(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151449
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】ロータの製造方法、およびロータ
(51)【国際特許分類】
H02K 15/02 20060101AFI20231005BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20231005BHJP
H02K 1/32 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H02K15/02 E
H02K9/19 B
H02K1/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061058
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】松田 和敏
(72)【発明者】
【氏名】本田 武
【テーマコード(参考)】
5H601
5H609
5H615
【Fターム(参考)】
5H601AA09
5H601AA16
5H601BB20
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD18
5H601DD25
5H601DD30
5H601DD32
5H601DD42
5H601DD47
5H601EE18
5H601EE20
5H601EE26
5H601GA02
5H601GA15
5H601GA22
5H601GA24
5H601GA32
5H601GC03
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5H601GC25
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5H601JJ05
5H601KK02
5H601KK08
5H601KK12
5H601KK13
5H601KK21
5H601KK22
5H609BB12
5H609BB19
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5H609PP06
5H609PP07
5H609PP08
5H609PP09
5H609QQ05
5H609QQ09
5H609QQ16
5H609QQ17
5H609RR37
5H609RR42
5H609RR43
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5H609RR48
5H609RR52
5H615AA01
5H615BB07
5H615BB14
5H615PP02
5H615SS03
5H615SS05
5H615SS09
5H615SS16
5H615SS18
5H615SS19
5H615SS20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ロータの製造コストを低減できるロータの製造方法、およびロータを提供する。
【解決手段】ロータは、中心軸Jを中心として軸方向に延びるシャフト31と、軸方向に並ぶ複数層の第1プレート32Aからなる複数のコアピース部36を有し,シャフトの外周面に固定されたロータコア32と、軸方向に隣り合うロータコア同士の間に配置されシャフトを囲み、軸方向に並ぶ複数層の第2プレート50Aからなるスペーサコア50と、を備える。モータに設けられるロータを製造するロータの製造方法であって、共通の電磁鋼板から、コアピース部の前記第1プレートとスペーサコアの第2プレートとを打ち抜く工程と、軸方向に隣り合うコアピース部同士の間にスペーサコアが介在する順で積層する工程と、積層した複数のプレート同士を軸方向に密接させる工程と、を有する。第2プレートを打ち抜く電磁鋼板は、第1プレートを打ち抜く前記電磁鋼板である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸線を中心として軸方向に延びるシャフトと、
軸方向に並ぶ複数層の第1プレートからなる複数のコアピース部を有し前記シャフトの外周面に固定されたロータコアと、
軸方向に隣り合う前記ロータコア同士の間に配置され前記シャフトを囲み、軸方向に並ぶ複数層の第2プレートからなるスペーサコアと、を備え、モータに設けられるロータを製造するロータの製造方法であって、
共通の電磁鋼板から、前記コアピース部の前記第1プレートと前記スペーサコアの前記第2プレートとを打ち抜く工程と、
軸方向に隣り合う前記コアピース部同士の間に前記スペーサコアが介在する順で積層する工程と、
積層した複数のプレート同士を軸方向に密接させる工程と、を有し、
前記第2プレートを打ち抜く電磁鋼板は、前記第1プレートを打ち抜く前記電磁鋼板である、
ロータの製造方法。
【請求項2】
前記複数のプレート同士を軸方向に接合する、
請求項1に記載のロータの製造方法。
【請求項3】
前記複数のプレート同士を軸方向に接着剤により接着する、
請求項2に記載のロータの製造方法。
【請求項4】
前記複数のプレート同士を軸方向にカシメにより接合する、
請求項2に記載のロータの製造方法。
【請求項5】
前記スペーサコアの軸方向両側に設けられる前記コアピース部のうちいずれか一方のコアピース部と、前記スペーサコアと、を接合した後、前記スペーサコアに対して他方の前記コアピース部を接合する、
請求項2~4の何れか一項に記載のロータの製造方法。
【請求項6】
前記複数のプレート同士は、周方向に均等な位置で接合部により接合されている、
請求項2~5の何れか一項に記載のロータの製造方法。
【請求項7】
前記複数のプレート同士は、周方向に4箇所以上で接合されている、
請求項6に記載のロータの製造方法。
【請求項8】
前記第2プレートは、前記第1プレートの直径よりも小径である、
請求項1~7の何れか一項に記載のロータの製造方法。
【請求項9】
前記複数のプレート同士を、軸方向で互いに近接する方向にねじ部材を締め込むことで密接する、
請求項1~8の何れか一項に記載のロータの製造方法。
【請求項10】
前記ロータコアは、それぞれマグネットが配置される複数のマグネット穴部を有し、
前記スペーサコアは、全ての前記マグネット穴部に対し開口の少なくとも一部を覆う、
請求項1~9の何れか一項に記載のロータの製造方法。
【請求項11】
前記複数のプレート同士は、軸方向にカシメることで嵌合され、周方向に位置決めされている、
請求項1~10の何れか一項に記載のロータの製造方法。
【請求項12】
前記複数のプレート同士を軸方向に密着した後に、前記ロータコア及び前記スペーサコアそれぞれのコア部に前記シャフトを挿入する、
請求項1~11の何れか一項に記載のロータの製造方法。
【請求項13】
請求項1~12の何れか一項に記載のロータの製造方法によって製造されたロータであって、
前記ロータコアを構成する前記第1プレートと前記スペーサコアを構成する前記第2プレートとが同材料の電磁鋼板からなる、
ロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータの製造方法、およびロータに関する。
【背景技術】
【0002】
ロータシャフトに、冷媒が供給される冷媒流路と、冷媒をロータコアに供給する冷媒供給部とが設けられた回転電機が知られている。例えば、特許文献1には、ロータシャフトの冷媒供給部とロータコアの内部を軸方向に延びる複数のコア内流路とを接続する接続流路が設けられ絶縁材料を使用した冷媒分配プレートであるスペーサコアを備える回転電機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような回転電機では、スペーサコアに例えばステンレス、アルミニウム合金などの非磁性体の金属材料が使用されるため、製造時において電磁鋼板からなるロータコアとは別のプレス機を使用して製造する必要があり、製造コストが増大するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、ロータの製造コストを低減できるロータの製造方法、およびロータを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様は、中心軸線を中心として軸方向に延びるシャフトと、軸方向に並ぶ複数層の第1プレートからなる複数のコアピース部を有し前記シャフトの外周面に固定されたロータコアと、軸方向に隣り合う前記ロータコア同士の間に配置され前記シャフトを囲み、軸方向に並ぶ複数層の第2プレートからなるスペーサコアと、を備える。モータに設けられるロータを製造するロータの製造方法であって、共通の電磁鋼板から、前記コアピース部の前記第1プレートと前記スペーサコアの前記第2プレートとを打ち抜く工程と、軸方向に隣り合う前記コアピース部同士の間に前記スペーサコアが介在する順で積層する工程と、積層した複数のプレート同士を軸方向に密接させる工程と、を有する。前記第2プレートを打ち抜く電磁鋼板は、前記第1プレートを打ち抜く前記電磁鋼板である。
【0007】
本発明のロータの一つの態様は、上記のロータの製造方法によって製造されたロータであって、前記ロータコアを構成する前記第1プレートと前記スペーサコアを構成する前記第2プレートとが同材料の電磁鋼板からなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの態様によれば、ロータの製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態の駆動装置を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態のロータを示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態のロータを示す断面図であって、
図2におけるIII-III断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態のロータの一部を示す断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態のシャフトの一部およびスペーサコアを示す斜視図である。
【
図6】
図6は、実施形態のスペーサコアの溶着部を示す断面図である。
【
図7】
図7は、実施形態のスペーサコアに設けたカシメ部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明では、実施形態の駆動装置が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合の位置関係を基に、鉛直方向を規定して説明する。つまり、以下の実施形態において説明する鉛直方向に関する相対位置関係は、駆動装置が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合に少なくとも満たしていればよい。
【0011】
図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、鉛直方向である。+Z側は、鉛直方向上側であり、-Z側は、鉛直方向下側である。以下の説明では、鉛直方向上側を単に「上側」と呼び、鉛直方向下側を単に「下側」と呼ぶ。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であって駆動装置が搭載される車両の前後方向である。以下の実施形態において、+X側は、車両における前側であり、-X側は、車両における後側である。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向であって、車両の左右方向、すなわち車幅方向である。以下の実施形態において、+Y側は、車両における左側であり、-Y側は、車両における右側である。前後方向および左右方向は、鉛直方向と直交する水平方向である。
【0012】
なお、前後方向の位置関係は、以下の実施形態の位置関係に限られず、+X側が車両の後側であり、-X側が車両の前側であってもよい。この場合には、+Y側は、車両の右側であり、-Y側は、車両の左側である。また、本明細書において、「平行な方向」は略平行な方向も含み、「直交する方向」は略直交する方向も含む。
【0013】
適宜図に示す中心軸Jは、鉛直方向と交差する方向に延びる仮想軸である。より詳細には、中心軸Jは、鉛直方向と直交するY軸方向、つまり車両の左右方向に延びている。以下の説明においては、特に断りのない限り、中心軸Jに平行な方向を単に「軸方向」と呼び、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向、つまり中心軸Jの軸回りを単に「周方向」と呼ぶ。
【0014】
なお、以下の実施形態において、左側(+Y側)は「軸方向一方側」に相当し、右側(-Y側)は「軸方向他方側」に相当する。
【0015】
図1に示す本実施形態の駆動装置100は、車両に搭載され、車軸64を回転させる駆動装置である。駆動装置100が搭載される車両は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)などのモータを動力源とする車両である。
図1に示すように、駆動装置100は、回転電機10と、ハウジング80と、ギヤ機構60と、流路90と、を備える。回転電機10は、中心軸Jを中心として回転可能なロータ30と、ロータ30の径方向外側に位置するステータ40と、を備える。
回転電機10の上記以外の構成については、後述する。
【0016】
ハウジング80は、回転電機10およびギヤ機構60を収容する。ハウジング80は、モータハウジング81と、ギヤハウジング82と、を有する。モータハウジング81は、ロータ30およびステータ40を内部に収容するハウジングである。モータハウジング81は、ギヤハウジング82の右側に繋がっている。モータハウジング81は、周壁部81aと、隔壁部81bと、蓋部81cと、を有する。周壁部81aと隔壁部81bとは、例えば、同一の単一部材の一部である。蓋部81cは、例えば、周壁部81aおよび隔壁部81bとは別体である。
【0017】
周壁部81aは、中心軸Jを囲み、右側に開口する筒状である。隔壁部81bは、周壁部81aの左側の端部に繋がっている。隔壁部81bは、モータハウジング81の内部とギヤハウジング82の内部とを軸方向に隔てている。隔壁部81bは、モータハウジング81の内部とギヤハウジング82の内部とを繋ぐ隔壁開口81dを有する。隔壁部81bには、ベアリング34が保持されている。蓋部81cは、周壁部81aの右側の端部に固定されている。蓋部81cは、周壁部81aの右側の開口を塞いでいる。蓋部81cには、ベアリング35が保持されている。
【0018】
ギヤハウジング82は、ギヤ機構60の後述する減速装置62および差動装置63と、オイルOとを内部に収容している。オイルOは、ギヤハウジング82内の下部領域に貯留されている。オイルOは、後述する流路90内を循環する。オイルOは、回転電機10を冷却する冷媒として使用される。また、オイルOは、減速装置62および差動装置63に対して潤滑油として使用される。オイルOとしては、例えば、冷媒および潤滑油の機能を奏するために、比較的粘度の低いオートマチックトランスミッション用潤滑油(ATF:Automatic Transmission Fluid)と同等のオイルを用いることが好ましい。
【0019】
ギヤ機構60は、回転電機10に接続され、ロータ30の回転を車両の車軸64に伝達する。本実施形態のギヤ機構60は、回転電機10に接続される減速装置62と、減速装置62に接続される差動装置63と、を有する。差動装置63は、リングギヤ63aを有する。リングギヤ63aには、回転電機10から出力されるトルクが減速装置62を介して伝えられる。リングギヤ63aの下側の端部は、ギヤハウジング82内に貯留されたオイルOに浸漬している。リングギヤ63aが回転することで、オイルOがかき上げられる。かき上げられたオイルOは、例えば、減速装置62および差動装置63に潤滑油として供給される。
【0020】
回転電機10は、駆動装置100を駆動する部分である。回転電機10は、例えば、ギヤ機構60の右側に位置する。本実施形態において回転電機10は、モータである。回転電機10のロータ30のトルクは、ギヤ機構60に伝達される。ロータ30は、中心軸Jを中心として軸方向に延びるシャフト31と、シャフト31の外周面に固定されたロータコア32と、を有する。
図2に示すように、ロータ30は、ロータコア32に保持された複数のマグネット37と、ロータコア32の軸方向両側の端部にそれぞれ配置されたエンドプレート20、39と、スペーサコア50と、を有する。
【0021】
図1に示すように、シャフト31は、中心軸Jを中心として回転可能である。シャフト31は、ベアリング34,35によって回転可能に支持されている。本実施形態においてシャフト31は、中空シャフトである。シャフト31は、内部に冷媒としてのオイルOが流通可能な筒状である。シャフト31は、モータハウジング81の内部とギヤハウジング82の内部とに跨って延びている。シャフト31の左側の端部は、ギヤハウジング82の内部に突出している。シャフト31の左側の端部には、減速装置62が接続されている。
【0022】
シャフト31は、軸方向に延びる第1シャフト穴部33aを有する。第1シャフト穴部33aの内部は、中空シャフトであるシャフト31の内部によって構成されている。本実施形態において第1シャフト穴部33aは、シャフト31を軸方向に貫通する穴であり、軸方向両側に開口している。本実施形態において第1シャフト穴部33aは、中心軸Jを中心とする円形状の穴である。
【0023】
シャフト31は、第1シャフト穴部33aに繋がる第2シャフト穴部33bを有する。
第2シャフト穴部33bは、第1シャフト穴部33aから径方向外側に延びてシャフト31の外周面に開口する穴である。本実施形態において第2シャフト穴部33bは、円形状の穴である。
図3および
図4に示すように、第2シャフト穴部33bは、シャフト31の外周面に開口する開口部33cを有する。
図3に示すように、本実施形態において第2シャフト穴部33bは、周方向に沿って複数設けられている。複数の第2シャフト穴部33bは、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置されている。本実施形態において第2シャフト穴部33bは、8つ設けられている。各第2シャフト穴部33bの開口部33cの周方向位置は、周方向に隣り合う後述するプレート貫通孔54における周方向位置である。
【0024】
図2に示すように、ロータコア32は、軸方向に並ぶ複数のコアピース部36を有する。コアピース部36は、磁性体である。コアピース部36は、中心軸Jを中心とする筒状であり、本実施形態では円筒状である。コアピース部36の内周面は、圧入等によりシャフト31の外周面と固定される。コアピース部36とシャフト31とは、軸方向、径方向および周方向において相対移動不能に固定される。
【0025】
図示は省略するが、コアピース部36は、軸方向に重ねて配置される複数の第1プレート32Aを有する。第1プレート32Aは、電磁鋼板からなる。軸方向に積層される第1プレート32A同士は、径方向外側の外縁32aで溶着により接合されていてもよい。
【0026】
複数のコアピース部36は、複数の第1コアピース部36Aと、複数の第2コアピース部36Bと、を含む。複数の第1コアピース部36Aは、ロータコア32のうち右側(-Y側)の部分を構成している。軸方向に隣り合う第1コアピース部36A同士は、互いに接触している。複数の第2コアピース部36Bは、ロータコア32のうち左側(+Y側)の部分を構成している。軸方向に隣り合う第2コアピース部36B同士は、互いに接触している。複数の第1コアピース部36Aと複数の第2コアピース部36Bとの軸方向の間には、スペーサコア50が配置されている。本実施形態において第1コアピース部36Aと第2コアピース部36Bとは、4つずつ設けられている。
【0027】
複数の第1コアピース部36Aは、スペーサコア50から右側(-Y側)に離れるに従い周方向一方側(+θ側)にずらされて配置されている。なお、周方向一方側(+θ側)とは、周方向のうち右側(-Y側)から見て中心軸Jを中心として時計回りに進む側、すなわち
図2に示す矢印θが向く側(+θ側)である。複数の第2コアピース部36Bは、スペーサコア50から左側(+Y側)に離れるに従い周方向一方側(+θ側)にずらされて配置されている。すなわち本実施形態では、スペーサコア50の右側に並んで配置された複数の第1コアピース部36Aのステップスキューのねじれの向きと、スペーサコア50の左側に並んで配置された複数の第2コアピース部36Bのステップスキューのねじれの向きとが、互いに異なる。これにより、コギングトルクおよびトルクリプルを低減できるなどの効果が得られる。
【0028】
図3に示すように、ロータコア32は、複数のマグネット穴部36hを有する。複数のマグネット穴部36hは、例えば、ロータコア32を軸方向に貫通している。複数のマグネット穴部36hの内部には、複数のマグネット37がそれぞれ収容されている。マグネット穴部36h内におけるマグネット37の固定方法は、特に限定されない。複数のマグネット穴部36hは、一対の第1マグネット穴部36c,36dと、第2マグネット穴部36eと、を含む。
【0029】
複数のマグネット37の種類は、特に限定されない。マグネット37は、例えば、ネオジム磁石であってもよいし、フェライト磁石であってもよい。複数のマグネット37は、一対の第1マグネット穴部36c,36dにそれぞれ配置された一対の第1マグネット37c,37dと、第2マグネット穴部36eに配置された第2マグネット37eと、を含む。
【0030】
本実施形態において一対の第1マグネット穴部36c,36dと一対の第1マグネット37c,37dと第2マグネット穴部36eと第2マグネット37eとは、周方向に間隔を空けて複数ずつ設けられている。一対の第1マグネット穴部36c,36dと一対の第1マグネット37c,37dと第2マグネット穴部36eと第2マグネット37eとは、例えば、8つずつ設けられている。
【0031】
ロータ30は、周方向に間隔を空けて配置された複数の磁極部38を有する。磁極部38は、例えば、8つ設けられている。複数の磁極部38は、例えば、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置されている。複数の磁極部38は、ロータコア32の外周面における磁極がN極の磁極部38Nと、ロータコア32の外周面における磁極がS極の磁極部38Sと、を複数ずつ含む。磁極部38Nと磁極部38Sとは、例えば、4つずつ設けられている。4つの磁極部38Nと4つの磁極部38Sとは、周方向に沿って交互に配置されている。各磁極部38の構成は、ロータコア32の外周面の磁極が異なる点および周方向位置が異なる点を除いて、同様の構成である。
【0032】
磁極部38は、マグネット37と、マグネット37が配置されるマグネット穴部36hと、を有する。本実施形態において磁極部38は、一対の第1マグネット穴部36c,36dと、一対の第1マグネット37c,37dと、第2マグネット穴部36eと、第2マグネット37eと、を1つずつ有する。
【0033】
磁極部38において、一対の第1マグネット穴部36c,36dは、周方向に互いに間隔を空けて配置されている。第1マグネット穴部36cと第1マグネット穴部36dとは、磁極中心線Ldを周方向に挟んで配置されている。磁極中心線Ldは、磁極部38の周方向中心と中心軸Jとを通り、径方向に延びる仮想線である。磁極中心線Ldは、磁極部38ごとに設けられる。磁極中心線Ldは、軸方向に見て、ロータ30のd軸上を通っている。磁極中心線Ldが延びる方向は、ロータ30のd軸方向である。第1マグネット穴部36cと第1マグネット穴部36dとは、軸方向に見て、磁極中心線Ldに対して線対称に配置されている。
【0034】
一対の第1マグネット穴部36c,36dは、軸方向に見て径方向内側から径方向外側に向かうに従って互いに周方向に離れる方向に延びている。つまり、第1マグネット穴部36cと第1マグネット穴部36dとの間の周方向の距離は、径方向内側から径方向外側に向かうに従って大きくなっている。一対の第1マグネット穴部36c,36dは、軸方向に見て、径方向外側に向かうに従って周方向に広がるV字形状に沿って配置されている。一対の第1マグネット穴部36c,36dに配置された一対の第1マグネット37c,37dは、軸方向に見て、径方向外側に向かうに従って周方向に広がるV字形状に沿って配置されている。
【0035】
第2マグネット穴部36eは、一対の第1マグネット穴部36c,36dの径方向外側の端部同士の周方向の間に位置する。第2マグネット穴部36eは、例えば、軸方向に見て、径方向と直交する方向に略直線状に延びている。第2マグネット穴部36e、例えば、軸方向に見て、磁極中心線Ldと直交する方向に延びている。一対の第1マグネット穴部36c,36dと第2マグネット穴部36eとは、軸方向に見て、∇形状に沿って配置されている。一対の第1マグネット穴部36c,36dに配置された一対の第1マグネット37c,37dと第2マグネット穴部36eに配置された第2マグネット37eとは、軸方向に見て、∇形状に沿って配置されている。
【0036】
ロータコア32は、軸方向に延び周方向に間隔を空けて配置された複数のコア穴部37fを有する。複数のコア穴部37fは、軸方向に見て、それぞれ磁極間中心線Lq上に配置されている。磁極間中心線Lqは、周方向に隣り合う磁極部38同士の間における周方向中心と中心軸Jとを通り、径方向に延びる仮想線である。磁極間中心線Lqは、軸方向に見て、ロータ30のq軸上を通っている。磁極間中心線Lqが延びる方向は、ロータ30のq軸方向である。磁極間中心線Lqは、磁極部38同士の間ごとに設けられる。磁極中心線Ldが延びる方向と磁極間中心線Lqが延びる方向とは、互いに交差する方向である。磁極中心線Ldと磁極間中心線Lqとは、周方向に沿って交互に設けられる。上述したようにコア穴部37fが磁極間中心線Lq上に配置されているため、コア穴部37fの周方向位置は、周方向に隣り合う磁極部38同士の間における周方向の中心位置を含む。
【0037】
本実施形態においてコア穴部37fの周方向の寸法は、径方向外側に向かうに従って小さくなっている。本実施形態においてコア穴部37fは、軸方向に見て、角丸の略三角形状である。コア穴部37fの径方向外側部分は、周方向に隣り合う磁極部38のうち一方の磁極部38における第1マグネット穴部36cと、周方向に隣り合う磁極部38のうち他方の磁極部38における第1マグネット穴部36dとの周方向の間に位置する。コア穴部37fの径方向内側部分は、マグネット穴部36hよりも径方向内側に位置する。
【0038】
図4に示すように、コア穴部37fは、第1コア穴部37gと、第2コア穴部37hと、を含む。第1コア穴部37gは、ロータコア32のうちスペーサコア50よりも右側(-Y側)に位置する部分に設けられている。第1コア穴部37gは、スペーサコア50よりも右側に位置する複数の第1コアピース部36Aを軸方向に貫通している。第1コア穴部37gは、周方向に間隔を空けて複数配置されている。第2コア穴部37hは、ロータコア32のうちスペーサコア50よりも左側(+Y側)に位置する部分に設けられている。第2コア穴部37hは、スペーサコア50よりも左側に位置する複数の第2コアピース部36Bを軸方向に貫通している。第2コア穴部37hは、周方向に間隔を空けて複数配置されている。各第1コア穴部37gと各第2コア穴部37hとは、軸方向に見て、それぞれ重なる位置に配置されている。
【0039】
スペーサコア50は、軸方向に隣り合うコアピース部36同士の間に配置されている。本実施形態においてスペーサコア50は、第1コアピース部36Aと第2コアピース部36Bとの軸方向の間に位置する。スペーサコア50は、スペーサコア50を軸方向に挟むコアピース部36のそれぞれに接触している。
図5に示すように、スペーサコア50は、シャフト31を囲む環状である。より詳細には、スペーサコア50は、中心軸Jを中心とする円環状である。
【0040】
スペーサコア50は、軸方向に重ねて配置される複数の第2プレート50Aを有する。本実施形態においてスペーサコア50は、4枚の第2プレート50Aを積層させて構成されている。各第2プレート50Aは、板面が軸方向を向く板状である。スペーサコア50を構成する材料は、第1プレート32Aと同じ材料の電磁鋼板である。4枚の第2プレート50A同士は、軸方向に密接した状態で配置されている。第2プレート50Aに使用される電磁鋼板の厚みtは、第1プレート32Aと同じであり、例えば0.5mmのものが使用される。第2プレート50Aが0.5mmである場合には、4枚の第2プレート50Aを積層したスペーサコア50の厚みは2.0mmとなる。スペーサコア50には、後述するプレート貫通孔54および流路部51を確保するためにはスペーサコア50の厚みとしては0.5mm~2.0mmが必要となり、本実施形態のように0.5mmの電磁鋼板が4枚設けられる。
【0041】
図4に示すように、本実施形態において、スペーサコア50の外径は、ロータコア32の外径よりも僅かに小さい。すなわち、中心軸Jからスペーサコア50の外縁50cまでの第2距離R2は、中心軸Jからロータコア32の外縁32aまでの第1距離R1より短くなっている。例えば、第1距離R1と第2距離R2との差分h1は、1mm以上である。さらに、ロータコア32の外径に対して、スペーサコア50の外径が99%以下である。
【0042】
本実施形態においてスペーサコア50の左側(+Y側)の面である左面50a、および右側(-Y側)の面である右面50bは、それぞれ平坦な面である。本実施形態において左面50aおよび右面50bは、軸方向と直交する面である。左面50aは、スペーサコア50の左側に位置する第2コアピース部36Bに接触している。右面50bは、スペーサコア50の右側に位置する第1コアピース部36Aに接触している。スペーサコア50の左側に位置する第2コアピース部36Bと左面50aとの軸方向の間には、隙間が設けられていない。スペーサコア50の右側に位置する第1コアピース部36Aと右面50bとの軸方向の間には、隙間が設けられていない。
【0043】
図3に示すように、スペーサコア50は、全てのマグネット穴部36c、36d、36eに対し開口の少なくとも一部を覆っている。スペーサコア50は、軸方向から見てコア穴部37fに重なる複数のプレート貫通孔54と、第2シャフト穴部33bとプレート貫通孔54とを繋ぐ流路部51と、を有する。
図5に示すように、複数のプレート貫通孔54および複数の流路部51は、スペーサコア50を軸方向に貫通している。複数のプレート貫通孔54および複数の流路部51は、周方向に間隔を空けて配置されている。より詳細には、複数のプレート貫通孔54および複数の流路部51は、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置されている。
図3に示すように、複数のプレート貫通孔54および複数の流路部51は、軸方向に見て、それぞれ磁極間中心線Lqと重なる位置に配置されている。プレート貫通孔54および流路部51の周方向位置は、周方向に隣り合う磁極部38同士の間における周方向の中心位置を含む。各流路部51は、各第2シャフト穴部33bの開口部33cに対して周方向に一致し、開口部33cに対して径方向内側に対向して配置されている。すなわち、プレート貫通孔54および流路部51は、周方向に一致する第2シャフト穴部33bと連通している。
【0044】
図5に示すように、複数のプレート貫通孔54は、軸方向に見て、複数のコア穴部37fのそれぞれと重なっている。本実施形態において各プレート貫通孔54は、軸方向に見て、コア穴部37fよりも大きい。プレート貫通孔54は、軸方向に見て、コア穴部37fの径方向外側の一部を除いてコア穴部37fに重ならない略矩形状である。本実施形態においてプレート貫通孔54の径方向内側の内縁54aの全体は、コア穴部37fの内縁から径方向内側に離れて配置されている。プレート貫通孔54の径方向外側の外縁54bは、コア穴部37fの外端に重なって配置されている。プレート貫通孔54の周方向に対向する側縁54cの全体は、コア穴部37fの側縁から周方向外側に離れて配置されている。本実施形態においてプレート貫通孔54の周方向の寸法は、周方向に隣り合うプレート貫通孔54同士の間の周方向の距離よりも小さい。
【0045】
プレート貫通孔54は、一対の側縁54cの径方向の内端同士が内縁54aに繋がり、一対の側縁54cの径方向の外端同士が外縁54bに繋がって矩形状をなしている。プレート貫通孔54の角丸となっている。複数のプレート貫通孔54は、複数のコア穴部37fとそれぞれ軸方向に繋がっている。
【0046】
図3及び
図5に示すように、スペーサコア50は、嵌合凸部55を有する。嵌合凸部55は、スペーサコア50の径方向内縁に設けられている。嵌合凸部55は、径方向内側に突出する。嵌合凸部55は、シャフト31の外周面に設けられた嵌合凹部31aに嵌め合わされている。これにより、スペーサコア50がシャフト31に対して周方向に位置決めされている。嵌合凹部31aは、軸方向に延びている。嵌合凸部55と嵌合凹部31aとは、中心軸Jを挟んで一対ずつ設けられている。
【0047】
図4及び
図6に示すように、軸方向に積層される第2プレート50A同士は、径方向外側の外縁50cで溶接により軸方向に接合されている。第2プレート50A同士を接合する溶着部52(接合部)は、軸方向に連続して延びている。溶着部52は、周方向に4箇所で均等な位置である。
【0048】
複数の第2プレート50Aには、
図7に示すように、軸方向にカシメられ、軸方向に積層される第2プレート50A同士を周方向に回転不能に位置決めするカシメ部53を設けていてもよい。カシメ部53は、第2プレート50Aの中心軸Jを除く面内であれば位置は限定されることはない。各第2プレート50Aのカシメ部53は、軸方向から見て重なる位置に設けられている。すなわち、複数の第2プレート50Aのカシメ部53同士を嵌め合うことにより、周方向に位置決めでき、組み立てにかかる作業効率を高めることができる。
【0049】
基台57上に上下方向に配置された複数の第2プレート50Aを上からカシメる場合には、第2プレート50Aのカシメ位置を基台57に設けられる開口部57aと同軸になる位置に配置する。そして、複数の第2プレート50Aの上方からカシメ部材を下方(矢印P)に押し込むことでカシメ部53を設けることができる。なお、基台57に代えて最下層の第2プレート50Aに開口部を設けてカシメを行うようにしてもよい。
【0050】
図1に示すように、ステータ40は、ロータ30と径方向に隙間を介して対向する。ステータ40は、ロータ30を径方向外側から周方向全周に亘って囲んでいる。ステータ40は、モータハウジング81の内部に固定される。ステータ40は、ステータコア41と、コイルアセンブリ42と、を有する。
【0051】
ステータコア41は、回転電機10の中心軸Jを囲む環状である。ステータコア41は、例えば、電磁鋼板などの板部材が軸方向に複数積層されて構成されている。コイルアセンブリ42は、周方向に沿ってステータコア41に取り付けられる複数のコイル42cを有する。複数のコイル42cは、図示しないインシュレータを介してステータコア41の図示しない各ティースにそれぞれ装着されている。複数のコイル42cは、周方向に沿って配置されている。コイル42cは、ステータコア41から軸方向に突出する部分を有する。
【0052】
流路90は、ハウジング80内に設けられる。流路90には、流体としてのオイルOが流れる。流路90は、モータハウジング81の内部とギヤハウジング82の内部とに跨って設けられている。流路90は、ギヤハウジング82内に貯留されたオイルOがモータハウジング81内の回転電機10に供給されて再びギヤハウジング82内に戻る経路である。流路90には、ポンプ71と、クーラ72と、が設けられている。流路90は、第1流路部91と、第2流路部92と、第3流路部93と、流体供給部70と、シャフト内流路部95と、接続流路部94と、プレート流路部96と、ロータコア内流路部98と、ガイド流路部97と、を有する。
【0053】
第1流路部91、第2流路部92、および第3流路部93は、例えば、ギヤハウジング82の壁部に設けられている。第1流路部91は、ギヤハウジング82の内部のうちオイルOが貯留されている部分とポンプ71とを繋いでいる。第2流路部92は、ポンプ71とクーラ72とを繋いでいる。第3流路部93は、クーラ72と流体供給部70とを繋いでいる。本実施形態において第3流路部93は、流体供給部70の左側の端部、すなわち流体供給部70の上流側部分に繋がっている。
【0054】
流体供給部70は、ステータ40にオイルOを供給する。本実施形態において流体供給部70は、軸方向に延びる管状である。言い換えれば、本実施形態において流体供給部70は、軸方向に延びるパイプである。流体供給部70の軸方向両端部は、モータハウジング81に支持されている。流体供給部70の左側の端部は、例えば、隔壁部81bに支持されている。流体供給部70の右側の端部は、例えば、蓋部81cに支持されている。流体供給部70は、ステータ40の径方向外側に位置する。本実施形態において流体供給部70は、ステータ40の上側に位置する。
【0055】
流体供給部70は、ステータ40にオイルOを供給する供給口70aを有する。本実施形態において供給口70aは、流体供給部70内に流入したオイルOの一部を流体供給部70の外部に噴射させる噴射口である。供給口70aは、流体供給部70の壁部を内周面から外周面まで貫通する孔によって構成されている。供給口70aは、流体供給部70に複数設けられている。複数の供給口70aは、例えば、軸方向または周方向に互いに間隔をあけて配置される。
【0056】
接続流路部94は、流体供給部70とシャフト内流路部95とを繋いでいる。本実施形態において接続流路部94は、蓋部81cに設けられている。シャフト内流路部95は、中空のシャフト31の内部によって構成されている。シャフト内流路部95は、軸方向に延びている。シャフト内流路部95は、モータハウジング81の内部とギヤハウジング82の内部とに跨って配置されている。
【0057】
プレート流路部96は、シャフト内流路部95とロータコア内流路部98とを繋いでいる。
図4に示すように、プレート流路部96は、スペーサコア50とスペーサコア50の左側(+Y側)に位置するコアピース部36(第2コアピース部36B)とによって構成されている。プレート流路部96の内部は、プレート貫通孔54および流路部51によって構成されている。プレート流路部96は、第2シャフト穴部33bを介して、シャフト内流路部95と繋がっている。
【0058】
ロータコア内流路部98は、複数のコア穴部37fのそれぞれによって構成されている。つまり、ロータコア内流路部98は、周方向に間隔を空けて複数設けられている。
図1に示すように、ロータコア内流路部98は、プレート流路部96とガイド流路部97とを繋いでいる。
図2に示すように、ガイド流路部97は、一対のエンドプレート20、39のそれぞれに設けられている。各エンドプレート20、39においてガイド流路部97は、周方向に間隔を空けて複数設けられている。各ガイド流路部97は、各コア穴部37fの軸方向端部にそれぞれ繋がっている。ガイド流路部97は、径方向に延びている。ガイド流路部97は、径方向外側に開口している。
【0059】
図2に示すように、一対のエンドプレート20、39は、ロータコア32の軸方向端部に配置される非磁性体の金属材料からなる。中心軸Jからエンドプレート20(エンドプレート39も同様)の外縁までの距離は、中心軸Jからロータコア32の外縁32aまでの第1距離R1よりも短い。エンドプレート20、39は、ロータコア32およびスペーサコア50と同材料の電磁鋼板であってもよいし、異なる材料であってもよい。エンドプレート20、39を構成する材料でロータコア32およびスペーサコア50と異なる材料として、例えば非磁性体のアルミニウム合金などの金属材料が挙げられる。
【0060】
図1に示すように、ポンプ71が駆動されると、ギヤハウジング82内に貯留されたオイルOが第1流路部91を通って吸い上げられ、第2流路部92を通ってクーラ72内に流入する。クーラ72内に流入したオイルOは、クーラ72内で冷却された後、第3流路部93を通って、流体供給部70へと流れる。流体供給部70内に流入したオイルOの一部は、供給口70aから噴射されて、ステータ40に供給される。流体供給部70内に流入したオイルOの他の一部は、接続流路部94を通ってシャフト内流路部95に流入する。
【0061】
図4に示すように、シャフト内流路部95を流れるオイルOの一部は、第2シャフト穴部33bからプレート流路部96に流入する。プレート流路部96内においてオイルOは、流路部51からプレート貫通孔54へと流れる。プレート流路部96に流入したオイルOは、プレート貫通孔54からロータコア内流路部98に流入する。より詳細には、プレート流路部96のプレート貫通孔54に流入したオイルOの一部は、ロータコア32のうちスペーサコア50の右側(-Y側)に位置する部分に設けられた第1コア穴部37gの内部に流入する。プレート貫通孔54に流入したオイルOの他の一部は、ロータコア32のうちスペーサコア50の左側(+Y側)に位置する部分に設けられた第2コア穴部37hの内部に流入する。
【0062】
図1に示すように、ロータコア内流路部98に流入したオイルOは、ガイド流路部97を流れて、ステータ40に飛散する。シャフト内流路部95に流入したオイルOの他の一部は、シャフト31の左側の開口からギヤハウジング82の内部に排出され、再びギヤハウジング82内に貯留される。
【0063】
供給口70aからステータ40に供給されたオイルOは、ステータ40から熱を奪い、シャフト31内からロータ30およびステータ40に供給されたオイルOは、ロータ30およびステータ40から熱を奪う。ステータ40およびロータ30を冷却したオイルOは、下側に落下して、モータハウジング81内の下部領域に溜まる。モータハウジング81内の下部領域に溜ったオイルOは、隔壁部81bに設けられた隔壁開口81dを介してギヤハウジング82内に戻る。以上のようにして、流路90は、ギヤハウジング82内に貯留されたオイルOをロータ30およびステータ40に供給する。
【0064】
次に、ロータ30の製造方法について説明する。先ず、第1工程では、電磁鋼板用のプレス機を使用し、共通の電磁鋼板から、コアピース部36の第1プレート32Aとスペーサコア50の第2プレート50Aとを打ち抜く。コアピース部36とスペーサコア50とはそれぞれ内径は同じであるので、同じ金型を使用して同一工程とすることができる。本実施形態では、コアピース部36とスペーサコア50との外径は異なるので、異なる金型が用いられるので、第1プレート32Aと第2プレート50Aとを外径で型抜きする工程はそれぞれ別工程となる。なお、コアピース部36とスペーサコア50とが同一外径の場合には、共通の金型を使用して同一工程で型抜きを行うことができる。このように、第1プレート32Aと第2プレート50Aの内径と外径とが同一になる場合には、工程を減らすことができる。このとき、第2プレート50Aを打ち抜く電磁鋼板は、第1プレート32Aを打ち抜く電磁鋼板が使用される。つまり、同一の電磁鋼板から第1プレート32Aと第2プレート50Aとが型抜きされる。なお、第1プレート32Aと第2プレート50Aとの型抜き前に、各プレート32A、50Aに設けられる流路やマグネット穴部36h、あるいは上記カシメ部53等を先行して行われる。
【0065】
次に、
図4に示すように、第2工程において、型抜きされた複数の第1プレート32Aと複数の第2プレート50Aとを、軸方向に隣り合うコアピース部36A、36B同士の間にスペーサコア50が介在する順で積層する。
【0066】
次に、第3工程において、積層した複数のプレート32A、50A同士を軸方向に密接させる。プレート32A、50A同士を密接させる工程では、例えばねじ部材を使用する。つまり、第1プレート32Aおよび第2プレート50Aを所定数積層させた状態で、軸方向の端部からねじ部材を軸方向に締め込むことで、プレート32A,50A同士を軸方向で互いに近接する方向に密接させることができる。
【0067】
その後、第4工程において、密接された複数の第1プレート32Aおよび第2プレート50A同士を軸方向に接合する。軸方向の接合方法は、上述したような溶接の他、接着剤による接着、あるいはカシメにより各プレート32A、50A同士を積層した状態で軸方向に接合する。なお、このプレート32A、50A同士の接合工程は省略することも可能である。要は、上述した密接する工程において、プレート32A、50A同士が接触面で冷媒が流出しないよう液密な状態で密接されればよく、接合工程は省略してもよい。
【0068】
また、第4工程の接合工程において、軸方向でスペーサコア50の両側に設けられるロータコア32のコアピース部36のうちいずれか一方のコアピース部36と、スペーサコア50と、を先行して接合した後、スペーサコア50の接合されていない左面50a、または右面50bに対して他方のコアピース部36を接合してもよい。
【0069】
そして、複数の第1プレート32Aおよび複数の第2プレート50A同士を軸方向に密着した後に、第5工程において、ロータコア32及びスペーサコア50同士のコア部にシャフト31を挿入する。このような作業手順によりロータ30が製造される。
【0070】
本実施形態によれば、共通の電磁鋼板から、コアピース部36の第1プレート32Aとスペーサコア50の第2プレート50Aとを打ち抜く工程と、軸方向に隣り合うコアピース部36同士の間にスペーサコア50が介在する順で積層する工程と、積層した複数のプレート32A、50A同士を軸方向に密接させる工程と、を有する。第2プレート50Aを打ち抜く電磁鋼板は、第1プレート32Aを打ち抜く電磁鋼板である。このため、ロータコア32の第1プレート32Aとスペーサコア50の第2プレート50Aとが同材料の電磁鋼板から構成されているので、ロータ30の製造過程において、ロータコア32を打ち抜く電磁鋼板とスペーサコア50を打ち抜く電磁鋼板とを共通の電磁鋼板から打ち抜くことができるため、製造コストを低減できる。すなわち、本実施形態では、電磁鋼板からなるロータコア32と異なる材料を使用したスペーサコア50の場合のように、電磁鋼板用のプレス機とは別のプレスを設ける必要がなく、ロータ30の製造コストを低減できる。
【0071】
また、スペーサコア50をロータコア32と同材料とすることで、加工精度の差を小さくできる。そのため、スペーサコア50に設けられる流路を分配するための切り欠きの位置と、各ロータコア32に設けられる流路を構成する周方向の位置や径方向の位置とが一致しやすくなり、冷媒の流れがスムーズになる。また、スペーサコア50とロータコア32とが同材料からなるため、ロータ30の製造に関わる部品調達が容易に行うことができる。
【0072】
本実施形態によれば、プレート32A、50A同士を軸方向に接合する。これにより、プレート32A、50A同士が軸方向に密接するだけでなく接合されている。そのため、ロータ30の回転時に生じる遠心力によってプレート32A、50A同士の間に隙間が生じることを抑えられ、積層面からの流路内の冷媒の流出を抑制できる。
【0073】
なお、プレート32A、50A同士を軸方向に接着剤により接着してもよい。この場合には、ロータ30の回転時に生じる遠心力によってプレート32A、50A同士の間に隙間が生じることを抑えられ、積層面からの流路内の冷媒の流出を抑制できる。
【0074】
また、プレート32A、50A同士を軸方向にカシメにより接合してもよい。この場合には、プレート32A、50A同士が軸方向に密接するだけでなく、カシメにより接合される。そのため、ロータ30の回転時に生じる遠心力によってプレート32A、50A同士の間に隙間が生じることを抑えられ、積層面からの流路内の冷媒の流出を抑制できる。
【0075】
本実施形態によれば、スペーサコア50の軸方向両側に設けられるコアピース部36のうちいずれか一方のコアピース部36と、スペーサコア50と、を接合した後、スペーサコア50に対して他方のコアピース部36を接合する。これにより、スペーサコア50の軸方向の一方(他方のコアピース部36側)が開放された状態になるので、一方のコアピース部36とスペーサコア50とを接合する作業を行うための作業スペースを確保でき、作業性を向上できる。
【0076】
本実施形態によれば、プレート32A、50A同士は、周方向に均等な位置で溶着部52により接合されている。これにより、ロータ30の回転時に生じる遠心力に対してバランスよく接合でき、冷媒の漏れを抑制できる。
【0077】
本実施形態によれば、プレート32A、50A同士は、周方向に4箇所以上で接合されている。これにより、ロータ30の回転時に生じる遠心力に対してよりバランスよく接合でき、冷媒の漏れを抑制できる。
【0078】
本実施形態によれば、第2プレート50Aは、第1プレート32Aの直径よりも小径である。これにより、スペーサコア50がロータコア32より小径である場合にも、それぞれ異なる金型を使用してそれぞれの第1コアピース部と第2コアピース部とを共通の電磁鋼板から打ち抜くことができる。
【0079】
本実施形態によれば、プレート32A、50A同士を、軸方向で互いに近接する方向にねじ部材を締め込むことで密接する。これにより、ねじ部材を軸方向に締め込むことにより、プレート32A、50A同士を軸方向に押圧させて密接した状態で積層することができる。
【0080】
本実施形態によれば、ロータコア32は、それぞれマグネット37が配置される複数のマグネット穴部36hを有する。スペーサコア50は、全てのマグネット穴部36hに対し開口の少なくとも一部を覆う。これにより、マグネット穴部36h内でマグネット37が欠損した場合でも、開口の一部を覆うことで破片がマグネット穴部36hから飛散することを抑制できる。本実施形態では、スペーサコア50にマグネット穴部36hを設ける必要がなくなるので、作業工程を減らすことができる。
【0081】
本実施形態によれば、プレート32A、50A同士は、軸方向にカシメることで嵌合され、周方向に位置決めされている。これにより、プレート32A、50Aにシャフト31を挿入する前に、各プレート32A、50A同士をカシメ部53で接合して積層することで、プレート32A、50A同士をカシメ部53によって周方向に容易に位置決めでき、流路等の位置を決めることができる。
【0082】
本実施形態によれば、プレート32A、50A同士を軸方向に密着した後に、ロータコア32及びスペーサコア50それぞれのコア部にシャフト31を挿入する。これにより、各プレート32A、50Aの周方向に位置決めされた状態で、そのプレート32A、50Aにシャフト31を挿入することで、シャフト31に対してプレート32A、50Aを取り付けることができる。
【0083】
本実施形態によれば、上記のロータ30の製造方法によって製造されたロータ30であって、ロータコア32を構成する第1プレート32Aとスペーサコア50を構成する第2プレート50Aとが同材料の電磁鋼板からなる。これにより、上述したロータ30の製造方法による効果を奏するロータ30を提供できる。
【0084】
本発明は上述の実施形態に限られず、本発明の技術的思想の範囲内において、他の構成および他の方法を採用することもできる。
【0085】
上述の実施形態では、スペーサコア50は円形に限定されることはなく、どのような形状でもよい。また、スペーサコア50において、全てのマグネット穴部36c、36d、36eに対し開口の少なくとも一部を覆う構成でなくてもよい。
【0086】
本発明が適用される回転電機は、モータに限られず、発電機であってもよい。回転電機の用途は、特に限定されない。回転電機は、車両以外の機器に搭載されてもよい。本発明が適用される駆動装置の用途は、特に限定されない。駆動装置は、例えば、車軸を回転させる用途以外の用途で車両に搭載されてもよいし、車両以外の機器に搭載されてもよい。
回転電機、および駆動装置が用いられる際の姿勢は、特に限定されない。回転電機の中心軸は、鉛直方向と直交する水平方向に対して傾いていてもよいし、鉛直方向に延びてもよい。以上、本明細書において説明した構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0087】
10…回転電機、20…エンドプレート、30…ロータ、31…シャフト、32…ロータコア、32a…外縁、32A…第1プレート、33a…第1シャフト穴部、33b…第2シャフト穴部、33c…開口部、36…コアピース部、36h…マグネット穴部、37…マグネット、37f…コア穴部、38,38N,38S…磁極部、39…エンドプレート、40…ステータ、50…スペーサコア、50A…第2プレート、50c…外縁、51…流路部、52…溶着部(接合部)、53…カシメ部、54…プレート貫通孔、60…ギヤ機構、100…駆動装置、J…中心軸、R1…第1距離、第2…第2距離