(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151369
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】熱転写シート、熱転写シートと被転写体との組合せ、及び転写物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B41M 5/44 20060101AFI20231005BHJP
B41M 5/385 20060101ALI20231005BHJP
B41M 5/42 20060101ALI20231005BHJP
B41M 5/52 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B41M5/44 310
B41M5/385 300
B41M5/42 300
B41M5/52 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060948
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】池田 愛
(72)【発明者】
【氏名】服部 良司
【テーマコード(参考)】
2H111
【Fターム(参考)】
2H111AA26
2H111BA03
2H111BA04
2H111BA07
2H111BA32
2H111BA53
2H111BA63
2H111CA03
2H111CA23
(57)【要約】 (修正有)
【課題】金属層を備える転写層を備え、被転写体に対する該転写層の転写性が高く、かつ導電性に優れる金属層を転写形成できる熱転写シートを提供する。
【解決手段】基材と、離型層と、転写層とを厚さ方向にこの順に備える熱転写シートであって、転写層が、金属層と接着層とを備え、金属層が、転写層における基材側の表層を構成しており、離型層が、ウレタン変性ポリエステルを含有し、離型層からの転写層の平均剥離力が、25.0gf/cm以上50.0gf/cm未満である、熱転写シート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、離型層と、転写層とを厚さ方向にこの順に備える熱転写シートであって、
前記転写層が、金属層と接着層とを備え、
前記金属層が、前記転写層における基材側の表層を構成しており、
前記離型層が、ウレタン変性ポリエステルを含有し、
前記離型層からの前記転写層の平均剥離力が、25.0gf/cm以上50.0gf/cm未満である、
熱転写シート。
【請求項2】
前記離型層の厚さが、0.25μm超である、請求項1に記載の熱転写シート。
【請求項3】
前記離型層が、シリコーン樹脂をさらに含有し、
前記離型層における前記ウレタン変性ポリエステルの含有割合が、1質量%以上30質量%未満である、
請求項1又は2に記載の熱転写シート。
【請求項4】
前記ウレタン変性ポリエステルのガラス転移温度が、30℃以上90℃以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱転写シート。
【請求項5】
前記金属層が金属蒸着層である、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱転写シート。
【請求項6】
前記金属蒸着層が銅蒸着層である、請求項5に記載の熱転写シート。
【請求項7】
導電パターン層を形成するために用いられる、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱転写シート。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の熱転写シートと、被転写体との組合せ。
【請求項9】
前記被転写体が、JIS P8155に準拠して測定される王研式平滑度が4000秒以上の紙基材である、請求項8に記載の組合せ。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか一項に記載の熱転写シート及び被転写体を準備する工程と、
前記被転写体上に、前記熱転写シートが備える前記転写層を熱転写する工程と
を含む、転写物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱転写シート、熱転写シートと被転写体との組合せ、及び転写物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属層を含む転写層を備える熱転写シートを用いて、被転写体上にアンテナ線等の金属層を転写して形成し、転写物を製造する方法が知られている。特許文献1には、プラスチックフィルムの片面に、離型層、金属薄膜層及び接着層が順次形成された、アンテナ回路形成用転写フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱転写シートから金属層を含む転写層を被転写体上に転写する際、転写層が充分に転写されずにカスレが生じる、あるいは転写されるべき箇所だけでなく転写を予定していない箇所も転写される(余剥離が発生する)ことがある。このため、金属層を含む転写層には、転写性に優れることが求められる。また、被転写体上に転写形成された金属層は、導電性に優れることが望ましい。
【0005】
本開示の解決しようとする課題は、金属層を備える転写層を備え、被転写体に対する該転写層の転写性が高く、かつ導電性に優れる金属層を転写形成できる熱転写シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の熱転写シートは、基材と、離型層と、転写層とを厚さ方向にこの順に備え、転写層が、金属層と接着層とを備え、金属層が、転写層における基材側の表層を構成しており、離型層が、ウレタン変性ポリエステルを含有し、離型層からの転写層の平均剥離力が、25.0gf/cm以上50.0gf/cm未満である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、金属層を備える転写層を備え、被転写体に対する該転写層の転写性が高く、かつ導電性に優れる金属層を転写形成できる熱転写シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の熱転写シートの一実施形態を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、本開示の熱転写シートの一実施形態を示す概略断面図である。
【
図3】
図3は、実施例において形成した円弧パターンの上視図である。
【
図4】
図4は、実施例において形成した直線状画像の上視図である。
【
図5】
図5は、実施例において形成した長方形状画像の上視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について、詳細に説明する。本開示は多くの異なる形態で実施でき、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されない。図面は、説明をより明確にするため、実施形態に比べ、各層の幅、厚さ及び形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定しない。本明細書と各図において、既出の図に関してすでに説明したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0010】
以下の説明において記載されている各成分(例えば、樹脂材料、ウレタン変性ポリエステル、シリコーン樹脂、硬化触媒、金属種、熱可塑性樹脂、ワックス、粒子及び添加剤)は、特に言及しない限り、それぞれ1種用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0011】
[熱転写シート]
本開示の熱転写シート1は、
図1に示すように、基材10と、離型層20と、転写層30とを厚さ方向にこの順に備える。転写層30は、離型層20上に設けられており、熱転写によって離型層20から剥離可能である。転写層30は、金属層32と接着層34とを熱転写シート1の厚さ方向にこの順に備える。金属層32は、転写層30における基材10側の表層を構成している。一実施形態において、
図2に示すように、熱転写シート1は、基材10と離型層20との間に、アンカーコート層12を備える。一実施形態において、熱転写シート1は、
図1及び
図2に示すように、基材10のアンカーコート層20が設けられている面とは反対側の面上に、背面層40を備える。
【0012】
以下、本開示の熱転写シートが備える各層について説明する。
【0013】
<基材>
基材は、熱転写時に加えられる熱エネルギーへの耐熱性を有し、基材上に設けられる転写層等を支持できる機械的強度を有し、耐溶剤性を有するものであれば、特に制限なく使用できる。
【0014】
基材としては、例えば、樹脂材料から構成されるフィルム(以下、単に「樹脂フィルム」ともいう。)を使用できる。樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、1,4-ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート及びテレフタル酸-シクロヘキサンジメタノール-エチレングリコール共重合体等のポリエステル;ナイロン6及びナイロン6,6等のポリアミド;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体及びポリビニルピロリドン(PVP)等のビニル樹脂;ポリビニルアセトアセタール及びポリビニルブチラール等のビニルアセタール樹脂;ポリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル樹脂;ポリイミド及びポリエーテルイミド等のイミド樹脂;セロファン、セルロースアセテート、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)及びセルロースアセテートブチレート(CAB)等のセルロース樹脂;ポリスチレン(PS)等のスチレン樹脂;ポリカーボネート;並びにアイオノマーが挙げられる。
【0015】
上記樹脂材料の中でも、耐熱性及び機械的強度の観点から、ポリエステルが好ましく、PET又はPENがより好ましく、PETがさらに好ましい。
【0016】
本開示において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び「メタクリル」の両方を包含し、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する。
【0017】
基材として、上記樹脂フィルムの積層体を使用することもできる。樹脂フィルムの積層体は、例えば、ドライラミネーション法、ウェットラミネーション法又はエクストリュージョン法を利用することにより作製できる。
【0018】
上記樹脂フィルムは、延伸フィルムでもよく、未延伸フィルムでもよく、強度という観点から、一軸方向又は二軸方向に延伸された延伸フィルムが好ましい。
【0019】
基材の厚さは、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは25μm以下である。これにより、例えば、基材の機械的強度及び熱転写時の熱エネルギーの伝達をより向上できる。
【0020】
<離型層>
本開示の熱転写シートは、基材と転写層との間に、離型層を備える。離型層は、基材上に設けられている転写層の剥離性を向上させる層である。離型層は、転写層を構成しない層であり、転写層を被転写体上に転写したときに、基材側に残る層である。
離型層は、一実施形態において、転写層と接している。
【0021】
離型層は、ウレタン変性ポリエステルを含有する。これにより、熱転写シートから被転写体上に転写形成された金属層の導電性を向上できる。これは、離型層がウレタン変性ポリエステルを含有することにより基材等と離型層との密着性が高まり、熱転写シートから転写層を被転写体上に転写した際に、金属層表面に離型層が付着することを抑制できるためであると推測される。
【0022】
ウレタン変性ポリエステルとは、ウレタン結合を有するポリエステルである。
ウレタン変性ポリエステルは、例えば、2以上のポリエステルが多価イソシアネートに由来する構成単位により結合されている樹脂である。このような樹脂は、例えば、ポリエステルの末端水酸基と多価イソシアネートのイソシアネート基とを反応させることにより得ることができる。
【0023】
ウレタン変性ポリエステルのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは30℃以上、より好ましくは35℃以上、さらに好ましくは40℃以上であり、好ましくは90℃以下、より好ましくは85℃以下であり、70℃以下又は60℃以下でもよい。Tgは、JIS K7121に準拠した示差走査熱量測定(DSC)により得られる中間点ガラス転移温度である。Tgが90℃以下であると、例えば、転写時の転写層の余剥離をより抑制でき、細線形成性により優れる導電パターン層を形成できる。Tgが30℃以上であると、例えば、後述する平均剥離力が高くなり過ぎず、転写層の転写性をより向上できる。
【0024】
ウレタン変性ポリエステルの酸価は、例えば、100mgKOH/g以下でもよく、50mgKOH/g以下でもよく、10mgKOH/g以下でもよく、1mgKOH/g以下でもよい。酸価は、試料1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム(mg)数で表される。酸価は、JIS K0070-1992に準拠して求める。
【0025】
ウレタン変性ポリエステルの水酸基価は、例えば、50mgKOH/g以下でもよく、30mgKOH/g以下でもよく、10mgKOH/g以下でもよく、5mgKOH/g以下でもよく、0.1mgKOH/g以上でもよく、0.5mgKOH/g以上でもよく、1mgKOH/g以上でもよい。水酸基価は、試料1gをアセチル化させたとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数で表される。水酸基価は、JIS K0070-1992に準拠して求める。
【0026】
ウレタン変性ポリエステルの数平均分子量(Mn)は、例えば離型層の強度及び離型層用塗工液の塗工性の観点から、好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上、さらに好ましくは20,000以上、特に好ましくは25,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは80,000以下、さらに好ましくは50,000以下である。Mnは、JIS K7252-1に準拠し、ポリスチレンを標準物質としてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される。
【0027】
ウレタン変性ポリエステルは、例えば、ポリエステルポリオールと多価イソシアネートとを反応させることにより得られる。ウレタン変性ポリエステルは、例えば、ポリエステルポリオールと多価イソシアネートとをイソシアネート基に対して水酸基過剰の比率で反応させることにより得られ、1分子中に2個以上の水酸基を有することが好ましい。ポリエステルポリオールと多価イソシアネートとの反応には、通常のウレタン化反応の反応条件を広く適用できる。
【0028】
ポリエステルポリオールは、多価カルボン酸、そのエステル及びその酸無水物等の酸成分と多価アルコールとをエステル化反応させることにより得られる、1分子中に2個以上の水酸基を有する樹脂である。ポリエステルポリオールは、カプロラクトンの開環反応によって得られるポリエステルでもよい。
【0029】
多価カルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸及びドデカンジカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸及びピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;並びにブタントリカルボン酸、トリカルバリル酸及びクエン酸等の脂肪族多価カルボン酸が挙げられる。
【0030】
多価アルコールとしては、例えば、1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物が挙げられ、脂肪族グリコール等の2価のアルコール及び3価以上の多価アルコールが挙げられる。2価のアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール及び2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールが挙げられる。3価以上の多価アルコールとしては、例えば、脂肪族グリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン及びペンタエリスリトールが挙げられる。
【0031】
多価イソシアネートとしては、例えば、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物が挙げられ、具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート及びトリメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)及びシクロヘキサンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;並びにキシレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート及びビフェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
【0032】
ウレタン変性ポリエステルは、多価カルボン酸、そのエステル及びその酸無水物等の酸成分と、多価アルコールと、多価イソシアネートと、を同時に反応させることにより得ることもできる。
【0033】
離型層におけるウレタン変性ポリエステルの含有割合は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、特に好ましくは7質量%以上であり、好ましくは30質量%未満、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、特に好ましくは15質量%以下である。含有割合が下限値以上であると、例えば、熱転写シートから被転写体上に転写形成された金属層の導電性をより向上でき、含有割合が7質量%以上であると、例えば、転写層の転写性がより優れる。含有割合が上限値未満又は以下であると、例えば、後述する平均剥離力が高くなり過ぎず、転写層の転写性がより優れる。
【0034】
離型層は、一実施形態において、ウレタン変性ポリエステル以外の樹脂材料と、添加剤としてのウレタン変性ポリエステルとを含有する。
【0035】
樹脂材料としては、基材に対する密着性が高く、かつ転写層を容易に剥離できる適度な剥離性を有する樹脂材料であれば特に制限はない。このような樹脂材料としては、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリビニルアルコール、(メタ)アクリル樹脂、熱架橋性エポキシ-アミノ樹脂、熱架橋性アルキッド-アミノ樹脂、メラミン樹脂、セルロース樹脂、尿素樹脂、ポリオレフィン及びワックスが挙げられる。これらの中でも、転写層の転写性を向上でき、例えば、高い導電性を有する金属層を形成できることから、シリコーン樹脂が好ましい。
【0036】
本開示において、シリコーン樹脂は、分子構造内にシロキサン結合を有する樹脂であり、未変性ポリシロキサン、変性ポリシロキサン及びシリコーン変性樹脂を包含する。本開示において、シリコーン樹脂には、硬化触媒等の存在下において原料シリコーンが硬化した樹脂も含まれる。
【0037】
ポリシロキサンとは、主鎖がシロキサン結合により構成される樹脂を意味する。
シリコーン変性樹脂とは、例えば、ポリシロキサン基含有モノマーと、その他のモノマーとの重合体、即ち、シロキサン結合により構成される側鎖を有する樹脂を意味する。例えば、シリコーン変性(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。
【0038】
一実施形態において、シリコーン樹脂は、基本構成単位として、1官能型である(R3SiO1/2)n、2官能型である(R2SiO)n、3官能型である(RSiO3/2)n又は4官能型である(SiO2)nを有する。
【0039】
好ましくは、シリコーン樹脂は、3官能型である(RSiO3/2)nを基本構成単位として有するシルセスキオキサン及びその硬化物から選択される少なくとも1種である。これにより、例えば、転写層の箔切れ性等の転写性をさらに向上できる。
【0040】
シルセスキオキサンの構造としては、例えば、ランダム構造、完全カゴ型構造、不完全カゴ型構造及びハシゴ型構造が挙げられる。これらの中でも、箔切れ性という観点から、ランダム構造を有するシルセスキオキサンが好ましい。
【0041】
上記基本構成単位中、Rは、有機基であり、該有機基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、エポキシ基、水酸基、アミノ基及びメルカプト基が挙げられる。これらの中でも、エポキシ基が好ましい。これにより、例えば、転写層の箔切れ性等の転写性をさらに向上できる。
上記基本構成単位中、nは、2以上の整数である。
【0042】
一実施形態において、シリコーン樹脂は、シロキサン結合を架橋結合として有する、シリコーン変性樹脂である。好ましい樹脂の一例として、アルコキシシリル基含有樹脂を硬化触媒等の存在下において硬化させた樹脂(硬化物)が挙げられる。一実施形態において、上記硬化物は、アルコキシシリル基含有樹脂が有する2以上のアルコキシシリル基が加水分解及びシラノール反応し、「Si-O-Si」の架橋構造を形成することにより得られる樹脂である。一実施形態において、上記硬化物は、アルコキシシリル基含有樹脂と、その他の化合物とが、「Si-O-Si」の架橋構造を形成することにより得られる樹脂である。
【0043】
アルコキシシリル基含有樹脂としては、例えば、アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂、アルコキシシリル基含有ポリエステル、アルコキシシリル基含有エポキシ樹脂、アルコキシシリル基含有アルキッド樹脂、アルコキシシリル基含有フッ素樹脂、アルコキシシリル基含有ウレタン樹脂、アルコキシシリル基含有フェノール樹脂、及びアルコキシシリル基含有メラミン樹脂が挙げられる。これらの中でも、転写層の箔切れ性等の転写性という観点から、アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
【0044】
アルコキシシリル基としては、例えば、トリアルコキシシリル基、ジメトキシシリル基及びモノアルコキシシリル基が挙げられる。
【0045】
離型層におけるシリコーン樹脂の含有割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上であり、好ましくは99質量%以下、より好ましくは97質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下、特に好ましくは93質量%以下である。これにより、例えば、転写層の箔切れ性等の転写性をさらに向上できる。
【0046】
一実施形態において、離型層は、硬化触媒を含有する。これにより、例えば、転写層の箔切れ等の転写性をさらに向上できる。硬化触媒としては、例えば、アルミニウム系触媒、錫系触媒、チタン系触媒及びジルコニア系触媒が挙げられる。
【0047】
離型層における硬化触媒の含有量は、シリコーン樹脂の含有量100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは3質量部以上であり、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。これにより、例えば、転写層の箔切れ性等の転写性をさらに向上できる。
【0048】
離型層は、シリコーン樹脂以外の樹脂材料(その他の樹脂材料)をさらに含有してもよい。その他の樹脂材料としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ビニル樹脂、ビニルアセタール樹脂、(メタ)アクリル樹脂、イミド樹脂、セルロース樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート及びアイオノマーが挙げられる。
【0049】
離型層は、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、充填剤、可塑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、有機粒子、無機粒子、離型剤及び分散剤が挙げられる。
【0050】
離型層の厚さは、好ましくは0.25μm超、より好ましくは0.3μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上であり、好ましくは3.0μm以下、より好ましくは2.0μm以下である。厚さが0.25μm超であると、例えば、後述する平均剥離力が高くなり過ぎず、転写層の転写性がより優れる。
【0051】
離型層は、例えば、上記成分を水又は適当な有機溶媒へ分散又は溶解させて塗工液を調製し、該塗工液を、基材又はアンカーコート層上に塗布して塗膜を形成し、これを乾燥することにより形成できる。塗工手段としては、例えば、ロールコート法、リバースロールコート法、グラビアコート法、リバースグラビアコート法、バーコート法又はロッドコート法等の公知の手段が挙げられる。乾燥後、塗膜を加熱することにより、例えばシリコーン樹脂の硬化を効果的に進めることができ、転写層の転写性をさらに向上できる。
【0052】
<転写層>
転写層は、離型層上に剥離可能に設けられている。
転写層は、金属層と接着層とを、熱転写シートの厚さ方向にこの順に備える。
【0053】
本開示の熱転写シートにおいて、離型層からの転写層の平均剥離力は、25.0gf/cm以上50.0gf/cm未満である。離型層がウレタン変性ポリエステルを含有し、かつ平均剥離力が上記範囲にあることにより、例えば、転写層の箔切れ性等の転写性を向上できるとともに、転写形成された金属層の導電性を向上できる。
【0054】
本開示において、転写層の箔切れ性とは、転写層を被転写体上に転写する際の余剥離の抑制度合いを意味する。箔切れ性が良好である場合は、余剥離の発生を抑制できる。転写層の箔切れ性の向上により、転写形成された金属層における導電性の低下を抑制できる。
【0055】
平均剥離力が25.0gf/cm未満であると、転写層の意図せぬ剥離(箔落ち又は余剥離)が生じやすい。平均剥離力が50.0gf/cm以上であると、転写時に離型層も金属層とともに転写されるなどの転写不良が生じやすく、また転写形成された金属層の導電性が低くなりやすい。
【0056】
平均剥離力は、好ましくは45.0gf/cm以下、より好ましくは40.0gf/cm以下、さらに好ましくは38.0gf/cm以下である。平均剥離力が45.0gf/cm以下であると、転写層の転写性がより優れる傾向にある。平均剥離力は、好ましくは26.0gf/cm以上、より好ましくは28.0gf/cm以上である。
【0057】
平均剥離力は、例えば、離型層におけるウレタン変性ポリエステルの含有割合、ウレタン変性ポリエステルの物性(例えばガラス転移温度)などにより適宜調整できる。これらの好適範囲については、上述したとおりである。
【0058】
平均剥離力は、以下の様にして測定される。熱転写シートと紙ラベルとを組み合わせ、熱時剥離タイプのテストプリンタを用いて、熱転写シートの転写層を紙ラベル上に転写する。ここで、剥離角度66.7°、74.5°、81.8°又は86.9°で、紙ラベル上に転写された転写層を基材上の離型層から剥離するタイミングにおける熱転写シートの応力を測定する。該応力を熱転写シートの加熱幅(エネルギーの印加幅)で除することにより、剥離力の値を算出する。4つの剥離角度それぞれで算出した剥離力の算術平均値を、平均剥離力とする。平均剥離力の測定に使用される上記紙ラベルとしては、コート紙(例えば、AW3209(AveryDennison社製))を使用できる。平均剥離力の測定条件の詳細は、実施例欄に記載する。
【0059】
(金属層)
本開示の熱転写シートにおいて、金属層は、転写層における基材側の表層を構成している。一実施形態の本開示の熱転写シートにおいて、金属層は、離型層と接するように設けられている。金属層は、熱転写シートから転写層を被転写体上に転写して得られる転写物の最表面を構成する。
【0060】
熱転写シートを用いて被転写体上に転写形成された金属層には、導電性を良好に示すことが求められる。しかしながら、従来の熱転写シートは、被転写体に対して、金属層を含む転写層の転写性及び転写形成された金属層の導電性が充分高いとは言えない場合がある。また、金属層を含む転写層が、基材に最も近い層として剥離層を備える場合、転写形成された転写層の表面には、金属層上に該剥離層が存在することとなるため、所望の導電性が得られないことがある。転写後に剥離層を除去する場合は、工程が増えてコストが増大する。
【0061】
本開示の熱転写シートは、金属層及び接着層を含む転写層と、特定の成分を含有する離型層とを備え、金属層が、転写層における基材側の表層を構成している。このような熱転写シートは、被転写体に対する転写層の転写性が高く、良好な導電性を示す金属層を形成できる。
【0062】
例えば、上記熱転写シートを用いて被転写体上に転写層を転写した場合、形成される金属層(導電パターン層)が転写物の表層(最外層)を構成する。このため、転写された金属層は、優れた導電性を示す。
【0063】
金属層としては、例えば、転写層の箔切れ性等の転写性という観点から、金属蒸着層が好ましい。金属蒸着層は、例えば、アルミニウム、銀、銅、亜鉛、ケイ素、マグネシウム、カルシウム、カリウム、スズ、ナトリウム、チタン、鉛、インジウム及びジルコニウム等の金属により形成できる。これらの中でも、アルミニウム蒸着層及び銅蒸着層が好ましく、銅蒸着層がより好ましい。
【0064】
金属蒸着層の厚さは、好ましくは5nm以上、より好ましくは25nm以上、さらに好ましくは30nm以上であり、好ましくは500nm以下、より好ましくは400nm以下、さらに好ましくは350nm以下である。これにより、例えば、転写層の箔切れ性等の転写性をさらに向上できる。
【0065】
金属蒸着層の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法及びイオンプレーティング法などの物理気相成長法(PVD法);並びにプラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法及び光化学気相成長法などの化学気相成長法(CVD法)が挙げられる。
【0066】
(接着層)
一実施形態において、接着層は、転写層における外側の表層を構成しており、転写層を被転写体に転写した際に被転写体と接する層である。一実施形態において、接着層は、金属層と接している層である。
【0067】
接着層は、熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、変性ポリオレフィン、アイオノマー、ポリエステル、ビニル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリスチレン及びこれらの塩素化樹脂が挙げられる。
【0068】
これらの中でも、変性ポリオレフィン及びアイオノマーから選択される少なくとも1種が好ましい。これにより、例えば、被転写体に対する転写性及び細線形成性をより向上できるとともに、転写形成された金属層でのクラックの発生を抑制でき、該金属層はより優れた導電性を示す。
【0069】
変性ポリオレフィン及びアイオノマーから選択される少なくとも1種の成分を含有する接着層は、金属蒸着層等の金属層と、紙基材等の被転写体との双方に対して、優れた接着性を示す。
【0070】
変性ポリオレフィンとしては、例えば、オレフィンと極性モノマーとの共重合体、及びポリオレフィン又は該共重合体の極性モノマーによるグラフト変性体が挙げられる。これらの中でも、オレフィンと極性モノマーとの共重合体が好ましい。
【0071】
オレフィンと極性モノマーとの共重合体において、オレフィンとしては、例えば、エチレン、炭素数3以上20以下のα-オレフィン及び環状オレフィンが挙げられ、エチレン及び炭素数3以上20以下のα-オレフィンが好ましく、エチレン及び炭素数3以上10以下のα-オレフィンがより好ましく、エチレン及びプロピレンがさらに好ましい。オレフィンは1種でもよく、2種以上でもよい。
【0072】
炭素数3以上20以下のα-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン及び1-デセンが挙げられる。環状オレフィンとしては、例えば、テトラシクロドデセン及びノルボルネンが挙げられる。
【0073】
極性モノマーとしては、例えば、不飽和カルボン酸及びその誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及びピバリン酸ビニル等のビニルエステルが挙げられる。極性モノマーは1種でもよく、2種以上でもよい。
【0074】
不飽和カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ノルボルネンジカルボン酸及びビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0075】
不飽和カルボン酸の誘導体としては、例えば、不飽和カルボン酸の酸無水物、酸ハライド、アミド、イミド、エステル又は塩が挙げられる。誘導体としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸無水物、塩化マレニル、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレニルイミド、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸モノエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジメチル、シトラコン酸ジエチル、テトラヒドロフタル酸ジメチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸ジメチル、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、及び不飽和カルボン酸のアンモニウム塩又はアミン塩が挙げられる。
【0076】
オレフィンと極性モノマーとの共重合体としては、具体的には、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-アルキル(メタ)アクリレート共重合体、プロピレン-(メタ)アクリル酸共重合体、プロピレン-アルキル(メタ)アクリレート共重合体、及びエチレン-酢酸ビニル共重合体が挙げられる。これらの中でも、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、プロピレン-(メタ)アクリル酸共重合体、及びエチレン-酢酸ビニル共重合体が好ましい。
上記共重合体は、アンモニウム塩又はアミン塩などの中和塩でもよい。
【0077】
オレフィンと極性モノマーとの共重合体において、オレフィン由来の構成単位の割合は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは50質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下であり;極性モノマー由来の構成単位の割合は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。各構成単位の割合は、核磁気共鳴法(NMR)により測定できる。
【0078】
グラフト変性されるポリオレフィンとしては、例えば、上記オレフィンの重合体であり、上記オレフィンの単独重合体でもよく、共重合体でもよい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテン、及びエチレンと炭素数3以上20以下のα-オレフィンとの共重合体が挙げられる。また、グラフト変性される共重合体は、上述したオレフィンと極性モノマーとの共重合体である。
【0079】
グラフト変性で使用される極性モノマー(グラフトモノマー)としては、上述した極性モノマーが挙げられ、不飽和カルボン酸及びその誘導体から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0080】
グラフト変性体における極性モノマー(グラフトモノマー)由来の構成単位の割合は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上であり、好ましくは10.0質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下である。上記構成単位の割合は、NMRにより測定できる。
【0081】
変性ポリオレフィンは、一実施形態において、酸変性ポリオレフィンである。酸変性ポリオレフィンの詳細は、後述する。
【0082】
変性ポリオレフィンの製造方法としては、公知の方法を採用でき、例えば、オレフィンと極性モノマーとをラジカル共重合する方法;ポリオレフィン又は上記共重合体の主鎖に極性モノマーを、有機過酸化物及びアゾ化合物等のラジカル開始剤の存在下、グラフトさせる方法が挙げられる。
【0083】
上記共重合体及びポリオレフィンは、公知の方法によって製造でき、例えば、チタン系触媒、バナジウム系触媒、メタロセン系触媒などを用いて製造できる。ポリオレフィン又は上記共重合体の主鎖に極性モノマーをグラフトさせる方法としては、例えば、溶液法、溶融混練法等の公知のグラフト重合法が挙げられる。
【0084】
変性ポリオレフィンの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による、標準ポリスチレン換算で、好ましくは8,000以上、より好ましくは10,000以上であり、好ましくは200,000以下、より好ましくは150,000以下である。
【0085】
アイオノマーとは、重合体の金属イオンによる架橋物であり、酸変性ポリオレフィンの金属イオンによる架橋物が好ましい。一実施形態において、アイオノマーは、分子構造中の遊離カルボキシ基が完全に又は部分的に金属イオンで中和された重合体である。
【0086】
酸変性ポリオレフィンとしては、例えば、オレフィンと不飽和カルボン酸及びその誘導体から選択される少なくとも1種との共重合体、不飽和カルボン酸及びその誘導体から選択される少なくとも1種によるポリオレフィン又は該共重合体のグラフト変性体が挙げられる。オレフィン、不飽和カルボン酸及びその誘導体、共重合体、ポリオレフィン並びにグラフト変性体としては、上述した具体例が挙げられる。
【0087】
酸変性ポリオレフィンにおいて、オレフィン由来の構成単位の割合は、75質量%以上90質量%以下が好ましく、不飽和カルボン酸及びその誘導体から選択される少なくとも1種に由来する構成単位の割合は、10質量%以上25質量%以下が好ましい。上記構成単位の割合は、NMRにより測定できる。
【0088】
金属イオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン;カルシウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン等の多価金属イオンが挙げられる。
【0089】
アイオノマーの重量平均分子量は、GPC測定による、標準ポリスチレン換算で、好ましくは8,000以上、より好ましくは10,000以上であり、好ましくは200,000以下、より好ましくは150,000以下である。
【0090】
アイオノマーとしては、オレフィン-(メタ)アクリル酸共重合体の金属イオンによる架橋物が好ましく、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体の金属イオンによる架橋物がより好ましい。
【0091】
接着層における変性ポリオレフィン及びアイオノマーの合計含有割合は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、100質量%以下でもよく、95質量%以下でもよい。一実施形態において、接着層における変性ポリオレフィン及びアイオノマー以外の熱可塑性樹脂の含有割合は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0092】
接着層は、塩素化ポリオレフィンなどの塩素化樹脂を含有しないことが好ましい。これにより、例えば、接着層を脱塩素化でき、よって金属層及び接着層を備える転写物は、電子部品の構成部材として良好に使用できる。
【0093】
接着層は、ワックスをさらに含有してもよい。ワックスを用いることにより、例えば、紙基材等の被転写体への接着性をより向上できる。ワックスとしては、例えば、蜜蝋、鯨蝋、木蝋、米ぬか蝋、カルナバワックス、キャンデリラワックス及びモンタンワックス等の天然ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、酸化ワックス、エステルワックス及びポリエチレンワックス等の合成ワックスが挙げられる。
【0094】
一実施形態において、接着層におけるワックスの含有割合は、転写層の転写性、接着層の金属層及び被転写体への接着性、並びに金属層の導電性のバランスという観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0095】
一実施形態において、接着層は、粒子をさらに含有する。これにより、例えば、熱転写シートの耐ブロッキング性及び転写層の箔切れ性を向上でき、また被転写体上に形成される導電パターン層の細線形成性を向上できる。
【0096】
粒子の平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは0.8μm以上であり、好ましくは10.0μm以下、より好ましくは5.0μm以下、さらに好ましくは3.0μm以下である。本開示において、平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置((株)島津製作所製、SALD-2000J)又は同等の装置を用いて測定する数平均粒子径である。
【0097】
粒子は、無機粒子でもよく、有機粒子でもよい。
無機粒子としては、例えば、シリカ、タルク、酸化チタン及び炭酸カルシウムが挙げられる。有機粒子としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ビニル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、イミド樹脂、セルロース樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート、メラミン樹脂、又はフッ素樹脂等の樹脂材料から構成される粒子が挙げられる。
【0098】
一実施形態において、接着層における粒子の含有割合は、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下であり、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。これにより、例えば、熱転写シートの耐ブロッキング性及び転写層の箔切れ性、並びに導電パターン層の細線形成性をより向上できる。
【0099】
一実施形態において、接着層は、導電性材料を含有する。これにより、例えば、熱転写シートの接着層の電気抵抗値を低減でき、高い導電性を有する金属層を形成できる。導電性材料としては、例えば、カーボンブラック、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化チタン、チタン酸カリウム及び導電性ポリマーが挙げられる。
【0100】
一実施形態において、接着層における導電性材料の含有割合は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。これにより、例えば、熱転写シートの接着層の電気抵抗値を低減でき、高い導電性を有する金属層を形成できる。
【0101】
接着層は、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤及び分散剤が挙げられる。
【0102】
変性ポリオレフィン及びアイオノマーから選択される少なくとも1種の成分を含有する接着層は、塩素化ポリオレフィン等の塩素化樹脂を用いなくとも、金属層及び被転写体に対して優れた密着性を示す。したがって、接着層を脱塩素化でき、よって金属層及び接着層を備える転写物は、電子部品の構成部材として良好に使用できる。
【0103】
一実施形態において、転写層全体における塩素含有量は、JPCA(日本電子回路工業会)やIEC(国際電気標準会議)の規格により、900ppm以下が好ましい。
【0104】
接着層の厚さは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上であり、好ましくは5.0μm以下、より好ましくは3.0μm以下、さらに好ましくは2.0μm以下である。これにより、例えば、熱転写シートの転写層の転写性、及び被転写体上に形成される導電パターン層の細線形成性をさらに向上できる。
【0105】
接着層は、例えば、上記成分を水又は適当な有機溶媒へ分散又は溶解させて塗工液を調製し、上述した塗工手段により該塗工液を金属層上に塗布して塗膜を形成し、これを乾燥することにより形成できる。塗工液の調製時において、液の状態で安定するという観点から、変性ポリオレフィンを用いる場合は変性ポリオレフィンの水分散体を用いることが好ましく、アイオノマーを用いる場合はアイオノマーの水分散体を用いることが好ましい。
【0106】
<アンカーコート層>
一実施形態において、熱転写シートは、基材と離型層との間に、アンカーコート層を備える。これにより、例えば、基材と離型層との密着性を向上でき、転写層の箔切れ性等の転写性をさらに向上できる。
【0107】
一実施形態において、アンカーコート層は、樹脂材料を含有する。樹脂材料としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ビニル樹脂、ビニルアセタール樹脂、(メタ)アクリル樹脂、イミド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート及びアイオノマーが挙げられる。
【0108】
アンカーコート層は、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、充填剤、可塑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、有機粒子、無機粒子及び分散剤が挙げられる。
【0109】
アンカーコート層の厚さは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上であり、好ましくは1.0μm以下、より好ましくは0.5μm以下である。これにより、例えば、基材と離型層との密着性をさらに向上できる。
【0110】
アンカーコート層は、例えば、上記成分を水又は適当な有機溶媒へ分散又は溶解させて塗工液を調製し、上述した塗工手段により該塗工液を離型層形成前の基材上に塗布して塗膜を形成し、これを乾燥することにより形成できる。
【0111】
<背面層>
一実施形態において、熱転写シートは、基材の離型層が設けられている側の面とは反対側の面上に、背面層を備える。これにより、例えば、熱転写時の加熱によるスティッキング及びシワの発生を抑制できる。
【0112】
一実施形態において、背面層は、樹脂材料を含有する。樹脂材料としては、例えば、ビニル樹脂、ビニルアセタール樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、セルロース樹脂及びフェノール樹脂が挙げられる。
【0113】
一実施形態において、背面層は、イソシアネート化合物を含有する。イソシアネート化合物としては、例えば、キシレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。
【0114】
背面層は、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、充填剤、可塑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、有機粒子、無機粒子、離型剤及び分散剤が挙げられる。
【0115】
背面層の厚さは、例えば、0.1μm以上3.0μm以下である。
【0116】
背面層は、例えば、上記成分を水又は適当な有機溶媒へ分散又は溶解させて塗工液を調製し、上述した塗工手段により該塗工液を基材上に塗布して塗膜を形成し、これを乾燥することにより形成できる。
【0117】
[熱転写シートと被転写体との組合せ]
本開示の組合せは、本開示の熱転写シートと、被転写体と、の組合せである。
熱転写シートについては上述したため、説明を省略する。
【0118】
被転写体としては、例えば、紙基材又は上記樹脂フィルムが挙げられる。紙基材としては、例えば、上質紙、普通紙、アート紙、コート紙、レジンコート紙、キャストコート紙、板紙、合成紙及び含浸紙が挙げられる。被転写体は、2種以上の紙基材を備える積層体、2種以上の樹脂フィルムを備える積層体、又は1種以上の紙基材と1種以上の樹脂フィルムとを備える積層体でもよい。
【0119】
被転写体において、転写層が転写される側の面の平滑度は、好ましくは1000秒以上、より好ましくは1500秒以上、さらに好ましくは2000秒以上、よりさらに好ましくは2500秒以上、特に好ましくは3000秒以上又は4000秒以上である。平滑度の上限は特に限定されないが、例えば20000秒、10000秒、6000秒又は5000秒である。平滑度が6000秒以下であると、転写性がより優れる傾向にある。ここで平滑度は、JIS P8155に準拠して測定される王研式平滑度である。
【0120】
本開示の熱転写シートは、平滑度6000秒以下の被転写体に対しても、優れた転写性を示す。また、一実施形態において、転写して形成された金属層でのクラックの発生が抑制され、該金属層は優れた導電性を示す。よって、導電性に優れる金属層、特に導電パターン層を形成できる。
【0121】
被転写体としては、転写性及び導電性がより良好となることから、上記平滑度を有する、紙基材又はPETフィルムが好ましく、平滑度が1700秒以上若しくは2000秒以上の、紙基材又はPETフィルムがより好ましい。一実施形態において、上記平滑度を有する、コート紙又はPETフィルムが好ましく、平滑度が1700秒以上若しくは2000秒以上の、コート紙又はPETがより好ましい。
【0122】
[熱転写シートの製造方法]
本開示の熱転写シートの製造方法は、
基材を準備する工程と、
基材上に離型層を形成する工程と、
離型層上に、金属層及び接着層を備える転写層を形成する工程と、
を含む。
金属層は、転写層における基材側の表層を構成している。
【0123】
一実施形態において、離型層の形成は、アンカーコート層が形成された基材のアンカーコート層表面において行われる。
一実施形態において、転写層を形成する工程は、離型層上に金属層を形成する工程と、金属層上に接着層を形成する工程とを含む。
一実施形態において、熱転写シートの製造方法は、基材の離型層が設けられた側とは反対側の面上に、背面層を形成する工程をさらに含む。
以上の各層の形成方法等の詳細は、上述したとおりである。
【0124】
[転写物の製造方法]
本開示の転写物の製造方法は、
本開示の熱転写シート及び被転写体を準備する工程(準備工程)と、
被転写体上に、上記熱転写シートが備える転写層を熱転写する工程(転写工程)と
を含む。
【0125】
<準備工程>
熱転写シートは、上記方法により製造できる。
被転写体の詳細は、上述したとおりである。
【0126】
<転写工程>
本開示の転写物の製造方法は、被転写体上に、熱転写シートから転写層の少なくとも一部を熱転写する工程を含む。これにより、一実施形態において、高い導電性を有する金属層、特に導電パターン層を、被転写体上に形成できる。
【0127】
導電パターン層としては、例えば、配線層及びアンテナ線が挙げられる。転写工程では、被転写体上に、熱転写シートから転写層の少なくとも一部を熱転写して、配線層及びアンテナ線に限らず、文字、模様、記号及びこれらの組合せ等から構成される画像を形成してもよい。
【0128】
具体的には、熱転写シートの転写層と被転写体の表面とを接触させ、次いで、熱転写シートにおいて、所望の導電パターンの形状に対応する領域に熱を印加し、該領域の転写層を被転写体上に転写する。このようにして、被転写体上に導電パターン層を形成できる。
【0129】
一実施形態において、転写工程は、熱転写シートと被転写体とを重ね合わせ、熱転写プリンタが備えるサーマルヘッドとプラテンローラーとの間を通過させると共に、サーマルヘッドにより、熱転写シートを加熱することで行うことができる。
【0130】
本開示の熱転写シートを用いることにより、熱転写によって、被転写体上に導電パターン層を安定して形成できる。本開示によれば、例えばフォトリソグラフィ及びエッチングを行うことなく、ドライプロセスのみによって、導電パターン層を被転写体上に形成できる。
【0131】
被転写体上に転写された転写層又は金属層の表面電気抵抗値は、10,000Ω未満が好ましく、1,000Ω未満がより好ましく、100Ω未満がさらに好ましい。上記表面電気抵抗値は低いほど好ましいが、一実施形態においてその下限値は1.0×10-3Ωでもよい。表面電気抵抗値は、実施例欄に記載の方法により測定できる。
【0132】
本開示は、例えば以下の[1]~[10]に関する。
[1]基材と、離型層と、転写層とを厚さ方向にこの順に備える熱転写シートであって、前記転写層が、金属層と接着層とを備え、前記金属層が、前記転写層における基材側の表層を構成しており、前記離型層が、ウレタン変性ポリエステルを含有し、前記離型層からの前記転写層の平均剥離力が、25.0gf/cm以上50.0gf/cm未満である、熱転写シート。
[2]前記離型層の厚さが、0.25μm超である、前記[1]に記載の熱転写シート。
[3]前記離型層が、シリコーン樹脂をさらに含有し、前記離型層における前記ウレタン変性ポリエステルの含有割合が、1質量%以上30質量%未満である、前記[1]又は[2]に記載の熱転写シート。
[4]前記ウレタン変性ポリエステルのガラス転移温度が、30℃以上90℃以下である、前記[1]~[3]のいずれか一項に記載の熱転写シート。
[5]前記金属層が金属蒸着層である、前記[1]~[4]のいずれか一項に記載の熱転写シート。
[6]前記金属蒸着層が銅蒸着層である、前記[5]に記載の熱転写シート。
[7]導電パターン層を形成するために用いられる、前記[1]~[6]のいずれか一項に記載の熱転写シート。
[8]前記[1]~[7]のいずれか一項に記載の熱転写シートと、被転写体との組合せ。
[9]前記被転写体が、JIS P8155に準拠して測定される王研式平滑度が4000秒以上の紙基材である、前記[8]に記載の組合せ。
[10]前記[1]~[7]のいずれか一項に記載の熱転写シート及び被転写体を準備する工程と、前記被転写体上に、前記熱転写シートが備える前記転写層を熱転写する工程とを含む、転写物の製造方法。
【実施例0133】
実施例を挙げて、本開示の熱転写シートをさらに詳細に説明するが、本開示の熱転写シートは実施例に限定されない。以下の記載及び表1に表示される配合量は、溶媒を除き、固形分換算後の数値である。以下の記載において、質量部は単に「部」と表す。
【0134】
[実施例1]
厚さ6μmのPETフィルムの一方の面に、下記組成のアンカーコート層用塗工液を塗布及び乾燥し、厚さ0.3μmのアンカーコート層を形成した。アンカーコート層上に、下記組成の離型層用塗工液を塗布及び乾燥し、厚さ0.65μmの離型層を形成した。得られた積層体を、高温環境下で一定時間保管した。離型層上に、PVD法により厚さ90nmの銅(Cu)蒸着層を形成した。銅蒸着層上に、下記組成の接着層用塗工液を塗布及び乾燥し、厚さ1.0μmの接着層を形成した。実施例1において、転写層は、銅蒸着層及び接着層により構成される。PETフィルムの離型層が形成された側とは反対側の面上に、下記組成の背面層用塗工液を塗布及び乾燥し、厚さ0.15μmの背面層を形成した。このようにして、背面層と、基材(PETフィルム)と、アンカーコート層と、離型層と、銅蒸着層と、接着層とを備える熱転写シートを得た。
【0135】
<アンカーコート層用塗工液>
・ウレタン樹脂 78.8部
(DIC(株)製、ハイドラン(登録商標)AP-40N)
・エポキシ樹脂 16.8部
(DIC(株)製、ウォーターゾール(登録商標)WSA-950)
・帯電防止剤 4.4部
(三菱ケミカル(株)製、aquaPASS(登録商標)-01x)
・イオン交換水 300部
・溶媒 1200部
(日本アルコール販売(株)製、ソルミックス(登録商標)A-11)
【0136】
<離型層用塗工液>
・エポキシ基含有シルセスキオキサン 82部
(荒川化学工業(株)製、コンポセラン(登録商標)SQ502-8)
・硬化触媒 8部
((株)ダイセル製、セルトップ(登録商標)CAT-A、アルミニウム系触媒)
・ウレタン変性ポリエステル 10部
(東洋紡(株)製、バイロン(登録商標)UR-1350)
・トルエン 225部
・メチルエチルケトン(MEK) 675部
【0137】
<接着層用塗工液>
・変性ポリオレフィン 100部
(ジャパンコーティングレジン(株)製、アクアテックス(登録商標)AC-3100、エチレン-メタクリル酸共重合体の水分散体)
・水 450部
・イソプロピルアルコール(IPA) 450部
【0138】
<背面層用塗工液>
・スチレン-アクリロニトリル共重合体 110部
・線状飽和ポリエステル 3部
・ステアリルリン酸亜鉛 60部
・メラミン樹脂粉末 30部
・MEK 800部
【0139】
[実施例2~5及び比較例1~5]
離型層用塗工液の各成分の種類及び配合量、離型層の厚さを表1に記載したとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして、熱転写シートを作製した。
【0140】
実施例及び比較例で用いた、離型層のウレタン変性ポリエステル(いずれも、東洋紡(株)製、バイロン(登録商標))を以下に記載する。酸価及び水酸基価の単位は、mgKOH/gである。
UR-1350(Tg:46℃、Mn:30,000、酸価<1、水酸基価:3.5)
UR-1700(Tg:92℃、Mn:16,000、酸価:26、水酸基価:19)
UR-1400(Tg:83℃、Mn:40,000、酸価<1、水酸基価:2.5)
UR-3500(Tg:10℃、Mn:13,000、酸価:35、水酸基価:9)
【0141】
[転写性評価]
以下の被転写体を用いた。被転写体の平滑度は、JIS P8155に準拠して測定される王研式平滑度であり、王研式透気度平滑度試験機(型式EB165、旭精工(株)製)を用いて測定した。
・平滑度5280秒のラベル、製品名:グロス PW 8K、
材質:光沢紙、ラベル厚さ:90μm、全体厚さ:150μm
【0142】
実施例及び比較例で得られた熱転写シートと、プリンタとして、ZEBRA製ラベルプリンタ「ZT610」(300dpi)とを使用し、被転写体上に、印字速度:2IPS(inch per second)、印字エネルギー:16の条件で、
図3に示す円弧パターン(角度90°、中央線の円弧長21.2mm)を形成し、転写物を得た。被転写体上の転写層(円弧パターン)を目視により観察し、下記評価基準に基づき評価した。結果を表1に示す。
【0143】
(評価基準)
A:転写可能であり、余剥離の発生も充分抑制できている。
B:転写可能であるが、転写予定面積に対して余剥離の面積が25%以上である。
C:転写可能であるが、一部にカスレ等の印字不良が生じる。
D:転写不可であるか、又は
転写可能でも円弧パターンの間隔が全体的につぶれている。
【0144】
[導電性評価]
上記転写性評価において作製した円弧パターンにかえて、
図4に示す直線状画像(画像の大きさ:幅1mm、長さ100mm)を形成した。直線状画像について、デジタルテスター「kaise DMM KU-11」(カイセ(株)製、+端子、測定可能範囲:0.1~2,000,000Ω)を用いて、転写層側の表面電気抵抗値を測定し、下記評価基準に基づき評価した。結果を表1に示す。
【0145】
(評価基準)
A:表面電気抵抗値100Ω未満。
B:表面電気抵抗値100Ω以上1,000Ω未満。
C:表面電気抵抗値1,000Ω以上10,000Ω未満。
D:導電性無し、又は、転写できないため評価不可である。
【0146】
[剥離力の算出]
実施例及び比較例で得られた熱転写シートと紙ラベルとを組み合わせ、下記熱時剥離タイプのテストプリンタを用いて、熱転写シートの転写層を紙ラベル上にそれぞれ異なる以下の剥離角度で転写して、
図5に示す4つの長方形状画像(4step画像;各画像の大きさ:幅10mm、長さ50mm)を形成した。紙ラベルとして、AW3209(AveryDennison社製)を用いた。転写時において、剥離角度66.7°、74.5°、81.8°又は86.9°で、紙ラベル上に転写された転写層を基材上の離型層から剥離することで、紙ラベル上に転写層(4つの長方形状画像)が設けられた転写物を得た。この転写物を得るにあたり、紙ラベル上に転写された転写層を、66.7°、74.5°、81.8°又は86.9°の剥離角度で基材上の離型層から剥離するタイミングにおける熱転写シートの応力を、プリンタ内において、熱転写シートの巻取ロールと加熱手段(サーマルヘッド)との間に設けられたテンションメータ(ASK-1000、大倉インダストリー(株))を用いて測定した。次いで、テンションメータにて測定された応力を、熱転写シートの加熱幅(エネルギーの印加幅)で除することにより剥離力の値を算出した。4つの剥離角度それぞれで算出した剥離力の算術平均値を、表1に示す。
【0147】
(テストプリンタ)
・発熱体平均抵抗値:5241(Ω)
・主走査方向印字密度:300(dpi)
・副走査方向印字密度:300(dpi)
・印画電圧:30(V)
・ライン周期:1(msec./line)
・パルスDuty:85(%)
・印画開始温度:29.0(℃)~36.0(℃)
・発熱ポイントから剥離板までの距離:4.5(mm)
・搬送速度:84.6(mm/sec.)
・印圧:3.5~4.0(kgf)(34.3~39.2(N))
・画像パターン:4step画像(79画像階調)
【0148】
(評価基準)
A:25.0gf/cm以上50.0gf/cm未満
B:10.0gf/cm以上25.0gf/cm未満
D:10.0gf/cm未満又は50.0gf/cm以上
【0149】