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特開2023-151427プログラム、情報処理方法、情報処理装置および学習済モデルの生成方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151427
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】プログラム、情報処理方法、情報処理装置および学習済モデルの生成方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/20 20160101AFI20231005BHJP
   A61B 6/12 20060101ALI20231005BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20231005BHJP
   A61F 2/95 20130101ALI20231005BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20231005BHJP
【FI】
A61B34/20
A61B6/12
A61B6/00 350P
A61F2/95
A61M25/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061025
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】金沢 祐弥
【テーマコード(参考)】
4C093
4C267
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093AA24
4C093FF28
4C093FF35
4C267AA07
4C267AA42
4C267AA43
4C267AA44
4C267AA45
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB04
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB19
4C267BB20
4C267BB26
4C267BB31
4C267BB39
4C267BB40
4C267BB43
4C267BB63
4C267CC08
4C267CC09
4C267HH08
4C267HH11
(57)【要約】
【課題】POT(Proximal Optimization Technique)を支援するプログラム等を提供すること。
【解決手段】プログラムは、留置したステント32を追加拡張するPOTの対象である血管分岐部を含む血管画像51を取得し、前記血管画像51に基づき、前記血管分岐部のうち末梢側の縁である基準位置55を特定し、特定した前記基準位置55に基づいて、POTに使用するバルーンカテーテルの拡張位置に関する情報を出力する処理をコンピュータに実行させる。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
留置したステントを追加拡張するPOT(Proximal Optimization Technique)の対象である血管分岐部を含む血管画像を取得し、
前記血管画像に基づき、前記血管分岐部のうち末梢側の縁である基準位置を特定し、
特定した前記基準位置に基づいて、POTに使用するバルーンカテーテルの拡張位置に関する情報を出力する
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項2】
前記血管画像を、血管画像を入力した場合に、基準位置を出力する基準位置モデルに入力して、前記血管画像に基づく基準位置を特定する
請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記基準位置モデルは、機械学習により生成された学習済モデルである
請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記血管画像におけるステント留置部を特定し、
前記ステント留置部に基づいて前記血管分岐部を特定し、
前記血管分岐部に基づいて前記基準位置を特定する
請求項1に記載のプログラム。
【請求項5】
前記基準位置を特定できない場合、前記血管画像の再取得を促す通知を出力する
請求項1から請求項4のいずれか一つに記載のプログラム。
【請求項6】
前記血管画像は、造影剤を用いて撮影された血管造影画像である
請求項1から請求項5のいずれか一つに記載のプログラム。
【請求項7】
前記血管画像に、前記基準位置を示す基準位置指標を重畳表示し、
前記基準位置を変更する指示を受け付ける
請求項1から請求項6のいずれか一つに記載のプログラム。
【請求項8】
前記バルーンカテーテルに関するバルーンカテーテル情報を取得し、
前記バルーンカテーテル情報と前記基準位置とに基づいて、前記バルーンカテーテルを拡張する際に前記バルーンカテーテルに設けられたX線不透過マーカが位置するべき予定位置を判定し、
前記予定位置を示す予定位置指標を、リアルタイムに撮影された前記血管画像に重畳して出力する
請求項1から請求項7のいずれか一つに記載のプログラム。
【請求項9】
前記バルーンカテーテル情報は、前記バルーンカテーテルのバルーンを空中で拡張させた場合に、前記バルーンの太さが均一である部分の端部と、前記バルーンの内部に設けられたX線不透過マーカとの位置関係に関する情報である
請求項8に記載のプログラム。
【請求項10】
バルーンカテーテルが描出された血管画像を、バルーンカテーテルが描出された血管画像を入力した場合に、バルーンカテーテル情報を出力するカテーテルモデルに入力して、前記バルーンカテーテル情報を取得する
請求項9に記載のプログラム。
【請求項11】
前記カテーテルモデルは、機械学習により生成された学習済モデルである
請求項10に記載のプログラム。
【請求項12】
ユーザにより入力された前記バルーンカテーテルの型番に関する情報に基づいて、前記バルーンカテーテル情報を取得する
請求項9に記載のプログラム。
【請求項13】
リアルタイムに撮影された前記血管画像から、前記バルーンカテーテルに設けられたX線不透過マーカを検出し、
検出したX線不透過マーカの位置と前記予定位置との関係に基づいて、前記予定位置指標の表示態様を定める
請求項8から請求項12のいずれか一つに記載のプログラム。
【請求項14】
検出したX線不透過マーカが、前記予定位置から所定の範囲内に到達した場合に、前記予定位置指標の表示態様を変化させる
請求項13に記載のプログラム。
【請求項15】
検出したX線不透過マーカが、前記予定位置から所定の範囲内に到達した後に、前記所定の範囲外に移動した場合に、前記予定位置指標の表示態様を変化させる
請求項13または請求項14に記載のプログラム。
【請求項16】
前記基準位置に基づいてバルーンカテーテルが拡張された後の血管画像を取得し、
前記ステントの前記基準位置よりも中枢側が血管内壁に密着しているか判定し、
密着していないと判定した場合に通知を出力する
請求項1から請求項15のいずれか一つに記載のプログラム。
【請求項17】
留置したステントを追加拡張するPOTの対象である血管分岐部を含む血管画像を取得し、
前記血管画像に基づき、前記血管分岐部のうち末梢側の縁である基準位置を特定し、
特定した前記基準位置に基づいて、POTに使用するバルーンカテーテルの拡張位置に関する情報を出力する
処理をコンピュータが実行する情報処理方法。
【請求項18】
制御部を備える情報処理装置であって、
前記制御部は、
留置したステントを追加拡張するPOTの対象である血管分岐部を含む血管画像を取得し、
前記血管画像に基づき、前記血管分岐部のうち末梢側の縁である基準位置を特定し、
特定した前記基準位置に基づいて、POTに使用するバルーンカテーテルの拡張位置に関する情報を出力する
情報処理装置。
【請求項19】
バルーンカテーテルが描出された血管画像と、前記バルーンカテーテルに設けられたX線不透過マーカの配置を含むバルーンカテーテル情報とを関連づけて多数組記録した訓練データを取得し、
取得した訓練データに基づき、バルーンカテーテルが描出された血管画像が入力された場合に、バルーンカテーテル情報を出力する学習済モデルを生成する
学習済モデルの生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム、情報処理方法、情報処理装置および学習済モデルの生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血管等の管腔器官内の分岐部に留置され、内径差のある管腔に対して密着できるステントが使用されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007-517586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
再狭窄を防止するためには、特許文献1の図9に開示されているように、ステントと管腔器官の内壁とを密着させることが有効である。管腔器官の分岐部にステントを留置した後に、ステントの内部でバルーンを拡張させてステントを追加拡張することにより、管腔器官の内壁とステントとを密着させるPOT(Proximal Optimization Technique)が行なわれている。
【0005】
POTでは、分岐部の末梢側の縁から、ステントの中枢側の端までの範囲を十分に拡張する。そのために医師等は、X線撮影装置を使用して、バルーンカテーテルに設けられたX線不透過マーカを適切な位置に合わせた後に、バルーンを拡張させる。
【0006】
しかしながら、X線不透過マーカの取り付け位置は、バルーンカテーテルのメーカごとに、または製品シリーズごとに異なっている。そのため、バルーンを拡張させる位置を正確に判断することは困難である。
【0007】
一つの側面では、POTを支援するプログラム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
プログラムは、留置したステントを追加拡張するPOTの対象である血管分岐部を含む血管画像を取得し、前記血管画像に基づき、前記血管分岐部のうち末梢側の縁である基準位置を特定し、特定した前記基準位置に基づいて、POTに使用するバルーンカテーテルの拡張位置に関する情報を出力する処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
一つの側面では、POTを支援するプログラム等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】分岐部へステントを留置する手順を説明する説明図である。
図2】POTを説明する説明図である。
図3】バルーンカテーテルのタイプを説明する表である。
図4】バルーンカテーテルのタイプごとの拡張位置を説明する表である。
図5】ステント留置支援システムの構成を説明する説明図である。
図6】基準位置モデルを説明する説明図である。
図7】基準位置モデルの変形例を説明する説明図である。
図8】カテーテルモデルを説明する説明図である。
図9】ステント留置を支援する手順を説明する説明図である。
図10】プログラムの処理の流れを説明するフローチャートである。
図11】タイプ判定のサブルーチンの処理の流れを説明するフローチャートである。
図12】マーカ位置判定のサブルーチンの処理の流れを説明するフローチャートである。
図13】画面例である。
図14】バルーンDBのレコードレイアウトを説明する説明図である。
図15】実施の形態2のタイプ判定のサブルーチンの処理の流れを説明するフローチャートである。
図16】実施の形態3の画面例である。
図17】実施の形態4の情報処理装置の構成を説明する説明図である。
図18】訓練DBのレコードレイアウトを説明する説明図である。
図19】カテーテルモデルを生成するプログラムの処理の流れを説明する説明図である。
図20】POTを行なう範囲を説明する説明図である。
図21】実施の形態5のプログラムの処理の流れを説明するフローチャートである。
図22】実施の形態6のプログラムの処理の流れを説明するフローチャートである。
図23】実施の形態7のステント留置支援システムの構成を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態1]
図1は、分岐部へステント32を留置する手順を説明する説明図である。図1Aは、中央部で二又に分岐する血管の分岐部を模式的に示す。図1においては、左側が血管の中枢側(Proximal)であり、右側および右上側が血管の末梢側(Distal)である。
【0012】
一般的に、血管は中枢側から末梢側に向かって分岐するたびに細くなる。中枢側の血管の内径をφF1、分岐の左側の血管の内径をφF2、分岐の右上側の血管の内径をφF3で示す場合、
φF1>φF2
および
φF1>φF3
が成立する。
【0013】
なお、φF2とφF3とは、ほぼ同一径である場合もあれば、一方が他方に比べて明確に大きい場合もある。以下の説明では分岐の左右にわたってステント32が留置される場合を例にして説明する。分岐の右側と右上側とにわたってステント32が留置される場合、および、分岐の右側から右上側と左側との両方にわたって2本のステント32が組み合わされて留置される場合もある。
【0014】
医師は、血管撮影装置(Angiography)15(図5参照)を用いてリアルタイムにX線観察を行ないながら、以下に説明する手順を実施する。ステント留置を行なう手技中は、原則として血管撮影装置15はリアルタイム血管画像52(図8参照)を常時撮影し続ける。
【0015】
医師は、必要に応じて血管に造影剤を注入する。リアルタイム血管画像52の視野に造影剤が流れ込んでいる間、リアルタイム血管画像52は血管の走行状態が描出された血管造影画像51になる。しかしながら造影剤には副作用があるため、使用量は必要最小限に留められる。
【0016】
したがってリアルタイム血管画像52は、殆どが非造影の透視像である。非造影の透視像では、血管等の生体組織は殆ど描出されないが、ステント32およびガイドワイヤ31等のX線不透過金属は明瞭に描出される。なお、血管撮影装置15は最新の血管造影画像51とリアルタイム血管画像52とを重畳させて、リアルタイム血管画像52上に血管を表示させてもよい。血管造影画像51およびリアルタイム血管52は、血管画像の例示である。
【0017】
一連の手技は、医師のみにより行なわれるものではなく、医師と看護師および技士等のコメディカルスタッフとの共同作業により行なわれる。しかし、以下の説明では、各作業の主体が医師である場合を例にして説明する。医師は、本実施の形態のステント留置支援システム10(図5参照)を使用するユーザの例示である。
【0018】
医師は、拡張対象部位の末梢側の血管径を基準にしてステント32を選択する。医師は、図1Bに示すように、1本または複数本のガイドワイヤ31を血管に挿入する。医師は、ガイドワイヤ31をガイドにしてステント32を挿入し、リアルタイム血管画像52を参照してステント32の位置を定める。医師は、ステント32に付属しているステント用のバルーンを所定の圧力で拡張する。ステント32が追加拡張されて、血管内壁に押し付けられる。その後、医師はステント用のバルーンを収縮させて抜去する。以上の手技により、図1Cに示すようにステント32は分岐部に留置される。
【0019】
一般的に、ステント用のバルーンは、ステント32全体をほぼ均一な太さに拡張するように設計されている。これは、分岐していない通常の血管にステント32を留置する場合には、適切な設計である。しかしながら、前述のように分岐している血管においては、分岐の前後で内径が異なる。したがって、末梢側で血管内壁と適切に密着するサイズのステント32を使用した場合、図1Cに示すように中枢側ではステント32と血管内壁との間に隙間が生じる。
【0020】
なお、仮にステント32と中枢側の血管内壁とが適切に密着するようにステント用のバルーンを拡張した場合、末梢側の血管を過度に拡張させてしまい、血管に損傷を引き起こすおそれがある。したがって、医師等は末梢側の血管径を基準にしてステント32を選択して、留置する。
【0021】
図1Cの状態では、ステント32と中枢側の血管内壁との間に隙間が生じている。このような隙間は、血栓および再狭窄の原因となることが知られている。さらに、中枢から、右上側の血管に向かう血流が、ステント32を構成する素線により乱されることも、血栓および狭窄の原因になる。
【0022】
図1Dは、POT後の血管およびステント32の状態を示す。分岐よりも中枢側のステント32が拡張されて、中枢側の血管内壁に適切に密着している。ステント32を構成する素線同士の隙間であるステントストラットが分岐部において拡げられており、右上側に向かう血流がステント32の素線により阻害されにくくなっている。以上により、予後の向上が期待できる。
【0023】
図2は、POTを説明する説明図である。図2は、図1Cのステント32を図1Dの状態に広げる途中の状態を模式的に示す。医師は、ガイドワイヤ31をガイドにして、ステント32の内部に、バルーンカテーテル33を挿通する。バルーンカテーテル33は、チューブ状のバルーンシャフト336、バルーンシャフト336に固定された2個のマーカ331、および、バルーンシャフト336の外周に固定されたバルーン335を含む。図2においては、バルーン335は拡張されている。
【0024】
バルーンシャフト336およびバルーン335は樹脂製であり、血管撮影装置15ではほとんど描出されない。X線不透過マーカである2つのマーカ331と、ガイドワイヤ31と、ステント32とは、血管撮影装置15で良く描出できる。医師はリアルタイム血管画像52に描出されるマーカ331とガイドワイヤ31とステント32との位置関係、および、最新の血管造影画像51に基づいてバルーン335の位置を定めて、拡張させる。
【0025】
医師は、バルーン335を収縮させて、中枢側に移動させた後に拡張する処理を繰り返すことにより、分岐部から中枢側の端部までのステント32を適切な状態に拡張させる。以上により、POTが完了する。なお、医師は長いバルーン335を使用して、分岐部から中枢側の端部までのステント32を一回で拡張してもよい。
【0026】
以下の説明では、ステント32を留置しない側の血管が分岐する開口部の末梢側の縁を、基準点55と記載する。同様に、基準点55を通り、ステント32の経路に垂直な面と、血管内壁とが交差する閉曲線を基準線56と記載する。基準点55および基準線56は、POTの対象である血管分岐部の末梢側の縁を示す基準位置の例示である。
【0027】
基準線56よりも中枢側では、バルーン335を用いてステント32を拡張するPOTを行ない、基準線56よりも末梢側はステント用のバルーンにより拡張した状態のままにすることで、予後が良くなることが知られている。仮に、バルーン335を用いて基準線56よりも末梢側を拡張した場合には、図2中のE部で血管が必要以上に拡張されて損傷を受ける可能性がある。
【0028】
そのため、医師はリアルタイム血管画像52を参照して末梢側のマーカ331を基準線56の中心付近に配置した後に、バルーン335を拡張させる。なお、図2においては、バルーンカテーテル33が血管の中枢側から末梢側に挿入された状態を示す。狭窄部位によっては、バルーンカテーテル33は末梢側から挿入される場合もある。
【0029】
図3は、バルーンカテーテル33のタイプを説明する表である。図3は、タイプX、タイプYおよびタイプZの3種類のタイプのバルーンカテーテル33を模式的に示す。図3において、バルーン335は空中においてメーカが指定する推奨拡張圧を加えて拡張した場合の形状を示す。
【0030】
推奨拡張圧を加えられたバルーン335は、中央部分は略円筒状に、両端は略円錐形状に拡張する。バルーン335の太さが略均一である均一部332の長さを、図中Lで示す。マーカ331は、均一部332の両端の位置を示す。しかしながら、マーカ331の取り付け位置は、バルーンカテーテル33の製造メーカにより、またはバルーンカテーテル33の製品群により異なっている。
【0031】
タイプXは、先端側のマーカ331の先端および基端側のマーカ331の基端が均一部332の端部を示す。タイプYは、マーカ331の中央部が均一部332の端部を示す。タイプZは、先端側のマーカ331の基端および基端側のマーカ331の先端が均一部332の端部を示す。
【0032】
タイプXからタイプZは、マーカ331の位置の例示であり、マーカ331の位置は図3に示す3種類に限定しない。バルーンカテーテル33は、1個または3個以上のマーカ331を有してもよい。
【0033】
図4は、バルーンカテーテル33のタイプごとの拡張位置を説明する表である。図4においては、留置済のステント32およびガイドワイヤ31の図示を省略する。タイプXのバルーンカテーテル33を使用する場合、医師は末梢側のマーカ331の外側の縁を基準点55に合わせた状態で、バルーン335を拡張する。バルーン335が拡張して、均一部332の末梢側の端部が、基準線56と一致する。したがって、基準線56よりも中枢側ではステント32が拡張され、基準線56よりも末梢側ではステント32が拡張されない。
【0034】
同様にタイプYのバルーンカテーテル33を使用する場合、医師は末梢側のマーカ331の中央部を基準点55に合わせた状態で、バルーン335を拡張する。タイプZのバルーンカテーテル33を使用する場合、医師は末梢側のマーカ331の内側の縁を基準点55に合わせた状態で、バルーン335を拡張する。
【0035】
しかしながら、使用中のバルーンカテーテル33のタイプを把握してマーカ331の位置合わせの基準を変更することは、医師にとっては余計な負担である。本実施の形態のステント留置支援システム10は、使用中のバルーンカテーテル33のタイプに応じて適切なマーカ331の位置を示すことにより、POTを行なう医師を支援する。
【0036】
図5は、ステント留置支援システム10の構成を説明する説明図である。ステント留置支援システム10は、前述の血管撮影装置15と、たとえばHIS(Hospital Information System)等のネットワークを介して血管撮影装置15に接続された情報処理装置200とを備える。
【0037】
情報処理装置200は、制御部201、主記憶装置202、補助記憶装置203、通信部204、表示部205、入力部206およびバスを備える。制御部201は、本実施の形態のプログラムを実行する演算制御装置である。制御部201には、一または複数のCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、またはマルチコアCPU等が使用される。制御部201は、バスを介して情報処理装置200を構成するハードウェア各部と接続されている。
【0038】
主記憶装置202は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の記憶装置である。主記憶装置202には、制御部201が行なう処理の途中で必要な情報および制御部201で実行中のプログラムが一時的に保存される。
【0039】
補助記憶装置203は、SRAM、フラッシュメモリ、ハードディスクまたは磁気テープ等の記憶装置である。補助記憶装置203には、基準位置モデル45、カテーテルモデル46、制御部201に実行させるプログラム、およびプログラムの実行に必要な各種データが保存される。なお、基準位置モデル45およびカテーテルモデル46は、たとえばASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(Field Programmable Gate Arr)等のハードウェアにより実装されていてもよい。
【0040】
通信部204は、情報処理装置200とネットワークとの間の通信を行なうインターフェースである。表示部205は、たとえば液晶表示パネルまたは有機EL(electro-luminescence)パネル等である。入力部206は、たとえばキーボードまたはマウス等である。表示部205と入力部206とは、積層されてタッチパネルを構成していてもよい。
【0041】
情報処理装置200は、汎用のパソコン、タブレット、大型計算機、大型計算機上で動作する仮想マシン、または、量子コンピュータである。情報処理装置200は、分散処理を行なう複数のパソコン、または大型計算機等のハードウェアにより構成されても良い。情報処理装置200は、クラウドコンピューティングシステムにより構成されても良い。情報処理装置200は、連携して動作する複数のパソコン、または大型計算機等のハードウェアにより構成されてもよい。
【0042】
情報処理装置200と血管撮影装置15とは、一体に構成されていてもよい。情報処理装置200は、血管撮影装置15に内蔵されており、血管撮影装置15の制御装置を兼ねてもよい。血管撮影装置15の制御装置が、情報処理装置200の機能を実現してもよい。
【0043】
制御部201は、ネットワークを介して血管撮影装置15からリアルタイム血管画像52を取得し続ける。取得したリアルタイム血管画像52の処理については、後述する。
【0044】
図6は、基準位置モデル45を説明する説明図である。基準位置モデル45は、血管造影画像51の入力を受け付けて、基準点55および基準線56を出力するモデルである。基準位置モデル45は、たとえば血管造影画像51と当該血管造影画像51における基準点55および基準線56とを対応づけて多数組記録した訓練データを使用して機械学習により生成された学習済モデルである。
【0045】
学習済モデルは、たとえばCNN(Convolutional Neural Network)のニューラルネットワーク構造を使用して生成される。基準位置モデル45の生成に使用可能なCNNの例としては、R-CNN(Region Based Convolutional Neural Network)、YOLO(You only look once)、U-NetおよびGAN(Generative Adversarial Network)等が挙げられる。基準位置モデル45は、CNN以外のニューラルネットワーク構造を用いて生成されてもよい。学習済モデルは、たとえばランダムフォレストまたはXGBoost(eXtreme Gradient Boosting)等の決定木構造のモデルであってもよい。
【0046】
基準位置モデル45は、血管撮影装置15による画像の撮影方向ごとに用意されていてもよい。一般的に血管撮影装置15はリアルタイム血管画像52に撮影方向およびX線の線量等の撮影条件を示す文字列を重畳して出力する。制御部201は、たとえば文字認識により撮影条件を取得する。制御部201は、リアルタイム血管画像52とは別に撮影条件を示すデータを血管撮影装置15から取得してもよい。
【0047】
制御部201は、撮影方向に応じた基準位置モデル45を使用して、基準点55および基準線56を取得する。基準位置モデル45は、血管造影画像51と共に撮影方向を受け付けて、基準点55および基準線56を出力するモデルであってもよい。
【0048】
同様に、基準位置モデル45はX線の線量ごとに用意されていてもよい。基準位置モデル45は、血管造影画像51とともにX線の線量を受け付けて、基準点55および基準線56を出力するモデルであってもよい。
【0049】
血管撮影装置15は、3次元的な血管構造を出力する装置であってもよい。基準位置モデル45は、3次元的な血管構造の入力を受け付けて、基準点55および基準線56を出力するモデルであってもよい。
【0050】
基準位置モデル45は、パターンマッチングを用いて基準点55および基準線56を定めるモデルであってもよい。
【0051】
一般的に血管造影画像51には多数の分岐部が描出されている。基準位置モデル45は、複数の分岐部のそれぞれについて基準点55および基準線56を検出するモデルであってもよい。複数組の基準点55および基準線56が検出された場合、制御部201は分岐部の選択を受け付ける。医師は、入力部206を操作してステント32を留置する分岐部を指定する。
【0052】
ステント32を留置した後、POTを行なう前に取得した血管造影画像51に基づいて、基準点55および基準線56が定められてもよい。たとえば、基準位置モデル45は、まず血管造影画像51からステント32が留置されたステント留置部を特定する。血管造影画像51中のステント32は、たとえばパターンマッチングにより検出可能である。その後、ステント32の途中から分岐する血管と、ステント32が留置された血管との位置関係に基づいて、基準点55および基準線56が定められる。比較的簡単なルールベースの処理により、基準点55および基準線56を出力する基準位置モデル45を実現できる。
【0053】
基準位置モデル45は、医師による基準点55および基準線56の入力を受け付けて記録するモデルであってもよい。医師は、たとえばタッチパネルを使用して基準点55および基準線56を指定する。基準位置モデル45は、医師による基準点55の入力を受け付けて、基準線56を自動的に生成するモデルであってもよい。
【0054】
基準位置モデル45は、基準点55および基準線56のいずれか一方を出力するモデルであってもよい。基準位置モデル45は、基準線56により囲まれた面の重心等の代表点を出力するモデルであってもよい。基準位置モデル45は、基準線56により囲まれた面を出力するモデルであってもよい。
【0055】
図7は、基準位置モデル45の変形例を説明する説明図である。変形例の基準位置モデル45は、血管造影画像51から抜き出された関心領域511の入力を受け付けて、基準点55および基準線56を出力するモデルである。関心領域511は、たとえば医師により指定された点を中心とした、所定サイズの矩形領域である。
【0056】
ステント32を留置した後、POTを行なう前に取得した血管造影画像51を使用する場合、血管造影画像51にステント32が描出されている。制御部201は、パターン認識等により、ステント32を検出した後に、ステント32を含む関心領域511を決定してもよい。
【0057】
本変形例の基準位置モデル45は、たとえば血管造影画像51の一部である関心領域511と、当該関心領域511における基準点55および基準線56とを対応づけて多数組記録した訓練データを使用して機械学習により生成された学習済モデルである。
【0058】
学習済モデルは、たとえばCNNのニューラルネットワーク構造を使用して生成される。基準位置モデル45の生成に使用可能なCNNの例としては、R-CNN、YOLO、U-NetおよびGAN等が挙げられる。基準位置モデル45は、CNN以外のニューラルネットワーク構造を用いて生成されてもよい。学習済モデルは、たとえばランダムフォレストまたはXGBoost等の決定木構造のモデルであってもよい。
【0059】
基準位置モデル45は、血管撮影装置15による画像の撮影方向ごとに用意されていてもよい。一般的に血管撮影装置15はリアルタイム血管画像52に撮影方向およびX線の線量等の撮影条件を示す文字列を重畳して出力する。制御部201は、たとえば文字認識により撮影条件を取得する。制御部201は、リアルタイム血管画像52とは別に撮影条件を示すデータを血管撮影装置15から取得してもよい。
【0060】
基準位置モデル45は、パターンマッチングを用いて基準点55および基準線56を検出するモデルであってもよい。基準位置モデル45は、ルールベースで基準点55および基準線56を検出するモデルであってもよい。
【0061】
制御部201は、関心領域511中の基準点55および基準線56に基づいて、血管造影画像51中の基準点55および基準線56の位置を算出できる。
【0062】
図8は、カテーテルモデル46を説明する説明図である。カテーテルモデル46は、リアルタイム血管画像52から抽出したバルーン領域522の入力を受け付けて、バルーンカテーテル33に関するバルーンカテーテル情報を出力するモデルである。バルーンカテーテル情報は、たとえばバルーンカテーテル33のタイプ、または、バルーンカテーテル33の型番である。
【0063】
なお、カテーテルモデル46がバルーンカテーテル33の型番を出力する場合、制御部201はバルーンカテーテル33の型番とバルーンカテーテル33のタイプとを関連づけて記録したDBを検索して、バルーンカテーテル33のタイプを判定できる。以後の説明においては、カテーテルモデル46がバルーンカテーテル33のタイプを出力する場合を例にして説明する。
【0064】
医師がガイドワイヤ31をガイドにしてバルーンカテーテル33を挿入した場合、ガイドワイヤ31に沿って等間隔で移動する2個のマーカ331がリアルタイム血管画像52に描出される。マーカ331はリアルタイム血管画像52にくっきりと描出されるため、制御部201は、たとえば一つ前に取得されたリアルタイム血管画像52との差分を算出することにより、マーカ331を検出できる。
【0065】
制御部201は、リアルタイム血管画像52からマーカ331の周辺部を含む矩形のバルーン領域522を抽出する。バルーン領域522には、バルーンシャフト336およびバルーン335等の、バルーンカテーテル33の樹脂部分の構造が薄く描出されている。図8においては、これらの樹脂部分が描出された部分を左下がりのハッチングで示す。
【0066】
たとえば、マーカ331の縦横比、バルーンシャフト336に設けられたバルーン335への給排水用の穴の位置および形状、バルーンシャフト336とバルーン335との接合部の形状、および、ガイドワイヤ31を挿通する孔の太さ等に、メーカごと、または、バルーンカテーテル33のシリーズごとの差異が表れる。
【0067】
したがって、バルーン領域522と、バルーンカテーテル情報とを対応づけて多数組記録した訓練データを使用して、機械学習によりカテーテルモデル46を生成できる。カテーテルモデル46の生成方法の詳細については、後述する。
【0068】
図9は、ステント留置を支援する手順を説明する説明図である。前述のとおり制御部201は、ネットワークを介して血管撮影装置15からリアルタイム血管画像52を取得し続ける。医師は、患者の血管に造影剤を注入する。リアルタイム血管画像52の視野に造影剤が流れ込んでいる間、リアルタイム血管画像52は血管の走行状態が描出された血管造影画像51になる。制御部201は、たとえばリアルタイム血管画像52の平均輝度の変化に基づいて血管造影画像51が撮影されたことを検出する。
【0069】
制御部201は、血管造影画像51を基準位置モデル45に入力して、基準点55および基準線56を取得する。以後、制御部201はリアルタイム血管画像52に基準点55および基準線56を示す基準位置指標を重畳して、表示部205に表示してもよい。なお、医師が血管に造影剤を再度注入した場合、制御部201は新たな血管造影画像51を基準位置モデル45に入力して、基準点55および基準線56の位置を更新する。
【0070】
前述のように、医師はガイドワイヤ31をガイドにしてステント32を留置した後に、拡張用のバルーンカテーテル33を挿入する。図9の右上に、リアルタイム血管画像52にマーカ331が表示されはじめた状態を示す。
【0071】
制御部201は、マーカ331周辺のバルーン領域522をカテーテルモデル46に入力して、バルーンカテーテル情報を取得することにより、バルーンカテーテル33のタイプを判定する。制御部201は、基準点55および基準線56の位置と、バルーンカテーテル33のタイプとに基づいて、図4を使用して説明したようにマーカ331を配置する予定位置を算出する。
【0072】
図9の左下に拡大図を示すように、制御部201はマーカ331を配置する予定位置を示す予定位置指標58を、リアルタイム血管画像52に重畳表示する。医師は、末梢側のマーカ331が予定位置指標58と重なるように、バルーンカテーテル33の挿入長を調整する。制御部201は、マーカ331と予定位置指標58との位置関係を表示部205に表示する。
【0073】
医師は、マーカ331が予定位置指標58と重なっていることを確認した後に、バルーン335を拡張してステント32の末梢側を血管の内壁に押し付ける。以上により、POTが完了する。
【0074】
なお、ガイドワイヤ31の挿入からバルーン335の拡張までの一連の手技を医師の代わりにロボットが自動的に実施してもよい。ロボットが自動的にPOTを行なう場合、ロボットの制御部は、末梢側のマーカ331と予定位置指標58の位置とが重なるようにバルーンカテーテル33を位置決めした後に、バルーン335を拡張する。ロボットは、自動注入ポンプを制御して、造影剤の注入を自動的に行なってもよい。
【0075】
図10は、プログラムの処理の流れを説明するフローチャートである。制御部201は、血管撮影装置15からリアルタイム血管画像52を取得する(ステップS501)。制御部201は、リアルタイム血管画像52が血管造影画像51であるか否かを判定する(ステップS502)。たとえば、リアルタイム血管画像52の平均輝度が所定の閾値よりも低い場合、制御部201はリアルタイム血管画像52が血管造影画像51であると判定する。
【0076】
自動注入ポンプ等を用いて造影剤の注入が行なわれる場合、制御部201は自動注入ポンプから造影剤の注入を通知する信号を取得した後、ステント留置位置に造影剤が流れ込む予想時間が経過した場合に、リアルタイム血管画像52が血管造影画像51であると判定してもよい。
【0077】
制御部201は、医師による指示に基づいてリアルタイム血管画像52が血管造影画像51であると判定してもよい。医師は、たとえば音声入力によりリアルタイム血管画像52が血管造影画像51であることを指示できる。
【0078】
血管造影画像51ではないと判定した場合(ステップS502でNO)、制御部201はステップS501に戻る。血管造影画像51であると判定した場合(ステップS502でYES)、制御部201は血管造影画像51を基準位置モデル45に入力して、基準点55および基準線56を取得する(ステップS503)。
【0079】
制御部201は、基準点55および基準線56の取得に成功したか否かを判定する(ステップS504)。たとえば、基準位置モデル45がニューラルネットワークを使用した学習済モデルである場合、基準点55および基準線56の信頼度が所定の閾値を超える場合に、制御部201は基準点55および基準線56の取得に成功したと判定する。
【0080】
成功していないと判定した場合(ステップS504でNO)、制御部201はたとえば「本管と側枝とが分離できる角度で撮影してください」等の、血管造影画像51の再取得を促す通知を表示部205に表示する(ステップS505)。通知は音声により出力されてもよい。その後、制御部201はステップS501に戻る。
【0081】
医師は、たとえば血管撮影装置15のX線管と平面検出器とを保持するCアームを動かして、リアルタイム血管画像52の撮影方向を修正する。情報処理装置200が血管撮影装置15の制御装置を兼ねている場合、制御部201が医師の指示に基づいて、または自動的にCアームを動作させてもよい。修正が完了した後、医師は造影剤を注入して、血管造影画像51を再取得する。
【0082】
成功したと判定した場合(ステップS504でYES)、制御部201はタイプ判定のサブルーチンを起動する(ステップS510)。タイプ判定のサブルーチンは、バルーンカテーテル33のタイプを判定するサブルーチンである。なお、バルーンカテーテル33のタイプを判定する前に、造影材が再注入された場合、タイプ判定のサブルーチンは終了する。タイプ判定のサブルーチンの処理の流れは後述する。
【0083】
制御部201は、バルーンカテーテル33のタイプ判定に成功したか否かを判定する(ステップS511)。成功していないと判定した場合(ステップS511でNO)、すなわち、バルーンカテーテル33のタイプを判定する前に、造影剤が再注入された場合、制御部201はステップS503に戻る。
【0084】
成功したと判定した場合(ステップS511でYES)、制御部201は、ステップS503で取得した基準点55および基準線56の位置と、ステップS510で判定したバルーンカテーテル33のタイプとに基づいて、マーカ331を配置する予定位置を算出する(ステップS512)。
【0085】
制御部201は、最新のリアルタイム血管画像52を取得する(ステップS513)。制御部201は、リアルタイム血管画像52が血管造影画像51であるか否かを判定する(ステップS514)。
【0086】
リアルタイム血管画像52が血管造影画像51であると判定した場合(ステップS514でYES)、制御部201は血管造影画像51を基準位置モデル45に入力して、基準点55および基準線56を取得する(ステップS515)。制御部201は、ステップS515で取得した基準点55および基準線56の位置と、ステップS510で判定したバルーンカテーテル33のタイプとに基づいて、マーカ331を配置する予定位置を更新する(ステップS516)。制御部201は、ステップS513に戻る。
【0087】
リアルタイム血管画像52が血管造影画像51ではないと判定した場合(ステップS514でNO)、制御部201はマーカ位置判定のサブルーチンを起動する(ステップS521)。マーカ位置判定のサブルーチンは、ステップS512で算出したマーカ予定位置、または、ステップS516で更新したマーカ予定位置と、リアルタイム血管画像52に描出された実際のマーカ331の位置との関係を判定するサブルーチンである。マーカ位置判定のサブルーチンの処理の流れは後述する。
【0088】
制御部201は、処理を終了するか否かを判定する(ステップS522)。たとえば、医師から処理を終了する旨の指示を受け付けた場合に、制御部201は処理を終了すると判定する。制御部201は血管撮影装置15からリアルタイム血管画像52を取得できなくなった場合に、処理を終了すると判定してもよい。
【0089】
処理を終了しないと判定した場合(ステップS522でNO)、制御部201はステップS513に戻る。処理を終了すると判定した場合(ステップS522でYES)、制御部201は処理を終了する。
【0090】
図11は、タイプ判定のサブルーチンの処理の流れを説明するフローチャートである。タイプ判定のサブルーチンは、バルーンカテーテル33のタイプを判定するサブルーチンである。
【0091】
制御部201は、血管撮影装置15からリアルタイム血管画像52を取得する(ステップS531)。制御部201は、リアルタイム血管画像52が血管造影画像51であるか否かを判定する(ステップS532)。血管造影画像51であると判定した場合(ステップS532でYES)、制御部201は処理を終了する。
【0092】
血管造影画像51ではないと判定した場合(ステップS532でNO)、制御部201はリアルタイム血管画像52からマーカ331を検出する(ステップS533)。制御部201は、たとえば一つ前に取得されたリアルタイム血管画像52と、最新のリアルタイム血管画像52との差分を算出することにより、マーカ331を検出できる。なお、バルーンカテーテル33の先端部がリアルタイム血管画像52の視野内に入っていない場合には、制御部201はマーカ331を検出できない。
【0093】
制御部201は、マーカ331の検出に成功したか否かを判定する(ステップS534)。成功していないと判定した場合(ステップS534でNO)、制御部201はステップS531に戻る。成功したと判定した場合(ステップS534でYES)、制御部201はリアルタイム血管画像52から図8を使用して説明したバルーン領域522を取得する(ステップS535)。
【0094】
制御部201は、バルーン領域522をカテーテルモデル46に入力してバルーンカテーテル33のタイプを取得する(ステップS536)。制御部201は、タイプの判定に成功したか否かを判定する(ステップS537)。たとえば、カテーテルモデル46がニューラルネットワークを使用した学習済モデルである場合、タイプの信頼度が所定の閾値を超える場合に、制御部201はバルーンカテーテル33のタイプの判定に成功したと判定する。
【0095】
成功していないと判定した場合(ステップS537でNO)、制御部201はステップS531に戻る。成功したと判定した場合(ステップS537でYES)、制御部201は処理を終了する。
【0096】
図12は、マーカ位置判定のサブルーチンの処理の流れを説明するフローチャートである。制御部201は、血管造影画像51およびリアルタイム血管画像52に基づいて、ガイドワイヤ31に沿ってどちら側の方向が末梢側であるかを判定する(ステップS541)。なお、ステップS541を2回目以降に実行する場合には、制御部201は前回の判定結果をそのまま使用してもよい。
【0097】
具体的には、制御部201はリアルタイム血管画像52に描出されているガイドワイヤ31を抽出する。制御部201は、血管造影画像51からガイドワイヤ31に沿った血管の太さを算出する。制御部201はガイドワイヤ31に沿って血管が細くなる側が末梢側であると判定する。
【0098】
制御部201は、リアルタイム血管画像52からマーカ331を検出する(ステップS542)。制御部201は、末梢側のマーカ331を選択する(ステップS543)。以後の処理では、制御部201は末梢側のマーカ331を処理の対象にする。
【0099】
制御部201は、末梢側のマーカ331が、マーカ予定位置から所定の範囲内であるか否かを判定する(ステップS544)。ここで所定の範囲は、マーカ331がマーカ予定位置とほぼ一致すると判定される範囲である。
【0100】
所定の範囲内であると判定した場合(ステップS544でYES)、制御部201はバルーンカテーテル33が適正な位置に配置されている旨を表示する(ステップS545)。その後、制御部201は処理を終了する。
【0101】
所定の範囲内ではないと判定した場合(ステップS544でNO)、制御部201は末梢側のマーカ331が、マーカ予定位置を通過して移動したか否かを判定する。具体的には制御部201は、マーカ予定位置を基準にして最初にリアルタイム血管画像52に描出された位置と反対側にマーカ331が位置するか否かを判定する(ステップS546)。
【0102】
マーカ予定位置を通過して移動したと判定した場合(ステップS546でYES)、制御部201はバルーンカテーテル33が適正な位置を通過した旨を表示する(ステップS547)。その後、制御部201は処理を終了する。
【0103】
反対側に位置しないと判定した場合(ステップS546でNO)、制御部201はバルーンカテーテル33が適正な位置に未だ到達していない旨を表示する(ステップS548)。その後、制御部201は処理を終了する。
【0104】
図13は、画面例である。図13は、ステップS548において、制御部201が表示部205に表示する画面の例を示す。画面には、血管造影画像51、リアルタイム血管画像52、バルーンカテーテル情報欄61および判定結果欄62が表示されている。
【0105】
リアルタイム血管画像52は、制御部201が血管撮影装置15からリアルタイム血管画像52を取得する都度更新される。図13に示すリアルタイム血管画像52には、2つのマーカ331と、ガイドワイヤ31と、ステント32とが描出されている。制御部201は、図10を使用して説明したステップS512またはステップS516で算出したマーカ予定位置を示す予定位置指標58を、リアルタイム血管画像52に重畳表示する。
【0106】
血管造影画像51は、医師が造影剤を注入する都度更新される。バルーンカテーテル情報欄61には、図11を使用して説明したタイプ判定のサブルーチンにより判定されたバルーンカテーテル33のタイプが表示される。カテーテルモデル46が出力するバルーンカテーテル情報に、メーカ名および型番が含まれる場合には、図13に例示するように制御部201はメーカ名および型番をバルーンカテーテル情報欄61に表示してもよい。
【0107】
判定結果欄62には、図12を使用して説明したマーカ位置判定のサブルーチンによる判定結果が表示される。ステップS547で表示を行なう場合、制御部201は判定結果欄62に「通過」である旨を表示する。ステップS545で表示を行なう場合、制御部201は判定結果欄62に「適正」である旨を表示する。
【0108】
制御部201は、判定結果欄62を使用する代わりに、または判定結果欄62と共に予定位置指標58の色または形状等の表示態様により「適正」である旨を表示してもよい。たとえば制御部201は、「未到達(ステップS548)」および「通過(ステップS547)」である場合には予定位置指標58を赤色で表示し、「適正(ステップS545)」である場合には予定位置指標58を青色で表示してもよい。医師は、予定位置指標58が青色に変化したことを確認して、バルーン335の拡張を開始できる。
【0109】
制御部201は、マーカ331の位置が「適正」である場合に、音声による通知を出力してもよい。リアルタイム血管画像52を注視しながらバルーンカテーテル33を操作している医師だけでなく、周囲のコメディカルスタッフにもバルーン335を拡張する準備が整った旨を通知するステント留置支援システム10を提供できる。
【0110】
制御部201は、血管造影画像51とリアルタイム血管画像52とを重畳表示してもよい。たとえば、血管造影画像51を薄い色で、リアルタイム血管画像52を濃い色でそれぞれ表示することにより、医師は、血管と、ステント32と、マーカ331との位置関係を容易に把握できる。
【0111】
本実施の形態によると、医師はタイプXからタイプZのどのタイプのバルーンカテーテル33を使用しているかを意識せずに、適切な位置でPOTを行なえる。
【0112】
[変形例]
制御部201は、図10を使用して説明したプログラムにおいて、ステップS521のマーカ位置判定のサブルーチンの実行を省略してもよい。医師は、リアルタイム血管画像52に表示された予定位置指標58およびマーカ331を目視して、適切な位置にバルーン335を配置して、POTを行なえる。
【0113】
[実施の形態2]
本実施の形態は、バルーンカテーテル33の個装材に貼付されたバーコードの読み取り、または、手動入力により、バルーンカテーテル33の型番を取得して、タイプを判定するステント留置支援システム10に関する。実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。
【0114】
図14は、バルーンDB41のレコードレイアウトを説明する説明図である。バルーンDB41は、バルーンカテーテル33の型番、バーコードに記載されたデータおよびタイプを関連づけて記録したDBである。
【0115】
バルーンDB41は、型番フィールド、バーコードフィールドおよびタイプフィールドを有する。型番フィールドには、バルーンカテーテル33を特定できる型番が記録されている。バーコードフィールドには、バルーンカテーテル33の個装材に貼付されたバーコードに記録された情報が記録されている。バーコードには、たとえばJAN(Japan Article Number)コードが記録されている。タイプフィールドには、図3を使用して説明したバルーンカテーテル33のタイプが記録されている。バルーンDB41は、一機種のバルーンカテーテル33について、一つのレコードを有する。
【0116】
図15は、実施の形態2のタイプ判定のサブルーチンの処理の流れを説明するフローチャートである。図15に示すサブルーチンは、図11を使用して説明したタイプ判定のサブルーチンの代わりに実行される。
【0117】
制御部201は、バルーンカテーテル33のタイプを判定する方法に関する選択を受け付ける(ステップS561)。以下の説明においては、「自動」、「バーコード」および「手動」の3通りの選択肢が存在する場合を例にして説明する。
【0118】
制御部201は「自動」の選択を受け付けたか否かを判定する(ステップS562)。「自動」の選択を受け付けたと判定した場合(ステップS562でYES)、制御部201は、血管撮影装置15からリアルタイム血管画像52を取得する(ステップS531)。以後の処理は、図11を使用して説明した実施の形態1のタイプ判定のサブルーチンの処理の流れと同様であるため、説明を省略する。
【0119】
「自動」の選択を受け付けていないと判定した場合(ステップS562でNO)、制御部201は「バーコード」の選択を受け付けたか否かを判定する(ステップS563)。「バーコード」の選択を受け付けたと判定した場合(ステップS563でYES)、制御部201は図示を省略するバーコードリーダを読取可能な状態に設定する。医師は、バルーンカテーテル33の個装材をバーコードリーダに翳す。制御部201は、バーコードを読み取る(ステップS564)。
【0120】
制御部201は、読み取ったバーコードをキーにしてバルーンDB41を検索して、レコードを抽出する。制御部201は、抽出したレコードのタイプフィールドに記録されたタイプを取得する(ステップS565)。その後、制御部201は処理を終了する。
【0121】
「バーコード」の選択を受け付けていないと判定した場合(ステップS563でNO)、制御部201はキーボードまたはマイク等の入力部を介して、バルーンカテーテル33の型番またはタイプの手動入力を受け付ける(ステップS571)。
【0122】
制御部201は、型番の入力を受け付けたか否かを判定する(ステップS572)。型番の入力を受け付けたと判定した場合(ステップS572でYES)、制御部201は受け付けた型番をキーにしてバルーンDB41を検索して、レコードを抽出する。制御部201は、抽出したレコードのタイプフィールドに記録されたタイプを取得する(ステップS573)。その後、制御部201は処理を終了する。
【0123】
型番の入力を受け付けていないと判定した場合(ステップS572でNO)、制御部201はタイプの入力を受け付けたと判定して、処理を終了する。
【0124】
本実施の形態によると、バルーンカテーテル33のタイプを取得する方法を選択可能なステント留置支援システム10を提供できる。
【0125】
[実施の形態3]
本実施の形態は、医師が基準線56の位置を微調整できるステント留置支援システム10に関する。実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。
【0126】
図16は、実施の形態3の画面例である。制御部201は、図10を使用して説明したプログラムのステップS504とステップS510との間で図16に示す画面例を表示部205に表示する。
【0127】
図16に示す画面は、血管造影画像51、中止ボタン657および完了ボタン658を含む。血管造影画像51には、ステップS503で取得した基準線56を示す指標が表示されている。
【0128】
医師は、血管造影画像51を観察して、基準線56を微調整する必要があるか否かを専門的な知見に基づいて判断する。微調整する必要がある場合には、医師は入力部206を操作して基準線56を適切な位置に移動させる。
【0129】
医師は、たとえばIVUS(Intravascular Ultrasound)またはOCT(Optical Coherence Tomography)等を使用して、血管の状態を詳細に検討した上で、基準線56を微調整するか否かを判断してもよい。
【0130】
基準線56の移動が完了した後、医師は完了ボタン658を選択する。制御部201は、医師が移動した後の基準線56を用いて以後の処理を実行する。基準線56の微調整が不要である場合、医師は中止ボタン657を選択する。制御部201は、ステップS503で取得した基準線56を用いて以後の処理を実行する。
【0131】
本実施の形態によると、POTを行なう際の基準線56を医師が微調整できるステント留置支援システム10を提供できる。
【0132】
制御部201は、基準線56の代わりに基準点55の微調整を受け付けてもよい。制御部201は、基準線56と基準点55との両方の微調整を受け付けてもよい。
【0133】
[実施の形態4]
本実施の形態は、カテーテルモデル46の生成方法に関する。実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。
【0134】
図17は、実施の形態4の情報処理装置210の構成を説明する説明図である。情報処理装置210は、制御部211、主記憶装置212、補助記憶装置213、通信部214、表示部215、入力部216およびバスを備える。
【0135】
制御部211は、本実施の形態のプログラムを実行する演算制御装置である。制御部201には、一または複数のCPU、GPU、TPU(Tensor Processing Unit)またはマルチコアCPU等が使用される。制御部211は、バスを介して情報処理装置210を構成するハードウェア各部と接続されている。
【0136】
主記憶装置212は、SRAM、DRAM、フラッシュメモリ等の記憶装置である。主記憶装置212には、制御部211が行なう処理の途中で必要な情報および制御部211で実行中のプログラムが一時的に保存される。
【0137】
補助記憶装置213は、SRAM、フラッシュメモリ、ハードディスクまたは磁気テープ等の記憶装置である。補助記憶装置213には、訓練DB42、制御部211に実行させるプログラム、およびプログラムの実行に必要な各種データが保存される。通信部214は、情報処理装置210とネットワークとの間の通信を行なうインターフェースである。
【0138】
表示部215は、たとえば液晶表示パネルまたは有機ELパネル等である。入力部216は、たとえばキーボードまたはマウス等である。表示部215と入力部216とは、積層されてタッチパネルを構成していてもよい。
【0139】
情報処理装置210は、汎用のパソコン、タブレット、大型計算機、大型計算機上で動作する仮想マシン、または、量子コンピュータである。情報処理装置210は、分散処理を行なう複数のパソコン、または大型計算機等のハードウェアにより構成されても良い。情報処理装置210は、クラウドコンピューティングシステムにより構成されても良い。情報処理装置210は、連携して動作する複数のパソコン、または大型計算機等のハードウェアにより構成されてもよい。
【0140】
図18は、訓練DB42のレコードレイアウトを説明する説明図である。訓練DB42は、画像フィールドと、カテーテル情報フィールドとを有する。カテーテル情報フィールドは、型番フィールドと、タイプフィールドとを有する。
【0141】
画像フィールドには、図8を使用して説明したバルーン領域522に対応する画像が記録されている。型番フィールドには、バルーン領域522に描出されているバルーンカテーテル33の型番が記録されている。タイプフィールドには、バルーン領域522に描出されているバルーンカテーテル33のタイプが記録されている。訓練DB42は、一つの画像について、一つのレコードを有する。訓練DB42は、機械学習によるカテーテルモデル46の訓練に使用される。
【0142】
図19は、カテーテルモデル46を生成するプログラムの処理の流れを説明する説明図である。図19のプログラムの実行に先立ち、たとえば物体識別を実現するCNN構造等の未学習のモデルが準備されている。
【0143】
制御部211は、訓練DB42から訓練レコードを取得する(ステップS601)。制御部211は、取得した訓練レコードに含まれる画像を、訓練中のカテーテルモデル46に入力し、出力されるカテーテル情報を取得する(ステップS602)。以下の説明では、訓練中のカテーテルモデル46から出力されるデータを、訓練中出力データと記載する。
【0144】
制御部211は、ステップS601で取得した訓練レコードに含まれるカテーテル情報と、訓練中出力データとの差異が小さくなるように、誤差逆伝播法等の手法を用いてカテーテルモデル46のパラメータを調整する(ステップS603)。
【0145】
制御部211は、パラメータの調整を終了するか否かを判定する(ステップS604)。たとえば、ハイパーパラメータで規定された所定の回数の学習を繰り返した場合に、制御部211は処理を終了すると判定する。制御部211は、訓練DB42からテストデータを取得して訓練中のカテーテルモデル46に入力し、所定の精度の出力が得られた場合に処理を終了すると判定してもよい。
【0146】
処理を終了しないと判定した場合(ステップS604でNO)、制御部211はステップS601に戻る。処理を終了すると判定した場合(ステップS604でYES)、制御部211は調整したパラメータを補助記憶装置213に記録する(ステップS605)。その後、制御部211は処理を終了する。以上により、カテーテルモデル46の学習が完了する。
【0147】
本実施の形態によると、機械学習によりカテーテルモデル46を生成できる。生成したカテーテルモデル46は、所定の性能試験等を行なった後に、ネットワークを介して各地の情報処理装置200に配信されて、使用される。
【0148】
[実施の形態5]
本実施の形態は、POTを十分に行なえたか否かを通知するステント留置支援システム10に関する実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。
【0149】
図20は、POTを行なう範囲を説明する説明図である。図20は、ステントが描出された血管造影画像51の例を示す。図20においては、ガイドワイヤおよびステント拡張用のバルーンの図示を省略する。
【0150】
ステント32のうち、基準位置55よりも中枢側の長さLEが、POTを行なう範囲である。均一部332の長さLがLEを超えるバルーン335を使用する場合には、1回のPOTでステントを血管内壁と適切に密着させられる。しかしながら、均一部332の長さLがLEよりも短いバルーン335を使用する場合、1回のPOTではたとえば図2に例示するようにステント32の中枢側の部分が血管内壁に密着しない。
【0151】
そのため、前述のように医師は、バルーン335を収縮させて、中枢側に移動させた後に拡張する処理を繰り返すことにより、分岐部から中枢側の端部までのステント32を適切な状態に拡張させる。本実施の形態は、必要な範囲に対するPOTが完了したかどうかを判定して通知することにより、医師の手技を支援するステント留置支援システム10に関する。
【0152】
図21は、実施の形態5のプログラムの処理の流れを説明するフローチャートである。図21のプログラムは、医師がバルーン335を拡張した後に起動するプログラムである。なお、図21に示すプログラムは、図10を使用して説明したプログラムから最新の基準位置および最新の血管造影画像51を取得して動作する。
【0153】
制御部201は、たとえばバルーン335拡張用のポンプが動作した場合、またはリアルタイム血管画像52の画像解析によりステント32が拡張されたことを検出した場合に、図21に示すプログラムを起動する。
【0154】
制御部201は、血管撮影装置15からリアルタイム血管画像52を取得する(ステップS551)。制御部201は、リアルタイム血管画像52からステント32を抽出する(ステップS552)。ステント32の抽出は、たとえばパターンマッチングにより行なえる。
【0155】
制御部201は抽出したステント32と、最新の血管造影画像51の対応する部分とに基づいて、ステント32のPOTが完了したか否かを判定する(ステップS553)。具体的には、制御部201は図20を使用して説明した長さLEの全長にわたって、ステント32が血管内壁に密着している場合に、POTが完了したと判定する。
【0156】
POTが完了していないと判定した場合(ステップS553でNO)、制御部201は、たとえば図13を使用して説明した画面の判定結果欄62に、「拡張が不十分な部分があります」等の通知を出力する(ステップS554)。通知は、音声により出力されてもよい。制御部201は、ステント32が血管内壁に密着していないと判定した部分を示すマーカを、リアルタイム血管画像52に重畳表示してもよい。その後、制御部201はステップS551に戻る。
【0157】
POTが完了したと判定した場合(ステップS553でYES)、制御部201は、たとえば図13を使用して説明した画面の判定結果欄62に、「POT完了」等の通知を出力する(ステップS555)。通知は、音声により出力されてもよい。その後、制御部201は処理を終了する。
【0158】
本実施の形態によると、必要な範囲に対するPOTが完了したかどうかを判定して通知することにより、医師の手技を支援するステント留置支援システム10を提供できる。
【0159】
[実施の形態6]
本実施の形態は、2回目以降のバルーン335の拡張についても、予定位置指標58を表示するステント留置支援システム10に関する。実施の形態5と共通する部分については、説明を省略する。
【0160】
図22は、実施の形態6のプログラムの処理の流れを説明するフローチャートである。ステップS553までの処理は、図21を使用して説明した実施の形態5のプログラムの処理の流れと同一であるため、説明を省略する。
【0161】
POTが完了していないと判定した場合(ステップS553でNO)、制御部201は追加でステント32を拡張する範囲を特定する(ステップS561)。たとえば、制御部201はステント32が血管内壁に密着していない範囲、すなわち要拡張範囲の長さが、均一部332よりも短い場合、制御部201は要拡張範囲を覆うように追加でステント32を拡張する範囲を定める。たとえば、要拡張範囲の長さが、均一部332よりも短い場合、基準位置55に近い場所であり、基準位置55よりも末梢側は拡張しないように追加でステント32を拡張する範囲を定める。
【0162】
制御部201は、ステップS556で特定した範囲と、図10を使用して説明したプログラムで判定したバルーンカテーテル33のタイプとに基づいて、マーカ331を配置する予定位置を算出する(ステップS562)。なお、基準位置55から離れた場所であれば、追加拡張する範囲については高い精度は要求されないため、制御部201は図3を使用して説明したタイプXからタイプZの任意のバルーンカテーテル33に対応する予定位置を算出してもよい。
【0163】
制御部201は、たとえば図13を使用して説明した画面の予定位置指標58を、ステップS562で算出した位置に移動させて表示する(ステップS563)。制御部201はマーカ位置判定のサブルーチンを起動する(ステップS564)。マーカ位置判定のサブルーチンは、マーカ予定位置と、リアルタイム血管画像52に描出された実際のマーカ331の位置との関係を判定するサブルーチンである。マーカ位置判定のサブルーチンの処理の流れは、図12を使用して説明したサブルーチンと同一である。
【0164】
制御部201は、バルーンカテーテル33の拡張が行なわれたか否かを判定する(ステップS565)。具体的には、制御部201は、たとえばバルーン335拡張用のポンプが動作した場合に、バルーンカテーテル33の拡張が行なわれたと判定する。拡張が行なわれたと判定した場合(ステップS565でYES)、制御部201は、ステップS551に戻る。
【0165】
拡張が行なわれていないと判定した場合(ステップS565でNO)、制御部201は、血管撮影装置15からリアルタイム血管画像52を取得する(ステップS566)。制御部201はステップS564に戻る。
【0166】
POTが完了したと判定した場合(ステップS553でYES)、制御部201は、たとえば図13を使用して説明した画面の判定結果欄62に、「POT完了」等の通知を出力する(ステップS555)。その後、制御部201は処理を終了する。
【0167】
本実施の形態によると、2回目以降のバルーン335の拡張についても、予定位置指標58を表示するステント留置支援システム10を提供できる。
【0168】
[実施の形態7]
図23は、実施の形態7のステント留置支援システム10の構成を説明する説明図である。本実施の形態は、汎用のコンピュータ90と、プログラム97とを組み合わせて動作させることにより、本実施の形態のステント留置支援システム10を実現する形態に関する。実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。
【0169】
本実施の形態のステント留置支援システム10は、コンピュータ90と血管撮影装置15とを含む。コンピュータ90は、制御部201、主記憶装置202、補助記憶装置203、通信部204、表示部205、入力部206、読取部209およびバスを備える。
【0170】
プログラム97は、可搬型記録媒体96に記録されている。制御部201は、読取部209を介してプログラム97を読み込み、補助記憶装置203に保存する。また制御部201は、コンピュータ90内に実装されたフラッシュメモリ等の半導体メモリ98に記憶されたプログラム97を読出してもよい。さらに、制御部201は、通信部204および図示しないネットワークを介して接続される図示しない他のサーバコンピュータからプログラム97をダウンロードして補助記憶装置203に保存してもよい。
【0171】
プログラム97は、コンピュータ90の制御プログラムとしてインストールされ、主記憶装置202にロードして実行される。これにより、コンピュータ90は上述した情報処理装置200として機能する。プログラム97は、プログラム製品の例示である。
【0172】
コンピュータ90は、汎用のパソコン、タブレット、スマートフォン、大型計算機、大型計算機上で動作する仮想マシン、クラウドコンピューティングシステム、または、量子コンピュータである。コンピュータ90は、分散処理を行なう複数のパソコン等であってもよい。
【0173】
各実施例で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組合せ可能であり、組み合わせすることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものでは無いと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味では無く、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0174】
10 ステント留置支援システム
15 血管撮影装置
200 情報処理装置
201 制御部
202 主記憶装置
203 補助記憶装置
204 通信部
205 表示部
206 入力部
209 読取部
210 情報処理装置
211 制御部
212 主記憶装置
213 補助記憶装置
214 通信部
215 表示部
216 入力部
31 ガイドワイヤ
32 ステント
33 バルーンカテーテル
331 マーカ
332 均一部
335 バルーン
336 バルーンシャフト
41 バルーンDB
42 訓練DB
45 基準位置モデル
46 カテーテルモデル
51 血管造影画像(血管画像)
511 関心領域
52 リアルタイム血管画像(血管画像)
522 バルーン領域
55 基準点(基準位置)
56 基準線(基準位置)
58 予定位置指標
61 バルーンカテーテル情報欄
62 判定結果欄
657 中止ボタン
658 完了ボタン
90 コンピュータ
96 可搬型記録媒体
97 プログラム
98 半導体メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図18
図19
図20
図21
図22
図23