(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151451
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】ステータ、およびモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/38 20060101AFI20231005BHJP
H02K 3/46 20060101ALI20231005BHJP
H02K 1/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H02K3/38
H02K3/46 B
H02K1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061060
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】山田 幸司
【テーマコード(参考)】
5H601
5H604
【Fターム(参考)】
5H601AA09
5H601CC01
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD18
5H601EE23
5H601GA02
5H601GB13
5H601GB34
5H601HH14
5H601JJ07
5H601KK26
5H604AA08
5H604BB01
5H604BB10
5H604BB14
5H604CC05
5H604CC14
5H604DB18
5H604PB03
5H604PE06
5H604QB01
5H604QB03
5H604QB14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】コイル引出線の接続部を絶縁する接着剤の漏出を抑制する。
【解決手段】バスバーホルダ60は、バスバー本体部を保持するホルダ本体部62と、前記バスバー本体部を軸方向に貫通するコイル挿入孔61と、を備える。コイル引出線41cは、前記コイル挿入孔を通って、前記ホルダ本体部の軸方向一方側において前記コイル接続部72と電気的に接続される。キャップ部材80は、周方向に延びるキャップ本体部81と、前記キャップ本体部から径方向に延びる複数のキャップ延出部82と、前記キャップ延出部から軸方向他方側に延びる突起部83と、を備える。前記突起部は、前記コイル挿入孔に挿入される。前記バスバーホルダの軸方向一方側において、前記コイル接続部および前記コイル引出線は、接着剤Rによって覆われる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアと、コイルと、バスバーと、バスバーホルダと、前記バスバーホルダの軸方向一方側に配置されるキャップ部材と、を備え、
前記バスバーは、環状のバスバー本体部と、バスバー本体部から延び、前記コイルを構成するコイル線の端部であるコイル引出線と電気的に接続されるコイル接続部と、を備え、
前記バスバーホルダは、
前記バスバー本体部を保持するホルダ本体部と、
前記バスバー本体部を軸方向に貫通するコイル挿入孔と、
を備え、
コイル引出線は、前記コイル挿入孔を通って、前記ホルダ本体部の軸方向一方側において前記コイル接続部と電気的に接続され、
前記キャップ部材は、
周方向に延びるキャップ本体部と、
前記キャップ本体部から径方向に延びる複数のキャップ延出部と、
前記キャップ延出部から軸方向他方側に延びる突起部と、
を備え、
前記突起部は、前記コイル挿入孔に挿入され、
前記バスバーホルダの軸方向一方側において、前記コイル接続部および前記コイル引出線は、接着剤によって覆われる、
ステータ。
【請求項2】
前記バスバーは、板状の導電部材であり、
前記コイル接続部の板厚方向は、前記周方向であり、
周方向一方側から、前記コイル接続部、前記コイル引出線、前記キャップ延出部の順に配置される、
請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
前記キャップ延出部の周方向一方側の面は、前記コイル接続部の周方向他方側の面に接触する、
請求項1又は2に記載のステータ。
【請求項4】
前記キャップ延出部および前記突起部は、軸方向に延び、周方向他方側に凹むキャップ溝部を備え、
前記コイル引出線は、前記キャップ溝部内に配置される、
請求項1~3の何れか一項に記載のステータ。
【請求項5】
前記キャップ部材は、周方向に複数設けられ、
複数の前記キャップ部材は、それぞれ円弧状の前記キャップ本体部と、複数の前記キャップ延出部と、を備える、
請求項1~4の何れか一項に記載のステータ。
【請求項6】
前記コイル挿入孔は、軸方向に延び、周方向一方側に凹む挿入孔溝部を備え、
前記コイル引出線は、前記挿入孔溝部内に配置される、
請求項1~5の何れか一項に記載のステータ。
【請求項7】
前記コイル挿入孔は、前記ホルダ本体部の軸方向他方側の面から軸方向一方側に向かうにつれて径が小さくなるテーパ部を備え、
前記挿入孔溝部は、前記テーパ部よりも軸方向一方側に設けられる、
請求項6に記載のステータ。
【請求項8】
前記ステータコアに取り付けられるインシュレータを備え、
前記インシュレータは、
前記コイルの径方向外側において周方向および軸方向に沿って延びる壁部と、
前記壁部から軸方向一方側に延びるインシュレータ突起部と、
を有し、
前記バスバーホルダは、
前記コイル挿入孔の径方向内側において、前記ホルダ本体部から軸方向一方側に延びる内側壁部と、
前記コイル挿入孔の径方向外側において、前記ホルダ本体部から軸方向一方側に延びる外側壁部と、
前記外側壁部の径方向外側において、前記ホルダ本体部から径方向外側に延びるフランジ部と、を備え、
前記フランジ部は、前記インシュレータ突起部が挿入されるフランジ孔を有し、
前記外側壁部は、前記フランジ孔の径方向内側を向く位置において径方向内側に凹む凹部を有する、
請求項1~7の何れか一項に記載のステータ。
【請求項9】
前記コイル接続部は、径方向に延び、周方向他方側に突出するバスバー突出部を備える、請求項1~8の何れか一項に記載のステータ。
【請求項10】
請求項1~9の何れか一項に記載のステータと、
前記ステータと径方向に対向し、回転可能に支持されるロータと、を備える、
モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータ、およびモータに関する。
【背景技術】
【0002】
バスバーとコイル引出線の接続部とを絶縁性の樹脂によって覆うステータが知られている。特許文献1に記載のステータでは、絶縁性の樹脂によってバスバーとコイル引出線の接続部とを覆うことによって、接続部の絶縁性を確保するとともに、コイル側への水や異物の侵入を抑制する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バスバーホルダには、コイル引出線を上側に引き出すための挿入孔が設けられている。樹脂の注入時に挿入孔を通過して樹脂がコイル側に漏出する恐れがあった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、コイル引出線の接続部を絶縁する接着剤のコイル側への漏出を抑制するステータ、およびモータを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のステータの一つの態様は、ステータコアと、コイルと、バスバーと、バスバーホルダと、前記バスバーホルダの軸方向一方側に配置されるキャップ部材と、を備える。前記バスバーは、環状のバスバー本体部と、バスバー本体部から延び、前記コイルを構成するコイル線の端部であるコイル引出線と電気的に接続されるコイル接続部と、を備える。前記バスバーホルダは、前記バスバー本体部を保持するホルダ本体部と、前記バスバー本体部を軸方向に貫通するコイル挿入孔と、を備える。コイル引出線は、前記コイル挿入孔を通って、前記ホルダ本体部の軸方向一方側において前記コイル接続部と電気的に接続される。前記キャップ部材は、周方向に延びるキャップ本体部と、前記キャップ本体部から径方向に延びる複数のキャップ延出部と、前記キャップ延出部から軸方向他方側に延びる突起部と、を備える。前記突起部は、前記コイル挿入孔に挿入される。前記バスバーホルダの軸方向一方側において、前記コイル接続部および前記コイル引出線は、接着剤によって覆われる。
【0007】
本発明のモータの一つの態様は、上述のステータと、前記ステータと径方向に対向し、回転可能に支持されるロータと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの態様によれば、モータのステータにおいて、コイル引出線の接続部を絶縁する接着剤のコイル側への漏出を抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態のモータの断面模式図である。
【
図2】
図2は、一実施形態のステータの分解斜視図である。
【
図3】
図3は、一実施形態のステータの斜視図である。
【
図4】
図4は、一実施形態のステータの平面図である。
【
図5】
図5は、一実施形態のステータの一部の平面である。
【
図6】
図6は、一実施形態のステータの一部の縦断面図である。
【
図7】
図7は、一実施形態のキャップ部材の斜視図である。
【
図8】
図8は、一実施形態のコイル引出線の接続部の部分斜視図である。
【
図9】
図9は、一実施形態のコイル引出線の接続部の一部の平面図である。
【
図10】
図10は、一実施形態のコイル引出線の接続部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を基にモータ10およびステータ30の実施形態について説明する。
以下の説明においては、モータ10の中心軸線Jの軸方向を単に「軸方向」と呼び、中心軸線Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸線Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。
【0011】
また、以下の説明では、軸方向一方側を上側、軸方向他方側を下側としてモータ10およびステータ30の各部の配置関係を説明する。しかしながら、モータ10およびステータ30の実際の使用時の姿勢は、本明細書で説明される上下方向に限定されない。
【0012】
図1は、本実施形態のモータ10の断面模式図である。
図2は、本実施形態のステータ30の分解斜視図である。
図3は、ステータ30の斜視図である。
図4は、ステータ30の平面図である。
図5は、ステータ30の一部の平面図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態のモータ10は、中心軸線Jを中心とするロータ20と、ロータ20の径方向外側に配置されるステータ30と、ハウジング11と、複数のベアリング15,16と、を備える。本実施形態のモータ10は、インナーロータ型のモータである。ロータ20は、中心軸線Jを中心として回転する。
【0014】
ハウジング11は、ロータ20およびステータ30を収容する。ハウジング11は、筒部11aと、底壁部11cと、ベアリング保持壁部11dと、を有する。筒部11aは、中心軸線Jに沿って延びる円筒状である。ベアリング保持壁部11dは、筒部11aの軸方向一方側の開口を覆う。ベアリング保持壁部11dは、筒部11aの内周面に固定される。ベアリング保持壁部11dは、ベアリング15を保持する。底壁部11cは、筒部11aの軸方向他方側の開口を覆う。底壁部11cは、ベアリング16を保持する。
【0015】
ハウジング11の内部には、冷媒が流れる。筒部11aには、冷媒流入口11pと冷媒排出口11qとが設けられる。冷媒流入口11pと冷媒排出口11qとは、軸方向に並んで配置される。冷媒流入口11pは、ステータ30に対し軸方向一方側に位置し、冷媒排出口11qは、ステータ30に対し軸方向他方側に位置する。冷媒は、ハウジング11内において、ステータ30のスロットを通過してステータ30の軸方向一方側から他方側に向かって流れる。
【0016】
ロータ20は、径方向においてステータ30に対向する。本実施形態のロータ20は、ステータ30の径方向内側に配置される。ロータ20は、シャフト21と、ロータコア22と、マグネット23と、を有する。シャフト21は、軸方向に延びる円柱状である。なお、シャフト21は、軸方向に延びる円筒状でもよい。シャフト21は、複数のベアリング15,16により、中心軸線J回りに回転可能に支持される。複数のベアリング15,16は、軸方向に互いに間隔をあけて配置され、ハウジング11に支持される。すなわち、シャフト21は、複数のベアリング15,16を介してハウジング11に支持される。
【0017】
ロータコア22は、軸方向に延びる筒状である。ロータコア22は、シャフト21よりも外径が大きい。ロータコア22は、シャフト21よりも軸方向の長さが小さい。ロータコア22の内周面は、シャフト21の外周面と固定される。ロータコア22は、シャフト21と圧入や接着等により固定される。ロータコア22は、軸方向において、一対のベアリング15,16間に位置する。マグネット23は、ロータコア22の外周部に固定される。
【0018】
ステータ30は、ロータ20と径方向に隙間をあけて対向する。ステータ30は、ロータ20を径方向外側から周方向の全周にわたって囲む。ステータ30は、ステータコア31と、インシュレータ50と、複数のコイル40と、バスバーユニット6と、を有する(
図3~
図5参照)。
【0019】
ステータコア31は、ロータ20を径方向外側から囲む。ステータコア31は、例えば、軸方向に積層する複数の電磁鋼板により構成される。ステータコア31は、ハウジング11の内周面に固定される。ステータコア31とハウジング11との固定は、例えば焼き嵌めや圧入等により行われる。
【0020】
ステータコア31は、コアバック部31aと、複数のティース部31bと、を有する。コアバック部31aは、中心軸線Jを中心とする環状である。コアバック部31aの径方向外側を向く外周面は、筒部11aの内周面と固定される。
【0021】
ティース部31bは、コアバック部31aから径方向内側に延びる。複数のティース部31bは、周方向に沿って並ぶ。複数のティース部31bは、周方向に互いに間隔をあけて配置される。各ティース部31bの径方向内側面は、ロータ20の径方向外側面と隙間をあけて対向する。
【0022】
複数のインシュレータ50は、ステータコア31に取り付けられる。複数のインシュレータ50は、複数のティース部31bのそれぞれに径方向内側から装着される。インシュレータ50は、コイル40とティース部31bとの間を絶縁する絶縁部材である。インシュレータ50は、例えば、樹脂製である。
【0023】
インシュレータ50は、インシュレータ本体部51と、外側壁部(壁部)53と、内側壁部54と、を有する。本実施形態のステータ30には、15個のインシュレータ50が設けられる。
【0024】
インシュレータ本体部51は、径方向に延びる角筒状である。インシュレータ本体部51には、径方向に貫通する貫通孔51hが設けられる。貫通孔51hには、ティース部31bが通される。したがって、インシュレータ本体部51は、ティース部31bを囲む。
【0025】
内側壁部54は、インシュレータ本体部51の径方向内側の端部から径方向と直交する方向に拡がる。同様に、外側壁部53は、インシュレータ本体部51の径方向外側の端部から径方向と直交する方向に拡がる。
【0026】
内側壁部54および外側壁部53は、板面が周方向に沿って湾曲して延びる板状である。すなわち、内側壁部54および外側壁部53は、周方向に沿って延びる。複数のインシュレータ50の内側壁部54および外側壁部53は、それぞれ周方向に沿って環状に並ぶ。
【0027】
図3及び
図4に示すように、外側壁部53の上端縁53bには、バスバーユニット6を固定するボス5(インシュレータ突起部)が設けられる。すなわち、インシュレータ50は、ボス5を有する。ボス5は、インシュレータ50の上側に位置するバスバーユニット6の後述するホルダ本体部62の上側に突出する。ボス5は、外側壁部53の上端縁53bから上側に延びる。ボス5は、円柱状の柱部5aと、柱部5aの先端に位置する抜け止め部5bと、を有する。柱部5aの外径は、フランジ孔64の内径より小さい。ボス5の柱部5aは、フランジ孔64を通過する。抜け止め部5bは、ボス5の先端を例えば熱溶着や熱かしめすることで、軸方向から見て略円形状に成形される。抜け止め部5bの外径は、フランジ孔64の周方向の切欠き幅より大きい。抜け止め部5bは、ホルダ本体部62のフランジ部62bの上面に接触する。
【0028】
図1に示すように、コイル40は、多層に巻き回されたコイル線41からなる。複数のコイル40は、それぞれインシュレータ50に巻き付けられる。コイル40は、内側壁部54と外側壁部53との径方向の間に位置する。すなわち、内側壁部54および外側壁部53は、コイル40を径方向両側からガイドする。内側壁部54および外側壁部53は、コイル40がインシュレータ50から径方向に離脱することを抑制する。
【0029】
図2に示すように、周方向に隣り合って配置されるインシュレータ50に巻き付けられるコイル40同士は、スロットにおいて互いに隣接する。コイル40は、コイル線41を多層に巻くことで構成される。インシュレータ50毎に巻き付けられるコイル40のコイル線41の総巻き数は、それぞれ等しい。また、各コイル40を構成するコイル線41は、互いに同種のコイル線であり、各コイル40による磁界の磁束密度は、略等しい。ここで、コイル40についての「コイル線の巻き数」とは、径方向の特定の位置におけるコイル40の局所的な巻き数(すなわち、層数)であって、1つのコイル全体(径方向内側から径方向外側の全領域)の総巻き数を意味するものではない。
【0030】
コイル40は、インシュレータ50に巻き付けられた状態で、インシュレータ50とともにティース部31bに装着される。
【0031】
次にバスバーユニット6について詳細に説明する。なお、
図1に示すように、バスバーユニット6は、軸方向でコイル40を挟んだ両側、すなわち上側と下側に設けられる2つのカバー部材6A、6Bのうち上側に配置されるカバー部材6Aに相当する。下側のカバー部材6Bについては、上側のカバー部材6Aとほぼ同様の構成を有するため、ここでは詳しい説明は省略する。
【0032】
なお、本実施形態のモータ10は、3相モータである。3相とは、U相、V相およびW相である。3相モータの場合、U相、V相およびW相の各コイル40は、バスバーユニット6と電気的に接続される。
【0033】
バスバーユニット6は、
図1~
図3に示すように、ステータコア31の上側に位置する。バスバーユニット6は、バスバーホルダ60と、バスバー70と、
図7に示すキャップ部材80と、を備える。
【0034】
図6は、ステータ30の一部の縦断面図である。
図4及び
図6に示すように、バスバー70は、環状のバスバー本体部71と、バスバー本体部71から延び、コイル40のコイル引出線41cと電気的に接続される複数のコイル接続部72と、を備える。バスバー70は、バスバーホルダ60にインサート成形される。
【0035】
バスバー70は、周方向に沿って延びるバスバー本体部71を有する。バスバー本体部71は、インシュレータ50の外側壁部53の径方向内側に位置するとともに、外側壁部53の端部よりも軸方向におけるコイル40に近づく方向に位置する、バスバー70は、金属板を金型で打ち抜いたブランクを、曲げ加工することにより製造される。
【0036】
図3及び
図4に示すように、複数のコイル接続部72は、周方向に沿って並ぶ。コイル接続部72は、周方向を厚さ方向とする板状の導電部材である。コイル接続部72は、後述するコイル挿入孔61の周方向の一方側において、ホルダ本体部62から上側に突出する。コイル接続部72の周方向他方側の接続面72aは、コイル挿入孔61に対して露出している。コイル接続部72は、軸方向から見て、径方向に長い矩形をなしている。
図6に示すように、コイル接続部72の接続面72aには、径方向に延び、周方向他方側に突出するバスバー突出部721を有する(
図8参照)。すなわち、コイル接続部72の板厚方向は、周方向である。
【0037】
バスバーホルダ60は、バスバー本体部71を軸方向に貫通するコイル挿入孔61と、バスバー本体部71を保持するホルダ本体部62と、インシュレータ50と固定される複数のフランジ孔64と、を有する。ホルダ本体部62は、中心軸線Jを中心とし、中心軸線Jと直交する平面に沿う円板状である。バスバーホルダ60は樹脂製である。
【0038】
図4、
図5及び
図8に示すように、コイル挿入孔61は、後述する内側壁部66と外側壁部67との間で周方向に間隔をあけて配置されている。コイル引出線41cは、コイル挿入孔61を通って、ホルダ本体部62の軸方向一方側においてコイル接続部72と電気的に接続される。コイル挿入孔61は、コイル40の巻き始めのコイル引出線41cを挿通させるものと、コイル40の巻き終わりのコイル引出線41cを挿通させるものとが、周方向に隣り合って配置される。
【0039】
コイル挿入孔61は、軸方向に延び、周方向一方側に凹む挿入孔溝部611を備える。コイル引出線41cは、挿入孔溝部611内に配置される。コイル挿入孔61は、ホルダ本体部62の下側の面から上側に向かうにつれて径が小さくなるテーパ部612を備える。テーパ部612は、コイル挿入孔61と同軸に配置される。挿入孔溝部611は、テーパ部612よりも上側に設けられる。
【0040】
図1に示すように、ホルダ本体部62は、コイル40の上側(軸方向一方側)かつコイル引出線41cの下側(軸方向他方側)に位置する。ホルダ本体部62は、コイル40が配置される領域とコイル引出線41cが配置される領域とを区画する。ホルダ本体部62は、コイル40とコイル引出線41cとの絶縁を確保する。
【0041】
ホルダ本体部62には、径方向内側において、ホルダ本体部62から軸方向一方側に延びる内側壁部66と、径方向外側において、ホルダ本体部62から軸方向一方側に延びる外側壁部67と、を有する。コイル引出線41cの端部およびコイル接続部72は、ホルダ本体部62、内側壁部66および外側壁部67に挟まれる空間に注入される接着剤Rによって覆われている。
図3、
図4及び
図5に示すように、外側壁部67は、フランジ孔64の径方向内側を向く位置において径方向内側に凹む凹部671を有する。
【0042】
図1及び
図6に示すように、ホルダ本体部62は、インシュレータ50の外側壁部53と内側壁部54との間を通って周方向に延びる。ここで、外側壁部53の径方向内側を向く面を内側面53cと呼ぶ。すなわち、インシュレータ50は、径方向内側を向く内側面53cを有する。ホルダ本体部62は、内側面53cに径方向内側から接触する。これにより、バスバーホルダ60は、内側面53cを径方向内側から支持し、インシュレータ50が径方向内側に移動することを抑制する。
【0043】
図6に示すように、外側壁部53の上部は、径方向内側に向かうに従い漸次、下方に傾斜するインシュレータ傾斜面53dを有する。ホルダ本体部62は、径方向内側に向かうに従い漸次、下方に傾斜するホルダ傾斜面621を有する。インシュレータ傾斜面53dおよびホルダ傾斜面621は、互いに面接触した状態、或いは互いに近接した状態で設けられている。
【0044】
ホルダ本体部62は、径方向の外周側において、外側壁部53より径方向外側に突出するフランジ部62bを有する。フランジ部62bは、ホルダ傾斜面621よりも径方向外側に延びる。フランジ部62bには、軸方向に貫通するフランジ孔64を有する。フランジ部62bは、ボス5の抜け止め部5bと軸方向に対向する。フランジ孔64には、インシュレータ50の外側壁部53から上側に突出するボス5が軸方向に貫通されて固定される。フランジ孔64に貫通したボス5の抜け止め部5bを例えば熱溶着や熱かしめすることで、インシュレータ50に対してバスバーホルダ60が固定される。
【0045】
ステータ30に電流が供給されると、コイル40に磁極が生じ、コイル40およびコイル40が巻き付けられるインシュレータ50には、径方向に向かう磁力が付与される。本実施形態のインシュレータ50は、ティース部31bに対し径方向内側から装着される。このため、コイル40およびインシュレータ50に径方向内側に向かう力が付与されると、インシュレータ50がティース部31bから抜け出る虞がある。本実施形態によれば、バスバーユニット6が、インシュレータ50の径方向内側への移動を制限することで、インシュレータ50をステータコア31に固定できる。これにより、インシュレータ50とロータ20との干渉を抑制でき、モータ10の信頼性を高めることができる。
【0046】
本実施形態によれば、複数のインシュレータ50の外側壁部53が周方向に沿って環状に並び、バスバーホルダ60が複数の外側壁部53の内側に嵌る。このため、中心軸線Jを挟んで反対側に位置するインシュレータ50同士が、バスバーホルダ60を挟み込んで配置され、それぞれバスバーホルダ60を挟んで径方向への移動を抑制する。すなわち、本実施形態によれば、バスバーホルダ60は、中心軸線Jと直交する平面内において、何れの方向にも移動し難くなり、インシュレータ50の移動抑制の安定性を高めることができる。
【0047】
図5~
図10に示すように、キャップ部材80は、バスバーホルダ60の軸方向一方側に配置される。キャップ部材80は、周方向に延びるキャップ本体部81と、キャップ本体部81から径方向に延びる複数のキャップ延出部82と、キャップ延出部82から軸方向他方側に延びる突起部83と、を備える。キャップ部材80は、周方向に複数設けられている。複数のキャップ部材80は、それぞれ円弧状のキャップ本体部81と、複数のキャップ延出部82と、を備える。
【0048】
図10に示すように、キャップ延出部82の周方向一方側の面82aは、コイル接続部72の周方向他方側の接続面72aに接触する。
図5に示すように、上方から見て、周方向一方側からコイル接続部72、コイル引出線41c、キャップ延出部82の順に配置される。
【0049】
突起部83は、コイル挿入孔61に挿入される。キャップ延出部82および突起部83は、軸方向に延び、周方向他方側に凹むキャップ溝部84を備える。コイル引出線41cは、キャップ溝部84内に配置される。
【0050】
図2に示すように本実施形態のステータ30には、2つのカバー部材6A、6Bが設けられる。2つのカバー部材6A、6Bは、複数のインシュレータ50を上下方向から挟む。一方のカバー部材6Aは、複数のインシュレータ50の上側で外側壁部53の内側面53cを支持する。また、下側のカバー部材6Bは、複数のインシュレータ50の下側で外側壁部53の内側面53cを支持する。2つのカバー部材6A、6Bが、インシュレータ50を上下両方で支持するため、インシュレータ50の径方向内側への移動を安定的に抑制することができる。
【0051】
次に、
図2に基づいてステータ30の組み立て手順について説明する。
先ず、インシュレータ50にコイル線41を巻き付け、コイル40を設ける。次いで、インシュレータ50を径方向内側からティース部31bに装着する。
【0052】
次いで、下側のカバー部材6Bをインシュレータ50に下側から装着する。このとき、インシュレータ50のボス5をホルダ本体部62のフランジ孔64に挿入し、ボス5を熱かしめすることでボス5の先端に抜け止め部5bを設ける。これにより、インシュレータ50に、下側のカバー部材6Bを固定する。
【0053】
次いで、コアバック部31aの内周面と、インシュレータ50の外側壁部53との間に絶縁紙3を上側から挿入する。さらに、バスバーユニット6(6A)をインシュレータ50に上側から装着する。このとき、インシュレータ50のボス5をインシュレータ50のフランジ孔64に挿入し、ボス5を熱かしめすることでボス5の先端に抜け止め部5bを設ける。これにより、インシュレータ50に、上側のバスバーユニット6を固定する。
【0054】
本実施形態によれば、ステータコア31と、コイル40と、バスバー70と、バスバーホルダ60と、バスバーホルダ60の軸方向一方側に配置されるキャップ部材80と、を備える。バスバー70は、環状のバスバー本体部71と、バスバー本体部71から延び、コイル40を構成するコイル線の端部であるコイル引出線41cと電気的に接続されるコイル接続部72と、を備える。バスバーホルダ60は、バスバー本体部71を保持するホルダ本体部62と、バスバー本体部71を軸方向に貫通するコイル挿入孔61と、を備える。コイル引出線41cは、コイル挿入孔61を通って、ホルダ本体部62の軸方向一方側においてコイル接続部72と電気的に接続される。キャップ部材80は、周方向に延びるキャップ本体部81と、キャップ本体部81から径方向に延びる複数のキャップ延出部82と、キャップ延出部82から軸方向他方側に延びる突起部83と、を備える。突起部83は、コイル挿入孔61に挿入される。バスバーホルダ60の軸方向一方側において、コイル接続部72およびコイル引出線41cは、接着剤Rによって覆われる。このため、コイル引出線41cは、ホルダ本体部62のコイル挿入孔61を軸方向に貫通してホルダ本体部62の上側に位置するコイル接続部72に電気的に接続される。コイル挿入孔61にキャップ部材80の突起部83がコイル引出線41cとともに挿入され、コイル挿入孔61が突起部83によって塞がれるので、ホルダ本体部62の上側に注入される接着剤Rがコイル挿入孔61を通してホルダ本体部62の下側に漏出することを抑制できる。
【0055】
また、キャップ部材80は、複数のコイル挿入孔61に挿入される複数の突起部83が周方向に延びるキャップ本体部81にキャップ延出部82を介して設けられ、複数の突起部83は周方向に所定の間隔で設けられている。そのため、複数の突起部83を挿入して取り付ける作業を容易に行うことができる。
【0056】
本実施形態によれば、バスバー70は、板状の導電部材であり、コイル接続部72の板厚方向は、周方向であり、周方向一方側から、コイル接続部72、コイル引出線41c、キャップ延出部82の順に配置される。これにより、コイル挿入孔61を挿通させてコイル接続部72の接続面72aにコイル引出線41cを配置させた後、キャップ部材80を周方向他方側から一方側に向けて回転させることで、キャップ延出部82をコイル接続部72に近接させることができる。このように、キャップ部材80を所定の位置より周方向にずらした位置から回して、コイル引出線41cをコイル接続部72とキャップ延出部82との間で挟み込むことができ、組立作業を容易に行うことができる。
【0057】
本実施形態によれば、キャップ延出部82の周方向一方側の面は、コイル接続部72の周方向他方側の面に接触する。これにより、キャップ延出部82の面とコイル接続部72の接続面72aとが面接触するので、双方の面同士の間に配置されるコイル引出線41cを確実に挟持して押さえ付けて固定することができる。
【0058】
本実施形態によれば、キャップ延出部82および突起部83は、軸方向に延び、周方向他方側に凹むキャップ溝部84を備える。コイル引出線41cは、キャップ溝部84内に配置される。これにより、コイル挿入孔61に挿入されるコイル引出線41cは、コイル挿入孔61に同時に挿入される突起部83のキャップ溝部84内に嵌め込まれる。そのため、コイル引出線41cによって突起部83を弾性的に変形させてコイル挿入孔61に挿入する場合のように突起部83とコイル挿入孔61の内周面との間に隙間が生じて接着剤Rがコイル挿入孔61を通してホルダ本体部62の下側に漏出することを効果的に抑制できる。
【0059】
本実施形態によれば、キャップ部材80は、周方向に複数設けられ、複数のキャップ部材80は、それぞれ円弧状のキャップ本体部81と、複数のキャップ延出部82と、を備える。これにより、キャップ部材80が周方向に分割されているので、複数の突起部83をコイル挿入孔61に嵌め込む作業が行いやすくなり、キャップ部材80の組み立て効率を向上できる。
【0060】
本実施形態によれば、コイル挿入孔61は、軸方向に延び、周方向一方側に凹む挿入孔溝部611を備える。コイル引出線41cは、挿入孔溝部611内に配置される。これにより、コイル挿入孔61に挿入されるコイル引出線41cは挿入孔溝部611内に嵌め込まれる。そのため、突起部83をコイル引出線41cに干渉させることなくコイル挿入孔61に挿入させることができ、突起部83とコイル挿入孔61の内周面との間に隙間が生じて接着剤Rがコイル挿入孔61を通してホルダ本体部62の軸方向他方側の下側に漏出することを効果的に抑制できる。
【0061】
本実施形態によれば、コイル挿入孔61は、ホルダ本体部62の下側の面から上側に向かうにつれて径が小さくなるテーパ部612を備える。挿入孔溝部611は、テーパ部612よりも軸方向一方側に設けられる。これにより、コイル挿入孔のテーパ部のコイル挿入側の開口が拡大しているので、コイル引出線41cのコイル挿入孔61への挿入を容易に行うことができる。
【0062】
本実施形態によれば、ステータコア31に取り付けられるインシュレータ50を備える。インシュレータ50は、コイル40の径方向外側において周方向および軸方向に沿って延びる外側壁部53と、外側壁部53から軸方向一方側に延びるボス5と、を有する。バスバーホルダ60は、コイル挿入孔61の径方向内側において、ホルダ本体部62から軸方向一方側に延びる内側壁部66と、コイル挿入孔61の径方向外側において、ホルダ本体部62から軸方向一方側に延びる外側壁部67と、外側壁部67の径方向外側において、ホルダ本体部62から径方向外側に延びるフランジ部62bと、を備える。フランジ部62bは、ボス5が挿入されるフランジ孔64を有する。外側壁部67は、フランジ孔64の径方向内側を向く位置において径方向内側に凹む凹部671を有する。これにより、凹部671の内側にボス5の少なくとも一部を配置させることができる。これによりボス5の位置を径方向内側にすることができので、ステータ30の径方向寸法を小さく抑制して小型化できる。
【0063】
本実施形態によれば、コイル接続部72は、径方向に延び、周方向他方側に突出するバスバー突出部721を備える。これにより、コイル挿入孔61を挿通させたコイル引出線41cをバスバー突出部721に対して溶接しやすくなるので、溶着精度を向上できる。
【0064】
本実施形態によれば、上記のステータ30と、ステータ30と径方向に対向し、回転可能に支持されるロータ20と、を備える。
【0065】
以上に、本発明の実施形態を説明したが、実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【0066】
例えば、上述の実施形態では、圧縮機に搭載されるモータについて説明したが、ウォータポンプやオイルポンプに搭載されるモータにおいて同様の構成を採用してもよい。
【符号の説明】
【0067】
5…ボス(インシュレータ突起部)、10…モータ、11…ハウジング、20…ロータ、30…ステータ、31…ステータコア、31a…コアバック部、31b…ティース部、40…コイル、41…コイル線、41c…コイル引出線、50…インシュレータ、53…外側壁部(壁部)、53d…インシュレータ傾斜面、54…内側壁部、6…バスバーユニット、6A,6B…カバー部材、60…バスバーホルダ、61…コイル挿入孔、62…ホルダ本体部、62b…フランジ部、621…ホルダ傾斜面、623…固定孔、64…フランジ孔、66…内側壁部、67…外側壁部、70…バスバー、71…バスバー本体部、72…コイル接続部、721…バスバー突出部、80…キャップ部材、81…キャップ本体部、82…キャップ延出部、83…突起部、CL…中心線、J…中心軸線