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特開2023-151470樹脂加工機用洗浄剤用架橋ポリエチレン、樹脂加工機用洗浄剤用樹脂組成物及び樹脂加工機の洗浄方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151470
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】樹脂加工機用洗浄剤用架橋ポリエチレン、樹脂加工機用洗浄剤用樹脂組成物及び樹脂加工機の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/00 20060101AFI20231005BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20231005BHJP
   C08L 23/10 20060101ALI20231005BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20231005BHJP
   B29C 48/04 20190101ALI20231005BHJP
   B29C 48/27 20190101ALI20231005BHJP
【FI】
C08F8/00
C08L23/00
C08L23/10
C08L23/26
B29C48/04
B29C48/27
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061082
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(74)【代理人】
【識別番号】100196298
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 高雄
(72)【発明者】
【氏名】井 俊一朗
(72)【発明者】
【氏名】野辺 洋平
(72)【発明者】
【氏名】岩井 喬史
【テーマコード(参考)】
4F207
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4F207AA04
4F207AA11
4F207AH81
4F207AM10
4F207AR17
4F207KA01
4F207KA17
4F207KM20
4J002BB01X
4J002BB11X
4J002BB20W
4J002BP03X
4J002GT00
4J100AA02P
4J100DA42
4J100HA53
4J100HE01
4J100HE26
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、洗浄性能及び易置換性に優れる、樹脂加工機用洗浄剤用の架橋ポリエチレンを提供することにある。
【解決手段】本発明の樹脂加工機用洗浄剤用架橋ポリエチレンは、ゲル分率(JIS K6796準拠)が10~34%であり、かつメルトマスフローレート(220℃、荷重10kg)が0.01~0.50g/10分であることを特徴としている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル分率(JIS K6796準拠)が10~34%であり、かつメルトマスフローレート(220℃、荷重10kg)が0.01~0.50g/10分であることを特徴とする樹脂加工機用洗浄剤用架橋ポリエチレン。
【請求項2】
過酸化物又は電子線架橋により架橋された架橋ポリエチレンである、請求項1に記載の樹脂加工機用洗浄剤用架橋ポリエチレン。
【請求項3】
再生又は減容により得られた架橋ポリエチレンである、請求項1又は2に記載の樹脂加工機用洗浄剤用架橋ポリエチレン。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂加工機用洗浄剤用架橋ポリエチレン(A)とポリオレフィン系樹脂(B)を含む、ことを特徴とする樹脂加工機用洗浄剤用樹脂組成物。
【請求項5】
前記(B)成分がポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項4に記載の樹脂加工機用洗浄剤用樹脂組成物。
【請求項6】
前記(A)成分と前記(B)成分の合計100質量部に対して、前記(A)成分10~90質量部、前記(B)成分90~10質量部を含む、請求項4又は5に記載の樹脂加工機用洗浄剤用樹脂組成物。
【請求項7】
前記(B)成分のメルトマスフローレートが0.10~1.0g/10分である、請求項4~6のいずれか一項に記載の樹脂加工機用洗浄剤用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂加工機用洗浄剤用架橋ポリエチレン100質量部に対し、(B)ポリオレフィン系樹脂10~1000質量部を含むペレット。
【請求項9】
請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂加工機用洗浄剤用架橋ポリエチレン、又は請求項4~7のいずれか一項に記載の樹脂加工機用洗浄剤用樹脂組成物を用いることを特徴とする、樹脂加工機の洗浄方法。
【請求項10】
請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂加工機用洗浄剤用架橋ポリエチレン100質量部に対し、(B)ポリオレフィン系樹脂を10~1000質量部をドライブレンドして樹脂加工機を洗浄することを特徴とする、樹脂加工機の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂加工機用洗浄剤用架橋ポリエチレン、樹脂加工機用洗浄剤用樹脂組成物及び樹脂加工機の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、樹脂の着色、混合、成形等の作業のために押出成形機、射出成形機等の樹脂加工機械が用いられるが、この種の樹脂加工機械においては、所定の作業終了時に、当該樹脂そのものや成形材料中に含まれている染顔料等の添加剤のほか、樹脂等から生成される劣化物(熱分解生成物、焼け、炭化物等)が樹脂加工機械内に残留する場合がある。この残留物を放置すると、以降に行われる樹脂の成形加工時に残留物が成形品中に混入し、製品外観不良の原因となり得る。特に、透明樹脂の成形を行う場合、微小の炭化物等の混入でも容易に視認されるため、成形品の外観不良となり、成形品不良の発生率を増大させるという問題を生じる。そのため、残留物を樹脂加工機械内から完全に除去することが望まれている。
【0003】
従来、残留物を樹脂加工機械内から除去するため、(1)人手により樹脂加工機械の分解掃除をする方法、(2)樹脂加工機械を停止せずにそのまま次の成形に使用する成形材料を樹脂加工機械に充填し、これにより残留物を徐々に排出して行く方法、(3)洗浄剤を用いる方法等が採られている。
上記(1)の方法は、樹脂加工機械を停止する必要があるため効率的でなく、且つ人手により物理的に除去作業をするため、樹脂加工機械を傷つけやすいという問題がある。上記(2)の方法は、残留物を除去するために多量の成形材料を必要とする場合が多く、作業が完了するまでに時間を要し、更に廃棄物が多量に発生するという問題がある。そのため近年では、上記(3)の洗浄剤を用いる方法が、樹脂加工機械内の残留物を除去する洗浄力に優れることから、好まれて用いられるようになっている。
洗浄剤の効果を高めることを目的として、洗浄剤の洗浄力を高める手法が種々提案されている。例えば、特許文献1、2には、架橋オレフィン樹脂を配合することで洗浄力を高める方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭54-29351号公報
【特許文献2】特開平3-99822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
洗浄剤には、前の成形で使用した成形材料に対する高い洗浄力と、次の成形に使用する成形材料による易置換性とが要求される。
特許文献1、2の洗浄剤では、架橋された樹脂を使用しているため、残留物を除去する効果には優れているが、洗浄後の成形材料による易置換性の改善が求められていた。
【0006】
そこで、本発明は、洗浄性能及び易置換性に優れる、樹脂加工機用洗浄剤用の架橋ポリエチレンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のゲル分率及び特定のメルトマスフローレート(220℃、荷重10kg)を有する架橋ポリエチレンが、樹脂加工機内に滞留せずに容易に置換できることを見出し、本発明を開発するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]
ゲル分率(JIS K6796準拠)が10~34%であり、かつメルトマスフローレート(220℃、荷重10kg)が0.01~0.50g/10分であることを特徴とする樹脂加工機用洗浄剤用架橋ポリエチレン。
[2]
過酸化物又は電子線架橋により架橋された架橋ポリエチレンである、[1]に記載の樹脂加工機用洗浄剤用架橋ポリエチレン。
[3]
再生又は減容により得られた架橋ポリエチレンである、[1]又は[2]に記載の樹脂加工機用洗浄剤用架橋ポリエチレン。
[4]
[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂加工機用洗浄剤用架橋ポリエチレン(A)とポリオレフィン系樹脂(B)を含む、ことを特徴とする樹脂加工機用洗浄剤用樹脂組成物。
[5]
前記(B)成分がポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種である、[4]に記載の樹脂加工機用洗浄剤用樹脂組成物。
[6]
前記(A)成分と前記(B)成分の合計100質量部に対して、前記(A)成分10~90質量部、前記(B)成分90~10質量部を含む、[4]又は[5]に記載の樹脂加工機用洗浄剤用樹脂組成物。
[7]
前記(B)成分のメルトマスフローレートが0.10~1.0g/10分である、[4]~[6]のいずれかに記載の樹脂加工機用洗浄剤用樹脂組成物。
[8]
[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂加工機用洗浄剤用架橋ポリエチレン100質量部に対し、(B)ポリオレフィン系樹脂10~1000質量部を含むペレット。
[9]
[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂加工機用洗浄剤用架橋ポリエチレン、又は[4]~[7]のいずれかに記載の樹脂加工機用洗浄剤用樹脂組成物を用いることを特徴とする、樹脂加工機の洗浄方法。
[10]
[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂加工機用洗浄剤用架橋ポリエチレン100質量部に対し、(B)ポリオレフィン系樹脂を10~1000質量部をドライブレンドして樹脂加工機を洗浄することを特徴とする、樹脂加工機の洗浄方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、洗浄性能及び易置換性に優れる、洗浄剤用の架橋ポリエチレンを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に制限するものではない。本発明は、その要旨の範囲内で種々変化して実施することができる。
【0011】
[樹脂加工機用洗浄剤用架橋ポリエチレン]
本実施形態の樹脂加工機用洗浄剤用架橋ポリエチレンは、ゲル分率(JIS K6796準拠)が10~34%であり、かつメルトマスフローレート(220℃、荷重10kg)が0.01~0.50g/10分である。
【0012】
上記樹脂加工機用洗浄剤用架橋ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、分岐型低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、塩素化ポリエチレン、エチレン・エチルアクリレート共重合体などのポリエチレン等を架橋したものが挙げられ、これらの1種又は2種以上が併用されて用いる。上記ポリエチレン中の、エチレンに由来する繰り返し単位の質量割合は、50質量%超であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
【0013】
上記ポリエチレンを架橋する方法としては、特に制限がなく、過酸化物架橋、電子線架橋、シラン化合物をグラフトした後に水と接触させて架橋する水架橋法(シラン架橋法とも呼ばれる)が用いられるが、MFRの制御の観点から、過酸化物架橋、電子線架橋が好ましい。
【0014】
上記架橋ポリエチレンのゲル分率(JIS K6796準拠)は10~34質量%であることが好ましく、15~33質量%がより好ましい。
上記架橋ポリエチレンのMFR(220℃、荷重10kg)は、0.01~0.50g/10分であることが好ましく、0.03~0.40g/10分がより好ましい。
ゲル分率及びMFRを上記範囲にすることで、洗浄性能、溶融混練機や成形機の負荷低減のバランスに優れた洗浄剤が得られる。
【0015】
上記架橋ポリエチレンは、使用済の電線被覆材、床暖房用パイプ材、フィルム、各種発泡体等の架橋ポリエチレン系樹脂成形品、それらの減容品、それらの製造段階で発生した架橋ポリエチレン系樹脂の廃棄物等の粉砕物であってもよく、再生又は減容により得た架橋ポリエチレンであることが好ましく、押出機を用いた可塑化工程を含む方法で得た再生品、減容品がより好ましい。
【0016】
本実施形態の架橋ポリエチレン(好ましくは再生品、減容品である架橋ポリエチレン)は、架橋ポリエチレンの架橋部分の炭素‐炭素結合等を切断し樹脂の流動性を高めた架橋ポリエチレンである。架橋部分の結合を切断し、樹脂の流動性を高める方法としては、架橋ポリエチレン樹脂を再生、減容する方法が挙げられ、高温で再生、減容する方法がより好ましい。
再生、減容の温度としては、230~400℃であることが好ましく、230~380℃であることがより好ましく、250~350℃であることが特に好ましい。再生、減容温度が230℃未満である場合は、可塑化が困難になり架橋ポリエチレンが再生、減容されにくくなる。一方、再生、減容温度が400℃を超す場合は、架橋ポリエチレンの分子の切断が過度に進行して、得られる架橋ポリエチレン系樹脂の特性が低下する。
【0017】
通常、架橋ポリエチレンは、3次元網目構造を構成するため、融点以上においても溶融することはなく、MFRを測定することができない。本実施形態の架橋ポリエチレンは、分子内の少なくとも一部の架橋構造が切断された架橋ポリエチレンである。そのため、温度220℃、荷重10kgの条件でMFRを測定することができる。
また、架橋ポリエチレン(好ましくは好ましくは再生品、減容品である架橋ポリエチレン)は可塑化成分が一部含まれるため、後述の他のポリエチレン系樹脂との相溶性の向上及び/又は易置換性が向上すると推測される(但し、本実施形態の作用効果はこれに限定されない)。
【0018】
本実施形態の架橋ポリエチレンは、相溶性及び易置換性に優れるため、樹脂加工機の洗浄剤に好適に用いることができる。上記樹脂加工機としては、例えば、射出成形機、押出成形機等が挙げられる。
【0019】
[樹脂加工機用洗浄剤用樹脂組成物]
本実施形態の樹脂加工機用洗浄剤用樹脂組成物(本明細書において、単に「洗浄剤」と称する場合がある。)は、上記樹脂加工機用洗浄剤用架橋ポリエチレン(本明細書において、「(A)成分」と称する場合がある。)を含む。本実施形態の洗浄剤は、さらにポリオレフィン系樹脂(B)(本明細書において、「(B)成分」と称する場合がある。)を含むことが好ましい。本実施形態の洗浄剤は、上記(A)成分のみからなる洗浄剤であってもよいし、上記(A)成分及び上記(B)成分のみからなる洗浄剤であってもよい。
【0020】
(ポリオレフィン系樹脂(B))
上記ポリオレフィン系樹脂としては、熱可塑性樹脂であってよく、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレンとα-オレフィンとの共重合体等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレンとα-オレフィンとの共重合体等のポリプロピレン系樹脂、ポリブテン、等が挙げられる。中でも、(A)成分との相溶性の観点から、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、及び直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレンが洗浄性能および易置換性に優れることから好ましく、(A)成分との相溶性の観点から高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、及び直鎖状低密度ポリエチレンがより好ましい。上記ポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、ポリエチレン系樹脂とは、樹脂中のエチレンに由来する繰り返し単位の質量割合が50質量%超(好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上)である樹脂をいい、ポリプロピレン系樹脂とは、樹脂中のプロピレンに由来する繰り返し単位の質量割合が50質量%超(好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上)である樹脂をいう。
【0021】
上記ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂である場合、MFR(190℃、荷重2.16kg)は、優れた洗浄力、ならびに洗浄後に使用する成形材料への易置換性の観点から、0.01g/10分以上であることが好ましく、洗浄効果の点から、20g/10分以下であることがより好ましく、0.1~1.0g/10分であることがさらに好ましい。複数のポリエチレン系熱可塑性樹脂を用いる場合は、上記メルトフロー範囲内のものや、上記メルトフローレート範囲外のものを混合して上記範囲内に調整することが好ましい。
【0022】
上記ポリオレフィン系熱可塑性樹脂がポリプロピレン系樹脂である場合、MFR(230℃、荷重2.16kg)は優れた洗浄力、ならびに洗浄後に使用する成形材料への易置換性の観点から、0.01g/10分以上であることが好ましく、洗浄効果の点から、20g/10分以下であることがより好ましく、0.1~1.0g/10分であることがさらに好ましい。複数のポリプロピレン系熱可塑性樹脂を用いる場合は、上記メルトフロー範囲内のものや、上記メルトフローレート範囲外のものを混合して上記範囲内に調整することが好ましい。
【0023】
本実施形態の洗浄剤は、洗浄性、製造上の安定性の観点から、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、(A)成分10~90質量部、(B)成分90~10質量部であることが好ましく、より好ましくは(A)成分20~80質量部、(B)成分80~20質量部、さらに好ましくは(A)成分20~70質量部、(B)成分30~80質量部、特に好ましくは(A)成分30~70質量部、(B)成分30~70質量部である。
【0024】
(他の成分)
本実施形態の洗浄剤は、さらに他の成分を含んでいてもよい。
上記他の成分は、上記(A)成分、上記(B)成分以外の成分であり、例えば、(A)成分及び(B)成分以外の熱可塑性樹脂、滑剤、界面活性剤、酸化防止剤、無機フィラー、無機発泡剤、超高分子量樹脂、光安定剤、紫外線吸収剤等の安定剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、核剤、架橋促進剤、架橋抑制剤、着色剤等が挙げられる。
【0025】
-脂肪族炭化水素化合物-
本実施形態の洗浄剤は、他の成分として脂肪族炭化水素化合物を含んでいてもよい。
上記脂肪族炭化水素化合物は、重量平均分子量が200以上2万以下であれば特に限定されず、ミネラルオイル、パラフィンワックス、オレフィン系ワックス等が挙げられる。
【0026】
上記ミネラルオイルとは、石油を精製して得られる油であり、鉱物油、潤滑油、流動パラフィン等とも呼ばれるナフテン、イソパラフィン等も含む飽和炭化水素系のオイルである。広い粘度範囲のミネラルオイルが使用可能であり、例えば、流動パラフィンの場合、JIS K2283により測定した動粘度が50~500mm/sであるもの、レッドウッド法(日本油化学協会基準油脂分析試験法2.2.10.4-1996)により測定した粘度が30~2000(秒)の範囲のものを用いてもよい。上記パラフィンワックスとは、石油を精製して得られる常温で固体のパラフィン化合物であり、融点が40~80℃であるものがよく用いられる。
【0027】
上記オレフィン系ワックスは、低分子ポリオレフィン等が挙げられ、特に限定されるものではないが、一般的な低密度あるいは高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等が用いられる。重量平均分子量が800~20,000程度、滴点が80~180℃であるものが、最も効果を発揮しやすい。
【0028】
脂肪族炭化水素化合物の含有量は、洗浄剤100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.05~15質量部、さらに好ましくは0.1~10質量部である。脂肪族炭化水素化合物の含有量が上記範囲内であると、洗浄性を維持したうえで易置換性を高めることができる。また、脂肪族炭化水素化合物を添加することで洗浄剤の混練時に二軸押出機等の混練機のモーター負荷(トルク)が低くなるため、洗浄剤の製造が容易になる。
【0029】
-滑剤-
上記滑剤としては、有機酸、有機酸金属塩、有機酸アミド、有機酸エステル等の有機酸誘導体、各種エステル系ワックス、フッ素系樹脂等が挙げられるが、これらに特に限定されるものではない。なお、上記滑剤に、上述の脂肪族炭化水素化合物は含まれないものとする。滑剤は、1種単独でも2種以上の組み合わせであってもよい。
【0030】
上記有機酸としては、炭素数9~28の飽和脂肪酸、炭素数9~28の不飽和脂肪酸、安息香酸が好ましい。鎖の一部にヒドロキシル基を有していてもよい。特に、入手のしやすさ、耐熱性の観点から、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸がより好ましい。また、アルキル鎖の異なる混合脂肪酸であってもよい。炭素数が上記範囲であると、ガスの発生や臭気の問題がなく、入手の容易さや界面での滑剤としての特性がうまく機能するといった点で好ましい。
【0031】
上記有機酸金属塩における金属としては、特に限定されるものではないが、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、亜鉛、鉄、コバルト、バリウム等が挙げられる。中でも、滑剤としての効果が最も発揮されるリチウム、カルシウム、バリウム、亜鉛又はアルミニウムが好ましい。また、中でも、アルミニウム、亜鉛は極性が低く、熱可塑性樹脂からのブリードアウトにより外部滑性を発現しやすく、より好ましい。特に好ましくは、亜鉛である。
【0032】
上記有機酸金属塩における炭化水素部位は、上述の有機酸と同じく、炭素数9~28の飽和脂肪酸、炭素数9~28の不飽和脂肪酸、安息香酸が好ましく、入手のしやすさ、耐熱性の観点から、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸がより好ましい。
【0033】
上記有機酸アミドとしては、炭素数9~28の、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド等が挙げられる。中でも、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の炭素数12~18の脂肪酸、エルカ酸等の不飽和脂肪酸のアミド、エチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミドが、入手のしやすさ、滑剤としての効果の点から好ましく、より好ましくはエチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミドである。
【0034】
上記有機酸エステル、エステル系ワックスとしては、炭素数9~28の、飽和脂肪酸エステル、不飽和脂肪酸エステル、中鎖脂肪酸トリグリセリド、硬化油等のポリオールエステル等が挙げられる。入手のしやすさ、滑剤としての効果の点から、ステアリン酸ステアレート、グリセリン脂肪酸エステルモノグリセライド等が好ましい。
【0035】
上記フッ素系樹脂としては、PTFE、PFA、PVDF、PVDF系共重合体、ETFE、PFE等が挙げられ、金属面への樹脂付着性を抑える効果が期待できる。形状としては、ペレット状、パウダー状等、種々使用することができるが、加工する際に均一に分散させるためにパウダー状のものが特に好ましい。平均粒径は、特に限定されないが、1,000μm以下が好ましい。
【0036】
滑剤は、洗浄性能の観点から、表面張力が32mN/m以下であることが好ましい。例えば、ステアリン酸亜鉛の表面張力は24mN/m、ステアリン酸アルミニウムの表面張力は25mN/m等となっている。また、滑剤は、融点又は軟化点が70℃以上であることが好ましく、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは90℃以上である。
【0037】
滑剤の含有量は、洗浄剤100質量部に対して0.1~10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.2~10質量部、さらに好ましくは0.5~8質量部である。滑剤の含有量が上記範囲であると、洗浄性を維持したうえで易置換性を高めることができる。
【0038】
-界面活性剤-
界面活性剤としては、陰イオン活性剤、陽イオン活性剤、非イオン活性剤、両性表面活性剤等が挙げられる。陰イオン活性剤としては、高級脂肪酸アルカリ塩(アルファスルホ脂肪酸メチルエステルナトリウム等)、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、スルホコハク酸エステル塩等を例示することができる。陽イオン活性剤としては、高級アミンハロゲン酸塩、ハロゲン化アルキルピリジニウム、第四アンモニウム塩等を例示することができる。非イオン活性剤としては、ポリエチレングリコールアルキルエ-テル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル(ペンタエリスリトールテトラステアラート等)、脂肪酸モノグリセリド等を例示することができる。両性表面活性剤としては、アミノ酸等を例示することができる。界面活性剤は、1種単独でも、2種以上の組み合わせであってもよい。
界面活性剤の含有量は、洗浄剤100質量部に対して0.1~10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.2~10質量部、さらに好ましくは0.5~8質量部である。界面活性剤の含有量が上記範囲であると、洗浄性を維持したうえで易置換性を高めることができる。
【0039】
-酸化防止剤-
酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤等が挙げられるが、これらに特に限定されるものではない。リン系酸化防止剤の具体例としては、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスファイト等が挙げられる。フェノール系酸化防止剤の具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート、4,4’-ブチリデンビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)等が挙げられる。酸化防止剤は、1種単独でも、2種以上の組み合わせであってもよい。
酸化防止剤の含有量は、洗浄剤100質量部に対して0.01~5質量部であることが好ましく、より好ましくは0.05~3質量部、さらに好ましくは0.1~2質量部である。酸化防止剤の含有量が上記範囲であると、樹脂の劣化を抑制することができ、かつ酸化防止剤の分解生成物自身が他の添加剤(滑剤等)に対して阻害効果を及ぼすことが少ないため好ましい。
【0040】
-無機フィラー-
上記無機フィラーとは、後述の無機発泡剤以外の無機化合物をいい、天然物及び人工合成物のいずれも示す。無機化合物の具体例としては、タルク、マイカ、ワラストナイト、ゾノトライト、カオリンクレー、モンモリロナイト、ベントナイト、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ローソナイト、スメクタイト、硫酸カルシウム繊維、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ゼオライト、ケイソウ土、ガラス粉末、ガラス球、ガラス繊維、シラスバルーン等が挙げられる。
【0041】
-無機発泡剤-
上記無機発泡剤とは、加熱により分解し、発泡、すなわち気体を発生する無機化合物を指す。無機発泡剤の具体例としては、水等の無機物理発泡剤、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等の炭酸水素塩、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等の炭酸塩、亜硝酸アンモニウム等の亜硝酸塩、ホウ水素化ナトリウム等の水素化物、アジ化カルシウム等のアジド化合物、マグネシウム、アルミニウム等の軽金属、炭酸水素ナトリウムと酸との組み合わせ、過酸化水素とイースト菌との組み合わせ、アルミニウム粉末と酸との組み合わせ等の公知の無機化学発泡剤が挙げられる。
【0042】
-超高分子量樹脂-
上記超高分子量樹脂とは、粘度平均分子量100万以上の高分子であり、例えば、エチレン系超高分子、スチレン-アクリロニトリル系超高分子、メタクリル酸メチル系超高分子等が挙げられる。中でも、エチレン系超高分子が好ましい。分子量の上限は特に限定されないが、一般的には1000万以下であることが実用上好ましい。
【0043】
また、超高分子量樹脂はホモポリマーでもコポリマーでもよく、コポリマーの場合は主成分(例えば、エチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体、メタクリル酸メチル等)の含有量が50質量%以上である必要がある。
【0044】
洗浄力と易置換性の観点から、超高分子量樹脂の含有量は、洗浄剤100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.2質量部以上7質量部以下であることがより好ましく、0.3質量部以上5質量部以下であることが更に好ましい。
【0045】
本実施形態の洗浄剤は、易置換性のため、上記無機フィラー、無機発泡剤、超高分子量樹脂等のスクラブ効果を有する添加剤の含有量が、10質量部以下であることが好ましく、7質量部であることがより好ましく、5質量部であることがさらに好ましい。
【0046】
スクラブ効果を有する添加剤の置換性に対する効果は必ずしも明らかではないが、無機フィラー、無機発泡剤、超高分子量樹脂等のスクラブ効果を有する添加剤は、洗浄力を向上させる一方で、押出成形や射出成形等の金型やダイ内部の流路が複雑な場合は樹脂加工機内に滞留しやすいため排出が困難であり、置換性が阻害されると考えられる(ただし、効果はこれに限らない)。
【0047】
[洗浄剤の製造方法]
本実施態様の洗浄剤の製造方法は、特に限定されず、公知の混練機を用いることができ、例えば、単軸押出機、二軸押出機を含む多軸押出機、ロール、ニーダー、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー等による加熱溶融混練機が挙げられる。上記の中でも、二軸押出機を用いた溶融混練方法が好ましい。具体的には、コペリオン社製のZSKシリーズ、芝浦機械(株)製のTEMシリーズ、日本製鋼所(株)製のTEXシリーズ等を用いることができる。
【0048】
[ペレット]
本実施形態のペレットは、上述の本実施形態の樹脂加工機用洗浄剤用架橋ポリエチレンを含み、さらに(B)ポリオレフィン系樹脂を含むことが好ましい。上記ペレットは、上記樹脂加工機用洗浄剤用架橋ポリエチレン100質量部に対し、(B)ポリオレフィン系樹脂10~1000質量部を含むことが好ましい。
上記ペレットは、上述の樹脂加工機用洗浄剤用樹脂組成物を含むことが好ましい。
上記ペレットは、上述の樹脂加工機用洗浄剤用樹脂組成物をペレット化することで製造することができる。上記ペレット化としては、溶融混錬、ドライブレンド等が挙げられる。
上記ペレットは、例えば、樹脂加工機の洗浄に用いることができる。
【0049】
[樹脂加工機の洗浄方法]
本実施形態の樹脂加工機用洗浄剤用架橋ポリエチレン及び洗浄剤は、特に制限なくあらゆる樹脂加工機械に対して使用することができる。
樹脂加工機の具体例としては、射出成形機、押出成形機等が挙げられる。
【0050】
本実施形態の樹脂加工機の洗浄方法は、上述の本実施形態の樹脂加工機用洗浄剤用架橋ポリエチレン又は本実施形態の洗浄剤を用いる。本実施形態の樹脂加工機の洗浄方法は、上述の本実施形態の樹脂加工機用洗浄剤用架橋ポリエチレン又は本実施形態の洗浄剤を樹脂加工機内に滞留させる工程を有してもよい。樹脂加工機の具体例としては、上述のものが挙げられる。
【0051】
本実施形態の洗浄方法は、洗浄前に成形加工した材料を効率的に排出させることができるだけでなく、洗浄後に成形機を休止する場合、洗浄剤用架橋ポリエチレン又は洗浄剤を樹脂加工機内に充満させた状態で滞留させることにより、万が一洗浄不足で洗浄前に成形加工した材料が樹脂加工機内に残っている場合でも、残った材料の熱劣化を防止できる利点がある。
【0052】
本実施形態の樹脂加工機の洗浄方法は、上記(A)成分100質量部に対し、(B)成分を10~1000質量部をドライブレンドし洗浄する方法である。この方法によれば、行程が大幅に簡素化になる。
【0053】
本実施形態の樹脂加工機用洗浄剤用架橋ポリエチレンは、ポリエチレンを使用した後の樹脂加工機の洗浄性能及び置換性に特に優れる。また、樹脂加工機にポリエチレンと他のポリオレフィン系樹脂を用いた後の洗浄及び置換には、上記樹脂加工機用洗浄剤用架橋ポリエチレンと(B)成分(好ましくは樹脂加工機に用いた上記他のポリオレフィン系樹脂と同じ樹脂)とを含む洗浄剤を用いることが好ましい。
【実施例0054】
以下、実施例及び比較例により本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態はその要旨を超えない限り、後述する実施例及び比較例に限定されるものではない。
実施例及び比較例の洗浄剤等に対する各種測定方法と、実施例及び比較例に用いた洗浄剤等の原料成分とを以下に示す。
【0055】
各材料の測定は、以下の通りに行った。
[MFR]
各原材料のMFRは、以下の条件で測定した。
架橋ポリエチレン:220℃、荷重10kg
ポリエチレン:190℃、荷重2.16kg
ポリプロピレン:230℃、荷重2.16kg
【0056】
[ゲル分率]
架橋ポリエチレンのゲル分率は、JIS K6796に準拠して測定した。
【0057】
実施例、比較例では、以下の原材料を使用した。
[原材料]
(A)架橋ポリエチレン
(A-1)分岐型低密度ポリエチレン(MFR:2.3g/10分)に過酸化物ジクミルペルオキシドを添加して得た発泡架橋ポリエチレンを95mmφの単軸押出機でバレル温度300℃の条件下で減容した架橋ポリエチレン系樹脂 ゲル分率30%、MFR0.20g/10分
(A-2)直鎖状低密度ポリエチレン(MFR:3.0g/10分)に電子線架橋して得た架橋ポリエチレンフィルムの再生品の端材:ゲル分率20%、MFR0.04g/10分
(A-3)低密度ポリエチレン(MFR:2.8g/10分)に過酸化物ジクミルペルオキシドを添加して得た架橋ポリエチレン ゲル分率35%、MFR測定不可
【0058】
(B)ポリオレフィン系樹脂
(B-1)高密度ポリエチレン MFR:0.3g/10分
(B-2)高密度ポリエチレン MFR:1.4g/10分
(B-3)プロピレンブロックコポリマー MFR:0.8g/10分
【0059】
〔実施例1、2、5~7、比較例1~3〕
各成分を表1に示す割合で配合し、以下の方法により評価を行った。測定及び評価結果を表1に示す。なお、実施例5~7は、各原材料をドライブレンドした後に評価を行った。
【0060】
〔実施例3、4〕
各成分を表1に示す割合で配合し、2軸押出機(芝浦機械(株)製TEM-26SX)を用いて、洗浄剤を製造した。混練条件は、バレル温度210~240℃、吐出量15kg/時間、スクリュー回転数150rpmとした。このようにして得られた溶融混練物をストランド状に押し出し、水冷してからストランドカッターにて切断し、ペレット状の洗浄剤を得た。 得られたペレットを用いて、以下の方法により評価を行った。測定及び評価結果を表1に示す。
【0061】
〔比較例4〕
2軸押出機のバレル温度を300℃に変更した以外は、上記と同様にして洗浄剤のペレットを得た。ゲル分率は1%、MFRは0.71g/10分であった。
【0062】
実施例、比較例で得られた洗浄剤を以下の方法で評価した。
【0063】
(1)可塑化安定性
小型押出機(ブラベンダー社製プラスチコーダ)に実施例又は比較例で作製したペレットを1kg投入して、(A)成分のみ、および(B)成分にポリエチレンを用いた場合はシリンダー温度200℃およびダイ温度200℃、(B)成分にポリプロピレンを用いた場合はシリンダー温度240℃およびダイ温度240℃の条件でスクリューを回転させて当該樹脂をダイから排出し、以下の評価基準で評価した。
(評価基準)
+++:トルクの変動幅が0%以上5%未満である
++:トルクの変動幅が5%以上である
+:小型押出機への負荷が大きく、評価できなかった
【0064】
(2)焼け除去
小型押出機(ブラベンダー社製プラスチコーダ)にポリエチレン系樹脂を100g投入し、シリンダー温度310℃でスクリューを回転させ、樹脂をノズルから排出して小型押出機内に樹脂を付着させた。その後、同一温度のまま2時間滞留させ、押出機内部に付着して残ったポリエチレン系樹脂の焼けを作製した。その後、シリンダー温度200℃にして実施例及び比較例で得られた洗浄剤を当該押出機に100g投入し、内部を洗浄した。
その後、スクリューを抜き、スクリュー表面に付着した焼けの残存量を測定し、洗浄性(焼け除去性能)を以下の評価基準で評価した。なお、実施例7及び比較例3の「-」は、評価を行わなかったことを表す。
(評価基準)
+++:焼けの残存面積が、スクリューの全表面積の20%未満である
++:焼けの残存面積が、スクリューの全表面積の30%未満である
+:焼けの残存面積が、スクリューの全表面積の30%以上である
【0065】
(3-1)洗浄性(色替え性能)(洗浄剤が(A)成分のみ又は(A)成分とポリエチレンである(B)成分とからなる場合)
青色の着色マスターバッチ10質量%と高密度ポリエチレン90質量%とを混合し、小型押出機(ブラベンダー社製プラスチコーダ)に0.5kg投入して、スクリューを回転させて当該樹脂混合物をダイから排出して押出機内に疑似的な汚れを付着させた。
その後、当該押出機に実施例及び比較例で得られた洗浄剤を1kg投入し、シリンダー温度200℃及びダイ温度200℃の条件でスクリュー回転により洗浄した。ダイから排出されるパージ屑の色調を目視にて観察しながら、洗浄が完了するまでパージ屑を排出した。排出されたパージ屑量(g)を天秤で測定し、洗浄性(色替え性能)を以下の評価基準で評価した。
なお、洗浄した際にダイから排出されるパージ屑を室温まで冷却して固化させたものの色調が、青色から洗浄剤の色に変わった時点を洗浄完了とした。
(評価基準)
+++:排出されたパージ屑量が230g未満である
++:排出されたパージ屑量が230g以上280g未満である
+:排出されたパージ屑量が280g以上である
【0066】
(3-2)洗浄性(色替え性能)((B)成分がポリプロピレンの場合)
黒色の着色マスターバッチ3質量%とポリプロピレン97質量%とを混合し、小型押出機(ブラベンダー社製プラスチコーダ)に0.5kg投入して、スクリューを回転させて当該樹脂混合物をダイから排出して押出機内に疑似的な汚れを付着させた。
その後、当該押出機に実施例及び比較例で得られた洗浄剤を1.5kg投入し、シリンダー温度240℃及びダイ温度240℃の条件でスクリュー回転により洗浄した。ダイから排出されるパージ屑の色調を目視にて観察しながら、洗浄が完了するまでパージ屑を排出した。排出されたパージ屑量(g)を天秤で測定し、洗浄性(色替え性能)を以下の評価基準で評価した。
なお、洗浄した際にダイから排出されるパージ屑を室温まで冷却して固化させたものの色調が、黒色から洗浄剤の色に変わった時点を洗浄完了とした。
(評価基準)
+++:排出されたパージ屑量が650g未満である
++:排出されたパージ屑量が650g以上750g未満である
+:排出されたパージ屑量が750g以上である
【0067】
(4-1)置換性(洗浄剤が(A)成分のみ又は(A)成分とポリエチレンである(B)成分とからなる場合)
上記の「(3-1)洗浄性」の後、高密度ポリエチレンを小型押出機(ブラベンダー社製プラスチコーダ)に1kg投入し、シリンダー温度200℃及びダイ温度200℃の条件でスクリュー回転により置換し、ダイから排出される溶融樹脂の外観の色調を目視にて観察しながら、置換が完了するまでパージ屑を排出した。排出されたパージ屑量(g)を天秤で測定し、置換性を以下の評価基準で評価した。
なお、置換の際にダイから排出される溶融状態のパージ屑の外観の色調が、洗浄剤の色から無色透明に変わった時点を置換完了とした。
(評価基準)
+++:排出されたパージ屑量が50g未満である
++:排出されたパージ屑量が50g以上100g未満である
+:排出されたパージ屑量が100g以上である
【0068】
(4-2)置換性((B)成分がポリプロピレンの場合)
上記の「(3-2)洗浄性」の後、ポリプロピレン系樹脂を小型押出機(ブラベンダー社製プラスチコーダ)に1kg投入し、シリンダー温度240℃及びダイ温度240℃の条件でスクリュー回転により置換し、ダイから排出される溶融樹脂の外観の色調を目視にて観察しながら、置換が完了するまでパージ屑を排出した。排出されたパージ屑量(g)を天秤で測定し、置換性を以下の評価基準で評価した。
なお、置換の際にダイから排出される溶融状態のパージ屑の外観の色調が、洗浄剤の色から無色透明に変わった時点を置換完了とした。
(評価基準)
+++:排出されたパージ屑量が50g未満である
++:排出されたパージ屑量が50g以上100g未満である
+:排出されたパージ屑量が100g以上である
【0069】
【表1】
【0070】
上記の結果から、実施例1~7で得られた洗浄剤は、良好な洗浄性及び易置換性を有していることが分かる。なお、比較例1は小型押出機への負荷が大きく、測定できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の樹脂加工機用洗浄剤用架橋ポリエチレン及び樹脂加工機用洗浄剤用樹脂組成物は、優れた洗浄性能を発揮するだけでなく、易置換性・可塑化安定性も優れており、特に、熱可塑性樹脂の射出成形や押出成形の樹脂加工機用洗浄剤として有用である。