(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151453
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】ステータ、およびモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/46 20060101AFI20231005BHJP
H02K 1/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H02K3/46
H02K1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061062
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】山田 幸司
(72)【発明者】
【氏名】河本 達郎
【テーマコード(参考)】
5H601
5H604
【Fターム(参考)】
5H601AA09
5H601BB11
5H601CC01
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD18
5H601EE23
5H601HH14
5H601JJ07
5H601KK26
5H604AA08
5H604BB01
5H604BB10
5H604BB14
5H604CC05
5H604CC14
5H604DB15
5H604DB18
5H604PB03
5H604PE06
5H604QB01
5H604QB03
5H604QB14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】コイル引出線の位置決め作業を容易に行え、組立効率を向上できるステータを提供する。
【解決手段】コイル支持部63は、径方向外側に設けられ、周方向における幅が、コイル引出線41cの周方向における幅よりも大きい第1幅広部631と、第1幅広部の径方向内側に設けられ、周方向における幅が、コイル引出線の周方向における幅よりも小さい幅狭部632と、幅狭部の径方向内側に設けられ、周方向における幅が、コイル引出線の周方向における幅よりも大きく、かつ、第1幅広部の周方向における幅よりも小さい第2幅広部633と、を有する。コイル支持部は、コイルの巻き始めのコイル引出線を支持する第1コイル支持部63Aと、コイルの巻き終わりのコイル引出線を支持する第2コイル支持部63Bと、を含む。第2コイル支持部の少なくとも第1幅広部は、軸方向から見て径方向に対して周方向に傾いて延びる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアと、コイルと、バスバーと、バスバーホルダと、を備え、
前記バスバーは、
環状のバスバー本体部と、
前記バスバー本体部から延び、前記コイルのコイル引出線と電気的に接続されるコイル接続部と、を備え、
前記バスバーホルダは、
前記バスバー本体部を保持するホルダ本体部と、
前記ホルダ本体部を軸方向に貫通し、前記ホルダ本体部の外縁から径方向内側に向かって延びる切り欠き形状であって、径方向内側の内縁において、前記コイル引出線を軸方向に沿って支持し周方向に複数設けられるコイル支持部と、を有し、
前記コイル支持部は、
径方向外側に設けられ、周方向における幅が、前記コイル引出線の周方向における幅よりも大きい第1幅広部と、
前記第1幅広部の径方向内側に設けられ、周方向における幅が、前記コイル引出線の周方向における幅よりも小さい幅狭部と、
前記幅狭部の径方向内側に設けられ、周方向における幅が、前記コイル引出線の周方向における幅よりも大きく、かつ、前記第1幅広部の周方向における幅よりも小さい第2幅広部と、を有し、
前記コイル支持部は、前記コイルの巻き始めの前記コイル引出線を支持する第1コイル支持部と、前記コイルの巻き終わりの前記コイル引出線を支持する第2コイル支持部と、を含み、
前記第2コイル支持部の少なくとも前記第1幅広部は、軸方向から見て径方向に対して周方向に傾いて延びる、
ステータ。
【請求項2】
軸方向から見て、前記第2コイル支持部の径方向に対してなす角度は、前記第1コイル支持部が径方向に対してなす角度より大きい、
請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
前記ステータを覆うインシュレータを有し、
前記インシュレータは、前記コイルの径方向外側において、軸方向における前記コイルから離れる方向に突出する壁部を有し、
前記壁部は、周方向に間隔をあけて複数配置され、
軸方向から見て、前記第2コイル支持部における前記第1幅広部の径方向外側の開口部は、周方向に隣り合う前記壁部同士の間に位置する、
請求項1又は2に記載のステータ。
【請求項4】
前記コイル接続部は、前記コイル支持部の軸方向一方側、かつ、前記第2幅広部の径方向内側において、前記ホルダ本体部から軸方向一方側に突出する、
請求項1~3の何れか一項に記載のステータ。
【請求項5】
前記コイル支持部と前記ホルダ本体部とは、同一の単一部材の一部であり、
前記バスバーは、前記バスバーホルダにインサート成形され、
前記コイル接続部の径方向外側の面は、前記コイル支持部に対して露出している、
請求項1~4の何れか一項に記載のステータ。
【請求項6】
前記ステータコアに取り付けられるインシュレータを備え、
前記バスバーホルダは、軸方向他方側の面から軸方向他方側に延びる押さえ部を有し、
前記押さえ部は、前記インシュレータに挿入された絶縁紙と軸方向に対向する、
請求項1~5の何れか一項に記載のステータ。
【請求項7】
前記絶縁紙は、
前記コイルの径方向外側に位置する外側絶縁紙部と、
前記コイルの周方向間に位置する周方向絶縁紙部と、
前記外側絶縁紙部と、前記周方向絶縁紙部と、を繋ぐ折り曲げ部と、
を有し、
前記押さえ部は、軸方向から見て、前記コイルの周方向間に配置され、前記折り曲げ部と軸方向に対向する、
請求項6に記載のステータ。
【請求項8】
前記コイル接続部は、軸方向から見て前記周方向に長い矩形であって、径方向外側の面から前記径方向外側に突出するバスバー凸部を有する、
請求項1~7の何れか一項に記載のステータ。
【請求項9】
前記バスバーホルダは、
前記バスバー本体部を保持するホルダ本体部と、
前記ホルダ本体部と別体であり、前記ホルダ本体部の軸方向他方側に配置されるコイルサポート部と、を有し、
前記幅狭部および前記第2幅広部は、前記コイルサポート部に設けられる、
請求項1~8の何れか一項に記載のステータ。
【請求項10】
前記コイルサポート部は、
複数の前記コイル支持部の軸方向他方端を接続する環状のコイルサポート本体部と、
前記コイルサポート本体部から軸方向一方側に延びる固定部と、を有し、
前記ホルダ本体部は、軸方向に貫通する固定孔を有し、
前記固定部は、
前記固定孔に挿入される軸部と、
前記固定孔の軸方向一方側に位置し、軸方向から見て少なくとも一部が前記固定孔の外側に位置する頭部と、を有する、
請求項9に記載のステータ。
【請求項11】
前記バスバーホルダは、
前記第2幅広部の径方向内側において、前記ホルダ本体部から軸方向一方側に延びる内側壁部と、
前記第2幅広部の径方向外側において、前記ホルダ本体部から軸方向一方側に延びる外側壁部と、を有し、
前記コイル引出線の端部は、前記ホルダ本体部、前記内側壁部および前記外側壁部により形成される空間に注入される接着剤によって覆われ、
前記固定部は、軸方向から見て、前記内側壁部と前記外側壁部の間において前記ホルダ本体部に固定される、
請求項10に記載のステータ。
【請求項12】
前記固定部は、熱溶着により前記ホルダ本体部に固定される、
請求項11に記載のステータ。
【請求項13】
前記ステータコアに取り付けられるインシュレータを備え、
前記インシュレータは、
前記ステータコアのティースの周囲を覆うインシュレータ本体部と、
前記インシュレータ本体部の径方向内側において軸方向および周方向に広がる内側壁部と、
を有し、
前記内側壁部は、周方向の両端から内側に向かって凹み、かつ軸方向に延びる一対の内側溝部を有する、
請求項1~12の何れか一項に記載のステータ。
【請求項14】
請求項1~13の何れか一項に記載のステータと、
前記ステータに対して回転可能に設けられるロータと、を有する電動圧縮機用モータであって、
前記バスバーホルダは、軸方向に延び、径方向内端から径方向外側に向かって凹む凹部を有する、
モータ。
【請求項15】
前記凹部は、軸方向から見て、前記コイルの周方向間に配置される、
請求項14に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータ、およびモータに関する。
【背景技術】
【0002】
バスバーのコイル接続部とコイル引出線を溶着によって接続するステータが知られている。特許文献1に記載のステータでは、バスバーホルダにコイル引出線をホルダ上に引き出す切り欠き状の案内部が径方向に延びた構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ステータの組立時において、コイルを巻き付けた後の巻き終わりのコイル引出線の位置が所定の位置に定まらないうえ、自由端となって動きやすい状態となる。そのため、コイル接続部に対してコイル引出線の位置調整が必要になる場合、作業効率が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、コイル接続部に対するコイル引出線の位置決め作業を容易に行え、組立効率を向上できるステータ、およびモータを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のステータの一つの態様は、ステータコアと、コイルと、バスバーと、バスバーホルダと、を備える。前記バスバーは、環状のバスバー本体部と、前記バスバー本体部から延び、前記コイルのコイル引出線と電気的に接続されるコイル接続部と、を備える。前記バスバーホルダは、前記バスバー本体部を保持するホルダ本体部と、前記ホルダ本体部を軸方向に貫通し、前記ホルダ本体部の外縁から径方向内側に向かって延びる切り欠き形状であって、径方向内側の内縁において、前記コイル引出線を軸方向に沿って支持し周方向に複数設けられるコイル支持部と、を有する。前記コイル支持部は、径方向外側に設けられ、周方向における幅が、前記コイル引出線の周方向における幅よりも大きい第1幅広部と、前記第1幅広部の径方向内側に設けられ、周方向における幅が、前記コイル引出線の周方向における幅よりも小さい幅狭部と、前記幅狭部の径方向内側に設けられ、周方向における幅が、前記コイル引出線の周方向における幅よりも大きく、かつ、前記第1幅広部の周方向における幅よりも小さい第2幅広部と、を有する。前記コイル支持部は、前記コイルの巻き始めの前記コイル引出線を支持する第1コイル支持部と、前記コイルの巻き終わりの前記コイル引出線を支持する第2コイル支持部と、を含む。前記第2コイル支持部の少なくとも前記第1幅広部は、軸方向から見て径方向に対して周方向に傾いて延びる。
【0007】
本発明のモータの一つの態様は、上述のステータと、前記ステータに対して回転可能に設けられるロータと、を有する電動圧縮機用モータであって、前記バスバーホルダは、軸方向に延び、径方向内端から径方向外側に向かって凹む凹部を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの態様によれば、モータのステータにおいて、コイル接続部に対するコイル引出線の位置決め作業を容易に行え、組立効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態のモータの断面模式図である。
【
図2】
図2は、一実施形態のステータの分解斜視図である。
【
図3】
図3は、一実施形態のステータの平面図である。
【
図4】
図4は、一実施形態のステータの一部の斜視図である。
【
図5】
図5は、一実施形態のステータの一部の部分平面図である。
【
図6】
図6は、一実施形態のステータの一部の部分斜視図である。
【
図7】
図7は、一実施形態のインシュレータの一部の部分平面図である。
【
図8】
図8は、一実施形態のインシュレータの一部の部分斜視図である。
【
図9】
図9は、一実施形態のステータの一部の縦断面図である。
【
図10】
図10は、一実施形態のステータの一部の部分断面図である。
【
図12】
図12は、変形例のステータの一部の部分斜視図である。
【
図13】
図13は、変形例のステータの一部の部分斜視図である。
【
図14】
図14は、変形例のコイルサポート部の斜視図である。
【
図15】
図15は、変形例のステータの一部の部分斜視図である。
【
図16】
図16は、変形例のステータの一部の部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を基にモータ10およびステータ30の実施形態について説明する。
以下の説明においては、モータ10の中心軸線Jの軸方向を単に「軸方向」と呼び、中心軸線Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸線Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。
【0011】
また、以下の説明では、軸方向一方側を上側、軸方向他方側を下側としてモータ10およびステータ30の各部の配置関係を説明する。しかしながら、モータ10およびステータ30の実際の使用時の姿勢は、本明細書で説明される上下方向に限定されない。
【0012】
図1は、本実施形態のモータ10の断面模式図である。
図2は、本実施形態のステータ30の分解斜視図である。
図3は、ステータ30の平面図である。
図4は、ステータ30の一部の斜視図である。
図5は、ステータ30の一部の部分平面図である。
図6は、ステータ30の一部の部分斜視図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態のモータ10は、中心軸線Jを中心とするロータ20と、ロータ20の径方向外側に配置されるステータ30と、ハウジング11と、複数のベアリング15,16と、を備える。本実施形態のモータ10は、インナーロータ型のモータである。ロータ20は、中心軸線Jを中心として回転する。
【0014】
ハウジング11は、ロータ20およびステータ30を収容する。ハウジング11は、筒部11aと、底壁部11cと、ベアリング保持壁部11dと、を有する。筒部11aは、中心軸線Jに沿って延びる円筒状である。ベアリング保持壁部11dは、筒部11aの軸方向一方側の開口を覆う。ベアリング保持壁部11dは、筒部11aの内周面に固定される。ベアリング保持壁部11dは、ベアリング15を保持する。底壁部11cは、筒部11aの軸方向他方側の開口を覆う。底壁部11cは、ベアリング16を保持する。
【0015】
ハウジング11の内部には、冷媒が流れる。筒部11aには、冷媒流入口11pと冷媒排出口11qとが設けられる。冷媒流入口11pと冷媒排出口11qとは、軸方向に並んで配置される。冷媒流入口11pは、ステータ30に対し軸方向一方側に位置し、冷媒排出口11qは、ステータ30に対し軸方向他方側に位置する。冷媒は、ハウジング11内において、ステータ30のスロットを通過してステータ30の軸方向一方側から他方側に向かって流れる。
【0016】
ロータ20は、径方向においてステータ30に対向する。本実施形態のロータ20は、ステータ30の径方向内側に配置される。ロータ20は、シャフト21と、ロータコア22と、マグネット23と、を有する。シャフト21は、軸方向に延びる円柱状である。なお、シャフト21は、軸方向に延びる円筒状でもよい。シャフト21は、複数のベアリング15,16により、中心軸線J回りに回転可能に支持される。複数のベアリング15,16は、軸方向に互いに間隔をあけて配置され、ハウジング11に支持される。すなわち、シャフト21は、複数のベアリング15,16を介してハウジング11に支持される。
【0017】
ロータコア22は、軸方向に延びる筒状である。ロータコア22は、シャフト21よりも外径が大きい。ロータコア22は、シャフト21よりも軸方向の長さが小さい。ロータコア22の内周面は、シャフト21の外周面と固定される。ロータコア22は、シャフト21と圧入や接着等により固定される。ロータコア22は、軸方向において、一対のベアリング15,16間に位置する。マグネット23は、ロータコア22の外周部に固定される。
【0018】
ステータ30は、ロータ20と径方向に隙間をあけて対向する。ステータ30は、ロータ20を径方向外側から周方向の全周にわたって囲む。ステータ30は、ステータコア31と、インシュレータ50と、複数のコイル40と、バスバーユニット6と、複数の絶縁紙3と、を有する(
図3~
図6参照)。
【0019】
ステータコア31は、ロータ20を径方向外側から囲む。ステータコア31は、例えば、軸方向に積層する複数の電磁鋼板により構成される。ステータコア31は、ハウジング11の内周面に固定される。ステータコア31とハウジング11との固定は、例えば焼き嵌めや圧入等により行われる。
【0020】
ステータコア31は、コアバック部31aと、複数のティース部31bと、を有する。コアバック部31aは、中心軸線Jを中心とする環状である。コアバック部31aの径方向外側を向く外周面は、筒部11aの内周面と固定される。
【0021】
ティース部31bは、コアバック部31aから径方向内側に延びる。複数のティース部31bは、周方向に沿って並ぶ。複数のティース部31bは、周方向に互いに間隔をあけて配置される。各ティース部31bの径方向内側面は、ロータ20の径方向外側面と隙間をあけて対向する。
【0022】
複数のインシュレータ50は、ステータコア31に取り付けられる。複数のインシュレータ50は、複数のティース部31bのそれぞれに径方向内側から装着される。インシュレータ50は、コイル40とティース部31bとの間を絶縁する絶縁部材である。インシュレータ50は、例えば、樹脂製である。
【0023】
インシュレータ50は、インシュレータ本体部51と、外側壁部(壁部)53と、内側壁部54と、を有する。本実施形態のステータ30には、15個のインシュレータ50が設けられる。
【0024】
インシュレータ本体部51は、径方向に延びる角筒状である。インシュレータ本体部51には、径方向に貫通する貫通孔51hが設けられる。貫通孔51hには、ティース部31bが通される。したがって、インシュレータ本体部51は、ティース部31bを囲む。
【0025】
内側壁部54は、インシュレータ本体部51の径方向内側の端部から径方向と直交する方向に拡がる。同様に、外側壁部53は、インシュレータ本体部51の径方向外側の端部から径方向と直交する方向に拡がる。
【0026】
内側壁部54および外側壁部53は、板面が周方向に沿って湾曲して延びる板状である。すなわち、内側壁部54および外側壁部53は、周方向に沿って延びる。複数のインシュレータ50の内側壁部54および外側壁部53は、それぞれ周方向に沿って環状に並ぶ。
【0027】
図7は、インシュレータ50の一部の部分平面図である。
図7に示すように、外側壁部53は、周方向の両端から内側に向かって凹み、かつ軸方向に延びる一対の外側溝部53aを有する。外側溝部53aには、後述する絶縁紙3の一部が上側から挿入されて装着される。外側溝部53aの径方向に沿う溝幅は、絶縁紙3の厚みとほぼ同寸法である。内側壁部54は、周方向の両端から内側に向かって凹み、かつ軸方向に延びる一対の内側溝部54aを有する。内側溝部54aの径方向に沿う溝幅は、外側溝部53aの溝幅よりも大きい。内側壁部54に内側溝部54aを設けることにより、インシュレータ50に巻き付けられるコイル40とティース部31bの径方向内側を向く面(内周面)との沿面距離を長くすることができ、コイル40とティース部31bの径方向内側を向く面との間の絶縁を確保できる。
【0028】
図8は、インシュレータ50の一部の部分斜視図である。
図4及び
図8に示すように、外側壁部53の上端縁53bには、バスバーユニット6を固定するボス5(突出部、固定部)が設けられる。すなわち、インシュレータ50は、ボス5を有する。ボス5は、インシュレータ50の上側に位置するバスバーユニット6の後述するホルダ本体部62の上側に突出する。ボス5は、外側壁部53の上端縁53bから上側に延びる。ボス5は、円柱状の柱部5aと、柱部5aの先端に位置する抜け止め部5bと、を有する。柱部5aの外径は、固定孔64の内径より小さい。ボス5の柱部5aは、固定孔64を通過する。抜け止め部5bは、ボス5の先端を例えば熱溶着や熱かしめすることで、軸方向から見て略円形状に成形される。なお、
図4及び
図8に示す抜け止め部5bは、熱溶着や熱かしめされていない状態を示している。また、抜け止め部5bの外径は、固定孔64の周方向の切欠き幅より大きい。抜け止め部5bは、ホルダ本体部62のフランジ部62bの上面に接触する。
【0029】
図1に示すように、コイル40は、多層に巻き回されたコイル線41からなる。複数のコイル40は、それぞれインシュレータ50に巻き付けられる。コイル40は、内側壁部54と外側壁部53との径方向の間に位置する。すなわち、内側壁部54および外側壁部53は、コイル40を径方向両側からガイドする。内側壁部54および外側壁部53は、コイル40がインシュレータ50から径方向に離脱することを抑制する。
【0030】
図2に示すように、周方向に隣り合って配置されるインシュレータ50に巻き付けられるコイル40同士は、スロットにおいて互いに隣接する。コイル40は、コイル線41を多層に巻くことで構成される。インシュレータ50毎に巻き付けられるコイル40のコイル線41の総巻き数は、それぞれ等しい。また、各コイル40を構成するコイル線41は、互いに同種のコイル線であり、各コイル40による磁界の磁束密度は、略等しい。ここで、コイル40についての「コイル線の巻き数」とは、径方向の特定の位置におけるコイル40の局所的な巻き数(すなわち、層数)であって、1つのコイル全体(径方向内側から径方向外側の全領域)の総巻き数を意味するものではない。
【0031】
コイル40は、インシュレータ50に巻き付けられた状態で、インシュレータ50とともにティース部31bに装着される。
【0032】
図2に示すように、複数の絶縁紙3は、周方向に沿って並ぶ。絶縁紙3は、厚さ方向を径方向とし位置させて、コアバック部31aの径方向内側を向く面(内周面)に沿って配置される。
【0033】
図7及び
図8に示すように、絶縁紙3は、コイル40の径方向外側に位置する外側絶縁紙部301と、コイル40の周方向間に位置する周方向絶縁紙部302と、外側絶縁紙部301および周方向絶縁紙部302を繋ぐ折り曲げ部303と、を有する。絶縁紙3は、一対の周方向絶縁紙部302を周方向に重ね合わせて、それぞれの径方向内側の端部同士を接続部304で繋いで構成され、軸方向から見てT型形状をなしている。絶縁紙3の軸方向から見た形状は、T型形状に限定されず、接続部304が省略され、外側絶縁紙部301と周方向絶縁紙部302とが折り曲げ部303で繋がれたL型形状のものが、それぞれ周方向絶縁紙部302を周方向に向き合わせて配置される構成であってもよい。
【0034】
絶縁紙3は、周方向において隣り合うティース部31bの間に配置される。絶縁紙3の周方向両側の外側絶縁紙部301の端部の一部は、周方向に隣り合うインシュレータ50の外側壁部53の外側溝部53aに上側から挿入された状態で支持される。これにより、絶縁紙3は、コアバック部31aの内周面と外側壁部53との間に挟まれて径方向の移動が制限される。絶縁紙3は、コアバック部31aの内周面と外側壁部53との間に上側から挿入される。
【0035】
絶縁紙3は、周方向に隣り合うインシュレータ50の外側壁部53の間の隙間に配置される。これにより、インシュレータ50に巻き付けられるコイル40とコアバック部31aとの沿面距離を長くすることができ、コイル40とコアバック部31aとの間の絶縁を確保できる。
【0036】
次にバスバーユニット6について詳細に説明する。なお、
図1に示すように、バスバーユニット6は、軸方向でコイル40を挟んだ両側、すなわち上側と下側に設けられる2つのカバー部材6A、6Bのうち上側に配置されるカバー部材6Aに相当する。下側のカバー部材6Bについては、上側のカバー部材6Aとほぼ同様の構成を有するため、ここでは詳しい説明は省略する。
【0037】
なお、本実施形態のモータ10は、3相モータである。3相とは、U相、V相およびW相である。3相モータの場合、U相、V相およびW相の各コイル40は、バスバーユニット6と電気的に接続される。
【0038】
バスバーユニット6は、
図1~
図3に示すように、ステータコア31の上側に位置する。バスバーユニット6は、バスバーホルダ60と、バスバー70と、を備える。
【0039】
図9は、ステータ30の一部の縦断面図である。
図4及び
図9に示すように、バスバー70は、環状のバスバー本体部71と、バスバー本体部71から延び、コイル40のコイル引出線41cと電気的に接続される複数のコイル接続部72と、を備える。バスバー70は、バスバーホルダ60にインサート成形される。
【0040】
バスバー70は、周方向に沿って延びるバスバー本体部71を有する。バスバー本体部71は、インシュレータ50の外側壁部53の径方向内側に位置するとともに、外側壁部53の端部よりも軸方向におけるコイル40に近づく方向に位置する、バスバー70は、金属板を金型で打ち抜いたブランクを、曲げ加工することにより製造される。
【0041】
図4及び
図5に示すように、複数のコイル接続部72は、周方向に沿って並ぶ。コイル接続部72は、径方向を厚さ方向とする板状である。コイル接続部72は、後述するコイル支持部63の軸方向の上側、かつ、第2幅広部633の径方向内側において、ホルダ本体部62から上側に突出する。コイル接続部72の径方向外側の接続面72aは、コイル支持部63に対して露出している。コイル接続部72は、軸方向から見て、周方向に長い矩形をなしている。
【0042】
バスバーホルダ60は、ホルダ本体部62と、コイル支持部63と、固定孔64と、を有する。ホルダ本体部62は、バスバー本体部71を保持する。ホルダ本体部62は、中心軸線Jを中心とし、中心軸線Jと直交する平面に沿う円板状である。バスバーホルダ60は樹脂製である。コイル支持部63は、ホルダ本体部62を軸方向に貫通し、ホルダ本体部62の外縁から径方向内側に向かって延びる切り欠き形状である。コイル支持部63は、径方向内側の内縁において、コイル引出線41cを軸方向に沿って支持する。コイル支持部63は、周方向に沿って複数設けられる。固定孔64は、インシュレータ50と固定される。固定孔64は、複数設けられる。
【0043】
図1及び
図3に示すように、ホルダ本体部62は、コイル40の上側(軸方向一方側)かつコイル引出線41cの下側(軸方向他方側)に位置する。ホルダ本体部62は、コイル40が配置される領域とコイル引出線41cが配置される領域とを区画する。ホルダ本体部62は、コイル40とコイル引出線41cとの絶縁を確保する。
【0044】
図1及び
図9に示すように、ホルダ本体部62は、インシュレータ50の外側壁部53と内側壁部54との間を通って周方向に延びる。ここで、外側壁部53の径方向内側を向く面を内側面53cと呼ぶ。すなわち、インシュレータ50は、径方向内側を向く内側面53cを有する。ホルダ本体部62は、内側面53cに径方向内側から接触する。これにより、バスバーホルダ60は、内側面53cを径方向内側から支持し、インシュレータ50が径方向内側に移動することを抑制する。
【0045】
図10は、ステータ30の一部の部分断面図である。
図9及び
図10に示すように、外側壁部53の上部は、径方向内側に向かうに従い漸次、下方に傾斜するインシュレータ傾斜面53dを有する。ホルダ本体部62は、径方向内側に向かうに従い漸次、下方に傾斜するホルダ傾斜面621(カバー部材傾斜面)を有する。インシュレータ傾斜面53dおよびホルダ傾斜面621は、互いに面接触した状態、或いは互いに近接した状態で設けられている。
【0046】
ホルダ本体部62は、径方向の外周側において、周方向に隣り合うコイル支持部63同士の間にフランジ部62bを有する(
図4参照)。フランジ部62bは、ホルダ傾斜面621よりも径方向外側に延びる。フランジ部62bには、軸方向に貫通し、径方向外側から径方向内側に向かう切り欠きである固定孔64を有する。フランジ部62bは、ボス5の抜け止め部5bと軸方向に対向する。固定孔64には、インシュレータ50の外側壁部53から上側に突出するボス5が軸方向に貫通されて固定される。固定孔64に貫通したボス5の抜け止め部5bを例えば熱溶着や熱かしめすることで、インシュレータ50に対してバスバーホルダ60が固定される。
【0047】
バスバーホルダ60は、
図4及び
図6に示すように、ホルダ本体部62から下側に延びる押さえ部622を有する。押さえ部622は、軸方向から見て、コイル40の周方向間に配置され、インシュレータ50に挿入された絶縁紙3の折り曲げ部303と軸方向に対向する。押さえ部622は、軸方向で絶縁紙3を向く押さえ面622aを有する。押さえ面622aは、絶縁紙3に対して上側から接触、あるいは近接し、絶縁紙3に対して軸方向に位置決めする。
【0048】
ステータ30に電流が供給されると、コイル40に磁極が生じ、コイル40およびコイル40が巻き付けられるインシュレータ50には、径方向に向かう磁力が付与される。本実施形態のインシュレータ50は、ティース部31bに対し径方向内側から装着される。このため、コイル40およびインシュレータ50に径方向内側に向かう力が付与されると、インシュレータ50がティース部31bから抜け出る虞がある。本実施形態によれば、バスバーユニット6が、インシュレータ50の径方向内側への移動を制限することで、インシュレータ50をステータコア31に固定できる。これにより、インシュレータ50とロータ20との干渉を抑制でき、モータ10の信頼性を高めることができる。
【0049】
本実施形態によれば、複数のインシュレータ50の外側壁部53が周方向に沿って環状に並び、バスバーホルダ60が複数の外側壁部53の内側に嵌る。このため、中心軸線Jを挟んで反対側に位置するインシュレータ50同士が、バスバーホルダ60を挟み込んで配置され、それぞれバスバーホルダ60を挟んで径方向への移動を抑制する。すなわち、本実施形態によれば、バスバーホルダ60は、中心軸線Jと直交する平面内において、何れの方向にも移動し難くなり、インシュレータ50の移動抑制の安定性を高めることができる。
【0050】
図2に示すように本実施形態のステータ30には、2つのカバー部材6A、6Bが設けられる。2つのカバー部材6A、6Bは、複数のインシュレータ50を上下方向から挟む。一方のカバー部材6Aは、複数のインシュレータ50の上側で外側壁部53の内側面53cを支持する。また、下側のカバー部材6Bは、
図9に示すように、複数のインシュレータ50の下側で外側壁部53の内側面53cを支持する。2つのカバー部材6A、6Bが、インシュレータ50を上下両方で支持するため、インシュレータ50の径方向内側への移動を安定的に抑制することができる。
【0051】
図4は、中心軸線Jと直交するステータ30の部分断面図である。
図4及び
図5に示すように、コイル支持部63とホルダ本体部62とは、同一の単一部材の一部である。コイル支持部63は、第1幅広部631、幅狭部632及び第2幅広部633を径方向外側から内側の順に有する。第1幅広部631は、周方向における幅が、コイル引出線41cの外径、すなわち周方向における幅よりも大きい。第1幅広部631は、第1幅広部631が延びる方向に沿って一定の幅寸法である。幅狭部632は、第1幅広部631の径方向内側に設けられ、周方向における幅が、コイル引出線41cの周方向における幅よりも小さい。第2幅広部633は、幅狭部632の径方向内側に設けられ、周方向における幅が、コイル引出線41cの周方向における幅よりも大きく、かつ、第1幅広部631の周方向における幅よりも小さい。
【0052】
コイル支持部63には、コイル40から延び出るコイル線41のコイル引出線41cが通過する。コイル40から延び出るコイル引出線41cは、コイル40同士を電気的に接続するものであってもよく、また、ステータ30に電力を供給する外部電源に電気的に接続されるものであってもよい。
【0053】
コイル支持部63は、コイル40の巻き始めのコイル引出線41cを支持する第1コイル支持部63Aと、コイル40の巻き終わりのコイル引出線41cを支持する第2コイル支持部63Bと、を含む。第1コイル支持部63Aの第1幅広部631は、軸方向から見て径方向に延びる。第2コイル支持部63Bの第1幅広部631は、軸方向から見て径方向に対して周方向に傾いて延びる。軸方向から見て、第2コイル支持部63Bの径方向に対してなす角度は、第1コイル支持部63Aが径方向に対してなす角度より大きい。軸方向から見て、第2コイル支持部63Bにおける第1幅広部631の径方向外側の開口部631aは、周方向に隣り合う外側壁部53同士の間に位置する。
【0054】
次に、
図2に基づいてステータ30の組み立て手順について説明する。
先ず、インシュレータ50にコイル線41を巻き付け、コイル40を設ける。次いで、インシュレータ50を径方向内側からティース部31bに装着する。
【0055】
次いで、
図12に示すように、下側のカバー部材6Bをインシュレータ50に下側から装着する。このとき、インシュレータ50のボス5をホルダ本体部62の固定孔64に挿入し、ボス5を熱かしめすることでボス5の先端に抜け止め部5bを設ける。これにより、インシュレータ50に、下側のカバー部材6Bを固定する。
【0056】
次いで、コアバック部31aの内周面と、インシュレータ50の外側壁部53との間に絶縁紙3を上側から挿入する。さらに、バスバーユニット6(6A)をインシュレータ50に上側から装着する。このとき、インシュレータ50のボス5をインシュレータ50の固定孔64に挿入し、ボス5を熱かしめすることでボス5の先端に抜け止め部5bを設ける。これにより、インシュレータ50に、上側のバスバーユニット6を固定する。
【0057】
コイル40の巻き終わりのコイル引出線41cをコイル接続部72に接続する際、先ずバスバーユニット6をインシュレータ50に配置する。このとき、第2コイル支持部63B内に支持されるコイル引出線41cをバスバー70の径方向外側に曲げて一旦逃がしておく。そして、バスバー70をインシュレータ50に熱溶着した後に、コイル引出線41cをコイル接続部72に近接させて抵抗溶接により電気的に接続する。このようにインシュレータ50にバスバーユニット6を載せた後に、コイル引出線41cをコイル接続部72に接続する位置に戻すときに、インシュレータ50の外側壁部53に軸方向に重ならない第2コイル支持部63Bに沿って移動できるので、インシュレータ50の外側壁部53に干渉することなく容易に接続作業を行うことができる。
【0058】
本実施形態によれば、コイル支持部63は、径方向外側に設けられ、周方向における幅が、コイル引出線41cの周方向における幅よりも大きい第1幅広部631と、第1幅広部631の径方向内側に設けられ、周方向における幅が、コイル引出線41cの周方向における幅よりも小さい幅狭部632と、幅狭部632の径方向内側に設けられ、周方向における幅が、コイル引出線41cの周方向における幅よりも大きく、かつ、第1幅広部631の周方向における幅よりも小さい第2幅広部633と、を有する。コイル支持部63は、コイル40の巻き始めのコイル引出線41cを支持する第1コイル支持部63Aと、コイル40の巻き終わりのコイル引出線41cを支持する第2コイル支持部63Bと、を含む。第2コイル支持部63Bの少なくとも第1幅広部631は、軸方向から見て径方向に対して周方向に傾いて延びる。このため、コイル40の巻き回し後にコイル40の上側にバスバー70およびバスバーホルダ60を取り付ける際に、コイル40の巻き終わりのコイル引出線41cを支持する第2コイル支持部63Bの第1幅広部631が径方向に対して斜めに延びるように配置されるので、第1幅広部631の開口部631a側の位置を周方向に隣り合うインシュレータ50間に配置することができる。すなわち、コイル40の巻き終わりのコイル引出線41cを軸方向から見てインシュレータ50に重ならない位置に回避させて保持することができる。そのため、ステータ30の組立時において、径方向に対して斜めに延びる第2コイル支持部63Bを通して、コイル40の巻き終わりのコイル引出線41cの位置が定まりにくいコイル引出線41cを周方向に並ぶインシュレータ50間に位置決めして保持することができる。
【0059】
このように、本実施形態では、ステータ30の組立時において、コイル40を巻き付けた後の巻き終わりのコイル引出線41cの位置が所定の位置に定まらないうえ、自由端となって動きやすい状態となるが、コイル40の巻き終わりのコイル引出線41cをインシュレータ50に接触させることなくコイル接続部72に電気的に接続することができ、コイル接続部72同士の間隔を確保して、溶着時の作業効率を向上できる。つまり、コイル接続部72に対するコイル引出線41cの位置決めが不十分で位置調整が必要になって作業効率が低下することがなくなり、組立効率を向上できる。
【0060】
また、本実施形態では、第2コイル支持部63Bを径方向に対して斜めにすることで、バスバーホルダ60のホルダ本体部62を切り欠く開口面積を必要最低限にできる。
【0061】
本実施形態によれば、軸方向から見て、第2コイル支持部63Bの径方向に対してなす角度は、第1コイル支持部63Aが径方向に対してなす角度より大きい。これにより、第1コイル支持部63Aの径方向外周端の位置と、第2コイル支持部63Bの径方向外周端の位置との周方向の距離を大きくすることができ、コイル40の巻き始めと巻き終わりのコイル引出線41cが近接することを抑制でき、上述の効果を十分に得ることができる。
【0062】
本実施形態によれば、ステータ30を覆うインシュレータ50を有する。インシュレータ50は、コイル40の径方向外側において、軸方向におけるコイル40から離れる方向に突出する外側壁部53を有する。外側壁部53は、周方向に間隔をあけて複数配置され、軸方向から見て、第2コイル支持部63Bにおける第1幅広部631の径方向外側の開口部631aは、周方向に隣り合う外側壁部53同士の間に位置する。これにより、コイル40の巻き始めのコイル引出線41cの場合にはインシュレータ50に対して径方向に対向していても一定の位置に決められることから、軸方向から見て第1コイル支持部63Aが径方向内側のコイル接続部72まで延びていればよく、インシュレータ50の外側壁部53に重なっていてもよい。一方で、コイル40の巻き終わりのコイル引出線41cの場合、インシュレータ50の外側壁部53に軸方向から見て重ならない位置となるので、上述の効果を十分に得ることができる。
【0063】
本実施形態によれば、コイル接続部72は、コイル支持部63の軸方向一方側、かつ、第2幅広部633の径方向内側において、ホルダ本体部62から軸方向一方側に突出する。これにより、コイル引出線41cを支持するコイル支持部63の第2幅広部633の位置と、コイル接続部72の位置とが軸方向に一致する。そのため、第2幅広部633に支持されたコイル引出線41cをコイル接続部72に対して溶着しやすくなり、作業性を向上できる。
【0064】
本実施形態によれば、コイル支持部63とホルダ本体部62とは、同一の単一部材の一部であり、バスバー70は、バスバーホルダ60にインサート成形される。コイル接続部72の径方向外側の接続面72aは、コイル支持部63に対して露出している。これにより、コイル引出線41cとコイル接続部72とが近接した位置で支持することができる。すなわち、第2幅広部がコイル接続部72に繋がっているので、コイル引出線41cを第2幅広部633に嵌めて支持させる作業を行うことで、その位置でコイル引出線41cがコイル接続部72に接触した位置になるので、コイル引出線41cとコイル接続部72との接続を容易に行うことができる。
【0065】
本実施形態によれば、ステータコア31に取り付けられるインシュレータ50を備える。バスバーホルダ60は、軸方向他方側の面から軸方向他方側に延びる押さえ部622を有する。押さえ部622は、インシュレータ50に挿入された絶縁紙3と軸方向に対向する。これにより、バスバーホルダ60をインシュレータ50に取り付ける作業により、バスバーホルダ60の押さえ部622を絶縁紙3の上側から押さえる位置に配置することができ、絶縁紙3の浮き上がりを抑制できる。このようにバスバーホルダ60に押さえ部622を設けるだけの簡単な構造により絶縁紙3の抜け止めになるので、インシュレータ50の形状を複雑化することなく、絶縁紙3の抜け止めが可能である。
【0066】
本実施形態によれば、絶縁紙3は、コイル40の径方向外側に位置する外側絶縁紙部301と、コイル40の周方向間に位置する周方向絶縁紙部302と、外側絶縁紙部301と、周方向絶縁紙部302と、を繋ぐ折り曲げ部303と、を有する。押さえ部622は、軸方向から見て、コイル40の周方向間に配置され、折り曲げ部303と軸方向に対向する。これにより、押さえ部622を絶縁紙の折り曲げ部303と軸方向に対向させることで、より安定した絶縁紙3の抜け止めとなる。
【0067】
本実施形態によれば、ステータコア31に取り付けられるインシュレータ50を備える。インシュレータ50は、ステータコア31のティース部31bの周囲を覆うインシュレータ本体部51と、インシュレータ本体部51の径方向内側において軸方向および周方向に広がる内側壁部54と、を有する。内側壁部54は、周方向の両端から内側に向かって凹み、かつ軸方向に延びる一対の内側溝部54aを有する。インシュレータ50の内側壁部54に内側溝部54aを設けることにより、インシュレータ50に巻き付けられる高周波のコイル40とステータコア31のティース部31bの内周面との沿面距離を長くすることができ、コイル40とティース部31bとの間の絶縁を確保できる。
【0068】
本実施形態によれば、インシュレータ50は、コイル40の径方向外側において、軸方向におけるコイル40から離れる方向に突出する外側壁部53を有する。外側壁部53は、径方向内側に向かうに従い漸次、軸方向におけるコイル40に近づく方向に傾斜するインシュレータ傾斜面53dを有する。バスバーホルダ60は、径方向内側に向かうに従い漸次、軸方向におけるコイル40に近づく方向に傾斜するホルダ傾斜面621を有する。インシュレータ傾斜面53dおよびホルダ傾斜面621は、面接触可能である、これにより、ホルダ傾斜面621とインシュレータ傾斜面53dとが径方向に対して傾斜するそれぞれの面で面接触した状態、あるいはそれぞれの面が近接して対向した状態で配置される。モータ駆動時にインシュレータ50に径方向内側に抜けようとする方向の力が付与されたときに、インシュレータ傾斜面53dがホルダ傾斜面621に面接触により接触し、インシュレータ50の径方向内側への移動を阻止することから、インシュレータ50の径方向内側へ抜けることを抑制できる。
【0069】
また、本実施形態では、ホルダ傾斜面621とインシュレータ傾斜面53dとの接触面をテーパ形状にすることにより接触面積が大きくなり、しかもホルダ傾斜面621とインシュレータ傾斜面53dとが面接触したときに、径方向に作用する力を傾斜面に沿う分力と傾斜面に垂直な分力に分散させることができる。そのため、モータ駆動時にインシュレータ50に径方向内側に抜けようとする方向の力が付与されたときに、バスバーホルダ60がインシュレータ50から受ける径方向の力を抑制でき、バスバーホルダ60の面接触部における破損を抑制できる。
【0070】
本実施形態によれば、バスバーホルダ60は、コイル40の端部と電気的に接続されるバスバー70を保持する。これにより、上記のようにインシュレータ50が径方向内側に抜けようとする力によるバスバーホルダ60の破損が抑制されるので、バスバーホルダ60にインシュレータ50の抜け止め機能に加え、バスバー70を保持する機能ももたせることができる。
【0071】
本実施形態によれば、バスバー70は、周方向に延びるバスバー本体部71を有する。バスバー本体部71は、外側壁部53の径方向内側に位置するとともに、軸方向において外側壁部53の突出側の端部よりもコイル40に近づく方向に位置する。これにより、インシュレータ50が径方向内側に抜けようとする力によるバスバーホルダ60の破損が抑制されることから、バスバーホルダ60にバスバー70を保持させることができる。インシュレータ傾斜面53dの径方向内側にバスバー70のバスバー本体部71を配置することで、コイル40とバスバーホルダ60の軸方向間のスペースの利用効率が良好となり、ステータ30の軸方向の寸法を抑制し、小型化を図ることができる。
【0072】
<変形例>
次に、変形例によるステータ30Aの構成について説明する。
図11は、変形例のステータ30Aの平面図である。
図12は、ステータ30Aの一部の部分斜視図である。
図13は、ステータ30Aの一部の部分斜視図である。
図14はコイルサポート部65の斜視図である。本変形例のステータ30Aは、バスバーユニット6の構成が異なる。なお、
図12及び
図13において、バスバーユニット6の上側に位置するコイル引出線41cの図示を省略する。
上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0073】
図12~
図14に示すように、本変形例のステータ30Aのバスバーホルダ60Aは、ホルダ本体部62の軸方向で下側に配置されるコイルサポート部65を有する。コイルサポート部65は、ホルダ本体部62と別体であり、ホルダ本体部62の下側に配置される。本実施形態では、コイル支持部63の幅狭部632及び第2幅広部633は、コイルサポート部65に設けられる。コイルサポート部65は、複数のコイル支持部63の軸方向他方端を接続する環状のコイルサポート本体部651と、コイルサポート本体部651から上側のホルダ本体部62側に延びる固定部652と、を有する。
【0074】
固定部652は、筒状である。固定部652は、ホルダ本体部62の後述する固定孔623を貫通して固定されている。固定部652は、固定孔623に挿入される軸部652aと、固定孔623の軸方向一方側に位置し、軸方向から見て少なくとも一部が固定孔623の外側に位置する頭部652bと、を有する。本実施形態において、頭部652bは、熱溶着された部分である。
【0075】
ホルダ本体部62には、第2幅広部633の径方向内側において、ホルダ本体部62から軸方向一方側に延びる内側壁部66と、第2幅広部633の径方向外側において、ホルダ本体部62から軸方向一方側に延びる外側壁部67と、を有する。コイル引出線41cの端部は、ホルダ本体部62、内側壁部66および外側壁部67に挟まれる空間に注入される接着剤Rによって覆われている。
【0076】
ホルダ本体部62は、軸方向に貫通する固定孔623を有する。固定孔623は、軸方向から見て、内側壁部66と外側壁部67の間に位置する。固定孔623は、コイルサポート部65の固定部652が貫通して固定される。固定部652は、軸方向から見て、内側壁部66と外側壁部67の間においてホルダ本体部62に固定される。
【0077】
図11及び
図12に示すように、ホルダ本体部62の径方向内側を向く内周面62cは、軸方向に延び、径方向内端から径方向外側に向かって凹む凹部624を有する。凹部624は、コイル40の周方向間に配置されている。
【0078】
本変形例によれば、
図12及び
図13に示すように、コイル接続部72は、軸方向から見て周方向に長い矩形であって、接続面72aから径方向外側に突出するバスバー凸部721を有する。これにより、例えばコイル支持部63において幅狭部632や第2幅広部633が別体の部材であって、コイル接続部72と第2幅広部633の位置がコイル接続部72よりも径方向外側に位置する場合であっても、径方向でバスバー凸部721の位置を第2幅広部633に一致させて配置することができる。そのため、第2幅広部633に支持させたコイル引出線41cを真上に伸ばしてバスバー凸部721に接触させることでき、溶接作業が容易になるうえ、溶着精度も向上できる。
【0079】
本変形例によれば、バスバーホルダ60Aは、バスバー本体部71を保持するホルダ本体部62と、ホルダ本体部62と別体であり、ホルダ本体部62の軸方向他方側に配置されるコイルサポート部65と、を有する。これにより、幅狭部632および第2幅広部633は、コイルサポート部65に設けられる。これにより、コイルサポート部65をホルダ本体部62と別体にすることで成形が容易になる。
【0080】
本変形例によれば、コイルサポート部65は、複数のコイル支持部63の軸方向他方端を接続する環状のコイルサポート本体部651と、コイルサポート本体部651から軸方向一方側に延びる固定部652と、を有する。ホルダ本体部62は、軸方向に貫通する固定孔623を有する。固定部652は、固定孔623に挿入される軸部652aと、固定孔623の軸方向一方側に位置し、軸方向から見て少なくとも一部が固定孔623の外側に位置する頭部652bと、を有する。これにより、コイルサポート部65がステータコア31に接触することなく、コイルサポート部65をホルダ本体部62に固定部652を介して固定することができる。コイルサポート部65の径寸法の制約が少なくなり、かつコイルサポート部65の接地形状の制約も不要となるので、成形に必要な樹脂の重量を低減できる。また、固定部652の頭部は、熱溶着や熱かしめでとすることで固定部652をホルダ本体部62に固定できる。
【0081】
本変形例によれば、バスバーホルダ60Aは、第2幅広部633の径方向内側において、ホルダ本体部62から軸方向一方側に延びる内側壁部66と、第2幅広部633の径方向外側において、ホルダ本体部62から軸方向一方側に延びる外側壁部67と、を有する。コイル引出線41cの端部は、ホルダ本体部62、内側壁部66および外側壁部67により形成される空間に注入される接着剤Rによって覆われる。固定部652は、軸方向から見て、内側壁部66と外側壁部67の間においてホルダ本体部62に固定される。これにより、コイルサポート部65の固定部652は、軸方向から見て、内側壁部54と外側壁部53の間でホルダ本体部62の径方向内側の位置で固定される。そのため、この位置で固定部652を介して配置されるコイルサポート部65の径向寸法を小さく抑制できる。
【0082】
本変形例によれば、固定部652は、熱溶着によりホルダ本体部62に固定される。これにより、ホルダ本体部62の固定孔623が、固定孔623を貫通した固定部652の頭部が熱溶着されて塞がれるので、内側壁部54と外側壁部53の間に形成される空間に注入される接着剤Rが固定孔を通じてコイルサポート部65側に漏れ出すことを抑制できる。
【0083】
本変形例によれば、ボス5の端部は、軸方向にカシメられてフランジ部62bに固定される。これにより、カシメによってボス5をホルダ本体部62のフランジ部62bに対して軸方向に容易に固定することができる。
【0084】
本変形例によれば、バスバーホルダ60Aは、ホルダ傾斜面621よりも径方向外側に延びるフランジ部62bと、フランジ部62bを軸方向に貫通し、径方向に長い長孔、または、径方向外側から径方向内側に向かう切り欠きである固定孔64と、を有する。インシュレータ50の外側壁部53は、軸方向におけるコイル40から離れる方向に突出し、固定孔64を貫通するボス5を備える。ボス5の端部は、フランジ部62bと軸方向に対向する。これにより、バスバーホルダ60Aの固定孔64にボス5を貫通させてフランジ部62bのボス5の端部をフランジ部62bと軸方向に対向させることで、インシュレータ50に対してバスバーホルダ60Aを軸方向に固定できる。このとき、固定孔64は径方向に延びる長孔、あるいは切り欠き形状であり、ボス5が径方向に移動可能である。そのため、ボス5に径方向の力がかかりにくい構造となり、ボス5の損傷を抑制することができる。
【0085】
本変形例によれば、バスバーホルダ60Aは、軸方向に延び、径方向内端から径方向外側に向かって凹む凹部624を有する。これにより、バスバーホルダ60Aの径方向内側の内面に複数の軸方向に延びる凹部624が設けられ、バスバーホルダ60A内側の体積が増大するので、ロータ20とステータ30との間を流通する冷媒の流動性を向上することができる。
【0086】
本変形例によれば、凹部624は、軸方向から見て、コイル40の周方向間に配置される。これにより、インシュレータ50やバスバー70の角部に凹部624が設けられることで、凹部624の体積を大きくでき、上述の冷媒の流動性を高める効果を十分に得ることができる。
【0087】
本変形例によれば、ボス5の端部は、周方向に突出する爪部を有してもよい。爪部は、フランジ部62bと軸方向に対向する。これにより、固定部であるボス5を固定孔64に通過させ、ボス5の端部の爪部がフランジ部62bに引っ掛かることで、ボス5をホルダ本体部62のフランジ部62bに対して軸方向に容易に固定することができる。
【0088】
なお、ホルダ本体部62のフランジ部62bに設けられる固定孔64の形状は、
図15に示すような径方向に長い長孔64Aであってもよい。あるいは、
図16に示すような径方向外側に開口部を有する切り欠き64Bであってもよい。
【0089】
以上に、本発明の実施形態およびその変形例を説明したが、実施形態および変形例における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【0090】
例えば、上述の実施形態では、圧縮機に搭載されるモータについて説明したが、ウォータポンプやオイルポンプに搭載されるモータにおいて同様の構成を採用してもよい。
【符号の説明】
【0091】
3…絶縁紙、5…ボス、10…モータ、11…ハウジング、20…ロータ、30,30A…ステータ、31…ステータコア、31a…コアバック部、31b…ティース部、40…コイル、41…コイル線、41c…コイル引出線、50…インシュレータ、53…外側壁部(壁部)、53a…外側溝部、54…内側壁部、54a…内側溝部、6…バスバーユニット、6A,6B…カバー部材、60,60A…バスバーホルダ、62…ホルダ本体部、62a…外縁、62b…フランジ部、63…コイル支持部、63A…第1コイル支持部、63B…第2コイル支持部、631…第1幅広部、631a…開口部、632…幅狭部、633…第2幅広部、65…コイルサポート部、70…バスバー、71…バスバー本体部、72…コイル接続部、CL…中心線、J…中心軸線