(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151469
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】空気処理装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/26 20060101AFI20231005BHJP
F24F 3/14 20060101ALI20231005BHJP
A61L 9/014 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B01D53/26 220
F24F3/14
A61L9/014
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061081
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 有理
(72)【発明者】
【氏名】奥野 大樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 健二
【テーマコード(参考)】
3L053
4C180
4D052
【Fターム(参考)】
3L053BC03
4C180AA02
4C180AA17
4C180BB06
4C180CC04
4C180CC13
4C180HH05
4C180HH15
4C180HH18
4C180HH19
4D052AA08
4D052CB00
4D052DA07
4D052FA01
4D052HA00
(57)【要約】
【課題】効率よく空気処理を行う。
【解決手段】実施形態の空気処理装置は、空気に含まれる特定の分子を吸着する吸着部材を有する回転体と、回転体の周面の一部を筐体で囲って加熱し、吸着部材を特定の分子を吸着する前の状態に再生する加熱炉と、加熱炉の筐体から外に出る側の回転体の周面を扇状に囲む第1の鍔部と、加熱炉の筐体内に入る側の回転体の周面を扇状に囲む第2の鍔部と、第1の鍔部と、第2の鍔部との間を熱的に接続する熱伝導部材と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気に含まれる特定の分子を吸着する吸着部材を有する回転体と、
前記回転体の周面の一部を筐体で囲って加熱し、前記吸着部材を前記特定の分子を吸着する前の状態に再生する加熱炉と、
前記加熱炉の筐体から外に出る側の前記回転体の周面を扇状に囲む第1の鍔部と、
前記加熱炉の筐体内に入る側の前記回転体の周面を扇状に囲む第2の鍔部と、
前記第1の鍔部と、前記第2の鍔部との間を熱的に接続する熱伝導部材と、
を有することを特徴とする空気処理装置。
【請求項2】
前記加熱炉の筐体は、非磁性金属で形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の空気処理装置。
【請求項3】
前記加熱炉の筐体は、非磁性金属、かつ、熱伝導率が所定値以上の金属で形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の空気処理装置。
【請求項4】
前記第1の鍔部と、前記加熱炉の筐体と、前記第2の鍔部とにより、前記回転体の
少なくとも1/3以上の面積が囲まれる、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の空気処理装置。
【請求項5】
前記加熱炉での加熱にかかるエネルギーを伝送する伝送路の外壁を、前記第2の鍔部と、熱的に接続することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の空気処理装置。
【請求項6】
前記第1の鍔部および前記第2の鍔部における前記回転体の周面と対面する部材は凹凸部を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の空気処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、空気処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸着部材を設けた吸着ローターを用いて除湿や脱臭などの空気処理を行う吸着方式の空気処理装置が知られている。この吸着方式では、回転する吸着ローターの一部を覆うように設置した加熱炉により吸着後の吸着部材を加熱して再生処理(例えば水分の脱離)を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の空気処理装置では、水分子等の吸着と、加熱炉での加熱による、水分子等の被吸着材分子からの脱離とを、吸着ローターの回転により繰り返す際に、加熱炉で加熱された吸着ローターの熱は、吸着のための送風により、空気へ排熱されてしまうため、再加熱に要するエネルギーが大きくなり、加熱効率が悪いという問題がある。
【0005】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、吸着ローターの再加熱に要するエネルギーを減らし、効率よく空気処理を行うことができる空気処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様の空気処理装置は、空気に含まれる特定の分子を吸着する吸着部材を有する回転体と、回転体の周面の一部を筐体で囲って加熱し、吸着部材を特定の分子を吸着する前の状態に再生する加熱炉と、加熱炉の筐体から外に出る側の回転体の周面を扇状に囲む第1の鍔部と、加熱炉の筐体内に入る側の回転体の周面を扇状に囲む第2の鍔部と、第1の鍔部と、第2の鍔部との間を熱的に接続する熱伝導部材と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
一態様の空気処理装置によれば、吸着ローターの再加熱に要するエネルギーを減らし、効率よく空気処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態にかかる空気処理装置の構成例を示す説明図である。
【
図2】
図2は、実施形態にかかる空気処理装置の加熱炉の筐体部分の外観斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態にかかる空気処理装置の加熱炉と吸着ローターとの構成を説明する説明図である。
【
図5】
図5は、加熱炉内部の空気温度と時間との関係を説明する説明図である。
【
図6】
図6は、加熱炉13における電磁波漏洩抑制のための構造の概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施形態にかかる空気処理装置を説明する。実施形態において同一の機能を有する構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。なお、以下の実施形態で説明する空気処理装置は、一例を示すに過ぎず、実施形態を限定するものではない。また、以下の各実施形態は、矛盾しない範囲内で適宜組みあわせてもよい。
【0010】
図1は、実施形態にかかる空気処理装置の構成例を示す説明図である。なお、図面を用いた空気処理装置の説明において、空気処理装置の左右方向をX方向、上下方向をY方向、前後方向をZ方向とする。
【0011】
図1に示すように、空気処理装置100は、空気中の水分子を吸着し、吸着した水分子を加熱して水蒸気にし、水蒸気を凝縮させて水分子に再生する再生処理部1を有する。この再生処理部1は、吸着ローター11と、送風用ファン12と、加熱炉13と、凝縮器14と、を含む。ここで、空気中の水分子は空気に含まれる特定の分子の一例である。この他、不快な臭いの原因となるアンモニアなどを吸着させる吸着ローターとしても良い。
【0012】
吸着ローター11は、円板形状の中心部に板厚方向(Z方向)に貫通孔11Aが形成された円環形状である。吸着ローター11は、板厚方向に複数の通気空洞が設けられたハニカム構造に形成されたハニカム構造部11Cを有している。吸着ローター11は、支持部11Bによって、貫通孔11Aを中心として吸着ローター11の厚み方向に延びる軸の廻りに回転自在に支持されている。吸着ローター11は、図示しない駆動手段によって回転駆動される。この吸着ローター11は、ハニカム構造部11Cが耐熱性を有する紙(ガラスペーパーなど)で形成され、ハニカム構造部11Cの表面にデシカント材が付着されている。デシカント材は、多数の細孔を有し、その細孔に空気が通過する際、空気中に含まれる水分子を吸着する。このように、回転体としての吸着ローター11は、水分子を吸着する吸着部材を有する。
【0013】
吸着ローター11を回転自在に支持する支持部11Bは、吸着ローター11の貫通孔11Aに挿通されて吸着ローター11を回転可能に支持する回転支持部を有している(図示しない)。支持部11Bは、吸着ローター11の板厚方向に空気を通過させるように貫通した穴として形成されている。従って、支持部11Bは、吸着ローター11に空気を案内する案内部材としても構成されている。また、支持部11Bには、駆動用モータが設けられており(図示しない)、吸着ローター11の外周に設けられた歯車等を介して吸着ローター11を例えば時計回りに回転させる。また、支持部11Bは、図には明示しないが、吸着ローター11に向けて空気を通過させる部分にフィルタが設けられ、吸着ローター11に向けて案内する空気に含まれる、例えば、PM(Particulate Matter)2.5、砂及び花粉などを捕捉できるように構成されていてもよい。
【0014】
送風用ファン12は、支持部11Bを介して吸着ローター11に向けて空気を送る。送風用ファン12によって送られた空気は、吸着ローター11のハニカム構造部11Cを通過し、その過程で水分子がデシカント材に吸着される。
【0015】
加熱炉13は、吸着ローター11の一部であって、実施形態では吸着ローター11の円環形状の上半部(Y方向における上側)を筐体13Aで囲って吸着ローター11を加熱する。この加熱炉13の筐体13Aは、金属(非磁性金属)、または少なくとも内面に金属メッキなどにより金属膜が施された非金属で形成される。また、加熱炉13の筐体13Aは、より好ましくは、非磁性金属、かつ、熱伝導率が所定値以上の金属で形成される。
【0016】
【0017】
上記の表は、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミ(Al)、ニッケル(Ni)、ステンレス(SUS304)および炭素鋼Fe(C=0.2%)に関する体積抵抗率(20℃)、導電率(σ)、比透磁率(μr)、表皮の深さ(δ)、損失係数(Pm/|Ht|2)および熱伝導率(W/(m・K))を示している。非磁性金属は、例えば比透磁率が1.02以下の金属であり、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミ(Al)、ステンレス(SUS304)が相当する。磁性金属(ニッケル・炭素鋼)は、非磁性金属(銀・銅、アルミニウム・SUS304)より表皮の深さδが浅く、多くのマイクロ波を吸収してしまい(損失係数(Pm/|Ht|2で表される)、加熱効率が低下する。また、加熱炉13の筐体13Aを熱的に接続する熱伝導部材として用いる場合(詳細は後述)は、例えば熱伝導率が100以上の金属が望ましい。したがって、非磁性金属、かつ、熱伝導性が100以上の金属としては、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミ(Al)が筐体13Aを形成する金属に相当する。なお、表中の金属はあくまでも一例であり、上述した比透磁率、熱伝導率の条件を満たす他の金属を、筐体13Aを形成する金属としてもよい。
【0018】
吸着ローター11の一部とは、例えば、吸着ローター11の円環形状の上半部である。加熱炉13は、2,4GHzから2.5GHzなどの特定の周波数帯のマイクロ波(電磁波)を出力する発振器13Bを有する。加熱炉13は、発振器13Bによって筐体13Aの内部にマイクロ波が入力される。発振器13Bから入力されるマイクロ波によって加熱炉13の筐体13Aの内部の吸着ローター11が加熱される。この加熱により、吸着ローター11の吸着材に吸着された水分子や、吸着材以外のハニカム構造部11Cの表面に付着した水分子が加熱され蒸発し水蒸気となる。
【0019】
発振器13Bは、例えばシリコン(Si)半導体、窒化ガリウム(GaN)半導体などを用いた半導体方式の発振器であり、ISM(Industrial Scientific and Medical)バンドとして使用が認められている周波数帯のうち、915MHzまたは2450MHzなど特定の周波数のマイクロ波を出力できる。発振器13Bは、半導体方式発振器であることから、出力するマイクロ波の周波数の制御が可能である。なお、発振器13Bは、マグネトロン方式の発振器であってもよい。
【0020】
水回収部41は、加熱炉13Aの内部と接続される筐体である。具体的には、水回収部41は、加熱炉13Aの内部に対して、吸着ローター11における移動方向と直交する方向(
図1の左右方向、吸着ローター11の板厚方向)から接続される。水回収部41は、発振器13Bによる加熱で蒸発し、水蒸気として脱離した水分子を回収する。
【0021】
水回収部41は、例えば、樹脂などで形成される。また、水回収部41と加熱炉13Aとの境界は、複数の貫通孔13Aeが設けられたパンチング構造が形成されている。つまり、発振器13Bの加熱により吸着ローター11から蒸発した水蒸気は、貫通孔13Aeを通過して水回収部41の内部に回収される。
【0022】
また、水回収部41の内部には、凝縮器14が設けられる。
図1に示す例では、凝縮器14は、空冷式であり、水回収部41の内部に回収された水蒸気を凝縮(熱交換)して液化する。例えば、空冷式の凝縮器14の場合、アルミ等の金属で形成される棒状部材の一部を水回収部41の外部に露出させ、露出させた箇所を冷却用ファン413で冷却する。なお、冷却用ファン413は省略可能である。
【0023】
なお、
図1では、吸着ローター11の右側に配置される例を示したが、左側に配置されてもよい。また、凝縮器14は、省略されてもよい。つまり、水回収部41の内部に回収した水蒸気を自然凝縮により液化してもよい。また、水回収部41の下方の底部には、ドレンパン(図示しない)に繋がる貫通孔412が形成されており、液化した水は、貫通孔412を介してドレンパンに流れる。
【0024】
つまり、水回収部41は、動力が必要なファン等を使用せず、吸着ローター11から蒸発した水蒸気による、自然対流を利用して回収する。これにより、水回収部41の内部には熱をもった水蒸気が充満することとなり、高温高湿状態(80℃90%RH等)を作り出すことが可能となる。この状態では、加熱炉13から流出した水蒸気と凝縮器14との接触時間を長くできるため、凝縮量を高めやすくできる。すなわち、水回収装置100によれば、吸着部材から脱離した水蒸気を効率良く回収することができる。
【0025】
なお、水蒸気が水回収装置1の外部へ漏れ出ることを防ぐため、水回収部41の内部と、加熱炉13Aの接合部はシリコンなどで密閉されることが好ましい。これにより、水蒸気の回収効率をさらに高めることができる。
【0026】
なお、水回収部41の内部空間の大きさ(体積)や、凝縮器14の凝縮能力は、加熱炉13Aに入力するマイクロ波の電力、吸着ローター11の比熱・熱伝導率、吸着ローター11の回転スピード、加熱炉13Aの外へ飛び出す水蒸気の絶対湿度量等により適宜選択される。
【0027】
図2は、実施形態にかかる空気処理装置100の加熱炉13の筐体部分の外観斜視図である。
図3は、実施形態にかかる空気処理装置100の加熱炉13と吸着ローター11との構成を説明する説明図である。
【0028】
図2および
図3に示すように、加熱炉13の筐体13Aには、筐体13Aから外に出る側の吸着ローター11の周面を扇状に囲む鍔部15と、筐体13A内に入る側の吸着ローター11の周面を扇状に囲む鍔部16とが取り付けられている。この鍔部15、16は、加熱炉13の筐体13Aと同様、金属(非磁性金属)で形成され、より好ましくは、非磁性金属、かつ、熱伝導性が所定値以上(例えば熱伝導率(w/(m・K))が100以上)の金属で形成される。
【0029】
具体的には、鍔部15は、筐体13Aから外に出る側の吸着ローター11の周面の回転軸より上側部分に相当する範囲を囲むように扇形に形成された鍔板15Aを有する。この鍔板15Aは、吸着ローター11の周面を表側(Z方向前側)または裏側(Z方向後ろ側)より囲む1枚の板であってもよいし、吸着ローター11の周面を表裏両面より囲む2枚の板であってもよい。これにより、鍔部15では、吸着ローター11の周面と対面する対向面15Bにおいて、吸着ローター11の周面からの放射または対流による、吸着ローター11からの放出される熱(排熱)を回収することができる。
【0030】
なお、鍔部15における対向面15Bの部材は、黒色とすることが好ましい。このように、対向面15Bの部材を黒色とする場合は、吸着ローター11からの放射熱を効率よく回収することができる。
【0031】
また、鍔部15における対向面15Bの部材は、凹凸部を有することが好ましい。このように、対向面15Bに凹凸部を有する場合、この凹凸部は、吸着ローター11の回転に伴って生じる空気の流れを乱す乱流促進体として機能する。したがって、対向面15Bに凹凸部を有する場合は、対向面15Bと吸着ローター11の周面との間に生じた空気の乱流により、鍔部15と吸着ローター11との間の対流伝熱が促進されることとなる。
【0032】
吸着ローター11から回収した熱は、筐体13Aを介して鍔部16へ伝導される。すなわち、筐体13Aは、鍔部15と鍔部16との間を熱的に接続する熱伝導部材の一例である。
【0033】
鍔部15と同様に、鍔部16は、筐体13A内に入る側の吸着ローター11の周面の四分円相当を囲むように扇形に形成された鍔板16Aを有する。この鍔板16Aは、吸着ローター11の周面の回転軸より上側に相当する範囲を表側(Z方向前側)または裏側(Z方向後ろ側)より囲む1枚の板であってもよいし、吸着ローター11の周面を表裏両面より囲む2枚の板であってもよい。これにより、鍔部16では、吸着ローター11の周面と対面する対向面16Bから、鍔部15より回収して筐体13Aを介して伝導された熱の放射または対流により、吸着ローター11を再加熱することができる。
【0034】
なお、鍔部16における対向面16Bの部材は、黒色とすることが好ましい。このように、対向面16Bの部材を黒色とする場合は、吸着ローター11の周面に対する鍔部16からの放熱を促進することができる。
【0035】
また、鍔部16における対向面16Bの部材は、凹凸部を有することが好ましい。このように、対向面16Bに凹凸部を有する場合、この凹凸部は、吸着ローター11の回転に伴って生じる空気の流れを乱す乱流促進体として機能する。したがって、対向面16Bに凹凸部を有する場合は、対向面16Bと吸着ローター11の周面との間に生じた空気の乱流により、鍔部16と吸着ローター11との間の対流伝熱が促進されることとなる。
【0036】
上述した鍔板15B、16Bの部材における黒色は、ほぼ黒色であれば良い(黒色に近いほど好ましい)。また、鍔板15B、16Bの部材における凹凸部は、乱流促進体として機能する形状であればよく、例えば凹部のみ、または、凸部のみの構成であってもよい。
【0037】
また、鍔部15、16は、加熱炉13からの電磁波漏れ防止構造を兼ねている。
図6は、加熱炉13における電磁波漏洩抑制のための構造の概要を説明するものであり、
図3におけるB-B面での断面概略図である。
図6に示すように、鍔部15および鍔部16との間の間隙(L12)は、内部に放射されるマイクロ波MWの誘電体内波長λdgに対し、λdg/4未満である。また、鍔部15および鍔部16は、内部の電磁波の漏れ防止のために、幅L10、L11がともにλdg/4よりも長くなっている。また、デシカントローターの厚みをdとすると、(L12-d)>0の関係が常に成り立つ。これは、デシカントローター11は回転するため、摺動によるデシカントローターの損傷や回転停止を避けるためである。つまりλdg/4>L12>dの関係が成り立つようにする。なお、加熱炉13Aの幅L13は、内部に放射されるマイクロ波MWの自由空間波長λに対し、λ/2以上であることが望ましい。これはλ/2未満であれば、実質遮断条件となりマイクロ波が鍔部15および鍔部16へ漏洩しないためである。このような加熱炉構造とフランジ部材を追加した構造により、特定の周波数帯のマイクロ波を加熱炉の内部から外部に漏らさないようにすることができる。
【0038】
なお、熱回収の実施例の一つとしては、加熱炉13での加熱にかかるエネルギーを伝送する伝送路の外壁からの熱回収も考えられる。具体的には、
図3に示すように、空気処理装置100は、発振器13Bより発振されたマイクロ波(電磁波)を、筐体13A内に放射するアンテナ13Cまで伝送するための伝送ケーブル13Dの外壁が、マイクロ波出力時に発熱する(伝送損失)。伝送ケーブル13Dの外壁を、金属メッキなどにより、熱伝導性が所定値以上(例えば熱伝導率(W/(m・K))が100以上)の金属膜を施し、この金属膜部分を鍔部15Aに接触、固定させることで、伝送ケーブルからの発熱損失を鍔部に伝え、鍔部の発熱から吸着ローターを予熱させることができる。
【0039】
図4は、
図3のA-A線の断面図である。
図4に示すように、伝送ケーブル13Dは、固定用シート等の固定部材13Eにより、鍔板15Aの外壁(図示例では鍔板15A)に固定される。これにより、伝送ケーブル13Dの外壁からの熱を鍔部15へ伝導させることができる。なお、伝送ケーブル13Dの外壁と鍔部15との間に、熱伝導グリース(図示しない)や、熱伝導性シート(図示しない)を設けても良い。
【0040】
なお、図示例では、鍔部15側に発振器13Bを配置する構成を例示したが、吸着ローターの予熱の観点からは、加熱炉13の前段(入り口)側に発振器13B、伝送ケーブル13D、固定具13Eを設けることが好ましい。
【0041】
以上のように、空気処理装置100は、空気に含まれる特定の分子を吸着する吸着部材を有する吸着ローター11と、吸着ローター11の周面の一部を筐体13Aで囲って加熱し、分子を吸着する前の状態に吸着部材を再生する加熱炉13とを有する。また、空気処理装置100は、加熱炉13の筐体13Aから外に出る側の吸着ローター11の周面を扇状に囲む鍔部15と、加熱炉13の筐体13A内に入る側の吸着ローター11の周面を扇状に囲む鍔部16とを有する。また、空気処理装置100は、鍔部15と、鍔部16との間を熱的に接続する熱伝導部材(例えば筐体13A)を有する。
【0042】
これにより、空気処理装置100では、吸着ローター11の回転により水分子等の吸着と、加熱炉13での加熱による脱離とを繰り返す際に、加熱炉13で加熱された吸着ローター11の熱を鍔部15で回収し、回収した熱を鍔部16に伝えて吸着ローター11の予熱に用いることができる。このため、空気処理装置100では、吸着ローター11の加熱効率を向上させることができ、効率よく空気処理を行うことが可能となる。
【0043】
図5は、加熱炉13内部の空気温度と時間との関係を説明する説明図である。
図5に示すように、熱回収なしの場合と比較し、上述した実施形態による熱回収ありの場合は、加熱炉13内部の空気温度を短時間で高めることができる。
【0044】
図2のように、鍔部15と、加熱炉13の筐体13Aと、鍔部16とにより、吸着ローター11の少なくとも1/3以上が囲まれる。これにより、空気処理装置100では、加熱炉での加熱後の吸着ローター11の排熱を、効率よく回収でき、加熱前の吸着ローター11を予熱して、効率的な再生処理を行うことができる。
【符号の説明】
【0045】
1…再生処理部
11…吸着ローター
11A…貫通孔
11B…支持部
12…送風用ファン
13…加熱炉
13A…筐体
13Ae…接続開口部
13B…発振器
13C…アンテナ
13D…伝送ケーブル
13E…固定部材
14…凝縮器(熱交換器)
41…水回収部
412…水回収穴
413…凝縮器冷却ファン
15、16…鍔部
15A、16A…鍔板
15B、16B…対向面
100…空気処理装置