(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151406
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】シアリング干渉装置
(51)【国際特許分類】
G01B 9/02098 20220101AFI20231005BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G01B9/02098
G01B11/24 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060996
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100160716
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 力
(72)【発明者】
【氏名】松本 健志
【テーマコード(参考)】
2F064
2F065
【Fターム(参考)】
2F064AA09
2F064CC04
2F064EE08
2F064GG13
2F064GG31
2F064GG33
2F064GG44
2F064HH08
2F064JJ01
2F065AA51
2F065DD03
2F065FF04
2F065FF49
2F065FF51
2F065HH03
2F065HH12
2F065JJ26
2F065LL04
2F065LL31
2F065LL33
2F065LL47
(57)【要約】
【課題】光源から出射された光を光路が相違する複数の光に分離することなく測定対象物の表面の形状を測定可能なシアリング干渉装置を提供することを目的とする。
【解決手段】シアリング干渉装置1は、所定角度で測定対象物100の表面へ光を照射する光源10と、印加電圧に応じて光による測定対象物100の表面からの第1の偏光成分を有する反射光を所定量シアし、光による測定対象物100の表面からの第2の偏光成分を有する反射光をそのまま透過させる液晶プリズム15と、液晶プリズムから出射された第1の偏光成分を有する反射光、及び、第2の偏光成分を有する反射光を受光して画像信号を生成する撮像部17と、画像信号に基づいて、測定対象物の表面の形状情報を検出する検出部20と、液晶プリズム15に電圧を印加する電源部18とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定角度で測定対象物の表面へ光を照射する光源と、
印加電圧に応じて前記光による測定対象物の表面からの第1の偏光成分を有する反射光を所定量シアし、前記光による測定対象物の表面からの第2の偏光成分を有する反射光をそのまま透過させる液晶プリズムと、
前記液晶プリズムから出射された前記第1の偏光成分を有する反射光、及び、前記第2の偏光成分を有する反射光を受光して画像信号を生成する撮像部と、
前記画像信号に基づいて、測定対象物の表面の形状情報を検出する検出部と、
前記液晶プリズムに電圧を印加する電源部と、
を有することを特徴とするシアリング干渉装置。
【請求項2】
前記液晶プリズムは、第1基板、前記第1基板上に配置された第1電極、前記第1基板と対向する第2基板、前記第2基板上に配置された第2電極、前記第1電極及び前記第2電極間に配置された液晶層を含み、
前記液晶プリズムは、前記第1電極及び前記第2電極間に印加された電圧に応じて、前記液晶層に含まれる液晶分子の配向方向に対して所定の角度を有して入射された前記第1の偏光成分を有する反射光に印加電圧に応じた位相差を発生させることにより、所定量シアする、請求項1に記載のシアリング干渉装置。
【請求項3】
前記光源と測定対象物の表面との間に配置され、前記光源から出射された光の内、S偏光成分のみを透過する第1偏光板と、
測定対象物の表面と前記撮像部との間に配置され、測定対象物の表面から反射光の内、S偏光成分のみを透過する第2偏光板と、を更に有する請求項1又は2に記載のシアリング干渉装置。
【請求項4】
前記光源と測定対象物の表面との間に配置され、前記光源から出射された光を平行光とする光学素子と、
測定対象物の表面からの反射光を一旦集光した上で前記撮像部の撮像面上に結像させる結像光学系と、を更に有する請求項1~3の何れか一項に記載のシアリング干渉装置。
【請求項5】
前記液晶プリズムは、前記結像光学系の焦点に配置される、請求項4に記載のシアリング干渉装置。
【請求項6】
前記液晶プリズムは、前記結像光学系の焦点からずらした位置に配置される、請求項4に記載のシアリング干渉装置。
【請求項7】
前記液晶プリズムは、液晶分子の配列に第1のプレチルト角を有する第1の液晶プリズムと、前記第1のプレチルト角と反対方向で同じ角度を有する第2のプレチルト角を有する第2の液晶プリズムとが積層された構造を有する、請求項1~6の何れか一項に記載のシアリング干渉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シアリング干渉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光源から出射された光を測定対象物の表面に照射される測定光と参照光とに分光し、分光した測定光及び参照光を干渉させて発生する干渉縞を解析することで、測定対象物の表面の形状を検査する技術が知られている(例えば、特許文献1及び2を参照)。
【0003】
特許文献1に記載される形状検査装置は、測定光を測定対象物に照射し、測定対象物で反射された反射光と、ホログラム原器に参照光を入射して回折した再生光とを干渉させて生成される干渉縞を解析して測定対象物の表面の形状を検査する。特許文献1に記載される形状検査装置は、反射光と再生光とを干渉させて生成される干渉縞を解析して測定対象物の表面の形状を検査することで、凹凸の高さが大きく非球面度の高い測定対象物において表面形状の誤差を検査することができる。
【0004】
また、特許文献2に記載される斜入射干渉装置は、測定対象物に照射された測定光と参照光と偏光させ且つ合成した合成光を分割した分割光を互いに異なる量だけ位相シフトして生成した干渉縞から位相シフト法により測定対象物の表面の形状を算出する。特許文献2に記載される斜入射干渉装置は、測定光と参照光とを干渉させて生成した分割光を異なる量だけ位相シフトして干渉縞を使用することで、機械的な可動部分を使用することなく位相シフト法により測定対象物の表面の形状を算出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5817211号公報
【特許文献2】特開2008-32690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2に記載される技術は、光源から出射された光を測定光及び参照光に分岐し且つ測定光及び参照光を合成するため、光学素子等の部品点数が増加すると共に光学素子を高精度に配置するので、製造コストが増加するおそれがある。また、特許文献1及び2に記載される技術では、分離された測定光及び参照光の光路が相違するため、光路に配置される光学素子の特性の差異及び環境因子によって、干渉縞の揺らぎが発生し、検出精度が低下するおそれがある。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するものであり、光源から出射された光を光路が相違する複数の光に分離することなく測定対象物の表面の形状を測定可能なシアリング干渉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るシアリング干渉装置は、所定角度で測定対象物の表面へ光を照射する光源と、印加電圧に応じて光による測定対象物の表面からの第1の偏光成分を有する反射光を所定量シアし、光による測定対象物の表面からの第2の偏光成分を有する反射光をそのまま透過させる液晶プリズムと、液晶プリズムから出射された第1の偏光成分を有する反射光、及び、第2の偏光成分を有する反射光を受光して画像信号を生成する撮像部と、画像信号に基づいて、測定対象物の表面の形状情報を検出する検出部と、液晶プリズムに電圧を印加する電源部とを有する。
【0009】
また、本発明に係るシアリング干渉装置では、液晶プリズムは、第1基板、第1基板上に配置された第1電極、第1基板と対向する第2基板、第2基板上に配置された第2電極、第1電極及び第2電極間に配置された液晶層を含み、液晶プリズムは、第1電極及び第2電極間に印加された電圧に応じて、液晶層に含まれる液晶分子の配向方向に対して所定の角度を有して入射された第1の偏光成分を有する反射光に印加電圧に応じた位相差を発生させることにより、所定量シアすることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係るシアリング干渉装置は、光源と測定対象物の表面との間に配置され、光源から出射された光の内、S偏光成分のみを透過する第1偏光板と、測定対象物の表面と撮像部との間に配置され、測定対象物の表面から反射光の内、S偏光成分のみを透過する第2偏光板とを更に有することが好ましい。
【0011】
また、本発明に係るシアリング干渉装置は、光源と測定対象物の表面との間に配置され、光源から出射された光を平行光とする光学素子と、測定対象物の表面からの反射光を一旦集光した上で撮像部の撮像面上に結像させる結像光学系と、を更に有することが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るシアリング干渉装置では、液晶プリズムは、結像光学系の焦点に配置されることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係るシアリング干渉装置では、液晶プリズムは、結像光学系の焦点からずらした位置に配置されることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係るシアリング干渉装置では、液晶プリズムは、液晶分子の配列に第1のプレチルト角を有する第1の液晶プリズムと、第1のプレチルト角と反対方向で同じ角度を有する第2のプレチルト角を有する第2の液晶プリズムとが積層された構造を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るシアリング干渉装置は、光源から出射された光を光路が相違する複数の光に分離することなく測定対象物の表面の形状を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係るシアリング干渉装置のブロック図である。
【
図2】(a)は
図1に示す液晶プリズムの正面図であり、(b)は
図1に示す液晶プリズムの背面図である。
【
図3】(a)は
図1に示す液晶プリズムが有する液晶の正面図であり、(b)は電圧が印加されることに応じて
図1に示す液晶プリズムに生じる電界と液晶の傾きとの関係を示す図であり、(c)は
図1に示す液晶プリズムの液晶と屈折率との関係を示す図である。
【
図4】(a)は
図1に示す液晶プリズムに印加される電圧とリタデーションとの関係を示す図であり、(b)は
図4(a)に示す破線Aで囲まれた部分の拡大図である。
【
図6】
図5に示す検出部による検出処理のフローチャートである。
【
図7】S偏光成分及びP偏光成分の反射率を示す図である。
【
図8】(a)は
図1に示すシアリング干渉装置における液晶プリズムの配置を示す図であり、(b)は変形例に係るシアリング干渉装置における液晶プリズムの配置を示す図である。
【
図9】他の変形例に係るシアリング干渉装置のブロック図である。
【
図10】(a)は
図9に示す第1液晶プリズムの断面図であり、(b)は
図9に示す第2液晶プリズムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、シアリング干渉装置について説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0018】
(実施形態に係るシアリング干渉装置の構成及び機能)
図1は、実施形態に係るシアリング干渉装置のブロック図である。
【0019】
シアリング干渉装置1は、光源10と、コリメートレンズ11と、第1偏光板12と、第1結像レンズ13と、第2結像レンズ14と、液晶プリズム15と、第2偏光板16と、撮像部17と、電源部18と、検出部20とを有する斜入射シアリング干渉装置である。シアリング干渉装置1は、測定対象物100の表面に光を照射し、測定対象物100の表面から反射した反射光を液晶プリズム15によって所定量シア(横ずらし)することで、一例では測定対象物100の表面の形状を検出する。測定対象物100は、例えば工作機械等のベッドの表面等のきさげ加工が施された面である。
【0020】
光源10は、例えば半導体レーザ又は発光ダイオードであり、所定角度で測定対象物表面へ光を照射する。光源10は、具体的には、ファブリペローレーザ、スーパールミネッセンスダイオード等であることが好ましい。光源10は、検出部20から出射開始信号が入力されることに応じて、所定角度での測定対象物100の表面への光の照射を開始する。また、光源10は、検出部20から出射停止信号が入力されることに応じて、測定対象物100の表面への光の照射を停止する。
【0021】
コリメートレンズ11は、光源10と測定対象物100の表面との間に配置された凸レンズであり、光源10から出射された光をコリメート光、すなわち平行光とする光学素子である。第1偏光板12は、光源10及びコリメートレンズ11と測定対象物100の表面との間に配置される。第1偏光板12は、光源10から出射され且つコリメートレンズ11を透過した平行光の内、S偏光成分のみを透過し、透過したS偏光成分を測定対象物100の表面に照射する。
【0022】
第1結像レンズ13は、測定対象物100の表面と撮像部17との間に配置された凸レンズであり、測定対象物100の表面からの反射光を集光する。第2結像レンズ14は、測定対象物100の表面及び第1結像レンズ13と撮像部17との間に配置された凸レンズであり、第1結像レンズ13によって集光された反射光を平行光として撮像部17に出射する。第1結像レンズ13及び第2結像レンズ14は、測定対象物100の表面からの反射光を一旦集光した上で撮像部17の撮像面上に結像させる結像光学系を形成する。
【0023】
液晶プリズム15は、第1結像レンズ13の焦点位置に配置される液晶装置である。液晶プリズム15は、印加電圧に応じて、光源10から照射される光による測定対象物100の表面からの第1の偏光成分C1を有する反射光を所定量シアすると共に、測定対象物100の表面からの第2の偏光成分C2を有する反射光をそのまま透過させる。
【0024】
図2(a)は液晶プリズム15の正面図であり、
図2(b)は液晶プリズム15の背面図である。
図3(a)は、液晶プリズム15が有する液晶の正面図である。
図3(b)は、電圧が印加されることに応じて液晶プリズム15に生じる電界と液晶の傾きとの関係を示す図である。
図3(c)は、液晶プリズム15の液晶と屈折率との関係を示す図である。
【0025】
液晶プリズム15は、液晶分子40と、第1基板41と、第2基板42と、第1電極43と、第2電極44とを有し、液晶40を含む液晶層40aと第1電極43及び第2電極44との間には不図示の配向膜が形成される。また、液晶40の長軸は、配向膜形成後のラビングによりラビング軸の軸方向に沿って整列するように配列される。液晶プリズム15は、電源部18から第1電極43と第2電極44との間に交流電圧が印加されることに応じて、液晶分子40の傾きを変化させる。液晶プリズム15は、第1電極43及び第2電極44間に印加された電圧に応じて、液晶分子40の配向方向に対して所定の角度を有して入射された第1の偏光成分C1を有する反射光に印加電圧に応じた位相差を発生させることにより、所定量シアする。
【0026】
液晶プリズム15は、S偏光成分である反射光の偏光方向に対して液晶分子40の長手方向が45°傾斜するように配置される。液晶プリズム15は、反射光の液晶分子40の長手方向に対応する第1の偏光成分C1を所定量シアすると共に、反射光の液晶分子40の短手方向に対応する第2の偏光成分C2をそのまま透過させる。液晶プリズム15は、第1電極43及び第2電極44間に印加された電圧に応じて、液晶分子40の配向方向に対して所定の角度を有して入射された第1の偏光成分C1を有する反射光に印加電圧に応じた位相差を発生させることにより、所定量シアする。液晶プリズム15は、反射光の偏光方向に対して液晶分子40の長手方向が45°傾斜するように配置されるので、シアされる第1の偏光成分C1の大きさは、シアされることなくそのまま透過される第2の偏光成分C2の大きさと等しい。
【0027】
液晶分子40は、例えばネマティック液晶により形成され、液晶分子40が含まれる液晶層40aに印加される電圧に応じて、ネマティック液晶の分極が変化することで、電圧の印加方向に沿って傾く。液晶分子40は、第1電極43及び第2電極44間に配置された液晶層40aに含まれ、ホモジニアス配向され、第1電極43と第2電極44との間に電圧が印加されていないとき、第1基板41及び第2基板42の延伸方向に対してプレチルト角θP傾斜して配置される。液晶分子40の長手方向の屈折率は、異常光線屈折率neとも称され、常光線屈折率noとも称される短手方向の屈折率よりも大きい。液晶分子40は、第1電極43と第2電極44との間に電圧が印加される電圧が増加することに応じて、電界の方向、すなわち第1基板41及び第2基板42の延伸方向に直交する方向に向くような形で長手方向が立ち上がる。
【0028】
液晶分子40は、第1電極43と第2電極44との間に電圧が印加されて、第1電極43と第2電極44との間に電界E1が生じることによって、プレチルト角θPよりも傾斜を増加させる。また、液晶分子40は、第1電極43と第2電極44との間に更に高い電圧が印加されて、第1電極43と第2電極44との間に電界E1よりの高い電界E2が生じることによって、傾斜を更に増加させる。液晶分子40が傾斜を増加させることに応じて、液晶分子40の屈折率は、異常光線屈折率neから常光線屈折率noに近づくように減少する。一方向に隣接して配置される複数の第1電極に印加される電圧を徐々に減少させることで、液晶プリズム15は、屈折率が徐々に減少するプリズムとして機能することができる。
【0029】
第1基板41及び第2基板42は、ガラス基板等の透明基板であり、矩形状の平面形状を有する。第1基板41の表面には、マトリックス状に配置される複数の第1電極43が配置され、第2基板42の表面には、全面に亘って第2電極44が配置される。第1電極43及び第2電極44は、ITO等の透明な導電性部材であり、電源部18に電気的に接続され、電源部18から交流電圧が印加される。第1電極43は、第1基板41の一対の辺に平行な方向である第1方向、及び第1方向に直交する第2方向のそれぞれに均等なピッチで配列される。なお、液晶プリズム15は、マトリックス状の第1電極43を有するが、第1電極43は、第1方向に延伸する短冊状の複数の電極、及び第2方向に延伸する短冊状の複数の電極が積層されて配置される構造であってもよい。また、液晶プリズム15は、第1方向に延伸する短冊状の複数の第1電極と、第2方向に延伸する短冊状の複数の第2電極とを有してもよい。
【0030】
図4(a)は液晶プリズム15に印加される電圧とリタデーションとの関係を示す図であり、
図4(b)は
図4(a)に示す破線Aで囲まれた部分の拡大図である。
図4(a)及び4(b)において、横軸は印加される電圧の実行値であり、縦軸はリタデーションを示す。
【0031】
液晶プリズム15は、波形W101で示すように、第1電極43と第2電極44との間に印加される電圧が1.3Vを超えるとリタデーションは減少し始める。第1電極43と第2電極44との間に印加される電圧が1.3V以上であり且つ2.8V以下であるとき、波形W102で示すように、リタデーションは、略線形に減少する。第2電極44との間に印加される電圧が1.3V以上であり且つ2.8V以下である範囲において、印加電圧とリタデーションとの関係は、波形W103に示すように線形近似することができる。線形近似された波形W103の直線の関係を使用することで、所望のリタデーションとなる印加電圧を規定することができる。
【0032】
第2偏光板16は、測定対象物100の表面と撮像部17との間に配置され、測定対象物100の表面から反射され且つ第2結像レンズ14を透過した反射光の内、S偏光成分のみを透過する。第2偏光板16が反射光の内、S偏光成分のみを透過することで、S偏光成分以外の反射光の成分が除去されて、偏光成分である反射光の第1の偏光成分C1及び第2の偏光成分C2のコントラストが向上する。
【0033】
撮像部17は、電荷結合素子Charge Coupled Device(CCD)型又は相補性金属酸化膜半導体(Complementary Metal Oxide Semiconductor、CMOS)型の撮像素子がアレイ状に配置された撮像面を有する。撮像部17は、液晶プリズム15から出射された第1の偏光成分C1を有する反射光、及び、第2の偏光成分C2を有する反射光を撮像面で受光して、撮像面で受光した反射光に応じた画像信号を生成し、生成した画像信号を検出部20に出力する。
【0034】
電源部18は、整流回路及び降圧回路を有し、商用電源が供給される交流電圧を所定の周波数の交流電圧に変換し、検出部20から入力される電圧指示信号に応じた電圧を液晶プリズム15の第1電極43と第2電極44との間に印加する。電源部18は、第1電圧指示信号が検出部20から入力されると、
図2(a)及び3(a)に示す第1方向に複数のプリズムが形成されるように、液晶プリズム15の第1基板41及び第2基板42に電圧を印加する。また、電源部18は、第2電圧指示信号が検出部20から入力されると、
図2(a)及び3(a)に示す第2方向に複数のプリズムが形成されるように、液晶プリズム15の第1基板41及び第2基板42に電圧を印加する。
【0035】
【0036】
検出部20は、通信部21と、記憶部22と、入力部23と、出力部24と、処理部30とを有する。通信部21、記憶部22、入力部23、出力部24及び処理部30は、バス25を介して互いに接続される。検出部20は、撮像部17から入力される画像信号に基づいて、測定対象物100の表面の形状情報を検出する。
【0037】
通信部21は、USBなどの有線の通信インターフェース回路を有する。通信部21は、配線19を介して光源10、液晶プリズム15、撮像部17及び電源部18と通信を行う。
【0038】
記憶部22は、少なくとも一つの半導体記憶装置を備え、処理部30での処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。例えば、記憶部22は、アプリケーションプログラムとして、測定対象物100の表面の形状情報を検出する検出処理を処理部30に実行させるための検出プログラムを記憶する。検出プログラムは、例えばCD-ROM、DVD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶部22にインストールされてもよい。
【0039】
入力部23は、データの入力が可能であればどのようなデバイスでもよく、例えば、タッチパネル、キーボード等である。不図示のオペレータは、入力部23を用いて、文字、数字、記号等を入力することができる。入力部23は、オペレータにより操作されると、その操作に対応する信号を生成する。そして、生成された信号は、オペレータの指示として、処理部30に供給される。
【0040】
出力部24は、映像や画像等の表示が可能であればどのようなデバイスでもよく、例えば、液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等である。出力部24は、処理部30から供給された映像データに応じた映像や、画像データに応じた画像等を表示する。また、出力部24は、紙などの表示媒体に、映像、画像又は文字等を印刷する出力装置であってもよい。
【0041】
処理部30は、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を有する。処理部30は、検出部20の全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えば、CPUである。処理部30は、記憶部22に記憶されているプログラム(ドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム等)に基づいて処理を実行する。また、処理部30は、複数のプログラム(アプリケーションプログラム等)を並列に実行できる。
【0042】
処理部30は、光源制御部31と、電圧指示部32と、画像信号取得部33と、形状情報演算部34と、形状情報出力部35とを有する。これらの各部は、処理部30が備えるプロセッサで実行されるプログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、これらの各部は、ファームウェアとして検出部20に実装されてもよい。
【0043】
(実施形態に係る検出部による検出処理)
図6は、検出部20による検出処理のフローチャートである。
図6に示す検出処理は、予め記憶部22に記憶されているプログラムに基づいて、主に処理部30により検出部20の各要素と協働して実行される。
【0044】
まず、光源制御部31は、光の出射を開始することを示す出射開始信号を光源10に出力する(S101)。光源10は、出射開始信号が入力されることに応じて、所定角度での測定対象物100の表面への光の照射を開始する。
【0045】
次いで、電圧指示部32は、第1電圧指示信号を電源部18に出力する(S102)。電源部18は、第1電圧指示信号が入力されることに応じて、
図2(a)及び2(c)に示す第1方向に複数のプリズムが形成されるように、液晶プリズム15の第1基板41及び第2基板42に電圧を印加する。
【0046】
次いで、画像信号取得部33は、撮像部17から入力される第1画像信号を取得する(S103)。第1画像信号に対応する画像は、
図2(a)及び2(c)に示す第1方向に複数のプリズムが形成されたときの干渉縞を含む。第1画像信号に対応する画像に含まれる干渉縞は、
図2(a)及び2(c)に示す第1方向に対応する方向における測定対象物100の表面の凹凸を示す。
【0047】
次いで、形状情報演算部34は、S103の処理で取得された第1画像信号から
図2(a)及び2(c)に示す第1方向に対応する方向における測定対象物100の表面の凹凸を示す第1形状情報を演算する(S104)。第1の偏光成分C1を有する反射光が液晶プリズム15によりシアされるシア量Sは、測定対象物100の表面を形状情報演算部34が演算するときの解像度に対応する。第1の偏光成分C1の光路W
nと第2の偏光成分C2の光路W
n-との光路差(W
n-W
n-1)は、測定対象物100の表面の位置S
nと
図2(a)及び2(c)に示す第1方向に対応する方向に位置S
nからシア量S離隔した位置である位置S
n+1との間の高さの差である。形状情報演算部34は、第1画像信号に対応される画像に含まれる干渉縞の位相分布から位相シフト法等の公知の演算方法により光路差(W
n-W
n-1)を演算し、演算した光路差(W
n-W
n-1)を順次加算することで、第1形状情報を演算する。なお、形状情報演算部34は、演算した光路差(W
n-W
n-1)を順次加算する演算手法に代えて、フーリエ変換及びフーリエ逆変換を組み合わせた演算手法により第1形状情報を演算してもよく、2次元フーリエ変換を使用する演算手法により第1形状情報を演算してもよい。
【0048】
なお、位相シフト法により光路差(Wn-Wn-1)を演算するとき、液晶プリズム15に印加する電圧を一律に増加又は減少させることにより、位相シフトした反射光を液晶プリズム15によって生成し、生成した反射光を撮像部17に照射する。
【0049】
次いで、電圧指示部32は、第2電圧指示信号を電源部18に出力する(S105)。電源部18は、第2電圧指示信号が入力されることに応じて、
図2(a)及び2(c)に示す第2方向に複数のプリズムが形成されるように、液晶プリズム15の第1基板41及び第2基板42に電圧を印加する。
【0050】
次いで、画像信号取得部33は、撮像部17から入力される第2画像信号を取得する(S106)。第2画像信号に対応する画像は、
図2(a)及び2(c)に示す第2方向に複数のプリズムが形成されたときの干渉縞を含む。第2画像信号に対応する画像に含まれる干渉縞は、
図2(a)及び2(c)に示す第2方向に対応する方向における測定対象物100の表面の凹凸を示す。
【0051】
次いで、形状情報演算部34は、S106の処理で取得された第1画像信号から
図2(a)及び2(c)に示す第2方向に対応する方向における測定対象物100の表面の凹凸を示す第2形状情報を演算する(S107)。S107の処理は、第1形状情報を演算するS104の処理と同様なので、詳細な説明は省略する。
【0052】
次いで、形状情報演算部34は、S104の処理で演算された第1形状情報及びS107の処理で演算された第2形状情報に基づいて、測定対象物100の表面の形状情報を演算する(S108)。形状情報演算部34は、第1形状情報及び第2形状情報に対応する
図2(a)及び2(c)に示す第1方向及び第1方向に直交する第2方向に対応する方向における測定対象物100の表面の凹凸を合成する。形状情報演算部34は、第1方向及び第2方向に対応する方向における測定対象物100の表面の凹凸を合成することで、測定対象物100の表面の2次元形状を演算し、演算した2次元形状を示す2次元情報を形状情報として記憶部22に記憶する。
【0053】
次いで、形状情報出力部35は、S108の処理で演算された形状情報を示す形状情報信号を出力部24に出力する(S109)。出力部24は、形状情報信号が入力されることに応じて、測定対象物100の表面の形状情報を示す画像を表示する。
【0054】
そして、光源制御部31は、光の出射を停止することを示す出射停止信号を光源10に出力する(S110)。光源10は、出射停止信号が入力されることに応じて、測定対象物100の表面への光の照射を停止する。
【0055】
(実施形態に係るシアリング干渉装置の作用効果)
シアリング干渉装置1は、測定対象物100の表面の形状情報を検出するときに、所定角度で測定対象物100の表面へ光を照射するので、正反射率を高くなり、撮像部17に入射する反射光の光量が多くなり、生成される画像信号のSN比を高くできる。
【0056】
また、シアリング干渉装置1は、液晶プリズム15によって第1の偏光成分C1を有する反射光をシアして、第2の偏光成分C2を有する反射光に対して位相シフトすることで干渉縞を発生させるので、平坦性が高い参照平面は使用することはない。シアリング干渉装置1は、平坦性が高い参照平面の面積を増加することなく、測定面積を増加することができるので、検出コストが低減できる。
【0057】
また、シアリング干渉装置1は、液晶プリズム15によって第1の偏光成分C1を有する反射光をシアすると共に位相シフトすることで、撮像部17に入射する2つの反射光を生成する。第1の偏光成分C1を有する反射光及び第2の偏光成分C2を有する反射光は、液晶プリズム15から撮像部17まで同一の光路を伝送するため、2つの反射光を分岐及び合成することなく、製造コストを低減することができる。また、第1の偏光成分C1を有する反射光及び第2の偏光成分C2を有する反射光は、同一の光路を伝送するため、路に配置される光学素子の特性の差異及び環境因子によって、干渉縞の揺らぎが発生し、検出精度が低下するおそれは低い。
【0058】
また、シアリング干渉装置1は、第1偏光板12によってS偏光成分のみを測定対象物100の表面に照射するので、正反射率を更に高くことができる。
【0059】
図7は、S偏光成分及びP偏光成分の反射率を示す図である。
図7において、横軸は入射角を示し、縦軸は反射率を示す。
【0060】
S偏光成分の反射率は、何れの入射角で測定対象物100に入射した場合でもP偏光成分の反射率以上となるため、S偏光成分のみを測定対象物100の表面に照射することで、シアリング干渉装置1は、正反射率を更に高くことができる。また、シアリング干渉装置1は、測定対象物100に入射するS偏光成分の入射角を大きくすることで、正反射率を更に高くことができる。
【0061】
また、シアリング干渉装置1は、シア量は液晶プリズム15に印加する電圧により制御可能なので、測定対象物100の表面の形状に応じて最適なシア量を選択することができる。さらに、シアリング干渉装置1は、液晶プリズム15に印加する電圧を一律に増加又は減少させることにより、シア量を選択する機能に加えて、反射光の位相をシフトさせる機能を液晶プリズム15によって実現させることができる。シアリング干渉装置1は、位相をシフトさせた反射光を液晶プリズム15によって生成することで、位相シフト法による第1形状情報及び第2形状情報の演算に使用される反射光を、光学素子を追加することなく撮像部17に照射することができる。
【0062】
(実施形態に係るシアリング干渉装置の変形例)
シアリング干渉装置1では、液晶プリズム15は、第1結像レンズ13の焦点位置に配置されるが、実施形態に係るシアリング干渉装置では、液晶プリズム15は、第1結像レンズ13の焦点位置からずらして配置されてもよい。
【0063】
図8(a)はシアリング干渉装置1における液晶プリズム15の配置を示す図であり、
図8(b)は変形例に係るシアリング干渉装置における液晶プリズム15の配置を示す図である。
【0064】
シアリング干渉装置1では、第1結像レンズ13の焦点位置に配置されるので、反射光Lrが照射される液晶プリズム15の照射面の面積が小さくなる。シアリング干渉装置1では、反射光Lrが照射される液晶プリズム15の照射面の面積が小さくなるので、液晶プリズム15の第1電極43の形状及び第1電極43の間の空隙の影響によりプリズム面にひずみが生じるおそれがある。一方、変形例に係るシアリング干渉装置では、液晶プリズム15を第1結像レンズ13の焦点位置からずらして配置することで、反射光Lrが照射される液晶プリズム15の照射面の面積が大きくなる。変形例に係るシアリング干渉装置では、反射光Lrが照射される液晶プリズム15の照射面の面積が大きくなるので、液晶プリズム15の第1電極43の形状及び第1電極43の間の空隙の影響によりプリズム面にひずみが生じるおそれを低くできる。なお、変形例に係るシアリング干渉装置では、液晶プリズム15を第1結像レンズ13の焦点位置からずらして配置することで、画像に含まれる干渉縞に焦点位置からのずれに比例した球面項が重畳されるが、重畳された球面項は、演算時に除去可能である。
【0065】
また、シアリング干渉装置1は、単一の液晶プリズム15を有するが、実施形態に係るシアリング干渉装置は、重畳して配置される複数の液晶プリズムを有してもよい。
【0066】
図9は、他の変形例に係るシアリング干渉装置のブロック図である。
【0067】
シアリング干渉装置2は、液晶プリズム50を液晶プリズム15の代わりに有することがシアリング干渉装置1と相違する。液晶プリズム50以外のシアリング干渉装置2の構成要素の構成及び機能は、同一符号が付されたシアリング干渉装置1の構成要素の構成及び機能と同一なので、ここでは詳細な説明は省略する。液晶プリズム50は、互いに重畳して配置される第1液晶プリズム51及び第2液晶プリズム52を有する。
【0068】
図10(a)は第1液晶プリズム51の断面図であり、
図10(b)は第2液晶プリズム52の断面図である。
【0069】
第1液晶プリズム51は、第1基板41と第2基板42との間の距離である液晶ギャップが液晶プリズム15の半分であることが液晶プリズム15と相違する。液晶ギャップ以外の第1液晶プリズム51の構成及び機能は、液晶プリズム15の構成及び機能と同一なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0070】
第2液晶プリズム52は、液晶のプレチルト角の傾斜方向が第1液晶プリズム51と反対であることが第1液晶プリズム51と相違する。液晶のプレチルト角の傾斜方向以外の第2液晶プリズム52の構成及び機能は、第1液晶プリズム51の構成及び機能と同一なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0071】
シアリング干渉装置2では、プレチルト角の傾斜方向が反対である第1液晶プリズム51及び第2液晶プリズム52を重畳して配置することで、プレチルト角による位相分布の入射角度依存性をキャンセルすることができる。
【0072】
また、第1液晶プリズム51及び第1液晶プリズム51の液晶ギャップは、液晶プリズム15の液晶ギャップの半分であるので、液晶プリズム50は、反射光が入射する入射面の均一性が液晶プリズム15よりも向上する。また、液晶プリズム50は、液晶プリズム50は、応答速度を速くなり、シアリング干渉装置2による測定対象物100は、シアリング干渉装置1よりも測定対象物100の表面の形状検出処理を高速化することができる。
【符号の説明】
【0073】
1、2 シアリング干渉装置
10 光源
11 コリメートレンズ
12 第1偏光板
13 第1結像レンズ
14 第2結像レンズ
15、50 液晶プリズム
16 第2偏光板
17 撮像部
18 電源部
20 検出部
100 測定対象物