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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151421
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】堰板、及び、堰板の設置方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 13/02 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
E02B13/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061013
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100203460
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 肇
(72)【発明者】
【氏名】小林 剛士
(57)【要約】
【課題】様々な幅の水路に設置可能な堰板を提供する。
【解決手段】
第1方向を流路方向とし、第1方向と直交する第2方向を幅方向とする排水桝100に設置される堰板10である。第1対向面を有する板状の第1分割板20と、第1対向面と第1方向で対向する第2対向面を有する第2分割板40と、を備える。第1対向面には、第1方向において対向する側へ突出し、第2方向へ延びる凸部31,32が設けられており、第2対向面には、第2方向へ延び、凸部31,32と係合可能な凹部が設けられておいる。第1分割板20と第2分割板40とは、凸部31,32の外面と凹部の内面とが摺動して第2方向に相対移動可能である。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向を流路方向とし、前記第1方向と直交する第2方向を幅方向とする水路に設置される堰板であって、
第1対向面を有する板状の第1分割板と、
前記第1対向面と前記第1方向で対向する第2対向面を有する第2分割板と、を備え、
前記第1対向面には、前記第1方向において対向する側へ突出し、前記第2方向へ延びる凸部が設けられており、
前記第2対向面には、前記第2方向へ延び、前記凸部と係合可能な凹部が設けられており、
前記第1分割板と前記第2分割板とは、前記凸部の外面と前記凹部の内面とが摺動して前記第2方向に相対移動可能である、堰板。
【請求項2】
前記凸部は、
前記第1方向において対向する側に向けて立設し、前記第2方向へ延びる第1側面部と、
前記第1方向側の先端に設けられ、前記第2方向へ延びる先端面と、により構成され、
前記凹部は、
前記第1方向おいて対向する側に向けて立設して前記第2方向へ延び、前記第1側面部に対して摺動可能な第2側面部と、
前記対向する側の奥側に位置して前記第2方向へ延び、前記先端面に対して摺動可能な底面と、により構成されている、請求項1に記載の堰板。
【請求項3】
前記第1対向面を前記水路の上流側に向けて設置可能である、請求項1又は2に記載の堰板。
【請求項4】
前記凹部は、前記第2方向側の端部が外部に開放されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の堰板。
【請求項5】
前記第1方向で前記第1分割板及び前記第2分割板と対向する別の分割板をさらに備え、
前記別の分割板は、前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3の方向において、前記第1分割板及び前記第2分割板と相対移動可能である、請求項1~4のいずれか1項に記載の堰板。
【請求項6】
前記1方向及び前記第2方向に対して直交する方向に複数積み重ね可能である、請求項1~5のいずれか1項に記載の堰板。
【請求項7】
前記1方向及び前記第2方向に対して直交する方向に、水位を調整可能な部材を載置可能な載置部が設けられている、請求項1~6のいずれか1項に記載の堰板。
【請求項8】
複数の分割板により構成される堰板を水路に設置する方法であって、
前記分割板には、前記水路の幅方向に相対移動させて前記堰板の両端の幅を変更可能なスライド機構が設けられており、
前記分割板を相対移動させて前記堰板の幅を前記水路を横切る幅として、前記堰板を前記水路に配置し、
前記水路を流れる水に含まれる土砂によって前記堰板の上流方向に向く面の少なくとも一部を埋設し、
前記スライド機構に侵入した土砂により当該スライド機構による前記分割板の相対移動を抑制して前記堰板の幅を維持する、堰板の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水田等の農地の水路に設置される堰板、及び、その堰板の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水田の導水路には排水桝が設けられており、水田に貯水を行う場合には排水枡に対して木板を取り付けることにより水の流出を抑制し、水田から排水を行う場合には排水桝に取り付けられている木板を取り外している。このように排水桝に木板を取り付ける場合、水田の水位の調整を行うには高さの異なる複数の木板を用意する必要があるうえ、水位の微調整は困難であった。
【0003】
このような課題を解決した堰板として、特許文献1に記載の堰板がある。特許文献1に記載の堰板は、高さが可変であるため、堰板を複数設けたり堰板以外の部材を使用したりすることなく、水路の水位を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-136879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の堰板では、高さを可変とすることで水位の調整が可能であるものの、排水桝の幅が堰板よりも大きい場合にはその排水桝に堰板を取り付けることができず、排水桝の幅が堰板よりも小さい場合には、堰板を切断して幅を狭くする必要がある。したがって、排水桝の幅に合わせた複数の堰板を用意する必要が生ずるし、複数の幅の堰板を用意したとしてもその幅に合致しない幅の排水桝が設置されていた場合には、やはり取り付けることができなかったり、堰板を切断したりする必要が生ずる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、様々な幅の水路に設置可能な堰板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の構成は、第1方向を流路方向とし、前記第1方向と直交する第2方向を幅方向とする水路に設置される堰板であって、第1対向面を有する板状の第1分割板と、前記第1対向面と前記第1方向で対向する第2対向面を有する第2分割板と、を備え、前記第1対向面には、前記第1方向において対向する側へ突出し、前記第2方向へ延びる凸部が設けられており、前記第2対向面には、前記第2方向へ延び、前記凸部と係合可能な凹部が設けられており、前記第1分割板と前記第2分割板とは、前記凸部の外面と前記凹部の内面とが摺動して前記第2方向に相対移動可能である。
【0008】
第1の構成では、第1分割板と第2分割板とを第2方向へ相対移動させることで堰板全体の幅を変更することができ、様々な幅の水路に堰板を設置することができる。また、第1分割板と第2分割板とが摺動するように係合しているため、水路を流れる泥水が流入すれば、砂や泥が凸部と凹部との間に入りこみ、その砂や泥により相対移動が阻害されることになる。したがって、堰板が水路に設置されている場合には、砂や泥により相対移動が阻害され、第1分割板と第2分割板との相対位置の変動を抑制することができる。加えて、第1分割板と第2分割板とが単に接しているのではなく凸部と凹部とにより摺動可能となっているため、砂や泥が入り込む隙間が多くなり、砂や泥による相対移動の抑制効果をより向上させることができる。また、堰板を取り外した場合に凹部と凸部との間に嵌まり込んでいる砂や泥を洗い流せば、第1分割板と第2分割板とが再度摺動可能となり、再利用することができる。さらに、第1分割板及び第2分割板が凹凸を有するものであるため、平板である場合よりも全体の重量を軽量化しつつ、強度を維持することができる。
【0009】
第2の構成は、第1の構成に加えて、前記凸部は、前記第1方向において対向する側に向けて立設し、前記第2方向へ延びる第1側面部と、前記第1方向側の先端に設けられ、前記第2方向へ延びる先端面と、により構成され、前記凹部は、前記第1方向おいて対向する側に向けて立設して前記第2方向へ延び、前記第1側面部に対して摺動可能な第2側面部と、前記対向する側の奥側に位置して前記第2方向へ延び、前記先端面に対して摺動可能な底面と、により構成されている。
【0010】
第2の構成では、凸部と凹部との側面どうしが摺動し、凸部の先端面と凹部の底面とが摺動するため、砂や泥が嵌まり込む箇所が多くなり、砂や泥による相対移動の阻害効果をより大きくすることができる。
【0011】
第3の構成は、第1又は第2の構成に加えて、前記第1対向面を前記水路の上流側に向けて設置可能である。
【0012】
第3の構成では、水路に土砂が堆積した場合にその土砂が凸部の上側にも堆積するため、堆積する土砂の重量により堰板の水路からの抜けを抑制することができる。
【0013】
第4の構成は、第1~3のいずれかの構成に加えて、前記凹部は、前記第2方向側の端部が外部に開放されている。
【0014】
第4の構成では、凹部の内部にも砂や土が入り込みやすくなり、凹部の内部に入り込んだ砂や土が凸部と凹部の間に嵌まりこむため、砂や土による第1分割板と第2分割板との相対移動の阻害効果をより早期に得ることができる。
【0015】
第5の構成は、第1~4のいずれかの構成に加えて、前記第1方向で前記第1分割板及び前記第2分割板と対向する別の分割板をさらに備え、前記別の分割板は、前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3の方向において、前記第1分割板及び前記第2分割板と相対移動可能である。
【0016】
第5の構成では、別の分割板を相対移動させることで堰板の高さを変更することができるため、堰板を利用して水路の水位を微調整することができる。
【0017】
第6の構成は、第1~5のいずれかの構成に加えて、堰板は前記1方向及び前記第2方向に対して直交する方向に複数積み重ね可能である。
【0018】
第6の構成では、堰板を積み重ねることで堰板全体の高さを変更することができるため、堰板を利用して水路の水位を調整することができる。
【0019】
第7の構成は、第1~6のいずれかの構成に加えて、前記1方向及び前記第2方向に対して直交する方向に、水位を調整可能な部材を載置可能な載置部が設けられている。
【0020】
第7の構成では、堰板とは別に用意した水位を調整可能な部材を利用して、水路の水位を微調整することができる。
【0021】
第8の構成は、複数の分割板により構成される堰板を水路に設置する方法であって、前記分割板には、前記水路の幅方向に相対移動させて前記堰板の両端の幅を変更可能なスライド機構が設けられており、前記分割板を相対移動させて前記堰板の幅を前記水路を横切る幅として、前記堰板を前記水路に配置し、前記水路を流れる水に含まれる土砂によって前記堰板の上流方向に向く面の少なくとも一部を埋設し、前記スライド機構に侵入した土砂により当該スライド機構による前記分割板の相対移動を抑制して前記堰板の幅を維持する。
【0022】
第8の構成では、第1~7のいずれかの構成の堰板を水路に対して好適に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】排水桝に堰板が取り付けられている状態を示す斜視図である。
図2】排水桝の斜視図である。
図3】堰板の斜視図である。
図4】堰板の正面図である。
図5】堰板の背面図である。
図6】第1分割板の正面側の斜視図である。
図7】第1分割板の正面図である。
図8】第1分割板の右側面図である。
図9】第2分割板の背面側の斜視図である。
図10】第2分割板の背面図である。
図11】第2分割板の左側面図である。
図12】第2実施形態に係る堰板の正面側の斜視図である。
図13】第2実施形態に係る堰板の背面側の斜視図である。
図14】第2実施形態に係る第1分割板及び第2分割板の正面側の斜視図である。
図15】第2実施形態に係る第1分割板及び第2分割板の背面側の斜視図である。
図16】第2実施形態に係る第3分割板及び第4分割板の正面側の斜視図である。
図17】第2実施形態に係る第3分割板及び第4分割板の背面側の斜視図である。
図18】第2実施形態に係る第1分割板の正面側の斜視図である。
図19】第2実施形態に係る第1分割板の背面側の斜視図である。
図20】第2実施形態に係る第1分割板の右側面図である。
図21】第2実施形態に係る第2分割板の正面側の斜視図である。
図22】第2実施形態に係る第2分割板の背面側の斜視図である。
図23】第2実施形態に係る第2分割板の左側面図である。
図24】第2実施形態に係る第3分割板の正面側の斜視図である。
図25】第2実施形態に係る第3分割板の背面側の斜視図である。
図26】第2実施形態に係る第3分割板の右側面図である。
図27】第2実施形態に係る第4分割板の正面側の斜視図である。
図28】第2実施形態に係る第4分割板の背面側の斜視図である。
図29】第2実施形態に係る第4分割板の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1実施形態>
実施形態に係る堰板10は、図1に示すように、水田の導水路に設けられている排水桝100に対して取り付けられて用いられるものである。なお、以下の説明において、天地の方向を上下方向とし、導水路の水田側を前方向とし、導水路の幅方向を左右方向とする。また、各部材は、硬質の樹脂により形成されている。
【0025】
まず、排水桝100の構造について、図2を参照して説明する。この排水桝100はコンクリートにより一体成型されているものである。排水桝100は、前後方向に延びる長方形状の平板である底板101を備えている。この底板101の前後方向のやや後端寄りには、前後端と平行に左右方向へ延びる底溝102が形成されている。この底板101の左右端のそれぞれには、上方向へ向かって立設し、左右方向に略均一な厚みを有する平板状の側壁103,104が対向して設けられている。この側壁103,104は同形状であり、前端の高さは後端の高さよりも低く、後端から前端へ向けて高さが漸減する形状となっている。これら側壁103,104のそれぞれの内面において、底溝102が設けられている前後方向の位置と同じ位置には、上方へ向けて延びる溝である側壁溝105,106がそれぞれ設けられている。
【0026】
底板101及び側壁103,104の後端には、上方へ向かって立設し、前後方向に均一な厚みを有する平板状の後壁107が設けられている。この後壁107の下端近傍には、前後方向に貫通する円形の放出孔108が設けられている。この放出孔108の中心は後壁の左右方向の中央と略一致しており、放出孔108の直径は、後壁107の幅の概ね半分程度である。
【0027】
以上説明した排水桝100に設置される堰板10は、図3~5に示すように、全体形状が略長方形の板状である第1分割板20と、第2分割板40とを備えている。まず、第1分割板20の構造について、図6~8を参照して説明する。第1分割板20は、上下方向を短辺とし、左右方向を長辺とし、前後方向に一定の厚みを有する長方形板状である第1底板部21を備えている。この第1底板部21の左側の端部には、前方へ向けて隆起している左側壁部22が設けられている。この左側壁部22の上下幅は第1底板部21と等しく一定であり、左右幅は上下方向で一定であり且つ上下幅よりも小さく、前後の厚みは略一定である。この左側壁部22には、前方から後方へ向けて窪んだ左側壁窪部23が設けられている。この左側壁窪部23は正面視にて上下方向に延びる長方形状であり、左側壁窪部23の周囲の厚みは略均一である。
【0028】
第1底板部21の上端には、左右方向へ水平に延び、前方へ向けて突出している上端壁部24が設けられている。この上端壁部24の左端は左側壁部22に接しており、右端は第1底板部21の右端に至るまで設けられている。上端壁部24の前方への突出量は左側壁部22の突出量よりも少なく、上端壁部24の上下幅は略均一である。この上端壁部24の右端近傍には、下方へ向けて突出している第1上側係合部25が設けられている。この第1上側係合部25は、上端壁部24の前端側に設けられており、第1上側係合部25と第1底板部21との間には空隙が設けられている。第1上側係合部25の下方への突出量は左右方向で略均一であり且つ、その突出量は上端壁部24の上下幅と略等しく、前後の厚みも略均一である。また、第1底板部21の、第1上側係合部25の背面と対向する位置には、前後方向に貫通し、第1上側係合部25と略同形状の上側開口26が設けられている。
【0029】
第1底板部21の下端には、左右方向へ水平に延び、前方へ向けて突出している下端壁部27が設けられている。この下端壁部27の形状は上端壁部24と上下対象な形状であり、上端壁部24と同様に、下端壁部27の右端近傍には、上方へ向けて突出している第1下側係合部28が設けられている。また、第1底板部21の、第1下側係合部28の背面と対向する位置には、前後方向に貫通し、第1下側係合部28と略同形状の下側開口29が設けられている。
【0030】
第1底板部21の正面側において、上下方向の中央のやや上には、左右方向へ水平に延び前方へ向けて突出している第1凸部31が設けられている。この第1凸部31の左端は左側壁部22に接しており、右端は第1底板部21の右端に至るまで設けられている。同様に、第1底板部21の上下方向の中央のやや下には、第1凸部31と同形状の第2凸部32が設けられている。これら第1凸部31及び第2凸部32の前方への突出量は上端壁部24及び下端壁部27の突出量と等しく、第1凸部31及び第2凸部32の上下の厚みは略均一である。この第1凸部31及び第2凸部32の右端どうしは、上下方向へ垂直に延び前方へ向けて突出している右壁33により接続されている。この右壁33の前方への突出量は第1凸部31及び第2凸部32の突出量と等しく、右壁33の左右幅は第1凸部31及び第2凸部32の上下幅と等しい。
【0031】
続いて、第2分割板40の構成について、図9~11を参照して説明する。第2分割板40は、上下方向を短辺とし、左右方向を長辺とし、前後方向に一定の厚みを有する長方形板状である第2底板部41を備えている。第2底板部41の上下幅、左右幅、及び前後の厚みは、第1底板部21と等しい。この第2底板部41の右側の端部には、後方へ向けて隆起している右側壁部42が設けられている。この右側壁部42の形状は第1分割板の左側壁部22と略同一であり、左側壁部22に左側壁窪部23が設けられているのと同様に、後方から前方へ向けて窪んだ右側壁窪部43が設けられている。
【0032】
第2底板部41の背面側において、上端のやや下方には、左右方向へ延びる略長方形状であり、後方へ向けて隆起している上側隆起部44が設けられている。この上側隆起部44の右端は右側壁部42に接しており、左端は第2底板部41の左端に至るまで設けられている。また上側隆起部44は前方へ向けて略均一に突出しており、その突出量は第1分割板20の上端壁部24などの突出量と略等しい。第2底板部41の上端から上側隆起部44の上端までの間隔は、第1分割板20における第1底板部21の上端から第1上側係合部25までの間隔と略等しい。また、第2底板部41の上端から上側隆起部44の下端までの高さは、第1分割板20における第1底板部21の上端から第1凸部31の上端までの高さと略等しい。
【0033】
この上側隆起部44の後端縁の全域に亘って、上方へ向けて張り出している第2上側係合部45が設けられている。上側隆起部44の上面から第2上側係合部45の上端までの高さは、第1分割板20における上端壁部24の下面からの第1上側係合部25の下端までの高さと等しく、略均一である。この第2上側係合部45の前面と第2底板部41の背面との間には空隙が設けられており、その空隙の前後幅は、第1分割板20の上端壁部24に設けられている第1上側係合部25の前後幅と略等しい。また、第2上側係合部45の前後幅は、第1分割板20における第1底板部21と第1上側係合部25との間隔と略等しい。
【0034】
第2底板部41の下端のやや上方には、上側隆起部44と上下対象な形状の下側隆起部46が設けられている。この下側隆起部46の後端縁には、上側隆起部44と同様に、下方へ向けて突出している第2下側係合部47が設けられている。
【0035】
以上のように上側隆起部44及び下側隆起部46が設けられているため、上側隆起部44の下面、下側隆起部46の上面、右側壁部42の左側面、及び、第2底板部41の背面に囲まれる領域は、背面側から正面側へ向けて凹んでいる凹部51と称することできる。この凹部51の上下幅は、第1凸部31の上面から第2凸部32の下面までの幅と略等しく、凹部51の左端は開放されているといえる。また、第2底板部41の正面側の上端には、正面へ向けて突出し、左右方向へ延びる載置部52が設けられている。この載置部52の上端は第2底板部41の上端と共に平坦面を形成している。
【0036】
以上説明した第1分割板20と第2分割板40とにより構成される堰板10を排水桝100に取り付ける場合、まず、第1分割板20と第2分割板40とを組み合わせて、図3~5に示されている1つの堰板10とする。具体的には、第1分割板20の第1上側係合部25及び第1下側係合部28を、第2分割板40の第2上側係合部45及び第2下側係合部47の間に嵌め込んだうえで、左右方向へスライドさせる。このとき、第1分割板20の第1底板部21の正面と第2分割板40の第2底板部41の背面とが対向するため、第1底板部21の正面は第1対向面と称することができ、第2底板部41の背面は第2対向面と称することができる。このとき、第1上側係合部25、第1下側係合部28、第2上側係合部45、及び第2下側係合部47により、第1分割板20と第2分割板40の前後方向への分離(第1対向面と第2対向面との離間)を抑制するように、第1分割板20と第2分割板40とが組付けられている。
【0037】
第1分割板20の第1凸部31の上面は、第2分割板40の上側隆起部44の下面に当接し、第1凸部31の正面は、第2底板部41の背面に当接する。同様に、第1分割板20の第2凸部32の下面は、第2分割板40の下側隆起部46の上面に当接し、第2凸部32の正面は、第2底板部41の背面に当接する。すなわち、第1分割板20の第1凸部31及び第2凸部32が、第2分割板40の凹部51に当接していることになる。このとき、第1凸部31の上側の側面及び第2凸部32の下側の側面を纏めて左右方向に延びる第1側面部とすれば、その第1側面部は、凹部51の上側の側面及び下側の側面である第2側面部と当接しているといえる。また、第1凸部31及び第2凸部32の正面を先端面と称し、第2凹部52において第1分割板20と対向する側の奥側の面を底面と称すれば、先端面と底面とが当接しているといえる。加えて、凹部51の右端の端部は右側壁部42の左側面により閉塞されており、凹部51の左端が開放されていることから、凹部51の左右方向における第1分割板20と対向する側である左側が開放されており、第1分割板20と対向する側の反対側である右側が閉塞されているといえる。
【0038】
以上の状態で第1分割板20及び第2分割板40を左右方向へ相対的にスライドさせれば、第1凸部31及び第2凸部32は、凹部51と当接しつつ摺動する。第1分割板20と第2分割板40とを相対的にスライドさせる際には、第1分割板20の左側壁窪部23及び第2分割板40の右側壁窪部43を手指を引っ掛ける指掛け部として用いて操作する。このとき、第1凸部31及び第2凸部32の第1側面部と凹部51の第2側面部とが当接しつつ摺動し、第1凸部31及び第2凸部32の先端面と凹部51の底面とが当接しつつ摺動する。なお、第1凸部31、第2凸部32、及び凹部51を纏めて、スライド機構と称することもできる。
【0039】
また、第1上側係合部25と第2上側係合部45、及び、第1下側係合部28と第2下側係合部47とも、当接しつつ摺動する。このとき、第2上側係合部45の正面、上側隆起部44の上面、及び第2底板部41の正面により形成される領域は、左右方向へ延び、上から下へ向けて凹んだ凹部と称することができ、第1上側係合部25は左右方向へ向けて延び、下方へ向けて突出している凸部と称することができ、これら凸部と凹部とが当接しつつ摺動すると言える。同様に、第2下側係合部47の正面、下側隆起部46の上面、及び第2底板部41の正面により形成される領域も、左右方向へ延び、下から上へ向けて凹んだ凹部と称することができ、第1下側係合部28は左右方向へ向けて延び、上方へ向けて突出している凸部と称することができ、これら凸部と凹部とが当接しつつ摺動すると言える。なお、第1上側係合部25、第1下側係合部28、第2上側係合部45、及び第2下側係合部47についても、纏めて、スライド機構と称することもできる。また、これら第1上側係合部25、第1下側係合部28、第2上側係合部45、及び第2下側係合部47については、第1分割板20と第2分割板40との前後方向の分離を抑制しつつ、第1分割板20と第2分割板40とを組み付けているものであるため、纏めて組付け機構と称することもできる。
【0040】
堰板10を排水桝100に取り付ける場合には、第1分割板20と第2分割板40とを組み合わせた堰板10全体の幅を、排水桝100の側壁溝105,106の間隔と略等しくしたうえで、側壁溝105,106に上側から挿入することで排水桝100に堰板10を取り付ける。このとき、必要である水位に応じて、使用する堰板10の数を変更する。図1では堰板10を3つ使用する例を示しているが、より低い水位とする場合には堰板10の数は1つや2つでもよいし、より高い水位とする場合には4つ以上の堰板10を使用してもよい。また、第2分割板40の上端には載置部52が設けられているため、その載置部52を利用する等して堰板20の上に別の水位調整部材を載置し、その水位調整部材により水位を調節するものとしてもよい。
【0041】
以上のようにして排水桝100に堰板10を設置すれば、水田の導水路から排水桝100へ流入する水が堰板10により堰き止められる。水田から排水桝100へ流入する水には砂や泥が含まれているため、堰板10の正面には砂や泥が堆積し、その砂や泥の一部は第1分割板20と第2分割板40との間に侵入する。このとき、砂や泥は第1分割板20の第1凸部31及び第2凸部32と第2分割板40の凹部51との間に嵌まり込む。同様に、第1上側係合部25と第2上側係合部45との間、及び、第1下側係合部28と第2下側係合部47との間にも、砂や泥が嵌まり込む。このようにして嵌まり込んだ土や砂が第1分割板20と第2分割板40との間で噛み合って摩擦を生じさせ、第1分割板20と第2分割板40との左右方向への相対移動が抑制されることになる。また、堰板10を取り外した際には、堰板10を水等で洗浄することにより、第1分割板20と第2分割板40との間で噛み合っている砂や泥が洗い流され、堰板10の幅の変更が可能となり再利用することができるようになる。
【0042】
上記構成により、本実施形態に係る堰板10は、以下の効果を奏する。
【0043】
・堰板10を排水桝100に設置するだけで、流入する水に含まれる砂や泥により第1分割板20と第2分割板40との相対移動を抑制することができるため、堰板10の幅を排水桝100の幅に合わせて設置固定することが可能である。
【0044】
・第1分割板20と第2分割板40とが単に接しているのではなく凸部31,32と凹部51とにより摺動可能となっているため、砂や泥が入り込む隙間が多くなり、砂や泥による相対移動の抑制効果をより向上させることができる。
【0045】
・第1分割板20が凸部31,32を有し、第2分割板40が凹部51を有するものであるため、平板である場合よりも全体の重量を軽量化しつつ、強度を維持することができる。
【0046】
・凸部31,32と凹部51との側面どうしが摺動し、凸部31,32の先端面と凹部51の底面とが摺動するため、砂や泥が嵌まり込む箇所が多くなり、砂や泥による相対移動の阻害効果をより大きくすることができる。
【0047】
・第1堰板20の正面を水流に対向するように設置することで、排水桝100に堆積した土砂が凸部31,32の上側にも堆積し、その堆積した土砂の重量により堰板10の排水桝100からの抜けを抑制することができる。
【0048】
・凹部51の左端が開放されているため凹部51の内部にも砂や土が入り込みやすくなり、凹部51の内部に入り込んだ砂や土が凸部31,32と凹部51の間に嵌まりこむため、砂や土による第1分割板20と第2分割板40との相対移動の阻害効果をより早期に得ることができる。
【0049】
・複数の堰板10を上下に積み重ねることで全体の高さを変更することができるため、堰板10を利用して水路の水位を調整することができる。
【0050】
<第2実施形態>
本実施形態に係る堰板200は、第1実施形態に係る堰板10と同様に排水桝100に対して取り付けて用いられるものである。図12及び図13に示すように、堰板200は正面視にて左上に配置される第1分割板210、右上に配置される第2分割板230、左下に配置される第3堰板250、及び、右下に配置される第4堰板270により構成されている。なお、本実施形態に係る堰板200は、第1実施形態と同様に、硬質の樹脂により形成されている。
【0051】
まず、第1分割板210の構造について、図18-20を参照して説明する。第1分割板210は、上下方向を短辺とし、左右方向を長辺とし、前後方向に一定の厚みを有する長方形板状である第1底板部211を備えている。この第1底板部211の左の端部近傍には、前方へ向けて隆起している第1左側壁部212が設けられており、第1底板部211の左端には、上下に延びる平板状の第1左側係合部213が設けられている。
【0052】
第1底板部211の上端には、左右方向へ水平に延び、前方へ向けて突出している第1上側壁部214が設けられており、この第1上側壁部214の右端近傍には、下方へ向けて突出している第1上側係合部215が設けられている。また、第1底板部211の下端には、左右方向へ水平に延び、前方へ向けて突出している第1下側壁部216が設けられており、この第1下側壁部216の右端近傍には、上方へ向けて突出している第1下側係合部217が設けられている。これら第1上側壁部214、第1上側係合部215、第1下側壁部216、第1下側係合部217の具体的形状は、第1実施形態における上端壁部24、第1上側係合部25、下端壁部27、第1下側係合部28と同等である。また、第1底板部211の背面には、左右方向へ水平に延び、後方へ向けて突出している取っ手218が設けられている。
【0053】
第1底板部211の正面側には、左右方向へ水平に延び前方へ向けて突出している一対の凸部と、その凸部の右端どうしを繋ぐように前方へ向けて突出している凸部とにより構成される第1上側凸部221が設けられている。この第1上側凸部221の下方には、第1上側凸部221と同形状である第1中央凸部222が間隔を空けて設けられており、第1中央凸部222の下方には、第1上側凸部221と同形状である第1下側凸部223が間隔を空けて設けられている。第1上側凸部221、第1中央凸部222、及び、第1下側凸部223の前方への突出量は第1上側壁部214等と等しく、第1上側凸部221と第1中央凸部222との間隔、及び、第1中央凸部222と第1下側凸部223との間隔は等しい。
【0054】
これら第1上側凸部221の下端、第1中央凸部222の上端、第1左側壁部212の右端、及び、第1底板部211の正面に囲まれる領域は、正面から背面へ向けて凹んでいる第1上側凹部224と称することができる。また、第1中央凸部222の下端、第1下側凸部223の上端、第1左側壁部212の右端、及び、第1底板部211の正面に囲まれる領域は、正面から背面へ向けて凹んでいる第1下側凹部225と称することができる。
【0055】
続いて、第2分割板230の構造について、図21-23を参照して説明する。第2分割板230は、上下方向を短辺とし、左右方向を長辺とし、前後方向に一定の厚みを有する長方形板状である第2底板部231を備えている。第2底板部231の上下幅、左右幅、及び前後の厚みは、第1底板部211と等しい。この第2底板部231の右の端部近傍には、後方へ向けて隆起している第2右側壁部232が設けられており、第2底板部231の左端には、上下に延びる平板状の第2右側係合部233が設けられている。
【0056】
第2底板部231の背面側における上端のやや下方には、左右方向へ水平に延び、後方へ向けて突出している第2上側壁部234が設けられており、この第2上側壁部234の上端には左右方向へ延び上方へ向けて突出している第2上側係合部235が設けられている。また、第2底板部231の下端のやや上方には、左右方向へ水平に延び、後方へ向けて突出している第2下側壁部236が設けられており、この第2下側壁部236の下端には左右方向へ延び上方へ向けて突出している第2下側係合部237が設けられている。この第2上側係合部235の形状及び第2下側係合部237の形状は、第1実施形態における第2上側係合部45及び第2下側係合部47の形状と同等である。また、第2上側壁部234及び第2下側壁部236の後方への突出量は、第1分割板210における第1上側壁部214等の前方への突出量と等しい。
【0057】
第2底板部231の背面側において、第2上側壁部234の下方には、左右方向へ水平に延び後方へ向けて突出している一対の凸部と、その凸部の左端どうしを繋ぐように後方へ向けて突出している凸部とにより構成される第2上側凸部241が設けられている。この第2上側凸部241の下方であり、且つ、下側壁部236の上方には、第2上側凸部241と同形状である第2下側凸部242が間隔を空けて設けられている。これら第2上側凸部241、及び、第2下側凸部242の上下端の幅は、第1分割板210の第1上側凹部224等の上下幅と等しく、第2上側凸部241、及び、第2下側凸部242の前方への突出量は第2上側壁部234等の突出量と等しい。また、第2上側壁部234と第2上側凸部241との間隔、第2上側凸部241と第2下側凸部242との間隔、及び、第2下側凸部242と第2下側壁部236との間隔は等しく、その間隔は、第1分割板210の第1上側凸部221の上下端の幅と等しい。
【0058】
これら第2上側壁部234の下端、第2上側凸部241の上端、第2右側壁部232の左端、及び、第2底板部231の正面に囲まれる領域は、背面から正面へ向けて凹んでいる第2上側凹部243と称することができる。同様に、第2上側凸部241の下端、第2下側凸部242の上端、第2右側壁部232の左端、及び、第2底板部231の正面に囲まれる領域は、背面から正面へ向けて凹んでいる第2中央凹部244と称することができ、第2下凸部242の下端、第2下側壁部236の上端、第2右側壁部232の左端、及び、第2底板部231の正面に囲まれる領域は、背面から正面へ向けて凹んでいる第2下側凹部245と称することができる。
【0059】
続いて、第3堰板250の構造について、図24-26を参照して説明する。第3堰板250は、上下方向を短辺とし、左右方向を長辺とし、前後方向に一定の厚みを有する長方形板状である第3底板部251を備えている。この第3底板部251の左の端部近傍には、前方へ向けて隆起している第3左側壁部252が設けられており、第3左側壁部252の背面には、間隔を空けて、上下に延びる平板状の第3左側係合部253が設けられている。この第3左側壁部252の背面と第3左側係合部253との間隔は、第1分割板210の第1左側係合部213の厚みと略等しい。
【0060】
第3底板部251の下端には、左右方向へ水平に延び、前方へ向けて突出している第3下側壁部254が設けられており、この第3下側壁部254の右端近傍には、上方へ向けて突出している第3下側係合部255が設けられている。これら第3下側壁部254、第3下側係合部255の具体的形状は、第1実施形態における下端壁部27、第1下側係合部28と同等である。
【0061】
第3底板部251の正面側の上端は、左右方向へ水平に延び前方へ向けて突出している一対の凸部と、その凸部の右端どうしを繋ぐように前方へ向けて突出している凸部とにより構成される第3上側凸部261が設けられている。この第3上側凸部261の下方には、第3上側凸部261と同形状である第3中央凸部262が間隔を空けて設けられており、第3中央凸部262の下方には、第3上側凸部261と同形状である第3下側凸部263が間隔を空けて設けられている。第3上側凸部261、第3中央凸部262、及び、第3下側凸部263の前方への突出量は第3下側壁部254と等しく、第3上側凸部261と第3中央凸部262との間隔、及び、第3中央凸部262と第3下側凸部263との間隔は等しい。
【0062】
これら第3上側凸部261の下端、第3中央凸部262の上端、第3左側壁部252の右端、及び、第3底板部251の正面に囲まれる領域は、正面から背面へ向けて凹んでいる第3上側凹部264と称することができる。また、第3中央凸部262の下端、第3下側凸部263の上端、第3左側壁部252の右端、及び、第3底板部251の正面に囲まれる領域は、正面から背面へ向けて凹んでいる第3下側凹部265と称することができる。
【0063】
続いて、第4堰板270の構造について、図27-29を参照して説明する。第4堰板270は、上下方向を短辺とし、左右方向を長辺とし、前後方向に一定の厚みを有する長方形板状である第4底板部271を備えている。第4底板部271の上下幅、左右幅、及び前後の厚みは、第1底板部211と等しい。この第4底板部271の右の端部近傍には、後方へ向けて隆起している第4右側壁部272が設けられており、第4右側壁部272の背面には、間隔を空けて、上下に延びる平板状の第4右側係合部273が設けられている。この第4右側壁部272の背面と第4右側係合部273との間隔は、第2分割板230の第2右側係合部233の厚みと略等しい。
【0064】
第4底板部271の背面側における上端には、左右方向へ水平に延び、後方へ向けて突出している第4上側壁部274が設けられている。また、第4底板部271の下端は、左右方向へ水平に延び、後方へ向けて突出している第4下側壁部275が設けられており、この第4下側壁部275の下端には左右方向へ延び上方へ向けて突出している第4下側係合部276が設けられている。この第4下側係合部276の形状は、第1実施形態における第2下側係合部47の形状と同等である。また、第4上側壁部274及び第2下側壁部275の後方への突出量は、第3堰板250における第3下側壁部255等の前方への突出量と等しい。
【0065】
第4底板部271の背面側において、第4上側壁部274の下方には、左右方向へ水平に延び後方へ向けて突出している一対の凸部と、その凸部の左端どうしを繋ぐように後方へ向けて突出している凸部とにより構成される第4上側凸部281が設けられている。この第4上側凸部281の下方であり、且つ、下側壁部275の上方には、第4上側凸部281と同形状である第4下側凸部282が間隔を空けて設けられている。これら第4上側凸部281、及び、第4下側凸部282の上下端の幅は、第3堰板250の第3上側凹部264等の上下幅と等しく、第4上側凸部281、及び、第4下側凸部282の前方への突出量は第4上側壁部274等の突出量と等しい。また、第4上側壁部274と第4上側凸部281との間隔、第4上側凸部281と第4下側凸部282との間隔、及び、第4下側凸部282と第4下側壁部275との間隔は等しく、その間隔は、第3堰板250の第3上側凸部261の上下端の幅と等しい。
【0066】
これら第4上側壁部274の下端、第4上側凸部281の上端、第4右側壁部272の左端、及び、第4底板部271の正面に囲まれる領域は、背面から正面へ向けて凹んでいる第4上側凹部283と称することができる。同様に、第4上側凸部281の下端、第4下側凸部282の上端、第4右側壁部272の左端、及び、第4底板部271の正面に囲まれる領域は、背面から正面へ向けて凹んでいる第4中央凹部284と称することができ、第4下凸部282の下端、第4下側壁部275の上端、第4右側壁部272の左端、及び、第4底板部271の正面に囲まれる領域は、背面から正面へ向けて凹んでいる第4下側凹部285と称することができる。
【0067】
以上説明した第1~4分割板210,230,250,270を組み合わせて堰板200を組み上げる手順について、図14-17を参照して説明する。まず。図14及び図15に示すように、第1分割板210と第2分割板230とを組み合わせる。具体的には、第1分割板210の第1上側係合部215及び第1下側係合部217を、第2分割板230の第2上側係合部235及び第2下側係合部237の間に嵌め込んだうえで、左右方向へスライドさせる。このとき、第1分割板210の第1底板部211の正面と第2分割板230の第2底板部231の背面とが対向するため、第1底板部211の正面を第1対向面と称し、第2底板部231の背面を第2対向面と称することができる。
【0068】
第1分割板210の第1上側凸部221は第2分割板230の第2上側凹部243と係合して嵌まり込み、第1上側凸部231の正面及び上下端のそれぞれが、第2上側凹部243の背面及び上下端のそれぞれに当接する。同様に、第1分割板210の第1中央凸部222は第2分割板230の第2中央凹部244と係合して嵌まり込み、第1中央凸部222の正面及び上下端のそれぞれが、第2中央凹部244の背面及び上下端のそれぞれに当接し、第1分割板210の第1下側凸部223は第2分割板230の第2下側凹部245と係合して嵌まり込み、第1下側凸部223の正面及び上下端のそれぞれが、第2下側凹部245の背面及び上下端のそれぞれに当接する。
【0069】
第1分割板210と第2分割板230との凸部と凹部との係合関係は言い換えることができ、第2分割板230の第2上側凸部241は第1分割板210の第1上側凹部224と係合して嵌まり込み、第2上側凸部241の正面及び上下端のそれぞれが、第1上側凹部224の背面及び上下端のそれぞれに当接する。同様に、第2分割板230の第2下側凸部242は第1分割板210の第1下側凹部225と係合して嵌まり込み、第2下側凸部242の正面及び上下端のそれぞれが、第1下側凹部225の背面及び上下端のそれぞれに当接する。
【0070】
続いて、図16及び図17に示すように、第3分割板250と第4分割板270とを組み合わせる。具体的には、第3堰板250の第3下側係合部255を、第4堰板270の第4下側係合部276の間に嵌め込んだうえで、左右方向へスライドさせる。このとき、第3堰板250の第3底板部251の正面と第4堰板270の第4底板部271の背面とが対向するため、第3底板部251の正面を第3対向面と称し、第4底板部271の背面を第4対向面と称することができる。
【0071】
第3堰板250の第3上側凸部261は第4堰板270の第4上側凹部283と係合して嵌まり込み、第3上側凸部261の正面及び上下端のそれぞれが、第4上側凹部283の背面及び上下端のそれぞれに当接する。同様に、第3堰板250の第3中央凸部262は第4堰板270の第4中央凹部284と係合して嵌まり込み、第3中央凸部262の正面及び上下端のそれぞれが、第4中央凹部284の背面及び上下端のそれぞれに当接し、第3堰板250の第3下側凸部263は第4堰板270の第4下側凹部285と係合して嵌まり込み、第3下側凸部263の正面及び上下端のそれぞれが、第4下側凹部285の背面及び上下端のそれぞれに当接する。
【0072】
第3堰板250と第4堰板270との凸部と凹部との係合関係は第1分割板210及び第2分割板230の場合と同様に言い換えることができ、第4堰板270の第4上側凸部281は第3堰板250の第3上側凹部264と係合して嵌まり込み、第4上側凸部281の正面及び上下端のそれぞれが、第3上側凹部264の背面及び上下端のそれぞれに当接する。同様に、第4堰板270の第4下側凸部282は第3堰板250の第3下側凹部265と係合して嵌まり込み、第4下側凸部282の正面及び上下端のそれぞれが、第3下側凹部265の背面及び上下端のそれぞれに当接する。
【0073】
以上のように第1分割板210と第2分割板230が組み合わさり、第3堰板250と第4堰板270が組み合わされば、それらをさらに組み合わせ、ひとつの堰板200を形成する。具体的には、第1分割板210の第1左側係合部213を、第3堰板の250の第3左側壁部252と第3左側係合部253との間に当接させつつ挿入し、第2分割板230の第2右側係合部233を、第4堰板の270の第4右側壁部272と第4右側係合部273との間に当接させつつ挿入する。こうして、図12及び13に示す堰板200が完成する。
【0074】
以上説明した堰板200について、幅を変更するならば、第1分割板210及び第3堰板250と第2分割板230及び第4堰板270とを左右方向に相対移動させればよい。このとき、各凸部221,222,223,241,242,261,262,263,281,282と、各凹部224,225,243,244,245,264,265,283,284,285とは、当接しつつ左右方向に摺動する。より具体的には、各凸部221,222,223,241,242,261,262,263,281,282の上側面及び下側面が各凹部224,225,243,244,245,264,265,283,284,285の上側面及び下側面に当接し、各凸部221,222,223,241,242,261,262,263,281,282の先端面が各凹部224,225,243,244,245,264,265,283,284,285の底面に当接して摺動する。なお、各凸部221,222,223,241,242,261,262,263,281,282と各凹部224,225,243,244,245,264,265,283,284,285とを纏めてスライド機構と称することができる。
【0075】
また、高さを変更するならば、第1分割板210及び第2分割板230と第3堰板250及び第4堰板270とを上下方向に相対移動させればよい。このとき、第1左側係合部213は第3左側壁部252の背面及び第3左側係合部253の正面と当接しつつ摺動し、第2右側係合部233は第4右側壁部272の背面及び第4右側係合部273の正面と当接しつつ摺動する。
【0076】
以上説明した本実施形態に係る堰板200は、第1実施形態に係る堰板10と同様に、排水桝100に設置される。そして、第1実施形態と同様に堰き止めた水に含まれる泥や砂が堰板200の正面側に堆積し、堆積した砂や泥が各凸部221,222,223,241,242,261,262,263,281,282と各凹部224,225,243,244,245,264,265,283,284,285との間に嵌まり込む。これにより、第1分割板210と第2分割板230とが砂や泥を介して噛み合い、第3分割板250と第4分割板270とが砂や泥を介して噛み合う。
【0077】
また、第1左側係合部213と第3左側壁部252の背面及び第3左側係合部253の正面との間に砂や泥が嵌まり込み、第2右側係合部233と第4右側壁部272の背面及び第4右側係合部273の正面との間に砂や泥が嵌まり込む。これにより、第1分割板210と第3分割板250とが砂や泥を介して噛み合い、第2分割板230と第4分割板270とが砂や泥を介して噛み合う。以上のようにして、第1~4分割板210,230,250,270が噛み合えば、その摩擦抵抗により、上下左右方向への相対移動が抑制され、堰板200を設置した状態における高さ及び幅を維持することができる。
【0078】
なお、第1左側係合部213と第3左側壁部252の背面及び第3左側係合部253のとの摺動箇所の面積、及び、第2右側係合部233と第4右側壁部272の背面及び第4右側係合部273との摺動箇所の面積は、各凸部221,222,223,241,242,261,262,263,281,282と各凹部224,225,243,244,245,264,265,283,284,285との摺動箇所の面積よりも小さくなっている。すなわち、上下方向の摺動箇所の面積は左右方向の摺動箇所の面積よりも小さくなっており、砂や泥が噛み合った際には、上下方向の摩擦抵抗は左右方向の摩擦抵抗よりも小さくなる。したがって、砂や泥が噛み合うことによる摺動の抑制効果は、上下方向よりも左右方向のほうが大きくなる。換言すれば、左右方向の幅の変更よりも上下方向の高さの変更のほうが容易に行うことができるといえ、これにより、砂や泥が噛み合っていた場合においても堰板200の高さを変更して水路の水位を調整することができる。
【0079】
<変形例>
・第1実施形態では堰板10を2枚の分割板20,40により構成しているが、左右方向にスライドする3枚以上の分割板により構成するものとしてもよい。同様に、第2実施形態おいても、左右方向に3枚以上の分割板がスライドするものとしてもよく、上下方向に3枚以上の分割板がスライドするものとしてもよい。
【0080】
・第1実施形態に係る堰板10と第2実施形態に係る堰板200との両方を同時に使用してもよい。具体的には、排水桝100の下端側には第1実施形態に係る堰板10を1又は複数枚載置し、その上に第2実施形態に係る堰板200を載置すればよい。こうすることで、第1実施形態に係る堰板10の枚数により大まかな水位を調整したうえで、第2実施形態に係る堰板200により水位を微調整することができる。
【0081】
・第1実施形態では凸部31,32の上下の側面及び先端面が凹部51の上下の側面及び底面に接するものとしているがが、このうちの一部のみが接して左右に摺動するものであってもよい。
【0082】
・第1実施形態では、凸部31,32が左右方向の略全体に亘って延びるものであるが、第1実施形態における凸部31,32よりも短い凸部が左右方向に間隔を空けて設けられるものであってもよい。こうすることで、凸部31,32と凹部51との摩擦が減少し、左右方向への摺動による幅の調整をより容易に行うことができる。
【0083】
・第1実施形態及び第2実施形態において、ネジを挿入する孔を設けるなどして、分割板20,40,210,230,250,270の相対移動を抑制可能としてもよい。こうすることで、水に含まれる砂や泥の量が少なく、砂や泥による分割板20,40,210,230,250,270の相対移動の抑制効果を十分に得られない場合であっても、堰板20,200を適切に設置することができる。
【0084】
・第1実施形態及び第2実施形態において、分割板20,40,210,230,250,270を前後方向に貫通する開口を設け、その開口の閉塞状態と開放状態とを変更可能としてもよい。こうすることで、通常時は開口を閉塞しておき、水位を減少させる必要があれば開口を開放することで排水が可能となり、堰板20,200を取り外すことなく水位を調整することができる。
【0085】
・実施形態では堰板10,200を用水路に設けられている排水桝100に取り付けて用いるものとしているが、排水桝100が設けられていない水田の導水路に設置するものとしてもよいし、その他の種々の水路に設置するものとしてもよい。この場合には、設置される水路によっては水に含まれる砂や泥が少ない場合があるが、ネジ等の補助的な固定手段を追加することで、分割板20,40,210,230,250,270の相対移動を抑制するものとすればよい。
【符号の説明】
【0086】
堰板…10,第1分割板…20、第1凸部…31、第2凸部…32、第2分割板…40,凹部…51、排水桝…100、堰板…200、第1分割板…210、第1上側凸部…221、第1中央凸部…222、第1下側凸部…223、第1上側凹部…224、第1下側凹部225、第2分割板…230、第2上側凸部…241、第2下側凸部…242、第2上側凹部…243、第2中央凹部…244、第2下側凹部245、第3分割板…250、第3上側凸部…261,第3中央凸部…262,第3下側凸部…263,第4分割板…270、第4上側凸部…281、第4下側凸部…282、第4上側凹部…283、第4中央凹部…284、第4下側凹部285
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