少なくともコンピュータの制御又は演算のいずれかを行う電子回路 (処理回路、 Processing circuit 、 Processing circuitry 、 CPU 、 GPU 、 FPGA 、 ASIC 等) であってもよい。また、プロセッサ71は、汎用プロセッサ、特定の演算を実行するために設計された専用の処理回路又は汎用プロセッサと専用の処理回路との両方を含む半導体装置等のいずれであってもよい。また、プロセッサ71は、光回路を含むものであってもよいし、量子コンピューティングに基づく演算機能を含むものであってもよい。
【0131】
プロセッサ71は、コンピュータ7の内部構成の各装置等から入力されたデータやソフトウェアに基づいて演算処理を行ってもよく、演算結果や制御信号を各装置等に出力してもよい。プロセッサ71は、コンピュータ7の OS (Operating System) や、アプリケーション等を実行することにより、コンピュータ7を構成する各構成要素を制御してもよい。
【0132】
前述した実施形態における各装置 (情報処理装置) は、1又は複数のプロセッサ71により実現されてもよい。ここで、プロセッサ71は、1チップ上に配置された1又は複数の電子回路を指してもよいし、2つ以上のチップあるいは2つ以上のデバイス上に配置された1又は複数の電子回路を指してもよい。複数の電子回路を用いる場合、各電子回路は有線又は無線により通信してもよい。
【0133】
主記憶装置72は、プロセッサ71が実行する命令及び各種データ等を記憶してもよく、主記憶装置72に記憶された情報がプロセッサ71により読み出されてもよい。補助記憶装置73は、主記憶装置72以外の記憶装置である。なお、これらの記憶装置は、電子情報を格納可能な任意の電子部品を意味するものとし、半導体のメモリでもよい。半導体のメモリは、揮発性メモリ又は不揮発性メモリのいずれでもよい。前述した実施形態における各装置 (情報処理装置) において各種データ等を保存するための記憶装置は、主記憶装置72又は補助記憶装置73により実現されてもよく、プロセッサ71に内蔵される内蔵メモリにより実現されてもよい。例えば、前述した実施形態における記憶回路は、主記憶装置72又は補助記憶装置73により実現されてもよい。
【0134】
前述した実施形態における各装置 (情報処理装置) が、少なくとも1つの記憶装置 (メモリ) と、この少なくとも1つの記憶装置に接続 (結合) される少なくとも1つのプロセッサで構成される場合、記憶装置1つに対して、少なくとも1つのプロセッサが接続されてもよい。また、プロセッサ1つに対して、少なくとも1つの記憶装置が接続されてもよい。また、複数のプロセッサのうち少なくとも1つのプロセッサが、複数の記憶装置のうち少なくとも1つの記憶装置に接続される構成を含んでもよい。また、複数台のコンピュータに含まれる記憶装置とプロセッサによって、この構成が実現されてもよい。さらに、記憶装置がプロセッサと一体になっている構成 (例えば、 L1 キャッシュ、 L2 キャッシュを含むキャッシュメモリ) を含んでもよい。
【0135】
ネットワークインタフェース74は、無線又は有線により、通信ネットワーク8に接続するためのインタフェースである。ネットワークインタフェース74は、既存の通信規格に適合したもの等、適切なインタフェースを用いればよい。ネットワークインタフェース74により、通信ネットワーク8を介して接続された外部装置9Aと情報のやり取りが行われてもよい。なお、通信ネットワーク8は、 WAN (Wide Area Network) 、 LAN (Local Area Network) 、 PAN (Personal Area Network) 等のいずれか、又は、それらの組み合わせであってよく、コンピュータ7と外部装置9Aとの間で情報のやりとりが行われるものであればよい。 WAN の一例としてインターネット等があり、 LAN の一例として IEEE 802.11 やイーサネット (登録商標) 等があり、 PAN の一例として Bluetooth (登録商標) や NFC (Near Field Communication) 等がある。
【0136】
デバイスインタフェース75は、外部装置9Bと直接接続する USB 等のインタフェースである。
【0137】
外部装置9Aは、コンピュータ7とネットワークを介して接続されている装置である。外部装置9Bは、コンピュータ7と直接接続されている装置である。
【0138】
外部装置9A又は外部装置9Bは、一例として、入力装置であってもよい。入力装置は、例えば、カメラ、マイクロフォン、モーションキャプチャ、各種センサ等、キーボード、マウス又はタッチパネル等のデバイスであり、取得した情報をコンピュータ7に与える。また、パーソナルコンピュータ、タブレット端末又はスマートフォン等の入力部とメモリとプロセッサを備えるデバイスであってもよい。
【0139】
また、外部装置9A又は外部装置9Bは、一例として、出力装置でもよい。出力装置は、例えば、 LCD (Liquid Crystal Display) 、有機 EL (Electro Luminescence) パネル等の表示装置であってもよいし、音声等を出力するスピーカ等であってもよい。また、パーソナルコンピュータ、タブレット端末又はスマートフォン等の出力部とメモリとプロセッサを備えるデバイスであってもよい。
【0140】
また、外部装置9A又は外部装置9Bは、記憶装置 (メモリ) であってもよい。例えば、外部装置9Aは、ネットワークストレージ等であってもよく、外部装置9Bは、 HDD 等のストレージであってもよい。
【0141】
また、外部装置9A又は外部装置9Bは、前述した実施形態における各装置 (情報処理装置) の構成要素の一部の機能を有する装置でもよい。つまり、コンピュータ7は、外部装置9A又は外部装置9Bに処理結果の一部又は全部を送信してもよいし、外部装置9A又は外部装置9Bから処理結果の一部又は全部を受信してもよい。
【0142】
本明細書 (請求項を含む) において、「a 、b 及び c の少なくとも1つ (一方) 」又は「a 、b 又は c の少なくとも1つ (一方) 」の表現 (同様な表現を含む) が用いられる場合は、a、b、c、a - b、a - c、b - c 又は a - b - c のいずれかを含む。また、a - a、a - b - b、a - a - b - b - c - c 等のように、いずれかの要素について複数のインスタンスを含んでもよい。さらに、a - b - c - d のように d を有する等、列挙された要素 (a 、b 及び c) 以外の他の要素を加えることも含む。
【0143】
本明細書 (請求項を含む) において、「データを入力として/を用いて/データに基づいて/に従って/に応じて」等の表現(同様な表現を含む)が用いられる場合は、特に断りがない場合、データそのものを用いる場合や、データに何らかの処理を行ったもの (例えば、ノイズ加算したもの、正規化したもの、データから抽出した特徴量、データの中間表現等) を用いる場合を含む。また、「データを入力として/を用いて/データに基づいて/に従って/に応じて」何らかの結果が得られる旨が記載されている場合 (同様な表現を含む) 、特に断りが無い場合、当該データのみに基づいて当該結果が得られる場合や、当該データ以外の他のデータ、要因、条件及び/又は状態等にも影響を受けて当該結果が得られる場合を含む。また、「データを出力する」旨が記載されている場合 (同様な表現を含む) 、特に断りがない場合、データそのものを出力として用いる場合や、データに何らかの処理を行ったもの (例えば、ノイズ加算したもの、正規化したもの、データから抽出した特徴量、データの中間表現等) を出力として用いる場合を含む。
【0144】
本明細書 (請求項を含む) において、「接続される (connected) 」及び「結合される (coupled) 」との用語が用いられる場合は、直接的な接続/結合、間接的な接続/結合、電気的 (electrically) な接続/結合、通信的 (communicatively) な接続/結合、機能的 (operatively) な接続/結合、物理的 (physically) な接続/結合等のいずれをも含む非限定的な用語として意図される。当該用語は、当該用語が用いられた文脈に応じて適宜解釈されるべきであるが、意図的に或いは当然に排除されるのではない接続/結合形態は、当該用語に含まれるものして非限定的に解釈されるべきである。
【0145】
本明細書 (請求項を含む) において、「AがBするよう構成される (A configured to B) 」との表現が用いられる場合は、要素Aの物理的構造が、動作Bを実行可能な構成を有するとともに、要素Aの恒常的 (permanent) 又は一時的 (temporary) な設定 (setting / configuration) が、動作Bを実際に実行するように設定 (configured / set) されていることを含んでよい。例えば、要素Aが汎用プロセッサである場合、当該プロセッサが動作Bを実行可能なハードウェア構成を有するとともに、恒常的 (permanent) 又は一時的 (temporary) なプログラム (命令) の設定により、動作Bを実際に実行するように設定 (configured) されていればよい。また、要素Aが専用プロセッサ又は専用演算回路等である場合、制御用命令及びデータが実際に付属しているか否かとは無関係に、当該プロセッサの回路的構造等が動作Bを実際に実行するように構築 (implemented) されていればよい。
【0146】
本明細書 (請求項を含む) において、含有又は所有を意味する用語 (例えば、「含む (comprising / including) 」及び「有する (having) 」等) が用いられる場合は、当該用語の目的語により示される対象物以外の物を含有又は所有する場合を含む、 open-ended な用語として意図される。これらの含有又は所有を意味する用語の目的語が数量を指定しない又は単数を示唆する表現 (a 又は an を冠詞とする表現) である場合は、当該表現は特定の数に限定されないものとして解釈されるべきである。
【0147】
本明細書 (請求項を含む) において、ある箇所において「1つ又は複数 (one or more) 」又は「少なくとも1つ (at least one) 」等の表現が用いられ、他の箇所において数量を指定しない又は単数を示唆する表現 (a 又は an を冠詞とする表現) が用いられているとしても、後者の表現が「1つ」を意味することを意図しない。一般に、数量を指定しない又は単数を示唆する表現 (a 又は an を冠詞とする表現) は、必ずしも特定の数に限定されないものとして解釈されるべきである。
【0148】
本明細書において、ある実施形態の有する特定の構成について特定の効果 (advantage / result) が得られる旨が記載されている場合、別段の理由がない限り、当該構成を有する他の1つ又は複数の実施形態についても当該効果が得られると理解されるべきである。但し、当該効果の有無は、一般に種々の要因、条件及び/又は状態等に依存し、当該構成により必ず当該効果が得られるものではないと理解されるべきである。当該効果は、種々の要因、条件及び/又は状態等が満たされたときに実施形態に記載の当該構成により得られるものに過ぎず、当該構成又は類似の構成を規定したクレームに係る発明において、当該効果が必ずしも得られるものではない。
【0149】
本明細書 (請求項を含む) において、「最大化する (maximize) /最大化 (maximization) 」等の用語が用いられる場合は、グローバルな最大値を求めること、グローバルな最大値の近似値を求めること、ローカルな最大値を求めること及びローカルな最大値の近似値を求めることを含み、当該用語が用いられた文脈に応じて適宜解釈されるべきである。また、これら最大値の近似値を確率的又はヒューリスティックに求めることを含む。同様に、「最小化する (minimize) /最小化 (minimization) 」等の用語が用いられる場合は、グローバルな最小値を求めること、グローバルな最小値の近似値を求めること、ローカルな最小値を求めること及びローカルな最小値の近似値を求めることを含み、当該用語が用いられた文脈に応じて適宜解釈されるべきである。また、これら最小値の近似値を確率的又はヒューリスティックに求めることを含む。同様に、「最適化する (optimize) /最適化 (optimization) 」等の用語が用いられる場合は、グローバルな最適値を求めること、グローバルな最適値の近似値を求めること、ローカルな最適値を求めること、及びローカルな最適値の近似値を求めることを含み、当該用語が用いられた文脈に応じて適宜解釈されるべきである。また、これら最適値の近似値を確率的又はヒューリスティックに求めることを含む。
【0150】
本明細書 (請求項を含む) において、複数のハードウェアが所定の処理を行う場合、各ハードウェアが協働して所定の処理を行ってもよいし、一部のハードウェアが所定の処理の全てを行ってもよい。また、一部のハードウェアが所定の処理の一部を行い、別のハードウェアが所定の処理の残りを行ってもよい。本明細書 (請求項を含む) において、「1又は複数のハードウェアが第1処理を行い、前記1又は複数のハードウェアが第2処理を行う」等の表現 (同様な表現を含む) が用いられている場合、第1処理を行うハードウェアと第2処理を行うハードウェアは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。つまり、第1処理を行うハードウェア及び第2処理を行うハードウェアが、前記1又は複数のハードウェアに含まれていればよい。なお、ハードウェアは、電子回路、又は、電子回路を含む装置等を含んでもよい。
【0151】
本明細書 (請求項を含む) において、複数の記憶装置 (メモリ) がデータの記憶を行う場合、複数の記憶装置のうち個々の記憶装置は、データの一部のみを記憶してもよいし、データの全体を記憶してもよい。また、複数の記憶装置のうち一部の記憶装置がデータを記憶する構成を含んでもよい。
【0152】
以上、本開示の実施形態について詳述したが、本開示は上記した個々の実施形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本開示の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲において、種々の追加、変更、置き換え及び部分的削除等が可能である。例えば、前述した実施形態において、数値又は数式を説明に用いている場合、これらは例示的な目的で示されたものであり、本開示の範囲を限定するものではない。また、実施形態で示した各動作の順序も、例示的なものであり、本開示の範囲を限定するものではない。