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特開2023-151428プログラム、学習済モデル生成方法、情報処理方法および情報処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151428
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】プログラム、学習済モデル生成方法、情報処理方法および情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/10 20160101AFI20231005BHJP
   A61M 29/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A61B34/10
A61M29/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061026
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】金沢 祐弥
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA07
4C267AA61
4C267BB06
4C267BB12
4C267BB27
4C267BB43
4C267BB70
4C267CC09
4C267HH08
(57)【要約】
【課題】管腔器官の拡張に伴う損傷発生リスクに関する判断を支援するプログラム等を提供すること。
【解決手段】プログラムは、走査面を軸方向に移動させながら画像を取得する画像取得用カテーテルを用いて取得された複数の断層像58に基づいて、管腔器官の内部でバルーンを拡張した場合に前記管腔器官に損傷が生じるリスクを特定し、特定した前記リスクを出力する処理をコンピュータに実行させる。プログラムは、複数の断層像58を取得し、取得した複数の断層像58に関する情報を、管腔器官の内側から取得された複数の断層像58に関する情報を入力した場合に、前記管腔器官の内部でバルーンを拡張した場合に前記管腔器官に損傷が生じるリスクを出力するモデルに入力して、前記管腔器官に損傷が生じるリスクを特定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査面を軸方向に移動させながら画像を取得する画像取得用カテーテルを用いて取得された複数の断層像に基づいて、管腔器官の内部でバルーンを拡張した場合に前記管腔器官に損傷が生じるリスクを特定し、
特定した前記リスクを出力する
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項2】
複数の断層像を取得し、
取得した複数の断層像に関する情報を、管腔器官の内側から取得された複数の断層像に関する情報を入力した場合に、前記管腔器官の内部でバルーンを拡張した場合に前記管腔器官に損傷が生じるリスクを出力するモデルに入力して、前記管腔器官に損傷が生じるリスクを特定する
請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記複数の断層像に関する情報は、EEM(External Elastic Membrane:外弾性板)厚さであり、
前記管腔器官は、血管であり、
前記管腔器官に損傷が生じるリスクは、前記血管に血管解離が生じるリスクである
請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記リスクは、前記管腔器官に損傷が生じる可能性を複数の段階に区分したものである
請求項1から請求項3のいずれか一つに記載のプログラム。
【請求項5】
特定した前記リスクに応じて、前記管腔器官に使用するバルーンに関するバルーン情報を出力する
請求項1から請求項4のいずれか一つに記載のプログラム。
【請求項6】
前記管腔器官は、血管であり、
前記リスクは、前記血管に血管解離が生じるリスクである
請求項5に記載のプログラム。
【請求項7】
前記画像取得用カテーテルを用いて取得された複数の断層像に基づいて、前記管腔器官に使用するバルーンに関するバルーン情報を出力する
請求項1から請求項4のいずれか一つに記載のプログラム。
【請求項8】
血管造影画像を取得し、
前記画像取得用カテーテルを用いて取得された複数の断層像と、取得した血管造影画像とに基づいて、前記管腔器官に使用するバルーンに関するバルーン情報を出力する
請求項1から請求項4のいずれか一つに記載のプログラム。
【請求項9】
前記バルーン情報は、前記バルーンの拡張径および長さを含む
請求項5から請求項8のいずれか一つに記載のプログラム。
【請求項10】
前記バルーン情報は、前記バルーンの製品を特定する情報を含む
請求項5から請求項9のいずれか一つに記載のプログラム。
【請求項11】
前記バルーン情報は、前記バルーンの拡張圧を含む
請求項5から請求項10のいずれか一つに記載のプログラム。
【請求項12】
走査面を軸方向に移動させながら画像を取得する画像取得用カテーテルを用いて管腔器官の内側から取得された複数の断層像と、前記管腔器官の内部でバルーンを拡張した場合の前記管腔器官に損傷状態とを関連づけて複数組記録した訓練データベースから訓練データを取得し、
前記訓練データに基づいて、管腔器官の内側から取得された複数の断層像に関する情報を入力した場合に、前記管腔器官の内部でバルーンを拡張した場合に前記管腔器官に損傷が生じるリスクを出力する学習済モデルを生成する
学習済モデル生成方法。
【請求項13】
走査面を軸方向に移動させながら画像を取得する画像取得用カテーテルを用いて取得された複数の断層像に基づいて、管腔器官の内部でバルーンを拡張した場合に前記管腔器官に損傷が生じるリスクを特定し、
特定した前記リスクを出力する
処理をコンピュータが実行する情報処理方法。
【請求項14】
制御部を備える情報処理装置であって、
前記制御部は、
走査面を軸方向に移動させながら画像を取得する画像取得用カテーテルを用いて取得された複数の断層像に基づいて、管腔器官の内部でバルーンを拡張した場合に前記管腔器官に損傷が生じるリスクを特定し、
特定した前記リスクを出力する
情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム、学習済モデル生成方法、情報処理方法および情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血管狭窄部の治療に、先端に薬剤コーティングバルーン(DCB:Drug-coated Balloon)を備える薬剤コーティングバルーンカテーテルが使用されている(特許文献1)。薬剤コーティングバルーンには、狭窄部治療用の薬剤が塗布されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-200371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
薬剤コーティングバルーンを血管等の管腔器官の狭窄部に挿入した後に拡張することにより、狭窄部の内面に薬剤が供給される。バルーンによる物理的な拡張と、供給された薬剤との両方の作用により、狭窄部の治療効果が得られる。なお、患者の状態によっては、薬剤をコーティングしていないバルーンを用いた治療が行なわれる場合もある。
【0005】
しかしながら、狭窄部付近の管腔器官の状態によっては、拡張により血管解離等の損傷が発生するリスクがある。損傷発生リスクの程度を判断するには、専門的知識と十分な臨床経験とが必要である。
【0006】
一つの側面では、管腔器官の拡張に伴う損傷発生リスクに関する判断を支援するプログラム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
プログラムは、走査面を軸方向に移動させながら画像を取得する画像取得用カテーテルを用いて取得された複数の断層像に基づいて、管腔器官の内部でバルーンを拡張した場合に前記管腔器官に損傷が生じるリスクを特定し、特定した前記リスクを出力する処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0008】
一つの側面では、管腔器官の拡張に伴う損傷発生リスクに関する判断を支援するプログラム等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】バルーンを用いた狭窄部の拡張手順の概要を説明する説明図である。
図2】治療支援システムの構成を説明する説明図である。
図3】分類モデルの構成を説明する説明図である。
図4】リスク判定モデルの構成を説明する説明図である。
図5】センサ位置判定モデルの構成を説明する説明図である。
図6】断層像DBのレコードレイアウトを説明する説明図である。
図7】プログラムの処理の流れを説明するフローチャートである。
図8】三次元走査データ取得のサブルーチンの処理の流れを説明するフローチャートである。
図9】バルーンサイズ判定のサブルーチンの処理の流れを説明するフローチャートである。
図10】画面例である。
図11】画面例である。
図12】画面例である。
図13】画面例である。
図14】実施の形態2のリスク判定モデルの構成を説明する説明図である。
図15】バルーンDBのレコードレイアウトを説明する説明図である。
図16】実施の形態3のプログラムの処理の流れを説明するフローチャートである。
図17】実施の形態3の画面例である
図18】実施の形態3の画面例である。
図19】実施の形態4の情報処理装置の構成を説明する説明図である。
図20】訓練DBのレコードレイアウトを説明する説明図である。
図21】リスク判定モデルを生成するプログラムの処理の流れを説明する説明図である。
図22】実施の形態5のカテーテルシステムの構成を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態1]
図1は、バルーンを用いた狭窄部の拡張手順の概要を説明する説明図である。以下の説明では、医師が薬剤コーティングバルーンカテーテルを使用して、血管狭窄部の治療を行なう場合を例にして説明する。血管は、管腔器官の例示である。
【0011】
医師は、血管撮影装置(Angiography)15(図2参照)を用いてリアルタイムにX線観察を行ないながら、以下に説明する手順を実施する。狭窄部の治療中は、原則として血管撮影装置15は透視画像52を常時撮影し続ける。
【0012】
医師は、必要に応じて血管に造影剤を注入する。透視画像52の視野に造影剤が流れ込んでいる間、透視画像52は血管の走行状態が描出された血管造影画像51になる。しかしながら造影剤には副作用があるため、使用量は必要最小限に留められる。
【0013】
したがって血管撮影装置15により撮影される透視画像52は、殆どが非造影画像53である。非造影画像53では血管等の生体組織は殆ど描出されないが、X線不透過性を有するガイドワイヤ38等は明瞭に描出される。なお、血管撮影装置15は最新の血管造影画像51とリアルタイムに撮影した非造影画像53とを重畳させて、非造影画像53上に血管を表示させてもよい。
【0014】
一連の手技は、医師のみにより行なわれるものではなく、医師と看護師および技士等のコメディカルスタッフとの共同作業により行なわれる。しかし、以下の説明では、各作業の主体が医師である場合を例にして説明する。医師は、本実施の形態の治療支援システム10(図2参照)を使用するユーザの例示である。
【0015】
医師は、血管造影画像51に基づいて血管の狭窄部位および狭窄の程度を確認する。その後、透視画像52をガイドにして、狭窄部位に1本または複数本のガイドワイヤ38を挿入する。医師は、ガイドワイヤ38をガイドにして狭窄部位に画像取得用カテーテル30(図2参照)を挿入する。画像取得用カテーテル30の構成については、後述する。
【0016】
画像取得用カテーテル30は、三次元走査用であり、走査面を軸方向に少しずつ移動させながら複数の断層像58を連続して撮影できる。複数の断層像58に基づいて、図示を
省略する三次元画像が構築される。以後の説明では、三次元画像を構築可能な複数の断層像58をまとめて、断層像セット57と記載する場合がある。
【0017】
医師は、画像取得用カテーテル30を用いて三次元走査を行なう。三次元走査を行なう範囲は、狭窄部と、狭窄部の両側の正常な血管とを含む範囲であることが望ましい。仮に画像取得用カテーテル30が三次元走査を可能な範囲よりも狭窄部が長い場合には、医師は三次元走査を複数回に分けて行ってもよい。
【0018】
医師は、画像取得用カテーテル30により取得された断層像58、構築された三次元画像、および透視画像52等に基づいて、バルーン拡張による治療の適否を判断する。本実施の形態の制御部201(図2参照)は、図1に破線の枠で示す処理を行ない、医師の判断を支援する。
【0019】
具体的には、制御部201はそれぞれの断層像58について、たとえば狭窄度、内腔径、EEM(External Elastic Membrane:外弾性板)外径、EEM厚さおよび石灰化の長さ、角度等の様々なパラメータを算出する。制御部201は、複数の断層像58にかかるパラメータを統合して、血管解離の発生リスクを特定する。血管解離は、バルーン拡張に伴い管腔器官に生じる損傷の例示である。
【0020】
制御部201は、推奨するバルーンの外径、長さおよび拡張条件を判定する。拡張条件には、たとえば拡張圧、拡張時間および拡張回数を含む。制御部201は、医療機関で保有している種々の仕様のバルーンカテーテルの中から、条件に合致するバルーンカテーテルの型番を判定してもよい。
【0021】
制御部201は、透視画像52と、三次元画像とを対応付ける。制御部201は、透視画像52に、血管解離の発生リスクの高い場所を示す指標を重畳させて表示する。医師は、表示された情報を参照して、バルーン拡張による治療の適否を判断する。図示を省略するが、バルーン拡張による治療が適さないと判断した場合、医師はたとえばステント留置等、少ない拡張量でも効果を得られる治療方法を選択する。
【0022】
バルーン拡張による治療を行なうと判断した場合、医師はガイドワイヤ38をガイドにしてバルーンカテーテルを狭窄部に挿入する。医師は、透視画像52を参照してバルーンカテーテルが適切な位置に到達していることを確認した上で、バルーンを拡張させて狭窄部の治療を行なう。
【0023】
医師は、造影剤を注入して血管造影画像51を撮影し、狭窄が解除されたことを確認する。必要であれば、バルーンの拡張を再度実施する。以上の手順により、狭窄部の治療が行なわれる。
【0024】
バルーンによる物理的な拡張により、狭窄部を治療できる。バルーンが、薬剤コーティングバルーンである場合には、拡張により狭窄部の内面に薬剤が供給される。バルーンによる物理的な拡張と、供給された薬剤との両方の作用により、通常のバルーンを使用する場合に比べて高い治療効果が得られる。
【0025】
狭窄部に対しては、ステント留置による治療が行なわれる場合もある。ステント留置による治療では、血管内壁がステントにより補強されるため、血管解離が発生するリスクを低減できる。その一方、薬剤コーティングバルーンによる治療に比べてステント留置による治療の方が、将来的に生じうる再狭窄への追加処置に制限がかかるリスクが高い。
【0026】
本実施の形態の治療支援システム10は、バルーンを用いた狭窄部の拡張に伴う血管解
離の発生リスクに関する医師の判断を支援する。医師は、血管解離のリスクと、再狭窄のリスクとを考慮して、治療方法を選択する。
【0027】
図2は、治療支援システム10の構成を説明する説明図である。治療支援システム10は、血管撮影装置15、電子カルテシステム16、情報処理装置200、MDU33および画像取得用カテーテル30を有する。情報処理装置200と、血管撮影装置15と、電子カルテシステム16とは、たとえばHIS(Hospital Information System)等のネットワークを介して接続されている。
【0028】
情報処理装置200には、表示装置35および入力装置36が接続されている。表示装置35は、たとえば液晶表示装置または有機EL(Electro Luminescence)表示装置である。入力装置36は、たとえばキーボード、マウス、トラックボールまたはマイク等の入力デバイスである。表示装置35と入力装置36とは、一体に積層されて、タッチパネルを構成していてもよい。入力装置36と情報処理装置200とは、一体に構成されていてもよい。
【0029】
画像取得用カテーテル30は、MDU33を介して情報処理装置200に接続されている。画像取得用カテーテル30は、チューブ状のシース31と、シース31の内部に配置されたセンサ32およびシャフト34とを備える。センサ32は、たとえば超音波の送受信を行なう超音波トランスデューサ、または、近赤外光の照射と反射光の受信を行なうOCT(Optical Coherence Tomography)用の送受信部である。以下の説明では、画像取得用カテーテル30は血管の内側から超音波断層像を撮影する際に用いられるIVUS(Intravascular Ultrasound)用カテーテルである場合を例にして説明する。
【0030】
情報処理装置200は、制御部201、主記憶装置202、補助記憶装置203、通信部204、表示部205、入力部206、カテーテル制御部271およびバスを備える。
【0031】
制御部201は、本実施の形態のプログラムを実行する演算制御装置である。制御部201には、一または複数のCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、TPU(Tensor Processing Unit)またはマルチコアCPU等が使用される。制御部201は、バスを介して情報処理装置200を構成するハードウェア各部と接続されている。
【0032】
主記憶装置202は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic
Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の記憶装置である。主記憶装置202には、制御部201が行なう処理の途中で必要な情報および制御部201で実行中のプログラムが一時的に保存される。
【0033】
補助記憶装置203は、SRAM、フラッシュメモリ、ハードディスクまたは磁気テープ等の記憶装置である。補助記憶装置203には、分類モデル72、リスク特定モデル73、センサ位置モデル74、断層像DB(Database)76、制御部201に実行させるプログラム、およびプログラムの実行に必要な各種データが保存される。通信部204は、情報処理装置200とネットワークとの間の通信を行なうインターフェースである。
【0034】
表示部205は、表示装置35とバスとを接続するインターフェースである。入力部206は、入力装置36とバスとを接続するインターフェースである。カテーテル制御部271は、MDU33の制御、センサ32の制御、および、センサ32から受信した信号に基づく断層像58の生成、および、断層像セット57に基づく縦断層像の生成等を行なう等を行なう。
【0035】
MDU33は、シース31の内部でセンサ32を回転させる。カテーテル制御部271は、センサ32の一回転ごとに1枚の断層像58を生成する。生成される断層像58は、シース31を中心とし、シース31に略垂直な横断層像である。
【0036】
MDU33は、シース31の内部でセンサ32を回転させながら、さらにセンサ32を進退させる。センサ32を引っ張りながら、または押し込みながら回転させる操作により、カテーテル制御部271はシース31に略垂直な複数枚の断層像58を連続的に生成する。連続的に生成された断層像58は、三次元画像の構築に使用可能な断層像セット57を構成する。
【0037】
センサ32の進退操作には、シース31とセンサ32とを同時に進退させる操作と、シース31の内部でセンサ32を進退させる操作との両方を含む。進退操作は、MDU33により所定の速度で自動的に行なわれても、医師により手動で行なわれても良い。
【0038】
なお、画像取得用カテーテル30は機械的に回転および進退を行なう機械走査方式に限定しない。複数の超音波トランスデューサを環状に配置したセンサ32を用いた、電子ラジアル走査型の画像取得用カテーテル30であってもよい。
【0039】
カテーテル制御部271の機能および構成は、従来から使用されている超音波診断装置と同様であるため、詳細については説明を省略する。なお、制御部201が、カテーテル制御部271の機能を実現してもよい。
【0040】
本実施の形態の情報処理装置200は、専用の超音波診断装置、または、超音波診断装置の機能を有するパソコン、タブレット、または、スマートフォン等である。なお、以後に説明では、主に制御部201がソフトウェア的な処理を行なう場合を例にして説明する。フローチャートを使用して説明する処理、および、種々のモデルは、それぞれ専用のハードウェアにより実現されてもよい。
【0041】
情報処理装置200は、たとえばパソコン、タブレット等の汎用の情報機器と、USB(Universal Serial Bus)等のインターフェースを介して接続された外付け型のカテーテル制御部271とにより構成されていてもよい。
【0042】
情報処理装置200と血管撮影装置15とは、一体に構成されていてもよい。情報処理装置200は、血管撮影装置15に内蔵されており、血管撮影装置15の制御装置を兼ねてもよい。血管撮影装置15の制御装置が、情報処理装置200の機能を実現してもよい。
【0043】
図3は、分類モデル72の構成を説明する説明図である。分類モデル72は、断層像58を受け付けて、断層像58を構成する各画素をたとえばカテーテル領域41、内腔領域42、内側組織領域43、EEM領域44、腔外領域45等の複数の領域に分類し、画素の位置と、分類結果を示すラベルとを関連づけた分類データ56を出力する。
【0044】
図3においては、分類画像を用いて分類データ56を模式的に図示する。分類画像は、たとえば断層像58においてカテーテル領域41のラベルに対応する画素を第1色、内腔領域42のラベルに対応する画素を第2色、内側組織領域43のラベルに対応する画素を第3色、EEM領域44のラベルに対応する画素を第4色、腔外領域45のラベルに対応する画素を第5色にそれぞれ定めた画像である。図3においては第1色を白色で、第2色を右下がりのハッチングで、第3色を左下がりのハッチングで、第4色を縦線のハッチングで、第5色を格子状のハッチングで示す。
【0045】
なお、以上に説明した分類モデル72は例示である。分類モデル72は、断層像58を構成する各画素を、画像取得用カテーテル30と同時に使用されるガイドワイヤ38等の器具に対応する器具領域、石灰化領域またはプラーク領域等の、任意の領域に分類してもよい。
【0046】
分類モデル72は、たとえば断層像58に対してセマンテックセグメンテーションを行なう学習済モデルである。分類モデル72は、断層像58と、当該断層像58を医師等の専門家が領域ごとに塗り分けた正解データとの組を多数組記録した訓練データを使用して、機械学習により生成されたモデルである。セマンテックセグメンテーションを行なう学習済モデルの生成は従来から行なわれているため、詳細については説明を省略する。
【0047】
図3では、管腔器官の実際の断面形状に対応するいわゆるXY形式で断層像58を示したが、分類モデル72はセンサ32により生成された走査線を平行に配列した、いわゆるRT形式の断層像58の入力を受け付けるモデルであってもよい。
【0048】
図4は、リスク特定モデル73の構成を説明する説明図である。リスク特定モデル73は、複数の分類データ56と、患者情報とに基づいて、それぞれの断層像58の位置における解離の発生リスクを出力するモデルである。
【0049】
制御部201は、断層像セット57を構成するそれぞれの断層像58を分類モデル72に入力して、分類データ56を取得する。制御部201は、それぞれの分類データ56に基づいて、狭窄度、内腔径、EEM外径、EEM厚さおよび石灰化の長さ、角度等の様々な特性値を算出する。それぞれの特性値の算出方法は公知であるため、詳細については説明を省略する。
【0050】
制御部201は、複数の分類データ56に基づく特性値を算出してもよい。たとえば制御部201は、「EEMの最小厚さが閾値を下回る分類データ56が連続する枚数」、または、「狭窄度が閾値を超える分類データ56が連続する枚数」などを特性値に使用できる。
【0051】
制御部201は、分類データ56に基づく特性値に加えて断層像58に基づく特性値を算出してもよい。たとえば、それぞれの領域のスペックルパターンの性状、または、それぞれの領域における輝度ムラの程度等を特性値に使用できる。
【0052】
リスク特定モデル73は、それぞれの特性値と、患者の年齢、性別、体格および既往症等を含む患者情報とを受け付けて、それぞれの断層像58の位置において解離が発生する可能性の程度、すなわち解離発生リスクを出力するモデルである。図4におけるNo.は、断層像セット57を構成する断層像58の番号を示す。
【0053】
図4においては、それぞれの断層像58の位置における解離発生リスクを「低」、「中」および「高」の三段階に区分して出力するリスク特定モデル73の例を示す。リスク特定モデル73は解離発生リスクを二段階または四段階以上に区分して出力するモデルであってもよい。リスク特定モデル73は、それぞれの断層像58の位置において解離が発生する確率を出力してもよい。
【0054】
リスク特定モデル73は、特性値および患者情報に加えて、使用するバルーンのサイズを受け付けて、当該バルーンを推奨圧力で拡張した場合に、それぞれの断層像58の位置において解離が発生するリスクを出力してもよい。
【0055】
リスク特定モデル73は、たとえばランダムフォレストまたはXGBoost(eXtrem
e Gradient Boosting)等の決定木構造に関する機械学習アルゴリズムにより生成された学習済モデルである。リスク特定モデル73は、断層像セット57に基づいて算出された様々な特性値および患者情報と、正解データである治療後の解離の発生状態との組を多数組記録した訓練データを使用して作成される。リスク特定モデル73は、CNN(Convolutional Neural Network)のニューラルネットワーク構造を使用して生成された学習済モデルであってもよい。訓練データを使用した学習済モデルの生成は、従来から行なわれているため、詳細については説明を省略する。
【0056】
リスク特定モデル73は、断層像セット57を受け付けて、解離発生リスクを出力する学習済モデルであってもよい。このようなモデルは、断層像セット57と、正解データである治療後の解離の発生状態との組を多数組記録した訓練データを使用して、機械学習によりCNNのニューラルネットワーク構造のパラメータを調整することにより生成される。
【0057】
リスク特定モデル73は、断層像セット57から生成された複数の分類データ56を受け付けて、解離発生リスクを出力する学習済モデルであってもよい。このようなモデルは、断層像セット57から生成された複数の分類データ56と、正解データである治療後の解離の発生状態との組を多数組記録した訓練データを使用して、機械学習によりCNNのニューラルネットワーク構造のパラメータを調整することにより生成される。
【0058】
リスク特定モデル73は、断層像セット57または複数の分類データ56に加えて患者情報を受け付けて、解離発生リスクを出力するモデルであってもよい。
【0059】
リスク特定モデル73は、所定の診断基準等に基づいて特定された解離発生リスクを出力するルールベースのモデルであってもよい。なお、EEMが厚いほど、解離発生リスクが低く、90度以上360度未満の石灰化領域が存在する場合には解離発生リスクが高いことが知られている。これらの知見に基づいて、ルールベースのリスク特定モデル73が作成されてもよい。
【0060】
図5は、センサ位置モデル74の構成を説明する説明図である。センサ位置モデル74は、非造影画像53の入力を受け付けて、センサ32の位置を出力するモデルである。前述の通り、非造影画像53では血管等の生体組織は殆ど描出されない。
【0061】
しかしながら、ガイドワイヤ38に加えて、画像取得用カテーテル30のうち、シャフト34およびセンサ32の部分は、非造影画像53に明瞭に描出される。なお、画像取得用カテーテル30が図示を省略するX線不透過マーカを有する場合は、X線不透過マーカも同様に非造影画像53に描出される。
【0062】
センサ位置モデル74は、たとえば画像処理とルールベースによる判定処理との組み合わせにより、非造影画像53からセンサ32の位置を抽出するモデルである。センサ位置モデル74は、画像処理とパターンマッチングとの組み合わせにより、非造影画像53からセンサ32の位置を抽出するモデルであってもよい。
【0063】
センサ32の位置は、たとえばセンサ32の中心等の、センサ32の代表点を示す座標により表される。センサ32の位置は、非造影画像53においてセンサ32が描出されている画素の位置により表されてもよい。
【0064】
センサ位置モデル74は、非造影画像53が入力された場合に、非造影画像53の位置を出力するように訓練された学習済モデルであってもよい。学習済モデルは、非造影画像53と、当該非造影画像53におけるセンサ32の位置とを対応づけて多数組記録した訓
練データを使用して機械学習により生成される。
【0065】
学習済モデルは、たとえばCNNのニューラルネットワーク構造を使用して生成される。センサ位置モデル74を実現する学習済モデルの生成に使用可能なCNNの例としては、R-CNN(Region Based Convolutional Neural Network)、YOLO(You only look once)、U-NetおよびGAN(Generative Adversarial Network)等が挙げられる。
【0066】
センサ位置モデル74は、血管造影画像51と非造影画像53とのいずれの透視画像52が入力された場合であっても、センサ32の位置を出力するモデルであってもよい。
【0067】
図6は、断層像DB76のレコードレイアウトを説明する説明図である。断層像DB76は、断層像58と、センサ32の位置とを関連づけて記録するDBである。
【0068】
断層像DB76は、三次元走査ID(Identifier)フィールド、断層番号フィールド、断層像フィールドおよびセンサ位置フィールドを有する。センサ位置フィールドは、XフィールドとYフィールドとを有する。
【0069】
三次元走査IDフィールドには、三次元走査ごとに固有に付与される三次元走査IDが記録されている。断層番号フィールドには、断層像セット57を構成する個々の断層像58に連番で付与される断層番号が記録されている。断層像フィールドには、断層像58が記録されている。断層像58は、XY形式で記録されていても、RT形式で記録されていても、XY形式とRT形式との両方で記録されていてもよい。断層像58の代わりに、断層像58の生成に用いる音線データが記録されていてもよい。
【0070】
XフィールドおよびYフィールドには、センサ32の代表点のX座標およびY座標がそれぞれ記録されている、断層像DB76は、一枚の断層像58について、一つのレコードを有する。断層像DB76には、たとえばセンサ32の先端およびシャフト34側の端部等の、複数の代表点をそれぞれ記録するフィールドを有してもよい。
【0071】
図7は、プログラムの処理の流れを説明するフローチャートである。医師は、画像取得用カテーテル30を用いた三次元走査を開始する前に、図7を使用して説明するプログラムを起動する。制御部201は、画像取得用カテーテル30が患者に挿入されたことを検出した場合に、自動的に図7のプログラムを起動してもよい。
【0072】
制御部201は、最新の血管造影画像51を血管撮影装置15から取得する(ステップS501)。制御部201は、三次元走査データ取得のサブルーチンを起動する(ステップS502)。三次元走査データ取得のサブルーチンは、三次元走査中に、断層像58と、非造影画像53におけるセンサ32の位置とを取得して、断層像DB76に記録するサブルーチンである。三次元走査データ取得のサブルーチンの処理の流れは後述する。
【0073】
制御部201は、断層像DB76に記録した断層像58を分類モデル72にそれぞれ入力して、分類データ56を取得する(ステップS503)。制御部201は、分類データ56および断層像58に基づいて、たとえば狭窄度、内腔径、EEM外径、EEM厚さおよび石灰化の長さ、角度等の種々の特性値を算出する(ステップS504)。
【0074】
内腔径を例にして説明する。制御部201は、たとえば内側組織領域43の外側の境界線で囲まれる領域の面積と等価の面積を有する円の直径を算出して、内腔径に使用する。制御部201は、内側組織領域43の最大径と最小径との平均値を算出して、内腔径に使用してもよい。制御部201は等価の面積を有する円の直径、最大径、最小径、および平
均値の4通りの内腔径をそれぞれ内腔径に使用してもよい。
【0075】
制御部201は、複数の断層像58に基づいて特性値を算出してもよい。たとえば、制御部201は、内腔径が所定の閾値以下である断層像58が連続する数を算出して、特性値に使用してもよい。
【0076】
制御部201は、バルーンサイズ判定のサブルーチンを起動する(ステップS505)。バルーンサイズ判定のサブルーチンは、断層像セット57に基づいて適切なバルーンのサイズを判定するサブルーチンである。バルーンサイズ判定のサブルーチンの処理の流れは後述する。
【0077】
制御部201は、ステップS504で算出した特性値およびHISを介して電子カルテシステム16から取得した患者情報をリスク特定モデル73に入力して、それぞれの断層像58の位置において血管解離が生じるリスクを取得する(ステップS506)。
【0078】
制御部201は、リスクが高いと特定された断層像58が存在するか否かを判定する(ステップS507)。リスクが高いと特定された断層像58が存在しないと判定した場合(ステップS507でNO)、制御部201は、解離発生リスクが低いことと、バルーンサイズ判定のサブルーチンで判定したバルーンのサイズと、拡張するべき範囲とを表示装置35に表示させる(ステップS508)。制御部201は処理を終了する。
【0079】
リスクが高いと特定された断層像58が存在すると判定した場合(ステップS507でYES)、制御部201は予測解離長を算出する(ステップS511)。予測解離長は、たとえばリスクが高いと特定された断層像58が連続する枚数と、断層像58間の距離との積により算出される。
【0080】
制御部201は、解離発生リスクが高いことと、予測解離長と、解離が発生するリスクが高い場所とを表示装置35に表示させる(ステップS512)。制御部201は処理を終了する。
【0081】
なお制御部201はステップS507において、リスクが高いと特定された断層像58の数が所定の閾値を上回る場合に、ステップS511に進んでもよい。制御部201はステップS507において、それぞれの断層像58のリスクの程度を点数化し、合計点数が所定の閾値を上回る場合にステップS511に進んでもよい。
【0082】
図8は、三次元走査データ取得のサブルーチンの処理の流れを説明するフローチャートである。三次元走査データ取得のサブルーチンは、三次元走査中に、断層像58と、非造影画像53におけるセンサ32の位置とを取得して、断層像DB76に記録するサブルーチンである。
【0083】
三次元走査データ取得のサブルーチンは、カテーテル制御部271から取得した断層像58と、血管撮影装置15から取得した透視画像52とを平行して処理する。カテーテル制御部271の動作と、血管撮影装置15の動作とは同期していないためである。
【0084】
制御部201は、血管撮影装置15から非造影画像53を取得する(ステップS521)。心臓の拍動の影響を受ける場所の治療を行なう場合、非造影画像53は心電図(ECG:Electrocardiogram)同期法により取得される。
【0085】
制御部201は、取得した非造影画像53をセンサ位置モデル74に入力して、センサ32の位置を取得する(ステップS522)。制御部201は、処理を終了するか否かを
判定する(ステップS523)。たとえば、医師が処理の終了を指示した場合、血管撮影装置15の動作が停止した場合、または、画像取得用カテーテル30が患者から抜去されたことを検出した場合、制御部201は処理を終了すると判定する。処理を終了しないと判定した場合(ステップS523でNO)、制御部201はステップS521に戻る。
【0086】
制御部201は、変数「番号」を初期値0に設定する(ステップS531)。制御部201は、変数「番号」に1を加算する(ステップS532)。制御部201は、カテーテル制御部271から断層像58を取得する(ステップS533)。制御部201は、ステップS522で取得された最新のセンサ32の位置を取得する(ステップS534)。
【0087】
前述のとおり、カテーテル制御部271は、センサ32の一回転ごとに1枚の断層像58を生成する。断層像58のフレームレートは、30fps(Frames per Second)から120fps程度である。心電図に同期した非造影画像53のフレームレートは、1fps前後である。したがって、ステップS534で取得されるセンサ32の位置は、複数の断層像58について同一になる。
【0088】
制御部201は、ステップS534で取得したセンサ32の位置を補正する(ステップS535)。たとえば制御部201は、ステップS534で取得したセンサ32の位置が変化した時刻からの経過時間と、MDU33がセンサ32を押し引きする速度と、非造影画像53における画像取得用カテーテル30の向きとに基づいて、センサ32の位置を補正する。
【0089】
制御部201は、断層像DB76に新規レコードを作成する。制御部201は、三次元走査IDフィールドに三次元走査IDを、断層番号フィールドに変数「番号」を、断層像フィールドに、ステップS533で取得した断層像58を、XフィールドおよびYフィールドに、ステップS535で補正したセンサ32の位置をそれぞれ記録する(ステップS536)。
【0090】
制御部201は、処理を終了するか否かを判定する(ステップS537)。たとえば、医師が処理の終了を指示した場合、血管撮影装置15の動作が停止した場合、または、画像取得用カテーテル30が患者から抜去されたことを検出した場合、制御部201は処理を終了すると判定する。処理を終了しないと判定した場合(ステップS537でNO)、制御部201はステップS532に戻る。
【0091】
ステップS523およびステップS537の双方で処理を終了すると判定した場合(ステップS523およびステップS537でYES)、制御部201は処理を終了する。
【0092】
制御部201は、センサ32の位置が変化した時刻間で、センサ32の位置を補間することにより、センサ32の位置を補正してもよい。制御部201は、断層像58に描出された血管分岐と、透視画像52に表示された血管分岐との位置合わせにより、センサ32の位置を補正してもよい。これらの補正手法を用いる場合には、制御部201は、センサ32の位置を補正するステップS535を、ステップS537で処理を終了すると判定した後に実行する。
【0093】
図9は、バルーンサイズ判定のサブルーチンの処理の流れを説明するフローチャートである。バルーンサイズ判定のサブルーチンは、断層像セット57に基づいて適切なバルーンのサイズを判定するサブルーチンである。
【0094】
制御部201は、狭窄のない正常領域の内腔断面積を算出する(ステップS541)。制御部201は、たとえば画像取得用カテーテル30により三次元走査を行なった範囲の
うち、両端の所定枚数の断層像58について算出した内腔断面積の平均値を算出する。なお、内腔断面積は、図3を使用して説明した分類データ56において、カテーテル領域41、および内腔領域42の面積の合計である。
【0095】
制御部201は、三次元走査で取得した断層像セット57に基づいて血管の縦断層像を表示し、医師による正常範囲の指定を受け付けてもよい。制御部201は、複数の分類データ56に基づいて分類データ56の縦断層像を表示し、医師による正常範囲の指定を受け付けてもよい。
【0096】
制御部201は、狭窄部であるか否かの判定に使用する内腔断面積の閾値を算出する(ステップS542)。閾値は、たとえばステップS541で算出した正常部の内腔断面積の半分である。閾値は、正常部の内腔断面積に、医師により指定された係数を積算した値であってもよい。
【0097】
制御部201は、推奨拡張範囲を判定する(ステップS543)。推奨拡張範囲は、内腔断面積がステップS542以下で算出した閾値以下である断層像58が連続している範囲である。三次元走査を行なった範囲に、推奨拡張範囲が2か所存在しており、推奨拡張範囲同士の間の断層像58が所定の枚数を下回る場合には、制御部201は連続した一つの推奨拡張範囲であると判定する。複数の推奨拡張範囲が存在する場合、制御部201はその旨を表示し、どの推奨拡張範囲の拡張を行なうかについて、医師による指示を受け付けてもよい。
【0098】
制御部201は、推奨拡張範囲の拡張に適した推奨バルーンの径を判定する(ステップS544)。たとえば制御部201は正常部のEEMに基づいて推奨バルーンの径を判定する。具体的には制御部201は、図3を使用して説明した分類データ56において、EEM領域44の外側の境界線、すなわちカテーテル領域41、内腔領域42、内側組織領域43およびEEM領域44の面積の合計と同じ面積を有する円の直径である基準径を算出する。
【0099】
制御部201は、市販されているバルーンの径のなかから、基準径にもっとも近い値を選択し、推奨バルーンの径に使用する。制御部201は、市販されているバルーンの径のなかから、基準径未満の最大の径を選択し、推奨バルーンの径に使用してもよい。解離発生リスクが高いと算出された場合、制御部201は、算出した直径から0.5ミリメートル程度小さい値を基準径に使用してもよい。制御部201は、その基準径にもっとも近い値を選択し、推奨バルーンの径に使用して、推奨バルーンを表示する。
【0100】
制御部201は、推奨バルーンの長さを判定する(ステップS545)。たとえば制御部201は、ステップS543で判定した推奨拡張範囲を基準長さに定める。制御部201は市販されているバルーンの長さのなかから基準長さを超える長さを選択し、推奨バルーンの長さに使用する。制御部201は、推奨拡張範囲に所定の余裕長を加えた長さを基準長さに定めてもよい。
【0101】
図10から図13は、画面例である。図10は、ステップS508で制御部201が表示装置35に表示する画面の例を示す。画面には、血管造影画像欄61、断層像欄62、リスク欄63、バルーン情報欄64、拡張範囲表示ボタン681および表示切替ボタン682が表示されている。図10は、拡張範囲表示ボタン681が選択されており、表示切替ボタン682で「IVUS」が選択されている場合の例を示す。
【0102】
血管造影画像欄61には、最新の血管造影画像51が表示されている。血管造影画像51には、推奨拡張範囲を示す拡張範囲指標651が太い実線で重畳表示されている。拡張
範囲指標651の両端には、拡張端部指標652が表示されている。
【0103】
断層像欄62には、断層像セット57を元に生成された縦断層像が表示されている。縦断層像の代わりに、複数の分類データ56に基づいて生成された、縦断面方向の分類画像が表示されていてもよい。医師は、図示を省略する公知の制御用ユーザインターフェイスを操作して、縦断面の向きを適宜変更できる。断層像欄62にも、拡張範囲指標651および拡張端部指標652が重畳表示されている。
【0104】
リスク欄63には解離リスクが表示されている。解離リスクは「低」のように解離リスクの程度を示す文字で表示されても、解離発生確率を示す数値で表示されてもよい。バルーン情報欄64には、適正バルーン径欄641、最大拡張径欄642および適正バルーン長欄643が表示されている。
【0105】
適正バルーン径欄641には、たとえばステップS544で判定した推奨バルーン径が表示されている。最大拡張径欄642には、たとえば推奨バルーン径よりも0.5ミリメートル大きい値が表示されている。適正バルーン長欄643には、ステップS545で判定した推奨バルーンの長さが表示されている。医師は、バルーン情報欄64を介して狭窄部の拡張に使用するバルーンに関するバルーン情報を確認できる。
【0106】
図11は、拡張範囲表示ボタン681が選択されていない場合の画面例を示す。血管造影画像欄61に、拡張範囲指標651および拡張端部指標652が重畳表示されていない。医師は、拡張範囲指標651および拡張端部指標652に妨げられずに、血管造影画像51を観察できる。
【0107】
図12は、表示切替ボタン682で「リアルタイム」が選択されている場合の例を示す。制御部201は、表示切替ボタン682の選択を受け付けるたびに、表示切替ボタン682の設定を「IVUS」と「リアルタイム」とに切り替わる。なお制御部201は、表示切替ボタン682の設定を、「IVUS(拡張範囲表示あり)」と、「IVUS(拡張範囲表示なし)」と、「リアルタイム」との3通りに切り替えてもよい。制御部201は、表示切替ボタン682の設定を4通り以上に切り替えてもよい。
【0108】
図12では、断層像欄62の代わりにリアルタイム透視像欄66が表示されている。制御部201は、血管撮影装置15から取得した最新の透視画像52をリアルタイム透視像欄66に表示する。リアルタイム透視像欄66には、血管造影画像欄61と同じ位置に拡張端部指標652が重畳表示されている。
【0109】
たとえばバルーンカテーテルを挿入した場合、バルーンカテーテルに設けられたX線不透過指標が透視画像52内に描出される。医師は、透視画像52をガイドにしてバルーンの位置を定めて、拡張する。
【0110】
図13は、ステップS512で制御部201が表示装置35に表示する画面の例を示す。画面には、血管造影画像欄61、断層像欄62、リスク欄63、バルーン情報欄64、拡張範囲表示ボタン681および表示切替ボタン682に加えて、リスク表示欄67が表示されている。図13は、図10と同様に拡張範囲表示ボタン681が選択されており、表示切替ボタン682で「IVUS」が選択されている場合の例を示す。
【0111】
図13においては、血管造影画像欄61および断層像欄62に、拡張範囲指標651および拡張端部指標652に加えて白抜きした太線で示す高リスク指標653が重畳表示されている。高リスク指標653は、ステップS511で算出した予測解離長に対応する部分を示す。リスク表示欄67には、ステップS511で算出した予測解離長が、目立つ態
様で表示されている。
【0112】
バルーン情報欄64には、推奨バルーン径欄645、最大拡張径欄642および推奨バルーン長欄646が表示されている。推奨バルーン径欄645には、図10から図12の適正バルーン径欄641と同様に、たとえばステップS544で判定した推奨バルーン径が表示されている。ただし、バルーンを拡張した場合の解離リスクが高いため、当該バルーンを使用することが「適正」であるとはいえない。そのため、「適正バルーン径」の代わりに「推奨バルーン径」の表現が使用されている。
【0113】
最大拡張径欄642には、バルーンの拡張を推奨しない旨を示す「-」が表示されている。推奨バルーン長欄646には、図10から図12の適正バルーン長欄643と同様に、ステップS545で判定した推奨バルーンの長さが表示されている。推奨バルーン長欄646についても推奨バルーン径欄645と同様に、「適正バルーン長さ」の代わりに「推奨バルーン長さ」の表現が使用されている。
【0114】
図10から図13を使用して説明した画面例は、いずれも例示である。制御部201は、それぞれ解離が発生するリスクの程度に応じてバルーン情報欄64に出力する情報の項目を変更してもよい。制御部201は、解離が発生するリスクが大きい場合には、バルーン情報欄64を表示しなくてもよい。医師は、バルーン情報が表示されない画面により、バルーンによる拡張が推奨されないことを容易に認識できる。
【0115】
なお、バルーンを用いて拡張する管腔器官は、血管に限定しない。たとえば、食道、小腸または大腸等の狭窄部に対しても、バルーンを用いて拡張する治療が行なわれる。本実施の形態の治療支援システム10は、任意の管腔器官を拡張する治療にも使用できる。
【0116】
本実施の形態によると、画像取得用カテーテル30を用いて取得した断層像セット57を使用して、管腔器官の拡張に伴う損傷発生リスクに関する医師の判断を支援する治療支援システム10を提供できる。本実施の形態によると、拡張範囲および拡張に用いるバルーンの仕様の決定に関する医師の判断を支援する治療支援システム10を提供できる。
【0117】
本実施の形態によると、透視画像52と断層像58との位置関係を対応づけることにより、画像取得用カテーテル30を用いて得た情報を、透視画像52に重畳表示する治療支援システム10を提供できる。画像取得用カテーテル30は、血管撮影装置15に比べて管腔器官の状態に関する詳細な情報を取得できるが、管腔器官自体の屈曲等に関する情報を取得できない。両者による情報を重畳表示することにより、治療方針等に関する医師の判断を適切に支援する治療支援システム10を提供できる。
【0118】
[実施の形態2]
本実施の形態は、複数の分類データ56および患者情報に加えて血管造影画像51に基づく特性値の入力を受け付けるリスク特定モデル73を使用する治療支援システム10に関する。実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。
【0119】
図14は、実施の形態2のリスク特定モデル73の構成を説明する説明図である。本実施の形態のリスク特定モデル73は、図4を使用して説明した実施の形態1のリスク特定モデル73の代わりに使用される。
【0120】
制御部201は、血管造影画像51内の、それぞれの断層像58を取得した際のセンサ32の位置における特性値を算出する。特性値は、それぞれのセンサ32の位置における血管の曲率、血管の太さ、血管の太さの変化率等である。
【0121】
本実施の形態によると、画像取得用カテーテル30で取得可能な特性値に加えて、血管撮影装置15で取得可能な特性値を利用するため、血管解離の発生リスクを高い精度で特定できる治療支援システム10を提供できる。
【0122】
[実施の形態3]
本実施の形態は、バルーンの型番を表示する治療支援システム10に関する。実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。
【0123】
図15は、バルーンDB77のレコードレイアウトを説明する説明図である。バルーンDB77は、バルーンカテーテルのメーカ名、商品名および仕様を関連づけて記録するDBである。バルーンDB77は、HIS等を介して医療器材の在庫管理システムと連動しており、医療機関で現に保有しているバルーンカテーテルに関する情報が記録されている。
【0124】
バルーンDB77は、メーカ名フィールド、商品名フィールド、型番フィールドおよび仕様フィールドを有する。仕様フィールドは、バルーン径フィールド、バルーン長さフィールドおよびコンプライアンスチャートフィールドを有する。バルーンDB77は、1機種のバルーンカテーテルについて、一つのレコードを有する。
【0125】
メーカ名フィールドには、バルーンカテーテルを供給するメーカの名称が記録されている。商品名フィールドには、商品名が記録されている。商品名は、いわゆるペットネームである。型番フィールドには、バルーンカテーテルの機種ごとに定められた型番が記録されている。
【0126】
バルーン径フィールドには、バルーン径の公称値が記録されている。バルーン長さフィールドには、バルーン長の公称値が記録されている。コンプライアンスチャートフィールドには、バルーン径の公称値と、バルーンに加える拡張圧と、拡張したバルーンの外径との関係を示すコンプライアンスチャートのデータが記録されている。コンプライアンスチャートには、バルーンカテーテルのメーカが推奨する推奨拡張圧、および、バルーンカテーテルを安全に使用できる上限である最大拡張圧も記録されている。
【0127】
図15に示すように、バルーンメーカーは、同一の商品名で種々の寸法のバルーンカテーテルを提供している。同一寸法のバルーンカテーテルが、複数のメーカから提供されている。図示を省略するが、一つのメーカが複数の商品名で同一寸法のバルーンカテーテルを提供している場合もある。
【0128】
バルーンの寸法が同一のバルーンカテーテルであっても、メーカおよび商品により挿入する際の感触、および、拡張した際の挙動等の特性が異なる場合がある。医師は、商品名とバルーンカテーテルの特徴との関係を記憶しており、商品名に基づいて用途に応じた適切なバルーンカテーテルを選択できる場合が多い。
【0129】
図16は、実施の形態3のプログラムの処理の流れを説明するフローチャートである。ステップS505までの処理は、図7を使用して説明した実施の形態1のフローチャートの処理と同様であるため、説明を省略する。
【0130】
制御部201は、バルーンサイズ判定のサブルーチンで判定した推奨バルーンの径および推奨バルーンの長さの両方をキーとしてバルーンDB77を検索し、条件に合う寸法を有するバルーンカテーテルを抽出する(ステップS561)。
【0131】
制御部201は、ステップS504で算出した特性値およびHISを介して電子カルテ
システム16から取得した患者情報をリスク特定モデル73に入力して、それぞれの断層像58の位置において血管解離が生じるリスクを取得する(ステップS506)。
【0132】
制御部201は、リスクが高いと特定された断層像58が存在するか否かを判定する(ステップS507)。リスクが高いと特定された断層像58が存在すると判定した場合(ステップS507でYES)、以後の処理は図7を使用して説明した実施の形態1のフローチャートの処理と同様であるため、説明を省略する。
【0133】
リスクが高いと特定された断層像58が存在しないと判定した場合(ステップS507でNO)、制御部201は、解離発生リスクが低いことと、バルーンサイズ判定のサブルーチンで判定したバルーンのサイズと、拡張するべき範囲とに加えて、バルーンカテーテルの選択肢を表示装置35に表示させる(ステップS571)。
【0134】
制御部201は、バルーンカテーテルの選択を受け付ける(ステップS572)。制御部201は、選択されたバルーンカテーテルをキーにしてバルーンDB77を検索し、コンプライアンスチャート取得する。制御部201は、コンプライアンスチャートから推奨拡張圧を取得する(ステップS573)。制御部201は、推奨拡張圧を表示する(ステップS574)。制御部201は、処理を終了する。
【0135】
図17および図18は、実施の形態3の画面例である。図17は、ステップS571で制御部201が表示装置35に表示する画面の例を示す。画面には、血管造影画像欄61、断層像欄62、リスク欄63、バルーン情報欄64、拡張範囲表示ボタン681および表示切替ボタン682に加えて、商品選択欄69が表示されている。
【0136】
バルーン情報欄64は、適正バルーン径欄641および適正バルーン長欄643を含む。図17は、拡張範囲表示ボタン681が選択されており、表示切替ボタン682で「IVUS」が選択されている場合の例を示す。
【0137】
商品選択欄69は、プルダウンメニュー形式である。右端の逆三角形が選択された場合に、制御部201はステップS561で抽出したバルーンの商品名を一覧表示して、選択を受け付ける。医師は、プルダウンメニューを介して狭窄部の拡張に使用するバルーンの製品を特定する情報を確認できる。なお、ステップS561で抽出したバルーンが1種類だけである場合、制御部201は商品選択欄69にプルダウンメニューを表示する代わりに抽出した1機種を表示してもよい。
【0138】
図18は、ステップS574で制御部201が表示装置35に表示する画面の例を示す。商品選択欄69を介して「SS社製SS」のバルーンカテーテルが選択されている。制御部201は、適正バルーン径欄641に表示した適正バルーン径、適正バルーン長欄643に表示した適正バルーン長さおよび商品選択欄69を介して受け付けた「SS」をキーとしてバルーンDB77を検索し、コンプライアンスチャートを取得する。制御部201は、コンプライアンスチャートに記載された推奨拡張圧を、推奨拡張圧欄647に表示する。
【0139】
医師は、コンプライアンスチャートを探すことなく、選択したバルーンカテーテルの推奨拡張圧を確認できる。なお、制御部201は表示装置35にコンプライアンスチャートを表示してもよい。医師は、コンプライアンスチャートを参照して、拡張圧を微調整できる。
【0140】
制御部201は図示を省略するバルーン拡張用ポンプにコンプライアンスチャートから取得した推奨拡張圧を出力してもよい。医師は、バルーン拡張用ポンプの動作スイッチを
操作するだけで、推奨拡張圧でバルーンを膨らませることができる。
【0141】
本実施の形態によると、医師は商品選択欄69を介して医療機関で保有しているバルーンカテーテルのなかから、条件に合うバルーンカテーテルを選択できる。制御部201は、商品選択欄69を介して選択されたバルーンカテーテルを、たとえば器材準備を担当するスタッフに通知してもよい。スタッフが、選択されたバルーンカテーテルを速やかに使用できるように準備することにより、医師はスムーズに治療を行なえる。
【0142】
[実施の形態4]
本実施の形態は、リスク特定モデル73を生成するプログラムに関する。実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。
【0143】
図19は、実施の形態4の情報処理装置210の構成を説明する説明図である。情報処理装置210は、制御部211、主記憶装置212、補助記憶装置213、通信部214、表示部215、入力部216およびバスを備える。
【0144】
制御部211は、本実施の形態のプログラムを実行する演算制御装置である。制御部211には、一または複数のCPU、GPU、TPUまたはマルチコアCPU等が使用される。制御部211は、バスを介して情報処理装置210を構成するハードウェア各部と接続されている。
【0145】
主記憶装置212は、SRAM、DRAM、フラッシュメモリ等の記憶装置である。主記憶装置212には、制御部211が行なう処理の途中で必要な情報および制御部211で実行中のプログラムが一時的に保存される。
【0146】
補助記憶装置213は、SRAM、フラッシュメモリ、ハードディスクまたは磁気テープ等の記憶装置である。補助記憶装置213には、訓練DB79、制御部211に実行させるプログラム、およびプログラムの実行に必要な各種データが保存される。通信部214は、情報処理装置210とネットワークとの間の通信を行なうインターフェースである。
【0147】
表示部215は、たとえば液晶表示パネルまたは有機EL表示パネルである。入力部216は、たとえばキーボード、マウス、トラックボールまたはマイク等の入力デバイスである。表示部215と入力部216とは、一体に積層されて、タッチパネルを構成していてもよい。
【0148】
本実施の形態の情報処理装置210は、汎用のパーソナルコンピュータ、タブレット、スマートフォンまたはサーバコンピュータ等の情報機器である。情報処理装置210は、大型計算機、大型計算機上で動作する仮想マシン、クラウドコンピューティングシステム、量子コンピュータ、または、分散処理を行なう複数のパソコン等であってもよい。
【0149】
図20は、訓練DB79のレコードレイアウトを説明する説明図である。訓練DB79は、管腔器官の内側に挿入された画像取得用カテーテル30を使用して取得された複数の断層像58により構成された断層像セット57と、前記管腔器官の内部でバルーンを拡張した場合の前記管腔器官に損傷状態とを関連づけて複数組記録したDBであり、機械学習によるリスク特定モデル73の生成に使用される。訓練DB79は、断層像セットフィールドと、解離状態フィールドとを有する。
【0150】
断層像セットフィールドには、バルーンによる狭窄部の拡張に先立って画像取得用カテーテル30を使用して取得された断層像セット57が記録されている。解離状態フィール
ドには、バルーンを拡張した後に発生した管腔器官の損傷状態が記録されている。「解離なし」は、バルーンを拡張した後に解離が発生しなかったことを示す。「No.12~No.32」は、No.12の断層像58の位置から、No.32の断層像58の位置にかけて、解離が発生したことを示す。訓練DB79は、狭窄部を拡張した1回の治療記録について、一つのレコードを有する。
【0151】
図21は、リスク特定モデル73を生成するプログラムの処理の流れを説明する説明図である。図21を使用して、ランダムフォレストのアルゴリズムを用いたリスク特定モデル73を生成する方法の概要を説明する。プログラムの実行に先立ち、図4を使用して説明した特性値のリストが用意されている。同様にプログラムの実行に先立ち訓練DB79からテストデータが取り出されている。
【0152】
制御部211は、訓練DB79から所定数の訓練レコードを取得する(ステップS601)。制御部211は、使用する特性値を選択する(ステップS602)。特性値の選択は、ランダムに行なわれることが望ましい。
【0153】
制御部211は、ステップS601で抽出した訓練レコードに記録された断層像セット57について、ステップS602で選択された特性値を算出する(ステップS603)。制御部211は、解離状態を出力する決定木を作成する(ステップS604)。
【0154】
制御部211は、決定木の作成を終了するか否かを判定する(ステップS605)。たとえば制御部211は、所定の数の決定木を作成した場合に処理を終了すると判定する。制御部211は、作成済の決定木にテストデータを入力し、決定木間の多数決による結論の精度が所定の閾値を超えた場合に、決定木の作成を終了すると判定してもよい。
【0155】
終了しないと判定した場合(ステップS605でNO)、制御部211はステップS601に戻る。終了すると判定した場合(ステップS605でYES)、制御部211は処理を終了する。本実施の形態によると、機械学習によりリスク特定モデル73を生成できる。
【0156】
[実施の形態5]
図22は、実施の形態5の治療支援システム10の構成を説明する説明図である。本実施の形態は、血管撮影装置15、電子カルテシステム16と、カテーテル制御装置27と、MDU33と、画像取得用カテーテル30と、汎用のコンピュータ90と、プログラム97とを組み合わせて動作させることにより、本実施の形態の治療支援システム10を実現する形態に関する。実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。
【0157】
カテーテル制御装置27は、MDU33の制御、センサ32の制御、センサ32から受信した信号に基づく断層像58の生成、および、断層像セット57に基づく縦断層像の生成等を行なう、IVUS用の超音波診断装置である。カテーテル制御装置27の機能および構成は、従来から使用されている超音波診断装置と同様であるため、説明を省略する。
【0158】
コンピュータ90は、制御部201、主記憶装置202、補助記憶装置203、通信部204、表示部205、入力部206、読取部209およびバスを備える。コンピュータ90は、汎用のパーソナルコンピュータ、タブレット、スマートフォンまたはサーバコンピュータ等の情報機器である。
【0159】
プログラム97は、可搬型記録媒体96に記録されている。制御部201は、読取部209を介してプログラム97を読み込み、補助記憶装置203に保存する。また制御部201は、コンピュータ90内に実装されたフラッシュメモリ等の半導体メモリ98に記憶
されたプログラム97を読出してもよい。さらに、制御部201は、通信部204および図示しないネットワークを介して接続される図示しない他のサーバコンピュータからプログラム97をダウンロードして補助記憶装置203に保存してもよい。
【0160】
プログラム97は、コンピュータ90の制御プログラムとしてインストールされ、主記憶装置202にロードして実行される。これにより、コンピュータ90は上述した情報処理装置200として機能する。
【0161】
コンピュータ90は、汎用のパソコン、タブレット、スマートフォン、大型計算機、大型計算機上で動作する仮想マシン、クラウドコンピューティングシステム、または、量子コンピュータである。コンピュータ90は、分散処理を行なう複数のパソコン等であってもよい。
【0162】
各実施例で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組合せ可能であり、組み合わせすることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものでは無いと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味では無く、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0163】
10 治療支援システム
15 血管撮影装置
16 電子カルテシステム
200 情報処理装置
201 制御部
202 主記憶装置
203 補助記憶装置
204 通信部
205 表示部
206 入力部
209 読取部
210 情報処理装置
211 制御部
212 主記憶装置
213 補助記憶装置
214 通信部
215 表示部
216 入力部
27 カテーテル制御装置
271 カテーテル制御部
30 画像取得用カテーテル
31 シース
32 センサ
33 MDU
34 シャフト
35 表示装置
36 入力装置
38 ガイドワイヤ
41 カテーテル領域
42 内腔領域
43 内側組織領域
44 EEM領域
45 腔外領域
51 血管造影画像
52 透視画像
53 非造影画像
56 分類データ
57 断層像セット
58 断層像
61 血管造影画像欄
62 断層像欄
63 リスク欄
64 バルーン情報欄
641 適正バルーン径欄
642 最大拡張径欄
643 適正バルーン長欄
645 推奨バルーン径欄
646 推奨バルーン長欄
647 推奨拡張圧欄
651 拡張範囲指標
652 拡張端部指標
653 高リスク指標
66 リアルタイム透視像欄
67 リスク表示欄
681 拡張範囲表示ボタン
682 表示切替ボタン
69 商品選択欄
72 分類モデル
73 リスク特定モデル
74 センサ位置モデル
76 断層像DB
77 バルーンDB
79 訓練DB
90 コンピュータ
96 可搬型記録媒体
97 プログラム
98 半導体メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22