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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151409
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】演算装置、演算方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   E01C 23/01 20060101AFI20231005BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20231005BHJP
   G06N 3/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
E01C23/01
G06N20/00
G06N3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061000
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増渕 陽支
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼松 伸一
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 敦俊
(72)【発明者】
【氏名】首藤 悠
【テーマコード(参考)】
2D053
【Fターム(参考)】
2D053AA32
2D053AB03
2D053AD01
2D053FA00
(57)【要約】
【課題】位置毎の路面状態を細かく把握する。
【解決手段】演算装置は、道路Rの路面の鉛直方向における高さ位置を示す路面高さ情報を、道路R上の路面位置毎に取得する路面情報取得部と、路面位置毎の路面高さ情報に基づいて、道路R上の単位距離の第1区間S1におけるIRIと、単位距離を超えて単位距離の2倍未満の長さの第2区間S2におけるIRIとを算出するIRI算出部と、第1区間S1におけるIRIと第2区間S2におけるIRIとに基づいて、第2区間S2において第1区間S1と重ならない非重複区間S3におけるIRIを算出する路面状態算出部と、を含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路の路面の鉛直方向における高さ位置を示す路面高さ情報を、前記道路上の路面位置毎に取得する路面情報取得部と、
前記路面位置毎の前記路面高さ情報に基づいて、前記道路上の単位距離の第1区間におけるIRI(International Roughness Index)と、単位距離を超えて単位距離の2倍未満の長さの第2区間におけるIRIとを算出するIRI算出部と、
前記第1区間におけるIRIと前記第2区間におけるIRIとに基づいて、前記第2区間において前記第1区間と重ならない非重複区間におけるIRIを算出する路面状態算出部と、
を含む、
演算装置。
【請求項2】
前記IRI算出部は、前記第1区間及び前記第2区間の始点位置を異ならせて、前記第1区間におけるIRIと前記第2区間におけるIRIとを、位置毎に算出し、
前記路面状態算出部は、前記非重複区間におけるIRIを、前記非重複区間の位置毎に算出する、請求項1に記載の演算装置。
【請求項3】
前記非重複区間を移動した車両の挙動を示す挙動情報と、前記非重複区間における路面状態とを教師データとして、学習モデルに、前記挙動情報と前記路面状態との対応関係を機械学習させる学習部を更に含む、請求項1又は請求項2に記載の演算装置。
【請求項4】
道路の路面の鉛直方向における高さ位置を示す路面高さ情報を、前記道路上の路面位置毎に取得するステップと、
前記路面位置毎の前記路面高さ情報に基づいて、前記道路上の単位距離の第1区間におけるIRI(International Roughness Index)と、単位距離を超えて単位距離の2倍未満の長さの第2区間におけるIRIとを算出するステップと、
前記第1区間におけるIRIと前記第2区間におけるIRIとに基づいて、前記第2区間において前記第1区間と重ならない非重複区間におけるIRIを算出するステップと、
を含む、
演算方法。
【請求項5】
道路の路面の鉛直方向における高さ位置を示す路面高さ情報を、前記道路上の路面位置毎に取得するステップと、
前記路面位置毎の前記路面高さ情報に基づいて、前記道路上の単位距離の第1区間におけるIRI(International Roughness Index)と、単位距離を超えて単位距離の2倍未満の長さの第2区間におけるIRIとを算出するステップと、
前記第1区間におけるIRIと前記第2区間におけるIRIとに基づいて、前記第2区間において前記第1区間と重ならない非重複区間におけるIRIを算出するステップと、
をコンピュータに実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演算装置、演算方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に示すように、道路を走行している車両の加速度を検出し、その加速度データを学習モデルに入力することで、路面の状態を推定する技術が知られている。路面状態を示す指標としては、例えば特許文献2に示すように、IRI(International Roughness Index;国際ラフネス指数)が用いられる場合がある。IRIは、単位距離における路面状態の平均値として算出されるものであり、単位距離は、20m以上に設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-86960号公報
【特許文献2】特開2010-66040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
路面状態を推定する際には、位置毎の路面状態をより細かく把握することが求められている。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、位置毎の路面状態を細かく把握可能な演算装置、演算方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る演算装置は、道路の路面の鉛直方向における高さ位置を示す路面高さ情報を、前記道路上の路面位置毎に取得する路面情報取得部と、路面位置毎の前記路面高さ情報に基づいて、前記道路上の単位距離の第1区間におけるIRI(International Roughness Index)と、単位距離を超えて単位距離の2倍未満の長さの第2区間におけるIRIとを算出するIRI算出部と、前記第1区間におけるIRIと前記第2区間におけるIRIとに基づいて、前記第2区間において前記第1区間と重ならない非重複区間におけるIRIを算出する路面状態算出部と、を含む。
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る演算方法は、道路の路面の鉛直方向における高さ位置を示す路面高さ情報を、前記道路上の路面位置毎に取得するステップと、前記路面位置毎の前記路面高さ情報に基づいて、前記道路上の単位距離の第1区間におけるIRI(International Roughness Index)と、単位距離を超えて単位距離の2倍未満の長さの第2区間におけるIRIとを算出するステップと、前記第1区間におけるIRIと前記第2区間におけるIRIとに基づいて、前記第2区間において前記第1区間と重ならない非重複区間におけるIRIを算出するステップと、を含む。
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係るプログラムは、道路の路面の鉛直方向における高さ位置を示す路高さ情報を、前記道路上の路面位置毎に取得するステップと、前記路面位置毎の前記路面高さ情報に基づいて、前記道路上の単位距離の第1区間におけるIRI(International Roughness Index)と、単位距離を超えて単位距離の2倍未満の長さの第2区間におけるIRIとを算出するステップと、前記第1区間におけるIRIと前記第2区間におけるIRIとに基づいて、前記第2区間において前記第1区間と重ならない非重複区間におけるIRIを算出するステップと、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、位置毎の路面状態を細かく把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態に係る検出システムの模式的なブロック図である。
図2図2は、車両の模式図である。
図3図3は、演算装置の模式的なブロック図である。
図4図4は、道路上の各位置の例を示す模式図である。
図5図5は、IRIの算出を説明するための模式図である。
図6図6は、非重複区間の路面状態の算出フローを説明するフローチャートである。
図7図7は、第2実施形態に係る演算装置の模式的なブロック図である。
図8図8は、位置センサと車輪の位置関係の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0012】
(第1実施形態)
(検出システム)
図1は、本実施形態に係る検出システムの模式的なブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る検出システム1は、車両10と、測定データ取得装置12と、演算装置14とを含む。検出システム1は、演算装置14によって、挙動情報に基づいて道路の路面状態を算出する。路面状態は、本実施形態では路面の凹凸度合いを示す指標である。より詳しくは、本実施形態においては、路面状態とは、IRI(International Roughness Index;国際ラフネス指数)に基づく指標である。
【0013】
検出システム1においては、車両10が、道路を走行しながら挙動情報及び位置情報を検出しつつ、検出した挙動情報及び位置情報を測定データ取得装置12に送信する。挙動情報及び位置情報については後述する。測定データ取得装置12は、例えば道路を管理する主体に管理される装置(コンピュータ)である。測定データ取得装置12は、車両10から送信された挙動情報及び位置情報を、演算装置14に送信する。このように、演算装置14は、測定データ取得装置12を介して挙動情報及び位置情報を取得するが、それに限られない。例えば、検出システム1は、測定データ取得装置12が設けられておらず、演算装置14が、車両10から挙動情報及び位置情報を取得してもよい。
【0014】
(車両)
図2は、車両の模式図である。図2に示すように、車両10は、位置センサ10Aと、挙動センサ10Bと、測定装置10Cとを備える。位置センサ10Aは、自身の位置情報を取得するセンサである。位置センサ10Aの位置情報とは、位置センサ10Aの地球座標を示す情報である。本実施形態では、位置センサ10Aが検出した位置センサ10Aの位置情報を、車両10の位置情報(地球座標)として扱う。位置センサ10Aは、本実施形態ではGNSS(Global Navivation Satelite System)用のモジュールである。なお、図2におけるZ方向は、鉛直方向の上方を指し、図2は鉛直方向上方から車両10を見た場合の模式図といえる。
【0015】
挙動センサ10Bは、車両10の挙動を示す挙動情報を検出するセンサである。挙動情報は、道路を走行中の車両10の挙動を示す情報であれば任意の情報であってよい。本実施形態では、挙動センサ10Bは、車両10の加速度を挙動情報として検出することが好ましい。この場合、挙動センサ10Bは、加速度を検出する加速度センサであり、より好ましくは3軸での加速度を検出する加速度センサである。また、挙動センサ10Bが検出する挙動情報は、加速度であることに限られず、例えば、加速度、車両10の周囲を撮像した画像データ、車両10の速度、車両10の角速度、車両10のステアリング角度、車両10のブレーキ量、車両10のワイパの動作、及び車両10のサスペンションの作動量の少なくとも1つであってよい。なお、車両10の周囲の画像データは、車両10の動きによって変化するため、車両10の挙動を示す情報であるといえる。車両10の周囲の撮像画像を検出する挙動センサ10Bは例えばカメラであり、車両10の速度を検出する挙動センサ10Bは例えば速度センサであり、車両10の速度を検出する挙動センサ10Bは例えば3軸ジャイロセンサであり、車両10のステアリング角度を検出する挙動センサ10Bは例えばステアリングセンサであり、車両10のブレーキ量を検出する挙動センサ10Bは例えばブレーキセンサであり、車両10のワイパの動作を検出する挙動センサ10Bは例えばワイパセンサが挙げられ、車両10のサスペンションの作動量を検出する挙動センサ10Bは例えばサスペンションセンサが挙げられる。
【0016】
本実施形態では、車両10には、複数の挙動センサ10Bが搭載されている。それぞれの挙動センサ10Bは、車両10において、互いに異なる位置に搭載されている。図2の例では、挙動センサ10Bとして、左側の前輪である車輪TR1のZ方向側(鉛直方向上方向側)に設けられる挙動センサ10B1と、右側の前輪である車輪TR2のZ方向側に設けられる挙動センサ10B2と、左側の後輪である車輪TR3のZ方向側に設けられる挙動センサ10B3と、右側の後輪である車輪TR4のZ方向側に設けられる挙動センサ10B4とを含む。ただし、挙動センサ10Bの設けられる位置は任意である。また、挙動センサ10Bの数も、4つであることに限られず任意であり、任意の数であってよい。また、図2の例では車輪TRの数は4つであるが、その数は任意であり、例えば、2つ以上の任意の数であってよい。また、図2の例では、挙動センサ10B1~10B4は、同じ種類の挙動情報(ここでは加速度)を検出するものであるが、それぞれの挙動センサ10Bは、異なる種類の挙動情報を検出するものであってよい。例えば、同じ種類の挙動情報を検出する複数の挙動センサ10B(例えば複数の加速度センサ)と、それとは異なる挙動情報を検出する挙動センサ10B(例えば速度センサ)とを設けてもよい。
【0017】
測定装置10Cは、位置センサ10A及び挙動センサ10Bを制御して車両10の位置情報と挙動情報を検出させて、検出させた位置情報と挙動情報とを記録する装置である。すなわち、測定装置10Cは、位置情報と挙動情報とを記録するデータロガーとして機能する。測定装置10Cは、コンピュータであるとも言え、制御部10C1と、記憶部10C2と、通信部10C3とを含む。制御部10C1は、演算装置であり、例えばCPU(Central Processing Unit)などの演算回路を含む。記憶部10C2は、制御部10C1の演算内容やプログラム、車両10の位置情報及び挙動情報などの各種情報を記憶するメモリであり、例えば、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)のような主記憶装置と、フラッシュメモリやHDD(Hard Disk Drive)などの不揮発性の記憶装置のうち、少なくとも1つ含む。なお、記憶部10C2が保存する制御部10C1用のプログラムは、測定装置10Cが読み取り可能な記録媒体に記憶されていてもよい。通信部10C3は、外部の装置と通信を行う通信モジュールであり、例えばアンテナなどである。
【0018】
制御部10C1は、記憶部10C2に記憶されたプログラムを読み出して、位置センサ10A及び挙動センサ10Bの制御を実行する。制御部10C1は、車両10が道路を走行中に、所定時間ごとに位置センサ10Aに車両10の位置情報を検出させて、所定時間毎に挙動センサ10Bに挙動情報を検出させて、検出させた位置情報及び挙動情報を取得する。すなわち、制御部10C1は、車両10が所定時間走行するたびに、位置センサ10A及び挙動センサ10Bに検出を実行させる。ここでの所定時間とは、例えば1分など、一定の時間であることが好ましいが、所定時間は一定の時間であることに限られず、任意の長さであってよい。すなわち、所定時間は都度変化してもよい。
【0019】
制御部10C1は、取得した挙動情報と位置情報とを関連付けて、記憶部10C2に記憶させる。すなわち、同じタイミングで検出された挙動情報と位置情報とが関連付けられる。記憶部10C2には、関連付けられたこれらの情報が、検出されたタイミング毎に記憶される。なお、関連付けられたこれらの情報は、同じタイミングで検出されたものであるが、厳密に同じタイミングであることに限られず、異なるタイミングで検出されたものであってよい。この場合、例えば、検出タイミングの差が所定値以下となる挙動情報と位置情報とが、同じタイミングで検出されたものとして扱われて、対応付けられる。なお、上記では全てのセンサのサンプリング周期が同じ前提で説明したが、各センサのサンプリング周期が異なる場合には適宜調整を行う。
【0020】
制御部10C1は、関連付けられた挙動情報と位置情報とを、通信部10C3を介して、測定データ取得装置12に送信する。測定データ取得装置12は、車両10から受信した挙動情報と位置情報とを、演算装置14に送信する。なお、測定データ取得装置12を設けない場合は、制御部10C1は、挙動情報と位置情報とを、演算装置14に直接送信してもよい。
【0021】
(演算装置)
図3は、演算装置の模式的なブロック図である。図3に示すように、演算装置14は、例えばコンピュータであり、通信部20と、記憶部22と、制御部24とを含む。通信部20は、外部の装置と通信を行う通信モジュールであり、例えばアンテナなどである。記憶部22は、制御部24の演算内容やプログラムを記憶するメモリであり、例えば、RAMと、ROMのような主記憶装置と、フラッシュメモリやHDDなどの不揮発性の記憶装置のうち、少なくとも1つを含む。なお、記憶部22が保存する制御部24用のプログラムは、演算装置14が読み取り可能な記録媒体に記憶されていてもよい。
【0022】
制御部24は、演算装置であり、例えばCPUなどの演算回路を含む。制御部24は、路面情報取得部30と、IRI算出部32と、路面状態算出部34と、位置情報取得部36と、挙動情報取得部38と、学習部40と、演算部42とを含む。制御部24は、記憶部22からプログラム(ソフトウェア)を読み出して実行することで、路面情報取得部30とIRI算出部32と路面状態算出部34と位置情報取得部36と挙動情報取得部38と学習部40と演算部42とを実現して、それらの処理を実行する。なお、制御部24は、1つのCPUによってこれらの処理を実行してもよいし、複数のCPUを備えて、それらの複数のCPUで、処理を実行してもよい。また、路面情報取得部30とIRI算出部32と路面状態算出部34と位置情報取得部36と挙動情報取得部38と学習部40と演算部42との少なくとも一部を、ハードウェアで実現してもよい。
【0023】
(教師データ用の路面状態の算出)
本実施形態においては、演算装置14は、路面上の各位置におけるZ方向での位置(高さ)が既知の道路を走行した車両10の挙動情報と、その道路の路面状態とを教師データとして、挙動情報と路面状態との対応関係を学習モデルに機械学習させる。そして、演算装置14は、機械学習済みの学習モデルに、Z方向での位置や路面状態が未知の道路を走行した車両10の挙動情報を入力することで、その道路の路面状態を算出する。ここで、教師データに用いる路面状態としては、IRIを用いることが考えられる。しかしながら、IRIは、20m以上の単位距離における路面状態の平均値として算出されるものである。このように、IRIにおいては単位距離が長いため、サンプリングレートが長くなってしまい、IRIを教師データとすると、学習モデルの精度が低下するおそれがある。それに対して、本実施形態においては、後述するように非重複区間S3における路面状態を算出して、教師データ用の路面状態とすることで、学習モデルの精度の低下を抑制する。
【0024】
以降においては、非重複区間S3における路面状態の算出方法について説明し、その後、学習モデルを用いた、路面状態が未知の道路における路面状態の算出方法について説明する。
【0025】
(路面情報取得部)
図4は、道路上の各位置の例を示す模式図である。路面情報取得部30は、道路の路面のZ方向における位置(高さ)を示す路面高さ情報を取得する。路面情報取得部30は、路面高さ情報を、その道路上の位置毎に取得する。路面情報取得部30は、道路の延在方向における位置毎に路面高さ情報を取得し、また、道路の延在方向に交差する方向における位置毎に路面高さ情報を取得することが好ましい。図4は、道路R上の各位置Pを示しており、路面情報取得部30は、それぞれの位置Pにおける、路面のZ方向における位置を、路面高さ情報として取得する。図4においては、位置Pとして、道路の延在方向に並ぶ位置PA1~位置PA8と、道路の延在方向に並ぶ位置PB1~位置PB8と、道路の延在方向に並ぶ位置PC1~位置PC8とが示されている。位置PA1~位置PA8と、位置PB1~位置PB8と、位置PC1~位置PC8とは、道路の延在方向に交差する方向に並んでいる。なお、隣り合う位置P同士の距離は、すなわち路面高さ情報が取得される位置同士の距離は、任意の長さであってよいが、IRIの単位距離である20mより短く、例えば0.1mであってよい。
【0026】
路面情報取得部30は、位置P毎の路面高さ情報を、任意の方法で取得してよい。例えば、路面高さ情報は予め設定(測定)されていてよく、路面情報取得部30は、予め測定された路面のZ方向における位置の情報と、その路面高さ情報の測定位置の情報(例えば測定位置の地球座標)とを、路面高さ情報として取得してもよい。また例えば、測定車により、LIDAR(Light Detection and Ranging)などで路面高さ情報が測定されて、路面情報取得部30は、その測定結果を取得してもよい。
【0027】
(IRI算出部)
図5は、IRIの算出を説明するための模式図である。IRI算出部32は、位置P毎の路面高さ情報に基づいて、道路R上の第1区間におけるIRIと、第2区間におけるIRIとを算出する。
【0028】
IRI算出部32は、公知の方法を用いて、IRIを算出する。すなわち、IRI算出部32は、一輪の車両モデルが、IRIを算出する区間を時速80kmで走行するシミュレーションを実行することで、IRIを算出する。具体的には、IRI算出部32は、位置P毎の路面高さ情報から、IRIの算出対象となる区間の各位置のZ方向の位置(高さ)を設定する。そして、IRI算出部32は、一輪の車両モデルが、設定した高さとなる区間を時速80kmで走行する解析を実行して、単位時刻毎の、車輪のサスペンションのばね下のZ方向の位置と、ばね上のZ方向の位置とを算出する。IRI算出部32は、車輪のサスペンションのばね下のZ方向の位置と、ばね上のZ方向の位置との差分から、その区間におけるIRIを算出する。具体的には、IRI算出部32は、次の式(1)により、IRIを算出する。
【0029】
【数1】
【0030】
式(1)において、Lは、区間の長さ(距離)であり、vは車両モデルの速度であり、Zは、ばね上のZ方向の位置であり、Zは、ばね下のZ方向の位置である。すなわち、IRI算出部32は、ばね上のZ方向の位置とばね下のZ方向の位置との差分を、区間における位置毎に合計して、その合計値を区間の距離で除した値を、IRIとして算出する。
【0031】
本実施形態では、IRI算出部32は、位置P毎の路面高さ情報に基づいて、道路R上の第1区間におけるIRIを算出する。この場合、図5に示すように、IRI算出部32は、道路R上の始点位置(スタート地点)PS1aと終点位置(ゴール地点)PS1bとを設定する。IRI算出部32は、始点位置PS1aを道路R上の任意の位置(地球座標)に設定し、始点位置PS1aから第1単位距離だけ離れた位置を、終点位置PS1bに設定する。第1単位距離は、IRIにおける単位距離以上の長さであり、言い換えれば、20m以上である。IRI算出部32は、このように設定した始点位置PS1aから終点位置PS1bまでの区間を、第1区間S1として設定する。そして、IRI算出部32は、位置P毎の路面高さ情報に基づいて、第1区間S1上の各位置におけるZ方向の位置(高さ)を設定して、上記の方法により、第1区間S1のIRIを算出する。なお、IRI算出部32は、路面高さ情報が示す位置Pのいずれかと重なるように、始点位置PS1aと終点位置PS1bとを設定し、第1区間S1と重なるそれぞれの位置PのZ方向の位置を、第1区間S1上の各位置におけるZ方向の位置とする。ただしそれに限られず、IRI算出部32は、始点位置PS1aと終点位置PS1bとの少なくとも一方を、路面高さ情報が示す位置Pからずれるように設定してよい。
【0032】
また、IRI算出部32は、位置P毎の路面高さ情報に基づいて、道路R上の第2区間S2におけるIRIを算出する。IRI算出部32は、第1区間S1と重複し、かつ第1区間S1よりも所定距離Wだけ長くなるように、第2区間を設定する。ここでの所定距離Wは、任意の長さに設定されてよいが、IRIにおける単位距離(20m)未満であることが好ましく、隣合う位置P同士の距離(路面高さ情報が取得される位置同士の距離)と同じであることがより好ましい。本実施形態では、第2区間S2は、第1区間S1(第1単位距離)を超えて、かつ、第1区間S1(第1単位距離)の2倍未満の長さである。具体的には、IRI算出部32は、第1区間S1の始点PA1aから第1区間S1の終点PS1bを通り、終点PS1bから所定距離Wだけ離れた終点PS2bまでの区間を、第2区間S2として設定する。すなわち、第2区間S2は、始点PA1aから終点PS1bまでは、第1区間S1と重なり、終点PS1bから終点PS2bまでは、第1区間S1と重ならない。以下、第2区間S2のうちで、第1区間S1と重ならない区間(終点PS1bから終点PS2bまでの区間)を、非重複区間S3と記載する。IRI算出部32は、位置P毎の路面高さ情報に基づいて、第2区間S2上の各位置におけるZ方向の位置(高さ)を設定して、上記の方法により、第2区間S2のIRIを算出する。
【0033】
IRI算出部32は、第1区間S1及び第2区間S2の位置を異ならせて、第1区間S1におけるIRIと第2区間S2におけるIRIとを、第1区間S1及び第2区間S2の位置毎に算出する。例えば、IRIを算出済みの第1区間S1を第1区間S1Aとし、これからIRIを算出する第1区間S1及び第2区間S2を、第1区間S1B及び第2区間S2Bとする。この場合、IRI算出部32は、第1区間S1Aの始点位置PS1aとは異なる位置に、これからIRIを算出する第1区間S1Bの始点位置PS1aを設定する。そして、IRI算出部32は、第1区間S1Bの始点位置PS1aから第1単位距離だけ離れた位置を、第1区間S1Bの終点位置PS1bに設定することで、第1区間S1Bを設定する。IRI算出部32は、この第1区間S1BのIRIを、上記と同様の方法で算出する。この場合、位置が異なる第1区間S1のそれぞれは、長さが同じであることが好ましく、言い換えれば、それぞれの第1区間S1の始点PS1aから終点PS1bまでの距離(第1単位距離)は、同じであることが好ましい。
【0034】
また、IRI算出部32は、第1区間S1Bと重複し、かつ第1区間S1Bよりも所定距離Wだけ長くなるように、第2区間S2Bを設定する。すなわち、IRI算出部32は、第1区間S1Bの始点位置PS1aから、第1区間S1Bの終点位置PS1bを通り、終点位置PS1bから所定距離Wだけ離れた終点位置PS2bまでの区間を、第2区間S2Bとして設定する。IRI算出部32は、この第2区間S2BのIRIを、上記と同様の方法で算出する。この場合、位置が異なる第2区間S2のそれぞれは、長さが同じであることが好ましく、言い換えれば、それぞれの第2区間S2の始点PS1aから終点PS2bまでの距離は、同じであることが好ましい。すなわち、それぞれの第2区間S2についての、所定距離W(非重複区間S3の長さ)は、同じであることが好ましい。
【0035】
以上説明した、第1区間S1及び第2区間S2の位置毎のIRIの算出について、図4を例に説明する。例えば、図4において、位置PA1を始点位置として位置PA4を終点位置とする第1区間S1Aと、位置PA1を始点位置として位置PA4を通り位置PA5を終点位置とする第2区間S2Aとが設定されたとする。この場合、IRI算出部32は、位置PA1から位置PA4までの第1区間S1AのIRIと、位置PA1から位置PA5までの第2区間S2AのIRIとを算出する。また、IRI算出部32は、更に、位置PA2を始点位置として位置PA5を終点位置とする第1区間S1Bと、位置PA2を始点位置として位置PA6を終点位置とする第2区間S2Bとを設定し、位置PA2から位置PA5までの第1区間S1BのIRIと、位置PA2から位置PA6までの第2区間S2BのIRIとを算出する。このように、IRI算出部32は、第1区間S1や第2区間S2の長さを一定にしつつ、始点位置や終点位置をずらすことで、第1区間S1及び第2区間S2の位置を異ならせて、各位置における第1区間S1及び第2区間S2のIRIを算出する。なお、以上の説明では、位置が異なる第1区間S1及び第2区間S2のIRIを2セット算出することを例にしたが、セット数は2つに限られず3つ以上の任意の複数であってよい。
【0036】
(路面状態算出部)
路面状態算出部34は、第1区間S1のIRIと第2区間のIRIとに基づいて、前記第2区間S2において第1区間S1と重ならない非重複区間S3における路面状態を算出する。本実施形態では、路面状態算出部34は、第2区間のIRIと第1区間S1のIRIとの差分に基づいて、非重複区間S3の路面状態を算出する。さらに言えば、路面状態算出部34は、次の式(2)により、非重複区間S3の路面状態IRIS3を算出することが好ましい。
【0037】
IRIS3=(IRIS×LS2-IRIS1×LS1)/LS2 ・・・(2)
【0038】
ここで、IRIS1は、第1区間S1のIRIであり、LS1は、第1区間の長さであり、IRIS2は、第2区間S2のIRIであり、LS2は、第2区間の長さである。
【0039】
このように、本実施形態では、第2区間のIRIと第1区間S1のIRIとの差分を取ることで、第1区間S1の終点PS1bと第2区間S2の終点PS2bとの間の非重複区間S3の路面状態を算出する。非重複区間S3の路面状態は、非重複区間S3の長さ(所定距離W)におけるIRIに相当する値といえる。
【0040】
路面状態算出部34は、位置が異なる第1区間S1及び第2区間S2毎に、非重複区間S3の路面状態を算出する。すなわち、位置が異なる第1区間S1及び第2区間S2のセット毎に、非重複区間S3の位置も異なることになるため、路面状態算出部34は、第1区間S1及び第2区間S2のセット毎に、上記と同様の演算を実行することで、位置が異なるそれぞれの非重複区間S3についての、路面状態を算出する。すなわち図4の例では、路面状態算出部34は、位置PA1から位置PA4までの第1区間S1のIRIと、位置PA1から位置PA5までの第2区間S2のIRIとに基づいて、位置PA4から位置PA5までの非重複区間S3の路面状態を算出する。また、路面状態算出部34は、位置PA2から位置PA5までの第1区間S1のIRIと、位置PA2から位置PA6までの第2区間S2のIRIとに基づいて、位置PA5から位置PA6までの非重複区間S3の路面状態を算出する。すなわち、路面状態算出部34は、道路R上の各位置について、隣り合う位置P同士の距離毎に(所定距離W毎に)、路面状態を算出するといえる。
【0041】
以上説明した非重複区間の路面状態の算出の処理フローを説明する。図6は、非重複区間の路面状態の算出フローを説明するフローチャートである。図6に示すように、演算装置14は、路面情報取得部30により、道路Rの路面位置毎の高さを示す路面高さ情報を取得し(ステップS10)、IRI算出部32により、路面高さ情報に基づいて、第1区間のIRIと第2区間のIRIとを算出し(ステップS12)、路面状態算出部34により、第1区間のIRIと第2区間のIRIとに基づき、非重複区間S3の路面状態(IRI)を算出する(ステップS14)。その後、他の路面位置における路面高さ情報が残っている場合には(ステップS16;No)、すなわち全ての路面位置での路面高さ情報を用いた非重複区間S3の路面状態の算出処理が終了してない場合には、始点位置をずらして(ステップS18)ステップS12に戻り、別の位置における第1区間S1と第2区間S2のIRIを算出して、路面位置毎の非重複区間S3の路面状態を算出する。一方、他の路面位置における路面高さ情報が残っていない場合には(ステップS16;Yes)、すなわち全ての路面位置での路面高さ情報を用いた非重複区間S3の路面状態の算出処理が終了した場合に本処理を終了する。なお、本フローでは、第1区間S1及び第2区間S2のIRIを算出する処理と非重複区間S3を算出する処理とを繰り返すが、この順番で処理を繰り返すことに限られない。例えば、各位置における第1区間のIRIと第2区間のIRIを算出した後に、各位置における非重複区間S3の路面状態を算出してもよい。
【0042】
以上説明したように、路面状態算出部34は、長さが所定距離Wとなる非重複区間S3の路面状態を、道路R上の位置毎に算出する。従って、単位距離が20mと定められているIRIよりも、短い区間毎の路面状態を算出することが可能となるため、位置毎の路面状態を細かく把握できる。
【0043】
(学習モデルの学習処理)
次に、非重複区間S3の路面状態を教師データとして学習モデルを学習させる処理について説明する。
【0044】
(位置情報取得部と挙動情報取得部)
学習モデルを学習させる場合においては、車両10に、非重複区間S3の路面状態が算出された道路R(高さが既知の道路R)を走行させつつ、挙動情報と車両10の位置情報とを検出させる。演算装置14の位置情報取得部36は、道路Rを走行中に位置センサ10Aが検出した車両10の位置情報を取得する。また、演算装置14の挙動情報取得部38は、道路Rを走行中に挙動センサ10Bが検出した車両10の挙動情報を取得する。
【0045】
(学習部)
学習部40は、道路Rを移動した車両10の挙動情報と、非重複区間S3における路面状態とを教師データとして、学習モデルに機械学習させる。具体的には、学習部40は、道路Rを移動した車両10の挙動情報に対応付けられた車両10の位置情報に基づいて、車両10の挙動情報と非重複区間S3における路面状態とを対応付ける。すなわち例えば、学習部40は、車両10の位置情報から所定距離内(好ましくは車両10の位置と重なる位置)にある非重複区間S3を抽出する。そして、学習部40は、その車両10の位置情報に対応付けられた挙動情報と、抽出した非重複区間S3の路面状態とを、対応付ける。学習部40は、挙動情報を入力値とし、その挙動情報に対応付けられた非重複区間S3の路面状態を出力値としたデータセットを、教師データとして設定して、その教師データを学習モデルに入力する。この場合、学習部40は、車両10の挙動情報毎に、すなわち位置毎に、挙動情報と非重複区間S3の路面状態とからなるデータセットを複数準備して、複数のデータセットのそれぞれを学習モデルに入力することが好ましい。これにより、学習モデルは、挙動情報とその挙動情報が検出された位置における路面状態との対応関係を機械学習して、挙動情報が入力されたら、その挙動情報が検出された位置における路面状態を算出可能なモデル(プログラム)となる。
【0046】
なお、学習モデルは、ディープラーニングによって学習された学習モデルであり、ディープラーニングによって学習された分類器を構成するニューラルネットワークを定義するモデル(ニューラルネットワークの構成情報)と、変数とで構成される。学習モデルは、入力されたデータに基づき、そのデータのラベルを判定できるものである。本実施形態の例では、学習モデルは、CNN(Conventional Neural Network:畳み込みニューラルネットワーク)モデルであるが、CNNモデルに限られず、任意の方式の学習モデルであってもよい。
【0047】
(未知の道路の路面状態の算出)
(演算部)
演算装置14の演算部42は、学習済みの学習モデルを用いて、路面状態や高さが未知の道路の路面状態を算出する。具体的には、位置情報取得部36及び挙動情報取得部38は、路面状態が未知の道路を移動中の車両10により検出された、車両10の位置情報及び挙動情報を取得する。演算部42は、取得した挙動情報を、学習済みの学習モデルに入力する。学習モデルにおいては、挙動情報が入力データとして入力されて、演算が実行される。その結果、学習モデルからは、その挙動情報が検出された位置における路面状態が、出力データとして出力される。演算部42は、出力データとして出力された路面状態を、その道路の路面状態として算出するといえる。演算部42は、車両10の位置情報が示す位置毎の挙動情報を学習モデルに入力して、道路の位置毎の路面状態を算出する。
【0048】
以上説明したように、本実施形態においては、非重複区間S3の路面状態を教師データとした学習モデルを用いて、道路の路面状態を算出する。本実施形態によると、単位距離が20mと定められているIRIではなく、より短い区間毎に設定可能な非重複区間S3の路面状態を教師データとすることで、位置毎の路面状態を細かく把握でき、学習モデルによる路面状態の算出精度を向上させることができる。
【0049】
ただし、非重複区間S3の路面状態の用途は、学習モデル用の教師データに限られず、任意の用途に用いてよい。例えば、演算装置14は、算出した非重複区間S3の路面状態の情報を出力するものであってよく、非重複区間S3の路面状態に基づいて任意の処理を行ってもよいし、非重複区間S3の路面状態を、他の装置に送信してもよいし、図示しない演算装置14の表示装置に表示させてもよい。
【0050】
(効果)
以上説明したように、本実施形態に係る演算装置14は、道路Rの路面の鉛直方向における高さ位置を示す路面高さ情報を、道路R上の路面位置毎に取得する路面情報取得部30と、路面位置毎の路面高さ情報に基づいて、前記道路上の単位距離(第1単位距離)の第1区間S1におけるIRIと、第1区間と重複し、かつ単位距離(第1単位距離)を超えて単位距離(第1単位距離)の2倍未満の長さの第2区間S2におけるIRIとを算出するIRI算出部32と、第1区間S1におけるIRIと第2区間S2におけるIRIとに基づいて、第2区間S2において第1区間S1と重ならない非重複区間S3における路面状態(IRI)を算出する路面状態算出部34と、を含む。本実施形態によると、第1区間S1のIRIと第2区間S2のIRIとから、所定距離Wとなる非重複区間S3の路面状態を算出する。また、第2区間S2が第1区間S1より長いことで、非重複区間S3を第1区間S1より短くでき、第2区間S2が第1区間の2倍未満であることで、非重複区間S3を第1区間S1より短くして、位置毎の路面状態を細かく把握できるといえる。例えば、第1区間S1(第1単位距離)が20mである場合には、第2区間S2は20mより長く40m未満となるため、非重複区間S3は0mより長く(例えば0.1mなど)20m未満(例えば19mなど)となり、位置毎の路面状態を第1区間S1より細かく把握できる。従って、本実施形態によると、位置毎の路面状態を細かく把握できる。
【0051】
IRI算出部32は、第1区間S1及び第2区間S2の始点位置を異ならせて、第1区間S1におけるIRIと第2区間S2におけるIRIとを、位置毎に算出し、路面状態算出部34は、非重複区間S3における路面状態(IRI)を、非重複区間の位置毎に算出する。本実施形態によると、道路Rの位置毎に非重複区間S3の路面状態を算出するため、位置毎の路面状態を細かく把握できる。
【0052】
IRI算出部32は、位置毎の第1区間S1の距離を同じとし、位置毎の第2区間S2の距離を同じとする。本実施形態によると、それぞれの第1区間S1や第2区間S2の長さを同じにするため、位置毎の路面状態を高精度に算出できる。
【0053】
IRI算出部32は、第1区間S1の始点PS1aから、第1区間S1の終点PS1bを通り、非重複区間S3の終点PS2bまでの区間を第2区間S2として、第2区間S2におけるIRIを算出する。本実施形態によると、第2区間S2をこのように設定することで、位置毎の路面状態を高精度に算出できる。
【0054】
演算装置14は、学習部40を更に含む。学習部40は、非重複区間S3を移動した車両10の挙動を示す挙動情報と、非重複区間S3における路面状態とを教師データとして、学習モデルに、挙動情報と路面状態との対応関係を機械学習させる。本実施形態によると、非重複区間S3の路面状態を教師データとすることで、学習モデルによる路面状態の算出精度を向上させることができる。
【0055】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第1実施形態においては、位置センサ10Aが検出した位置センサ10Aの位置情報を、車両10の位置情報として扱った。それに対して、第2実施形態においては、位置センサ10Aの位置情報と、位置センサ10Aと車輪TRとの相対位置を示す関係情報とに基づいて、車輪TRの位置情報を算出し、車輪TRの位置情報を車両10の位置情報として扱う。第2実施形態において、第1実施形態と構成が共通する箇所は、説明を省略する。
【0056】
図7は、第2実施形態に係る演算装置の模式的なブロック図である。図8は、位置センサと車輪の位置関係の例を示す模式図である。図7に示すように、第2実施形態に係る演算装置14aの制御部24は、関係情報取得部44と車輪位置算出部46と進行方向取得部48とを更に含む。
【0057】
第2実施形態においては、関係情報取得部44は、位置センサ10Aと車輪TRとの相対位置を示す関係情報を取得する。関係情報は、車両10における位置センサ10Aの位置(車両10を基準とした座標系における位置センサ10Aの位置)と、車両における車輪TRの位置(車両10を基準とした座標系における車輪TRの位置)との位置関係を示す情報といえる。本実施形態では、関係情報取得部44は、車両10における位置センサ10Aの位置と、車両10の幅(車幅)と、車両10のホイールベース(車を真横から見た時、前輪の中心から後輪の中心までの距離)とのジオメトリ情報を、関係情報として取得する。関係情報取得部44は、任意の方法で関係情報を取得してよい。例えば、関係情報が予め設定(測定)されており、関係情報取得部44は、設定された関係情報を取得してよい。
【0058】
第2実施形態においては、位置情報取得部36は、道路Rを走行中に位置センサ10Aが検出した位置センサ10Aの位置情報を取得する。車輪位置算出部46は、位置センサ10Aの位置情報と、関係情報とに基づき、車輪TRの位置情報を算出する。車輪TRの位置情報とは、例えば地球座標系における車輪TRの位置を示す情報である。例えば、車輪位置算出部46は、位置センサ10Aの位置から、関係情報が示す位置センサ10Aに対する車輪TRの相対位置だけずれた位置を、車輪TRの位置として算出する。図8の例では、車輪位置算出部46は、車両10における位置センサ10Aの位置、車両10の幅、及びホイールベースから、車両10の座標系における、位置センサ10Aの位置P10Aに対する車輪TR1の位置PTR1(車輪TR1の相対位置)と、位置センサ10Aの位置P10Aに対する車輪TR2の位置PTR2(車輪TR2の相対位置)と、位置センサ10Aの位置P10Aに対する車輪TR3の位置PTR3(車輪TR3の相対位置)と、位置センサ10Aの位置P10Aに対する車輪TR4の位置PTR4の位置(車輪TR4の相対位置)を算出する。そして、車輪位置算出部46は、位置センサ10Aの位置から車輪TR1の相対位置だけずれた位置を、車輪TR1の位置として算出し、位置センサ10Aの位置から車輪TR2の相対位置だけずれた位置を、車輪TR2の位置として算出し、位置センサ10Aの位置から車輪TR3の相対位置だけずれた位置を、車輪TR3の位置として算出し、位置センサ10Aの位置から車輪TR4の相対位置だけずれた位置を、車輪TR4の位置として算出する。
【0059】
本実施形態では、車輪位置算出部46は、位置センサ10Aの位置情報と、関係情報とに加えて、進行方向取得部48が取得した車両10の進行方向(地球座標系における車両10の向き)の情報にも基づいて、車輪TRの位置情報を算出する。すなわち、車両10の座標系における位置センサ10Aと車輪TRとの相対位置は、車両10の進行方向に限られず一定であるが、地球座標系における位置センサ10Aに対する車輪TRの位置は、車両10の進行方向によって異なる。従って、車輪位置算出部46は、車両10の進行方向も用いて車輪TRの位置情報を算出することで、車輪TRの位置情報を高精度に算出できる。進行方向取得部48は、車両10の進行方向を任意の方法で取得してよいが、例えば、位置センサ10Aの位置情報が検出されたタイミングにおける車両10の操舵角や、位置センサ10Aの位置情報が検出されたタイミングにおいてジャイロセンサにより検出された、進行方向の情報などを用いてよい。
【0060】
ただし、車両10の進行方向を用いて車輪TRの位置情報を算出することは必須ではない。例えば、車輪TR毎に位置センサ10Aを設けた場合には、地球座標系における位置センサ10Aに対する車輪TRの位置が一定となるため、車両10の進行方向は不要となる。
【0061】
第2実施形態においては、このように算出した車輪TRの位置情報を、車両10の位置情報として扱う。具体的には、第2実施形態においては、挙動情報と、非重複区間S3における路面状態とを教師データとして学習モデルに学習させる際に、車輪TRの位置情報を、車両10の位置情報として用いる。すなわち、第2実施形態においては、学習部40は、車両10の挙動情報に対応付けられた車輪TRの位置情報(車両10の位置情報)に基づいて、車両10の挙動情報と非重複区間S3における路面状態とを対応付ける。すなわち例えば、学習部40は、車輪TRの位置から所定距離内(好ましくは車輪TRの位置と重なる位置)にある非重複区間S3を抽出する。そして、学習部40は、その車輪TRの位置に対応付けられた挙動情報と、抽出した非重複区間S3の路面状態とを、対応付けて、教師データのデータセットとする。
【0062】
以降の学習処理や、機械学習済みの学習モデルを用いた路面状態の算出処理は、第1実施形態と同様なので、詳細な説明を省略するが、例えば、第2実施形態においては、路面状態を算出する場合においては、車輪位置算出部46は、路面状態が未知の道路を移動中の車両10により検出された位置センサ10Aの位置情報と、関係情報とに基づき、車輪TRの位置情報を算出する。演算部42は、車輪TRの位置情報を、車両10の位置情報として用い、車輪TRの位置情報(位置センサ10Aの位置情報)が検出された際の挙動情報を学習モデルに入力することで、その挙動情報が検出された際の車輪TRの位置(車両10の位置)における路面状態を算出する。ただし、演算部42は、挙動情報を学習モデルに入力することにより路面状態を算出することに限られず、学習モデルを用いなくてもよい。すなわち、演算部42は、車輪TRの位置情報(位置センサ10Aの位置情報)が検出された際の挙動情報に基づき、任意の方法で、その挙動情報が検出された際の車輪TRの位置(車両10の位置)における路面状態を算出してもよい。
【0063】
このように、第2実施形態においては、車輪TRの位置情報を用いて、挙動情報と、非重複区間S3における路面状態とを対応付ける。そのため、挙動情報が検出された位置をより高精度に設定することが可能となり、挙動情報と路面状態との対応付けをより高精度にして、学習モデルの算出精度を向上させることができる。なお、第2実施形態においては、第1実施形態と同様に、挙動情報と、非重複区間S3における路面状態を教師データとしたが、それに限られず、道路R上の任意の位置(区間)における路面状態を教師データとしてよい。例えば、第2実施形態においては、20mの区間におけるIRIを教師データとしてもよい。
【0064】
ただし、第2実施形態における車輪TRの位置情報は、教師データ用の挙動情報と路面状態とを対応付ける用途や、挙動情報が検出された位置における路面状態の算出する用途に限られず、任意の用途に用いてよい。例えば、演算装置14は、車輪TRの位置情報を出力するものであってよく、車輪TRの位置情報に基づいて任意の処理を行ってもよいし、車輪TRの位置情報を、他の装置に送信してもよいし、図示しない演算装置14の表示装置に表示させてもよい。
【0065】
以上説明したように、第2実施形態に係る演算装置14aは、道路を移動する車両10に搭載された位置センサ10Aによって検出された、位置センサ10Aの位置情報を取得する位置情報取得部36と、車両10における位置センサ10Aの位置と、車両10における車輪TRの位置との位置関係を示す関係情報を取得する関係情報取得部44と、位置センサ10Aの位置情報と関係情報とに基づいて、車輪TRの位置情報を算出する車輪位置算出部46と、を含む。本実施形態によると、車輪TRの位置情報を算出することで、車両10の位置をより細かく把握することが可能となるため、車輪TRの位置情報を用いることで、位置毎の路面状態を細かく把握することができる。例えば、本実施形態においては、第1実施形態と同様に、非重複区間S3の路面状態を算出するため、位置毎の路面状態を細かく(例えば数十cm単位で)算出する。また、本実施形態によると、車輪TRの位置情報により、挙動情報が検出された位置を細かく(例えば数十cm単位で)把握できる把握できる。すなわち、本実施形態によると、位置が細かく把握できる車輪TRの位置情報を用いて、挙動情報を路面状態に対応付けることが可能となるため、位置毎の路面状態を、細かく、かつ高精度に算出することが可能となる。
【0066】
また、車輪位置算出部46は、車両10の進行方向にも基づいて、車輪TRの位置情報を算出する。これにより、車輪TRの位置をより高精度に算出できる。
【0067】
また、演算装置14aは、学習部40を含む。学習部40は、車輪TRの位置情報により、挙動情報と道路Rの路面状態とを対応付けて、対応付けた挙動情報と路面状態とを教師データとして、学習モデルに、挙動情報と路面状態との対応関係を機械学習させる。これにより、挙動情報と路面状態との対応付けをより高精度にして、学習モデルの算出精度を向上させることができる。
【0068】
また、演算装置14aは、挙動情報取得部38と演算部42とを含む。挙動情報取得部38は、道路を移動する車両10の挙動を示す挙動情報を取得する。演算部42は、挙動情報に基づいて、車輪TRの位置情報が示す位置における道路の路面状態を算出する。より好ましくは、演算部42は、挙動情報と路面状態との対応関係を機械学習した学習モデルに、取得された挙動情報を入力することで、車輪TRの位置情報が示す位置における道路の路面状態を算出する。このように、第2実施形態においては、路面状態の算出の際に、車輪位置算出部46によって算出した車輪TRの位置を用いる。すなわち、第2実施形態においては、挙動情報が検出された位置を車輪TRの位置として扱い、車輪TRの位置における路面状態を算出することで、位置毎の路面状態を高精度に算出することが可能となる。
【0069】
以上、本発明の実施形態及び実施例を説明したが、これら実施形態等の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態等の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0070】
1 検出システム
10 車両
10A 位置センサ
10B 挙動センサ
14 演算装置
30 路面情報取得部
32 IRI算出部
34 路面状態算出部
36 位置情報取得部
38 挙動情報取得部
40 学習部
42 演算部
44 関係情報取得部
46 車輪位置算出部
S1 第1区間
S2 第2区間
S3 非重複区間
TR 車輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8