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特開2023-151443搬送治具、リチウムイオン電池の製造装置および製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151443
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】搬送治具、リチウムイオン電池の製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20231005BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20231005BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20231005BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M10/052
H01M10/058
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061050
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】519100310
【氏名又は名称】APB株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121430
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋田 義之
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
(72)【発明者】
【氏名】猫橋 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 勇輔
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK16
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL16
5H029AM03
5H029AM04
5H029CJ03
5H029CJ30
5H050AA19
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA22
5H050CA25
5H050CA26
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB22
5H050CB25
5H050DA04
5H050GA03
5H050GA30
(57)【要約】
【課題】集電体を含む被搬送物の搬送および位置合わせを容易として各処理の精度を高めることができるとともに、各処理工程に好ましい支持シートのテンションを実現できる搬送治具を提供する。
【解決手段】搬送治具10は、治具枠部12と、治具枠部12の内側の懸架領域に架け渡された可撓性の支持シート14と、支持シートのテンションを調整するテンション調整機構50と、を備え、シート状の集電体28を含む被搬送物16を支持シート14で支持して搬送するために用いられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治具枠部と、
前記治具枠部の内側の懸架領域に架け渡された可撓性の支持シートと、
前記支持シートのテンションを調整するテンション調整機構と、
を備え、
シート状の集電体を含む被搬送物を前記支持シートで支持して搬送するために用いられる搬送治具。
【請求項2】
請求項1において、
前記テンション調整機構は弾性部材を介して前記支持シートにテンションを付与するように構成された搬送治具。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記テンション調整機構を駆動するアクチュエータをさらに備える搬送治具。
【請求項4】
請求項1~3に記載の搬送治具の前記テンション調整機構を介して前記支持シートのテンションの調整を実行するテンション調整実行装置と、
前記支持シートに配置される被搬送物を処理する被搬送物処理装置と、
を備えるリチウムイオン電池の製造装置。
【請求項5】
請求項1~3に記載の搬送治具の前記テンション調整機構を介して前記支持シートのテンションの調整を実行するテンション調整実行工程と、
前記支持シートに配置される被搬送物を処理する被搬送物処理工程と、
を含むリチウムイオン電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池製造用の搬送治具、これを用いたリチウムイオン電池の製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車のモータ駆動用の電源として、二次電池の開発が盛んに行われている。特許文献1には、電池用電極の製造方法として、例えば、電極活物質および導電助剤を含む粉体を用いて電極を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-129448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、ベルトコンベア状の搬送部に搬送される集電体に対して順次処理が施されて電極が製造される。しかしながら、薄いシート状の集電体を採用する場合などに、集電体を含む被搬送物の搬送および各処理装置に対する位置合わせが困難となる虞があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、集電体を含む被搬送物の搬送および位置合わせを容易として各処理の精度を高めることができるリチウムイオン電池製造用の搬送治具、これを用いたリチウムイオン電池の製造装置および製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者は、治具枠部と、治具枠部の内側の懸架領域に架け渡された可撓性の支持シートと、を有してなる搬送治具を用いてシート状の集電体を含む被搬送物の搬送や各処理を行うことに想到した。支持シートの上面には接着層が設けられ搬送治具に対する被搬送物の位置ずれが防止される。治具枠部は剛性が高いので集電体のような剛性が低い被搬送物よりも搬送等のハンドリングが容易である。
【0007】
しかしながら、支持シートの好ましいテンションは工程によって異なる場合がある。ある処理工程に適切なテンションで支持シートが治具枠部の内側の懸架領域に架け渡された場合、他の処理工程では支持シートのテンションが適切ではないことがある。また、経時的に支持シートのテンションが増減してしまう可能性もある。支持シートのテンションが適切でない状態で被搬送物の各処理工程が実行されると歩留まりが低下しうる。すなわち発明者は、上記課題に加え各処理工程に好ましい支持シートのテンションを実現できる搬送治具を提供するという新たな課題を見出した。そこで発明者はさらに鋭意研究の上、以下の本発明の態様に想到した。
【0008】
本発明の一態様の搬送治具は、治具枠部と、治具枠部の内側の懸架領域に架け渡された可撓性の支持シートと、支持シートのテンションを調整するテンション調整機構と、を備え、シート状の集電体を含む被搬送物を支持シートで支持して搬送するために用いられる。
【0009】
本発明の一態様のリチウムイオン電池の製造装置は、上述の搬送治具のテンション調整機構を介して支持シートのテンションの調整を実行するテンション調整実行装置と、支持シートに配置される被搬送物を処理する被搬送物処理装置と、を備える。
【0010】
本発明の一態様のリチウムイオン電池の製造方法は、上述の搬送治具のテンション調整機構を介して支持シートのテンションの調整を実行するテンション調整実行工程と、支持シートに配置される被搬送物を処理する被搬送物処理工程と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明の上記の態様によれば、集電体を含む被搬送物の搬送および位置合わせを容易として各処理の精度を高めることができるとともに、各処理工程に好ましい支持シートのテンションを実現できる搬送治具、リチウムイオン電池の製造装置および製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係る搬送治具を模式的に示す斜視図
図2】同搬送治具の平面図
図3】同搬送治具を用いたリチウムイオン電池の製造装置の構成を模式的に示すブロック図
図4】同搬送治具を用いたリチウムイオン電池の製造方法を示すフローチャート
図5】同製造装置のテンション調整実行装置の構成を模式的に示す平面図
図6】配置装置(被搬送物処理装置)および配置工程(被搬送物処理工程)を模式的に示す側方から見た断面図
図7】ローラー押し付け装置(被搬送物処理装置)およびローラー押し付け工程(被搬送物処理工程)を模式的に示す側方から見た断面図
図8】電極組成物供給装置(被搬送物処理装置)および電極組成物供給工程(被搬送物処理工程)を模式的に示す側方から見た断面図
図9】プレス装置(被搬送物処理装置)およびプレス工程(被搬送物処理工程)を模式的に示す側方から見た断面図
図10】積層装置(被搬送物処理装置)および積層工程(被搬送物処理工程)を模式的に示す側方から見た断面図
図11】脱気装置(被搬送物処理装置)および脱気工程(被搬送物処理工程)を模式的に示す側方から見た断面図
図12】溶着装置(被搬送物処理装置)および溶着工程(被搬送物処理工程)を模式的に示す側方から見た断面図
図13】離脱装置(被搬送物処理装置)および離脱工程(被搬送物処理工程)を模式的に示す側方から見た断面図
図14】本発明の第2実施形態に係る搬送治具を模式的に示す平面図
図15】本発明の第3実施形態に係る搬送治具を模式的に示す平面図
図16図15のXVI-XVIに沿う拡大断面図
図17図15のXVII-XVIIに沿う拡大断面図
図18図16の状態からノブ部材が90°回転した状態を示す断面図
図19】本発明の第4実施形態に係る搬送治具を模式的に示す斜視図
図20】本発明の第5実施形態に係る搬送治具を模式的に示す斜視図
図21】本発明の第6実施形態に係る搬送治具を模式的に示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
図1及び2に示されるように、本発明の第1実施形態の搬送治具10は、治具枠部12と、治具枠部12の内側の懸架領域に架け渡された可撓性の支持シート14と、支持シートのテンションを調整するテンション調整機構50と、を備え、シート状の集電体28を含む被搬送物16を支持シート14で支持して搬送するために用いられる。支持シート14の上面には接着層(図示省略)が設けられている。接着層は剥離が容易なものであることが好ましい。接着層として剥離容易なものを用いることで、被搬送物16を支持シート14から容易に離脱させることができる。
【0014】
治具枠部12は略矩形で対向する長辺12A、12Bと、対向する短辺12C、12Dとで構成されている。短辺12C、12Dの幅方向(短辺12C、12Dに沿う方向)の中央の上面側には、長手方向(長辺12A、12Bに沿う方向)に沿って断面が半円形の凹溝12E、12Fが形成されている。なお、凹溝12E、12Fには脱気管(後述)が嵌合される。治具枠部12の材料は例えばアルミニウムである。短辺12Dの両端は長辺12A、12Bよりも幅方向の外側へ突出している。
【0015】
支持シート14は帯状で一端が短辺12Cに固定され、他端は短辺12Dの近傍でテンション調整機構50に取付けられている。支持シート14の幅方向の両縁と長辺12A、12Bとの間には、隙間が設けられる。支持シート14の材料は例えばポリエチレンテレフタレートである。また、支持シート14の厚さは例えば130~180μmである。
【0016】
テンション調整機構50は、治具枠部12の短辺12Dに沿って長辺12Aと12Bの間に配置されたスライドバー52と、スライドバー52の両端から幅方向に突出し、長辺12A、12Bに形成された長孔12G、12Hを貫通する2対のガイドピン54と、長辺12A、12Bの幅方向の外側においてガイドピン54の先端に取付けられたスライドベース56と、スライドベース56に取付けられた雌ねじ部材58と、雌ねじ部材58と螺合するボールねじ60と、ボールねじ60の首部に設置されたロードセル62と、短辺12Dに取付けられロードセル62と電気的に接続されたコネクタ64と、を備える。支持シート14の他端はテンション調整機構50のスライドバー52に取付けられている。
【0017】
スライドバー52は、治具枠部12の短辺12Dと同様の断面が矩形の棒状体で幅方向(スライドバー52に沿う方向)の中央の上面側には長手方向(長辺12A、12Bに沿う方向)に沿って凹溝12Fと同様の凹溝52Aが形成されている。ガイドピン54は丸棒状で基端がスライドバー52に嵌合している。スライドバー52の各端部には長手方向(長辺12A、12Bに沿う方向)に所定の間隔をあけて2本のガイドピン54が取付けられている。長辺12A、12Bの長孔12G、12Hは長手方向(長辺12A、12Bに沿う方向)に長く、長辺12A、12Bを幅方向に貫通している。長孔12G、12Hの孔径(内幅)はガイドピン54よりも僅かに大きい。長孔12G、12Hの長さは2本のガイドピン54が長手方向に所定の範囲で移動できる長さである。スライドベース56は矩形の板状体である。スライドベース56とスライドバー52は長辺12A、12Bを緩く挟んでいる。これによりスライドバー52は長辺12A、12Bに案内されて長手方向の所定の範囲内で移動可能である。
【0018】
雌ねじ部材58も矩形の板状体でスライドベース56の短辺12D側の端部に取付けられ幅方向外側に延在している。雌ねじ部材58には長手方向に貫通する雌ねじが形成されている。治具枠部12の短辺12Dの端部には長手方向に貫通する貫通孔が形成されている。ロードセル62にも貫通孔が形成されている。ボールねじ60はこれらの貫通孔を挿通し雌ねじ部材58の雌ねじと螺合している。ロードセル62はボールねじ60の頭部と短辺12Dの間に挟まれている。ボールねじ60の回転に伴って雌ねじ部材58と共にスライドバー52は長手方向に移動する。これにより支持シート14のテンションが増減する。ロードセル62にはテンションの反力の圧縮力が作用する。ロードセル62はこの圧縮力を検知する。支持シート14に作用する引っ張り力は2つのロードセルが検知する圧縮力の和と等しい。ロードセルが検知する圧縮力の信号はコネクタ64から出力される。
【0019】
被搬送物16は、薄いシート状の矩形の集電体28と、集電体28の上面の外周に沿って貼り付けられた枠体30とを有してなる枠付き集電体である。集電体の長さ及び幅は例えば800mm×400mmである。集電体の厚さは例えば50μmである。製造する電極が正極である場合、集電体は正極集電体である。また、製造する電極が負極である場合、集電体は負極集電体である。正極集電体の材料は、銅、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、焼成炭素、導電性高分子及び導電性ガラス等である。また、正極集電体は、導電剤と樹脂からなる樹脂集電体でもよい。負極集電体の材料は、銅、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル及びこれらの合金等の金属材料等である。負極集電体は、焼成炭素、導電性高分子及び導電性ガラス等からなる集電体でもよく、導電剤と樹脂からなる樹脂集電体であってもよい。正極集電体、負極集電体とも、樹脂集電体を構成する導電剤としては、後述する電極組成物に含まれる導電助剤と同様のものを用いることができる。
樹脂集電体を構成する樹脂は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン(PCO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂又はこれらの混合物等である。電気的安定性の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)及びポリシクロオレフィン(PCO)が好ましく、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン(PMP)がさらに好ましい。
【0020】
枠体30の幅は例えば3~20mmである。枠体30の厚さは例えば0.1~10mmである。枠体30は、融点が75~90℃のポリオレフィンを含むことが好ましい。融点が75~90℃のポリオレフィンは、分子内に極性基を有するものであってもよく、極性基を有しないものであってもよい。極性基としては、ヒドロキシ基(-OH)、カルボキシル基(-COOH)、ホルミル基(-CHO)、カルボニル基(=CO)、アミノ基(-NH2)、チオール基(-SH)、1,3-ジオキソ-3-オキシプロピレン基等が挙げられる。ポリオレフィンが極性基を有しているかどうかは、ポリオレフィンをフーリエ変換赤外分光法(FT-IR)や核磁気共鳴分光法(NMR)で分析することにより確認することができる。融点が75~90℃のポリオレフィンとしては、東ソー(株)製 メルセン(登録商標)G(融点:77℃)や三井化学(株)製 アドマーXE070(融点:84℃)等が挙げられる。東ソー(株)製 メルセン(登録商標)Gは極性基を有する樹脂の例であり、三井化学(株)製 アドマーXE070は極性基を有しない樹脂の例である。枠体30は、融点が75~90℃のポリオレフィンに加えて、非導電性フィラーを含有していてもよい。非導電性フィラーとしては、ガラス繊維等の無機繊維及びシリカ粒子等の無機粒子が挙げられる。枠体30の一部は、耐熱性環状支持部材で構成されていてもよい。枠体30の一部が耐熱性環状支持部材で構成されていると、枠体30の機械的強度及び耐熱性を向上させることができる。耐熱性環状支持部材は集電体20及びセパレータ(後述)との接着性が低いため、耐熱性環状支持部材は、枠体30の厚さ方向の中央部に配置されることが好ましい。この場合、平面視形状が互いに同一の、融点が75~90℃のポリオレフィンを含む層、耐熱性環状支持部材、融点が75~90℃のポリオレフィンを含む層が、集電体28側からこの順で配置されることが好ましい。上記構成であると、枠体30に機械的強度及び耐熱性を付与しつつ、集電体28及びセパレータとの接着性を高めることができる。耐熱性環状支持部材は、溶融温度が150℃以上である耐熱性樹脂組成物を含んでいることが望ましく、溶融温度が200℃以上である耐熱性樹脂組成物を含んでいることがより望ましい。耐熱性環状支持部材が、溶融温度が150℃以上である耐熱性樹脂組成物を含むことで、枠体30が熱に対してより変形しにくくなる。耐熱性樹脂組成物の溶融温度(単に融点ともいう)は、JIS K7121-1987に準拠して示差走査熱量測定によって測定される。耐熱性樹脂組成物を構成する樹脂としては、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂及びポリイミド等)、エンジニアリング樹脂[ポリアミド(ナイロン6 溶融温度:約230℃、ナイロン66 溶融温度:約270℃等)、ポリカーボネート(PCともいう 溶融温度:約150℃)及びポリエーテルエーテルケトン(PEEKともいう 溶融温度:約330℃)等]及び高融点熱可塑性樹脂{ポリエチレンテレフタレート(PETともいう 溶融温度:約250℃)、ポリエチレンナフタレート(PENともいう 溶融温度:約260℃)及び高融点ポリプロピレン(溶融温度:約160~170℃)等}等が挙げられる。なお、高融点熱可塑性樹脂とは、JIS K7121-1987に準拠して示差走査熱量測定によって測定される溶融温度が150℃以上の熱可塑性樹脂を指す。耐熱性樹脂組成物は、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、高融点ポリプロピレン、ポリカーボネート及びポリエーテルエーテルケトンからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含むことが望ましい。耐熱性樹脂組成物はフィラーを含んでいてもよい。耐熱性樹脂組成物がフィラーを含むことで、溶融温度を向上させることができる。上記フィラーとしては、ガラス繊維等の無機フィラー及び炭素繊維等が挙げられる。フィラーを含む耐熱性樹脂組成物としては、ガラス繊維に硬化前のエポキシ樹脂を含浸させて硬化させたもの(ガラスエポキシともいう)及び炭素繊維強化樹脂などが挙げられる。
【0021】
次に搬送治具10を用いたリチウムイオン電池の製造装置および製造方法について説明する。図3は、搬送治具10が用いられるリチウムイオン電池の製造装置100の構成を模式的に示すブロック図である。図4は搬送治具10が用いられるリチウムイオン電池の製造方法を示すフローチャートである。リチウムイオン電池の製造装置100は、搬送治具10のテンション調整機構50を介して支持シート14のテンションの調整を実行するテンション調整実行装置102と、支持シート14に配置される被搬送物16を処理する被搬送物処理装置104と、を備える。リチウムイオン電池の製造方法では、搬送治具10のテンション調整機構50を介して支持シート14のテンションの調整を実行するテンション調整実行工程S102と、支持シート14に配置される被搬送物16を処理する被搬送物処理工程S104とが実行される。なお、これらの工程の前に予備工程が実行される。予備工程では集電体28の上面に枠体30が貼り付けられて枠付き集電体が得られる。枠体30は、例えば加熱によってその一部が溶融し、その後再硬化することで集電体28に貼り付けられる。なお、集電体28はシートから切り出されることにより得られる。枠体30もシートからロータリーダイカットなどによって打ち抜かれることで得られる。また、枠体30は射出成型により製造されてもよい。なお、枠体30の外周の形状は集電体28の外周の形状と一致する。
【0022】
図5に示されるように、テンション調整実行装置102は、制御部102Aと、ソケット102Bと、モータ102Cと、コネクタ102Dとを備えている。ソケット102B及びモータ102Cは図示されない搬送装置によって移動可能である。ソケット102Bはテンション調整機構50のボールねじ60の頭部に嵌合したりボールねじ60の頭部から離脱できる。コネクタ102Dも図示されない搬送装置によって移動可能である。コネクタ102Dはテンション調整機構50のコネクタ64と結合したりコネクタ64から離脱できる。制御部102Aは、モータ102C、コネクタ102D及び上記の搬送装置と電気的に接続されている。
【0023】
被搬送物処理装置104は、配置装置110(図6参照)と、ローラー押し付け装置120(図7参照)と、電極組成物供給装置130(図8参照)と、プレス装置140(図9参照)と、積層装置150(図10参照)と、脱気装置160(図11参照)と、溶着装置170(図12参照)と、離脱装置180(図13参照)とを含む。
【0024】
(S102:テンション調整実行工程)
テンション調整実行工程ではテンション調整実行装置102の制御部102Aの指示によりソケット102Bがテンション調整機構50のボールねじ60の頭部に嵌合され、コネクタ102Dがコネクタ64と結合される。制御部102Aはロードセル62が検知する圧縮力の信号に基づいて支持シート14の実際のテンションを算出する。そして制御部102Aは支持シート14の実際のテンションが支持シート14の適性なテンションの値の範囲に入るようにボールねじ60を回転させるフィードバック制御を行う。また、制御部102Aはフィードフォワード制御を行ってもよい。この場合、フィードフォワード制御された支持シート14の実際のテンションが支持シート14の適性なテンションの値の範囲から外れた場合にフィードバック制御したり警告を発するようにしてもよい。
【0025】
(S104:被搬送物処理工程)
被搬送物処理工程は、配置工程S110(図6参照)と、ローラー押し付け工程S120(図7参照)と、電極組成物供給工程S130(図8参照)と、プレス工程S140(図9参照)と、積層工程S150(図10参照)と、脱気工程S160(図11参照)と、溶着工程S170(図12参照)と、離脱工程S180(図13参照)とを含む。これらの工程はこの順で実行される。テンション調整実行装置102の制御部102Aには各工程における支持シート14の適性なテンションの値の範囲が記憶されている。テンション調整実行工程S102は、各工程の前に実行される。なお、すべての工程の前にテンション調整実行工程S102が実行されてもよい。また、一部の工程の前にのみテンション調整実行工程S102が実行されてもよい。事前にテンション調整実行工程S102が実行される複数の工程に対応して複数のテンション調整実行装置102が備えられている。なお、1つのテンション調整実行装置102が2以上の工程に対応する2以上のテンション調整実行工程に兼用されてもよい。
【0026】
(S110:配置工程)
図6に示されるように、配置工程では、被搬送物16(枠付き集電体)が支持シート14の上面に配置される。配置装置110は、被搬送物16の枠体30に遊嵌して被搬送物16を負圧によって保持する保持器112を備えている。配置装置110は、保持器112を移動させて被搬送物16を支持シート14の上面の所定の位置に配置するように構成されている。被搬送物16は支持シート14の上面の接着層によって支持シート14に接着される。支持シート14は可撓性を有するため、支持シート14に被搬送物16が配置される際、被搬送物16に衝撃が加わることが抑制され、被搬送物16の損傷が抑制される。
【0027】
(S120:ローラー押し付け工程)
図7に示されるようにローラー押し付け工程では、支持シート14にローラー122を当接させつつローラー122を搬送治具10に対して相対的に移動させて被搬送物16及び支持シート14を加圧する。ローラー押し付け装置120は、支持シート14の下面に当接する上記ローラー122と、被搬送物16の上面に当接する台座部材124とを備えている。台座部材124は枠体30に遊嵌して集電体28の上面に当接する凸部124Aを備えている。ローラー押し付け装置120は、ローラー122を移動させるように構成されている。なお、凸部124Aは台座部材とは別体のスペーサであってもよい。また、ローラー122は移動せず、搬送治具10及び被搬送物16が移動してもよい。
【0028】
(S130:電極組成物供給工程)
図8に示されるように、電極組成物供給工程では被搬送物16の枠体30の内側に電極組成物32が供給される。ここで被搬送物16は集電体28、枠体30に加えて電極組成物32を含む構成となる。電極組成物32は粉体状である。電極組成物供給装置130は、シュート132と、架台134とを備えている。架台134は支持シート14の下面に接するように搬送治具10の治具枠部12の内側に配置され支持シート14を下方から支持する。
【0029】
電極組成物32は、電極活物質および導電助剤を含む造粒粒子を有する。また、電極組成物32は、電解液、粘着剤およびイオン伝導性ポリマーなどを有していてもよい。製造する電極が正極である場合、電極活物質は正極活物質である。また、製造する電極が負極である場合、電極活物質は負極活物質である。
【0030】
正極活物質粒子は、リチウムと遷移金属との複合酸化物{遷移金属が1種である複合酸化物(LiCoO、LiNiO、LiAlMnO、LiMnO及びLiMn等)、遷移金属元素が2種である複合酸化物(例えばLiFeMnO、LiNi1-xCo、LiMn1-yCo、LiNi1/3Co1/3Al1/3及びLiNi0.8Co0.15Al0.05)及び金属元素が3種類以上である複合酸化物[例えばLiMM’M’’(M、M’及びM’’はそれぞれ異なる遷移金属元素であり、a+b+c=1を満たす。例えばLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2)等]等}、リチウム含有遷移金属リン酸塩(例えばLiFePO、LiCoPO、LiMnPO及びLiNiPO)、遷移金属酸化物(例えばMnO及びV)、遷移金属硫化物(例えばMoS及びTiS)及び導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン及びポリ-p-フェニレン及びポリビニルカルバゾール)等の粒子であり、2種以上が併用されてもよい。なお、リチウム含有遷移金属リン酸塩は、遷移金属サイトの一部を他の遷移金属で置換したものであってもよい。
【0031】
負極活物質粒子は、炭素系材料[黒鉛、難黒鉛化性炭素、アモルファス炭素、樹脂焼成体(例えばフェノール樹脂及びフラン樹脂等を焼成し炭素化したもの等)、コークス類(例えばピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークス等)及び炭素繊維等]、珪素系材料[珪素、酸化珪素(SiO)、珪素-炭素複合体(炭素粒子の表面を珪素及び/又は炭化珪素で被覆したもの、珪素粒子又は酸化珪素粒子の表面を炭素及び/又は炭化珪素で被覆したもの並びに炭化珪素等)及び珪素合金(珪素-アルミニウム合金、珪素-リチウム合金、珪素-ニッケル合金、珪素-鉄合金、珪素-チタン合金、珪素-マンガン合金、珪素-銅合金及び珪素-スズ合金等)等]、導電性高分子(例えばポリアセチレン及びポリピロール等)、金属(スズ、アルミニウム、ジルコニウム及びチタン等)、金属酸化物(チタン酸化物及びリチウム・チタン酸化物等)及び金属合金(例えばリチウム-スズ合金、リチウム-アルミニウム合金及びリチウム-アルミニウム-マンガン合金等)等及びこれらと炭素系材料との混合物等の粒子である。上記負極活物質粒子のうち、内部にリチウム又はリチウムイオンを含まないものについては、予め負極活物質粒子の一部又は全部にリチウム又はリチウムイオンを含ませるプレドープ処理を施してもよい。これらの中でも、電池容量等の観点から、炭素系材料、珪素系材料及びこれらの混合物が好ましく、炭素系材料としては、黒鉛、難黒鉛化性炭素及びアモルファス炭素がさらに好ましく、珪素系材料としては、酸化珪素及び珪素-炭素複合体がさらに好ましい。
【0032】
電極活物質粒子の平均粒子径は、5~200μmであることが好ましい。電極活物質粒子の平均粒子径は、マイクロトラック法(レーザー回折・散乱法)によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径(Dv50)を意味する。マイクロトラック法とは、レーザー光を粒子に照射することによって得られる散乱光を利用して粒度分布を求める方法である。なお、体積平均粒子径の測定には、レーザー回折・散乱式の粒子径分布測定装置[マイクロトラック・ベル(株)製のマイクロトラック等]を用いることができる。
【0033】
電極活物質粒子は、その表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆層により被覆された被覆活物質粒子であってもよい。電極活物質粒子の周囲が被覆層で被覆されていると、電極の体積変化が緩和され、電極の膨張を抑制することができる。なお、電極活物質粒子として正極活物質粒子を使用した場合の被覆活物質粒子を被覆正極活物質粒子といい、電極活物質粒子として負極活物質粒子を使用した場合の被覆活物質粒子を被覆負極活物質粒子という。被覆層を構成する高分子化合物(被覆用高分子化合物ともいう)としては、特開2017-054703号公報に非水系二次電池活物質被覆用樹脂として記載されたものを好適に用いることができる。被覆層は、必要に応じて、後述する導電助剤を含んでいてもよい。
【0034】
電極活物質層(枠体30の内側に供給された電極組成物32で形成される層)に含まれる被覆用高分子化合物の重量割合は、電極活物質層の重量を基準として、0.1~10重量%であることが好ましい。電極活物質層に含まれる被覆用高分子化合物の含有量が、電極活物質層の重量を基準として0.1重量%未満であると、電極活物質層に含まれる被覆用高分子化合物の含有量が少なすぎて、電極割れが生じたり、成形性が低下してしまうことがある。一方、電極活物質層に含まれる被覆用高分子化合物の含有量が、電極活物質層の重量を基準として10重量%を超える場合には、電極活物質層に含まれる被覆用高分子化合物の含有量が多すぎて、電気抵抗を増加させてしまうことがある。電極活物質層に含まれる電極活物質粒子の重量割合は、電極活物質層の重量を基準として70~95重量%であることが好ましい。なお、電極活物質粒子が被覆活物質粒子である場合、被覆活物質粒子を構成する被覆層は、電極活物質粒子の重量に含めないものとする。
【0035】
電極活物質層は、電極活物質粒子以外に、導電助剤、溶液乾燥型の公知の電極用バインダ(結着剤ともいう)及び粘着性樹脂を含有していてもよい。また、リチウムイオン電池の製造に用いられる非水電解液を構成する電解質や溶媒等を含有していてもよい。ただし、電極活物質層は、公知の電極用バインダを含有していないことが好ましい。
【0036】
導電助剤は、導電性を有する材料から選択される。具体的には、金属[ニッケル、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、銅及びチタン等]、カーボン[グラファイト及びカーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)等]、及びこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
これらの導電助剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金又は金属酸化物を用いてもよい。電気的安定性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン、銀、銅、チタン及びこれらの混合物であり、より好ましくは銀、アルミニウム、ステンレス及びカーボンであり、さらに好ましくはカーボンである。またこれらの導電助剤としては、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料(上記した導電助剤の材料のうち金属のもの)をめっき等でコーティングしたものでもよい。
【0037】
導電助剤の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、電池の電気特性の観点から、0.01~10μmであることが好ましく、0.02~5μmであることがより好ましく、0.03~1μmであることがさらに好ましい。なお、本明細書中において、「粒子径」とは、導電助剤の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)等の観察手段を用い、数~数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。
【0038】
導電助剤の形状(形態)は、粒子形態に限られず、粒子形態以外の形態であってもよく、カーボンナノチューブ等、いわゆるフィラー系導電性材料として実用化されている形態であってもよい。
【0039】
導電助剤は、その形状が繊維状である導電性繊維であってもよい。
導電性繊維としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、ステンレス鋼のような金属を繊維化した金属繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、有機物繊維の表面を導電性物質を含む樹脂で被覆した導電性繊維等が挙げられる。これらの導電性繊維の中では炭素繊維が好ましい。また、グラフェンを練りこんだポリプロピレン樹脂も好ましい。
導電助剤が導電性繊維である場合、その平均繊維径は0.1~20μmであることが好ましい。電極活物質層に含まれる導電助剤の重量割合は、電極活物質層32の重量を基準として0~5重量%であることが好ましい。
【0040】
溶液乾燥型の公知の電極用バインダとしては、デンプン、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)等が挙げられる。
ただし、公知の電極用バインダの含有量は、電極活物質層全体の重量を基準として、2.0重量%以下であることが好ましい。
電極活物質層に含まれる公知の電極用バインダの重量割合は、電極活物質層の重量を基準として0~2重量%であることが好ましく、0~0.5重量%であることがより好ましい。
【0041】
電極活物質層は、公知の電極用バインダではなく、粘着性樹脂を含むことが好ましい。電極活物質層が上記溶液乾燥型の公知の電極用バインダを含む場合には、圧縮成形体を形成した後に乾燥工程を行うことで一体化する必要があるが、粘着性樹脂を含む場合には、乾燥工程を行うことなく常温において僅かな圧力で電極活物質層を一体化することができる。乾燥工程を行わない場合、加熱による圧縮成形体の収縮や亀裂の発生がおこらないため好ましい。
【0042】
なお、溶液乾燥型の電極用バインダは、溶媒成分を揮発させることで乾燥、固体化して電極活物質粒子同士を強固に固定するものを意味する。一方、粘着性樹脂は、粘着性(水、溶媒、熱等を使用せずに僅かな圧力を加えることで接着する性質)を有する樹脂を意味する。
溶液乾燥型の電極用バインダと粘着性樹脂とは異なる材料である。
【0043】
粘着性樹脂としては、被覆層を構成する高分子化合物(特開2017-054703号公報に記載された非水系二次電池活物質被覆用樹脂等)に少量の有機溶剤を混合してそのガラス転移温度を室温以下に調整したもの、及び、特開平10-255805公報等に粘着剤として記載されたものを好適に用いることができる。
電極活物質層に含まれる粘着性樹脂の重量割合は、電極活物質層の重量を基準として0~2重量%であることが好ましい。
電極活物質層に含まれる樹脂成分(被覆用高分子化合物、電極用バインダ及び粘着性樹脂)の合計重量の割合は、0.1~10重量%であることが好ましい。
【0044】
電解質としては、公知の非水電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF及びLiClO等の無機酸のリチウム塩、LiN(CFSO、LiN(CSO及びLiC(CFSO等の有機酸のリチウム塩等が挙げられる。これらの内、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのはLiPFである。
溶媒としては、公知の非水電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、ラクトン化合物、環状又は鎖状カーボネート、鎖状カルボン酸エステル、環状又は鎖状エーテル、リン酸エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン、スルホラン等及びこれらの混合物を用いることができる。
【0045】
電極活物質層の厚さは、枠体30の厚さ以上であることが好ましい。枠体30の厚さに対する電極活物質層の厚さの割合は、100%~200%であることが好ましく、100~150%であることが好ましく、110~130%であることがより好ましい。
【0046】
(S140:プレス工程)
図9に示されるように、プレス工程では被搬送物16の枠体30の内側の電極組成物32が圧縮され電極活物質層が形成される。電極組成物32を圧縮することで、電極活物質層を緻密化させるとともに厚さを均一にすることができる。プレス装置140は、一対の加圧ローラー142、144を備えている。一方の加圧ローラー142は被搬送物16の上側に位置し、他方の加圧ローラー144は支持シート14の下側に位置する。一対の加圧ローラー142、144は、被搬送物16の電極組成物32を上下方向から挟み込むようにして加圧する。加圧装置140は、一対の加圧ローラー142、144を移動させるように構成されている。なお、一対の加圧ローラー142、144は移動しないで搬送治具10及び被搬送物16が移動してもよい。
【0047】
以上の工程を経て、搬送治具10の上側に正極または負極の電極が形成される。なお、プレス工程の後には、電極活物質層の厚さを測定し品質を評価する工程を行うことが好ましい。各工程(特に、電極組成物供給工程およびプレス工程)が、搬送治具10の上側で行われるので、工程間の仕掛品の搬送が容易となるとともに、仕掛品の損傷を抑制できる。また、各工程を行う処理装置に対して、搬送治具10を位置合わせすることで、仕掛品を処理装置に対して位置合わせすることができる。このため、各処理の精度を高めることができる。
【0048】
(S150:積層工程)
図10に示されるように、積層工程では2つの被搬送物16が搬送治具10に保持された状態でセパレータ34を介して積層される。なお、一方の被搬送物16は正極電極であり、他方の被搬送物16は負極電極である。積層装置150は、一方の搬送治具10を保持する第1の搬送治具保持器152と、他方の搬送治具10を保持する第2の搬送治具保持器154と、セパレータ34を保持するセパレータ保持器156とを備えている。第1及び第2の搬送治具保持器152、154は、搬送治具10を例えば挟持または係止して移送可能である。セパレータ保持器156はセパレータ34を例えば負圧により保持して移送し、下側の被搬送物16の上にセパレータ34を配置可能である。搬送治具10を介して被搬送物16をハンドリングできるので、被搬送物16の損傷を抑制できる。また、2つの搬送治具10同士を位置合わせすることで、容易に被搬送物(正極電極及び負極電極)16同士を位置合わせすることができる。なお、積層工程S150では2つの搬送治具10の凹溝12E、12Fに後述する脱気装置160の脱気管162を嵌合させる。
【0049】
(S160:脱気工程)
図11に示されるように、脱気工程では積層された2つの被搬送物16の内部の空気が抜かれる。脱気装置160は、上述の脱気管162と、開閉弁164と、脱気管162に接続された真空ポンプ(図示省略)とを備えている。脱気管162の先端は2つの搬送治具10の支持シート14の間に配置される。真空ポンプを作動させ開閉弁164を開けることにより2つの搬送治具10の支持シート14の間の空気が抜かれる。これにより、積層された2つの被搬送物(正極電極及び負極電極)16の内部の空気が抜かれる。支持シート14は積層された2つの被搬送物16を包むように被搬送物16に密着する。積層された2つの被搬送物16の内部の空気が抜かれた状態で、脱気管162の開閉弁164が閉められる。これにより、積層された2つの被搬送物(電極)16の内部の空気が抜かれた状態が保持される。次工程の溶着工程S170は、開閉弁164が閉められて負圧が保持された状態で行われる。開閉弁164を閉めることで、脱気管162と真空ポンプとの接続を解除することができ、工程間の搬送が容易となる。
【0050】
(S170:溶着工程)
図12に示されるように、溶着工程では2つの被搬送物16の枠体30が溶着される。溶着装置170は、枠体30と略同形状の枠状の一対の基部172と、各基部172の先端に取付けられた枠状の発熱体174とを備えている。発熱体174は、搬送治具10の支持シート14を介して枠体30を加熱する。これにより、枠体30は溶融する。その後、発熱体174を支持シート14から離間させると枠体30は冷却され硬化する。これにより、2つの被搬送物(正極電極及び負極電極)16の枠体30が溶着し一体化する。なお、溶着装置は、枠状の基部及び発熱体に代えて2つのコ字形状の部材に分割された基部及び発熱体を備える構成でもよい。また、溶着装置は、線状(棒状)の1つまたは複数の基部及び発熱体を備える構成であり、枠体30の各辺を順次熱溶着してもよい。以上の工程によって、正極電極である一方の被搬送物16と、負極電極である一方の被搬送物16とが一体化された単セルが得られる。
【0051】
(S180:離脱工程)
図13に示されるように離脱工程では、2つの搬送治具10から単セル40が離脱されて取り出される。離脱装置180は、一方の搬送治具10を保持する第1の搬送治具保持器182と、他方の搬送治具10を保持する第2の搬送治具保持器184と、単セル40を保持する単セル保持器186とを備えている。第1及び第2の搬送治具保持器182、184は、搬送治具10を例えば挟持または係止してこれらを分離可能である。支持シート14は単セル40から剥離される。短辺12D側から支持シート14が単セル40から剥離されるのに伴って、単セル保持器186は剥離された支持シート14と単セル40との間に進入するようになっている。支持シート14が単セル40の全面が剥離されると、単セル保持器186は単セル40を挟んで搬出する。
【0052】
搬送治具10はテンション調整機構50を備えているので、被搬送物処理工程S104に含まれるこれらの工程に対応して支持シート14のテンションを適正な値に調整することができる。例えば配置工程S110では被搬送物16の正確な位置決めのために支持シート14は変形しにくいことが好ましい。電極組成物供給工程S130でも電極組成物32の正確な量の供給のために支持シート14は変形しにくいことが好ましい。プレス工程S140でも電極活物質層の厚さのばらつきを抑制するために支持シートは変形しにくいことが好ましい。したがって、これらの工程では支持シート14のテンションが比較的高い値に調整される。例えばこれらの工程の前に支持シート14は、被搬送物16が搭載されることにより生じる撓み量が所定の値よりも小さくなるようにテンション(張力)がテンション調整機構50によって調整される。被搬送物16が搭載されることによる支持シート14の下方への撓み量は、短辺12Cとテンション調整機構50に架け渡された支持シート14の長さの0.5%よりも小さいことが好ましい。例えば、短辺12Cとテンション調整機構50に架け渡された支持シート14の長さが1400mmの場合、被搬送物16が搭載されることによる支持シート14の下方への撓み量は7mmよりも小さいことが好ましい。この場合、支持シート14のテンションは11.0~13.0N/cmであることが好ましい。一方、脱気工程S160では支持シート14が被搬送物16に密着するように支持シート16が変形することが好ましい。また、離脱工程S180でも被搬送物16から支持シート14を容易に剥離するために支持シート14が治具枠部12に対し変形することが好ましい。したがって、これらの工程では支持シート14のテンションが上記よりも低い値に調整される。
【0053】
[第2実施形態]
図14に示されるように、第2実施形態の搬送治具210は第1実施形態のテンション調整機構50と構成が異なるテンション調整機構250を備える。テンション調整機構50は1つのスライドバー52を備えるのに対し、テンション調整機構250はスライドバー52を第1のスライドバーとして第1のスライドバー52と治具枠部12の短辺12Dとの間にさらに第2のスライドバー252を備える。第2のスライドバー252には幅方向(第2のスライドバー252に沿う方向)の中央を長手方向(治具枠部12の長辺12A、12Bに沿う方向)に貫通する雌ねじ孔が形成されている。これ以外は第2のスライドバー252は第1のスライドバー52と同じである。第2のスライドバー252にも第1のスライドバー52の凹溝52Aと同様の凹溝252Aが形成されている。なお、治具枠部12の長辺12A、12Bは第2のスライドバー252に対応して第1実施形態よりも長い。また、長辺12A、12Bには第2のスライドバー252に対応する長孔12J、12Kが形成されている。第1のスライドバー52と第2のスライドバー252は支持シート14の幅方向の両端と長辺12A、12Bとの間に配置された2つの弾性部材255を介して連結されている。すなわちテンション調整機構250は弾性部材255を介して支持シート14にテンションを付与するように構成されている。弾性部材255は例えばコイルスプリングである。2つの弾性部材255の合成ばね定数は、支持シート14の長手方向(支持シート14が架け渡された方向)のばね定数よりも小さいことが好ましい。
【0054】
さらに、テンション調整機構50は2つのボールねじ60を備えるのに対し、テンション調整機構250は1つのボールねじ260を備える。短辺12Dには幅方向の中央を長手方向に貫通する貫通孔が形成されている。ボールねじ260はこの貫通孔を挿通し第2のスライドバー252の雌ねじ孔に螺合している。なお、短辺12Dの両端は長辺12A、12Bから幅方向外側へ突出していない。また、雌ねじ部材58は備えられていない。他の構成は第1実施形態と同じである。同じ構成については第1実施形態と同じ符号を用いることとして説明を省略する。
【0055】
第2実施形態のテンション調整機構250は1つのボールねじ260で支持シート14のテンションの調整ができるので、テンションの調整が容易である。第2実施形態のテンション調整機構250に対応するテンション調整実行装置は1つのボールねじに対応する1組のソケット及びモータを備えていればよい。したがって、テンション調整実行装置のコンパクト化やコスト低減に寄与する。また、第1のスライドバー52と第2のスライドバー252は2つの弾性部材255を介して連結されているので構成部材の寸法誤差等の影響が軽減され支持シート14に均一にテンションが付与される。また、支持シート14は温度や経時的な変化によって伸縮しうる。これにより支持シート14のテンションが変動することがある。これに対し、2つの弾性部材255の合成ばね定数が支持シート14の長手方向のばね定数よりも小さい場合、支持シート14の伸縮の影響が軽減され支持シート14のテンションの変動が抑制される。
【0056】
[第3実施形態]
図15に示されるように、第3実施形態の搬送治具310は第2実施形態のテンション調整機構250と構成が異なるテンション調整機構350を備える。テンション調整機構250はボールねじ260を備えるのに対し、テンション調整機構350はノブ部材360を備えている。ノブ部材360は棒状体の両端に鍔部が設けられた構成である。第2のスライドバー352には第2実施形態の第2のスライドバー252の雌ねじ孔に代えてノブ部材360の棒状体の基端部分が挿通する貫通孔が形成されている。なお、第2のスライドバー352にも第2実施形態の第2のスライドバー252の凹溝252Aと同様の凹溝352Aが形成されている。ノブ部材360の基端側の鍔部と第2のスライドバー352の間にはロードセル62が配置されている。ノブ部材360の基端部分はロードセル62も挿通している。図16に示されるように、ノブ部材360の棒状体の基端部分よりも先端側の首部分は断面が楕円形である。首部分の外周はゴム部材360Aで被覆されている。治具枠部12の短辺には幅方向に長い長孔12Lが形成されている。長孔12Lの孔径(内幅)はゴム部材360Aで被覆されたノブ部材360の首部の長径ときつく嵌合する大きさである。図17に示されるように、ノブ部材360の先端側の鍔部と首部の間には正方形の角形部360Bが設けられている。他の構成は第2実施形態と同じである。第2実施形態と同じ構成要素については第2実施形態と同じ符号を付することとして説明を省略する。
【0057】
第3実施形態のテンション調整機構350に対応するテンション調整実行装置はノブ部材360の先端側の鍔部と角形部に係合してノブ部材360を軸線まわりに回動可能であり、さらにノブ部材360を軸線方向に引っ張ることが可能である操作機構を備える構成である。支持シート14のテンションを調整するときは操作機構がノブ部材360を図16に示される状態から図18に示されるように90°回転させる。これによりノブ部材360は短辺12Dの長孔12Lから解放される。この状態で操作機構がノブ部材360を引っ張り支持シート14のテンションを調整する。支持シート14のテンションが適正な値に調整されたら操作機構がノブ部材360を図18に示される状態から90°回転させる。ノブ部材360は図16に示される状態に戻り短辺12Dの長孔12Lにロックされる。なお、操作機構がノブ部材360を引っ張る力を計測するロードセル等のセンサはテンション調整実行装置に備えられていてもよい。
【0058】
[第4実施形態]
図19に示されるように、第4実施形態の搬送治具410は第1実施形態のテンション調整機構50と構成が異なるテンション調整機構450を備える。テンション調整機構450はテンション調整機構50のボールねじ60に代えてアクチュエータ460を備える。アクチュエータ460はエアシリンダ、ソレノイドアクチュータ等である。また、テンション調整機構50の雌ねじ部材58に代えて矩形のプレート458が備えられている。プレート458はスライドベース56の短辺12C側の端部に取付けられ幅方向外側に延在している。アクチュエータ460は長手方向(治具枠部12の長辺12A、12Bに沿う方向)に沿って伸縮するようにプレート458と治具枠部12の短辺12Dの両端との間に設置されている。アクチュエータ460と短辺12Dの両端との間にはロードセル462が設置されている。コネクタ464はロードセル462と電気的に接続されている。さらにコネクタ464はアクチュエータ460とエア配管あるいは電線により接続されている。なお、エア配管用のコネクタがコネクタ464とは別に設けられていてもよい。他の構成は第1実施形態と同じである。第1実施形態と同じ構成要素については第1および第2実施形態と同じ符号を付することとして説明を省略する。
【0059】
第4実施形態のテンション調整機構450はアクチュエータ460を備えているのでテンション調整機構450に対応するテンション調整実行装置は機械的な構成要素を備えていなくてよい。したがって、テンション調整実行装置の構成がシンプルである。例えばアクチュエータ460がエアシリンダの場合、加圧空気を供給するためのエア配管をコネクタ464またはエア配管用のコネクタに接続すればよい。この場合、空気圧の調整により支持シート14のテンションを調整できる。また、アクチュエータ460がソレノイドアクチュータの場合、コネクタ464に電気を供給するための電気配線を接続すればよい。この場合、電流値あるいは供給電力値の調整により支持シート14のテンションを調整できる。
【0060】
[第5実施形態]
図20に示されるように、第5実施形態の搬送治具510は第1実施形態のテンション調整機構50と構成が異なるテンション調整機構550を備える。テンション調整機構550はテンション調整機構50のスライドバー52に代えてローラー552を備える。ローラー552は治具枠部12の短辺12Dに沿って長辺12Aと12Bの間に配置されている。支持シート14の他端はローラー552に巻き掛けられるように取付けられている。ローラー552の軸方向の中央の外周面には凹溝12Fと同様の断面形状の凹溝552Aが全周に形成されている。ローラー552の中心には軸部554が取り付けられている。ローラー552は軸部554に固定されており軸部554と一体で回転するようになっている。治具枠部12の長辺12A、12Bには軸部554が挿通する貫通孔が形成されている。軸部554は長辺12A、12Bに回転自在に支持されている。なお、軸部554はブッシュまたは軸受を介して長辺12A、12Bに回転自在に支持されていてもよい。軸部554の一端にはブレーキ556が取付けられている。ブレーキ556は常態(非通電の状態)で軸部554の回転を阻止し、通電されると軸部554を解放するように構成されている。軸部554の他端にはトルク検知器558が取付けられている。トルク検知器558は断面が正方形または正六角形等の多角形で軸方向に突出する入力部558Aを備えている。なお、入力部は正方形または正六角形等の多角形の穴であってもよい。トルク検知器558の出力部(図示省略)は軸部554の他端と結合されている。コネクタ564はブレーキ556及びトルク検知器558と電気的に接続されている。
【0061】
第5実施形態のテンション調整機構550に対応するテンション調整実行装置はトルク検知器558の入力部558Aに係合して入力部558Aを軸線まわりに回動可能である操作機構を備える構成である。支持シート14のテンションを調整するときはまずブレーキ556に通電して軸部554を解放する。この状態で操作機構が入力部558Aを回転させて支持シート14のテンションを調整する。この際、トルク検知器558の信号に基づいて支持シート14のテンションが計測される。支持シート14のテンションが適正な値に調整されたらブレーキ556への通電を停止し軸部554の回転を阻止する。なお、操作機構が入力部を回転させるトルクを計測するトルク検出器はテンション調整実行装置に備えられていてもよい。
【0062】
[第6実施形態]
図21に示されるように、第6実施形態の搬送治具610は第5実施形態のテンション調整機構550と異なるテンション調整機構650を備える。テンション調整機構650はアクチュエータ660を備える。アクチュエータ660は電動モータ等である。アクチュエータ660の出力部はトルク検知器558の入力部と係合している(図示省略)。コネクタ664はブレーキ556、トルク検知器558及びアクチュエータ660と電気的に接続されている。他の構成は第5実施形態と同じである。第5実施形態と同じ構成要素については第5実施形態と同じ符号を付することとして説明を省略する。
【0063】
第6実施形態のテンション調整機構650はアクチュエータ660を備えているのでテンション調整機構650に対応するテンション調整実行装置は機械的な構成要素を備えていなくてよい。したがって、テンション調整実行装置の構成がシンプルである。電流値あるいは供給電力値の調整により支持シート14のテンションを調整できる。
【0064】
なお、第5及び第6実施形態ではローラー552は軸部554に固定されており軸部554と一体で回転するようになっているが、ローラー552は軸部554に回転自在に支持されローラー552と軸部554がねじりコイルばねで連結されていてもよい。ねじりコイルばねは軸部554を取り巻くように配置され一端が軸部554に固定され、他端がローラー552に固定される。この場合、テンション調整機構はねじりコイルばね(弾性部材)を介して支持シート14にテンションを付与する。ねじりコイルばねはローラー552の軸方向の両側に設置されていてもよい。この場合、第2及び第3実施形態と同様に構成部材の寸法誤差等の影響が軽減され支持シート14に均一にテンションが付与される。また、ねじりコイルばねのばね定数を程度な範囲に設定することで温度や経時的な変化による支持シート14の伸縮の影響が軽減され支持シート14のテンションの変動が抑制される。なお、第1及び第4実施形態においてもテンション調整機構が弾性部材を介して支持シート14にテンションを付与するようにしてもよい。
【0065】
また、第1~第6実施形態において、テンション調整機構は支持シートのテンションを連続的に無段階で調整可能であるが、テンション調整機構は例えば公知のノッチ機構を備え、支持シートのテンションを段階的に調整可能な構成であってもよい。
【0066】
また、第1~第6実施形態において支持シート14の一端が治具枠部12に直接取付けられているが、支持シートの一端は治具枠部に取付けられた他の部材に取付けられていてもよい。すなわち支持シートの一端は他の部材を介して間接的に治具枠部に取付けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、リチウムイオン電池の製造に利用できる。
【符号の説明】
【0068】
10、210、310、410、510、610 搬送治具
12 治具枠部
12A、12B、12C、12D 辺
14 支持シート
16 被搬送物
28 集電体
30 枠体
32 電極組成物
34 セパレータ
50、250、350、450、550、650 テンション調整機構
100 リチウムイオン電池の製造装置
102 テンション調整実行装置
104 被搬送物処理装置
110 配置装置(被搬送物処理装置)
120 ローラー押し付け装置(被搬送物処理装置)
130 電極組成物供給装置(被搬送物処理装置)
140 プレス装置(被搬送物処理装置)
150 積層装置(被搬送物処理装置)
160 脱気装置(被搬送物処理装置)
170 溶着装置(被搬送物処理装置)
180 離脱装置(被搬送物処理装置)
255 弾性部材
460、660 アクチュエータ
S102 テンション調整実行工程
S104 被搬送物処理工程
S110 配置工程(被搬送物処理工程)
S120 ローラー押し付け工程(被搬送物処理工程)
S130 電極組成物供給工程(被搬送物処理工程)
S140 プレス工程(被搬送物処理工程)
S150 積層工程(被搬送物処理工程)
S160 脱気工程(被搬送物処理工程)
S170 溶着工程(被搬送物処理工程)
S180 離脱工程(被搬送物処理工程)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13
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図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21