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特開2023-151444リチウムイオン電池の製造システムおよび製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151444
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池の製造システムおよび製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20231005BHJP
   B65H 5/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H01M4/139
B65H5/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061051
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】519100310
【氏名又は名称】APB株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121430
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋田 義之
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 勇輔
【テーマコード(参考)】
3F049
5H050
【Fターム(参考)】
3F049AA02
3F049BA01
3F049BA11
3F049BA15
3F049EA00
3F049LA16
3F049LB10
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050CB20
5H050CB21
5H050CB25
5H050GA00
5H050GA28
(57)【要約】
【課題】集電体を含む被搬送物の搬送および位置合わせを容易として各処理の精度を高めることができるとともに、搬送治具の支持シートの更新が容易なリチウムイオン電池の製造システムおよび製造方法を提供する。
【解決手段】リチウムイオン電池の製造システム100は、治具枠部12、及び治具枠部12の内側の懸架領域40に架け渡された可撓性の支持シート14を有し、シート状の集電体28を含む被搬送物16を懸架領域40において支持シート14で支持して搬送するために用いられる搬送治具10と、懸架領域40の支持シート14を撮像するカメラ102A、及びカメラ102Aで得られる画像データに基づいて懸架領域40の支持シート14の継続使用の可否を判定する制御部102Bを有する検査装置102と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治具枠部、及び前記治具枠部の内側の懸架領域に架け渡された可撓性の支持シートを有し、シート状の集電体を含む被搬送物を前記懸架領域において前記支持シートで支持して搬送するために用いられる搬送治具と、
前記懸架領域の前記支持シートを撮像するカメラ、及び前記カメラで得られる画像データに基づいて前記懸架領域の前記支持シートの継続使用の可否を判定する制御部を有する検査装置と、を備えるリチウムイオン電池のシステム。
【請求項2】
請求項1において、
前記検査装置が前記支持シートの継続使用が不可能であると判定した場合に前記支持シートの更新を実行する更新実行装置をさらに備えるリチウムイオン電池の製造システム。
【請求項3】
請求項2において、
前記搬送治具は、
前記支持シートの未使用部分を前記懸架領域に供給する供給ローラーと、
前記懸架領域から前記支持シートの使用済み部分を回収する回収ローラーと、を備え、
前記更新実行装置は、搬送治具の前記回収ローラーを回転させて前記支持シートの更新を実行するように構成されたリチウムイオン電池の製造システム。
【請求項4】
請求項3において、
前記検査装置は、前記懸架領域の前記支持シートの複数の部分毎に継続使用の可否を判定し、
前記更新実行装置は、前記懸架領域の中の前記被搬送物が配置される配置領域から継続使用が不可能であると判定される部分が排除され、継続使用が可能であると判断される部分の少なくとも一部が前記懸架領域に残るように前記支持シートの更新を実行するリチウムイオン電池の製造システム。
【請求項5】
請求項3または4において、
前記搬送治具は、前記回収ローラーを駆動するアクチュエータをさらに備えるリチウムイオン電池の製造システム。
【請求項6】
請求項1に記載の検査装置が前記懸架領域の前記支持シートの継続使用の可否を判定する検査工程と、
請求項2に記載の更新実行装置が前記支持シートの更新を実行する更新実行工程と、を含むリチウムイオン電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池の製造システムおよび製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車のモータ駆動用の電源として、二次電池の開発が盛んに行われている。特許文献1には、電池用電極の製造方法として、例えば、電極活物質および導電助剤を含む粉体を用いて電極を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-129448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、ベルトコンベア状の搬送部に搬送される集電体に対して順次処理が施されて電極が製造される。しかしながら、薄いシート状の集電体を採用する場合などに、集電体を含む被搬送物の搬送および各処理装置に対する位置合わせが困難となる虞があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、集電体を含む被搬送物の搬送および位置合わせを容易として各処理の精度を高めることができるリチウムイオン電池製造用の搬送治具、これを用いたリチウムイオン電池の製造システムおよび製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者は、治具枠部と、治具枠部の内側の懸架領域に架け渡された可撓性の支持シートと、を有してなる搬送治具を用いてシート状の集電体を含む被搬送物の搬送や各処理を行うことに想到した。支持シートの上面には接着層が設けられ搬送治具に対する被搬送物の位置ずれが防止される。治具枠部は剛性が高いので集電体のような剛性が低い被搬送物よりも搬送等のハンドリングが容易である。搬送治具は繰り返し使用することが期待される。
【0007】
しかしながら、各処理によって支持シートの上面に電極組成物等が付着することがある。このような支持シートを継続して使用した場合、各処理の精度が低下したり歩留まりが低下する可能性がある。このため定期的にオペレーターが支持シートの状態を目視で検査したり、支持シートを交換する必要があった。これにより作業工数やコストが増大する可能性があった。すなわち発明者は、上記課題に加え搬送治具の支持シートの更新が容易な製造システム及び製造方法を提供するという新たな課題を見出した。そこで発明者はさらに鋭意研究の上、以下の本発明の態様に想到した。
【0008】
本発明の一態様のリチウムイオン電池の製造システムは、治具枠部、及び治具枠部の内側の懸架領域に架け渡された可撓性の支持シートを有し、シート状の集電体を含む被搬送物を懸架領域において支持シートで支持して搬送するために用いられる搬送治具と、懸架領域の支持シートを撮像するカメラ、及びカメラで得られる画像データに基づいて懸架領域の支持シートの継続使用の可否を判定する制御部を有する検査装置と、を備える。
【0009】
本発明の一態様のリチウムイオン電池の製造方法は、上述のリチウムイオン電池の製造システムの検査装置が懸架領域の支持シートの継続使用の可否を判定する検査工程と、更新実行装置が支持シートの更新を実行する更新実行工程と、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の上記の態様によれば、集電体を含む被搬送物の搬送および位置合わせを容易として各処理の精度を高めることができるとともに、搬送治具の支持シートの更新が容易なリチウムイオン電池の製造システムおよび製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係るリチウムイオン電池の製造システムを模式的に示す平面図
図2】同製造システムに備えられた搬送治具を模式的に示す斜視図
図3】同搬送治具の平面図
図4】側方から見た同搬送治具の断面図
図5】同製造システムを用いたリチウムイオン電池の製造方法を示すフローチャート
図6】同製造システムに備えられた更新実行装置による支持シートの更新前の状態を模式的に示す平面図
図7】同更新実行装置による支持シートの更新後の状態を模式的に示す平面図
図8】電極組成物供給装置(被搬送物処理装置)および電極組成物供給工程(被搬送物処理工程)を模式的に示す側方から見た断面図
図9】脱気装置(被搬送物処理装置)および脱気工程(被搬送物処理工程)を模式的に示す側方から見た断面図
図10】本発明の第2実施形態に係る搬送治具を模式的に示す斜視図
図11】本発明の第3実施形態に係る搬送治具を模式的に示す側方から見た断面図
図12】本発明の第4実施形態に係るリチウムイオン電池の製造システムを模式的に示す側方から見た断面図
図13】同製造システムに備えられた搬送治具を模式的に示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施形態]
図1に示されるように、本発明の第1実施形態に係るリチウムイオン電池の製造システム100は、治具枠部12、及び治具枠部12の内側の懸架領域40に架け渡された可撓性の支持シート14を有し、シート状の集電体28を含む被搬送物16を懸架領域40において支持シート14で支持して搬送するために用いられる搬送治具10と、懸架領域40の支持シート14を撮像するカメラ102A、及びカメラ102Aで得られる画像データに基づいて懸架領域40の支持シート14の継続使用の可否を判定する制御部102Bを有する検査装置102と、支持シート14の継続使用が不可能であると検査装置102が判定した場合に支持シート14の更新を実行する更新実行装置104を備える。
【0013】
図2~4に示されるように、搬送治具10は、治具枠部12と、治具枠部12の内側の懸架領域40に架け渡された可撓性の支持シート14と、支持シート14の未使用部分を懸架領域40に供給する供給ローラー42と、懸架領域40から支持シート14の使用済み部分を回収する回収ローラー44と、を備える。供給ローラー42と回収ローラー44は懸架領域40の両端において支持シート14を支持している。被搬送物16は懸架領域40の中の配置領域40Aに配置される。懸架領域40は配置領域40Aよりも広い。配置領域40Aの形状は被搬送物16の形状と同じである。支持シート14の上面には接着層(図示省略)が設けられている。接着層は剥離が容易なものであることが好ましい。接着層として剥離容易なものを用いることで、被搬送物16を支持シート14から容易に離脱させることができる。接着層の材料は例えばアクリレート及びアクリレートと共重合可能なモノマーからなる共重合体である。
【0014】
治具枠部12は略矩形で対向する長辺12A、12Bと、対向する短辺12Cと、12Dで構成されている。短辺12C、12Dの幅方向(短辺12C、12Dに沿う方向)の中央の上面側には、長手方向(長辺12A、12Bに沿う方向)に沿って断面が半円形の凹溝12E、12Fが形成されている。なお、凹溝12E、12Fには脱気管(後述)が嵌合される。治具枠部12の材料は例えばアルミニウムである。
【0015】
支持シート14は帯状で一端が供給ローラー42に取付けられ、他端は回収ローラー44に取付けられている。支持シート14の幅方向の両縁と長辺12A、12Bとの間には、隙間が設けられる。支持シート14の材料は例えばポリエチレンテレフタレートである。また、支持シート14の厚さは例えば130~180μmである。
【0016】
供給ローラー42は治具枠部12の短辺12Cに沿って長辺12Aと12Bの間に配置されている。支持シート14の未使用部分が供給ローラー42に巻かれている。供給ローラー42の軸方向の中央の外周面には凹溝12Eと同様の断面形状の凹溝42Aが全周に形成されている。供給ローラー42の中心には軸部46が取り付けられている。供給ローラー42は軸部46に固定されており軸部46と一体で回転するようになっている。治具枠部12の長辺12A、12Bには軸部46が挿通する貫通孔が形成されている。軸部46は長辺12A、12Bに回転自在に支持されている。なお、軸部46はブッシュまたは軸受を介して長辺12A、12Bに回転自在に支持されていてもよい。軸部46の一端にはブレーキ48が取付けられている。ブレーキ48は常態(非通電の状態)で軸部46の回転を阻止し、通電されると軸部46を解放するように構成されている。
【0017】
回収ローラー44は治具枠部12の短辺12Dに沿って長辺12Aと12Bの間に配置されている。支持シート14の使用済み部分は回収ローラー44に巻き取られる。回収ローラー44の軸方向の中央の外周面にも凹溝12Fと同様の断面形状の凹溝44Aが全周に形成されている。回収ローラー44の中心には軸部50が取り付けられている。回収ローラー44は軸部50に固定されており軸部50と一体で回転するようになっている。治具枠部12の長辺12A、12Bには軸部50が挿通する貫通孔が形成されている。軸部46は長辺12A、12Bに回転自在に支持されている。なお、軸部50はブッシュまたは軸受を介して長辺12A、12Bに回転自在に支持されていてもよい。軸部50の一端にはブレーキ52が取付けられている。ブレーキ52は常態(非通電の状態)で軸部50の回転を阻止し、通電されると軸部50を解放するように構成されている。軸部50の他端にはトルク検知器54が取付けられている。トルク検知器54は断面が正方形または正六角形等の多角形で軸方向に突出する入力部54Aを備えている。なお、入力部は正方形または正六角形等の多角形の穴であってもよい。トルク検知器54の出力部(図示省略)は軸部50の他端と結合されている。短辺12Dにはブレーキ48、52及びトルク検知器54と電気的に接続されたコネクタ56が取付けられている。
【0018】
被搬送物16は、薄いシート状の矩形の集電体28と、集電体28の上面の外周に沿って貼り付けられた枠体30とを有してなる枠付き集電体である。集電体の幅及び長さは例えば400mm×800mmである。集電体の厚さは例えば50μmである。製造する電極が正極である場合、集電体は正極集電体である。また、製造する電極が負極である場合、集電体は負極集電体である。正極集電体の材料は、銅、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、焼成炭素、導電性高分子及び導電性ガラス等である。また、正極集電体は、導電剤と樹脂からなる樹脂集電体でもよい。負極集電体の材料は、銅、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル及びこれらの合金等の金属材料等である。負極集電体は、焼成炭素、導電性高分子及び導電性ガラス等からなる集電体でもよく、導電剤と樹脂からなる樹脂集電体であってもよい。正極集電体、負極集電体とも、樹脂集電体を構成する導電剤としては、後述する電極組成物に含まれる導電助剤と同様のものを用いることができる。
樹脂集電体を構成する樹脂は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン(PCO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂又はこれらの混合物等である。電気的安定性の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)及びポリシクロオレフィン(PCO)が好ましく、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン(PMP)がさらに好ましい。
【0019】
枠体30の幅は例えば3~20mmである。枠体30の厚さは例えば0.1~10mmである。枠体30は、融点が75~90℃のポリオレフィンを含むことが好ましい。融点が75~90℃のポリオレフィンは、分子内に極性基を有するものであってもよく、極性基を有しないものであってもよい。極性基としては、ヒドロキシ基(-OH)、カルボキシル基(-COOH)、ホルミル基(-CHO)、カルボニル基(=CO)、アミノ基(-NH2)、チオール基(-SH)、1,3-ジオキソ-3-オキシプロピレン基等が挙げられる。ポリオレフィンが極性基を有しているかどうかは、ポリオレフィンをフーリエ変換赤外分光法(FT-IR)や核磁気共鳴分光法(NMR)で分析することにより確認することができる。融点が75~90℃のポリオレフィンとしては、東ソー(株)製 メルセン(登録商標)G(融点:77℃)や三井化学(株)製 アドマーXE070(融点:84℃)等が挙げられる。東ソー(株)製 メルセン(登録商標)Gは極性基を有する樹脂の例であり、三井化学(株)製 アドマーXE070は極性基を有しない樹脂の例である。枠体30は、融点が75~90℃のポリオレフィンに加えて、非導電性フィラーを含有していてもよい。非導電性フィラーとしては、ガラス繊維等の無機繊維及びシリカ粒子等の無機粒子が挙げられる。枠体30の一部は、耐熱性環状支持部材で構成されていてもよい。枠体30の一部が耐熱性環状支持部材で構成されていると、枠体30の機械的強度及び耐熱性を向上させることができる。耐熱性環状支持部材は集電体20及びセパレータ(後述)との接着性が低いため、耐熱性環状支持部材は、枠体30の厚さ方向の中央部に配置されることが好ましい。この場合、平面視形状が互いに同一の、融点が75~90℃のポリオレフィンを含む層、耐熱性環状支持部材、融点が75~90℃のポリオレフィンを含む層が、集電体28側からこの順で配置されることが好ましい。上記構成であると、枠体30に機械的強度及び耐熱性を付与しつつ、集電体28及びセパレータとの接着性を高めることができる。耐熱性環状支持部材は、溶融温度が150℃以上である耐熱性樹脂組成物を含んでいることが望ましく、溶融温度が200℃以上である耐熱性樹脂組成物を含んでいることがより望ましい。耐熱性環状支持部材が、溶融温度が150℃以上である耐熱性樹脂組成物を含むことで、枠体30が熱に対してより変形しにくくなる。耐熱性樹脂組成物の溶融温度(単に融点ともいう)は、JIS K7121-1987に準拠して示差走査熱量測定によって測定される。耐熱性樹脂組成物を構成する樹脂としては、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂及びポリイミド等)、エンジニアリング樹脂[ポリアミド(ナイロン6 溶融温度:約230℃、ナイロン66 溶融温度:約270℃等)、ポリカーボネート(PCともいう 溶融温度:約150℃)及びポリエーテルエーテルケトン(PEEKともいう 溶融温度:約330℃)等]及び高融点熱可塑性樹脂{ポリエチレンテレフタレート(PETともいう 溶融温度:約250℃)、ポリエチレンナフタレート(PENともいう 溶融温度:約260℃)及び高融点ポリプロピレン(溶融温度:約160~170℃)等}等が挙げられる。なお、高融点熱可塑性樹脂とは、JIS K7121-1987に準拠して示差走査熱量測定によって測定される溶融温度が150℃以上の熱可塑性樹脂を指す。耐熱性樹脂組成物は、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、高融点ポリプロピレン、ポリカーボネート及びポリエーテルエーテルケトンからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含むことが望ましい。耐熱性樹脂組成物はフィラーを含んでいてもよい。耐熱性樹脂組成物がフィラーを含むことで、溶融温度を向上させることができる。上記フィラーとしては、ガラス繊維等の無機フィラー及び炭素繊維等が挙げられる。フィラーを含む耐熱性樹脂組成物としては、ガラス繊維に硬化前のエポキシ樹脂を含浸させて硬化させたもの(ガラスエポキシともいう)及び炭素繊維強化樹脂などが挙げられる。
【0020】
検査装置102のカメラ102Aは例えば定位置から懸架領域40の支持シート14全体を撮像する構成である。また、カメラ102Aは図示されない搬送装置によって移動しながら懸架領域40の支持シート14全体を撮像する構成でもよい。また、搬送治具10が移動しながらカメラ102Aが定位置において懸架領域40の支持シート14全体を撮像する構成でもよい。
検査装置102の制御部102Bはコンピューターまたはコンピューターシステムである。制御部102Bはカメラ102Aと電気的に接続されている。制御部102Bは例えば、懸架領域40の支持シート14の画像データの輝度を多数の画素毎に2値化し、この2値化データに基づいて汚染部分または異物を検出し、汚染部分または異物の個数、直径、周囲長、面積、アスペクト比等を認識する。また、制御部102Bは、懸架領域40の支持シート14の輝度を多数の画素毎に2値化し、この2値化データに基づいて支持シート14の歪みや皺、傷を検出し、支持シート14の変形の度合を認識する。なお、汚染や異物を検出するための2値化のための閾値と歪みや皺、傷を検出するための2値化のための閾値は異なっていてもよい。また、制御部102Bは例えば、懸架領域40の支持シート14の画像データのRGB等の色の要素、その比率、分布等を検出し、支持シート14の汚染、変質または劣化の度合を認識する。さらに、制御部102Bは上記のように認識した汚染や異物の数、直径、周囲長、面積、アスペクト比や、支持シートの変形の度合、支持シート14の変質または劣化の度合等と所定の判定基準とを対比し、懸架領域40の支持シート14の継続使用の可否を判定するように構成されている。なお、継続使用が不可能であるとオペレーターによって判定された多数の支持シートを教師データとして機械学習を行い、得られた学習済みデータに基づいて支持シート14の継続使用の可否を判定するように制御部102Bが構成されていてもよい。
【0021】
更新実行装置104は、ソケット104Aと、モータ104Bと、コネクタ104Cとを備えている。ソケット104A及びモータ104Bは図示されない搬送装置によって移動可能である。ソケット104Aは搬送治具10のトルク検知器54の入力部54Aに嵌合したり入力部54Aから離脱できる。コネクタ104Cも図示されない搬送装置によって移動可能である。コネクタ104Cは搬送治具10のコネクタ56と結合したりコネクタ56から離脱できる。検査装置102の制御部102Bは、モータ104B、コネクタ104C及び上記の搬送装置と電気的に接続されている。制御部102Bは、モータ104Bを回転させて支持シート14の更新を実行する。なお、支持シート14の更新を実行するためのコンピューターまたはコンピューターシステムは制御部102Bと別に設けられていてもよい。また、更新実行装置104は検査装置102から離れた場所に設置されていてもよい。
【0022】
リチウムイオン電池の製造システム100は支持シート14に配置される被搬送物16を処理する被搬送物処理装置をさらに備える。被搬送物処理装置は例えば、配置装置(図示省略)と、ローラー押し付け装置(図示省略)と、電極組成物供給装置130(図8参照)と、プレス装置(図示省略)と、積層装置(図示省略)と、脱気装置160(図9参照)と、溶着装置(図示省略)と、離脱装置(図示省略)を含む。
【0023】
次にリチウムイオン電池の製造システム100を用いたリチウムイオン電池の製造方法について説明する。図5はリチウムイオン電池の製造方法を示すフローチャートである。リチウムイオン電池の製造方法では、検査装置102が懸架領域40の支持シート14の継続使用の可否を判定する検査工程S102と、更新実行装置104が支持シート14の更新を実行する更新実行工程104と、被搬送物処理工程が実行される。被搬送物処理工程は、配置工程S110(図示省略)と、ローラー押し付け工程S120(図示省略)と、電極組成物供給工程S130(図8参照)と、プレス工程S140(図示省略)と、積層工程S150(図示省略)と、脱気工程S160(図9参照)と、溶着工程S170(図示省略)と、離脱工程S180(図示省略)とを含む。これらの工程はこの順で実行される。なお、これらの工程の前に予備工程が実行される。予備工程では集電体28の上面に枠体30が貼り付けられて枠付き集電体が得られる。枠体30は、例えば加熱によってその一部が溶融し、その後再硬化することで集電体28に貼り付けられる。なお、集電体28はシートから切り出されることにより得られる。枠体30もシートからロータリーダイカットなどによって打ち抜かれることで得られる。また、枠体30は射出成型により製造されてもよい。なお、枠体30の外周の形状は集電体28の外周の形状と一致する。
【0024】
(S102:検査工程)
検査工程ではカメラ102Aが懸架領域40の支持シート14全体を撮像する。制御部102Bはカメラ102Aで得られる画像データに基づいて懸架領域40の支持シート14の継続使用の可否を判定する。この際、制御部102Bは、支持領域40の支持シート14の複数の部分毎に継続使用の可否を判定する。制御部102Bは例えば上記の画素毎に支持シート14の継続使用の可否を判定する。また、制御部102Bは連続する複数の画素からなる部分毎に支持シート14の継続使用の可否を判定してもよい。
【0025】
(S104:更新実行工程)
制御部102Bは継続使用が不可能であると判定した場合に支持シート14の更新を実行する。具体的には、制御部102Bは更新実行装置104のソケット104Aを搬送治具10のトルク検知器54の入力部54Aに嵌合させ、コネクタ104Cを搬送治具10のコネクタ56に結合させる。そしてブレーキ48、52に通電して軸部46、50をブレーキ48、52から解放し、モータ104Bを回転させる。これにより懸架領域40の使用済みの支持シート14が回収ローラー44に巻き取られ、供給ローラー42から未使用の支持シート14が懸架領域40に供給される。なお、供給ローラー42が慣性により余剰に回転して懸架領域40に余剰の支持シート14が供給される可能性がある。このような支持シート14の余剰な供給を防止するため、ブレーキ48の通電量を制御し軸部46に所定の制動力を付与した状態でモータ104Bを回転させて回収ローラー44に使用済みの支持シート14を巻き取るようにしてもよい。
【0026】
更新実行工程において制御部102Bは、懸架領域40の中の被搬送物16が配置される配置領域40Aから継続使用が不可能であると判定される部分が排除され、継続使用が可能であると判断される部分の少なくとも一部が懸架領域40に残るように支持シート14の更新を実行する。例えば制御部102Bは継続使用が不可能であると判定される、図6に示されるような部分14Xが存在すると判定する。この場合、制御部102Bは図7に示されるように、継続使用が不可能であると判定される部分14Xが配置領域40Aから排除され、継続使用が可能であると判断される部分の少なくとも一部が懸架領域40に残るように支持シート14の更新を実行する。このようにすることで更新される支持シート14の長さが抑制されコスト低減に寄与する。
【0027】
適切な長さの支持シート14が更新されたら制御部102Bはブレーキ48の通電を停止し供給ローラー42の回転を阻止する。さらに制御部102Bはトルク検知器54が検知するトルクの信号に基づいて支持シート14のテンション(張力)を算出する。制御部102Bは支持シート14のテンションが適切な値の範囲に入るようにモータ104Bに通電する。その後、制御部102Bはブレーキ52の通電を停止し回収ローラー44の回転を阻止する。これにより支持シート14の好ましいテンションが保持される。例えば支持シート14は、被搬送物16が搭載されることにより生じる撓み量が所定の値よりも小さくなるようにテンションが保持される。被搬送物16が搭載されることによる支持シート14の下方への撓み量は、懸架領域40に架け渡された支持シート14の長さの0.5%よりも小さいことが好ましい。例えば、懸架領域40に架け渡された支持シート14の長さが1400mmの場合、被搬送物16が搭載されることによる支持シート14の下方への撓み量は7mmよりも小さいことが好ましい。
【0028】
(S110:配置工程)
配置工程では、被搬送物(枠付き集電体)16が支持シート14の上面に配置される。配置装置は、被搬送物16の枠体30に遊嵌して被搬送物16を負圧によって保持する保持器を備えている。配置装置は、保持器を移動させて被搬送物16を支持シート14の上面の所定の位置に配置するように構成されている。被搬送物16は支持シート14の上面の接着層によって支持シート14に接着される。支持シート14は可撓性を有するため、支持シート14に被搬送物16が配置される際、被搬送物16に衝撃が加わることが抑制され、被搬送物16の損傷が抑制される。
【0029】
(S120:ローラー押し付け工程)
ローラー押し付け工程では、支持シート14にローラーを当接させつつローラーを搬送治具10に対して相対的に移動させて被搬送物16及び支持シート14を加圧する。ローラー押し付け装置は、支持シート14の下面に当接する上記ローラーと、被搬送物16の上面に当接する台座部材とを備えている。台座部材は枠体30に遊嵌して集電体28の上面に当接する凸部を備えている。ローラー押し付け装置は、ローラーを移動させるように構成されている。なお、凸部は台座部材とは別体のスペーサであってもよい。また、ローラーは移動せず、搬送治具10及び被搬送物16が移動してもよい。
【0030】
(S130:電極組成物供給工程)
図8に示されるように、電極組成物供給工程では被搬送物16の枠体30の内側に電極組成物32が供給される。ここで被搬送物16は集電体28、枠体30に加えて電極組成物32を含む構成となる。電極組成物32は粉体状である。電極組成物供給装置130は、シュート132と、架台134とを備えている。架台134は支持シート14の下面に接するように搬送治具10の治具枠部12の内側に配置され支持シート14を下方から支持する。
【0031】
電極組成物32は、電極活物質および導電助剤を含む造粒粒子を有する。また、電極組成物32は、電解液、粘着剤およびイオン伝導性ポリマーなどを有していてもよい。製造する電極が正極である場合、電極活物質は正極活物質である。また、製造する電極が負極である場合、電極活物質は負極活物質である。
【0032】
正極活物質粒子は、リチウムと遷移金属との複合酸化物{遷移金属が1種である複合酸化物(LiCoO、LiNiO、LiAlMnO、LiMnO及びLiMn等)、遷移金属元素が2種である複合酸化物(例えばLiFeMnO、LiNi1-xCo、LiMn1-yCo、LiNi1/3Co1/3Al1/3及びLiNi0.8Co0.15Al0.05)及び金属元素が3種類以上である複合酸化物[例えばLiMM’M’’(M、M’及びM’’はそれぞれ異なる遷移金属元素であり、a+b+c=1を満たす。例えばLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2)等]等}、リチウム含有遷移金属リン酸塩(例えばLiFePO、LiCoPO、LiMnPO及びLiNiPO)、遷移金属酸化物(例えばMnO及びV)、遷移金属硫化物(例えばMoS及びTiS)及び導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン及びポリ-p-フェニレン及びポリビニルカルバゾール)等の粒子であり、2種以上が併用されてもよい。なお、リチウム含有遷移金属リン酸塩は、遷移金属サイトの一部を他の遷移金属で置換したものであってもよい。
【0033】
負極活物質粒子は、炭素系材料[黒鉛、難黒鉛化性炭素、アモルファス炭素、樹脂焼成体(例えばフェノール樹脂及びフラン樹脂等を焼成し炭素化したもの等)、コークス類(例えばピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークス等)及び炭素繊維等]、珪素系材料[珪素、酸化珪素(SiO)、珪素-炭素複合体(炭素粒子の表面を珪素及び/又は炭化珪素で被覆したもの、珪素粒子又は酸化珪素粒子の表面を炭素及び/又は炭化珪素で被覆したもの並びに炭化珪素等)及び珪素合金(珪素-アルミニウム合金、珪素-リチウム合金、珪素-ニッケル合金、珪素-鉄合金、珪素-チタン合金、珪素-マンガン合金、珪素-銅合金及び珪素-スズ合金等)等]、導電性高分子(例えばポリアセチレン及びポリピロール等)、金属(スズ、アルミニウム、ジルコニウム及びチタン等)、金属酸化物(チタン酸化物及びリチウム・チタン酸化物等)及び金属合金(例えばリチウム-スズ合金、リチウム-アルミニウム合金及びリチウム-アルミニウム-マンガン合金等)等及びこれらと炭素系材料との混合物等の粒子である。上記負極活物質粒子のうち、内部にリチウム又はリチウムイオンを含まないものについては、予め負極活物質粒子の一部又は全部にリチウム又はリチウムイオンを含ませるプレドープ処理を施してもよい。これらの中でも、電池容量等の観点から、炭素系材料、珪素系材料及びこれらの混合物が好ましく、炭素系材料としては、黒鉛、難黒鉛化性炭素及びアモルファス炭素がさらに好ましく、珪素系材料としては、酸化珪素及び珪素-炭素複合体がさらに好ましい。
【0034】
電極活物質粒子の平均粒子径は、5~200μmであることが好ましい。電極活物質粒子の平均粒子径は、マイクロトラック法(レーザー回折・散乱法)によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径(Dv50)を意味する。マイクロトラック法とは、レーザー光を粒子に照射することによって得られる散乱光を利用して粒度分布を求める方法である。なお、体積平均粒子径の測定には、レーザー回折・散乱式の粒子径分布測定装置[マイクロトラック・ベル(株)製のマイクロトラック等]を用いることができる。
【0035】
電極活物質粒子は、その表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆層により被覆された被覆活物質粒子であってもよい。電極活物質粒子の周囲が被覆層で被覆されていると、電極の体積変化が緩和され、電極の膨張を抑制することができる。なお、電極活物質粒子として正極活物質粒子を使用した場合の被覆活物質粒子を被覆正極活物質粒子といい、電極活物質粒子として負極活物質粒子を使用した場合の被覆活物質粒子を被覆負極活物質粒子という。被覆層を構成する高分子化合物(被覆用高分子化合物ともいう)としては、特開2017-054703号公報に非水系二次電池活物質被覆用樹脂として記載されたものを好適に用いることができる。被覆層は、必要に応じて、後述する導電助剤を含んでいてもよい。
【0036】
電極活物質層(枠体30の内側に供給された電極組成物32で形成される層)に含まれる被覆用高分子化合物の重量割合は、電極活物質層の重量を基準として、0.1~10重量%であることが好ましい。電極活物質層に含まれる被覆用高分子化合物の含有量が、電極活物質層の重量を基準として0.1重量%未満であると、電極活物質層に含まれる被覆用高分子化合物の含有量が少なすぎて、電極割れが生じたり、成形性が低下してしまうことがある。一方、電極活物質層に含まれる被覆用高分子化合物の含有量が、電極活物質層の重量を基準として10重量%を超える場合には、電極活物質層に含まれる被覆用高分子化合物の含有量が多すぎて、電気抵抗を増加させてしまうことがある。電極活物質層に含まれる電極活物質粒子の重量割合は、電極活物質層の重量を基準として70~95重量%であることが好ましい。なお、電極活物質粒子が被覆活物質粒子である場合、被覆活物質粒子を構成する被覆層は、電極活物質粒子の重量に含めないものとする。
【0037】
電極活物質層は、電極活物質粒子以外に、導電助剤、溶液乾燥型の公知の電極用バインダ(結着剤ともいう)及び粘着性樹脂を含有していてもよい。また、リチウムイオン電池の製造に用いられる非水電解液を構成する電解質や溶媒等を含有していてもよい。ただし、電極活物質層は、公知の電極用バインダを含有していないことが好ましい。
【0038】
導電助剤は、導電性を有する材料から選択される。具体的には、金属[ニッケル、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、銅及びチタン等]、カーボン[グラファイト及びカーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)等]、及びこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
これらの導電助剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金又は金属酸化物を用いてもよい。電気的安定性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン、銀、銅、チタン及びこれらの混合物であり、より好ましくは銀、アルミニウム、ステンレス及びカーボンであり、さらに好ましくはカーボンである。またこれらの導電助剤としては、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料(上記した導電助剤の材料のうち金属のもの)をめっき等でコーティングしたものでもよい。
【0039】
導電助剤の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、電池の電気特性の観点から、0.01~10μmであることが好ましく、0.02~5μmであることがより好ましく、0.03~1μmであることがさらに好ましい。なお、本明細書中において、「粒子径」とは、導電助剤の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)等の観察手段を用い、数~数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。
【0040】
導電助剤の形状(形態)は、粒子形態に限られず、粒子形態以外の形態であってもよく、カーボンナノチューブ等、いわゆるフィラー系導電性材料として実用化されている形態であってもよい。
【0041】
導電助剤は、その形状が繊維状である導電性繊維であってもよい。
導電性繊維としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、ステンレス鋼のような金属を繊維化した金属繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、有機物繊維の表面を導電性物質を含む樹脂で被覆した導電性繊維等が挙げられる。これらの導電性繊維の中では炭素繊維が好ましい。また、グラフェンを練りこんだポリプロピレン樹脂も好ましい。
導電助剤が導電性繊維である場合、その平均繊維径は0.1~20μmであることが好ましい。電極活物質層に含まれる導電助剤の重量割合は、電極活物質層の重量を基準として0~5重量%であることが好ましい。
【0042】
溶液乾燥型の公知の電極用バインダとしては、デンプン、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)等が挙げられる。
ただし、公知の電極用バインダの含有量は、電極活物質層全体の重量を基準として、2.0重量%以下であることが好ましい。
電極活物質層に含まれる公知の電極用バインダの重量割合は、電極活物質層の重量を基準として0~2重量%であることが好ましく、0~0.5重量%であることがより好ましい。
【0043】
電極活物質層は、公知の電極用バインダではなく、粘着性樹脂を含むことが好ましい。電極活物質層が上記溶液乾燥型の公知の電極用バインダを含む場合には、圧縮成形体を形成した後に乾燥工程を行うことで一体化する必要があるが、粘着性樹脂を含む場合には、乾燥工程を行うことなく常温において僅かな圧力で電極活物質層を一体化することができる。乾燥工程を行わない場合、加熱による圧縮成形体の収縮や亀裂の発生がおこらないため好ましい。
【0044】
なお、溶液乾燥型の電極用バインダは、溶媒成分を揮発させることで乾燥、固体化して電極活物質粒子同士を強固に固定するものを意味する。一方、粘着性樹脂は、粘着性(水、溶媒、熱等を使用せずに僅かな圧力を加えることで接着する性質)を有する樹脂を意味する。
溶液乾燥型の電極用バインダと粘着性樹脂とは異なる材料である。
【0045】
粘着性樹脂としては、被覆層を構成する高分子化合物(特開2017-054703号公報に記載された非水系二次電池活物質被覆用樹脂等)に少量の有機溶剤を混合してそのガラス転移温度を室温以下に調整したもの、及び、特開平10-255805公報等に粘着剤として記載されたものを好適に用いることができる。
電極活物質層に含まれる粘着性樹脂の重量割合は、電極活物質層の重量を基準として0~2重量%であることが好ましい。
電極活物質層に含まれる樹脂成分(被覆用高分子化合物、電極用バインダ及び粘着性樹脂)の合計重量の割合は、0.1~10重量%であることが好ましい。
【0046】
電解質としては、公知の非水電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF及びLiClO等の無機酸のリチウム塩、LiN(CFSO、LiN(CSO及びLiC(CFSO等の有機酸のリチウム塩等が挙げられる。これらの内、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのはLiPFである。
溶媒としては、公知の非水電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、ラクトン化合物、環状又は鎖状カーボネート、鎖状カルボン酸エステル、環状又は鎖状エーテル、リン酸エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン、スルホラン等及びこれらの混合物を用いることができる。
【0047】
電極活物質層の厚さは、枠体30の厚さ以上であることが好ましい。枠体30の厚さに対する電極活物質層の厚さの割合は、100%~200%であることが好ましく、100~150%であることが好ましく、110~130%であることがより好ましい。
【0048】
(S140:プレス工程)
プレス工程では被搬送物16の枠体30の内側の電極組成物32が圧縮され電極活物質層が形成される。電極組成物32を圧縮することで、電極活物質層を緻密化させるとともに厚さを均一にすることができる。プレス装置は、一対の加圧ローラーを備えている。一方の加圧ローラーは被搬送物16の上側に位置し、他方の加圧ローラーは支持シート14の下側に位置する。一対の加圧ローラーは、被搬送物16の電極組成物32を上下方向から挟み込むようにして加圧する。加圧装置は、一対の加圧ローラーを移動させるように構成されている。なお、一対の加圧ローラーは移動しないで搬送治具10及び被搬送物16が移動してもよい。
【0049】
以上の工程を経て、搬送治具10の上側に正極または負極の電極が形成される。なお、プレス工程の後には、電極活物質層の厚さを測定し品質を評価する工程を行うことが好ましい。各工程(特に、電極組成物供給工程およびプレス工程)が、搬送治具10の上側で行われるので、工程間の仕掛品の搬送が容易となるとともに、仕掛品の損傷を抑制できる。また、各工程を行う処理装置に対して、搬送治具10を位置合わせすることで、仕掛品を処理装置に対して位置合わせすることができる。このため、各処理の精度を高めることができる。
【0050】
(S150:積層工程)
積層工程では2つの被搬送物16が搬送治具10に保持された状態でセパレータ34を介して積層される。なお、一方の被搬送物16は正極電極であり、他方の被搬送物16は負極電極である。積層装置は、一方の搬送治具10を保持する第1の搬送治具保持器と、他方の搬送治具10を保持する第2の搬送治具保持器と、セパレータ34を保持するセパレータ保持器とを備えている。第1及び第2の搬送治具保持器は、搬送治具10を例えば挟持または係止して移送可能である。セパレータ保持器はセパレータ34を例えば負圧により保持して移送し、下側の被搬送物16の上にセパレータ34を配置可能である。搬送治具10を介して被搬送物16をハンドリングできるので、被搬送物16の損傷を抑制できる。また、2つの搬送治具10同士を位置合わせすることで、容易に被搬送物(正極電極及び負極電極)16同士を位置合わせすることができる。なお、積層工程では2つの搬送治具10の凹溝12E、12F、42A、44Aに後述する脱気装置160の脱気管162を嵌合させる。
【0051】
(S160:脱気工程)
図9に示されるように、脱気工程では積層された2つの被搬送物16の内部の空気が抜かれる。脱気装置160は、上述の脱気管162と、開閉弁164と、脱気管162に接続された真空ポンプ(図示省略)とを備えている。脱気管162の先端は2つの搬送治具10の支持シート14の間に配置される。真空ポンプを作動させ開閉弁164を開けることにより2つの搬送治具10の支持シート14の間の空気が抜かれる。これにより、積層された2つの被搬送物(正極電極及び負極電極)16の内部の空気が抜かれる。支持シート14は積層された2つの被搬送物16を包むように被搬送物16に密着する。積層された2つの被搬送物16の内部の空気が抜かれた状態で、脱気管162の開閉弁164が閉められる。これにより、積層された2つの被搬送物(電極)16の内部の空気が抜かれた状態が保持される。次工程の溶着工程S170は、開閉弁164が閉められて負圧が保持された状態で行われる。開閉弁164を閉めることで、脱気管162と真空ポンプとの接続を解除することができ、工程間の搬送が容易となる。
【0052】
(S170:溶着工程)
溶着工程では2つの被搬送物16の枠体30が溶着される。溶着装置は、枠体30と略同形状の枠状の一対の基部と、各基部の先端に取付けられた枠状の発熱体とを備えている。発熱体は、搬送治具10の支持シート14を介して枠体30を加熱する。これにより、枠体30は溶融する。その後、発熱体を支持シート14から離間させると枠体30は冷却され硬化する。これにより、2つの被搬送物(正極電極及び負極電極)16の枠体30が溶着し一体化する。なお、溶着装置は、枠状の基部及び発熱体に代えて2つのコ字形状の部材に分割された基部及び発熱体を備える構成でもよい。また、溶着装置は、線状(棒状)の1つまたは複数の基部及び発熱体を備える構成であり、枠体30の各辺を順次熱溶着してもよい。以上の工程によって、正極電極である一方の被搬送物16と、負極電極である一方の被搬送物16とが一体化された単セルが得られる。
【0053】
(S180:離脱工程)
離脱工程では2つの搬送治具10から単セルが離脱されて取り出される。離脱装置は、一方の搬送治具10を保持する第1の搬送治具保持器と、他方の搬送治具10を保持する第2の搬送治具保持器と、単セルを保持する単セル保持器とを備えている。第1及び第2の搬送治具保持器は、搬送治具10を例えば挟持または係止してこれらを分離可能である。支持シート14は単セルから剥離される。短辺12D側から支持シート14が単セル40から剥離されるのに伴って、単セル保持器は剥離された支持シート14と単セルとの間に進入するようになっている。支持シート14が単セルの全面から剥離されると、単セル保持器は単セルを挟んで搬出する。
【0054】
検査工程S102は、例えば以上の一連の被搬送物処理工程が所定の回数(一例として100回)実行される毎に実行される。また、検査工程S102は、一連の被搬送物処理工程が1回実行される毎に実行されてもよい。なお、支持シート14の配置領域40Aまたは懸架領域40の部分に継続使用が不可能であると判定される部分が認められない場合は更新実行工程S104は実行されずに搬送治具10が継続して使用される。
【0055】
以上のようにリチウムイオン電池の製造システム100は、検査装置102と更新実行装置104を備え、懸架領域40の支持シート14を自動的に更新可能である。したがって、常に良好な状態の支持シート14で被搬送物16を支持して上記のような各処理工程を実行することができる。したがって、被搬送物16の位置ずれが生じにくく各処理の精度の向上に寄与する。また、供給ローラー42及び回収ローラー44による支持シート14の更新は支持シートの交換よりも容易であり、作業工数やコストの軽減に寄与する。さらに上記のように制御部102Bは、継続使用が不可能であると判定される部分が配置領域40から排除され、継続使用が可能であると判断される部分の少なくとも一部が懸架領域40に残るように支持シート14の更新を実行するので更新される支持シート14の長さが抑制され、この点でもコスト低減に寄与する。
【0056】
[第2実施形態]
図10に示されるように、第2実施形態の搬送治具210は回収ローラー44を駆動するアクチュエータ212を備える。アクチュエータ212は電動モータ等である。アクチュエータ212の出力部はトルク検知器54の入力部と係合している(図示省略)。コネクタ56はアクチュエータ212にも電気的に接続されている。制御部102Bはアクチュエータ212への通電を制御する。他の構成は第1実施形態と同じである。第1実施形態と同じ構成要素については第1実施形態と同じ符号を付することとして説明を省略する。
【0057】
第2実施形態の搬送治具210はアクチュエータ212を備えているので搬送治具210に対応する更新実行装置は機械的な構成要素を備えていなくてよい。したがって、更新実行装置の構成がシンプルである。
【0058】
[第3実施形態]
図11に示されるように、第3実施形態の搬送治具310は懸架領域40の両端において支持シート14を支持し支持シート14の更新において支持シート14を案内するガイド部材322、324を備えている。供給ローラー342はガイド部材322の下方に設置されている。回収ローラー344はガイド部材324の下方に設置されている。ガイド部材322は供給ローラー42と同様の形状であり、軸方向の中央の外周面には凹溝42Aと同様の断面形状の凹溝322Aが全周に形成されている。ガイド部材322の中心には軸部326が取り付けられている。ガイド部材322は軸部326に固定されており軸部326と一体で回転するようになっている。ガイド部材324は回収ローラー44と同様の形状であり、軸方向の中央の外周面には凹溝44Aと同様の断面形状の凹溝324Aが全周に形成されている。ガイド部材324の中心には軸部328が取り付けられている。ガイド部材324は軸部328に固定されており軸部328と一体で回転するようになっている。なお、ガイド部材322、324は軸部326、328に回転自在に支持されていてもよい。
【0059】
供給ローラー342は供給ローラー42と同様の形状である。なお、供給ローラー342の軸方向の中央の外周面に凹溝は形成されていない。供給ローラー342の中心には軸部346が取り付けられている。供給ローラー342は軸部346に固定されており軸部346と一体で回転するようになっている。軸部346の一端にはブレーキ48が設置されている。
【0060】
回収ローラー344は回収ローラー44と同様の形状である。なお、回収ローラー344の軸方向の中央の外周面に凹溝は形成されていない。回収ローラー344の中心には軸部350が取り付けられている。回収ローラー344は軸部350に固定されており軸部350と一体で回転するようになっている。軸部350の一端にはブレーキ52が設置され、他端にはトルク検知器54が設置されている。軸部350の他端にはアクチュエータ212も設置されていてもよい。
【0061】
治具枠部312はガイド部材322、324、供給ローラー342及び回収ローラー344に対応して治具枠部12よりも高さが高い。短辺312C、312Dの幅方向(短辺312C、312Dに沿う方向)の中央の上面側には、凹溝12E、12Fと同様の凹溝312E、312Fが形成されている。他の構成は第1及び第2実施形態と同じである。第1及び第2実施形態と同じ構成要素については第2実施形態と同じ符号を付することとして説明を省略する。
【0062】
第1及び第2実施形態では支持シート14の供給に伴って供給ローラー42の外径が減少し、回収ローラー44の外径は増大する。したがって、支持シート14の供給に伴って治具枠部12の上面に対する懸架領域40の支持シート14の角度が徐々に変化する。これに対し第3実施形態では懸架領域40の両端において支持シート14を支持し支持シート14の更新において支持シート14を案内するガイド部材322、324を備え、供給ローラー342及び回収ローラー344はガイド部材322及びガイド部材324の下方に設置されているので、支持シート14の供給に伴って治具枠部312の上面に対する懸架領域40の支持シート14の角度が変化することがない。なお、ガイド部材は固定された円柱または円筒体であってもよい。また、支持シート14を滑らかに案内できれば、ガイド部材は断面が円形以外の固定された棒状体であってもよい。
【0063】
なお、第1~第3実施形態において制御部102Bは、懸架領域40の中の被搬送物16が配置される配置領域40から継続使用が不可能であると判定される部分が排除され、継続使用が可能であると判断される部分の少なくとも一部が懸架領域40に残るように支持シート14の更新を実行するが、制御部102Bは、継続使用が不可能であると判定される部分が懸架領域40から排除され、継続使用が可能であると判断される部分の少なくとも一部が懸架領域40に残るように支持シート14の更新を実行してもよい。また、制御部102Bは、支持シート14の懸架領域40の全ての部分が更新されるように支持シート14の更新を実行してもよい。このように継続使用が不可能であると判定される部分が配置領域40から排除されるだけでなく懸架領域40からも排除されるようにすることで懸架領域40の支持シート14を良好な状態に保すことができ、被搬送物16を良好な姿勢で確実に支持することができる。
【0064】
[第4実施形態]
図12に示されるように、第4実施形態のリチウムイオン電池の製造システム400の更新実行装置404は、未使用の支持シート14を搬送治具410の懸架領域40に供給する供給ローラー442と、懸架領域40から使用済みの支持シート14を回収する回収ローラー444と、支持シート14の端部を挟持して図示しない搬送装置によって移動可能である挟持装置446と、ストッパ着脱装置452、454とを備える。なお、搬送治具410は供給ローラー及び回収ローラーを備えていない。搬送治具410の治具枠部12の短辺12C、12Dの下面部には幅方向(短辺12C、12Dに沿う方向)に沿って溝が形成されている。搬送治具410はこれらの溝に嵌合するストッパ412A、412Bを備えている。ストッパ412A、412Bは棒状で図13に示されるように両端部が短辺12C、12Dの両端から突出している。ストッパ412Aは短辺12Cとともに支持シート14の一方の端部を挟んで短辺12Cの溝部に嵌合している。ストッパ412Bは短辺12Dとともに支持シート14の他方の端部を挟んで短辺12Dの溝部に嵌合している。ストッパ着脱装置452はストッパ412Aの両端部を把持して図示しない搬送装置によって移動することにより、ストッパ412Aを短辺12Cの溝部に嵌合させることができる。またストッパ着脱装置452は、ストッパ412Aを短辺12Cの溝部から離脱させることも可能である。ストッパ着脱装置454はストッパ412Bの両端部を把持して図示しない搬送装置によって移動することにより、ストッパ412Bを短辺12Dの溝部に嵌合させることができる。また、ストッパ着脱装置454はストッパ412Bを短辺12Dの溝部から離脱させることも可能である。他の構成は第1~第3実施形態と同じである。同じ構成については第1~第3実施形態と同じ符号を付することとして説明を省略する。
【0065】
搬送治具410の支持シート14を更新するときは、まずストッパ着脱装置452、454がストッパ412A、412Bを搬送治具410から離脱させる。挟持装置446は支持シート14の端部を挟持して回収ローラー444の外周に係止し、回収ローラー444が回転して使用済みの支持シート14を回収する。なお、使用済みの支持シート14は図示しない回収ボックスなどに投入されてもよい。
【0066】
次に、挟持装置446は供給ローラー442の未使用の支持シート14の端部を挟持して搬送治具410の上面を覆うように引き出す。さらに挟持装置446は治具枠部12の短辺12Dで支持シート14を下方に折り返し短辺12Dの下面に当接または近接させる。この状態でストッパ着脱装置454がストッパ412Bを短辺12Dの溝部に嵌合させる。ここで支持シート14は供給ローラー442の近傍で図示しないカッタにより切断される。次に挟持装置446はこの切断された端部を挟持し、治具枠部12の短辺12Cで支持シート14を下方に折り返し短辺12Cの下面に当接または近接させる。この際、挟持装置446は第1~第3実施形態と同様に支持シート14に所定のテンションを付与する。この状態でストッパ着脱装置452がストッパ412Aを短辺12Cの溝部に嵌合させる。これにより搬送治具410の支持シート14の更新が完了する。第4実施形態の搬送治具410は供給ローラー及び回収ローラーを備えていないので構成がシンプルでありコスト低減に寄与する。なお、支持シート14を確実に固定できれば支持シートを搬送治具410に取付ける手段は上記のストッパ412A、412Bに限定されない。また、未使用の支持シート14を搬送治具410に張り掛けたり、使用済みの支持シート14を搬送治具410から取外す手段も上記の挟持装置446に限定されない。
【0067】
なお、第1~第4実施形態においてリチウムイオン電池の製造システム100、400は検査装置102に加え更新実行装置104、404を備えているが、リチウムイオン電池の製造システムは検査装置を備え更新実行装置は備えていない構成であってもよい。検査装置は例えばディスプレイの表示、警告灯、警告音等によって支持シート14の更新が必要であることをオペレーターに知らせる。この場合、支持シート14の更新作業は人手によって行われるが、検査装置が懸架領域の支持シートの継続使用の可否を自動的に判定するので、オペレーターは支持シートの監視作業から解放される。したがって、作業負担の軽減に寄与する。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、リチウムイオン電池の製造に利用できる。
【符号の説明】
【0069】
10、210、310 搬送治具
12 治具枠部
12A、12B、12C、12D 辺
14 支持シート
16 被搬送物
28 集電体
30 枠体
32 電極組成物
34 セパレータ
40 懸架領域
40A 配置領域
42、342 供給ローラー
44、344 回収ローラー
100、400 リチウムイオン電池の製造システム
102 検査装置
102A カメラ
102B 制御部
104、404 更新実行装置
130 電極組成物供給装置(被搬送物処理装置)
160 脱気装置(被搬送物処理装置)
212 アクチュエータ
322、324 ガイド部材
S130 電極組成物供給工程(被搬送物処理工程)
S160 脱気工程(被搬送物処理工程)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13